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母の飼い主 1

46母の飼い主 26:2013/10/28(月) 00:57:50

《 カップルはすっかり興味を覚えたらしく、冬子に次々と質問を浴びせました。
  『冬子って名前なんだ。身体に未亡人って書いてあるけど、これホント?』
  『はい、本当です』
  『ふーん。歳はいくつなの?』
  『三十九歳です。もうすぐ四十になります』
  『わたしのママと同じだ。なんかショック〜』と彼女のほうが蔑むように笑いました。『三十九歳ねえ…。そんないい歳して変態なんだ?』
  『はい…変態です。ごめんなさい…』
  『これ、おばさんのスリーサイズだろ』と彼氏のほうが冬子の躰に書かれた数字を指差して言いました。『おっぱい90センチだってさ。すげえじゃん。○○よりずっとでかいな』
  ○○という名前の彼女は、彼氏の言葉にむっとしたようすで『でも、わたしはウエスト71もないもんね。お尻だってこんなに大きくないし』と言いました。
  若者たちから遠慮なく躰を品評される辛さに、冬子は赤らんだり蒼ざめたりしながら、ようやく耐えているようすでした。

  さて、この後ですが、顔を映さないという条件でカップルのふたりに撮影許可をもらい、動画を撮りました。これがそのときの動画です 》


 そんな言葉とともに、動画のストリーミング画面が表示されていた。
 抗いがたい何者かに操られてでもいるかのように、僕は冷えきった指先でマウスを動かし、画面をクリックした。


 動画が再生される――
 母の姿が映し出された。

 目元にはモザイク処理がされている。けれど、そのモザイクはずいぶん薄くて、切なげな瞳の表情までよく分かるくらいだった。母は――「SEX PET」というプレートのついた首輪をのぞくと――、一糸もまとわぬ姿だった。先ほどの写真で見たとおり、雪をあざむくような色白の裸身には侮辱的な落書きの数々が施されている。
 動画は高台にある公園の一角で撮影したものらしかった。背後には古ぼけた展望台らしきものがある。見るからに寂れているとはいえ、いつ人が通るかも分からない野外、しかも白昼の太陽の下で、母は丸裸を晒されていた。晩秋の空気の冷たさのためか、それとも内心の不安や羞恥のためか、うなだれた母の肢体はひっきりなしにふるえていた。
『ぼーっと突っ立ていないで、動画を見てくださっている皆さまにご挨拶しないか!』
 ビデオカメラを手に構えているらしい男の声がした。まぎれもなく洋治さんの声だ。
 きつく叱責された母は、いかにもあたふたしたようすで口を開いた。
『み、皆さま、いつも冬子の恥ずかしい姿をご覧いただき、本当にありがとうございます。ただいま冬子は、こうしてお外で生まれたままの姿になって、年増のみっともない躰をお若い方にお見せしています』
『どうだ、見てもらえてうれしいか?』
 と洋治さんの声が飛んだ。
『は、はい。マゾの冬子は、お若い方に裸を見ていただけて、とても感激しています。ありがとうございます』
 母はそう言うと、前方斜め右に向かって深々と頭を下げた。画面に映ってはいないが、そこに例のカップルがいるらしい。いかにも若そうな男女の笑い声が響いてきた。
『すごーい。本当にビデオで撮影されちゃってる。これ、ネットに流すんでしょ? よくそんな恥ずかしいことができるわねえ…』と女の声。
『なあ。よく見ると、このおばさん、乳首勃ってね?』と今度は男の声がした。
『ホントだぁ。いやらしい』
『マゾって凄いな。俺たちにハダカ見られて興奮してるんだよ。ご丁寧にあそこの毛までツルツルにしてるし』
 カップルのあからさまな会話にできれば耳を塞ぎたいようすで、けれども母はじっと耐えていた。
 しかし、洋治さんが『そろそろ、こいつの裸も見飽きたことでしょうから、次は冬子に芸でもさせましょう』と言い出すと、母は『あぁ…』といかにも哀れっぽく呻いた。


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