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ヤンデレの小説を書こう!@避難所 Part06

268十六夜奇談 ◆grz6u5Kb1M:2013/12/13(金) 02:29:12 ID:WEky9wKo
少年は所在無さげに頭を掻き、目を伏せっておずおずと口を開いた。
「……ごめん、すっかり忘れてた」
そして静かに、頭を垂れた。
「ハルのばか」
ぷいす、とそっぽを向く少女。目が暗闇に慣れてきたのか、頬を膨らませているのが見て取れた。
そんな少女の様子がなんだか微笑ましくて、知らず、少年の顔が綻んだ。
少年の態度が気に食わなかったのか、少女の頬が更に膨らむ。
「いや本当にごめん。悪かった。埋め合わせと言っちゃなんだけど、明日はちゃんとハンバーグ作るから。だから許してくれよ、な?この通り」
眼前で手のひらを合わせるようにして、ひたすら平謝りする少年。
「ふんだ。ハルの言うことなんて、もう絶対ぜぇ〜ったい信用しないんだから」
しかし、少女の機嫌は依然として直らない。それどころか、ますます悪くなる一方だ。
どうやら完全にへそを曲げてしまったらしい。

少年は次第に、先ほどまでの微笑ましいものを見る目から、段々と涙目になってきた。
そして、少女に機嫌を直してほしい一心で、ついその言葉を口にしてしまったのだ。
「今日一緒に寝てやるから!」
瞬間、少女の瞳がギラリと光った。
少年は自らの失言に気付いたようで慌てて口を押さえたが、もう遅い。後の祭り、後悔先に立たず、口は災いの元、である。
少女は一瞬、言質は取ったとばかりにほくそ笑むと、先ほどまでの不機嫌はどこへやら、太陽のような笑顔で少年に向き直った。
「しょうがないなあ、そんなに言うんなら許してあげる」
でも、と少女は続けて、
「そのかわり、今言ったこと、忘れないでね?」

―――ハ、ハメられた……。

少年は愕然と肩を落とす。
寂しがりで甘えたがりな少女は、何かと少年と一緒に寝たがる。
少年としても少女と一緒に寝るのは決して嫌では無いのだが、16歳にもなってまだ一緒に寝ているというのは、少女の教育上よろしくないのではないかと考えている。
だから出来る限り少女には一人で寝させるようにしているのだが、敵もさる者、少女もまたあらゆる手段を使って少年と一緒に寝ようとする。
そのひとつがこれだったのだ。
どこからが計算だったのか、少年はまんまと少女と一緒に寝る約束を取り付けさせられてしまった。

「ほら、早く晩ごはんにしましょ。わたしお腹空いちゃった」
すっかり上機嫌になった少女は、鼻歌でも歌いだしそうな調子で少年の手を取る。
どうやら今夜は少年と一緒に寝られることが決まって、すっかりご満悦のようだ。
少年は観念したように、深々とため息を吐いた。



少年の名は、十六夜晴臣。
少女の名は、十六夜雨音。



この世でたった二人の、血を分けた双子の兄妹である。




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