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ヤンデレの小説を書こう!@避難所 Part06
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この世のすべての苦痛は、人と人の間より生じる。
争い。諍い。嫉妬。不平不満。
どんな苦痛も、一人では起こり得ない。
持たざるものは幸いである。かつて聖人はそう言った。
そのとおりだ。
だから、ただ一人の人間関係すら持つことが出来ていないぼっちこそが、この呪われた世で唯一救われた存在なのだ。
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家路の途中、何の気無しにポケットに手を突っ込んで、そこで初めて携帯電話の不在に気がついた。
しまったな。教室の施錠までに間に合うだろうか。
僕は冷や汗をうっすらとかきながら、学校のほうを見た。
今、僕は寄り道もせず学校から家へ帰る途中だ。だから携帯電話を忘れたのも学校以外にない。
忘れたのは教室か、放課後寄った図書室か。
うちの学校は空き教室で馬鹿がやらかして以来、すべての教室は放課後施錠することになっている。
うちのクラスの施錠担当は生徒会メンバーの今帰さんだ。
生徒会は普段は五時くらいまで仕事してるんだったかな。彼女が施錠するのはその後のはずだ。果たして間に合うだろうか。携帯がないから時間も分からない。
どうして忘れてしまったりしたんだ。自分の迂闊さを嘆きたい。
携帯の充電が切れるということは、ぼっちにとって命の関わる事態だ。
明日の休み時間を携帯なしで乗り切るビジョンがさっぱり浮かばない。
ちなみに教室で充電するというプランはなしだ。
教室のコンセントはリア充のものだ。ぼっちには盗電なんて許されない。
教室が空いていることを願いながら、あるいは図書室に忘れていることを願いながら、僕は踵を返し学校に向かった。
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外や運動場は運動部の出す音や声で騒がしいが、教室棟はとても静かだ。
やましいこともないのに、静かな廊下に足音を響かせるのが気が引けて、僕は足音を殺して廊下を進む。
僕のように放課後の学校に縁遠い人間にとって、ここは僕のいるべき場所じゃない。そう思えるからだ。
かといって、昼間の教室なら僕のいる場所と思えるのかと言ったら、それも違うのだけれど。
僕の教室の戸が半開きになっているのが見えた。よかった、まだ開いていた。
僕は急いで教室に入った。
夕暮れの西日が僕の眼を強烈に打つ。
他に誰もいない教室の中で、長い髪をした少女の輪郭が、その西日に照らされて見えた。
その少女は口に手を当て、机の上に投げ出された携帯電話を見ていた。
あれ、あの携帯、僕のじゃないか?
物音に気づいたようで、夕日に照らされた少女はあわててこちらに向き直った。
僕も驚いて足を止めてしまう。
日の光に眼が慣れてきて、だんだん少女が誰だか分かってきた。
その少女は、今帰さんだった。
快活で、可愛くて、面倒見がよくて、成績優秀で。でもそれを鼻にかけず、誰にでもわけ隔てなく優しい、みんなの人気者。
そんな彼女が、指をくわえて、僕の携帯電話を見ている。
どういうことだろうか。
そもそも、僕、携帯を机の上に出しっぱなしにしてたっけ。
ちゃんとロックされてるよな?
万が一、アレの中身が今帰さんの目に触れるようなことがあれば大惨事だ。
ぼっちの生態を優等生に無修正でお届けするのは、まるで赤ちゃんはコウノトリがキャベツ畑から運んでくることを信じているような無垢な少女に無修正ポルノを見せ付けるようなものだ。
あの今帰さんからも嫌われたとなれば、クラスすべてが僕の敵になること必至だ。
ぼっちといじめられっ子は別物だ。僕はあくまでぼっちなのだ。ぼっちでいたい。
僕に気づいた彼女はぽかんと口を開ける。
指と口の間に橋がかかり、光を反射してわずかに輝く。
思わず顔が赤くなる。
その扇情的な光景は童貞の僕にはあまりにも刺激が強すぎる。
赤ちゃんはコウノトリがキャベツ畑から運んでくると信じている無垢な少女は僕のほうだった。いや無垢じゃなくキモオタで、少女じゃなく少年なんだけども。
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