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ヤンデレの小説を書こう!@避難所 Part06

1避難所の中の人★:2013/09/09(月) 13:40:37 ID:???
ここは、ヤンデレの小説を書いて投稿するためのスレッドです。

○小説以外にも、ヤンデレ系のネタなら大歓迎。(プロット投下、ニュースネタなど)
○ぶつ切りでの作品投下もアリ。


■ヤンデレとは?
 ・主人公が好きだが(デレ)、愛するあまりに心を病んでしまった(ヤン)状態、またその状態のヒロインの事をさします。
  →(別名:黒化、黒姫化など)
 ・転じて、病ん(ヤン)だ愛情表現(デレ)、またそれを行うヒロイン全般も含みます。

■関連サイト
ヤンデレの小説を書こう!SS保管庫 @ ウィキ
http://www42.atwiki.jp/i_am_a_yandere/

■本スレ
ヤンデレの小説を書こう!Part52
http://pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1350699785/

■避難所前スレ
ヤンデレの小説を書こう!@避難所 Part05
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/12068/1349020310/

■お約束
 ・書き込みの際には必ずローカルルールおよびテンプレの順守をお願いします。
 ・荒らしはスルーしましょう。
  もし荒らしに反応した場合はその書き込みも削除・規制対象になることがあります。
 ・趣味嗜好に合わない作品は読み飛ばすようにしてください。
 ・作者さんへの意見は実になるものを。罵倒、バッシングはお門違いです。議論にならないよう、控えめに。
 ・避難所に対するご意見は「管理・要望スレ」(http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/12068/1301831018/)まで。
 ・作品について深く批評したいな、とか思ったら「批評スレ」(http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/12068/1318219753/)まで。
 ・便りがないのは良い便り。あんまり催促しないでマターリいきましょう。

■投稿のお約束
 ・トリップ使用推奨。
 ・苦手な人がいるかな、と思うような表現がある場合は、投稿のはじめに宣言してください。お願いします。
 ・二次創作は元ネタ分からなくても読めれば構いません。
  投下SSの二次創作については作者様の許可を取ってください。
 ・男のヤンデレは基本的にNGです、男の娘も専スレがあるのでそちらへ。

2雌豚のにおい@774人目:2013/09/09(月) 14:08:20 ID:l/7Nbl4.
>>1

病んだ子に監禁されてきなさい

3雌豚のにおい@774人目:2013/09/12(木) 01:02:53 ID:3oGRJtEM
さて、新たなヤンデレを拝むとするか

4雌豚のにおい@774人目:2013/09/18(水) 06:57:25 ID:5DuM2irc
拝むんじゃなくて自分で書こうず

5雌豚のにおい@774人目:2013/09/24(火) 00:21:09 ID:jTib45jM
少し間が空いてしましたが、第2話投下します

6一朝一夕第2話:2013/09/24(火) 00:21:58 ID:jTib45jM
迂闊だった
洋さんを狙う雌猫がいることには薄々感付いていた
しかしそれはあまりにも唐突で、理解するのに時間がかかってしまった
私の洋さんを…
こうなったら私も行動を起こすしかないだろう
今までずっと影から彼を見続け、今ではどうしようもないほどに彼に惹かれながらも見守ることだけに終始してきた
彼を知り、彼という人間を無意識に意識するまでに彼という人間に一方的ながらも惹かれてきたこれまでの日々…今、その見るだけだった日々が私にこの最悪の状況をもたらしてしまった

一生の不覚だ

もうぐずぐずなんてしてられない。一刻も早く、彼を私のものにしなければ………

7一朝一夕第2話:2013/09/24(火) 00:23:06 ID:jTib45jM
夜。洋は一人街灯の照らす道を散歩していた。
夜の散歩は好きだ。人気のない、静かな空間を夜風を体に受けながら歩いていく。さすがに夜には登校・下校の時に受けるあの視線はない。むしろ何かに守られているような感じさえする
俺の住んでるアパートの近くは割と平和な地域だし、今まで変な輩にからまれたこともない。不思議と朝よりも安心な気分になれる。よく風当たりにこうして散歩するようになって3年くらいか、今では日課の一つと言っていいだろう
高校にも大分慣れてきて、今のクラスで過ごす時間も当たり前の日常になりつつある
あとは新しい友達ができて、プライベートでももっと遊ぶことがこれから増えればより密度の濃い時間を過ごせそうだ
「この目前に迫る憂鬱な期末テストが終われば夏休み。そしたらバイトでも始めるかな」
幸いうちの高校はバイトを禁止していない。小遣い稼ぎのため、経験のためにも何かバイトはしておいた方がいいだろう
「今のうちに目星だけでもつけとくか」
今の時代、携帯からネット検索で簡単に見つかるし、決まるのにそう苦労はしないはずだ
「そのためにも、期末で赤点取って補習地獄って最悪の事態だけは避けなきゃな」


翌日。朝の電車に揺られ、洋は立ちながらうたた寝していた。
試験勉強した後、携帯でバイト募集検索をしていたらつい遅くなってしまい、寝たのは3時近くだった
ダメだ、眠い…
「…駅、…駅でございます」
「あの、…駅ですよ?」
「ん…降りなきゃ…」
寝過ごしそうになりながらも、親切な人に声をかけられなんとか下車した。
「あれ?」
ふと後ろを振り返り閉まっていく電車の扉を眺めるも、自分に声をかけてくれた人が誰だか分からない。
「お礼言えなかったな」
次からは気をつけよう

8一朝一夕第2話:2013/09/24(火) 00:24:37 ID:jTib45jM
その数分後。洋が降りたその次の駅では、洋と同じ高校の制服を着た女子生徒が下車し、何事か呟いていた。
「…町の喫茶店、…商店街の本屋、…駅前のレンタル屋…」
彼女が呟いている店達。それらは洋の携帯の閲覧履歴にある店達の履歴と、全く同じものだった。
「あとは、洋さんが通ったバイト先に私も応募すればいいだけね」
大丈夫私なら絶対受かるから、と静かに笑って一人自信満々に頷くと、彼女は反対行きのホームへと歩き出した。
「ふふ、さっきのうとうとしてる彼、かわいかったなぁ…」
そう、出来ることならすぐにでも食べちゃいたいくらいに…
遅かれ早かれ、私は彼を美味しく頂くことになるのだから



「おはよ」
「おう、おはよ」
チャイムがなる10分前、教室に入って顔を合わせた雄次に挨拶する。
「眠そうだな」
「ちょっとね、夜中に色々やってたら寝るの遅くなった」
「色々って?」
「期末終わったらバイトでも始めようと思ってさ」
目をこすりながら返答する
「ああバイトね、いいんじゃないか?」
「へー清戸くんバイトするんだ」
自分の斜め前に座っていた旭さんが会話に入ってきた
「うん始めるなら早い方がいいし、期末終わった後に始められれば新学期までには慣れると思うし」
「そっかー、私も何かバイトしようかなぁ」
旭さんが悩む仕種を見せる
「旭さんなら面接とかすんなり受かりそうだよね」
「そんなことないよ〜」
そんな感じで談笑しているとチャイムが鳴って先生が教室に入ってきたので会話はそこで打ち切られた
「まぁ決まったら教えてよ。私も参考にしたいし」
「うんいいよ」
とは言っても、彼女なら大体のところは受かりそうなものだし、後は本人がどこでやりたいか次第だと思うけどな

「…ゼッタイ、同じとこ応募して採用されるから、ネ…」

洋には聞き取れないくらい小さな声で言った、彼女のその呟きは洋の耳には届かなかった。


「さて、下校か」
授業も終わり、これから下校だ。しかし期末テストは来週、勉強の最後の追い込みをかけなければならない
「とりあえず、できるだけ頑張ってみるか」
そう呟くと洋は教室を後にした

9雌豚のにおい@774人目:2013/09/24(火) 00:25:43 ID:jTib45jM
投下終了します

10雌豚のにおい@774人目:2013/09/24(火) 06:59:35 ID:8IlmGF56
>>9
GJ
そのうち大爆発しそうな感じ

11雌豚のにおい@774人目:2013/09/24(火) 20:50:42 ID:c4tg1HWQ
>>9
GJ
いいよーいいよー
いつ爆発するか楽しみです

12雌豚のにおい@774人目:2013/09/24(火) 23:12:52 ID:XVSbzaEw
ちょっと分からないんだが、このストーカーと旭光莉は別人?
同一人物かと思ったが、旭光莉の登場時の説明から考えると別人みたいだ。
別人ならば、常に学年一位を取る存在とやらがストーカーで合ってる?
文章がこんがらがっててよく分からん…

13雌豚のにおい@774人目:2013/09/25(水) 19:25:06 ID:YOE21Ees
新スレ乙

前スレ一年ぐらい使ってたんだな
このスレはどのくらい使うんだろうか

14雌豚のにおい@774人目:2013/09/28(土) 04:01:01 ID:DUKuu7HE
幼馴染みはなぜ恋敵に大体負けるのか

15雌豚のにおい@774人目:2013/09/28(土) 09:34:03 ID:9LhaRifk
恵まれた環境からの慢心、油断

16雌豚のにおい@774人目:2013/09/28(土) 09:47:06 ID:CYg6NU3w
ポジション的にかませにピッタリだからしょうがないね

17雌豚のにおい@774人目:2013/09/28(土) 10:58:28 ID:ZCqe3IA2
でもだからこそ

「男君とは昔からいつでも一緒なのに生まれた時から隣同士なのに(子供の頃)結婚の約束もしたのに(子供の頃)一緒にお風呂に入ってお互いに体の隅々まで知り尽くした仲なのに今でもいつでも男君の部屋に上がり込めるしこの前なんかゴミ箱の中に使用済みのティッシュがあったから持ち帰ったのよきっと私の事を思ってオナニーしていたのに違いないからこっそり男君のベッドに潜り込んで私の体臭とか恥ずかしい体液とか染み込ませたりしたのよ男君その夜はきっといつも以上に昂奮したに違いないのに男君を喜ばせるのは私の役目なのに横から出てきてなにしてるのよあの女あの女あの女ァァァァァァァァァァァァ!」

とか病んでいくのがいいんじゃないか
それでも負けるんだろうけど

18雌豚のにおい@774人目:2013/09/28(土) 11:43:54 ID:dk4D9uNg
ヤンデレる状態まで追い詰められた段階で、既に負けてる気がするけどなー。
(『健全な恋愛』ができる目が無くなってるから)

個人的に、ヤンデレものって敗者の物語って面もある(ことも多い)と思う。

19雌豚のにおい@774人目:2013/09/28(土) 17:07:31 ID:OhpXkllI
ヤンデレの恋愛が上手くいくなんてありえないからな。
上手くいくならそもそも病まないし

20雌豚のにおい@774人目:2013/09/28(土) 23:32:08 ID:SWO4447Q
しかし、そこを敢えて逆にとって
「恋愛がうまくいけばいくほどヤンデレ化」という路線もあるのではないか たとえば

ヒロイン、憧れていた彼に告白される
もう舞い上がっちゃって大変
彼は想像以上に優しくしてくれるし、とても現実とは思えない幸せの連続……

ここから
→今が幸せであればあるほど、「捨てられたらどうしよう」と不安になる
→不安から、彼に対する献身が徐々に「やりすぎ」に 自身の生活に支障が出てきてもなお不安
→彼にやんわりと諭されても「自分が至らないから」と思い詰める 
→というか、優しくされればされるほど、捨てられる時の恐怖から不安の倍増
→そのうち「私にしてくれるような優しさに、もし他の娘が触れたら、彼のことを好きになっちゃうかも」とこれまた不安の種に
→少しずつ彼に対する束縛が異様化・過激化

で、彼が包容力のあるタイプで、うまく彼女をコントロールできるようになると、
ヤンデレ経由のバカップル誕生秘話になるではないか

21雌豚のにおい@774人目:2013/09/29(日) 14:17:24 ID:tBR3cSHo
確かに病む過程では幸せであることもあるな
分類するなら、付き合ってから病むタイプの依存系ヤンデレだな
>>19のは恋敵とで三角関係で病むタイプでどっちも最高や!

何にせよヤンデレは病む過程こそが肝要だと思う
ss作りも過程を気にしてる

22雌豚のにおい@774人目:2013/09/29(日) 19:25:10 ID:HQ0aYOFQ
無駄に欲張るから男くんが引いてしまうんだよな〜
清く正しいお付き合いさえしていれば


と思ったけど手綱を緩めると別の女に拉致監禁されてしまうのか・・・大変だな

23雌豚のにおい@774人目:2013/09/30(月) 15:03:41 ID:un95h4CE
相手役の男の子のキャラクターも重要だよなー。
救いようの無いクズ男か、良い奴なんだけどヘタレなのか、完璧なのにたった一つの欠点や誤解がきっかけで擦れ違うのか

どんな男なのかで病み方も変わるわなー

24雌豚のにおい@774人目:2013/10/01(火) 16:45:44 ID:l/75mD8Y
クズとかヘタレとか優柔不断だと
その方がヒロイン病みやすいんだろうけど
たまにイライラする時あるな

でもその後病んだヒロインに監禁とか酷い目にあわされてざまあってなるから
展開としてはあってるんだろうな

25<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>:<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>
<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>

26<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>:<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>
<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>

27雌豚のにおい@774人目:2013/10/04(金) 11:21:33 ID:1FBqfK1Q
ロリというか幼いと恋愛対象と見られてないということで無理なく病ませることが可能になるのではなかろうか

28雌豚のにおい@774人目:2013/10/04(金) 13:14:20 ID:dkbL7RkI
は!? ロリって普通に恋愛対象だろ。むしろストライクゾーンど真ん中だろ!
と言う本音は置いといて、と……

恋愛対象に見られないってだけじゃ多分弱いと思う。
まあ色々とあるから何とも言えないけど、俺的にはそこに何か+αが欲しいところだな。
例えば親から虐待を受けていて優しさ、そして愛されるという事を知らない少女に、主人公が優しさという中毒物質を与えてしまうんだ。
初めて人に優しくされた少女は主人公を神格化して、盲目的に妄信をする。
そしてやがて少女が感じていた気持ちが、『愛』であることに気がつく。
だがしかし主人公にはロリっ子ぺろぺろの性癖なんてなく、少女のことは妹みたいな、もっと言ってしまえば《ただの》女の子でしかない。もちろん恋愛対象外。
それを知ってしまった少女が空鍋カラカラ発信者のいない携帯でトーク、最後にロールキャベツでギャースと。
「神様は不平等です。私は神様に沢山色んなものを捧げました。そしてこれからも私の全てを神様に惜しみなく喜んで差し上げます。それなのになんで神様は私のお願いを聞いてくれないんですか。おかしいです。だから私決めたんですよ。もう神様にお願いするのは辞めようって。だってお願いするだけはもう飽き疲れましたからね。叶わぬと知っていてお願いをするほど悲しく虚しいことはありません。なので与えられるのを手を合わせ待つのではなく、手を伸ばして自分で掴もう。そしてそれを私だけのものにしよう。どこにも行かせないし、私無しじゃ活かせないし、生かせられないように。ふふ、これじゃあまるで私の方が神様になっちゃったみたいですね。あ、それもいいですね。あなたの神様にだったら喜んでなっちゃいます。私はどこかの意地悪な神様と違って、ちゃんと与えてあげますからね。あなたへの愛を……だからずっと一緒ですよ。ね、神様」

オゥフ……妄想が捗るでござる。

29雌豚のにおい@774人目:2013/10/05(土) 08:49:26 ID:MlGMeETo
ロリって子供だから実行力がないというか
少なくとも拉致監禁みたいな力業は無理だと思うんだよな
できることって薬盛ったりするぐらいか
超能力というか催眠術でも身につければ話は違うだろうけど

30雌豚のにおい@774人目:2013/10/05(土) 09:00:55 ID:wlrcCGbU
そんなあなたにロリババア

31雌豚のにおい@774人目:2013/10/05(土) 10:51:30 ID:qQRSMBiA
>>29
その昔、「狂った果実」というゲームがあってだなぁ
詳細はググればわかるが…

まあ要するに、ロリにはロリなりの戦い方がある
その愛らしさの裏側に隠蔽された残酷性は、なにかしら成人ヤンデレにはない「美しさ」があると思うよ

32雌豚のにおい@774人目:2013/10/05(土) 12:58:03 ID:/XuqJiW.
子ども故の残酷さみたいなのと結びつくと、ロリヤンデレはいい感じに怖美しい感じになりそうだなー。

成人、と言うかある程度ものの道理が分かる年代のヤンデレになると、常識やモラル、その時の状況と自分の気持ちとの板挟みが魅力的だが。

ロリだとソレが無いってのを美しく描ければ良いんだろうなー。

どうしても鬱展開になるし、俺にゃその才能がなさげなのが難だが。

33<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>:<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>
<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>

34雌豚のにおい@774人目:2013/10/05(土) 22:10:16 ID:9YSgdaeg
任せとけ

35<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>:<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>
<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>

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40雌豚のにおい@774人目:2013/10/06(日) 01:14:15 ID:iON80yjo
ヤンデレ借金取りが借金の肩代わりとして男を手に入れる話を思いついたんだが、需要ある?

41<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>:<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>
<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>

42<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>:<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>
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49雌豚のにおい@774人目:2013/10/06(日) 20:30:50 ID:4lixmhfc
いやいやお前ら、ねだるなら自分で書こうず。

ところで、一瞬「夫を得るためならどんなことでもする習慣のある国から来た女性が日本の男に惚れて……」という妄想をしたが、
ヤンデレでもなんでもねーな、コレ。精神的に病んでねーもん。

文化圏の違いによるすれ違いってぇのは、面白い題材かもしれんけど。

50雌豚のにおい@774人目:2013/10/06(日) 20:47:53 ID:03R05InM
>>49
アマゾネスだな

51雌豚のにおい@774人目:2013/10/06(日) 21:20:55 ID:NL97LgJw
>>49
こっちの文化圏ではそれが異常であるということを学んで、かつ男側もそれを異常だと忌避したのにそれでもなお異常な手段を用いるならヤンデレといえるだろうな
当初は悪意無く違法な手段で距離をつめることが出来たのに途中でそれを禁止され奪われるからむしろヤンデレ一直線だ

52<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>:<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>
<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>

53雌豚のにおい@774人目:2013/10/06(日) 21:56:45 ID:AM2i0BPY
ほのぼのヤンデレは男の態度でなんとかなる気はする。
想像してみると重度の共依存カップルだなー

54雌豚のにおい@774人目:2013/10/06(日) 22:28:23 ID:eZ1EFSuU
クソボケ連投野郎がいますねたまげたなぁ

55<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>:<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>
<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>

56雌豚のにおい@774人目:2013/10/07(月) 03:00:41 ID:GL6S6lR6
男側が重すぎる愛をどれだけ受け入れてそれに応えられるか、に帰結するな
でも受け入れるばっかりだと暴走したときに歯止めが利かなくなるから時には止めることも必要
その辺のさじ加減が難しい

57<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>:<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>
<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>

58雌豚のにおい@774人目:2013/10/09(水) 19:36:41 ID:.tYLrMgM
なーんか2ちゃんをだらだら眺めてたら

八百屋お七っていうのが俺のアンテナに引っかかったんだけど
これもヤンデレになるのかな
話だけ見るとヤンデレっぽいけど

59雌豚のにおい@774人目:2013/10/09(水) 19:49:28 ID:kJRxFABE
ヤンデレじゃないの?
ここの保管庫かどっかにそれ元にした短編ssあったと思う

60雌豚のにおい@774人目:2013/10/09(水) 22:54:55 ID:SPXa6SkM
お七は、内角やや高め直球ストライクのヤンデレでしょう
前田敦子のアレは知りませんが

会いたいがために町に火をつけるなんてどうかしてる
飼い猫が不調の時にお兄ちゃんが優しくしてくれたからって、何度も飼い猫に毒を喰わす義妹みたいでわないか

61<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>:<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>
<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>

62雌豚のにおい@774人目:2013/10/09(水) 23:52:11 ID:k10CjXlc
ただし、彼はヤンデレにさえモテません
とかいうラノベは結局ヤンデレだったそうで

63雌豚のにおい@774人目:2013/10/10(木) 00:20:03 ID:HxWlT8CM
>>62

ヤンデレとしては初歩の初歩だな

64<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>:<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>
<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>

65雌豚のにおい@774人目:2013/10/10(木) 05:19:24 ID:.HtVv4ic
人にもよると思うが
あんまりクレクレしてると
俺はやる気なくすぞ
書いてほしいんなら
書き手のやる気を煽るような
ネタなり発想なり提供しないと無理だろ

66雌豚のにおい@774人目:2013/10/10(木) 06:26:17 ID:kSo9UJPc
>>60
猫が可哀想だからやめてー
妹本人がやるならいいんだけど
てことでこんなの考えた

幼少時に両親が留守で兄が妹の子守り中にちょっとよそ見をしたら
妹が家にあった劇物を飲んでしまい
時々体が麻痺する後遺症が残ってしまった
兄は自責の念にかられ、以後とにかく妹を一番大切にする人生を送る
妹は優しい兄が大好きになり
体が悪くなったことは、気にしないどころかむしろ感謝すらしていた
で、その後はまあ予想通り
実は妹は十数年後には麻痺することもなくなり全快するんだけど
それを知られたら兄が離れてしまうから黙っている
それどころか兄の周りに彼を好いている女の存在を感じると
影で自ら劇物を飲んで兄の前で倒れて見せ
「私がこんな体になったのはお兄ちゃんのせいなんだよ?」
とアピールし、兄を束縛し続けるのだ


どっかで誰かが書いてそうなネタだなこりゃ

67<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>:<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>
<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>

68雌豚のにおい@774人目:2013/10/10(木) 13:57:40 ID:o5V9vUyI
ヤンデレが男が自分の物になるまでタイムリープし続ける話を考えたけど、ヤンデレならリープせずとも実力行使するだろうし誰視点で書けばいいのか分からんくなって終了した
ただのタイムトリップならいけそうだけどね

69雌豚のにおい@774人目:2013/10/10(木) 16:58:44 ID:kSo9UJPc
時関係とかパラレルワールドとか
上手く話作れれば面白そうなんだけどな
なかなか難しいわ

70雌豚のにおい@774人目:2013/10/10(木) 17:27:38 ID:wxFTNmqQ
ヤンデレが未来の国からはるばると机の引き出しからやってきて、ってわけにもいかないしなぁ。

71雌豚のにおい@774人目:2013/10/10(木) 20:54:06 ID:ecpjq.xI
それ未来日記じゃないんですかね・・・

72雌豚のにおい@774人目:2013/10/10(木) 20:54:21 ID:ecpjq.xI
それ未来日記じゃないんですかね・・・

73<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>:<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>
<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>

74雌豚のにおい@774人目:2013/10/10(木) 21:58:01 ID:NrMqqZHk
>>71
あれは上手くやってたな
でもあれ由乃以外ヒロインが居ないから……

75雌豚のにおい@774人目:2013/10/10(木) 23:28:36 ID:o/32/Li2
>>66
>飼い猫が不調の時にお兄ちゃんが優しくしてくれたからって、何度も飼い猫に毒を喰わす義妹みたいでわないか

ワリィ分かりにくかったかな
コレ「メモリーズoffそれから」に登場するキモウト、縁のイベントね。彼女に悪気はなかったので嫌わないでやってね
つか動物虐待はさておき、「自身の不幸」を武器に男をがんじがらめにするのは、ヤンデレ初期の基本技の一つだよな

子供の頃に兄をかばって脚を怪我した妹が、もうとっくの昔に完治しているのに、わざと脚ひきずって歩いてみせるとか
「絶対に妹を守らないと」とひとり唇を噛みしめる兄の陰で、口角釣り上げてニヤリ笑いするキモウトとかもう最高

つか>>66君、書き給へ ぜひ君のネタでSS書き給へ

76<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>:<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>
<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>

77<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>:<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>
<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>

78<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>:<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>
<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>

79雌豚のにおい@774人目:2013/10/11(金) 01:44:36 ID:tc.N1.E.
それ究極のヒモ人生だよなー、なんて身も蓋も無いこと思ったり。

80雌豚のにおい@774人目:2013/10/11(金) 03:17:08 ID:u76LR0yA
>>66
そのネタは凄くいいんで待ってますね

81雌豚のにおい@774人目:2013/10/11(金) 07:09:34 ID:kgjxlVtA
>>60
それ読みたい。
くそ猫も死ぬヤンデレ作品最高じゃないですか。

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90雌豚のにおい@774人目:2013/10/11(金) 22:42:36 ID:kGHMs6xU
監禁ネタは自分も妄想してるが、その気はないのに
なぜか捕食ルートに突入してしまう
グロは苦手なはずなのに…

91<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>:<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>
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92雌豚のにおい@774人目:2013/10/11(金) 23:41:04 ID:hiNYNMpc
捕食を、捕食(性的な意味で)に変換すると、ルート変換いかないかしら?
マジメな話、監禁ってリアリティ追及すると無理出てくるんだよなー。
男をどうやって警察とかから隠し通すのとか、生活費どうするとか。
なので、監禁ネタ考えてると、男=(家から一歩も出ないだけの)主夫にジョブチェンジしてる。
それが監禁なのかはさておき。

93<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>:<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>
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94雌豚のにおい@774人目:2013/10/12(土) 02:28:51 ID:cg9yebPA
なろうでヤンデレ家族の作者の人が最近ちょこちょこと短編あげてるな

95雌豚のにおい@774人目:2013/10/12(土) 13:38:25 ID:LcPsLMDg
自分のサイトで家族の続編というか
別主人公の話も上げてる

96雌豚のにおい@774人目:2013/10/12(土) 17:06:25 ID:XuP6eCqE
ID:SN7eoy86
キモイから連投するな

今期アニメで機巧少女は傷つかないってのがあるんだが
ヒロインがヤンデレ属性持ってる。ハードではないが
スレチですまんが最近ヤンデレ不作だし同好の志に伝えたかった

97<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>:<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>
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98<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>:<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>
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99雌豚のにおい@774人目:2013/10/12(土) 18:22:13 ID:VdoTDd7c
本スレに投下あったよ

100雌豚のにおい@774人目:2013/10/13(日) 20:33:07 ID:IeB40MPY
>>96
まじでか、チェックしとこう
アニメでやる回の中に病み要素強めのエピソードってありそう?

101 ◆STwbwk2UaU:2013/10/14(月) 01:10:24 ID:OilDzLV.
てすてす

102 ◆STwbwk2UaU:2013/10/14(月) 01:11:28 ID:OilDzLV.
華麗に101ゲット!
埋めに間に合わなかったから、無差別爆撃しよう

103勇者さま! ◆STwbwk2UaU:2013/10/14(月) 01:12:44 ID:OilDzLV.
強い風が、土煙を伴って俺の頬を打つ。
うつぶせに倒れていた体を起こし、口の中にたまっている土を吐き出す。
半乾きの頭をかきながら立ち上がり、俺はゆっくりと坂上の村を目指した。

頭が血でベットリしてて、上から血を被ったように衣服が濡れていることを鑑みるに、
今回の俺の死因は撲殺。俺の記憶が無いことから、背後からの一撃死。相手はトロル……多分。

――勇者ゲオルグ、774階にてトロルの攻撃に倒れる。
笑えない冗談だ。しかしこれが事実なのだからもっと笑えない。
ため息を吐いて村への道を歩いていると、放牧中のおじさんに声をかけられた。

「おうボウズ!今日も失敗かよ!」

血まみれで意外とスプラッタな格好だというのに、おじさんはまったく気にもとめない。
100回以上死んでるから見慣れたんだろうか。
というか、実にいい笑顔だ。なぜかイラっとする。

「…そうだよ。失敗した。次は成功する。」

俺のムスっとした返事に対して、豪快におじさんは笑い飛ばし、放牧に戻った。
――ついてない。本当についてない。
本来なら、あんなところで死ぬはずじゃなかったのに……
ブツブツと過ぎ去ってしまった未来に文句を垂れていると、向こうから女性が歩いてきた。

「あら、ゲオルグさん……失敗したんですね………」

俺を見つけて嬉しい表情をするが、頭の塗料で何が起きたか理解したようだ。
俺の頭を恐る恐る触りながら、金髪の美女ことシスター・ジネットさんは尋ねてきた。

「あの…痛くないですか?治療いたしましょうか?」

美女に心配されるというのは悪くない。非常に悪くない気分だ。
しかしそれ以上に、美女に失敗したところを見られるというのは、非常に……気まずい。

「全然大丈夫です。死ねば全快ですし!もー元気元気!……というわけで…」

空元気を見せつつ、そそくさと宿に戻ろうとする俺。逃げているわけではない。
これは、戦略的撤退である。
しかし、謎の力が俺を逃さなかった。その力は俺の手から感じる。
ついに俺も勇者としての力が―――!

104勇者さま! ◆STwbwk2UaU:2013/10/14(月) 01:13:54 ID:OilDzLV.
「…待ってください。私から……逃げないでください。」

謎の力の正体はジネットさん。勇者の力では有りませんでした。
しかも俺の行動を看破。なにこれ。

「べべべ別に逃げてないです。俺はこれから風呂入ってメシ食って明日にそなええ"え"」

言い訳をさせてもらおう。俺は別に吃音症ではない。
予想外のことが起きたのだ。

「ゲオルグさん……ん…こんなに怪我して……」

美女に、横顔を舐められた。
仄かに暖かく、しっとりとした感触がこめかみに当たる。
チロチロと動くその物体に、俺の股間にある伝説の剣は真の輝きを取り戻しそうになった。
慌ててジネットさんの肩を掴み、自分の正面に立たせる。

「ななな…っ!何してるんですかジネットさん!」

自分の顔の温度が上がっている。しかし目の前のジネットさんも結構真っ赤である。

「あ…いえ、その……消毒を……そう!消毒をしたんです!」
さっき全快といった俺の言葉は、なかったことになった………
若干目頭がじわっと来る。

「あ!いえそうではなくて!あのそのつまり!これはですね!――」

―俺はここからさらに帰るタイミングを失い。
ジレットさんの言い訳を数時間聞くはめになった。


「……つまり、寂しすぎてついカッとなってやったと。」

「…お恥ずかしい限りです。」
夕暮れが迫る道端にて、血まみれの勇者と教会のシスターは話し合っていた。

目を回して言い訳をするジレットさんを落ち着かせ、事情を聞いた。
するとなんと、俺がいなくて寂しかったというのだ。
さらに俺が素っ気無い態度を取るので、頭の中が真っ白になったという。
美女に想われるというのは、なんと心地よい事だろう!
それがシスターとしての優しさであるという現実さえなければ、これほど嬉しいことはない。
…ああ、自分で言っていて嫌になってくる。

「それじゃ、また明日会いましょう。出発前に顔を見せますね。」

押し寄せる自己嫌悪の波に耐えつつ、俺こと勇者ゲオルグは颯爽と立ち去ることにした。

105勇者さま! ◆STwbwk2UaU:2013/10/14(月) 01:15:34 ID:OilDzLV.
「はい…また、その、また明日!」

ジネットさんも平時の笑顔を取り戻し、俺を見送ってくれた。

―――
――




家につくなり裸になって風呂にはいる。
既にカピカピになった血を洗い落とし、湯船に浸かると全身から疲れがあふれた。
「ふぃい……風呂はいつも気持ちいいもんだな…」
そう独りごちながら湯けむりに烟る天井を仰ぎ、今までのことをふと思い出す。


――俺がここ、いや、故郷に帰る前は、魔王を討伐するために旅をしていた。
世界の悪や魔物を倒し、人々の平和を守るためにいろいろな場所で戦っていた。
そして、あとは魔王の城へ攻め込むだけとなった段階で、俺は故郷が恋しくなったのだ。
―そりゃきっと、誰でも死ぬかもしれないと思ったら会いたい人がいるだろう?
だが、俺は故郷に戻って唖然とした。
俺の故郷が、俺の生まれ育った村が無いのだ。
村があった場所は一面の荒野。
俺は荷物を思わず落とし、その場で崩れ落ちたのをよく覚えている。

―では、今ここにある故郷はなんなのか?
俺もそれがわからない。
気づいたら村のはずれで倒れていたのだ。
どうやって村にたどり着いた…いや、村が現れたのか…そこだけすっぽりと記憶から抜けていた。
ただ、眼前に広がるのは…
かつて親しくしていた村人と、変わらぬ自然と、変わらぬ自宅であった。
唯一変わっているとするならば、
ここが地下数百、数千にも及ぶ『ダンジョンの最下層』ということだけだった。

「…少し長湯しすぎたかな」

体を拭きながら、少しボーッとする頭を冷やす。
―明日こそ、あのダンジョンを攻略しないとな………

106勇者さま! ◆STwbwk2UaU:2013/10/14(月) 01:16:31 ID:OilDzLV.
夜着に着替えて寝酒を嗜んでいると、コンコン、と扉が叩かれる音が聞こえた。
寝ようとしていたところへ深夜の来客が来たことに若干の怒りを感じつつ、扉を開けると、
何故かジネットさんがいた。
しかも夜着。

「な、なんのようですか?」

ジネットさんの夜着は、なかなかにフリルの付いたかわいいワンピースであった。
しかし、ジネットさんのスタイルにより、それは『かわいい』から『エロい』に変換されてしまっている。
思わず俺は顔を背ける。顔は今赤くないだろうか?

「あ、あの…明日出てしまうんですよね?」

モジモジとするジネットさんエロ…かわいい。
思わず背けたはずの目が、ジネットさんのおっぱいをチラ見してしまう。
「はい、明日こそ最後にしたいですね。」
若干上を向いて、キリっとした顔つきを作る。

「でででですからあの、もうちょっと話したいなって……ダメ…ですか?」

―おおシスターよ、お酒が入っている男の家に来るとはなんということじゃ。
頭の中で王様の声が反芻される。
つまりこれってアレなのか?俺のことが好きなのか?ヤっちまってもいいのか?
いやいやいやシスターに手を出すとかそんなこと許されるわけ…

「……ごめんなさい。迷惑でしたよね…」

ショボンとした顔をジネットさんが俺に向ける。
だが、淑女がこんな時間にいてはならない。
ならば俺がやらなければならないこと…それは……

「いえ全然問題ないです。汚い家ですがどうぞ」

…口が勝手に動いていた。俺の決意はどこに行ったんだろうか。
ジネットさんの上目遣いの涙目は卑怯である。
白い歯をキラリと光らせて、家に招き入れてしまう俺も大概だがな。


―――
――


107勇者さま! ◆STwbwk2UaU:2013/10/14(月) 01:17:44 ID:OilDzLV.
「――それで、お話とはなんでしょうか?」

ジネットさんに、まだ風味が消えてない俺の家では上質な紅茶を入れ、
俺はジネットさんとテーブルを挟んで向かい合っていた。
ジネットさんも紅茶を飲んだせいか落ち着き、
意志のある瞳を俺に向けていた。

「はい、明日もダンジョンへ向かうのですよね?」

ジッと俺を見ながら、ジネットさんは静かに言う。
しかし聞いている内容は、ここにいる村の人なら誰でも分かるような事だ。
俺は戻ってきたら、ほぼ間髪入れずにすぐダンジョンへ向かっているのだ。
なんで今さら?という気持ちがないでもない。

「もちろんです。ここから皆を救い出してやらなければならないので。」

―とは言ったものの、具体的にどうやって救うかは決まっていない。
ただ、突破さえすれば俺はこのダンジョンを自由に行き来するくらいの強さがあることになる。
そして外から応援を呼べば、もしかしたら村人を救うことができるかもしれない。
強くて、俺の頼みを聞いてくれる奴に1人だけ心当たりがあるしな。

「それなんですが……その……」

急にジネットさんの表情が曇る。
さっきのちょっとした迷いが顔に出てしまい、ジネットさんを不安にさせてしまったんだろうか?
だとすれば勇者失格である。

「大丈夫ですよジネットさん。俺は絶対にダンジョンを抜けて、皆を助けます。」

必殺の勇者微笑みを使い、ジネットさんを見る。
どうだジネットさん!俺の微笑みに安心感を得るがいい!

「ち………違いますっ!」

ジネットさんは 勇者を 否定した!
俺は心に大ダメージを受けた!

「はっ…いえ違うんですゲオルグさん!わわ私そんなつもりで言ったんじゃ……」

ジネットさんは俺を見て何やら必死に弁解しているわけだが、
俺は今どんな顔をしているというんだ。
若干視界が歪んで見えにくい。

「わ、私、私は、ゲオルグさんに無理をしてほしくないんです!」

ジネットさんは顔を真赤にして立ち上がった。
どう無理をして欲しくないか分からないが、激昂するのだけは勘弁していただきたい。

108勇者さま! ◆STwbwk2UaU:2013/10/14(月) 01:18:33 ID:OilDzLV.
「俺は無理なんか全然して……おわっ!?」

数少ないティーカップが音を立てて割れ、ジネットさんは俺の胸の中に飛び込んできた。
縋るように、俺の胸に抱きついている。

「私、ゲオルグさんに死んでほしくないんです!
 ゲオルグさん、もうダンジョン攻略なんてやめましょう?
 死んだら生き返るなんて保証はどこにもないんですよ!?
 もう出れなくていい。ずっとこの場所のままでいい。
 ゲオルグさんがここにいるだけで、私はそれでいいんです!
 ゲオルグさんが諦めてくれるなら、私はどんなことでも……!」

ジネットさんが、堰を切ったように話しだした。
どうやら、俺があまりに不甲斐ないせいで心配ということらしい。
…そりゃ何百回も死んでれば不安にもなるだろうな。

「ジネットさん、落ち着いてください。」

ジネットさんの肩を持ち、少し体を離す。
そしてジネットさんの涙で濡れた瞳を見て、俺は話した。

「俺は、絶対に大丈夫です。ジネットさんの為に、もう死んだりしません。
 諦めないでください。俺が絶対になんとかして見せますから。
 俺は勇者です。皆の信頼を裏切ったりしません。」

諭すように、心に染み込ませるように言う。

―もう、ジネットさんも心が限界なのだろう。
ここに閉じ込められてはや数ヶ月。気が狂ってもおかしくない。
故郷の奴らも平常運行しているが、きっと恐怖にやられてアタマがおかしくなったんだろう。
閉じ込められてるのに、のんびり放牧とか正気の沙汰ではないはずだ。
もはや一刻の猶予もならない。
あのダンジョンを攻略しなければ………

「…より…の……んですね…」

ジネットさんが何かボソボソといっている。
きっと「ゲオルグさんステキ!」とかそういうことだろう。
よって、俺は耳を傾けてみた。

「……私より外のほうがいいんですね。私がこれだけお願いしても貴方は全く聞いてくださらない。
 貴方は私のことがお嫌いですか?私はこんなにも貴方のことを想っているのに。
 私はここがいいと言っているんです。私は貴方の側がいいと言っているんです。
 外と繋がってしまえば、貴方が外に出てしまえば戻る保証なんてないじゃないですかそうでしょう?
 勇者の使命とか勇者の矜持とかそんなのに騙されたりしません私は貴方が勇者じゃなければいいとさえ思ってます。
 なんで貴方が勇者なんですか?なんで貴方がダンジョンに挑むんですか?なんで貴方が外に出ようとするんですか?
 諦めてくださいゲオルグさんもうここから出られないんですお願いしますここから出ないでください。
 もう貴方と私がいればいいじゃないですか他に何も望まないでください私は貴方以外望んでいませんから
 だから私と一緒になりましょう?私と一緒にここで暮らしましょう。私と一緒に…私と……」

耳を傾けたことを、俺は心の底から後悔した。
俺の伝説の剣はさっきまでちょっと輝きを取り戻しつつあったのに、今のコレのせいで封印されてしまった。
なんなのこれもうジネットさんの心が限界だよ限界。
俺の心も限界だよ痛恨の一撃だよもう。

「……ジネットさん、今日はもうお疲れのようですし、帰りましょう。」

ブツブツいうジネットさんをお姫様だっこし、ドアまで向かう。
ガイアが俺に囁いている。もうこのシチュエーションからベッドインは無理だと。

「…ふぇっ?……はっ!?」

ジネットさんがお姫様だっこされたことで正気を取り戻し、可愛らしい声を上げる。
できればもっと早く聞きたかったです。

「あ…あの……ゲオルグさんっ!?」

ジネットさんの疑問の声を無視して、ドアの外までお姫様だっこし、そっと優しく地面に下ろす。

「それじゃ、ジネットさんもいい夢を……」

出来る限り紳士のスピードを保ち、ドアを早く締める。
「あ…」という声が聞こえた気がするが、きっと気のせいだろう。

―――
――


109勇者さま! ◆STwbwk2UaU:2013/10/14(月) 01:19:04 ID:OilDzLV.
外からのノックが聞こえなくなるまで1時間。
俺は酒を浴びるように飲むことにした。
飲まないと恐怖でチビりそうになるからだ。


―ジネットさんも、随分変わった気がする。
昔はもっと、優しく微笑む………微笑む?
あれ?ジネットさんって昔からいたっけ?

――昔のジネットさんが思い出せない。

―でもこの故郷にはジネットさんがいる教会があって…え?
教会なんてあったっけ?
わ……わからなくなってきたぞ。酒を飲み過ぎたのか?

グルグルと思考が渦巻く。
自分の感覚では、ジネットさんが昔から居たはずなのに、
なぜか肝心の記憶が無いのだ。
どういうことなんだと自分を問い詰めるも、タイムアップの時間が来てしまった。
酔いが回って、眠い。

きっとあしたには、何か思い出が出てくるだろうと信じて、俺は寝ることにした。
ちなみにノックが聞こえないように、枕を被った。


―――
――


110勇者さま! ◆STwbwk2UaU:2013/10/14(月) 01:19:42 ID:OilDzLV.

―いつまでもゲオルグ様が出てこず、イビキが聞こえるのを確認して、私はノックをやめた。
疲れているのに、こうまで押しかけてしまった自分が情けなく思う。
あまつさえ、寝るジャマまでしていたのだ。
明日、私はどんな顔でゲオルグ様に会えばいいのかわからなくなる。

私は溜息とともに踵を返し、教会に戻ることにした。


―教会は、昼までの雰囲気と打って変わり、怪しげな空気を作り出していた。
教会に入ると、私は何の躊躇もなく十字架が掲げられた正面の壁に歩を進める。
目の前に壁が迫ってきても緩めることはない。
やがて私の体が壁に触れると同時に、教会は飲み込まれるように捻れて空間ごと消え、
代わりに眼前に広がるのは、有機的な機械と沢山の悪魔たち。

そう、私はゲオルグ様の最も忌むべき存在。
私はサッキュバスであり、この空間を司る者でもある。

目の前の悪魔たちが私に傅く中、私は今回ゲオルグ様を仕留めたトロルを呼び寄せた。


「お前か、今回ゲオルグ様を仕留めたという者は。」

極めて冷淡に、機械的に目の前の下等生物に聞く。
トロルはゲヒヒ、という下衆な笑いを浮かべ、意気揚々と仕留めた状況を報告する。
下等生物らしく、どう考えてもありえない誇張が何度も何度もあったが、簡潔にすると…

『勇者が回復する隙を狙って後ろから撲殺した。』

…ということだった。

何という屈辱。
何という無念。
ゲオルグ様はこんな屑に、無残な殺され方をしたというのか。
正面から斃されたわけでもない。
死力を尽くして道半ばで尽きたわけでもない。
ただ、後ろから殴り殺されたという理不尽な死に方。

―ゲオルグ様に相応しくない。

ふつふつと怒りが湧き上がる。私の手がより力強く握られる。

「良いだろう。貴様に褒美をやる。」

私はトロルの前に進み出る。その手には愛用のムチを持ったまま。
トロルは何の疑いもなく、汚い顔を更に歪めて褒美を待っているようだ。
いいだろう、褒美はくれてやる。それは貴様らとの契約だからな。
だが………!


スパァン!という音が建物全体に響き渡る。
私のムチは寸分違わず、トロルの首を撥ね飛ばした。

111勇者さま! ◆STwbwk2UaU:2013/10/14(月) 01:20:29 ID:OilDzLV.
「褒美の前に………貴様ごときがゲオルグ様を闇討ちした罪を、償ってもらおう。」

もはや首を飛ばされて動かなくなったトロルに、一振り、二振りとムチが入る。
そしてムチが入る度にトロルの残骸は跳ね上がり、細切れと化す。
そしてムチを振るう度に、感情が吹き出していく。
怒り、妬み、悲しみ、苦しみ……

――そう、そもそもお前ごときに殺されることがおかしい。
ゲオルグ様は勇者なのだから、最低でも魔王でないとおかしい。
むしろ魔王ですらゲオルグ様を殺す事は許されない。
なぜ、何故何故ゲオルグ様はこんな屑に殺されなければならないのか
そうだそもそも私が、私だけが手を下してもいいはずなのに
ここは私だけの空間、いや私と貴方だけの空間なのに何故………!

トロルはもはやミンチとなり、原型をもはやとどめていない。
それでも私は手を止められない。
ムチを振るい続ける。目の前の物すら認識しないまま。


――ならば私が殺す貴方を殺す貴方を殺したやつを殺す
そして貴方が殺す私を殺す貴方を愛しいと想っている私を殺す――


トロルはミンチどころか液状になり、液体と区別がつかなくなる頃に下僕の悪魔に止められた。
これ以上行うと、復活させることすらできなくなるからだ。
私は興奮していた自分の心を落ち着かせ、肉片にもならない物体に魔力を注ぐ。
液状の物体はやがて形を取り戻し、以前の肉体よりも力強い肉体へと変貌していった。
そしてトロルは以前より知性のある瞳でお礼を述べた後、その場を後にした。


私は褒美の儀が終わった後、椅子に座って下僕の報告を聞いていた。
どうやら、前よりも到達点が伸びているようで、このままでは2〜3日中に突破されかねないとのことだった。
ちなみに、私の迷宮の突破は、他の迷宮の突破とはまた意味が少し違う。
私の迷宮が突破されるとはつまり、女神の恩恵が届く範囲に勇者が出てしまう、ということだ。
この場合だと、地上から数えて1000階を突破されること。
そこから上に出てしまえば、もはやゲオルグ様の身は女神に囚われることとなり、
二度と私の元には戻ってくることはないだろう。
そして、私のことを悪魔と知り、私を憎むだろう。私を殺しに来るのだろう。

―少し、身震いがする。

殺されることに対してではない。
私が、私の気持ちが反転し、ゲオルグ様にとって唾棄すべき存在へとなってしまうことが怖い。
例え偽りでも、全てが幻でも、私はゲオルグ様をここに置きたい。
その為には、今の迷宮を更に深く、魔物を強くしていかなければならない。
つまり、迷宮の深さこそが私の愛の深さであり、
迷宮の魔物の強さこそが、私の愛の強さであるのだ。

だから私は迷宮をさらに深くする。
決して、誰の手にも渡さない。


私の、私だけの勇者様を。

112勇者さま! ◆STwbwk2UaU:2013/10/14(月) 01:21:16 ID:OilDzLV.

――
―――
砂埃が舞う地面の上に、一人の少女が座っていた。
体を覆う簡易な鎧と、その身に似合わぬ大剣を隣に刺して。
少女の背にはドラゴンのような翼があり、尻には太い尾が生えていた。
少女は尻尾を振りつつ何かに悩んでいたようだが、
急に尻尾で地面を叩くと、立ち上がって大剣を掴んだ。

「見えた……ここが綻びだ。」

少女は剣を振りかぶると、虚空に向かって全力で剣を振り下ろした。
剣を振り下ろした先から、空間が割れ、やがて巨大な穴が姿を現す。

「ゲオ………待ってろよ、今助けに行くからな。」

少女はそう独りごちると、穴の闇の中に飛び降りた。

113 ◆STwbwk2UaU:2013/10/14(月) 01:21:57 ID:OilDzLV.
投下終わりー
あー冬が近いなー

114雌豚のにおい@774人目:2013/10/14(月) 06:41:25 ID:8WxKvKQ2
>>113
GJ
俺ならなんの迷いもなく
ダンジョンにいるんだろうなー

115雌豚のにおい@774人目:2013/10/14(月) 10:47:42 ID:Wq4iyEMs
乙です

サキュバスか。
ビッチ臭ハンパねえな。

ドラゴニュートさん早く助けに行くんだ!

116雌豚のにおい@774人目:2013/10/14(月) 18:56:47 ID:4Fe/hoNw
乙です
規模のでかい監禁だな

117雌豚のにおい@774人目:2013/10/14(月) 21:46:41 ID:OilDzLV.
まとめwiki管理人さんへ
今更ですが「栄光を君へ」を自分と関係付けといてください。
あと魔王さまの作り方を凍結お願いします。
あの描写を続ける気力体力がありません。

>>115
屋上

118雌豚のにおい@774人目:2013/10/14(月) 23:24:05 ID:MnxId1pU
ぐっじょぶです

119雌豚のにおい@774人目:2013/10/15(火) 11:22:48 ID:XXuS/lMQ
◆STwbwk2UaUじゃないか!
あなたの作品大好きです。今は時間ないんで帰ってきてから読むが、楽しみだなぁ
にゅむうにゅわふうとか、天使と悪魔とか、ほんとにいい作品が多い
頑張ってください。あなたの作品すごくたのしみにしてるので

120雌豚のにおい@774人目:2013/10/15(火) 11:34:04 ID:hiOzKXSY
>>117
俺は管理人さんじゃないですが、そういうのは、保管庫の『連絡・要望用掲示板』に言った方が良いと思いますよ。

こちらと保管庫の管理人さんは別の方だそうなので、保管庫のことは保管庫の方に言わないと、保管庫管理人もわからないと思います。

書かない作品は…まぁ、未完の作品は他にたくさんあるので、それらと同じくそのまま放置、でもいい気もしますが。


俺も書かないとなー、自分の作品。

121雌豚のにおい@774人目:2013/10/15(火) 11:36:41 ID:XXuS/lMQ
間違えた
にゅむうは違う人だったわ。俺が言おうとしたのはneXt2nExtだ

122Wikiの中の人 ◆hjEP2rUIis:2013/10/15(火) 18:18:43 ID:3Ynaptgg
    _, ,_  パーン
 ( ‘д‘)
  ⊂彡☆))Д´) >>117

だからそういう事は保管庫の掲示板に書いてくりって
何度も言ってるじゃないかあ ヽ(`Д´)ノ ウワァァン!!

って>>120も言ってたよ

今回はやっとくけど
次回以降は無視しちゃうぞ

123 ◆STwbwk2UaU:2013/10/15(火) 20:15:37 ID:CbqX7CSs
>>120
>>122
そ、そんなものがあったなんて…
次からはそっちで書くよ。ホントごめん。
wikiの中の人ありがとう!魔王なんてなかったんやっ!

>>121
まさか自分の作品好きな人いるとは思わなかった。
凄い嬉しいけど作品更新遅くてすまんな。
なんかティンと来ないんだわ。
あと自分の作品待ち遠しくしてるより、自作したほうがいいお。
自分の好きなシチュは自分が一番分かってるはずだし、
自分としても他の人の自慢の娘を見たいしね!

124<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>:<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>
<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>

125雌豚のにおい@774人目:2013/10/17(木) 02:08:54 ID:hkiJVcJo
み つ け た

126雌豚のにおい@774人目:2013/10/17(木) 11:44:10 ID:VPryYDOc
家に帰ったら全然知らない女の人が両親と談笑していた

母「あらお帰り。こんなお嬢さんどこで捕まえたの?」
父「お前も隅におけんなー。わしの若い頃そっくりだー」

とうちゃんかあちゃん、その娘いったい誰…?

127<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>:<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>
<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>

128雌豚のにおい@774人目:2013/10/17(木) 18:46:50 ID:bzhjyLes
それワイやで

129<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>:<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>
<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>

130雌豚のにおい@774人目:2013/10/17(木) 20:16:39 ID:A.gUxKYQ
ドラえもんねえ
家に来たのび太に帰ってほしくなくて
「帰れないように靴を隠しておくわ」
って言った女の子がいたな
後、裏山の精とかがヤンデレ要素ありかな

え?そういう話じゃない?

131雌豚のにおい@774人目:2013/10/17(木) 21:00:06 ID:bzhjyLes
ドラえもんの美少女ロボかなんかもヤンデレだったような

132雌豚のにおい@774人目:2013/10/17(木) 21:24:41 ID:BFPR01ZI
その話詳しく

133雌豚のにおい@774人目:2013/10/17(木) 21:49:16 ID:bzhjyLes
ボ子が愛してる   12頁 小四71年9月号
 ピーナッツの連続投げ食いを誉められ、女の子にコーチしてくれと頼まれたと言うのでしずかの家へ出かけるのび太。下らない事ではあるが、のび太本人が満足しているなら良い事とドラえもんも納得する。ところがスネ夫のゲームに誘われた女の子達はのび太を置いて行ってしまい、のび太はさりげなく笑って帰ってきたが、その辛い心中を察したドラえもんは未来から「トモダチロボットのロボ子」を連れてくる。
 あまりに可愛いロボ子を前にすっかり舞い上がってしまうのび太。どんな事でものび太をベタぼめし、のび太を手伝うロボ子にのび太はすっかり夢中になってしまい、さらに頬にキスまでされて幸せの絶頂に浸る。そんなのび太を羨ましがったジャイアンとスネ夫はのび太に石をぶつけてくるが、ロボ子は百万馬力の力を使って二人をメタメタにしてしまう。さらにロボ子は大変嫉妬深い性格で、仲直りにきたしずかやのび太がかわいがる犬にヤキモチを焼いてしまう。
 そして買い物の帰りが遅くなった事でのび太を叱るママをいじめと勘違いし、ママに襲いかかるロボ子。止むを得ず結局ロボ子は未来に戻り、仕方なくドラえもんが女装してのび太の友達になろうとするが、のび太は気持ち悪がるだけであった。

134雌豚のにおい@774人目:2013/10/17(木) 23:11:05 ID:PcXSunDI
藤子不二雄すげぇ、あの時代にこのプロットはすげぇ

でもラストはもう一捻り欲しかったなそれが後世へのバトンなのかもしれない

135<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>:<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>
<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>

136雌豚のにおい@774人目:2013/10/18(金) 07:30:10 ID:Vf8.LzgM
>>133
Fなら短編のマイロボットもヤンデレなロボットの話だな
ただ、見た目が完全に機械なのと
男女どちらかさえ不明なので
萌える要素は皆無だが

137雌豚のにおい@774人目:2013/10/18(金) 09:19:36 ID:9T0YQNxE
>>136
あのラストの後外見を美少女に変えて戻ってくるという妄想はする
製作者である主人公を愛するあまり自分を女性化してたらしいしなあのロボット

138雌豚のにおい@774人目:2013/10/18(金) 11:24:11 ID:6iRVT8vs
ロボ子といい雪の精といい裏山の精といいヤンデレに好かれる男ですなあのびた君は
なんかの劇場版でしずかちゃんがやきもち焼くシーンもあったな

139<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>:<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>
<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>

140雌豚のにおい@774人目:2013/10/18(金) 19:23:08 ID:jnMTixdY
http://i.imgur.com/9ddDMKe.jpg
http://i.imgur.com/6cSuiSr.jpg
ヤンデレではないかもわからんね

141雌豚のにおい@774人目:2013/10/18(金) 20:20:37 ID:x27ZOw0I
ドラえもんの雪の精は良かったな
設定とか大変そうだけどファンタジーとかSFとか増えて欲しい

142雌豚のにおい@774人目:2013/10/19(土) 06:22:54 ID:mKTczQpg
のびたを独占しようと町に大雪を降らせるたが、その雪のせいでのびたは風邪を引いてしまう
そのことで責任を感じた雪の精は熱にうなされるのびたの枕元に現れ、涙ながらに恋心を告白し
最後には自らが消えることでのびたの高熱を治した

143雌豚のにおい@774人目:2013/10/20(日) 14:22:20 ID:YI1t5RMQ
>>141
一長一短じゃないか
ファンタジーだと自分で設定いじくれるけど
現実の話だとあんまり無茶できないっていうか

144雌豚のにおい@774人目:2013/10/20(日) 14:57:04 ID:0zRmQDYY
女(ヤンデレ)→男(ヘタレ)←男(イケメンヤンデレ)
みたいなシチュ見てみたい
ヤンデレが協力しあってヘタレを堕とす感じで

145雌豚のにおい@774人目:2013/10/20(日) 15:02:02 ID:YI1t5RMQ
>・男のヤンデレは基本的にNGです、男の娘も専スレがあるのでそちらへ。

ってテンプレにあるから無理じゃね

146雌豚のにおい@774人目:2013/10/20(日) 17:21:45 ID:GDH3wVjc
男のヤンデレはちょっと……

147雌豚のにおい@774人目:2013/10/20(日) 22:11:34 ID:Kll2GoGg
>>143
ファンタジーだと、本筋に関係ないバックの設定も作り込まなきゃいけないないのが大変だよな。
下手打つと酷いご都合と言われかねないし。

148雌豚のにおい@774人目:2013/10/21(月) 04:20:49 ID:hFSX1C0U
>>147
分かる。
作り込めない自分はそろそろ死んだほうがいいと
SS書きながらたまに思うレベル。

149<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>:<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>
<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>

150雌豚のにおい@774人目:2013/10/23(水) 08:19:52 ID:COrJonPc
やっぱどんな形でも男ヤンデレは無理かー

151雌豚のにおい@774人目:2013/10/23(水) 10:28:13 ID:g9Q/Ylxg
読んだことはないけど、なろうだとヤンデレの男は結構あると思う

152雌豚のにおい@774人目:2013/10/23(水) 17:43:21 ID:lSxmkcsk
女性向けジャンルだと男ヤンデレの需要あるっぽいよ。
うろ覚えだけど、ヤンデレCDの男キャラ版があったような無かったような。

あと、少年マンガの美形ライバルキャラってときどき男ヤンデレいない?
『エンバーミング』がそんな感じだったと思うんだけど。
(ヤンデレという言葉はさすがに使われてないけど)

153雌豚のにおい@774人目:2013/10/23(水) 17:47:55 ID:Nh12/RjA
そりゃまあ需要自体はあるだろ
Twitterとか見てると
男ヤンデレが好きだという人結構いるぞ
大体が腐った人のようだがw

ただこのスレでは需要がないというか
基本お断りされてるってことで

154雌豚のにおい@774人目:2013/10/23(水) 20:07:06 ID:fLBYCc2U
男のほうがヤンデレじゃね?とか
寝取られ乙とか煽られたことありますけど
僕は元気です。

>>150
とりあえず書けばいいのよ。
属性がちげーよバカって言われたらごめんなさいっていって
素知らぬ顔で次の作品書けばおk

155雌豚のにおい@774人目:2013/10/23(水) 20:58:03 ID:rs8JlgR.
>>154
趣旨がちげーよバカ
作品の出来が酷いとかなら別に良いけど、違う属性書きたいやつがここで書くなよ

156雌豚のにおい@774人目:2013/10/23(水) 21:47:06 ID:iaf63YbM
寝取られSS書いてごめんなさい


お前相手だと洒落にならんな

157雌豚のにおい@774人目:2013/10/24(木) 01:17:37 ID:VZsINaWs
>>155
見せ方の一つとして、属性を混ぜるなんてよくある。
女(ヤンデレ)→男(ヘタレ)←男(イケメンヤンデレ)
これを例として、男ヤンデレのほうを女ヤンデレのサポートにするとか、
そういう前提でプロットを書くとこんなかんじになる。

男の幼なじみには二卵性双生児の双子が居た。
どちらも好きなもの、好みのものにはものすごい執着心を持つ。
兄は妹を溺愛し、妹を幸せにするならどんな事も厭わない性格をしていた。
妹もまた表面には出さないが、自分にとって大事なもの、この場合は男に当たるわけだが、
男を奪われないためにはあらゆる手段を陰で講じてきた。(いじめ、いやがらせ等)
兄も妹のそんな姿を見て、男となるべく一緒になれるように手を尽くす。

しかし男は思春期に入り、どこか拘束された雰囲気と、異性との交際の憧れから
別の女性と付きあおうとする。
それを察知した兄妹によって、
男は兄に「君は妹のことをどうするつもりだ?場合によっては手足を切るぞ」などと脅されたり
「私には貴方しかいないんです。捨てないでください」などと妹に懇願されたり、
あの手この手で絡め取ろうとしてくる。
しかし過去の妹の所業をしってしまった男はついに……

とかかな?
これなら男ヤンデレは行き過ぎた兄妹愛の一つとして、
さらにヤンデレとしての話は崩さずにいけるんじゃないかな。
他の属性もスパイスになることもよくあるし。
あと自分もヤンデレかつ純愛が書きたいので、正直>>155がぐさっときて死にそう。

158雌豚のにおい@774人目:2013/10/24(木) 06:28:08 ID:2e8riA92
ヤンデレで純愛
ヤンデレでツンデレ
ヤンデレが逆レイプ

別になんの問題もないだろ
メインがヤンデレなら他の属性持ってても
文句言わんがな

ただ、他の属性メインの話だったら
スレ違いだぜって言ってるだけで
↑の流れ見てると微妙に話が食い違ってて
ややこしくなってるぞ

159雌豚のにおい@774人目:2013/10/24(木) 08:40:42 ID:.0triZMw
>>157
155だけど、別にヤンデレ以外否定してるわけじゃないよ
ヤンデレで純愛とかクーデレとか問題ないし
ただ男ヤンデレNGのスレでわざわざそれ書く意味あんの?って意味
最初の前提が女ヤンデレと男ヤンデレが協力してヘタレ男を落とすって話なわけだし

160<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>:<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>
<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>

161雌豚のにおい@774人目:2013/10/24(木) 22:00:48 ID:9BK9d6HE
>>157
それ、
兄(ヤンデレ)→妹(ヤンデレ)→男(ヘタレ)
になってね?

162雌豚のにおい@774人目:2013/10/25(金) 21:36:05 ID:YkTftnXo
うーむ、いい案だと思ったんだが、やっぱホモホモしいのが混じるとNGか・・・
>>161
男がヤンデレて、かつホモホモしいのを避けたらこうなった。

163雌豚のにおい@774人目:2013/10/25(金) 23:57:36 ID:9qAaMDqU
>>160
ほととぎす…かな?

にゅむうにゅわふぅじょきんじょきん(間違ってたらすまん)ってやつもそうだった気がする

164雌豚のにおい@774人目:2013/10/26(土) 02:10:17 ID:ygCwY92o
男のヤンデレは趣旨が違うからどんな作品かおいといて描かない方が無難なんじゃね?

165<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>:<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>
<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>

166雌豚のにおい@774人目:2013/10/26(土) 08:22:34 ID:InbxoeNA
男の娘ヤンデレに未来は無いんですか…!?

167雌豚のにおい@774人目:2013/10/26(土) 09:33:42 ID:cLFbun0c
>>166
未来はあるだろうけど
このスレでは残念ながら無い

168雌豚のにおい@774人目:2013/10/26(土) 16:16:16 ID:ZKzDGzOs
ヤンデレ×ヤンデレの百合ものにしよう(提案)

いや、ココで同性愛モノがどの程度許容されるのかちょっと分からないけど。

169雌豚のにおい@774人目:2013/10/26(土) 18:01:12 ID:0Z.q83pM
>>166
個人的に見たいがこのスレは趣旨が違うのだよ…

170雌豚のにおい@774人目:2013/10/26(土) 19:24:02 ID:ENrJV0bY
【ヤンデレ七つの大罪】

嫉妬「あの女だれ?」
色欲「もう一回……しよ?」
憤怒「私だけって言ったじゃない!」
傲慢「私だけいれば十分でしょ?」
暴食「髪の毛おいしい」
強欲「あなたの全てが欲しいの」
怠惰「二人でひきこもって暮らしたい」

171雌豚のにおい@774人目:2013/10/27(日) 19:04:25 ID:CoerOiEI
>>166
男の娘ヤンデレ、マニアックだけどいいと思うなぁ……。
なんだったら専用スレ建てるとかね

172雌豚のにおい@774人目:2013/10/28(月) 08:55:49 ID:CwUDv7P.
このスレではないというかこのスレ自体未来がないような・・

173雌豚のにおい@774人目:2013/10/28(月) 12:54:33 ID:nFxSr4EM
二年くらい前から言われてたし、だいじょぶだいじょぶ
読む人が居る限り続く

174雌豚のにおい@774人目:2013/10/28(月) 14:10:38 ID:k/NTiBCQ
読み手から書き手になるとさらに良いぞ

175雌豚のにおい@774人目:2013/10/28(月) 14:17:10 ID:F7dVyeyA
一作ここに投稿した以降ヤンデレのネタが思いつかない・・・。
ここはちらほらと住民があげてくれているネタを使って書いてみるのも・・。
住民の妄想力がうらやましい。

176<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>:<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>
<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>

177雌豚のにおい@774人目:2013/10/28(月) 21:06:32 ID:OgrKj6xI
>>176
それ前に見た覚えがあるぞ
保管庫の短編にそんなのがあった気がする

178<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>:<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>
<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>

179雌豚のにおい@774人目:2013/10/28(月) 22:38:51 ID:OgrKj6xI
すまん、どこにあったんだかわかんなくなった
内容はだいたい>>176の通りだったんだが

180<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>:<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>
<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>

181雌豚のにおい@774人目:2013/10/28(月) 23:43:15 ID:cQS6.hzg
短編じゃなくて
怖いコピペじゃね?

監視カメラ
人暮らしをしている大学生の男がいた。
男が住んでいるのはごく普通のアパートだが、たまにおかしなことが起こった。
大学から帰ってくるとカーテンの形やゴミ箱の位置などが微妙に変わっている気がするのだ。
最近は誰かにつけられてる様な気もしてきた、流石に気味が悪くなってきた男は大学の友人に相談した。

男が「もしかして…ストーカーかな?警察に言うのが一番良いと思うけど…
警察は実際に被害が無いと動いてくれないって聞くしなぁ…どうしよ……。」
と困っていると、友人は「…じゃあ大学に行ってる間ビデオカメラで部屋を撮影しておいて、
もしストーカーが部屋に侵入してるのが撮れたらそのテープもって警察に行けば良いじゃん、
不法侵入してるわけだからさすがに警察も動いてくれるだろ。」
と具体的な解決策を提示してくれた、やはり持つべきは友!これは良い案だ!と思った男は
早速次の日の朝、部屋にビデオカメラを設置して録画状態のまま大学へ行った。

大学から帰ってきた男は焦った、久々に部屋に違和感がある、
「これは期待出来る、マジにストーカー写ってるかも…」と思いながらビデオの録画を止め、再生した。
しばらくは何も写らなかった。

しかし夕方になると、知らない女が包丁を持って部屋に入ってきたのだ。
「…!!!!!!」ビビった男はすぐに友人に電話をかけた、
「ヤッベー!写ってる写ってるストーカー写ってる!!!!」と若干興奮気味に伝え、
それからは録画を見ながら友人に内容を実況した。

「ゴミ箱漁ってるよぉ…」「今度は服の匂い嗅いでる…キメェ!!」
今までコイツは何回も来ていたのかと思うと
男は背筋が凍る思いだった。「これで警察も動いてくれるなぁ」と少しホッとしてると、
画面の中の女は押入れに入った。

「うっわ…押し入れの中入ったよ、しかもなかなか出てこない……」などと友人と喋っていると、
また誰かが部屋に入ってきた。
男は言葉を詰まらせた。
部屋に入って来たのは自分だった
そしてビデオの中の自分はカメラに近付き録画を止める。
そこでビデオは終わっていた。

182<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>:<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>
<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>

183雌豚のにおい@774人目:2013/10/29(火) 00:12:37 ID:sGK3GTbw
おお、それだ
サンクス

184雌豚のにおい@774人目:2013/10/29(火) 12:07:28 ID:NvDnTECI
いいね、これ

185<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>:<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>
<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>

186雌豚のにおい@774人目:2013/10/29(火) 18:38:19 ID:HqIUIAzw
マン・イン・ザ・ミラーとか、別世界への監禁系が親和性高いかな
あとはいつでも監視できるように遠隔自動操作型?

って、原作に思いっきり山岸由佳子がいるな
思えば彼女が生涯初めてのヤンデレ萌えだった
絶対恋愛成就しないと思ってたら、なにげに康一くんとハッピーエンドだったのも良かった

187<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>:<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>
<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>

188雌豚のにおい@774人目:2013/10/29(火) 23:05:11 ID:2nrA6Amo
ヤンデレでもハッピーエンドに到達可能っていう可能性の一例だな
・・・・・・大体の話で男側の器量が足りるかになるが

あと>>187、保管庫を自分で探してくれ
その方が思いがけない良作とか拾えて守備範囲が広がるぞ

189<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>:<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>
<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>

190雌豚のにおい@774人目:2013/10/30(水) 01:43:30 ID:7f0YkSl.
Llqpxr8E は最近スレに住み着いた一行レス荒らしだろう
管理人さんの裁定を待って、このまま構わないのが吉

191雌豚のにおい@774人目:2013/10/30(水) 03:05:29 ID:Bozcl9Lk
>>165
この流れで出すのはなんだが、触雷と現物支給

作者同じでタッチはほぼ同じ

192雌豚のにおい@774人目:2013/11/01(金) 11:10:02 ID:PWHiHbtI
>>188
康一君は由花子の為に失明しても構わないとか
言ったりする男だからなあ

他のヘタレ主人公には無理無理

193雌豚のにおい@774人目:2013/11/02(土) 02:53:21 ID:IQ4P9ztI
>>188
どうせそいつに教えないんなら黙っとけよそのくらい…。

「教えてくれ」なんて軽い感じで聞いてるだけなんだろうに、そんなマジで返答されても困るだろ?ちょい怖いわお前みたいなの

あんまのめり込みすぎるなよ…

194雌豚のにおい@774人目:2013/11/02(土) 15:17:27 ID:w04Ayncg
返答したら叩かれるのか…(困惑)
理論めちゃくちゃなんだよなぁ

195雌豚のにおい@774人目:2013/11/02(土) 15:30:07 ID:JXbjAZeo
一体どこがマジなのか

196雌豚のにおい@774人目:2013/11/02(土) 19:07:05 ID:XtiHAY8g
一行レス荒らしで、自分で探そうともしない教えてくればかり言う奴なんて碌なの居ないわ

197雌豚のにおい@774人目:2013/11/03(日) 09:42:17 ID:ONdIYfEQ
この前注意したのにまだやってんのか。これは故意だな
管理人さんなんとかしてくれないかな

198雌豚のにおい@774人目:2013/11/03(日) 18:42:13 ID:5rx.11Yo
あんまのめり込みすぎるなよ...

199<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>:<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>
<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>

200雌豚のにおい@774人目:2013/11/04(月) 03:04:05 ID:7mWUksLE
帰りを待っていてくれる女の子がいることは素敵なことじゃないか

少なくとも、家から出られないよりは。

201雌豚のにおい@774人目:2013/11/04(月) 10:53:15 ID:476EcXbE
>>194
正直返答の仕方の問題ってのは思うの

作品数なんてかなりのもんなのに探せは難しいだろw
中にはお前らみたいに暇じゃない奴もいるだろうしな

こんなんを荒らし認定、普通の反応みたいな環境なんだから需要が無いのは頷けるわ

202雌豚のにおい@774人目:2013/11/04(月) 12:22:59 ID:y.SWUFUk
どうでもいいけど日本語の使い方おかしいぞ

203雌豚のにおい@774人目:2013/11/04(月) 18:31:50 ID:Jld1nJf2
おっ大丈夫か大丈夫か

204雌豚のにおい@774人目:2013/11/04(月) 20:55:24 ID:CyRRCvOQ
なんとなーくネタ浮かびそうなんだけど
最後が困ってる
おまえら中途半端でもハッピーエンドと
ドロドログチャグチャの救いのないエンド
どっちがいいかね?

205雌豚のにおい@774人目:2013/11/04(月) 20:56:37 ID:Eg5tTdSA
無理やりな感じ好きじゃないから、どろぐちゃかな

206雌豚のにおい@774人目:2013/11/04(月) 21:52:24 ID:NEWvXPPk
>>204
個人的にはハッピーエンドかな。
それも、頭に「メリー」が付く奴。

207雌豚のにおい@774人目:2013/11/04(月) 23:38:06 ID:TGsUY7wk
>>204
中途半端になるくらいなら
どろぐちゃエンドの方が好き
てかヤンデレでハッピーエンドってあんまり無いよね

208雌豚のにおい@774人目:2013/11/05(火) 01:08:01 ID:vTulzk3.
>>204
どろぐちゃエンドの方かな
欲を言うと、両方見てみたいが

209<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>:<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>
<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>

210206:2013/11/05(火) 10:34:07 ID:EqYErPdU
あ、昨日書き違えた。
メリバも一応バッドエンド扱いなんだっけ。
個人的には歪んでいても救いがある話は好きなんだが。
>>209
個人的にはボクっ娘。
でもオレ少女の方がデレとのギャップが強そう。

211<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>:<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>
<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>

212雌豚のにおい@774人目:2013/11/07(木) 07:04:18 ID:lZDTlQ3g
今日俺の誕生日だったわけよ
で、ここにいる彼女に来てもらって
部屋でキャッキャウフフしてたんですよ
その時記念写真を撮ったんだけどそれがこれで
……いや、自慢したい訳じゃないんだよ
よく見てくれよ、ほれ

……な?
え? リア充爆発しろ?
だからそうじゃないんだって、押し入れを見てくれよ
な? 押し入れがわずかに開いてて写ってるだろ?髪の長い女
血走った目で部屋の中を睨んでて気持ち悪いのなんの
デジカメだったからそれすぐ見てからさあ、彼女が怖がっちゃって
押し入れ開けて確かめようって言ったんだけど
絶対に嫌だ怖いって言うんだよ
で、しょうがないから部屋を出てお前の所に来たわけだ

……なんでお前の所に来たかって?
だってお前霊能力あるんだろ
しょっちゅう自慢してるじゃねーか
だから早くその心霊写真を分析してくれよ

……え?
霊的なものを感じない? どういう事だ?

これは心霊写真じゃないって?
なーんだそうだったのか
アッハッハ、良かったなあ心霊写真じゃないんだってさ
じゃあ早速帰って、さっきの続きをするとしようか

……なんだよその目は
リア充死ね? いやもうすぐ死ぬ?
なに言ってんだお前





改編したがあまり変わらんかった

213雌豚のにおい@774人目:2013/11/07(木) 07:20:16 ID:At7s.GXw
あれだ、ストーカー的な側面だけが出てるから
ヤンデレの「デレ」部分がなりを潜めてるんだと思う
押し入れの女視点のモノローグとかが入ればそれっぽくなんじゃね?

214<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>:<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>
<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>

215雌豚のにおい@774人目:2013/11/08(金) 13:41:47 ID:mT45Y9VM
ヤンデレのデレが入って来て良い塩梅になってきてると思う。

やっぱりツンデレもヤンデレもデレは重要だよね。

ところで、話は変わるけど、悲恋ものの童話ってヤンデレになる可能性あるなーって最近思ったり。

原作版『人魚姫』とか、王子さまを海の底に連れて行っても許されるくらいの悲恋ぶりだし。

216<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>:<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>
<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>

217雌豚のにおい@774人目:2013/11/08(金) 20:09:37 ID:oBe6Rtl6
>>216

たしかにな

他の雌の匂いがついたら消毒という名目で舌で舐め回すのにな

218雌豚のにおい@774人目:2013/11/09(土) 11:05:05 ID:DSvpvMfk
ヤンデレにお持ち帰りとか
ホントうらやましいなあ

219雌豚のにおい@774人目:2013/11/10(日) 02:05:22 ID:mh.x12KA
零の眞紅の蝶がヤンデレ度高めな件

220雌豚のにおい@774人目:2013/11/10(日) 20:18:03 ID:KN/1QFjo
「わざとだって気づいてたんでしょう?」のくだりかい?
リメイクされてから台詞変わったのか分からないけど、アレはよかったね
百合属性が必要だけど

でも怖すぎてリメイクはもちろん、もう一度やる気にならない…

221雌豚のにおい@774人目:2013/11/11(月) 16:41:29 ID:SXvPp/q.
>>220
リメイクの追加EDで姉が本気出す

222雌豚のにおい@774人目:2013/11/11(月) 21:05:24 ID:eREAFVwE
>>221
姉ちゃん本気出しすぎだよな…
零は女性がちょっとヤンデレ気味なのが多いよな。特にラスボス側。
自分としては刺青のラスボスがクリティカルだったわ。
零華ちゃんマジ健気

223雌豚のにおい@774人目:2013/11/12(火) 13:50:51 ID:9XOBO8Nw
http://i.imgur.com/7nOsQhu.jpg

224雌豚のにおい@774人目:2013/11/14(木) 07:46:16 ID:X08s/ZBM
アイデアは浮かんだんだが
病むまで自分でも糞ツマランと思う話を
書かなければならなそうで気が滅入る

上手い誤魔化しかたってないかな

225雌豚のにおい@774人目:2013/11/14(木) 12:37:07 ID:aCTm2O8E
最初(アバン)に病んだところのクライマックスをドンと出して、どうしてそうなったのかを語っていく、とか。
あるいは本筋をやりつつほかに面白要素(トークとか)を入れるとか。
でも、ごまかしはごまかしだから、よほど上手くやらないと高確率でボロが出そう。

226雌豚のにおい@774人目:2013/11/14(木) 16:19:56 ID:X08s/ZBM
本筋とは関係ないサブヒロイン出して
修羅場らせようとは思ったんだが
脱線しそうだし、うーむ

227雌豚のにおい@774人目:2013/11/14(木) 16:34:18 ID:o61OvXC6
修羅場になってる時点で本筋やん

228雌豚のにおい@774人目:2013/11/16(土) 01:08:15 ID:R//Ijhq6
最近気がつけばヤンデレっ子視点で妄想してる俺ガイル(キモイ)。

でも実際、ヤンデレSSって、読者側としては主人公の男とヒロインのどちらに感情移入しやすいのかな。

いや、中にはヒロインをモンスターみたいにして、感情移入拒否ってる短編もあるけど。

229雌豚のにおい@774人目:2013/11/16(土) 01:48:16 ID:1DgFY4VA
>>228
何を今更
両方だよ

230雌豚のにおい@774人目:2013/11/18(月) 14:56:28 ID:UAy.7R6A
修羅場になるとどうしてもサブヒロインの方に感情移入してしまう
それで、噛ませ犬になるので凹む
毎回これの繰り返し

231雌豚のにおい@774人目:2013/11/19(火) 19:24:32 ID:V3O7JnnQ
主人公があまりにもヘタレだと
感情移入できなくなるなあ俺

232雌豚のにおい@774人目:2013/11/21(木) 17:35:14 ID:On7RzvNA
噛ませ犬扱いのヒロインって(SSの主旨上仕方ないけど)キャラ立ちの面でもどうしてもメインヒロインに喰われちゃうよね。
むしろ、こういう子が、誰もかなわないくらいに容姿性格ともに完璧な美少女だったら、主人公がそっちに走るのも分かるし、メインヒロインが病むのも分かりやすい気がする。
正攻法じゃ絶対かなわないんだもん。
でも、一瞬自分で話を考えたけど良いオチが思いつかない。
ぐぬぬぬぬ…

233雌豚のにおい@774人目:2013/11/23(土) 21:53:53 ID:urO0KtbA
だ、誰か、エサを…

234雌豚のにおい@774人目:2013/11/23(土) 22:34:19 ID:R7p11Ugg
ちゃんと愛してるって言わないと
ご飯あげないよ?






てか、自分で考えなさい

235雌豚のにおい@774人目:2013/11/24(日) 23:50:06 ID:G8FNo/xA
大人しい女の子が逆レイプスレ
女の子に催眠、洗脳されてしまうスレ
あたりのヤンデレ含んでるとこで食いつなげ

236雌豚のにおい@774人目:2013/11/26(火) 17:45:28 ID:qxadwswA
催眠スレはそれでいい迷惑してるけどな。
投下された催眠SSにヤンデレじゃない!!って騒いで建て始めの頃に荒れたんだぜ

237雌豚のにおい@774人目:2013/11/27(水) 17:48:39 ID:c3GpfUW2
魔物娘のヤンデレもあるな

238雌豚のにおい@774人目:2013/11/30(土) 21:01:26 ID:mcpwH4dw
魔物、幽霊、ロボットとか過去作品にあるけど
まだ出てない斬新な設定ってなんかあるか?

239雌豚のにおい@774人目:2013/11/30(土) 21:01:37 ID:mcpwH4dw
魔物、幽霊、ロボットとか過去作品にあるけど
まだ出てない斬新な設定ってなんかあるか?

240雌豚のにおい@774人目:2013/11/30(土) 21:02:35 ID:mcpwH4dw
ありゃ連投になった
ごめんなさい

241雌豚のにおい@774人目:2013/11/30(土) 21:53:11 ID:yJIr5fA2
>>239
ぽけもんとか、自転車(付喪神)とかある以上、ソレを超えるモノってなると萌え属性として斬新な奴になっちゃいそうだなぁ。
ピエロッ娘とか。
あと、意外とありそうで無い気がするのは、おっとり、ゆるい系のヤンデレっ子とか?
「わたし〜、あなたのこと大好きなんだよ〜」みたいなゆる〜い喋り方の女の子が見た目そのままのテンションでヤンデレるって、意外とそんな無い気がする。

242雌豚のにおい@774人目:2013/12/01(日) 01:22:45 ID:fvJNKvgU
>>241
ピエロッ娘は見てみたいな

下手くそな売れない自分の芸を見て笑ってくれる主人公のために芸を練習していく。
その後、上達したピエロは人気者になって大活躍。満員の観客席の中から主人公の姿を探すとそこには知らない女と一緒に座る主人公の姿が。
みたいな話が思いついたけど誰か上手くまとめてくれないかな……

243雌豚のにおい@774人目:2013/12/02(月) 02:58:38 ID:haOhAIDo
ヤンデレは何でもいいというわけではない。
皆どこかしらストライクなヤンデレがあるよね。

俺は相手が絶大な力を持っていて逃げられない系が好きだなあ。

244雌豚のにおい@774人目:2013/12/05(木) 06:45:36 ID:axsk3YlE
強大な力といっても
暴力、財力、知力、政治力等々色々あって
それぞれで異なった展開になりそうだ

個人的には財力で主人公の味方を全員買収とか考えるが
どんだけ人望ない主人公なんだってなっちゃうな

245雌豚のにおい@774人目:2013/12/05(木) 08:13:18 ID:ViB4z0nM
勝手な都合でヤンデレや!とか言われても腹ボコーでバイバイして終わりよな
基本的に主人公はやさしい

246雌豚のにおい@774人目:2013/12/05(木) 12:09:08 ID:PvzCbs/E
その場合、「よろしい、なら絡め手だ」ってならんか?

暴力を使わず、外堀をゴリゴリ埋められていく感じで。

個人的にはそういう強力で強かな子よりも、病みっぷりの際立つ弱い子の方が好みだけれども。

247雌豚のにおい@774人目:2013/12/07(土) 04:23:26 ID:sQ1XXVYY
みんな忙しいんすねえ

248雌豚のにおい@774人目:2013/12/07(土) 04:28:43 ID:fKwJGWt6
みんな消えちまった
書き手も…読み手も…荒らしも…みんないなくなっちまった

249雌豚のにおい@774人目:2013/12/07(土) 08:17:25 ID:U44iRGN6
逆に考えるんだ
ゲージを貯めてる時間だと考えるんだ

250雌豚のにおい@774人目:2013/12/07(土) 10:58:27 ID:Qe111OdM
リアルな話、年末は忙しいからなぁ。
学生にせよ、社会人にせよ。
まぁ、みんなしてヤンデレ彼女に拘束されている可能性も無きにしもあらずだが(笑)

251雌豚のにおい@774人目:2013/12/07(土) 18:07:58 ID:W.gAM2bw
皆クリスマスとか正月、バレンタインに力を蓄えているだけだから(震え声)

252<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>:<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>
<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>

253<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>:<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>
<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>

254<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>:<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>
<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>

255雌豚のにおい@774人目:2013/12/07(土) 22:40:16 ID:/5G.ARDo
ぬおおお!
よし、投下する作品出来た!
と思ったが、改めて読んでみたら本文にヤンデレ成分がほとんど無かったでござる。
まああえて隠した感じで書いてたからいいっちゃいいんだが……
まさかここまで分かり辛くなってしまうなんてorz

文才がない拙者は他の人が新たに投下してくれるまで大人しく全裸待機しているでござるよ。
デュフフ。

256雌豚のにおい@774人目:2013/12/07(土) 22:58:50 ID:Qe111OdM
「…皆さん、何を言ってるんでしょうね。
…客入りが多かろうと少なかろうと良いじゃありませんか。
…ココには、私とアナタだけが居ればソレで幸せ。
…私が、私たちが思い描いた通りの幸せ。
フフ、フフフフ…」

257<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>:<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>
<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>

258<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>:<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>
<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>

259雌豚のにおい@774人目:2013/12/09(月) 02:45:08 ID:r89toiHg
SSがこないくらいでビビッてたら、ヤンデレなんか愛せないわい!
男なら監禁されようがダルマにされようが笑顔でいこうぜ

つかがんばって書いてる人も多いと思うよ、時期的に思い通りにいかないだけで
俺含

260雌豚のにおい@774人目:2013/12/11(水) 16:38:32 ID:q106Lpys
仕事上では強い信頼関係に結ばれている女性の仕事仲間(パートナー)。

けれど、近すぎて恋愛感情を抱かれていることなんて露知らず、男はヒロインを差し置いて合コンへ…なんてネタを思いついたけど、俺じゃ上手くSSにできなさそうだなぁ。

261雌豚のにおい@774人目:2013/12/11(水) 19:48:27 ID:dgKyTqJo
最初はそういう小ネタから
とにかくここにでも書いてけばいいよ
その内文章が長く書けるようになっていくから

262雌豚のにおい@774人目:2013/12/11(水) 19:48:40 ID:dgKyTqJo
最初はそういう小ネタから
とにかくここにでも書いてけばいいよ
その内文章が長く書けるようになっていくから

263雌豚のにおい@774人目:2013/12/11(水) 19:49:56 ID:dgKyTqJo
連レスになった、すみません

264雌豚のにおい@774人目:2013/12/12(木) 00:11:19 ID:9CE4CFxU
たとえ拙い文章であろうと設定や状況が気に入ったら脳内で保管するから大丈夫だ
そして書いているうちに上手くなればみんな幸せ

265雌豚のにおい@774人目:2013/12/12(木) 11:25:36 ID:j38dhFjM
まー、書き手の場合、無理しない程度に適度に脳内から文章化しないとだけどね、と自分への戒めのために言っておく(苦笑)。
俺も、シリーズをきちんと完結させてやらないと登場人物たちに刺されそうで怖い(笑)

266 ◆grz6u5Kb1M:2013/12/13(金) 02:24:56 ID:WEky9wKo
投下します
稚拙な文章ですが、宜しければお楽しみください

267十六夜奇談 ◆grz6u5Kb1M:2013/12/13(金) 02:27:58 ID:WEky9wKo

1.

月明かりだけが差し込む薄暗い部屋の中、何かを啜る音が反響する。
部屋の中には人影が二つ。
華奢で小柄な少女と、どちらかと言えば大柄で、筋肉質な体付きの少年。
二人はお互い向き合って座っており、少年は少女に手を差し出し、少女は少年の手を取って自分の顔の前へと持ってきている。
ぴちゃ、ぴちゃ、ぴちゃり。
舐めていた。
少女は熱に浮かされた表情で、差し出された少年の手の中指を、一心不乱に舐め回していた。
だがただ舐めるだけでは無く、時折少年の指を咥え込み、何かを吸うみたく口を窄めたりもしている。
否。みたく、では無い。
少女は吸っていた。
少年の血を。体液を。そこに含まれる、少年の生命そのものを。
舐り、啜り、吸収していた。
少年はそんな少女を、ただただじっと見つめていた。

しばらくして、少女はようやく少年の指から口を離した。
どこか焦点の合っていない胡乱な目で、口からはだらしなく涎が垂れている。
少年はくす、と微笑むと、ポケットからハンカチを取り出し、少女の口元を拭ってやった。
我に帰った少女は、羞恥に頬を染めながら顔を俯かせる。
すると、何かが少女の頭の上にぽん、と置かれた。
少年の手のひらだ。
先ほど少女が舐めていた手とは反対の手が、少女の艶やかな黒髪を梳くように、優しく少女の頭を撫でていた。
「もういいのか?」
気持ち良さそうに目を細める少女に、少年は少女の頭から手を離すと、労わるように言った。
少女は少年が頭を撫でるのをやめたことに若干不満そうな表情を浮かべたが、すぐに取り直して頷いた。
「うん、もう大丈夫」
少年はそっか、と頷き返して、自分の中指を見た。
少女が血を吸いやすいように予め付けておいた切り傷は、もうすでに塞がりつつある。

「よし、それじゃあ晩飯にするか」
今日は手軽に野菜炒めにでもするかな、と少年が考えを巡らせていると、何やら熱い視線を注がれていることに気付く。
視線の主は言わずもがな、少女である。
何かを期待するように瞳を輝かせながらこちらを見据える少女に、少年は怪訝な表情を浮かべる。
「どうした?」
と少年。
「えっへっへー。ハルのハンバーグ食べるの久しぶりだなーって思って」
対する少女はにへら、にへらという擬音が聞こえてきそうなほど表情を弛緩させ、これ以上なく浮き足立っている。
それもそのはず。今日は少女の一番の大好物たるハンバーグの日なのである。
基本的に少年の作るものなら何でも大好物の少女だが、その中でもハンバーグは別格だ。
我ながら子供染みた味覚をしていると思うが、好きなものは好きなのだから仕方ない。
しかし、
「へ?ハンバーグ?」
少年はキョトンとした表情で、小首をかしげて少女に訊いた。
「え?昨日約束したでしょ?『明日はハンバーグ作ってやるからなー』って、ハル得意気に言ってたじゃない」
少女もまた、不思議そうに少年に問い返す。
しばしの沈黙。
それを破ったのは、少年の発した実に間の抜けた声であった。
「……………………あー」
「もしかして、忘れてたの?」
見る見るうちに少女の大きな瞳が潤み、形の整った眉が吊り上っていく。
少年は両手をあたふたとバタつかせて、必死に弁解の言葉を探し始める。
「い、いや!忘れてない!忘れてないぞ!ただちょっと他のことに気を取られてたっていうか、頭からスッパリ抜けてたっていうか、記憶にございませんっていうか……」
「忘れてたんでしょ」
「うっ……」
少女のズバッとした物言いに、少年は力無く項垂れた。
またしても沈黙が場を支配し、微妙に重苦しい空気が漂う。
部屋の内部を照らし込んでいた月明かりも今は雲に隠れ、暗黒の帳が二人の間に落ちる。
宵闇に紛れて読み取れない少女の表情。

268十六夜奇談 ◆grz6u5Kb1M:2013/12/13(金) 02:29:12 ID:WEky9wKo
少年は所在無さげに頭を掻き、目を伏せっておずおずと口を開いた。
「……ごめん、すっかり忘れてた」
そして静かに、頭を垂れた。
「ハルのばか」
ぷいす、とそっぽを向く少女。目が暗闇に慣れてきたのか、頬を膨らませているのが見て取れた。
そんな少女の様子がなんだか微笑ましくて、知らず、少年の顔が綻んだ。
少年の態度が気に食わなかったのか、少女の頬が更に膨らむ。
「いや本当にごめん。悪かった。埋め合わせと言っちゃなんだけど、明日はちゃんとハンバーグ作るから。だから許してくれよ、な?この通り」
眼前で手のひらを合わせるようにして、ひたすら平謝りする少年。
「ふんだ。ハルの言うことなんて、もう絶対ぜぇ〜ったい信用しないんだから」
しかし、少女の機嫌は依然として直らない。それどころか、ますます悪くなる一方だ。
どうやら完全にへそを曲げてしまったらしい。

少年は次第に、先ほどまでの微笑ましいものを見る目から、段々と涙目になってきた。
そして、少女に機嫌を直してほしい一心で、ついその言葉を口にしてしまったのだ。
「今日一緒に寝てやるから!」
瞬間、少女の瞳がギラリと光った。
少年は自らの失言に気付いたようで慌てて口を押さえたが、もう遅い。後の祭り、後悔先に立たず、口は災いの元、である。
少女は一瞬、言質は取ったとばかりにほくそ笑むと、先ほどまでの不機嫌はどこへやら、太陽のような笑顔で少年に向き直った。
「しょうがないなあ、そんなに言うんなら許してあげる」
でも、と少女は続けて、
「そのかわり、今言ったこと、忘れないでね?」

―――ハ、ハメられた……。

少年は愕然と肩を落とす。
寂しがりで甘えたがりな少女は、何かと少年と一緒に寝たがる。
少年としても少女と一緒に寝るのは決して嫌では無いのだが、16歳にもなってまだ一緒に寝ているというのは、少女の教育上よろしくないのではないかと考えている。
だから出来る限り少女には一人で寝させるようにしているのだが、敵もさる者、少女もまたあらゆる手段を使って少年と一緒に寝ようとする。
そのひとつがこれだったのだ。
どこからが計算だったのか、少年はまんまと少女と一緒に寝る約束を取り付けさせられてしまった。

「ほら、早く晩ごはんにしましょ。わたしお腹空いちゃった」
すっかり上機嫌になった少女は、鼻歌でも歌いだしそうな調子で少年の手を取る。
どうやら今夜は少年と一緒に寝られることが決まって、すっかりご満悦のようだ。
少年は観念したように、深々とため息を吐いた。



少年の名は、十六夜晴臣。
少女の名は、十六夜雨音。



この世でたった二人の、血を分けた双子の兄妹である。

269十六夜奇談 ◆grz6u5Kb1M:2013/12/13(金) 02:30:19 ID:WEky9wKo


***



日本のどこかに存在する地方都市・十六夜市。
十六夜家は、この地に古くから存在する名家だ。
市と同じ姓を持つこの家には、代々受け継がれてきた役目があった。
それは、十六夜市という土地に棲む霊なる存在を鎮め、時に滅するという役目。
つまるところ十六夜家とは、霊能者の家系なのだ。
そういった特殊な家系に、晴臣と雨音の二人は、16年前、母親の命と引き換えに双子として生を受けた。

晴臣は生まれた時から、高い霊力をその身に宿していた。
歴代最高の資質とされ、また晴臣自身の努力もあって、小学校を卒業する頃には、そこらの亡者など束になろうと問題にならない程の実力を身に着けていた。

しかし、そんな晴臣とは打って変わって、雨音には霊能者としての才能はこれっぽっちも無かった。
いや、才能が無いどころの話では無い。
それどころか、どういうわけか彼女は、身に宿す霊力の総量が一般人のそれと比べても極端に少なかったのだ。
霊力とは魂の力。言い換えれば生命力だ。
それが常人よりもはるかに少ない彼女は、本来なら一人では生きることすらままならない。
だが、そのかわり雨音には、晴臣よりも更に特異な能力が生まれつき備わっていた。

雨音の持つ特異能力。
それは、他者の血を吸うことにより、その血液を通して霊力を吸収し、自分の霊力とすることができるというものだった。
そうすることによって雨音は不足分の霊力を補い、初めて人並みの人間足りえるのである。
勿論、だからと言って誰彼構わず血を吸って良いわけでは無い。
霊力を吸収するということは、即ちその者の魂の一部を吸収するということ。
普通の人間から血を吸えば、吸われた人間はたちまちのうちに霊力が枯渇し、場合によっては魂が消滅してしまうという事態になりかねない。
自然、彼女が最低限普通の人間として生きるためには、ちょっとやそっと吸われた程度ではビクともしない、並外れた霊力を持った人間が必要だった。
そしてそんな人間は、幸運にも、彼女の最も身近に存在した。






「雨音、ちゃんと布団入ったか?」
晴臣は電気の紐をつまみながら、隣で寝ている雨音に尋ねた。
「んー」
雨音は頭までずっぽりと布団を被って気の無い返事を返した。
すでに夢心地になりつつあるようだ。
晴臣は電気を消すと、いそいそと布団に潜り込んだ。
春先とはいえ、夜はまだまだ冷える。
さすがに雨音のように頭まで布団を被ったりはしないが、しっかりと肩まで布団をかけた。

晴臣はちらりと雨音の方を見た。
生まれた時から霊力が少なく、誰かから霊力を吸わなければ、生きることすらままならない双子の妹。
晴臣は物心つく前から、そんな妹に血を与え続けてきた。
彼女を一人前の人間として生かすことができ、且つ彼女に霊力を与えてもほとんど人体に影響が無いほど膨大な霊力を持っている人間は、彼しかいなかったからだ。
けれど晴臣は、そのことに関して嫌だと思ったことは一度も無い。
そのことに関して思うことは、たった一つだけ。
雨音に対する、途轍もない罪悪感だけだ。

雨音とは対照的に、自分は人並み外れた高い霊力を持って生まれてきた。
まるで本来は雨音の取り分だったはずの霊力を、根こそぎ奪ってきたかのように。
いや、少なくとも晴臣はそう思っている。
自分が雨音から霊力を、生命を奪ってしまったのだと。

だから晴臣は、雨音に霊力を与え続けている。
否、返している、と言った方が正しい。
自分のこの霊力の半分は、元々は雨音のもののはずだから。
自分さえいなければきっと、雨音はこんなことに苛まれずに済んだはずだから。

俺が生まれてきたから、雨音はこんなにも不自由な体質になってしまった。
俺が生まれてきたから、雨音は今はもう天に還った父に、落ちこぼれだ、化け物だと邪険にされ続けた。
俺さえ、生まれて来なければ。

そこまで考えて、晴臣は小さく頭を振った。
ダメだ、こんなことを考えては。
思念もまた魂の一部。霊力の一部だ。
こんなことばかりを考えていては、次に雨音に霊力を返す時、何か悪影響を及ぼしてしまうかも知れない。

晴臣は考えることをやめて、ぎゅっと目を瞑る。
それから睡魔に意識が飲まれるまで、そんなに時間はかからなかった。

270十六夜奇談 ◆grz6u5Kb1M:2013/12/13(金) 02:32:01 ID:WEky9wKo

隣で晴臣が寝息を立て始めているのを感じて、雨音は目を開いた。
布団からそっと頭を出し、晴臣を見る。
心地良さそうに眠る晴臣の寝顔は、本当に無防備で。
雨音はたまらず、晴臣に抱きついた。
腕と脚を晴臣の身体に絡めて、晴臣の胸に顔を埋め、思いっきり息を吸い込み匂いを堪能する。

えへへ。ハル。ハル。ハルの匂いだあ。あったかいなあ、ハルは。

晴臣が自分のこの体質に対して、何か負い目のようなものを感じているのは、雨音も気付いていた。
そして、晴臣が自分のことをとても大切に思い、また、心配してくれていることも知っている。
それを実感する度に、雨音は晴臣のことが愛しくて愛しくて仕方なくなる。
晴臣に大切にされていると思うと、胸がドキドキして、頭の中がボーッとして、お腹の下辺りがキュンキュン疼くのだ。

でも。でもね、ハル。あなたは一つ勘違いしてる。
わたしはこんな体質に生まれてきたことを、一度だって嫌だと思ったこと無いんだよ?

それどころか雨音は、自分をこういうカタチに作ってくれた父親に、自分をこんな体質に産んでくれた母親に、深く深く感謝していた。
不完全で、不安定で、晴臣から血を貰わなければ、すぐにでも朽ち果ててしまうだろうこの身体。
自分の生殺与奪の権利は全て、晴臣によって握られていると言っても過言ではない。

雨音はそれが嬉しかった。
たまらなく嬉しかった。
何故ならそれはまさしく、自分の全ては晴臣のものだという証明に他ならないではないか。
この身体も、この心も、この命も、この魂すらも。
全てが晴臣のものだという確固たる証明。

もしも晴臣に捨てられたら、自分は本当の意味で生きていけなくなる。
晴臣以外の人間の血など飲む気にもならないし、第一そんなこと、この街を守ることが使命の晴臣が許すはずが無い。
自分は晴臣の庇護下でしか生きることを許されない、晴臣の所有物。
言わば、晴臣の飼い犬のようなものだ。

瞬間、雨音はゾクリと身震いした。

飼い犬。飼い犬。飼い犬……。

そう、わたしは飼い犬だ。
ハルに血という餌を与えられて、霊力という鎖に繋がれた飼い犬。
ご主人様がいなければ何もできない、生きることすらできない、無能で役立たずな駄犬。
それが、わたし。

雨音は晴臣に抱きつく腕に力を込めた。
その小ぶりな胸を晴臣の腕に押し当て、晴臣の太ももに自らの秘所を擦りつける。
知らず、頬は上気し、甘い吐息が漏れる。
気付けば雨音は、まるで発情期を迎えた犬のように、腰を振り、身を捩じらせ、快楽を貪っていた。
秘所はすっかり濡れそぼっており、晴臣の太ももを濡らしている。

雨音は虚ろな瞳で、再び晴臣の方を見た。
すぐ隣で、自分がこんな痴態を晒していることなど文字通り夢にも思っていないだろう彼は、すうすうと安らかな寝息を立てている。

ハル、ごめんね。いつもいつもわがままばかり言って。
今日だって夕食のことで、あんな生意気な態度を取っちゃって。
怒ったよね?腹が立ったよね?
ハルはいつだって優しくて、わたしもそんなハルが大好きだけど、たまには怒ったっていいんだよ?
ううん、むしろハルは、もっと怒るべきだよ。
本気で怒って、本気でお仕置きして、しっかり躾け直さなきゃ。
特にこんなわがままで、生意気で、そのくせご主人様に発情して勝手に自慰行為に耽るようなどうしようも無い雌犬には、キツいお仕置きをしなくちゃダメ。
殴ったっていい。蹴飛ばしたっていい。わたしは全部受け入れるから。
ハルにされることなら、わたしはどんなことだって受け止めてみせるから。

でも、それでもし、もしわたしが、今より少しはお利口さんになったら。

その時は、よくできたなってわたしを褒めて、たくさん可愛がってほしい。
よしよしって頭を撫でで、ぎゅって抱きしめてほしい。

ああ。ハル、ハル。
わたしを痛めつけて。わたしを甘えさせて。わたしを傷つけて。わたしを抱きしめて。わたしを支配して。わたしを守って。わたしを壊して。わたしを愛して。

わたしを、わたしを、わたしを、ワタシヲ―――――――――――――――――――。



果てた。
雨音は息を荒げて、ぐったりと横たわる。
すると、途端に強い眠気が襲ってきた。
しかしその瞳は、意識が夢の中へと誘われるまで、ずっと晴臣に向けられていた。

ハル、大好きだよ。だからずっと、わたしのそばにいてね。

雨音はそっと目を閉じて、眠りについた。

271 ◆grz6u5Kb1M:2013/12/13(金) 02:33:45 ID:WEky9wKo
投下終了です
一応長編のつもりですが、当方とてつもない遅筆なので気長にお待ちください

272雌豚のにおい@774人目:2013/12/13(金) 09:00:30 ID:7skYvS6Y
>>271
おおおおおおGJ
ヒロインかわいいなあ

273雌豚のにおい@774人目:2013/12/13(金) 11:58:17 ID:IMgn9Ju2
えさっ! 餌だっ!
それもうまそうな餌!
GJGJGJ!

そして吸血妹キタ−!
これは超常バトルヤンデレかな

274雌豚のにおい@774人目:2013/12/14(土) 22:15:15 ID:qmlvTvo.
>>271


>>273
吸血だからバトルというのは短絡的だぜ

275雌豚のにおい@774人目:2013/12/15(日) 09:32:30 ID:QNaNYAv2
>>271
遅ればせながら乙
やっべ超好みのシチュエーション

276雌豚のにおい@774人目:2013/12/18(水) 02:05:36 ID:rHU.3BYA
ヤンデレを逆に監禁してみたい

277雌豚のにおい@774人め:2013/12/18(水) 03:48:11 ID:1JoZYhhw
>>260

の設定を少し借りて主人公の上司をヤンデレにして高校時代は付き合ってた二人とかそんな無茶な設定のやつを思い浮かんだんだが需要あるかな。

ありそうなら書く

278雌豚のにおい@774人目:2013/12/18(水) 07:41:21 ID:RJ8Ue0G.
>>277
需要ありありだ

279雌豚のにおい@774人目:2013/12/18(水) 12:30:10 ID:diAjTDko
>>277
上司とか大好きです

280雌豚のにおい@774人目:2013/12/18(水) 17:15:41 ID:kN9Bx4OE
>>277
需要過多の供給不足です

281雌豚のにおい@774人目:2013/12/18(水) 17:48:30 ID:MEShMku2
ヤンデレ上司が職権乱用して主人公に好き放題するシチュ大好物です

282260:2013/12/18(水) 23:26:02 ID:/oj1naEg
人間関係がすごい面白いことになりそうですね。
読んでみたいです。

283277:2013/12/18(水) 23:49:51 ID:1JoZYhhw

みんな、ありがとう。頑張って書いてみるが初なので下手なのと遅筆なのをふまえてあまり期待せずに待っていてくれ。

284雌豚のにおい@774人目:2013/12/20(金) 23:20:13 ID:IirhV2MA
投下を……誰か……早く餌を……

285雌豚のにおい@774人目:2013/12/21(土) 02:53:42 ID:xLh5rAAg
登場人物:狼に育てられた少女 主人公 幼馴染

病む:幼馴染 微病み?:少女

話:村はずれの洞窟に住む、狼と暮らす少女を主人公が世話していくうちにお互い好きになっていく。
何もないはずなのに村に帰るといつも上機嫌で帰ってくる主人公を怪しむ幼馴染。
幼馴染が主人公の後をつけていくと少女と仲良くしてるところを見つけ、咄嗟に割り込む。
そこから修羅場があって〜

って話を書いてるんだけどメインの少女がそこまで病んでなくても大丈夫?

意見をいただきたい。

286雌豚のにおい@774人目:2013/12/21(土) 07:11:21 ID:xHlLv0jE
>>285


とてもおもしろそうです。狼に育てられたってのが特におもしろそう。

287斉藤副部長 第1話:2013/12/21(土) 07:15:20 ID:xHlLv0jE


短いですが、投下します。
とても稚拙な文です。

288斉藤副部長 第1話:2013/12/21(土) 07:18:58 ID:xHlLv0jE
今年もあとわずかで終わるというのに俺はまだ会社でPCと向かっていた。残業だ。
同僚達は合コンや少し早めの忘年会にも行っているというのに。
俺も行きたいなぁと考えていたところで目の前資料にミスがあったことに気づく。こんなんだから残業が増えるのだろう...。
そう思いながらただPCに手元の資料を打ち込んでいく作業を繰り返す。やはり残業は辛いな...。
しかし残業にもいいことはある。
俺は少し遠くの席に座っている人を眺めはじめる。残業で人が少ない時しか出来ない事だ。
あそこで俺と同じようにPCに向かっている斉藤副部長だ。
仕事もできるし、容姿端麗、おまけに性格まで言うこと無しと来た。俺と同じ年齢とは思えないほどである。若くして副部長にまで出世するのもうなずける。
副部長は仕事量が多いのか残業が多いらしく俺も残業が多いのでよく定時を過ぎても俺も副部長も帰っていないなんてことも。
俺としては副部長を眺められるのはかなり嬉しいことなので全く問題ない。うん、ないな。
今日も副部長を眺めていたら俺の目線がバレていたのか副部長がこちらを見てきて目が合ってしまった。俺はシャイなのですぐに目線をPCに戻す。おそらく顔が真っ赤だけど問題ない。ないぞ。女性が苦手とかじゃないならな。い、いや本当にな!
そんなことを思っていたら後ろから何か熱いものを頬に当てられた。
「もう仕事は終わったの?黒田くん。終わってないなら早く終わらせないといつまで経っても帰れないわよ?」
振り返ってみるとそこには副部長が立っていて、俺に缶を差し出してきた。
「コーヒー、嫌いって聞いたからコンポタにしてみたよ。」
そう言いながら微笑んでくれる副部長が天使に見えた。かわいい。
「あ、ありがとうございます。いただきます。」
そう言って缶を受け取ろうと思ったとき。
「コンポタとミルクティー。どっちがいい?」
と言われて缶を取れなかった。
「え、えと、コンポタをごちそうになります。コンポタは自分もよく飲みます。」
「よかった。コンポタも嫌いかなーって思ったから一応聞いたんだけど。」
副部長がもうひとつの手に持っているミルクティーは蓋が空いているように見えたけどきっと気のせい。うん。ペットボトルだから良く分からないが。
「コーヒーが嫌いでコンポタは好きだなんて、子供みたいだね。」
少し冗談混じりに言いながら副部長はやっぱり微笑んでいた。かわいい。しかし子供みたいと言われてしまうのはまずいぞ。訂正しておかなければ!
「コーヒーは嫌いじゃないですよ。苦手なだけですよ。」
カフェオレなら好きだぜ。お子ちゃまはコーヒー牛乳飲んでな。
「ふふ、じゃあそういうことにしておいてあげる。」
「ほ、ほんとですよ副部長!」
「.....。ねぇ、黒田くん。役職名で呼ばないでっていつも言ってるでしょ?名前で呼んでって言ってるじゃない。」
し、しまった...なぜか副部長は俺が役職名で呼ぶことを嫌に思うらしい。他の社員には呼ばせないのに...。
「す、すみませんこればっかりは癖みたいなもので...。でも、どうして自分だけ?」
「敬語も禁止。同い年の人に敬語とか使われると自分が年取ってるみたいだから嫌なのよ。だから黒田くんだけね?」
....。これが女なのか...。俺も副部長も今年で28になった。もっとも、俺はこの会社に入ったのは1年半前くらいで副部長はもう5年以上はここにいるらしいのでこんなにもポストは違うが。
「今年齢の事考えてたでしょ?」
「す、すみません副部長。」
「......。否定しないのね。」
「あ、いえ!考えてませんでした!」
「もう遅いわよ。」
「も、申し訳ありません。」
「斉藤。」
「へ?」
「ふふ、名前で呼んでくれたら許してあげるわ。」
「な、名前ですか?」
「そうよ、副部長って呼ばれるの好きじゃないの。だから名前で呼んでくれたら許してあげる。」
「え、はい!斉藤副部長!」
「......。思ってたのと違うのが来たけどそれで許してあげる。これからはそうやって呼んでくれないと起こっちゃうから。ふふふ」
そういいながらすこし頬をふくらませる斉藤副部長。かわいい。いやマジで。

289斉藤副部長 第1話:2013/12/21(土) 07:21:06 ID:xHlLv0jE
「わ、わかりました、コンポタご馳走様でした。」
「いいのよそれくらい。それよりも黒田くんはもうすぐ終わりそう?」
「はい、もうすぐ片付けて帰れます。」
「そう、ならよかった。私ももうすぐ終わるからまた一緒に帰りましょう?」
俺と斉藤副部長はよく一緒に残業をするのだが、終わりそうな時間が一緒なら二人で帰ったりもする。初めは断っていたのだがーーこんな美人と長時間も話をすると恥ずかしすぎて何も言えなくなってしまう。
斉藤副部長いわく
「こんな時間に一人で夜道を歩かせるつもり?」
と、いうことらしい。1回一緒に帰ってしまえばその次を断れるはずもなくこうして何度か一緒に帰えることも増えてきた。
「はい、わかりました。すぐ終わらせますね。」
「あ。焦ったりしてミスしちゃダメよ?黒田くんただでさえミス多いんだから。」
う、痛いところを突かれてしまった。
「大丈夫ですよ。注意してますから。」
「なら、私も早く終わらせるわね。」
そう言って自分のデスクに戻っていった。後ろ姿もきれいだなぁ...。
そう思いながら自分の作業にのめり込んでいった

290斉藤副部長 第1話:2013/12/21(土) 07:21:42 ID:xHlLv0jE
「それじゃ、帰りましょうか。」
「もうこんな時間になりましたね。」
腕時計を見ると、21時すぎになろうとしていた
「こんな時間まで残るのは久しぶりね。」
「そうですね、年末ですからね。どこも忙しいですね。」
そう、実際年末はどこも忙しくなる。俺も会社の総決算、来年度予算案など実際に忙しく働いている。副部長である斉藤さんが俺より忙しいのは当然だろう。
「そうね、年末といえばお正月やクリスマスはどう過ごすのかしら?」
「正月は実家に帰りますね。やっぱりクリスマスは...」
「あぁ、みなまで言わなくてもわかるわよ。クリスマスは一人で悲しく...でしょ?」
目が ...斉藤副部長の目が笑ってやがる...俺って一体どんなふうに思われてるんだろう...
でもいつも遊ばれてばかりの黒田健一ではない。ここで斉藤副部長の俺のイメージを変えるべく俺はさも当然のように
「クリスマスは、彼女と仲良く過ごすつもりです。」
1度は言いたいセリフNo.1を言ってしまったがそんなのは問題ない。別に悲しくなんかないし...。さて、気になる斉藤副部長の反応は...?
「...。」
「んー?よく聞こえなかったからもう一度言って欲しいな?」
くくく、目が点になってやがる。まさか斉藤副部長のこんな表情を見る日が来ようとは。
「だから、クリスマスは、彼女と過ごすんですよ。」
「....。」
あ、あれ?斉藤副部長が黙ってしまった?それになんか...怖い。
「....んー。」
しばらくの沈黙が続く。怒らせてしまったのか...?
「あのね、黒田くん?」
「は、はい!」
急に話しかけられて思わず声が上がってしまう。
「冗談でも言っていい事と悪いことってあると思わない?」
「あと、また聞こえなかったからもう一度言って欲しいな?」
「あ、そのク「クリスマスはどう過ごすのかしら?」
お、怒っているのか?今まで見たことがない表情の斉藤副部長。とても冗談を言える空気じゃない。
「ひ、ひとりで過ごします...」
「......。」
何も言われない...?胃が痛い。この空気に耐え切れそうにない。
「ふ、副部長?」
「.....。」
少し離れた所にいた斉藤副部長がこちらに近づいてくる。
何も言わずに無表情で
「....。」
目の前で立ち止まった。ずっとこちらを見ている。
「す、すみませんでした!」
俺は必死に頭を下げ謝っていた。









「うふふ、冗談よ。びっくりしたかしら?」
と言いながらいつものように微笑んでくる斉藤副部長。さっきまでの表情が嘘のようだ。心臓に悪すぎる...
「も、もう!やめてくださいよ!」
「ふふ、ごめんなさい、でも黒田くんもあんな冗談はダメよ?」
「そ、そんなに悪い冗談じゃないじゃないですか!」
「うふふ、そんなことないわよ。もう二度としないこと。いいわね?」
「は、はい。わかりました」
笑顔なのに笑顔じゃなかった。
「それじゃ、帰りましょうか?」
やっぱりいつもの斉藤副部長だ。女って怖い....。
そんなことを思いながら駅まで向かってまた歩き始めた。




電車に乗り些細なことを話していると自分の最寄駅に着いた。
「では、お先です。」
「はい、お疲れ様。またね。」
「斉藤副部長もお気を付けて。」
「ほら、早く降りないと電車出ちゃうよ?」
電車の中にもアナウンスがかかる。
「おっと、ほんとに失礼します。」
そう言って早足に電車から降りる。
ドアが閉まる。まだドアの向こうでこちらに手を振ってくれる斉藤副部長。正直恥ずかしい。恥ずかしいので俺も小さく手を振るだけにしておく。
「電車が発車します。ご注意ください」
電車が遠ざかっていく。斉藤副部長はここからまだ少し離れた駅なのでまだ帰宅に時間がかかるだろう。
「腹...減ったな。」
何か買って帰るとしよう。
明日も仕事だ、早く帰ろう。

291斉藤副部長 第1話:2013/12/21(土) 07:22:17 ID:xHlLv0jE
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
黒田健一。黒田くん。けん君。
私の愛する人。


高校の頃、私とけん君は付き合っていた。
愛し合っていた。
デートして手を繋いで抱きしめあって初めても捧げた。
けど、大学に入ってしばらくしてけんくんは私の元から去っていった。
何故か分からなかった。電話もメールも通じなくてけん君がどこにいるのか何もかも分からなかった。
けん君がいない。
けん君。けん君。私のけん君。
怖かった。けん君が私のところから離れていく。

必死にけん君を探した。
でも、もうどこにもけん君はいなかった。

気がつけば大学を卒業していてこの会社に入社していた
仕事に没頭した。
何もかも忘れて仕事をしていたと思う。
そのおかげで社内でのポストはどんどん高くなっていった。
けど、そんなことは嬉しくなかった。
部下や上司から賛辞を受けても私にとってなんの意味もなかった。
私にはけん君さえいてくれれば良かったのに。
けん君。けん君。けん君けん君。
私のけん君。私だけのけん君。
また昔みたいに手を繋いで。
デートして。抱きしめて。
けん君。けん君けん君けん君けん君けん君けん君けん君けん君けん君けん君けん君けん君けん君けん君けん君けん君けん君けん君けん君けん君けん君けん君けん君けん君けん君けん君けん君
あなたに会えるならなんだって....

ーーーーーーーーーーーーーーーーー



懐かしい夢を見ていた。
けど、忘れちゃいけない夢。
けん君に捨てられたこと。

私が悪かったんだ、私がきちんと管理していなかったから。
だから私は決めた。
けん君にまた会えた時から
けん君を私のものにすると。

うふふ、待っててねけん君。
もう準備は終わってるのよ....?

あとはけん君を私のものにするだけ...

あぁ、けん君。
けん君はきっと私のこと覚えてないんでしょう?
うふふゆっくり思い出ささせてあげるから...

でも、その前にお仕置きかしら?

ふふ、ふふふけん君。愛してる

292斉藤副部長 第1話:2013/12/21(土) 07:24:03 ID:xHlLv0jE

投下終了です。

1つ気になったのが文字数なんですが、どれくらいに分けるとよろしいでしょうか?

293雌豚のにおい@774人目:2013/12/21(土) 08:45:41 ID:3tBbk0qU
>>285
メインじゃなくても
病んだ子が出てくるんなら
構わないと思われ

>>292
GJ!
副部長かわいいよ副部長
文字数は設定では
>文字数:4096字まで(通常と同じ)
>行数:120行まで(通常の2倍)
こうなってるから
4000文字ぐらいで良いんでないかい

294雌豚のにおい@774人目:2013/12/21(土) 21:52:47 ID:GyTEncIs
>>284
クレクレは不快に思う人もいるから控えなさい
>>292
良いです!
斉藤副部長のお仕置きに期待しまくり

295雌豚のにおい@774人目:2013/12/21(土) 22:40:11 ID:rRd/bddc
>>292
すばらしい!!
ヤンデレと残業なら何時間でも出来る

296雌豚のにおい@774人目:2013/12/24(火) 00:31:56 ID:zx7pSSTQ
さて…今年もこの季節が来たか…

297 ◆grz6u5Kb1M:2013/12/24(火) 01:24:39 ID:YJ9dbSCA
第二話投下します

298十六夜奇談 ◆grz6u5Kb1M:2013/12/24(火) 01:25:59 ID:YJ9dbSCA

2.

「雨音。雨音。もう朝だぞ、起きなさい」
その声を聴いて、雨音の意識は急速に覚醒した。
間違いない、晴臣の声だ。
晴臣が自分を起こそうとしている。
少し口調がおかしい気もするけれど、そんなことは些細なことだ。
晴臣が自分を起こしてくれている以上、一発で目を覚まさなければ、晴臣の妹であり、飼い犬でもある自分の名が廃るというものである。

雨音が目を開けると、晴臣が慈愛に満ちた表情で自分を見つめていた。
雨音の小さな胸が、ドキリと高鳴る。
同時に、晴臣の様子に奇妙な違和感を覚えた。
「おはよう雨音。今日はとっても良い天気だよ」
まるで後光でも差し込みそうなほど爽やかな笑顔で言う晴臣。
やはりおかしい。
口調も雰囲気も、いつもの晴臣とは明らかに異なっている。
「お、おはようハル。どうしたの?一体」
晴臣の様子にただならぬ気配を感じた雨音は、おっかなびっくりそう尋ねた。
だが晴臣は変わらず、慈しむような哀れむような笑みを浮かべたままだ。
……哀れむ?
「ねえハル「なあ雨音。人間、誰でも時にはついやらかしてしまうことがあるものさ。だから、あまり気にするんじゃないぞ」……え?」
晴臣は雨音の両肩に手を置いて、何度も深く頷きながら言う。
その際、ちらりと雨音の下腹部辺りを見たのを、雨音は見逃さなかった。

一瞬の間。

雨音は、全てを理解した。
「なっ!?ちっ、違っ!わ、わた、わたしそんなっ……!!」
下腹部への視線。哀れむような表情。どう考えてもおかしい晴臣の態度。『ついやらかしてしまう』という意味ありげな発言。
昨晩、雨音は『何を』していたのか。
全部を照らし合わせると、晴臣が何を言わんとしているのか理解できる。
しかし雨音にとって晴臣のその『勘違い』は、ある意味死刑宣告以上に痛烈だ。
必死に誤解を解こうとするが、あまりのことに呂律が回らない。
というか仮に誤解を解いたとしても、昨晩の真実は晴臣にしてみれば、勘違いよりもよほどショッキングな出来事だろう。
もうどうしようもない。詰みである。

慌てに慌てる雨音の様子を見て、晴臣はもう一度、確信したように深々と頷いた。
「ああ、分かってる分かってる。誰にも言わないよ。この事はお兄ちゃんと雨音の、二人だけの秘密だ。さ、早くお風呂に入ってきなさい。お湯も湧かしてあるから、ゆっくり温まって来るんだぞ」
言って、晴臣は静かに立ち上がり、雨音の頭を撫でた。
既に学校は長期休暇に入っているため、晴臣は私服姿だ。無論、既に寝間着からは着替えている。
……もう、限界。
雨音は目に大粒の涙を溜めて、とうとう大声で叫んでしまった。



「だからわたしっ……お漏らしなんかしてないってばーっ!!」



そんな、何とも情けない絶叫から、十六夜兄妹の一日は始まった。

299十六夜奇談 ◆grz6u5Kb1M:2013/12/24(火) 01:27:37 ID:YJ9dbSCA

***



その後。
どうにかこうにか誤解を解いた雨音は、晴臣が湧かしてくれた湯船にゆっくりと浸かり、晴臣が作ってくれた朝食を食べた。
現在は晴臣の淹れてくれた食後の緑茶を、本人と一緒に仲良く啜っているところである。

ちなみに雨音の弁明の結果、昨晩の彼女のアレは寝汗だったという結論に落ち着いた。
晴臣は釈然としない様子だったが、雨音の無言の圧力に負け、それ以上の追及はしなかった。

平時ならばとっくに学校に行っている時間だが、先ほど述べた通り今は長期休暇中。
従って雨音は誰にも邪魔されず、晴臣と二人っきりの朝を過ごせるのだ。
まさに至福の時。
だがそれも、ピンポーンという無粋なインターホンが鳴り響いたことで中断された。
「はーい」
訪問者を迎えるべく、小走りで玄関まで駆けていく晴臣。
至福の時を邪魔された雨音は、面白くなさそうな顔で晴臣を追う。

晴臣が玄関の戸を開けると、そこには雨音もよく見知った人物が立っていた。
同時に雨音の表情が、苦虫を噛み潰したように引き攣る。
「よう、晴坊。雨音の嬢ちゃんも。しばらくぶりだな」
くたびれたスーツに無精髭。少しばかり小太りな体格。一見するとうだつの上がらない中年サラリーマンのようだが、その目付きは獲物を狙う猛禽のように油断無く鋭い。
「平田さん。お久しぶりです」
「……どうも」
思わぬ知己の来訪に、晴臣は頬を緩ませながらも礼儀正しく挨拶を返す。
雨音もまた晴臣に倣って、軽く会釈する。

平田和雄。
市内の警察署に勤める刑事であり、晴臣と雨音の後見人でもある男だ。
晴臣たちの父親と古い付き合いで、晴臣たち自身もまた、幼少時にはたまに遊んで貰っていた記憶がある。
お陰で晴臣は平田にとてもよく懐いていたのだが、正直なところ、雨音は彼のことがあまり好きでは無い。むしろ嫌いの部類に入る。
子どもの頃、平田が遊びにやってくると、晴臣はいつも彼にべったりくっついて離れなかった。
それが雨音は、大層気に入らなかったのだ。
大好きなご主人様を盗られて嫉妬しない飼い犬などいない。
子供心に「あいつさっさと『じゅんしょく』すればいいのに」などと考えていたとしても、誰も彼女を責めることはできないだろう。できないったらできない。
だが、雨音が平田を気に入らない理由はそれだけでは無かった。

「こんな朝早くから珍しいですね。どうしたんですか?」
「いや、たまたま近くを通りがかったもんだからちょっとお前らの顔を見にな。……と言いたいところだが」
晴臣の問いに、平田は渋面を作って応える。
平田のその表情を見て察したのか、晴臣もまた真剣な表情に切り替わった。
「晴坊。お前、空守山って知ってるか?」
「え、ええ。確か隣町にある山のことですよね。あっち方面にはあまり行かないので詳しくは知りませんけど。その山が何か?」
「出た」
晴臣の表情が強張る。
十六夜家の者に対するこの発言の意味は、ひとつしかない。
「近隣の住民から報告が多数寄せられていてな。やれ夜中に軍服を着た骸骨の群れが行進してただの、白い髪の女に追い回されただの、得体の知れない笑い声が聞こえただの」
「悪戯という可能性は?」
「署の連中は悪戯だと思ってるみてえだし、事実、眉唾くせえ話が大半だったが、あの山に何かいるってのはマジだ。現にたった今、確かめてきたところだからな」
今度こそ、晴臣は目を見開いた。
雨音もまた、剣呑に目を細める。

300十六夜奇談 ◆grz6u5Kb1M:2013/12/24(火) 01:28:30 ID:YJ9dbSCA
そう。これこそが、雨音が平田に苦手意識を持っているもうひとつの理由。
平田は生来、霊感が強い。
霊力の総量こそ常人並だが、霊的存在を感じる力に限っては、晴臣や雨音とほとんど変わらないほどだ。
そもそも晴臣たちの父親と彼が旧知の仲になったのも、その霊感が災いして悪霊に憑かれた彼を、晴臣たちの父親が救ったことがきっかけだ。
以来、十六夜家に恩義を感じるようになった平田は十六夜家の協力者となり、たまにこうしてお祓いの仕事を持ちかけてくるようになったのである。
閑話休題。
とにかく、平田が訪ねてくると晴臣は平田を持て成すあまり雨音を構ってくれなくなり、更に平田が仕事を持ってきた日には、晴臣がお祓いに出てしまって一緒にいられる時間が減ってしまう。
ようするに雨音にとってみれば、平田は晴臣との甘いひと時を根こそぎ奪っていく怨敵そのものなのだ。

「分かりました。ではさっそく今晩、様子を見に行ってきます」
晴臣は声色を硬くして言う。
霊的存在の活動が活発化するのは、主に夜。
朝や昼にも気配自体は感じ取ることができるが、直接干渉することができるのは夜間に限られている。
故に物事を根本的に解決するためには、夜に行くしか無いのである。
「……済まん」
申し訳なさそうに晴臣に頭を下げる平田。
十六夜家の霊能者とはいえ、まだ子どもである晴臣に危険な役割を押し付けてしまうことに、罪悪感を感じているのだろう。
だったら最初からお祓いの仕事なんか持って来なきゃいいのに、と雨音は内心一人ごちる。
「もう、いつも言ってるじゃないですか。これが俺の役目なんですから、平田さんが気にすることなんてないですよ」
晴臣は朗らかに笑って、窘めるように言った。
平田は最後にもう一度だけ頭を下げると、よろしく頼む、と言い残して去って行った。

玄関の戸が閉まるのを見届け、怨敵退散と心で強く念じてから、雨音はそっと晴臣の様子をうかがった。
目が合う。
「大丈夫だ。ハンバーグはちゃんと作っていく」
晴臣は優しく微笑んで雨音へのフォローをする。
「作っていくだけじゃダメ。ちゃんとハルも一緒に食べるんだからね」
雨音もまた、悪戯っぽく微笑み返した。

しかし、雨音の心中は穏やかでは無かった。
晴臣がお祓いに出かけるのは頻繁に、というのは大げさだがそれなりによくあることだ。
その度に雨音は心配と、寂しい気持ちに押し潰されそうになってしまうのだが、今回は殊更に嫌な予感がしてならない。

何だか晴臣が、自分を置いてどこか遠くに行ってしまいそうな。
そんな、予感が……。

301十六夜奇談 ◆grz6u5Kb1M:2013/12/24(火) 01:29:29 ID:YJ9dbSCA

***



空守山は、十六夜市・空守町の外れに位置する小さな山だ。
一部に急な斜面はあるものの、全体的になだらかな稜線でちょっとしたハイキング気分を味わうには最適なため、近隣住民にはそれなりに人気の高いスポットである。
約束通り雨音にハンバーグを作って一緒に食べ、彼女に今日の分の血を与えた後、晴臣は空守山の麓に訪れていた。
成程。確かに、あまりよくない気配がする。
それもひとつでは無い。数多く、数えきれないほどに。
「よっし。行くか」
晴臣は気合を入れるように静かに深呼吸をして、山の入り口へと足を踏み出した。

入山した途端、気配はより濃密になった。
これは最早、一種の瘴気とでも呼ぶべきものだろう。
纏わりついてくる微細な霊魂を払い除けながら、晴臣は先へと進む。
あちこちから漂う瘴気の中でも一際濃度の高い気配が、ある一方向からひしひしと感じるのだ。
そちらを目指して、ただひたすらに鬱蒼と木々の生い茂る山道を進む。

そうしてしばらく進むうちに、やがて拓けた場所へと出た。
と言っても、特に何があるわけでも無い。ただひとつ。一本の細い石柱だけが、場の真ん中に寂しげに突き立っているだけである。
だがその石柱を見た瞬間、晴臣の顔つきが変わった。
「これは……封印、か?」
それも、かなり昔のもの。恐らく数百年は経過しているであろう古びた封印だ。
視れば大分綻びが目立つ。既に半分以上解けかけているのだろう。
「なるほど。最近この辺りに急に霊が増えたのは、こいつが緩んでいたのが原因ってことだな」
ひとり納得したように頷く晴臣。
とはいえ、どうしたものか。
実は晴臣は、封印についてはあまり詳しくない。なまじ霊力が高い故に、大半の霊は封印するまでも無く実力行使で滅してしまうからだ。
特にそれが、数百年前の封印ともなればもうお手上げである。
「仕方ない。ひとまず出直して家の書庫を漁ってみるか。確か封印に関する文献もあったはず……」

そこまで呟いて、晴臣は即座に周囲を警戒する姿勢に入った。
居る。
自分のいるこの場所からすぐ近くに、何かが居る。
入山した時に払い除けた霊魂どもとはまるで違う、強力にして高度な霊的存在が、こちらの様子をうかがっている。
どこだ。どこだ。どこ―――――――見つけた。

「そこかッ!」
晴臣は左足を軸に180度立ち位置を入れ替え、振り向き様に霊力をぶつけた。
これほどまでに接近を許し、且つ背後まで取られたのは初めてのことだ。
かつてない強敵の予感に、知らず、晴臣の面持ちが険しくなる。
だが、



「ひゃああああああっ!!!ごめんなさいごめんなさいごめんなさぃいいいいいいいいいいいいいいいっ!!!」



返ってきたのは場にそぐわぬ、あまりに素っ頓狂な悲鳴。
霊力をぶつけた場所から飛び出してきたのは、腰まで伸びた白い髪を靡かせた、着物姿の少女であった。
少女は空中で勢いよく一回転すると、そのまま地面に額を叩きつけそうな勢いで土下座。
俗に言うジャンピング土下座というやつである。
「ごめんなさいごめんなさいすいませんでした許してください後生ですからお情けをぉおおおおおおおおおおおおおっ!!!」
プライドも何もあったものじゃないとばかりに、ひたすら謝り続ける少女。
怯えているのか、よく見るとその身体は小刻みに震えている。
「………………は?」
晴臣はポカンと口を開けた。
何だ、これは。何なのだ、こいつは。
意味が分からない。というよりも、脳が理解することを拒んでるような気がする。
フリーズする晴臣を他所に、少女は尚も壊れたテープレコーダーのようにごめんなさいごめんなさいと謝罪の言葉を吐き続ける。

そこから晴臣が我に帰るのに、およそ3分の時間を費やした。

302 ◆grz6u5Kb1M:2013/12/24(火) 01:30:58 ID:YJ9dbSCA
投下終了です
ヤンデレスレなのにヤンデレ成分ほとんど無い上に変なオッサンの紹介だけでほとんど終わってしまいました
申し訳ありません

303雌豚のにおい@774人目:2013/12/24(火) 06:24:46 ID:XK3aJ9G2
>>302
GJです
長編はヤンデレ分ない話できちゃうのは
仕方がないし気にすんな

304雌豚のにおい@774人目:2013/12/24(火) 23:16:30 ID:kCBEBbss
投下乙
長編だもの、キャラ紹介で時間とか掛かっちゃうのはよくあるこった
さて新キャラの女の子、これはやっぱり封印が解けて出てきちゃったものかな?
この子も病むか病まないか気になる

305雌豚のにおい@774人目:2013/12/27(金) 02:06:53 ID:EEGScB2Q
ぐっじょぶです

306雌豚のにおい@774人目:2013/12/29(日) 03:26:17 ID:Qlq5sS6U
>>302
乙です
依存型のヤンデレで新キャラとか既にヤバい雰囲気が…

307 ◆VZaoqvvFRY:2013/12/30(月) 15:53:54 ID:4Fql7jAs
テスト

308触媒:2013/12/30(月) 15:54:56 ID:4Fql7jAs
投下しますよ

309触媒 ◆VZaoqvvFRY:2013/12/30(月) 15:56:20 ID:4Fql7jAs
 天は高く高く遥か上方に突きぬけており、その頂にある日輪からは、太陽神グランタンカの恵みである暖かく柔らかい秋特有の陽射しが地上に降り注いでいた。
 その光輝に照らされた、そしてなだらかに続く丘陵の麓で屹立する街並みがある。
 それは周囲を石造りの壁――上空から見ると歪んだ円形をして街を一周している――に囲まれている、俗に言う城塞都市と呼ばれる街であった。
 そびえたつその街壁には数十年以上に渡って外敵の侵入を拒んで来た傷跡が刻み込まれている。
 刀や斧や弓矢の跡であり、投石器によって衝突した岩の跡であり、あるいは巨大な木槌の跡であったり。それらは、この街の誇る無言の武勲であった。
 ――だが、最も新しく加えられた傷跡は過去の物とは大きく異なっていた。
 南門から西へ二十メートルほどの所に刻まれた、巨大な穴。幅が四メートル、高さはてっぺんを突き抜け、厚さ五メートルを超えるその街壁を貫通していた。
 この街は建設以来初の侵入者を許していたのだ。

 街壁に負けず劣らず居住区も至る所に甚大な損傷を抱えていた。
 家屋は多くが崩れるか焼け落ちており、黒煙が今も何本も立ち上っている。
 そして住人たちの亡骸が累々と、と言う言葉のままに路上から家屋の中に至るまで老若男女を問わず横たわっていた。
 兵士だった男は甲冑を何かに貫かれ胸に大穴を開けてうつ伏せに倒れ、母は子を守るように蹲りながら、しかしその子もろとも押しつぶされている、と言った有様である。
 もはや動くものとてない、と表現しうる状況なのだが、だがしかし、それを許さない存在が街の中央通りを南から北へ歩き続けていた。
 それは年の頃二十代半ばと思しき黒い髪、白い肌、そして秀麗と表現するに足る整った顔立ちをした青年であった。
 青年の名はエーレン、性はティンタテルという。
 革と鋼で作られた甲冑を着こんでいるが、それは正規兵の重装備ではなくやや軽装と言っても良い格好である。
 騎士よりも傭兵を思わせる装備なのだが、しかし腰に吊り下げられた長剣には、そのような自由戦士には似つかわしくない家紋のような紋様が刻まれていた。
 街中に満ち満ちている死臭、それを一息吸い込んで辟易しながらもエーレンは結論を出した。どうやらこの街で生きている人間は自分一人だけらしい、と。
 まだ生存者がいないかと駆けずり回り声を大にして呼びかけてみたのだが、返事どころか何かが動く気配さえしないとなるとそう考えざるを得ない。
 旅の途中でこの城塞都市の存在を知り、疲れを癒す事と情報収集を目的として立ち寄ることにしたのだが、来てみればこの有様だった。
 街の状況からすると、侵略されてからまだ数日といった所なのだろう。今頃は逃げ出した者が近隣の街に知らせているだろうが……と、そこまで考えていたエーレンの耳に、静寂に支配されていた空気を切り裂く剣戟の音が届き、エーレンは青い目を見開いて音の出所を探す。
 剣戟は継続して響いていて、それは進行方向、街の中心部から届いていた。
 腰の長剣を鳴らして踏み出すと、エーレンは駆け出す。さっきの結論はどうやら間違っていたようだ、と思いながら。

 街の中心部はかつて休日や祝日の度にバザーが開かれ、住人たちの憩いと歓談の場所になっていた広場である。ほぼ正円形をしており、さらに中央には直径四十メートルにも達するこれも正円形の泉がある。
 それを見て取ったエーレンの視線は泉の北方に向けられた。
 視界に入ったのは、泉を背にして立つ小柄な人影とそれを取り囲むようにしてレイピア(片手剣)を構える長身の七人の男達だった。
 背負っていた荷袋を放り出し、泉を回り込むようにして駆け寄りながら、相手の様子を観察するうちにエーレンはやや意表を突かれた。
 男達の誰もが長く先のとがった耳をして、肌は輝くばかりに白く、そして長い金髪をしていたのだ。
「エルフか」
 心の内でつぶやいてからエーレンは瞬時に判断を下す。
 エルフは善の勢力に属している。つまりは自分にとっては敵ではない。本来であれば、だがしかし。
「シャア!」
 集団まであと十数メートルという所でエーレンはそう叫ぶと、目前の集団の注意を自分に向けた。
 エルフ達が振り向く。皆一様に驚愕と困惑の表情を浮かべていた。広場の中でエーレンの存在に今まで気づかなかったのが不覚だったのだろう。
 それは彼らが目の前の小柄な人影にそれほど集中していたという証であるのだが。
 エーレンが猛然と刀を抜いて切りかかってくるのを見ても多くは反撃体勢も取れず、そのまま手にしたレイピアで斬撃を受け止めるのが精いっぱいだった。

310雌豚のにおい@774人目:2013/12/30(月) 15:57:20 ID:4Fql7jAs
 無理に追撃を出すこともなく、エーレンはそのまま相手を押しのけるとエルフ達の囲みを突破し――正確には囲みの中に入ったのだが――中央にいる小柄な人影の前に立ち長剣を構えた。
 刃に日光が煌めき、エルフ達は細い目をさらに細くしてエーレンを見やる。
「どういうつもりだ、人間」
 リーダー格らしい、七人の真ん中に位置していたエルフが憤怒に満ちた声を出した。
 エーレンは、慎重に距離を測りながらリーダーに答える。
「義を見てせざるは勇無きなり、という言葉が人間界にはありまして」
「貴様、その後ろに立っているのが誰だか分かっているのか!?」
 指を突き付けられてそう言われ、エーレンも背後の人物に僅かに目をやった。
 黒いフードを目深にかぶり、足もとまで届く黒いマントを着たその人物は、表情すらうかがう事ができない。ただ、マントに施された銀の見事な刺繍が目についた。
「いえ、残念ながら初対面なもので。宜しければこちらの方がどなたか教えて頂けますか」
 口調は丁寧なのだが、小馬鹿にされているようにしか感じないその返答を聞いて、エルフのリーダーは今度は憎悪交じりの声を出した。
「そいつは、ダークエルフだ!」
 なんとまあ、と思うと同時にエーレンは納得した。
 ダークエルフ、エルフの対極に位置する邪悪な種族。エルフが本気で忌み嫌う唯一の存在だ。
 それならここにいるエルフ達にとってはこの戦いは正当なものなのだろう。
 とは言え、エーレンにはそれでもこの争いを止めさせたい理由がある。
「善の勢力は邪悪と混沌の勢力と和解しました。ご存じないのですか?」
 それを聞いたエルフのリーダーは眉を歪めて歯ぎしりをした。他のエルフ達も皆一様に苦虫を噛み潰したような表情をしている。
「知らぬわけがあるまい。だが、そいつだけは別だ」
「千年を越える長命にして調和を愛される貴方達がなぜそう性急に?」
「ほざくな人間。よかろう、教えてやる。いいか、そいつはただのダークエルフではない、そいつは……」
 次の瞬間、エルフのリーダーは何か違和感を感じたかのように目を瞬かせた。そして顔面を蒼白にしてエーレンの後ろにいる人物に殺気のこもった視線を向ける。
「しまった! おの……」
 そこまで話すと糸が切れるように一瞬にして膝から頽れた。
 彼だけではない、他のエルフ達もリーダーに倣うかのように痛恨極まりないと言った表情で次々と乾いた音を立てて地面に突っ伏して行く。
 そのまま動かなくなった彼らは目の焦点もあわさず瞬きもしない。明らかに意識を失っていた。
 エーレンは呆気にとられて目の前の光景を眺めていたが、間数髪をおいて気を取り直すと後ろに立つ相手に対して体ごと振り返り声をかけた。
「今のは、あなたがやったんですか?」
「そうだ」
 帰ってきた声が女性の物だったのでエーレンは表情にこそ現さなかったものの驚愕する。
 相手はフードを脱ぎ、マントも肩口まで上げるとエーレンに正対した。
 その姿を見てエーレンは息を飲む。
 それは、ビロードのごとく黒い肌、短く整えられた銀白色の髪、全てを飲み込みそうなほど深い深い緑の目の――この世の物とも思えぬ美しさをしたダークエルフだった。
 歳は人間でいえば十代後半ぐらいだろうか。もっとも実際にはその十倍以上の齢を重ねているのかもしれないが。
「一瞬にして全員……失神させたのかな、これは」
「殺しても良かったのだがな」
 倒れたエルフ達を冷然と眺めながらダークエルフの少女が返答する。
 エーレンは上を向いて気まずそうに頭をかいた。
「となると、わざわざ助ける必要もなかったかな」
 それを聞いたダークエルフの少女は視線をエーレンに戻した。
「そうでもない。君が奴らの注意を惹きつけてくれていたから術がかかったのだ。私一人だったらこうも上手くはいくまい。礼を述べさせてもらう」
 そこで一呼吸おいて、言葉を続ける。
「ところで、なぜ私を助けてくれたのだ」
 エーレンは肩をすくめた。 
「さっき彼らにも言ったけど、もはや善と悪は戦う理由がない。まあ個人的諍いみたいなのはあるだろうけど」
「それでわざわざ仲介にきたのか。酔狂な事だな」
 そう言う少女は呆れているというよりもむしろ面白がっているような表情を浮かべた。
 その姿をエーレンは再度眺める。
 少女の背丈は人間としては高身長の部類に入るエーレンの肩辺りまで、といった所だろうか。

311雌豚のにおい@774人目:2013/12/30(月) 15:58:27 ID:4Fql7jAs
 纏っている衣装は黒一色で、その至る所に銀で縫われた見事な刺繍が施されている。特に腰回りの髑髏と胸回りにある悪魔の骸骨の図柄はおぞましいながらもその造形美に感嘆せざるを得ない。
 そこまで見て、エーレンはふと気付いたことがあった。
「貴女は僧侶なんですか?」
「そうだ」
 着ている服は確かに僧服であったので、エーレンはそう思ったのだが、だがしかしそれにしては腰にぶら下げている長剣が気になった。
 僧侶は戒律で刃物の使用を禁止されているはずなのだ。
「信ずる神は?」
「アル・アンワール・ゲリサン」
 聞いてエーレンはやや面食らった。
 アル・アンワール・ゲリサンとは人間界では俗にスラングと呼ばれている悪意の神であり、その妹神タニットと共に多くの国々で嫌悪と忌避の対象となっている。スラングの信者と言ったらそれだけで殺されるか、よくて国外追放処分になるだろう。
 なるほど、スラングの僧侶ならまあ剣を振り回すぐらい平気でやるだろうな、と納得しているエーレンの前で少女は広場の隅にある石造りのベンチに歩み寄っていた。
 よく見るとそこにやはり黒と銀で装飾された荷袋が見て取れた。少女の荷物なのだろう。それを手に取った少女にエーレンは声をかける。
「貴女も旅の途中なんですか?」
「そうだ。ここに街があると聞いて、立ち寄ってみたらこの有様だ。なにか侵略者の情報になるものでもあれば、と思い調べていたらこのエルフ達に見つかってしまった。連中も目的は同じだったらしいが」
「これからどちらへ?」
「古代妖魔の討伐軍に参加する予定だ。恐らく、この街を滅ぼしたのも奴の仕業だろうが……」
「じゃあ僕と一緒ですね」
 笑顔でそう答えるエーレンに、少女はやや意外そうな顔を向けた。
「君一人でか?」
「貴女も一人ですよ」
「私は一人で行くと決……」
 そこまで言って少女は口をつぐんだ。そのまま貝のように口を閉ざす。
 それを見てエーレンは自分から会話を続けた。
「よければ僕と一緒に行きませんか?」
 エーレンの申し出を聞いて少女は切れ長の目を丸くする。
 その少女らしい純朴な驚愕の表情にエーレンは一瞬胸が高鳴るのを感じていた。
「なぜだ?」
 ややあって発せられたその少女の問いにエーレンは右手で髪の毛をかき回しながら返答した。
「僕は見ての通り戦士ですから。魔法には疎いんです。貴女のような方に一緒にいてもらえれば心強いですし」
「なるほど、君にとっては良いことかもしれんな。だが私に利点はあるか?」
「僕といれば、少なくともさっきみたいなトラブルは起きにくいと思います」
 少女は無言で片眉を上げる。
「フードをかぶっていれば、まさか人間とダークエルフが一緒に行動しているなんて思われませんよ」
 少女は顎に細い指をあてて考え込むような仕草をしたが、その指を放すと澄んだ美しい声で答えた。
「よかろう。君と一緒に行くとしよう」
「ありがとう」
 エーレンは太陽のような満面の笑みを浮かべる。それを見た少女はなぜか下を向いてフードを目深にかぶってしまった。もはや表情を知ることは出来ない。
「僕の名前はエーレン。エーレン・ティンタテルです。貴女は?」
「リア」
「じゃあリア、これからよろしく」
 エーレンは右手を差し出す。リアはとまどい、躊躇するような動きを見せていたが、しばらくしてその右手を握り返していた。
 手の中にあるリアの手の細さと、しかし鍛え抜かれた筋肉の質感をエーレンは感じていた。
 倒れているエルフ達に数十分後に目覚める解除呪文をリアがかけた後、二人は出発した。

 ――――――

 多くの神学者の研究によると、善と悪の戦いはある意味ではすでに決着しているということらしい。
 すなわち神々の父にして天帝たるタイタンとそれに付き従う太陽神・大地神・植物神等善の神々は、それに相反する死・疫病・腐敗等を司る邪悪と混沌の神々を史書に記されている「最初の戦い」の時に虚空に追放し封じ込めているのだ。
 これによって悪は地上に対する直接的な実行力を失った。
 だがしかし、その時から善の神々も地上から去って、以降は善に組する勢力に予言や奇跡といった間接的な補助を与えるのみとなっている。つまるところ悪の神々と地上に及ぼす影響力でいえばほぼ同等になっているのだ。
 この理由については諸説ある。
 一つ、邪悪と混沌との戦いで地上にもたらした破壊の醜さに恥じて手を引いたのだ。
 一つ、虚空に封印される寸前に邪悪と混沌の神々がかけた呪いによって地上に振える力がほとんどなくなったのだ。

312雌豚のにおい@774人目:2013/12/30(月) 15:59:13 ID:4Fql7jAs
 一つ、呪いをかけられたのはそうだが、それは神々ではなく地上にかけられた死の呪いで、それを解除するための作業に全力を挙げねばならないのだ。これが解けた時地上は不死の楽園となる。
 この中に正解があるのかどうかはともかく、実際に善の神々も悪の神々も地上にはおらず、繰り返されるのは人間・エルフ・ドワーフと言った善の勢力(悪に組する人間も多いが)とオーク・ダークエルフ・蛇人と言った悪の勢力による、いわば神の代理戦争である。
 それは永遠に繰り返される不変の事柄であったはずだった。
 ところがそれが覆る事件が起きる。

 古代妖魔という者達がいる。
 彼らこそはこの世界の太古の支配者にして堕落の権化。
 神の存在していない時代に地上に生まれ出でた彼らは、その享楽と怠惰の果てに世界を広げ続けて、やがて天帝タイタン率いる神々の住む天界とぶつかった。
 そこでどのような交渉があったのかはもはや知るものとてないが、結局のところ神々と古代妖魔は戦火を交えることとなる。
 当時の天界は善の勢力も邪悪と混沌の勢力も皆一枚岩で結束していたのだが、その神々の力をもってしても古代妖魔は難敵であった。堕落を極めた彼らは、それゆえに強力であった。
 だが、永劫に続くかもしれぬ戦いがちょうど百年続いた頃、ついに神々は古代妖魔の大半を滅ぼすことに成功する。
 彼らの中でも最も強力な数十体は虚空の底の底、辺土界に追放して永久凍土に封じ込めた。
 そうして神々は彼らにとっての新世界たるこの地上の新たな支配者となったのだが。

 近年、多くの預言者や聖職者の下にありとあらゆる神々からの預言や宣託が下された。それは善の神々だけではなく邪悪と混沌の神々からも。
 曰く、善と悪は争いを止めよ。
 曰く、協力せよ。
 曰く、古代妖魔の内の一体が辺土界から目覚め地上に現れる。
 曰く、備えよ。戦うのだ。力を合わせて。

 今まで続けてきた戦争を止めろ、というその言葉に世は大混乱になりかけたが、長くは続かなかった。
 現れたのだ、古代妖魔が。
 世界で最も大きな大陸の東方に、ラドルストーンという都市国家がある。いや、あった、というべきか。
 その都市が半年前におよそ見たこともない異形の怪物からの襲撃を受け、ほとんど一晩で滅亡した。
 辛うじて生き残った者たちの証言、魔術師達が魔法によって映し出した襲撃当時の光景、それらから得られた情報から人々は避けられない結論に到達した。
 神の言葉はやはり正しかった、と。
 その事実はありとあらゆる手段によって全ての種族、勢力、国家に伝達され、善と悪はここに大同団結を余儀なくされた。
 そうして世界で最も強力な国家、フラットランドが中心となり、古代妖魔の討伐軍が結成されることになったのだ。
 エーレンとリアはそこに参加することになる。

313雌豚のにおい@774人目:2013/12/30(月) 16:02:04 ID:4Fql7jAs
終わり

長編っぽいけど話数的には多分すぐに終わる
でも遅筆なので時間的にはいつ終わるか分からん
ついでに病むのもずっと後になってから
設定とかはあちこちからパクってるので
色々矛盾点とか出てきちゃうかも
そもそもファンタジーよく分からん

と、いろいろ問題のある作品になっちゃいましたけど
生暖かく見守ってくだしあ

314雌豚のにおい@774人目:2013/12/31(火) 00:31:59 ID:ldpXbmSQ
>>313
GJ! 文章がしっかりしてて、読みやすく面白いです。
次が楽しみです!

315雌豚のにおい@774人目:2014/01/01(水) 16:36:17 ID:yXL3YXlI
ぐっじょぶです

316雌豚のにおい@774人目:2014/01/02(木) 20:12:31 ID:U3EspJww
正月の小話を書いたので投下するよ

317雌豚のにおい@774人目:2014/01/02(木) 20:12:56 ID:U3EspJww
「年賀状は一枚か……」
 数なんてあんまり気にしないものの、やはり寂しかった。
「ま、何枚あってもさ、お年玉に当選するわけじゃないしな」
 独り言を繰り返しても……やっぱりむなしかった。
 確かに僕は誰にも出していない。
 むしろ、受け取ってから相手に出す予定である。

 言い訳を繰り返しながら、呼び鈴を指で押した。
 ピンポーンと乾いた機械音が響く。
「はーい」
 と同時に、少し低い女性の声が耳に届いた。
 あまりに早すぎて、待ち伏せていたんじゃないかと驚いてしまう。

「と、隣のものだけど、」
 その動揺を隠しつつ、
「あの、年賀状を」
 言葉を続ける。
 そう、僕は受け取ってから相手に返すようにしているのだ。
 しかもアパートの隣の住人なのだから、直に手渡した方が会う機会も出来て一石二鳥。

318雌豚のにおい@774人目:2014/01/02(木) 20:13:27 ID:U3EspJww
「あけましておめでとう!」
 さっきより少しだけ高い声と共に、勢いよく開く扉。
 眼前に表れた〝どてら”姿の女性。
 まるで、慌ててそれを羽織ったようにも見える。
「もしかして寝てた?」
「ううん、全然!」
 彼女は否定したのだけど、本当は舟を漕いでいたのかもしれない。
 だとしたら、悪いことをしたな。
「手短に言うけど、用件は」
「まま、寒いでしょ。入って入って」
 また、最後まで言い終わる前だった。
 部屋の中へと、彼女に手を引かれたのは。

「でーんと座って。今温かいものでも持ってくるから」
 僕がコタツに座るのを待ったかのように、
「いや、年賀状を渡しに」
「気にしない気にしない」
 矢継ぎ早に、言葉を残して台所へと消えていく。
 彼女は、よく二回同じ言葉を繰り返す癖があった。
 そういうのを知ってるほどには、隣付き合いを持っている。

 一つため息をついて、コタツの机に持ってきた年賀状を置いた。
 大掃除をしたのがわかるぐらい、とても磨かれた机に。
 僕の年賀状とは、比べものにならないほど綺麗だった。
「ま、まぁ、小一時間で作ったものだからな」
 不思議に思うのは、ある年までは仕事の仲間達から何枚も来たこと。
 いつからだろうか、一枚しか来なくなった。
 その最後の一枚はもちろん、彼女からの物。
 だから、最近では受け取ったら返すという風に気取ったりもしている。

 うーん、職場で不和を起こしたことはないのだけれど……。

319雌豚のにおい@774人目:2014/01/02(木) 20:13:55 ID:U3EspJww
「はい、お待たせ。君の大好きな緑茶だよー」
「早っ!?」
 あらかじめ用意でもしてたのかと思えるほどに早かった。
「ふふん、私は出来る子だからねー」
「さいですか」
「むー、信じてないなぁ」
 軽口を叩け合えるのも、それぐらい信用されてる証拠なのかもしれない。
 普通、正月早々に赤の他人に来られたら困るだろうに。

「黙っちゃって、」
 ふっと考え込んだ自分を見逃さないように、人差し指で頬をつつかれた。
「どうしたのどうしたのー」
 そうして顔を傾ける。
 それに倣って長い髪が垂れた。

「そういえばさ、両親とか来てないの? 親戚とか」
 もちろん、自分は来ない。彼女のも来たのを見たことはない。
 それを知っているのだけど、あえて質問で場をにごした。
「ふふ、来るわけないじゃーん。君と同じで年賀状の数も同じ」
 どてら姿の女性が、机の上の雑な年賀状を手に取る。
「だから嬉しいな。ありがとう、宝物にするよ」
 そして、そう付け加えた。

320雌豚のにおい@774人目:2014/01/02(木) 20:14:14 ID:U3EspJww
「あーっ、君は照れてるな」
「ちがっ!」
 彼女がもう一度、「照れてるな」と付け加えて微笑む。

「はいはい、照れてる照れてる」
「今度は私の真似マネかな?」
「ちげぇよ」 
 端から見たら、僕らはどういう風に見えるのだろうか。

「なぁ、気になったんだけどさ」
「何々?」
 間髪を容れず答えながら、今度はさっきと逆の方へと首を揺らした。
 次いで、見とれるほど黒く美しい髪も傾く。
 その視線は、観察しているように自分へと向いていた。
「ほら年賀状で、同じ枚数って言ったじゃんか?」
 だから恥ずかしかった。
 彼氏はいるのかとか、これからの予定とか……問いかけることが。

「うんうん、言ったよぉ。他にも君と私は色んなことが一緒で」
「いやいやいや、そうじゃなくて」
 口早にしゃべり始めた彼女を止める。
「僕さー、昔はもっとたくさん枚数もらってたんだけどさ」
「ふぅん」
「もしかして疑ってる?」
 それとも、彼女自身が一枚しか来ないのを気にしているのだろうか。
 本当は、特定の誰かから来る予定だったとか。
 目の前の女性は、そう思っても当然なほどに見栄えが良かった。

321雌豚のにおい@774人目:2014/01/02(木) 20:14:37 ID:U3EspJww
「疑ってないよぉ。……それで?」
 思い返せば、自分の部屋に職場の友人が来たこともない。
 誘えども、いつも用事がと言われた覚えが……。
「早く続きを言ってもらえないかな?」
「ああ、うん。でさ、」
 促されるように、僕はもう一度口を開く。
 その間、目の前の女性と何度も視線がぶつかった。
 あちゃー、地雷の話題だったか。

「なんで来なくなったのか、年明けの七不思議として話そうと思ってさ」
 質問したかったこととは違って、自分でも内容をまとめ切れなかった。
「もう、そんなのは七不思議にはならないよ」
「……で、ですよねぇ」
「だって謎なんてないからね。真実はわかってるのだから」
 まるで名探偵のように、人差し指を立てる彼女。
「な、なんだってっ!? それは本当かキバヤシ!」
 ポーズを決めるその仕草がよく似合っていた。

「もちろんだとも。なにせ私が全部破り捨ててるんだからなっ」
 …………。
 一瞬どころか、時が止まりそうだった。

322雌豚のにおい@774人目:2014/01/02(木) 20:14:56 ID:U3EspJww
「ふぅ……。また冗談ですか」
 往々にして、彼女はこういうジョークを出してくる。
 いつかの時も、そうだったような。
「えへへー。でもこれで私と君は一枚岩だ」
「あー、聞いて損した」
 それは年賀状が一枚なのと掛けてるギャグなのかと、突っ込む気も起きなかった。
「もう! そんなこと言うならお雑煮出さないよー!」
「それだけは、お代官様!」
 言葉とは裏腹に、彼女の表情は笑顔だった。
 こういっては何だけど、僕たちはお似合いなんだと思う。
 ……たぶん。

 誰に言われるまでもなく、出されたお雑煮を一口すする。

「そうそう、一つ忘れてた」
 また低くなった声色に、首を振り向けた。
 口に入った長く黒い髪の毛を取り出しながら。
 間違いなく彼女のモノだ。
 たまに……というか、ほとんど入っている。

 要するに、おっちょこちょいなのだ。
 それが分かるぐらいには、隣同士の付き合いがある。
 もう気にはならなくなったのだけど。
「今年、君の職場に入った女がいるようだけど」
「ほへが、ほほしたの?」
 ちょうどお餅を噛んでいたため、ちゃんと発音はできなかった。
 けれど、なんとなく意図がわかったのだろう。

323雌豚のにおい@774人目:2014/01/02(木) 20:15:19 ID:U3EspJww
「アイツはもう二度と来ないわ。遠い実家に帰ったのだから、遠いね」
「……ふぁい?」
 だろうが、返答された言葉の意味はわかるはずもない。

「いつもと同じ二人だけの新年。今年もヨロシク」
 まだ口に餅が残っている僕を後目に、彼女はおせちの用意に取り掛かるのだった。

324雌豚のにおい@774人目:2014/01/02(木) 20:16:19 ID:U3EspJww
終わりです

325雌豚のにおい@774人目:2014/01/03(金) 02:55:25 ID:wcRpMKBI
触媒か…
去年の元旦、最初にきた投稿、それは触雷だったことをご存知だろうか

まさに偶然の巡り合わせ
今年はペースを上げたいとのことだったが、終わってみれば去年の投稿は2.3話程度だった

ちゃんと覚えてるんだよなぁ(ニッコリ

326雌豚のにおい@774人目:2014/01/03(金) 08:38:28 ID:0tYOKyYI
>>324
GJ
新年早々幸せな主人公だなあ
色々な意味で

327雌豚のにおい@774人目:2014/01/04(土) 14:54:15 ID:5E5yCgkI
>>324
ぐっじょぶです

328雌豚のにおい@774人目:2014/01/10(金) 19:29:56 ID:G62fUMq6
正月でこれなら
成人式とかもっとすごいことしそうだな
久しぶりに男君に会うことになる
旧友の女の子とかたくさんいるだろうし

329雌豚のにおい@774人目:2014/01/12(日) 17:09:40 ID:b2dIy6aM
来月はバレンタインがあるしヤンデレな子は大変だな

330<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>:<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>
<ヤンデレさんがお持ち帰りしました>

331雌豚のにおい@774人目:2014/01/14(火) 00:33:36 ID:P1S63Qgg


332雌豚のにおい@774人目:2014/01/14(火) 16:51:24 ID:TkqjMmfI
布団がヤンデレなせいで離れられない

333雌豚のにおい@774人目:2014/01/14(火) 18:59:04 ID:Nl899Lnw
「あと五分だけ……」
どちらかと言うと布団にヤンデレてる人の方が多そうだ

334雌豚のにおい@774人目:2014/01/14(火) 19:35:19 ID:hJvbzG/g
スレチかと思うけど、アルカディアの「6しかでないサイコロ」、
なろうの「名前のない怪物」とか私的にヤンデレっぽいし面白いかも。

ヤンデレの小説を探すのがなかなか難しいorz

335雌豚のにおい@774人目:2014/01/15(水) 01:13:17 ID:ckf6FLzE
>>334
あくまで自分のやり方だが、なろうはヤンデレタグの新着順で
タグがごっちゃりしていない作品の中から探してる

でも良作を拾えたりするとちょっと嬉しい

336雌豚のにおい@774人目:2014/01/16(木) 01:28:56 ID:hIGvmr0U
>>335
良かったらその良作をすこし紹介してくれないか?

337雌豚のにおい@774人目:2014/01/16(木) 09:03:23 ID:iEQxYmSc
>>336
了解
まだ覚醒してないけどヤンデレ化したときの爆発力が高そうな「インスタント・メサイア」とか
ちょっと変則的なタイプの「あなたと結婚するので、私を○○○○させてください」
あたりが一押し
どっちも一般的なヤンデレとは外れてるんだけど気に入ってる

338雌豚のにおい@774人目:2014/01/16(木) 12:19:16 ID:A1ThhTi6
紹介されてるの読んでるけど、よかったわ

339雌豚のにおい@774人目:2014/01/17(金) 00:37:25 ID:qmKFYtZo
>>337
ありがとう。今から読んでみるよ

340雌豚のにおい@774人目:2014/01/18(土) 14:01:06 ID:skRq0vkM
重なりあわないシンメトリー最高なんじゃ〜^^

341雌豚のにおい@774人目:2014/01/21(火) 07:09:23 ID:iNpob7UM
ノクターンの赤いハナビラとかどうかな

342雌豚のにおい@774人目:2014/01/23(木) 20:09:43 ID:OfyLDQKY
ここの作品だったと思うんだけど駅のホームで女の子が主人公に土下座するシーンがある作品知らない?

343雌豚のにおい@774人目:2014/01/23(木) 21:27:33 ID:CFcCecT2
姫ちゃんの奮闘

344雌豚のにおい@774人目:2014/01/23(木) 23:08:46 ID:IMAqxSj.
日本一ソフトウェアがPS3でヤンデレゲーをだすらしいね。楽しみだ

345雌豚のにおい@774人目:2014/01/23(木) 23:43:44 ID:OfyLDQKY
>>343
ありがとう
なんか印象に残っていてずっと気になってたから助かった
>>344
公式サイトオープンしたのか
情報が少ないから何とも言えないけどライターさんは結構いい人だし期待してる

346雌豚のにおい@774人目:2014/01/25(土) 00:25:41 ID:ewvCL93E
>>342
ここの保管庫の物はすべて読んだけど、そんな話あったかな?
ここの作品じゃないと思う

347雌豚のにおい@774人目:2014/01/28(火) 02:35:32 ID:dOweWT0Q
PS3でヤンデレゲーなんて初めて見たわ
とりあえず様子見とこう

348雌豚のにおい@774人目:2014/01/28(火) 08:23:44 ID:ZgYUEVrs
>>346
短編SSを参照せよ

349雌豚のにおい@774人目:2014/02/03(月) 12:58:08 ID:oT75IB/c
都知事選見て
ヤンデレ選挙っていうネタがなにかできないかなあ
と思ったがアイデアが浮かばん

350雌豚のにおい@774人目:2014/02/03(月) 14:52:37 ID:UjZRD8Wg
>>349
立候補者多数に対して選挙権を持ってるのは1人だけなのな。

351雌豚のにおい@774人目:2014/02/03(月) 16:15:15 ID:t/fcCT4w
選挙活動が激しすぎて、投票日前に全員逮捕

352雌豚のにおい@774人目:2014/02/03(月) 21:31:56 ID:PckXjp1A
キチガイ右翼ちゃんとかキチガイ左翼ちゃんとかフロッピーディスク開発したおっさんがヒロインなんですかね?

353雌豚のにおい@774人目:2014/02/04(火) 17:10:39 ID:eQQWkuQo
>キチガイ右翼ちゃんとかキチガイ左翼ちゃんとかフロッピーディスク開発したおっさんがヒロインなんですかね?

彼を略奪するためなら実力行使も辞さない子
弱者救済こそ正義。それならば、か弱い(と思っている)自分が彼と結ばれるのも正義、と思っている子。
彼に尽くすため薬品肉体改造何でもござれのマッドサイエンティストな子

こうですか、わかりません

354雌豚のにおい@774人目:2014/02/04(火) 19:45:12 ID:PGekmMGQ
彼にはたくましくなって欲しいと徴兵核武装大歓迎、彼を惑わすものなんていらないとメディア規制も大好き、好戦的だけど実は一番臆病で前線には絶対でないひきこもりな支配型ヤンデレ
平和が一番、武装解除こそ平和への第一歩、女子供は保護しなきゃ! と言いつつ実は自分だけは武装バッチリ先制攻撃もどんどんやるよ、弱者? ああ金蔓兼肉壁でしょ、邪魔するなら粛清よ、な凶暴法律無視の腹黒にこにこヤンデレ

なんてことだ、右翼も左翼もヤンデレとつけるだけで全てが萌え要素に見える

355雌豚のにおい@774人目:2014/02/05(水) 16:24:18 ID:Oh.1iUkQ
>>352
おっさんが一人いるんですがそれは大丈夫なんですかね

356雌豚のにおい@774人目:2014/02/11(火) 16:50:51 ID:Yg3VltJ6
ぬ〜べ〜読み返すとヤンデレ要素含んだ話がちらほら。
ゆきめは言わずもがな、ウレ子の話は少し狂気を感じた。

357雌豚のにおい@774人目:2014/02/12(水) 00:14:15 ID:W/zBIYQQ
主人公の男がアフィ管理人でヤンデレの女の子がかまってくれなくなった原因のアフィやめさすために
個人情報ブリ撒いたりアルカイダとかコロンビア国防軍にエントリーさせたりするお話

358雌豚のにおい@774人目:2014/02/12(水) 20:07:28 ID:DuvaSXws
SのヤンデレはいないけどMのヤンデレって少ないよね
ハードなプレイが多くて愛を感じれなくなった彼氏が違う女と遊んだら一気に覚醒とか萌えそう

359雌豚のにおい@774人目:2014/02/12(水) 20:08:21 ID:DuvaSXws
↑撿Sのヤンデレはいないけど
○Sのヤンデレは多いけど

360雌豚のにおい@774人目:2014/02/13(木) 13:16:25 ID:n6pDtZe.
「捨てないで!」って泣き落としにかかるヤンデレとか割とMっぽい気がするけれども、違うのかな。
MらしいドMでヤンデレって、彼氏の方をSにしないと際立たないから、少し難しいのかもね。

361雌豚のにおい@774人目:2014/02/13(木) 22:14:38 ID:wHRNNqhY
チョコに自分の血液を入れるのは
あれはSなのかMなのかどっちなんだ

362雌豚のにおい@774人目:2014/02/13(木) 22:59:11 ID:aFwXmZ8A
自分の血液入れるのはどちらかと言えばMでしょ。
相手を傷つけているわけではないし、
自分の一部を食べてもらって喜んでるんだし。
いわゆる自分を支配されて悦に浸っているわけだしね。

363雌豚のにおい@774人目:2014/02/14(金) 20:15:18 ID:bzdjpTdQ
ヤンデレデーなのに書き込みがないのは寂しいので記念カキコ。

364雌豚のにおい@774人目:2014/02/14(金) 22:35:04 ID:Kb/J/b7s
くったばれバレンタインくったばれバレンタイン
ヤンデレの彼女がいたらハッピーなんだろうけどなぁ

365雌豚のにおい@774人目:2014/02/15(土) 01:42:06 ID:cpokDq0Y
こうしてバレンタインは幕を閉じた

〜完〜

366雌豚のにおい@774人目:2014/02/15(土) 18:05:47 ID:zSa8VsII
逆に考えるんだ。
お前らの知らない所で、ヤンデレっ娘が泥棒猫からのバレンタインチョコを妨害しているんだと。

367雌豚のにおい@774人目:2014/02/16(日) 00:54:28 ID:BuxU3gmE
ちくしょー、二月十五日までに間に合わなかった。
一応バレンタインネタで短編書いたので投下させていただきます。
バレンタインに投下がなく悲しかったので急ごしらえで作ったので色々と酷いと思うけど、許してちょ。
題名は『二月十五日』でお願いします。

368雌豚のにおい@774人目:2014/02/16(日) 00:58:43 ID:BuxU3gmE


「ん、チョコ、あげる」
「お、おう」

 朝目が覚めリビングに行くと、妹がそっぽを向きながら綺麗にラッピングされた箱を突き出してきた。
 突然過ぎて言葉が詰まる。てか思考がマジで止まる。どゆことだってばよ?
 思わず両手で受け取ったチョコの箱と妹の横顔を視線が往復し気付く。こいつ耳赤いけど、もしかして照れてるのか?
 俺が受け取ったのを確認するとそのまま何も言わずに妹は俺の横を抜けリビングを出て行く。通り過ぎる瞬間良い香りが鼻腔をくすぐった気がした。それはチョコのように甘く優しい香りだった。
 俺はあわてて振り向き妹の背中に「ありがとう」と言い、右手に持った箱を振る。中から固形物が動く音が聞こえた。
 妹は足を止めコチラに振り返る。長い黒髪がふわりと舞い上がり妹の満面の笑みが見えた。

「ねえ知ってる? 二月十五日のチョコって嫌いな人にあげるの。ばーか!」

 それだけ言い残し妹は駆け足に階段を上り扉が開け閉めされる音が聞こえた。
 さて、どうしたものだろうか。この中途半端にあげた右手に握られたチョコを。俺の嬉しくて少し緩めてしまった頬を。いっそこのままチョコを地面に叩きつけてやろうか。小気味いい音が響くぞ。俺のくすぶった心が砕ける音がよ……くそが!
 なにが『ねえ知ってる?』だ。お前は豆しばか。捻り潰してあげようか。俺の感動を返せ。最近生意気で憎たらしくなった妹が照れながらも兄の俺にチョコをくれたから、『なんだこいつも可愛いとこあるじゃねえか、これからはもう少し優しくしてやるか』とか思ったのによ。あー、チョコあまっ、うまっ。


 本日は二月十四日、バレンタインというお菓子会社の企業戦略に塗れた夢幻都市伝説となったド畜生日(決して一つもチョコを貰えなくて僻んでいる訳ではない)から一夜明けた二月十五日。
 昨日の風雪は雨に変わり世界を濡らしていく。まるで今の俺の心情を表すかのように……という表現はなかったことにして、雨と雪解けで地面が水浸しになっていることだろう。びちゃびちゃだろう。ふええ、雪ちゃんが雨ちゃんでびちゃびちゃだよぅ、ふええ。なんかエロいな。

 今日は天気も悪いしせっかくの休日だし家でのんびりして、学校という荒波で磨り減った心身を癒そうと思った矢先にこれだ。
 別に妹に嫌いと意思表示されたのはどうでもいい。特筆して仲が良いというわけではなく、お互いがお互いを邪魔ったらしく思っているそんなありふれた兄妹仲をしているから妹のことなんてどうでもいい。あまり繰り返し言うと、実は気にしているんじゃないかと邪推されそうだが本当に妹なんてどうでもいい。どうでもいいんだからね! うん、やめよう。
 そんなことより、あんな妹からチョコが貰えて少しでも嬉しいと思ってしまった自分自身に怒りを覚える。しかもそれを見透かされ馬鹿にされた事にも腹が立つ。思わず怒んパッチになってしまいそうだ。激おこぷんぷん丸だ。ぷんぷん。間違いない。

 内心に怒りの渦を巻き巻きしながら朝食の食パンを食べ終わる。ちなみに食パンは焼いてバターを塗り塗りして食べた。
 食べ終わりホッと一息つくと部屋が妙に静かなことに気がつく。そういえば怒りの余りテレビをつけるのを忘れていた。雨が地面などに跳ね返る音がぼんやりと聞こえてくる。
 なぜだろうか、凄く時間がゆっくり流れているような気がする。電子音の類がなく、雨という自然の音だけが流れる空間。都会の喧騒から外れた田舎町とかで感じる感覚に類似している。まあ田舎なんて小学生の頃以来行った事が無いから実際は知らんが。うち、田舎にすんどらんの。
 だがなんにしても、凄く心地が良い。そして気持ちが良い。

369雌豚のにおい@774人目:2014/02/16(日) 01:01:43 ID:BuxU3gmE

 雨の様子を窓から眺めながら愚妹から貰ったチョコに手を伸ばす。しかしその手は虚しく空を切る。あれ? 気がついたらなくなっている。食パンが焼けるまでの間に口が寂しいからと摘んでいたが、もうなくなってしまったようだ。
 うん? なんで俺は今残念な気持ちが芽生えているのだろうか。花咲か爺さんでも心に飼った記憶はないぞ。しかもどうせ飼うなら爺より可愛いおんにゃの子の方がいいぞ。
 まあ確かに味は甘くて美味かった。ついつい食指が動いてしまう程度には美味かった。だがそれは誰が作っても同じだろう。市販のチョコを溶かして再度固めただけに過ぎないのだから。妹の腕とかでは決してない。本来なら元のチョコを製造した会社に賛美を唱えるべきなのだが……まあ今回は最終加工者である妹に華を持たせてやろう。俺ってなんて良い兄貴なんだろうか。自分で自分に掘れそうだよ。あ、誤変換、惚れそうだよだった。危ない危ない、受け攻めの考察が始まってしまうとこだった。
 それにしてもさっきからなんか俺おかしいな、頭というか思考が。元々おかしいのは自覚がしているが、それ以上に異常を感じる。まあいいか、気にしても仕方ないし。

「ふはああ」と大きな欠伸が漏れる。なんだか眠くなってきた。起きてから余り経っていないが、ねむねむさんがやっはろーしてくる。
 欠伸をスイッチにして思考に靄が掛かったかのように覚束なくなる。心地の良い眠気が襲い思わず体を預けようとするが、このままリビングの椅子で眠るより自室のベッドで寝たほうがいいのではと選択肢が鎌首を上げる。両天秤がゆれ、小さくデフォルメされた天使みたいな可愛らしいキャラクターがクルクルと舞うように回りだす。どことなくその天使が誰かに似ている気がするが、先に結論が出てどうでもよくなる。
 よし、ベッドでぐっすり寝よう。椅子から立ち上がり足を引きずるようにリビングを出て行く。
 あ、さっきの天使、妹に似てる気がしたんだ……まあどうでもいいや。あー眠い。


 ******


 呆けるお兄ちゃんを尻目に階段を駆け上がり部屋に入り、そのままベッドに飛び込む。バスンとベッドが反発する音が響く。
 枕に顔埋め両腕でホールドし、グリグリと擦り付ける。枕の匂いを感じるように、私の匂いを付けるように何度も何度も顔を擦り付ける。はあ、しあわせえ。
 鼻も口も塞がり息苦しくなるがソレすらも幸せ成分に脳が変換してくれる。だが流石に苦しくなって腕の力を抜き、仰向けに転がり焦点の合わない瞳で天井を見つめる。
 荒くなる呼吸と乱雑になる心臓の音が静まった部屋に響く。雨の跳ね返る音が雰囲気を追従してくれる。
 ついに、ついにやった。やっと待ちに待ったこの日がやってきた。
「ばんざーい」と小さく呟き腕を頭の上へ伸ばす。しばらくその体制を維持するが、手の方から徐々に痺れてきて腕を体の横に下ろす。小さなビリビリが這うように流れる掌を掛け布団に擦りつけ痺れを逃がそうとする。掛け布団の感触を楽しみながら、頭が思考旅行を始める。無限の彼方へさあ行くぞ! なんてね。

370雌豚のにおい@774人目:2014/02/16(日) 01:03:16 ID:BuxU3gmE


 今日は二月十五日。待ちに待った二月十五日。
 昔私がまだ小学生の頃、誰かが言っていた。バレンタインの翌日、二月十五日は嫌いな人にチョコをあげる『ブラックデー』らしいと。本当か嘘かは分からない。後に分かったことだがそもそも『ブラックデー』なるものは別の意、別の日にあるらしい。だけどそんなことは正直どうでもいい。
 本当に重要なのは二月十五日は私の誕生日であることだった。じゃじゃーん。
 本日二月十五日、私は花も恥らう十六歳になった。私はこの日を何年も前から待ち続けていた。
 またもや昔話になるが、昔私はとある人と約束をした。私が結婚できる年齢になったら愛してくれると。
 きっとしつこかった私をあしらう為の、その場限りの口約束なのだろうと思う。だが私にとってそれは、かけがえのない約束でどうしても信じたい約束だった。
 そして私は今日で無事に十六歳を迎えた。
 これでやっと私も前進、邁進する事が出来る。そのための準備だってしてきたんだもん。
 その人は以前、つんでれ? という性格の女の子が好きだと言っていたから、ここ数年口調を態度を多少きつくするようにした。今日だってわざわざ抱きしめたい衝動を抑えて、あえてブラックデーを演じたんだし。
 それに手作りしたチョコにだって愛情をちりばめた。まず分かりやすく私を味わって欲しかったから少し血を混ぜたりした。なんだか最近女の子の間で血入りチョコが流行ってるみたいだったし。あとあの薬もチョコに入れてみたし。たしたし。
 その他にもいろいろと手を回し頑張った。私頑張った。えらい。全部うまくいったらいっぱい褒めて貰おっと。

 とりあえず手持ち無沙汰だから布団に潜っていよう。体を捻り縮み転がし布団を被せていく。
 頭まで布団を掛けると、全身が包まれているような感覚に高ぶる。身じろぎをする度にまた呼吸が心臓が落ち着かなくなってくる。

 お兄ちゃん早く来ないかなあ。

371雌豚のにおい@774人目:2014/02/16(日) 01:04:21 ID:BuxU3gmE


 ******


 部屋の扉を開くとベッドに妹が浸かっていた。あれ? 部屋間違えたか?
 一歩後ずさり部屋の中と階段とを視線が往復して確信をもつ。ここ俺の部屋だ。
 ベッドの横まで足を引きずり、顔を覆うように掛け布団を掛けた妹を見下ろす。

「おい、ここ俺の部屋だぞ」

 俺の呼び声虚しく妹は何の反応を示さない。さてどうしたものかと頭を悩めたいところだが、残念なことに眠くて思考が働かない。
 仕方ないから掛け布団の上から妹の肩の位置らへんに手を置き揺らす。そして時々叩く。

「寝るんだったら自分の部屋で寝てくれ。俺はなんだか、とても眠いんだ」

 それでも頑なに退こうとしない妹に溜め息が漏れる。
 どうしたんだこいつ。なんで何の反応もしないままここに居続けるんだ。反抗期か。反抗期なら反発してベッドの外に吹っ飛んでいってくれ、お願いだ。あーもう駄目だ、眠い。

「もうそこに寝てても良いから少し横にずれてくれ。俺も寝たいから」

「うん」と布団の中からくぐもった妹の声が聞こえ、のそのそと壁際の方に体を動かしていく。
 なんだよ、それには反応するのかよ。どんだけ居たいんだよここに。まあいいや、これでやっと寝れる。
 掛け布団の端を少し持ち上げて中に入ると、俺の体重でベッドが僅かに軋む音が聞こえた。体をずらし寝床の調整をしていると手や足が妹に当たる。一瞬触れただけなのに凄く柔らかく滑らかで思わずドキリとするが、すぐに漏れた欠伸が上書きしてくれた。
 俺は妹相手に何を思っているのだろうか、アニメやラノベじゃないんだし。
 自己嫌悪に駆られるがそれすらも眠気の前では無力に霧散する。
 やっと寝位置が安定して思考の瞼も閉じようとした時、背中の方で妹が身じろぎしたのが分かった。そして俺の背中に妹の手が当てられ、その部分が熱く、それなのに心地良い感じが心へと伝播する。

372雌豚のにおい@774人目:2014/02/16(日) 01:05:12 ID:BuxU3gmE


「ねえ、お兄ちゃん? チョコ美味しかった?」

 妹の声が睡眠状態に移行し始めた脳へ染み渡るように響いた。

「ああ、美味かったぞ。ありがとうな」

 自然と思考を挟まない言葉がこぼれる。

「そっか、ならよかった」

 そういえば妹にお兄ちゃんなんて呼ばれたのは久しぶりだな。

「それじゃあさ、今日がなんの日だか覚えてる?」

 いつもと雰囲気が違う妹にどこか違和感を覚える。

「えーと嫌いな人にチョコあげる日?」
「違うよ。もしかして忘れちゃった? 私の十六歳の誕生日だよ」

 あーそうだった、そうだった。今日は妹の誕生日だった。

「そういえばそうだったな。おめでとう」
「忘れてたんだね。酷いよ」

 いや、ど忘れしてただけで覚えてたんだけどな。プレゼントも用意してたし。起きたら渡そう。

「まあいいや。それよりもお兄ちゃんあの約束覚えてる?」

 約束? 

「うん? お兄ちゃんもしかして眠い?」

 ああ。

「そっかあ、じゃあこれだけ答えたら寝ても良いよ」

 うん。

「昔約束した通り、私を愛してくれる?」

 酷く甘い妹の声が心を蝕み脳を溶かす。細い糸で繋がっていた意識が完全に断ち切られ、最後に妹の楽しく笑う声が聞こえた気がした。
 そういえば俺生返事したけどなんて言ったんだろう? まあいいや、眠いしおやすみ。

373雌豚のにおい@774人目:2014/02/16(日) 01:08:23 ID:BuxU3gmE
以上にて投下を終了させていただきます。
お目汚し失礼しました。

投下してなんだがヤンデレ色薄過ぎるな、うん。
ふひひ、さーせん。

374雌豚のにおい@774人目:2014/02/16(日) 02:11:26 ID:Fdh6Du76

こいつらにはヤンデレの妹がいたりするのにやめたくなりますよー人生

375雌豚のにおい@774人目:2014/02/16(日) 05:36:44 ID:wlmTyeQE
ヤンデレと言っても流血沙汰になるものだけじゃないし、
愛する故にチョコに薬物入れるその姿勢、ヤンデレ色ちゃんと入ってたぞ


376雌豚のにおい@774人目:2014/02/17(月) 00:44:26 ID:Bvmsf35s
ぐっじょぶです!

377雌豚のにおい@774人目:2014/02/19(水) 02:22:48 ID:MpBo4Nlc
久々にいいヤンデレですね!GJ!
しかし随分作品投下減ったけど過去にいた人はなろうに行ったのかな?

378雌豚のにおい@774人目:2014/02/19(水) 17:14:48 ID:TKp2zn4Y
ないすヤンデレ!

>>377
なろうは男がヤンデレってのが多いからなぁ
ここで書いてた人も何人か見つけたけどだいたい活動止まってて悲しい

379雌豚のにおい@774人目:2014/02/20(木) 23:40:47 ID:MvPjc9zI
まぁひっそりと楽しめればそれはそれでいいでよ

380雌豚のにおい@774人目:2014/02/25(火) 11:48:09 ID:giLBxtU2
ひっそり観察されたいんですね分かります

381雌豚のにおい@774人目:2014/02/27(木) 01:32:59 ID:eTuE56VI
ぶっちゃけもうここ終わりだと本気で思う

触雷もついにこなくなったし

382雌豚のにおい@774人目:2014/02/27(木) 11:27:36 ID:zTc.RuO2
後ろ向きなレスしても意味ないよ
ネタ出すなりして書きやすい環境作るべし

383雌豚のにおい@774人目:2014/02/27(木) 17:49:07 ID:Jx5ECwQw
一応ココ、年齢制限ありで、ちょっとニッチな属性だからなぁ。
実はこれくらいが普通なんじゃないかな。

ところで、個人的な命題の1つなんだけど、みんなはヤンデレっ娘の相手役はどんな男が好み?
典型的なギャルゲ主人公系ヘタレも良いけど、個人的にはちょっと屈折してるキャラクターの方が好みだったり。

384雌豚のにおい@774人目:2014/02/27(木) 18:18:29 ID:leduEuMM
個人的にはヘタレだとムカつくんで
非の打ち所もない主人公がヤンデレに翻弄されるのが好きだったりする

385雌豚のにおい@774人目:2014/02/27(木) 18:33:45 ID:KnzIooBQ
鈍感でも良いし、根暗で屈折してても良い
ヤンデレに告白されるも、ドッキリだと思って断っちゃうのとか大好きよ

386雌豚のにおい@774人目:2014/02/28(金) 02:00:36 ID:4XKFliOQ
ネタ出すなりして作りやすい環境作る…?

マジ?

387雌豚のにおい@774人目:2014/02/28(金) 06:29:35 ID:Cv8G.hR2
男にも欠点や問題がないとヒロイン病みにくいかもね

388雌豚のにおい@774人目:2014/02/28(金) 20:51:07 ID:xGBm6zro
鈍感か優柔不断が多いような気がする
まあギャルゲの主人公っぽくなるよなやっぱり

389雌豚のにおい@774人目:2014/03/01(土) 00:24:19 ID:ruVyu1zE
もう本スレに戻ろうぜ...

390雌豚のにおい@774人目:2014/03/01(土) 12:16:43 ID:tiwGt4co
向こうの方が過疎ってるんだよな

391雌豚のにおい@774人目:2014/03/01(土) 13:21:06 ID:ruVyu1zE
本スレのほうが外部から新人来ると思うんだけどな。
ここにずっといてもガチで廃村になりそうだ

392雌豚のにおい@774人目:2014/03/06(木) 09:54:54 ID:k2VhEMWI
来週にはホワイトデーか
ヤンデレにもらってたらちゃんとお返ししろよ
さもないと

393雌豚のにおい@774人目:2014/03/07(金) 09:55:03 ID:MmLJGuIw
な、なんだよ
何が起こるっていうんだよ…

だって、彼女が勝手にあんなm rえ

394雌豚のにおい@774人目:2014/03/07(金) 17:18:20 ID:jSvR1hmk
斎藤副部長結構待ってる

395雌豚のにおい@774人目:2014/03/10(月) 03:48:49 ID:2eQ.L/EI
まとめ流出しちゃってるんじゃないのこれ

396 ◆0jC/tVr8LQ:2014/03/11(火) 01:34:57 ID:XHZLX9u6
流れを読んでいませんが、久々に投下します。

397触雷! ◆0jC/tVr8LQ:2014/03/11(火) 01:36:28 ID:XHZLX9u6
今日も、紬屋詩宝君は学校に姿を現さない。
誰も座っていない詩宝君の座席を見ながら、私はため息をついた。
今日で六日目か。その日数には土日の休日を含んでいるとは言え、いささか長すぎる。体調不良だということだが、本当にただの風邪なのだろうか。どうもそうではなさそうだ。
と言うのは、昨日、不穏な噂を聞いたからだ。大金持ちのお嬢様で、学校の支配者でもある中一条舞華の家に詩宝君がいて、何かやっていたらしい。学校での交友関係がほとんどない私の耳にも入るくらいだから、相当広まっている噂なのだろう。
「手遅れになる前に、なんとかしないと……」
誰にも聞こえないような、小さな声で私はつぶやく。詩宝君を助けてあげられるのは、私しかいない。

――――――――――――――――――――

私、成高 清葉(なりたか きよは)が詩宝君と最初に出会ったのは、今の高校に入る前、中学生の頃だった。
幼い頃から内気で友達がいない私は、休日は専ら市営の図書館に入り浸っていた。特に調べたいことや、勉強したい分野があるわけではなかったが、人と話すのが得意でない私にとっては、一言もしゃべらずに時間をつぶせるのがありがたかった。
本棚にある本は手当たり次第読んでいたが、強いて言えば、歴史の本をよく読んでいた。現実社会で無為に近い時間を過ごしていた私に、過去の偉人や英雄の人生は、とても眩しく感じられた。
そんなある日、私は本棚の陰で1人の男の子を見かけた。背は低いが、痩せても太ってもいなくてスタイルはよかった。おそらく、私と同じくらいの年頃だろう。
男の子は、立ったままで本を読んでいた。読んでいたのは以前に私が読んだことのある、古代ヨーロッパ史の本だった。
今まで話し相手のろくにいなかった私だが、もしかしたら、この男の子となら、話題が合うかも知れない。ふと、そんな考えが頭をよぎった。
そこで私は、柄にもなく、男の子に声をかけてみようと思った。
とは言え、もし話しかけて逃げられてしまったら、きっと私はへこむだろう。そうはなりたくなかったので、出入口の方向から回り込むと、斜め後ろから音を立てないようにして男の子に近づいた。男の子は本と図書館カードを手に持って、何やら確認していた。借り出して帰ろうとしているのか。だったらその前に話しかけないといけない。
男の子より、私の方が体が大きかった。身長にして頭半分以上の差があったと思う。そこでその身長差を生かし、覆いかぶさるようにしながら、そっと耳元でささやいた。
「ねえ、君、何読んでるの?」

398触雷! ◆0jC/tVr8LQ:2014/03/11(火) 01:37:52 ID:XHZLX9u6
男の子が振り向く。目が合った瞬間、彼は引きつった表情で、持っている本と図書館カードを取り落とし、声を上げた。
「うわっ!!」
驚かせてしまったようだ。どうしてだろうか?
そうか、と私は思い当たった。これでも私は他の女子に比べて、「可愛いね」と言われることが昔から多かった。胸もその頃からすでに、恥ずかしいほど大きく発育していた。
きっと男の子は、美人でプロポーションのいい私にいきなり声をかけられて、気後れしてしまったのだろう。別に私の容姿なんか、気にしなくていいのに。
私は男の子の緊張をほぐそうと、そっと彼に触れてあげた。スキンシップだ。優しく男の子の口をふさぎ、耳元でもう一度ささやく。
「静かに。図書館で騒いじゃ駄目だよ」
男の子が無言で何度か首を縦に振ったので、私は彼の口から手を離した。
「ぷはっ!」
「ふふっ。初めまして」
「ゆ、ゆ、ゆ、誘拐……?」
「いきなり声かけてごめんね。歴史好きなの?」
「え……? いや、その、まあ、好きですけど……」
やっぱり趣味が合いそうだ。声をかけてよかったと私は思った。
男の子は落とした図書館カードを拾い上げ、ポケットにしまった。さらに本を拾って本棚に戻そうとしたので、私はその手を掴んで止めた。
「わ……な、何を……?」
「その本、よく書けてるよね。私も何度も読んじゃった」
「そ、そ、そうですね……」
そこで私は、その本の内容についていくつか男の子に問いかけをしてみた。読んでいれば会話が成り立つし、読んでいなければそこを教えてあげることで、またお話ができる。
聞いてみると、男の子はかなりその本を読み込んでいた。どうやら前にもこの図書館に来ては、目を通していたらしい。おかげで会話が少しずつ盛り上がっていった。私は、図書館では大きな声で話せないのをいいことに、思い切り顔を近づけて話したが、男の子は逃げることなく、顔を赤くしながらも受け答えをしてくれた。そのうちだんだん緊張もほぐれてきたらしく、敬語でなくタメ口を話してくれるようになった。
話しているうちに、私は感じていた。
これから将来、この男の子が私の側にいてくれたら、今までのような暗い人生に別れを告げられるのではないかと。
そう思った私は、場所を変えようと思った。いくらひそひそ声とは言え、図書館であまり長話すると迷惑になるし、誰に聞こえるか分からないからあまり突っ込んだ会話もできない。もちろん私は、2人で入れるような洒落た店なんか知らないから、自宅に連れて行こうと思った。その日は自宅には誰もいなかったからじっくり話せるし、例えば公衆の面前ではできない行為に及びたくなった場合でも、邪魔されずに実行できるだろう。

399触雷! ◆0jC/tVr8LQ:2014/03/11(火) 01:38:57 ID:XHZLX9u6
「あの、この本について勉強会しない? よかったら……」
そこまで言いかけたとき、幸せな時間が唐突に終わりを告げた。
突然、髪を金色に染めた男がずかずかと入ってきて男の子の手を掴んだのだ。
「あ、アキラっ」
男の子が、怯えた声でその男の名前を呼ぶ。
「ここにいたんだな、シホウ。俺に黙って出かけるなって言っただろ?」
「ど、どうしてここが……?」
「シホウの行くところなんて、お見通しだっての。さあ行くよ!」
「でも、今日はオフだからプロレスのトレーニングはないってアキラが……」
「だから遊びに行くんだよ。早く早く」
男の子の手が引っ張られていく。だが、そのときはまだ、私も男の子の手を握っていた。思わず引っ張り返そうとする。
それに気付いたアキラとかいう金髪の男が、いきなり無言で私の腕に空手チョップを振り下ろしてきた。
「痛っ!」
痛みで手がしびれ、私は男の子の手を放してしまう。はずみで私が男の子に寄りかかると、金髪の男は物凄い形相で私を睨んできた。(よく見ると、私や男の子と同じぐらいの年代だった)初対面の相手に、これだけの敵意を向けられる人間がこの世にいるのか。
そして、金髪の男は私を突き放し、男の子を私から引き離してしまった。
「あっ!」
「アキラ! 何するの!?」
「シホウ、何この眼鏡?」
金髪の男は、顎をしゃくって私を示した。確かに私は眼鏡をかけているが、およそ人を指し示す態度ではない。何という無礼な輩だろうか。
「さ、さっきここで会って歴史のお話を……」
「いや、やっぱ言わなくていい。胸糞悪いから」
そう言うと、金髪の男は男の子の手をぐいぐい引いて、入口の方へ連れて行こうとする。
そんな。
まだ、何も話していないのに。
名前も、住所も、電話番号も、メールアドレスも、本籍地も聞いていない。
好きな料理も、家族構成も、将来ほしい子供の人数も、何も聞いていない。
「ちょっと待ちなさいよ!」
思わず声を上げていた。人を制止するなんて、何年ぶりだったか分からない。金髪の男は私の呼びかけを無視したが、男の子はその場に留まろうと踏ん張った。
「アキラ、まだあの人と話してる途中だったから、ちょっとだけ待っててよ」
「何? シホウ、俺に逆らうの?」
「……!!」
睨まれた男の子は一度ビクッと震えると、諦めの表情でがっくりとうなだれた。かわいそうに。普段から金髪の男に虐められていて、抵抗できないのだろう。
「ごめんなさい。またね」
男の子は私の方を向いてそれだけ言うと、金髪の男に引き摺られ、姿を消してしまった。
これ以上ここで揉めて、他の利用者や司書さんに迷惑をかけることができなかった私は、黙って2人を見送るしかなかった。

400触雷! ◆0jC/tVr8LQ:2014/03/11(火) 01:39:58 ID:XHZLX9u6
「…………」
そして私は1人、図書館の隅の本棚の陰に取り残された。
一体、今の時間はなんだったのだろうか。私を人生の闇から救い出してくれる天使が現れたと思ったら、あっという間に野蛮な原人にさらわれてしまった。
そう。あれは原人だ。まかり間違ってもホモ・サピエンスに属する生物ではない。知性の殿堂たる図書館で乱暴狼藉に及ぶような物知らずが、私達と同じ人類であるはずがない。
もちろん、私は原人を差別する気はない。人類と異なる生命体にも、当然生きる権利はある。
だが、原人の分際で、文明人様に楯突くなら話は別だ。
「ぶっ殺してやる」
よりによって、あの男の子を、この私の人生のパートナーになる男の子を力ずくで連れ回すなんて、どう考えても駆除の対象であるとしか考えられなかった。駆除されるのが嫌なら、原人は別の原人とウホウホ戯れていればいいのに、分を弁えないから身の破滅を招くのだ。
具体的にどうやって始末するかは、いろいろ資料を調べてじっくり検討すればいい。
何しろここは図書館だ。しかるべき本棚に行けば、古今東西の殺人・傷害の方法・記録が閲覧できる。原人駆除の方法の、ヒントが必ずあるだろう。
原人を抹殺したら、私は晴れて男の子と結ばれることができると思った。
男の子は最後に、確かに「またね」と言った。私にまた会いたい。会って話をしたいと言ってくれたのだ。会って話をしたら、その先は当然男女の関係、番(つがい)の関係だろう。私は男の子の言葉を信じることにした。
いや、もう“男の子”ではなかった。
「シホウ君、か……」
原人の発声器官から、その名前を聞いてはいた。しかし、もとより文明人であるこの私は、あんな原人の助けなど借りなくても、彼のフルネームを知ることができる。
「紬屋詩宝君、だね。これからよろしくね……」
私が見ていたのは、彼の図書館カードだった。あの原人に空手チョップを食らい、詩宝君によりかかったとき、彼のポケットに手を突っ込んで抜き取っておいたのだ。
「約束通り会いに来てくれたら、返してあげるからね……詩宝君」
周りに誰もいないことを確認してから、私は詩宝君の図書館カードに口付けをした。そして、そのままブラジャーの中、乳房と生地の間にカードを押し込むと、その日は図書館から引き上げることにした。
図書館を出るとき、私の鞄の中には、「これ一冊で合格 殺しのスキル大全」、そして「ペンギンでもできる らくらく格闘術」、2冊の本が入っていた。

401 ◆0jC/tVr8LQ:2014/03/11(火) 01:40:51 ID:XHZLX9u6
終わります。

402雌豚のにおい@774人目:2014/03/11(火) 11:29:42 ID:bW8IwY.k
GJ
新キャラ登場かー
ますます混沌としてきますねこれは

403雌豚のにおい@774人目:2014/03/12(水) 00:32:30 ID:.ED4cgRM
いやっほぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉう!!!


乙。

404雌豚のにおい@774人目:2014/03/12(水) 07:26:01 ID:jS/TpYig
いよっしゃ来たああああああああ
投下乙!

405雌豚のにおい@774人目:2014/03/19(水) 08:48:44 ID:2sxvGzBE
うーん、この相変わらずのぶっとび思考マンコ共…


やりますねぇ!!

406雌豚のにおい@774人目:2014/03/23(日) 17:27:40 ID:eWpp4g/6
早く続きを読みたいです

407雌豚のにおい@774人目:2014/03/29(土) 07:49:00 ID:.yx6RqoM
もうすぐ4月
ヤンデレが新入社員で入社してきたりしませんか

408雌豚のにおい@774人目:2014/03/30(日) 01:02:28 ID:S06YHK5.
ヤンデレ上司と新入社員がいいです

409雌豚のにおい@774人目:2014/03/30(日) 19:47:50 ID:fd83mDAU
賑やかな会社だな
ヤンデレ以外の女性社員が
いつの間にか一人二人と消えていきそうだが

410雌豚のにおい@774人目:2014/04/08(火) 06:47:30 ID:P0c4knRw
ヤンデレ新入生でもいいんですよ

411雌豚のにおい@774人目:2014/04/15(火) 10:40:55 ID:4drn9.E6
2ちゃんが分裂してお互い正統性主張とか
規模はでかいが色気が全くない修羅場だな

412雌豚のにおい@774人目:2014/04/15(火) 14:52:23 ID:vKeXjnaE
>>408

そのためにも斎藤副部長の更新はよ!!!

413雌豚のにおい@774人目:2014/04/22(火) 08:36:58 ID:lVCuAjlU
ヤンデレ女社長とかなかったっけ

414(†o・):2014/04/27(日) 09:26:33 ID:AWpRgYWk
そのうち、世界規模で《詩宝》さんの大捜索が始まる気がする。

415雌豚のにおい@774人目:2014/04/27(日) 22:58:20 ID:MA74IIaw
馬鹿、間抜け、鈍感、優柔不断、ヘタレ
これらの要素がない主人公のSSってあります?
ヤンデレ系では難しいかな。あ、馬鹿じゃなくて純粋とかならOKです
あと鈍感でも、理由があるなら大丈夫です

416雌豚のにおい@774人目:2014/04/30(水) 21:33:37 ID:ptwI2RMA
ヘタレじゃない主人公は少ないよなぁ

417雌豚のにおい@774人目:2014/05/01(木) 17:22:58 ID:kW8nBVHM
>>415
頑張ってるよなって思う子はちょくちょくいると思う。
『迷い蛾の詩』や(未完だけど)『ウェハース』の主人公はヘタレないラインにいると思うし、すごく察しは良くないけど鈍感ってほどじゃない。ただ、相手や状況が悪かった。
他にもちょいちょいあるんじゃないかな。
ラストでヘタレずに良い方向に持ってった作品もあるし

418雌豚のにおい@774人目:2014/05/01(木) 17:25:05 ID:kW8nBVHM
>>415
頑張ってるよなって思う子はちょくちょくいると思う。
『迷い蛾の詩』や(未完だけど)『ウェハース』の主人公はヘタレないラインにいると思うし、すごく察しは良くないけど鈍感ってほどじゃない。ただ、相手や状況が悪かった。

他にもちょいちょいあるんじゃないかな。
ラストでヘタレずに良い方向に持ってった作品もあるし

419雌豚のにおい@774人目:2014/05/03(土) 14:46:59 ID:qJ0tKvpw
安西先生、サトリビトの続きが読みたいです……

420雌豚のにおい@774人目:2014/05/06(火) 15:42:32 ID:X7QU90aA
いきなりですが投下します。初めて書く側になったのでまだまだですが、温かく見守ってくださいwwww

421三つ子の魂死ぬまで 1話:2014/05/06(火) 15:44:18 ID:X7QU90aA
 三つ子の魂死ぬまで 1話

ピピピピ ピピピピ
俺は睡眠の終わりを告げる音を消ために、しぶしぶ右腕を挙げようとした。だが、腕は動かず、むにゅぅっとした物にあたった。

「…ぁん、おはようございますお兄様」

「おはよう、麗華(れいか)………って、なんで僕のベッドで寝てるの!?」

確か寝る前までは1人で寝ていたはず。なのになんでいるんだ?

「そんなに驚かれなくても、兄妹が一緒に寝ることなんて常識ですよ」

トントントントントンと階段を誰かがを上ってくる音が聞こえてきた。
まぁ、誰かっていってもうちに住んでる人はあと1人しかいないんだけどねーって一緒に寝てた事がばれたら……
朝っぱらからやばくなることが目に見えてくる。

「おい、百華(ももか)が起こしに来るから少しの間布団の中に隠れててくれっ!」
バサッっと布団をまた深く掛け直し寝てるフリをした。「ぁぅ…」っと小さい声が聞こえたがここは黙ってやり過ごさねばっ!そして、ドアがガチャっと開いた


「そーっと、そーっと………ふふ、まだ寝てるのかぁ…キ…して……いいよね?」
ん?よく聞き取れなかったが動いたら色々パーになるから寝てるフリに集中!そして、静かにしていると百華が起こし近づいてきて、顔を近づけ……

「って何をしている!?」
我慢しきれずにツッコミをいれてしまった。や、やらかした…

「ぇ!?なななな、なんで起きてるのよ!?」

「そ、そりゃ学校に遅刻するからなぁ。起きなきゃダメだろ」

「じゃあ、なんで寝てるフリなんてしてるの!!」

「えっーと、そ、それは」

ゴソゴソ…ゴソゴソ…

「あれ?今なんか動かなかった?」

「そ、そりゃ、生きてるから身体くらい動くだろ」

「それにしても不自然だった気がするんだけどー?」

「そそんな訳ないって」ゴソゴソ…

「ほら!また変に動いた!むぅぅ、なんか隠してるな!!それっ!」

バサッ!
「あっ……」



「おはようございます百華ちゃん」
麗華は満面の笑顔で百華に朝の挨拶をした。うん。ヤバイな。だってさっきまで布団に入っててよく見えてなかったけど下着しか付けてないもんこの人。

「な〜んで、麗華が布団の中にいるのかな?しかも、下着で」
嵐の前の静けさとはこの事ですか?

「俺だって知らん!起きたら居たんだよ!」

「うるさい!馬鹿兄貴!だいたい兄貴はいつもいつも「そろそろ支度しないと遅刻しちゃうよ?」

なんで、こんな状況なのに1人だけ冷静なんすか!?

「そうだ!せっかくのお前らの入学式なんだから、遅れたらヤバイな!」

っと2人をドアの前に押して

「こらっ!ちょっと逃げるなぁぁー」

ガチャン!!カチャ


「ふぅー、これで安心だ」
流石に鍵を壊してまでは入ってこないだろう。つか、真面目に時間がヤバイな。パパッと着替えよう。

422三つ子の魂死ぬまで 1話:2014/05/06(火) 15:45:03 ID:X7QU90aA
「「「いってきまーす」」」

父親は単身赴任をし、母親はそれに一緒に行ってしまった為家には誰もいない。そして、今日からはみんないく方向時間が同じになった。元々俺はそんなに頭良くないからいい高校に行けなくて選択肢は少なかったけど1番近い高校に行くことができた。百華に関しても俺と大体同じ感じであるが、麗華に関しては相当頭が良い。なんで、もっと上の高校に行けたはずなのになんで行かなかったんだろ?

「お兄様、朝から難しい顔して考え事ですか?」

「いんや、ただこれからは一緒に行くんだなーって思ってただけだよ」

「本当最悪よねー。明日から私は1人で行く」


俺は少し睨みつつ百華の方を向いた。真っ黒で艶やかな黒髪をポニーテールにまとめており、顔立ちは大人っぽいのにまだ胸は未発達って感じ。こいつ見た目はめちゃくちゃ可愛いのに性格が勿体無過ぎるんだよなぁ。
隣にいる麗華の方をチラッと見ると相変わらずの笑顔だ。逆に麗華は童顔でそれを際立てるようなツインテール。なのに胸はその、全然顔と釣り合ってないくらいに大きい。
申し遅れたが自分達、高峰京介、麗華、百華は三卵生の三つ子である。
んでなんで三つ子なのに学年が違うかっていうと、誕生日が俺だけ4月1日で残り二人は2日なのである。そのせいで学年がわかれることになってしまった。

「1人で行くなんて寂しいこと言うなって。なぁ、麗華」

「そうだよ、百華ちゃんも朝の事は忘れて機嫌直して。せっかくの高校生活の始まりなんだから」

麗華さん?なんで朝の事を出したんですか?今その事関係なかったよね?

「なんで、変態兄貴と一緒に行かなきゃならないの!!ふんっ!!」

怒って走って行ってしまった。そしてそのことを計画してたかのように麗華が俺の右腕に抱きついてきた。

「ちょっと、何してるの!?そ、その胸が当たってるんだけど!それとなんでベッドにいたの!?」

「お兄様のえっち♪それにしても桜が綺麗ですね〜」

学校の校門の近くに着き満開の桜が見えてきた。なんか話をはぐらかされた気がしたけど、いっか。

「ほら、もう校門なんだから離して。みんなに見られたら何言われるか分からないよー?」

「嫌なのですか?」
上目遣いで少し涙目でそう言われた。

「嫌ではないけど……」そんな言葉言われたら妹でもそう答えるしかないよね。

「では!このままで行きましょう」
いつも麗華には主導権を握られてしまう…一応長男なんだけどなぁ、三つ子だけどさ。ここは一つ1年先ににこの学校にいるんだし!

「2年生の下駄箱向こうだからー!1年生はあっちだと思うよー。んじゃまた後でね!」

って言って逃げましたとさ。だって、ダサいけどあの人怒ると百華なんかと比にならないくらい怖いんだもん。そして、新しい下駄箱に行き新しい教室へ向かった。





いつものことながら夜中にお兄様のベッドの中に潜入することに成功♪一回熟睡してしまったら基本的に何やっても起きないのでやりたい放題です。これで朝まで自慰行為ができます。

目を開け時計を見ると6時になっていました。いつの間にかに寝てしまったようです。まだお兄様が起きるまで30分はあります。
ピピピピ ピピピピ
お兄様が目覚まし時計を止めようと右腕を動かしました。いつも右腕で時計を止める癖を知っています。私は両腕でガッチリとホールドし胸を押し当てます。

「…ぁん、おはようございますお兄様」

「おはよう、麗華(れいか)………って、なんで僕のベッドで寝てるの!?」

お兄様は寝ぼけてるようです。ふふ、なんで当たり前の事を聞いてくるのでしょうか?

「そんなに驚かれなくても、兄妹が一緒に寝ることなんて常識ですよ」
っと当たり前の事をお兄様だけに見せる建前じゃない本物の笑顔で答えました。

トントントントントン
百華ちゃんが起こしに来てしまいました。これでお楽しみの時間も終了です…まぁまた今夜もあるので平気です!

「「「いってきまーす」」」

ふふふ、これから1年ぶりの同じ学校生活の始まりです。害虫が近寄らないようにしないとですね♪

423三つ子の魂死ぬまで 1話:2014/05/06(火) 15:46:13 ID:X7QU90aA
投下終了です。まだまだ未熟者です、くっそ不定期になると思いますが2話制作中です。

424雌豚のにおい@774人目:2014/05/06(火) 20:38:33 ID:5xBDGM06
>>423
GJGJ
ぜひ続けて頑張ってくださいな

425雌豚のにおい@774人目:2014/05/06(火) 22:54:22 ID:XVX3jEWc
きたきたきたきた

426雌豚のにおい@774人目:2014/05/08(木) 06:56:06 ID:TjgET9Nk
おつん

427雌豚のにおい@774人目:2014/05/09(金) 01:05:29 ID:uaeZJxDg
ぐっじょぶです

428雌豚のにおい@774人目:2014/05/13(火) 16:51:57 ID:NAaHnJUg
時々『正義のヒーローに恋してしまった怪人娘がヤンデレる』っていう某仮面ラ○ダーみたいな話を妄想するけどうまくオチないんだよなぁ。
「愛のためなら善悪も敵に回す」って恋愛ものとしてはかなりベタなはずなのに…。うおー!

429雌豚のにおい@774人目:2014/05/14(水) 11:23:50 ID:PYDu1U16
ライダーを監禁して洗脳しようとするのか
悪の組織を皆殺しにしてライダーの元へ行くのか
どっちよ

430雌豚のにおい@774人目:2014/05/15(木) 23:51:24 ID:byIdERmk
正義の味方に恋した悪の親玉って似たような話を読んだ気がする

431雌豚のにおい@774人目:2014/05/18(日) 22:24:34 ID:wzUpi79M
寧ろヒーローと怪人娘が相思相愛になって、世界全てを侵し尽せばいいんじゃないの
善も悪も邪魔なものは皆殺し

432雌豚のにおい@774人目:2014/06/02(月) 19:40:21 ID:jY91kz6I
どうせなら正ヒロインもヤンデレ化して修羅場ってほしいんだが
戦力的に勝てないな

433雌豚のにおい@774人目:2014/06/03(火) 14:42:27 ID:cjkOuksM
正ヒロインが変身ヒロインならバランス取れるかと。
この場合悪ヒロが形勢不利だけど、それぐらいで病むのが丁度良いかなって気がする。
>>431
主人公とヒロインで世界を侵し尽くす話がエロゲであったような…いや、プレイしたこと無いんだけどさ。

434雌豚のにおい@774人目:2014/06/11(水) 07:39:34 ID:YqqDw0oU
どーにも書く気力が沸かないので
アイデアのヒントとして聞きたいんだが
おまえらヒロインのストライクゾーンってどの辺り?
二十歳越えたらBBAとか一桁はさすがに引くとかあるか?

435雌豚のにおい@774人目:2014/06/11(水) 13:17:40 ID:ADQN0JzY
個人的にはフィクションのヒロインとしては、上は二十代後半くらいがギリかなー。
社会人のおねーさん(上司)くらい
下は少なく見積もっても10歳未満だとさすがに引く。
あくまで俺の意見だから、ほかに色々あると思う。
人妻ヒロイン=主人公の嫁さんがヒロインってのもあるしね。

436雌豚のにおい@774人目:2014/06/12(木) 23:13:36 ID:rmlFSNSQ
ストライクゾーンで言うと、上は30代ぐらいで下だったら一桁でもいけます。グフフ
という性癖はまあ置いといて、正直な話主人公の年齢によると思う。
多分主人公の年齢の上下10歳以内ぐらいだったらそんな抵抗はないかも。

437雌豚のにおい@774人目:2014/06/13(金) 13:31:25 ID:Ggfqdnag
ファンタジーのロリババァ500歳とかいう設定も( ・∀・) イイネ!
まぁ一桁でも流石に8~10歳くらいが下では許容範囲内です
上は美しければ40くらいかな?

438雌豚のにおい@774人目:2014/06/20(金) 13:05:37 ID:gE2.9x5Q
今日の夜、短編投下予定です
見てくれると嬉しい
でもあくまでも予定w

439雌豚のにおい@774人目:2014/06/21(土) 00:50:14 ID:97VVo.CU
まだかな

440雌豚のにおい@774人目:2014/06/21(土) 01:16:18 ID:M2.d2NMg
>>439
すみません
今帰ってきました
書き溜めしてないので遅くなります

441私のヒーロー:2014/06/21(土) 03:03:11 ID:M2.d2NMg
私のヒーロー

私は小さい頃、いつも苛められていた。だがその苛めの理由なんて些細なことだった。
口数が少ないからキモい。これだけの理由だった。私は学校ではいつもひとり。おまけに声も小さい子だった。だがそれが周りの子たちに悪影響を及ぼしたのだろう。まぁ私自身なにをそんなに気分を害したのは分からないのだけど・・・。
それでその苛めの内容は学校帰りに公園へ連れてかれてただひたすらに罵倒されるというものだった。実際に手を出されたことはない。
まだ優しい苛めではあっただろうが、小さい頃の私にはこれでもかというぐらい心にショックを受けていた。
はっきり言って学校には行きたくなかった。行けばまた苛めらる・・・。でも行かないと両親に心配をかけてしまう・・・。家に帰るといつもこんなことばかり考えていた。夜遅くまで葛藤するが結局学校へ行ってしまう。これが私の日常だった。
そんなある日、私をこんな日常から救ってくれたヒーローがいた。
それは、私がいつも通り公園でいじめっ子たちから言葉の暴力を受けていたときだった。

「おいっ!!やめろよ!!その子泣いてんじゃねか!!女の子を傷つけたらダメなんだぞ!!って母さんが言ってたぞ!!」

いきなり私の前に男の子が現れた。私にはそれが救いの女神に見えた。
少年は私を苛めていた子たちを追い払ってくれた。
そしてしゃがんで泣いていた私の目の前にきた。

「キミ大丈夫?ケガとかしてない?」

「グス・・・・・・うん。してないけど・・・どうして?」

「どうしてとはどういうことだ?も、もしかして迷惑だったか!?ごめんな!!そういう遊びだったとはオレ知らなかったんだ・・・。邪魔してごめんな」

少年は土下座する勢いで謝ってきた。何を勘違いしているのだろう。これをごっこ遊びだとでも思ったのだろうか?

「ち、違うの・・・。どうして助けてくれたの・・・?私なんか助けても何も得なんかないのに・・・」

「あ、なんだやっぱり合ってたのか。俺の早とちりじゃなくてよかったよかった」
少年はうんうんとうなずいている。

「いや、だからあの・・・」

「ん?どうして助けたかって?そりゃあ女の子が泣いてるから。逆にこれ以外に何があるの?」
これ当たり前!と言ってまたうなずいている。

私が・・・泣いていたから・・・?それだけ?
それだけの理由で危険を顧みず私のために飛び込んで来たとでもいうの?

「・・・・・・ろー」

「え?なに?」

「ヒーロー・・・!!私のヒーローなのね・・・!!!」

私の口から出た単語はヒーローという言葉。これほど的をとらえている言葉はないだろう。

「ヒーロー・・・いい響きだなそれ!!気に入った!!お前名前は?」

「・・・るな。水崎瑠奈・・・です」

「ルナっつうのか!いい名前してんな!!オレの名前は桐谷雅!!・・・っと、もう帰る時間だぜ!じゃあなルナ!!」
そう言うと少年は踵を返し走って行く
あぁ、行ってしまう。離れたくない・・・。
私は意を消して声をかける
「あ、あの!!また会ってくれますか?」

すると少年はゆっくりこちらを振り向いてこう言った


--------おう。俺はいつでもお前のヒーローだ!!だからまた困ったがあったら俺に言えよな!!
走り去っていく。ついに彼の背中が見えなくなった。

「私の・・・私だけのヒーロー・・・・・・!!!!ふふ、ふふふふふふふふ」
雅君私ね、さっそく困り事があるの。
それは・・・------------

442私のヒーロー:2014/06/21(土) 03:08:26 ID:M2.d2NMg
短編ですけど続編あるかもしれないです
今みたいに遅くなるのがアレですけどね・・・

443雌豚のにおい@774人目:2014/06/21(土) 09:04:17 ID:zImAkXF.
投下乙
今まで読み専だったが俺も何か書いてみるかな…

444雌豚のにおい@774人目:2014/06/21(土) 13:29:01 ID:dqzxz9Ws
>>442
ぜひ続きを書いてくれい

445雌豚のにおい@774人目:2014/06/22(日) 00:35:41 ID:KGLDT/.A
ぐっじょぶです!

446雌豚のにおい@774人目:2014/06/22(日) 16:33:02 ID:IJcrXyHI
あっ、これウザい型主人公だ
成人後はまともになっててくれと願う

447雌豚のにおい@774人目:2014/06/23(月) 18:35:46 ID:oUOWYRgU
今日の夜「私のヒーロー」続編投下予定です
前と同じで帰りが遅くなって夜中になる可能性が大です
それでも良い方は閲覧お願いします

448雌豚のにおい@774人目:2014/06/24(火) 09:52:44 ID:4HeElicM

投下は今日になるのかな?

449雌豚のにおい@774人目:2014/06/24(火) 22:35:14 ID:nbsK2gtg
すみません
投下は明日になりそうです
これから明日まで外に行くので……
それとどんなヤンデレが好みか教えて欲しいです

450雌豚のにおい@774人目:2014/06/25(水) 00:55:21 ID:eZ8zj0Rg
好きなヤンデレかー
やっぱり、主人公のことが大好きで
主人公のためなら平然と全てを切り捨てれる感じですかね
あと決して主人公にだけは危害を加えない、できる限り迷惑をかけない感じかな
つまり尽くすタイプ

451雌豚のにおい@774人目:2014/06/26(木) 12:27:51 ID:S7Y9pX16
強すぎる愛、愚直な愛ゆえに狂っちゃうコかなー。
好き過ぎるくらいに好きだけど、それが報われなかったり、すれ違っちゃった結果狂っちゃうパターン。
外堀を埋めたりとかうまくできないような、不器用な子だと尚良し。

452 ◆uRnQeEDhQY:2014/06/26(木) 21:06:09 ID:V./FX/XI
昔書いていた者ですが、トリップキーを忘れてしまったので新たに。

一応短編ですが、少し長いかもです。
お暇があればどうぞ。

453Jewelry girls ◆uRnQeEDhQY:2014/06/26(木) 21:07:24 ID:V./FX/XI
宝石のような瞳をしている少女を、俺は三人知っている。
少し、その話をさせてほしい。
俺の今迄の人生の中で、特別に仲のいい女子はいなかったのだが高校がどうやら人生の転機だったようで、そこで俺は三人の少女と会った。

赤峰裕理(あかみねゆうり)――そのルビーのような瞳に、俺は力強い元気を感じた。

 「あたしは、あんたが好き。――隠すことなんてねーじゃん」

青須美紀(あおすみき)――そのサファイアのような瞳に、俺は静かな知的さを感じた。

 「はぁ、あなたはいつもそう――心配だから傍にいてあげるわ」

神透明(かみすきあかり)――そのダイアモンドのような瞳に、俺はすべてを包み込むような優しさを感じた。

 「笑お――君と一緒なら、私は何より楽しい!」

三人の少女たちは、色は違えど、性格は違えど、秘めたる思いは一途であり、とても前向きでひたむきで魅力的な少女たちである。どこまでも彼女たちは輝いていて――それはもう、宝石のように輝いていて、見る者を魅了してしまうのだ。
それが力であることを、彼女たちは知っていて――。
それが持つべきものの力だとわかっていて――。
だからこそ彼女たちは、俺に言ったのだ。
三者三様の言葉で、どれも彼女たちの性格を直接あらわすものであったし、言われた俺は、それはドキドキしたものだ。

――赤峰裕理は、率直に言ってみせた。
6月24日の放課後に俺を運動場に呼び出したかと思いきや、いつまでも陸上部の練習で走っていたので俺は待ちぼうけを食らうことになってしまった。別にそんなのは構わない。確かに彼女は長距離ランナーであるから途中でやめることなんてできないし、そろそろ試合なので練習も大事だ。応援の気持ちを胸に抱き、待つこと数分。汗をタオルでふきつつ、ペットボトルにその潤った唇をつけながら俺に近づいてきた。
ショートの髪をくしゃりと触って整えて、その釣り目が僕をとらえた。
心なしか顔が赤い――練習のせいか、はたまた夕日のせいであろう。
お疲れ、と俺が言おうとした瞬間、抱きしめられた。
男の身では一生、こんな匂いはできないのだろうなあと思うほどの、女の子のにおい。汗のにおいなんて気にならないほど――いや、汗のにおいが好きになりそうなくらいにいい匂いだった。
 「にゃはは、ごめんね。汗臭いかもしれないけど少し待って」
そんなことはない、と言いたいが、うまくろれつが回らない。
あぐ、とか、うぁ、とか言っている。
「あたし、思い立った時にしないと、だめだから」
耳元でボソッとつぶやいたと思ったら、次の瞬間赤峰の顔がすごく近くに感じて――
「あたしは、あんたが好き。――隠すことなんてねーじゃん」
――キスをされた。

――青須美紀は、罵倒しながら言ってみせた。
 「本当に使えないグズね」
放課後に生徒会室へ来い。そういった内容のメールが来ていたことに、6月24日の放課後になって気づいた。彼女は生徒会長であり、俺はいつも雑用係として呼ばれていたのだ。
やばっ、と思いつつ生徒会室に言った結果が、まあいつも通りの罵倒であった。心底虫けらを見るかのような瞳で俺の方を見てくる青須は、いたって普段通りである。
 「犬だってもう少しはまともに動くのに……あなた生きている価値あるの?」
あ、はは。とかなんとか、気づかなかった俺も悪いので苦笑いをして過ごす。
ふんっ、と一度鼻を鳴らしたかと思うと、先ほどまで座っていた机から降りた。
流麗な髪が、夕日に反射して美しくなびいている。この瞬間を一生とどめておきたいほど綺麗なその姿は、俺の顔を赤くさせるのに十分な要素で、それを隠すためにそっぽを向いた。
 「…………ふふっ。あなたはいつも正直ね。だからいつだって――損をしてきた」
どうやら俺の思惑はばれているようで、青須は笑って見せた。どういうわけかわからないけれども――最後に少し悲しい目をして。
 「後ろを向きなさい」
いつも脈略ないよな、青須は。そんなことを俺は言いつつ、いきなりの命令にも、普段から培われた下僕精神からすでに後ろを向いていた。
俺が後ろを向くや否や、俺は背中からの重量に戸惑った。青須が後ろから抱き着いているだろうという事に、少し経ってから気づいた。
赤峰とはまた少し違ったいい匂いがする。
えっ、とかなんとか間の抜けた声を出して、振り返った時だろう。
青須の顔がすごく近くに感じて――
「はぁ、あなたはいつもそう――心配だから傍にいてあげるわ」
――キスをされた。

454Jewelry girls ◆uRnQeEDhQY:2014/06/26(木) 21:08:13 ID:V./FX/XI
――神透明は、笑いながら言ってみせた。
うっすらと目を開けるのと同時に、後頭部に鈍い痛みが走った。
 「――ッうぅぅ」
 薄暗い部屋で俺は目を覚ました。うめき声を上げると今度は体の節々が痛み始め、どうやら鎖か何かで椅子に巻き付けられているようだと気づく。
 こんな状況で冷静になどなれるはずもなく、あたふたと顔を左右に振った。ほとんど意味も分からぬまま、あたりを見渡してみる。
部屋の中で、目の前の机にろうそくが一本おいてあるのがすぐに気付いたが、そのろうそくの明かりでは、この部屋の全容をつかむには少し頼りなかった。何とか目を凝らして眺めてみると、コンクリートで壁をおおわれて、窓の一つもない部屋だと気づく。あるのは、目の前に段差つきのドアがあるくらいであった。
ここまで来ると少し頭が働いてきたようで、焦りにも似た何か得体のしれないものが体全身を突き抜けた。これが恐怖なのだろうか。
「……………な、なん、だよこれはっていてえええええええええええええ」
口を動かすと、後頭部の痛みがきつくなる。まるでめり込んでいるかのような感覚にたまらず手で押さえようと試みるが、そもそも拘束されているために、そんな真似は出来なかった。ただただ、動かそうとした四肢を締め付けるかのように鎖がガチャガチャと鳴る。ただ、手に手錠と、胴体に鎖が巻いてあるだけなので足だけはじたばたと動かせた。この耐えようもない痛みをとりあえず、力学的エネルギーや音エネルギーに変えておく。
ドンドンドンドン、と足音が反響するのを聞きつつ、ようやく収まってきた痛みをほっとした気持ちで享受していた――その時であった。
ガガガガ、とどう考えても普通の扉を開けるような音ではなく、古びて錆びついているものの重厚さを感じさせる鉄扉が開いた。
 「くぅ、……ぁ」
 扉の先からはすさまじい量の光が差し込んできた。といっても、この部屋の暗さから相対的に錯覚しているだけなのだろうが、とにかく俺は目を細めた。その際に見えるシルエットが、そしてその声が、俺には信じられない人であり、肝を冷やす。
 「おっはよぉー」
 そのあどけなく、あけすけな表情と、子どもっぽい声。ふわふわとした髪に透き通るような白い肌。その体躯は150センチにも満たない、俺たちの学校のアイドルである――
 「こ、こんばんは。神透さん」
 俺は驚きを隠せないまま、間の抜けた顔をしながらだったと思うが、とりあえず返答しておいた。
 「やだなぁ、君は。もう朝だよ? こんばんはの時間じゃないよぉ。……あ、それとも君なりのジョークってやつ? なかなかやりますなぁー」
 にこっ、と。この状況下に一番ふさわしくないような少女が、一番ふさわしくない笑顔で言ってみせた。そうか今は朝なのか。こんな暗い所にいたから夜だと思っちまったぜ。
 「そ、そうでしょ、あ、あははははは」
 あ、だめだ、乾いた笑いしか出てこない……何を言っているのだろうか俺、もっと聞くことは他にあるだろう。なんてことを思っているうちに、神透さんは俺の方へと近づいてきた。
 「うん、やっぱり君は――面白いっ。うん!」
 もうパンク寸前な俺であったが、そんな俺の心情は露知らずといった様子で、俺の肩に手を触れ、顔を覗き込む。
 一抹の恥ずかしさを感じつつ、一度は顔をそらした。その大きな瞳やかわいらしい容姿で見つめられるのが恥ずかしかったからだ。そんな俺の姿を見て一度、ふふっ、と上品でかわいらしい声を上げた神透。こっちを向いてよ、と一言言われた俺は魔法にかけられたかのように神透の方を向いた。
すぐ目の前に、少し顔が上気した神透の笑みがあって――
 「笑お――あなたと一緒なら、私は何より楽しい!」
――キスをされた。

455Jewelry girls ◆uRnQeEDhQY:2014/06/26(木) 21:09:51 ID:V./FX/XI
「さて、と。ご飯はここに置いておくね」
 キスをされたのち、えへっ、とかわいい笑いをした神透は一度扉の外に出てからおいしそうな料理の乗ったお盆を目の前の机に置いた。そしてそのままこの部屋を出て行こうと――
 「ちょっと待って、何事もなかったかのように話を進めないで! ……というかごはんって何! え、あの、えっ?」
 「んにゅ?」
 「そんな可愛く振り返ってもダメだよ、神透さん! 今いったいどういう状況なのか説明してくれよ!」
 「? あ、あぁーなるほど。うん、そういうこと。私がどうして君の料理を作って来たのかを知りたいと。……やだなぁ、いじわる。そんなこと言わせようだなんて」
 「うん、確かにそれも疑問の一端と言えばいったんなんだけれども、いま俺が一番聞きたいのはそれではなく、どうして俺がこうやって椅子に鎖で巻き付けられているのかであって――」
 「妻が夫の料理を作るのは当たり前なことなんだよぉ」
 「え、聞いてる? 俺の話を少しは聞いて!!」
 「えー、もお、ほんとに甘えん坊なんだから。……はい、あーん」
 そういって神透さんはビーフシチューを一すくいして俺の前に出してきた。
 「何かが完全にかみ合っていないッ!?」
 「熱くて食べられないの? 仕方ないなぁ。……ふぅーー、ふぅー」
 「…………」
 ――ん、あれ、今一瞬……気のせいかな。
 かわいらしく、すくわれたビーフシチューに息を吹きかける神透を見ていると、なんだかなごみそうになっているが和んでいる場合ではない。
 何かはわからないが、きっとおれのピンチであることはわかっていた。
 それからしばらくの間、俺の話を全く聞いてない神透さんは俺にご飯を食べさせ続けた。正直いろいろありすぎて腹には入りそうになかったのだが、神透がずっと同じスピードで、時には無理やり俺にご飯を食べさせ続けたので、口の周りをべたべたにしながらもなんとか完食できた。
 「ふ、ふぅ。……ところで神透さん」
 「あ、か、り。でしょ?」
 「え、その、あの」
 「夫婦なんだから」
 ご飯を食べたおかげかはわからないが、少しだけ心に余裕ができた。単に少し慣れてしまっただけかもしれないが。
 とにかく俺はこの時点でやっと、先ほどから神透が言っていることに違和感を覚えた。
 ふ、ふうふ? ふうふって……あ、だめだ。夫婦、以外の字が見当たらない。
 「いや、うん、あの……ちょっと待とうか神透さん」
 「あーかーり」
 「あの、あ、明さん」
 「………………………………明だって言ってるよね?」
 「明!!」
 とっさに明と叫ぶ。
 な、何だろう。今俺の中にある全細胞が危険信号を出したんだが。
 「うん、なーにダーリン?」
 まさか18歳でダーリンと呼ばれる日が来るとは……。
 「あの、ふ、夫婦って?」
 「お互いの合意により適法の婚姻をした男女の事だよ?」
 「そんな広辞苑的な意味合いでは聞いてない……」
 「要は、お互い〝浮気〟しないことを神様に誓い合ってエッチしまくることだね!」
 「歪んでいる、その認識はきっと歪んでいるぞ! 明に何があったんだ!?」
 間違ってはいないような気もしないように思えるが、そんな言葉を18歳の少女が言いきってしまうことがすでに間違っていると思う。
 「え、つまり俺は明と婚姻、結婚したってことなのか?」
 「うーん、厳密にはまだ」

456Jewelry girls ◆uRnQeEDhQY:2014/06/26(木) 21:10:36 ID:V./FX/XI
 「厳密という言葉にそこはかとない不安を感じるが、とりあえずまだ夫婦ではないと」
 「法律上はねー」
 「法治国家で良かった!」
 「でも、この場じゃ私が法律です。好き勝手します」
 「治外法権!? それはもう圧政のレベルだろ。三権分立を要請する!」
 「でも法律なんて気にしてたら、世の中苦しいことばかりだよー。……放火魔さんや殺人鬼さんはどう過ごしたらいいのさぁー」
 「やめてっ! そんな幼い顔で恐ろしいことを言い出さないで! その人たちには刑務所でじっとしていてもらおうよ。……ていうか明はそんなキャラじゃなかったよね、高校三年間一緒なクラスだったけれども、いつだって周りに気をかけて、クラスが一丸になって頑張るためのアイドル的な存在で、その笑顔が男子の心を虜にしてて、お嬢様で、性格も容姿もすっごくよくて、みんなのあこがれの的で――」
 「君の嫁であると」
 「――そうそう、俺の嫁で……ってちがーう!」
 「あはは、一人ノリツッコミだ」
 「そのツッコミはおおむね正しいけれど、今ツッコむべきはそこじゃない!」
 「え、あ、ぁの……突っ込むべきは、それはお前の局部だーってことですね。さ、さっそくエッチな話ですかぁ?」
 「頬を赤らめるな、エッチな話などしていない!」
 「だって、突っ込むって……夫婦がこんな暗い部屋で二人っきりで、突っ込むって」
 「あぁ、もう。日本語って難しい!」
 はぁはぁ、と。到底ありえないような今の状況に相極まって、まったく意思疎通のできない明との口論に疲れがたまる。声を荒げたせいでのどがカラカラになってしまった。
 「でも、これだけは何度でも反論せねばならないだろう。俺と明、夫婦じゃないんだよね?」
 「いえ、夫婦です」
 「法律上は」
 「…………………そう、ですね。Law的にはcoupleでありませんが、soul的にcoupleです」
 「ねえなんで、いきなり英語で言い出したの? ソウル的に夫婦って何よ。俺のソウルも考えて。それにちょっと発音がうまいのが癪に障るじゃん……ってまあいいよ。とにかく俺たちは夫婦じゃない。……でさ、今この状況は何?」
 一周廻って落ち着いてしまった俺は、ようやくこの質問ができた。
 やっと聞けたよ、一番聞きたかったこと……長かったなあ。
 目が覚めてから一時間ほどたって、ようやくの事であった。
 「この状況って?」
 「つまりは、俺がこの……どこだかわかんないけど地下室? みたいなところにいて、鎖で椅子に巻き付かれていることなんだけど」
 「? よくわかんない」
 「よくわからんとですかっ!? この状況ですよ。あなたの目の前に広がるこの状況がどう考えてもおかしいじゃん!」
 「夫婦なのに?」
 まるで夫婦ならこの状況が看過できるかのような言い方だった。
 「俺たち夫婦じゃないじゃん! それにこれはもう夫婦とかなんとかいう問題ではなく、監禁とかの類の犯罪だぜ?」
 「愛ゆえだよ!」
 「誇らしげに語るな! 愛があれば何でもしていいと思ったら大間違いだッ!」
 俺が明のトンデモ理論に反論した、その時であった。

 「愛ゆえの過ちを犯すなら――私は何もためらわないよ?」

 「ぇ、う……」
 な、なぜだろう……彼女の言葉に背筋が凍るように感じるのは。その表情のない顔に、冷汗が浸る。

 「むしろ愛を邪魔する物こそ――者こそ、過ちだよ、存在が」

 明の瞳が、部屋の暗さだけではなく、それ以上に暗く見えた。まるで何かに黒く塗りつぶされたような……そんな明の姿に俺は恐怖してしまった。
 「あ、え、その……」
 ふいに明が顔を伏せつつ、俺を縛ってある鎖を掴んだ。グググ、と聞こえるほど強く握りしめているのだろうが、それを気にすることなく、前後に揺らす。椅子が揺れる浮遊感にも似た感覚と、ガチャガチャガチャガチャ言い続ける鎖が、なんだかさらに恐怖を駆り立てた。
 
「存在が存在が存在が存在が存在が存在が存在が存在が存在が罪、罪罪罪罪罪罪罪罪罪罪罪罪罪罪罪罪罪罪罪罪罪罪罪罪罪罪罪罪罪罪罪罪罪罪罪罪罪罪罪――ねえ、そう思わない?」

明が一瞬にして顔を上げた。あと30センチでキスができる場所に明がいる。でも、これは、明なのだろうか。あの朗らかな笑みを浮かべる明とは思えないほど、無表情で――黒かった。何が黒かったといわれると困るが、俺が、人間の印象を色で認知してしまうほどには、明は狂っていたのだろう。それとも俺がつかれていたのか。

457Jewelry girls ◆uRnQeEDhQY:2014/06/26(木) 21:11:10 ID:V./FX/XI
「そ、う、思うよ」
でも俺はこう返すことしかできなかった。
 「でしょー」
 俺の言葉に満足したのだろうか。いつものような満面の笑みに戻った明は鎖から手を離し、俺から離れていく。
 やばかった、何かはわからないが取り合えず、やばかった。
 ――ん、シチューの時も思ったけどやっぱりこの匂いは……それに、鎖が。
 「………………」
 落ち着け、俺。
 現状を少し整理しよう。――間違えれば死ぬかもしれないぞ。
 俺は静かに目を閉じた。
 「ん、あれ……おーい、寝ちゃうの?」
 俺の記憶が確かだとするならば、最後に残っている記憶は6月24日の帰り道。放課後に赤峰裕理に呼ばれた後、青須美紀に呼ばれた日だ。……あの二人の告白には相当ビビったが。
 顔を思い出す。
 ルビーのような少女と、サファイアのような少女。
 そして、
 「あれぇ、寝ちゃったのかなあ」
 ダイアモンドのような少女。
……夫婦とか言ってる限りは、神透明から好意は持たれている……のだと思う。それはとてもありがたいことなのだが――すごく嫌な予感がするんだ。匂いのこともあるし、何というか、彼女からは危険な感じがする。ここは早く脱出する必要があるだろう。
それに今のこの状況。詳しくはわからないが神透明が手引きしたとして間違いないだろう。……本来はそれを最優先に知るべきだが、今の神透明の様子では正しい答えが聞けるとは到底思わない。
「ほへー、仕方ないし書類書いてよーっと」
だったら優先すべきは、とりあえずここからの脱出であろう。脱出したのちに、警察……はやりすぎなのかもしれないが、とりあえず、家に帰って、それから赤峰裕理と青須美紀に会って……。
そうと決まれば何とか、神透明の隙を突かねば……そして脱出しよう。
俺は目を開けた。
目の前ではちょうど明が何かを書きおえたようで、よしっ、と小さな声を上げて大切そうに紙を胸の前で抱きしめるようにして持ってこちらに振り返った。
「さて、エッチしますか」
いきなりとんでもないことを言い出す。この子は頭のねじでもとれたのだろうか。
「いやちょっと待とうよ」
「ふう、エッチしました」
「一瞬にして脱童貞!?」
「子供もできちゃいました」
「いきなり俺が父に!」
「名前は、そうですね……明と書いてあきらと呼ばせましょう」
「母とまったく同じ名前の漢字はややこしいわッ!」
「では、君の名前と私の名前を合わせて――」
「いいっ! いいから、俺の名前なんてどうでも!」
「えーかわいいと思うんだけどなぁ、君の名前」
「………あんまり好きじゃないんだよ、かわいいというか、合わないんだよ俺に」
「だから呼ばせてくれないんだよねー」
「トップシークレットにしておこうぜ」
「でもここに書いてあるんですけどね、ちゃんと」
そういって明は手に持っていた紙を広げて俺に見せてくれた。
「でしょ、ここにちゃんと君の名前である、き――」
「おい」
明の言葉を遮る。
俺はその紙を見て動揺を隠せなかった。
 「なにー?」
 「ウェイトアミニッツ」
 そして、あまりの動揺に多言語が混ざった。
 「…………あ、Wait a minute。ちょっと待って、だね」
どうやら俺の発音が悪かったみたいだが、少し考えるそぶりをした後に、ちゃんとした答えを導き出した。……だから発音うまいのが逆に癪に障るわ。
 「ちょっと待ってって言われても……でも祝言は早いうちに挙げとかないとー」
 明の持っている紙には、確かに俺の名前が書いてあった。それだけではただの紙切れであろう。しかし、問題なのは……その紙の左上には、婚姻届け、と書いてあったことだ。
 婚姻届けから目を離せない俺は、上から下まで食い入るように見てみると、この婚姻届けはすべての欄が埋まっていることに気づく。書いた覚えのない俺の名前を筆頭にすべての欄が書いてあった。俺の名前の横にはハンコが――てか血印じゃねーか。どおりでさっきから親指あたりに痛みがあると思ったわ。
 「も、もうこの際俺の欄は許そう。この異常な流れもだんだん慣れてきるし、だ。……ただ、親権者の欄に親父の名前が書いてあるのはどういうことだ!? それちゃんとした親父の字じゃないか!」
 「お願いしたら書いてくれたよぉ?」
 「あんのクソ親父ッ!」

458Jewelry girls ◆uRnQeEDhQY:2014/06/26(木) 21:11:38 ID:V./FX/XI
 「これを出して来ればlow的なcoupleだね」
 やばいやばいやばい。
 俺の知らないところで本当に妻が決まってしまいそうである。
確かによく考えると、明みたいなかわいいこと夫婦になれるなんて普通なら想像を絶するほどの喜びだ。将来も明るい家庭を気付けていけそうな気がする。
「…………それでも」
俺は目を閉じる。
 だが、それでも、俺は――。
 俺が好きな人は――。
 俺は目を開けた。
 「――神透明」
 今までとは違う。声を少し硬くして、腹の底から黒い声を出した。
 「…………何かな、いきなり真面目さんだぞ?」
 少し言いよどんだ神透明であったがその顔から笑顔を絶やさず、こちらを向いてくる。その顔を俺はまっすぐに見つめ、言ってやった。
「さっきから聞きたかったんだけど」
 「ん、何ー?」

 「――どうして、明の体から、ガソリンのにおいと、血のにおいがするのかな」

 「…………………………………………」
 本当は、シチューを食べている時くらいから気づいていた。怖気づいて聞けなかっただけだ。
 放火魔さんと、殺人者さん……ね。
 先ほどの言葉を思い出し、俺は唇を少しかんだ。
 「ふうん、やっぱり君はさえてるねー」
 「………そりゃどうも」
 「あれでしょ、さっきから私の話に合わせていたのも油断を誘うためだったわけだし、この部屋をしきりに見回していたのも、ここから脱出する手立てを考えていたからなんでしょ。私が近づいた時はいつも臨戦態勢に入っていたし、婚姻届けの筆跡とかにも気づいたし――きっと私が気付かないところでいろいろ気をまわしていたんだろぉねえー。ふふふ、それでこそ君なんだよ。……普通監禁されているってわかったらそこまでできないよ? だって君は、他人の心配しかしていない」
 「買いかぶりすぎだ。今だって後頭部の痛みを早く手当てしたいと思っているだけさ」
 「まあ、よく死ななかったなぁとは私も思ったよ」
 「やっぱり明が何かしたのか! めちゃくちゃ後頭部が痛いのはバットか何かで殴られたからなのか!?」
 「そのことはお互い水に流そうよぉ」
 「そのセリフは?お互い?に過去のいきさつをとがめないことを言うんだ。今の状況には合わない」
 またしてもペースを崩されたが、今度は逃がさない。
「…………で、どういうことなんだ。ガソリンのにおいと血のにおい……答え次第によっては、明を警察に連れていく」
 「魚を血抜きして焼いたんだよ」
 「ガソリンでかっ!? つくならもっとましな嘘をつけ!」
 
 「人を殺して家を焼いたんだよ」

 「―――ッ」
 今までの雰囲気が消えた。その言葉を言った瞬間の明の表情が、いきなり温度のないものになって、俺の背筋を凍らせた。
 ……なんだこの女は、やばいやばいやばい。危険すぎる。もう、なりふり構っていられるか!
 そう思って俺は――
 「―――――らぁッ!」
「ふえっ」
 ――鎖をほどいて一目散に駆け出した。
 実を言うと、少し前に明が鎖を掴んでガチャガチャ前後に揺らしていた時に、どうやら鎖の拘束が弱まっていたようで、それに気づいた俺は明との会話の中で少しずつ体を鎖から抜け出させていたのだ。幸いここはろうそく一本しかあかりのない部屋だ、明に気づかれないように抜け出すなど容易であった。
 あとは一目散にかけて、扉を開けて逃げ出すだけであった。
 ギギギ、と古びた鉄扉が開く音と同時に、明るさに目を細めながら俺は外の世界に駈け出す。
 「待って、私は君が好きなの! 大好きなのッ、あなたの悲しむ顔なんて、見たくないの! お願い、戻って!」
 その言葉に、心を傷めながらも、この場を走り抜けた。

459Jewelry girls ◆uRnQeEDhQY:2014/06/26(木) 21:12:26 ID:V./FX/XI

 
 「すまなかった、許してくれ」
 俺は頭を下げていた。目の前の神透明に向かって。
 「いいんだよお、別に」
 ここは、つい一時間前程までいた、〝保護〟されていた地下室だ。どうやら神透の家の庭の一角にあり、俺はここに戻ってきて明に頭を下げている。
 本当に彼女には、あらぬ疑いをかけてしまった。
 「あわわ、頭を上げて。ここに戻って来たってことは、なんで私がここに保護していたかが分かったってことだよね?」
 「……うん」
 明の言われた通り頭を上げる。ぶっちゃけ一時間で得られる情報は少なかったし、明の行動も正しいかと聞かれれば難しいところではあるが。
 それでも今回の件における、概要ぐらいはしれた。
 「その、聞かせて。足りないところは私が補てんしてあげよぅ……。というか一番自分がつらい癖に、こんな時くらい泣いてもいいんだよぉ?」
 「―――ッ!」
 明の言葉に、明のやさしさに、俺は、止まらなくなってしまった。
 涙が、自然に出てきて、訳が分からなくなって、その場に腰を抜かして、それを明が抱きしめてくれていて、それでいて乱雑な言葉で嘆きつつも、俺が掴んだ今回の件を説明した。
 たぶん、1時間くらい泣いていたと思う。
 少し落ち着いた俺に向かって、明は今回の件を振り返った。
 「すごいねー、やっぱり君は。ほんの1時間あたりですべての真実を導き出してるよー。自分の家の状況と、6月24日――の次の日、つまりは今日である6月25日の新聞と、近所の人たちの話から全て推測しちゃうなんて。……まあ、足りないところや細かい部分も含めて、私が教えてあげましょう。
6月24日の放課後、君は二人の女の子に告白されたんだ。一人は、赤峰裕理、燃えるようなルビーの輝きを持つ少女。一人は、青須美紀、静かなるサファイアの清らかさを持つ少女。最初は赤峰裕理が呼び出してー、そして君は赤峰裕理から告白をされて、キスをされました。当然戸惑った君ですが、ここで君は彼女の申し出を断るわけです。
『ごめん、俺には他に好きな人がいるんだ』とねー。
そして、青須美紀からのメールが来ていることに気づいて、君は生徒会室へ向かった。そしてそこでも君は告白されて、キスをされます。
……そう、君にとって何より本命の、好きな人である、青須美紀会長に。
君は即座にオッケーしたんだよね。そしてその流れで、教えてしまった。
――赤峰裕理に告白され、あまつさえキスをされてしまったことを。
さて、そしてこの後、恐ろしい顔をして帰ってしまった青須会長に頼まれた雑務をこなし、そのあとの帰り道で私に拉致られて、保護されていたのが君です。
この裏側は、まあほとんど君が調べてきた内容と同じですよぉ。
さて詳しい裏側です。
私は、君が好きです。これはこの時点では君は気づいていなかったと思います。まあそれはいいのですが、私が君の家に婚姻届けを持って、ご両親にあいさつしていた所です。あ、ここは疑問に思わないでくださいね、仕様です。
……この時に、赤峰さんが君の家にやってきました。きっと、ふられたことがショックで、それでも何とか君と話したかったんでしょうね。思った時に行動する赤峰さんらしい行動です。さてここで人のいい君のお父さんは赤峰さんを家の中に招待したわけですね。まあ、初対面の私の婚姻届けに本気で書いてくれる方でしたから、そこら辺は君がよく分かっていると思います。
そこで、事件は起こりました。
壊れていたんでしょうね。
君の事を愛しすぎていたんでしょうね。
自分以外の人と君がキスをしたという事実が許せなかった。
青須会長が君の家にやってきました。
そして――私や君の家族の目の前で、赤峰裕理が刺殺されました。
 その時に血が大量に私に飛び散りました。首の動脈が切れたからですかね。
 そのあと、無言でガソリンをそこら中にまきちらしました。まるで私たちが見えてないかのようでしたし、それを止めにかかった君の両親も――殺されましたしね。
 逆に言えば、青須会長が赤峰裕理と邪魔をするもの以外に興味がなかったからこそ、私はその場を速やかに立ち去れました。
 恐怖に震えた私ですが、真っ先に考えたことはあなたの事でした。
 このまま君が家に帰れば、錯乱した青須会長に殺されるかもしれない。
 殺されないにしても、こんな行為をした青須会長とは、君は生きていけない。
 私は、君が好きだから。
 君を守りたかった。
 だから青須会長に合わせたくなくて――拉致りました
 これが真相です」
 すべてを語り終えた後の明は、少しだけ笑って。
 泣いている俺を励ますために、こんなことを言ってくれた。

460Jewelry girls ◆uRnQeEDhQY:2014/06/26(木) 21:12:55 ID:V./FX/XI

「笑お――あなたと一緒なら、私は何より楽しい!」

 それに加えてキスをされた。
 涙でぬれてしょっぱいキスだったけれども。
 家族を失い、友を失い、愛した人が壊れてしまった俺には、そのキスがとても心に響いてならなかった。


 俺たちは抱きしめあう。
 この暗い地下室で、明と俺は寝転がる。
 床の冷たさが、妙に心地よい。
 「私、君が好きだよ」
 「と、唐突だな」
 「そう? 君は?」
 「……………すぐに好きとは言えない。でも、特別に思ってる」
 「えへへ、ありがと」
「……また、あのシチュー食べたいな」
 「あのシチュー、ですか?」
 「そう、なんだかんだいって、ビーフシチューとして最高の味だったし」
 「あー、あれは特別なんですよお……機会があればね」
 「うん……ごめん、いろいろありすぎたんだ。……ちょっと寝るね」
 「うん、ゆっくり休んで。青須会長を捕まえるのは、休んでからだよ」
 「うん、うん、ありがと、明」
 「おやすみー」
 俺は目を閉じた。




「あは、ハハハハハハハハアアアハアハハハアハア――はぁ、まったく。君には本当に驚かされるなぁ。君の行動力や推理力は本当に侮れない。君の長けた能力は前々からわかっていたしねえ。だからこそ、この手を打ってよかったあ。
人は、分かりやすい答えにたどり着いた時、安心して思考を停止するのだよぉ。まさか、私がこれらの事をすべて見越していたなんてことを、君は知らないんだろうね。
まあそれでも、一時間ですべてを調べきるなんてさすがとしか言いようがないよ。私も良く君をだませたものだよー。
……君が青須美紀を好いていることが分かってからは毎日辛かったなぁ、何度その場で殺してやろうと思ったかわからないくらい。でもねー、絶対こっちの方がいいよねえ。
 私は君が好き。
 君は私が好き。
 ふふふ、何よりも素晴らしい形が今、出来上がったのだから。その点に至っては、ピエロとなってくれた赤峰裕理と青須美紀にはありがたやーです。
 ……あー、そうそう君が捜している青須美紀の所在についてだけど――これだけは君は永遠に分からないと思うよ。だって――

 ――君が食べたんだから。

……夫の料理を作るのが妻の役目ですものねえー。でもシチューに入ったあの女の血や肉のにおいでばれると思ったけれど……私の体のガソリンと血のにおいでちょうど良くごまかせたなぁ。ふふふっ。
……しっちゅうー、しっちゅうー、おーいしーいしっちゅうーーーー♪ いぇーーーい♪
………………………本当に、君は甘いなあ」
 
 ダイアモンドは堅い――が、それゆえにもろい。
俺の目は覚めない。
覚めたら最後、世界が割れてしまうからだ。

461 ◆uRnQeEDhQY:2014/06/26(木) 21:14:21 ID:V./FX/XI
以上です。
読みにくいところがあると思いますが、読んでくれた方には感謝です。

462雌豚のにおい@774人目:2014/06/26(木) 22:19:18 ID:Koyef9PI
会話ww

でも最後に鳥肌だった
ぐっじょぶ!

463雌豚のにおい@774人目:2014/06/27(金) 07:03:18 ID:.G0qOc5o
>>461
GJ
ヤンデレが集まっちゃうとこうなるのですね

464雌豚のにおい@774人目:2014/06/28(土) 01:05:06 ID:irmlxlns
最近ヤンデレスレ発見してwikiでいろいろ見てたんだけど
向こうのよりこっちのほうが主流なのかな?

465雌豚のにおい@774人目:2014/06/28(土) 23:17:05 ID:AE1NtyVc
>>461
GJ ダイヤモンドは砕けない? なんのことだ?

>>463
今でもいるけど昔は粘着荒らしがあまりにも酷かったのよ
そんで有志が避難所を立てて今に至る
避難所にも初期にコピペ爆撃してきたりとかあって本当に大変だったもんだ

466雌豚のにおい@774人目:2014/07/05(土) 05:03:24 ID:b537xP2U
取り敢えず触雷がくりゃいいわ

あとはまずこないからな

467雌豚のにおい@774人目:2014/07/06(日) 11:28:34 ID:mTUAnKus
触雷の続き読みたいわ〜

468雌豚のにおい@774人目:2014/07/07(月) 04:08:24 ID:i9zV2jt2
part30辺りの過去スレってもう見れないのかな
保管庫にまとめられてないのがあったのが気になって
読み返そうと思ったんだけど

469雌豚のにおい@774人目:2014/07/07(月) 06:30:30 ID:tlJpGc/6
保管されてない作品なんてあったっけ

470雌豚のにおい@774人目:2014/07/08(火) 03:53:26 ID:wJeo90Sk
以外と既成事実実行(とにかく強行手段で主人公を追い詰める・夜這い)や、体液入り料理なんかって設定あまり見なくね?読んでて思った

監禁、洗脳まがいの調教(?)もそうだしあと実はそんな使われてないテンプレートってあるっけ?

あとヤンデレって基本的に主人公が好意を抱いてないこと前提じゃないと光らない気がするとちょっと思った。寧ろちょっと苦手意識とか恐れを抱かれてる位がちょうどいいよな。完全な主観だが

471雌豚のにおい@774人目:2014/07/09(水) 02:34:31 ID:37z0jtx2
>>469
あったはずなんだよ
みんな乙とか言わずにスルーしてたから
もしかすると他所からの転載だったのかもしれないけど
ログ速とか使っても4、5年前のスレ見れなくなってるんだよな

472雌豚のにおい@774人目:2014/07/09(水) 23:50:47 ID:RM8EuJFg
>>471
part30はスマホからなら2chmateとdatmate使えば読めたけど
http://pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1273238414/

473雌豚のにおい@774人目:2014/07/09(水) 23:51:01 ID:HhABgWqc
>>470
動きの少ないシーンは小説的に盛り上がらないってぇのはあるかもねー。
個人的に、すれ違いから病んでいくってのも王道パターンとして結構好き。
ヤンデレと言うよりも恋愛もののお約束だけれども。

474雌豚のにおい@774人目:2014/07/10(木) 19:34:00 ID:GBLF6E.w
触雷みたいや巨女的作品は好きだわ
あんまヤンデレ関係ないと思うけど

475雌豚のにおい@774人目:2014/07/10(木) 23:30:26 ID:xUJi86Vc
>>470
主人公が好意抱いていても大丈夫だと思うぞ。
そのパターンならデレデレから始まって、
女の行動がエスカレートして束縛や病んだ行動でる
→男が辟易して距離を取る
→女がストーカーを始めとした病んだ行動にでる

とか思いついた。泥棒猫とか出てくると面白くなりそう。
いくらでもパターンは思いつくな。

476雌豚のにおい@774人目:2014/07/10(木) 23:42:13 ID:xUJi86Vc
ヤンデレには愛がないと読めないわ
包丁持って流血表現があれば、それがヤンデレみたいなのは勘弁
愛があって葛藤の末の凶行なら許せるけど、最初から包丁持ってるようなのは
ただのキ○ガイだ

477雌豚のにおい@774人目:2014/07/12(土) 01:45:33 ID:Xsd6t8V.
>>472
サンクス、おかげで見れた
こんなアプリがあるのは知らなかった
part30じゃなくてpart27の>>7から>>25までのだったけど
どうやら他のレス見たらなろうからの転載だったようだ
それに完結はされてない、残念

478 ◆VZaoqvvFRY:2014/07/12(土) 09:02:43 ID:/hDjNjjE
テスト

479 ◆VZaoqvvFRY:2014/07/12(土) 09:03:17 ID:/hDjNjjE
投下しますよ

480僕だけが知っている先生についての事:2014/07/12(土) 09:05:00 ID:/hDjNjjE
 冷めた紅茶を一口飲んで腕時計を見ると、待ち始めてから二十分が経過している事が分かった。
 とは言え、別段退屈している訳でもない。視線を正面に向け、周囲を右回りに見回す。
 二十畳ほどの広さがあるその部屋には至る所に工具、試験管、フラスコ、さらにはむき出しのエンジンから何を計測してるのか分からないメーターまでが乱雑に放置されており、一角には手術台まで設置されている。種々雑多な物品が放置されている室中だが、その中でも飛び抜けて珍妙なものが僕の正面に屹立していた。
 それは縦二メートル弱、幅一メートル、奥行き八十センチの直方体をしている金属製の箱だ。銀色に鈍く輝いているが、本体の光よりもあちこちに備え付けられたパネルの液晶画面が目まぐるしく色調を変え発光し、目を細めないと見ていられないほどと言っていい。これを作った人は「三十年前の漫画に出てくるコンピューターのような外見」と表現していた。
 よく見ると前面は両開きのドアになっているのだが、観察していた僕の目の前でその扉が金属の軋んだ音を立てながらゆっくりと開き、そのまま動き続けやがて全開放される。
 だが、中の様子はうかがい知ることが出来ない。箱の中は紫色の煙に満たされ、それが澱んだまま宙に滞空していたからだ。
 しばらくすると、その煙の中から薄汚れたズボンと使い古しの靴を履いた右足が音もなく静かに飛び出してきた。続いて白衣をまとった上半身と、古びたモップのように乱れた白髪を生やした頭部が現れる。髪の下の顔は深い皺が幾重にも刻まれていて、その中に埋もれているかのような目は、老いた風貌にここだけは似つかわしくないように鋭い光を放っていた。
 老人は煙の中から完全に表に出ると、正面に座る僕を真っ先に見つけ、しわがれた声をだした。
「ここはどこだ?」
「見ての通り、先生の研究室です」
 僕は正直に答える。と言ってもごまかしようもないから他に返答のしようがない。
「今の時間は?」
「十七時二十六分です」
 その老人、つまり僕の先生は、これも骨董品かと見まがうような懐中時計を白衣の中から引っ張り出して文字盤を見る。
「わしの時計も同時刻だ。という事は、つまり」
「また失敗ですね」
 僕の返事を聞くや否や、先生は絞殺されるカラスとでも表現すべき絶叫を上げると、部屋の片隅に走り、置いてあった長さ一メートル強のスレッジハンマーをひっつかみ、それを振り回して先程まで自分が入っていた箱を滅茶苦茶に殴り続けた。
「やめてください、先生!」
「止めるな! 日下君! こんなもの、こんなもの、こんなもの!」
「別に壊すのはいいんですけど、こう言うやり方は近所迷惑ですからやめてください!」
 先生を後ろから羽交い絞めにして全力で持ち上げて阻止する。この人、小柄な上外見は寝たきりになっていてもおかしくないほど老いているのに、時々尋常でない力を出すので僕も必死だ。
 ただでさえ先生は近隣の人たちからは「キ○ガイ爺」呼ばわりされていて評判は宜しくないのである。余計なトラブルの元になる行動はやめて頂きたいのだ。
 しばらく宙に浮いた足を振り回していた先生だが、やがて落ち着いたのかハンマーを床に投げ捨てると、がっくりとうなだれる。それを見て僕も先生を床に降ろすと、先生はそのまま座り込んでしまった。
 何と言葉をかけようか、と思っていた時、制服の内ポケットから機械音が鳴った。スマートフォンを取り出して画面を確認する。
「先生」
「なんじゃね」
「急用ができたので失礼します」
 そそくさと後ろを向いて、机の上に置いておいた鞄を手に取り、退室しようとしたのだが、先生の声が聞こえた。
「待て、どこへ行く」
「彼女から連絡があって、会いたいという事でしたのでちょっと行ってきます」
「は?」
 見ると、先生は顎が外れたんじゃないかと思うほど口をポカンと開けていた。
「君に彼女じゃと? 初耳じゃぞ!」
「そりゃまあ、今初めて言いましたし」
「いつから付き合っとるんだ!」
「二日前です」
「どこで出会った!?」
「同級生なんですよ」
「美人か?」
「もちろん」
「もうやったのか?」
 握りこぶしの人差し指と中指の間から親指を出してそう聞かれ、さすがに僕も辟易した。
「まだに決まってるじゃないですか。なんでそんなこと知りたいんですか」
「そういう男女の関わり合いというやつは、完全にわしの専門外じゃからのう。知識が皆無な分興味があるんじゃよ」
 なぜか胸を張って言う先生の声を聴いて、僕は思い出した。
 先生は化学に人生を捧げたおかげで「年齢=恋人いない歴」らしいのだ。これは僕しか知らない先生の秘密その一なのだが、知ってても全然嬉しくはない。

481雌豚のにおい@774人目:2014/07/12(土) 09:06:47 ID:/hDjNjjE
「そう言う訳ですので、失礼します。また明日来ます。それでは」
 そう言うと、僕は足を止めることなく一直線にドアに向かってそのまま退室した。何やら後ろから先生の怨嗟の声が聞こえたような気がしないでもなかったが。
 薄情な弟子だと自分でも思うが、先生、人生には学問よりも大事なことがあると思うんです。

「時空間転移装置? なにそれ?」
 繭ちゃんが目に疑惑の色を浮かべて問いただしてきた。
 大きな瞳、茶色がかった髪をショートにして、健康そうで小さい口もとをした繭ちゃんはそんな不機嫌気味の表情も可愛い、と思う。彼氏としての僕の惚気かもしれないが。
「まあ簡単に言うとタイムマシンとどこでもドアを合体させたような機械かな」
 パスタをフォークでいじりながら僕はそう返答する。
 ちょうど夕食時のファミリーレストランは家族連れも多く、ほぼ満席である。
「そんな胡散臭い物作ってるの? あのお爺さん」
 疑惑の色をますます強めて繭ちゃんが言う。僕はフォークから手を放すと頭をかいた。
「信じられないのも無理はないけど、先生ならいつかは……」
「完成すると思ってる?」
「いや、思ってない」
 一瞬繭ちゃんの周りで空気が固まったような気配があった。さすがに呆れたらしい。
「じゃあなんであんなお爺さんに付き合ってるのよ」
「なんでと言われると……」
 両親にも以前同じ質問をされた事がある。
 先生はキ○ガイだの偏屈だの言われている通りの変人で、しかも今の住居に来る前の事は誰ひとり知らないという謎だらけの人物だ。両親にしろ繭ちゃんにしろ、僕がそんな人と交遊があるのを喜ぶわけはないだろう、それは分かる。
 しかしそれでも、先生と僕はなぜか気が合った。阿吽の呼吸と言うのか、お互いに足りないパズルのピースをそれぞれが持っている感覚と言うのか。これは他者に説明するのは難しいのかもしれない。
「先生の淹れてくれる紅茶が美味いんだよ」
 結局そう返答したのだが、やはりというべきか繭ちゃんは納得してくれない。
「……なにそれ」
「いや、本当なんだよ。先生、紅茶を淹れる名人なんだ」
 これは嘘ではない。
 繭ちゃんはと言えば、表情の選択に困ったように顔をひくつかせていたが、ややあって一息つくと可愛らしい口を開いた。
「じゃあ私が紅茶をうまく淹れられるようになればもう会う必要はないのよね?」
「え?」
「これから練習するから」
 僕は返答に窮した。
「とにかく、明日は私も同席するわ。あのお爺さんがどんな紅茶を飲ませるのかを確かめないといけないし、いいよね?」
 そう言ってにこやかに繭ちゃんは笑ったが、その笑顔に無言の圧力を感じ、僕は黙って顔を上下に動かした。
 明日、先生が繭ちゃんに失礼な質問をしなければいいのだが。

 繭ちゃんと別れてから帰宅し、風呂に入ってその他雑事を済ませてベッドに寝転んでいると、またスマートフォンから機械音が鳴った。今度は先生からのメールだった。
「大至急来られたし。研究は完成した」
 画面に映るその文章を見て僕は眉をひそめた。時刻は二十三時八分。つまり先生の研究室を出てから六時間も経過していない。まさかそんな短時間で新しい時空間転移装置ができる訳でもないはずで。
「先生、大丈夫ですか。今日のショックでボケちゃったんじゃないでしょうね」
 怒られるかな、と思いつつそうメールを送り返すと、殆ど間を置かずに先生からの返信が来た。
「いいから早くこんかい。今日は家に泊まるつもりで準備すること」
 僕は軽く肩をすくめた。こんなに強引な先生も珍しい。弟子としてはここまで言われては断わるわけにもいかない。
 繭ちゃんに連絡しようか迷ったが、夜遅いし、一緒に先生の所に行くと約束したのは明日の事だしで、まあいいだろうと思い止めておくことにした。
 簡単に着替えを済ますと、もう寝ていた両親に置手紙をして出発した。外に出ると吐く息が白く曇る。
 先生の家は徒歩で十分弱、上空を見上げると綺麗な満月が見えた。
 静寂に満ちた街中に僕の足音だけが響くという感覚は割と好きだった。

 今夜の紅茶はやや濃すぎる気がする。
 熱い琥珀色の液体を一口含んで僕はそう思った。先生が紅茶を淹れるのを失敗したことは、僕の記憶にある限りではなかったはずだった。そこまで気持ちを乱しているという事は、ひょっとして本当に時空間転移装置が完成したのだろうか。
 その先生はと言えば、僕と机を挟んだ形で座り、組んだ両手に額を当てて俯いている。

482僕だけが知っている先生についての事:2014/07/12(土) 09:08:33 ID:/hDjNjjE

 僕が来てからの先生は、夜分遅くに呼び出した詫びを言って研究室に案内し、紅茶を勧めた後はずっとその姿勢で動かずにいた。二人でいてこんなに沈黙しているのも珍しい。
 やや居心地の悪さを感じてきたので、口を開いた。
「それで先生、研究が完成したっておっしゃってましたが」
「うむ」
 そう言って先生が顔を上げる。
 そのまま立ち上がると、部屋の西壁面にある、大きな棚に向かった。試験管やアルコールランプ、フラスコといった器具が並んでいるそこから、先生は橙色の液体が並々と注がれているビーカーを手にすると、そのまま戻って再度僕の正面に座った。
 ビーカーを机上に置く音が僅かに聞こえる。
「これじゃよ」
「え?」
 と、僕は素っ頓狂な声を上げた。
 先生の顔を見ると、いつになく真剣極まりない表情にぶつかる。
 そこで今度は視線を落として先生の前にある物体をまじまじと見つめた。
 五百ミリリットルサイズのビーカーは市販の、量産されているごくありふれたものだ。その中を満たしている液体は一見するとオレンジジュースにしか見えない。
「これが、時空間転移装置なんですか?」
「違う」
 先生の返答を聞いて、僕は今度は声を上げずにただ口を開けた。先生が言葉を続ける。
「わしには時空間転移装置以外に君に内緒にしていた研究があってな。これはその完成品じゃよ」
「僕に内緒?」
 言われて我ながらちょっとショックを受けているのに気が付いた。先生に隠し事をされていたとは。
「うむ。黙っていて悪かったとは思っておる」
 先生はビーカーを手にして立ち上った。
「だが、これはかなり以前から……二年以上前には九割程度出来上がっていたんじゃよ。時空間転移装置の開発が成功したら同時に完成させるつもりじゃった。ところがそういう訳にはいかない事態が起きた」
「なにがあったんですか?」
 先生はビーカーの液体を見つめて、僕の質問には答えない。
 しばらくそうしていたのだが、顔を上げると僕を正面から見据える。その眼光に怒気のような色が見え、僕は息を飲んだ。
「君が悪いのだ」
 そう言うと先生はビーカーが空になるまで中の液体を一気に飲み干した。
 室内に甲高い破砕音が響く。ビーカーが先生の手を離れ、落下して床に衝突し粉々のガラス片となっていた。
 先生はその場にうずくまると丸まり、頭を抱えてえづき、呻いている。
 僕は慌てて立ち上がり、机を回り込んで先生の傍に跪き、背中をさすって声をかけた。
「先生、大丈夫ですか!」
 だが、その時妙なことに気が付いた。手に触れる感触が段々と変化している。
 先ほどまでは老人の、痩せて緩んだ質感の肉体だったのだが、今は弾力もあり、張りも感じる。
 いや、体だけではない、変化があったのは先生の頭髪もだった。使い古しのモップのごとく乱れて灰色だったそれが、みるみるうちに漆黒に染まり、美しい艶を出していた。
 そして、先生の口から発せられた声音。
「君が悪いのだ」
 その高く澄んだ少女の声を聞いた時僕は思い出した、僕しか知らない先生の秘密その二を。
 皺だらけの顔はそこだけ見ても性別判断が無理なほど老いていたし、普段から白衣に男物のズボンという格好で、爺と呼ばれても本人もめんどくさがって否定したりしなかった、そのせいで誰もが男性だと誤解していたけど――先生は実は女性なのだ。。
「君が、君が、君が! 彼女など作るから! だから完成させねばならなかった! 君を連れて、遥か昔の遠い場所に共に行く準備が整うまでは待つつもりだった。だがそれではもう間に合わない。君の心と身体が他の女のものになるなど……耐えられるものか!」
 先生が顔を上げる。あれほどあった深い皺が消え失せていた。そこにいるのは、もはやかつての老人ではなく、腰まで届く漆黒の髪、切れ長の鋭くも美しい目、白く透き通った肌、紅を差したような赤い唇の少女だ。
 先生は蹲った姿勢から膝立ちになると自分の手の平を眺め、次にその手で両頬を撫で、そのまま体に滑り落として腿まで達すると満足したように頷き、首を横に向けて僕を見て薄く笑う。
「成功したようじゃな。どうだ? 美人であろう?」
「はい」
 その返事が僕の口から出たものだと自覚するのに一瞬の間を必要とした。眼前の現象に呆気にとられ、僕の意識は半ば飛んでいるようだった。
「ふ、ふ、ふ……。かつては化学界にあるまじき美貌ともてはやされたものじゃよ。ま、研究に人生を捧げる身としては美しさなど邪魔なだけじゃったがな。だから容色を保つどころか、むしろ衰えさせる方に労力を使ったわ」
 先生は立ち上がると両手を開いて僕に全身を見せつけてきた。

483僕だけが知っている先生についての事:2014/07/12(土) 09:10:36 ID:/hDjNjjE
 先生は立ち上がると両手を開いて僕に全身を見せつけてきた。
「それでも後悔などなかった、学問に殉じた人生に満足しておったよ……君に会うまではな。まさか晩年に至ってこんな気持ちになるとはな。我ながら思わなんだ」
「どういう事ですか?」
「分からぬのか?」
「はい」
「わしは君に恋しておる」
 僕は絶句した。今、先生は何と言った?
「いつからかはわしも覚えておらん。何しろ恋愛感情というもの自体が初めてだったのでな、この心の動きはなんだろうと悩み続けたよ。だがそれが君への愛だと気づいた時、わしは自分の身と人生を呪った。君に出会い、恋に落ちたというのにそれを叶えるにはわしは老いすぎている」
 先生の口調は、生徒にテストの解法を説明する教師のように淡々としている。
「何度も諦めようと思ったよ。だが君と会う度にわしの気持ちは膨れ上がった。やがて、破裂寸前なぐらいにわしの心は君の事だけで埋め尽くされた。人生を捧げたはずの化学さえ、もはや石ころ程度の価値しかないほどにな。……だが、その石ころにも使い道があった、それを思い出した」
「……」
「若返ってやり直すのだ。その為にわしのこれまでの人生の成果を全てつぎ込むことにした。そして成功した暁には、今度は君に人生を捧げると誓ったのだ」
 そこまで言うと、先生は少女には似つかわしくない淫猥な笑みを浮かべる。
 その表情に僕は戦慄したが、おかげでやや気を取り直した。大慌てで声を出す。
「っていうか、先生!」
「なんじゃ?」
「先生が内緒にしていた研究って、若返りの薬なんですか!?」
「そうじゃよ」
「凄いじゃないですか! 明日にでも大々的に発表しましょうよ! そうすれば……」
「いやじゃ」
 これ以上ないぐらい冷徹な返答だった。
「そんなことをしてみろ、わしはもてはやされ、崇められ、富と名声で呼吸できないぐらいまで埋まってしまうではないか」
「それでいいじゃないですか」
「そうなったら君とも気軽に会えなくなる。君と共に居る時間が減るなど耐えられるものか。それでなくても今の彼女とやらのように、雌蠅どもがいつ君にたかるか分からんと言うのに」
「……」 
「だからこの薬は秘匿されねばならん。とは言え、君と結ばれるためにはわしが若返る必要がある。そのまま暮らし続けていけばどうあがいても人目をつくだろう、老いたわしと言う存在も消えるわけだし」
「……」
「その為の時空間転移装置だったのじゃよ。若返った後は、君を連れて古代の遠い国に行くつもりじゃった。そこで新しい君の為の人生を始めるのだ」
「先生」
「なんじゃね?」
「そのご提案、お断りします」
 きっぱりと言ったつもりだ。
 先生は暴走している、弟子としては止めなければならない。原因が僕への愛情というのは、複雑な気持ちだし、若返ってしまった以上、もう取り返しがつかないかもしれないが。
 それでも先生は大事な人だし、このままだと僕も巻き込まれる。
 先生はと言えば、怪訝な表情をして沈黙していた。僕は会話を続ける。
「お気持ちは嬉しいです。でも、僕にはここでの生活があります。両親もいる、友人もいる。皆大事な人たちです。その人達と離れたくはありません」
「そして雌蠅もおるわけだな」
 先生の眉間に皺が寄っている。
「それは許さん。というかだな、わしは君に提案をしているわけではないぞ」
「え?」
「これは決定事項だ。君がどう思おうが、たとえ不本意であろうが、わしと共に行くのだ」
 背筋に氷柱が立つのを感じ、僕は初めて先生に恐怖していた。
 暴走を止めるどころではない、今、この場から逃げ出さないと僕は生涯この人に束縛されるのではないだろうか。
 室内を見渡す。幸い、出入口扉は背後の壁面にあった。
 僕は後ずさりはじめる。気付かれないように、頭を抱え、悩むふりをしながら。
「それに日下君、君はわしの弟子だろう? 弟子ならば師匠を見習わなければならんぞ。わしの心が君で満たされているように、君の心もわし一色に染めるべきなのだ」
 扉まで後二メートル。ここまで来れば先生に追いつかれることなく部屋から逃げ出せる自信がある。女の子に脚力で負けるとは思えない。
「先生、失礼します」
 そう告げると、振り返り、扉に向かって走りした……はずだった。
 だが、足はもつれ、僕は右半身から床面に衝突してしまった。慌てて立ち上がろうと手をついたのだが、手がスロー再生のようにゆっくりとしか動かないのに気付いて、愕然とした。そのままうつ伏せに倒れこんでしまう。
「ふむ。ちょうどよい時間だったようじゃの」
 先生の足音が床に響き、倒れる僕の体にも伝わってきた。

484僕だけが知っている先生についての事:2014/07/12(土) 09:12:19 ID:/hDjNjjE
「今夜の紅茶は出来が良くなかったであろう? すまぬな、ちょっと特殊な材料を入れたのじゃよ。そのおかげでこうして君は大人しくしてくれるわけだが」
 窓からさしてくる月光に照らされて先生の影が見える。やがてその影の持ち主は僕の体をまたぐような位置で仁王立ちした。
「急がねばならぬな。今夜中に君を心身ともにわしの物としなければならん。初の契りが手術台というのはムードがないが、まあ止むを得まい。わしの虜となったら、ここで二人で暮らすのだ。ああ、でもそう長い間ではないぞ。若返ったおかげで脳細胞が活性化しているのが分かるのだ。これなら時空間転移装置は直ぐに完成する」
 僕の両頬に先生の手が後ろから差し延ばされ、愛おしそうに撫でまわしてきた。
 本来なら快感を覚えるだろうその感触は、今の僕にとってはおぞましいものでしかない。
「完成したら共に旅立とう、いつでもどこでも構わない、君といられるならな。そしてそこでの生活も老いて終わる時が来たら、二人でまた若返って他の時代に旅立つのだ」
 視界が暗転しつつあり、先生の声も遠くなる。
「それをずっと続けよう、永遠に、永遠に……。ふふ、比喩ではなく、君は永遠にわしの物だ」
 誰か助けてくれ。
 そう叫びたかったが、もはや口腔も動かなかった。

485雌豚のにおい@774人目:2014/07/12(土) 09:17:49 ID:/hDjNjjE
終り
ちょっと失敗したなあ、保管庫で修正します

前にあったネタと、年齢の話が出ていたので
それを参考に糞婆なヤンデレを書いてみたが
半年以上投下してなかったことに気付いてワロタ……ワロタ……

今年中にまた投下できればいいなあと思いつつ
おまいらネタ下さい
雑談とかで盛り上がってると書きやすいんです

486雌豚のにおい@774人目:2014/07/12(土) 15:21:03 ID:nqEOt4Kg
GJです。
人類にとっての永遠の課題、若返りをこうも鮮やかに作品に使われるとは。

487雌豚のにおい@774人目:2014/07/14(月) 00:51:40 ID:FXzcEryI
なかなか良い、ヤンデレという概念を知らない人にも薦めたいくらい文章も宜しい。

488雌豚のにおい@774人目:2014/07/14(月) 21:20:47 ID:sBl9aMjo
おお、前に言ってたのはこのことだったのか
GJGJ

489 ◆wzYAo8XQT.:2014/07/15(火) 00:04:36 ID:vjwUcrnU
>>470
相手から好意を向けられるが故に相手に見捨てられないか恐れたり、自らが巡らせた姦計が露呈しないか怯えたりで精神の平衡を失っていくのもいいものだと思いますよ。

最近書き込めなかったのが久々に書き込めるようになったので折角だから投下

490『ながめ』1 ◆wzYAo8XQT.:2014/07/15(火) 00:05:45 ID:vjwUcrnU
 この地方には、とある民話がある、
『暗い、光の当たらない軒下には、「ながめ」が住みつく。』
 ながめとは、醜く痩せさらばえた、毛むくじゃらの、大きな目をした中型犬くらいの大きさをした獣だという。
 民家の軒下に住む生き物で、そしてながめが住み着いた家は、周りの家が皆駄目になるような災害にあっても、その家だけ無事なのだという。
 まるで座敷童子の話のようだ。だけれど、ながめというのは座敷童子のようにいい妖怪ではない。なぜなら、この話には続きがあるからだ。
 ながめは家を守る。しかしその一方で、ながめの住む家の家人、そのうちの一人は、ある日突然すがたを消してしまう。そしてながめも一緒にいなくなる。
 ながめがいなくなった家は、その後、廃れてしまうのだという。
 
 商業作品として手を加えられていない童話にありがちな、何の教訓も訓戒も得られない、ただただ不気味なだけの後味の悪い話。
 そんな意味の無い話をいちいち考察することは無意味であると思う。だがその上で考える。
 俺は、ながめとは悪鬼の類なのだと思う。
 ながめが住み着いた家が災害にあっても潰れないというのは、ただながめが自らの住処を守ろうとする働きによるものだ。
 では家人が姿を消すほうはどうか。これこそ、ながめ本来の性質を現している。俺が出した一つの結論。つまりながめは人を喰らうのだ。
 人が一人突然いなくなる。その後ながめもいなくなる。とすれば、タイミング的にながめが何かした結果、人がいなくなると考えたほうがいい。しかし犬程度の大きさの、しかも痩せた生き物が、人を攫うことなど不可能だ。
 ただし、殺すのならば別だ。
 死んだ人間は暴れることも抵抗することもない。
 話を聞く限り、ながめは力の強い生き物にはとても思えない。とすれば、人を殺す方法は不意打ちに決まっている。
 そしてたとえながめが非力であろうと、殺してしまえば、その死体をそのまま軒下に引きずり込み、喰らうことぐらいできるだろう。
 そう考えれば、ながめは食人の化け物だという結論が出る。
 しかし人一人消えれば、ほかの家人も、また周辺住人も当然大騒ぎするだろう。
 そこで、ながめは自分の安全のために姿を消すのだ。
 
 
 つまりながめとは、騙まし討ちのように人を殺し、その死体を喰らう、卑しい、浅ましい生き物だという結論がでる。
 
 
 俺がたかが民間伝承の一つである存在を、こうして独自の考察を加えてまでこき下ろすのにはわけがある。
 俺は幼少期、ながめと会ったことがある。
 そして、俺とながめの縁は、いまだに切れていない。
 
 
 この話は、徹頭徹尾、俺とながめとの話である。
 
 
 
 
――――――――――――――――――――――――――――
 
 
 
 
「あ、あの……」
 放課後、俺は下校しようと下駄箱で靴を履き替えていた。
 校舎の反対側にあるにも関わらず、どこにいても聞こえてくる野球部の掛け声。低音から高音まで様々な音を発している吹奏楽部の楽器の音、そして放課後の予定に心躍らせる学生の話し声、足音。
 そんな雑多な音の中に紛れてしまえば、普通なら聞こえなくなってしまうであろう、小さな小さな音。
 だが、そんな小さな音でも、この音ならば俺は聞き逃すことが無い。

491『ながめ』1 ◆wzYAo8XQT.:2014/07/15(火) 00:06:24 ID:vjwUcrnU
 ――好む、好まざるに関わらず。
 ため息を飲み込みながらゆっくりと振り向くと、妖怪のような生き物が、そこに立っていた。
 それを初めて見た者が抱く最初の印象を言うならば、それは毛の塊だ。
 それは、真っ黒な、ぼさぼさの長髪を持っている。
 そのくせ、その体躯は年に見合わない、小さく貧相なものだ。
 さらに、俯き気味だから、長い髪が矮躯をすっかり覆ってしまっていて、見下ろすと一瞬、それがさながら毛の塊、毛の化け物のような錯覚に囚われるのだ。
 おまけに、髪の隙間から覗く、ぎらぎらとした大きな目がますます彼女に妖怪然とした印象を与えている。
 街灯の無い、暗い夜道であったのなら、間違いなく、毛の塊が大きな目でこちらを見ているように見えるだろう。
 思わず、舌打ちが口をついて出た。
 ため息は堪え切れたが、舌打ちは無理だったようだ。
 このみすぼらしい、妖怪のような生き物。
 それは俺の妹だ。名前を、永見、と言う。
「あ、あぅ、ご、ごめ……」
 永見は――妹はたどたどしく、謝罪のような言葉を発する。
 何を言っているか分からない。
 そのおどおどとした卑屈な態度が、ますます俺の神経を逆なでする。
 そしてその容姿は、そしてその態度は、俺に一つの記憶を想起させる。
 ――ながめ。
 ただのとるに足らない、民間伝承の中の一つの妖怪。取るに足らない、本当に取るに足らない話だ。
 だけど、あの日みたあの化け物のことを、俺は生涯忘れることは無いだろう。
 そして、俺はこの目の前の少女に、どんなに嫌悪感を覚えようと、どんなに苛立ちを覚えようと、それでもこれを見るたび
、あの日みたながめの寂しげな目を思い出し、そしてまるでその邪眼に呪縛されたように、どうしても俺はこいつを邪険にすることが出来なくなってしまう。


 そもそもながみという名前がよくない。ながみなどと聞いたら、嫌でもながめを想起する。
 何を考えてこんな名前をつけたのか、俺は一度母に問うたことがある。
 
 曰く、当時父が好きだったアイドルの名前だそうだ。

 アホなのか親父は。
 尤も、アホないわくはともかくとして、そもそもがこの程度の話なのだろう。
 ながみという名前で、いい年していちいちながめを意識してしまう者など俺くらいなものなのだ。それもそうだ。親が子に名前をつけるとき、普通は子の幸福を考え、色々なことを意識するものだが(うちのアホ親父は除く)、その考慮の内容に「童話の怪物に似ているかどうか」なんて事項はまず浮かばない。そんなものに、いい年して執着しているのは、俺だけなのだった。
 
「なんだ」
 俺は妹の頭に手を置いてやる。
 妹が小さく息を飲むのが分かる。
 そして、髪の向こうで、薄く笑みを作るのも。
 気持ち悪い。
 妹はこうして触れてやると、ようやく落ち着いて、まともに話ができるようになるのだった。
「い、いっしょに、帰ろ?」
 たかが二言の短い言葉。
 わざわざ声をかけるまでも無い、取るに足らない用件。
 たったこれだけのことを伝えるためにここまでの手間が必要となる。
 本当に、愚鈍な妹だ。
「ああ、分かった」
 俺は妹の手をつかむと、そのまま手を引いて歩き出す。
 冷たい妹の手に、薄く汗が滲むのが分かる。
 妹は足をわずかに、ほんのわずかに弾ませて、俺についてきた。



 幾度となく繰り返されてきた、俺達の日課。俺達の習慣。
 妹の手を引くのは、並んで歩いているとあまりにも歩みが遅くて、イライラさせられるからだ。
 そして――いや、本当は、恐ろしいのだ。
 手をつかんでいないと、後ろを歩く妹が、あの日見た化け物に変貌してしまうような、そんな気がして。

492『ながめ』1 ◆wzYAo8XQT.:2014/07/15(火) 00:07:11 ID:vjwUcrnU
 長く続く家の軒下には、「ながめ」が住むという。
 兄が昔、話してくれた。
 ながめとはこの町に語り継がれる、伝承上の生き物だ。ながめは、醜く痩せさらばえた、毛むくじゃらの、大きな目をした獣の姿をしているという。
 ながめが住み着いた家は、ながめに守られるように、厄から守られるのだそうだ。
 しかし一方で、ながめの住む家の住人の一人は、ある日突然すがたを消す。そしてながめもいつしかいなくなる。
 この話を聞いたら、普通ひとはどう思うだろうか。
 幽霊のように、妖怪のように、常識外の化け物を恐れるだろうか。
 わたしは、ちっとも恐ろしくなんて思わない。わたしは、ながめとは座敷わらしのような、幸福を運ぶ妖怪だと思うからだ。
 きっとながめは人が、正確には自分に軒下を貸してくれるその家人のことが好きなのだ。
 ながめが住み着いた家が厄を逃れるというのは、少しでも恩を返そうと、ながめが家を守ってくれるのだと思う。
 では家人が姿を消すほうはどうか。
 一見、これは恐ろしい話に聞こえるかもしれない。ながめは人に害なす化け物だと思うかもしれない。
 だけども、きっと違うのだ。
 だってながめは家人が好きなのだ。
 ならば害するわけがない。
 多分、家人がいなくなるというのは家人が死ぬことを意味しているのだ。
 家人が好きだったながめは、悲しくて悲しくて、一人ひっそりと姿を消すのだ。
 そこにいるのが辛いから。
 ながめはいじらしい、尊い生き物だ。



――――――――――――――――――――――――――――



 兄は今日も蔑むような目でわたしを見る。
「ああ、永見、どうした?」
 兄は今日も唾棄するような声でわたしに答える。
「あ、あの、い、いっしょに帰ろうって思って」
「ああ、いいよ」
 そう言って兄は、わたしの頭の上に置いた手を動かし、私の髪をくしゃりと撫でる。
 その兄の手から伝わってくるのは愛情などではなく、後悔の念と嫌悪感。
 
 
 兄はとっても優しい。
 兄は、わたしのことを嫌っているにも関わらず、こうしてわたしに構ってくれる。触れてくれる。見捨てないでいてくれる。
 肉体的にも精神的にも人より劣っているわたしにいらいらされられるのは当然のことだ。
 だから、人は大体みんなわたしのことが嫌いだ。
 それでも、兄はわたしのことをぜったいに見捨てたりしない。
 きっと兄は聖人なのだ。
 哀れなわたしに慰めを与えてくれる、立派な人なのだ。
 そう分かっていつつ、卑しくもわたしは兄の優しさに依存し、迷惑をかけてばかりいる。
 最低だ。
 それでも、孤独なわたしは、この温もり無しでは生きていけない、無様で浅ましいわたしは、こうして兄に縋らずにはいられない。


――――――――――――――――――――――――



 ベッドの上で、部屋の壁に背を当てる。
 この壁の向こうに兄がいるのだ。
 そう思うと、ただ背を当てているだけで、心が安らぐのが分かる。
 壁の向こうから、兄の声が小さく聞こえる。
 来た。
 わたしは急いで壁に耳を当てる。
 兄が電話を始めたのだ。
 兄はわたしのせいで、付き合いを犠牲にすることが多い。
 その代わりのように、よく長電話をするのだ。
 
 兄の声が、好きだ。
 声変わりの前の声も好きだけど、声変わりした後の、響くような低い声はもっと好きだ。
 兄の子供のような笑い声が好きだ。
 兄の屈託の無い冗談の言葉が好きだ。
 兄の照れたような、戸惑った声が好きだ。
 ――それらの声は、わたしには決して向けられることの無いものだ。
 だからわたしは、こうして壁に耳を当て、兄の電話の声を聞くのが好きだった。
 しかし、幸福に満ちたわたしの耳は、一つの雑音を感じ取る。
 不愉快な、女の声。
 わたしには決して向けられない感情を向けられている女がいる。
 それは、わたしにとってとても辛いことだった。

493『ながめ』1 ◆wzYAo8XQT.:2014/07/15(火) 00:07:43 ID:vjwUcrnU
 
 
 
 
 兄の部屋の前に、細い光芒が伸びている。
 閉じられた襖の隙間から伸びる、蛍光灯の光だ。
 その光芒に誘われるように、気がつけばわたしは兄の部屋の前に立っていた。
 部屋の中からは、相変わらず、兄の楽しげな談笑と、かすかに女の声が聞こえてくる。
 
 まるで罰を受けているようだ、と思った。
 わたしが愚図だから。こうして部屋の前に立たされているんだ。
 わたしが人より劣っているから、兄の隣にいれないんだ。


 襖を薄く開け、兄を見る。
 兄は、笑っていた。
 本当に楽しそうに。わたしには一度として向けたことの無い顔で。
 顔が歪む。兄はあんなに楽しそうなのに、どうしてそれを見た私はこんなにも辛くなるのか。
 おかしい。だってわたしは兄が好きだ。兄に、幸せになってほしいと思っている。
 なら、兄が幸せなら、それでわたしも幸福ではないの?
 
 わたしは、どうしたいのだろう。
 楽しげに笑う、兄の笑顔が見たいのか。
 楽しげに笑う、兄の笑顔を消したいのか。
 
「あはは、それで……」
 談笑の途中、何の前触れも無く、不意に兄の眼がこちらを向いた。
「ひぅ!」
 思わず声が漏れる。
 兄の顔がしかめられるのが分かる。
 手間のかかる厄介な奴が来た。今度はいったい何のようだ。
 そんな言葉が兄の顔に浮かんで見えるようだ。
「悪い、ちょっと用事できた。また後でかけ直してもいいか?」
 兄はそう言いながら、わたしに手招きをする。
 わたしは、罪悪感と羞恥心で顔を真っ赤にしながら、そっと襖を開く。
「なんだ」
 電話を終えた兄が、忌々しげにこちらを見下ろす。
 電話をしていた兄は、とても楽しそうだった。
 電話からかすかに聞こえた女の声。
 あれは、兄の何だろうか。

「そ、その、用……なくて」
「じゃあなんで俺を見ていた」
「あ、あの、襖開いてて、それで……」
 兄はハァ、とため息を吐いた。
「そうか、教えてくれてありがとう」
 その声は、出て行け、と言っている。
 何勝手に盗み聞きしてんだ気持ち悪い。
 兄の眼はそう言っていた。
「う、うん……じゃあ。ごめんね……」
 わたしはもう泣き出しそうだった。
 こんななんでもないことなのに。
 兄はまた、小さくため息を吐く。
 兄は、わたしの頭に手を添える。
「あ、あの……」
「落ち着いたか?」
「あ、え、と」
「もう少しか」
「う、うん……」
 兄は、わたしが落ち着くまで、頭を撫でてくれた。
 わたしのことは迷惑でしかないはずなのに。
 兄に落ち度など一つも無いのに。
 兄は、本当に優しい。
 優しすぎるのだ。
 
 



――――――――――――――――――――――――――――


 月明かりが薄く部屋を照らす。
 眠れもしないのにベッドに横になっているうちに、いつの間にか月が出ていたようだ。
 その光を反射して、机の上のサードニクスが、かすかに輝いた。
 あれは兄から送られた誕生日プレゼント。サードニクスがついたネックレスだ。
 わたしの誕生月が八月だから、誕生石だといって。
 その素っ気無いデザインが、兄からわたしへの気持ちをそのまま表しているそうで、涙が出るほど嬉しかった。
 あれから、その石を眺めるのを一日も欠かしたことは無い。
 あの石を眺めながら、兄のことを想う。そして、あの幸福だったときを反芻する。
 わたしは兄なしでは生きていけない。
 漠然とした確信。
 だけど、わたしは兄のために何かをすることが出来ない。
 兄に害を与えることしか出来ない。兄の足を引っ張ることしか出来ない。いないほうがいい、有害な生き物。
 兄が、あの屈託の無い笑顔を向けるような、その人のようには決してなれない。
 そして兄はいつかわたしの傍からいなくなる。わたしは、兄の傍には寄り添えない。兄に、永遠に追いつけない。
 確固たる確信。
 迷惑をかけても兄の傍にいたい。たとえ兄にとって害悪にしかならなくても、それでも兄の傍にいたい。

494『ながめ』1 ◆wzYAo8XQT.:2014/07/15(火) 00:07:59 ID:vjwUcrnU

 ――なんて浅ましい。
 この世で一番大切なものを、どうして傷つけようとしてしまうのか。
 わたしさえ消えれば、この世で一番大切なものが守られると分かっているのに、どうして消えることが出来ないのか。
 どうして。どうして。
 こういうとき、わたしは自分が嫌でたまらなくなる。
 いっそ化け物になりたかった。
 兄が語った童話の妖怪になって、軒下から兄をずっと眺めて過ごすのだ。
 一緒にいることが出来ないのならば、せめて、眺めるだけでも――
 化け物にだって、それくらいは許されている。
 わたしには、許されないのに。
 わたしは、兄が小さい頃会ったという妖怪に思いを馳せ、そして少しの羨望と、少しの嫉妬を覚えた。

495 ◆wzYAo8XQT.:2014/07/15(火) 00:09:22 ID:vjwUcrnU
一話終わり
書き込めなくならなかったら続きは一週間後くらいに

496雌豚のにおい@774人目:2014/07/15(火) 06:39:53 ID:52HsC61Q
>>495
GJ
妹可哀想だなー

ぽけもん黒の人だったのか
あなたの作品好きだから嬉しいわ

497雌豚のにおい@774人目:2014/07/16(水) 01:05:44 ID:FVGpLjuE
ぽけ黒のオチは個人的に絶許な模様

498雌豚のにおい@774人目:2014/07/16(水) 14:31:42 ID:85jpdwLU
>>495
来週まで楽しみです
GJGJ

499 ◆wzYAo8XQT.:2014/07/16(水) 20:07:59 ID:Mt3q8FjE
>>497
どこが不味かったですか?
お聞かせいただければ幸いです

500雌豚のにおい@774人目:2014/07/17(木) 18:37:46 ID:KAKB7NUg
gjです!
ぽけくろさんの新しい作品読めるなんて嬉しいな!続き待ってます。

501雌豚のにおい@774人目:2014/07/18(金) 02:53:06 ID:BpS3iaCY
投下乙
永見ちゃん本当にそそるわぁ…

502一朝一夕第3話:2014/07/18(金) 04:29:00 ID:0W.Xhquc
少し間が空きましたが投下します

503一朝一夕第3話:2014/07/18(金) 04:29:30 ID:0W.Xhquc
「うーんこんなもんか」
四日間に渡る期末テスト。その全てが終了し、結果が返された
俺の平均点は大体55点くらい。前回の中間テストに比べれば若干上がったものの、全体で見れば平均くらいだった
「雄次はどうだった?」
「俺は前回よりちょっと下がったな」
そういって雄次の結果を見るが、平均で70点ちょっと取れている。はっきり言って十分な成績だ。
「それでもまだ上の方じゃん。俺なんか今回ちょっと頑張ったのにちょうど真ん中ぐらいだぜ」
「二人とも結果どうだった?」
クラス内ではトップ、学年全体では4位に入り上位成績者10位以内に入った旭さんが聞いてきた。
「まぁまぁかな。にしても旭さんはさすがだな」
「そんなことないよ〜」
自分の成績を鼻にかけた様子もなく、軽く笑いながら手を振っている
「二人だって悪い成績じゃないじゃん」
「いやいや、旭さんには全然及ばないよ。それに旭さんはこれで夏休みの宿題半分免除じゃん」
うちの学校には各学期の中間・期末それぞれで10位以内に入った生徒には宿題の量が半分になるというシステムがあった。そうすることで学生の勉強への意欲向上を図っている
「それに、俺英語で赤点取っちゃったから今日から終業式までの四日間補習だぜ…」
俺達1年生の英語の担任はアメリカ人で、夏休みにはアメリカに長期休暇で帰国するためテスト返却日の今日から明日からのテスト休み3日間丸々使って補習が行われる
ちなみに、補習をサボったら夏休みの宿題が倍になる
「あちゃー・・・それはドンマイ」
旭さんが苦笑いでなぐさめてくれる
「まぁでもその代わり夏休みには登校日を除けば補習はないわけだし、ポジティブに考えようぜ」
雄次もそういって励ましてくれる
どうも英語は苦手だ。前回の中間ではなんとか赤点は免れたが、難易度が上がった期末では無理だった
「まぁたしかにこの補習さえ乗り越えればあとは夏休み、頑張るしかないか」
「そうそう」
「さて、そんじゃ俺は帰るわ。補習頑張れよ洋」
「ああ、二人ともテスト休み楽しんで」
そう言って二人と別れ、俺は補習が行われる教室へと向かった

504一朝一夕第3話:2014/07/18(金) 04:30:49 ID:0W.Xhquc
二人と別れ、補習が行われる教室に向かう途中、廊下に張り出されている学年上位10以内の張り紙。そこの1位には前回の中間試験の時と同じ名前があった。
夕暮夜宵。俺の幼稚園から同級生で、常に学年首席に君臨する類い稀な天才だ。
正直、件の受験の際の不運に見舞われなければ、もっと上の進学校でよりその学力を伸ばせていたことだろう。
もったいないことだが、常に学年トップを維持し続けることの重圧を考えると、多少余裕を持って試験に臨めるうちの学校の方が案外基礎固めにはいいのかもしれない
そう思いながら教室に入ると、そこには長身の女子生徒が立っていた
肩あたりまである髪は日本人らしい漆黒の黒髪。身長はおそらく俺と同じくらいで、かなりメリハリのある身体をしている。特に制服を大きく押し上げる胸元は、ちょっと他の高校生には刺激が強すぎる。
彼女こそ夕暮夜宵その人である
「えーっと、あなた清戸さん?」
彼女の方が先に話しかけてきた
「はい」
「英語のデイビス先生から頼まれて、今回からの補習のアシスタントをします夕暮です」
彼女は前回の中間に続き今回も全教科満点。たしかに納得できる話だ
しかし
「からのってことは、この四日間ずっと?」
「ええ」
ということは、テスト休みが潰れるという点では彼女も補習を受けているのと変わらないんじゃ?
「夏休みの英語の宿題の完全免除を条件に、先生ほど上手くは教えられないかもしれないけど皆さんの補習を教えます」
そういうことか・・・。まぁけど、中間・期末と満点を取っているんだし、本来休みの間の学生の学力維持を目標とした宿題自体彼女には不要かもしれない
「今回の補習プリントも私が作ってきたから、補習はそれに沿って進んでいくことになります」
「皆サン、揃いマシタか〜?」
32歳(独身)、生徒に人気はあるが女性関係では苦労が絶えないデイビス先生が教室に入って来た
「ソレでは補習始めマース。席ニ着いテ」
そう言われて俺は空いてる席に着き、夕暮さんは先生の横に立った

「補習ハ夕暮さんが作ってくれたプリントを中心にやりマス。英語は数、とにかくプリント解きまショウ」
実践あるのみってことか。さっそく目を落とすが、けっこう難しい・・・。前途多難だ。


「ソレでは今日は終わリ。お疲れサマでーす」
「疲れた・・・」
結局、終始悪戦苦闘を強いられた・・。普段の英語のプリントならもう少し解けるのだが、今回は自分の苦手な部分ばかり出た
「夕暮さんありがとうございます。ってか、なんか常に質問しちゃってごめん」
「ううん、それはちゃんと問題に向き合っていたからだと思うよ」
夕暮さんが穏やかな笑顔を向ける。こんな風に彼女に笑顔を見たのは初めてだが、かなり大人びた笑顔だ
「ホントホント、夕暮さんの教え方上手いんだもーん、助かったよ」
「私も、というかデイビス先生より教えるの上手いし」
他の生徒達も口々にお礼を言う
「いえいえ、どういたしまして」
「そだ、夕暮さんメアド教えてくんね?またなんか分からないこととかあったら聞きたいわ」
補習を受けていた、あまりそういったことには真剣ではなさそうなタイプの男子が彼女に言う
「そういうのは最初は自分でやらないと駄目。そういうのどうかと思うな」
夕暮さんがちょっと厳しめの返答を返す
「うっ・・・分かった・・」
軽い誘いを若干カウンター気味に返され、それ以上いく気をなくしたようだ
「っと、じゃあ俺はこれで」
特に長居する理由もないし、帰ろうと踵を返す
「うん、また明日ね」
夕暮さんが返してくれる。
さすがに今日は疲れた。家でゆっくり休もう。

505一朝一夕第3話:2014/07/18(金) 04:31:44 ID:0W.Xhquc
今日はとても、とても素晴らしい一日だった
自分の愛する人に勉強を教え、少々のスキンシップまで取れたのだ
洋さんの誠実さは、やはり彼が他のどうでもいい男とは明らかに違うことを教えてくれる。
私が正面に入って教えている時、同時に彼の正面には私のこの大きな胸があったのに、彼は一度それに気付いたものの、すぐに意識と集中力を勉強の方に戻した
それに引き換え、補習後私にメアドを聞いてきた男と来たら・・・
見られたくないがため彼を教える時はあえて真横に座ったというのに、なんの遠慮もなく私の胸をじろじろと見ていた
実に不愉快だ。
私のこの大きな胸は、彼だけのものなのに・・・
横に座った時に洋さんの腕にわざと胸を押し当てるサービスもしたが、彼は一瞬驚き内心では赤面しながらも再び問題の方に意識を注ぎ込んでいた
ふふ、プリントを彼の苦手な分野で作ってよかった。おかげで彼はたくさん私に質問してくれて、その間彼の意識を独占することができた
たった一つの邪魔物、そう・・・
他ならぬ私が作ったこのプリント達を除いて
ちょっと難しく作りすぎた
それさえもう少し簡単に作れれば、もっともっと彼を独占できたのに・・・!私は洋さんの物。早く、早く物理的に彼の物になりたい。今回の補習は、その第一歩なのだ。なのに・・・
なのに、なのに、なのに、なのに、なのになのになのになのになのになのになのになのに・・・!
「〜〜〜!」
ザシュ!私は、気がついたら今日自分の作ったプリントの余りを包丁でめった刺しにしていた
彼は努力している。だが残念ながら、彼はあまり頭が良くない。おそらく、脳に入る知識の容量があまり大きくないのだろう。だから、勉強していても成績はあまり良くない
しかし、それがなんなのだろう?
勉強なんかできなくてもできる仕事はたくさんあるし、第一彼は私と結婚して幸せな家庭を作るのだから何の問題もない
純粋に彼の学力向上を願うのなら、今日と同じようなプリントを作るのがいいのだろうが、それでは私へ向けられる彼の意識の程度が減ってしまう
そんなのは到底受け入れられない

私は、あの雌豚とは違う。
恋に落ちるまでかかった時間は変わらないかもしれないが、思い続けてきた年月が違う。
私には、もう彼しかいないのだ。
私はとても頭がいい。同時に、今こうして想い焦がれている間に燃えている感情の炎は、もはや鎮火できるレベルをとっくに超えている
それでも、これまではあの水野という男のおかげもあり他に彼を好きになる輩が出てくる可能性の低さに愚かにも安堵していたため、ひたすら自分磨きに専念していた
しかし、今日という日を足掛かりに、これから私は現実で彼をモノにし、彼のモノになる
そこに何か障害があるのなら、全力で薙ぎ払うだけだ

506一朝一夕第3話:2014/07/18(金) 04:32:55 ID:0W.Xhquc
投下終了します

507雌豚のにおい@774人目:2014/07/18(金) 09:50:17 ID:F10AZVzA
>>506
GJ
激しい修羅場がきそうでワクワクしますわw

508497:2014/07/19(土) 02:01:56 ID:u436XEug
遅くなったけどレスきてたから返信
まぁ今更だから軽く聞き流してもいいがあれ確か最後ループ落ちだったやろ

あんな長く続いたからこそ今までなんだったんや?ってなったというか、個人的に最後の締めとしてループ落ちはアカンって考えやからポケ黒も例に漏れずって感じ。それだけ

509雌豚のにおい@774人目:2014/07/19(土) 19:43:25 ID:c/yapVIQ
なんか、最近賑わってていいな
俺も続き書かねば(使命感)

510雌豚のにおい@774人目:2014/07/19(土) 23:21:44 ID:cWaqYsDI
ステレオタイプの量産ナンバー、久々に読んだがやっぱいいわ
病子の口調が癖になんだぁ

511雌豚のにおい@774人目:2014/07/20(日) 12:44:22 ID:V1AvyNgY
ふと、思いついた作品を載せたいと思います

ただ、皆様の作品よりもかなり低レベル低クオリティですので、ご了承下さい

『我等、グリム童話とイソップ童話の被害者?』

どうぞ

512『我等、グリム童話とイソップ童話の被害者?』:2014/07/20(日) 12:49:55 ID:V1AvyNgY
ここは、真っ白な部屋

ここ、ある【かみ様】の気紛れであらゆる人物が呼び出されいつの間にか、元の世界に戻される

そして、今回は4人の人物が呼び出された

彼らは、ある有名な絵本の登場人物である

そんな物語

513『我等、グリム童話とイソップ童話の被害者?』:2014/07/20(日) 12:54:23 ID:V1AvyNgY
???「あの…」

1人の男の子が話しかけた

???「なんだい?」

???「何か話しませんか?退屈で…」

???「それよりも、私は今、この幸せを噛みしめたいんだが…」

???「賛成だな。」

???「まぁ、坊主にのって話すか?」

???「何について話す?」

???「自分の元いた世界の話なんてどうだ?」

514『我等、グリム童話とイソップ童話の被害者?』:2014/07/20(日) 12:56:16 ID:V1AvyNgY
《ケース1》赤ずきんちゃんの狼

確かに、俺は赤ずきんと婆さんを食ったよ?

でも、性的じゃない

物理的にだ

なのに…

何で、赤ずきんと婆さんが逆に俺を食おうとしてる?!

婆さんに至っては、『若返りの泉』て奴で二十歳まで若返って迫ってくるし、赤ずきんはあんなにも純情だったのに、俺に首輪を付けようとするんだぜ!!

何とか、逃げ切って群れに帰ったらメスは全滅してるし

それを、やったのが赤ずきんと婆さんって、怖すぎだろ!!

もう、夜も眠れんのだ

???「同じ狼ながら同情するぜ。次は俺だな」

515『我等、グリム童話とイソップ童話の被害者?』:2014/07/20(日) 13:00:49 ID:V1AvyNgY
《ケース2》狼と七匹のこやぎの狼

お前はまだいいほうだぜ

俺は、腹がへったから七匹のこやぎがいる家に行ってな

少ない頭を絞って何とかこやぎを出し抜いて六匹、こやぎを食ったんだ

何故、六匹なのかというと、腹がいっぱいになったから

その後、腹がいっぱいになったら眠くなるだろ?

だから、寝たんだ

その後、こやぎの母親に腹を切られ石を詰められたんだ

で、喉が渇いてな

腹に石があるとも知らず、湖にいって喉を潤そうと思って屈んだら、湖にドボン−

それで死ねたらよかったと今思うね

助けられたんだ

七匹目のこやぎに

どうやら、自分だけ特別だと思ったらしい

湖に落ちて気絶してた所、首輪をつけられ洞窟で監禁

猿のように逆レ〇プ

もう、出ないのにやられる

この気持ち判るか?

???「うわ、きついな。」

???「次は、僕だね。」

516『我等、グリム童話とイソップ童話の被害者?』:2014/07/20(日) 13:04:07 ID:V1AvyNgY
《ケース3》ヘンゼルとグレーテルのヘンゼル

狼さんたちも苦労してるんですね

僕は、妹のグレーテルが怖いです

村で飢饉になってしまって…僕たち兄妹は森に捨てられたんです

最初は、小石をこっそり持っていたので、それを頼りに帰れたんです

2回目の時は、小石が無かったのでパンを千切って道しるべにしたんです

あの時、もっといい方法を考えれば良かったです

その後、魔女に僕たちは捕まったんですが…あの優しい妹が…!!

アァアァァァ!

???「大丈夫かい?無理に話さなくても…」

大丈夫です、ありがとうございます

魔女を、出し抜いたところはいいんです

しかし!!

妹は、僕を牢屋から出してくれません

幸い、鍵が錆びていたので力業で出れたのですが…

僕は見たんです

妹が、毎日僕のご飯に自分の■や■■■を入れていたのを!
僕は逃げ出しました

妹が恐ろしくて

しかし妹は、魔女から魔法を教わっていたんです!!

結果、僕は逃げられず七匹のこやぎの狼さんのように監禁されました

その内、僕も七匹のこやぎの狼さんみたいにされるかも…

七匹のこやぎの狼「その歳で坊主…よく言ってくれたな。」

赤ずきんの狼「あぁ、良く吐き出せた。お前は立派だ。」

ヘンゼル「うぅ、ありがとヴございまず。」¨泣¨

???「では、最後に私か…」

517『我等、グリム童話とイソップ童話の被害者?』:2014/07/20(日) 13:13:44 ID:V1AvyNgY
《ケース4》金の斧と銀の斧の木こり

私は、森で木こりとして生きてきました

ある日、うっかり手を滑らせてしまって大切な斧を湖に落としてしまったのです

その時、湖から女神様が現れて私に『金・銀・銅』の斧をプレゼントして下さいました

そのことを、婚約者に話したんですよ

すると、彼女はヒステリーになってその斧を叩き付け、湖に走って行ったんです

何故、ヒステリーになったかは判りませんが…

待てど暮らせど、彼女が帰ってこないので、私も湖に行ったんです

湖に行ったら女神様がいました

私は聞きました

ここに、彼女は来なかったか



女神様はいいます

もしかしたら、湖の底にいるかも知れない

私が見てきてあげても良いけど、あまり行ったことが無くて、恐いから一緒について来て下さいませんか?

しかし、私は湖に潜れない

と伝えました

しかし、女神様は魔法でどうにかすると言います

そして、シャボン玉のような物を作り上げ【これ】に入るように言いました

私は2つ返事で了承し、中に入りました

その後、私は…

ブルブルブルブル

赤ずきんちゃんの狼「それ以上いうな。」

ヘンゼル「顔真っ青ですよ。」

七匹のこやぎの狼「深呼吸しろ。石灰でもかじるか?」

木こり「だ、大丈夫です。」

そして、湖の底につきました

そこで、見たのは変わり果てた婚約者だったんです

しかも、私の落とした斧で…滅多刺しでした

私は恐怖を感じました

直ぐに逃げ様にも、シャボン玉が邪魔で逃げられません

女神様はいいました

私だけの物になりたくないなら、シャボン玉を割って逃げてもいいわよ

ただ、水圧であなたは死んでしまうかもクスクス

私は諦めました

七匹のこやぎの狼「キツいな。」

ヘンゼル「僕のはまだ生易しいのかも…」

赤ずきんちゃんの狼「最愛の人を失うとは…」

木こり「だから、私はいまあの、女がいない幸せを噛みしめたいと言ったんだ。」ダン

518『我等、グリム童話とイソップ童話の被害者?』:2014/07/20(日) 13:16:18 ID:V1AvyNgY
木こりが、白い部屋の床を叩くと途端に割れてしまいました

そして、彼らは元いた世界へと帰って行きました



トッピンパラリノプゥ♪

519『我等、グリム童話とイソップ童話の被害者?』:2014/07/20(日) 13:19:34 ID:V1AvyNgY
以上です

実は姪が、図書館から借りてきたグリム童話とイソップ童話の本を借りてきたので、久しぶりに読んでふと思って書きました

ヤンデレ分が足りなかったでしょうか?

また、機会がありましたら書きます

520雌豚のにおい@774人目:2014/07/20(日) 14:22:58 ID:fiaw//hA
まさか、グリム童話にこんな続きがあったとは…f(^_^;

521雌豚のにおい@774人目:2014/07/20(日) 23:30:35 ID:5CSKzRHY
すごくいいとおもいます

522雌豚のにおい@774人目:2014/07/21(月) 00:01:27 ID:9IH3IJts
復活のにほひ...

523雌豚のにおい@774人目:2014/07/21(月) 06:27:31 ID:0.BhLOQI
そういやかなり昔になるけど同じようにヘンゼルとグレーテルネタがここに投下されてたような…。
案外グリム童話ネタは結構どこにでもある気がする。実際「実は怖いグリム童話集」みたいなダーク系としての本も出たりする位だし人気あんのかね

524雌豚のにおい@774人目:2014/07/21(月) 14:22:19 ID:5f2tXltI
>>506
>>519
GJです
投下増えてうれしいわ

525雌豚のにおい@774人目:2014/07/21(月) 21:23:44 ID:dGNT0o3s
みなさんGJです!
ここ最近盛り上がってて良いね

526雌豚のにおい@774人目:2014/07/22(火) 01:36:50 ID:GtXsDtIc
ぐっじょぶです!

527 ◆wzYAo8XQT.:2014/07/23(水) 01:31:22 ID:ljDx2/zA
>>508
ループ落ちについては私自身も「明確な結論からの逃げではないか?」と悩みました
しかしすべてのヒロインに平等に希望を与えつつ、主人公を一途にするにはこの作品においてはこれしかない、と判断しました
ただ、こういった意見を頂けるのは個人的にはとてもうれしいことなので、ありがとうございます

すみません、投下ですが三連休に風邪を引いたためすごく短くなります
これというのもヤンデレちゃんが寝てる間に私の毛布を剥ぎ取っていったせいに違いない

528『ながめ』2 ◆wzYAo8XQT.:2014/07/23(水) 01:38:08 ID:ljDx2/zA
 小学校低学年のこと。
 友人の家に遊びに行ったとき、ソイツの家の軒下から、黄色い輝きが見えた。
 軒下を覗き込むと、その光はすぐに奥に引っ込んだ。
 慌てて友人を呼びにいくと、友人はこともなげに「それはながめだよ」と答えた。
 祖母だったか保育士の先生にだったか聞かされたことがある童話の中の化け物の名前。
 それを現実の会話の中で聞いたことに、俺は大層驚いた。
「ながめってほんとにいたんだ! すっげー!!」
 俺ははしゃいで、軒下を覗き込む。
 しかし当然のことながら軒下は思いのほか真っ暗で、何も見えない。
 ただ、怯えた獣の息遣いだけははっきりと聞こえてきた。
 何かが確かにいる。
 その確信に、俺はさらに興奮する。
 そんな俺に、友人はほら、と懐中電灯を差し出した。
 懐中電灯で照らされた床下の奥。
 そこには黒い毛玉みたいなのが転がっていた。
 縮こまって丸くなっていて、本当に毛玉みたいに見える。その毛玉のような様相の中で、真ん丸い、黄色い目だけがギラギラと輝いてこちらを見ている。
 俺はその黄色い目に射抜かれてしまった。
 その目は俺にとってまるで宝石のように見えたのだ。
「おい! ながめ! 出て来いよ!」
「お、おい、大丈夫なのかよ?」
 友人は良いから見てろという風に俺を見る。
「ほら、えさだぞ」
 友人はいつのまにか、簡素なおにぎりを持っていた。おそらく家の中に懐中電灯をとりに行くときに一緒に作って持ってきたのだろう。
 ながめは半ば突撃するようにこちらに寄ってくる。
 俺は襲われると思って咄嗟に後ずさった。
 だが友人はまったく慌てる様子もない。
 転がるようによってきた毛玉は、友人の前に来るとピタリととまり、犬のような両手を使って友人から器用にその握り飯を受け取った。
 ながめは毛にうずめるようにしてそのおにぎりを貪る。
「な?」
 何がな? なのか知らないが、そのときの俺はすっかり興奮してしまった。
「すっげー! すっげー!」
 俺が大騒ぎしていたからだろう、ながめが俺に興味を向けた。
 おにぎりを顔の前に抱えながら、ゆっくりと顔を左に捻る。
「おと……もだ…ち?」
 それはかすれてはいるものの、まるで若い女性のような高く穏やかな声だった。
「しゃ、しゃべった!」
「知らないのかよ。ながめはしゃべるんだぞ」
 友人は得意げに胸を張る。
 ながめはその友人の影から、おどおどを伺うように俺を見てくる。
「そうだ、こいつは友達だ。怖がらなくて良いぞ」
「お、おれは一泉(いずみ)」
「い、ずみ……。よろ……しくね」
 ながめは――化け物はそういって、大きな瞳でまっすに俺を見た。
 美しい、宝石のような瞳で。

529『ながめ』2 ◆wzYAo8XQT.:2014/07/23(水) 01:38:40 ID:ljDx2/zA
 それから俺は友人の家を訪れるたび、ながめと会話を交わすようになった。
 学校のことや日々のたわいの無いことを、ながめは飽きることなく聞いてくれ、そしてふふ、と大人しく笑うのだ。
 そんな変わった生き物に俺はすっかり夢中になっていた。
 そんな俺とながめの縁はある日突然切れる。

 件の友人が数日学校を休んだ。
 友人の兄が失踪したからだ。
 数日振りにあった友人は、すっかり狂相となりはて、子供とは思えない、憎しみに塗れた瞳をしていた。
「ながめのせいで……」
 彼はそう呟き、そして俺はついぞ忘れていたながめの伝承の結末について思い出した。
 宝石のような目をした、大人しい穏やかな化け物など、この世のどこにもいなかった。
 ながめは、やはり恐ろしい化け物だった。
 伝承の通り、ながめは家人とともに――友人の兄とともに消えて失せた。
 おぞましい化け物と平然と会話をして、あまつさえ餌さえ与えてしまっていた。
 当時俺はそのことを恐ろしく思うと共に、心底自分の行動を後悔した。
 そのせいもあって、その友人とはそこで疎遠になってしまって、それっきりだ。
 
 あの化け物はいったいなんだったのか。
 今でも時々考える。
 成長した今なら分かる。あの化け物と会話したことは、現実の出来事ではないのだろう。
 なにせ獣が人の言葉を話すわけがない。
 友人の家の軒下に、何かがいたのは間違いない。でも、それは多分、人語を解す童話の化け物なんかじゃなくて、病気の獣か何かだったのだろう。
 それはそれで相当危険だが、ながめが実際にいたということよりはよほど辻褄があう。
 多分俺はそれらしい病気の獣との交流と、友人の兄の失踪がたまたま重なったことで、童話の化け物を思い出し記憶を捏造してしまったに違いない。
 小さい子供は現実ではおおよそありえないものを時たま見る。
 それは子供に特別な才能があるとか、そういうことではなくて、まだ現実を捉える能力が未成熟だから、現実を取り違える、あるいは記憶が簡単に摩り替わってしまうからだ。
 俺が見たながめも、ながめの記憶も、多分そういうことなのだろう。あるいは、イマジナリーフレンズのように、俺からその獣への一方的な会話はあったのかもしれない。
 しかしアレが子供の妄想で、真実でないと分かっていても、それ以来俺にはながめに対する強烈な印象が植えつけられてしまった。
 そしてその印象は今でも消えていない。
 成長して、いくら過去の不可思議な出来事にこのように合理的な説明が出来るようになったところで、それでもその当時の感情は消えはしないからだ。
 俺は今も、妹にながめの影を見る。
 そして思うのだ。ふと気がつけば、軒下から妹が俺を見てくる。あの日見たような、宝石のような大きな瞳で。
 俺は今でも、あの日見た化け物の幻覚に縛られていた。

530 ◆wzYAo8XQT.:2014/07/23(水) 01:39:15 ID:ljDx2/zA
短いですが投下終わります
続きはでき次第

531雌豚のにおい@774人目:2014/07/23(水) 05:34:39 ID:EGIvj6Xs
ぽけ黒の作者よ
毛布をとったのはヤンデレちゃんではない
ながめでもマイエターナルスイートエンジェル香草ちゃん様でもない
お前自身だ
お前自身だ


つまりどういうことなのか分かるか?…。
それはお前自身が自分に対してのヤンデレであるということだ(ドンッ

532雌豚のにおい@774人目:2014/07/23(水) 08:44:31 ID:QRMTWNJ2
GJです
謎が深まってまいりますねえ

533雌豚のにおい@774人目:2014/07/23(水) 23:44:01 ID:adtjVpuA
GJ!
謎が謎を呼ぶ…

534ストーカー女:2014/07/25(金) 23:40:04 ID:Fl6WOgAE
投稿します。

535ストーカー女:2014/07/25(金) 23:40:59 ID:Fl6WOgAE
――――――――――――――――――――――――――――

松田翔太郎……私の好きな人…好きだなんて安い感情なんかじゃない。

愛している…小学校の頃からずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっと……愛してる……。

だけど、彼は私の事なんか覚えていないだろう。私はこんなに貴方の事が好きなのに。なんでどうして…そんなにあんな貧乳雌豚がいいの?

私の方がおっぱい大きいのに、貴方の好み通り腰まである長い黒髪にしたのにそれでも貴方はあの『カノジョ』とか言う雌豚が好きなの?

私はその雌豚以上に貴方の事をしている。貴方以上に貴方の事を知っている。

貴方の全てが欲しい。私は貴方が必要…貴方の愛がないと私は生きていけない。
貴方がいないと貴方がいないと貴方がいないと貴方がいないと貴方がいないと貴方がいないと貴方がいないと貴方がいないと貴方がいないと貴方がいないと貴方がいないと貴方がいないと貴方がいないと貴方がいないと貴方がいないと貴方がいないと……。

あ、もうこんな時間翔太郎君のオナニーの時間だわ。えへへ…監視カメラを付けて……今日も一緒に一緒にイこうね?

私は壁に大量に貼り付けてある彼の写真の一枚に口づけをしてオナニーを始める

――――――――――――――――――――――――――――

536雌豚のにおい@774人目:2014/07/26(土) 04:41:55 ID:jGRicWj.
久々に盛り上がってきたな。ホトトギス読み直そう

537雌豚のにおい@774人目:2014/07/26(土) 12:33:16 ID:bPtfiYGM
盛り上がってきてるので、また投稿します

以前、『我等、グリム童話とイソップ童話の被害者?』を書きました

また、低レベル低クオリティですがよろしくお願いします

では、『ある殿様の話』

538『ある殿様の話』:2014/07/26(土) 12:37:12 ID:bPtfiYGM
ここは、ある田舎の城

領地も人並みにあり殿様のお給料も多からず少なからず

故に殿だとか家老だっか地位は形だけといった物のような感じであった

しかし、ここの殿様は大変、義理堅く人情がある

名を、病乃忠利(やみのただとし)という

そんなある日

家老「殿!今年の年貢について農民達が話があるそうです。」

殿「うむわかった。それより、わしの髪結い紐を知らぬか?後ろで纏めようと思うてたのに見つからないのじゃ。」

家老「それは、困りましたな。」 殿「まぁ、髪など結わかなくとよいか。参るか…」

「お待ちくださいまし!」

殿「おお、照(てる)か。どうした。」

病乃照、忠利の実の妹である

既に隠居している母親似でありその美貌から、数多から結納の話があるが何故か断っている

父君には全く似ていない

照「例え、下々の者と話すとは言え兄上はこの城の主…領主ですぞ!!兄上が恥ずかしくなくても、私が恥ずかしいですわ!」

殿「う、うむ。」

照「ちょうど、私のがございますから、せめてこれで結わいて下さいまし!」

殿「おお、ありがとう。よし、話を聞きいくか。爺、参るぞ!」

家老「ははっ。」

539『ある殿様の話』:2014/07/26(土) 12:41:22 ID:bPtfiYGM
まったく、兄上はだらしないんですから

やはり、ここは私がしっかりと兄上を躾なくては

兄上は、大変よい領主です

農民の話を聞き、己の利益を町に流す

大変欲がなく素晴らしい方です

町で飢饉に陥れば、年貢により取り立てた米や野菜を返し
洪水が起きればすぐに対策を手配する

あぁ、兄上はなんて素晴らしいんでしょう

私に結納を申し出た者など、欲望丸出しで何て品がない

少しは兄上の爪の垢を煎じて飲ませたいわ

いえ、勿体ないわね 私が飲むわ

誰にも兄上は渡さない





殿「ふーむ、この麦饅頭とやら、旨いの。」

家老「全くですな。なんと甘美な…」

私が、兄上の素晴らしさに浸っていたら、兄上が何か食べながら戻って参りましたわ

何を食べているのかしら?

殿「おぉ、照。お前も食うか?」

照「兄上それは?」

殿「先程の農民からの贈り物でな。大変美味だぞ。」

照「…兄上。まさか、毒味もせずに食べたのですか!!」

殿「うむ。大変、美味そうだったからな。」

照「もし、それに毒が入っていたらどうするんですか!」

家老「あの、姫様その心配は御座いません。殿が食べたのは一度、農民達が殿の目の前で実食しそれを殿は食べたのです。」

540『ある殿様の話』:2014/07/26(土) 12:44:55 ID:bPtfiYGM
殿「左様。それに、私は民を信頼しておるからな。毒を盛られたらそれまでの殿だった…という事だ。」

照「はぁ、所で実食したのを直接殿が食べたのですよね?そのほうは、当然男ですよね。」

殿「いや、女だったが?」

照「…私少し厠にいってまいります。」

殿「今の照…少々怖かったな。」

家老「えぇ…」

殿「病乃照。ヤミテル…ヤンテル…ヤンデレ…よし!先程のような照の事を【ヤンデレ】と名付けよう。」

家老「ほぉ、面白いですな。」

ハッハッハ


農民父「いんやーあの殿様は大変良い方だっぺな。」

農民娘「そうだべな///」

農民父「おっ、オメェ殿様に惚れちまっただか?」

農民娘「うっせぇだ///」バシン

農民父「いちーよ!」オット


この時、2人は知らない

後ろから、能面を被った鬼が迫っていることを…



後日、親子の死体がみつかる

犯人は、不明

ただ殿様の妹
病乃照の唇が何時もより朱かった

とだけ記しておこう



『ヤンデレの起源に迫る!!』中学館より20XX年8月3日発売予定!!
ご予約は、ご自宅の近くの書店にて!!
予約特典【病乃照…等身大ポスター】付き
貴方だけを(いつでも)見てくれます



END

541『ある殿様の話』:2014/07/26(土) 12:47:04 ID:bPtfiYGM
以上です

やっぱり、ヤンデレ分が足りないなぁ

先人のようにはいかないなぁ

542『ある殿様の話』:2014/07/26(土) 12:52:40 ID:bPtfiYGM
>538
で、改行ミスがありました

読む分には、なんともないとは思いますが、殿と家老の台詞が同じ行orz

直し方が分からない

543雌豚のにおい@774人目:2014/07/26(土) 16:26:17 ID:5r86193Y
gjです!
最近は投下も多くて嬉しいな

544雌豚のにおい@774人目:2014/07/27(日) 00:08:03 ID:8ybtImBQ
GJGJ!
グリム童話さんなかなかのヤンデレ力を持っておられる。
自分もプロットできたが、もはや毎日に疲れて書く気力がないぜ…

545雌豚のにおい@774人目:2014/07/27(日) 13:39:16 ID:GqAyeahw
病乃照ポスター欲しいかも(^_^;)

546雌豚のにおい@774人目:2014/07/27(日) 22:15:52 ID:tWiqoUB2
小学館のまんが古事記みたいな感じか

547雌豚のにおい@774人目:2014/07/29(火) 22:55:41 ID:4QUaInjQ
投下しますぜ!

548三つ子の魂死ぬまで2話:2014/07/29(火) 22:59:41 ID:4QUaInjQ
(多少のメタ発言があります。あんまり好きじゃない方はすいませんm(_ _)m)


「起立、気をつけ、礼、着席」

ガラガラというイスを音が止み去年と同じ担任の阿比留先生、通称アヒルがHRを始めた。ざっと周りを見た感じだとほとんど去年と変わらないが、数人知らない顔の人がいた。うちの学校は2年から文系理系のクラス分けをするので今年が実質最後のクラスメイトに変動がある。そして、隣にいた中学の時からの顔見知りであり、親友(?)でもある能登にこそこそと話しかけられた

「なぁ、今年からこのクラスにくっっっそ美人な転校生がくるって噂聞いたか?」
「ん〜、初耳だな。お前がそんなに興奮するくらいだし、ちょっと楽しみだな」
「だろぉ〜?そしてな、その子は相当な金持ちのお嬢様らしいんだが、よくわからんがこの学校に転入することになり、しかも一人暮らしらしいぞぉぉぉ!!!」
「おい!そこ!うるさいぞ!」
「「さーせんー」」

アヒルは基本的に勉強やテストが出来てなくてもそんなに怒らないけど、人の話を聞かなかったりすると怒ることが多い。そいや、これが終わったら入学式かぁ。今頃、二人は新しいクラスで自己紹介でもしてんのかな〜。
「おーい、何ぼーっとしてんだ。まさか、一人暮らしって言ったから変な妄想してたんじゃ・・・」
「んなわけお前じゃないしあるかよ。うちの妹二人が今日入学式だから、ちょっと考え事してただけだ」
「二人とも平高なのかよ。言い方悪いけど百華ちゃんは納得するけど、麗華ちゃんはもっと上位狙えたんじゃねーか?」

ちなみに、平高っていうのはうちの高校の略称である。
「狙えたんたというより、ほぼ確実に合格できるくらいだと思う。けど、うちから近いからかこの高校を選んだらしいよ」
「いや、それだけが理由じゃないと思うけどな。やっぱ、鈍感やな」
「え?何か言った?」
「いいや、なんでもねーよ。お前らいっつも仲良いもんな。これはこれでよかったんじゃないかなって思っただけよ」
「うー、重要な事を聞き取れなかった気がするなぁ…まぁ仲は悪くはないな」

そして能登が話をそらしたのを見計らったようにチャイムが鳴った。


「よーし、そろそろ体育館に移動するぞー」



入学式が終わり教室に戻ってきた。そして帰りのHRが始まり、あとは帰るだけである。
「いやぁ〜、安定の校長の話の長さだったな。」
「でも、いつもの事だし。ってか、可愛い1年生結構いたなっ!」
「お前も中学の時からやってること変わらねーな」
「でも、やっぱお前んとこの妹は目立ってたよ。いいよなー、可愛い妹が二人もしてさ」
俺の話は無視かよ…

「それじゃ、1年間よろしくな!じゃあ号令」
「起立、気をつけ、礼」
「よっしゃ!ゲーセンでも行くか!」
「おー、久しぶりに行きますかー」
と話をしているとアヒルが教室に戻ってきた。
「忘れてた〜、高峰。このあと職員室に来てくれ。早めに来いよ」

そして、ガラガラと扉を閉めて教室から出て行った。
「え?なんか俺やらかしたっけ?」
「知らねーよ。ゲーセンはまた今度にするか」
「なんか、ごめんな。んじゃ、俺行くわ」
「おう、なんかあったら俺に言えよ。こんな馬鹿でも力になってやるからさ!」
そして、手を振り走って職員室へ向かった。

549三つ子の魂死ぬまで2話:2014/07/29(火) 23:01:33 ID:4QUaInjQ
「失礼します」
「おー、高峰。こっちに来てくれ」
新年度が始まったからか、職員室が少しバタバタしてるような気がする。新しい先生っぽい人もいる、俺が前からいるけど会ったことない先生かもしれないけど。そして、心地の良い春の日差しが当たるアヒルの席に着いた。

「学校も早く終わって予定があっただろうにすまんな」
「いえ、大丈夫です。えっと、僕って何がやらかしました?」
「いや、別に問題じゃないんだ。今度うちのクラスに転校生が入ってくるって噂は小耳に挟んだりしたか?」
「あ、聞きました。でも、転校生がいるって言うことくらいしか…」
他にもたくさん能登のやつに言われたけどな。一人暮らしだとかお嬢様だとか。

「そうか、なら話は早いな。その噂は本当で、しかもお前んちからすごい近いんだ。それで初日から連絡もなく欠席したんだ」
「要するに連絡もなくて心配で家が近いから見に行って来いってことですか?」
「勘が鋭いな…何かあったら大変だし今日渡したかった書類もあってな、それで行って欲しいんだが無理か?」
なんか、めんどくさそうだけど、家から近いならいっか。どーせ、家帰ったってゲームとかマンガしかやることないんだしな。
「分かりました。行きますよ」
「おー!本当にありがとう!んじゃ、これが書類だ。それとこれ地図な。それで彼女の名前は小鳥遊凛(たかなしりん)さんだ。それじゃあ、よろしく頼んだぞ」
「はい。それでは失礼します」
書類を貰い、地図を受け取って職員室を後にした。





あー、鞄とか職員室に持ってくればよかったなぁ。また自分の教室まで階段を歩き、4階に着いた。今日は入学式だけで終わりなのですごく静かで、仮入部で部員を増やそうと必死な部活の声出しがいつもより大きく聞こえてくる。そして、この静かな空間で自分の教室の方に向かっていると、うちのクラスの前に1人の少女がいた。こちらに気づいたのか走って向かってきた。
「お兄様〜」
ん?近づいてきて気づいたが麗華じゃないか。自分は目が悪くていつもはコンタクトを付けているのだが、今日は授業がなかったので、付けてこなかったのである。
「なんで、俺の教室の前にいたんだ?」
ハァハァと息を切らせながら麗華は答えた

「能登先輩にお兄様の聞いたのですが、職員室に行ったと教えてもらいました。けど、教室に鞄が残っているので待っていたら戻ってくると思いまして」

「あ、そうだったのが。ってか俺クラスとか教室の場所教えたっけ?」
「お兄様の事なら大体わかりますよ。それで、今日の帰りに買い物を一緒に行ってもらいたくて…」
なんかさらっと怖いこと言ったよね。しかも俺に会った時からずっと満面の笑みだし。

「ごめん。今日これから転入生の家に行くの先生に頼まれちゃったんだよね…」
少しだけ笑顔か崩れたように見えたがいつもの笑みに戻った。
「分かりました。それじゃあ、途中まで一緒に帰えりませんか?」
「おっけー。じゃあ、鞄とってくるから先に下駄箱行ってて〜」
「いえ、私も教室について行きますよ」
「でも、1年生の下駄箱は2年のところより遠いから先に行ってた方が…」
「それなら大丈夫です。さっき、私の靴はお兄様の下駄箱の方に入れておきましたので」
あれー?下駄箱の位置まで分かってたのね。しかも、靴も移動させておいたとは準備がよろしいですね。麗華ちゃん恐るべし……

「そ、そうなんだ。じゃあ、ささっと鞄とりにいこ」

そして、歩き始めた時にあたかも当然のように手をつないできた。手を離そうとしたが、麗華ががっちり掴んでいて離れない。
「せめて、学校の中はやめない?」
「なら、学校出たらいいのですね!?じゃあ、我慢します」
そっと手は離れた。なんか俺大きな間違いを言ってしまったような…


とりあえず、教室から鞄をとってきて長い4階の階段を下り始めた。2階に着いたくらいで3人の不良っぽい男子の集団が目に入る。学ランに付いている校章を見るに1年生だ。まぁ、こういう人は知らんぷりして行くのが吉ですなぁ。そうして、通り過ぎようとしていたら、その中の1人の男子がこっちに向かって声をかけてきた。

550三つ子の魂死ぬまで2話:2014/07/29(火) 23:02:04 ID:4QUaInjQ
「あ!麗華ちゃんじゃん〜」
「おー、みんな帰ったのに残って何してたの〜?」
うーん、親しくはなさそうだけど、話しかけられてるからクラスメイトなのかな?
「えっと…あの…彼を待ってたんです…」
なんか、その言い方だと、彼氏みたいになってないか!?そこは兄でいんじゃないんですかねぇ…
「ふーん、そんなだっせぇ彼氏なんてほっといて俺たちとこの後遊びに行こうよー」
「「おぉ!それいいね〜」」
ほら!やっぱり彼氏と間違われてるよ!

「…よくも……おに…さまを………」
チチチチチチっと音がなり麗華はいつの間に右手にカッターを握っていた。多分男子たちからは見えてないが、京介はカッターが見えた。
いつもは温厚な麗華だけど、俺や家族を馬鹿にされたりすると(特に俺)自分を見失うくらい、悪い言い方をすれば殺してしまうくらいに取り乱したことがあった。
それをすぐに察することができた京介は、麗華をお姫様抱っこした。
「ふぇ…お、お兄様…?」
麗華はすごい呆気にとられた顔をしていた。いつもは、ほとんど笑顔しか見られないような麗華なので、新鮮だった。それと、俺が言うのもなんだがかわええええええええ。

「じゃあ!俺は麗華とこの後用事があるから!お前らも早く帰れよ〜!」
はい。本日2回目の戦略的撤退です。怖くて逃げてる訳じゃないんだからねっ!後ろからなんか聞こえてくるが無視して下駄箱まで全力疾走した。その間麗華は上目遣いでこちらを見つめたまま固まっていた。



「ほら、着いたからそろそろ降ろすぞ〜」
「・・・」
「お〜い、麗華さ〜ん?」
「・・・」
目を開けたまま気絶してしまったのかな?なら何言っても平気かな?
「麗華…俺たち結婚しよう。お前の事好きなんだ…」
「はい!!!!私もです!!!挙式はいつにしましょう!!!」
お、治ったようだ。
「冗談だ。それと兄妹では結婚できないのが日本のルールだ」
そんなことを言いつつ麗華を降ろした。
「じょ、冗談ですよね。取り乱してしまいましてすいません」
「謝らなくてもいいって、家族がバカにされて怒ったんでしょ?ちょっと嬉しかったよ」
「は、はい!でも、家族がバカにされたからじゃなくて、お兄…様がバカにされたから…なんですけどね……」
「ん?後半よく聞こえなかったんだけど」
「いえいえ、なんでもないです!それでは早く行きましょ。お兄様も遅くなったらダメでしょうし」
「それもそうだね。よし、行こう〜」
いつもは1人か能登と帰ることしかないので少し新鮮だった。あと1人よく帰る人がいるのだが、まあ次の話にでも出てくるよ!そんな事はどうでもいいんですよ。

551三つ子の魂死ぬまで2話:2014/07/29(火) 23:05:11 ID:4QUaInjQ
そして、麗華とは途中で別れて家の方に向かった。アヒルにもらった地図を見ると本当にうちから近かった。多分徒歩で1分かからないくらいだと思う。可愛い子だったらいいなぁ〜、ワンチャン彼女になっちゃったりして〜。なんて妄想をしながら、まだ4月で少し肌寒い中歩いていると、自分の家に着いた。地図を見るとここから、3軒先の家らしい。
「は?」
やべぇ、つい声が出てしまった。だって、能登曰く1人暮らしだぜ?家のデカさが釣り合ってないっすよ。お嬢様っていうのも本当のようだな…まぁ、別に緊張することでもないよな!ただプリント渡して帰るだけだし。とりあえず、チャイムを押した、ピンポンと鳴りチャイムについてるマイクから
「あの…、どちら様ですか?」
すごく低い、まるで男性のような声が聞こえてきた。
「えっと、平高の同じクラスになった高峰京介っていうんだけど、先生に頼まれてプリント持ってきたんだけど…」
「あ!高峰君ね!ちょっと今手が離せない状況なので中に入ってもらえますか?階段上がって2階の真ん前の部屋なので。それでわ、よろしく!」ガチャ
マイクが切れた。それにしても、いきなり声が可愛らしくなって、しかもこの声どこかで聞いた事あるようなないような…


「おじゃまします…」

中に入ると自分の家の倍以上ありそうな玄関だった。言われた通り2階に上がりリビングらしき部屋の前に着いた。女の子の家に行くのなんてほぼ初めてだからすごく緊張しながらドアを開けた。そうするといきなり銃声が鳴り、少女がモニターの前にちょこんと座っていた。縮こまって座っていたので身長的には僕(165cm)と同じくらいかに見えた。入ってきた僕に気づいたのか栗色のショートヘアーの頭がこっちに向いた。また、光がない暗くて淀んだ瞳が、僕を捉えた途端に光を取り戻した感じがした。そして、いきなりこっちに走ってきて抱きついた。

「会いたかった…ゼロ隊長…」


「…え!?」

552三つ子の魂死ぬまで2話:2014/07/29(火) 23:05:32 ID:4QUaInjQ
一瞬この子が何を言ってるのか理解できなかった、まぁそれぐらいパニックだった。
ゼロ隊長というのは僕がやっているCyDというFPSゲームのオンラインネームである。筆者の厨二病が若干抜けてないのは置いといて。このゲームは16人対16人で戦うゲームなのだが、味方の16人を4人×4つの分隊にわけて戦う。
またクラン(チームみたいなもの)で僕は一応クランマスターをやっている。ちなみに僕のクランは40〜50人のそれなりに大きいクランである。そして、クランというチームを作っているのだから、クラン戦というものを結構したりする(クラン内で戦ったり、クランVSクランでやったりする)
そういうのをやる時に僕のクランは分隊で誰がどのチームかは決まっている。クランマスターである僕は第一分隊の隊長をやっていて、ゼロ隊長と呼ばれている。また、その第一分隊にはリンちゃんというこのクランで唯一の女性プレイヤーがいる。しかも、第一分隊は僕が強いと思った人したいない分隊であり、リンちゃんはスナイパーがこのゲームの全一と言ってもいいほどにうまい。
特に僕が危険な時や、やられてしまった時などは外したのを見たことがない程に(スナイパーは当てるのがめちゃくちゃ難しいけど、弾を当てれればどの距離でも1発で仕留められるような上級者向け武器)まぁ、説明はこれくらいにして、そのオンライネームを突然呼ばれたんだからビックリして一瞬頭が真っ白になった。そして何より、小鳥遊凛さんがCyDのリンちゃんということにビックリした。
あぁ、だから最初に玄関のマイクの声が聞き覚えがあると思ったのか…


「あ、あの、CyDのリンちゃんだよね…?」

「うん。ゼロ隊長にずっっと会いたかったの…」

きくのはとても怖かったが1番最初に出てきた疑問がこれだったのできいてみた

「な、なんで、僕の場所が分かったの?」
「そ、そりゃ愛の力だよ////」
えぇぇ、わけがわからないよ…
とりあえず、リンちゃんを剥がして話をする事にした。すんなりと離れてくれた。


「まぁ、座ってよ〜、私隊長に話したい事がたくさんあるの」

「うん、僕もそう思ってたんだ」
2人は椅子に座った。

553三つ子の魂死ぬまで2話:2014/07/29(火) 23:07:01 ID:4QUaInjQ
投下終了です。3話はだいたい構成はできたのですが、会話などがちょいネタが浮かばないので結構時間が空いてしまうかもです
でも続きはあります!!!!!!!!

554雌豚のにおい@774人目:2014/07/30(水) 12:27:04 ID:oUXNyqow
グッジョブです!!!

555雌豚のにおい@774人目:2014/08/01(金) 00:29:39 ID:aZBOMiFE
保管庫の俺の編集消えてるンゴ…

556雌豚のにおい@774人目:2014/08/01(金) 10:00:17 ID:CDSdd/t.
>>553
GJです
続き待ってますよー

>>555
ここで言うな
あっちの掲示板に言いに行け

557雌豚のにおい@774人目:2014/08/03(日) 20:56:37 ID:iZd2VZ2M
誰か、ヤンデレの転生物でいい小説知りませんか?
あったら教えてくだしぃ

558雌豚のにおい@774人目:2014/08/03(日) 23:08:33 ID:C7UsEbVA
ここの、ヤンデレSS Wikiにある『初めから』が転生物です

8月3日は病みの日!!

559雌豚のにおい@774人目:2014/08/04(月) 02:25:21 ID:rRKDJjwI
ことのはぐるまと黒い陽だまりも転生ものじゃなかったっけ

560雌豚のにおい@774人目:2014/08/04(月) 02:57:34 ID:gS/oOj7g
病む前に投下がなくなっている長編見るとすごく気になる質でとてももやもやする

561雌豚のにおい@774人目:2014/08/09(土) 14:54:03 ID:je56ZLjU
ヤンデレな子に監禁されたい

562雌豚のにおい@774人目:2014/08/09(土) 23:43:43 ID:HBfDcCTc
こんばんわ(-.-)zzZ
殿様とグリム童話の作者です
また、低レベル低クオリティですが載せたいと思います
ヤンデレ分は、足りないかも知れませんが頑張ります
では、どうぞ

『ある奴隷にまつわること』

563『ある奴隷にまつわること』:2014/08/09(土) 23:46:02 ID:HBfDcCTc
ダダダ

当たりに銃声が響く

ここは、戦場だ

今日の友がいつ死ぬ、明日の自分は生きながらえるか?

そんな、うたい文句が似合いそうだ

主「83出ろ、次はお前の出番だ。」

83とは、俺の名前…そう俺は奴隷だ

名前なんて覚えてない

ただ、番号で呼ばれているだけ【83】と

83「分かりました。」ガチャコン

ここの国は、医療分野が進んでいるためか、義手に武器を仕込んで闘うこと可能だ

普通、奴隷というと特攻隊というまぁ、己の命と引き換えに敵をヤルものをさせられる

どうやら、俺の主は俺を苦しむ姿見たさに、延命させるのだろう

この、義手がその証拠だ

前に、敵をヤルときに『何で、奴隷如きがその義手を…』といっていた

俺には、無駄にデカいだけで重いときてる

こんな、義手くれてやるからヤってくれ

人をヤルのも疲れた

この、戦争が終わったらどうなるか

まぁ、転売か義手だけ取り外しヤラるかのどちらかだろう

そう、思いながら今日も俺は人をヤル

564『ある奴隷にまつわること』:2014/08/09(土) 23:46:33 ID:HBfDcCTc
彼を初めて見たときから、私は彼にぞっこんだった

逞しい肉体、灰色がかった瞳

全てが愛おしく見えた

同時に私は呪った

立場、そして我が国の今の現状に

くだらない

たった、自国が医療分野に特価してる国だからその知識を寄越せ、さもなくば戦争だ

国のバカ貴族どもは、戦争のおかげで儲けており、更に儲ける為にあと少しで終戦するところまで来ても、事態を悪くさせる

もう、この戦争に嫌気がさした頃に彼と出会った

戦争の道具として、貴族共が渡してきたのだ

彼には、名前がなく左肩に【83】と焼き印があった

その焼き印を見たとき、私は貴族に今まで以上の殺意が湧いた

その貴族は混乱に乗じてヤッタがな

いつだったか、私が女であると敵が聞きつけ私を大勢で襲い、洞窟に連れ込み、オカそうとした

その時、彼が駆けつけ敵を全員蹴散らした

この時、私は普段隠している容姿(彼には鎧姿しか見たことがない)をみた

一度、たじろぎ私の露わになっている姿に気付き、自分の革の服を脱ぎ差し出した

彼はなんて優しいのだろう

この出来事により、私は更に彼に夢中になった

565『ある奴隷にまつわること』:2014/08/09(土) 23:48:35 ID:HBfDcCTc
それから、私は常に彼を側においた

主「フフフ」

私は、自分のテントに入り微笑した

そこには、大きな右腕がある

この腕は、彼のだ

闘いの中、敵に切られてしまった彼の腕…

発見当初、彼は虫の息だった

私が、義手を与える話をすると周りは、たかだか奴隷に勿体無いと言った

たかが奴隷?違う!私は愛する彼のために義手を与えるのだ

そしてつい先日、敵の陣地内にて発見した彼の腕を持ち帰った

趣味悪く、剥製になっていたが

この腕を枕にしたり、XXXしたりすると酷く興奮する

腕を切り落とした敵兵はまだ解らない

ただ、見つけたら彼以上の苦しみを味合わせてやる

ただ、それだけだ

そして、戦争が終わったら彼を私だけの物にする

例え、ほかの貴族が寄越せといっても寄越すものか

566『ある奴隷にまつわること』:2014/08/09(土) 23:49:12 ID:HBfDcCTc
「無い、無い無い無い!!!!」ガシャン

敵兵「あ、あのお気を確かに軍曹どの。」

軍曹「五月蝿い!」ヒュン

敵/兵「」ゴロン

無いのだ。私だけの彼の腕が

敵側にいる【83】と記されている彼の腕が…

私が、彼と出会ったのはある貴族のパーティーの時だった

とても、ガッチリとした肉体だったのを今でも覚えている

あの時、私は貴族達の欲にまみれた話が嫌で隅にいた

その時、ある貴族の後ろにいた彼を見つけた

私は、その貴族に許可をえて彼と話した

それはもう沢山

彼には底知れぬ優しさが感じられた

この人を、買い取ろう

そう思い、家業である軍で稼ぎ、纏まった金と買い取る書類が出来た時に、彼のいる国とわたしの国との戦争が始まったのだ

私は、一時期
彼を諦めた

しかし、神は私に微笑んだ

彼と再び出会えたのだ

敵としてだが

更に、女の感がいう

彼の主

鎧姿で解りづらいが女だ

一度、兵に命令し彼女を襲わせた

だが、彼が助けた

やはり、彼は優しいだがその優しさは私だけに注いでほしい

567『ある奴隷にまつわること』:2014/08/09(土) 23:50:39 ID:HBfDcCTc
ある日、私の兵が彼を襲いあろう事にも彼の大きな腕を切り落とした

私は、彼に簡単な止血をし自分だけの物にしようと持ち帰ろうとした時、物音がした

私は、慌てて切り落とされた腕だけを、拾いその場を後にした

彼の腕を切り落とした兵は、のちにバラバラにし苦しませた

私は、彼の腕を高い技術を持った剥製技師に頼み剥製にして貰った

一部であるが、彼がいる

それだけで、私は満たされていた

しかし…

軍曹「油断したわね…お父様に呼び出された時も持って行けば良かったわ」ギリ

そう、私が少しこの場所を開けていた時に恐らくあの雌豚が持ち帰ったに違いない

なら






軍曹「明日の明朝…敵側に奇襲をかけます。それで、戦争を終わらせましょう!」

敵兵S「うぉー!!!」

戦争が終わったら、彼を奪ってやる

そう、誓った

568『ある奴隷にまつわること』:2014/08/09(土) 23:52:14 ID:HBfDcCTc
丁度その頃〜

主「明朝にて、奇襲を敵に欠け一気に畳みかける!異論があるものはあるか?!!!」

主「無いな!よし、解散!」

待っていてくれ、【83】いや、ハニー

これで、お前は私だけの物だ

いざとなったら、私と一緒に逃げよう!!



こうして、一人の奴隷を賭けた闘いが始まる


83「寒気がするな。」ゾク




『奴隷と禁断のヤンデレ物語』


中学館より20XX年5月5日発売予定!!
予約特典で、【83】タトゥーシール付き!

君は狂気に満ちたヤンデレ娘を目にする


END

569雌豚のにおい@774人目:2014/08/09(土) 23:58:21 ID:HBfDcCTc
以上です

一応モデルがいますので書きます

奴隷→ワンピースフィルムZに登場【黒腕のゼファー】

主→鋼の錬金術師に登場【ウィンリィ・ロックベル】

軍曹→アイドルマスターに登場【四条貴音】

敵/兵→涼宮ハルヒの憂鬱に登場【谷口】

です

あくまで、イメージです

570雌豚のにおい@774人目:2014/08/10(日) 00:27:16 ID:IyIyYE9s
イメージとあいますな
次回作期待してます!

571雌豚のにおい@774人目:2014/08/12(火) 06:38:18 ID:ptu4pSSg
GJです
続きはないのかな

572雌豚のにおい@774人目:2014/08/14(木) 09:25:33 ID:25GO205A
自分は『ヤンドジ』の人ではないのだが、今凄い『ヤンドジ』の続きを書きたいのだが

573雌豚のにおい@774人目:2014/08/14(木) 18:18:34 ID:IL0JC6rY
元の作者さんに許可もらうか
多少なりとも設定変えて別の話として書けばいいんじゃね

574雌豚のにおい@774人目:2014/08/17(日) 23:11:25 ID:25wp1CHc
パラレルワールド的な感じかな?

なら、期待いたします

575雌豚のにおい@774人目:2014/08/19(火) 05:55:12 ID:S/H9GobA
ここの人たちならわかると思って質問したい。

昔読んだものでヤンデレ保管庫にあったものなのかどうかさえ定かではないのだが(もしかしたらキモ姉キモウトかもしれない)、内容は学生編と社会人編の二部構成で、主人公の妹がヤンデレで学生編では最後に妹の勝利に終わり兄妹同棲に終わるのだが、社会人編では学生編で登場する妹の親友が再登場して主人公を寝取っちゃうっていうあらすじの小説がなかっただろうか?

けっこう漁ってみたのだが見つからないんだ…誰か…

576雌豚のにおい@774人目:2014/08/19(火) 11:07:13 ID:0Og7gCBs
>>575
妹(わたし)は実兄(あなた)を愛してる

嫉妬修羅場保管庫にある

577雌豚のにおい@774人目:2014/08/19(火) 19:10:36 ID:S/H9GobA
>>576
おぉ!やっぱりここで聞いて正解だった!ありがとう!

578雌豚のにおい@774人目:2014/08/20(水) 23:52:15 ID:ytNh2x6.
有能やでぇ

579雌豚のにおい@774人目:2014/08/23(土) 19:21:03 ID:cQZyzWk6
大好きな主人公が留学することになった
このままでは3年間離れ離れになる、どうするヒロイン!

1 当然ありとあらゆる手段を使ってついていく
2 帰りを健気に待ち続ける

いやまあ、ヤンデレなら1だと思うんだけど
2でヤンデレできないか考えてるんだが上手くいかん

580雌豚のにおい@774人目:2014/08/23(土) 20:44:26 ID:Rv/8XZHQ
>>579
三年後、帰ってきた主人公には違う女が!
で病む

元々病んでいるなら待っている振りをして監視とかしてる
いや監視じゃないよ。好きな人が何をしているかいつでも知りたいと思うのは当然のことだよね

581雌豚のにおい@774人目:2014/08/23(土) 21:07:29 ID:GwADdFHo
主人公の眼球をなめたそうにするヤンデレいなかったっけ

582雌豚のにおい@774人目:2014/08/23(土) 21:55:54 ID:cQZyzWk6
「会いたかった! ずっとずっとずっと会いたかった……!」
 そう言って胸に飛び込んできた彼女を見て僕はやや面食らった
 正直、もう僕の事なんか忘れていると思ったし
 それになにより、今の僕には……
「ハイ! ○○! 先に行くなんてヒドイネ。……アレ? そのオンナノコ誰ですか?」

こうか
これだけで主人公死ねと思えるな

583雌豚のにおい@774人目:2014/08/24(日) 01:20:44 ID:m1KIyKBs
>>582
その男、提督やってない?

584雌豚のにおい@774人目:2014/08/24(日) 12:35:52 ID:gdEZIs8w
クズ主人公だと自分でも腹立ってくるからあんまり書きたくないんだよなあ
帰ってきてから病むんじゃなくて待ちつつ病むのをやりたいというのもあったけど、無理か

>>583
提督ってなんぞ?

585雌豚のにおい@774人目:2014/08/24(日) 14:51:44 ID:VJLhQ5n2
>>584
艦これっていうブラウザゲーの主人公が提督と呼ばれていて、ヒロインの一人にそんな感じの口調のキャラがいるんだ
ちなみにヤンデレ要素はない

待ちつつ病むのは出来ると言えば出来るけど、主人公が帰ってくるまで待てるなら、一線を越えるにはもう一押し何かがいるよね
だって主人公が帰ってきた時点である程度満たされちゃうから

586雌豚のにおい@774人目:2014/08/25(月) 22:32:36 ID:7BOPOq9Q
>>585
主人公が何かの理由(転校、出張、徴兵、高飛び、死亡…etc)で直ぐにいなくならなきゃいけないとか
ヒロインが何かの理由(転校、出張、徴兵、高飛び、死亡…etc)で、直ぐに何かしないといけないとか
焦燥感を煽る展開が一般的だよね。

自分としては、主人公からの幸せな手紙やメールを受け取っていくうちに病む展開とか書いてみたい。
お互いに手紙を出そうね!って約束して、主人公はその約束通り手紙を出すけど、
ヒロインと一緒にいる時より幸せそうな手紙を書くものだから、ヒロインがだんだんと疑心暗鬼になって…
みたいな?

587雌豚のにおい@774人目:2014/08/25(月) 23:42:36 ID:HLdPEHWk
聲の形いい

588雌豚のにおい@774人目:2014/08/25(月) 23:53:19 ID:KqJBR15g
>>586
待ちながら病む系はそういうギミックがあれば可能だな
しかし胃が痛くなりそうだwいい意味で

589雌豚のにおい@774人目:2014/08/26(火) 13:04:51 ID:m1mHBHBg
ココとか修羅場スレ見てたら普通のイチャラブが読みたくなるんだけどいいスレない?

590雌豚のにおい@774人目:2014/08/26(火) 16:38:16 ID:wdqoTfuE
なんでヤンデレは、一々主人公を罵倒したり二人の関係を邪魔してくるうざい百合キャラを始末しないのか
いや、そういうの読んだので

591雌豚のにおい@774人目:2014/08/30(土) 14:18:25 ID:ycYNd8g.
ここで言われても分からんがな

592雌豚のにおい@774人目:2014/08/30(土) 23:59:03 ID:26DQf.xM
ここの保管庫じゃなくてもいいのでみんなのオススメ教えてくださいm(_ _)m

593雌豚のにおい@774人目:2014/08/31(日) 03:30:25 ID:pxFt9ruY
似た系統ならキモウトスレだな

594雌豚のにおい@774人目:2014/08/31(日) 05:38:25 ID:C0Zxy2P.
>>592
>たとえば、あなたが無料メルマガや有料メルマガの
>どちらかで悩んでいるとしましょう。
.>で、いきなり、
>『無料メルマガでおススメ教えてください。あと、有料メルマガのおススメも教えてください。』
>だけ。
>それだけ。
>『おい』
>って感じですw
>ここで正しい質問の仕方は、
>『無料メルマガについて調べてみて、これとこれが見つかりました。どれがおススメなんでしょうか?また、有料メルマガについても調べてみて、これだけ見つかりました。どれがおススメだと思いますか?』
>って言うなら、
>『あ〜、ちゃんと調べてるんだな〜。ちゃんと答えてあげなきゃ』
>って思って気持ちよく回答します。
>それをさっきみたいな投げやりな質問をされたら、
>誰だってカチンと来ますよ。

ちょっとは自分で探すという努力をしてから質問しなさい

595雌豚のにおい@774人目:2014/08/31(日) 16:46:00 ID:JeA5RGKI
>>584
なんか久々にお礼は三行以上、とか言われてた時代の臭いを感じたわw
こんな狭いコミュニティでそんなカリカリしてどうすんだよ
何か損があるわけでもあるまいし、同好の士増やさないと先細る一方なのに

ちなみに俺はここだと『ヤンデレ家族と傍観者の兄』が好きだ
キモウトスレだと『綾シリーズ』とかかな

596雌豚のにおい@774人目:2014/08/31(日) 17:07:20 ID:Euu65tqU
確かに質問が大雑把過ぎてしまったのは申し訳ないです。ただ自分は探すのが面倒とかじゃなくて、他の人は価値観が違うと思うので、色んな発見(自分も好きになるかもしれないような)があるかもしれないと思いました。そして、そのような作品が他のところにもあるなら教えてもらいたかったのです。

597雌豚のにおい@774人目:2014/08/31(日) 21:14:36 ID:HB.qwo7w
そう言われても
挙げられる作品って毎回似たり寄ったりなんだよね

598雌豚のにおい@774人目:2014/09/01(月) 01:06:05 ID:Px4usHr.
女の子に催眠、洗脳されてしまうスレ
大人しい女の子が逆レイプスレ
嫉妬・三角関係・修羅場スレ
はヤンデレ要素あるから一応おすすめ
作品を聞いてるならもうちょい具体的じゃないと答えにくい
学園とかファンタジーとか、シチュとか

599雌豚のにおい@774人目:2014/09/01(月) 02:31:30 ID:gacUfqqE
擬人化した凶暴な動物が逆レイプするスレまとめ保管庫

これ一時期読みふけってたな

600双子の日常:2014/09/01(月) 05:07:26 ID:XZY79FVo
初投稿です
宜しくお願いしますm(__)m

601双子の日常 上:2014/09/01(月) 05:10:09 ID:XZY79FVo


 朝、教室に入ると窓際の一番前の席に誰かが座っていた。
「おはよう朝香」
「ん、おはよう上村」
 朝香は微笑みながら言った。彼には挨拶は微笑みながらするという奇妙な癖があった。
 僕は朝香の一つ後ろの席に座った。まだ、前の女子は来ていないようだ。
 時計を見ると、ホームルームまで時間が少しあったので、朝香に飲み物を買いに行こうと誘った。朝香は二つ返事で(しかも微笑みを添えて)了承した。
 教室のドアに女子生徒が四名固まっていた。クラスメイトだったはずだけど、名前は分からない。
「ちょっと、いいかな」
 朝香がそう女子生徒に言うと、彼女らは満面の笑みを浮かべて道を譲った。朝香の顔が整っているからだ。その証拠に、僕の方へは誰も顔を向けていない。
「ありがとう」
 朝香が、また微笑みつつ言った。彼女たちはその笑顔に黄色い声をあげた。受精が上手くいくと、異性から黄色い声を引き出すことが出来る。朝香にはその特殊能力があって、僕には無かった。僕は両親のセックスの賜物だけど、その時点で見た目による社会的及び本能的な優劣が決まってしまうのだ。父母よ、もう少し上手にセックスしてくれたら、僕はもっと幸せでした。
「なあ朝香」
「ん?」
「何でお前、女子に話し掛けるときいっつも笑いかけてんだ?」
「え? 笑ってないよ」
 朝香は不思議そうな声音で、そう言った。
「いや、今だって笑ってたぞ」
「うそだ。無表情だったよ」
「お前自覚してないのか?」
 朝香は首を傾げた。ああ、こいつは美人の姉とそっくりだから女に見えてしまう。男なのに。逸物が付いているのに。
「じゃあ癖か何かなのかな」
「上村、ぼくにそんな癖はないよ」
「……自然に笑みが零れてくるのか」
 僕はため息を吐いてから、前を向いた。遺伝子の違いというのは残酷だ。
 階段を降りて一階の廊下を歩くと、朝香とそっくりな顔をした女子生徒と出くわした。
「あ、伊織」
「志織」
 朝香は笑顔で、自分の双子の姉の手を取った。朝香さんもニコニコしている。こういう風景は一年生の時、何度も見た。顔が整った双子の姉弟が手を取り合って、ニコニコと会話をしている。それは構図として完成していて、僕は踏みいってはいけないように感じた。廊下を通る生徒達も二人を奇異の目で見ていた。
「朝香」
 僕が呼び掛けると、朝香は満面の笑みを浮かべて振り返った。
「早く買いに行こう」
「ああ、そうか。そうだね。じゃあまた、志織。帰りも一緒に帰る?」
「うん」
 朝香さんは終始笑顔のまま、自分の教室へと戻って行った。僕はあの過不足のない構図を壊したことに、少しだけ罪悪感を覚えた。とても、下らないことだけど。
 ファンタオレンジを買って、教室に戻ると、丁度チャイムが鳴った。僕と朝香は各々の席に戻って、担任を待った。窓からは白い陽光が射し、教室を包んでいた。一つ前の席の朝香は、眩しいのか、手で顔を隠していた。
 チャイムが鳴ってから一分ほど経って、担任の女性教師が教室のドアを開けた。年齢は三十歳。いつもスーツに膝たけのスカートを着用している。独身だと言っていたけど、その工夫の無さがモテない原因だろうと思う。顔が特別悪いわけではないのだから。
 担任は朝香の存在を認めると少し怒ったような表情をした。しかし数秒後には、いつもの愛想の無い表情に戻った。多分、朝香が微笑んだかなにかに違いない。また、あの癖が発揮されたのだろう。悪い面が無い癖だ。羨ましい。
 ホームルームはそのまま、朝香には触れずに終わった。教室は再び喧騒に包まれ、日常が進行する。しかし、その日常に朝香は含まれていない。始業式から二週間も休めば、当然の結果だと言える。クラスの大部分が朝香をチラチラと見ていた。男子は刺々しく。女子は羨望と欲情を伴って。

602双子の日常:2014/09/01(月) 05:14:19 ID:XZY79FVo
すいません。これが一番最初の文章です。




 四月八日に始業式があって、僕は高校二年生になった。進級するにあたってクラス替えがあり、その結果、クラスの半数以上が見知らぬ他人となった。
 この二年四組に朝香という男子生徒がいた。彼は僕と一年生の時も同じクラスだった。
 朝香は始業式の日以来二週間ほど休み、次に来たのは四月二十二日のことだった。

603双子の日常:2014/09/01(月) 05:16:54 ID:XZY79FVo


 放課後。
 ぼくは上村に別れを告げて、二年一組の教室へ向かった。
 一組はまだホームルームが終わっていなかった。教室を覗くと窓際の一番前の席に志織がいた。志織はぼくに気付くと、笑顔を浮かべて小さく手を振った。僕も笑いながら、手を振り返す。
 数分経つと、教室のドアが開いて、生徒たちが吐き出された。その中に志織もいた。
「帰ろうか」
「うん」
 ぼくは志織の手を握った。そのまま、階段を降りて昇降口へと向かう。
「久し振りの学校だけど、楽しかった?」
「うん、結構良かったよ。伊織は?」
「ぼくもまあ、楽しかったよ。上村以外とはあんまり喋れなかったけど」
「どうして?」
「さあ……? なんか、男子たちが刺々しいんだよね」
「ふうん」
 志織の言葉と丁度に下駄箱についた。上履きとローファーを交換して、外に出る。外には天井が遮っていた青空が広がっていた。天井というのは、空を遮ることで、自分の存在を主張している。その傲慢さがぼくは好きではなかったので、校舎から出られて、少し安心した。何かに包まれているのは、産まれる前だけで充分だ。
 高校は丘の上に建てられていて、校門は坂を下った場所にある。ぼくと志織は手を繋ぎながら、ゆっくりと坂を下った。頭上にはもう散ってしまった桜が、アーチのように存在していた。また、空を遮っている。心なしか、空気が閉塞しているように感じた。気のせいなのだろうか。
「ねえ」
 志織が校門を前にして立ち止まった。桜の天井はもう途切れていて、空には青空が露出していた。
「なに、志織?」
「私のこと、好き?」
「好きだよ」
「本当に?」
 志織は首を傾げて言った。僕と同じ顔が、その薄い唇を開いて、声を出す。奇妙な光景だと、自分でも思う。
「本当に。どうして、そんなことを聞くのかな?」
「そんなことって? 伊織にとっては、そんなことなの?」「そうでしょう」
 ぼくは笑って、かぶりを振った。
「ぼくが志織のこと好きって、それは生物は絶対に朽ちるってことと同じことだよ。つまり、絶対で覆せない事実ってこと。そんなこと、聞くまでもない事実なんだ」
「あー、そっかそっか」
 志織は笑って言った。ぼくも同じ表情をしているのだろう。鏡いらずだ。
「私も伊織のこと好きだよ。聞くまでもないかな?」
「そうだねえ。でも聞いたら、とっても嬉しく感じるよ」
「私も」
 そう呟くと、志織はぼくに抱きついてきた。ぼくも志織に倣って、背中に腕を回す。短いキスを交わして、唾液を交換する。こうすると、ぼくと志織の違いが分かってしまう。第二次性徴期前にはなかった、彼女の胸の膨らみや脂肪。自分の、男としての筋肉や骨の発達。その違いが、ぼくはとても悲しい。大好きな志織と一緒だったのに。それが徐々に変化していく。成長は恐ろしく、しかしぼくらを飲み込んでいく。ぼくたちを、大人へと変貌させるのだ。
 ぼくは顔を離して、志織を間近に見る。
 兎のような、滑らかで、赤みがかった頬。二重の喜びに満ちた瞳。通った鼻筋に薄くて赤い唇。綺麗なカーブを描いた顎。ぼくと同じ顔。でも、ぼくではない。大切で愛しい。それが志織なのだ。
 抱擁を解いて、手をつなぎ直す。ぼくの手にぴったりだ、と思う。それは形がということではない。
 ぼくと志織は言葉もなく、互いに軽く頷いて、また歩き始めた。あと20分も歩けば家に着く。
 下校中の他生徒達の視線や意識がぼくと志織にぶつかっていた。
 でも、隣に志織がいる。それは至上のことで、他は雑事なのだ。完全に、疑いようもなく。

604双子の日常:2014/09/01(月) 05:19:14 ID:XZY79FVo



 ぼくたちの家は昔ながらの日本家屋で、そこそこの広さがある。昔は庭師が手入れしていたという庭は、今では木が生い茂り、家の周りの屏も合わさって、外から覗き込むことを防いでいる。ぼくと志織の部屋は隣り合っていて、障子を開けば直ぐに移動することが出来る。窓を開ければ縁側があり、それは木が鬱蒼とした庭に面している。
 四月二十二日の今日も、ぼくは窓と障子を全開にしていた。窓は庭に、障子は志織の部屋へと通じている。もっとも、障子が塞がれたことなど一度もないのだけど。
 この畳張りの部屋には本棚が一つと、箪笥が二つ、押し入れが各部屋に一つずつあるだけで、かなりすっきりしていた。二組の布団が並んで敷きっぱなしのことを除けば、整理整頓もされている。
「ねえ、伊織」
「なあに志織」
「今日さ女の子と喋っていたでしょ。何を喋っていたの?」
 ぼくは文庫本から、志織へと視線を移した。志織は布団に横たわって、ぼくには背中を向けていた。制服のままだったから、皺がついてしまうのではとぼくは思った。
「それって何時ぐらいのこと?」
「昼休み」
 志織は短く呟いた。少し怒っているのだろう。ぼくは文庫本に栞を挟んで、布団に潜り込んだ。
「女子たちにね、ご飯を一緒に食べようって誘われたんだ」 ぼくは志織の耳元に囁きかける。
「でも、断った。ぼくには志織しかいないから」
「でもニコニコしてた」
「え、してないよ」
「嘘! してたよ!」
 志織は突然ぼくに覆い被さって、首を絞めてきた。しなやかな指で頚を掴み、親指の腹で圧迫する。
「く、……苦しいよ」
「なんで、嘘をつくの? 私は嘘をついたこと無いのに、なんで伊織は嘘をつくの? 嘘って、いけないことなんだよ。なんで、そんないけないことをするの? 伊織は私のこと、嫌いなの?」
 ねえ、教えて?
 志織がぼくにのし掛かりながら言う。いや、待て。ぼくは女子に笑いかけてなんか……。
 そこで、ぼくは上村との会話を思い出した。

605双子の日常:2014/09/01(月) 05:20:34 ID:XZY79FVo

「お前自覚してないのか?」
「じゃあ癖か何かなのかな」

 ぼくは志織の手を振り払って、志織の体を押し倒す。成長期のぼくの体にとって女の子の力なんて、全然問題じゃなかった。
「ねえ聞いて」
「嘘つきの言うことなんて聞きたくないよ!」
 ぼくは志織の腕を抑えつけて、跨がるように膝をついた。
「聞いて志織」
 志織は観念したかのように目を瞑って、ぼくと目を合わせようとしない。それに構わず口を開く。
「ぼくはいつも志織のことを考えてる。志織はぼくにとって一番の存在なんだ。そうすると他の人たちはぼくの意識から外れやすくなる。志織以外は母さんだってどうでもいい。でも、ぼくは社会の内でしか生きられない。社会で生きれば、必然的に他人とのコミュニケーションが生まれてしまう。それを疎かにすると集団から外されてしまうんだ」
「別にいいじゃない、そんなこと」
「うん、別に集団から爪弾きにされようが志織がいればどうだっていいよ。でも爪弾きにされると、生きる上での障害が多くなるんだ。小学校の時、そうだったでしょう?」
 ぼくがそう言うと、志織の睫毛がびくりと震えた。
 忌々しい過去。無邪気な悪意で、ぼくたちに攻撃を加える同級生たち。理解出来ないから攻撃する。何ともシンプルな行動原理。その時のぼくは志織にしか意識が向かなかった。志織もぼくにしか意識を向けていなかった。それはいじめの理由に十分だった。同じ顔の双子はそれだけでも珍しいのだ。それが集団に溶け込まなければ、ああなってしまう。なってしまった。
「だから、無意識にぼくは他人に笑顔を浮かべてしまうんだと思う。ぼくと志織に要らないことをされないように」
 ぼくは川に浮かんだ同級生の姿を思い出しながら言った。それは公には事故として処理されたのだった。他の同級生たちはそうは思わなかったようだが。
「でも、志織と居るときは、嬉しくて楽しくて幸せで暖かくて満ち足りてて心地好くて大好きだから笑ってるんだ。他人に向ける顔とは全く違う。だから、怒らないで」
「無理だよ、そんなの……」
「じゃあ、どうすればいい?」
「……愛して」
「え?」
 志織は躊躇うかのように瞼を震わせた。薄い唇が動いて、白い歯が覗く。その奥から、か細い声が響いた。
「ずっと、私を愛して……。安心させて」
「うん。ずっと、大好きだよ」
 ぼくは頷いて、もたれかかるように躰を寄せた。愛しい唇に触れる。冷たくて、濡れていた。心が満たされる。ぼくには志織以外必要ない。それは絶対の事実で、真理なのだ。
 口付けをして、Yシャツのボタンを外す。白い裸体が露になる。胸の先端には薄紅色の突起が存在を主張していた。
「志織……」
「伊織……」
 志織は目を瞑った。すると、睫毛の陰がうっすらと目の下に落ちた。部屋には夕日が射し込み、志織を照らしていた。兎の背中のような頬が輝き、光を纏ったように見える。
 ぼくたちは縺れ合った。互いが互いを支えるかのように。

 終わり

606双子の日常:2014/09/01(月) 05:21:07 ID:XZY79FVo
以上です。
不手際すいません。
最初はヤンデレのつもりだったのですが、書いていくうちにヤンデレでは無くなってしまった気がします。
ヤンデレでは無いとの判断の場合は削除してもらって構いません。また出直してきます。

607雌豚のにおい@774人目:2014/09/01(月) 08:42:35 ID:6xV1q/a2
頭が一瞬混乱したが
弟の名が朝香伊織
姉は朝香志織なのかな

朝香が名前だと思って読んでたからワケわからなくなった

608雌豚のにおい@774人目:2014/09/01(月) 15:44:54 ID:h9V3wSZY
色々スレ教えてくださってありがとうございます!
読み倒していきたいと思いますww

609雌豚のにおい@774人目:2014/09/01(月) 17:51:47 ID:IZlaGwRg
くっさいゆとりがわいてんな。
お前の自分語りなんてどうでもいいんだよ

610雌豚のにおい@774人目:2014/09/01(月) 20:22:02 ID:.tfk6gKE
>>609
若さすらないのに知性もないくっさいくっさいおっさんのこともどうでもいいから

611雌豚のにおい@774人目:2014/09/01(月) 20:42:59 ID:igEcRg7I
もんむす大丈夫な人は白蛇とかのもいいかもね

612雌豚のにおい@774人目:2014/09/02(火) 10:11:20 ID:hcwUdhoU
>>606
ヤンデレ分はちゃんとあるので
たくさん書いて練習するのが良いかと
がんばれ

613雌豚のにおい@774人目:2014/09/03(水) 21:57:41 ID:zRG...ZE
>>607
すいません。以後気を付けます
>>612
ありがとうございます

614雌豚のにおい@774人目:2014/09/04(木) 17:59:58 ID:hAvRMO.c
>>609
こいつ誰か消せよ。臭すぎる

615雌豚のにおい@774人目:2014/09/05(金) 16:53:41 ID:VkOawCzU
テスト

616雌豚のにおい@774人目:2014/09/06(土) 11:42:15 ID:jPBonOxs
人見知りな子だけど、心を許してくれて
でも、人見知りが故に依存してべたべたしてくるっての好き

617雌豚のにおい@774人目:2014/09/06(土) 12:37:11 ID:s53LV8as
ずっと服の裾つかみながら後ろをついて来るとか
そんな感じか

618雌豚のにおい@774人目:2014/09/06(土) 18:15:38 ID:jPBonOxs
それもいいなぁ

イメージ的につよきすのなごみんみたいなの考えてた、病んでないか

619雌豚のにおい@774人目:2014/09/06(土) 18:39:16 ID:T1V7P.rk
つよきすはヤンデレいるからね…

620雌豚のにおい@774人目:2014/09/08(月) 11:33:48 ID:sdv9HsUg
よっぴーの事か

621雌豚のにおい@774人目:2014/09/14(日) 03:10:00 ID:zdONhJfo
新しい内蔵HDD買ってつないだら、windowsが起動しなくなり
再インストールせざるを得ない状態になった…
書いてた小説も…フォーマットの彼方へ…

622雌豚のにおい@774人目:2014/09/14(日) 08:28:24 ID:qyt/kHOY
新HDD「前の女の記録なんてまとめて消してやるわ」
こうですか

623雌豚のにおい@774人目:2014/09/14(日) 20:42:32 ID:zdONhJfo
>>622
マジか、PCにヤンデレされるとは思わなかったわ…
ネタ帳もプロットも消えたし、心がバッキバキやで…

624雌豚のにおい@774人目:2014/09/15(月) 06:34:21 ID:eiAq0B3c
失意の>>623を優しく慰める女の子
しかし真犯人は彼女だったのだ

625雌豚のにおい@774人目:2014/09/15(月) 12:29:57 ID:pVJOHB8Q
そうよ、>>623。あなたがいけないのよ。素直クールや依存、キモ姉なんかにうつつを抜かしたあなたがいけないの。
あたしだけを見て!!

626雌豚のにおい@774人目:2014/09/15(月) 22:15:21 ID:ZGwoTvzM
お前らノリノリじゃないか
少し心が楽になったわ…だから優しく慰める女の子を紹介してください…

627雌豚のにおい@774人目:2014/09/17(水) 07:55:22 ID:N/jPMcAY
>>611
いやそこはウシオニだろ

628雌豚のにおい@774人目:2014/09/20(土) 14:11:35 ID:nfhigK8U
短編SS、投下します。

629雌豚のにおい@774人目:2014/09/20(土) 14:12:44 ID:nfhigK8U
 大学に入ってしばらくした頃だった。
 一人暮らしに慣れて、サークルやら勉強やらバイトやら中々充実した毎日を送っていたのだが……生まれて初めてだ。
 存在は知っていたが、まさか自分がストーカーの被害者になるとは思わなかった。

 ある朝、何気なく郵便受けを開けると、バサバサと中身が落ちた。
 チラシにしては厚めの紙だし、それになんとなく小さい。
 拾い上げてみると、それらは写真だった。全部、俺が写っていた。背筋も凍るとはこのことだ。

 情けないことに俺はヒッと叫び声をあげて、拾った写真をまた落としてしまった。
 全身から汗が吹き出した。キョロキョロと辺りを見回してみたが、
 誰もいなくて、安心するやらしないやら。その日は学校を休んだ。

 同じ授業を取っている後輩の女の子に電話をして、欠席の連絡を頼んだ。
 俺の様子をなんとなく感じたのか、「先輩、大丈夫ですか」と彼女は言った。
 俺は「体調が悪いんだ」とテキトーに流して、後は部屋に閉じこもっていた。

630雌豚のにおい@774人目:2014/09/20(土) 14:14:56 ID:nfhigK8U
 その夜のことだった。部屋の電話が鳴った。
 何気なく電話を取って、もしもし、もしもしと何回か繰り返しても返事がないので首を傾げたが、
 すぐにサッと体中の血液が冷えたような気がした。

 無言電話だ。俺は受話器を叩きつけるように置くと、布団に潜り込んで必死に目をつむった。

 翌朝は多少寝不足気味だったが元気を取り戻して、朝食を済ませるとすぐに家を出た。
 郵便受けが視界の隅を横切ると、嫌な汗がぴりっと滲んだ。
 空の、あるいはチラシやダイレクトメールだけが入った郵便受けを見て、安心したかった。
 だが、もし、昨日と同じように写真が入っていたら、と思うと俺はその場に釘付けになってしまった。
 このまま、学校へ行って、帰ってきたらストーカーが……なんて考えると、どうしても家を空けるのが怖くなってきた。

 ままよ、と思って郵便受けを開けた。昨日のようにバサバサと落ちてはこなかったが、
 写真が一枚だけ静かに横たわっていた。

 俺は震える手でそれを拾うと、はっと息を呑んだ。
 写真には俺が写っていた。どこから撮ったのか、受話器を持って怯える俺の姿が写っている。

631雌豚のにおい@774人目:2014/09/20(土) 14:16:33 ID:nfhigK8U
 俺はすぐに部屋に戻った。部屋中のカーテンを引いて、電話線を抜き、部屋の隅にうずくまった。
 しばらくすると携帯電話の方が鳴ったので、俺は飛び上がってしまった。

 電話してきたのは後輩だった。
 のんきな声で「先輩、今日もお休みですか?」なんて言いやがる。
「今日も具合が悪いんだ……」それだけ言って、俺は電話を切った

 翌日はもう学校へ行く気になんかハナからなれなかった。
 起きると、のそのそと暗い部屋の中で食事をして、それから布団に寝転んだ。
 昼を過ぎた頃、携帯電話に非通知で着信があった。取るのが不安だったが、誰かの存在を感じたい気持ちもあったので、恐る恐る電話を取った。

 もしもし、と一度言う。返事がない。もしもし。返事がない。冷や汗が出た。
 もしもし、あの……けっ、警察呼びますよ。声が震えた。電話の主はようやく返事をした。

「先輩、私です。すみません。電波が悪くって。今日も休みでしたけど、どうしたんですか」

 後輩の間抜けな声が俺の緊張を解してくれた。

「どうもこうもお前……いや、まあ、ちょっと色々あって」

「警察呼ぶだなんて言ってますけど」

「いや、ちょっとな……」

632雌豚のにおい@774人目:2014/09/20(土) 14:21:27 ID:nfhigK8U
 後輩は講義で配られたプリントを渡したいと言ったが、俺は外に出たくなかった。
 そのまま伝えると、後輩は「じゃあ、先輩の家に行きますからね」と天真爛漫に言った。

 女の子なんか危険だから家に上げられないと断るのが当たり前だろうが、俺は誰かにすがりたかった。
 許してほしい。本当に怖かったんだ。その葛藤がモゴモゴとした唸りとして俺の口から出ている間に、
 彼女は電話を切ってしまった。

 家の場所がどこかも伝えていないのに、平気なんだろうか。

 後輩は夕方頃に俺の家へ来た。講義のプリントはそう多くなく、俺からすればさほど重要でもないようなもので、
 これなら後でもよかったな、と思ったが、一方やっぱり人が来て心強さというか安心感を得られたので、
 来てもらってよかったと思った。

「先輩、私、喉乾いちゃった。麦茶、飲んでもいいですか?」

 なんて、後輩は部屋へ上がってまるで自分の家のように冷蔵庫を開けた。
 二人分のコップを用意して、麦茶を注いでくれたので、やはり彼女は根のいい奴だ。
 この三日ほど心細いことこの上なく、麦茶を飲んでようやくほっとため息をつけた。

633雌豚のにおい@774人目:2014/09/20(土) 14:23:04 ID:nfhigK8U
「先輩、ここのところ何かあったんですか? 様子が変でしたよ」

 後輩が気を使ってくれたので、俺はついついストーカーのことについて話してしまった。
 話しているうちに目頭が熱くなってきて、終いには泣いて、彼女に背中をさすられる始末だ。
 それくらいすり減ってたということだから、まあ、かんべんしてほしい。

「先輩、私に名案があるんですけど」

 俺が話し終えると、後輩は頼もしい笑みを見せた。

「ストーカーも恋人が居ると分かれば、やめると思うんですよね」

 そんな上手くいくもんか。第一、余計な刺激を与えてそれこそ、ナイフだの突きつけられたらどうすんだ。
 そう、俺がそのまま言うと彼女はトンと自分の胸を拳で叩いた。

「大丈夫です。絶対。それに、先輩はそんなモテませんよ」

 意味は掴みきれなかったが、俺はその言葉を聞いてとても安心した。情けない。

 後輩の作戦はこうだった。一晩、俺の部屋に泊まる。それだけ。
 あくまで恋人っぽくとのことで、本当に大丈夫なんだろうかと首を傾げた。

 でも、後輩に郵便受けを確認に行ってもらうと何も入ってなかったらしいし、
 無言電話も来ないまま夜を迎えた。

634雌豚のにおい@774人目:2014/09/20(土) 14:29:35 ID:nfhigK8U
 これは思ったよりも効果があるぞ、と俺は安心しきってしまった。

 お互いに夕飯と風呂(風呂は当然別々。久々にのびのびと入浴できた)を済ませて、
 後は寝るだけだなんて安心すると、今まで意識しなかった邪な考えが頭に浮かんできた。

 家に布団は一人分しかない。俺らは男女で、しかも今は恋人っぽく振舞っている。
 後輩の方をちらりと見た。彼女は肩の上の辺りで黒髪を切りそろえ、
 上等なカーテンのような前髪の向こうには目鼻立ちの整った白い顔が覗いている。

 正直に告白すれば、俺はそれまで後輩を女として見ていなかったつもりだ。
 なんというか、綺麗すぎてダメだった。それなのに、
 今は自分のためにここまでしてくれている彼女を、ほとんど好きになりかけていた。

 あのさ、と世間話を切り出しかけたところで、後輩はトイレに立った。
 ふとため息を漏らしたところで、部屋の電話が鳴った。さっと、血の気が引いた。

 いいや、どうせ間違い電話さ。そうでなければ……いや、なんでもいい。
 返事さえしてくれるんだったら、なんでも。俺は受話器を取った。

 もしもし。返事はなかった。嫌でも動悸は激しくなる。息が荒い。過呼吸みたいだ。くそっ。
 いや、すぐに受話器を戻してやれ。そうすればこの無音を聞かなくて済むんだ。

 手が震えて、受話器を落とした。もう俺はパニックになってしまって、受話器を放って部屋の隅にうずくまった。

635雌豚のにおい@774人目:2014/09/20(土) 14:32:24 ID:nfhigK8U
 後輩はトイレから戻ってくると、まず俺の方へ駆け寄ってきてくれた。
 思わず彼女の胸に飛び込んで、冷たい涙を彼女の服に染み込ませた。
 彼女は静かに俺の背中をさすってくれた。
 そして、俺が落ち着くのを見計らって、受話器を拾うと元の場所へ置いた。

「今日は、一緒に寝ましょうか」

 後輩の提案に俺は頷くしかなかった。その夜は彼女と抱き合って寝たが、
 もう邪な考えは浮かんでこなかった。
 ただ子供のように震えていた。

 翌朝、後輩が朝ごはんを作ってくれた。俺は食欲がなかった。
 それを察したのか、後輩は食べなくてもいいと言ったが、
 俺はせっかく作ってくれたんだからと全部食べた。
 後輩がそれを見て嬉しそうに笑ったので、ようやく俺は気分が明るくなった。

 その日は一日、後輩と一緒に部屋に居た。夜も一緒に寝た。
 その日も、翌日の朝も郵便受けに写真は入っていなかった。電話も鳴らなかった。

「やっぱり、効果あったでしょ?」と後輩は得意気に言った。
 俺はその表情がたまらなく愛おしくなって、唇にキスをした。
 彼女は受け入れてくれた。

 その日から俺たちは付き合い始めた。
 不思議なことに、彼女の言った通りストーカー被害はそれからなくなった。
 まるで嘘みたいに。うーむ。
 あ、でも携帯に無言の留守録が数件入ってたのが気になるが……まあ、間違い電話さ。

636雌豚のにおい@774人目:2014/09/20(土) 14:33:30 ID:nfhigK8U
――――

 うふふ、うふふふふ。やりました。ついに。ええ、やってやりましたよ。
 あのですねぇ、先輩はそんなモテないはずですよ。
 私、知ってるんですよ。はい。でも、この間相談されちゃったんですよね。
 もう、つらいです。つらすぎです。あの子、あなたのこと好きなんだって。
 私の方が先輩のこと好きだし、ずっと前から好きだった!
 なのに、私を差し置いて先輩に告白するだなんて、ちょっと許せません。
 ええ、そうでしょう。そうなんですよ。

 いや、あの子が他の人を好きになっていたなら私、全力で応援してましたよ。
 でもね、先輩だけはダメですよ。はい。

 私の愛しい先輩、よもや、私の愛に全然気づかないでいるなんてことあるんでしょうか。
 ないですよね。でも、万が一、ほら先輩モテてないですから、万が一、
 あの子に好きですなんて言われて気の迷いからオッケーしちゃうなんてあるかもしれませんよね。
 万が一。ええ、そうでしょう。

 だからね、私は策を弄しましたよ。愛の力でチョチョイのパーです。

637雌豚のにおい@774人目:2014/09/20(土) 14:35:32 ID:nfhigK8U
 シナリオはこう。ストーカーから先輩を守る。
 そして、私の愛、もとい私への愛を自覚してもらおうというものですよ。
 完璧でしょう。完璧です。
 先輩はあんまり頭がよろしくないですし(まあ、そこもかわいいところなんですが)
 そこまで周到な計画は必要ありません。

 まず、写真を用意して……ええ、お宝ですよ。
 愛の計画に必要とは言え、手放すのはつらいです。できたら回収したいところですが。

 私は学校へ行ってアリバイらしきものを作らなきゃいけなかったので現場は見られませんでしたが、
 先輩が私のところに電話してきた時は本当興奮しましたよ。
 ええ、あんなに声を震わせて、強がって……うう、録音しておけばよかったと後悔しているくらいです。
 ついつい、学校のトイレで先輩の声を思い出しながらシちゃいました。そのくらい興奮しましたね。

 その夜にもう、私我慢できなくって先輩の家までおじゃましました。
 正確に言うとベランダですけど。

 こっそり中を伺いながら携帯で電話をかけて……先輩の怯えた表情、サイコーでした。
 あ、写真もちゃんと取りましたよ。宝物です。

 ついでに郵便受けに入れておいた写真を回収して、
 家に帰って、急いで現像して、郵便受けにさっきの写真を入れておきました。
 これが中々大変でしたよ。

638雌豚のにおい@774人目:2014/09/20(土) 14:37:19 ID:nfhigK8U
 次の日は先輩、本当ショックだったみたいですね。家に閉じこもっちゃって。
 我慢できずに私から電話しちゃいました。
 家の電話にまず無言電話でもしようかと思ったんですが、電話線、抜いてたんですね。
 携帯の方はつながるのでほっとしましたよ。
 まあ、つながらない場合はアポ無しで家に行ってましたけど。

 先輩の家には何度か行ったことがありますけど、こうやってちゃんと上がるのは初めてでしたね。
 また違った興奮がありましたよ。しかも、恋人っぽく振る舞うんだなんて、
 我ながらなんて、なんて、ナイスアイデア!
 これ、もしかして、もしかしたら、今日のうちに一線超えちゃうんじゃないかとか考えちゃって……、
 勝負下着履いてきて良かったです。ホントに。

 それでまあ、私の悪い癖なんですが、ついつい意地悪しちゃいましたね。
 先輩がお風呂入ってる間に部屋の電話線を繋ぎ直して、
 後でトイレからこっそり電話かけた時はもう、なんていうか、至福の時間でした。マジで。

 部屋の方から先輩の声とか生で聞こえてきたし、ガタガタ震えてるのまでわかっちゃって、
 そのままトイレでシちゃいました。サイコーでした。ホントに。

639雌豚のにおい@774人目:2014/09/20(土) 14:39:37 ID:nfhigK8U
 でも、ちょっと怖がらせすぎちゃったみたいで、先輩はえっちな気分になんかなれないみたいでしたね。
 私にしがみついてブルブル震えちゃって。

 いや、これはこれでいいなーなんて思いながら寝顔を写真に撮りまくりましたけどね。
 貴重ですから、寝顔は。

 翌朝、先輩は私の作った料理を頑張って食べてくれて、
 もう先輩は優しいなぁ、ちくしょうかわいすぎんだよバカヤローなんて思いながら、お皿を洗いました。

 その日一日、先輩と一緒に部屋でくつろいでたんだけど、
 私がトイレに立ったりすると不安そうな目で見てきて、
 もうやめてくださいかわいすぎますよ、先輩。

 この人にストーカーの正体をばらしたらどんな顔をするんだろうなんて、
 気になったけど、計画に穴があってはいけないから、黙ってました。

 夜になるとようやく落ち着いてきたみたいで、布団の中で私にキスをしてくれましたね。

 いやーもー、計画通り行き過ぎて逆に怖いくらい。
 それから私と先輩が付き合い始めて、あの子は結構ショックだったみたい。

 私から言い寄ったんじゃなくて、先輩から告白してくれたって分かるとあんまり強くは言わなかったけど。

 ……でもさ、だからって、先輩の家の郵便受けに変な写真とか入れないでほしいな。
 全部回収してるけど、まさか無言電話なんかしてないよね。まあ、先輩は絶対私が守るから、心配ないよね。

640雌豚のにおい@774人目:2014/09/20(土) 14:40:35 ID:nfhigK8U
以上で投下終わります。お粗末さまでした。
書き忘れてしまいましたが、題は「レッツ・ストーキング」ということでお願い致します。

641雌豚のにおい@774人目:2014/09/20(土) 16:26:24 ID:NsWF3XFI
>>640
GJGJ
後輩かわいいよ後輩

642雌豚のにおい@774人目:2014/09/20(土) 19:04:21 ID:XFswWhLQ
おつおつ

こうやって精神的に弱らせて依存させるの好き

643雌豚のにおい@774人目:2014/09/21(日) 00:36:23 ID:OcKduiYI
おつ

やっぱり後輩がヤンデレかー、とか思ってたら友達の方もヤンデレだったとは
いいオチだった

644雌豚のにおい@774人目:2014/09/22(月) 01:43:25 ID:B6dvd04w
ぐっじょぶです!

645雌豚のにおい@774人目:2014/09/22(月) 17:04:43 ID:po/MBtK.
久々にいいものを見れた

646雌豚のにおい@774人目:2014/09/23(火) 22:41:40 ID:vse7j1Yc
GJ
かなり好みの内容だった

647雌豚のにおい@774人目:2014/09/29(月) 19:21:40 ID:7tTKFr7A
>>640
堪能したわGJ
ストーカーとヤンデレの相性の良さは異常

648雌豚のにおい@774人目:2014/10/09(木) 20:59:35 ID:rB.t.4BA
ストーカー以外でヤンデレと相性がいいのって
依存とかか

649雌豚のにおい@774人目:2014/10/09(木) 21:31:03 ID:7Ja9.VLQ
策略家とかも相性は良い気がする。
一歩間違うとこれなんて悪女?になりかねないのがナンだが。

650雌豚のにおい@774人目:2014/10/09(木) 23:56:12 ID:W.e6.IPQ
相性いいのはメンヘラだろ
よく混同されがちだし
自分で「アタシってヤンデレなの」とか言い出したらもう涙無しには語ることができない

651雌豚のにおい@774人目:2014/10/10(金) 06:45:17 ID:.PtexSh6
それは相性良いって言うのか……?

652雌豚のにおい@774人目:2014/10/10(金) 21:42:27 ID:mu74UU1M
ヤンデレは好きだけどメンヘラは嫌いだわ
なんで混同されるんだろうな
相手を思う気持ちが強すぎるあまりに常軌を逸した行動をするタイプがヤンデレ
メンヘラは自己愛が強すぎるだけの構ってちゃん

653雌豚のにおい@774人目:2014/10/10(金) 23:01:29 ID:4A10h0CM
ヤンデレとメンヘラ。
この二つはよく似てるんだよ。実際は全然違うんだけどね。
メンヘラってのは自己愛強いから対象傷つけてもなんとも思わない。違和感あるのはそこじゃないかな。
後先考えない監禁とか、理解不能なカニバリズムとか。
問題なのは、それもヤンデレの愛情表現に含まれることだろうね。
だからよく似てる。
ヤンデレってのは早い話が行き過ぎた愛で、グロテスクでもある。
グロテスクだからドン引きするときもあるし、身勝手に映るときもある。
そう考えると、実際よく似てるよね。

654雌豚のにおい@774人目:2014/10/15(水) 19:52:08 ID:7rpWRCuM
最近、書き欲が出てきたんだけどなんかみんなが読みたいジャンル教えてくれ

655雌豚のにおい@774人目:2014/10/16(木) 06:36:50 ID:1no4DQp6
学園もので先生とか上級生とか目上の人に好かれるやつ

656雌豚のにおい@774人目:2014/10/16(木) 09:46:25 ID:nMCtAH1o
やっぱり外堀系が一番いい

657雌豚のにおい@774人目:2014/10/16(木) 17:30:53 ID:uckqLZJk
読みたいっていうか、割と普通の子が追い詰められてヤンデレになる、みたいなのが王道だと思う

658雌豚のにおい@774人目:2014/10/16(木) 18:25:48 ID:1pCCxHe.
読みたいジャンルかぁ
うーん……何が書きたいかじゃないかな?
誰かの二番煎じは見たくないな
けど先生いいなと思ってしまった……

659雌豚のにおい@774人目:2014/10/17(金) 00:58:27 ID:oU28UQCY
ファンタジー

660雌豚のにおい@774人目:2014/10/17(金) 22:41:54 ID:QJqSdj36
おー、みんなありがとう。参考にさせてもらうわ

661雌豚のにおい@774人目:2014/10/17(金) 22:57:36 ID:hLHWFtaw
オネショタ、オバショタのヤンデレが見たい
生徒に異常執着する女教師とか

662雌豚のにおい@774人目:2014/10/22(水) 22:21:56 ID:RF7sjUyM
主人公が純粋系ショタで、周囲がヤンデレだらけなんだけど、
それに気付かないで普通に暮らしてるのが見たいです
スキンシップが多いと嬉しいです

663雌豚のにおい@774人目:2014/10/26(日) 20:29:21 ID:8AtTN3qk
最近、異性愛と同性愛(レズ)のヤンデレを組み合わせると良い具合にドロドロな三角関係が出来上がりそうな気もするけれども、
SSを書く時間も、素材を上手く活かせる自信も無い……

664雌豚のにおい@774人目:2014/10/28(火) 01:15:20 ID:T04jj61E
レズってことはヒロインに執着するヤンデレか
そういうの嫌いだな・・・

665雌豚のにおい@774人目:2014/10/28(火) 01:34:25 ID:mhguvNtI
>>663
書きたくなったら書けばええんや。
無理そうだったら無理に書かないのもええんや。
もしかしたらすごい作品になるやもしれんし、
作品見るまでは期待するでー

666雌豚のにおい@774人目:2014/10/29(水) 05:36:30 ID:BMYfgzDk
皆、理解できないものを書くんだよ。
ヤンデレ=キチガイの作者相当多いだろ
ヤンデレには王道ヒロイン以上の深い愛があるんだよ! 
ユウナとかティファとかリノアだったらトラブルに弱そーだろ!
すぐあきらめちゃいそーだろ!
まんこも臭そうだろ!?
けどヤンデレならあきらめないだろ!
まんこだって臭くない!!
だって病んでんだぞ?病的なくらい洗ってるに決まってんだよ!

667雌豚のにおい@774人目:2014/10/29(水) 14:49:57 ID:2mzETBUE
>>661
女教師だったら「題名のない短編その六十」とか良かったな。
ショタかどうかはともかくとして。

>>662
「にゅむぅ・にゅわふぅ・じょきん、じょきん」なんてどう?

668雌豚のにおい@774人目:2014/11/12(水) 00:32:03 ID:UwHlEdY2
テスト

669雌豚のにおい@774人目:2014/11/12(水) 19:14:33 ID:jTXOJksE
テスト? テストってなによ!?
私を試すつもり?
私がこんなに>>668君のことを愛してるのに信じられないの?
……いいわ、>>668君がそのつもりなら、思い知らせてあげる

私の愛の深さをね








こんな電波を受信した。

670雌豚のにおい@774人目:2014/11/12(水) 20:58:03 ID:rQ5UQj7w
>>667
読んできた、確かに面白かったけど、これはなんかちがうwww

671雌豚のにおい@774人目:2014/11/13(木) 01:14:03 ID:OCX3Q8YM
>>669
すみません。
書き込めるかどうかわからなかったのでテストしました

672雌豚のにおい@774人目:2014/11/13(木) 11:20:54 ID:TnH09Qbw
謝る>>671だったが>>669ちゃんの怒りは収まることはなかった
その後彼の姿を見た者はいない

673雌豚のにおい@774人目:2014/11/16(日) 17:51:01 ID:TwVtRHQ.
そろそろ本スレに戻ったほうがいいよ。
もうここにいたら人目つかなさすぎて終わるわ。
てかもう半分死んでる

674雌豚のにおい@774人目:2014/11/17(月) 00:08:41 ID:r5UD/Gow
本スレもいつまでも昔のことばかり言いつのって、全然投稿むきの雰囲気じゃないからこっちの方がいくらかましな気がする。
なろう見てるとヤンデレがハーレムを構成する人員の一要素になってるのをみると悲しくなるね。しかもヤンデレとしての魅力ゼロだし。

675雌豚のにおい@774人目:2014/11/17(月) 01:12:32 ID:N1S7XCnE
半分死んでるのは同意。けど本スレはダメ。無謀。
投下ないのはさみしいけど、たまに本物来るから追っちゃう。

676雌豚のにおい@774人目:2014/11/17(月) 15:26:12 ID:icC.Kxck
本スレは一体いつまで荒れてるんだろうな。荒らしてるやつ流石に暇人すぎないか
>>674
なろうとかのヤンデレは大抵ヤンデレもどきだからなー
どっちかっていうとメンヘラに近いのが多い
ハーレムの一人とかの扱いが多いからか、掘り下げが少なくて表面的な狂気(笑)ばかりだし
ヤンデレって属性は単独ヒロインとかで深く書くのに向いてるんだろうか

677雌豚のにおい@774人目:2014/11/17(月) 19:33:35 ID:hkyQ5No6
ハーレムとヤンデレって相性悪いからな
全員ヤンデレなら成立しなくもないかもしれないが

678雌豚のにおい@774人目:2014/11/17(月) 22:26:19 ID:rOwbQHZ6
>>677
全員ヤンデレハーレムとか、主人公と作者が死んじゃう

679雌豚のにおい@774人目:2014/11/18(火) 21:05:51 ID:24trvADI
ヒロインが複数で全員ヤンデレって
ここにも何作かあるけど
話をまとめるのが難し過ぎると思うんだよな
多くても3人ぐらいが限界なんじゃないか

680雌豚のにおい@774人目:2014/11/23(日) 07:26:55 ID:jmWdynpg
でもヤンデレハーレム見てみたい

681雌豚のにおい@774人目:2014/11/23(日) 12:30:53 ID:gdOezstQ
難しいんじゃない?
共食いして潰し合う展開は明らかだし、それに見合う主人公とストーリーって……
かといって修羅場なしじゃ温いハーレムものになっちゃうし
いや、自分も見たいんだけどね
なろう辺りの馴れ合いハーレムものは欠伸しか出ないし

682雌豚のにおい@774人目:2014/11/27(木) 21:21:45 ID:rtKvIl/A
うーん、投稿が止まったな
プロットで止まったお蔵入りの短編でも仕上げるか

683雌豚のにおい@774人目:2014/11/28(金) 02:48:55 ID:uI2/t9F.
ノクターンの歌姫のやつ良かった、短編だけど

684雌豚のにおい@774人目:2014/12/05(金) 16:37:21 ID:fu9xsQxI
ノクターンってなんだよって思ったら小説サイトか
小説サイト増えたなあ

685雌豚のにおい@774人目:2014/12/07(日) 04:23:47 ID:Ts16Xa8Q
ヤンデレ小説いっぱいあるサイトないかなー

686雌豚のにおい@774人目:2014/12/08(月) 01:18:21 ID:EoXaEL6U
それは俺も欲している

687雌豚のにおい@774人目:2014/12/12(金) 02:25:28 ID:bGuD05MY
他のサイトばっか見てると保管庫ちゃんが嫉妬するぞ

688雌豚のにおい@774人目:2014/12/15(月) 06:08:27 ID:FEQfmu5k
保管庫に監禁されるなんて極楽じゃん

689雌豚のにおい@774人目:2014/12/17(水) 18:03:08 ID:akjGiRGw
満足できるヤンデレなんてこのスレと保管庫でしか読めねえよちくしょう・・・

690雌豚のにおい@774人目:2014/12/17(水) 20:19:07 ID:AWASk3Hk
住人まで病ませるとは

691雌豚のにおい@774人目:2014/12/20(土) 10:12:25 ID:3pJPPaQQ
リアルヤンデレ
と言ったら、最近巷で言われているのは、うつ病のSMS依存のアスペ女(Twitterやmixやlineで、良く見かける)。ただ、メンヘラは
自己愛性人格障害と言って、過去のネグレスト(福祉用語で虐待)などのトラウマから、普段必要以上に自己否定感を言葉に出し、優しく言葉掛けをされた男に
依存する体質。
良く事件に成ったりするのは、些細な事から激高、引き隠ったりするが、男が心配の余り献身的な気持ちから、構い過ぎると、身の保身から
(メンヘラの一方的な立場から)
悲劇がおこったりする。
または、男の献身的な態度(実際は心変わりなどしていない)を、被害妄想的な気持ちから疑い、混乱。懸命に女を
支えようと、近寄って来た男を殺害。
と言ったように、
「相手を病む程愛する」
のでは無く
「可哀想な自分を守る」
為に事件がおこっている場合が多い。
つまり、リアルタイムでは…ヤンデレは存在しない可能性が高い。

692雌豚のにおい@774人目:2014/12/20(土) 10:21:46 ID:3pJPPaQQ
自分は、リアルで自殺未遂を七回
された…。
そして、こちらが献身的気持ちから心配すると、2〜3ヶ月、平気でコンタクトが取れなかったりして、見守る為に、暫く距離を置くと
また、近寄って来たりする。
然るに…リアル生活
で「病む程愛する」
「ヤンデレ」
とは、存在しない
幻の生命体と言うのが結論

693雌豚のにおい@774人目:2014/12/20(土) 10:24:13 ID:3pJPPaQQ
逆に、共依存と言って、男の方が毒気に当てられて
精神疾患に成ったりする。
コレが現実。
創作の参考に成ったかな?(苦笑い)

694雌豚のにおい@774人目:2014/12/20(土) 13:42:28 ID:wpto69bI
おまえも病んでるみたいだけど大丈夫か

695雌豚のにおい@774人目:2014/12/20(土) 15:15:00 ID:3pJPPaQQ
>>694
意を決して、結婚を申し込んだら死ぬ程喜んでくれた。
ただ、リアルな病んでいる女は待てない。
「明日、結婚してくれるんでしょ?」
「いや…来年必ず迎えに行くから」
翌日、女は飛び降り自殺未遂。現在病院に収監中。
当たり前の話しだけれど、こちらも
精神が蝕まれる…
コレが現実…

696雌豚のにおい@774人目:2014/12/20(土) 16:05:36 ID:wpto69bI
そのまま深みにはまって体験談をSSにしてくれ

と言いたい所だがほどほどにな

697雌豚のにおい@774人目:2014/12/20(土) 18:14:59 ID:3pJPPaQQ
>>696
ありがとう(苦笑い)
生きて無事に別れる事が出来たら
投下するさ…

698雌豚のにおい@774人目:2014/12/21(日) 11:59:44 ID:8hhBcECI
ヤンデレを引き寄せる体質の男を他のヤンデレから守る男の女友達(ヤンデレ)という話を思い付いたけど既出かな?

699雌豚のにおい@774人目:2014/12/21(日) 19:04:04 ID:Lk.24wIU
どうだろう
でも、思いついたなら書いた方が良いぞ

700 ◆wzYAo8XQT.:2014/12/22(月) 00:17:40 ID:yqdsYsEU
お久しぶりです
暇があるからとここに投下するとなぜかとても忙しくなるということが続いたので、今度は逆に忙しいときに投下してみることにしました
第一話投下します

701今帰さんと忘れ物 ◆wzYAo8XQT.:2014/12/22(月) 00:21:12 ID:yqdsYsEU
 この世のすべての苦痛は、人と人の間より生じる。
 争い。諍い。嫉妬。不平不満。
 どんな苦痛も、一人では起こり得ない。
 
 持たざるものは幸いである。かつて聖人はそう言った。
 そのとおりだ。
 だから、ただ一人の人間関係すら持つことが出来ていないぼっちこそが、この呪われた世で唯一救われた存在なのだ。


――――――――――――――――――――――――――――



 家路の途中、何の気無しにポケットに手を突っ込んで、そこで初めて携帯電話の不在に気がついた。
 しまったな。教室の施錠までに間に合うだろうか。
 僕は冷や汗をうっすらとかきながら、学校のほうを見た。
 今、僕は寄り道もせず学校から家へ帰る途中だ。だから携帯電話を忘れたのも学校以外にない。
 忘れたのは教室か、放課後寄った図書室か。
 うちの学校は空き教室で馬鹿がやらかして以来、すべての教室は放課後施錠することになっている。
 うちのクラスの施錠担当は生徒会メンバーの今帰さんだ。

 生徒会は普段は五時くらいまで仕事してるんだったかな。彼女が施錠するのはその後のはずだ。果たして間に合うだろうか。携帯がないから時間も分からない。
 どうして忘れてしまったりしたんだ。自分の迂闊さを嘆きたい。
 携帯の充電が切れるということは、ぼっちにとって命の関わる事態だ。
 明日の休み時間を携帯なしで乗り切るビジョンがさっぱり浮かばない。
 ちなみに教室で充電するというプランはなしだ。
 教室のコンセントはリア充のものだ。ぼっちには盗電なんて許されない。
 教室が空いていることを願いながら、あるいは図書室に忘れていることを願いながら、僕は踵を返し学校に向かった。

――――――――――――――――――――――――――

 外や運動場は運動部の出す音や声で騒がしいが、教室棟はとても静かだ。
 やましいこともないのに、静かな廊下に足音を響かせるのが気が引けて、僕は足音を殺して廊下を進む。
 僕のように放課後の学校に縁遠い人間にとって、ここは僕のいるべき場所じゃない。そう思えるからだ。
 かといって、昼間の教室なら僕のいる場所と思えるのかと言ったら、それも違うのだけれど。

 僕の教室の戸が半開きになっているのが見えた。よかった、まだ開いていた。
 僕は急いで教室に入った。
 夕暮れの西日が僕の眼を強烈に打つ。
 他に誰もいない教室の中で、長い髪をした少女の輪郭が、その西日に照らされて見えた。
 その少女は口に手を当て、机の上に投げ出された携帯電話を見ていた。
 あれ、あの携帯、僕のじゃないか?
 物音に気づいたようで、夕日に照らされた少女はあわててこちらに向き直った。
 僕も驚いて足を止めてしまう。
 日の光に眼が慣れてきて、だんだん少女が誰だか分かってきた。
 その少女は、今帰さんだった。
 快活で、可愛くて、面倒見がよくて、成績優秀で。でもそれを鼻にかけず、誰にでもわけ隔てなく優しい、みんなの人気者。
 そんな彼女が、指をくわえて、僕の携帯電話を見ている。
 どういうことだろうか。
 そもそも、僕、携帯を机の上に出しっぱなしにしてたっけ。
 ちゃんとロックされてるよな?
 万が一、アレの中身が今帰さんの目に触れるようなことがあれば大惨事だ。
 ぼっちの生態を優等生に無修正でお届けするのは、まるで赤ちゃんはコウノトリがキャベツ畑から運んでくることを信じているような無垢な少女に無修正ポルノを見せ付けるようなものだ。
 あの今帰さんからも嫌われたとなれば、クラスすべてが僕の敵になること必至だ。
 ぼっちといじめられっ子は別物だ。僕はあくまでぼっちなのだ。ぼっちでいたい。

 僕に気づいた彼女はぽかんと口を開ける。
 指と口の間に橋がかかり、光を反射してわずかに輝く。
 思わず顔が赤くなる。
 その扇情的な光景は童貞の僕にはあまりにも刺激が強すぎる。
 赤ちゃんはコウノトリがキャベツ畑から運んでくると信じている無垢な少女は僕のほうだった。いや無垢じゃなくキモオタで、少女じゃなく少年なんだけども。

702今帰さんと忘れ物 ◆wzYAo8XQT.:2014/12/22(月) 00:21:56 ID:yqdsYsEU
 今帰さんは僕がそれを見ていることに気づいたようで、慌てて手を口から離し、後ろに回した。
「あ、その、あの、阿賀……くん? どうしたの、こんな時間に」
 彼女は困惑した様子で僕の名を呼んだ。
 今、僕の名前の後ろに疑問符ついてなかったか?
 いくら僕がぼっちのキモオタだからって、名前すら覚えてないなんてあんまりだ。
 ちなみに、僕はクラスの半分近い人たちの名前を覚えていない。
 いや僕のことはどうでもいい。それより彼女の問題だ。
 その取り繕うような質問に、僕はできるだけ冷静を装って答える。
「部活が終わったのが今だったんだ」
「え、あ、ごめんなさい! わたし、てっきり阿賀くんは帰宅部だと思ってて……」
 なんで帰宅部だと思ってたんだ。ぼっちだからか? ぼっちだからなのか?
 まあ帰宅部なんですけどね。
「そ、それでさ、その携帯、僕のなんだけど」
「あ、ご、ごめんなさい!」
 彼女は慌てた様子で携帯電話に手を伸ばす。
 僕はそれを阻止するように走って机に近づき、携帯電話の上に手を重ねた。
 僕は今帰さんの手の上に手を重ねる格好となる。
 しまった!
 僕は慌てて手を離すが、気まずい沈黙が流れる。
 どう考えても、僕必死すぎる。これじゃ携帯電話にやましいところがあると自白しているようなものだ。
「あ、あはは……」
 気まずさを誤魔化そうと、僕は曖昧な笑みを浮かべる。
 気まずく思ったのは今帰さんも同じなようで、薄く笑う。
「ガラケーなんて変わってるね」
 変わってるとかどうでもいいから早く、携帯電話から手を離して下さい。
 彼女の手をじっと眺める。
 傷一つない綺麗な手だ。
 彼女の手と比べると、僕の携帯電話はまるで粗末なゴミに見える。
 あ、それゴミです。もしよろしければそのまま捨てちゃってください。
 そんなわけの分からない台詞を口走りたくなる。
「久々に見た。何年使ってるの?」
「中学入学のときに買ってもらって以来だから、もう四年かな」
 そんなことはどうでもいいだろ。そう思いながら僕は答える。
「四年……」
 彼女は呟く。
 彼女は携帯電話を持っていないほうの手を口元に持っていくと、そっとそのまま指を咥えた。
 思案顔で、どこか遠くを見ている。
「あ、あの、今帰さん?」
 僕の声と僕の視線で、彼女はようやく自分の行為を自覚したらしい。
 彼女の白い頬がみるみる紅潮する。
 その赤は夕焼けの赤の中でもはっきりと分かった。
「あ、あの、違う! 違うの!」
 違うって、何が違うんだろう。
 僕は何も聞いていないのに。
 それにしても酷い慌てようだ。どうしてそんなに慌てることがある。
 僕がスクールカースト最下層、いやいっそアウトサイダーだから、カースト最上層の彼女に何か害を加えるとでも思ったのか。そんなことするわけがない。カースト最下層は獣か何かだとでも思っているのだろうか。
 パワーバランス的に考えて、むしろ慌てるべきは僕のほうであって彼女のほうではない。
 まあ僕くらいカースト低いと、いっそ嫌われたりすることが怖くなくてカーストから自由なのだと勘違いできる。
 ぼっちは誰とも利害関係にならないからね。だって一人だから。誰かとグループとか作れないから。
「あ、あのね、私、実は、ゆ、指をしゃぶる癖があるの」
 それで、僕は彼女が指を銜えたことを見咎めたのだと錯覚されたことに気づく。
 慌てた感じで弁明する今帰さんが可愛くて、僕はそれを直視できなくて顔を背ける。
「そうなんだ、可愛らしい癖だね」
 突然の謎の自白に、僕はそうとしか返せなかった。
 無言の静寂が二人の間に横たわった。

703今帰さんと忘れ物 ◆wzYAo8XQT.:2014/12/22(月) 00:22:19 ID:yqdsYsEU
 うわー!! 失敗だった!! 可愛いだなんていうんじゃなかった!! 間違いなくキモイと思われる!!
「ご、ごめん、じゃあ僕帰るから!!」
 呆然とする彼女から奪うように携帯を手に取ると、僕は逃げるように、いや、まさに逃げ帰った。



――――――――――――――――――――――――――


 教室の施錠に来た私は、念のため生徒が残っていないか確認する。
「誰もいませんねー?」
 見回して誰もいないのを確認した後、形式だけの声をかける。
 疲れた。
 小さなため息を一つ吐く。
 無人なのに、教室にいるというだけで少し気が張り詰める。
 馬鹿馬鹿しい。
 自嘲気味に少し笑う。
 そうして、机の間を抜けながら歩いていると、かつんと音が鳴った。
 静かな教室に突然響いた異音に、私の肩が跳ねた。
 誰かいる?
 音の出るほうを見る。床に、何か黒い塊が落ちていた。
 机の前まで行ったらはっきりと分かった。それは携帯電話だった。スマートフォンじゃない、いわゆるガラケーと呼ばれるそれだ。久しぶりに見た。誰のだろう。
 先ほどの音は、私が机にほんの少し、自分でも気にしない程度にぶつかった拍子に、机から落ちたそれが出した音だった。
 かがんでそれを取ると、机の上に置いた。
 こんなものにびっくりさせられたなんて。
 苛立ちから、私は無意識に指を口にやっていた。
 噛む。
 歯に挟まれて、爪が変形する。
 そのまま、私は思索に飲まれ、しばし現実から意識が逸れる。
 気がついたときには、私を見る人影があった。
 夕日を正面から受けて、赤く照らされている。
 くせっけで分厚いめがねをかけた、野暮ったい少年だ。
 彼は……阿賀君だ。
 私はクラスメート全員の顔と名前を覚えるようにしている。
 だからというわけではないけど、すぐに彼の名前が分かった。だけど私以外で、彼の顔を見てすぐに名前が浮かぶ人はきっと多くない。あるいは、クラスメートですら彼の名前を知らない人だっているだろう。
 それくらい、影の薄い男子だ。
 くりっとした彼の瞳は眩しさで細められて、でもまっすぐ私を見ていた。
 その視線で、私は指を銜えていたことを思い出し、慌てて手を後ろにやる。
「あ、その、あの、阿賀……くん? どうしたの、こんな時間に」
 本当に、どうしたんだろう。
 彼は部活に入っていないはずだ。それに授業が終わったらすぐに学校から抜け出す。だからこの時間に学校にいるはずがない。
「部活が終わったのが今だったんだ」
 その言葉に私は酷く驚かされた。何を勘違いしていたんだろう。とても部活に入っているようには思えなかったけど、いつの間に、どんな部活に入っていたんだろう。
「え、あ、ごめんなさい! わたし、てっきり阿賀くんは帰宅部だと思ってて……」
「そ、それでさ、その携帯、僕のなんだけど」
 阿賀君の少しぞんざいな口調に私は慌てた。
「あ、ご、ごめんなさい!」
 返さなきゃ。
 私は携帯に手を伸ばす。
 すると彼が駆け寄ってきて、私の手の上に手を重ねた。
 びっくりした。彼はすぐに手を引いたけど、そんなに私に携帯電話を触られるのが嫌だったのかな。私、嫌われるようなこと、したかな。
「あ、あはは……」
 彼がぎこちなく笑う。
 その気まずさに耐えられなくて、私はどうでもいい質問をする。
「ガラケーなんて変わってるね」
 彼は携帯を見たまま、答えない。
「久々に見た。何年使ってるの?」
「中学入学のときに買ってもらって以来だから、もう四年かな」
「四年……」
 そうか。もうそんなになるんだ。
「あ、あの、今帰さん?」
 阿賀君が心配するように私の顔を覗き込む。
 そこで初めて、私は無意識に爪を噛んでいたことに気づいた。
「あ、あの、違う! 違うの!」
 彼は、突然爪を噛みだした私のことを不審に思っただろう。
 誰かに不審に思われてはいけない。誰かに嫌われてもいけない。

704今帰さんと忘れ物 ◆wzYAo8XQT.:2014/12/22(月) 00:22:36 ID:yqdsYsEU
「あ、あのね、私、実は、ゆ、指をしゃぶる癖があるの」
 わけのわからない弁明だ。私は何を言ってるんだろう。
 だけど、そんなわけの分からない私の言葉に、彼は笑って答える。
「そうなんだ、可愛らしい癖だね」
 私は呆気にとられてしまった。
「ご、ごめん、じゃあ僕帰るから!!」
 彼は私の手から携帯電話を受け取って、そしてそのまま走って帰っていった。

 彼の去った教室で、私は一人棒立ちだ。
「可愛らしい……か」
 明るい。優しい。かわいい。
 そんな風に褒められることはよくあっても、子供に向けるかのように、可愛らしいだなんて言われるのは久しぶりのことだった。
 苛立ちが走る。褒められたことにではない。自己嫌悪にだ。
 苛立ちを沈めるために、無意識に指が口へと伸びる。
 私は口を開き、その指を、そのまま咥えた。
「……つっ」
 嘘だ。指をしゃぶるなんて、私の癖はそんな可愛らしいものではない。
 私の本当の癖は、これだ。
 私の指先からは、血が滲んでいる。
 ……私が、噛みすぎたせいだ。
 爪の、噛み癖。
 これが、私の本当の癖だ。見っとも無い癖。可愛げの欠片もない癖。
 どうしよう。爪は整えられるけど、怪我はそうはいかない。
 猫にでも、噛まれたことにしてしまおうか。
 ああ、こんなにもすらすらと、偽り方を思いつく。
 私は、醜い。
 彼も、本当の私のことを知らない。
 私の友人や、親や、先生や、クラスメートと同様に。
 私はちっとも可愛らしくなんかない。
 こんなに醜いのに。
 阿賀君は、こんな私を知っても、それでも可愛らしいと言ってくれるだろうか。
 私は、ありえるはずもないことを思った。

705 ◆wzYAo8XQT.:2014/12/22(月) 00:24:11 ID:yqdsYsEU
投下終わりです
タイトルは「今帰さんと踊るぼっち人間」、第一話今帰さんと忘れ物ということでお願いします
ながめの続きはまたの機会に

706雌豚のにおい@774人目:2014/12/22(月) 01:42:35 ID:U6ngs89M
GJ
まだ始まったばかりだけど
すごく先が楽しみです

707雌豚のにおい@774人目:2014/12/22(月) 12:23:33 ID:96MOnTuM
>>705
GJです!
変わったパターンの始まり方だ

708雌豚のにおい@774人目:2014/12/22(月) 21:54:09 ID:Dk2uZ.8k
いぇークリスマスプレゼントだー

709 ◆wzYAo8XQT.:2014/12/23(火) 21:36:27 ID:hosSoLM.
今帰さんと踊るぼっち人間、二話出来たので投下します
一つ、一話投下前に書くべき注意事項を書き忘れていました
この話はヤンデレ物としては薄味な話になる予定で、派手な刃傷沙汰等はない予定です
そう言った要素を含まないことをあらかじめご了承ください
では第二話、『今帰さんと隠し物』投下します

710今帰さんと隠し物 ◆wzYAo8XQT.:2014/12/23(火) 21:37:25 ID:hosSoLM.
「阿賀くん」
 終礼が終わり、いつものように速攻で教室を出ようとした僕の背中に声が投げられる。
 特別に特徴があるわけでもないのに、ざわめく教室の中でもすっとよく通るこの声は今帰さんのものだ。聞き間違えるはずも無い。
 しかし妙だ。クラスの頂点におわします天上界の麗しの天使が、地を這うゴキブリにいったい何のようだろう。
 昨日の口封じでもされるのかな。
 できるだけ不自然にならないように返答をしなければならない。
 放課後で気の緩んだリア充たちが跋扈する教室という空間。ヘマをすれば僕のリアクションはこれからの彼らの笑いの種になってしまう。
 ただでさえゲラゲラ笑って愉快に生きている彼らにこれ以上笑いを提供するするほど僕はボランティア精神にあふれていない。
「あ、なにかな、今帰さん」
 言葉の頭に『あ』がついてしまうのは許容して欲しい。
 ぼっちは声を出さないから、正式な発話の前に発声練習が必要なのだ。それが『あ』なんだ。日常会話の度にいちいち『あー、あー、声帯のテスト中。声帯のテスト中』なんてやるよりははるかに効率の良いやり方だろう?
「また明日」
「……え?」
 ええと、何か用事とかあったんじゃないのか?
 また明日というのは別れの挨拶だ。
 ということは会話はこれで終わりということだ。
 会話がこれで終わりならどうして話しかけたりしたのか。目的は何だ。
 終わりとなる会話を始めたってことは、挨拶そのものが目的ということだ。
 つまり彼女は俺に挨拶をしたかったということになる。
 ……なんで?
 俺が混乱から完全に停止していると、突然、今帰さんの隣にいた、ええっと、誰だっけ、まあその誰かがげらげらを手を叩いて笑い出した。
「ちょ、カナに話しかけられてアガ超てんぱってんじゃん! ウケルー!!」
 今帰さんも少し申し訳なさそうにしながらも、くすくすと笑っている。
 そんなに間抜けな顔をしてたんだろうか。
「ごめんね、そんな顔されると思わなくって」
「あ、いえこちらこそ。びっくりして」
「声かけられただけでビビるとか!」
 その誰かはそういってまた大笑いを始めた。
 うるさい。手をパンパン叩くな。その動作は本当に意味のある必要な動作なのか。笑うという行為のどこにその動作が必要な部分があるのか。顎と手が連動でもしてるのか。それにあなただっていきなり僕に話しかけられたらびっくりするだろう。その逆だ。
 曖昧な笑みを浮かべたまま所在無さげにしていると、今帰さんが助け舟を出してくれた。
「じゃあ、また明日ね」
 今帰さんはそう言い、僕に向かってフリフリと手を振る。
「あ、ああ。また明日」
 ああ、見事にリア充に笑いのネタを提供してしまった。

711今帰さんと隠し物 ◆wzYAo8XQT.:2014/12/23(火) 21:37:57 ID:hosSoLM.


 彼女の意図がさっぱり分からない。
 僕に挨拶していったい何の得があるというんだ。
 自らの優しさのアピールとしたってさすがに度が過ぎている。
 優しさは向ける相手を選ばなければならない。
 そうしないと、優しい人から変な人にクラスチェンジしてしまうからだ。
 道端の子犬を可愛がるのはいい子だが、道端のホームレスを可愛がるのは変な子だ。そういうことだ。
 一般人が使う『優しい人』は本当の意味での優しい人を指わけではない。

 ……たった一度、別れの挨拶をされただけで悩みすぎだ。
 単なる、ほんの気まぐれかもしれないじゃないか。いや、そうじゃないと考える要素もない。
 昨日の今日だから、なんとなく挨拶をしてみただけだろう。
 今帰さんは空気の読める人だ。
 だから、「僕に挨拶することは空気が読めないことなんだ」ということをすぐに学習、あるいは再認したはずである。
 ということは明日からは何もない。
 やはり考えすぎたな。ああ、また無駄な時間と神経を使ってしまった。


――――――――――――――――――――――――――


 今度は宿題を忘れた。
 しかも今度気づいたのは家についてからだ。
 ああめんどくさい。
 僕はため息を吐きながら学校に戻る。
 最近、物忘れが激しい。
 ぼっちには助けてくれる人がいないから、こういった些細なミスが生活の致命傷となりうる。
 それゆえに神経使って、つまらないミスをしないように日頃から気をつけているのに。
 どうしてそんな苦労をしてまでぼっちをやるんだと言われたら、そこまでしてでも、不毛な人付き合いに時間と神経を費やすよりマシだと思っているからだ。
 まったく、人付き合いとは不毛なものである。
 ……嘘です。強がりを言いました。本当はどうやったら人と仲良くできるのか、さっぱり分からないだけです。
 それにしても、この年にしてもうボケが始まったかな。
 ふと、携帯でアルツハイマーについて調べてみる。
 とあるサイトに、メジャーな認知症とは異なり、症状は徐々に進行すると書かれていた。自覚症状がないことが多い、とも。
 怖い。
 アルツハイマーマジ怖い。
 なんだよ若年者でも発症するとか初期状態の自覚症状の僕との一致具合とか、マジ怖い。
 携帯なんてものが無ければこんなもの調べずに済んで、不安になることもなかったのに。ああ、これは文明が齎す闇だ。
 大げさな暗い妄想を振り払うように、僕は足早に教室に急いだ。
 夕暮れ時の学校にこんな短期間に二回も来ることになるなんて。
 帰宅部の僕にはまったく縁がない空間に、僕は違和感を抱きながら廊下を進む。
 なんというか、すごいアウェー感だ。

712今帰さんと隠し物 ◆wzYAo8XQT.:2014/12/23(火) 21:38:19 ID:hosSoLM.

 そもそも今帰さんが原因なんだ。
 もちろん、彼女は何も悪くない。僕が勝手に動揺しているだけだ。
 それでも、どうにも調子が狂ってしまった。
 クラスのカーストトップに話しかけられて、いったいどこのカースト最下位が平常心でいられるのか。
 
 なんとなく、部活中の生徒の目を出来るだけ避け、こそこそと教室に向かう。
 教室の扉は昨日とは異なり、ぴったりと閉じられていた。
 教室の前で一度静止する。話声は……無い。
 このステップを忘れるとうっかり僕の悪口を言うクラスメートに出くわすということになりかねない。
 あるいは、僕以外の人間に対する悪口でも同じことだ。
 そんなことになったらお互い気まずくてしょうがない。
 
 教室の戸を開けると、夕焼けに照らされて一人の人影が佇んでいた。
 今度は、それが誰だかすぐに分かった。
「また会ったね」
 今帰さんははにかむように笑う。
 その様はあまりにも可憐で、夕焼けの彩度が30%くらい増したようにすら思えた。
 そう言えば、鬱病に罹患すると、世界が暗く、白黒に見えると聞いたことがある。
 すごいよ今帰さん。鬱病の特効薬だよ。
「阿賀君?」
 その声で、僕はドアに手をかけたままアホみたいに突っ立ってたことに気づいた。
「あ、そ、そうだね」
 昨日とは打って変わって、今度は僕がどもる番だ。
「あはは、こういうのって少し恥ずかしいよね」
「こ、こういうのって?」
 僕みたいな気持ち悪いのと、放課後の教室で二人っきりになることだろうか。
 いやそれはおかしい。それならば正しい感想は少し恥ずかしいではなく大分気持ち悪いのはずだからだ。
「また明日って言ったのに、今日中にまた会っちゃう、みたいなこと」
 ああ、それなら分かる。間が悪いというかなんと言うか。
「今度からは、また明日じゃなくてまたねって言おうかな」
 彼女はそう言って思案顔になる。
 それがとても様になっていて、僕は笑ってしまう。
「なに、どうしたの?」
「あ、あああいや、そそそそういうわけじゃなくてですね、こんなことで考え込まなくてもって思って」
 だって、それは無駄な思案だ。そもそも僕に声をかける必要なんてないんだから。
「大事だよー。また恥ずかしい思いしたくないもんー」
「あはははは」
 僕と同じだ。誰だって恥はかきたくない。恥の多い生涯を送ってきたけども。
「今日はどうしたの?」
「しゅ、宿題を忘れてさ」
「あっ、山田先生の? 山田先生、厳しいもんね」
「そうそう。ちょっと、苦手でさ」
「私も、少し苦手。阿賀君にも苦手なことってあるんだね」
 今帰さんはくすくすと笑う。
 苦手なことがあるも何も、僕は苦手なことだらけだ。僕くらい苦手なことが多い人間もそうはいない。
 そもそも普通に生きるってことから苦手なんだから。

713今帰さんと隠し物 ◆wzYAo8XQT.:2014/12/23(火) 21:38:41 ID:hosSoLM.
「ど、どうして?」
「阿賀君、いつも涼しい顔してるから」
 涼しい顔、か。そんな風に思われていたなんて、意外だ。
 単にからかわれたくなくて、感情を顔に出せないだけなのに。
「僕には、今帰さんに苦手なことがあるほうが意外だよ」
「えー、どうして?」
「今帰さんはいつもにこにこ優しい顔をしてるから。それで、その顔で何でも難なくこなしちゃうじゃないか」
「そんなことないよー。いっぱいいっぱいだよー」
 今帰さんは少し照れた風に、頬に手を添える。
 まったく、謙遜まで堂に入っている。褒められるのに慣れているんだろうな。
 僕が最後に褒められたのは、一体いつのことだろうか。あ、今か。
 その前に褒められたことなら、いくら考えたって思い出せる気がしない。あるいは、今が僕の人生で初めて人に褒められた瞬間なのかもしれない。
「阿賀君って結構忘れっぽいんだね。これで二日連続だ」
「そんなことないよ。昨日忘れ物をしたのだって、多分高校に入ってから初めてのことだし」
「また明日も忘れるかも。そしたら明日も会えるね」
「それはさすがにないよ。それに、会えるも何も、同じクラスだし」
「あはは、そーでしたー」
 僕はクラスメートにクラスの一員だと認識されていない。そういった意味では、僕に会えないというのは正しい。
 僕は机の中を探り、目的のプリントを見つけ出す。
「あった。じゃあ、帰るよ」
「うん。またね」
 僕はプリントを手早くかばんにしまい、部屋を出ようとする。
 そこでふと気になり、聞いてしまった。
「今帰さん、ここで何してたの?」
「え」
「ああいや、僕が来たとき、教室の真ん中に、一人立っていたから」
「君を待っていたの」
「え?」
「あはは、冗談。戸締りにきたら、夕焼けが綺麗だったから」
 そういって、今帰さんは背後の夕焼けを見る。
 さすが今帰さんだ。そんな臭い台詞が、酷く絵になる。
 たとえば僕が同じ台詞を言った日には、何を自分に酔ってるのか、と笑い飛ばされるか、何か悩みでもあるのか、コイツ自殺するんじゃないだろうか、などと真剣に心配されるかだ。
 夕焼けのせいで、彼女を直視するのが酷く難しくて、僕はすぐに視線をそらす。
「そうだね。綺麗だ。じゃあ」
 僕はそう言って教室を後にした。

――――――――――――――――――――――――

 はあ、神経使ったな、今日は。
 自室で一人、天井を仰ぐ。
 涼しい顔、か。
 気が抜けたのか、今日の会話の記憶が自動で再生される。
 ぼっちは人付き合いが無いから、一度あった人付き合いはこうして何度も再生、反芻されるのだ。
 そのせいで失敗を思い出したりして余計な後悔とか自己嫌悪に苦しめられることになったり、あるいは些細な会話をニヤニヤと反芻して、相手がすっかり忘れていることをいちいち覚えたりして相手から気持ち悪がられるという無駄機能が標準装備となっている。

714今帰さんと隠し物 ◆wzYAo8XQT.:2014/12/23(火) 21:39:15 ID:hosSoLM.
「可愛かったな、今帰さん……」
 そう呟いた後で、僕は激しく頭を降った。
 あああああ。
 無駄に神経が圧迫される。
 本当に、どうして今帰さんは僕に話しかけてくるんだろう。
 彼女と僕の縁が彼女にとって何かの利益を産む可能性はゼロと言っていいだろう。
 その逆もまたしかりだ。
 それなのに、僕はこうして余計な想像を巡らせ、いちいちどうでもよいことに喜んだり、悲しんだりに忙しい。利益はなくとも、こうして僕の精神への悪影響だけはきっちりある。
 僕は、こうしてどうにもならないことを悩んだりすることが嫌いだった。それなのに、悩まずにはいられない。今帰さんのせいだ。
 僕は、クラス一の美少女から話しかけてもらえるというぼっち垂涎のイベントを、疎ましく感じ始めていた。
 ぼっちここに極まれり。いや窮まれり、か。
 美少女と話せるという幸福さえ、訓練されたぼっちには疎ましさの材料になってしまう。
 これ以上なれないことをしたくない、状況を変化させたくないという意思が、この境遇から救い出してくれるかもしれない、この最低な日常が変わるかもしれないという希望を上回るのだ。
 

 明日もまた話しかけられるのだろうか。もちろん、話しかけられたら嬉しい。
 しかしそれを期待して一日中そわそわしているのは大変苦痛だ。
 はあ。そもそもリア充の気まぐれにいちいち反応していたら神経が持たない。
 明日には彼女が僕から興味を失ってくれることをうっすらと願いながら、僕はこの無為な思考の反芻を停止した。



――――――――――――――――――――――――



「ばいばい、阿賀君」
 その小さな後姿を、私は笑って見送った。
「二日連続で忘れ物なんて……」
 そう呟き、あまりの白々しさに笑ってしまった。
 彼は忘れ物なんてしていない。彼はプリントを忘れたのではなく、隠されたのだ。
 どうしてそんなことを私が知っているのか。
 だって、彼のプリントを隠したのは、私だから。
 阿賀君にまた会いたかったから。二人っきりで、話をしてみたかったから。
 五時限目の体育のあと。男子より先に教室に戻ってきた私は、彼のかばんの中からプリントがはみ出しているのを見つけてしまった。
 気がついたら、そのプリントは私の机の中に納まっていた。
 生徒会活動を早めに切り上げて、彼の机にプリントを入れ、夕焼けを見ながら教室で待っていたら。案の定彼は来た。
 だから、彼を待っていたというのは冗談ではなく本当のことだった。

715今帰さんと隠し物 ◆wzYAo8XQT.:2014/12/23(火) 21:39:34 ID:hosSoLM.
 そっか。阿賀君はめったに忘れ物をしないんだ。
 それなら、明日も同じことをしたら、怪しまれちゃうかな?
 でも、もう少し阿賀君と話していたかったな。
 挨拶をしただけで大げさに驚かれ、避けられてしまう。
 だからと思って、こうやって二人きりになれる機会を作ったのに、そんな風に逃げるように教室を出て行かなくたっていいのに。
 そんなに、私が嫌いなのかな?
 自分で、唇の端がつりあがったのが分かった。
 そんな風にされると、ますます追いまわしたくなる。
 彼との会話は、自分を取り繕わなくてよくて、すごく楽しい。
 今度はどんなことを話そうかな。いきなり話しかけたら、また慌てさせちゃうかな。
 
 そんなことをとりとめも無く考えていたら、不意に途轍もない後悔と自己嫌悪が襲ってきた。
 ベッドに横たわると、私は蹲るように自分の体を?き抱く。
 またわたしは忘れていた。
 調子に乗るな、浮かれるな。
 私は自分に呪詛を吐く。
 勘違いするな。私はまた同じ過ちを繰り返す気か。
 ひときわ大きな悪寒が、氷の杭のように私を貫く。
 あんな思いはもうたくさん。
 ぜったいに、ぜったいに、もう、二度と。



 しばらくして、体の震えは収まった。
 私は酷く冷めた頭で、体を起こす。
 罰さなきゃ。
 私は、机の引き出しを開け、そこから一本の待ち針を取り出した。
 そうして、私は爪と皮膚との間に、待ち針をつきたてた。
 ピンクの肉と、透明な爪の間に針がつぷと沈む。
 酷い痛みが脳を焼く。
 眦に涙が浮かび、口から漏れそうになる悲鳴を私は必死でかみ殺す。
 強く。もっと強く。
 こんなんじゃ、ぜんぜん足りない。
 罰にならない。
 罰さなきゃ、私はこの苦痛から逃れられない。
 痛みという警告に逆らい、私はさらに針に力を篭める。
 ほんの数ミリ、針が沈み込んだだけ。
 それなのに、私は息も絶え絶えだった。
 これ以上はだめだ。跡が残ってしまう。誰かに心配されてしまう。
 心配なんてされてはいけない。これは罰なのだから。
 そこで私はようやく針に篭める力を抜いた。
 心臓の拍動にあわせて、指先が脈打つ。規則的な苦痛の反復が指先から全身に流れる。
 これが調子に乗った罰だ。
 また同じことをしたら、今度はもっと大きな罰を受ける。
 私は自分にそう諭す。
 だから、やめなさい。
 阿賀君と仲良くなりたいだなんて思っちゃいけない。
 思っちゃいけないんだ。
 
 そうして今日も、私は私を罰する。

716 ◆wzYAo8XQT.:2014/12/23(火) 21:46:46 ID:hosSoLM.
二話投下終わりです。次はしばらく間が空く予定です
ちなみにこの話は
P「伊織がヤンデレ化してこわい…」
というスレの響編にインスパイアされて書きました
いつの間にかスレと内容が全然関係なくなってしまって、ネタバレに当たらないと思うので紹介までに

717雌豚のにおい@774人目:2014/12/24(水) 04:04:51 ID:wIXUKtZs
GJ
刃物とは系統の違うヤンデレとか楽しみです

718雌豚のにおい@774人目:2014/12/24(水) 04:30:59 ID:vMGdple.
久しぶりに見に来たら、クリスマスプレゼントが!!
>>716
乙です。

719雌豚のにおい@774人目:2014/12/25(木) 00:53:18 ID:Vid2BRyI
クリスマスという訳ですしヤンデレお嬢様に「私ね、クリスマスプレゼントはね、貴方が欲しいの………」って言われて監禁されて無理矢理犯されたい。
犯されてる所を録画とか撮られて、逃げようとしたら録画のネタや「貴方のお父さんやお母さんがどうなってもいいの?」と脅したりしながら調教と洗脳をして主人公は抵抗しながらも最終的には洗脳されてハッピーエンドになるシチュエーションとか考えたり

720クリスマスのおまいらへ:2014/12/25(木) 22:46:11 ID:7Zsvjyvw
 ちょっと愚痴らせてくれ…
 
 今日は人間が最も輝く日だ。 一部を除いて。そう、一部を。
 
 俺はその一部。おまいらもその一部かもな。 俺には友達がいない。 もちろん彼女もいない。

 でも俺が愚痴りたいのは彼女もちのリア充のことではない。俺の学校にいる非リア同盟のことだ。

 何で愚痴るかって?もしかして非リア同盟は彼女がいないから味方じゃないかって思ったか?

 いやいやそんなことはない。確かに非リア同盟の連中どもはリア充に対して敵意を抱いているし、今日はクリスマス廃止のデモもやった。

 でも考えてみろ。そもそも非リア同盟は非リア同盟内で友達として楽しいリア充ライフを過ごしている。

 その上デモをしているときの顔はリア充へのねたみでゆがんだ顔じゃない、笑っているんだ。つながりがあるから。打算じゃない絆があるのがわかるから。

 つまり、あいつらは本気でリア充をつぶそうとなんかしていない。むしろこのまま彼女ができないほうが友達とつながれてうれしいな。そう思っている奴らまでいるのだ!!
 
 ふざけるな!ふざけるな!!ふざけるな!!!ふざけるな!!!!!!!!!!!!!!!

…すまない。 話を続けよう。 でももとから俺が非リア同盟に対して敵意があったわけじゃない。

 それどころか俺は2年前のクリスマスの日まで非リア同盟の一員だった。つまり仲間だったわけだ。

 あいつらの中でも本気で彼女を作りたいと思っている奴らもいて、俺はその一人だった。

721雌豚のにおい@774人目:2014/12/26(金) 04:17:39 ID:/iQKLIlo
>>716

文章が心地よくて楽しい続き期待

722雌豚のにおい@774人目:2014/12/28(日) 21:16:09 ID:ChHDHXMQ
ss書きの中にも流行りとかあるのか?
昔のヤンデレssの雰囲気から時間がたつにつれ、徐々に変わっていき、いまでは昔の雰囲気と全然ちがうよな。
ある時期にある雰囲気のss偏る。なんでなんだろうね?
そのときに流行っているラノベに影響を受けているのではないか。と俺は推測している。

723雌豚のにおい@774人目:2014/12/29(月) 00:07:52 ID:e.pI4r96
>>722
んなわけ…あるかもしれない。
書き手の人も変遷してるし、書く内容も人それぞれ。
まぁ自分はファンタジーが書ければそれでいいんだけどね。

724雌豚のにおい@774人目:2014/12/30(火) 11:27:35 ID:JyM8XmoU
身体に何らかの障害がある娘のヤンデレものってあるのかな
某漫画読んだらなんかちょっと気になっちゃって
男に障害があるのも個人的にはアリ

725雌豚のにおい@774人目:2014/12/31(水) 12:54:21 ID:B37GefAo
依存スレの方だけれど、「夜と闇」というタイトルの小説がそんな感じで良いと思う。

726雌豚のにおい@774人目:2014/12/31(水) 18:49:23 ID:Mfjax4wo
ふと思いついたので、書きます

中編ぐらいかな?

『除夜の鐘に俺は泣く』

727『除夜の鐘に俺は泣く』:2014/12/31(水) 19:14:54 ID:Mfjax4wo
ゴーン♪

???「お、鳴り始めた。」

俺の名は、平田

しがない高校三年生さ

今年は、受験もありかなり大変だったがなんとか幼なじみの音無と佐久間と、同じ大学に合格した

いや〜つらかったの何のって

ゴーン♪

平田「82〜」

ゴーン♪

平田「83〜」

83を数えた時!眩しい光が俺の部屋いっぱいに包んだ

平田「おわぁ!」

???「驚かせてすまん!!急をよおしたんだ!」

目の前に、頬は痩せこけ目の下に隈が出来た男がいた

平田「誰だあんた?!」

平田1「今から、10年後おまえだ!」

平田「は」

平田1「次にお前は、【んな、馬鹿なことはない】という」

平田「んな、馬鹿なことはない」ハッ

平田1「信じたかな?なんだったら、俺しか知らない事を言おうか?学習机の鍵はタンスの一番下の段の裏に隠してある、PCのパスワードは…」

平田「わ、わかったわかった!信じる!でも、何で未来の俺が?」

平田1「いいか!!除夜の鐘が鳴り終わった瞬間!佐久間と音無からline通話のお誘いが来る!絶対に、佐久間の方を選べ!」
平田「なんで、」

その時!また俺の部屋が光に包まれた

平田2「おい!平田1余計な事を言うな。佐久間を選んだら俺はこんな事になった!絶対に音無を選べよ!」

平田「ちょっと、待ってくれ!!意味が分からない。」

平田1・2「『いいか、10年前の俺は2人のline通話をどちらか一方の方を取った。すると、取らなかった方が暴走してヤンデレとなり俺を拉致、監禁されたんだ!』」

平田「でも、どうやってここに?」

10年後は、時間飛行が可能となり偶然、回数券を手に入れた俺は、それで来たと言うわけだ

でも…どちらも、ヤンデレ監禁ENDじゃんかよ!

どうする?俺!

続く

728『除夜の鐘に俺は泣く』:2014/12/31(水) 20:14:53 ID:Mfjax4wo
平田「う〜む、てことは2人は未来のそれぞれの俺、そしてパラレルワールドて訳か…」

冷静に考えるんだ…打開策があるはずだ…

平田1は、音無を
平田2は、佐久間

でも、ヤンデレになる要素あったか?

平田1「じゃあ、念のため俺の場合を話そう。」

729『除夜の鐘に俺は泣く』:2014/12/31(水) 20:39:02 ID:Mfjax4wo
平田1の場合〜

ゴーン♪

平田1「108〜新年あけましておめでとう!」

チャチャラン♪

平田1「うん?line通話か…佐久間と音無?」

p

平田1「あ、もしもし音無。あけおめ!」

音無「あけましておめでとう。ねえ、平田くん初詣に一緒にいかない?」

平田1「いいぜ。じゃ、佐久間も…」

音無「もう、私と2人っきりは嫌?晴れ着は、平田くんだけに見せたいの。」

平田1「わかったわかった。じゃ、迎えに行くから。」

音無「うん///」p

その後な、俺は少し浮かれていたんだ

佐久間のline通話の事なんて忘れていたんだ

でな、まぁその

音無の家にいってな

お屠蘇を戴いたんだ

でまぁ、いい気分になって色っぽいあいつをみてやっちまったんだ

そして、何ランドかして俺の両親へ挨拶しに行くときに佐久間にスタンガンで気絶させられて

監禁

5年後に、偶然みた新聞に音無が自殺したのを知ったんだ

いや、自殺に見せかけた他殺か…

分からない

分からない

730『除夜の鐘に俺は泣く』:2014/12/31(水) 21:15:11 ID:Mfjax4wo
平田2の場合〜
ゴーン♪
平田2「83〜」

ピカァー!

平田2「うぉ、眩しい!」

平田1「やった…やったぞ!!俺は遂に…ッは!」

平田2「何だ!お前。」

平田1「俺は、10年後のお前だ!」

カクカク、シカジカ、シカクイムーブ!

平田2「成る程…」

平田1「いいか…絶対に選ぶなら佐久間だ!音無は、お淑やかだから大丈夫の筈だ!」ピカァー

平田2「あ、消えた…」

チャチャラン♪

平田2「来たか…」
p

平田2「あ、もしもし。あけおめ!」

佐久間「おう!あけおめ!」

平田2「初詣の誘いか?」

佐久間「おう、わかってるじゃないか!」

平田2「さてと、」

10分後〜

佐久間「おう、来たぜ!」

平田2「お前、正月もジャージかよ…」

佐久間「別にいいじゃないか!」

まぁ、そのあと初詣にいって甘酒のんでゲーセン行って

俺、汗掻き始めてな

ほら、正月て店の暖房きっついじゃん?

頭ボーてきて

で、佐久間の奴が肩貸してくれて

ホイホイ着いていったら、ラブホで

何ランドかして

俺が、後ろからやる番のときに後ろからガーンとやられて

気付いたら座敷牢にいた

と言うわけだ

佐久間のやつがどうなったかはわからん

以上だ

音無のお付きの黒服が落としたこの、回数券を使って来たんだ

俺を忠告するために

731『除夜の鐘に俺は泣く』:2014/12/31(水) 21:32:51 ID:Mfjax4wo
ゴーン♪

平田「まずい、100回目の除夜の鍵だ。」

まてよ…そうだ!!電話に出なきゃいいんだ!

そうすれば…

ピカァー

平田3「馬鹿やろう!それが一番まずいんだよ!!」

平田1「また、あらたな俺が…」

平田2「俺…どんな事を考えたんだ?」

平田3「もし、どちらのline通話にでない場合、2人から監禁END+絞りとられまくるんだ!もう、出ないのにな!」

平田「俺が…3人。」

平田1・2・3「『どうするんだ!俺!』」

平田「俺は、」

???「自殺しちゃだめだよ?」

???「自殺すんじゃねぇぞ?」

平田3「ひっ!」

平田1「何で…」

平田2「くそ!あと1回ある、これで」バキュン

音無2「あら、危ない。」

平田1「く!」ダダダ
佐久間1「おい、逃げんなよ?」ガシ

平田1「がぁ、」ガク

平田3「逃げろ、俺!この定期を託す!逃げるんだ!」

平田4「わかった!」ピカァー










ヤッタノカ?









ソンナ









ニガサナイワヨ?

ニゲンナヨ?









ウワァァァ!











732雌豚のにおい@774人目:2014/12/31(水) 21:38:59 ID:Mfjax4wo
終わりです

なんか

凄いグダグタになりました

ごめんなさい!!

一応、『奴隷』の話の作者です

やっぱり、メモ帳に下書きしてからしっかり書けば良かったな〜

念のため

佐久間→ボーイッシュ

音無→和風お嬢様(怖い黒服付き)

平田→哀れなタイムトラベラー

ていう、設定です

733雌豚のにおい@774人目:2014/12/31(水) 22:48:35 ID:c.EpQjqQ
[奴隷]の作者さんですか! 

乙です

734雌豚のにおい@774人目:2015/01/01(木) 09:06:46 ID:h09IfbWg
妹が社長になって帰ってきて兄に親族の集まりの時に札束を渡して兄が逃げるって話があった気がするんだけどなんだったかな

735雌豚のにおい@774人目:2015/01/01(木) 16:05:04 ID:iDHHUFSg
>>734
キモ姉キモウトスレのSSです。
「後悔した人の話」というタイトル。

736雌豚のにおい@774人目:2015/01/01(木) 18:17:21 ID:h09IfbWg
道理で見つからないわけです。ありがとうございました。

737雌豚のにおい@774人目:2015/01/02(金) 20:22:30 ID:WV0Wki4g
>>725
遅くなったけどありがとう
いい作品だった

738 ◆wzYAo8XQT.:2015/01/11(日) 23:59:31 ID:uHEacHe2
こんばんわ
今帰さんと踊るぼっち人間、第三話「今帰さんと生徒会」投下します

739 ◆wzYAo8XQT.:2015/01/12(月) 00:00:40 ID:nLADQarA
「おはよう」
 教室に入るなり、今帰さんから挨拶された。
「お、おゃぉぅ……」
 しまった、今帰さんとのコミュニケーションは今後曖昧に誤魔化すことに決めたのに、条件反射で返事してしまった。
 条件反射にも関わらず噛んでしまうのは、近年、人から挨拶をされるという経験が圧倒的に欠如しているからだ
 反射すらまともにできないのか僕は。病気か。
 反射といえば、脚気の原因がビタミン欠乏だと突き止めた人はノーベル賞をもらったらしいが、誰かコミュ障の原因も突き止めてはくれないだろうか。ノーベル阿賀賞をあげるから。
 横目でちらと彼女を見たところ、彼女もしまったという顔をしていた。
 彼女はみなに挨拶していただけなんだろう。
 ついその流れで、みなに含まれない僕にも挨拶してしまった。
 彼女の友人と思しき、リア充グループの一員も怪訝な眼でこちらを見ている。
 やめろこっちを見ても面白いことなんて何にもないぞ。
 憐れな珍獣が一匹いるだけだ。

――――――――――――――――――――――――

「じゃあ阿賀君、この資料生徒会に提出してきて」
 目を覚ますと、図書委員長が俺を見下ろしていた。
「へ?」
「だから資料、生徒会まで持ってってね」
 ここは……図書室だ。そうだ、僕は図書委員会の定例会に参加していた。そして寝ていた。
 周りを見回すと、図書委員会はもう終わっていて、他の人間はぱらぱらと席を立ち始めるところだった。
 馬鹿な! この僕が人から話かけられるなんて! この僕が!!
 委員会活動ではありとあらゆる面倒に巻き込まれないよう、完全に気配を消しているのに。別名ガヤ要員。
 寝るときも、あたかも「瞑目しているだけですよ?」という雰囲気を全力で漂わせているのに。うっかり熟睡していたとでもいうのか。突然に隣の席の奴から襲われたらどう対処する気だったんだ僕は。修行が足りないな。こんなんじゃ、ぼっちとして生きていけないぜ。
 僕は凡百のぼっちに違わず、普段から警戒心が無駄にマックスで、学校ではよく寝ている(寝たふり含む)ものの、周囲の人の気配に気づかないほど寝入ることは滅多にない。
 これというのも全部今帰さんが悪い。彼女のせいで、昨日なかなか寝付けなかったり、余計な心労で精神を消耗したりしたからだ。どうして彼女はこうも僕の心をかき乱す。
 
 にしても、資料を生徒会に届けるのは、一般的には副委員長の仕事のはずだ。
「へ、あ、あの、その」
「ほら、どの資料のことかも分からない。話聞いてなかったでしょ。その罰」
 委員長は僕をねめつけるように見てくる。
 う、失敗した。

 あー、生徒会かー。行きたくないなー。
 なぜなら生徒会には今帰さんがいる。
 僕みたいなコミュ障が出来る、気まずい感じの相手に対する対応はただ一つ。
 避ける。ひたすらに。それだけ。

740今帰さんと生徒会 ◆wzYAo8XQT.:2015/01/12(月) 00:01:10 ID:nLADQarA
 僕には問題解決能力なんてさっぱりないんだ。だから時間という世界最強の問題解決者が解決してくれるのをただ待つ。
 幸いにもぼっちだから、すべての問題を時間が押し流すまで人を避け続けることはまったく難しくないんだけど、まさかこんな障害で阻まれるとは。
 ぼっちといえど学生である以上、社会と完全に隔絶して生きていくことは不可能だ。
 ああ、山にこもりたい。自活力まったく無いけど。仙人になりたい。修行とか絶対無理だけど。
 結局、僕は面倒な人付き合いが嫌なだけなのだ。インターネットが無ければ一週間で寂しくて死ぬくせに。

 そうして、資料を放置する屑さもなく、さらに他の誰かに頼む勇気も容量のよさも無い僕は、無事生徒会室前に辿りついてしまった。
 そうこういっても、別にそこまで今帰さんに会うのが億劫なわけでも気まずいわけでもない。
 なんてことない。だって僕たちは別になんでもないのだから。
 そう自分に言い聞かせる。
 意識するから失敗するのだ。意識しなければ、どうということはない。
 そう思っている時点ですでにめちゃくちゃ意識しているのだが、それを言ってはおしまいだ。


 生徒会室の前で、大きく深呼吸をする。
 吸って、吐いて。
 うん、空気がまずい! 青春の匂いがする!
 ダイレクトなストレスが僕の意識を鮮明にする。
 さて、少し精神も落ち着いた。大丈夫だ。
 ノックして、『図書委員です。資料を提出に来ました』と言い、後は適当な人物に渡すだけ。
 難しいことは何も無い。想定外の事態が起こるような複雑な事象でもない。猿にも出来る。僕にも出来る。
 大丈夫、大丈夫だ。
 スライド式のドアの取っ手に手をかける。
 そしてドアがすごい勢いで開いた。
「けぱぁ!?」
「きゃあ!?」
 僕は驚き、わけの分からない声を上げ、そして資料を盛大にぶちまけた。
 目の前には、驚いた顔の今帰さんがいた。
 向こうもちょうどドアを開けようとしたところだったらしい。
 お互いドアを同時に開けようとした結果、こうなってしまったというわけか。
 余談だがこの現象を僕は『他動ドア』と名づけている。
「ご、ごめんなさい」
 彼女のほうが混乱から立ち直るのが早く、慌てて床に散らばった資料を拾い集めだした。
「あ、いいよ、僕がやるから」
 僕も資料を集めだしたが、もうほとんどのプリントは今帰さんによって集められていた。
 プリント集めるのまで早いなんて流石は今帰さんだ。優等生は何でも出来る。
 そしてなんだか、サボっていると思われたくなくて申し訳程度に作業に参加して「俺もちゃんと作業しましたよ」面しているようで大変居心地が悪い。
「はい。ごめんね」
 彼女は自然に謝って、僕に書類の束を渡す。
「いえこちらこそごめんなさい。ありがとうございます」
「ふふ、そんなに畏まらなくてもいいのに」
 申し訳なさから自然と敬語が口をついて出る。
 それに対し今帰さんは相変わらず天使だ。天使かな?
「それにしても、『けぱぁ』ってなんだよ」
 今帰さんの後ろで、生徒会メンバーと思しき面々が大笑いしている。
 僕が聞きたい。

741今帰さんと生徒会 ◆wzYAo8XQT.:2015/01/12(月) 00:01:46 ID:nLADQarA
 じゃあお前らはマリオがジャンプしたときに、「ティウン!」って言う理由を知ってるのか?
 無論、僕はしらない。
「そんな風にからかっちゃダメですよ」
「いやーごめん。それで、けぱぁ君は何の用だい?」
 けぱぁ君って僕のことかよ。
「あ、図書委員です。資料を届けにきました」
 そう言いながら、先ほど今帰さんから受け取ったばかりの資料を渡す。
 これ、今帰さんから直接渡してもらえばよかったんじゃない?
 僕に資料返してもらうっていうワンステップ丸々無駄だったんじゃない?
「今帰さんがこんなことになるのって珍しいね」
 生徒会のメンバーの一人と思しき少女がそんなことを言う。
 そりゃ誰だって珍しいと思いますよ。こんなことがしょっちゅうあったら大変でしょうがない。
 僕が怪訝な顔をしていることに気づいたんだろう。もう一人の少女が言葉を補足する。
「あー、今帰さんって、廊下でおしゃべりしてても、人が近くに来ると必ず避けるもんねー。私なんて気づかずに迷惑がられちゃうことよくあるのに」
「それはセガがぼけっとしてるんだよ」
「あー酷いー!」
 今帰さんは僕みたいに視野の狭い人間から見たら関心するぐらい色んなことに気がつくんだけど、それはそんな場面でも発揮されているんだな。
「あはは、本当、珍しいですよね」
 今帰さんも苦笑する。
「あ、僕、気配が薄いから」
「気配が薄いってなんだよ」
「けぱぁ君って面白いなー」
 何が面白いのか、僕にはさっぱり分からないよ。
「そういえば、今帰さん、何か用事あったんじゃないの?」
 ふと気になって今帰さんに聞いてみる。
 今帰さんは怪訝な顔をする。
「え、どうして?」
「だって戸をあけようとしたんでしょ?」
「人影が見えたのに中々入ってこないから気になっただけだよ。そしたらちょうど開けるんだもん、びっくりしちゃった」
「あ、ご、ごめんなさい」
「こっちこそごめんね」
「ええいめんどくさい! お前ら夫婦か!!」
「え、ちょ、ま」
 僕は本気で困惑する。ただお互い謝りあっただけで夫婦扱いされるとは。
 夫婦だって? 冗談じゃない。ぼっちは一人なんだ。どうやって一人で夫婦になるんだ。僕はカタツムリか何かか。
 まったく、高校生という奴は、ただの彼氏彼女でも夫だ嫁だとはやし立てる。婚姻というものを軽視しすぎる。冗談ではない。僕が誰かと結婚できるだなんて本気で思っているのか。いや本気じゃないことは最初から分かっている。だから正しくは、僕が誰かと結婚できるだなんて冗談でも思っているのか、だ。
 現実逃避のために、一通り妄言を脳内で吐いた後で、「今帰さんが可愛そうですよ」という軽い自虐で場を凍らせようとする。
 そこで、生徒会の面々の視線が僕のほうに、正確には僕の隣にいる今帰さんに集中していることに気がつく。
 どうしたんだ。まさか泣き出したというのか。おいおい、それが許されるのは小学生のうちまでだぞ。というかやめろよ。僕は何も悪くないのにどうして泣かれなければならないんだ。理不尽にもほどがある。
 僕は横目でちらと今帰さんの顔を伺い見る。
 今帰さんの顔は耳まで朱に染まっていた。
 今帰さんは両手で頬を押さえ、必死に赤面を収めようとしている。
「ち、ちがっ、そんなんじゃ……」
 今帰さんは顔を真っ赤にしたまま、覚束無い調子でもごもごと言う。
 て、照れてる?

742今帰さんと生徒会 ◆wzYAo8XQT.:2015/01/12(月) 00:02:10 ID:nLADQarA
 これは怒りで顔が真っ赤になってるのとは違うよな?
「や、やだもう! 今帰さんうぶ過ぎー」
 誰かが何とか場を収めようとする。
 声が上ずっていることからも、動揺は明らかだ。
 そりゃあ動揺するだろう。僕もめちゃくちゃ動揺している。
 夫婦、と言われるだけで赤面して弁明もままならなくなるとか、どれだけ今帰さんは初心なんだ。天使か。
 まったくもって現代の高校生とは思えない。明治大正の女学生だってもう少し摺れているだろう。
「ひ、ひゅー! けぱぁ君もてもてー!」
 おいやめろばか。僕を巻き込むな。僕が滑ったみたいになるだろ。
「あ、じゃあ僕かえりますね」
 ぼっちアビリティの一つ、空気ぶった切りを発動し、僕はこの状況からとっとと退散させてもらうことにした。
 困ったときは逃げの一手。というか混乱で思考が回らない。
 思考が回らないときに行き着くところは習慣だ。普段から惨めに逃げ回っていてよかった!
 だが、思いも寄らないことが起こった。
「阿賀君、教室に行くの? 私も教室に施錠に行くから一緒に行こ」
 今帰さんがそんなことを言い出したのだ。
 今帰さんの顔はまだ赤い。
 おい何考えてんだ。せっかく僕が消えることでこのおかしな空気を仕切りなおしてやろうとしているのに。
 これで僕と今帰さんが二人で出て行ったらますますおかしな空気になるだろ。残された彼らのことも考えろ。
「いや、まっすぐ帰るよ」
「鞄は?」
「教室」
「じゃあ教室行こう」
「はい」
 はいじゃないが。
 い、いや落ち着け僕。自意識過剰もいいとこだ。今帰さんも一緒に退出するのは、中心人物が二人とも消えることで一気に事態の沈静化を図ったとかそういうことに違いない。僕にはよく分からないが、リア充の行動に間違いは無い。はずだ。たぶん。


――――――――――――――――――――――――――


「ごめんね。悪い人たちじゃないんだけど」
 無言で、気まずい思いをしながら廊下を歩いていると、今帰さんがそう言ってきた。
「何の話?」
 僕はすっとぼける。もちろん、生徒会メンバーのことを指しているのは分かっている。だけどここですぐに応じたら、それは僕が彼らを不快に思ったことを表明することと同じだ。
 今帰さんは聡いから、そういうことにすぐに気づくだろう。もちろん、こうやってしらばっくれても気づくと思うけど。
「会長たち。人との距離が近い人でね、初対面でもあんな感じなの。阿賀君だけにああなわけじゃないから、気を悪くしないでね」
 なんと。僕のことをけぱぁ君と呼んだあの騒がしい男は生徒会長らしい。どう考えても適職だとは思えない。リコールだ! クーデターだ! 貴公の首は柱に吊るされるのがお似合いだ!
 とはいえ、代わりの人間もいないのだろうけど。生徒会に入りたがるのなんて、馬鹿か内申点稼ぎの狡い奴か、そうでなければ底抜けの奉仕者(別名を天使という)かでしかありえない。会長はおそらく最初。今帰さんは最後だと思う。最後であってくれ。

743雌豚のにおい@774人目:2015/01/12(月) 00:02:31 ID:nLADQarA
 ああそうだ、今帰さんが生徒会長になればいいじゃないか。人の上に立つのに、彼女以上の適材なんて存在しない。
 僕が思うまでもなく、今帰さんが立候補すれば今年の生徒会選挙で支持率百パーで生徒会長就任することは確実だろう。
「ああそうなんだ。全然、気にしてないよ。賑やかな人たちだなとは思ったけどさ」
 ちなみに、僕の中では賑やかな人はつまり嫌いな人を意味する。
「阿賀君、ああいう風に扱われるの、嫌いだと思って」
 ばっちり見抜かれている。
「い、今帰さんこそ、何かあったんじゃないの?」
 気まずいことには答えない。僕は強引に話を変えた。
「どうして?」
「朝からなんとなく固い顔してたからさ、何かあったのかと思っちゃったよ」
「そんな顔してた?」
 彼女は、やや僕の顔を覗き込むように聞いてくる。
 しまった、踏み込みすぎたか。気持ち悪いと思われる。
「あ、いや、別に僕がそう思ったってだけだから、気にしないで。ほら、ぼく人の顔よく分からないし」
 これは事実だ。今日会った生徒会の面々だって、集会や何かで一度や二度は必ず見ているはずなのに、彼らが誰だか僕にはさっぱり分からなかった。
「何それ」
 彼女はくすくすと笑う。
 よかった、重い空気にならずに済んだ。

 教室に着くと、僕はすぐに鞄を持ってそのまま教室から出ようとする。
 一度教室に入った今帰さんも、僕の後について教室から出てきた。教室には誰もいなかったのに、教室を施錠する様子はない。
「そういえば、教室、施錠しなくていいの?」
「うん。まだ時間早いし」
 僕の疑問に、彼女は平然とそう答える。
 あれぇ? 今帰さんは教室を施錠するといって僕と一緒に来たはずなのに。
 やはり教室の施錠はただの口実で、本当の目的は生徒会メンバーと僕のフォローか。それで生徒会室を抜け出したわけだ。
 さすがリア充。僕には誰かのフォローなんて、発想からして存在しない。それをこうも自然とこなせるなんて。そりゃあ人から好かれるわけだ。だれだって、気の利かない奴より気の利く奴のことを好きだ。
 ただし、本当に気を利かすなら、ぼっちにはフォローは不要ということをここで覚えていただきたい。ぼっちは褒められてもけなされても嫌な気分になる。
「今帰さんは優しいね」
 皮肉か、それとも正直な気持ちかは自分でも分からないが、うっかりそんな言葉を口にしてしまった。
 しまった。そう思ったときにはもう遅い。
「どうして?」
 今帰さんはいつもの微笑を顔に貼り付けたまま、穏やかな声で聞いてくる。
 どうにも、僕にはそれが作り物にしか思えなくて、少し恐ろしく思った。
 思考が瞬間的に恐ろしい速度で回るが、結局僕は適切な言葉を考え付くことが出来ず、黙る。
「またね」
 黙ってる僕を見てどう思ったのか、今帰さんはそう言って踵を返した。
 あああああ。
 彼女はきっと愚図な僕のことを軽蔑したことだろう。
 人から明確に失望を表されるのは本当に傷つく。
 いくら人から馬鹿にされ続けても、この苦痛には一向になれることが無い。だからぼっちなんてやってるのに。
 僕は走って逃げ帰りたい気分だった。
 背後に今帰さんの気配が無ければ、そうしていただろう。
 僕は憂鬱な気分のまま、早歩きで自宅へと逃げ帰った。
 その夜、悔しさのあまりなかなか寝付けなかったことは言うまでもない。

744 ◆wzYAo8XQT.:2015/01/12(月) 00:04:05 ID:nLADQarA
投下終わりです

745雌豚のにおい@774人目:2015/01/12(月) 08:50:06 ID:HPi5PeSA
乙です

746雌豚のにおい@774人目:2015/01/12(月) 12:53:07 ID:bbiOkdfQ
>>744
GJです
今帰さん可愛いなあ

747雌豚のにおい@774人目:2015/01/15(木) 22:09:35 ID:e.0u6/ro
またwikiにあるやつを読み終えてしまった
何周目だろう…

748 ◆wzYAo8XQT.:2015/01/18(日) 01:59:53 ID:LQ5J5NT2
こんばんわ
今帰さんと踊るぼっち人間、第四話「今帰さんと変質者」投下します

投下前に、三話の最後の一行の
 その夜、悔しさのあまりなかなか寝付けなかったことは言うまでもない。
は無かったことにしてください。時系列としては三話直後の夕方から始まるということでお願いします

749今帰さんと変質者 ◆wzYAo8XQT.:2015/01/18(日) 02:00:29 ID:LQ5J5NT2
 帰宅して。
 ポケットから携帯を取り出したとき、何かが落ちた。
 一端が猫みたいな形に曲げられたヘアピンだ。
 なんでこんなものが僕のポケットに?
 いや、どこかで見覚えがある。どこかで最近みたような、見てないような。
 ……いや、見た見た! 見てないようなじゃない! 見てる! 僕見てる! これ、今帰さんの頭についてた奴だ!
 今帰さんはいつも前髪を数本のヘアピンで止めている。これはそのうちの一本だ。
 いつの間に僕のポケットに混入したんだ!?
 普通だったら気づくだろうが、さっきはそれどころじゃなくて気づかなかった。
 どうしよう。探してるだろうな。
 返すべきだろう。
 しかしどうやって弁明すればいいんだ。
 僕がこれから返しに行っても、僕が今帰さんのヘアピンを盗んだようにしか見えないだろう。
 だっていかにも美少女の私物を盗りそうなキャラだし、僕。
 まったく、酷い偏見だ。そういうのは行動力がある奴がやるものだ。僕くらい行動力が無いと無害なもんだ。
 だが、事実は問題ではない。大事なのは印象だ。
 さて、どうする。
 そうだ、今帰さんの机の中にでもいれればいいんだ。
 これなら返すのに顔を合わせる必要は無い。つまり誤解されることも気持ち悪がられることもない。
 少し腑に落ちない面もあるだろうが、それでも置き忘れたのだとすぐに納得してくれるはずだ。
 僕がチキンなせいで彼女はあるはずも無いところを不毛に探す時間が延びてしまうかもしれないと思ってしまって少し気に病やまなくもないけれど、物事をいちいち深刻に考えすぎてしまうのはぼっちの悪い癖だ。
 関わる相手がいないからいちいち小さな事象を深刻視してしまうんだ。何のことは無い。気にすることは無い。本当に無駄な時間を使わせてしまったらごめんなさい。
 
 そうと決まれば行動は早いほうがいい。
 時間が立てばたつほど事態は深刻化し、収集がつかなくなるものだ。
 僕は早速学校に向かった。

 時間はまだ十七時半。教室はまだ施錠されていなかった。
 確か今帰さんの席は教室入り口から右に一つ、後ろに四つ。
 念のため、引き出しの中を見る。
 引き出しの中は空だった。几帳面な彼女は、置き勉したりはしていないらしい。毎日すべての教科書やノートを持ってくるなんて大変だろうに。
 あまりに使用感が無くて、この机は誰にも使われていない机なのではないかと思いそうになる。
 椅子にクッションが置かれていなければ、そう思っていたことだろう。
 さて、もちろん僕は今帰さんの使っているクッションの図柄を知っているわけがない。それどころかクッションを使っていることさえ知らなかった。
 うーん、いまいち今帰さんの机だという確信が持てない。それに、こうまで机が空っぽだと、ヘアピンを置いても不自然なように見えてくる。
 どうしたものか。
 僕は何気なく体を捻り、後ろを見た。
「阿賀……くん……」

 そこには、教室の入り口から呆然と僕を見る今帰さんがいた。

750今帰さんと変質者 ◆wzYAo8XQT.:2015/01/18(日) 02:00:53 ID:LQ5J5NT2

 ……。
 あばばばばばばば。
 あばばばば、今帰さんなんでここに!?
 それに、確かに教室の戸は閉めたはずなのに。なんで開いてるんだ!?
 あばばいやそれより弁明だ!
 弁明しないと、スクールカースト頂点の彼女が告発すれば僕は虫を踏み潰すように悲惨に蹂躙され、そしてあっさりとこの学校から去る破目になってしまう!!
「ち、違うんだ! これにはわけがあって!」
 って何だこの言い訳は!
 これじゃいかにも疚しいことがあって言い訳しているみたいじゃないか!
 実際に少々疚しいところがあるのがなおさらたちが悪い。
 くそ、僕が悪いわけじゃないのに。
「そのヘアピン……」
 彼女は僕の手にある例のヘアピンを見てつぶやく。
 あ、あああああ!!
 違う! 違うんです!!
 何が違うの? と聞かれると困るんだけど、とにかく違うんだ!
 いや、いっそヘアピンがあるからいけないのではないか?
 今これを口の中に放り込んで咀嚼し、飲み込めば証拠は消える。
 死にはしないだろう。よし、やるか!
 僕がヘアピンを飲み込んで隠滅するという最悪の選択を選ぶ直前。
 今帰さんが駆け寄ってきて、僕の手を取った。
 し、しまった!
 終わった。何もかも終わった。
 僕がすべてを諦め、「私が……やりました」とありもしない罪の告白をし、跪いて懺悔をしようとした瞬間、今帰さんから思いも寄らぬ言葉がかけられた。
「阿賀くんが拾ってくれてたんだね」
 彼女はキラキラと輝く目で僕を見る。
 ……え?
「よかった、探してたの。よく私のだって分かったね」
 て、天使だ……! 彼女こそ地上に顕現した女神だ!!
 感動のあまり信仰に目覚めそうだ。これが洗礼って奴か!
 ああ、これが清教徒革命か!
 革命だ! 彼女こそが、この腐った世界を救うことの出来るたった一人の存在なんだ!
 みな、今帰さんを崇めよ! 今帰さんを称えよ! そうすれば世界は平和だ!
 ばんじゃーい! ばんじゃーい!
「あの、阿賀君」
 今帰さんが怪訝な目で僕を見ている。
 い、いかん、衝撃のあまり意識が飛んでいたみたいだ。今だって膝から崩れ落ちてしまいそうである。
「はい、何でしょうか今帰様」
「今帰様!?」
「失礼、イマキエルとお呼びしたほうがよろしかったでしょうか」
「イマキエル!? 何を言っているの阿賀君!?」
 ほんと何を言ってるんだ僕は。
「ごめん。天上界からの電波を受信してさ」
「あ、阿賀君!?」
 今帰さんが困惑している。喜びのあまり調子に乗りすぎた。これ以上気持ち悪いと思われる前にやめておこう。
 ヘアピンは返した。つまりここにきた目的は達成した。
 さて、帰るか。
 そう思ったが、今帰さんが握った手を離してくれない。
 そろそろ手汗が気になってきたから話してください今帰さん。このままでは今帰さんの手が僕の粘液――ではなく手汗でびちゃびちゃになってしまう。
 僕は目に念を篭めて今帰さんを見ていると、今帰さんは唐突にスマホを取り出し、
「あの、阿賀君、ライン、交換しない?」
 と言い出した。

751今帰さんと変質者 ◆wzYAo8XQT.:2015/01/18(日) 02:01:14 ID:LQ5J5NT2
「ら、らららいんですか?」
 リ、リア充だ! ラインってあの淫行やネットいじめ、そして成りすまし詐欺に定評があるあのリア充御用達ツールのことか! 心臓が跳ねる。
「うん。だめ?」
「だ、だめって言うか、無理」

「……どうして?」
 それはまるで地の底から響くような声だった(当社比)。
 いつも明るくて快活な今帰さんから発せられたとは思えないような、暗く、冷たい声。
 僕は激しく動揺した。
 今帰さんがこんな声を出すなんて、まるで自分がとんでもない失敗を犯したような錯覚をさせられる。
 落ち着け。錯覚だ。僕は何も悪くない。
「どどどどどどどうしてっていうか、ほら、僕ガラケーだから」
 険しかった今帰さんの表情が、ふっと緩んだ。
「なーんだ、よかったー」
 本当によかった。
 心臓が止まるかと思った。ちょっと止まったかもしれない(当社比)。
「ねえ、阿賀君ってスマホにしないの? ライン便利だよ。スマホじゃないのって珍しいね。ほら、阿賀君ってゲーム好きでしょ? スマホじゃないと出来ないゲーム沢山あるんじゃないの?」
 怒涛の質問攻めだ。会話処理機能が貧弱なぼっちの脳がハングアップしてしまう。五分くらいフリーズしててもいい?
「あ、うん。ほ、ほら、僕って友達いないから、いらないんだよ」
 そもそも外でゲームをしたかったら携帯ゲーム機でやる。スマホじゃないと出来ないゲームなんでソシャゲーくらいのものだが、ソシャゲーなんてあんなつまらないものやってられるか。あれはソーシャル、すなわち友達がいるからやるものだ。つまりぼっちの僕には関係ない。
 つーか僕、ゲーム好きだなんて一言でも言ったっけ? 偏見だ!
「よかったー。だから阿賀君のID見つからなかったんだねー。私が嫌われてるわけじゃなかったんだー」
 僕の渾身のぼっちジョークはスルーされた。向かうとこ敵無しのジョークなのに。ぼっちだから言う相手いないし今日始めて言ったけど。
 ああそうか、ラインって勝手に知り合いの電話番号とか全部登録されるとか聞いたことある。
 怖いなー。友達いなくてよかったー。
「頑張って探したのに見つからないから泣きそうだったよー」
 ある日突然今帰さんから登録申請をされたら泣き出す男がたくさんいるだろう。
 僕の場合、さらにそれが罰ゲームやなりすましだったというオチがついて一イベントで二度泣ける。お得!
 一石二鳥を地で行く人生だ。
「もしかして阿賀君ってmixiもfacebookもtwitterもやってないの?」
 うん。確かに何一つとしてやってない。
 だけど何で今それを持ち出すんだ。それら全部で僕を探したとでも言うのか。
 まさか。いやまさかな。ないない。
 しかしすごいな一般人は。
 世の中にはこんなにたくさんソーシャルサイトがあるんだ、そのソーシャルサイトの数だけ今帰さんからの登録申請を受け取れるなんて。
 僕の場合、さらにそれが罰ゲームやなりすましだったというオチがついて四イベントで十度泣ける。一イベントにつき二回。さらにもう二回はおまけだ! お得!
 ……なんて恐ろしい世の中なんだ。殺す気か。ぼっちを殺す気か。
 もちろん、実際にぼっちがそれらのツールを使っていることはないわけで、つまり殺される心配もないわけだが。
 あー、ぼっちでよかったー。

752今帰さんと変質者 ◆wzYAo8XQT.:2015/01/18(日) 02:01:34 ID:LQ5J5NT2
「そ、そういうわけだから、じゃあ」
「じゃあさ、メールアドレス教えてよ!」
 今帰さんすごい積極的。ぜんぜんひるまない。
 ぼ、僕ぼっちだからメールアドレスとか持ってないって答えたらどうなっちゃうんだろう。
「電話番号も教えてよ!」
 連続攻撃だ! 抵抗は無意味だということか。それともやはり僕ぼっちだからメールアドレスも電話番号も持っていないという切り替えしを試みるべきか。
「あ、け、携帯ー。携帯忘れちゃったなー」
「どこに? 一緒に取りに行こう?」
 いえ結構です。
「い、家に」
「嘘」
「え?」
「嘘、吐かないでよ」
 今帰さんの声色は再び先ほどのような冷たいものになっていた。
 ふ、ふええええええ。怖いよおおおおおおお。
「私見たんだから。授業中、携帯電話いじってるの。阿賀君、ずっとそうだよね。何やってるの?」
 何って、そりゃ、2ch。
 じゃなくて何で見てるんだ。僕のぼっちステルスは完璧だと思っていたのに。幻のシックスメンだと思っていたのに。僕の神の不在証明(パーフェクトプラン)を見抜くなんて、まさか念能力者!?
 そもそも、僕は一回下校したんだから、家においてきたという可能性は想定しないのか。
 僕がその反論をする前に、彼女は僕のズボンの右ポケットを掴んだ。
 ひえっ。
「ほら、あった」
「あ、ああそうだった、勘違いしてたよ。疲れてるのかな? だから帰って寝るね。お休み」
 そういってそそくさと彼女の脇を通り抜けようとした僕の手を彼女は取ると、そのまま壁に押さえつける。
 いわゆる壁ドン(リア充版)という奴だ。
 僕、こういう意味で使われる壁ドンって嫌いだなー。
 壁ドンとは、もっと憎しみとか怒りの詰まった、殺伐としたものであるべきだ。いやいま僕が味わってるこれも結構殺伐としてるけど。
 青い顔をしながら僕はそう思う。
 壁ドンされるとこんなにどきどきするものなんだね。
 まるで僕は乙女のようだ。無論、錯覚である。
「ねぇ、どうして逃げるの?」
「ぼ、ぼぼぼぼく本当に体調が悪いんだ、ほら、顔が真っ青だろ?」
 むしろ真っ白になってるかもしれない。
「大変。看病しなきゃ」
 今帰さんはそういって、顔を僕の顔に寄せてくる。
 ど、どどどどどんな看病!? まさか今帰家にはキスをすると風邪が治る的な治療法が代々伝わっているの!?
 吐息がかかる距離まで近づくと、今帰さんは空いている方の手を僕の額に当てた。
 なんだ、普通じゃないか。
 僕は内心、少しがっかりする。
「よかった、熱はないね」
 むしろ血の気がうせて寒いくらいだ。
「今帰さんの風邪はどこから? 僕は鼻から」
「CM?」
「製薬会社の回し者なんだ、僕」
「ふふ、私に勧めてどうするの?」
「今帰さんが使ってると分かれば売り上げ爆上げ間違いなしだからね。どの会社も今帰さんの動向を注目しているよ」
「うちの風邪薬、お母さんが買ってくるんだけど、じゃあお母さんも製薬会社の回し者?」
「……僕から言えることは一つだけ。『赤と白のつぶつぶには気をつけろ』」

753今帰さんと変質者 ◆wzYAo8XQT.:2015/01/18(日) 02:02:55 ID:LQ5J5NT2
「ふふっ、古いよ阿賀君っ!」
 今帰さんが盛大に笑い出した。
 今帰さんは優しいな。
「で、携帯は?」
「こちらでございます」
 今帰さんは笑っているときとはうってかわってゴミを見るような目で僕を睨み、僕は即座に携帯を差し出した。
 いや、無理だ。この今帰さん相手に抗うのなんて無理に決まってる。
 怖すぎる。
 すぐに電話番号とアドレスの交換を終える。
 今帰さんはにこにことご機嫌だ。
「これでいつでも連絡できるね」
 すぐに僕の携帯電話が鳴動する。
 メールを受信しており、そこにはよろしくね、と書かれていた。
 お、おう。よろしくねえ。
「そ、それじゃ」
 僕は半ば走るように逃げ出した。
 





 ああ怖かった。
 今帰さんの振る舞い。普段と明らかに違った。
 今帰さん、いったいどうしてしまったんだろう。
 体調が悪いのは僕じゃなくて彼女のほうだ。
 それにあの冷たい目に冷たい声。
 今帰さんがあんな振る舞いを出来るなんて。
 例え今帰さんがどれだけ優等生といえど、やはり人間ということか。
 ああ僕の天使。一体君はどこに行ってしまったんだい。
 携帯電話が鳴動する。
 また僕の天使(過去形)から着信があったのだろう。
 僕はそれを見ることなく、眠りにつくことにした。








 やりすぎだったかな。
 阿賀君、引いちゃったかな。
 大丈夫だよね。
 だって私はヘアピンを盗まれるところだった。
 大事にしていた、猫のヘアピン。
 それも勝手に私の机を漁っていた。
 まるで変質者。
 これは阿賀くんが悪い。私は被害者。
 だから、私は不幸で、罰を受けたんだ。
 もう罰は終わり。これ以上罰を下す必要はない。その上、阿賀君に嫌われるなんて、そんなの不幸すぎる。つりあわないよ。
 だから、この不幸の分を取り返すまでは、大丈夫……だよね?

754 ◆wzYAo8XQT.:2015/01/18(日) 02:03:13 ID:LQ5J5NT2
投下終わります

755雌豚のにおい@774人目:2015/01/18(日) 07:41:17 ID:iXPmATWc
素晴らしい!GJGJ

756雌豚のにおい@774人目:2015/01/19(月) 02:23:23 ID:AWSPyo/o
ぐっじょぶです!

757雌豚のにおい@774人目:2015/01/19(月) 04:59:42 ID:aA2TIKls
今帰さんかわいいなぁ
ぐっじょ!

758雌豚のにおい@774人目:2015/01/20(火) 00:33:04 ID:l.U40rwE
gjです
やっぱりぽけくろさんの書くヒロインは可愛いな

759雌豚のにおい@774人目:2015/01/21(水) 02:22:58 ID:WuHp04Iw
心が洗われるかのよなすばらしいヒロインですねgj

760 ◆wzYAo8XQT.:2015/01/26(月) 00:42:51 ID:BFCGtKkc
こんばんわ
今帰さんと踊るぼっち人間、第五話「今帰さんと勉強会」投下します

761今帰さんと勉強会 ◆wzYAo8XQT.:2015/01/26(月) 00:43:35 ID:BFCGtKkc
 携帯電話が鳴動する。アイコンがメールの受信を告げる。
 またか。
 僕は驚きとも嘆息ともつかぬ息を漏らす。
 普段はちっとも活躍しないその通知が、ここ一週間はひっきりなしだ。
 さらに言えば、その相手が問題だ。
 携帯電話の表示窓には、送信者の名前が表示されている。
 今帰奏――



 僕にはほとんど趣味と言える趣味が無い。
 そもそも人間は通常、人間と関わることで楽しさを感じるように出来ている。
 だから、趣味や娯楽も当然そういった性質を帯びてくる。
 人とやる。人と話す。人と競う。
 それらが出来ない僕は、人と比べてあらゆる活動に対する幸福度が割引されてしまっている。
 何もかもつまらない、というのは少々高二病が過ぎるが、ともかく僕には何かに打ち込むだけの熱意というものが欠如していた。
 何もかもを、ただなんとかやり過ごしているだけ。
 だからかもしれない。
 僕には、今帰さんの僕に対する情熱がさっぱり理解できない。



 またメッセージを受信したことが通知される。
 これで3。
 あんまりひっきりなしにメールが来るので、僕は5件来るごとに一回確認すると決めた。
 僕の反応が鈍かったらメッセージの頻度も下がるかと思ったけど、それがちっともそうじゃないから驚きだ。
 いっそメールに対し自動返信を行うbotでも彼女は満足するんじゃないだろうか。
 全自動阿賀bot。あらゆる発言に対し「あっ」とか「うん」とかで答える。
 ゴミだな。今帰さんに送りつけてやりたい。

 さらに続けて二回携帯が鳴動したので、確認する。
 それらにはクッキーがおいしいとか、ココアがおいしいだとか、宿題をやったかだとか、そういう、取るに足らない、どうでもいいことが書かれていた。
 五件読んでため息を一つ。
 うん。返信の必要なし。
 彼女はたわいもないことをいちいち送ってくる。
 まるで日記代わりだ。
 いや、リア充とはそういうものだろうか。
 
 事実、リア充とはどうでもいいような情報をいちいち共有しているものだ。
 同じ教室にいる僕より、教室も学校も違うリア充のほうが、今日一日僕のクラスで起こった出来事やらについて詳しく知っているだろう。
 どんな情報もどんな感情も共有する。リア充は僕のように、しょうもないことをいちいち恥じて隠したりしない。
 自らを偽るところが無いというのはリア充としての一種の条件であり才能だろう。
 僕なんてたいしたことのないことをいちいち恥じ、そしてその結果、僕の人生はたいした経験もしてないのにも関わらず人には言えないことだらけだ。
 恥の多い生涯を送ってきました、ははは。
 それにしても、夜なのにクッキー食べてココア飲んでって、太るよ、今帰さん。


――――――――――――――――――――――――――


 英語の授業では、毎時間、授業開始時に英単語の小テストが課される。
 正解率が六割を切ると、十分程度の補習と再テストとなってしまう。
 僕はこれの合格率がすこぶる悪かった。

762今帰さんと勉強会 ◆wzYAo8XQT.:2015/01/26(月) 00:43:59 ID:BFCGtKkc
 大体、日本人である僕がどうして英語に苦しめられなければならないんだ。
 鬼畜米英め。これも全部、戦争に負けたのが悪い。
 ああ、すべての英語圏の人間に日本語も必須科目として強制的に学習させるという嫌がらせを課してやりたい。
 かといって僕は古典も嫌いだ。
 要するに、単語の暗記が苦手なのだ。
 あの国民的人気ゲームタイトルである最後の物語の最新作をまともにプレイしている人なんて尊敬に値する。
 彼らはいっそ専門用語を覚えることそのものが楽しみなんじゃないかと勘ぐりたくなるくらいだ。

 小テストの自己採点を終え、ぼんやりと授業を受けていると、携帯が振動する。
 携帯の画面を見ると、メールが届いていた。
『テストどうだった?』
 それは今帰さんからのメッセージだった。
 しまった、うっかり見てしまった。
 今帰さんは優等生らしく、怒涛のメールラッシュも授業中には基本的に止んでいた。お陰で完全に油断していた。
 斜め後ろに視線をやると、今帰さんがこっちを見ている。
 周りに気づかれないように、胸の前で小さく手を振っている。
 見られた。
 これは無視するわけにもいくまい。
 ため息を吐きながら、短い文を返す。ここで返信をしないのはさすがにあからさま過ぎる。
『またダメ』
 すぐに返答が来る。
『よく再テストになっているの?』
 今帰さんはこの小テストで補習や再テストになっているのを一度も見たことが無い。
 さすが成績優秀。僕とは違う。
 僕も決して劣等生ではないが、こつこつと日ごろの積み重ねがものをいう分野にはめっぽう弱い。
 世の中には、好きなこと以外には楽しめない結果根暗扱いを受ける人と、世の中の何もかもを楽しめない結果根暗扱いを受ける人の二種類がいる。
 僕は後者だ。
 まさに無気力無為無産と悪い根暗を絵に描いたような僕は、その悪さを遺憾なく発揮し、努力が滅法苦手なのだった。
 僕はとぼける。
『STAP細胞の作成成功率と同じくらい』
 つまり本人的にはできてることになっていますよってこと。
『それなら私と一緒に勉強しようよ』
 さすがリア充。ぐいぐい来るね。
 この距離の詰め方は根暗ぼっちにはとても真似できない。
 一見、雑に見えるその距離の詰め方は、度重なる経験とそれに基づく自信に裏打ちされている。
 それを物事の表面しか見れない僕のような人間が真似すると大惨事が起こる。
 だから僕は決して自分から無用に距離をつめるような愚行は犯さない。
『あ、大丈夫です』
 しかし何をとち狂ったか、彼女からの返信は、
『じゃあ今日からはじめよ』
 だった。
『いや大丈夫って都合がつくっていう意味のほうの大丈夫じゃなくて別にいらないって意味の大丈夫のほうなんですが大丈夫ですか』
『私も予定ないから放課後すぐね』
 だめだ、話が通じない。
 所詮今帰さんもリア充か。
 リア充は人の話を聞かないからな。


――――――――――――――――――――――――

763今帰さんと勉強会 ◆wzYAo8XQT.:2015/01/26(月) 00:45:04 ID:BFCGtKkc


 僕は途方に暮れていた。
「生徒会室?」
 放課後、まだ皆が帰る準備も終えていないころに教室を出た僕は、今帰さんに呼び止められ、そして勉強場所が生徒会室だと告げられた。
 彼女は僕と並んで歩きだす。
「そう。今日は何も予定ないから」
「い、いいの? 僕、生徒会に縁もゆかりもないよ」
「いいよ。はっきり言って、生徒会員の遊び場みたいなものだから」
 困惑する僕に、彼女はあっけらかんと答える。
 マジかよ。
 学校の一室を勝手に私物化するとか、権力の座に着いた人間がろくでもないのはどこのどの組織でも同じなんだな。
「いいよ、気が引けるし、それに、勉強なんて自分でやるから」
「それで再テストでしょ? いいからいいから」
 よくないでち。

 しかし今帰さんとそんなやり取りをしていたらもうすでに生徒会室前についていた。
「失礼します」
 今帰さんは戸を開ける。
 今帰さんは生徒会室に入っていく。今帰さんの注意が僕から離れた。あれ? これ僕自由じゃないか?
 よし、帰ろう。
 僕のその行動を見透かしたように、今帰さんの手が伸びてきて、僕に手首を掴む。
 そして抗うと手首が捻られるような絶妙な角度を維持したまま、僕を引き込んでくる。
「し、失礼します」
 今帰さんはなんでもないような涼しい顔でニコニコしている。すげえ。
「お、けぱぁ君じゃん。おいすー」
 生徒会室には生徒会メンバーが一人だけいて(確か二年)、僕たちを見て挨拶してくる。
 やめろその名称を定着させるな。
 僕は無難に曖昧な笑みを返しておいた。
 僕は腕をつかまれたまま、長机の一つに誘導される。なんということだ。一切抗えない。この細くて長い芸術品のような指のどこにそんな力があるというのだ。美しいものは脆いと相場が決まっているはずなのに。
「今帰さんって格闘技、なんかやってる?」
「え、ないよー? どうしたの急に」
 なるほど。優れた生物は経験なんてなくても何をやらせてもうまくやるんだな。
 虎は生まれながらにして虎という奴か。
 そして今帰さんは当然といわんばかりに僕の隣に腰かけた。
 僕のパーソナルスペースに入ってこないで欲しい。僕の円は半径4メートル(つーかこれが限界)。この内側に入ってきたら真っ二つになる。僕の精神が、だけれど。
 僕は諦めて、教科書とノートを取り出し、勉強をすることにした。
「阿賀君、どの問題を間違えたの?」
「えっと、四問目と八問目以降全部かな」
「うーん、この間違え方は文章を理解できてないねー。この文があるでしょ」
 今帰さんの白い指が教科書の一節を指す。
 そのとき、ふと反対側の手を見た。
 手に傷があるのが見えた。
 あれはもしかして――
「どうしたの阿賀君?」
 気づくと、今帰さんは息がかかるほどの距離で僕の顔を覗き込んでいる。
 近っ! 近いよ今帰さん!
 いくら僕のパーソナルスペースが広いからといって、今帰さんのそれは狭すぎる。これもリア充だからか? 他人に対する抵抗って奴が無いのか?
 僕のATフィールドが侵食される! 最強の拒絶タイプであるこの僕が!
「あ、カナッチ、もしかして先生やってあげてるん? やさしーい」
 生徒会の人が声をかけてきた。助かった! やさしーい!

764今帰さんと勉強会 ◆wzYAo8XQT.:2015/01/26(月) 00:46:44 ID:BFCGtKkc
「そんなことないですよー。人に教えるのって勉強になりますし」
「いやー、カナッチはホントよく出来た子だなー。嫁に欲しいよー」
「もう、長谷川さんはみんなにそんなこと言って。本気にする子が出ますよ」
 なるほど、生徒会の彼女は長谷川というらしい。確かに女性ながら、目鼻立ちがはっきりとしており、身長もそこそこあって美人ではあるが女の子にもてそうな感じだ。
 それとは別に、僕は嫁、という単語に内心おおいに動揺していた。
 思い出した。この長谷川という人物、このあいだ僕と今帰さんを夫婦かとはやし立てた人だ。
 なるほど、こういうことを普段から言う人だったのか。
 嫁、という単語に長谷川さんはまったく気にしている様子はないし、それは今帰さんも同様だ。
 僕だけか。
 僕だけが、些細なことをいつまでも気にして大慌てしている。
 リア充にとっては取るに足らない、記憶にも残らないレベルのことなのに。
 
「つれないなー。私はカナッチ一筋だよ?」
 その言葉も酷くいいなれた様子だった。
 彼女が男に生まれていたらさぞかし多くの女性をはべらせていたことだろう。危ないところだった。
 今帰さんは相変わらずニコニコと、しかししっかりと釘を刺す。
「女鹿沢さんにいいますよ?」
 今帰さんの口調の機微について、ようやく少し分かるようになってきた。
 いつもよりやや固い調子のその声は、彼女が結構マジなことを示している。
「ごめん、私が悪かったからそれだけはやめて」
 長谷川さんは手を合わせて頭を下げた。
 二人とも、とても楽しそうだ。僕を除いて。

 ああ、この疎外感。
 どうして僕は放課後までこんなものを味わわなきゃならないんだ。
 今帰さんは天使なのではないのか。
 ならばどうして僕に苦しみを与える。
 いや、天の神は地上の民草の望むものを与える訳ではない。
 つまりこれこそが主のご意思でありお導きであり、僕が苦痛を感じているということこそが、今帰さんが天使で女神だということの証明なのではないだろうか。
 ……アホか。
 早く帰りたい。

「じゃあ先帰るから、鍵よろしくね」
 三十分ほど書類をいじった後、先輩は帰っていった。
 そんなに集中している様子も無かったし、多分時間つぶしをしていたんだろう。
 そして僕と今帰さんは二人っきりになってしまった。
 優等生で学年一、いやあるいは世界一の美少女と密室に二人っきりという状況を得たにも関わらず、なってしまった、なんてネガディブな表現を用いるのは本来なら適切とはいえないだろう。
 だけど実際、僕の気分は憂鬱だった。
 決して手の届かない高級品(高価な壷とか)を見せびらかされて、しかもその壷が今にも落ちそうな場所に配置されているのを柵の向こうから見ている。
 そんな不愉快感と恐怖が同居したような感覚。
 最近、というほど以前の今帰さんを詳しく知っていたわけではないけど、あの夕方会話を交わした以来、僕には今帰さんの行動がさっぱり分からない。

765今帰さんと勉強会 ◆wzYAo8XQT.:2015/01/26(月) 00:47:08 ID:BFCGtKkc
 以前は、今帰さんは穏やかで優しく、明るくて気がつく、と思っていたんだけど、最近の印象だけで述べるなら、破天荒で意味深、強引で予測不能だ。
 やめろよな。僕みたいなぼっちは、予測不能ってことが一番怖いんだ。
 ぼっちには突発的不幸に見舞われたときに頼れる友人がいないからね。

「ここ、勉強はかどるでしょ。来てよかった?」
 二人並んで黙々と勉強をしていたのだが、不意に今帰さんが話しかけてきた。
 正直言って、ちっともはかどらない。
 今帰さんの視線が、動作が、体温が、彼女の全てが気になって気になって、まったく集中できない。
 だから僕は、質問に答えない。
「今帰さんって結構強引なんだね」
「ひどいなー。私は君のためを思ってやったのに」
 心配無用。僕のための最善は常に僕が考えている。ぼっちとは自己で完結しているものだからだ。ただ独り立つもの――だからこの力(ぼっち力)を『スタンド』、とでも呼ぼうか。
 残念ながら現実ではスタンド使いは引かれあわない。ぼっちはぼっちのままだ。
「い、いや非難するつもりじゃなかったんだ。ただ、普段の今帰さんって軟らかいというか、あまりこういう行動に出るイメージがなかったものだから」
 彼女はおもむろに立ち上がる。
 怒らせてしまったかな?
 僕は彼女のほうを見る。
 彼女は椅子を避けて直立したかと思うと、そのまま前屈をした。
 ぺたーっと上体が脚につく。
 二つ折りの携帯電話を思い出す。
 隣に僕のガラケーを並べてみたい。
「どう、軟らかいでしょ。すごい?」
 すごい。
 何がすごいって、彼女は結構スカート長めなんだけど、それでもこんな姿勢になるとパンツが見えそうになるってことだ。
「なんだか、騙し絵を見てるような気分になってきたよ。腰の骨、どうなってんのそれ」
「……考えたことなかった。何か不安になってきたよ」
 彼女は体を伸ばし、腰を捻る。
 ああ、パンツ見えなかったな。
 別にそんなにパンツに強い執着を抱いているわけではない。
 それでも、目の前に見えそうなパンツがあれば釘付けになってしまうのが男というものだ。
「阿賀くんも軟らかそうだよね」
「僕は固いよ、がっちがちだよ。石かな?」
 突然腰を掴まれる。
「ひぇあ!?」
「んふふ、結構柔らかいけどなー」
 今帰さんはいたずらっぽく笑ってこっちを見ている。
「あ、当たり前だよ! 気を抜いているときも腰ががっちがちの人がいたら病院紹介してあげたほうが良いよ!」
「阿賀くんは石じゃなくて人でしたー」
「知ってるよ!」
「怒らないでよ。私の腰も触っても良いからさ」
「えっ」
「だから、私の……」
「えっ」
「だから……」
「えっ」
「……」
「えっ」
 部屋に気まずい沈黙が流れた。
 よし、何とか誤魔化せたようだ。おかしな展開に転ぶのを回避できた。空気が最悪になったのは些細な問題である。
 なぜなら、ぼっちは空気を気にしたりなどしないからだ。
「あ、この単語のスペル間違ってる」
 沈黙を誤魔化すように今帰さんが指摘する。
 その言葉で、僕は自分が英単語の勉強をしていたんだということを思い出した。

766今帰さんと勉強会 ◆wzYAo8XQT.:2015/01/26(月) 00:47:53 ID:BFCGtKkc
「え、どこ」
「これ。aじゃなくてe」
「あ、ほんとだ」
 ちくしょう、アメリカ人って奴は何を考えてこんな発音と表記がまるで違う言語を使っているんだ。古き時代のすばらしき英知の結晶である古代ギリシャ語を見習え。もちろん、僕に古代ギリシャ語など分かるはずもないが。
 ふと今帰さんの顔を見る。
 僕に凝視されていることに気づいた今帰さんは羞恥で真っ赤に染まっていく。可愛い。
「もう、意地悪!!」
 わき腹を小突かれる。
「ひゃあん!!」
 今帰さんが僕の奇声を聞いて不敵な笑みを浮かべる。
「今度さっきみたいなことしたら、わき腹小突き倒すからね」
「やめてください。僕のわき腹が使い物にならなくなってしまいます」
「それってどんな状態?」
「つつかれると変な声出しちゃう感じかな」
「じゃあもうつつき放題だね」
 あれ、おかしいな。
「責任、取ってもらうよ」
「どうやったらいいの?」
「そうだなあ……代わりのわき腹提供してもらうとか」
「難しいねそれ。臓器密売より難しそう」
 わき腹を商品リストに加えている密売業者はいないだろうな。それをやったらもはや肉屋だ。
「だから不用意につついちゃダメなんだ」
「私のわき腹でよければ、代わりにあげるよ」
「どうやってもらったらいいのさ」
「引きちぎってみる?」
 彼女はそう言ってわき腹を示す。
 制服の向こうに、腰の艶かしい曲線が見える。
 まったく、さっきから彼女は不用意すぎる。
 自覚してるんだか無自覚なんだか知れないけれど、あまりそういう真似をするのはよくない。ぼっちは刺激に弱いからだ。繊細な生き物なんだ。だから優しくしてください。
「わき腹ってのはそんな簡単に取替えが利くようなものじゃないんだ。だからもっと大事にすべきだよ」
「ふーん」
 僕の冗談に対しては割りとどうでもよさそうだったが、それはそれとして今帰さんは上機嫌だった。

 こうして、僕と今帰さんの二人っきりの英語勉強会(ほとんど勉強しなかった会)は終わった。
 いったいなんだったんだ。
 酷く疲れた。
 僕は首をかしげながら家路に着いた。


――――――――――――――――――――


 楽しい。
 彼には何を言われても何をやられてもまったく嫌じゃない。
 こんなに人に対して好意的に思ったのなんて、何年ぶりだろう。
 彼には気兼ねなく近づけるし、何でも話せる。
 彼のことを考えているだけで、体が宙に浮かぶようだ。
 ただ彼が隣にいるだけで気分が高揚するし、幸せな気持ちになる。

 彼は、私のことをどう思っているのだろうか。
 英語の成績が振るわなくて困っていたところに、なんと私から勉強しようと言ってきてくれたのだ。嫌なわけが無い。
 むしろ大歓迎で感謝しているはず。
 ああ、私はなんて親切なんだろう!
 彼からしたら私はまるで天使か女神だろう!
 そう、こんなに私が親切にしてあげているんだから、彼は私のことを好きになっているに違いない!
 いや、今頃私のことが大好きで大好きで、夜も眠れないかもしれない!
 大丈夫、大丈夫。
 だから……いいよね?
 私は彼のことを想いながら、枕を抱いて眠った。

767 ◆wzYAo8XQT.:2015/01/26(月) 00:48:14 ID:BFCGtKkc
投下終わります

768雌豚のにおい@774人目:2015/01/26(月) 07:13:46 ID:URDlPxgQ
>>767
GJ
二人のズレっぷりが面白いw
どうなってしまうの

769雌豚のにおい@774人目:2015/01/26(月) 16:59:55 ID:iYPq/XYw
おつおつ
楽しませて貰ってます

770雌豚のにおい@774人目:2015/01/27(火) 22:25:56 ID:PZu4Re4c
ぐっじょぶです!

771雌豚のにおい@774人目:2015/02/03(火) 01:12:18 ID:NB07juMg
今帰さんと踊るぼっち人間
展開気になって毎日スレ確認してるわw

772 ◆wzYAo8XQT.:2015/02/08(日) 22:58:51 ID:IwYaSxW2
GJありがとうございます。毎日見てニヤニヤしてます
忙しかったりしてなかなか筆は進みませんが、励みになります
今帰さんと踊るぼっち人間、第六話「今帰さんと下校」投下します

773今帰さんと下校 ◆wzYAo8XQT.:2015/02/08(日) 22:59:30 ID:IwYaSxW2
「阿賀、お前最近成績いいな」
 英語教師が小テストを返却しながら、そんな言葉をかけてきた。
 確かに、ここ数回の小テストで補修になることは一度も無かった。
 これもみんな今帰さんのお陰だ。
 無論、勉強会が功を奏したのではない。
 勉強会を回避するために僕が予習をちゃんとやるようになったからだ。
 すごいよ今帰さん。僕みたいな怠け者を一発で勤勉な優等生に変えてしまうなんて。
 この今帰式メソッドを全国の学校に導入すべきだ。そうすれば日本は世界に名だたる頭脳立国となれるだろう。
『おめでとー。今回も合格だね』
 早速、そんなメールが飛んでくる。
『ありがとう。今帰さんのお陰だよ』
 心にも無い返答をする。
『じゃあ今日勉強会する?』
 いえ、私は遠慮しておきます。
 くそう、どうしてそんな結論に至るんだ。安定して合格するなら勉強会なんてもう不要だろう!
 不用意に今帰さんのお陰だなんていうんじゃなかった。なんて素直なんだ今帰さん! 可愛いよ! 天使だよ!
 さて、どうする。
 ここで『いや、合格したからいいよ』と返すと間違いなく勉強会開催の流れになってしまう。原理はよく分からないがそうなってしまうということは学習済みだ。
 というのもここ数ヶ月、勉強会は英語に限らず勉強をする週に数回のペースで開催される固定イベントと化しており、そのたびに僕は勉強会を回避するために苦心してきたからだ。
 ここは破道の十六、『無返答』でもやってみようか。
 相手との関係を破る技である『破道』の中でも、これは僕が最も得意とする破道である。
 これを鬼道(鬼畜のような行い)の六十三、『ごめーん、携帯の電池キレチャッテー』と併用すれば、大抵の相手を封殺することが出来る。
 俺のガラケーとこの鬼道は相性が悪いが、それでも十分力押しできる火力があるはずだ。
 よし、そうと決まれば携帯の電源OFF。後のことは知らね。
 
 
 
 そして、僕は今日も生徒会室にいた。
 どうしてこうなった。
 ホームルームを終えるやいなや教室を出ようとした僕の肩に、今帰さんの手がかけられた。
「阿賀君、悪いんだけど、資料運ぶの手伝ってくれないかな?」
 笑顔の今帰さん。今帰さんが指差す先には山盛りの資料。
 ま、まさかこれば縛道の四、『頼みごとがあるんだけどー』だと!?
 迂闊だった。今帰さんがまさかこれほどの縛道の使い手だったなんて。
 侮っていた。僕がぼっちの達人なら、今帰さんはリア充の達人!
 リア充は人を巻き込むのが大得意だ。ならばこれくらいの縛道は当然使えるものと理解しておくべきだった。
 駄目だ。断れるわけが無い。
 ここで僕が断ったらつるし上げ確定だ。
 僕はぼっちだ。いじめられっこじゃない。その線は明確に引かなければならない。
 ここで断るのは、その線を踏み越えることを意味する。
 僕に勝利の目は無い。
 僕はおとなしく諦めた。

774今帰さんと下校 ◆wzYAo8XQT.:2015/02/08(日) 23:00:03 ID:IwYaSxW2
「ありがとう、手伝ってくれて」
「イイヨゼンゼンドウセヒマダカラサー」
 建前すら片言になってしまう。
 いやこれはむしろ好都合。僕の帰りたいオーラを気づいてくれ! 頼む!
「じゃあせっかくだから勉強会やろうか」
 今帰さんはとっても鈍いみたいだ。天使だからな。仕方ないね。天使だからね。
 僕はすっかり定位置となった今帰さんの左隣に腰を下ろす。
 というか、離れて座っても、「教えづらい」との理由の元に隣に来てしまうのだ。僕は無駄な抵抗が嫌いだ。席を離す作戦は早々に諦めることにした。
 今帰さんにとっては教えやすいのかもしれないけれど、僕にとっては今帰さんが隣にいるというだけでちっとも集中できない。

 そして今日も勉強会という名目の何かが終わり、下校する。

「そういえば阿賀君、明日提出の数学の宿題プリントやった? 勉強会でやってなかったけど」
「あれは家でやるよ」
 今帰さんが隣にいると集中できないし。
 鞄の中を漁り、プリントを示そうとするが、プリントが見当たらない。
「あれ、おかしいな……」
「もしかして、教室の机の中に忘れたんじゃない?」
 そんな馬鹿な。確かにプリントを鞄に突っ込んだ記憶がある。やはり僕はアルツハイマーなのか? いや突っ込んだという偽りの事実を覚えているんだから逆アルツハイマーか。
「これから取りに行こうよ。そしたら一緒に帰れるし」
 い、一緒に帰るだとおおおおおおおおおお!?
「あ、明日でいいよ明日で」
「提出明日だよ?」
「明日でいいよ明日で」
「話聞いてた?」
 今まで今帰さんは教室の施錠をしたり生徒会の活動報告を教師にしたりするので、勉強会の後、僕たちは別々に帰っていた。
 ほんの数分時間がかかるからってそれに付き合ってやらずに帰るって時点で最低の人間だろと思われそうなものだが、今帰さんは一向に気にする様子は無い。
 今帰さんは人に迷惑をかけることを嫌うからな。例え数分でも人を待たせることが許せないらしい。
 ちなみに、僕に対しての強制勉強会をはじめとする一連のもろもろは迷惑をかけているとは思っていないらしい。
 そういうわけで、今まで一緒に下校することは回避できていた。
 さてどうする。今までは教室の施錠→先生への報告で大体十分はかかっていた。
 しかし教室の施錠までのステップを省けばあとかかる時間は五分足らず。
 ほんの五分も待てないから帰るっていうのはなかなかクズリティが高い。いや十分も五分も何が違うんだ。何をいまさら。
「はい。これ教室の鍵」
「あ、うん」
 僕は差し出されたそれを条件反射で受け取ってしまう。
「じゃあ、よろしくね」
 彼女はそう言いながら、生徒会室を施錠し、手を振って教員室のほうへと向かう。
 今帰さんの背中を見送りながら、僕はしばし何が起こったのか理解しかねていた。そして気づく。
 しまった! はめられた!
 これならば待ち時間はゼロ! 鬼道の四、「時間がかかるから先帰るわ」という手は使えない!
 しかも鍵を渡された以上、施錠したのち今帰さんへ返却せざるを得ない!
 流れるような美しいコンボだ!
 はあ。……アホなこと考えてないでさっさと教室行こう。
 もう今帰さんは見えなくなっていた。

775今帰さんと下校 ◆wzYAo8XQT.:2015/02/08(日) 23:00:38 ID:IwYaSxW2
 
 
 
 僕が鍵を返しに職員室前まで行くと、今帰さんが職員室の前で待っていた。
「お待たせ!」
 それは待たせた僕のほうの台詞なんじゃない?
「これ、鍵」
「ありがとー! 返してくるね」
 彼女はそう言って職員室に入ると、十秒足らずで出てきた。
 たった十秒では逃げられない。全力ダッシュしてれば逃げられただろうけど、それは流石に。
 それに万が一今帰さんもダッシュで追いかけてきたら怖すぎるし。
 さて、この流れで一緒に帰らないのはさすがに不自然だ。
 しかも僕は今帰さんを嫌いではない。いや一緒に帰れるのはめっちゃ嬉しいのだ。ただそれ以上に憂鬱なだけで。
「僕、家こっちだから」
 校門前まで来た僕はそう言って歩き出す。今帰さんと一緒の下校を回避する術は、もはや今帰さんの家が反対方向であることに賭けることしかない。
「へえ。家、どのへんなの?」
 彼女は何の逡巡も無く当然のようについてきた。
 うすうすそうなる気はしていたけども、やっぱり同じ方向なんだね今帰さん。
「ちょっと行ったところに川あるでしょ。あの川沿いに十五分くらい」
「へぇ、徒歩圏内なんだ。阿賀君ってこのあたりの出身なんだね」
「今帰さんは? 電車通学?」
「ううん。私も徒歩。阿賀君、家近いけど普段家で何やってるの?」
「え?」
「だって部活も入ってないし、家も近いんだったらすごく時間あるよね。何やってるの?」
 いや、何って、2ch。
 じゃなくて、どうしてそんな風に聞かれるんだ?
 部活をやってなくて、家も近いからって暇人のように言われるのは心外である。
 大体、部活をやってる奴ってつまり好きでやってんだろ?
 っていうことは暇みたいなものじゃないか。暇人じゃないか。
「いやー。別に何もやってないよ。漫画読んだり、テレビ見たり、ネットやったりしたらそれで一日終わっちゃうよ」
 そうあっという間に日々が終わっていく。不毛に、何の成長も無いままに。
 皆はどんどん成長したり、かけがえの無い友人や思い出を作ったりしている間に。
 ……いいんだ。僕はこれでいい。
 誰の人生にも輝かしい幻想が必要なわけではない。
 飾り気の無い、荒涼たる人生もそれはそれでよいものだ。
 ……まあなんの成長も無いのはヤバイけどね!
 リア充が言うような成長(笑)は要らないが、ぼっちは一人で生きてゆくのだ、完全に自活できるだけの能力を身に着けておく必要がある。
「へえ。阿賀君って結構オタク?」
 し、ししし失敬な! ぼ、ぼぼぼぼきをオタク呼ばわりなんて!
「漫画って言ってもジャンプとかだよ。ほら、努力とか友情とか勝利とか、最高だよね」
 努力も友情も勝利も、何一つとして僕の人生には無いものだ。
 別に努力も友情も勝利も要らないが、幸福くらいは欲しいものだ。
「ワンピース私も好きだよ!」
 今帰さんは屈託無く答える。
 ふ、ジャンプと聞いて真っ先に思い浮かぶのがワンピースとは、これだからリア充は。
 数々の打ち切り漫画を愛し、クソ漫画愛好家の称号をほしいままにする(脳内で)僕には片腹痛い。
 まあ現実でクソ漫画について語り合える機会は無いだろう。人から愛されないから打ち切られるのだから。

776今帰さんと下校 ◆wzYAo8XQT.:2015/02/08(日) 23:05:38 ID:IwYaSxW2
 僕の人生がクソ漫画でなくてよかった。
 いや、この場合、僕の人生がジャンプで連載されてなくてよかったというべきか。なぜなら、僕の人生は紛れも無くクソだ。漫画ではないだけで。
「そういえば、今帰さんは普段何やってるの?」
「私もたいしたことはしてないよ。テレビみたり、勉強したり、お菓子作ったり」
 そういえばお菓子の写メが送られてきたりしたっけ。
「さすが今帰さん」
「……なんか阿賀君、言ってることがテキトーじゃない?」
 今帰さんはねめつけるようにこちらを見る。
「い、いいいやそんなことないよ。僕はいつでも正直さ!」
 これはあながち間違いではない。
 ぼっちは自分の気持ちにとても素直だ。だからやりたくも無いことをやらず、人に迎合しないのだから。
「今度阿賀君にもお菓子作ってあげるね!」
「いいよそんな。悪いし」
「人にお菓子作るのって結構楽しいんだよ?」
 なんだこの子は。天使か。
 誰かに何かをしてあげることで喜びを感じるなんて。どういう思考回路してんだ。
「申し訳なくってとても受け取れないよ」
「……阿賀君って自分を卑下するようで、結構上から人を見てるよね」
「とんでもございません! 私のような下男が今帰様のお手を煩わせるなど、とてもとても」
 僕は僕に出来る最大限のへつらいの笑みを浮かべ手を揉む。
「何それ。じゃあ毒見でいいよ。まさか今帰様の命令に逆らったりしないよね? 私のために死ねるなら光栄だよね」
 何を食わす気だ。
「ごめん。危なくない普通のお菓子をお願いします」
「ふふ、了解」

 他愛の無い会話をしているうちに、僕の家が近づいてきた。
 なんとなく。
 なんとなくだが、家の場所を特定されたくない。
 しかし寄り道しても、今帰さんには僕が帰宅するのをずっと待ちそうな気配がある。
「阿賀君の家ってもうすぐ?」
 そんなことを考えていたからだろうか、今帰さんはまさに僕の考えを突くような質問をしてきた。
「そういえば、今帰さんの家はどこなの?」
 質問を質問で返すのは人として最低の行いである。
 が、僕の質問で今帰さんが固まった。
 その顔に薄い微笑を貼り付けたまま、一言も話さない。
「今帰さん?」
「あ、あの、わたし用があるから帰るね」
 今帰さんは踵を返すと、早足で、いやもはやほとんど走るように消えていった。
 今も下校中だと思うんだけど。
 
 結局、今帰さんはどのへんに住んでるんだ?
 
 
――――――――――――――――――――――――
 
 
 どうしよう。つい逃げてきちゃった。
 変に思われたかな。思われたよね。

 阿賀君の家、行きたかったな。
 どんなお家なのかな。どんな部屋なのかな。
 阿賀君はその部屋で普段何をやってるんだろ。

 でも行けなかった。
 だってまさか家が反対方向だなんて答えられなかったから。
 素直に答えたら一緒に帰れなかっただろうから。
 阿賀君は決して人に心を許さない。
 親しげにしていても、阿賀君は本当は親しさなんてまるで感じていない。
 私は、阿賀君にどう思われているんだろう。
 迷惑なのかな。阿賀君は本当は私のこと嫌いなのかな。
 寝付けずに私はベッドから起き上がる。
 そうだ、お菓子を作ろう。
 阿賀君に上げるお菓子。
 何かをしている間だけは、物事を深く考えずに済む。
 阿賀君。嫌いならはっきりそう言ってよ。
 本当に嫌いだって言われたらどうするのか。
 そのことについて一切考えていないということに、私はまったく気がつかないまま、軽量カップを取り出し、お菓子作りを開始した。

777 ◆wzYAo8XQT.:2015/02/08(日) 23:06:27 ID:IwYaSxW2
投下終わります
どんどん当初の予定より長くなる……

778雌豚のにおい@774人目:2015/02/08(日) 23:28:59 ID:CqUcmDkM
お!来てた!gj!

779雌豚のにおい@774人目:2015/02/09(月) 01:25:44 ID:Ho4WAZhc
次も楽しみだ〜
GJ!

780雌豚のにおい@774人目:2015/02/09(月) 02:21:03 ID:Eh0yon/2
ぐっじょぶです!

781雌豚のにおい@774人目:2015/02/09(月) 02:58:23 ID:DKoFxClA
むしろ長く長く続けて欲しいgj

782雌豚のにおい@774人目:2015/02/09(月) 12:43:56 ID:eUIS8p6o
GJ

783雌豚のにおい@774人目:2015/02/09(月) 13:35:19 ID:4rXGmoRU
面白いねえ
次回更新が楽しみですわ

784雌豚のにおい@774人目:2015/02/09(月) 19:31:36 ID:94J.wfsQ
素晴らしかったです
この主人公に湧く親近感。よく知らない人に家を知られたくない気持ち、分かるなあ…
次回も今帰さんの攻勢を楽しみにしています

785雌豚のにおい@774人目:2015/02/11(水) 10:35:58 ID:bvTXRwyU
今北さんと〜ってぽけもん黒の作者さんですよね?
内容がとても面白いです、いつも更新楽しみにしています頑張ってください
自分も何か書こうかなしかしこのスレに投下出来る様な文才もちじゃないし・・・

786雌豚のにおい@774人目:2015/02/11(水) 15:03:20 ID:EBIZ83PM
文才なんて後からついて来る
とりあえず書いてみな

787雌豚のにおい@774人目:2015/02/12(木) 02:49:04 ID:sukn5A0U
あまりにもヤンデレ成分が足りないからなろうに求めにいったら、乙女ゲーか、ハーレムものしか無くて絶望して、保管庫の作品をまた見るという毎日をここ3年ずっと送ってる気がする。(要約おすすめ教えてくだい)

788雌豚のにおい@774人目:2015/02/12(木) 11:55:59 ID:EjAC1ens
>>787
俺は5年だ
因みにサイエンティストの危険な研究とヤンデレの娘さん 朱里の巻をおすすめするよ

789雌豚のにおい@774人目:2015/02/12(木) 23:48:26 ID:vzi62q6U
>>788
おう、久しぶりだな風見

790雌豚のにおい@774人目:2015/02/13(金) 03:06:48 ID:vw/bWVFU
>>787
ほととぎすが至高すぎてなぁ。未完なのが悔やまれる。
未だにあれの続きが投稿されるのを夢見てここを覗きに来てる節があるぐらいだ。

791雌豚のにおい@774人目:2015/02/13(金) 19:30:08 ID:z5ly670w
>>787
サトリビトは未完だがおすすめできる

792雌豚のにおい@774人目:2015/02/13(金) 19:46:17 ID:sFfl1ZkY
依存型ヤンデレの恐怖のひと、ノクターンで新しいヤンデレ物書いてたぞ
まだ完結してないけどかなり面白いわ

793雌豚のにおい@774人目:2015/02/13(金) 21:20:52 ID:Xiu/Ia/I
>>792
猫とワルツをの作者の人か
あの人のヤンデレは外れないよね

794雌豚のにおい@774人目:2015/02/13(金) 22:07:45 ID:uFh9gDgc
もうちょいで非リア充にとってはどうでもいい日が来るな

795雌豚のにおい@774人目:2015/02/15(日) 22:28:41 ID:Nqj5OZEI
色々おすすめ書いていただいて嬉しいんですが、保管庫の作品は全部なめ尽くすように読んじゃってます………

796 ◆wzYAo8XQT.:2015/02/15(日) 23:10:28 ID:fcL8yYcU
>>785
はい、ぽけもん黒の作者です。お褒めいただきありがとうございます
最初はとにかく書いてみるのがよいと思います
直すのは書いた後いくらでも出来ますし

GJありがとうございます
バレンタインネタではありませんが、今帰さんと踊るぼっち人間、第七話「今帰さんと将来像」投下します
十五話以内には終わりそうなので、そろそろ折り返し地点です

797今帰さんと将来像 ◆wzYAo8XQT.:2015/02/15(日) 23:11:07 ID:fcL8yYcU
「お菓子、作ってきたの」
 生徒会室に入るなり、彼女はそう言った。
 鞄から可愛らしくラッピングされた包みを取り出してくる。
 ああそうか、昨日の下校中、今帰さんが作ったお菓子を食べたいって言わされ……言ったっけ。
 それにしても昨日の今日とは、行動が早い。
 リア充はこのあたりがすごいよなー。行動力が違う。
 善は急げ。まったくもってそのとおり。その言葉の正しさは
、何もかも後回しにしてきた結果であるところの今の僕のぐずぐずな人生が証明している。
 
 彼女が包みから出してきたのは、切り株というか、小型の丸サボテンのような形状をした茶色の焼き菓子だった。
「これは……?」
「カヌレだよ」
「かぬ……なんて?」
「カヌレだよ。下手……かな?」
 今帰さんは申し訳なさ気に言うが、申し訳なさそうにされても困る。
「いや下手とか以前に、聞いたこと無くてさ。僕のお菓子ボキャブラリなんてクッキーとかプリンとかケーキとかシュークリームくらいだからね」
 そう、こんなおしゃれなお菓子が出てくるなんて想像だにしていなかった。まるでもってぼっちに似つかわしくないおしゃれさだ。
 お菓子を作ってくると言っても、てっきりクッキーくらいのものだと思っていた。今帰さんが写メで送ってきていたのもそんな感じだったし。
 ……いや、正直、よく見てないから分からなかっただけで、本当は結構凝ったお菓子の写メも送ってきていたのかもしれない。後で確認してみよう。
「そうなんだ。お菓子……嫌いだった?」
「いやいやとんでもない! 単に機会が無かっただけだよ!」
 男一人でこじゃれたケーキ屋に行くなんて軽い拷問だ。出来るわけがないからね。
 僕は誤解されないよう、慌てて今帰さんが作ってきたカヌレをほおばった。
 外は結構カリカリというかしっかりしていて、中はふわふわというかしっとりしている。
 独特の食味だけどおいしい。
「おいしい! 初めて食べたけどおいしいよ! こんな難しそうなお菓子も作れるなんて、さすが今帰さん!」
「そうかなー、えへへ」
「そうだよ! 今後の僕のカヌレの基準は今帰さんの作ったカヌレになっちゃったよ」
「それ、褒めてる?」
「褒めてる褒めてる! 今帰さんが僕の世界の中心だよ!」
「ありがと」
 今帰さんは頬を軽く赤く染めて照れている。可愛い。
 あれ、今帰さん普通に喜んでるぞ。褒めすぎだと軽く引くところなんじゃないかこれは。
 まあ僕も引かせたいわけじゃないからいいんだけど。
「愛情たっぷり篭めたんだから、まずかったら困るよー」
 水筒からお茶を注ぎながら、今帰さんはますます顔を赤くしている。
 ……口の中にあったカヌレの粘度が急に増したような気がした。喉に詰まりそうだ。
 今帰さんがお茶を勧めてくる。
 これを見越してお茶を用意するとは、今帰さんは天才か。
 慣れないハーブティーの妙な香りが、僕の口に広がった。



 宿題も終わり、進路志望の紙を書いていた。
 地元の国立大学を第一志望とするのはいいとして、どの学部のどの科を選ぼうかと頭を悩ませていた。
「今帰さんはもう出した?」
「うん。阿賀君は悩んでいるの?」
「大学は地元の国立でいいんだけど、学部とか学科とかどうしようかと思ってさ」
「阿賀君は将来、何になりたいの?」

798今帰さんと将来像 ◆wzYAo8XQT.:2015/02/15(日) 23:12:35 ID:fcL8yYcU
 それは本当に何気ない言葉だったんだろう。何になりたいか決まればどこに行きたいかも決まるという、大人たちが言うような至極単純な論理。
 だがその言葉は僕にとってはとても重いものだ。
 何に。
 僕が一体何になれるというんだ。
 答えは、何にもなれない。
「……無難だったら何だっていいかなあ。やりたいこともないし、かといってバリバリ仕事するなんて、僕にはとても無理そうだ」
 無難に仕事するのも正直言って無理そうだけど、それを直視しちゃうと人生に関わるから見ない振りをしている。
 刺身の上にタンポポの載せる仕事すら、僕にはまともに勤まりそうに無い。
「阿賀君って結構仕事できそうだと思うなー。何があっても平常心で」
 今帰さんは誤解している。
 苦痛に顔を歪めない奴隷がいたとして、それは優秀なのとは違うし仕事が出来るのとも違う。
 そしてそういう奴隷は案外あっさりぽっくりと死ぬ。
「今帰さんは、弁護士目指してるんだっけ」
「あれ、わたし阿賀君にそんなこと言った?」
「いや、多分聞いてない。誰かが噂してたよ」
「単なる教師向けのいい子アピールなんだけどね」
 僕は驚いて今帰さんの顔を見る。
 い、今帰さん!?
 けろっとしている。本当になんとも思っていない様子だ。
 僕が唖然と彼女の顔を見ていると、彼女はそれに気づいて、いたずらっぽい笑顔で僕の顔を見る。
「ねえ阿賀君。私の本当の夢、教えてあげようか」
 そう言った直後、今帰さんは不愉快気に顔を歪めた。
「そんな露骨に興味なさそうな顔しないでよ、傷つくなぁ」
 僕は自分の顔を触る。
 めんどくさいことになりそうだ、と思ったのが顔に出ていたのか?
 そんな僕を見て、今帰さんが手を伸ばしてきたので、僕は反射的に椅子を引いた。
 今帰さんは少し悲しげな顔をする。
 今帰さんは少し悲しげな顔のまま、どこか遠くを見るように言う。
「私ね、誰かと二人で幸せになりたいの」
 あまりにも唐突なその言葉を、冗談か本気か僕には判断しかねて、僕はフリーズした。
 誰かと幸せになる。
 僕にとってはとんでもなく難しい(というか不可能だろう)命題だが、今帰さんにとっては簡単なことのはずだ。
 それを態々こんな持って回った言い方するってことはつまり……
「……なんか言ってよ。恥ずかしいじゃん」
「ええ……っと、それって、つまり……」
「そう、要するにお嫁さんになりたいの」
 彼女は頬を染める。
 僕は再び絶句する。
 お嫁さん?
 今日日幼稚園児でもそんな幼稚こと言わねえぞ。
 いや、非婚、晩婚化が取り出さされる昨今、案外結婚というものは年を取れば取るほど難しくなるものだ。つまり幼稚園児より高校生のほうが難しく、さらに年を取ればなお難しくなるのが必定。
 ということは、一見幼稚に見えるこの願望も、現代の世相を鑑みた極めて妥当な夢なのではないだろうか。
 2chでも、生涯の伴侶は高校や大学あたりで見つけとけ、といったアドバイスを見たような覚えがある。
「だから、何か言ってよ」
 数秒、何か気の利いたことを言おうとして、結局何も思い浮かばず、何も言えない。
「阿賀君はどう思う? 好きな人いる? 結婚したい?」
 今帰さんが僕のほうに向き直る。

799今帰さんと将来像 ◆wzYAo8XQT.:2015/02/15(日) 23:13:47 ID:fcL8yYcU
 宝石のような双眸に、僕の姿が捉えられる。
 頭の中まで射抜かれるような視線にとても耐えられず、僅かに体を引く。
 今帰さんの桜色の唇が僅かに開き、呼気が漏れる。
 僕は口を開く。
 君が好きだ。
 そう言い掛けて、止まる。
 そう言ったら、一体どうなるだろうか。
 ……どうもならないだろう。
 彼女は可愛くて人気者だ。
 そんなことは言われなれている。
 そもそも、好きな人とか、結婚したいかだとか、それらは僕にはなんら関係の無いことだ。
 だって僕はコミュ障だ。
 そういった人並みの幸せは手に入らない。
 だって僕は正常な人間じゃないから。
「結婚……なんて考えたことも無かったよ。僕、もてないし、性格的にも誰かと一緒にいることに向いてないし」
「そんなこと無いよ。私、阿賀君と一緒にいるときが一番楽しいよ」
 彼女はほんの少し。ほんの少しだけ、体を僕に寄せる。
 や、やめろ! そんなこと言われると惚れてしまうやろ!
 ぼっちの人生を狂わせてどうするつもりだ! 何の利益がある!
 僕は何も答えることが出来ない。身じろぎすら出来ない。
「おじいさんとおばあさんがさ、二人並んで歩いてるのとか、素敵だと思わない?」
 彼女はそう言いながらさらさらと、デフォルメされたおじいさんとおばあさんが手をつないで幸せそうにしている絵を、僕の進路志望のプリントの余白に描く。
 おいそれ提出するんだぞ。消せばいいとはいえ。
「僕の人生、一人乗りだから」
「じゃあ改造しちゃおう!」
 やめてくれ。
「そんなことしたら壊れちゃうよ」
「大丈夫! 壊れても直してあげる!」
 この子は諦めるということを知らんのか。
 それに、壊したの君だよね。
「最初から、触らなければ壊れないよ」
 たしかに、一般人から見たら壊れてるように見えるかもしれないけどさ。
 これはこれで案外快適なものなんだよ。おすすめは出来ないけどね。
 思わず苦笑いする。
「だって、一人なんて寂しいよ」
 彼女は何気なく言う。本当に、他意なんて無いように。
 ……僕の人生、ずっと独りだったんだけど。
「でも、気楽だよ」
 今帰さんは不敵に笑う。
「もう二度と阿賀君の人生に安息は訪れないよ?」
「君は魔王か何かか。安らかに眠らせてくれ」
「我が腕の中で息絶えるがいい?」
「趣旨変わってるよ今帰さん」
「私の腕の中で息絶えてみる?」
 口調じゃなくて内容の問題だよ今帰さん。
「いやだ、と言いたいけれど、人間どうせ死ぬんだから、それも悪くないのかもね」
 なんでもないようにおどけてみせる。本当は、すごく冷めているのに。
 今帰さんはおもむろに立ち上がる。
 怒らせたか?
 今帰さんは僕の背後に立つ。どうしたのか、と振り向く前に、今帰さんが後ろから僕に腕を回してきた。
「い、今帰さん?」
「私の腕の中、どう?」
 肩甲骨の辺りに、何か感触を感じる。こ、これはおっぱ――
「どうしたのさ突然!」
 僕は慌てて今帰さんの腕の中から抜け出そうとする。
 それを抑えるように少し、ほんの少しだけ、今帰さんの両腕に力が篭められる。
 ほんの僅かに、首が絞まる。
「く、苦しいよ今帰さん」
「言ったよね? 私の腕の中で息絶えてみる? って」

800今帰さんと将来像 ◆wzYAo8XQT.:2015/02/15(日) 23:14:13 ID:fcL8yYcU
「じょ、冗談だよね?」
「このまま、もう少しだけ腕の力を強めたら、阿賀君はもうどこにも行かないよね?」
 彼女は、僕の問いには答えない。
 その声におどけた様子は無い。しかし本気とも取りかねた。
「阿賀君、すぐどこか行っちゃうんだもん。私、結構怒ってるんだからね」
 僅かに、締め付けが強まる。僕を逃がさないためか、それとも。
「僕はどこにも行けなくなるけれど、その代わり、今帰さんが刑務所に行っちゃうよ」
 努めて軽い調子で彼女をなだめる。
 彼女は何も答えない。
 今帰さんの熱を感じているはずなのに、僕は悪寒を感じた。
 彼女の言葉に、殺意や害意は感じられない。
 それでも、このまま、本当に殺されるんじゃないかって思ってしまった。
 僕が悪寒を感じたと同時に、今帰さんの腕が僕から離れる。
「それはダメ。私が隣にいないと意味が無いもの」
 ひらひらとゆれるように歩きながら、彼女は室内を一回りする。
 僕はただ呆然を彼女を見る。
 怒ればいいのか、恐怖すればいいのか、それすら図りかねる。
 今帰さん、君は……

「ごめんね、変なことして」
「あ、ああうん、ちょっと驚いたかな」
「ごめん。もうやらないから」
「うん」
 その後、僕たちには会話も無く、二人並んで無言で帰った。


―――――――――――――――――――――――――――


 今帰さんの行動はどんどんエスカレートしている。
 すっかり忘れていたが、今帰さんと会話することとか、二人で話したりするってことからそもそも異様な状況だ。
 それを、だんだんと疑問に思うことが出来なくなってきている。
 慣らされている。
 彼女は一歩ずつ地面を踏み固めるように、ゆっくりと、だが着実に僕の傍に踏み込んできている。
 さすが優等生だ。彼女は努力が苦痛であるという概念を持ってないんじゃないだろうか。
 努力の結果、彼女には一体なにが手に入る?
 頑張ってお金をゴミに変えるような、そんな不毛な努力をよくやるものだ。
 このままだと、僕はどうなってしまうのか。ここ最近の異様な様子からして、遠からず身に危険が及ぶことは想像に難くない。少なくとも、今までのような人生は送れなくなる。低燃費低性能低価格がウリな一人乗りの阿賀号の大破は免れ得ない。
 彼女が逃がさないというのなら、僕はそろそろ、真剣に逃亡の必要性について検討しなければならないのかもしれない。


―――――――――――――――――――――――――――


 阿賀君を後ろから抱きしめたとき、すごくしっくり来た。
 収まるべきところに収まるものが収まったという実感。あるものがあるべき形になったという確信。
 阿賀君は最初からここにいるべきだったのだ。
 ああ、私の不安も、悲しさも、苦しさも、全て納得がいった。
 阿賀君だ。
 阿賀君がここにいなかったのがいけなかったんだ。
 ずっと、私の手の中に納まっていればいいのに。
 気づいてしまえば、もうそう思わずにはいられない。
 そこにいない彼を怨まずにはいられない。
 阿賀君は、ここにいるべきなのだから。それが正しさなのだから。
 もし、もしも阿賀君が、そこから逃げようとするなら、私は……

801 ◆wzYAo8XQT.:2015/02/15(日) 23:16:30 ID:fcL8yYcU
投下おわります

そういえば、ぽけもん黒も当初は十話前後で終わる予定でした
ポポは仲間になった数話後には死ぬ予定でしたし、やどりさんなんてそもそも仲間になる前に死ぬ予定でしたし、予定なんてそんなものですね

802雌豚のにおい@774人目:2015/02/15(日) 23:24:39 ID:KRZNh1cc
GJ!
投稿お疲れ様です!
さらっと書いてるけど、衝撃の事実すぎる……

803雌豚のにおい@774人目:2015/02/16(月) 00:13:03 ID:hI3wsszY
ぐっじょぶです!

804雌豚のにおい@774人目:2015/02/16(月) 08:14:24 ID:0xV81Y3A
>>801
GJです
今帰さん可愛すぎ

805雌豚のにおい@774人目:2015/02/16(月) 12:32:11 ID:d.Ho554E
>>801
gjです
話数が大幅に延びたとは以前言っていましたが、ポポが数話で死ぬ予定だったとは驚きです
やっぱり香草さんに…ですか?

806雌豚のにおい@774人目:2015/02/16(月) 23:47:57 ID:UnQiDNd2
GJです!
更新されるたびに、スレ確認する回数ふえたwww

807雌豚のにおい@774人目:2015/02/18(水) 23:24:33 ID:KfL.AryE
保管庫から今帰さん一気に読んできました。
ヤンデレものでも少しずつ動いて気が付いたら全てがおかしくなってるのが好きなので読んでて楽しいです。

808雌豚のにおい@774人目:2015/02/19(木) 08:30:05 ID:rmQBELxA
>>807
そんで動きに気付いて対策して何とかなったと思ってたら
寧ろ状況が悪化してて俺は彼女の手の平で転がされてただけなんだと気付き
どうしようも出来なくなって
死んだ魚の目をしながら諦めてしまうのとか好き

809 ◆wzYAo8XQT.:2015/02/22(日) 22:20:10 ID:1WomEku6
こんばんわ。GJありがとうございます
>>805
そのとおりです
ところが殺したあと鈍感なゴールド君と強情な香草さんとでは話がさっぱり進まなかったのと、腹黒ロリっていいよね! という理由で生存することに
一方やどりさんは新たな仲間加入によりポポの二の舞のような状況になるのを恐れた香草さんが嫉妬に駆られ、一線を越えるとともに自らの感情を明確に自覚してもらうために死んでもらう予定でしたが、ちょうどこのころ、『神のみぞ知る世界』という漫画で主人公が「殺すためにヒロインを出すな!」と激怒していたのを見て、目から鱗が落ちまして、それで殺すのをやめました
その割りにいまいちもてあまし気味というか魅力を引き出せず……
まあ彼女はループ前世界で唯一本懐を遂げられた人間となったので大目に見てもらいましょう


今週は時間が無かったので幕間だけ投下します
来週も多分投下は厳しそうです

810幕間:『やがて洪水が』 ◆wzYAo8XQT.:2015/02/22(日) 22:22:47 ID:1WomEku6
 彼女は一言で言えば、秀でた子供だった。
 小学校に上がるころには九九をすっかり覚えていたし、自分の名前を漢字で書けた。
 足も速く、徒競走ではいつも学年で一番だった。
 大人から見ればそれらはささやかで可愛らしい、才能ともいえない些細な差に過ぎない。
 しかし子供の世界において、その僅かな能力の差というものは歴然かつ圧倒的である。
 まだ子供だった彼女にとって、周囲より数歳分能力が秀でているということは、彼女にとって絶対の優越性を示していた。

「かなちゃんすごーい!!」
 彼女の周囲の者はみな、媚びるような笑顔で、常に彼女に賞賛の言葉を送る。
「だってわたしは完璧なんだもん!」
 その結果、彼女はそれらの賞賛を当然のものとした。
 自らが優れた生き物である。だから、成功も賞賛も当たり前のものであると、当然のように享受した。
 彼女は、彼女の王国の王だった。

 彼女を称える、子供の王国の外に、一人の少年がいた。
 目立たない、そして自分の王国に加わろうとしない男の子。
 世界から祝福された彼女にとって、その彼はとるに足らない路傍の石だった。
 
 自らの王国に参しない少年への傲慢な怒りと興味。
 王が民に施しを与えるように、勝者が敗者を慰めるかのように、少女はごく当然のように少年に接することにした。
 それが彼女の思う王としての責務であり、優れた者の義務だった。
 自らに向けられる賞賛に慣れ、飽いていた彼女にとって、異質な存在への興味が微かな好意へと変わるのに時間はかからなかった。
 彼女には悪意も、ゆえに罪の意識も皆無だった。
 だから彼女にとって、その言葉は晴天の霹靂だった。
 
「もうこれ以上いじめないで……」

 彼女は初め、その言葉の意味が理解できなかった。程なく、言葉の意味を理解した彼女はまず真っ先に憤慨した。それは彼女にとって、飼い犬に手をかまれたどころか、羽虫がぶつかってきたようなことと同義だった。
 せっかくこの私が、こんな取るに足らない相手に気をかけてやったのに。それをいじめだなんて。
 そうか、彼がそれを望むなら――
 一息に潰してやろう。
 彼女の思考はそれに似たものだっただろう。
 しかし、その傲慢が実現されることはなかった。
 彼女は、周囲から妬み嫉みを買いすぎた。
 そして才気あふれる彼女は、その才気ゆえに周囲をかんがみることなく、そしてそれに気づくことが無かった。
 周囲より聡く、周囲より早熟であった彼女は、しかしそれでもただの少女に過ぎなかった。
 知恵はあっても知識が足りない。知性はあっても経験が足りない。
 彼女は知らなかったのだ。
 人が何で動くかということを。
 周囲の非才が徒党を組み、反旗を翻したらどういうことになるかということを。
 そして、陰湿ないじめが始まった。


 それは才気あふれる少女がぶつかった、人生初めての挫折だった。
 『優等生』の彼女には、頼れる人間などいなかった。
 本来であれば頼るべき大人たちが彼女に求めていた役割は優等生の少女であり、いじめを受ける問題児ではなかったからだ。
 さらに不運は重なった。
 いじめのきっかけとなった少年の突然の死。
 彼女は、未熟な好意を抱いていた相手と謝罪の機会を、同時に永遠に失った。
 
 それらのことは、彼女の精神を決定付けた。
 彼女の顔から愛くるしい笑顔はすっかり失われ、その顔に感情と呼べるものは存在しなかった。
 世界から祝福されていた彼女は、いまや独りになっていた。


 数ヶ月が過ぎても、制止する者のいないいじめは止むことはなかった。
 そして少女はある表情を取り戻す。
 その表情は、彼女の人生で一度として浮かべたことがないもの。
 そしてその表情は、今まで彼女の周囲のものが彼女へと向けてきたそれと同一のものだった。

811 ◆wzYAo8XQT.:2015/02/22(日) 22:23:48 ID:1WomEku6
今帰さんと踊るぼっち人間、幕間の投下終わります
本編の続きは数週間以内に

812雌豚のにおい@774人目:2015/02/23(月) 00:28:49 ID:4.99NntA
>>811
gjです!

813雌豚のにおい@774人目:2015/02/24(火) 20:35:20 ID:P1qoVsrs
乙です。

所で、これって終わりまで一気にあげちゃう予定なのん?
もしそうなら終わるまで見るの待ってようかな。

814雌豚のにおい@774人目:2015/02/25(水) 05:21:02 ID:x78Uf8iI
保管庫見ると続きが気になる未完作品がいくつもあるな
続き書かないなら俺書いちまうぞ

815雌豚のにおい@774人目:2015/02/25(水) 06:55:22 ID:8RFbw6CQ
それはあかん
前それで荒れたことがある

816雌豚のにおい@774人目:2015/02/25(水) 10:17:00 ID:f45UphLA
ifみたいな形にしちゃダメかね

もう俺はヤンデレに飢えすぎて何でも読みたいわ

817雌豚のにおい@774人目:2015/02/25(水) 10:19:20 ID:pBWn62VY
作者の許可があればいいけど勝手に書くのは論外でしょ

818雌豚のにおい@774人目:2015/02/25(水) 11:00:59 ID:/4XAx.QQ
テンプレぐらい読め

>投下SSの二次創作については作者様の許可を取ってください。

と書いてあるぞ

819雌豚のにおい@774人目:2015/02/25(水) 23:20:00 ID:BI8AD3eM
登場人物だけ変えてシチュエーション似た感じにすりゃいいんじゃね?

もしくは、シチュエーションだけ変えて似た感じの登場人物にするとか。

あ、勿論どっちにするとしても人と場所の名前だけはきちんと変えておけよ?

820雌豚のにおい@774人目:2015/02/28(土) 20:18:11 ID:qWPIoPZk
それぐらい続きが読みたいってことでしょ
その気持ちは十分理解できる

821雌豚のにおい@774人目:2015/03/02(月) 03:20:20 ID:biYiyVRY
だいぶ前の話題だけど
メンヘラとヤンデレの違いについていろいろと言っている奴からは彼らの言うところのメンヘラと同じような精神を感じる

822雌豚のにおい@774人目:2015/03/04(水) 04:19:38 ID:RiAgwczk
何言ってるか分からないけど取りあえずヤンデレとメンヘラは全然違うから覚えとけ

823妹はキスを迫る:2015/03/05(木) 21:21:12 ID:v5zEQmKA
投下します(初投稿)

824妹はキスを迫る:2015/03/05(木) 21:24:29 ID:v5zEQmKA
「キスして」

 夕暮れに照らされた居間の中、ソファに寝そべった妹は阿呆らしいことを呟いた。
 連日の猛暑で頭がイカレタのだろう。聞こえなかったふりをして無視する。

「お兄ちゃん、無視はひどいんじゃないかな」
「無視してやってるんだ。ありがたく思え」

 真摯に受け止めた場合、妹は精神科行きだ。

「いいじゃん、してよキス。減るもんじゃあるまいし」
「俺の社会的信用が減る」
「減る程無いじゃん」

 痛いところを突かれた。

「とにかく妄言を吐くのは止めろ」

 近親相姦なんて魅力のないもの、する気はない。
 こんな生意気な妹と関係を持つくらいなら、玉砕覚悟で幼馴染に告白する。

「……わかった」
「よし」
「お兄ちゃんはツンデレだということが」
「氏ね」
 
 落ちてあった洗濯ばさみを投げつける。
 妹はそれをあっさりとキャッチした。
 無駄に反射神経がいい奴だ。

「ナイスキャッチ」
「自分で言うな」
「ナイスツッコミ。あ、お兄ちゃん。喉が乾かない?」
「急に話が変わったな」
「ジュース飲みたくなったんだから仕方ないじゃん。で、お兄ちゃんも飲む?」
「……飲む」

 確かに喉が渇いていた。
 主に妹のせいで。

「ラジャー」

 変な挨拶をして、当の本人はキッチンに向かった。
 だらしない服装が嫌でも目に入る。
 付き合うなら、清楚な娘がいいと改めて思った。

「おまたせー」
「ああ」
  
 妹からコップが手渡された。
 中には白い清涼飲料水、この季節の必需品だ。
 体が失った水分を取り戻そうと勝手に動く。
 気づいたときには飲み干していた。

825妹はキスを迫る:2015/03/05(木) 21:25:48 ID:v5zEQmKA
「いい飲みっぷりだね、キスして」
「どさくさに紛れて言うな」

 油断も隙もない奴だ。

「いい加減にキスしてよ」
「いい加減にキレるぞ」
「そこまで拒絶しなくてもいいじゃん」
「するに決まって『叔母さんとは』……お前」

 妹は、数枚の写真を持ちながらにやりと笑った。 

「キス以上のことをしたくせに」
「お前、いつの間にそれを撮ったんだ!」
「さあ、いつだろうねー」

 写真を取り上げるため、立ち上がろうとする。
 しかし――。

「くっ!?」

 体に力が入らない。

「無駄だよ、ジュースにたっぷりと薬を入れたから」
「どこでそんなもん手に入れた!!」
「教えてあげない。それより、取引をしようよ」
「取引だと」
「うん」

 脅迫犯は、怪しげな微笑で告げた。

「私とキスをしたらこの写真はお兄ちゃんにあげる」
「……それに従わなかったら」
「お父さんとお母さんに写真を見せる」
「……」

 こんなもの取引じゃない。
 答えは一つに決まっている。

「わかった。勝手にしろ」
「わーい」

 人生最悪のキスを俺はした。


「はい、写真」

 薬の効き目が薄れた頃、約束の品はあっさりと返された。

「良かったよ、お兄ちゃん」
「黙れ」

 写真は全部で十枚。
 言い訳のしようがない姿が移されている。

「あ、それとお兄ちゃん」
「……なんだ」

 正直、こいつとは二度と口を聞きたくなかった。
 それでも、返事をしてしまうのは妹からだろう。
 むかつく話だ。

「写真はまだまだあるから」
「なっ!?」
「これからもよろしくね」

 次はキス以上だね、嬉しそうに妹は言った。

826妹はキスを迫る:2015/03/05(木) 21:27:49 ID:v5zEQmKA
投下終了です

ヤンデレというよりただの外道になっちゃいました(おまけにスレチな感じも)
拙い文章失礼しました

827雌豚のにおい@774人目:2015/03/05(木) 21:47:46 ID:oLAoIpqQ
いいじゃないか良かったよ
続きもあったら読みたいな

828雌豚のにおい@774人目:2015/03/06(金) 23:28:10 ID:A/leqlJc
なんて……恐ろしい妹!!!

829雌豚のにおい@774人目:2015/03/07(土) 03:12:57 ID:TUxoDguA
>>815
どんなふうに荒れたんだっけ?

830雌豚のにおい@774人目:2015/03/07(土) 15:02:11 ID:3JZ5KHFM
>>826
乙です

今帰さんシリーズ、良いけど主人公が卑屈すぎて少し嫌だ

831雌豚のにおい@774人目:2015/03/07(土) 15:43:06 ID:Df8rD.dw
卑屈だからこそ良いと思う

832 ◆wzYAo8XQT.:2015/03/09(月) 02:20:57 ID:4x1S0/Ns
卑猥?(幻視)
冗談はさておき、さっぱりした主人公が書けないのは悩みです
私自身がさっぱりしてない人間なんで、さっぱりしている人間の精神構造がさっぱり分からないんですよね
表面だけなぞっても上滑りして目も当てられないし

前置きはさておき、今帰さんと踊るぼっち人間第8話、『今帰さんと返報性』投下します

833今帰さんと返報性 ◆wzYAo8XQT.:2015/03/09(月) 02:22:27 ID:4x1S0/Ns
「ねえ、前から聞きたかったんだけど」
 何度目かも忘れた生徒会室での勉強会で。
 今帰さんが突然そんなことを言い出した。
 聞きたかったのならその場で聞けばいいのに。
 とはとても言えない。
 空気を読めないのはぼっちの特権だからだ。
 リア充たる彼女がそれを行うのは大層難しかろう。
「阿賀くんは私のこと、好きじゃないの?」

 えっ。

 好きじゃないの? っていうか、三行以上おしゃべりした女子は大体好きですよ? ぼっちだもの。
 何しろ下手したら男子すらうっかり好きになりそうになるくらいだ。
「えっ、いや、な、なに!?」
 しかしリア充というのは本当にぶち込んでくるね。
 ぼっちがこんな話題切り出そうと思ったら十年はかかるのに。いや十年かかったって無理だ。0には何をかけてもゼロだからね。
 今帰さんはねめつけるようにこっちを見てくる。
「そうやって言葉を濁すの、よくないと思う」
「い、いや、濁したっていうかですね、ちょっとしたバクというか」
「バクって何?」
「僕というシステムは好きという言葉を入力されることを想定されて構築されていないんだ。そういう仕様なんだよ」
 なんと説明したものか。ああ、自分と価値観を異にする相手に自分の理屈を通すのって難しいな。
 あまりに唐突な質問に、僕は答えに窮す。
 だけども、リア充にとってはちっとも急じゃないのかもしれない。
 僕はぼっちだから、人との距離の取り方ってよく分からないんだけど、リア充だったらこれくらいの頻度で一緒に勉強会をしたり一緒に下校したりするくらいの仲だったらお互い好きとか言い合ったりするものなのかもしれない。
 いずれにせよ、僕には関係ないことだし、永遠に知りえないことだ。
 僕の煩悶をよそに畳み掛けるように今帰さんは言葉を重ねる。
 柔らかな微笑みとともに、綺麗な声で。
 それはあまりにも完璧だった。それを向ける相手が僕じゃなければ、だけれど。
「私は好きだよ」
 心理学には、『返報性』という概念がある。
 これは大雑把に言ってしまえば、好意を示されたらこちらも好意を返すという、人間の本能、あるいは反射のことだ。
 リア充というのはこれを自然にこなす。
 だからみんなリア充が大好きだ。
 僕は違う。僕は誰からも何も示されない。だから僕は誰にも何も示さない。
 みんな僕のことを好きじゃなくて、だから俺もみんなのことを好きじゃない。
 今帰さんに好きだよと言われた瞬間、あまりにも急激な血圧の上昇から意識が飛びそうになったけど、だけどそれでも僕は誰のことも好きではないんだ。
 だから僕は無言だ。アホみたいに口あけてポカーンとするだけ。絶句とも呆然とも言う。
「好きって言われない人間なんていないよ」
 今帰さんは言葉を続ける。
「じゃあ僕は人間じゃない」
 彼女は呆れたようにため息をつく。まるで出来の悪い生徒を前にした教師のように。
「阿賀君は人間だよ」
 いや知ってるよ。
 僕は無言になってしまう。
 彼女は出来の悪い生徒を何とか諭そうと、何かを思案している。
 出来の悪い生徒であるところの僕も何か考えたほうがいいのかな。じゃあ何を考えればいいんだろう。

834今帰さんと返報性 ◆wzYAo8XQT.:2015/03/09(月) 02:22:53 ID:4x1S0/Ns
「阿賀君!」
「は、はい!」
 彼女は僕のほうに向き直り、僕をまっすぐ見る。
 なるほど、率直に正攻法で攻めることにしたのか。
「私は阿賀君のことが好き。じゃあ、阿賀君は?」
 理解できない単語が耳に飛び込んでくる。
 今帰さんの目はどこまでもまっすぐで、澄んでいて、暗がりで生きている僕にはあまりにも眩しすぎる。
 ああ、駄目だ。これは駄目だ。
 ええっと、こういうときはなんて言えばいいんだっけ、どんな顔をすればいいんだっけ。
 僕の人生で、今までこんな経験をしたことは一度も無い。だから対応が分からない。
 いや、僕は知っている。実際にこんな経験をするのは始めてだけど、こういうシーンを乗り越えた例は読んだことがある。2chで。
 さあ、知っているならその知識を生かすべきだ!
「……ぇ」
「なに?」
 今帰さんはおもちゃを見せられたときの子供のような表情で、僕の顔を覗き込んでくる。多分、この感情は、期待だ。
 今帰さんは望まぬ返答が帰ってくることなんて欠片も想定していない。
 当然だ。今までの人生、全部うまくいってきたんだろう。人から嫌われたことなんて一度もないんだろう。ましてや、いるのかいないのかわからないかのように扱われたことなんて。
 その期待に対し、僕は全力ですっとぼけた表情を作ってこう言った。
「え、なんだって?」
 腹を蹴られた。
 え? え!?
 なんだこれ。お腹めちゃめちゃ痛い。今帰さんめちゃくちゃ怖い。
「私言ったよね。言葉を濁すのってよくないって。ついさっき言ったばかりだよね。まさか忘れたなんてこと、無いよね」
 氷のような冷たさを篭められた言葉が降ってくる。蹲っている僕からは見えないが、きっと今の今帰さんはゴミを見るような目で僕を見ている。
 どうなっているんだ。とあるラノベ主人公は「え、なんだって?」の一言でハーレムまで築き上げたというではないか! それなのに!
 この言葉は魔法の言葉ではなかったのか。これは主人公かイケメンにのみ許された魔法だったのか。僕が真似してうまくいくと思うほうが間違いだった!
 それにしても、こんなに怒った今帰さんを見るのは初めてだ。
 結構強引だと思ってはいたけど、まさか暴力を振るわれるなんて夢にも思わなかった!
 見上げると、今帰さんは微笑んでいた。
 いつもの微笑が心底恐ろしく見える。
 というか何故笑っているんだ。これが本性なのか。僕の天使は一体どこに?
 とてもじゃないが直視できない。腹が痛すぎるということにして再び俯こう。
「一応言っておくけど、友達としての好きじゃないからね。異性としての好きだから」
 予防線を潰された。
 そもそも異性として好きな相手に腹蹴りをするだろうか。
 そもそも、今の態度はどう考えても目の前に蹲る好きな異性に対して取る態度ではない。ぼっちの僕でもそれくらいは分かる。
 いや悪いのは僕だ。さすがの僕でも僕が悪いと自分で思っているよ。
 でもそれはそれとしてこれはおかしくないだろうか。

835今帰さんと返報性 ◆wzYAo8XQT.:2015/03/09(月) 02:23:12 ID:4x1S0/Ns
 どうしよう。どうする。
 今帰さんに暴力を振るわれたという衝撃と対応策がまったく思い浮かばないという焦りで思考が目まぐるしく回る。いや、これは回っているのではなく迷走しているというほうが正しい。
完全に空転している。
 何か、何か言わないといけない。
 言わなければ、この腹蹴り以上の暴力が振ってくるという漠然とした確信がある。
 うめき声を上げて蹲る(振りをして時間を稼ぐ)僕に、今帰さんは手を伸ばす。
 僕の顎下をつかんで、無理やり顔を上に向かせる。
 腹部の痛みとあいまって、呼吸が苦しくなる。
「痛かった? ごめんね? 立てる?」
 その細い指から、じわじわと冷気が染み込んでいくる。
 今帰さんの顔を見ることが出来ない。見るのが怖い。
 とにかくこれで、ずっと蹲ってお茶を濁す作戦は潰された。
 立ち上がるしかない。そして答えるしかない。
 僕は椅子に寄りかかるようにして何とか立ち上がる。
 本当はそこまで重症じゃない。痛みはすでに和らぎつつある。
 ただ少しでも時間を稼ぎたかった。そして彼女の動揺を誘いたかった。
 向き合う彼女から、答えを催促するような圧力を感じる。
 相変わらず、顔を見ることは出来ない。
「……ほ」
 そして、ほとんど呼吸音のような声が、どうしようかと困惑している僕の口から漏れた。
「ほ?」
「保留ってありっすかね?」
 彼女の鋭い腹蹴りを僕は後方に飛んで回避した。
「ほあぁぁぁ!!」
 ホ、ホ、ホァァー!
 あっぶねえ! 予想通りだよ! じゃあ予想できたのになんで保留なんて言ったんだって聞かれれば、そこはもうごめんなさいとしか言いようが無い! 僕という人間の性なんだ!
「どうして!? 酷いよ!!」
 怒るか攻めるかどっちかにして欲しい。
 そしたら僕ももうちょっと対応を絞れるから。
「ちょ、ちょっと落ち着こう。パンツ見えるしさ」
「パンツくらいいくらでも見ていいから!」
「ストォォォォッップ!! それ以上はいけない!!」
 どうして僕は自分に敵意を向ける相手のパンツの心配をしなきゃならないんだ!
 これが今帰さんじゃなかったらぶん殴ってるぞ! もちろんそんな度胸無いけど!
「まって、落ち着こう。いったん落ち着こう。こんな状況で話してもまともな答えは出ないよ」
「好きから嫌いの二択じゃん!」
「二択も間違えるくらい動揺してるってことだよ!」
 そもそも彼女の発言は根本的に間違っている。答えは通常であれば二択ではない。保留とかはぐらかしとか、言葉には無限の可能性があるんだ。言葉って素晴らしい!
 しかし今はイエスかノーか以外の回答は許されないだろう。さすがに僕でもそれくらいは学んだ。
 暴力と罵倒による強制二者択一。これが噂に聞く対話と圧力という奴か。実際は圧力と圧力だが、いや、選択肢が複数あるだけマシか。
 少し、考えてみる。
 もちろん、長い猶予が許される状況じゃない。
 真剣に考えようと、真剣に考える振りで時間を稼ごうと、どの道あっという間に時間切れで強制的な選択を迫られるだろう。暴力によって。
 アメリカ政府だってもうちょっとのん気だろうに。今帰さんという人は。

836今帰さんと返報性 ◆wzYAo8XQT.:2015/03/09(月) 02:23:34 ID:4x1S0/Ns
 逃げる、という選択肢がないわけではない。だけどそれはあくまで最終手段だ。今帰さんは僕より足が速いし持久力もある、はず。知らないけど多分そうだろう。彼女は運動も出来るイメージがある。実際、さっきの三日月蹴りは実に見事だった。
 いや三日月蹴りとかよく知らないけどね。
 さて、逃げた場合、僕を追いかけてくるかどうかは五分というところだろう。
 悪くない賭けだ。だけど、これはいつでも実行できる。つまり他に選択肢がなくなってから実行しても遅くはない。というわけで保留。
 さて、では問題の二択についてきわめて早く、具体的には僕が僕の身を案じた時間の半分くらいで早急に考えて結論を出そうか。

 パターン①.好きと答える。
 そもそもこの好意が嘘の可能性もある。
 僕がただからかわれているだけの可能性。
 それならそれでいい。いやまったく何一つよくないが、悩む必要は無くなる。
 問題はこの好意が本心だった場合。
 好きだと答えれば、当然その先がある。
 付き合ったりデートしたり。
 ……無理だ。
 こんなわけの分からない人間とどうやって付き合っていけというんだ。
 そりゃ経験豊富なリア充さん達ならこの高難易度のミッションもクリアできるかもしれない。
 しかしこの僕に、ましてやこんなわけの分からない相手と付き合うことなんて不可能だ。どうやったって順調に穏便に進むシナリオが浮かばない。想像力の限界を超えている。
 もうやめて今帰さん! 僕のライフは最初からゼロよ!
 つまり、これは駄目だ。
 よし、じゃあ次だ。
 パターン②、嫌いと答える。
 先ほどの行動から見て、ほぼ間違いなく暴力が見舞われるだろう。
 たとえば、先ほどのように昏倒させられたらどうなる?
 そこから今帰さんがマウントを取り、振り下ろすような拳の連打を僕の顔面に叩き込んできたら?
 さすが今帰さん! マウントポジションからの顔面パンチとか今帰さん本格的過ぎるよ! 天使というか野獣だよ!
 うん。これもよくない。大変よくない。いくら今帰さんでもマウントは取らないだろうとか、そういった破綻はすごいけどとにかくよくない。
 
 ……うん!
 よし、結論。逃げよう。
 
 その前に、僕の両肩に置かれた手をどうするか。
 ……え、手?
 この手は今帰さんの手だ。今帰さんの両手が、僕の肩をがっしりと掴んでいる。いつの間に僕の肩に手が置かれたんだ?
 え、どうすんの。どうすんの僕。詰んでね? これ詰んでね?
「ねえ、どっち?」
 迂闊にも、今帰さんの姿を正面からまじまじと捕らえてしまった。
 フランス人形のような、大粒のキラキラとした目がこちらを真正面から捕らえている。
 その目には、決して抗えないだけの魔力があった。
「いや、その、好きだよ」
 ……。
 しまった! 咄嗟のこととはいえ僕は何を言ってるんだ!
 ああ僕はどうしてこう素直なんだ!
 いいやもう。やってしまったものはしょうがない。腹をくくろう。僕を笑いものにするリア充達が茶化しながら入室してくるより前に逃げよう。そうすれば致命傷は免れる。

837今帰さんと返報性 ◆wzYAo8XQT.:2015/03/09(月) 02:23:58 ID:4x1S0/Ns
 僕は浅く呼吸し、左足を半歩下げる。これで地面を蹴り、今帰さんの脇を駆け抜けるだけの余裕が生まれた。
 後の問題は今帰さんの腕を振り払えるかどうかだけ。彼女の腕を払うのが先か、僕の肩が今帰さんによってむしりとられるのが先か。くっ、もってくれ僕の肩よ!!
 が、僕は動き出せなかった。
 理由は簡単。今帰さんの様子がおかしいことが気になるだとか、動揺のあまり僕の体が動かないとか、そういうことじゃない。
 今帰さんが半歩前に出て、僕が足を出す場所が失われたからだ。
 こ、この糞野郎……じゃなかった。この優等生!
 僕は無言で彼女の出方を伺う。というかそれしか出来ない。
 今帰さんは笑顔のままだった。
「よかったぁー」
 彼女はそういって、笑顔のままぼろぼろと泣き始めた。
「うわっ! どうしたの」
「私ずっと不安だったの! 阿賀君に迷惑かけてるんじゃないかって、阿賀君に嫌われてるんじゃないかって! よかったぁー、よかったよぉぉぉぉー」
 彼女はそう言って子供のようにわんわん泣き出す。
 ばれてた。
 なるほど、その心配は事実だ。だけど。
「この世に、今帰さんを嫌いになる人間なんていないよ」
 それは、紛れも無い僕の本心だった。
 今帰さんを嫌いになる人間なんて想像もつかない。
 それくらい、僕には今帰さんは完璧で、天使のように人間離れした存在に思えた。
「じゃあ、私の彼氏になって?」
 そうだ。彼女は僕を好きだといった。そして僕も彼女に好きだと言った(言わされた)。
 だが僕は決して付き合うとは言っていない。記憶にございません。
 上目遣いでこちらを見る彼女に、
「保留! とりあえず保留で!」
 そういい捨てて脱兎の如く僕は逃げ出した。


――――――――――――――――――――――――


 なんだかおかしなことになってしまった。
 すっかり彼女のペースに振り回されっぱなしだ。
 人から見たら、僕は相変わらず無表情に見えるだろう。
 本当は心底動揺している。
 心の表層ではなんともない振りをなんとか取り繕っているだけだ。

 どうせ深い意味はない。
 いつもどおりやり過ごせばいい。
 大丈夫。大丈夫。
 そう自分に言い聞かせ、偽りの安寧を心に浮かべる。
 こうして心の表面を落ち着けていれば、いつか心の奥も落ち着くだろう。
 どうせ、こんな異常事態はすぐに終わる。
 穏やかにたゆたう深い夜の闇が、僕の心を沈めてくれる。
 今帰さん。
 眠りに落ちる前、僕は彼女の笑顔をかすかに幻視したような気がした。
 
 
――――――――――――――――――――――――

 
 調子に乗った。やりすぎた。失敗した。
 今日ほど、そんな言葉を思った日はない。
 調子に乗って告白して、怒りに任せて阿賀君のお腹を蹴って、彼を無理やり捕まえて。
 彼を前にすると、私はまるで感情を抑えることが出来なくなる。
 自分でも、どうしてだか分からない。
 原因の分からない感情が心の中に後から後から湧き上がって来て、何も考えられなくなってしまう。
 
 
 私は、彼にたくさんの迷惑をかけた。
 それでも、彼は最後には好きだといってくれた。
 私のことを愛していると言ってくれた。
 嬉しかった。
 彼は引っ込み思案だからきっかけがないと行動できないんだって前に言っていた。
 阿賀君は私のことが好きで好きで、常に今すぐにでも好きだといって押し倒したかったに違いない。
 素直に押し倒してくれてもいいのにと思うけど、そういう奥ゆかしいところも彼のいいところだ。
 ――罪深い私と、無垢な彼。

 決して私が彼に強要したわけじゃない。
 本当は私のことをなんとも思っていない、それどころか私のことを嫌っているなんて、そんな可能性あるわけない。
 大丈夫、彼なら、私を好きになってくれる。
 罪深い私を。醜い私を。
 電気を消し、ベッドに入って瞑目する。
 阿賀君。
 その呟きは部屋の闇に飲まれ、消える。何も返ってはこない。
 阿賀君。
 暗闇に手を伸ばす。その手は誰に触れることもない。
 阿賀君。
 奥行きも分からない深い夜の闇は、私の祈りに答えてはくれなかった。

838今帰さんと返報性 ◆wzYAo8XQT.:2015/03/09(月) 02:24:50 ID:4x1S0/Ns
投下終わります
※阿賀君は今帰さんに一度も愛しているなんて言ったことはありません

最後までまとめて投下できるかですが、話の筋は決まっていますが肉付けはしてないのでまとめては投下できないです
年度末と年度始で忙しいので投下ペースは落ちる予定です
それでもよろしければ最後までお付き合いください

839雌豚のにおい@774人目:2015/03/09(月) 09:25:05 ID:HPI7MMKs
>>838
GJ!
今帰さんがメチャ可愛い

840雌豚のにおい@774人目:2015/03/09(月) 16:13:14 ID:bDDx301k
父娘物のヤンデレ小説執筆中なのですが需要ありますでしょうか?

841雌豚のにおい@774人目:2015/03/09(月) 18:09:13 ID:oUuYaDIo
>>840
ないです

842雌豚のにおい@774人目:2015/03/09(月) 18:20:33 ID:lE2u2.nU
今帰さんいいよかわいいいよ

>>840
読みたいから載せちゃえよ

843雌豚のにおい@774人目:2015/03/10(火) 04:47:23 ID:IJElS2zk
父娘物は保管庫にあるのは僅かだし
需要大あり

844雌豚のにおい@774人目:2015/03/10(火) 06:12:22 ID:emTZs.22
>>843
自演して楽しいの?

845雌豚のにおい@774人目:2015/03/10(火) 23:10:06 ID:CBkEr/Sc
この際ヤンデレだったらなんでもいいわ。読ませてくれよ。

846雌豚のにおい@774人目:2015/03/11(水) 05:05:20 ID:EUiG68Bs
>>838
ぐっじょぶです!

>>840
読みたいです

847雌豚のにおい@774人目:2015/03/11(水) 05:12:41 ID:EUiG68Bs
>>826
アンカー抜けていましたごめんなさい。ぐっじょぶです!

848雌豚のにおい@774人目:2015/03/11(水) 17:58:19 ID:3qPxvusA
>>840
諸あります。

>>844
さっさと職探しするか捕まって塀の中に入って、社会に役に立てよゴミクズ

849雌豚のにおい@774人目:2015/03/11(水) 20:41:25 ID:G3sHkYzo
>>848
それはお前だろw
ソースもないのに俺のことを無職扱いとは本物のアスペじゃねえかw
ガイジは死んだほうがいいぞwwwwww
それともまた自演か?

850雌豚のにおい@774人目:2015/03/12(木) 15:07:59 ID:KkydnNxw
(オイこの空気誰かどうにかしろよ)

851雌豚のにおい@774人目:2015/03/12(木) 23:56:23 ID:FXyfWe1Y
うんうん、それもまたヤンデレだね

852雌豚のにおい@774人目:2015/03/13(金) 22:11:20 ID:bnQChmLY
一々叩かないと気が済まない人間って病気だと思いまーす。

853のどごし ◆Nwuh.X9sWk:2015/03/17(火) 04:31:58 ID:r1RCMjvw
あと三日で短編あげるつもり
次作の属性をくれ

854雌豚のにおい@774人目:2015/03/17(火) 10:25:10 ID:0JaDrxfQ
ありきたりだけど
ツンデレ幼馴染とか

855雌豚のにおい@774人目:2015/03/18(水) 01:12:06 ID:zDREzF5Q
駄目な幼馴染みのおねぇさん

856のどごし ◆Nwuh.X9sWk:2015/03/18(水) 04:32:45 ID:csIh.krs
>>855
それいただきやわ

857雌豚のにおい@774人目:2015/03/19(木) 02:36:02 ID:mrmbtViA
就活辛いから若社長かつヤンデレかつ高校時代の先輩に「ウチで働く気はない?」

とか言われないかなー


ここで「自分の力で内定を取りたいから……」と断る

するとどの会社受けても不採用の連チャンで内定決まらず

それを知ったヤンデレが「やっぱウチ来なよ!まだ募集枠あるからさ!」

その言葉に負けて先輩の会社で(先輩の助手として←彼は知らない)働く事に

そして彼は気付かない
今までの不採用続きは彼女のせいだということに………



なーんてお話を今考え中

858雌豚のにおい@774人目:2015/03/19(木) 06:37:30 ID:bxI81odY
いいねいいね!
それ楽しみ!

859名無し:2015/03/22(日) 09:09:08 ID:4Y2r5plk
作品を書きたい場合はどうすれば?

860雌豚のにおい@774人目:2015/03/22(日) 16:43:16 ID:6nnkspK.
書きたいなら書けばいいじゃない

861『兄は逃げたが、逃げれなかった』:2015/03/22(日) 19:24:20 ID:T9V2PdK.
久しぶりに投稿してみたいと思います。

語り口なので読み辛いかも、知れないので悪しからず

862『兄は逃げたが、逃げれなかった』:2015/03/22(日) 19:24:54 ID:T9V2PdK.
どうか、俺の話を聞いてくれないか?

お前を、高校生での友達1号とみこんでの事だよ

俺には、中学生の妹がいるんだ

妹は3月31日生まれで、俺は4月1日生まれなんだよ

そう、俺たちは双子

丁度、4月になりその1分後に俺が産まれ俺の方が1学年ほど上なのだ

妹が生まれたあと、もともと体の弱かった母は俺を産み直後に他界してしまった

それから、家族は父親と祖父母のみである

はっきり言おう

俺は、妹が怖いんだ

え?なんで、妹が怖いのかって?

それはお前、あれだよ

【ヤンデレ】だからだよ

あ〜違う!惚気じゃないんだ

それに、気付いたのは俺が中2の頃だったんだ

始まりは、小6

当時はまだ、ヤンデレなんて知らなくてな

妹に対するいじめから護ったりしていたから、ちょっと構ってちゃんだと思ったんだんだよ

ある日、俺は好きだった女子に告白したんだ

相手は、二つ返事でOK

嬉しかったよ?初恋だったからさ

だが、彼女の身の回りで変化が起きたんだ

863『兄は逃げたが、逃げれなかった』:2015/03/22(日) 19:25:28 ID:T9V2PdK.
教科書は破かれるわ、上履き隠されるわ、etc.…噂にゃ裸の写真もばらまくぞとかも脅されたらしい

で、止めて欲しかったら俺と別れろてさ

こうして、俺の初彼女は付き合ってひと月で別れちまった

その後は、家に帰って泣いたよ

その日の妹の満面の笑みでの、『お兄ちゃん遊ぼ!!』は今でも覚えているよ

あの、太陽な笑みには闇があったんだな…

で、次にあったのが中2の頃だ

小6の頃の事があったから、恋愛からはかなり避けていたんだ

まぁ、結果的に中2病を発症させたんだがな

おい、哀れむ目は止めろ

で、そんなある日の事だ

俺は何の気なしに、化学部の部屋に入って

黒板に痛い魔法陣を書いていたら、化学部の先輩に目を付けられてな

で、何回か話している内に意気投合してよ

お!これは、俺にもいよいよ春が来ても良いんじゃないか?と期待しかけてたんだけど、ある日突然にその先輩が居なくなったんだ

他の先輩に、聞いても曖昧な答えしか帰ってこない

で、なんとか中2病ネットワークを駆使した結果

先輩は、売をやっていたかもしれない

という、噂を聞いたんだ

しかも、匿名で写真入りで学校に届いたらしい

やむなく、先輩は転校

864『兄は逃げたが、逃げれなかった』:2015/03/22(日) 19:28:52 ID:T9V2PdK.
これだけだったら、妹を【ヤンデレ】とは疑わなかったぜ?

だが、俺は見ちまったんだ

家のパソコンに、先輩の写真とホテルから出てくるおっさん&少女の写真があるのを…な

そして、それらを使って完成した合成写真も見つかった

そして、背後で『なぁ〜に、しているのぉ?お兄ちゃん。』

という、妹の声

怖かったね。もう、ガクブル

それをきっかけ、に俺は妹の行動すべてが怖くなった

気付いたら、後ろにいる

部屋が同じだから、自家発電出来ないからさ、トイレでしようとするだろ?

すると、寝てた妹が突撃してくんだよ

再三、寝てんの確認したのにだぜ?

他にも俺に関する資料か?が2TBもあるし…

いや、2GBじゃないよ2TBだよ!!

怖すぎだろ!!

だから、妹から逃げるために俺は青春をすてて全寮制の男子高校に入学したんだ

勿論、妹には内緒だ

知ってるのは、親父だけ

中学の頃の友にも口止めしといた

で、卒業後はあわよくばそのまま県外に就職or進学しようと思ってんだ

ふーん、大変なんだな。ま、友達1号として番号交換しね?

いいぜ!あれ、着信?まだ、親父ぐらいにしか教えてないんだがな?

ピルルル♪ピルルル♪

ピルルル♪ピルルル♪

ピルルル♪ピルルル♪






発信【???】



ピ!




オニイチャン、イマドコニイルノカナ?




END

865『兄は逃げたが、逃げれなかった』:2015/03/22(日) 19:31:31 ID:T9V2PdK.
以上です

前みたいに、『殿』や『被害者』や『奴隷』の話とは違った書き方をしてみました

もっと、勉強して再チャレンジします(^_^;)

866雌豚のにおい@774人目:2015/03/22(日) 21:00:39 ID:zuxD3GpQ
まずは読点の使い方を勉強すべき

867「気になるあいつは…」:2015/03/22(日) 21:52:11 ID:wA9MLtJo
※新参者です。
書きたいなら書けばいいと言われたので、駄文ですが書かさせていただきます

俺には中学から気になっている奴がいる。と言っても好意とかそんなんじゃない。純粋な関心だ。俺とそいつは高2の今まで五年間ずっと同じクラスなんだ。

しかし接点は全くと言っていいほどない。中3のときにクラスで再会しても特になにもなかった。さすがに高校まで一緒だったときは驚いたがな。

それでも関わりが増えることはなかった。俺も他人との会話は得意ではないし、向こうも関わろうとしないのだから無理に接する必要はないだろう。

ここまで聞いても特に気になる要素は一つもないが、最近になって気づいたことがある。

園枝は俺の色々なことを知っている。

あぁ、園枝というのは園枝乙葉(そのえだ おとは)。話題にしている奴の名前だ。

話を戻す。ある日、俺が筆箱をどこに置いたかを忘れたときがあった。どこかに持ち運んだ記憶もないので全く分からなかった。そのときだ。

「教卓の下に落ちてるよ。」

園枝が俺だけに聞こえる声で言ってきた。教卓のほうに行くと確かに落ちていた。恐らく誰かが誤って落とすなり蹴るなりして移動していたのだろう。

まぁ、このときは「よく俺の筆箱って分かったな」くらいにしか捉えていなかった。それから二日後、家の鍵が無くなったが、園枝が売店で落としているのを見たと言ってきて無事発見された。

さらに二日後、授業で使ったプリントが無くなったが移動教室で使った教室にあると園枝が言ってきて発見された。それからも俺は色んな物を無くしたが全て園枝によって手元に戻ってきた。

……おかしくないか?なぜ園枝は俺の物が全てどこかにあるかを知っていたんだ?

偶然という可能性もある。だが可能性はほとんどないに等しい。俺以外にも物を無くした奴はいたが、園枝はなにも言わなかった。むしろ無関心だった。

つまり俺の物にしか行動しなかった。

なぜ俺だけなんだ?正直不思議でしかない。ガキの発想なら俺に気でもあるのではと思うのだろうが、本当に不思議すぎる。

まして俺と園枝は関わりがほとんどない。 それこそ無くし物をどこで見たと言ってきたぐらいでしか会話していない。それとも、本当に偶然見ただけでしかないのか?

この疑問がずっとあるのは気持ち悪いと感じた俺は園枝に尋ねた。なぜ俺の無くし物の場所が分かったのか。

だがその反応は予想外のものだった。

「……え?もしかして私に話しかけてるの?」

確かに教室内には他にも人がいたが俺は園枝と面と向かって言ったんだ。他の人に言うなんてことはない。

「本当に?本当に私に話しかけてるの?」

……?こいつは一体どうしたんだ?

「そう…。そうだよね。ずっと一緒だもんね。私たちはやっぱり運命の糸で…」

言っている意味が分からなかったがとりあえず理由を聞ける状態ではなかったので俺は諦めた。

しかしその日の放課後、俺は園枝に呼び出された。下駄箱に入っていた手紙によって。

内容は簡単、話があるから教室内に来いとのことだ。しかし回りくどい呼び方をしたものだな。同じクラスなのだから面と向かって言えばいいのに。

教室の前まで戻ってくる。手紙のとおりなら園枝は既に中にいるようだ。俺はドアノブに手をかけて、止まった。

中から変な音がする…?

ハッキリとは聞こえないが、なにか水のようなものの音だ。教室には水槽はないし、園枝が水でも飲んでいるのか?だとしたら随分と豪快に飲んでいるな…。

とりあえず中に入って確認しようと思いドアを開ける。

868「気になるあいつは…」:2015/03/22(日) 21:54:18 ID:wA9MLtJo
そこには俺の机を舐め回している園枝がいた。

反射的に俺は駆け出した。その判断に至った俺の防衛本能に感謝するしかない。

俺の机を舐める園枝の顔は狂っていた。一週間ぶりの食事を貪るように、そして嬉々とした表情と勢いで舐めていた。

納得がいった。園枝は病的なまでに俺を好いている。片時も俺から目を離さないレベルに。だから俺が無くした物の場所を知っていた。片時も目を離さなかったから。そしてそれが俺の所有物だったから。俺の机もまた、俺の所有物だ。だからあんなことをしていたのだろう。

今までのことを考えると冗談では済まされないレベルに恐ろしい。少なくとも俺は園枝から監視されていたのか。

下駄箱までの道が酷く長く感じた。しかしようやくその一部分が見えてきた。同時に一人の女性の姿も。

思わず足がもつれ転んでしまう。

「勢いよく転んだね。大丈夫?」

教室にいた園枝がすでにいた。机を舐めていたときの涎を拭いていないのか口の周りがテカついている。恐怖で立ち上がれず尻餅を着いたまま後ずさる。

「どうして逃げるのかなぁ?やっと私たち結ばれたんだよ?五年間、長かったなぁ。覚えてる?中学1年生のとき、私を助けてくれたよね。おあのときからずっと好きだったんだよ?」

そうだ。中1のとき、階段から落ちそうになった園枝を助けたことがあった。あれから好きだった?じゃあ園枝は今までずっとーー

「大変だったよ進路先聞くの。プライバシー問題になるからとか言ってなかなか教えてくれなかったんだ。なんとか粘って教えてもらったけど。」

「でも不安だったの。あなたは私のこと好きじゃないのかなって。だって私たちあまり関わりなかったよね。五年間も一緒にいて。でも今日話しかけてきてくれて嬉しかった。だってそうでしょ?話しかけるってことは私に近づきたいってことだもんね。つまり私を好きってことだもんね。」

…この女はなにを言っているんだ?俺はただ疑問に思っていたことを解消するために話しかけたのに、それを好きだからだと?妄想なんてレベルじゃない。ただの病気だ。

ドンッと背中に伝わる感触と共に体が動かなくなる。行き止まりだ。

男が女に追い詰められるなんて滑稽な話だ。

「大好き。大好きだよ。考えてる顔も、寝てる顔も、食べてる顔も、笑ってる顔も、ボーッとしてる顔も。私を助けてくれたヒーローなあなたが大好き。」

だが、

「だから、一緒になろう?」

園枝が相手では仕方ないかもしれない。

気になってしまった俺が悪いのだ。

園枝が俺の首にスタンガンを当てたのを最後に意識が途絶える。


「気になるあいつは狂っていた」

END

869雌豚のにおい@774人目:2015/03/22(日) 22:03:40 ID:q.Olunzs
御二人とも乙です!
ただ<866さんの言うとおりに、読点の勉強をしましょう

870雌豚のにおい@774人目:2015/03/22(日) 22:26:25 ID:T9V2PdK.
なるほど、句点ですか

アドバイスありがとうございます

871雌豚のにおい@774人目:2015/03/22(日) 23:14:23 ID:4CZn3iAc
テストがてら初投稿、初書き込みしたいと思います。

872タイムマシン第1話「未来からの来訪者」:2015/03/22(日) 23:16:38 ID:4CZn3iAc
「タイムマシン?」

眼前の少女からにわかに信じ難い単語が飛び出てきたので思わずオウム返ししてしまった

「はい。私はタイムマシンで未来からこの時代にやってきたというわけです」

「へー、ドラ○もんですら22世紀にできるっていうのに20年後にはもうタイムマシンができんのか、科学の進歩ってすげーな」

普通なら信じない様な話でも目の前に出された新しい元号の十円玉や高性能そうな見たこともない電子機器などを見てると本当ことなのかな、と思えてくる

「そしてこれが私の子供の頃の写真です」

その写真には笑顔いっぱいな小さな女の子とその女の子を肩車している俺が写ってた。全く身に覚えのない写真だ。

「えぇと、これは?」

「私と、私の父との写真です」

「え?父と、ってまさか…」

「…会いたかったよ、お父さん」

そういって彼女は微笑んだ


ーーーーーーーー

遡ること1時間前、月島 優哉(つきしま ゆうや)はいつもの様に高校から帰宅したのちすぐに自分の部屋に入った。そしてカバンを降ろす前にパソコンの電源ボタンを押しその流れでカバンをベットへ投げ込む。

パソコンが起動するしばらくのあいだに着替えをパッパとすませ、そして日課である動画漁りでもしようかとしたその時だった。

突然、風呂場から大きな水音が部屋に聞こえてきたのでびっくりした。

この家は、自分と母しかいない。シングルマザーである母は夜遅くまで、というか夜から朝まで働いているため基本昼から夕方まで寝ている。なので風呂場から水音がなったことに驚いてしまった

母が風呂に入った音かなと思い過ごそうと思ったが風呂に入った音どころの水音ではなかったので気になり確認しに行った。

「母さん?風呂入ってるの?」

ドア越しに尋ねてみるが返事がない。ただのしかばねのようだ…

「母さん?大丈夫?」

少し焦ってきた。もしかしたら過労で倒れたのかもしれない。そんな思考がよぎる。

「ごめん、母さん入るよ!」

救急車って119だよなそんなことを考えつつ扉を開ける。最悪の状態を覚悟しつつ…

しかしそんな不安とは裏腹にそこに居たのはずぶ濡れの服を着た同い年くらいの少女だった

「え、っと、どちら様?」

しばらく固まった後、出た言葉情けないものだった。倒れている母の想像とはかけ離れた状況だったため思考がフリーズしてたのだ。

少女の方も俺の顔を見るや否や、驚きと喜びの顔を浮かべた。

ほう、なかなかのべっぴんさんだな

とふざけたことを考えたらだんだん冷静になり始めた。少女の大きな胸を支えてるであろうブラジャーが透けて見えてるのだ。

ひょっとすると、自分はエライもん見てるのではないか。その考えに至ると急に羞恥心と罪悪感が湧き上がってきた。

「あ、ああ、あああごめん!これで身体拭いて!今着替え持ってくるから!」

バスタオルを少女に投げ、逃げるようにその場を後にする。

「やっぱりこういう時ってジャージなのかな」

自分の部屋に入りジャージを手に取り風呂場へ向かう。

「そうだ、母さんは…」

風呂場に向かう前に母の安否を確認しに行く。寝てるかもしれない母を起こさないようにゆっくり母の寝室の扉を開ける。

「よかった」

そこにはだらしない寝相でいびきをかく我が母親、夏子(なつこ)が寝ていた。

もう一度、起こさないように静かに扉を閉め問題の風呂場へ向かう。

「えっとここにジャージ置いとくからこれに着替えて」

「わかりました」

おお、今思えば初めて声きいた。なかなか可愛いらしい声じゃないか。

こんなに可愛いなら人生イージーモードだろうな。いやベリーイージーか

などとふざけたことを考えると脱衣所から着替え終わった少女がでてきた。

「えっとお話があるので、リビングに行ってもらっていいですか?」

「お、おう」

そしてリビングでテーブルにお互い向き合うように席に座ると少女はいくつかの物をテーブルに並べた。そして

「実は私、タイムマシンで未来から来ました」

こう告げた。

873タイムマシン第1話「未来からの来訪者」:2015/03/22(日) 23:18:28 ID:4CZn3iAc
ーーーーーーーーーーーー

「あぁぁ、会いたかったよぉ」

両頬に手を当てまさに恍惚といった表情浮かべる少女。

「あっとえーと、ごめん。お名前はなんて言うのかな?」

「優佳(ゆうか)。月島優佳です。忘れないでねおとーさん♡」

ショートケーキもびっくりするような甘ったるい声で答えてくる。

てか同い年の女の子にお父さんて言われるのすっごいムズムズする。まるで援交してるみたいじゃないか。

「了解、忘れないよ。ところで優佳さんーーー」

「優佳さんじゃなくて優佳。呼び捨てにして」

「ごめん。って、謝ってばっかりだな俺。それで優佳。タイムマシンはどこにあるの?」

あぁ女の子を呼び捨てにするのもムズムズする。

「無いよ」

「え?」

「タイムマシンはゲート型、んー要するに一方通行型だからこの時代にはタイムマシンは来てないの」

「それでタイムマシン使ったらウチの風呂場についた、と?」

「さすがぁ。お父さんは察しがいいね!」

笑顔が可愛いなぁ。どうやったら俺からこんな可愛い娘が生まれるんだ。さぞかし嫁さんが美人なんだろうな。うん、そうに違いない。未来の俺よくやった!

「んー、お客さん?」

寝起きの目をこすりながら母さんが起きてきた。

「おはよう母さん。ごめんまだ夕飯作ってないわ」

「それはいんだけどさぁ、その娘何?彼女?あんたも隅に置けないわね」

「残念ながら彼女じゃなくて娘だ」

「は?」

「初めまして優佳です。この時代のおばあちゃんも若いなー」

「だれがおばあちゃんじゃ。まだ33だ。それより優哉、あんたそんな趣味あったの?そういうプレイもするのは構わないけど避妊はしなよ?若いうちに子供作ってもろくなことにならないよ、うちのように」

「プレイじゃねぇよ!そんな趣味もない!この子はタイムマシンで未来から来た俺の娘なんだって」

「あんなその話鵜呑みにしたの?」

「え?いやだってここに証拠あるし」

そう言ってテーブルにある物を指差す

「偽物だとは疑わないの?」

「写真だってあるし…」

「今の時代合成写真なんていくらでも作れるでしょ」

「わかりました!証拠を言えば良いんですね!」

突然、優佳が声を荒げた。

「月島夏子。4月12日生まれ。血液型はO型。趣味は美味しいお酒探し。好きな食べ物はイカの塩辛。嫌いな食べ物は納豆とトマト。そして私のおばあちゃん」

「おばあちゃんは余計だけどそれ以外は合ってるわ」

優佳は大きく息を吸った。

「月島優哉。8月15日生まれで血液型はO型。私のお父さんで、趣味はパソコンでの動画閲覧とネットゲーム。それとピアノ、カラオケ。特技は料理で私のお父さん。好きな食べ物は肉じゃがで嫌いな食べ物は梅干し。好きな娘は私で、好きな人も私。得意料理はビーフシチュー。負けず嫌いで体育の授業は誰よりも真剣に取り組んでいて、勉強もしっかりとしてるんだよね。得意科目は物理で、苦手科目は英語。私の大好きなお父さんで、犬派猫派なら猫派。お風呂上がりには必ず牛乳を飲んでいる。身長がもう少し欲しいんだよね。私はいまのお父さんの身長も大好きだよ。好きな動画は歌ってみた系とホラーゲーム実況。寝る前にはホラーゲーム実況を見るのが日課なんだよね。私はホラーは苦手だから寝る前に一緒に動画見れなくて寂しい。他にはそうだなぁ、私の愛するお父さんで意外と趣味とは裏腹にアウトドア派なんだよね。プールよりも海が好きで、山登りも好き。私もお父さんの事は好きだよ。子供の頃にバレンタインで貰ったチョコの最大個数は5個だよね。全部義理チョコってお父さんは言ってたけど、私はあんまり信じられないなぁ。そんなチョコも忘れられるように毎年私は愛のこもったチョコを送ってたんだよ?チョコは甘めより苦目が好きなんだよね。ホワイトチョコは嫌いだよね?私分かってるよ。私の大好きなお父さんの好きなクラシックはベートーヴェンの月光。ボカロやクラシックは聞くけどJPOPは聞かないんだよね。将来の夢は建築家。好きな飲み物はコーラゼロで私の愛してるお父さん。あぁ大好きだよお父さん。それとね、」

「も、もうい

874タイムマシン第1話「未来からの来訪者」:2015/03/22(日) 23:21:32 ID:4CZn3iAc
いよ!十分分かったよ優佳」

「もういいの?お父さんの癖とかまだまだ言えるよ?お風呂に入ると指の関節を鳴らすとか」

「うん分かったよ!ね?母さん」

「そ、そうね」

母さんがドン引きしてる。いやこんなの聞いたら誰でもドン引きするよな。どんだけ俺のこと知ってるのよ。これ以上言わせるとなんか恥ずかしいことまで言われそうだから止めさせないと…

「よかったぁ。おばあちゃんに誤解されたまま暮らしたくないもん」

「ははは」

母さんの乾いた笑い初めて聞いたよ。いつもサバサバしてるし。

「てか夕飯そろそろ作んないと。母さん何食べたい?」

「ん?あぁ、カレーかな」

「分かった、今から作るよ」

「わたしも手伝うよお父さん!」

「うん、お願い」

そう言って優佳とキッチンへ向かった。

875タイムマシン第1話「未来からの来訪者」:2015/03/22(日) 23:25:09 ID:4CZn3iAc
投下終わります。すみません初投稿なので、切り貼りが間違えてます。また読みにくかったらごめんなさい。ペースは遅いかもしれませんが失踪せず完結はさせたいと思ってますのでよろしくお願いします。予定ではヤンデレ親子の一対一の争いを考えてます。今回は子だけでしたが親は次か次の次くらいに出すと思います。長文失礼しました。

876雌豚のにおい@774人目:2015/03/22(日) 23:52:04 ID:VpetS0Lc
いい書き出しだ
最近盛況になってきてていいね

877タイムマシン第1話「未来からの来訪者」:2015/03/23(月) 10:53:50 ID:vRgnp7W6
すみません、間違いがもう一つ見つかったのでもう一度投下させてもらいます

878タイムマシン第1話「未来からの来訪者」:2015/03/23(月) 10:55:34 ID:vRgnp7W6
「タイムマシン?」

眼前の少女からにわかに信じ難い単語が飛び出てきたので思わずオウム返ししてしまった

「はい。私はタイムマシンで未来からこの時代にやってきたというわけです」

「へー、ドラ○もんですら22世紀にできるっていうのに20年後にはもうタイムマシンができんのか、科学の進歩ってすげーな」

普通なら信じない様な話でも目の前に出された新しい元号の十円玉や高性能そうな見たこともない電子機器などを見てると本当ことなのかな、と思えてくる

「そしてこれが私の子供の頃の写真です」

その写真には笑顔いっぱいな小さな女の子とその女の子を肩車している俺が写ってた。全く身に覚えのない写真だ。

「えぇと、これは?」

「私と、私の父との写真です」

「え?父と、ってまさか…」

「…会いたかったよ、お父さん」

そういって彼女は微笑んだ


ーーーーーーーー

遡ること1時間前、月島 優哉(つきしま ゆうや)はいつもの様に高校から帰宅したのちすぐに自分の部屋に入った。そしてカバンを降ろす前にパソコンの電源ボタンを押しその流れでカバンをベットへ投げ込む。

パソコンが起動するしばらくのあいだに着替えをパッパとすませ、そして日課である動画漁りでもしようかとしたその時だった。

突然、風呂場から大きな水音が部屋に聞こえてきたのでびっくりした。

この家は、自分と母しかいない。シングルマザーである母は夜遅くまで、というか夜から朝まで働いているため基本昼から夕方まで寝ている。なので風呂場から水音がなったことに驚いてしまった

母が風呂に入った音かなと思い過ごそうと思ったが風呂に入った音どころの水音ではなかったので気になり確認しに行った。

「母さん?風呂入ってるの?」

ドア越しに尋ねてみるが返事がない。ただのしかばねのようだ…

「母さん?大丈夫?」

少し焦ってきた。もしかしたら過労で倒れたのかもしれない。そんな思考がよぎる。

「ごめん、母さん入るよ!」

救急車って119だよなそんなことを考えつつ扉を開ける。最悪の状態を覚悟しつつ…

しかしそんな不安とは裏腹にそこに居たのはずぶ濡れの服を着た同い年くらいの少女だった

「え、っと、どちら様?」

しばらく固まった後、出た言葉情けないものだった。倒れている母の想像とはかけ離れた状況だったため思考がフリーズしてたのだ。

少女の方も俺の顔を見るや否や、驚きと喜びの顔を浮かべた。

ほう、なかなかのべっぴんさんだな

とふざけたことを考えたらだんだん冷静になり始めた。少女の大きな胸を支えてるであろうブラジャーが透けて見えてるのだ。

ひょっとすると、自分はエライもん見てるのではないか。その考えに至ると急に羞恥心と罪悪感が湧き上がってきた。

「あ、ああ、あああごめん!これで身体拭いて!今着替え持ってくるから!」

バスタオルを少女に投げ、逃げるようにその場を後にする。

「やっぱりこういう時ってジャージなのかな」

自分の部屋に入りジャージを手に取り風呂場へ向かう。

「そうだ、母さんは…」

風呂場に向かう前に母の安否を確認しに行く。寝てるかもしれない母を起こさないようにゆっくり母の寝室の扉を開ける。

「よかった」

そこにはだらしない寝相でいびきをかく我が母親、夏子(なつこ)が寝ていた。

もう一度、起こさないように静かに扉を閉め問題の風呂場へ向かう。

「えっとここにジャージ置いとくからこれに着替えて」

「わかりました」

おお、今思えば初めて声きいた。なかなか可愛いらしい声じゃないか。

こんなに可愛いなら人生イージーモードだろうな。いやベリーイージーか

などとふざけたことを考えると脱衣所から着替え終わった少女がでてきた。

「えっとお話があるので、リビングに行ってもらっていいですか?」

「お、おう」

そしてリビングでテーブルにお互い向き合うように席に座ると少女はいくつかの物をテーブルに並べた。そして

「実は私、タイムマシンで20年後の未来から来ました」

こう告げた。

879タイムマシン第1話「未来からの来訪者」:2015/03/23(月) 10:57:05 ID:vRgnp7W6
ーーーーーーーーーーーー

「あぁぁ、会いたかったよぉ」

両頬に手を当てまさに恍惚といった表情浮かべる少女。

「あっとえーと、ごめん。お名前はなんて言うのかな?」

「優佳(ゆうか)。月島優佳です。忘れないでねおとーさん♡」

ショートケーキもびっくりするような甘ったるい声で答えてくる。

てか同い年の女の子にお父さんて言われるのすっごいムズムズする。まるで援交してるみたいじゃないか。

「了解、忘れないよ。ところで優佳さんーーー」

「優佳さんじゃなくて優佳。呼び捨てにして」

「ごめん。って、謝ってばっかりだな俺。それで優佳。タイムマシンはどこにあるの?」

あぁ女の子を呼び捨てにするのもムズムズする。

「無いよ」

「え?」

「タイムマシンはゲート型、んー要するに一方通行型だからこの時代にはタイムマシンは来てないの」

「それでタイムマシン使ったらウチの風呂場についた、と?」

「さすがぁ。お父さんは察しがいいね!」

笑顔が可愛いなぁ。どうやったら俺からこんな可愛い娘が生まれるんだ。さぞかし嫁さんが美人なんだろうな。うん、そうに違いない。未来の俺よくやった!

「んー、お客さん?」

寝起きの目をこすりながら母さんが起きてきた。

「おはよう母さん。ごめんまだ夕飯作ってないわ」

「それはいんだけどさぁ、その娘何?彼女?あんたも隅に置けないわね」

「残念ながら彼女じゃなくて娘だ」

「は?」

「初めまして優佳です。この時代のおばあちゃんも若いなー」

「だれがおばあちゃんじゃ。まだ33だ。それより優哉、あんたそんな趣味あったの?そういうプレイもするのは構わないけど避妊はしなよ?若いうちに子供作ってもろくなことにならないよ、うちのように」

「プレイじゃねぇよ!そんな趣味もない!この子はタイムマシンで未来から来た俺の娘なんだって」

「あんなその話鵜呑みにしたの?」

「え?いやだってここに証拠あるし」

そう言ってテーブルにある物を指差す

「偽物だとは疑わないの?」

「写真だってあるし…」

「今の時代合成写真なんていくらでも作れるでしょ」

「わかりました!証拠を言えば良いんですね!」

突然、優佳が声を荒げた。

「月島夏子。4月12日生まれ。血液型はO型。趣味は美味しいお酒探し。好きな食べ物はイカの塩辛。嫌いな食べ物は納豆とトマト。そして私のおばあちゃん」

「おばあちゃんは余計だけどそれ以外は合ってるわ」

優佳は大きく息を吸った。

「月島優哉。8月15日生まれで血液型はO型。私のお父さんで、趣味はパソコンでの動画閲覧とネットゲーム。それとピアノ、カラオケ。特技は料理で私のお父さん。好きな食べ物は肉じゃがで嫌いな食べ物は梅干し。好きな娘は私で、好きな人も私。得意料理はビーフシチュー。負けず嫌いで体育の授業は誰よりも真剣に取り組んでいて、勉強もしっかりとしてるんだよね。得意科目は物理で、苦手科目は英語。私の大好きなお父さんで、犬派猫派なら猫派。お風呂上がりには必ず牛乳を飲んでいる。身長がもう少し欲しいんだよね。私はいまのお父さんの身長も大好きだよ。好きな動画は歌ってみた系とホラーゲーム実況。寝る前にはホラーゲーム実況を見るのが日課なんだよね。私はホラーは苦手だから寝る前に一緒に動画見れなくて寂しい。他にはそうだなぁ、私の愛するお父さんで意外と趣味とは裏腹にアウトドア派なんだよね。プールよりも海が好きで、山登りも好き。私もお父さんの事は好きだよ。子供の頃にバレンタインで貰ったチョコの最大個数は5個だよね。全部義理チョコってお父さんは言ってたけど、私はあんまり信じられないなぁ。そんなチョコも忘れられるように毎年私は愛のこもったチョコを送ってたんだよ?チョコは甘めより苦目が好きなんだよね。ホワイトチョコは嫌いだよね?私分かってるよ。私の大好きなお父さんの好きなクラシックはベートーヴェンの月光。ボカロやクラシックは聞くけどJPOPは聞かないんだよね。将来の夢は建築家。好きな飲み物はコーラゼロで私の愛してるお父さん。あぁ大好きだよお父さん。それとね、」

880タイムマシン第1話「未来からの来訪者」:2015/03/23(月) 10:58:00 ID:vRgnp7W6
「も、もういいよ!十分分かったよ優佳」

「もういいの?お父さんの癖とかまだまだ言えるよ?お風呂に入ると指の関節を鳴らすとか」

「うん分かったよ!ね?母さん」

「そ、そうね」

母さんがドン引きしてる。いやこんなの聞いたら誰でもドン引きするよな。どんだけ俺のこと知ってるのよ。これ以上言わせるとなんか恥ずかしいことまで言われそうだから止めさせないと…

「よかったぁ。おばあちゃんに誤解されたまま暮らしたくないもん」

「ははは」

母さんの乾いた笑い初めて聞いたよ。いつもサバサバしてるし。

「てか夕飯そろそろ作んないと。母さん何食べたい?」

「ん?あぁ、カレーかな」

「分かった、今から作るよ」

「わたしも手伝うよお父さん!」

「うん、お願い」

そう言って優佳とキッチンへ向かった。

881タイムマシン第1話「未来からの来訪者」:2015/03/23(月) 11:01:19 ID:vRgnp7W6
修正点は優佳が未来から来た、というセリフに20年後を足しました。これがなかったら冒頭の20年後がなんで分かってんの?みたいな感じになるのと2話の展開や今後の展開で年数が少し大切なので2話を書いてる際に不都合がでてきたからです。何度も投稿してすみませんでした。ではまた近いうちに。

882雌豚のにおい@774人目:2015/03/23(月) 14:01:58 ID:Vf1Kij3U
GJです
続き待ってますよ

883雌豚のにおい@774人目:2015/03/23(月) 23:21:17 ID:DBeikNBM
のどごしさんマダー?

884sage:2015/03/23(月) 23:41:57 ID:.fgeiKGE
この人の作品ってこのスレ向きっぽいよね、MCだけど
http://zaxon.80code.com/tmp/nv_idx/nv_idx178.htm

885雌豚のにおい@774人目:2015/03/24(火) 02:11:57 ID:Hoon./qo
皆様グッジョブです

886名無し:2015/03/28(土) 18:22:04 ID:KB8vTZXY
「気になるあいつは…」の者です
書き溜めが溜まり次第投稿したいと思います

887雌豚のにおい@774人目:2015/03/28(土) 20:12:55 ID:t53kT44s
待ってるからね

888 ◆wIGwbeMIJg:2015/03/30(月) 00:16:25 ID:fJ8a1bd6
新参者ですが、短いものを投稿します

889 ◆wIGwbeMIJg:2015/03/30(月) 00:17:37 ID:fJ8a1bd6
[訪問者]

休日のある日、マンションの一室で私は部屋で寛ぎながらネットサーフィンしていた

数々のお気に入りのサイトを巡っていたところ、突然チャイムが鳴った

時計を見ると、もうすぐ昼時の11時50分

注文した漫画が来たかと思ったが、すぐに否定した

宅配便なら事前に連絡がくるようにしてある

まだ電話は鳴っていないし、荷物がとどく時間は午後の2時だ

友人の訪問かと考えたが、それはありえないことだ

なぜならそんな友人はいないし、私の友人はメアドを変えた時しか連絡を寄越さない

そもそも友人と呼べるレベルになっているのかも怪しいのが現状だ

そうこう思案している内、再びチャイムが鳴り響いた

我に返った私は取り敢えず訪問者を確認する為にドアスコープを覗いた

ドアの向こうには制服姿の少女がいた

髪は肩までのショートヘアで、良くも悪くもない平凡な顔立ち

パッと見ればどこにでもいるような女学生

制服はこの市内にある中学校のものに似ているようだが、怪しい

私はデリヘルなどいうものは呼ばないし、呼んだ覚えはない

怪しすぎるので一応チェーンをかけたままドアを開けた

「あの・・・どちら様ですか?」

どういう訳か見ず知らずの少女は不機嫌な表情になり

「どちら様?ではないですよ。せっかく愛しの彼女が会い来たっていうのに、なんですか?まったく・・・」

何をいうかと思ったら、開口一番意味不明なことを言ってきた

彼女?だいたい私は君のことなぞ出会ってもいないし、彼女以前に赤の他人なんだが

こういう輩には相手したらいけない

触らぬ神に祟りなし、である

問答無用でドアを締めようとしたらドアとの隙間に足を突っ込んできた

「何締めようとしているんですか?入れてくださいよ」

「なんなんだアンタは?!」

「だからぁ、彼女ですよ。かーのーじょ。彼氏の家に彼女が来るのは普通でしょ?」

「アンタと恋人関係になった覚えはないぞ!」

「どーしてそんな意地悪なことを言うの?それと、私はアンタじゃなくて茜ですよー」

「これ以上いい加減なことを言うと警察を」

次の瞬間、チェーンが壊れた

いや、正しくは茜と名乗る少女がどこからか取り出した工具でチェーンを切断したのだ

ドアを乱暴に開け放つと、彼女は満面の笑みで近づいてくる

私にとっては、彼女の笑みが筆舌し程の難い恐ろしい笑顔に見えた

「私がこんなにもアナタのことを愛しているのに、なんでアナタはそんな態度をとるのかなぁ?これはオシオキが必要だね♪」

この女は危険だ!

とにかく、逃げなくては!

窓から逃げようと少女に背を向けた途端、体に激痛が走り、そのまま前のめりに倒れてしまった

疑問に思う前に、首に何かを当てられたと思った瞬間、私の意識は暗転した

「さすが最強と謳われているスタンガンですねぇ。さて、彼には私のお家に連れていかなきゃ♪」

「ウフフ・・・愛していますよ、私の愛しい旦那様・・・」

後日、某マンションの住人が失踪するが、警察は未だ手掛かりは掴めていない

890 ◆wIGwbeMIJg:2015/03/30(月) 00:22:00 ID:fJ8a1bd6
投下終了。
衝動的に書き上げたものなので、すみません

891雌豚のにおい@774人目:2015/03/30(月) 01:24:29 ID:FLSR.jYQ
無難is良い

892「ほしいもの 前編」:2015/03/30(月) 09:28:54 ID:ktn14Xxg
「嫌だ…もう嫌だ…!」

俺こと柴山元気(しばやま げんき)は山道を走っている。理由は単純。

自殺するためだ。

「追ってきてないよな…?」

後ろを振り返るが追ってきてる気配はない。今しかチャンスはない。

「早く、早く…死なないと…!」

端から見れば自殺するにしても急ぎすぎに見えるだろう。自分でも分かっている。だが急がないといけない。

あいつ、桑畑海(くわばた うみ)に捕まる前に。

出会いは大学1年のときだ。一人暮らしをしている俺は生活費を稼ぐために喫茶店でバイトをしている。海はそこの客だった。

その店ではその日に入る店員ごとにメニューが変わる。コーヒー、カフェオレなどなど。俺はその中のコーヒー担当だ。

先輩に淹れ方を教わったときにコーヒーの淹れ方が上手かったとのことで、この役割に付いている。

893「ほしいもの 前編」:2015/03/30(月) 09:32:03 ID:ktn14Xxg
ある休日の夕方、閉店まであと少しというときだった。

カランカランと音をたててドアが開く。

「いらっしゃませ。」

本当なら接客担当の人がいたのだが、丁度裏の仕事に回っていたので店内にいた俺がオーダーを聞く。

「ご注文、は…?」

俺は様子の変さにすぐに気づいた。彼女は泣いていた。

「…コーヒーで…。」

今にも消えてしまいそうな声で言ってきた。

「(なるほど、失恋か…)」

根拠こそなかったが、俺は確信した。先輩によれば彼女のように啜り泣きながら携帯を眺めている人を大概失恋した人らしい。事実、そのほとんどがそうだった。だから今回もそうなんだろう。

俺はすぐにコーヒーを淹れる。幸い店内には彼女以外に客はいなかったので手間をかけることができた。

「お待たせいたしました。コーヒーになります。」

彼女の前にコーヒーを置く。

いまだ啜り泣く彼女は震える手でカップを掴み一口。

「甘っ…!」

そのあまりの甘さに驚き俺を見る。

「どうでしょうか?」
「お…美味しいですけど、甘すぎないですか?」

それはそうだ。一手間かけたからな。

「せめてコーヒーだけは甘く味わってほしかったので。」
「え…?」

これは俺の持論だ。辛いことを思い出し、または味わって苦しんでいるのならせめて少しでも紛らせるものを出そうと。

ならば甘いものという答えにいたった。

彼女は再びコーヒーに口をつける。

「甘い…、甘いよぉ…!」

彼女は溢れ出したかのように大粒の涙を流す。

それから数分後、戻ってきた先輩に勘違いされ、その誤解を解く頃には閉店時間を過ぎていた。

それから閉店後の掃除や仕込みなどを終える頃には外は暗くなっていた。

「お疲れー。」
「お疲れ様です。」

先輩と別れの挨拶をし帰路につこうとする。

「あの!」
「はい?」

呼び止められたので振り替えると、そこには彼女がいた。

「あれ、帰ったんじゃなかったんですか?」
「その…、お礼が言いたくて待ってました。」
「今までですか!?」

閉店してからの作業を終わるまで一時間以上かかる。それまでずっと外で待っていたのか?

「すみません。長い時間待たせてしまって。」
「い、いえ!私が勝手に待っていただけなんで!」

そこで俺は改めて彼女を見る。大分落ち着きを取り戻したのか顔には笑顔が戻っている。少し前まで号泣していた人とは思えなかった。

それにしてもどうしてこんな可愛らしい人がフラれるのだろうか?モデルとまではいかないが、顔立ちは整っているし私服のラインからスタイルがいいのも伺える。となると彼氏に見る目がなかったのか、それとも彼女の性格に問題があるのか。

「お礼と言っても、自分はコーヒーを出しただけですよ。」
「それでもですよ。」

そう言って彼女は柔らかく微笑む。…ほんとなんでフラれたんだこの人?

894「ほしいもの 前編」:2015/03/30(月) 09:35:03 ID:ktn14Xxg
「あ、お名前聞いてもいいですか?」
「柴山元気です。そこの󾀕×大学の1年生やってます。」
「私は桑畑海。󾀕×大学ってことは柴山君は後輩だね。」
「は?」
「私、そこの3年生なんだ。」

年上だということは雰囲気からも薄々気づいていたが、まさか学生だとは思わなかった。

それに桑畑海という名に覚えがある。確か友達間で可愛いと有名な先輩だの名だ。まさかこんな形で出会うとは…。

「柴山君、改めて今日は本当にありがとう。」

彼女は深々と頭を下げてきた。年上に頭を下げられるなんてことをされたことがなかったので困惑する。

「ちょっ!頭上げてください!周りの目もありますから!」
「本当に、ありがとうございました。」

ついには敬語で言われてしまった。ヤバイぞ。色々と初体験すぎる。

「分かりました!じゃあ今度学食奢ってください!それでお礼はいいですから!」

そう言うと彼女はようやく頭を上げてくれた。人が少なくて助かった…。

「そうだ。柴山君は毎日シフト入ってるの?」
「毎日じゃないですよ。」

俺はこの店の営業形体を説明する。

「じゃあ柴山君はコーヒーの日だけなんだ。」
「まぁ、そうですね。」
「じゃあLINE教えてよ。それが柴山君が入る日が分かったら教えて?」
「構いませんけど…、ここのコーヒー好きになったんですか?」
「まぁ、それもあるかな…。」

頬をかきながらはにかむ。正直可愛い。

「IDでいいですか?」
「いいよ。」

俺は自分のLINEIDを教えた。

「うん、確かに。じゃあまた今度ね!」
「は…はぁ。」

言うが早いか彼女は小走りで去っていった。

「なかなか大胆な人なんだな…。」

俺は苦笑いしながら呟いた。

翌日、平日で講義日。午前の講義を終えた俺は伸びをする。

「元気、飯どうするよ?」
「んー、そうだな…。」

と言って悩んでいると、

「柴山君ー!」

つい昨日聞いたばかりの声が響いた。

「桑畑先輩!?」
「やほー。」

手をヒラヒラと振りながら近づいてくる。

「お礼をしにきたよ。」
「お礼って、学食の話ですか?」
「そう!」
「いや、わざわざ次の日にしなくても…」
「柴山君の友達君?この子借りてってもいいかな?」

無視かよ。

「だ…大丈夫ですよ。」
「こ…こっちはこっちで食べるんで。」

突然話かけられた二人は反射的に頷く。

「じゃあ行こっか。」
「ちょっ、待ってくださいよ。」

俺は二人に片手で謝り彼女を追う。

「柴山君はどうして喫茶店でバイトしてるの?」
「それはーー」

絶賛二人で向かい合いながら昼食中。それも昨日知り合ったばかりの人と。

あの二人とでさえ知り合った次の日に一緒に飯を食べるなんてことしなかったぞ。どんだけ行動的なんだこの人。

「…ふふっ。」
「?なにが可笑しいんですか?」
「あぁ、違う違う。こんな普通に会話したの久々だなぁってね。」
「ただの世間話ですよ?」
「そうなんだけど…。」

すると彼女は暗い表情になり少しうつ向いた。その姿が昨日の喫茶店での姿と重なる。

「私ね、友達いないの。」
「は?どうしーーーあぁ…。」

瞬時に理解した。その意味を。そして表情との関連性を。

「嫉妬よるハブり、ですか。」
「まぁ、そうだね…。」

一瞬驚いた顔をした彼女らだったがすぐに苦笑する。無理矢理なのが分かった。

895「ほしいもの 前編」:2015/03/30(月) 09:36:13 ID:ktn14Xxg
「はじめの頃は普通にいたよ。でも周りにもて囃されてるのが気に入らなかったらしくてね。それに私頭も良かったから…。」

女性というものは優れている人ほど孤独になる、という言葉を聞いたことがある。嫉妬や劣等感から除け者にし、終いには事実ではないことを言われ糾弾される。

「彼氏には嫌われないようにやってたからこういうことを相談することもできなかったから…。」
「つまり自分の弱い部分を見せられなかったのが原因だと。」
「……え?」

どうやら彼女は事を重く受け止めすぎたようだ。

「それはそうでしょう。最初から仲良くしたくないのに近づく人はいません。皆仲良くなりたいと思ったんでしょう。」

けど、彼女は間違えた。

「我慢しすぎましたね。」
「柴山君、なんか…慣れてるね。」
「そういう客の対応もあるんで。」

特にあなたみたいに閉店間際に来る客は。

「なに考えてるか分からない人間には誰も近寄りたくないですよ。」
「じゃあ、柴山君は?」
「まぁ、彼氏にフラれて泣くほどに心が弱いってことぐらいは認識してますよ。」
「なっ!?」

俺の言葉が予想外だったのか、はたまた痛いところを突かれたのか顔を真っ赤にする。

「からかいすぎでしょ!」
「つまり桑畑先輩はからかえるくらいに普通なんです。」
「………!」

その姿を当時友達だった人たちに見せれば結果は変わったんだろうけど。

「優秀な人はいても完璧な人はいませんよ。先輩は完璧なんですか?」

テーブル内に沈黙が下りる。どちらも喋らないのは久しぶりな気がする。それだけどちらかが話していたようだ。

「あはははは!」

突然先輩が大声を上げて笑い出す。

「ちょ…先輩!周りに迷惑ですから!」
「ご…ごめんね。でも、くっ…ふふっ!」

なにが一体おもしろかったのか。それよりも周りの目が痛い…!

しばらくしてから先輩はようやく落ち着いてくれた。

「落ち着きました?」
「うん、やっとね。」
「ほんとですよ…。」

ただでさえこの席に着いた瞬間から視線を感じていたんだ。さっきの笑い声だけで相当な注目を浴びただろう。

「ふふっ。ねぇ、柴山君。」
「はい?」
「私、もっと早く出会っていたかったな。」
「それは先輩の悩みを多少なりとも解消することができたってことでいいんですか?」
「もちろん。」

ならよかった。あの雰囲気のまま別れるのも後味が悪いだろうからな。

「じゃあ午後の講義もあるんでこれで。」
「あ、うん。」

……?なんか歯切れの悪い反応な気がするが気のせいか?

「それでは。ご馳走さまでした。」

周りからの視線はまだあったが気にしたら負けだろう。

896「ほしいもの 前編」:2015/03/30(月) 09:37:25 ID:ktn14Xxg
皆理解してくれてると思った。私が理解してるんだから、皆も理解してると思った。味方だと思っていた。

でも違った。悪態をつかれ邪魔者扱いされ皆離れていった。私を理解してくれていなかった。

彼氏だった男もそうだった。私を理解してくれていなかった。

最後の砦、もとい味方だと思っていた彼からの拒絶。そしてついに一人に、独りになってしまった悲しみに心が折れてしまった。

そんなとき、彼に出会った。最初の印象はあまりパッとしない感じの店員。

けど、折れた心を繋ぎ止めてくれた。そして、彼は気づいてくれた。私の気持ちを、裏を、闇を。あまつさえ原因まで教えてくれた。

神様とまではいかないが、彼が天使に見えた。独りになってしまった私に手を差し伸べてくれた天使。

もっと早く出会いたかった。これは本音だ。そうすれば私の周りや環境はもう少し変わったかもしれない。

けど、もうそんなのどうだっていい。だって彼に出会えたんだから。彼に救われたんだから。

これが神様のイタズラなら、神様って嫌な性格してるね。

これじゃあずっとすがり付くしかないじゃない。

手放したくなくなっちゃうじゃない。










ーー私のモノにしたくなっちゃうじゃないーー

897名無し:2015/03/30(月) 09:40:52 ID:ktn14Xxg
「ほしいもの」二部構成でやらせていただきます。

後編は終わりまで作るので少し時間がかかります。

駄文ですが見てやってください。

898雌豚のにおい@774人目:2015/03/30(月) 21:26:24 ID:kbRa06yM
いいクオリティだ。
続き楽しみに待っています。

899雌豚のにおい@774人目:2015/03/30(月) 23:39:45 ID:xjHOgOqQ
グッジョブです!

900雌豚のにおい@774人目:2015/04/05(日) 13:51:17 ID:63i5niG.
投下多くて嬉しい

901雌豚のにおい@774人目:2015/04/13(月) 21:40:16 ID:YpkdtHA.
チンチン

902雌豚のにおい@774人目:2015/04/22(水) 05:27:13 ID:PGi7K7T6
俺も書いてるんだけどねえ
中々時間が取れん

903雌豚のにおい@774人目:2015/04/23(木) 04:53:01 ID:7dNV8KQI
>>902
安心しな
ゆっくりでいいぜ!
最近は暖かくなってきて全裸待機しやすくなったしな!!!

904雌豚のにおい@774人目:2015/04/23(木) 20:16:47 ID:qJ5N6bf.
ネクタイと靴下は忘れるなよ

905雌豚のにおい@774人目:2015/04/24(金) 22:39:13 ID:vt/VHZ3U
あーインスピレーション湧いてきたわ
続き書いていい?
結構有名な書き手なんだが

906雌豚のにおい@774人目:2015/04/25(土) 20:18:50 ID:vwj.oE6s
おねがいします
ぜひ
ぜひ

907雌豚のにおい@774人目:2015/04/26(日) 12:59:11 ID:RxjHfw8I
有名な書き手さんあざっす

908雌豚のにおい@774人目:2015/04/26(日) 18:46:01 ID:N/cza4BY
酉テス。
905じゃないけど小ネタ

909ヤンデレ彼女とお電話 ◆7GucI4/V8s:2015/04/26(日) 18:49:56 ID:N/cza4BY
あっ。こっちかな

910ヤンデレ彼女とお電話 ◆7GucI4/V8s:2015/04/26(日) 18:50:37 ID:N/cza4BY

ねぇ……今どこにいるの……?

えっ、お姉さんと一緒……?
おかしいよね? 彼女、私だよね? 
どうして、私をほっぽって、お姉さんと一緒にいるの?

いい。分かった。あなたは分かってないの。
あなたには私しかいないんだって。あなたは私がいればいいんだって。

くす。なんでもない。ねぇ……今日、会いたいな。私の家、来ない?

そう、良かった。
そうね。1時間後、来てね。絶対。
安心していいよ。とっても楽しませてあげるからね。

お姉さんの事なんて……ううん、何でもない。大好きだよ。また、ね。

911雌豚のにおい@774人目:2015/04/27(月) 02:22:12 ID:Gmy2dNP.
終わりかな?
雰囲気は悪くないから
文章量を増やしていくと良いと思うぞ

912雌豚のにおい@774人目:2015/04/27(月) 22:47:06 ID:vFbPNreA
君は僕しか見ちゃいけないんだよ?
だって僕は君以外見ないもん
だから君も、僕のことだけ見てればいいの
他の人なんていらない、君と僕だけでいいんだよ?
だから、これは仕様がないことなの。
分かってくれるよね?

913雌豚のにおい@774人目:2015/04/27(月) 22:55:15 ID:vFbPNreA
僕は愛を振り上げた。
大きな大きな愛を
君は喜んでくれるかな
君が僕だけの物になるにはこうするしかないんだよ
瞬間、鮮やかな赤が散った
君の愛が僕に触れる
やっと、僕だけの物になってくれたね

914雌豚のにおい@774人目:2015/04/28(火) 00:07:44 ID:hTk9R8kA
ts

915雌豚のにおい@774人目:2015/04/28(火) 01:45:17 ID:hTk9R8kA
投下します

短いですがよろしくお願いします

916雌豚のにおい@774人目:2015/04/28(火) 01:55:58 ID:hTk9R8kA
「今日もいい天気だぁ...」
大きく伸びをし、学校に出掛ける準備をする。
母は今日も朝早く出ているようだ。
今日こそは彼女が来る前に家を出たいところだが...。

「おはよー! 起きてるー?」
遅かったようだ 鍵を開けに玄関へ向かう。
「おはよう」
「おはよー! 今日もいい天気だね ちょっと待ってて! 今朝ごはん作るから!」
「うん ありがとう」
毎日のように来てくれる彼女の名は美鶴。
幼い頃に近所の公園でたまたま一人の彼女に話しかけて以来、ここまで仲良くなったわけなんだが...。

最近彼女との接し方について色々考える事がある。
俺達ってもう高校生なんだし、この距離は近すぎるんじゃないかなと思うんだ。
俺と一緒にいるせいで彼女は美人だがゲテモノ好きの変な女というレッテルを貼られている。
185㎝で顔はブサイク芸人のあの人に似てると言われる俺だ。
彼女といると、美女と野獣どころではない。
もう、なんだ 例えようがないのだ。
そのせいで、彼女に近寄りがたいという噂は高校入学2ヶ月目にして、全校に広まっている...らしい。
その他にもあるのだが、キリがない。
だから、今日こそ言おうと思う。

俺達、少し距離をとらないか?

「朝ごはんできたよー」
美鶴が作るメシも今日で食えなくなると思うと、残念ではある。
しかし、お互いのためにも距離をとることは必要なんだ。
美鶴ならもっといい男が出来るだろうし、何より昔の"アレ"のことをもう気にせず彼女には前を向いて欲しいと思っている。
「今日はねー シンプルにスクランブルエッグとフレンチトーストにしてみたんだー」
ふふん!と彼女は自慢気にしている。
学校の奴等があの美鶴が自慢気な顔をしていると知ったらどんな反応をするのか気になるところではある。
...いかんいかん いつもの雰囲気に流されては駄目だ。
はっきり言うんだ。
「あのな..美鶴」
「んー?」
「毎日俺と一緒にいるの疲れないか?」
「そんな事ないよ すっごく幸せだよ?」
やめてくれ。
なんでそんな満足そうな顔が出来るんだ。
なんでそんな事が言えるんだ。
「いや、でも...な? 恋人でもないのにいつも一緒にいるのは、周りの目が気になるし」
「どうでもいいよ」
俺の言葉を斬るかのように断言する。
「私は今も昔もこれからも君といれればいいの」
「その他にはなにもいらないし、なにも欲しくない」
「...そうか」
やっぱり、駄目か。

「なぁ...どうしたらいいと思う?」
「彼女でも作ればいいんじゃねえか?」
朝の一件を悪友の木田に話し、アドバイスを貰おうと思ったが、全く頼りにならん。
「自慢じゃないが、俺はお前と違ってモテたことはないんだ」
「モテるモテないは関係ないだろ 彼女を作ろうって意志があれば大抵はイケるぞ」
簡単に言ってくれるな。
これまた自慢じゃないが、最近美鶴以外の女子と喋ったのは生徒会長の涼先輩だけなんだ。
しかも、ほぼ事務的な話しかしていない。
「なら、生徒会長でもよくね?」
鼻をほじりながら面倒くさそうにいう木田。
あぁ、こいつは真面目に相談に乗る気がないのか。
「もうわかった お前にはもうこの件については話さん」
「怒んなよ なんであの美人と離れたがってんの?」
「それは...色々あるんだよ」
「その色々について話してくんねーと、俺も的確なアドバイスが出来ねーのよ」
くっ、こいつ...。
「...話したくない」
「んじゃ、この話は終わりな 眠いし寝るわー」
やはり、自分で考えないといけないか...。

それからは、いつも通り昼休みには美鶴が持ってきてくれた昼飯を一緒に中庭で食べた
周りから奇異の目で見られるのは慣れたが...。

彼女のためにもこの関係をどうにかせねば...。
そんな事を考えつつ、生徒会室へと向かった。

917雌豚のにおい@774人目:2015/04/28(火) 01:57:38 ID:hTk9R8kA
短いですが投下終了です

失礼しました

918雌豚のにおい@774人目:2015/04/28(火) 06:33:07 ID:kDm1GqG6
>>917
GJです
続き待ってますよ

919雌豚のにおい@774人目:2015/04/28(火) 23:07:45 ID:vVUetmTE
ぐっじょぶです!

920雌豚のにおい@774人目:2015/05/07(木) 21:36:12 ID:I3agsmds
gw

921雌豚のにおい@774人目:2015/05/09(土) 22:30:08 ID:YYkrDApc
ぼっち面白いなぁ
早く続きみたい

922雌豚のにおい@774人目:2015/05/14(木) 20:13:39 ID:0Uh1A2WI
ちんちん

923タイムマシン第2話:2015/05/17(日) 19:05:56 ID:pYiaR1yQ
投下します

924タイムマシン第2話 「一夜を越えて」:2015/05/17(日) 19:06:28 ID:pYiaR1yQ

「じゃあ行ってくるわ、留守よろしく」

「あい、行ってらっしゃい」

「いってらっしゃーい」

夕飯のカレーそそくさと食べた母さんはいつものように仕事へ向かった。

いつもすまんな母さん、感謝してるよ

「お父さんはそのまま休んでて!私お皿洗ってくるよ!」

「いやぁそのくらい自分でやるよ、いつもやってるし」

「いいからいいからぁ。未来では皿洗いは私がやってたんだからねっ」

と言われ無理やり自分の部屋に押し込められた。

部屋に入るとパスワード入力画面のまま止まってるパソコンが目に入った。

そういえばまだパソコンやってなかったっけ

0815と生年月日まんまの役割ほぼなしのパスワードを入力し起動を待つ

普段この待ち時間に着替えをするけど、もう普段着を着てるためスマホを手に取り待つことにした。

スマホのロック画面を解除して目に入るのはLINEのアイコンの右上についている数字が147になっていることだった。

これは決して俺が友達が多くてこんなにメッセージが多いとか、よく喋るグループLINEに属してるとかそういうことじゃない。

たった一人の人物から送られてくるものだ。

あまり長い間既読つけないと、ブロックしてるかとヒステリックになるので147と数字のついてる人物、「山口 佳奈」のトークを開くことにした。

その途端、

『あ、こんばんわ!』

と148番目のメッセージが書き込まれた。

こいつはずっと俺とのトークを開いているか、既読をつけたらいつも即時反応するんだよなぁ

『こん』

といつも通りの返信をした。

そしてメッセージの数々を見てみる

『今日はケーキ作ってみたよ!』

とか

『宿題やった〜??』

など他愛もないメッセージの数々だった。

こいつほんと暇人だな。

山口 佳奈。同じ幼稚園、同じ小学校、同じ中学校、そして現在において同じ高校に通う、まさに『幼馴染み』という関係だ。

中学生の頃、初めて幼馴染みモノの小説を読んだとき、当時は少し厨二病も患ってことから誰かが俺と佳奈の行動を監視してるのか、とアホな妄想していた。

そんなことはなかったと最初に気付いたのは、幼馴染みの男女は幼い頃に結婚の約束をするというお約束を知った時だった。

小さい頃の記憶をひねり出してもそんな約束した覚えはなく、その時初めて監視なんてされていないと知ったのだ。

思えば佳奈はずっと遊んでいる仲だな

幼稚園のころは一緒に外で遊び、小学生の頃はお互いの家でテレビゲームをして、中学生になると俺はネットゲームにハマったけどまさか佳奈までハマるとは思わなかったな。

全部が全部ではないがよく趣味が合うんだよなぁ

横目でちらとパソコンを見ると起動が終わっており、キーボードとマウスに手を伸ばそうとしたが、

「ねむい」

強烈な睡魔がその行く手を阻んだ。

なんだこれ、眠すぎる

ちらと今度はベッドを横目で見ると、まるで桃源郷のようにみえてしまう。

「だめだ、寝よう」

睡魔との対決はあっさりと、睡魔の圧勝で終わりベッドを倒れこんだ。

『ねむい、寝るわ乙』と一言、LINEにメッセージを書き込み、目を閉じた。

(…あっ、そういえば)

この家にいるもう一人の人物のことを思い浮かべたときには、その意識はプッツリと切れてしまった。

925タイムマシン第2話 「一夜を越えて」:2015/05/17(日) 19:08:11 ID:pYiaR1yQ
ーーーーーーーーーーーーーーーー

まさか、成功するなんて思ってもみなかった。

確かにあの女は大嫌いだが、研究者としては一目おいていた。

しかしタイムマシンなんて本当に作れるなんて信じていなかった。

あの時、人生に絶望してたあの時、藁をもすがる思いでタイムマシンを使った。そして成功した。

また、お父さんに会えた。転送先がお風呂で良かった。嬉しくて泣いてるのがお風呂の水でバレなかったから。お父さんに心配かけたくなかったから。

そして今、未来から持ってきた荷物の一つの錠剤が入ってるビンを眺めていた。そのラベルには「睡眠薬」と書かれていた。

「ふふっ、ごめんね。お父さん」

錠剤を砕いて父さんのカレーにこっそり混ぜたのだ。

「そろそろ寝た頃かなー」

ビンをポケットにしまいお父さんの部屋のドアをゆっくり開ける。

そこにはだらしない格好で寝ているお父さんとその右手にはスマートフォンが握られていた。

「ごめんねーお父さん、ちょっと携帯借りるよぉ〜」

お父さんの右手からスマートフォンを抜き取り画面をつける。

そこでパスワード要求された。

「えーっと、0、8、1、5っと。あはは、お父さんパスワード変えたほうがいいよ。…変えられたら困るけどね」

ロック解除された画面を見るとそこには、憎たらしいあの女の名前があった。

気がついたら私はミシミシとスマートフォンを軋ませていた。

「落ち着いて私。この時代はまだこいつとお父さんは結ばれていないんだ」

そう「まだ」結ばれていない。私は未来を知っている。未来を変えられる。

なんだってやってやる。あんな未来が訪れないためなら。なんだって。

娘として愛し愛され、そして女として愛し愛される。私が望む未来はただこれのみ。

「待っててね、お父さん。必ずお父さんを幸せにしてみせる」

そう言って私は寝ているお父さんと唇を重ねる。

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

チュンチュンといった、スズメの鳴き声がなんとなく聞こえてきた。

ゆっくりと目を開けるとすっかり日の出を終えた朝だった。

「今は…6時か。えぇと、昨日寝る前何してたっけ」

佳奈のライン開いて、その間にパソコンつけて…

あぁそれで眠くなって寝たんだ。

「そうだ、あの子は!?」

未来からやってきた自称俺の娘。だけど確かに本当に娘って証拠はないよな。

もし、泥棒で念入りに計画を立てていたとしたら…

「他人を放ったらかしに寝るとかどうかしてるよな、ほんと」

嫌な予感が当たらないように祈りながらリビングへ向かった。

そこには出勤帰りの母親と朝食の支度している優佳が立っていた。

その光景で色々察した。

「おはよ、優哉」

「あぁおかえり、母さん」

「おはよう!お父さん!」

優佳は俺に気づくと眩しすぎるくらいの笑顔で挨拶してきた。

「あんたさ、この子放ったらかしにして寝たんだって?」

うっ、いきなり鋭いとこつきますな母上殿

「いやぁ、急に眠くなっちゃって、あはは」

「女の子を放ったらかしに寝るような男に育てた覚えないんだけど」

「いや!いいんですよ!おばあちゃん!私はソファでも十分寝れましたし!」

「あなたが良くても私は良くないね!仮にも自分の孫なんだから、孫をぞんざいに扱われたら怒るわよ!」

おい、普段は息子の俺をぞんざいに扱ってるくせに…。

「んーでも、孫ってのもしっくりこないなぁ。年齢的に娘かな。うんそうしよう。優佳ちゃん、これからは私のことはお母さんって呼びなさい」

「お母さん」の単語に優佳はピクリと反応した。そういえば、優佳が娘なら俺の嫁さんは誰なんだろう。

「あはは、お母さんちょっと複雑なので夏子さんでいいですか?」

「いいよいいよ、でも。次おばあちゃんなんて言ったらその無駄なおっぱいちぎるからね」

「はい、ふふ」

あーなんか打ち解けちゃってるよ

「朝食できたから皆で食べよ!お父さんも座って!」

「あ、ああ」

優佳に勧められ椅子に座ろうとしたその時

ーーーーーーピンポーン

チャイムが家に鳴り響いた。

926タイムマシン第2話 「一夜を越えて」:2015/05/17(日) 19:12:45 ID:pYiaR1yQ
以上で投下します。だいぶ時間が空いてしまいすみません。風邪引いて、痔になって、風邪引いてました。それと物語の全体とヒロインがどうしたら嫉妬に狂うかなぁとぼんやり考えてたらもう2か月弱たっており、考える前に書けよ!って感じで自分で自分のケツを叩いて書きました。次も失踪せずちゃんと投下できるよう頑張ります。面白くないかもしれませんが読んでくれたら幸いです。ではまた。長文失礼しました。

927雌豚のにおい@774人目:2015/05/17(日) 20:03:14 ID:jR1Z9Q5o
>>926
乙!待ってたよ

928雌豚のにおい@774人目:2015/05/17(日) 22:34:16 ID:EdH6ZAjc
ぐっじょぶです!

929雌豚のにおい@774人目:2015/05/28(木) 20:30:31 ID:8HXL8X0U
>>926
gjです!

930雌豚のにおい@774人目:2015/05/29(金) 23:06:02 ID:fymfKTwI
おっぱい

931雌豚のにおい@774人目:2015/05/31(日) 10:52:23 ID:CD3yWTE.
触雷!の続きが読みたい

932雌豚のにおい@774人目:2015/06/16(火) 15:44:28 ID:BgRQ/5WM
ヤンデレに監禁されて一生暮らしたい

933雌豚のにおい@774人目:2015/06/20(土) 19:09:58 ID:7VNe7sWc
ユベリズムのヤンデレが見たい

934雌豚のにおい@774人目:2015/06/24(水) 09:43:59 ID:BZsX8wyw
今帰さんシリーズの続きが気になって仕方がない

935雌豚のにおい@774人目:2015/06/25(木) 00:22:02 ID:tlyIlH72
普通にずっと待ってるやで?

936雌豚のにおい@774人目:2015/06/25(木) 22:38:55 ID:tx8EEKZQ
いみふかも知れないけど、投稿してみます

少しは文力あがったかな?

937雪男:2015/06/25(木) 23:00:31 ID:tx8EEKZQ
ん?
なんだ人間、俺を見て
ははーん、さては『雪男』始めて見たな?
何を隠そう、俺がこの山にいる雪男だ!
え〜驚かないのかい?普通なんでここにいるの?て聞くけどな
眩し!なんだそれ?ついったーに乗っけて良いかって?何に乗るんだ?
お、俺の成り立ちをききてぇと?いいぜ
昔、ダチの女がいたんだけどよ
そいつ、俺が他の女と話しただけで直ぐに問い詰めてきてな?他にも、マブイ女だぁーひゅ〜てやるとそいつをヤリに逝くんだぜ?怖すぎだろで、決まり文句が
「俺とオハナシできるのはワタシダケダヨ?」クスクス
もう、本当に怖くてよ
終いには、監禁されそうでよ
化け物がでるっつーこの雪山に入ったのよ。こうすれば、あいつは来ねぇとおもったからな
幾年かたって、ほとぼりが冷めたとおもって山を下りようとしたら、人が「化け者だ!!」て叫んだんだよ
近くにあった水たまりを覗いたら、化け物になった俺がいたんだ
それからが、俺がここに住んでいる理由
わかったか?おい、なに震えてんだよ
とって食いやしねぇよ、寒いのか?
え?後ろに…

















雪女「みーつけた」

938雌豚のにおい@774人目:2015/06/25(木) 23:02:17 ID:tx8EEKZQ
以上です

人間より妖怪とか童話キャラの方が、ヤンデレて書きやすいきがする

939雌豚のにおい@774人目:2015/06/26(金) 20:49:36 ID:5TnTgHN6
GJです
段々文章量も上げていけばいいと思うぞ

940雌豚のにおい@774人目:2015/06/29(月) 03:02:41 ID:QtHG0kV6
ぐっじょぶです!

941雌豚のにおい@774人目:2015/07/02(木) 14:50:29 ID:rLeCql4M
GJです

たしかに妖怪や童話キャラって可憐で非力な姿をしてても普通に人間以上のパワーを持ってたり、異種族であったり(異種婚と言うタブーめいたもの)でヤンデレやりやすいかも

942雌豚のにおい@774人目:2015/07/05(日) 21:08:32 ID:SlagXR.o
17:00時の女の子で泣いた
こういう境遇の子の話は可哀想すぎる

943雌豚のにおい@774人目:2015/07/07(火) 06:12:54 ID:GJc6Omzc
策略的腹黒系のヤンデレが出てくるお話とか無いですか?

944雌豚のにおい@774人目:2015/07/08(水) 06:52:04 ID:i1Z2Ipa2
触雷の更新履歴を見ればそろそろ更新されるはずだがはたして…

945雌豚のにおい@774人目:2015/07/15(水) 20:08:24 ID:JA45vRLk
>>941
基本的に主人公よりヒロインの方が強いもんな、ヤンデレって

946雌豚のにおい@774人目:2015/07/16(木) 00:22:28 ID:c6vLul9U
覚悟が出来てるやつは強い

947雌豚のにおい@774人目:2015/07/16(木) 22:55:58 ID:8i8HjZGI
圧倒的な力を持ってるのに
それを全部主人公を手に入れるために使うのがいいんじゃないか

948 ◆VZaoqvvFRY:2015/07/19(日) 16:55:17 ID:0CkNRnuY
テスト

949 ◆V/SdJIgW3Q:2015/07/19(日) 16:56:38 ID:0CkNRnuY
投下しますよ
>>313の続き

950触媒:2015/07/19(日) 16:59:12 ID:0CkNRnuY
 フラットランドは、大陸の中央部に東の海から西の海に至るまでの広大な領土を持つ。
 エーレンとリアが出会った街はフラットランドからは北方に位置しており、二人は南下する形で旅を続けていた。
 目的地はフラットランドの東北東に位置する大都市、ウルフタウンである。討伐軍の集合地点はそこに定められていたのだ。
 旅路は順調と言ってよかった。善と悪が和解している以上、オークやゴブリンといった普段なら危険となりうる者共の襲撃もありえず、晴天続きで天候にも恵まれていたので。
 そうしてフラットランドに入る国境を数日で越え、さらに南下を続けていたのだが、二人の旅が始まってからちょうど一ヶ月目に初めての障害が発生した。

「サルダスへようこそ」
 エーレンの眼前に座る三十代半ばと思しき役人の男は、言葉の内容とは裏腹に表情は淡々としていて、特に歓迎しているようにも見えなかった。
 彼等がいるのは、サルダスと呼ばれる街の中、今回の討伐軍に参加する者達への案内と物資の援助を請け負っている役所の窓口である。
 街に入るとエーレン達は真っ先にここを訪れていた。既にどの程度の軍勢がウルフタウンに結集し、出陣の準備が整っているのか知らねばならないし、それ次第では宿泊せず街を発たねばならないかもしれない。
 そう思ったからだったのだが、エーレンの問いに対し役人は討伐軍の現状は全く不明である、と、簡潔に答えた。
 当然のごとくエーレンは理由を問いただす。
 役人は表情を変えることなく後ろを向くと、自身の背後に掲げられていた一メートル四方の地図を示して説明を始めた。
「今私が指差している、中央にある街がサルダス。そして、この地図の右斜め下にあるのが諸君が目指すウルフタウンだ。そこで、サルダスから最短でウルフタウンを目指すとなると、ここでコク大橋を渡らなければならん」
 役人が辿って見せた指先には、サルダスの南方と東方を囲むようにして続く川、その一点にある大きな橋の絵があった。サルダスからその橋を抜けると、ほぼ直線上にウルフタウンが位置しているのが見て取れる。
「だが、コク大橋は通行できなくなったのだ」
「なぜですか?」
「どこからともなくやって来た怪物が住み着いたのだ」
 聞いてエーレンは眉をひそめた。それを見た役人は、初めて表情を崩して苦笑する。
「まあ、眉唾物の話だと思っても無理はない。だが、本当だ。コク大橋で見たこともない化け物に襲撃された、と言う隊商からの報告が十日程前から連続してここに届いている。他の地域からはそう言った報告は全くないので、その化け物はコク大橋に住み着いていると考えざるを得んという訳だ」
「軍隊を出して退治しないのですか?」
「知っての通り古代妖魔の討伐軍に国全体で割けるだけの兵力を割いてしまっている。この街も例外ではない、今ここにいるのは街の守備に残しているぎりぎりの人数の兵隊しかいないのだ」
 そう言って役人は肩をすくめて見せた。
「とは言え、放っておくこともできないのは我々も分かっている。近隣の街に応援要請をしているので、少ないながらも兵力をかき集めて化け物を退治には行くつもりだ」
「出発はいつになりそうですか?」
「まあ、兵隊が集まるまであと三日といった所かな」
 エーレンは内心で舌打ちをした。ここで三日間とは言え足止めを食らうというのは喜ばしいことではない。
「橋を通らずに済む、迂回路はないんですか?」
「ないこともないが、コク川は大河だ。コク大橋を渡る以外となると、渡し守にでも頼むしかない。彼等がいるところはコク大橋からさらに下流で、そちらに回るとなると渡河するまでに一週間はかかるぞ」
 顎に手を当てて、エーレンは考え込む。が、それほど長い時間ではなかった。
 渡し守に頼むのは時間がかかりすぎる。となれば、この街に兵隊が集まったら、可能かどうかわからないがそこに参加して怪物とやらを退治し、橋を渡る。おそらくそれが現状では考えられる最短の方法のようだ。それでも三日間以上の足止めは痛いが……。
 怪物退治に参加する旨を申し出ようとしたエーレンだったが、口を開く前に背後からの声音にそれを遮られた。
「事情は分かった、役人殿。すまぬが、コク大橋を含む周辺の地域の正確な地図を一枚いただけないだろうか?」
 エーレンの後ろに立つ、フードを目深に被った人物――リアが役所で声を発したのはこの時が初めてであった。
 その黒と銀の衣装に包まれた、禍々しい姿から聞こえてきた美しく澄んだ少女の声に役人は目を見開き、不意を突かれた、という表情をして見せた。

『一角亭』はサルダスに点在している酒場兼宿場の中では老舗の方に入る。

951触媒:2015/07/19(日) 17:00:25 ID:0CkNRnuY
 店の主人は禿げあがった頭とでっぷりと太った腹回りをした初老の男で、客商売の人間らしく普段は愛想良く快活に誰にでも話かけては冗談を言って大笑いをするのが常だった。ただ、今は昼過ぎで特に忙しい時間帯でもなかったので、カウンターで料理の仕込みの為に無言で忙しなく動いている。
 そんな主人の様子をちらりと眺めやった後、僅かな客の一人であるエーレンは視線を正面に座るリアに戻した。二人がいるのは一角亭の店内、カウンターから最も離れた角に位置しているテーブル席である。
 二人の間にあるテーブル上には先刻役人から受け取った地図がある。さらにその上にはリアが所持していたリンゴ大の水晶玉が鎮座していた。
 リアはと言えば、その水晶玉に手袋をした両手をかざし、何事かの術式を施している最中である。
「……何か見えてきた」
 エーレンはそう言うと興味深そうに水晶玉を覗き込む。透明に輝くだけであった球の中に少しずつ別の光源が発生し、やがてそれは陽光を反射する河の映像に変化していった。そのまま河を遡るように映像は進み、石造りの巨大な橋に到達する。その橋上の眺めを見たエーレンは絶句した。
 そこにあるのは、延々と連なる死体の山である。しかもその多くは惨たらしく破壊されており、人としての原形をとどめていない。
 特に腹部が欠けている死体が多い事にエーレンは気づいたが、その理由もすぐに分かった。腐臭が漂ってきそうなその光景の中でただ一つ、活動している影があったのだ。
 その影は一つの死体を捉え、何度も腸の辺りを捕えては激しく動く。死肉を喰らい、咀嚼しているのだ。球の映像はその影に向かって近づいていく。
「なんだ、こいつは……」
 そこに映し出されたのは、エーレンが今までに見たこともなく、知識として教えられたこともない生物である。
 身の丈は周囲の死体と比較して、およそ三メートルぐらいだろうか。人型をしているが濃緑色で棘に覆われた全身をしているため、見た目はサボテンに酷似している。頭部と思われる部分には巨大な一つ目があり、胸に当たる部分に縦一文字に開かれた口があり、その奥には何十本もの鋭い牙がのぞいていた。手は三本指で、右手には死体から奪ったのだろうか、両刃の大剣を握っていた。
「古代妖魔の息子だ」
 リアがそう言葉を発したので、エーレンは顔を上げ、視線を彼女に向けた。
「正確には孫か、更にその孫かもしれないが。古代妖魔は辺土界から復活してから後、爆発的な勢いで子を産み続けている。さらにその子らがあっという間に成長して、そいつらも出産しているので、復活してから一年も経っていないのに今は何代目まで誕生しているか見当もつかん、という事らしいのだ。君と出会ったあの街を滅ぼしたのも、古代妖魔自身というよりは子孫どもの仕業かもな」
 リアの解説を聞き終わるとエーレンは生理的な不快感を感じた。単純に気色悪いとしか言いようがない。ただそれは口にはせず、別の感想を言った。
「よくそんな事まで知ってるなあ」
 感心したようなエーレンのその言葉に答えるリアの声音に、やや照れ隠しのような響きが混じる。
「出発前にできる限りの情報は集めておいた。それにその後も新たな情報が入れば、同胞から連絡が来ることになっている」
「その水晶玉を通じて?」
「そうだ」
「すごいなあ」
 聞いたリアが水晶玉にかざしていた手を静かにおろした。同時に、映し出されていた映像も闇に飲まれるように消えていく。
「この玉自体に力がある訳ではない。触媒として最も適しているというだけだ」
「触媒? ああ、魔法を使うための道具でしたっけ」
「水晶玉自体に魔力が込められている場合もあるがな。もしそれであればこんな地図を使って魔力を使う場所を特定しなくても、橋の光景を見ることができただろうが」
 客のいない酒場に、リアが水晶玉を荷袋にしまう衣擦れの音が響く。
「それで、これからどうする?」
 エーレンはリアのその問いに、視線を天井に向けて考える仕草を見せる。そしてその姿勢のまま答えた。
「万全を期すなら、兵隊が集まるのを待ってそこに参加するべきなんでしょうけど」
「うむ」
「気になるのは、なんでこの辺りまで息子だが孫だかの怪物が現れたかって事なんです」
 リアは肩をすくめて見せた。
「そこまでは私にもわからん。まあ何らかの理由で群れからはぐれたんだろうが」
「となると、僕たちの思っている以上に事態は進展しているのかもしれない」
 エーレンは姿勢を戻すとフードの奥にあるであろうリアの両眼を見つめる。
「今すぐ出発しましょう。どうせ戦場で会いまみえる相手でしょうし、ならば誰にも邪魔されずに戦って、相手の手の内を多少なりとも見ておきたい」

952触媒:2015/07/19(日) 17:01:44 ID:0CkNRnuY

 サルダスの街を夕刻に発ち、一晩野宿した後でコク大橋に到ったのは、太陽が頂からやや西に傾きかけた頃であった。
 幅約十メートル、全長は数百メートルに達するその橋は、平時であれば数十のアーチに支えられた造形美で見る物を嘆息させるのだが、今や至る所に血糊と肉片が散見する地獄絵図と化している。
 そして橋を渡り始めてから一分と経たないうちに、二人は望む相手に正対する。
 その緑色の怪物は、屹立し、大剣を右手に掴み、無感動な一つ目で二人を睥睨していた。
「意外と早いお出ましだな」
「腸が好物なのに、それを食い尽くして飢えているんでしょうね」
 鼻腔に入り込んでくる死臭に咳払いを一つすると、エーレンはリアに告げた。
「奴と斬り合うのは僕に任せて、貴女は防御をお願いします」
 リアは数瞬後「分かった」とだけ答えた。
「シャア!」
 叫ぶと同時にエーレンは疾走する。怪物との距離を一気に詰めると長剣で怪物の腰部に斬りかけた。
 怪物はそれを阻止する為に大剣を回して見せる。
 高い音階で剣戟の響きが鳴る。エーレンは両手、怪物は片手で剣を振るったが、それでも勢いで押されたのをエーレンは自覚した。
 だがエーレンはひるむことなく左に周ると三連続して攻撃を繰り出す。その全てを怪物は防いで見せた。が、既にエーレンは勝機を見出していた。
 怪物の膂力はすさまじい、だが剣技は大したことはなさそうである。まあ生まれて間もないのであれば覚える時間もなかっただろうが。
 剣の勝負で勝てれば、この先魔法を使われたとしてもリアが防いでくれるであろう、自分の負けはない……とは言え、数日に渡って訪れる者を屠り続けていた怪物である。
 素人相手だったとはいえ隊商なら護衛もいたであろうから、やはり油断は禁物である。
「無駄な時間を与えずに一気に仕留めた方が良いか」
 そう結論付けると、エーレンは連撃を怪物に叩きこんでいった。
「シャア!」
 五合、六合、七合、と怪物は耐えていたが十合を越えて手元がおぼつかなくなり、二十合に至ってついに堪え切れずに大剣を取り落とす。
 その隙にエーレンは跳躍し、長剣を怪物の左肩から腹部の中央に達するまで振り下ろしていた。緑色の体液をその傷口から大量に吹き出すと、両生類が潰れる時に発するような呻き声を出して怪物は膝から崩れ落ちる。
「やった!」
 その歓声はエーレンではなく背後にいたリアからのものである。フードを脱いで、少女らしく飛び跳ねながら全身で喜びを表していた。
 だがそれもつかの間、リアの美しい瞳に驚愕の色が浮かぶ。
 頽れていた怪物が、今はもう立ち上がろうとしていたのだ。それだけではない。腹部にまで達していた刀傷が、逆戻りするかのようにふさがっていく。
「こいつ、不死身か!?」
 愕然とし、為に剣を構えるのが一瞬遅れたエーレンに向かって、怪物は大剣を取り直すと下から斬撃を繰り出した。
「ちっ……!」
 攻撃を受け止めるのは無理だと悟り、エーレンは身を翻すことでそれを避けようとしたが、大剣の切っ先が僅かに届く。
 エーレンの左上腕部から鮮血がほとばしった。肘から肩にまで一直線に走ったその傷を見てエーレンは右手一本で戦わねばならなくなった事を覚悟した。
 体勢を立て直すと怪物の連撃に備えようとする。だがその前にコク橋上に響きわたる少女の怒声を聞いた。
「貴様!」
 その憤激の声の持ち主であるリアは、叫ぶや否や跳躍してエーレンを飛び越していた。
 そして人間の動体視力では捉えきれない速度で長剣を振り下ろし怪物を脳天から文字通り真っ二つに切り落とす。
 唖然としてその光景を眺めていたエーレンの目の前で、リアは尚も刀を振るうのを止めない。
「貴様!」
 真横に剣を薙ぎ払うと、既に二つに分かれていた頭部を頸部から切り離す。
「貴様!」
 次に一撃で両足から胴体を叩き落とす。
「貴様! 貴様! 貴様! 貴様! 貴様! 貴様! 貴様! 貴様!」
 叫ぶたびに怪物は分断され、潰され、エーレンが我に返ってリアを羽交い絞めにして静止した時には、数えきれないほどの緑の肉片と化していた。
 もはや動くこともなく、完全に絶命しているようであった。
 
 リアもまたエーレンの腕の中で微動だにしていなかったが、思い返したように向き直ると、エーレンの左腕を抱きしめた。
「大丈夫か? 痛くないか? すぐに治すから」
 そう言うと、傷口の上を愛おしそうに撫でまわしながら呪文を唱え続ける。エーレンは傷の上に暖かい光が当たるのを感じ、その数瞬後、跡形もなく刀傷は消え失せていた。

953触媒:2015/07/19(日) 17:02:55 ID:0CkNRnuY
「ありがとう。でも驚きました、貴女が剣技にあんなに長けてるなんて」
「刀剣の扱いも幼少期から習っていたからな」
 エーレンの左腕を抱えたままの姿勢でリアが答えた。
「でも……」
「あ、剣技についてなら私も聞きたい。君の剣術は傭兵や自由戦士とは違う、正当な教育を受けた者のそれだ。どこで習ったのだ?」
 話をはぐらかされた気がしたが、熱のこもったリアの表情を見て、エーレンは正直に答えた。
「士官学校で習ったんです」
「士官学校?」
「フラットランドのね。僕の一家はフラットランドの元貴族なんです。名ばかりの下級貴族でしたけど」
 リアはエーレンの顔を見つめ、目を丸くした。
「それがどうして今は自由戦士をやっているのだ?」
「うーん」
 エーレンは自身の黒髪をかき回して考えるそぶりを見せていたが、踏ん切りをつけたように言葉を続ける。
「まあ、一家は下級貴族でも、一門の中には、かなりの実力者もいたんです。普段はお目にかかった事もないような人ですけど。ところがある日、その人が皇帝陛下に対して反逆を企てました」
 リアが今度は息を飲んだ。それを見てエーレンは、秀麗な顔に苦い笑みを浮かべる。
「という事になってます、公式記録では」
「どういう事だ?」
「政争に敗れたんです。宮廷では上級貴族達が年中行事のように騙し合い、貶め合い、争ってますが、その戦いの中で僕の一門は謀反人の汚名を着せられました」
「……」
「もっとも、本当に反逆計画を練っていたかもしれませんけどね」
「え?」
「そのぐらい信用ならないんですよ、宮廷って。下っ端で、仰ぎ見ているだけの世界でしたけど」
 エーレンは自身の左腕を掴むリアの力が増したのを感じる。
「真偽はどうあれ、謀反人となった以上、一門には苛烈な刑罰が科せられました。男子は根こそぎ斬首、女子は平民に落とされた上で国外追放です。それは末端であった僕の家族も変わりませんでした」
「なに? でも、それなら……」
「はい、その中で僕の家族だけは助かりました」
「なぜだ?」
「皇族に僕に親しくしてくれている方がいました。その方が必死に助命嘆願してくれたおかげで、僕の家族だけ男子でも国外追放処分になりました。もちろん貴族身分は剥奪されましたけど。それが五年前の事です」
「……」
「それから僕らはフラットランドを出て、流れ流れて平民としての生活を送ることになります。と言っても一連の事柄で父はすっかり老け込んでしまったし、母もそんな父を支えるので精一杯です。当然僕が家族を支えなきゃいけない。幸い剣技には自信があったんで、自由戦士や傭兵をやってなんとか日々の糧ぐらいは得られるようになりました」
 リアは今、瞳に涙を浮かべ泣き顔を見せている。
 エーレンはダークエルフも泣くという事実を初めて知った。
「そんな顔しないで、リア。平民として暮らせたおかげで、貴族がろくでもない物だって気づきましたからね。それまでは下級とはいえ貴族に連なるものとして、虚勢や幻想がありましたから」
 そう言ってエーレンが笑顔を見せると、リアもつられた様に笑って見せた。
「でも、これから討伐軍に参加するという事は、フラットランドに戻るという事だぞ? 大丈夫なのか?」
「さっきも話した、僕を弁護してくださった皇族の方から手紙が来たんです。『安全は私が保証する、帰国して討伐軍に参加せよ。手柄を立てれば爵位の返還も約束する』とね」
 それを聞いたリアはやや意外そうな声を出した。
「貴族に戻りたいのか?」
「いいえ。そんなつもりはありませんでした。でも……」
 エーレンは自身の長剣を目の前にかざすと、そこに刻まれた家紋を眺めながら呟いた。
「父の事があります。父は今でも一門の汚名返上を願い、それだけの為に生きているといっても過言ではありません。手紙が来たことを知ると、僕にこの長剣を託してきました。我が家の唯一の家宝なんです」
「……」
「それともう一つ」
「なんだ?」
「その前に、貴女がどこで剣術を習ったか教えてもらってもいいですか?」
 それを聞いてリアは慌てたように手と口をしどろもどろに動かしていたが、しばらくすると俯き、人差し指を突き合わせてエーレンに告げた。
「すまぬ。その話は後日でいいか? いつか必ず話すから」
「分かりました。じゃあ僕の話もまた後日に」
「ずるい」
「お互い様です」 
 周囲に怪物と人間の肉片が散乱している、という殺伐とした状況でなんだか不器用な話をしてしまった。その滑稽さをエーレンは自覚すると、咳払いして話題を変えた。
「それにしてもそんなに強いのに、あのエルフ達になんで追い詰められていたんですか?」

954雌豚のにおい@774人目:2015/07/19(日) 17:03:18 ID:0CkNRnuY
「あいつらもどこぞの森から選抜された精鋭だったからな」
「え!?」
「間違いないぞ。並の人間なら数十人どころか数百人いても歯が立つかどうか」
 そんな連中に自分は突撃していったのか。今更ながらにエーレンは背筋に冷や汗が流れるのを感じる。
 エーレンの強張った表情を下から見上げ、リアは悪戯をした少女のように小さく笑うとエーレンの左腕を再度抱えた。
「次の戦闘は、私も最初から戦う」
 もう消えてしまった傷跡の辺りを、細い指で何度も撫でまわしながらリアは呟いた。
「君が傷つくのはもう絶対に見たくない」
 男として情けない事を言われているのではなかろうか、と思ってエーレンは頭をかいた。
 だが、このダークエルフの少女から少なからず友好的な感情を寄せられているのは確からしい。
 異種族、それも邪悪と混沌の勢力に朋友ができるなど、前代未聞である。
 それに対して眉をしかめ、嫌悪する人も多いだろうが、エーレンは素直にこの出会いと二人で過ごして来た旅路に感謝していた。

955 ◆V/SdJIgW3Q:2015/07/19(日) 17:06:58 ID:0CkNRnuY
投下終了
いくつか後書き

・今回出てきませんでしたが、主人公の名字が変わってます。特に理由はありません。保管庫は修正済みです。
・酉も変わってます。今後はこっちで
・てか前回から一年半以上経ってるとかひどすぎワロエナイ

次は今年中に投下できるといいなあ、と思いつつではまた

956雌豚のにおい@774人目:2015/07/19(日) 17:25:16 ID:0CkNRnuY
あ、やばい文章抜けてるところがあるw
今回も保管庫で修正しときます……

957雌豚のにおい@774人目:2015/07/20(月) 06:42:19 ID:5JBWxuYw
おもしろい
続き待ってます

958避難所の中の人★:2015/07/20(月) 17:39:50 ID:???
次スレ
ヤンデレの小説を書こう!@避難所 Part07
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/12068/1437381458/

959雌豚のにおい@774人目:2015/07/21(火) 21:14:37 ID:EvHFUtNg
もういいと思う。
完結だよ。

960雌豚のにおい@774人目:2015/07/23(木) 13:52:38 ID:6rDZc6v2
>>956
>>958
おつです

961雌豚のにおい@774人目:2015/08/02(日) 11:27:28 ID:KVpw3t1c
このスレともお別れか
長い付き合いだったが新スレちゃんができちゃった以上サヨナラだな

962雌豚のにおい@774人目:2015/08/02(日) 11:58:30 ID:jbYSN4qQ
ここからが長いんだよ

963雌豚のにおい@774人目:2015/08/02(日) 13:15:17 ID:HFLMimRU
現行スレ「新スレの所には行かせない!」

こんな感じで監禁されるんですね、わかります

964 ◆0jC/tVr8LQ:2015/08/04(火) 02:20:17 ID:p8QsWp/M
お久しぶりです。投下します。
申し訳有りませんが、本編ではなく舞台裏の幕間です。
ホラー成分がありますので苦手な方はご注意ください。
(読まなくても話はつながります)
お暇な方は流し読みしてみてください。

965触雷!-幕間- ◆0jC/tVr8LQ:2015/08/04(火) 02:22:30 ID:p8QsWp/M
「……いいから、一刻も早く御主人様をここにお連れしろ。とは言っても、もちろん安全運転でだぞ。御主人様の身の安全はメイドにとって何よりも……」
『はいはい。一定の目処が付いたら、お連れしますわよ』
「何だ? 一定の目途とは?」
『一定の目処は一定の目処ですわ。切りますわよ』
「おい、ちょっと待……」
プチッ、ツーツーツー

…………

失礼いたしました。皆様、御機嫌よろしゅう。メイドの神添紅麗亜でございます。
今私がおりますのは、人里離れた山間部にある洋館です。
この洋館、法的な名義の上では私のものですが、本当の主は別にいらっしゃいます。
その主とはもちろん、紬屋詩宝様です。この紅麗亜が絶対の忠誠を捧げ、全てを賭して御奉仕する御主人様です。
それなのに……今この場所に、御主人様はおられません。
理由は言うまでもないことです。雌蟲その1こと、中一条舞華とかいう不埒な金持ち女が、卑劣極まりない手段で御主人様を拉致監禁したからです。
御主人様をお守りできなかった私にも若干の非があるとは言え、雌蟲その1の所業は、八つ裂きにしても飽き足らないものです。本当に憎らしい……
とは言え、やはり最後は正義が勝つものです。たった今、冒頭の会話の通り、私の上の妹の姉羅々に電話が通じ、御主人様の奪還に成功したことを確認できました。本来なら御主人様を取り戻した時点で長姉である私に報告を寄越すべきなのですが、強欲な割に無能な姉羅々は私から電話をかけるまで忘れていたようです。まあ私は寛大な姉なので、多少のことにはこだわりませんが。
「はああ……」
気持ちが高揚します。もうすぐ御主人様にお会いできる。この胸に抱き締めて差し上げることができる……
何が惨めと言って、御主人様から引き離されたメイドほど惨めなものはありません。
最後に御主人様の御姿を拝見してから、すでに73時間7分12秒が経過しています。メイドにとって不可欠な御主人様成分は、完全に枯渇していました。
御主人様成分の枯渇したメイドの身には、何が起きるでしょうか?
まず、精神の消耗のあまり髪から色素が抜け落ちていきます。自慢だった私の長い黒髪は、今やくすんだ黄土色のような色になっていました。
次に、乳房が張り、重く苦しくなってきます。妊娠もしていないのに乳腺で母乳が分泌され、どんどん溜まっていくからです。
御主人様の子を授かるのを夢見るのは、メイドならごくごく普通のことですが、長時間御主人様にお会いできないと精神の安定を保てず、想像妊娠に近い状態になってしまうようです。
私は他の女性より胸が豊かなため、ただでさえ既製品のブラジャーを着けられません。特注のものを使用しているのですが、それすらも今やカップが乳房に合わず、ホックも相当無理をしないと閉じられない有様です。

966触雷!-幕間- ◆0jC/tVr8LQ:2015/08/04(火) 02:23:14 ID:p8QsWp/M
「はぁあ……」
息苦しさを覚えながらも、後少しの辛抱と自分を励まします。
もうしばらくすれば御主人様にお会いできます。御主人様はこのはしたないメイドの胸に溜まった母乳を、その心地よい唇で吸いだしてくださるでしょう。
いいえ……もしかしたら、ただ吸い出すだけでは済まないかも知れません。
そもそも、雌蟲その1の手で塗炭の苦しみを味わわれた御主人様が、その原因を作った私へのお仕置きを行うのは必然です。それに加えて、再会した私が両の乳頭から母乳を垂れ流し、お口による吸引を懇願するという浅ましい姿をお見せしたとしたら……御主人様は私を再調教するために、徹底的な凌辱をなさるのに違いありません。
抵抗を試みても、所詮は女の細腕です。私は簡単に押し倒され、無残に服を破り捨てられ、体の恥ずかしい場所を全て剥き出しにされることでしょう。
露わになった乳房は御主人様の手によって荒々しく握り潰され、打擲され、家畜の乳牛のように搾乳されることでしょう。私がどんなに赦しを乞うても、御主人様はお聞き届けにはなりません。
さらには……御主人様は私の足を強引に開かせ、その奥を踏みにじろうとなさることでしょう。必死に足を閉じようとする私の努力も虚しく、秘すべき場所は御主人様の視線の前に無防備に晒され、間髪を入れず御主人様の堅牢な肉の剣が、私の尊厳を打ち砕くように強引な侵入を……

……………………
…………
……はっ。
失礼いたしました……御主人様からいただく処罰を思い描いたら、軽く達してしまいました。
私は気を取り直し、御主人様をお迎えするための準備を始めることにしました。準備と言っても、屋敷の清掃等は普段から行っておりますので、屋敷の外でのことです。
私は戸締りをして外に出ると、乗用車を運転して山道を下り始めました。(服装はもちろん、メイドの正装たるエプロンドレスです)この辺り一帯は私の名義となっている地所なので、他人が迷い込まないように看板を設置しております。その看板が御主人様の目に触れると、先に進み辛いお気持ちにさせてしまうかも知れないため、隠す必要がありました。
複線の道路をしばらく走ると、看板の設置場所に差し掛かりました。車を道端に停めて降ります。
そして、車を停めた道路の反対側、ガードレールのすぐ外にある、
『ここから先へ進む者。命の保証はない』
と書いた看板にカバーをかけ、見えないようにしました。これで大丈夫です。
「ふう……」
一仕事を終えた私は、ガードレールの外の景色を眺めました。ガードレールの外は道路から見て緩やかな下り斜面になっており、一面林で覆われています。下り切ったところは流れの穏やかな小川になっていて、木々の切れ目から水面が見えました。
いつか、あの場所で御主人様と水浴びをご一緒することもあるでしょう。
メイドたるもの、御主人様の財政を圧迫しないために、高価な水着など買うことは許されません。安い水着であれば、当然布地の面積は極小となります。私は恥部を最低限覆い隠すだけの格好で、御主人様の御供をすることでしょう。そして御主人様は私の裸同然の姿に欲情し、交接を求めて私に襲いかかってこられるはずです。抵抗を試みても、所詮は女の細う……
ガサガサッ
おや、何でしょうか?

967触雷!-幕間- ◆0jC/tVr8LQ:2015/08/04(火) 02:23:49 ID:p8QsWp/M
少し離れた場所で何かの動く気配がし、私は現実に引き戻されました。どうやら道の外の林の中に、何かいるようです。
それは木の枝に擦れ、草を踏みながら、こちらへと近づいてきました。音からすると、かなり大きな生き物のようです。猪でしょうか? もしかすると熊かも知れません。
私はまた、はっとしました。
もしも、雌蟲その1の狼藉と姉羅々のドライブで御疲れの御主人様に、猪鍋、もしくは熊鍋を召し上がっていただいたら……瞬く間に精力を回復されるに違いありません。
漲る精力は、御主人様の体の一か所に血液を集めて……そして御主人様は手近な女を欲求のはけ口にしようと私を押さえ付けて……拒絶しようとしても所詮は女の……
……こうしてはいられません。私は動物に気付かれないよう、ガードレールの側に身を潜めました。できるだけ引き付けてから飛び掛からないと、捕まえるのが難しくなるからです。
音は次第に近づいてきます。私はガードレールの上端から目を出し、音の正体を視認しようとしました。
私は、あっけに取られました。
見るとそれは猪でも熊でもなく、人に近い形をした物でした。と言っても人とは明らかに違います。
まず、首から上がありません。全体的に白くのっぺりとしていました。両手を滅茶苦茶に振り回し、体をぶれさせ、一本足でケンケンをしながらこちらに向かってきます。よく見ると胸のところに顔があり、ニタニタと気味悪く笑いながら何かを言っていました。やがて
「テン……ソウ……メツ……」
という訳の分からない言葉が聞こえてきました。
一体何でしょう。この山に巣食う怪異でしょうか。
その白い物は、
「テン……ソウ……メツ……」
とばかり繰り返しながら、ついに私の目前に迫りました。
「テン……ソウ……メ……」
どぐちゃ!!
あっ。
私としたことが。はしたない行いをしてしまいました。
怪異の顔がちょうど蹴り易い高さにあったので、ついガードレール越しに足が出てしまいました。
怪異は仰向けに倒れ、手と足をバタバタさせています。痛みを感じているのでしょうか。
まあそんなことはどうでもいいことです。私はガードレールを乗り越えて怪異の足首を掴むと、逆さ吊りに吊り上げました。
「おい! 貴様は何者だ!? ここで何をしている!?」
「テ、テ、テテ、テン……ソウ……メツ……」
「私の質問の仕方は優し過ぎたようだな」
私は怪異の片手を踏み付け、その状態で掴んだ足首を上に引っ張りました。上下に引き伸ばして肩を脱臼させるためです。
「テンソウメツ! テンソウメツ! テンソウメツウウウ!!!」
怪異は泣きそうな表情で体をよじり、自由な方の手を振り回しましたが、無駄な抵抗です。
「早く白状しろ! 肩が抜けるぞ!」
「テンソウメツウウウ!!」
人語が通じないのでしょうか。怪異は相変わらず訳の分からないことを叫ぶと、ぐったりして動かなくなりました。まだ肩が脱臼もしていないのに、痛みで失神したようです。

968触雷!-幕間- ◆0jC/tVr8LQ:2015/08/04(火) 02:24:15 ID:p8QsWp/M
私は怪異を吊り下げたまま、森を下って小川のほとりに足を進め、怪異の上半身をザンブと水に浸しました。
ゴボゴボッ! バシャバシャッ!
怪異は気が付きました。よほど喉が渇いていたのでしょうか、両腕を振り回して水を飲んでいます。きっと歓喜しているのに違いありません。
存分に水を飲ませてやってから、私は怪異を岸に放り上げました。
「ゴボゴボッ……テ、テン……ソウ……」
「立て!」
「ゴボ……」
「聞こえないのか!?」
ドスッ!
脇腹に爪先を蹴り込んでやると、ようやく怪異はふら付きながら立ち上がりました。
「気を付けぇ!」
「テンソウメツッ!」
怪異が手足を揃え、直立不動の姿勢を取りました。手足と言っても足は一本しかないので、元から揃った状態とも言えますが。
ともあれ、気を付けの号令に反応したところを見ると、人語が通じないわけでもなさそうです。私は尋問を再開することにしました。
「いいか貴様。今から勝手な発言を禁ずる。口を開くのは私の質問と命令に応えるときのみだ。それ以外にどうしても必要なときは、必ず挙手をして私の許可を求めろ。分かったな?」
「テンソウメツ! テンソウメツ!」
首から上がないので、胸の顔を上半身ごと倒して、怪異は頷きました。
「よろしい。まず貴様、ここに来たのは誰か人間の差し金か?」
何と私は慈悲深いメイドなのでしょう。テンソウメツとしかしゃべれない低能な怪異に合わせて、Yes、Noで答えられる質問を用意してやるなんて……御主人様が知ったら褒めてくださるでしょうか。
それはさておき、誰かの差し金かと怪異に聞いたのは、例の雌蟲その1が黒幕かも知れないと思ったからです。御主人様に逃げられた雌蟲その1が、私と御主人様の幸せな主従関係を妨害するために怪異を寄越した可能性が考えられました。この資本主義の時代、人間を動かせば相応の人件費がかかりますが、怪異ならイワシの頭とかで動かせそうですし。
しかし怪異は、
「テンソウメツ……」
と首ならぬ上半身を左右に振りました。
それも当然かもしれません。雌蟲その1がいかに多くの泡銭を持っていようと、この場所を突き止めるのは至難のはずですから。
そのときです。怪異の姿がかき消すようになくなりました。
続いて、体に微妙な違和感を覚えます。これは……
「はいれたはいれたはいれたはいれたはいれたはいれたはいれたはいれたはいれたはいれたはいれたはいれ……なるほど。人間の体内に入り込む能力があるのか」
「!?」
「破あ!!」
私は気合をかけ、体内から怪異を追い出しました。
ドサッ!
私の体から出た怪異は、地面に衝突してのたうち回り、手足をジタバタさせました。はっきり言って、見苦しいことこの上ありません。

969触雷!-幕間- ◆0jC/tVr8LQ:2015/08/04(火) 02:24:45 ID:p8QsWp/M
「いつまで寝ている!? 立て!」
私がそう言うとようやく、怪異はヨタヨタと立ち上がりました。
「気を付けぇ!!」
「テンソウメツッ!」
怪異はプルプルと小刻みに震えながら、手足を揃えます。
「貴様の技能については了解した。全くの無能ではないようだな」
「テ、テンソウメツ!」
頷く怪異。どうやら少しは利用価値がありそうです。
「貴様に1つ任務を授けてやる。光栄に思え」
「?? テンソウメツ?」
「万に一つもないとは思うが、いずれこの場所にメイド以外の女が侵入してくることがあるかも知れない。御主人様を奪い、メイドの幸せを妨害しようとする、万死に値するクズ雌蟲共だ」
「テ、テンソウメツ……」
「今日から貴様は24時間体制でこの道路を見張れ。雌蟲共が現れたら憑り付いて一匹残らず狂い死にさせろ。失敗は許さん」
私は任務の内容を、丁寧に説明してやりました。昼夜を問わないフルタイムの勤務になりますが、怪異が眠るという話は聞きませんので多分大丈夫でしょう。
「…………」
「おい! 分かったのか!?」
「テンソウメツ! テンソウメツ!」
怪異がやっと頷きました。一回で返事ができないとは、やはり出来の悪い怪異です。こんなていたらくで雌蟲共を倒せるのか、少し不安になってきました。雌蟲の一味を全滅させるのは無理としても、せめて一匹と刺し違えるくらいは働いてほしいのですが。
不意に、怪異が口を開きました。
「テ、テンソウメ……」
「誰 が 発 言 を 許 可 し た ! ?」
勝手な発言を禁ずるという私の言い付けを忘れたのでしょうか。懲罰の必要を感じた私は、デンプシー・ロールというボクシングの技法を用いて十数回、怪異のボディを殴打しました。そして最後の仕上げとして、腰を存分に入れたストレートを顔面に放ちます。
「テンソウメツゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!」
怪異はフリスビーのように水平に回転しながら川の上を飛翔していきます。水面でワン・バウンドし、さらに対岸の木に激突してこちら側に跳ね返ると、水柱を上げて落水しました。

…………

水柱が収まり、山は平穏を取り戻しました。小川のせせらぎと、風が木の枝を揺らす音が私の耳を撫でます。
木漏れ日は小川の水面を照らし、宝石をちりばめたように反射しました。
その反射の中、怪異の白いのっぺりした体が、不法投棄されたゴミ袋のように浮かび上がりました。
怪異はぴくりとも動かず、ただ水の流れに身を任せ、たゆたっていきます。何度か岩にぶつかり、その体の向きを変えながら下流へと移動していき、やがて見えなくなりました。

970触雷!-幕間- ◆0jC/tVr8LQ:2015/08/04(火) 02:25:20 ID:p8QsWp/M
駄目ですね。近頃の怪異は。
昨今のホラーブームとやらでちやほやされ、慢心しているのでしょうか。意気地というものがまるでありません。
そもそも……メイドの御主人様を狙う不埒な雌蟲がいると聞いたなら、即自分から赴いて憑り殺すのが、正統な怪異のあるべき姿ではないでしょうか。私に命じられるまで動かないという時点で……いやもう止めましょう。不甲斐ない怪異にこれ以上言及しても、時間の無駄です。
私は車に乗り込むと、Uターンして屋敷へと戻りました。

…………
……………………
………………………………

「遅い……」
屋敷に戻り、玄関の扉の内側で数時間。待てど暮せど御主人様を連れて帰らない姉羅々に、私は苛立ちを覚えていました。
山の陽はすでに落ちており、宵闇が屋敷を覆い始めています。
『一定の目途が付いたら』
という意味不明な姉羅々の言葉が頭をよぎりました。一体御主人様をどこに連れ出しているのでしょう。一定の目途とやらが付かなければ、御主人様をここに連れて来ないつもりでしょうか。
同じ意味不明な言葉でも、先送りの要素がない分、テンソウメツの方がまだましというものです。
何度か姉羅々の携帯に電話をかけても、応答がありません。痺れを切らした私が、いっそ車で探しに行こうかと考え出した頃、体に異変が起きました。
「うっ……」
右側の乳房に、じんとした、甘い感覚が走ったのです。

971触雷!-幕間- ◆0jC/tVr8LQ:2015/08/04(火) 02:25:50 ID:p8QsWp/M
申し遅れましたが、一定以上のレベルに達したメイドの肉体には、御主人様探知機能が備わります。
ある距離以上に御主人様が近づくと、乳房と股間の女性器が疼くのです。これで御主人様との距離を計測することができますが、さらに距離が縮まると、御主人様のいる方向も測定できます。
つまり一対の乳房のうち、御主人様により近い方が強く疼くのです。強く疼いた乳房の側に体を向ければ、前方に御主人様がいらっしゃるというわけです。
「ああ……」
そんな説明をしている間にも、御主人様はどんどん近づいてきていました。左右の乳房と股間にそれぞれある突起が、痛いほど固く尖ります。乳房の中では、母乳が勢いよく分泌されているのが分かりました。
続けて、背中でパチンという音が鳴りました。乳房が張り過ぎて、特注のブラジャーのホックが限界を迎えたようです。慌ててエプロンドレスを脱ぎ、ブラジャーを変えようとしましたが、張りは強くなるばかりです。もはやおそらく、私が持っているどのブラジャーも合わないでしょう。
やむなくブラジャーを外すと、乳房内部に収まりきらない母乳が乳首から染み出していました。拭いても拭いても漏れてくるのを止めるどころか、御主人様との距離が狭まるに従って量が増えてきます。こうなってはエプロンドレスを着ることもできません。
「あ……あ……」
挙句の果てに……股間からは御主人様の肉棒を迎え入れるための潤滑油が必要以上に染み出してしまっていました。まるで失禁したかのように粘液が溢れ続け、ショーツを脱がなければなりませんでした。
「はあ……はあ……」
メイドのカチューシャ、そして白いレースのガーターベルトだけという破廉恥な姿になった私は、徐々に興奮の度合いを高めていました。少し動いただけで乳房と股間に甘美な電気が走ります。通常は御主人様が近くにいてもここまでにはならないのですが、前述のように御主人様成分が底を尽いているため、感覚が鋭敏になり過ぎていました。
御主人様は、もう屋敷のすぐ側まで来ておられました。
エンジン音が聞こえます。姉羅々の車が到着したようです。
ああ、御主人様。
私の御主人様。私だけの御主人様。早く触れたい。触れられたい。犯されたい。
玄関を開け放って飛び出し、御主人様に突進したい衝動を、私は辛うじて堪えました。姉羅々が邪魔になることが分かっていたからです。存分に御主人様成分を補給するためには、私と御主人様、2人きりの時間でなくてはなりません。姉羅々にはしばらく眠ってもらわないと。
電気を消し、玄関の扉のすぐ脇で私は待ちました。ついに、扉がガチャリと開きます。
最初に入って来たのは、懐かしくも愛おしい、御主人様の紬屋詩宝様でした。
ああ……乳房と股間から、さらに液体が垂れます。飛び付きたいですが、まだ我慢です。
御主人様の後ろから、姉羅々が入ってきました。御主人様と一体何をしてきたのか、ニタリニタリと笑うその顔はまさしく下衆の極みとも言うべきで、昼間の怪異の笑い顔が爽やかな微笑みに思えるほどでした。
私は足音を忍ばせ、玄関の扉を閉めると、姉羅々の頭に手刀を振り下ろしました。

972 ◆0jC/tVr8LQ:2015/08/04(火) 02:29:06 ID:p8QsWp/M
投下終了です。
お目汚し失礼しました。また後日……

973雌豚のにおい@774人目:2015/08/04(火) 05:22:57 ID:pDvr/dk.
ぐっじょぶです

974雌豚のにおい@774人目:2015/08/04(火) 19:43:24 ID:zHEwx.sk
>>972
GJです
いやー、懐かしいな

975雌豚のにおい@774人目:2015/08/04(火) 19:48:59 ID:hM/kVVWg
周期予想してた人報われたなww

976雌豚のにおい@774人目:2015/08/04(火) 23:11:31 ID:OjRjR9Do
触雷、何度も読んでるから更新すげー嬉しい

977雌豚のにおい@774人目:2015/08/05(水) 01:39:34 ID:VDmCKd9c
久々に見に来たけど
更新されてんだな
なんかすげーな

978雌豚のにおい@774人目:2015/08/08(土) 20:54:48 ID:T4QyypFY
触雷、続き楽しみにしてます!

979雌豚のにおい@774人目:2015/08/15(土) 22:12:33 ID:QyK3I/AQ
(´∀`∩)↑age↑

980雌豚のにおい@774人目:2015/08/15(土) 22:38:05 ID:Vt6jdBCs
実際埋まりか不安だな
細かい埋めネタいれてくれるような
素晴らしい御仁は未だいらっしゃるのか

981雌豚のにおい@774人目:2015/08/16(日) 00:17:35 ID:QVCZG6P2
なぜ他人に頼る
自分でやってみるんだ、さあ

982雌豚のにおい@774人目:2015/08/17(月) 20:17:05 ID:6VHAgOnI
触雷ほんと好き。清々しい変態ども大好き

983雌豚のにおい@774人目:2015/09/03(木) 22:14:26 ID:aDF9XUm6
命題『彼女にNOと言わせる方法』の続きはもう書いてくれないのだろうか
すごく、すごく好みの作品だから首と頭を長くして私待つわ。いつまでも待つわ

984雌豚のにおい@774人目:2015/09/03(木) 22:31:38 ID:DZ3Nlq4Q
あれはいいよな
少年期の夏感がやばいわ

985雌豚のにおい@774人目:2015/09/03(木) 22:47:42 ID:Mi.EeMyM
一話と二話の間、2年以上開いてるんだぞ、あれ
気長に待ちなさい

986雌豚のにおい@774人目:2015/09/03(木) 22:58:40 ID:DdtILA/E
俺もずっと待ってる
Aと主人公がどうなっていくのか気になって仕方ない

987雌豚のにおい@774人目:2015/09/15(火) 02:58:00 ID:IHjCrCFs
触雷来とるやんけ!

988雌豚のにおい@774人目:2015/09/27(日) 07:03:46 ID:qxPo84ZE
少しずつ書いてるがこのスレには間に合わないかなあ

989雌豚のにおい@774人目:2015/09/29(火) 19:49:33 ID:pk/60LGo
>>988が来るまで延命しようとする現スレと
>>988を自分のものにするために埋めようとする新スレの修羅場が始まるのですね

990雌豚のにおい@774人目:2015/10/09(金) 07:34:58 ID:4ICr5o9s
後10レスの命ね……

991雌豚のにおい@774人目:2015/10/09(金) 10:49:11 ID:duAiFZ/c
触雷の続きを…

992雌豚のにおい@774人目:2015/10/10(土) 11:21:17 ID:Z4s3zKWo
埋め

993雌豚のにおい@774人目:2015/10/14(水) 04:55:52 ID:eFot4YVo
埋めネタ考えたけど
浮かばないので埋め

994雌豚のにおい@774人目:2015/10/15(木) 09:56:36 ID:QTJSwtcs
梅の木の下に泥棒猫を埋め

995雌豚のにおい@774人目:2015/10/15(木) 17:15:39 ID:AFeBtGR2
埋めたはずのあの女がいつの間にか目の前に

996雌豚のにおい@774人目:2015/10/15(木) 22:02:14 ID:AFeBtGR2
自分で書いといてなんだが想像したら怖いな

997雌豚のにおい@774人目:2015/10/16(金) 00:35:30 ID:SSMkTulA
梅の木の下

998雌豚のにおい@774人目:2015/10/18(日) 00:14:15 ID:6.Cou4Fo
テスト

999雌豚のにおい@774人目:2015/10/18(日) 01:17:57 ID:/xShTaJw
>>1000へのお膳立て埋め

1000雌豚のにおい@774人目:2015/10/18(日) 08:47:17 ID:Hiz5RIyk
いやっ
まだ名無し君が来てくれているのに
埋まりたくない、埋まりたくない……
いやあああああああああああああああああ


「うるさいわね、さっさと埋まりなさい」
埋め




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