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【お題で嫁を】お題で簡単にSSを作ってみようか【自慢するスレ】

120名前が無い程度の能力:2010/01/28(木) 23:57:41 ID:e6vASRTg0
―――馬鹿にされた?
 あの目。あの声。いつもの、ふざけながらも私を慕ってくれていた面影などどこにもなかった。あったのは嘲り以上に屈辱的な、路傍の石ころを見るような目。
―――ふざけんな。
 赤熱した思考がさらに熱くなり、どろどろに溶ける。
―――ふざけんなっ!
 自らの頬を殴る。粘り気のある、血の混じった唾を吐き捨てる。
「あ、あ」
 手を膝から離し、握る。
「あああぁぁぁぁっ!」
 前傾姿勢を取って走り出す。ボールをもった妖怪目がけて走り出す。
 奴は追いすがる兎たちを振り払い、独走している。
―――まだだ。まだたりない。
 さらに前傾、全ての力を下半身に回し、グラウンドを駆け抜ける。途中で追い抜いたもふイナバは笑っていた。何故か不快ではなかった。
―――もっと、もっと!
 ぶちんぶちんと腱が切れる。一瞬、がくんと力が抜けた。すぐさまリザレクションをかけ、修復する。
 あまり痛くはなかった。痛みなんてどうでもよかった。ただ、速さがほしかった。
 顔を上げて前を向く。奴は、もうすぐゴールラインの手前、最後の砦たる永琳が守る場所に到達しようとしていた。
 永琳ならば止める。
 それは信頼などではなく、確定した未来。相手の行動パターンを読むことなど、月の頭脳たる彼女には朝飯前。
 奴はステップを切ってかわそうとするが、それすらも読みの通りだったのだろう、鋭いタックルが奴の膝に入った。足を払われた奴は、前に倒れ、その際にボールが転々と転がった。
「ほら、止めたっ!」
 誰に言うもなく、叫んだ。既にボールから5メートル程度の場所まで来ている。
 横をちらりと見る。奴のフォローに走っていた妖怪と目があった。
 この後はボールの取り合いになる。正直にいったら、いくら私が身を顧みないで力を出せるとはいえ、体の動かし方を学び、それで生きてきた妖怪にかなうわけがない。ならば。
「ふっ!」
 足にさらに霊力をため、ボールに飛びつく。一回転して立ち上がる。その時にはもう、横にいた妖怪が眼前まで迫っていた。
 飛びかかってきたそいつを軽くかわす。勢いを殺しきれなかったそいつは、無様に地に転がった。
 再び走り出す。先ほどと同じように、常にリザレクションをかけながら走る。
―――私は弾丸。だれにも止められず、そして止まらない。
 そんなことを考えた。眼前には私を止めようと殺到する木端妖怪ども。こんな状況にもかかわらず、口端がつり上がるのを感じた。
 全員が私に向かって飛びかかってくる。力比べをしたら、多勢に無勢だ、この捨て身の状態でも当然のように負けるだろう。
「でもっ!」
 さらに低く、低く。前傾し、地面すれすれまで体を落したまま駆け抜ける。頭上では飛びかかった脳筋な妖怪どもがごしゃりとぶつかってつぶれた音がした。
 その姿勢のまま走り続ける。体力的にも限界だった。霊力ももう少ししかなくなっていた。
 しかし、精神はまだ残っている。この滾った魂は、衰えることなく燃え続けていた。
―――私は、それだけでいい。
 少なくとも、今だけは。


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