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【お題で嫁を】お題で簡単にSSを作ってみようか【自慢するスレ】
96
:
名前が無い程度の能力
:2010/01/17(日) 02:14:33 ID:ZWF9Guk.0
>>94
『この体の思い出』
首だけにされた人形が、小さなクッションの上にころんと転がされている。大人一人でいっぱいになるような小部屋には、ランプが一つ。使い込まれたオークの机は見事に整頓され、少女が背を丸めて何かの作業に没頭していた。
「ねえ、思い出があるってどんな感じ?」
首だけのメディスンが口を開いた。アリスは背中を向けたまま質問には答えず、腕の関節にヤスリを当てている。
「ねえ、どんな感じって聞いてるんだけど?」
「……ああ、御免なさい。集中してたから」
メディスンが語気を強めると、ようやくアリスが振り向いた。左手には人形の腕を持っている。その関節はランプの光で滑らかに光っていた。
部屋の主とその客、一人と一体の容貌はよく似ている。金髪碧眼に白い肌、例えるなら「人形のような」としか言いようのない二人だった。
「私は妖怪になってまだ何年も経っていないから、思い出って言葉の意味がよくわからないの。教えてくれる?」
ある日、忘れられた鈴蘭畑で、捨てられた人形に魂が宿った。数年前に起きた花の異変をきっかけに、メディスンの存在が幻想郷に知られるようになった。彼女は今では永遠邸やアリスなど一部の者と時に行動を共にする間柄になっていた。
「思い出ねぇ。当たり前すぎてかえって難しいわね」
アリスは作業の手を休め、冷え切った紅茶に手を伸ばす。
「昔のことがふと心に浮かぶ……ってことなんだけど」
「私にはその、昔が、ないのよ。ついさっき生まれてきたところなんだから」
「記憶と思い出は違う、ってのは、なんとなくわかるんだけど」
アリスは上目遣いに部屋の左右をちらちらと見たが、二の句は継げなかった。
「もういいわよ。無理に説明しなくても。たぶん、長生きしたらわかるんでしょ?」
「それよりさっさと私の修理を終わらせて頂戴。もう3時間は経ってるのに」
メディスンは当てずっぽうに経過時間を言うと、少しふくれた。
「貴方ぐらい精巧に出来てると、3時間でここまで修理出来れば新記録よ」
「陶製でも樹脂でもない、木製の球体関節人形なんて初めて見たわ……。この木材がいったい何かさえ見当がつかないのに、手探りで修理してるのよ」
人形に関しては第一人者であるアリスにここまで言わせるのならば、その言葉は本物だった。一度バラバラに解体されたメディスンは右腕を残して修理が完了し、机の上に座っている。今はメディスンの魂とつながっていないために動くことはできないが、それでも滑らかな曲線は今にも動き出しそうな怪しい存在感を放っていた。
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