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【お題で嫁を】お題で簡単にSSを作ってみようか【自慢するスレ】
1
:
名前が無い程度の能力
:2008/11/26(水) 00:23:45 ID:qDu.RquQ0
安価の人のお題で自分の好きなキャラの妄想をするスレ。
【例】
お題:煙草 キャラ:パチェ
「ここじゃ吸っちゃダメだよな…?」
「図書館の中は禁煙よ」
「…だよな、ちょっと外散歩してくるよ」
「えっ?」
「ほら、パチェも喘息持ちだし、な」
「だ、大丈夫よ、小悪魔、窓を全部開けてきて頂戴、あと○○(名前)に灰皿も」
「…大丈夫か?」
「へ、平気よ。ほら、早く座って、本の感想でも聞かせて頂戴」
「そうか…じゃあここで吸っちゃうぜ」
「え、えぇ」
(…むきゅー)
64
:
名前が無い程度の能力
:2009/09/30(水) 20:58:41 ID:nzaSFcLM0
「はい。こんな本で良いですか?」
「中身は知らんがきっとそれだ。助かったぜ。約束の粉をやろう」
魔理沙は小袋を手渡した。
中を開ければ、石けんを削った粉末が入っている。
「勿論、新品をあいつが一回使っただけの石けん。その表面を薄く削った、極上品だ」
「パ、パチュリー様ァ!! スーハァー!スーハァー!」
「うふふ……お主も小悪魔よのう」
耳をふさいでいるパチェリーの背後を素通りし、魔理沙は帰途についた。
「さて、ハロウィンとはどんな魔法だ?」
小悪魔を買収して持ってこさせた本は、このような題であった。
『十日でマスター! ハロウィンを極めて君もアフリカ人に』
室戸市名物シットロト踊りについて、よく説明されている。
「めらっさめらっさ」
「魔理沙。絶好調ね」
霊夢が西瓜を持って現れた。
「そのハロウィンは間違っているわ」
「なんだって」
「このハロウィンが正解よ」
西瓜を天井に吊るすと、霊夢は帰っていった。
「そうか」
「そうよ」
西瓜が割れて、中から霊夢が落ちてきた。
「今日は私の誕生日なの」
「おめでとう……霊夢」
「魔理沙、騙されないで」
「アリス!」
アリスは持ってきたカボチャを素手で握りつぶした。
「霊夢、たすけてくれ」
魔理沙はアリスに連れ去られた。
「西瓜、食べそこねた……」
霊夢は床に散らばった種を拾い集めた。
西瓜の種を魔法の森にまくと、花が咲いて実ができて馬車になった。
「おお、これは……。魔理沙、今助けに行くわ」
「その必要はない」
「だれ」
「シャンハーイ」
霊夢は上海人形をつかまえて、助手席に乗せた。
「あんたはシャンハイなんかじゃない」
「よく見破ってくれた。私が魔理沙だ」
「西瓜のおかげね」
遠い国で二人は幸せに暮らしました。〔終〕
お題:つかれた時の気分転換 キャラ:妖夢
65
:
名前が無い程度の能力
:2009/10/24(土) 00:09:00 ID:21bG9njo0
1
「こうしてあなたと一人っきりでいると、時間が経つのも忘れてしまいます」
妖夢はそう言って、ぽっと頬を紅くした。
俺もだよ、と少年の声がした。
「初めて会った時から、きっと運命の人だなって――」
「俺も、生まれた時から知ってる気がしたよ」
「じゃあこれからも、その後も、一生……そばに居てくれますか?」
少年の声で、「勿論だよ」と妖夢は答えた。
妖夢と半霊はもじもじと身をくねらせて、接吻を交わした。
「結婚しよう」
「はいっ。お嫁に行きます。さらば幽々子さま〜」
ひゅるるるっと木枯らしが吹いてる。
半霊で繰り広げる妖夢の腹話術を眺めながら、幽々子は煎餅をバリバリと食い散らかした。
「妖夢、楽しい?」
「そこはかとなく」
2
「幽々子さま、チェンジ」
「はい?」
「疲れました。チェンジ!」
「私も歳かしら。意味が分からないわ」
「じゃ、居間でゴロゴロしてますから〜たまには〜幽々子〜さまが〜ご飯〜作って〜く〜だ〜さい」
「ちょっと、妖夢?」
「何よ、幽々子〜」
こめかみを突き破りそうな何かを抑えながら、幽々子はにっこり笑った。
「何でもありません。妖夢さま、少々お待ちください」
「やだ〜早く〜ご飯まだ〜?」
妖夢は指をくわえ、ジタバタと暴れた。口から指を抜くと、障子にぷすぷすと穴を空けた。
バナナを食べると、皮を渡り廊に放置してカメラを用意した。
「これで、少しは私の気持ちも分かってくれれば良いんだけど……」
「ようむ〜さま〜ご飯よ〜」
「はい……えっ!?」
一見、普通の食事だった。逆に、それが怖い。
「すみません。おなか弱いんで、毒殺は勘弁して下さい」
「失礼ね。一生懸命作ったのに、ひどいわ〜」
幽々子は涙を流し、顔を袖で隠した。
「た、食べますから!」
「たんと召し上がれ〜」
「南無三……これはっ……! 毒、じゃない、毒じゃない!」
「味は?」
「美味しいです!」
妖夢がおかわりすると、幽々子は心底嬉しそうに笑った。
世話になっている人に世話を返して喜んでもらえるのは、やはり嬉しいものである。
もっとも妖夢からすれば、死を覚悟しながらの食事でもあった。
「たまには、良いかもね〜」
「私は二度と御免です」
お題:桶妖怪が儲かる話
66
:
名前が無い程度の能力
:2009/10/30(金) 21:59:57 ID:hi0kx9QY0
ageてみる
67
:
名前が無い程度の能力
:2009/12/30(水) 20:33:20 ID:eblgXtf.0
お題「忘年会」 萃香と慧音は必須。他のキャラは随意でOK
68
:
名前が無い程度の能力
:2009/12/30(水) 21:33:04 ID:3fI/JBJQ0
寅「やっぱ酒がはいるとお手洗いが近くなるねぇ、女子トイレはここかな」
ガチャ
リグル「ふぅ・・・・・・──!?」
寅「・・・・・・!?」
リグル&寅「変態だーーーっ男がっ男がっ、警察っ警察」
慧音「(省略されました・・全てを読むには萃香に聞いてください)
69
:
名前が無い程度の能力
:2009/12/31(木) 01:58:08 ID:YqU2eK6g0
適当に投下。
歴史の味わい方-忘年会-
慧音「貴女が噂の小鬼さんですね、噂は聞いています。
私は歴史の妖怪と名乗ってはいますが、鬼について実はあまりよく理解していない。
慧音「ひとつ質問をよろしいですか?貴女達鬼の……
鬼の前はなんだったのでしょう」
慧音「前世とかそういうのではなく、鬼というのは人間がつけた一種の呼び名です。
鬼は鬼と呼ばれたから存在、つまり歴史が始まったのか、以前から別の歴史を歩んでいた者が
人間の手によって鬼という歴史を歩まざるを得なかったのか」
慧音「人間というのは実に不思議な生き物だ。光と影は最初からあるのに、
怯えた人間は自分に都合のいい闇を作った。好きな時に隠れ、好きな時に責任を押しつけ、
されど妖怪となってしまった闇を今度は悪だと決めつけ追い払う。実に滑稽だ。
長い歴史で容姿が変わろうが時代が変わろうが、根本は変わらずだ。
──なのに……嫌いにはなれないね、人間は。
何故だろうね。自分が必死に里を守ろうが、人間は私を守れない。
人間にとって私は都合のいい闇かもしれない。
だがもし、私が警備を放棄したら……そんな事は考えた事もないが。
私が里を守る上白沢慧音である前はなんだったのだろう。
ただの人間か妖怪か。どっちにしろ誰かに守られてきたからここに存在し、
誰かが私という存在を必要としていたから今の私がいる。
きっと貴女達鬼もそういう存在なのだろう。
本当に嫌われてたら、本当にいらない存在だったら、鬼は存在していないだろう。
ははっ、すまないね、酒の席にこんな話を振ってしまって。
私は貴女を必要としている。そして人間たちも大好きだ。
ここで貴女と語り合えるのも、あの紅白黒人間がいるからこそだ。
人間以外の者にとってはこの宴会など、一回の欠伸程度の長さかもしれない。
だが私は、この宴会はとても貴重な時間だ。いや、貴女から注いでもらったこの一杯さえ
貴重で大切な物だ。
──おっと、話が大分飛んでしまったようだ、酒が入るといつものクセで回りくどくなってしまうな
いつから存在していたのか、なんてどうでもよくなってきたよ。
過去の価値も大切だが、今の時間というのは今しか味わえない。
ん?お酒も同じ?はっは、たしかに喉元通り過ぎれば味なぞどうでもいい
過ぎさった後、その余韻に酔う。
過ぎ去った後でないと味わえないものもある……か
そしてゆっくりと、酔いが醒める……
では、新たなお酒をいただこうじゃないか」
70
:
名前が無い程度の能力
:2009/12/31(木) 02:31:00 ID:RhQKIFIAO
>>65
秋の夕べは釣瓶落としと言いますが、地霊殿の釣瓶はその言葉にぷいとそっぽを向く様に、ゆっくりと地下へ降りて行きます。
今日も変わらぬ一日であった、となんとも言えぬ溜め息をつきながらゆっくりと降りていく途中、地霊殿の釣瓶は壁に光る一つの物を見かけました。
少しだけ身体をそちらに動かして、その光る物を手に取り、まじまじとそれを見つめました。
そのきらきらと光る石のような物は、この地下にあるものではない、艶やかな白い光を発したものだったので、釣瓶は興味と真新しいものに瞳を輝かせながらまたその地下に降りて行きました。
地下に降りれば、相変わらず土蜘蛛が茶を啜りながら、その巣に欠伸をしながら胡座をかいていました。
その暇そうな姿を見た釣瓶は先ほど手に入れた光る石を土蜘蛛に自慢するかの如く見せびらかします。
先ほどまで欠伸していた土蜘蛛は、その光る石を見ると、それは水晶だ。地下にはないから高く売れるぞ、と目を輝かせながら釣瓶に言いました。
もちろん、釣瓶にはこんなに美しい石を他人に明け渡す気もなく、その釣瓶の中に隠してしまいました。
そうして数日が経ったのですが、手入れもせず、湿気臭い場所に置いていた水晶はその光を失い、その辺りの石のような黒ずんだ物になってしまいました。
最初はその光に嬉々としていた釣瓶ですが、水晶が黒ずむと共に、焦りが生まれました。
どうにかしてあの輝かきを見たい、そう思うと釣瓶はこの石の存在を知っていた土蜘蛛の元へ急ぎました。
土蜘蛛はその黒ずむ水晶を見ると開口一番、やっぱりこういう地下では水晶は美しさを保てないんだ、仕方ないから誰かに渡そう、と言いました。
釣瓶は最初こそ嫌がりましたが、土蜘蛛の言葉を聞くうちに、私が持つよりはきっと、と思い、誰かに渡す手だてをすると言った土蜘蛛にそれを渡しました。
すると数日後、土蜘蛛は、水晶の金で買った物だ、と新しい釣瓶を彼女に渡し、また自分の巣に戻り、欠伸をかきながら胡座をかいていました。
新しい釣瓶を手に入れた釣瓶は、今までのそれを付け替え、また地上に上ったり地下に降りたりを繰り返しました。
ですが、たまに、釣瓶はあの輝かきを見れたらなぁ…と憂鬱にふけるのでした。
テーマ:今年を振り返り
人物:咲夜
71
:
名前が無い程度の能力
:2010/01/05(火) 00:22:42 ID:2D47H28EO
定期ageがてらお題を出すぜ
お題:服に落ちた雪
キャラ:文
72
:
名前が無い程度の能力
:2010/01/05(火) 10:23:05 ID:qTH7PqHUO
こんなスレあったのか
お代くれい
時間かかるとおも
73
:
名前が無い程度の能力
:2010/01/05(火) 16:02:45 ID:Lgz799O.0
お題
雲山誕生秘話
74
:
名前が無い程度の能力
:2010/01/05(火) 17:55:29 ID:upBq5ID.0
聖夜祭はどうだった与太郎共?さぁ、けーね先生の説教くらいに行こうぜ!
――雪――
幻想郷に雪が降った・・・と言えば想像はつくだろう。
きっと誰もが、いや絶対に降り積もる雪、溶けてゆく雪、その雪で雪を投げあったり(雪合戦と言うものらしい)、雪だるまを作ったりしている。
中には雪で家や自分をモチーフにした像を作ってしまう強者までいる。
「はぁ、・・・流石に寒いですね。」
温かい白い溜め息を両手に吐きかけながら伝統のブン屋こと射命丸文は積もった雪は落した一本の木の上に止まり、ボソリと呟いた。
「あ〜・・・何でこうゆう日に限って仕事入れてしまったんでしょうorz 確認する限りでは今日動いているのは私だけのようですし・・・」
二度目の白い溜め息を今度は両手ではなく、雪の降らす空に吐きかける。とは言っても溜め息は勝手に上っていくのだが・・・
「こうゆう日こそ家に帰って温まって同僚と酒を呑んで上司の陰口言って・・・」
真っ白な手帖の頁に吐きつける様にぐちぐちと独り言を呟く。そして独り言は愚痴になっていった。
「それでもって何時も何時も怒鳴って・・・・・・・あや?」
今の今まで気にはしていなかったが、一人で愚痴を言ってた所為かそれともこの体中を覆う冷たさに反応したのか
フッと自身の服に目をやった。服に落ちた、特に雪黒いスカートに落ちた雪を見つけた。
充分に冷えていたのだろうか?よくよく見れば雪結晶が浮かんでいる。
「これは・・・・・・」
自分は服がこんなにも冷えるまで此処で小言を呟いていたのかと考えるよりも先にまず、その結晶に魅入られていた。
「はぁ――」
笑ったような顔で三度目を溜め息。今度は濃くそして勢いよく。
「そうですね。何時までも此処で小言を呟いているよりも記事を書いて、早く椛と呑みに行きたいですからね。」
フ、カサッっと木が静かに揺れた、新たに降り積もった雪を落として。
其処には既に射命丸の姿はなかった。
「ネタは―――」
寒空、冬風が容赦なく露出した肌に突き刺さる。
「人妖を魅了して止まない――」
それに臆せず、寒さを知らない様な不敵の笑みを浮かべ。
「゛雪゛に―――」
その瞳は真っ直ぐに、揺ぎ無く。白い息を吐きながら。
「――決まりです!」
ビュオォォォ
冬に吹くには珍しい突風が山の木々たちをざわめかせた。
「はっ、くしゅん!」
思わず大きなくしゃみをしてしまった事に椛はやや赤面した。
しかしそんな椛に目もくれず、椛の同僚達は大きな板に貼り付けられた紙の方へと進んで行く。
遠くからは希望に満ち溢れた叫び声もすれば絶望に打ちのめされた様な嘆き声も聞こえる。
「あ、えっと・・・08883番08883番・・・」
番号の書かれた紙を見ながら大きな板の所まで歩いて行く。
板には大きく<冬の昇格試験結果発表>と書かれていた。
「08880、08881、08882・・・・・・・・・・・・・・・・」
一つ飛んで――――――――――08884−−−−−−−−−−
「お・・・ちた・・・orz」
雪を降らす寒空の下、椛と椛と同じ運命を共にした同僚達の嘆きが空しく木霊したのであった。
<END>
今さっき思いついた。
そして書いてみた・・・後悔はしていない、反省はしている。
「あれ?嫁自慢してなくね?」
嫁は文章で自慢してるんじゃない!文章で想像をさせて自慢させてるんだ!(特に椛
まぁ、元より書くのが下手だから意味がないけど――
75
:
名前が無い程度の能力
:2010/01/05(火) 18:22:31 ID:upBq5ID.0
忘れてた。
>>74
は
>>71
のお題「服に落ちた雪」、キャラ「文」です。
サーセン
76
:
名前が無い程度の能力
:2010/01/05(火) 21:36:04 ID:w9vx9Lf20
お題『梅』
藍様と誰かでお願いします
77
:
名前が無い程度の能力
:2010/01/06(水) 00:23:04 ID:EiebzDy.O
うん……ざん……?
しかも誕生秘話だと……?
78
:
名前が無い程度の能力
:2010/01/07(木) 05:34:58 ID:CZjBBJkcO
>>73
その昔、小さな山のふもとに少女とその子を育てる爺がおったそうな
その爺はよく山に入り、竹を取ってきては様々なものを作っていたんだそうな
その少女はというと、婆さんも両親も亡き今、一人で爺の代わりに家事炊事を行なっていたんだとか
爺は少女を可愛がり、少女は爺さんの愛を受けながら優しく育っていった
しかし、どんなに可愛がれども所詮は老いぼれ
家に金を入れるのは難しく、また、爺も年ゆえか身体が弱く、すぐ寝込んでしまうのだ
そういう時は少女が山に入り込んで何かしらの山菜を取りに行くのだが、なんぼう歳いかぬ少女である
大きくても両手に抱えた爺の痩せ細った腕ほどの筍が精一杯で、やはりというか、何も食えぬに等しい時を過ごす時もあった
そんな生活をしている中の冬も終わりかけの頃である
爺が咳き込み、また床に伏せてしまったので、少女は山の奥にまで山菜を取りに出かけた
春の訪れを少し見え始めた時期とはいえ、山は未だに冷えており、その冷たい風は幾度となく少女を襲った
寒い…寒くて仕方ない…
少女の足取りは風が吹くごとに重くなり、いつしかその場にうずくまってしまった
このままでは死んでしまう
少女が思ったというより直感的に、というよりも生物の本能的なものに心は動かされ、その場を動こうとした
しかし、その幼き少女の身体である
本能に近き心とは裏腹に、そのうずくまった状態からピクリとも動かぬ
このままじゃ死ぬ。誰か助けて
心は思えど、その幼き身体故に声すら出ぬ少女は、焦りと恐怖とその先に待つ何かに涙を浮かべた
お爺…
その小さな果実が凍りついた地面に落ちようとした瞬間、少女の身体に何かが巻き付き、その身体を温め始めた
その後、少女が目覚めたのは夜であった
起きた時には、自分が何故生きているのか、この様な場所に倒れていたのか、などという疑問を持つ前に、こんな夜中まで遊んでいたらお爺に怒られる、と山菜を取りに行った事など忘れて家に足を急がせた
慌てて山から降り、家に帰ると何かおかしい
こんな夜中になるのに灯りがついておらぬ
不思議に思いながら玄関を開けると、そこには鼻息すらせぬ程程心地よく床についてる爺があったとさ
その少女が紆余曲折故に空飛ぶ船に乗るのは別の話
お題:魔法と現実
キャラ:魔理沙
79
:
名前が無い程度の能力
:2010/01/07(木) 17:59:46 ID:zNl3zomY0
おお、日本昔ばなし風味に仕上がってていいですな
こんな暗めの誕生秘話でくるとは思ってなかったでした
80
:
名前が無い程度の能力
:2010/01/08(金) 01:43:22 ID:jW47wBnoO
>>76
「飛梅はね、いつまでも主人を想い続けたの」
八雲藍が縁側で橙と昔話をするとき、決まってこの時期になると毎年毎年、庭に咲く梅を見ながら飽きることなく飛梅の話をした
橙はまたこの話か、と溜め息をつけば、藍はきょとんとした顔で橙を見つめるのだが、少しするとまた昔話を始めるのだ
あくる年、藍が全く同じ話をした時、今までの鬱憤が噴き出したのか、単なる興味本意だったのかわからないが、橙は藍にこう言った
「藍さま。毎年毎年、同じ話をしますが、如何ゆえ毎年同じ様な話をするのですか?」
すると藍はそれこそ毎年の様にきょとんとしたが、すこし口元を緩めると毎年とは違う言葉を紡ぎ出した
「それはだな。橙。これは私がまだ八雲の姓を受ける前、そう、まだ橙の様な頃によく紫様から話された事なんだよ」
「でも藍様は藍様でしょう?八雲の姓を持つからと言って紫様の真似をする必要はないのではないでしょうか」
「確かにそうだ。だが、これは姓を貰ったから話しているわけではなくて、紫様の話しを紡ぎたいから橙に話しているのさ」
「それは…どういう事でしょうか」
「紫様がまだ八雲の式ではなかった頃、先代の前の八雲様がある日を境にいなくなってしまったのよ」
「ええっ!?」
「すると紫様はひどくご乱心になって必死に先々代の八雲様を探していたの。その時にはすでに式についていたからよく覚えているわ」
「………」
「その一方で先々代の八雲様の式、いわゆる先代の八雲様は一行に探そうとはしなかった」
「なんででしょうか?」
「その一連が八雲の姓を受け継ぐ事だったからなの」
「えっ!?」
「最初こそ紫様は先代をけなし、一人幻想郷をさ迷ったわ。でも、いつしか探すのを諦め、また先代の式に収まったの」
「…」
「そんな中で先代が紫様に『まるでお前は飛梅だ。追った主人こそ違えどな』と笑いながら言った日があって、その日から、まだ八雲の姓を持たぬ私に飛梅の話を始めたの」
「…」
「そんな姿を見てきたから、私はその飛梅を自分の式に伝えていく必要があるのではないかな…と思ったのだよ」
その日から橙は、藍の話す飛梅に静かに耳を傾け始めた
そして、その藍の一言一言を失わぬように、ゆっくりその話を抱きしめるのだ
お題:現代と幻想郷(ギャグ)
キャラ:早苗さんで
81
:
名前が無い程度の能力
:2010/01/08(金) 16:29:22 ID:ZyyjxoG20
>>80
良い藍さまでした。
ありがとうございます。
82
:
名前が無い程度の能力
:2010/01/09(土) 18:30:10 ID:nzkZohDQO
誰か書いてください
お題:飲み物(それに関連するならなんでもOK)
キャラ:博麗霊夢
83
:
名前が無い程度の能力
:2010/01/09(土) 18:52:24 ID:LD..CCy.0
何ヶ月も書き込みないから諦めてたよ。なんかスゲー嬉しい
84
:
名前が無い程度の能力
:2010/01/11(月) 05:49:18 ID:pUkRaJLQ0
>>82
時には私が遊びに行くのも良かろう、と気まぐれを起こし、霧雨邸を訪れたは良いのだが、
「ほら」
とか言って当たり前みたいに魔理沙は湯のみを私に差し出す。
喉渇いた、という要求に応じて出てきたのが飲みかけのお茶だった。
粗茶には慣れている私だから、飲みかけってのはさしたる問題ではない。問題はこの湯のみが使用済みであることだ。
「あ、ありがと」
ひとまず礼を言って湯のみを受け取る。それから、私の長くて短い三秒間の葛藤が始まった。
魔理沙が口をつけてない部分を選んで飲むって選択肢は、妥当だ。
でもこの白黒は、とぼけているように見えて妙に鋭いところがあるから、下手をしたら見抜かれるかもしれない。
この私がこんなにどうでもいいことを意識してる、ってことを。
いや、見抜かれたからって何を恥じることがあるのか、という話なのだが。
「どうした、飲まないのか」
「あ、いや。飲む、飲むわよ」
服の袖で拭いてから飲むって選択肢は、微妙だ。
意識してるのがモロバレなのは勿論そうだし、これじゃまるで、魔理沙の口を汚いモノ扱いしているみたいになる。
この白黒は図太いようでいて妙に繊細なところがあるから、下手をしたら泣かせてしまうかもしれない。
コイツは泣くと輝くから、それはそれでいいかな、とも思うけど……。
魔理沙の怪訝な視線から、私はタイムオーバーを悟った。
意を決して、平静を装うためにあえて、あえて魔理沙が口をつけた部分からGO。ぬるいお茶だ。
ちょうど良い塩梅だけれど、いくら飲んだところで乾きがおさまることはなさそうだったから、一口だけ含んで、
「ごひひょうさま」
なんて慌てながら湯のみを魔理沙に返した。何をテンパってるんだろう、私は。
「なにをテンパってるんだ、お前は」
同感っス。
でも、なんとか何事もなくやり過ごせたみたいだった。
と安堵した直後、私はお茶をふきだした。テーブルをぶったたいて慟哭した。
「レディのたしなみだぜ」
魔理沙がハンカチで湯のみを拭いたのだ。
この外道、それはないでしょ、あんまりだ、私の三秒間の責任を取れ! と私は泣いた。
「悪かったって、腕によりをかけたご馳走で誠意を示してやる」
「許す」
そういうことならなにも問題はなかった。
ただ、こそばゆさからヤケになった私がご馳走をむさぼっている間、魔理沙が妙にニヤニヤしていたのが、気になる。
<了>
お題:みかん
キャラ:レミリア
85
:
名前が無い程度の能力
:2010/01/11(月) 16:25:40 ID:AjsTcQE2O
>>84
妙にニヤニヤしてしまった
こんな俺は間違いなく魔理沙の兄弟
86
:
名前が無い程度の能力
:2010/01/11(月) 22:29:10 ID:PWMtqUHI0
お題:祈り 指定:鍵山雛
ちょっと簡単すぎかな?
87
:
名前が無い程度の能力
:2010/01/12(火) 18:03:47 ID:gYYQDG0g0
>>84
――咲夜が病に冒された。
急遽呼び寄せた永遠亭の永琳が彼女を見たときの顔は芳しくなく、咲夜の命の灯火はまさに消えようとしていることは明らかであった。
しかし、彼女の主であるレミリアはあきらめなかった。
紅魔館の抱える動かない大図書館ならば、咲夜を救う方法を知っていると信じて疑わなかったのだ。
力任せに、図書館の扉が開かれる。
「……ずいぶん騒がしいわね。どうしたのかしらレミィ? 白黒でもないのに、あなたらしくないわ」
「咲夜を救う方法を教えなさい」
突然の友人の言葉に、動かない大図書館、パチェリーの表情が変わった。
「彼女を救う方法はないし、必要ないわ。人間が弱い生き物であることは、あなたも覚悟の上でしょう?」
「それでも、よ。私には……いえ、私たちには彼女がまだ必要なのよ」
レミリアの表情を見て、パチェリーはこっそりとほくそ笑んだ。
「そうね……あなたがそこまでいうなら、たった一つの可能性、教えてあげないことはないわ」
「それは何!」
パチェリーのところに歩み寄り、肩をつかむレミリア。力のコントロールを忘れていなければ、パチェリーの肩は砕けていたかもしれない。しかし、パチェリーは動じずにひとつの可能性を口にする。
「命の水よ」
アクア・ヴィターエと呼ばれるそれは、錬金術師によって作られた錬金術の材料であり、多くの人間の命を救ったという伝説が残されている。一部では賢者の石の材料となることもあるという。
「しかし、本来これは水の少ない地域での伝説。水の多いこの国では必要とされないか……と思われたけど、そんな中でも『命の水』の伝説は残っていたみたいね。その伝説では、命の水の正体を言い当てているわ」
――ポンジュースよ。
咲夜への思いのためか、レミリアは――そして紅魔館の住人は、その言葉をまっすぐに信じた。
88
:
名前が無い程度の能力
:2010/01/12(火) 18:04:40 ID:gYYQDG0g0
「今宵より我々は、メイド長十六夜咲夜の病を治すため、命の水『ポンジュース』を作る儀式に入る! そのためには条件が必要だ!」
ホールに住人全員を集め、レミリアは声高らかに宣言する。その姿、まさしくカリスマの具現化。
「ひとつ! 生命の園『愛媛』に対する愛を、農家への愛を証明しなければならない!
朝昼晩ごとに、紅魔館特製巨大こたつに入りながら愛媛の方向を向き、全員で農家のことを思い浮かべながらみかんをひとつずつ食べる儀式を行う!
皮を捨ててはいけないわ。皮は回収し、紅魔館の大浴場に投入するわ! これで、体もポッカポカよ」
「Sir.Yes,sir!」
「そしてもうひとつ! ポンジュースを探すためには、本当の愛媛産のみかんが必要よ。ありとあらゆる手段を使って、愛媛産のみかんをありったけ探しなさい! これは命の水『ポンジュース』の材料になるわ。必ず探し出しなさい!」
「Sir.Yes,sir!」
「以上のことを必ず行わず、みかんを粗末にしないこと。そうしなければ、みかんによる報復がまっているわ。気をつけなさい! 状況開始!」
「Sir,Yes.sir!」
レミリアの言葉を受け、紅魔館の精鋭が幻想郷に飛び立つ。それだけ、メイド長への信頼が厚いのだ。普段は役に立たない妖精メイドでさえ、まるで6面道中妖精のようなきりりとした表情を見せている。
この作戦は必ず成功する。いや、成功させなければならない。
精鋭が飛び立ったのを見て、レミリアも月夜に大きくその羽を広げ、夜の闇へと消えた。
――それから1週間。
一種異様な結束間の紅魔館は、さまざまな事件を引き起こしつつ農家への愛を証明し、愛媛産のみかんを手に入れることに成功した。
「これだけあれば、命の水『ポンジュース』を作ることはたやすいわね」
「そう、後はこれをあなたの手で絞り、ポンジュースに練成する……そうすれば、咲夜の命は助かるわ」
パチェリーの研究室にて、紅魔館全員の期待を受け、今ここにポンジュースが作られようとしていた。
レミリアが幻想郷のあらゆるコネを使って手に入れた愛媛のみかんに手をかけ、ビーカーの上にかかげ……万力のような力をこめる。
「みかんみかんみかん!」
小悪魔と美鈴によるギターとドラムがかき鳴らされる中、レミリアの手からポンジュースがこぼれだし、ビーカーの中に入ってくる。即座にカスいれに絞ったみかんをいれ、もうひとつ搾り出す。
「みかんみかんみかん!」
恐るべき速さでみかんが絞られていく。ギター、ドラム、さらにはフランドールのベース、妖精メイドたちの絶叫……すべて、病に臥せっているメイド長のため。
「みーかーーーん!」
ポンジュースの効果は絶大であった。
咲夜の病気は完全に回復。
永琳が驚いた表情で、咲夜の検診をし、言葉をこぼす。
「愛媛の心……いえ、あなたたちの彼女を思う心の奇跡ね」
その発言に……紅魔館が沸いた。
お祭り騒ぎの紅魔館の大図書館に、現れる影。
咲夜を検診した永琳である。
「なかなか考えるじゃない」
「私はただ提案しただけよ」
「馬鹿を言わないで。残っていたポンジュースを調べさせてもらったけど、やはりあの子の血が混じっていたわ」
「それ以外に咲夜を救う方法があるとでも?」
「医学的には認めたくないわね……吸血鬼なんて、蓬莱人から見れば短命な種族よ。とはいえ、ああいう形の吸血鬼は私も見たのは初めてだわ」
「レミリアとみかんの力よ、あなたには理解できないでしょうけど」
「素直にそう思っておくわ」
パチェリーは薄暗い図書館の中で、こっそりとほくそ笑んだ。
長すぎた、初投稿でスマソ。
89
:
名前が無い程度の能力
:2010/01/12(火) 20:13:22 ID:kU/SwHPc0
>>87
マシンガンズと混ぜ人氏の匂いがプンプンするww
そして何気に良い話してて和んでしまった。
90
:
名前が無い程度の能力
:2010/01/12(火) 21:34:42 ID:yzfeTUPs0
起 橙は紅魔館に潜り込んだ
承 地下に囚われの姫君がいるというので救出することにした
転 その姫君は下克上を起こし紅魔館を乗っ取ろうとしていた
結 橙の勇気が紅魔館を救うと信じて
これで・・・というのは無茶だろうか
91
:
名前が無い程度の能力
:2010/01/14(木) 02:41:58 ID:2zO4uVXUO
>>90
ソードマスター橙 〜最終話 概ね全てを終わらせるとき!!〜
橙「よし!!藍様の言いつけ通り、紅魔館から聖なる伝説の剣、ハイパーセイントソード(以下HSS)を手に入れたぞ!!」
咲夜「誰だ!?貴様かッ!!囚われの姫、プリンセスユカーリを助けに来た勇者王、チェイーンとはッ!!!」
橙「えっ!?えっ!?」
咲夜「さらなる上は我等の伝説の剣、HSSを盗み出すとは…許せんッ!!(デ〜デデ〜♪)このサクーヤが取り返してくれるッ!!たぁっ!!」
橙「きゃああああッ!!!」
(ぐさっ)
サクーヤ「ぎゃああああああっ!!こ、このサクーヤがあああああっ!!!!」
チェイーン「えっ?なんだか勝っちゃった…勝った!!第一部完ッ!!」
プリンセスユカーリ「遂に参られたか勇者王、チェイーン。囚われの紅魔館の領主、プリンセスレミリアはここにいるぞ!!」
プリンセスレミリア「た、助けて勇者王様ァ!!」
チェイーン「なんと卑怯なッ!!!ジェネラルユカーリッ!!!」
ジェネラルユカーリ「私を倒せたら貴様にプリンセスレミリアを返してやろうッ!!!さぁ!!勝負だッ!!!」
プリンセスレミリア「勇者王様ァ!!」
勇者王チェイーン「いくぞジェネラルユカーリッ!!!」
ジェネラルユカーリ「さあこい勇者王チェイーンッ!!!」
勇者王チェイーン「いぃくぞぉぉぉぉああああああ!!!!!!!!」
勇者王チェイーンの勇気が世界を救うと信じてッ!!!ご愛読ありがとうございました
咲夜「…………」
美鈴「…咲夜さん…?」
咲夜「なんで…打ち切りなのよ…」
美鈴「えっ?」
咲夜「なんで打ち切りなのよぉぉぉぉぉあああああ!!!!」
美鈴「ちょっ!!いやッ!!!なんでっ!!ウボァー」
ピチューン
お題:ファーストフード
キャラ:地霊殿の誰か
92
:
名前が無い程度の能力
:2010/01/15(金) 02:13:23 ID:.PyF7kP.O
>>91
何がなんだかwww
93
:
名前が無い程度の能力
:2010/01/15(金) 18:11:48 ID:7kYkfQWs0
>>91
混ざりすぎw
94
:
名前が無い程度の能力
:2010/01/16(土) 01:27:01 ID:WGHzH4Z.O
>>86
厄神様はその夜、久々に人の住む里に来たそうな
そもそも、厄を身体に巻き付ける厄神様は人が嫌うというのもあり、滅多に人里なぞに行くことなぞないのだが、この日は何の気なしに来てしまったのだ
夜というのもあったためか、外にいる者も少なく、いたとしても顔を真っ赤にしながら、回りながら先を進む厄神様をみて、きょとんとするだけだ
愚痴を吐きながら酒を煽る者や、金を使って賽子遊びに興じる者がまだ起きているのだろう
夜は更けたとはいえ、まだ灯りは点々としている
最初はふらふらと先を進んでいた厄神様だったが、その灯りの先にふと小さな影があることに気付いた
目をやると、酒屋の向かいの川瀬に十いくつになるかならないかの少年が、川に足を投げ、空を仰いでいた
こんな夜更けに、少年がいるなぞ到底考えられぬ。そう思い、厄神様はたまらず彼に声をかけた
「君は何をしているの?」
すると少年は後ろを振り返り、厄神様を見るなり
「お父を待っています」
と、静かに答え、また空を仰ぎみた
ここで厄神様は、少年の持つ厄をふと感じた
厄というものは中々癖のあるもので、人には、大抵が行動や言動、態度などに厄の断片を見出すことがある
―多少の厄があるから、人は人たりえる―とは厄神様の弁だが、彼の言葉から彼の持ちうるものを感じたのだ
既に少年を照らしていた酒屋の灯りは消え、ただ深々とした闇が周りを包んでいた
「いけませんねぇ。子どもがこんな夜中に外にいては。今日は帰りなさいな」
「とは言われても困ります。お父には酒を飲み終わるまで待てと言われておりますので」
「ならそのお父様に私から言っておきましょう。あなたは帰りなさいな」
そう言われると少年はしぶしぶ立ち上がり、そのまま暗闇の中へ歩き始めた
厄神様は、その後ろ姿を見ながら、密かに両手を合わせ、ゆっくりと目を閉じた
その少年の帰る家もないどころか、その魂すら寄せる身もない、ただ一人さ迷うものである事を知ったからである
少年から出た言葉から厄は見えない。ただ言葉がそこにあっただけなのだ
厄神様は、彼の帰る道に厄あらんことを、と静かに祈り、誰もいなかった川瀬を後にした
お題:思い出
キャラ:メディスン
95
:
名前が無い程度の能力
:2010/01/17(日) 00:06:43 ID:AczHA2bkO
お題だそうかな
お題:この時期における朝の布団の存在について
キャラ:アリス
96
:
名前が無い程度の能力
:2010/01/17(日) 02:14:33 ID:ZWF9Guk.0
>>94
『この体の思い出』
首だけにされた人形が、小さなクッションの上にころんと転がされている。大人一人でいっぱいになるような小部屋には、ランプが一つ。使い込まれたオークの机は見事に整頓され、少女が背を丸めて何かの作業に没頭していた。
「ねえ、思い出があるってどんな感じ?」
首だけのメディスンが口を開いた。アリスは背中を向けたまま質問には答えず、腕の関節にヤスリを当てている。
「ねえ、どんな感じって聞いてるんだけど?」
「……ああ、御免なさい。集中してたから」
メディスンが語気を強めると、ようやくアリスが振り向いた。左手には人形の腕を持っている。その関節はランプの光で滑らかに光っていた。
部屋の主とその客、一人と一体の容貌はよく似ている。金髪碧眼に白い肌、例えるなら「人形のような」としか言いようのない二人だった。
「私は妖怪になってまだ何年も経っていないから、思い出って言葉の意味がよくわからないの。教えてくれる?」
ある日、忘れられた鈴蘭畑で、捨てられた人形に魂が宿った。数年前に起きた花の異変をきっかけに、メディスンの存在が幻想郷に知られるようになった。彼女は今では永遠邸やアリスなど一部の者と時に行動を共にする間柄になっていた。
「思い出ねぇ。当たり前すぎてかえって難しいわね」
アリスは作業の手を休め、冷え切った紅茶に手を伸ばす。
「昔のことがふと心に浮かぶ……ってことなんだけど」
「私にはその、昔が、ないのよ。ついさっき生まれてきたところなんだから」
「記憶と思い出は違う、ってのは、なんとなくわかるんだけど」
アリスは上目遣いに部屋の左右をちらちらと見たが、二の句は継げなかった。
「もういいわよ。無理に説明しなくても。たぶん、長生きしたらわかるんでしょ?」
「それよりさっさと私の修理を終わらせて頂戴。もう3時間は経ってるのに」
メディスンは当てずっぽうに経過時間を言うと、少しふくれた。
「貴方ぐらい精巧に出来てると、3時間でここまで修理出来れば新記録よ」
「陶製でも樹脂でもない、木製の球体関節人形なんて初めて見たわ……。この木材がいったい何かさえ見当がつかないのに、手探りで修理してるのよ」
人形に関しては第一人者であるアリスにここまで言わせるのならば、その言葉は本物だった。一度バラバラに解体されたメディスンは右腕を残して修理が完了し、机の上に座っている。今はメディスンの魂とつながっていないために動くことはできないが、それでも滑らかな曲線は今にも動き出しそうな怪しい存在感を放っていた。
97
:
名前が無い程度の能力
:2010/01/17(日) 02:15:13 ID:ZWF9Guk.0
「話は仕事が終わったら聞くわ」
メディスンは目を閉じ、口を結んでしまった。
「……あのね、お説教は閻魔様の仕事だけど、さすがに私も一言いわせてもらうわね」
アリスはふっとため息を吐くと、体側の間接を仕上げにかかった。
「貴方はもっと自分の体を大事に使いなさい。貴方が良くても体が可哀想よ」
メディスンの本質は霊体や幽体に近い。人形の本体が傷ついても、メディスンは痛みも苦しみも感じない。毒を操るが、それが自分に中毒することもない。もっとも良いことばかりでもなく、痛みがない故に無理に動いて体を痛めてしまうこともある。
「話はてゐから聞いたわよ。ウサギと一緒に餅つきしようとして肩が抜けたんでしょう? 自分の体重の何倍もある杵を振り回したら、そりゃ肩も抜けちゃうわ」
「抜けたらまたハメるだけよ。壊れたら直せる体だもの。便利だわ」
メディスンの憎まれ口が止まらないので、アリスはおでこを軽くつついた。
ようやく体側の間接の仕上げが終わった。アリスはランプを近づけて上下左右から関節の滑らかさを確認する。精巧な作りであるが故に、わずかの曲率の狂いも動作の引っかかりにつながる。
「……あら。何かしら」
アリスの手が止まる。関節の奥にシミのようなものが見つかった。直接光を当てなければ気づかないほど、薄くにじんだ字で書かれていた。
「たぶん署名ね。ええと……『マイスター』……あとはすり減って読めないわ」
メディスンが目を開いたので、アリスも目の前に署名を持って行ってやった。
「ふうん。この体を作った奴がいるのね。誰か知らないけど」
メディスン本人にも署名の心当たりはないようだ。
「当たり前でしょう。こんなに精巧で特殊な人形は、よほどの思い入れがなきゃ作らないわよ。貴方の体は何十年、もしかしたら何百年の歴史があるわ。貴方は生まれてたった数年なのかもしれないけど──」
メディスンの目を見て、アリスの顔が曇った。人形の目から涙は流れないが、メディスンの顔は明らかに泣き顔だったからだ。
「言い過ぎたわね。御免なさい。……でも、その体は大事に使ってあげて。それだけはわかって欲しかったの」
「……アリス。わかった」
「……なに?」
「思い出。私を作った人の思い出。名前も顔もわからないけど、確かに私の体を作った人の思い出。ちょうどこんな風に私が首だけになって、体ができあがるのをずっと待ってた。そんなことが、あった。あったのよ。うん」
メディスンは堰を切ったように一息にしゃべった。いつの間にか笑顔になり、体があれば飛び上がりそうな調子で笑っている。
「……そう、良かったわね。人形師として冥利に尽きるわ」
アリスはメディスンに背中を向けると、最後の関節をはめた。濡らさないように気をつけながら。
「アリス、早く体とくっつけて! 思い出のことをみんなに言いに行くから!」
「服を着せなきゃいけないでしょ。もう少し待ちなさい」
「早く!早く!」
アリスはメディスンに背中を向けたまま、できるだけ、ゆっくりと、服を着せた。
【終】
98
:
名前が無い程度の能力
:2010/01/20(水) 00:29:29 ID:mCN8Ysk.O
>>96-97
いいもの見させてもらいましたー
99
:
名前が無い程度の能力
:2010/01/23(土) 15:19:23 ID:IxL.fJ3YO
>>95
「最近魔理沙を見ないのよ」
アリスがによく分からぬ報告をしたのは冬の日も下り始めた頃であった
幻想郷の冬である
その多くを山とする幻想郷は、山から降りてくる冷たい風が直撃するため、心身も凍らせるような日中が続く事も珍しくない
「はぁ?アンタ同じ魔法の森の人間でしょ?家に行ったらいいじゃない」
「何度も行ったわ。でも家をノックしても出る気配すらないのよ」
博麗の巫女は、焦りの混じったブロンドの髪を持つ少女に溜め息をつけば、その押すとも引くとも言わぬ問答に付き合っていた
山に近き博麗の御社である。寒気が降りるのも早い
「…もう付き合ってらんないわ。そんなに気になるならドアでも蹴破って安否を確認したらいいじゃない」
「い…異変かも知れないじゃない!!」
「私は普通の人間専門だわ。どこの世界に妖怪の異変依頼を受ける人間がいるのよ」
アリスが声を荒げても、その響きは寒さを増した境内に響くだけで、何かしらの効果もなかった
「私はもう社片付けるから。ほら、出ていった出ていった」
アリスは霊夢に軽くあしらわれると、すごすごと博麗神社を後にした。
その帰り、アリスは霧雨亭て足を運んだ
最早、今彼女が頼れるのは自分しかいない
そういう心中がどこかにあったのやも知れぬ。その表面化せぬ心情に押されるがごとく足を早めた
魔理沙の家についた頃には日は落ち、一面が闇に包まれていた。ただでさえ暗き魔法の森である。夜が光を吸い尽くすのも早い
やはり明かりの無い霧雨亭をみると、やはりか、と言うようにアリスは溜め息をついた
その時、博麗神社のやりとりを思い出し、無礼やむ無しと、その足でドアを蹴りあげた
壊れたドアの先には音と光の無い世界が広がり、ここが魔理沙が住む場所とは思えぬほど異色を放っていた
恐る恐る一歩、また一歩と魔理沙の部屋に足を進めた
ここで初めて、この家に音が入った。アリスの床板をふむ、ぎぃっ、といった不気味な音である
その不安になる音を聞きながら、魔理沙の部屋のドアを開けた
すると、なんとも言えぬ臭いが立ち込め、ベッドの上には痩せこけた――――
「もう外に出たくなくてさ」
金髪の少女はアリスの作った食事をむさぼるように口に含んでいた
「いやぁ、寒いってのは嫌だね。本当に布団から出たくなくなる」
その言葉にアリスは、大きく溜め息をついた
<終劇>
お題:異文化コミュニケーション
キャラ:早苗
100
:
名前が無い程度の能力
:2010/01/26(火) 21:14:32 ID:CNrE9mdIO
最近ちょっとだけ盛り上がったと思えば…
お題、仕事
キャラ、花映塚の誰か
101
:
名前が無い程度の能力
:2010/01/27(水) 07:51:14 ID:gMxO2zUE0
>>99
初投下 気軽に投下できる場所があるのはいいことだ。
それは守谷の神社の昼飯時、神奈子の一言が事の発端だった。
「いやー、毎度のことだけど、早苗の料理はおいしいわねぇ」
「ありがとうございます」
「早苗は料理上手だよなー」
「そんな…」
神奈子と諏訪子に褒められ、謙遜しつつもまんざらでもない様子の早苗。
こんな時こそ、二人の巫女をやっていてよかったと思う瞬間だ。
「でもぉ…」
「でも?」
しかし、神奈子の発言はまだ続いていた。あきらかに陰りのある言い出しにピクリとなる。
「もう少し幅があったらいいんだけどねぇ」
「幅?」
神奈子の発言に不服をあらわに聞き返す。幅とはつまり料理の種類という意味だろう。
そういった意味でなら、自分は十分に多種多様な料理を作ってきているはずだ。
「早苗は和食ばっかだからなー」
「そうそう。たまには洋とか中とかでもいいんじゃない?」
「…そういうことですか…」
言われてはっとする。確かに様々な料理を作ってきてはいるが、それは和食に限ってのことだ。
洋食や中華料理は今まで作ったことがなかった。というより、作れないと言った方が正しいか。
「わかりました。お二人がそう言われるのならば、不肖早苗、山を下りて勉強してまいります」
「え…それってつまり…」
「はい、膳は急げ、今日から明日にかけて御暇頂戴いたします」
「そんなに急がなくても…」
「いえ、お二人にはおいしい料理を食べていただきたいので。それでは」
言って、足早に部屋を出て行った早苗。取り残されたのは生活能力0の神様二人。
「どうしよう、神奈子」
諏訪子はもくもくとほっぺたをご飯でいっぱいにしながら、言葉とは裏腹に緊張感のない声で問う。
「ま、どうにかなるでしょ」
味噌汁をズズズとすすりながら、こちらも緊張感なく応える。
二人の山場は、まだ遠い。
102
:
名前が無い程度の能力
:2010/01/27(水) 07:52:46 ID:gMxO2zUE0
>>101
続き
守谷の神社を出て、早苗が真っ先に向かったのは麗夢の許だった。
しかし麗夢曰く
「私も和食ばっかりだしなぁ……あ、そうだ、アリスのところへいってみなさいよ」
とのことだったので、早苗は麗夢に言われた通り、アリスの家へと向かった。
「こんにちわー」
鬱蒼とした森の中にぽつんと、まるで人の来訪を拒んでいるかのように建っているその家は、まさに麗夢の説明通りだった。
中に人のいる気配はするのだが、返事がない。再度、今度はドアをノックすると、ドアの向こうからくぐもった声で「入っていいわよ」と聞こえた気がした。
本当に入っていいものか一瞬悩み、すぐにドアノブに手をかけ、ゆっくりとドアをあける。
「すごい…」
思わず声に出してしまうほど、早苗は驚いていた。部屋中に飾られた色とりどりの人形たち。その人形たちに囲まれて、アリスと思われる人物はいた。
「誰…?」
綺麗なブロンドの髪にそぐわない、陰鬱とした声に若干戸惑いつつ、早苗は自己紹介する。
「あ、私早苗といいます。あの、アリスさんですよね」
「ええ、そうだけど、要件は?」
「料理を習いに来ました」
「料理?」
あまりに予想外の答えに、つい作業を止め早苗の顔を見る。
「どういうこと?」
「あの、私和食以外の料理を作れるようになりたいんですけど、麗夢さんに聞いたらここにいけって言われて…」
「ああ、そういうこと」
「はい、そういうことです」
ふーん、とアリスは席を立ち、おもむろに台所へと向かう。その様子を不安そうにただ目で追うだけの早苗。
早苗の中で気まずい空気が流れる。
痺れを切らした早苗が口を開こうとした瞬間、2つのエプロンを持ったアリスが台所から姿を現した。
「はいこれ」
唐突にぽんと手渡されたのは、いかにも女の子らしくかわいらしいエプロン。
「これは…」
「いつまでいられるの?」
早苗の疑問になど付き合ってられないというように尋ねるアリス。
「…明日の朝です」
「そ、じゃあ洋食の基本と、応用のきくレシピ2つくらいかしらね」
「そ、それだけ教えていただければもう!」
「じゃ、さっそくはじめましょ」
「はい!」
かくして、アリスのお料理教室は幕を開けた。
103
:
名前が無い程度の能力
:2010/01/27(水) 07:53:19 ID:gMxO2zUE0
>>102
続き
そして一方の守谷神社には飢えという山場を迎えた神二人。
「神奈子ー、おなかすいたー」
仰向けになって天井に叫ぶ諏訪子。
「私だって空いたわよ」
同じく仰向けになっている神奈子。
「なんか作ってくれー」
「無理よ。私が料理できないの知ってるでしょ」
二人は己が浅はかだったことをじわじわと認識し始めていた。
「そうそう。マヨネーズはもっと入れていいわよ」
「え、こんなにですか?」
「ええ、洋食は基本味を濃いめにしたほうがおいしいのよ」
「…太りそうですね」
「…そうね」
アリスとの料理教室が始まってはや数時間。食卓にはパスタ、サラダ、スープと洋食の基本メニューが並んでいた。
「「いただきます」」
二人の声が重なる。まだエプロンをつけたままの二人は、向かい合ってささやかな晩餐を楽しむ。
この数時間で二人の間は急速に縮まり、他愛もない会話が両者を行きかう。
その光景はとても華やかで、アリスはふと、いつもの自分の食卓を思い出す。
そして早苗も、普段はいない「友達」という感覚で接することのできる相手に対し、会話が弾んだ。
楽しい時間はあっという間に過ぎ、夜、早苗の強い要望で二人は同じベッドで眠ることとなった。
「私はいいわよ」というアリスを、早苗は「そんなこといわず」と引きずり込んだのだ。
しかしアリスも、決して悪い気はしていなかった。むしろ、ベッドの中で他人のぬくもりを感じることに言いようのない快感すら感じていた。
ただ、あまり近づきすぎると、離れるのが怖かった。
朝、早苗が目を覚ますとすでにアリスは台所にいた。
「おはようございます」
「あらおはよう、もうでるの?」
「はい、多分、お腹を空かせ待っていると思うので」
「そう」
アリスは一つのバスケットを取り出し早苗に渡す。
「これは?」
「お弁当よ。サンドウィッチっていうの」
「い、いいんですか?」
「ええ、材料と作り方は紙に書いて入れておいたから」
ずしりと重いバスケット。その重さは、恐らく沢山のサンドウィッチに、朝早くから作ってくれたアリスの想いが詰まっているからだろう。そう思うと、早苗は涙を見せずにはいられなかった。
「あ…ありがとう…ござい…まず…」
ぐずぐずと泣き出す早苗に、アリスはほほ笑む。
「まだきて…も、いいでずか…」
「もちろんいいわよ」
「ありがと…ございますぅ…」
後ろ髪をひかれる思いでアリスの家を後にする。
早苗には帰る家があり、待っている人がいる。でも、アリスはどうなのだろう。
余計なお世話なのかもしれなかったが、早苗は考えずにはいられなかった。そしてまた、涙した。
涙も乾いたころ、早苗は帰りついた。右手にアリスの作ってくれたサンドウィッチを握りしめ、満面の笑みで戸をあけると、
「SA☆NA☆Eーーー」
「なっ!」
突然飛び出してきた諏訪子に視界を塞がれた。
「早苗まってたんだぞー」
「どうしたんですか諏訪子様!」
「お腹が空きすぎて空きすぎてー」
「わかりましたから離れてください!」
言われ、離れた瞬間に玄関先でぐったりと寝転がる神様。これではどっちが主かわからない。
「おかえり、早苗」
奥からは神奈子が顔を出す。
「ただいま戻りました、神奈子様」
「あー、その、やっぱりあれだな」
「はい?」
「早苗がいないと駄目だな、うちは」
少し照れくさそうに、神奈子は言う。その様子が、何よりも愛おしかった。
「それじゃあ早速ご飯にしましょう」
「何作るの?」
「今日はサンドウィッチというものです」
「なんだそれ! おいしそー」
「ええ、きっととっても美味しいですよ」
104
:
名前が無い程度の能力
:2010/01/27(水) 14:48:58 ID:oW2bB3tE0
誰か地霊殿メンバーでお題くれよ
105
:
名前が無い程度の能力
:2010/01/27(水) 16:01:15 ID:CtS8tIqo0
お題「地霊殿の意表をついた胸談義」
106
:
「地霊殿の意表をついた胸談義」
:2010/01/27(水) 16:41:09 ID:oW2bB3tE0
久しぶりに地霊殿に帰ったら、玄関前でお燐がべそかいてしゃがみこんでいた。ちょっと話しかけるのが躊躇われたけど、あんまりにも惨めな泣きっ面だったので、無意識を解いて、お燐の視界にひょこりと顔を出してみた。
「うぁあぁぁぁこいじざまぁぁぁあぁ」
「お、おうぅ。どうしたの、そんな世界の終わりみたいな顔して」
「ざどりざまがぁぁぁ」
そこからはもう言語ではなく、うぉあああ、とか、びゃあああ、とか獣じみた嗚咽で(まぁ、猫だから獣ではあるけど)泣きじゃくるだけだった。時々、さとり様、と聞こえてくる。恐らくお姉ちゃんに何かされたのだろう。それにしたってお燐がこんなに泣くくらいだから、相当なことがあったのだろう。お燐の泣き顔は、もしかしたら初めて見たかもしれなかった。
「どうしたのさ。ちゃんと口で言ってくれなきゃあ、私は心を読んであげられないのよ」
「ぐず、ぅう、さ、さとり様っ、がっ」
「うん。お姉ちゃんに何かされた?」
「あたい、さとり様を怒らせて、それで、うぅ。ぐすっ、あたい、地霊殿に、いられなく、でっ、ぐず」
「落ち着いて。深呼吸してごらん」
「ひっひっふー」
「思ったより落ち着いてるようで安心したよ」
ボケれるならちゃんと会話しろ。
「さとり様に、嫌われたんですぅ、うぅぅ……あたい、もう生きていけません……ぐず」
「お姉ちゃんがお燐を? 嫌う? そんな馬鹿な話がある訳ないわ」
「だって、『燐と話すことはもうありません』って、お話ししてくれないし」
「ふぅむ」
あのひとに限って、自分のペットを嫌うなんてことがあるとは思えない。
毎年地底で行われる『地底の嫌われ者ランキング』で、ここ数十年間ダントツにトップを独走し続けているお姉ちゃん(今年も二位とダブルスコアの差をつけて堂々の一位だった。そしてとうとう殿堂入りを果たすことが最近決まったそうだ)だけど、お姉ちゃん自身は誰かを嫌うということはほとんどない。あのひとは基本的に他人に対して無関心だ。だから周りに何を言われても大して気にしない。だからお姉ちゃんにとっては、好きの反対は無関心でしかない。
その上、お姉ちゃんはひどくテリトリー意識が強い。他人に対して無関心だから、そんなどうでもいい相手に無暗に干渉されるのが苛立たしくてしょうがないらしかった。だからお姉ちゃんはテリトリーを作って、その中には他人を侵入させない。一部の許した相手だけ、自由な出入りを許可する。
気の弱そうな顔して、結構きつい性格なのだ、あのひと。
だから、わざわざ自分が招き入れるような真似をしたペットを、お姉ちゃんが嫌う筈がない。その程度の関心なら、初めから拾ったりしない。
「それは、うん。ちょっと機嫌が悪いだけじゃないかな。お燐が嫌われる筈ないよ。私が言うんだから、間違いない」
「でも、さとり様と喧嘩したんです」
涙ふきふき、ようやくまともにお燐が話す。
「お姉ちゃんと喧嘩。すげぇ」
ていうかあのひと喧嘩とかできるんだ。
「喧嘩と言っても、口論ですけど……」
「ふむん、じゃあそれが原因かな? どんな話だったの」
「こいし様のバストサイズで揉めまして……私はB派なんですけど……さとり様が『貧乳はステータスだ』って強情で……」
「ほっとけよ!」
お姉ちゃんを殴り倒そうそうしよう。
107
:
名前が無い程度の能力
:2010/01/27(水) 22:18:45 ID:CtHS0FTMO
面白いw
108
:
名前が無い程度の能力
:2010/01/27(水) 22:48:12 ID:HFjWmrlE0
お題:ペンギン
109
:
名前が無い程度の能力
:2010/01/27(水) 23:33:39 ID:mzo3J7r2O
>>101-103
でほっこりして、
>>106
で笑ってしまった
いいスレみつけたわ
俺もお題出しとこ
お題:仕事でのささいな事
110
:
「ぺんぎん」「仕事でのささいな事」
:2010/01/27(水) 23:58:24 ID:oW2bB3tE0
「ねぇお姉ちゃん」
がりがりがりがり。
「ねぇ、お姉ちゃん」
がりがりがりがりがりがりがり。
「ねぇ、お姉ちゃん!」
がりがり……ぴたり。
「なんですか、もう。集中が途切れます」
「ちょっと話しあおうよお姉ちゃん。私たちに足りないのは会話だと思うの」
「あぁ、今日のこいしの下着って何色かって話でしたっけ」
「ちげぇよ! そんな話した覚えがない!」
「サブレタイニアンジョークです」
「アメリカンとかけようとして失敗してるよ」
「まったく、私と会話する気が無いなら仕事に戻りますが」
「会話する気が無いのはお姉ちゃんでしょうが!」
「じゃあなんですか」
「いや、今更こんな質問を投げかけるのはどうかと思うんだけど……これはどういうことですか?」
私は自らの身体を指差した。指差したというか、手でぽんぽんとおなかを叩くことしかできなかったけれど。どうしてか。私の不可解な格好の為である。
いつものように地霊殿に帰ったら、丁度お姉ちゃんがデッドラインにいた。つまり是非曲直庁に提出する、灼熱地獄跡の報告書の締め切りである。お姉ちゃんはこう見えて筋金入りの面倒くさがりで、こういった書類はいつも期限ぎりぎりまで放っておいたりするのである。そうして今日みたいに、前々日くらいから、徹夜し続けて仕上げるのだ。
懲りないなぁなんて思いながら。私はそっと地霊殿を後にする。だって、徹夜続きのお姉ちゃんのテンションはうざいから。
しかし、今日は運悪く捕まってしまった。そして、「私を助けると思って、これを着て『お姉ちゃんがんばれー』って言ってください」と真顔で言われた。大分気持ち悪かったけど、迫力が凄まじかったので断れなかった。そうして手渡された衣装が、ペンギンスーツである。
「似合ってますよ?」
「それを確認したい訳じゃないから」
「可愛いですよ?」
「それでもないから。いや、もういいや……私、何やってるんだろう……」
「ほら、ちゃんと応援してください」
「ふれー、ふれー、ば・か・あ・ね」
「ツンデレなところも好きですよ」
「そのプラス思考はどこから来るんだろうね」
私は今日も姉に振り回される。
111
:
名前が無い程度の能力
:2010/01/28(木) 00:06:35 ID:OcroU1rc0
×サブレタイニアン → ○サブタレイニアン
打ち間違い失礼した
112
:
名前が無い程度の能力
:2010/01/28(木) 00:11:09 ID:O8AaZLNo0
お題:仕事での些細な事 キャラ:レミリア
「……」
寂しそうにため息を吐く咲夜。
それを心配してか、レミリアが咲夜に話しかけた。
「咲夜」
レミリアの声が聞こえていないのか、全く反応がない咲夜。
「咲夜!!」
レミリアがつい声を張り上げて呼ぶと、驚いてレミリアの方を向く咲夜。
「な、何でしょうか?」
「何でじゃないわよ、メイド長である貴方がそんな落ち込んでちゃ……」
レミリアは、自分の言葉の重みに気づかなかった。だから、続けた。
「だいたい、仕事がないんだったら普通に椅子に座って休むとかしたら?」
「……」
咲夜は無言で落ち込んだままだ。
レミリアは、なぜかイライラした。
「咲夜、話す気がないなら良いわ」
「お嬢さ……」
「煩いわよ!! 今すぐ出て行きなさいよ!!」
レミリアは、言った後に後悔した。
ふと視線を咲夜に戻すと、瞬間移動で既にいなくなっていた。
「……」
咲夜の立っていた床には少し水の跡が残っていた。
「私は何て事を言ったのかしらね……」
後悔既に遅し、廊下には唯独りの泣いて蹲る影があった…。
――
それから数日後、紅魔館にはお通夜のような静けさが広がっていた。
党首、レミリア・スカーレットはあれから何も食べずにずっと引きこもっていた。
「お嬢さま、咲夜さんが落ち込んでた理由はですね……」
美鈴が悲しそうな顔でドアの前で話し始める。
「……お嬢様のスプーンを、割ってしまったんですよ」
「それをものすごく悔いていて……お嬢様にあわせる顔がなかったんでしょう」
「……」
レミリアは、黙って聞いてる。しかし、驚きがドアを越して伝わってきた。
美鈴は続ける。
「しかし、ほとんど理不尽のように解雇のような事を……」
「お嬢様、この紅美鈴を解雇しても殺しても構いません……」
「ですから……」
「美鈴!!」
美鈴が続けようとしたところを、いつもの貫禄で止める。
「例を言うわ……それと……」
「今の無礼をなかったことにする代わりに…胸を貸して」
「……えぇ、お嬢様」
レミリアの部屋のドアが開き、美鈴の胸にレミリアが蹲った。
「私……咲夜になんて事を!!」
「……お嬢様、落ち着いたら……迎えにいってあげてください」
レミリアの涙と喚きを美鈴は黙って受け止めていた……。
――
「……咲夜」
レミリアは、捜し求めてやっと咲夜を見つけた。
「お嬢様、私は……」
咲夜が何か言おうとするのを、手で制してレミリアは言った。
「咲夜、貴方は……」
「世界で一番瀟洒で完全な、私の従者よ」
咲夜は堪えてた涙を溢れさして、レミリアに抱きついた。
レミリアも同じように涙を流して咲夜を抱きしめていた。
二人の絆は、一層深くなったとさ。
おしまい
113
:
名前が無い程度の能力
:2010/01/28(木) 00:19:21 ID:O8AaZLNo0
>>110
ペンギンスーツこいしを妄想して死に掛けた。面白かったです。
114
:
名前が無い程度の能力
:2010/01/28(木) 01:08:47 ID:r4oo3iPo0
>>110
なんという馬鹿姉。これで新たなさとり様象を開いてしまう
115
:
名前が無い程度の能力
:2010/01/28(木) 01:16:53 ID:r4oo3iPo0
さとり「パオーン!」
誤字ついでにお題:象
116
:
名前が無い程度の能力
:2010/01/28(木) 02:25:40 ID:NuIrMLfk0
今月のうちで未消化なお題をリスト化。番号はスレ番。
78 「魔法と現実」 魔理沙
80 「現実と幻想郷」ギャグ指定 早苗
91 「ファーストフード」 地霊殿キャラ
100「仕事」 花映塚キャラ
115「象」 キャラ指定なし
117
:
名前が無い程度の能力
:2010/01/28(木) 05:14:48 ID:/jUFN4OMO
>>78
はいただいていこうか
幼き頃に、師匠に言われたことが今だに私の頭から離れない
雨の降る時は、キノコ探索や友人達に茶々を入れずに、自室で魔導書に目を通すのだが、その時に限っていつも思い出す事がある
それは、ある意味で残酷というか、それが自然というか
魔導書を読んでいると、師に怒られながらも、自分の魔法を磨くことに必死な自分を思い出す
あの頃は、魔導書が楽しくて楽しくて仕方なかったな、と思い出すと、ふと笑いが込み上げてくる
しかし、いつも最後には師の言った一言が来てしまう
その言葉を思い出した瞬間に、込み上げてきた笑いは消え、止めていた目を魔導書に移し、何かに追われるように一心不乱に本に目をむけるのだ
いや、読んでいないのかもしれない。ただ、目に入れるだけで、内容なぞ見てすらないのやも知れない
ただ、ひたすらにその言葉が来るのを、言葉通りになってしまうのを拒むために、本に逃げている気さえする
そうやっても気が紛れぬ時は、水瓶の前に行って水を飲む
その時だけは、里で買ったコップも、柄杓も使わず、手で掬って飲む
そうして水を飲むと同時に、その辺りにあるランプや食器を叩き割りたい衝動にかられる
誰かが作ったさえ分からぬ物達が、私の全てを奪うような気がしてならないのだ
以前に一度叩き割ろうとしたランプでさえ、油を使っていたのがガス式になり、木をくりぬいた形の食器も、いつの間にか陶器になっていた
いつしか、自分の周りにあった世界が変化し始めているのを感じると恐怖しか沸いてこないのだ
その止まらぬ時と共に、あの、師の発した、何気ない、当たり前の言葉を思い出すと、それらに押し潰されそうになる
そうしていつも最後には手に掬った水を前に泣き出してしまう
どう足掻いても止まらぬ時間と、自分のやっている事との深い溝の大きさが、私の首を絞めるようで―。
今日もまた魔導書に手を出し、読みふける
埃被った文献を開き、ガス式のランプに火をつけ、本の世界に没頭する
埃被った魔導書を読む時に、ふとガスランプの火が目に移る
すると、幼き頃に、師匠に言われたことがフラッシュバックし、未だに私を苦しめるのだ
<了>
お題だけの方がいいみたいね
お題・スポーツッ!!!
118
:
名前が無い程度の能力
:2010/01/28(木) 14:49:48 ID:2j81VJdc0
>>106
105だけど、いいお話をありがとう
まさかこんなに早くできるとは、すごい
119
:
名前が無い程度の能力
:2010/01/28(木) 23:57:10 ID:e6vASRTg0
ならば俺は
>>117
のスポーツを頂く。書いてたら長くなったんで、いくつかレス消費する。スマン。
痛みには慣れている。腹を抉られ、右腕を炭化するまで焼かれたこともあった。だんだんとそれにも慣れ、痛みには鈍くなった。
息が上がる。全身が鉛のようだ。頭がくらくらする。走ることが、走り続けることがこんなにも、痛みより辛いことだとは思わなかった。
頭頂部で纏めているものの、膝のあたりまで伸びていた黒髪が鬱陶しい。ささやかな自慢であったそれが、今は土埃にまみれ、汗にまみれて顔に貼りつくのが鬱陶しい。
できることならば今すぐに体を休めたい。この草原の感触を全身で味わい、へにょりイナバに命じて持ってこさせた水を飲み干すのだ。
私は半引きこもり。里ではあそこの姫はニートだとか言われているのも知っている。それがここまで頑張ったんだ、誰も責めやしない。永琳だって、仕方ないわねぇと苦笑いしながらも労わってくれるはずだ。
足が止まり、体を折って膝に手をつく。ちっぽけなプライドが、大の字に倒れこむのを邪魔した。
「あれー、姫様はもうばてばてですかー? だらしないですねー」
「いつも、そこら中、はぁっ、走り回ってる、あんたとは、違うのよッ」
先ほどまで倒れていたはずのもふイナバが傍らにやってきて、嘲りの混じる声をかけてきた。その声に混じる、たったっ、と地面を蹴る音。進んではいないが、足を動かし続けているようだ。
睨みつけたいが、そんな体力も残っておらず、地面に向かって言葉を吐き捨てた。
「なっさけないですねぇ。まぁ、別に姫様はいてもいなくても変わらないですが」
「どういう、ぜえっ、ことよっ!」
今度こそ顔を上げて睨みつける。もふイナバは忌々しくも肩をすくめて見せた。
「言葉のままですよ。別に役に立ってないんですから、そこで寝てて下さい」
言いたいことだけ言って、もふイナバは軽やかに走り去って行った。遠くで、体の大きな妖怪に防衛線が突破されたのが見えた。わっと観客席が沸く。
赤熱した頭で考える。いや、考えるまでもない。私は、私は。
120
:
名前が無い程度の能力
:2010/01/28(木) 23:57:41 ID:e6vASRTg0
―――馬鹿にされた?
あの目。あの声。いつもの、ふざけながらも私を慕ってくれていた面影などどこにもなかった。あったのは嘲り以上に屈辱的な、路傍の石ころを見るような目。
―――ふざけんな。
赤熱した思考がさらに熱くなり、どろどろに溶ける。
―――ふざけんなっ!
自らの頬を殴る。粘り気のある、血の混じった唾を吐き捨てる。
「あ、あ」
手を膝から離し、握る。
「あああぁぁぁぁっ!」
前傾姿勢を取って走り出す。ボールをもった妖怪目がけて走り出す。
奴は追いすがる兎たちを振り払い、独走している。
―――まだだ。まだたりない。
さらに前傾、全ての力を下半身に回し、グラウンドを駆け抜ける。途中で追い抜いたもふイナバは笑っていた。何故か不快ではなかった。
―――もっと、もっと!
ぶちんぶちんと腱が切れる。一瞬、がくんと力が抜けた。すぐさまリザレクションをかけ、修復する。
あまり痛くはなかった。痛みなんてどうでもよかった。ただ、速さがほしかった。
顔を上げて前を向く。奴は、もうすぐゴールラインの手前、最後の砦たる永琳が守る場所に到達しようとしていた。
永琳ならば止める。
それは信頼などではなく、確定した未来。相手の行動パターンを読むことなど、月の頭脳たる彼女には朝飯前。
奴はステップを切ってかわそうとするが、それすらも読みの通りだったのだろう、鋭いタックルが奴の膝に入った。足を払われた奴は、前に倒れ、その際にボールが転々と転がった。
「ほら、止めたっ!」
誰に言うもなく、叫んだ。既にボールから5メートル程度の場所まで来ている。
横をちらりと見る。奴のフォローに走っていた妖怪と目があった。
この後はボールの取り合いになる。正直にいったら、いくら私が身を顧みないで力を出せるとはいえ、体の動かし方を学び、それで生きてきた妖怪にかなうわけがない。ならば。
「ふっ!」
足にさらに霊力をため、ボールに飛びつく。一回転して立ち上がる。その時にはもう、横にいた妖怪が眼前まで迫っていた。
飛びかかってきたそいつを軽くかわす。勢いを殺しきれなかったそいつは、無様に地に転がった。
再び走り出す。先ほどと同じように、常にリザレクションをかけながら走る。
―――私は弾丸。だれにも止められず、そして止まらない。
そんなことを考えた。眼前には私を止めようと殺到する木端妖怪ども。こんな状況にもかかわらず、口端がつり上がるのを感じた。
全員が私に向かって飛びかかってくる。力比べをしたら、多勢に無勢だ、この捨て身の状態でも当然のように負けるだろう。
「でもっ!」
さらに低く、低く。前傾し、地面すれすれまで体を落したまま駆け抜ける。頭上では飛びかかった脳筋な妖怪どもがごしゃりとぶつかってつぶれた音がした。
その姿勢のまま走り続ける。体力的にも限界だった。霊力ももう少ししかなくなっていた。
しかし、精神はまだ残っている。この滾った魂は、衰えることなく燃え続けていた。
―――私は、それだけでいい。
少なくとも、今だけは。
121
:
名前が無い程度の能力
:2010/01/28(木) 23:59:36 ID:e6vASRTg0
そしてついに、相手チームの最後の砦たる、因縁の相手、藤原妹紅の姿が見えた。試合が始まる前はかったるさを隠しもしなかったその顔が、真剣な表情を作っていた。
それを睨みつける。
目があった。
いやぁ、へろへろだと思ってたが、やるね。見直したよ、蓬莱山輝夜。
―――ふん、当たり前でしょう。私を誰だと思っているのよ、藤原妹紅。
ははっ、違いない。お前がこんなに必死な顔を見せるとは思わなくてな。
―――私だってたまには本気出すわよ。
そのようだね。……さて。決着を。
―――そうね。決着を。
つけようか。
―――つけましょうか。
妹紅が地をけった。轟、と音をたてるように私に向かってくる。その背には、炎が背負われていた。
私もそれに負けぬよう、残り少なくなった霊力をすべて全身に回し、来る衝撃に備える。
「あああっ!」
意図せずに、叫びが漏れる。永遠の姫たる私。それには似合わず、無様かもしれない。それでもいいと思った。そんなことはどうでもいいと思った。この勝負にさえ勝てれば。
交錯。肉と肉、骨と骨、、意地と意地がぶつかり合い、ごしゃり、と、先ほどとは比べ物にならないほどの音を立てた。私はその音を、どこか別世界のことのように感じていた。
交錯は一瞬だけだった。激突は一瞬だけだった。そのはずだった。
世界が色を失い、時間を置き去りにした。死ぬ前には時間が遅くなるというが、それは本当なのかもしれない。
ただ、私は死ななかった。全ての意地をかけた私が、死ぬはずが、負けるはずがなかった。
私に弾き飛ばされた妹紅はどこか満足げだった。気がした。
世界に色が戻る。妹紅と全力をかけてぶつかった際に、数え切れないほどの骨が折れたようだ。片足が妙な方向に曲がり、腕も同じような状況だった。呼吸をするたびに胸に違和感を覚える。リザレクションをかける霊力も残っていない。一回死ななければこれは治らないだろう。
しかし、痛みは感じなかった。
色が戻った世界の中、私はゴールラインの向こう側に飛び込んだ。
長く、長く笛が鳴った。
世界が、歓声に包まれた。
End.
ラグビー。
W杯が日本開催決定したから、みんな見てねっ!
そしてニートだとか言われてる輝夜も、たまには本気出していいと思うんだ。
感想とかあったら言ってくれるとマジうれしい。こんな熱い話書くの初めてだったから、なんか欠点とかあったら教えてほしい。
じゃ、最後に。
輝夜は俺の自慢の嫁。スレタイ的に、こう言ってもいいんだよね?
次>お題:目覚まし
122
:
「目覚まし」
:2010/01/29(金) 15:12:59 ID:uQxs58K.0
「天っ誅ぅううぅぅうぅぅ!」
脳天が割れるかと思った。丁度そんな衝撃がおでこに一直線にめり込んだ。
「いっ、だぁああぁぁ?!」
あまりの痛みに上体を起こせば、視界いっぱいに広がる妹の顔。そしてその一秒後、どすんと音を立ててその小さな身体が全身にのしかかった。どこかの関節が奇妙な音を立てたのを聞いた。
「ちょ、おま、ひとが昼寝している最中になんてことしくさってくれやがるんですか?!」
「ただいま、お姉ちゃん」
「スルーすんな!」
「おかえりのちゅーして?」
「ちゅー」
「ちゅー」
状況が把握できない。
私は昼寝中だった。そう、この時間帯は大概ペットが仕事をしてくれて、仕事を与えていないペットらも丁度昼寝に入る時間で、読書にも飽きてきた私は有閑貴族よろしく優雅にソファでお昼寝タイム、の筈だった。そしたらこの仕打ちである。恐らく妹が私のおでこ目掛けてドロップキックをかまし、そのまま私の身体になだれ込んできたのだ。こんな目覚め最悪じゃないか。天誅ってなんだよ。ただの出オチじゃないか。私が何をしたって言うんだ。全身がまだ痛い。
「いや、だからですね」
「うん」
「めっちゃ痛いんですけど」
「こいしちゃん無意識ー」
「怒りますよ」
「きゃー」
頭がぐらぐらして痛む。視界もまだぐらぐらする。しかし妹が可愛いから許してあげよう。
なだれ込む瞬間に下着見えたし。
123
:
名前が無い程度の能力
:2010/01/29(金) 23:16:16 ID:sHl6hPwcO
地霊殿組が頑張ってるなぁ
なんか書きたいけど眠いからお題出して寝かせてもらうねぇ
お題:徹夜
124
:
「徹夜」
:2010/01/30(土) 00:13:52 ID:GUlGYXt.0
「君がッ泣くまで! 追いかけるのをやめないッ!」
「もう泣いてるから勘弁してよぉぉぉぉおぉぉ」
前略、お父さん、お母さん。
貴方達、娘の育て方間違ったと思います。特に姉の方。真顔で追いかけてくる姉は怖いです。ペットもみんなあまりの姉の形相に逃げ出してしまいました。私ですか? ふふ、現在進行形で追いかけられています。どうしてって?
私が知りたいわ。
「何故逃げるのですか、こいし! 大人しく私に抱擁されなさい!」
「抱擁で終わらない気がするから逃げるんですぅうぅぅ」
現在地、地霊殿の渡り廊下。この廊下は地霊殿内でも最長を誇る。ばたばたばたばた、スリッパの音が私の悲鳴と共にやかましく響く。
あんな目が血走った顔で抱擁させろなんて言われて、誰が素直に従うのだろうか。抱擁のままベアハッグに移行されるに違いない。あの勢いだと肋骨まで折られそうだ。第三の眼さえ血走っている。あれは多分ドライアイの所為。
「私が何したって言うの?! 何かお姉ちゃんに悪いことしたなら謝るからちょっと話し合わない?!」
「今すぐ抱きしめたいのです! ただそれだけです! 悪いことがあったとすればこいしのその可愛さが罪!」
「うわぁぁあぁどうしようお姉ちゃん帰ってきてぇぇぇ」
冷静沈着と残虐非道と冷酷無比を売りにして、地底の嫌われ者の称号を欲しいままにするお姉ちゃん。泣く子も逃げる地底の主。ありもしない黒い噂は幾百にも及ぼうか。地底で古明地さとりと名前を出せば、みんな逃げてくみんな避けてく。名前を呼んだだけで子供は泣くし、声を掛けただけで大人も謝る。嘘みたいな本当の話。嫌われ者の名前は伊達じゃない。
そんなお姉ちゃんが、家では目を血走らせて妹を追いかけ回しているなんてあってはならない。もう既に絵的に結構厳しいんだぞ。怖いぞ。こいしちゃん泣いちゃうぞ。もう泣いてるぞ。
「何があったんだよぅ、お姉ちゃんの身に何が起こったんだよぅ!」
「強いて挙げるなら徹夜三日目でテンションうなぎ肩上がり!」
「うなぎのぼりと右肩上がりが混じってるよ! ていうかなんで三日間も寝なかったのさ」
「勇儀からゲームを頂いたのです。なんでも知り合いの河童が作ったそうなのですが、遊び方がよく判らないということで譲ってもらったのです」
「地上のゲームですと?」
そこで急ブレーキ。当然、差し迫っていたお姉ちゃんがスピードも落とさぬまま激突し、転がり落ちるように抱擁へと至る。
ゲームと言われてはこの古明地こいし黙っておけぬ。三度の飯よりゲームが好きな現代っ子である。
「どんなゲーム?」
「いろんな形をした棒を、画面の下へと溜めて消していくゲームですが……」
「まじでー! やりたいー!」
冷たい廊下で熱く抱擁しながらゲームの話を淡々を続ける姉妹の図。絵的に結構きつい。
よく訓練された姉妹はこの程度日常茶飯事なのでこれくらいでは動じない。
「ふふ、良かろう。私がこの三日間で培った技術、とくとご覧にいれてあげましょう」
「あっれー、良いのかなそんな大口吐いちゃって。じゃあ負けた方が罰ゲームってことで」
「では私が勝った暁には、メイド服を着て一日ご奉仕して頂きましょうか!」
「いいよ、だったら私が勝てば、お姉ちゃんを丸一日私の専属ペットにしてあげる!」
廊下を転がり落ちる姉妹達。地霊殿の夜は深い。
◆
106から地霊殿ばっか書いてたのは自分です。地霊殿勢ばかりになってもあれなので、自分はこの辺でおいとまします。今まで読んで頂いてありがとうございました。
125
:
名前が無い程度の能力
:2010/01/30(土) 00:20:54 ID:UljUGDQw0
お題に沿った内容は思いついたけど、
明らかにこのスレ向きの長さにはならない件…
126
:
名前が無い程度の能力
:2010/01/30(土) 07:40:03 ID:Y3yJH0wkO
>>124
遠慮すんなYO☆
>>125
出しちまえYO☆
127
:
名前が無い程度の能力
:2010/01/30(土) 18:12:18 ID:PE6sVByY0
>>124
なんつーかもう、さとり様愛してる
128
:
名前が無い程度の能力
:2010/01/31(日) 00:21:55 ID:60bYwJ3UO
>>80
やりますかねー
守矢の御社が幻想郷に入って半年が過ぎ、私もやっと幻想郷という独特な環境に慣れてきました
現代からあまりにも変化しすぎたこの土地は、色々なものが違いすぎました
今日は、それを書こうかなと思います♪
まずびっくりしたのが、露店がたくさんあること
色々売ってますよ
野菜とか、魚とか
今日は、野菜を使った炒め物を作ろうと思ったからもやしを買いに野菜屋へ
でも売ってないんですよ。もやし
野菜炒めにもやしがないなんて野菜炒めじゃないのに
聞けば、野菜は自分の畑から取ってる、だから栽培している物が限られてくるんだ、とか
野菜はおいしいんですけど、スーパーとかに比べちゃうと、品揃えが…ねぇ
こういうのを見ちゃうと
「わぁっ…。田舎だなぁ…」
って思ってしまいます
仕方ないので、魔法の森で赤いキノコを取ってそれを使いました
諏訪子様が美味しそうに食べてたなぁ
いい事したら気持ちいいですね♪
でも一番驚いたのが、服!!
こっちにはかわいい服とかがないんですよぉ
あってもすっごく高くて、こっちの世界では1万くらいで買えるのが、5、6万くらいになるんですよぉ
だから、オシャレしたくても結局昔買ったディオールのスカーフ着けたり、シャネルの香水かけたりするんです
ディオールのスカーフをつけて、同業者の巫女さんのところに行ったら
「なんかそれ珍しいの?珍しいならちょっと頂戴よ」
とか、気にはしてました
だから
「オシャレとかしないんですか?○○さん」
とか言っても
「オシャレどころか最低限の生活してるし、そんな余裕ないし、あまり興味もないわよ」
と、言ってました
若いのに最近の神奈子様みたいな台詞を言ったのが可哀想で可哀想で仕方ないので、あげました
そしたらスッゴい笑顔で首に巻いてました
いい事するっていいなぁ♪
そんなこんなで幻想郷は楽しいです♪
みなさんも是非来て欲しいなぁ…と思いました♪♪♪
あれ?神奈子様に諏訪子様、どうしまうわなにをするやめウボァー
>>124
元々過渡ってるんだから気にせずガンガン書いちゃいなよ
後、みんなガンガン出してくれい。モチベ上がるから
お題:洗濯
129
:
名前が無い程度の能力
:2010/01/31(日) 03:07:21 ID:xbI9r6VsO
>>124
構わん、続けろ
130
:
名前が無い程度の能力
:2010/01/31(日) 18:44:09 ID:i0F2MqsI0
お題「初めてのインターネット」
131
:
愛欲が尽きない程度の能力
:2010/02/01(月) 21:00:29 ID:1ofn/HG20
新参。
お題の洗濯やってみたよ。
キャラ:ルーミア&アリス
魔法の森で、一人の妖怪が走っていた。
豪雨の中を、傘も差さずに雨によって泥と化した地面を蹴っていた。
妖怪の名前はルーミア。
妖怪の中では弱い部類に入る妖怪で、人食い。
闇を操る能力を持っており、彼女の周りは闇で覆ってある。
「うわぁっ!?」
泥で足が滑って、顔ごと地面へ投げ出す。
最悪だ。
ルーミアは起き上がって、汚れた服を見つめた。
「……ん?」
遠い向こう。
何かが光っている。
それに一縷の望みを託して、ルーミアはそこへ転ばないように走って行った。
そこは家だった。
ルーミアはそこのドアをノックするより早く、屋根の下にもぐりこんだ。
これで雨を防げる。
見ると、雷が雨雲を照らしていた。
ここを発見できてよかった、と思いながらもルーミアは寒さに耐えきれずに扉をノックした。
意外と早くに扉は開いた。
ルーミアはその扉を開いた人物の顔を見た。
自分と同じ金髪の女性だ。
「あれ、あなたどうしたの?……凄い汚れじゃない!まさかこの雨の中走ってきたの?
……とりあえず上がって。紅茶とクッキーくらいは出せるわ」
「ありがとー」
ルーミアはそう呟いて部屋の中へ入った。
部屋の中は、屋内だからか外が寒かったからか暖かかった。
「あったかーい」
うんと腕を伸ばす。
腕の部分が濡れてあまり良い気もちはしなかったが、それでも暖かさこそルーミアの求めていたものだ。
金髪の女性は戸棚から服を取り出すと、ルーミアに渡した。
「とりあえずそれに着替えて」
ルーミアは指示に従って服を渡されたそれに着替えた。
金髪の女性は服を取って部屋に入ると、水を入れた桶の中にそれを沈めた。
そしてテーブルのある部屋――おそらく居間だろう――にルーミアを通した。
132
:
愛欲が尽きない程度の能力
:2010/02/01(月) 21:01:19 ID:1ofn/HG20
「座って。……ちょっと待っててね」
ルーミアはテーブルへ歩いていき、それに座る。
しばらくすると、金髪の女性が二人分の紅茶とクッキーを持ってきた。
ルーミアはそれが置かれた途端に、クッキーを素早く口に運んだ。
「んんー。もぐもぐ。……おいしー」
人肉ほどではないが、美味しい。
甘さが口に広がり、顔を綻ばせた。
「それは良かったわ。……さて。あなた、宵闇の妖怪のルーミアよね?」
「うん、ルーミアだよー」
ルーミアが二枚目のクッキーを口に運ぼうとして答えた。
内心、やはり妖怪を家に連れ込むのは駄目で、すぐに追い出されると思っていたので、その胸は不安でいっぱいだった。
「私はアリス・マーガトロイド。七色の人形遣いって言われてるわ。
アリスって呼んで構わないわよ」
アリスはそう言うと、ルーミアから窓に目を移した。
「こんなに雨も酷いし……晴れるまでここにいなさい。
ああ、そうそう。服洗濯するから手伝いなさい」
「せんたくー?」
「まさかあなた洗濯してないの?
……どうりで一目見ただけで汚れがわかるはずだわ」
アリスはそう呟きながら、先ほどの服がある部屋のドアを開けて入った。
そこにはギザギザに刻まれた木の板と、先ほどより大きめの桶があった。
アリスはそこに服を入れると、服を木の板にこすりつけた。
「はぁっ、こうやって、服を、こするのよっ」
声を聞くとかなり力を入れているようだ。
アリスは途中で木の板と服を離してルーミアに言った。
「ほら、ルーミア。やりなさい」
「えー。……うん」
ルーミアは桶の中の木の板と服を掴むと、服をこすりつけた。
浅はかな汚れがどんどん水の上に浮かぶ。
ルーミアはしばらく服をこすりつけていたが、アリスに向かって言った。
「ねえー、疲れたぁー」
「我慢しなさいよ。しばらくすれば楽しくなるはずだから」
ルーミアは言っても無駄だと悟り、一心不乱にこすりつけ続けた。
数分後。
ルーミアの手の動きはかなり粗いものとなっていた。
手首を振り子のようにぶんぶんと振るだけである。
だが、ルーミアの顔はかなり楽しい顔となっていた。
一般の人間がやったら精々浅はかな汚れが取れるのみだろうが、ルーミアは妖怪特有の力を込めて振っていた。
つまり力業で、汚れを取っている。
「ぶんぶんー♪」
ルーミアは手首を振りながら鼻歌を歌っていた。
「ちょっと見せてみなさい。……ふんふん。
汚れがもうほとんど取れてるわ。もうこれで良いわよ」
そうアリスが語りかけると、ルーミアは不満そうな顔をした。
「えー?まだ洗いたいー!」
アリスは頭を抱えると、困ったように窓のカーテンを開けた。
先ほどの雨が嘘のように晴れている。
「もうとっくに雨は上がってるわ。今度、また来なさい」
アリスはできるだけ優しく、子に語りかけるようにルーミアに言った。
「えー。……むー」
ルーミアはしばらく不満そうな顔をしていたが、ぱっと立ちあがった。
「わかった。……今度の雨に、また来るね」
ルーミアは玄関の扉を開けて靴を履いた。
「ええ。―――雨と言わず、いつでもいらっしゃい」
「うん!……ちゃんと、洗濯するもの用意しといてね!」
「わかったわ」
アリスがにこりと笑うと、ルーミアはそれを確認して走り出した。
「バイバイ、アリスー!」
「さようなら、ルーミア」
晴れ、虹のかかった空の下、闇をまとわず走る宵闇の妖怪。
「とても良い図ね」
アリスはルーミアを照らす太陽のように、晴れやかな笑みを見せた。
うおっ長っ
そんじゃお題を出しますねー
お題『時間』
別に咲夜さんを書けって言ってるわけじゃないのよ。
私ルーミアが好きだからーすいません調子乗りましたごめんね
133
:
名前が無い程度の能力
:2010/02/02(火) 03:54:55 ID:wy0llQ7cO
>>130
をいただいていきませうか
「何…これ?」
博麗神社に白い箱が届いた。とても大きな、二つの箱が―
「とりあえず…この…電気を入れて…これを…押して…これで…いいのよね」
ボタンを押すと大きな箱に光が灯り、変な音と共に箱が動き出した
説明書片手にちゃぶ台に二つの箱を置き、ひたすら拳大の付属品についているボタンをカチカチしながら、霊夢は眉間に皺を寄せていた
「…で?この、おんきょう…かぷら?だっけ。これを、これにつけて…」
箱に黒電話の先みたいな物を取り付け、「インタアネツト」とか言うものにボタンをカチカチッ…とすれば、青く輝いていた画面から白い画面に切り替わった
「な…なにこれ?…あ、あれね。英語ね。知ってるわ。「わいえーえっちおーおー」でしょこれ」
そういうと、拳大の付属品を動かし、「わいえーえっちおーおー」にボタンを二回押した
「ん〜…なにも起きないわね…。あ、この空欄、文字が書けるわ」
空欄にボタンを二回押して、やっとこの画面が検索するためのものと気付いたようだ
「なら…なんて入れようかしら…。…そうだ!!わたしの名前を入れてみよ!!」
その空欄に「博麗霊夢」と、拙いキーボード捌きで打ち込む
「そして、クリック!…と、何が出るかしら?」
すると、何万という「博麗霊夢」の文字が画面にならんだ
「えっ…何これ?…どういう事なの?」
訳が分からぬ内に霊夢は「博麗霊夢画像館」という文字列をクリックしてしまった
すると、じわり…じわりと、自分のあられもない姿が画面いっぱいに―
「な、なにこれ…いや、いやぁあッ!!!!」
その時、初めて自分の生活が誰かに見られている事に戦慄した。
慌てて箱のボタンを押す。しかし、何も変わらない
顔を青ざめながら、何度もボタンを叩く。しかし、なにも変化を起こさない
「やめて…やめてよ…いやぁ…もう嫌ァあッ!!」
目から涙をこぼしながら、霊夢は箱のボタンを押し込んだ
すると、画面がいきなり消え、箱は動きを止めた
霊夢は慌てて箱を押し入れに突っ込み、そのまま布団に入ると、眠れぬ一夜を過ごした
その後、にとりにその旨の話しをして、幻想郷の笑い者にされたのは別の話である
<了>
いいぞみんなその調子でガンガン書いちゃいな!!
お題:風呂
134
:
愛欲が尽きない程度の能力
:2010/02/02(火) 20:53:50 ID:N8/s8DQM0
お題の仕事!
「……はぁ」
私――四季映姫・ヤマザナドゥはため息を吐きました。
資料を見ます。まだこんなに、彼岸に残る死に人がいるのですね。
まぁ、もうすぐ今日の分は終わり。
これが終わったら小町を見に行こう、と決めます。
カーン、カーン。
鐘が鳴ると、どっと幽霊達が自分の前に並びました。
一人目の幽霊を見て、それから浄玻璃の鏡を見ます。
罪が手に取ってわかります。
この男は万引きをしたことがあり、他は反省していて何もしていない。
悔悟棒に罪を書きつけます。
少し重かったですが、これはまだ無罪。
「無罪。反省はとても良いことです」
幽霊はほっと溜息をついたように見えます。
その幽霊にぽんぽんと悔悟の棒を叩きつけました。
二人目は殺人を犯し、その末に自殺したと言う者。
これは考えるまでもありません。有罪です。
悔悟の棒に、罪状を書く。……ずっしりと重たかった。当たり前です。
「有罪。人の命がどれだけ大切か知りなさい」
ばしばしとさっきより乱暴に叩きます。
その後は、特に問題もなく続きました。
普段通りに続いて、終わりました。
「本日は、これで終わりです」
死神が呼びかけます。幽霊の数は大分減りました。
さて、小町を見に行くか。
三途の川。
一つ、彼岸にずっととめてある船がありました。
赤い髪で二つ縛りの女性――小町。
予想通り、その死神は運ぶのが仕事だと言うのにぐーすか寝てやがりました。
さて、これでは私が怒るのも仕方ありません。
なんでずっと説教しているのに、懲りないんでしょうか。
「小町〜……」
たっぷり迫力と威厳を込めて、小町の耳に言ってやります。
小町は眠たそうに目を開けて、閉じようとして―――
跳ね起きました。
「し、四季様……ご、ごめんなさい!も、もうノルマ達成したからいいかなって……」
「は?」
あれ、今何て言いました?
あの小町がノルマ達成……?
あのいっつもぐーすか寝て仕事サボってやがる小町が?
「すみません、その言い訳、理由がありえなすぎます」
「あ、いや、嘘じゃないです……」
嘘だ。嘘だ嘘だ嘘だ。
あの小町がノルマ達成……?
135
:
愛欲が尽きない程度の能力
:2010/02/02(火) 20:55:33 ID:N8/s8DQM0
三途の川の向こうに目を移す。
ほとんど幽霊はいなかった。
「……小町、とりあえず……おめでとうございます」
心が混乱している。もう駄目だ。
「あ、ありがとうございますっ。あの、夜屋台に行きませんか?もちろん奢らせてもらいますので」
おかしい。小町がおかしい。どうしよう。何かの病気か?
仕事をする小町?おかしすぎる。怪しすぎる。
何かの陰謀じゃないのか?
駄目だ何も考えられない。
「あ、あの四季様……?」
「ははいィッ!もッもちろん行きますッ!」
とりあえず違う死神に相談してこよう。
そして私と同じく混乱に陥れてやろう。
「ちょちょっと待っててくださいッ!
しッ仕事が終わってないので、あぁ資料整理に行くのでぇッ!!」
慌てすぎだ落ちつけ自分。整数を数えるんだ。
私は小町と逆の方向へ走りだした。
……ここどこだろう。
いつの間にか真っ白な世界に来てしまった。
そして私はふらっと倒れて……
ばっ。
「……!!?」
酷い夢だ。
そうか、仕事が終わった後仮眠をとったんだっけ。
本当に酷い夢だ、私をあそこまで混乱させるなんて。
がちゃ。
―――あれ、小町?
136
:
名前が無い程度の能力
:2010/02/03(水) 04:15:01 ID:8tvVTYlY0
>>91
ファーストフード 地霊殿キャラ
旧都はかつて灼熱地獄として機能していたが、地獄の区画整理により廃獄となった地である。
そこを地上から追放された鬼や妖怪が治め、都市として栄えているのだ。
旧都は碁盤目のように整理され、中央には都民の生活の要である大通りがある。
ここは昔ながらの商店街で、いくつもの店が軒を連ねている。洛中と洛外を問わず、いつも買い物客で賑わっている。
そんな大通りを2人の少女が雑踏に交じって闊歩していた。
ひとりは地味な色合いのずんぐりとした服を着た少女。名前は黒谷ヤマメ。土蜘蛛の妖怪だ。
もうひとりは大きめな桶にすっぽりと収まり、ちょこんと顔を覗かせて浮遊する少女。名前はキスメ。釣瓶落としの妖怪だ。
2人は洛外に棲む妖怪で、よくこうして連れ合って買い物や遊びに来ているのだ。
「なあヤマメ、そろそろお腹すかへんか?」
桶からパンパンに膨らんだ買い物籠を吊るしたキスメが、思い出したようにヤマメに話しかけた。
時刻は間もなく正午である。地底であるため常夜灯が点っている旧都でも、あっちこっちから香ばしい匂いが漂っていた。
大通りには牛丼やラーメン・八目鰻など外食の店もあるが、どこも順番待ちをしているほど混雑している。
「う〜ん、どこもこんでるなぁ…家で食べたほうがいいよ」
ヤマメも空腹だったが、ゴタゴタした店内に入ってまで食事を摂りたいとは思えなかった。
「ほな、うちがオススメな店しっとるさかい、そこに行かへんか?」
ヤマメの答えを予想していたのか、キスメは間を置かずヤマメに提案した。
よほど自信があるらしく、小リスのようなくりっとしたキスメの瞳がきらきらと輝いている。
「じゃあ、キスメに任せるよ…」
「おぉ〜し! じゃあ案内するわぁ!」
ヤマメが静かに肯くと、ヤマメは嬉々とした表情で浮遊しながらくるくるっと回転した。
無邪気に笑うキスメの頭のおさげが稲穂のように揺れている。そんな友人の姿に、ヤマメもまたクスッと笑みを洩らした。
137
:
136
:2010/02/03(水) 04:15:54 ID:8tvVTYlY0
キスメに先導されてやってきたのは、大通りから路地裏にはいった小路であった。
華やかな表の通りとは裏腹に、錆びれた雰囲気が漂う薄暗い路地である。
そんな路地の一角に、「立ち食いそば」と書かれた暖簾を掲げる店が小じんまりと建っていた。
御世辞にも綺麗な外観ではなく、入口の戸は建てつけが悪いのかガタガタ軋んでいる。
暖簾も色褪せて、元々は臙脂色だった布が薄茶色にまで変化していた。苔むした信楽焼のタヌキが哀しげな瞳で見つめている。
「………こ、ココ…なの?」
感染症を操る土蜘蛛のヤマメも、この寂れ具合には驚嘆の表情を隠せないでいた。
だがそんな友人とは対照的に、キスメは嬉しげな表情を崩さず誇らしげに店を見上げている。
「せや! まあ、確かに外見はオンボロやけど、味は一級品や!」
「いや……今にも傾きそうなんだけど…?」
「まあまあ、細かいことはええから実際に食べてみればわかるさかい…ごめ〜ん」
ガララッ!
渋るヤマメの手を引いて、キスメは壊れそうな戸を開けて店内へと入っていった。
「へい、らっしゃい!」
キスメたちが入って来たのと同時に、カウンターの奥から威勢のいい男の野太い声が飛んできた。
手狭な店内は入ってすぐがカウンターで、キスメたちの他に大柄な鬼が蕎麦をすすっていた。
店内は意外と清潔に保たれ、天井の梁には御品書きの短冊が陳列されている。
「おっちゃん、エビ天そば大盛り1つ。ヤマメは?」
「えっ? ああ…」
カウンターに肘を置いてさっさと注文したキスメに、手早く出されたお茶に口をつけていたヤマメはすぐに対応できなかった。
「じゃあ、きつねそば卵つき…」
「あいよ! エビ天大盛りにきつね卵つきね!!」
138
:
136
:2010/02/03(水) 04:16:56 ID:8tvVTYlY0
無精ひげを生やし頭を剃髪した大柄の男は、注文を聞くやいなや手慣れた動作で器を準備する。
同時にあらかじめ一食分に丸められた蕎麦を手早く釜のザルに入れ、茹で上がる間にツユと具材の準備が完了していた。
チャッチャと小気味の良い湯切りの音が響き、熱々なツユが満たされた丼にそば・具が入り、ネギが添えられて完成だ。
「へいおまち! エビ天大盛りにきつね卵つきね!!」
実に数分のうちで2人の前にそばが出された。白い湯気に乗って、ツユの旨味とそばの香ばしさが鼻をくすぐる。
「むふふぅ〜、きたきた。いただきま〜す!」
キスメは箸立てから割り箸を抜き取ると、歯で押さえて割った。七味をひとふりかけてそばを口に運んだ。
そばをすする豪快な音が店に響く。ヤマメも美味しそうに麺をすするキスメに倣ってそばを食することにした。
だが、ヤマメは普段自分が食べているかけそばとツユが違うことを発見した。ここのツユは澄んだ琥珀色で、丼の底が見えるほど薄い。
「あれ? ここって西の…」
「ちゅるる…せや、旧都のそばは東の味ばっかやろ? そばで西の味で商ってるんはこの店だけなんやで!」
「へぇ〜そうなんだ…」
感心しつつヤマメは初体験となる西のそばを口に運んだ。あっさりとした薄口醤油とダシに合わさってそばの風味が口に広がる。
旧都では西の出身はほとんどうどんを好むため、そばを好む東の出身と住み分けが成されているのだ。
「あらっ、美味しい…」
「そやろ! だからうちのオススメゆうたやんか!」
「はっはっは! キスメちゃんは週に2回は来てくれるからね。おっちゃんも嬉しいよ!」
腕を組んで店の親父が豪快に笑った。それにつられて2人の少女も愉快そうに笑い合う。
ガラッ
「おーい親父ぃ、いつもの一杯…ってあれ?」
その時のっそりと店に入ってきたのは、背の高く額に一本の角を生やした鬼の娘と、翡翠色の瞳をして耳が尖った少女だった。
鬼の娘が星熊勇儀、翡翠色の瞳の少女が水橋パルスィ。ともに旧都でキスメやヤマメの知り合いだ。
「勇儀とパルスィ…2人も常連なの?」
「いや、常連は私だけさ。今日はヤマメと一緒かキスメ?」
「ああ勇儀、自分かてパルスィを連れて来るの初めてとちゃうん?」
「まぁ…美味しそうなおそばを食べちゃって、妬ましいわ……」
「はっはっは! こりゃ忙しくなったわい!」
少女4人と親父1人の姦しい声が店に活気をもたらす。
人気の外食も良いけれど、たまにはこうした隠れ家的な店を魅力的だ。
賑やかにカウンターで肩を並べて談笑する友人らを横目に見つつそばをすすりながら、ヤマメは幸せそうに微笑んだのだった。
―――完―――
139
:
名前が無い程度の能力
:2010/02/03(水) 22:31:35 ID:jIb5qzbAO
SSが増えてきて嬉しい俺ナッシュ
お題を出すよ
お題:酒
140
:
名前が無い程度の能力
:2010/02/04(木) 05:10:09 ID:uisFWK8I0
>>100
『仕事』 花映塚キャラ
ルーキー・小野塚小町の一日
是非曲直庁から1里半ほど離れた木造アパート『一刻館』
下級官吏の住まうこのアパートの住人が、本日の主人公である。
午前6:20 起床
カーテンの隙間から差し込む朝日で目が覚めた。
底冷えする空気に布団から出たくなくなるが、毛布を羽織って起きる。
お湯を沸かしながら布団を片付け、寝ぐせであっちこっち撥ねた髪を櫛で整える。
午前6:40 朝食
献立は、ご飯・ナメコの味噌汁・鮭の塩焼き・味付け海苔・納豆
ご飯は2合を平らげ、食後は洗い桶に食器をつっこむ。帰ってから洗おう。
冬は洗い物が辛い季節だ。熱いお茶を飲みながら新聞に目を通す。
午前7:15 出勤
洗面台のない間取りなので、台所の流しで洗顔する。
いつもの仕事服に着替え、髪を整えて鞄に荷物を入れると下駄を引っかけて出勤。
清々しく晴れ渡った空が青い。山鳩が呑気に鳴いていた。
午前7:30 バス停
アパートから徒歩十数分のバス停に到着。スーツ姿の男性死神が数人居た。
後輩の死神と挨拶を交わしながらバスに乗り込む。相変わらずボロいバスだ。
通勤の道のりすべて居眠りしていた。寝不足だろうか?
午前8:20 登庁
三途の川管理局運輸課の窓口でタイムカードを押す。
ロッカールームで同僚の死神と談話。また胸が大きくなったと話していた。
そしたら友人の順子に「嫌味かぁー!」と胸を揉まれた。何故?
午前9:00 朝礼
局長や課長の訓示を受け、担当の裁判官の執務室へ向かう。
同期で書記官の紀野くんと一緒に四季さまの訓示を受けた。
これだけで一時間を費やすのは正直きつい。新人のあたしには堪える。
午前10:00 午前の業務開始
寿命統計局からリストを受け取り、運ぶ魂の数を確認。今日は5人だった。
第3埠頭に係留してある相棒の点検を済ませ、此岸へ出発。そよ風が心地よい。
このまま昼寝でもしたい心地よさだったが、それは公僕として出来ない。
午後0:05 午前の業務終了
午前中は2人の魂を送致した。あたしの担当は幻想郷だが、2人は外来の人間らしかった。
再思の道で妖怪に襲われた人間は骨が折れる。運賃も少ないし測量課の奴らも良い顔をしない。
まあ、彼らの裁決は四季さまの管轄だし、あたしが無闇に知る必要などないのだけれど。
午後0:20 昼食
庁舎の食堂で四季さまと一緒に昼食を摂ることになった。ちょっと緊張した。
あたしが味噌サバ定食なのに、映姫さまがBランチ。しかもデザートの果物つきだ。
新米のあたしには手の届かないBランチ。もう少しきちんと働こうかなぁ。
午後1:00 午後の業務開始
チャイムに急かされて持ち場に戻る途中、同僚から臨時の搬送を頼まれた。大規模な災害があったらしい。
あたしの担当する残り3人はみんな老死。時間的余裕もあったので快く引き受ける。
3人を手早く送致して、同僚の待つ第834埠頭へ向かった。
午後3:20 臨時業務
現場に着くと、既に多くの死神が魂を送致していた。
事務官や書記官も魂の整理に追われている。あたしも十人以上は送致した。
どうやら十王会議も開催されるらしい。今日は忙しない一日だ。
午後5:15 午後の業務終了
報告書作成の残務処理を終え、本日の仕事はこれで終わった。
ロッカールームでだべっていると、同僚たちと飲みに行くことになった。
順子に「このおっぱいがぁ〜!!」とまた胸を揉まれた。何なんだろう一体?
午後5:30 退庁
貸与されている大鎌をロッカーに仕舞い、鞄を手に庁舎を後にする。
薄闇の中、四季さまの執務室には煌々と灯りが点っていた。
裁判官や資料室の死神は遅くまで残業らしい。お疲れ様です。
午後9:40 帰宅
順子にからまれグデグデになって家に帰る。後輩の男子死神が送ると言いだしたが、何となく断った。
独り身で寂しいのは、「ただいま」と言っても「お帰り」と言って迎えてくれるひとがいないことだろう。
朝の冷や飯と味噌汁を温め直して、さらさらと流し込むように食べると風呂入って寝る。
午後10:30 就寝
読みかけの恋愛小説を布団の中で読む。電気スタンドの明りが淡くぼやける。
あたしもこんな恋をしたいと思いつつ、職場では中々いい出逢いがない。
ウトウトとまどろみ、意識が沈む。一瞬だけ四季さまの顔が浮かんだが、すぐ眠りに落ちていった。
明日もまた、四季さまの下で働ける良い一日でありますように… ――― 終 ―――
141
:
名前が無い程度の能力
:2010/02/04(木) 05:15:11 ID:uisFWK8I0
お題は既に出ていたようですが、せっかく書いたので投下。
ニュアンスとしては新米死神だった頃の小町の日記という感じで。
142
:
名前が無い程度の能力
:2010/02/04(木) 22:07:54 ID:Nx3JEZHQO
>>140
その発想はなかった
楽しませてもらったよ
キャラ指定してみよう
キャラ・ゆうかりん
143
:
名前が無い程度の能力
:2010/02/07(日) 04:56:03 ID:WzVdnfuA0
未消化のお題。数字はスレ番。
115『象』キャラ指定なし
133『風呂』 同上
139『酒』 同上
142 お題なし ゆかりん
142は他のお題と組み合わせ可。
144
:
143
:2010/02/07(日) 04:59:13 ID:WzVdnfuA0
連投スマン。142はゆうかりんだった orz
お詫びとしてお題をひとつあげとく。
『梅の花』 八雲一家(紫・藍・橙)3人すべて
145
:
名前が無い程度の能力
:2010/02/07(日) 14:38:35 ID:UN5WgPos0
お詫びならお題を消化してけー
146
:
名前が無い程度の能力
:2010/02/07(日) 23:09:26 ID:Jww6QdWQ0
お題「時計が遅れていた」
147
:
名前が無い程度の能力
:2010/02/08(月) 01:27:21 ID:SXN4f0Wg0
>>133
,139
髪留めを外し、髪飾りも外す。
身にまとった衣装も脱ぎ捨て、生まれたままの姿へ戻る。
今の私は風祝でもなく、2柱の加護を受けた身でもない。
ただの人間、東風谷早苗なのだ。
「なぁーんて考えてみちゃったりもして」
そうひとりごち、湯船に入浴剤を落とす。
今日はローズヒップ。この前里に降りた時に風見さんから分けてもらった物だ。
外から持ち込んだものもまだ残っているが、これを使ってからはそちらとはとんと御無沙汰だ。
やはり天然モノは違う、と言う事だろう。
湯船へ浸かり、両手両足をグッ、と伸ばす。
パキポキと小気味いい音が鳴り響く。
結構疲れ溜まってたんだなぁ。
浸かりながら窓から空を覗く。
この窓はかなり大きく作られており、月や星まで見ることができるウチの自慢のお風呂である。
月を見ながらボンヤリしてると不意に飲みたくなった。
そういえば飲みかけがあったなぁと思いだし、脱衣所にある冷蔵庫からお酒を取り出す。
お盆にとっくりとおちょこを浮かべ、お酒を飲む。
傍から見たらオッサンそのものだが気にしない。幻想郷では常識に囚われてはいけないのです。
コク、コク、と無理のない用に飲む。前に同じ事をしてやらかしているのでその辺のさじ加減は間違えることはない。
ほう、と一息つくと体中になんとも言えない感じが広がる。
静寂が世界を支配する。
聞こえるのは、自分のお酒を飲む喉の音のみ。
「やっぱり、こっちに来て、良かったなぁ」
外では絶対に見られなかった満天の星空。澄み切った空気。
失ったものも多かったが、それ以上に多くのものを手に入れた。
これからもっと多くの物を手に入れていくのだろう。それは確信にも似た予感だった。
そんな事を想っているうちにだんだんと頭がボンヤリしてくる。
いけない、少し飲み過ぎたようだ。
やはり星見酒は楽しいが、酔いが回るのも早い。
急いで上がらなければ、そう思い、湯船から出た所で世界が回る。
「あははー、これは明日の朝まーた怒られちゃいますねぇ」
そんな事を呟きつつ、私は幸せの中へと落ちていくのだった。
―了―
お風呂を題材に書いたら何故かお酒がついてきた。
何を言っているかわからねー(ry
お題:おでん
148
:
名前が無い程度の能力
:2010/02/08(月) 07:22:22 ID:IZw7YRGAO
「西のとある国には象という巨大な生き物がいるらしいわ」
レミリアは書籍の一部分を指しながらノーリッジの娘に言った
「へぇ…それは何かしら?」
「この本に曰く、長い鼻を持つ、アネッタイイキに住む巨大な生き物だと書いてあるわ」
「アネッタイイキ?」
「図書館ではアネッタイイキわからなかったわ」
「では、そのアネッタイイキという土地に摩訶不思議な生き物がいるわけね」
「私、そのアネッタイイキという場所に行きたいわ!その摩訶不思議な生き物を見てみたい!」
「なら咲夜にでも探す様に命じてみたら?」
よく分からぬ物に興味をすぐ持ち、すぐ飽きてしまうレミリアにとって、部下にそれをやらせる姿はよくある光景であった
「レミィ。貴女、少しは興味を持った事に集中する事を覚えなさいな。一々任せっきりでは咲夜も疲れてしまうわよ」
「そうね。パチェの言う通りだわ。今回の事はしっかりやってみようかしら」
その日からというもの、普段は退屈しのぎに図書館を訪れるくらいだったレミリアが、図書館にこもり、かじりつく様に書籍を読み漁り始めた
そして見つかった事をパチュリーに報告して自室に戻るのだが、普段とは違う館主に周りが驚きを隠せなかった
飽きっぽいお嬢様があそこまで熱心にするなんて珍しい
とは、司書の言葉だが、それだけ大きな変化であった
最初こそつっけんどんに返していたパチュリーも、いつしか象に関する本を読み漁り、友人とその姿を思い描くまでになっていた
「アネッタイイキでもインドという国では神様らしいわ」
「何かしらの神威的象徴なわけね」
「そうみたい。でもなんで神様として扱われているかはわからなかったわ」
「そこまで出来たら上出来よレミィ。うちに象に関する資料がそんなにあるわけじゃないんだから」
「最後には手伝ってくれて、ありがとう」
「いいえ、こういうのも中々楽しいわ」
「また明日来るわ。次こそ決定的なものを見つけてやるわ」
「そうね。また、おやすみなさい」
レミリアが図書館を出ると、パチュリーは成長している友人の姿に笑みを浮かべ、そして友人が変わる姿を見て喜ぶ自分もまた変化している事に、静かに笑った
一方その頃、
「アネッタイイキとは…ど…どこ…」
その言葉と共に、咲夜は見知らぬ野原に伏した
咲夜の行方は、誰も知らない
なんかgdgdだけど仕方ないね
お題:お笑い
149
:
名前が無い程度の能力
:2010/02/09(火) 04:43:25 ID:4Nyonx6s0
>>148
「秋姉妹、漫才をするの段」
♪BGM 人恋し神様♪
『はいどうもー』
「静葉です」「穣子です」
『二人合わせて 秋姉妹でーす』
ぺちぺちと、まばらな拍手が二人を迎える。
吹き込むスキマ風も冷たい二月某日。深々と雪が降り続く中、守矢神社の祈祷所は仮設の宴会場となっていた。
観客はみな妖怪連中である。雪に埋もれてヒマをもてあましたところに、神社での演芸会の噂を聞きつけて集まってきたのだ。前座としてにとりの実演販売、特別ゲストの咲夜の手品と、二人続けての大ウケで場が暖まった。そして、いよいよ今日の真打ちとして秋姉妹が登場したのであった。
「ま、私達秋の神様ですけど−。お姉ちゃんといっしょに、飽きのこない漫才をやっていきたいとおもうんですよー」
「穣子、秋が来なかったら私達出番がないよ!」
「まーそうかもしれませんけど、やはりコント漫才全盛じゃないですかー。今のお笑いはー」
「あー。最初にシチュエーションをちょっと言って、あとは実質的にコントやっちゃうアレねー。本来邪道なんだけどウケやすいから仕方ないわねー」
「ま、所詮派手なものはすぐに飽きられる運命ですけどねー」
漫才の導入として、お笑いの現状批判から入るのはいかがなものか。これでは神様仲間としての同情から秋姉妹に場を提供した守矢神社も報われない。神奈子様のオンバシラもげんなりであるし、諏訪子様も冬眠に入られてしまう。
「穣子、そこまで言うからには、私達はしゃべりだけの古典的な漫才で行くって宣言よね?」
「えっ? 客に媚びる気満々ですよ私達」
「ウィンクするな!」
「安易な人気取りに躊躇しませんよ」
「肩を見せるな! 無い胸を寄せるな!」
「ソレはお姉ちゃんも人のことを言えない」
「うるさいよ!」
「モノで買収するのも常套手段ですよ」
「頭のブドウを客に配るな!」
客いじりにより多少リズムが出てきたようで、渋い顔をしていた連中も多少笑い始めた。
「はい、安易な客いじりですこし場が暖まったところで本番いきますか」
「漫才にメタな発言を導入するな!」
「ま、お姉ちゃんと私が秋以外に何をしているかなんですけどね」
「良く聞かれるんですよねー。実りの季節以外はなにをしてるのかって」
「今日は、そのお話をしていきたいと思います」
「うん。どんどんしていこうか」
「私は頭にブドウつけてるよね」
「つけてますねー」
「まずソレを外します」
「うんうん」
「黒を基調とした服を着ます」
「……う、うん?」
「頭に赤いリボンをつけます」
「つけちゃうの?」
「両手を広げて『そーなのかー!』」
「ルーミア!? ルーミアでしょそれは!?」
「秋以外は世を忍ぶ仮の姿なんですよねー」
「仮の姿じゃなくて別人!別人だから!」
人類は十進法を採用しました、のポーズをする穣子。
150
:
名前が無い程度の能力
:2010/02/09(火) 04:45:05 ID:4Nyonx6s0
「お姉ちゃんはまた違うことやってるよね」
「まあ、ルーミアはやらないですね」
「お姉ちゃんはあたまにモミジつけてるよね」
「つけてますねー」
「まずソレを外します」
「なんかどっかで聞いたセリフだなー」
「青と白を基調とした服を着ます」
「普段赤系統だから、それもいいかも」
「頭にヘッドバンドをつけます」
「つけないと思うけど」
「糸でー」
「あー。見えてきた。見えてきた」
「悪人を吊り上げる仕事人になります!」
「アリスじゃないの!? 人形じゃないの!?」
「仕事人に決まってるよー。やだなぁお姉ちゃん」
♪ぱーらっぱー ぱーらら〜 ぱらららら〜
演奏担当で呼ばれていたメルランが、トランペットで西部劇の劇伴を吹く。
ここまではうまく客の意表を突けている。秋姉妹は手応えをつかみつつあった。
「ま、本当のことを言いますけどね」
「穣子。最初から言おう。真実を語ろう」
「明日はヒノキの木になろう!」
「誰が妖怪の山のアスナロ姉妹か! マイナー街道驀進中か! 好きこのんで濡れ落ち葉やってるんじゃないわぁぁああ……うぇぇぇ……」
「すみません皆さん。お姉ちゃんときどきこういう病気が……」
「も、もうイヤ……モミジがなかったら誰かわからないって言われるのはもうイヤ……。えっぐえっぐ」
リズムだけでボケた穣子の一言から、静葉の突然のキレ芸。コレが今日の漫才の山場になるはずであった。……が、妖怪連中への受けは今ひとつである。
ネタが滑った悲しさも相まって、演技とは思えないほどしゃくり上げて泣く静葉。その背中をさすりながら、穣子がなぐさめる。
「お姉ちゃん、もうちょっとだから。頑張って漫才終わろう?」
「……そうだね穣子。漫才やらなきゃね」
「でね? 私、お姉ちゃんに一つ隠してたことがあるの」
「……なに? 穣子」
「あのね、今まで言ってきたこと、全部嘘だったの」
「ようやく嘘だって認めたのね」
スイッチを切り替えてツッコみを再開する静葉。まなじりにはまだ涙が浮かんでいる。
「ルーミアとか仕事人とか、嘘八百だったの」
「謝ればいいのよ。穣子」
「でも、まだ一万分の一なの」
「……いや、意味が良くわからないわよ。穣子」
両手を広げて満面の笑顔の穣子が叫ぶ。
「私の嘘を全部言ったら、神だけに嘘八百万! 神だけに!」
「いい加減にしなさい」
『ありがとうございましたー』
古典に徹すると宣言しながら、今風の客いじりやキレ芸を使う日和見な構成は一貫性に欠ける。もっとも、ソレが秋姉妹らしいと言ってしまえばそこまでであるが。
それなりの拍手と五つ六つのおひねりを受け取りつつ、秋姉妹はごく平凡な漫才を終えたのであった。【終】
お題:箱。
151
:
名前が無い程度の能力
:2010/02/10(水) 02:25:51 ID:inJHavoY0
秋姉妹が不憫すぎる…
152
:
名前が無い程度の能力
:2010/02/10(水) 03:39:51 ID:IAj0k8wIO
でも秋姉妹は…でも秋姉妹は!!…いや、やめよう…
『梅の花落ちる頃』
白梅と落ちる雪は古来から春における美しい物の一つとしてよく伝えられる
美しい物を見ながら酒と歌を
といつも講じている八雲紫もその例に計らい、よく白梅の下で酒を飲み、歌を詠じた
それに式の藍も付き添い、白玉楼の主達とよく歌を詠みあったのも今は昔のとなむありけりであった
しかし、あくる年に藍がその式神を連れてその宴に交じった
藍が連れてきた式は目を輝かせながら、酒を煽る賢人達を興味津々に見回した
古来の宴に歌と酒は欠かせぬ。賢人は呑み、呑まれ、まずは幻想の己を受け入れ、支配し、酒と共に呑み込むのだ
「さて、今年はこそなれば、梅花と白雪の優を決めようではないか」
酒宴も終わりに近づいた頃、西行寺幽々子が声をあげた
すると、先程まで酒を煽いあった賢人達がゆっくりと声主の方に身体を向けた
「さてさて、今年はどちらを優とするか、とくと決めよとく決めよ」
幽々子が囃し立てると、まずは八雲の主が一つ歌を詠み始めた
「鶯の 泊まる場の無き 雪の日は
如何こそあれ 侘しきに
鳴ける鶯 留めれる
梅の咲ける日 美しきなり」
こう詠めば八雲藍は返す様に
「梅の花 散りて消える日 煩わし
人の心の のどけきを
掴み離さず 共に落つ
されど白雪 落ちたとて
人の心は のどけからまし
故に落つ雪 美しきなり」
こう詠めば場にいた賢人達は歌を次々に詠みあい始めた
ほぼ全ての賢人達が歌を詠み終えた後、西行寺の娘は酒宴の終わりを伝えた
「さてさて、お互いの歌により、梅花と白雪の優つけがたし。そこで、皆の衆、今日の席に初めてこられた娘に優越をもらおうではないか」
その言葉を聞いて、皆が頷き始めた
その時橙は困り果ててしまった
主人の主人である八雲紫は梅花に優を定めたのに対し、主人の藍は白雪に優を決めた
これはどちらを持ち上げるべきか…
その困り果てた姿をみた紫が橙に近付きこう囁いた
「今は誰の式でもないのよ。貴女の思うままに、貴女を歌いなさい」
その姿をみた藍も
「そうだ。部下として私達を褒める歌を聞きたいわけではない。橙の意志から紡いだ歌を聞きたいのだ」
その言葉を聞いて、今まで自信のない顔が、きっ、と整い、その拙い口調で歌を紡いだ
「………… …こそわれは」
詠みきった時に拍手が舞い、二人の主から抱きしめられた
宴では、歌を読む者全てが主人なのだ
お題:日記
153
:
愛欲が尽きない程度の能力
:2010/02/10(水) 15:00:55 ID:MO0Yoesg0
お題の時計が遅れてたやってみることにした。
ゆかりんも消化ー。
さーて、長い長い眠りから覚めたわ。
まあ冬眠程長くはないけど、気分は最高ね。
今日の予定は……そうそう、霊夢と宝船の異変解決に行くんだったわ。
善は急げっていうけど、私はそんなことしないわね。
午後一時に待ち合わせ。元凶は多分妖怪だから、夜の方が出てきやすいと思うのよね。
今は……丁度十時ね。
藍に昼食を作ってもらいましょう。
「らんー。ご飯作ってー!」
「あぁ、もう出来てますよ。早くいらしてください」
さっすが私の式神!用意が良いわ。
「今いくー」
食事シーンはないわよ。
でも今日も美味しかったわ。
十二時になった。そろそろ支度しないと。
着替えて、と。
準備万端ね。
少し待って、一時になる。
らんー、出かけてくるわー、と声をかけてスキマを開ける。
もうすっかり見なれた、眼のたくさんある空間に入った。
待ち合わせ場所に照準を合わせて、そこの空間をこじ開ける。
「やっほー霊夢……あれ?」
広い、時計のある広場。
そこでいつも待ち合わせをしていて、霊夢は遅れたことがない。
仕方ないわね、待ってあげようかしら。
そう思いながら目のやり場に困り、ふと時計を見る。
二時。
……ん?
ごしごしと目を擦る。
そんなわけないわ。目にゴミでも入ったのかしら。
擦った後、また時計を見る。
変わらず二時。
おかしいわ。
これを繰り返すこと二十回。
さすがに目は赤くなり、目が痛い。
でも変わらない。ずっと二時。
あ、二時一分になった。どうでもいいわそんなこと。
私が、待ち合わせに遅れた。
だから、霊夢は一人で異変解決に行った?
「ああぁああぁあぁぁぁぁぁぁああああ……」
狂った声をあげて、段々と脱力していく。
スキマに入って私のお屋敷に瞬間ワープすると、私は力なくそこへ倒れこんだ。
154
:
名前が無い程度の能力
:2010/02/11(木) 00:24:00 ID:RLVenfNw0
お題「道端で堂々と寝ころんでる小動物」
155
:
名前が無い程度の能力
:2010/02/14(日) 03:18:58 ID:TPgLsRr.0
おでんで永遠亭
「そうか…もう一年…か…」
もう何億年という時を過ごしてきた輝夜は、夕焼けに染まる自室でひとり呟いた。
横になっていた体をはたと起こし、思いついたように台所へと向かう。
「永琳?」
「はい?」
台所では、いつも通り永琳が晩御飯を作ってくれていた。
どうやらもう今日の献立は決まっていたようで、蓋のされた鍋がことことと小気味良い音を立てている。
「今日の晩御飯ってもう決まった?」
「はい、一応決まっていますが?」
「…そうなんだ」
少し気落ちしているような、アンニュイな雰囲気を醸し出す。
こうすれば、永琳が気にしてくれることを予想して。
「何か食べたいものでも?」
「う…んとねぇ、おでんとかどう?」
素直にいえばいいものを、どうにも言いまわしてしまう。
永琳は私が何を頼んだとしても絶対に聞いてくれるとわかっているのに、小っ恥ずかしさが先行してしまう。
私の要求を聞いた永琳は一瞬思案顔になり、すぐに私の方へ向き直り、口を開く。
「…いいですよ。期待しててください。おいしいおでんをご馳走してあげます」
「…ありがとう」
永琳がちょっとの間考えたのは、多分おでんにするかどうかではなく、おでんにすることはすでに決定事項で、すでに作りかけてしまった本来の晩御飯をどう処理するかで悩んでいたのだろう。
本当にありがたいことなのだが、毎日あればそれは普通になり、やがてはありがたみなど微塵もなくなってしまう。
去年の、ちょうど此の日。私は永琳の叱責に腹を立て、永遠亭を飛び出した。
飛び出した、といっても他に行くあてもない私はすぐに戻ったのだが。
その時も永琳はいつもと変わらぬ柔らかな物腰で私を迎え入れてくれた。
そんなこともあったと思い出すたび、つくづく永琳には頭があがらないことを自覚する。
「ただいま帰りましたー」
「たっだいまー」
ガラガラと開き戸を滑らせながら2羽の兎が姿を現した。
「おかえりなさい。ご飯もうちょっとかかるから遊んでていいわよ」
「そんな、お手伝いしますよ」
「えー、いいじゃん遊んでていいって言ってんだし」
途端ににぎやかになった台所から遠ざかりながら、また思い出す。
あの2人も、突然でていって情けなく戻ってきた私をいつもと変わらず出迎えてくれた。
いや、晩御飯を待たされた恨み事は言われたな。
思わず笑みがこぼれる。
「私は幸せなのだな」
「あれ? 師匠、今日はおでんになったんですか?」
「うん、そういう要望があったからね」
「はぁ。でもなんでおでんなんですかね?」
「さぁ、でも気まぐれではなさそうだったけど」
「私知ってるよ?」
156
:
名前が無い程度の能力
:2010/02/14(日) 03:19:35 ID:TPgLsRr.0
厨房に立つ2人の雑談に、一際幼い声が混じる。
「なんでてゐが知ってるんだ?」
「永琳とうどんげが忘れてるだけだよ」
言われ、首をかしげる2人。しばらくしてはっとしたのは永琳だった。
「ああ、そういえば去年の今頃に輝夜がとびだしていっちゃったことがあったわね」
「その時の晩御飯がおでんだったってことですか?」
「そういうこと」
「でもなんで同じものを?」
なんとなく関連性は掴めたものの理解にはいたらない鈴仙。
「うどんげってほんとにそういうの鈍感だよねぇ」
「い、いいじゃない別に。敏感すぎたって疲れちゃうだけよ」
「ま、いいけど。それより私はおでんが楽しみだし」
「あら、あなたたちは別メニューよ」
「「え?」」
「いただきまーす」
その日の永遠亭の食卓はかなり変則的であった。
永琳と輝夜の前にはなんともおいしそうなおでんの入った鍋が置かれ、2羽の兎の前にはなぜか特大オムライスがどんと置かれていた。
「師匠。なぜ私たちだけオムライスなのでしょうか」
「納得いかねー」
「なぜって、炊いてしまったご飯の使い道よ」
「ごめんね兎共。私のせいでなんだか残飯処理みたいな役目をさせちゃって」
「残飯はいいすぎですよ輝夜」
「あ、ごめん永琳」
「『兎共』の方はスルーかよ」
「オムライスでも別にいいんですけどねぇ、おいしいですし」
「でも明らかに気合の入れ方が違うよなー」
「まあ確かにケチャップのかけ方はかなり粗雑な気がしますが…」
そこまでいって、2人は要約永琳の両手が目の前のオムライスに伸びていることに気づく。
「文句をいうんなら食べなくてもいいですよ?」
「すいませんでした。心していただきます」
強制的に下げられそうなオムライスをひしと捕まえる。晩御飯抜きはなんとしても避けたい。
横では隣の騒ぎをまるで意に介せず、丹精込められたおでんを無心に頬張る輝夜。
永遠亭ヒエラルキーの頂点に君臨する輝夜だからこそできる芸当である。
おもむろに、永琳が口を開く。
「今年は普通に食べられましたね。輝夜」
言われ、ぎくりとする輝夜。
「覚えてたの?」
「ええ、もちろん」
何かを言いたそうにしているてゐと、視線は輝夜にあるものの、無言の圧力でそれを抑える永琳。
鈴仙にいたってはもはや何を言う気も起きなかった。
「永琳。いつもありがとうね」
「どういたしまして」
「こういうの、なんか恥ずかしいね」
「そういうものですよ」
2人の穏やかな笑いが部屋に拡がってゆく。
心温まる感動ストーリー。そして、その横で繰り広げられる庇護をされるものとされぬものの醜い階級社会の縮図。
「てゐ、今回はまあ…あれ?」
報われないてゐをどうにか労わろうとした矢先、てゐのオムライスはすでになく、おまけにてゐの姿もなかった。
ふてくされてしまったのかと考えたが、そんなたまではないことをすぐに思い出し、さらに視界の端に移ったてゐの手の中には『からし』の文字が。
その後の惨劇は、最早全く、鈴仙の想像通りであった。
157
:
「日記」「箱」「風呂」
:2010/02/15(月) 18:54:03 ID:uva70cBU0
さとり様に、日記なるものを渡された。「貴方は少々物忘れのきらいがあるから、大事なことをここに書くと良いでしょう」だって。失礼しちゃう。
「物忘れなんかしませんよ!」
「まぁ、こうして私が貴方に日記を手渡すのは三度目な訳ですが……覚えてます?」
「何言ってるんですか、私日記なんてつけたことないです」
「うん、まぁ、気が向いたら書きなさい。できれば忘れる前に」
さとり様はため息をついて私に一冊のノートを渡してくれた。なんでため息?
とりあえずもらったから、何か書いてみよう。
「これはちょっとないわ」
えー。
「お空、自分でこれ何書いてるか判るのかい」
「んー?」
お燐はぺらぺらと日記の頁をめくった後、ずいと私に日記を押しつける。
「わかんないだろう。あたいも全然判らん。単語だけ並べられても理解できないさ。何ここ、『箱。さとりさまを入れる。せっけんみたいなの。まぜる。おふろみたい』。犯罪声明? 怖いんだけど」
「んー……」
昨日書いた内容だった。自分でも何が言いたいのかちょっと判らない。箱にさとり様を入れて、お酒も入れる。大きい箱を用意しなくちゃいけない。せっけんって何? とにかくそれを混ぜる。あわあわあわ。お風呂……あぁ、判った。
「じゃぶじゃぶ」
「へ?」
「服をさ、入れる、箱。昨日新しいの来たじゃん」
「もしかして……あぁ、洗濯機かい?」
「そう! それ」
昨日、地霊殿に新しい洗濯機がやってきた。じゃぶじゃぶね。洗うでしょう。
「さとり様を入れるって何事さね。あんた、さとり様に何したの」
「え? さとり様が、お洗濯してたじゃん」
「そういうときはね、お空。さとり様『を』入れるじゃなくて、さとり様『が』入れると書くんだよ。助詞が違うんだよ」
懇切やさしくお燐は言ってくれるけど、よく判らない。
「んー……?」
「まぁ、いいけど」
「日記、難しいね」
「だからこそさとり様は渡したんだと思うけど」
「あの箱、入ったら楽しいかなぁ。ぐるぐる、じゃぶじゃぶ。お風呂入らなくて済むよね」
「間違いなく眼が回るだろうね。あたいは遠慮しとくよ」
「お風呂嫌い、治した方がいいよ!」
「いや、うん……善処するよ」
* * *
「空。どうやら日記、続けているようですね」
「はい、ばっちしぴんぴんです」
「宜しい。私にも見せて頂けませんか」
「良いですよ! ……うーん?」
「どうしました」
「どこに閉まったか忘れた」
「まぁ、そんなことだろうと思ったんですがね」
158
:
名前が無い程度の能力
:2010/02/19(金) 01:55:00 ID:EwfooidkO
今気づいたお題が全くない
せっかくだからガンガンお題書いて行こうぜ
お題1:映画
お題2:未来
お題3:遅く起きたバレンタイン
159
:
名前が無い程度の能力
:2010/02/22(月) 19:03:22 ID:8Boh1c9E0
>>158
お題「映画」「未来」「遅く起きたバレンタイン」
----------------------------------------------
「おっそーい!」
「ごめんごめん」
「反省の色が無い」
「知ってた? 白は反省の色で、紫は怠惰の色」
「前者はともかく後者は何アピールなの?」
白い花の咲いた紫色ワンピースの裾を軽く指で摘み、
白い帽子の彼女は恋人に出会ったお姫様のように一回転して見せた。
「ご飯どうする? 時間ないけど」
「ポップコーンでいいわ。私、キャラメル味」
「おなか膨れない……」
「とうもろこしが膨れるくらいなのよ。私たちのお腹だって膨れるわ」
「植物と違って私たちには色んな栄養素が必要なのよ」
「栄養満点のオレンジジュースも買いましょ」
「偏食ね」
「ヘンショク? 何語?」
黒い影の落ちる街路を、二人は食べ物の名前を並べながら歩いた。
黒い帽子の彼女は空を見上げた。映画の時間は迫っていた。
「バレンタインって知ってる?」
「人の名前かしら」
「大昔のイベントよ。女が男にチョコレートを渡すの」
「へえ。何でまた」
「さあ。栄養素かしら」
「栄養は重要よ」
「そうね。ポップコーンとオレンジジュースね」
映画館は空いていた。完全に貸し切りだった。
上映中の映画は一つだけで、バレンタインに関するオムニバス映画。
二人はキャラメル味のポップコーンとオレンジジュース、
それと聞いた事のないポテトチップスの出来損ないのようなお菓子を購入し、
映画の前半でそれらをむさぼり食った。
「わかんないわね」
「そうね」
映画の意味はいまいち分からなかった。
「私たちがあの時代に生きていたら、あんなのでも感動できたのかしら」
「逆に考えましょ。普通、未来人に見せることを意識して映画を作るかしら?」
「作らないんじゃない?」
「そうよね。だから面白くなくても仕方ないと思うの」
「自分への言い訳ってやつね」
「解説ありがとう」
二人は来た道を戻っていた。
辺りに人通りは無く、空には星が瞬いていた。
「ね」
「なに?」
「来年のバレンタインにチョコを用意するってのはどうかしら」
「どうしてまた」
「私たちもバレンタインの気分を味わえば、あの映画が面白く感じるかも」
「なるほど。古くさい精神論ね」
「で、チョコで栄養補給しながら来年もあの映画を見るの」
分かれ道で立ち止まった。
街灯が弱々しい明かりで荒れたアスファルトを照らしていた。
「わかったわ。来年のバレンタインの日、チョコを用意すればいいのね」
「うん。今日と同じ場所で同じ時間に待ち合わせね。忘れないでよ?」
「カレンダーに登録しておくわ」
「早起きしてよ?」
「早起きするわ」
「ほんとに?」
「ほんとに」
「絶対よ?」
「絶対ね」
160
:
名前が無い程度の能力
:2010/02/23(火) 21:17:35 ID:2KqPX7eUO
なんか書きたくなったので誰かお題を…お題をぉぉぉおおお…
161
:
名前が無い程度の能力
:2010/02/23(火) 21:26:33 ID:f.r1m0wE0
>>142
のゆうかりん(お題なし)、
>>154
の「道端で堂々と寝ころんでる小動物」が未消化ですね
いくつか置いておきます
「スペカ研究/議論」「妖精の日常」「神隠し」「歌会」「おっぱい」
162
:
名前が無い程度の能力
:2010/02/23(火) 22:26:14 ID:kGhFshpE0
遅い春の訪れた昼下がりの人里に彼女は居た。
大通りの脇に立つ大きな桜の木の下に座って、彼女は妖艶に笑っている。
不意にそのしなやかな肢体を見せ付けるかのように大きく伸びをする。まるで誘っているかのように……。
彼女は全裸であった。手の先から足の先まで何一つ身に纏う物は無い。
まるで西洋の彫像のようなその美しい肢体を、惜しげもなく陽光に曝していた。
彼女は不意に立ち上がる。
恥ずかしさなど微塵も感じさせない堂々とした態度で。
そして、彼女は大通りを歩き始めた。
大通りには誰も居なかった。
いや、今この一瞬人通りが絶えているだけで、すぐに誰かが通りかかり彼女を見つけるだろう。
全てを曝け出して歩く露出狂の彼女の姿を見た時、人はどうするだろう。悲鳴でも上げて逃げ出すか、
或いは顔を背けながら視線をチラチラと走らせるか、嫌悪を露にして陰口を叩くか、……欲望のままに物陰に連れ込むか。
すぐ先の路地から、立ち並ぶ家々から、店の奥から、出てきた人が彼女を見つけて彼女の肢体を視線で撫で付ける。
そして、泣き叫び、許しを請うも許されず、押し倒され、蹂躙される。
その想像が彼女の身体を震わせる。
平然とした表情とは裏腹に、ぞくぞくするような背徳感が全身を貫いている。
いつ人に見られるかも分からない、その興奮が快楽となって彼女の全身を満たす。
彼女の瞳が蠱惑的な色彩を帯びて揺らいだ。
見て。
この身体を見て。
このどうしようもない快楽に打ち震える身体を舐め回すように見て。
そして……そして……
メ チ ャ ク チ ャ に シ て ホ し い の
163
:
名前が無い程度の能力
:2010/02/23(火) 22:30:09 ID:kGhFshpE0
そして人の視線を感じた。
ミられている。
振向くまでも無く、彼女はその事を悟った。
押し寄せる快感に負けて、彼女はもう歩いてなんかいられなかった。
倒れこむようにして堂々と道端へと転がり、両手を差し出すようにしてその視線の主を誘う。
ミて。そして、キて。
キ て ア タ イ を ジ ュ ウ リ ン し て。
そんな彼女を目の当りにして、若手大工の徳兵衛(24歳・男性・彼女居ない暦=年齢)は、ため息を一つ漏らした。
「こんな良い天気の日に黒猫を見るとは不吉だべさ」
タイトル「お燐の退屈な日常」 (お題「道端で堂々と寝ころんでる小動物」
>>154
) おわり。
お題「道端で堂々と寝ころんでる小動物」(
>>154
)を消化
出題のお題 「雪融け」
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