したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |
レス数が1スレッドの最大レス数(1000件)を超えています。残念ながら投稿することができません。

ヤンデレの小説を書こう!@避難所 Part06

776今帰さんと下校 ◆wzYAo8XQT.:2015/02/08(日) 23:05:38 ID:IwYaSxW2
 僕の人生がクソ漫画でなくてよかった。
 いや、この場合、僕の人生がジャンプで連載されてなくてよかったというべきか。なぜなら、僕の人生は紛れも無くクソだ。漫画ではないだけで。
「そういえば、今帰さんは普段何やってるの?」
「私もたいしたことはしてないよ。テレビみたり、勉強したり、お菓子作ったり」
 そういえばお菓子の写メが送られてきたりしたっけ。
「さすが今帰さん」
「……なんか阿賀君、言ってることがテキトーじゃない?」
 今帰さんはねめつけるようにこちらを見る。
「い、いいいやそんなことないよ。僕はいつでも正直さ!」
 これはあながち間違いではない。
 ぼっちは自分の気持ちにとても素直だ。だからやりたくも無いことをやらず、人に迎合しないのだから。
「今度阿賀君にもお菓子作ってあげるね!」
「いいよそんな。悪いし」
「人にお菓子作るのって結構楽しいんだよ?」
 なんだこの子は。天使か。
 誰かに何かをしてあげることで喜びを感じるなんて。どういう思考回路してんだ。
「申し訳なくってとても受け取れないよ」
「……阿賀君って自分を卑下するようで、結構上から人を見てるよね」
「とんでもございません! 私のような下男が今帰様のお手を煩わせるなど、とてもとても」
 僕は僕に出来る最大限のへつらいの笑みを浮かべ手を揉む。
「何それ。じゃあ毒見でいいよ。まさか今帰様の命令に逆らったりしないよね? 私のために死ねるなら光栄だよね」
 何を食わす気だ。
「ごめん。危なくない普通のお菓子をお願いします」
「ふふ、了解」

 他愛の無い会話をしているうちに、僕の家が近づいてきた。
 なんとなく。
 なんとなくだが、家の場所を特定されたくない。
 しかし寄り道しても、今帰さんには僕が帰宅するのをずっと待ちそうな気配がある。
「阿賀君の家ってもうすぐ?」
 そんなことを考えていたからだろうか、今帰さんはまさに僕の考えを突くような質問をしてきた。
「そういえば、今帰さんの家はどこなの?」
 質問を質問で返すのは人として最低の行いである。
 が、僕の質問で今帰さんが固まった。
 その顔に薄い微笑を貼り付けたまま、一言も話さない。
「今帰さん?」
「あ、あの、わたし用があるから帰るね」
 今帰さんは踵を返すと、早足で、いやもはやほとんど走るように消えていった。
 今も下校中だと思うんだけど。
 
 結局、今帰さんはどのへんに住んでるんだ?
 
 
――――――――――――――――――――――――
 
 
 どうしよう。つい逃げてきちゃった。
 変に思われたかな。思われたよね。

 阿賀君の家、行きたかったな。
 どんなお家なのかな。どんな部屋なのかな。
 阿賀君はその部屋で普段何をやってるんだろ。

 でも行けなかった。
 だってまさか家が反対方向だなんて答えられなかったから。
 素直に答えたら一緒に帰れなかっただろうから。
 阿賀君は決して人に心を許さない。
 親しげにしていても、阿賀君は本当は親しさなんてまるで感じていない。
 私は、阿賀君にどう思われているんだろう。
 迷惑なのかな。阿賀君は本当は私のこと嫌いなのかな。
 寝付けずに私はベッドから起き上がる。
 そうだ、お菓子を作ろう。
 阿賀君に上げるお菓子。
 何かをしている間だけは、物事を深く考えずに済む。
 阿賀君。嫌いならはっきりそう言ってよ。
 本当に嫌いだって言われたらどうするのか。
 そのことについて一切考えていないということに、私はまったく気がつかないまま、軽量カップを取り出し、お菓子作りを開始した。




掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板