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ヤンデレの小説を書こう!@避難所 Part06
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今帰さんは僕がそれを見ていることに気づいたようで、慌てて手を口から離し、後ろに回した。
「あ、その、あの、阿賀……くん? どうしたの、こんな時間に」
彼女は困惑した様子で僕の名を呼んだ。
今、僕の名前の後ろに疑問符ついてなかったか?
いくら僕がぼっちのキモオタだからって、名前すら覚えてないなんてあんまりだ。
ちなみに、僕はクラスの半分近い人たちの名前を覚えていない。
いや僕のことはどうでもいい。それより彼女の問題だ。
その取り繕うような質問に、僕はできるだけ冷静を装って答える。
「部活が終わったのが今だったんだ」
「え、あ、ごめんなさい! わたし、てっきり阿賀くんは帰宅部だと思ってて……」
なんで帰宅部だと思ってたんだ。ぼっちだからか? ぼっちだからなのか?
まあ帰宅部なんですけどね。
「そ、それでさ、その携帯、僕のなんだけど」
「あ、ご、ごめんなさい!」
彼女は慌てた様子で携帯電話に手を伸ばす。
僕はそれを阻止するように走って机に近づき、携帯電話の上に手を重ねた。
僕は今帰さんの手の上に手を重ねる格好となる。
しまった!
僕は慌てて手を離すが、気まずい沈黙が流れる。
どう考えても、僕必死すぎる。これじゃ携帯電話にやましいところがあると自白しているようなものだ。
「あ、あはは……」
気まずさを誤魔化そうと、僕は曖昧な笑みを浮かべる。
気まずく思ったのは今帰さんも同じなようで、薄く笑う。
「ガラケーなんて変わってるね」
変わってるとかどうでもいいから早く、携帯電話から手を離して下さい。
彼女の手をじっと眺める。
傷一つない綺麗な手だ。
彼女の手と比べると、僕の携帯電話はまるで粗末なゴミに見える。
あ、それゴミです。もしよろしければそのまま捨てちゃってください。
そんなわけの分からない台詞を口走りたくなる。
「久々に見た。何年使ってるの?」
「中学入学のときに買ってもらって以来だから、もう四年かな」
そんなことはどうでもいいだろ。そう思いながら僕は答える。
「四年……」
彼女は呟く。
彼女は携帯電話を持っていないほうの手を口元に持っていくと、そっとそのまま指を咥えた。
思案顔で、どこか遠くを見ている。
「あ、あの、今帰さん?」
僕の声と僕の視線で、彼女はようやく自分の行為を自覚したらしい。
彼女の白い頬がみるみる紅潮する。
その赤は夕焼けの赤の中でもはっきりと分かった。
「あ、あの、違う! 違うの!」
違うって、何が違うんだろう。
僕は何も聞いていないのに。
それにしても酷い慌てようだ。どうしてそんなに慌てることがある。
僕がスクールカースト最下層、いやいっそアウトサイダーだから、カースト最上層の彼女に何か害を加えるとでも思ったのか。そんなことするわけがない。カースト最下層は獣か何かだとでも思っているのだろうか。
パワーバランス的に考えて、むしろ慌てるべきは僕のほうであって彼女のほうではない。
まあ僕くらいカースト低いと、いっそ嫌われたりすることが怖くなくてカーストから自由なのだと勘違いできる。
ぼっちは誰とも利害関係にならないからね。だって一人だから。誰かとグループとか作れないから。
「あ、あのね、私、実は、ゆ、指をしゃぶる癖があるの」
それで、僕は彼女が指を銜えたことを見咎めたのだと錯覚されたことに気づく。
慌てた感じで弁明する今帰さんが可愛くて、僕はそれを直視できなくて顔を背ける。
「そうなんだ、可愛らしい癖だね」
突然の謎の自白に、僕はそうとしか返せなかった。
無言の静寂が二人の間に横たわった。
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