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【お題で嫁を】お題で簡単にSSを作ってみようか【自慢するスレ】

94名前が無い程度の能力:2010/01/16(土) 01:27:01 ID:WGHzH4Z.O
>>86
厄神様はその夜、久々に人の住む里に来たそうな
そもそも、厄を身体に巻き付ける厄神様は人が嫌うというのもあり、滅多に人里なぞに行くことなぞないのだが、この日は何の気なしに来てしまったのだ
夜というのもあったためか、外にいる者も少なく、いたとしても顔を真っ赤にしながら、回りながら先を進む厄神様をみて、きょとんとするだけだ
愚痴を吐きながら酒を煽る者や、金を使って賽子遊びに興じる者がまだ起きているのだろう
夜は更けたとはいえ、まだ灯りは点々としている
最初はふらふらと先を進んでいた厄神様だったが、その灯りの先にふと小さな影があることに気付いた
目をやると、酒屋の向かいの川瀬に十いくつになるかならないかの少年が、川に足を投げ、空を仰いでいた
こんな夜更けに、少年がいるなぞ到底考えられぬ。そう思い、厄神様はたまらず彼に声をかけた
「君は何をしているの?」
すると少年は後ろを振り返り、厄神様を見るなり
「お父を待っています」
と、静かに答え、また空を仰ぎみた
ここで厄神様は、少年の持つ厄をふと感じた
厄というものは中々癖のあるもので、人には、大抵が行動や言動、態度などに厄の断片を見出すことがある
―多少の厄があるから、人は人たりえる―とは厄神様の弁だが、彼の言葉から彼の持ちうるものを感じたのだ
既に少年を照らしていた酒屋の灯りは消え、ただ深々とした闇が周りを包んでいた
「いけませんねぇ。子どもがこんな夜中に外にいては。今日は帰りなさいな」
「とは言われても困ります。お父には酒を飲み終わるまで待てと言われておりますので」
「ならそのお父様に私から言っておきましょう。あなたは帰りなさいな」
そう言われると少年はしぶしぶ立ち上がり、そのまま暗闇の中へ歩き始めた
厄神様は、その後ろ姿を見ながら、密かに両手を合わせ、ゆっくりと目を閉じた
その少年の帰る家もないどころか、その魂すら寄せる身もない、ただ一人さ迷うものである事を知ったからである
少年から出た言葉から厄は見えない。ただ言葉がそこにあっただけなのだ
厄神様は、彼の帰る道に厄あらんことを、と静かに祈り、誰もいなかった川瀬を後にした

お題:思い出
キャラ:メディスン


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