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【妄想爆発】チラシの裏【大上等】

1名無しさん:2012/07/23(月) 20:55:39 ID:FfmC0Dnw
勝手にスレを立てさせて頂きました。

薄汚い妄想だろうが職人のSSにも満たない話など、何でも良いから書きたい事は此処に書け!

Q、何か書きたいけど投下する勇気が持てない…
A、恐れるな! 勇気と誇りを持って書きこもう! 我々はアブノーマル! どんな話(餌)にも食いつくのだからぁッ!

513適当:2013/02/24(日) 10:31:39 ID:Dbksyv72
試練7 【闇】

Day13 【15:00】

【業火】の間の番人への勝利を象徴する、燃え盛るような赤色の“α(アルファー)”と描かれたバッチを見つめながらその場に腰を下ろしていると、先程の死闘での疲れが、いつの間にかやわらいでいる事を感じた。昨日は、【業火】の間の番人を挑発し過ぎてしまった為、相当な痛手を負ってしまったが、今日は、彼女と闘っても痛手を負うこと無く、無事に彼女に勝利する事が出来たので、この程度の休憩で、再び思いっきり闘う事が出来る。肉体は、確かに回復し切った。だが、精神は未だに回復はしていなかった。なぜなら、体を休め始める前の、【氾濫】の間の番人に対しての感情が未だに残っていたからだ。【氾濫】の間の番人は雌である。普通は、彼女に対しての感情と言えば、恋心もしくは、暴力とは正反対の意外な優しさに驚くかの二つ、強いて彼女に抱く感情をもう一つあげるなら、彼女に勝てて、陵辱されずにいられて“良かった。”と安心する感情である。だが、俺が未だに払拭(ふっしょく)しきれない感情は、今あげた感情にはどれも当てはまらなかった。恋心を抱いている場合などではない。驚いている場合ではない。はたまた、彼女の恐怖から解放されて“安心”している場合ではない。俺は、もう殺獣者(ポケモンを殺す事)に成り下がったような者であったからだ。俺が、彼女に情報を吐かせて裏切らせ、殺したと言っても過言では無いだろう。俺が、彼女に直接手を加えてないとしても、俺が彼女が殺される原因を作ってしまったので、その言葉以外は、当てはまらないのである。体を休め始める前彼女に対して心から謝罪しても、俺は罪悪感を拭いきる事は出来ないでいた。しまいには、“本当は、俺は負けた方が良かったのではないか?”という事まで思い始めてしまっていた。自分が彼女に負け、彼女から陵辱される事を選んだならば、自分自身にかなりの憤(いきどお)りを感じてしまうも、彼女が死ぬ事は無かったのである。俺は、【若葉】の間の番人である、あのあどけない少女の脅(おび)えた表情から、“敵に情報を流したら殺されてしまう。”という事を感じ取っていた。にもかかわらず、“自分がいち早くこの施設を脱出する為”とは言え【氾濫】の間の番人である彼女にも、同様の事を行わせたのである。情報を吐かせる事しか、彼女との死闘の勝利にふさわしい物は無かった。だからと言って、彼女を殺す事は果たして許される事なのだろうか。

514適当:2013/02/24(日) 10:35:07 ID:Dbksyv72
俺は、一昨日(かこ)に戻って自分の間違った行動を止めたかった。少女を助けた後の少女と過ごしている時間に戻って自分の間違った行動を止めたかった。だが、俺には一昨日(かこ)に戻る事も少女を助けた後の少女と過ごしている時間に戻る能力はない。であるが故(ゆえ)に、俺には過去の行動を訂正する事は不可能であった。“シャーズ、フィア本当にすまない。俺には、タイムスリップなんて事は出来ないんだ。時間を戻す事も出来ない。死んでしまっても…。俺のせいで殺されてしまっても、どうか俺を恨(うら)まないで欲しい。”俺は、もう一度間接して殺獣してしまった相手に心から詫びた。謝って許されるものではない。そんな事はわかりきっていた。だが、俺に出来る精一杯の事は謝罪(これ)だけであった。自分が時間を戻す事が出来たならどんなに良かっただろうか。自分が過去に瞬間移動出来たらどんなに良かっただろうか。自分にこの二つの能力が無いとしても、この二つのどちらかを可能にしてくれる不思議な生き物(可能だとすればおそらくポケモンだけであろう。)がここにいてくれたらどんなに良かったであろうか。時を操る生き物…。そんな科学でも、念学(エスパー学。主にエスパータイプが学ぶ。)でも実現する事が出来ない事を、いとも簡単にやってのける生き物なんているのだろうか。俺は、22年間生きて来てその情報(こと)を耳にした事は無い。俺でなくとも“時を操る生き物”なんて情報は耳にした事は無いはずである。もし、“時を操る生き物”がいたとするならば、間違いなく伝説種族(伝説ポケモン)に属するハズである。だが、まず時を操る生き物がいるという事は考えられない。いくらなんでも、“時間を操る”なんて事は不可能では無いだろうか。“時間を操る”と対比関係にある“空間を操る”事に関しては、無きにしも非ず(ないわけではない)と言える。念の力を持つ者は、超能力で相手を浮かせる事が出来るので、強大な念の力を持つ者は“空間を操る(と言っても、別空間に変えるという意味ではない。空間を制すと言った所であろうか。)”は不可能では無いハズである。“俺は、過去には戻れない。シャーズ、フィア俺を許してくれ。”俺は、叶わない願望を心の中でつぶやき、自分が殺してしまった相手には、決して伝わらない謝罪を行い、罪悪感に押しつぶされそうになる事を避ける為、何かを自分に言い聞かせた。

515適当:2013/02/24(日) 10:38:44 ID:Dbksyv72
「とりあえず、バッチをはめよう。少しは…気が楽になるハズだ。」

俺が自分に言い聞かせた事とは、勝利の証を手にした際に何度も行っていた“9つのくぼみにバッチをはめる”という事であった。俺は、【幻想】と示された扉のすぐ右隣にある9つのくぼみへ歩を進め、自分自身に語りかけた事を実行に移した。

スタ… スタ… スタ…
スッ…カチャリ
ブー ブー
ガッシャン

俺は、番人への勝利を表す証をはめ終えた後に聞こえる、一番左奥の方から鍵をかける音を静かに耳にしていた。9つのくぼみに、1つ1つ自分の勝利の証をはめる事は嬉しい事であるが、鍵をかける音を耳にしても、未だに、自分が殺してしまった彼女達に対する罪悪感にとりつかれていたので、自分自身の気分転換の為、【業火】の間の番人から奪った勝利の証が、【業火】と示されたプレートの下にはまっている様を見つめながら、心の中で何かをつぶやいた。

ジー
“そう言えば、あのスターって隊員(ヤツ)全く可愛気が無かったな。まるで、自分を雄のように思いこんでいる。”
ジー
“それにしても、アイツは口が悪すぎはしないか?初対面の時から、あんな言い方をしやがって…。常識外れもいいとこだ。”
ジー
“しかも、ジョークも面白くないしな。アイツの方がよっぽどガキじゃないか。”

俺は、【業火】の間の番人であるあのいかつい彼女に対して、勝手に批評を行っていた。彼女との会話を思い出すと、彼女が成獣(おとな)とは思えない振る舞いばかりをしていたので、“成獣(おとな)ぶっているだけなんじゃないか?”という結論を導き出した。いかつい彼女は本当は雌。だが、彼女の振る舞いは誰もが雄と言ってしまう程の悪い振る舞いであった。更に、雄、雌関係無く言える悪い点も上げられる。初対面の対戦相手に対して、やたら“ぶっ殺す”と言うのはどうだろうか。彼女を見て誰もがこう思うハズだ。“口が悪い。非常識だ。”と。彼女は、端正な顔立ちで笑顔を見せればなかなか可愛気があると思われる。しかし彼女は、自分で雄に嫌われるような(雌から見ても、アイツを好きになれないと思う。)振る舞いを行ってしまっているので、この利点を自分から台無しにしてしまっている。なぜこうも彼女は、可愛く振る舞わないのであろうか。

516適当:2013/02/24(日) 10:43:26 ID:Dbksyv72
俺が大学生の時に、同じ学科を専攻していた一匹の雌のブースターは、彼女よりは若干端正な顔立ちでは無かったが、彼女よりは何倍も可愛気があり、自分を可愛く振る舞う事に努力を惜しまないでいた。努力していたと決めつけたのは、俺が何も知らないだけであると思うが、彼女は見た目もかなりのオシャレ屋であった。オシャレと言っても、俺が通(かよ)っていたのは、軍隊養成大学なので、体の全部を着飾る事は出来ない。大学から支給される雌の可愛さを力強いイメージに変えてしまうような軍部でも、彼女は同じ学科を専攻する雄(もの)達を魅了(みりょう)していた。更に彼女は可愛さだけでは無く、面白さも兼ね備えていた。一度、冬の時期に彼女が、チェック柄の赤色のマフラーを巻いて大学に来ていたので、“炎タイプなのに、マフラーを着けるのか?”と彼女へ問うて見た所、「炎タイプだからって寒くないワケないじゃ〜ん。決めつけは良くないよぉ〜。」と笑顔で返してくれた。“ああ、なかなかカワイイ生徒(ヤツ)だな。”とは思いつつも、俺は冗談で“首に巻いているじゃないか。これは、マフラーだろう?”と返答した。すると彼女は、いたずら気に微笑み、「備えあれば、うれい無〜し!!そう思わない?」と明るい声で返してくれた。ここで考えて見て欲しい。炎タイプは、普通のどのタイプよりも標準時の体温は高い。この時点で冬に直面しても、あまり寒くは感じないハズである。俺は、冬に直面しても肌寒いとは感じるが、“寒い!!”とまでは感じなかった。電気タイプだから、標準時の体温がまぁまぁ高いというのもあるが、彼女はその上を行く体温を持っているハズである。更に彼女は、俺とは違い毛布のような毛が生えている。俺の毛は、彼女に比べると3分の1に満たない程の毛(と言っても、自分のモノは隠せる程の毛は持ち合わせてはいる。興奮したら、自分のモノが露出(で)てしまうので、相手にわかってしまうが…。)。この二つの条件を満たしているなら、少なくとも俺より“寒い!!”と感じる事は無いハズである。にもかかわらず、彼女は“寒い!!”と信じられない発言をし、十分に暖かいハズなのに、首にマフラーを巻いて防寒対策を行っていたのである。俺は、彼女の発言と彼女が最初から持ち合わせている防寒条件を照らしあわせて、あまりにもおかしいと感じたので、彼女の発言を聞いた直後に思わず笑ってしまった。

517適当:2013/02/24(日) 10:48:51 ID:Dbksyv72
笑いながらも、“マフラーを取られたら、どんな反応を見せてくれるのだろう?”という好奇心が湧いて来たので、話を終えた後、彼女が俺から離れようと後ろを向いた時を狙って、彼女の首に巻かれているマフラーをほどくというイタズラを行って見た。すると、彼女は可愛らしい悲鳴を上げ、俺に故意(おそらく故意であったと思われる。)に抱きつき、「も〜う、さ〜む〜い〜。仁君何してんのぉ〜?」と笑顔で俺に訊ねて来た。俺は彼女の問いに、“寒いなんてウソだろう?俺の方が君よりも寒い。君には、コイツ(マフラー)は必要ないハズだ。だから、コイツは俺がもらう。”と冗談で返したところ、彼女はいたずら気に微笑むような、俺に甘えるような微笑みを見せ、「じゃあ、もらっていいよ。あげる。その代わり、仁君のせいで寒くなったから、責任取ってね?」といかにも、俺のイタズラを待ち受けていたかのような発言を行って来た。俺は、彼女に笑顔を向け“ああ、いいぞ。”と彼女の望み(望みだったのだろうか。それとも、俺がただ受け入れ、彼女を抱き締めたかっただけだったのか…。)を叶える肯定の返事を行おうとしたが、周りの雄達(せいと)からの、“お前、そこで何をしているんだ?ソイツといちゃいちゃしている所を俺達に見せて、ケンカを売っているのか?”という体に穴が開くような目線に気づいてしまったので、彼女に黙ってマフラーを返し、彼女に一言“すまない。それは、出来ない。”と否定の返事で返してしまった。彼女は、急に畏(かしこ)まった俺の態度の変わり様(よう)を見て、首を傾げ、「なんで?抱擁(や)ってくれる流れだったじゃ〜ん。”と少し不満気な表情で俺に理由を訊ねて来た。俺は、彼女に理由を言葉で伝えず“周りを見ろ。”というサインだけ送った。彼女は、俺のサインを理解し、“え?”と言うような表情を見せ、周りを見渡し、周りの雄達(せいと)から俺がにらまれているのを見て仕方無く現実を受け入れた。

518適当:2013/02/24(日) 10:54:47 ID:Dbksyv72
今に思えば…。綾と出会うのは、高校3年次の時。俺が、語ったのは大学1年次の時。もしも、綾との出会いが無く、あそこで雄達の目を気にせずに、彼女の望みを受けていたら、俺は、面白い返しをしてくれるオシャレ屋のあの生徒と交際していたかもしれない。雌のブースターは嫌いでは無かったので、おそらくそうなっていただろう。“おっ、何だか気持ちが晴れて来たな。”俺は、過去の思い出に一匹でに浸った事により、先程の彼女達への罪悪感が薄れ、(俺に情報を与えて犠牲になってしまった彼女達には悪いが。)食事ルームから放たれる匂いが俺を誘惑し始めたので、俺は食事ルームへと歩を進めた。

スタ スタ スタ
ピタッ
「おっ!!今日もまた、違うメニューが…。」
ジー
「ひさしぶりだな。こいつを食べるのは…。」

食事ルームへと歩を進め終え、用意されていた食事へと目を向けると、トレーの中を少し大き目の皿が占領していた。トレーを占領していた皿に乗っていたのは、黄色の中にほんの少し白身が入った香ばしい香りを漂わせた絨毯(じゅうたん)が、何かを覆(おお)っていた。黄色の絨毯(じゅうたん)には赤い日常的な匂いを放つ液状のものが掛かっていたので、俺はこの料理が何であるか、そして黄色の絨毯(じゅうたん)の下には何が隠されているかを、すぐに理解する事が出来た。俺は、トレーを占領している皿を眺め終え、トレーの上に乗せられたスプーンを手に取り、自分が眺めていた料理を堪能し始めた。

スクッ
カチャ カチャ
スクッ…パク
モグモグ…
ゴックン
“うん。やっぱり美味いな。”
カチャカチャ…

519適当:2013/02/24(日) 10:58:17 ID:Dbksyv72
“久しぶりに食べたからとかじゃなくて、本当に美味い。美味いしかいいようがないな。”俺は、メインであるオムライスを口へ運びつつ、心の中で二度も同じ感想を言っていた。黄色の絨毯(じゅうたん)にスプーンを当てると、力を入れなくても黄色の絨毯(じゅうたん)が下を覆(おお)っている物と共に、切り分ける事が出来た。あまりにも軽い力で切り分けられたので、“これは、ものスゴイ本格的な料理(ヤツ)だな…。”と感じ、切り分けた部分をスプーンに乗せ、口へと運んだ。口へ運んだ途端に、3つの部分がそれぞれ味を主張し、やがて重なり合って来た。黄色の絨毯(じゅうたん)である卵は、焼いているハズなのに、焼き目が全く無く、また焼いたと思わせるような匂いも放ってはいない。悪い所を見せず、卵本来の美味さと焼いて作ったとは思えない程の柔らかい食感を持ち味とし、俺の舌を唸らせていた。黄色の絨毯(じゅうたん)の上に掛かる赤い液体も、自分が今まで口にした事のある味では無く、かなりの本格的な味をかもし出していた。赤い液体はもちろんケチャップという調味料である。ケチャップは、普通は色を付ける元となっている材料よりも、少し塩気と酸味を効かせた味を感じさせる。だが、黄色の絨毯(じゅうたん)である卵に掛かっていたケチャップはそうでは無かった。ケチャップにもかかわらず、トマトの味をベースとし、トマトの味を邪魔しないように、程良く塩気とトマト以外から放たれる酸味を効かせていた。俺が、味わったこのケチャップはおそらく誰も味わった事は無いのでは無いかと思える程の味を醸(かも)し出していた。卵とケチャップで十分に舌を唸(うな)らされていたが、更に自分の舌を唸(うな)らせる、卵に隠れていた赤色に染められた米が存在していた。赤色に染められていた米である“チキンライス”は、先程のケチャップとは違う味を表現しており、チキンライスの具である鶏肉やコーンやグリンピースに、細かく切られたにんじんが、チキンライスの色を作り出す元となるケチャップに味を強化され、全ての具が調和させられていた。この完璧なチキンライスを味した途端に、俺の頭の中は一つの事しか思い浮かばなくなっていた。卵、卵に掛かっているケチャップ、チキンライスが味を主張し終え、調和を始めた時にはもう“美味い。”という以外の言葉は見つけられなかった。

520適当:2013/02/24(日) 11:02:06 ID:Dbksyv72
俺は、食通という程の舌の持ち主では無いが、俺が今食べているオムライスは、食通でも味の表現が難しいと思われる。三つをそれぞれ別に食べるのなら味は言葉に表せると思うが、三つが一気に舌を唸らせるとなると、驚きのあまりに味を言葉に表せず、自然と“美味い”としか口に出来ないハズだ。“生まれて初めて、料理に感想をコントロールされたな…。”俺は、メインである言葉では表現しきれない味を持つオムライスをたいらげて、まるで自分が食事に操られているような感覚を覚えつつ、サラダを静かに口へ運んでいた。やがて、サラダもたいらげ残すは一つとなった時、俺の頭の中ではある命令だけが存在していた。“飲むな。後悔するぞ。”と。用意されていた飲み物は、言葉では表現したくも無い青色の液体であったので、俺は頭の中で放たれる指示に従い、この日、初めて飲み物を口にしないという行動を取った。俺は、頭の中の指示通りに動いた後、特に疑問も反論も出ず、“その通りだな。こいつを飲むとせっかくのいい気分が台無しだ。”と納得だけして、【業火】のステージの熱気により汗だらけになった体を洗う為にシャワールームへと歩を進めた。

スタ スタ ス…
「あれ?」
ピタッ
「何か、後ろに書かれている文字が変わっているような気がするな…。」
スタ スタ スタ
ジー
「おお!!変わっている!!ずっと…気が付かなかったな。」

“後ろに振り向きもしなかったせいか…。”シャワールームへ歩を進める途中、後ろの電光掲示板(モニター画面)へふと目を向けると、監禁された初日に読んだ文章の行数とは、明らかに異なっている事に気づいた。俺は、後ろの電光掲示板(モニター画面)の変化に気づいた後、シャワールームの方向とは異なった、中央へと歩を進めていた。中央から、電光掲示板の全体を見据(みす)えると、監禁された初日に読んだ文章とは明らかに異なる文章が示されていたので、俺は驚いた反応を見せ、電光掲示板に示されている内容へ目を向けた。

521適当:2013/02/24(日) 11:06:10 ID:Dbksyv72
【CONGRATULATIONS!!(おめでとう!!)君は、見事に第一関門を突破した。これより、第二関門へ突入する。第二関門ではクリア出来る部屋の順序が次のように定められている。【闇】→【伝説】→【幻想】。第二関門の最初のステージである【闇】の戦闘時刻は、21:00〜3:00。次のステージである【伝説】の戦闘時刻は、6:00〜18:00となっている。指示された時間以外は、ステージの扉にLOCKが掛かっているので注意する事。尚、【闇】のステージは、月の光だけの暗いステージとなっている、君が、戦闘用スーツを手に入れたタンスの右側に設置された装置にパスワードを打ち込んで欲しい。パスワードを打ち込むと君が刀とハチマキを手に入れた箱の底が開き、“暗視ゴーグル”が手に入る。パスワードは“α,β,θ,μ”だ。】

“夜中に闘うというワケか。”俺は、文章の中間に示されている指定戦闘許可時刻に目を通し終え、初めて闘う時間帯と、扉に示された文字と関連づけて納得した。その後の文章に目を通すと、今までよりも戦闘時間は長い事に驚きつつも(俺が毎朝早く起きている訳では無いので、本当は同じという事もあり得ると思うが…。)、戦闘開始時刻が明らかに早いと感じ、“フィアの話では、伝説の隊員(ヤツ)は年寄りと聞いた。本当に相当年齢が上なんだな。老獣(高齢のポケモンの事を指す)ならば当然だな。年寄りは、早起きだと聞くからな。”と戦闘開始時刻が明らかに早い理由に納得していた。その後、文章を読み進め、最後の文章に示された道具を手に入れる為の行動を開始した。

タッタッタ…
ピタッ
「タンスは…これだな。」
ヌッ
「ないな。左にはやはり無い。という事は、説明通り右か。」
ヌッ
「おっ!!なんか付いているな。」

522適当:2013/02/24(日) 11:12:00 ID:Dbksyv72
後ろの電光掲示板(モニター画面)を見終えた後に、俺が取った行動は、もちろん“文章中にある道具を手に入れる為、パスワードを打ち込みにタンスへ向かう事”である。足を速めたのは、一刻も早く真実を確かめたかったからだ。駆け足でタンスへとたどり着くと、俺はタンスの側面を両方確認した。確認を行うと、文章に示されていた通りの方向に、数字とは異なる9つの文字がそれぞれ示されたボタンが付いた入力装置を発見する事が出来た。“数字じゃない。アルファベットでもないのはめずらしいな。”俺は、一般には無いと思われる特殊な文字が示された、9つのボタンが付いた入力装置が“希少である”と思い込み、後ろの電光掲示板(モニター画面)に示された文字を順に入力した。

【α β γ
θ λ π
μ χ ω】
“よし、確かα、β、θ、μだったよな。”
ピッ ピッ ピッ ピッ
ピー
ガー

“向こうで音が鳴った。よし、行ってみるか。”指定された4つの文字を入力し終えると、中央付近から音が鳴り響いた。俺は、音を頼りに監禁初日に基礎装備を手に入れた箱の元へ掛け出した。

タッタッタ…
ピタ
チラッ
「あっ、開いてる。」
スクッ…パシ
ヒョイ
「これが…暗視ゴーグル…か。」

基礎装備を手に入れた箱の元へたどり着き、箱へ目を向けると、何やら黒いレンズが付いた機械が姿を現していた。俺は、突然姿を現した黒いレンズが付いた機械を手に取り、じっくりと観察した。“ON、OFF…。これで、起動させるのだろうな。まぁ、一応説明書も読んでおくか。説明書は、入っているハズ。”黒いレンズの機械を観察し終え、ある程度の推測をしつつも、“念の為”といわんばかりに、箱の底にある説明書を取り出し、目を向けた。

【暗視ゴーグル NIGHT VIGION GOGGLE。使用方法は、ONで作動 OFFで作動停止。バッテリーの残量は、使用中の画面に表示される。バッテリーは、【闇】のステージにある青い箱に入っているが、装着したまま電気を流しても充電が可能。】

523適当:2013/02/24(日) 11:16:41 ID:Dbksyv72
“うん。便利だな。こいつも俺の電気で充電出来るのか。”説明書を読み終え、俺は黒いレンズの機械が利便性があるとは思いつつも、“いつも思うが、なんで使用可能時間は書かれていないんだ?途中で、効果を切れさせて俺を混乱させる為か?”と機械の使用に関して“説明不足だ。何かの陰謀に違いない。”と勝手に思い込み、箱の中へと機械を戻した。“今は、必要無いからな。夜遅くの闘いという事は、当然寝とかなきゃならないからな。”黒いレンズの機械と説明書を戻し終え、食事を摂った後の自分のやるべき事を思い出し、シャワールームへと歩を進め、スーツを脱ぎ、体を洗い始めた。

ジィィィ… ジィィィ
スル スル…
パサッ
スタ… キュッ
ジャアアアア…
ゴシ ゴシ
キュッ

“うん、スッキリしたな。さて、水気を飛ばして、スーツを洗濯して寝るとするか。”体を洗い終えた俺は、体を震わせて水気を飛ばし、使用済のスーツを手に取り、洗濯機へと歩を進めた。洗濯機へたどり着くと洗濯機の中から洗濯済みのスーツを取り出し、洗濯済みのスーツを着て、使用済のスーツを洗濯機の中へ放り込み、洗濯機を起動させた。洗濯機を操作し終え、起動音を耳にした俺は、洗濯済みのスーツを着て、中央へと歩を進めた。

524適当:2013/02/24(日) 11:19:06 ID:Dbksyv72
スタ スタ スタ
ピタッ
“あっ、そういえばハチマキを外して寝た事は無いな。たまには、外してみるか。”
シュル シュル…
“おっ!!なんか…すごい涼しいな。”
スクッ… パサ

俺は、中央へたどり着き、普段行うべき寝る前に装備品を外すという事をこの日初めて行った。額を覆(おお)う“喝(かつ)”と示された赤いハチマキを外した途端に、かなりの開放感が感じられたので、現実には反応を見せなかったが、心の中では額に感じる涼しさに改めて驚いていた。“なんで俺は、今まで外さなかったのだろう…。”ハチマキを外し、ハチマキを刀と並べて床へ置いた後、今更の行動に関しての疑問を抱き、頭を働かせていた。ものの数分頭を働かせると、一つの結論にたどり着いた。“きっと、忘れないように。とかじゃなくて、不安だったんだろうな。コイツをつけてないと死ぬと思い込んで…。”俺は、監禁初日の自分の心理状態と今まで経験して来た死闘を振り返って、しみじみと感じていた。“さて、寝るか。闘っている途中にウトウトしたら大変だからな。”監禁初日の冷静を装(よそ)っていた中での不安を改めて実感し終え、俺は自分に懸念を言い聞かせ、ハチマキの横で仰向けになり、静かに目を閉じて眠りの世界へと旅立っていった。

525適当:2013/02/24(日) 11:23:45 ID:Dbksyv72
Day13 【21:30】

俺は、真っ白い空間で目を覚ました。目を覚まして最初に行った行動は、自分の腕時計へ目をやり、今の時間を確かめる事だった。腕時計を見ると、【21:30】と表記されていた。“慣れない時間帯に起きた割には、結構いい時間じゃないか。”と満足気な笑みを浮かべ自分の右隣にある、基礎装備達を身につけ始めた。

パシッ
クルッ…ギュ
シュル シュル…
グッ グッ

“闇か…。暗闇のステージ…。月の光だけと言っても、大した明るさにはならないハズ。フラッシュを使える事は使えるが、使いながらでは集中が続かない。” “喝”と描かれた文字を見せつけるように、額に赤いハチマキを巻き、背中に刀を結びつけ終えた俺は、次の最重要装備を身につけなければならないと考え、基礎装備を手に入れた箱へと歩を進めた。

スタ スタ スタ…
“暗視ゴーグル。よし。”
カチャ…
カッチャン
“サイズも俺にピッタリという事は、頭の大きさも計っていたんだな。”
「ふふ…。」

“レベルも計られ、体の隅々まで計測されて、俺の情報(こと)を知るのに、かなり長い時間が必要だった。それなのに、俺はぐぅぐぅと寝ていたのか…。”俺は、いつも睡眠を取る位置よりやや後ろにある箱へたどり着き、箱の中に入っている黒いレンズが付いた機械を持ち上げ、自分の目の位置に黒いレンズがくるように頭へ装着した。

526適当:2013/02/24(日) 11:25:47 ID:Dbksyv72
後頭部のベルトを締め終えた途端、自分の頭の大きさにあまりにも丁度にあってしまったので、俺は、自分の体の情報を知る為に要した時間を単純ではあるが計算し、算出して、自分が長い時間目が覚める事が出来なかった過去の自分を嘲笑っていた。自分を嘲笑うのは、心の中だけに留めておこうとはしたものの、あまりの馬鹿馬鹿しい過去の失態に、俺は自分に呆れ切り、現実世界にも“自分は愚かである。”と伝えるように小さく苦笑していた。“まぁ、いい。過ぎた事だ。そんな事を気にしてもしょうがないじゃないか。せっかくここまで来たんだ。次も…その次も…最後まで番人を倒し、ここから脱出するんだ。俺に、今出来る事は…。俺が、今自分の為に精一杯の努力が出来るとすれば、これだけだ。”自分を思う存分嘲笑い切った俺は、すぐに気持ちを切り換え、現実世界にも“自分をバカにするのはここまでだ。”といわんばかりの真剣な表情を見せつけ、【闇】と示された扉へ歩を進めた。

スタ スタ スタ
ピタッ
“俺は、今生きる為に闘っている。ここで死ぬのはゴメンだ!!”
ガチャ
キィィィ…
シュイーン シュン
キィィィ…バタン

扉の前へたどり着くと、心の中で自分に強く言い聞かせ、扉のノブを捻り、扉の中の世界へと歩を進めた。

527適当:2013/02/24(日) 11:29:37 ID:Dbksyv72
スタン
ボォウ… ボォウ…
リリリリリ…

俺は、【闇】のステージへとたどり着いた。たどり着くとすぐに、自分のような生き物以外の声が耳へと入り始めた。“フクロウと鈴虫か…。久しぶりに聴いたな。”俺は、森に響く二重奏を耳に入れて、“やっと俺以外の生き物の声が聞けたな。”と深くかんじ、【闇】のステージ全体へと目を向けた。

チラッ…
“うん、見えないな。さすがに、動物のネズミと同じ“暗視”は持ってないか。”
カチッ
ウィィン…
“よし、見えた。懐中電灯を照らした時と同じだな。これは、ありがたいな。”

【闇】のステージである自分が足を踏み入れた事もない森の景色を見る為に、頭に装着させた黒いレンズの機械を作動させた。作動させると、見えなかった景色(もの)が昼間のように、はっきりと見え始めたので、俺は黒いレンズの機械の性能を高く評価していた。【闇】のステージ全体へと目を向けると、先程の心地良い二重奏を奏でる主達は見つけられなかったものの、澄む空気を生み出すたくさんの木々や、木々の根元付近にびっしりと生える草々、所々に白い花が咲いている様が見受けられた。白い花がどんな名前を持つかはわからない。だが、今まで自分が闘ったステージよりも不思議と落ち着いていられるような場所だという事はわかった。なぜ、知らない暗い森の中で恐怖を抱かず、落ち着いていられたかは、きっとフクロウと鈴虫の心地良い二重奏を耳にしたからであろう。そうでなければ、今まで闘ったステージが緊張感を漂わせる所だったという事だ。“めずらしく相手が遅いな。”俺は、心地良い二重奏へ耳を傾けながら正面を見据えても未だに現れない対戦相手にそんな思いを抱いていたが、しばらく見据えても一向に現れなかった。“きっと、相手もまだ寝ているのだろうな。早過ぎたか。”俺が、待つ事をやめて、腕時計についているリタイアボタンに手をかけようとした時、自分の上方から何者かの声が聞こえた。

528適当:2013/02/24(日) 11:33:36 ID:Dbksyv72
「ふっ、起きれないという事か。なら、帰るか。」
スッ…
「クックック…。」
「は?なんだ…。」
「恐れて逃げるか。見えない所がそんなに怖いか?」
「だ…誰だ!!どこにいる!?」

上方から笑い声が聞こえたので、俺は首を傾げて辺りを見回した。俺は、辺りを見回しても誰も見つける事は出来なかったが、対戦相手の声はそのまま上方から聞こえていた。俺は、“姿を現せ!!”といわんばかりに、勢いよく姿の見えない敵へ言い放った。すると後ろから地面に下り立つような足音が聞こえた。

ガサッ… スタン
「う…後ろか!?」
クルッ
「クックック…。」

“コイツ…俺を奇襲しようとしていたのか!?”俺は、自分の後方からの足音を耳にし、一瞬で体を後ろへ振り向けた。俺が目を向けた先には、暗闇の森の中に溶け込むような黒い色で体を染められ、黒い軍服を着た、一匹の雄のブラッキーがいた。雄のブラッキーの頬には、“×”印のような傷跡も見受けられた。俺は、彼の邪悪な笑いに一つの推測を立てた。彼は、俺を不安にさせるような笑い声を上げ終え、俺に徐々にゆっくりと近づき、俺から数m離れた所で足を止めた。俺は、彼を睨みつけ、彼に、自分の正面から姿を現さなかった理由を訊ねた。

「お前は、なぜ俺に姿を見せなかった?」
「クックック…。バカが。」
「質問に答えろ。」

彼は、俺に質問をぶつけられると俺を邪悪な笑みで嘲笑い始めた。俺は、彼の挑発するような笑いを受けても冷静を保ち、彼に返答を促した。すると彼は、独自(といっても一般的には、想像がつく範囲ではあるが。)の意見を言い放って来た。

「相手が姿を見せると思っている時点で、小僧、貴様の負けだ。」
「小僧?俺は、成獣だ。見た目で判断している時点で、俺もお前の負けだと思うがな。」
「ククク…。まぁいい。貴様も、大体検討がついただろう。俺は、ずっと奇襲を狙っていた。とでも言っておくか。クハハハハ!!」

俺は、彼の意見を耳にし、森中に響かせる彼の不気味な笑い声を耳に入れるも、彼に臆する事なく、彼へ奇襲をかけなかった理由を訊ねた。

「なぜ、奇襲(それ)をやらない?やれば勝っていただろう?自分から、何で居場所を知らせる?」
「簡単な事だ。面白くないからだ。」
「面白くないだと?」

俺が彼へ訊き返すと、彼はまた独自の意見を俺へ言い放って来た。

529適当:2013/02/24(日) 11:37:43 ID:Dbksyv72
「レベル52のピカチュウの小僧を襲って勝つのは簡単過ぎる。それじゃあ、面白くない。」
「お前は、勝負に面白さを求めるのか。お前の言う面白さとはなんだ?」
「クックック…。小僧には、まだ理由を知るのは早過ぎたか。雄としても…な。クハハハハ!!」
「いいから、さっさと言え。」

“コイツ、なめやがって。”俺は、彼の嘲笑う発言を耳にして少しの怒りを感じるも、冷静さを保ち続け彼へ返答を促した。彼は、笑う事をやめて、俺を恐怖に陥(おとしい)れるような目を向けて静かに言い放った。

「雄は、闘う生き物。俺は、本能に背(そむ)かず俺の中の雄を満たす為だけに闘う。」
「ふっ、それが理由か。子供みたいな理由だな。どこぞの誰かに似ているな。自分の事を成獣、成獣と言うが、自分が一番子供(ガキ)だということに気づいてないんだ。」
「スターと俺が同じ。だとでも言っているのか?ククク…ハハハハハ!!」
「何がおかしい?言い返せないからって、笑って逃げているのか?」

俺は、彼の理由を耳にし、彼を嘲笑い返す発言を行った。彼は、俺の発言を受けても一向に態度を崩す事なく、森中の生き物が不快に感じる笑い声を響かせた。俺は、首を傾げて彼に訪ねると、彼は俺に理由を述べた。

「さっき、言った全てが俺の本当の目的だ。これ以外の理由なんてありはしない。スターは子供(ガキ)だが、俺はこの森の鬼だ。俺に逆らう者は全て消し去る。」
シャン…
ペロォォォ…
「この殺し道具でな。」

“四足なのにナイフ!?コイツ、ただ者じゃないな。”彼は、理由を述べた後、俺を脅かす為に胸元に付いている専用のホルダーから前足で刃物を抜き取り、刃の部分に舌を当てて俺へ言い放った。俺は、彼が使いこなしにくい武器を俺に見せつけている様を見て、俺は彼を警戒しつつ、彼へ彼の仲間とも思われる者から告げられた事を述べた。

「闘争本能が活発に出ているという事は、お前は雄の中の雄。だとしたら、当然雌も欲しくなるだろう?なぜ、同じ隊長格の雌(やつ)らの欲を満たしてやらない?シャーズは、お前の事が嫌い。だが、他は違うハズだ。」
「クックック。小僧、全ての雄が性行為(こんな)事を求めていると思っているのか?」
「は?」

530適当:2013/02/24(日) 11:41:37 ID:Dbksyv72
“本能剥(む)き出しなのに、雌が欲しくない?じゃあ、コイツは本当に闘いだけで欲を満たしているのか?”俺は、彼の不可思議な発言を耳に入れて、彼へ“意味がわからん”と示すような態度を見せつけていた。彼は、俺の反応を見届け、俺へ理由を述べた。

「俺は、血肉を求める生き物。相手を肉塊にする事だけが唯一の楽しみ。そして、俺が一番欲(ほっ)する事。」
ギリッ
「それだけが、理由か。腐っているな!!来い、お前の性根を叩き潰してやる。」

俺は、彼の理由を耳にして静かに怒りの炎を灯し、歯を食いしばり、拳を握りしめ、戦闘態勢へと入り彼へ言い放った。彼は、俺の怒りの表情を見るも、態度を崩さず余裕の笑みを浮かべて、俺へ怒りの理由を訊ねて来た。

「ヒーロー気取りか。子供らしくていいな。貴様に聞こう。怒っている理由(ワケ)を。」
「雄は、確かに闘う生き物だ。だが、それは守るべき者を守る為に闘うんだ。殺しを楽しむお前を許すワケにはいかない。」
「クックック…。あの雌(おんな)も大体俺と同じだがな。貴様は、一体今まで何を見て来た?」
「シャーズの事か?シャーズはそんな隊員(ヤツ)じゃない。あれは、雄を求める必死の求愛行動だ。アイツは、ただ不器用なだけだ。お前のように殺す為に闘っているんじゃない。性格は悪いが…」
「性根はイイ雌(おんな)か。ククク…。ハハハハハ!!」
スッ…カチッ
「では、始めるとしようか。宣言通り、貴様が俺を撃ちのめす事が出来ればいいがな。」

“始まったか。絶対に負けられない。コイツは、絶対に許さない!!”彼は、俺の反論を耳にして、俺の発言の途中で俺の次の言葉を予測してつなげ、森中に不気味な笑い声を響かせた。笑い声を響かせた後、彼は軍服の右ポケットに前足を忍ばせ、俺へ合図を送って来た。俺は、彼に強い敵対心を抱きつつ、戦闘態勢を保ちながら、彼を睨みつけた。数秒後、恒例の戦闘開始の合図が、心地良い二重奏を消すように鳴り響いた。

531適当:2013/02/24(日) 11:47:54 ID:Dbksyv72
ボォウ ボォウ
リリリリ…
『READY…GO!!』
「はぁ!!」

“10レベル差がある以上、相手よりもかなり素速く、先制攻撃をしかけなければならない。先手を取られては勝ち目は無い。”俺は、開始の合図を耳にし、今自分が持てる全速度を出し切って接近した。本当は、歴然の力があり、地形を把握していなかったからこそ冷静に行動に、接近してくる俺に対して素速くバック転を行い、俺を蹴り飛ばした。

「単純だな。経験が無い証拠だ。ハァッハァ!!」
「何!?ぐはぁ!!」

俺は、彼の反撃を受けて一気に数m跳ね飛ばされた。“アイツに攻撃の隙を与えてはダメだ!!”彼に蹴り飛ばされるも、すぐに体勢をたて直し、俺は自ら弾丸となって標的に突撃する技を行った。

ズザザザ…
「くっ!!ランチャーヘッドバッド!!」
「ん?ロケット頭突きか。」

彼は、俺が体勢を低くしている様子を見て一瞬で自分に訪れる次の未来を予測し、体を宙へ浮かせて後ろへ素速く後退し、俺の必殺技の射程距離外へと移動を行った。“読まれていたか!!”俺は、彼に攻撃を当てられず、彼の数歩目の前で両手両足を地面に着けてしまっていた。

「くそ…。当たらない。ランチャーヘッドバッドが使え…」
「隙だらけだ小僧!!」
「何!?くそっ!!」

彼は、俺が攻撃を外した後にやむを得ずに取ってしまう、俺の未来の体勢を見計らい、戦闘開始前に俺を脅す為に、見せつけた小さい刃物で切りつけかかって来た。俺は、彼の攻撃を向かえ打つ為に、素速く刀を抜き、彼の小さき刃物と刃を合わせ始めた。

ガキン ガキン…
「ハッハッハ!!小僧、八紋刀を持つ貴様がナイフの俺に負けるのか?」
「くっくそぉ…。なぜ、八つの刀に対抗出来るんだ。一本のナイフで…。」
「簡単な事だ。貴様が俺よりも数十倍弱いから…だ!!」

532適当:2013/02/24(日) 11:51:50 ID:Dbksyv72
彼とお互いの刃を打ち合わせて、しばらく暗闇の森の中にお互いの刃がぶつかり合う音を響かせていたが、彼の方が力も自分の持ち前の武器を生かす事に長(た)けていた為か、彼に刀を飛ばされてしまった。刀が地面にささる音を耳にするかしないかの一瞬の瞬間(とき)、彼が自前の刃物で俺を切りつけようと襲いかかった。

「刀無くしては貴様は無力だ、な!!」
パシッ
「くく…くっそぉ…。」

彼の構えの態勢からどの方向から攻撃が来るかを予測出来た俺は、彼の前足を両手で抑え、彼の攻撃を止めた。彼の刃物を受け止め、彼の力に対抗しつつも、俺は、彼がなぜ自分の八つの刃を持つ刀に、自前の小さい刃物で対抗出来たのかを考え出した。“ナイフ一本で闘っていたんじゃない。コイツは、ナイフ5本で闘っていたんだ。”彼にいとも簡単に自分の攻撃を受け止められた原因を探ろうと、彼が握る小さい刃物へと目を向けた。すると、俺の持つ刀と同じ青色の波紋が中心から扇を描くように、複数存在していた。青色の波紋は俺の持つ刀と異なり、波紋の数は下回っていたが、どの角度からも攻撃が受け止めやすい形状を保っていた。“どうりで、攻撃を止められたハズだ。”俺は、自分の攻撃が容易に受け止められた原因を見つけ出し、彼を強く後ろに押しのけて彼をよろめかせ、彼の額に自分の頭を勢いよく当てた。

「ふっ!!たぁ!!」
「うわぁ!!く…。頭突きは、なかなかの威力があるな。」

“やはり、この程度ではひるみもしないか。”俺は、彼に攻撃を加えた直後、素速く何度もバック転を行い彼から距離を取った。“刀はどこだ!!”俺は、彼に飛ばされた自分の持ち前の武器を探す為に、素早く首を左右へ動かし、刀の行方を探し始めた。右へ目を向けた瞬間、白い持ち手が付いた、夜空の月の光に反射して微(かすか)かに光る刃先を見つけ出し、俺は急いで刀の元へと駆けつけようとした。刀まで、後2mと距離を狭めた時、彼が俺に何かを言い放ち、前足に黒い光を灯して、俺に光の玉を連続で放って来た。

533適当:2013/02/24(日) 11:55:17 ID:Dbksyv72
「よし!!あそこだな!!」
「武器は、回収させんぞ?小僧ォォォ!!三連バーストシャドーボール!!」
「何!?はぁ!!」

“はぁ…はぁ…。なんとか避けられたな。まさか、あんなに一気にシャドーボールを打って来るヤツがいたとは…。”彼は、俺に向けて三つの黒い玉を放って来たが、俺は素早く空中前転を行いかろうじて、避(よ)けた。少しの息切れを感じるも、彼に先程と同様に“接近され小さい刃物で切りつけられてはマズイ!!”と考え、地面にささる刀を抜き、彼の方へと体を向け、刀を構えた。

“イチかバチかだが、もう一度アイツのシャドーボールを誘い、あの必殺技を当てる。アイツの三つの連続のシャドーボールは隙が大きい。俺なら、隙を突けるハズだ!!”
「ハッハッハ!!これで、終わりと思うな小僧ォォォ!!」

彼は、俺に言葉を言い放った後、再び先程と同じ複数の黒い玉を放って来た。“来たな…。やるしか無い!!ここでコイツに刀を当て続けなければ、当分勝ち目は無い!!”俺は、彼の放つ黒い玉を避けながら彼へ接近し、電光石火を放った。

「くっ、全て避けられたか!!」
「たぁ!!」
「ぐわぁ!!チッ…だが、俺に勝てると思うな!!」

彼は、俺の電光石火を避(よ)けられず体へ直撃してしまっていた。だが、彼と俺の力の差は歴然としているので、彼は俺の攻撃を受けてもひるまず、俺を“再起不能にする!!”とばかりに言い放ち、俺に向けて頭突きで反撃を行おうとしていた。俺は、彼の攻撃があと数cm程で届くという所で、彼の顎を蹴り上げ、彼が浮いた所に、彼の腹部に何度も十字を描くように、彼の体を斬りつけた。

「ぐはぁ!!」
「くらえ!!れ・ん・ぞ・く十字切りぃぃぃ!!」
「ぐわぁぁぁぁぁ!!」
「とどめだ!!」

534適当:2013/02/24(日) 11:58:41 ID:Dbksyv72
彼は、俺に自分の腹部を何度も斬りつけられ、苦痛の叫びを暗闇の森中に響きわたらせていた。彼の頭に刃を打ちつけ、彼を地面へ叩きつけた時、俺は目眩(めまい)に襲われる位の激しい息切れに襲われていた。普段は、この程度動いただけではこんなにも激しい息切れはしない。だが、対戦相手であり、一撃一撃が重い彼の攻撃を受けない為には、普段出せる速度を捨て、限界の速度で彼を出し抜かなければならない。“はぁ…はぁ…。やったか?”俺は肩で呼吸をしつつ、うつ伏せになった彼へと目を向けた。彼は、立ち上がるが俺の攻撃を受けた為か、血を吐いた。“よし、さすがにアレは効いたか…。次でコイツをマヒにすれば勝てる!!”俺が彼の限界が近い様子を見て、彼へとどめを刺そうと足を動かそうとした瞬間、彼が前足で口に付いた血を拭い、不屈の笑い声森中に響かせ、俺へ衝撃の一言を放った。

「ぐふぅ…。ククク…ハハハハハ!!」
「何がおかしい?ダメージを受け過ぎておかしくなってしまったか?」
「小僧なかなかやるな。さすが、α〜μの雌(おんな)共を倒しただけはある。まぁ、そんな事はどうだっていい。小僧、貴様に1つ問う。自分の技を受けた事はあるか?」

“自分の技…。ま…まさか!!”俺が彼の言葉に少しの動揺を隠しきれないでいる最中に、彼が、俺に急接近し、自ら体を浮かせて、俺を蹴り上げ宙へと浮かせた。

「ぐわっ!!ま…まさか…。この技は!!」「そのまさかだ。受け取るがいい、自分の技をな!!」

彼は、俺を宙へ浮かせた後腰元からもう一本の小さい刃物を取り出し、俺が刀の必殺技として最初に取得した技を俺に放って来た。

535適当:2013/02/24(日) 12:04:06 ID:Dbksyv72
「くたばれ。連・続十字切り!!」
「ぐっはぁぁぁぁ!!」
「とどめだ…。ハァ!!」
「ぐおっ!!」

俺は、彼に自前の小さい二本の刃物で腹部に何度も十字を描くように切りつけれ、頭上に彼の両前足から放たれる渾身の“たたきつける”を受け、地面へ勢いよく叩きつけられた。“くそ…。なんだ…。なんで、俺の技をコピー出来るんだ!?とても四足とは思えない…。これは刀でやる技だ…。二本のナイフだけでどうやって…。”俺は、うつ伏せ状態から必死に立ち上がろうと力を込めつつ、彼が自分の技を鏡に写すように行えた理由を突き止めようと、頭を働かせていた。彼は、立ち上がろうとする俺に向かって駆け出し、俺の元へ急接近して来た。俺は、彼の足音を耳にした途端素速く立ち上がろうとしたが、彼の足の方が速く、彼へ背中を踏みつけられた。彼に踏みつけられた際に出る苦痛の声を一声、彼へ聞かせ、彼に、うつ伏せ状態から仰向け状態にされ、彼に馬乗りにされてしまっていた。

「うぅ…。マウントを取られてしまったか。」
「ハッハッハ!!小僧なかなか、面白かった。“Thanks,I was excited a thing that I fighted you!!(感謝するぜ、貴様と闘っていて興奮した!!)”」
「“Shit…。Get …away me!!(くそっ…。離れろ!!)”」

彼は、俺に馬乗りを行った後、高らかと笑い強調構文を用いて、俺に感想をぶつけて来た。俺は、彼の言葉を受け、強調構文を用いて心の底から彼に“どけ!!”と言い放った。彼は、邪悪と勝利による愉悦(ゆえつ)を混ぜた笑みを浮かべ、俺に残酷な現実を突きつけた。

536適当:2013/02/24(日) 12:08:40 ID:Dbksyv72
「“I never give you side again,Because…HaHaHaHa!! I will be killing to you.(貴様を殺す、だから離れない。)”」
「はぁ!?“Kill me!? What…are you talking about!! Fighting with you is not a thing…that You Kill me or I Kill you!!(殺す!?何を言っている!!お前との闘いは殺し合い…じゃないじゃないか!!)”」
「“I will not talk you.Die come down!!(お喋りはここまでだ。死ね!!)”」
「くそっ!!ふっ!!」

俺は、彼に“これは殺し合いじゃない!!”と訴えるが、彼は俺に“黙れ。”と言い放ち、前足で握っていた小さい刃物を俺の首元に突きつけた。小さき刃物から出る波紋は、青色の波紋から赤色の波紋へと変化を遂げていた。“殺す…。だから、青の打撃の逆は斬撃に違いない!!殺(や)られてたまるものかぁぁ!!”俺は、彼の前足を両足でつかみ、彼の前足を必死に押し返そうとするが、力は彼の方がはるかに上であったので、徐々に、徐々に自分の首元へと赤色の波紋をまとった小さき刃物が迫り始めた。俺は、助けを求めるような叫び声を闇の森の中へと響かせつつ、彼の小さい刃物へ抵抗をし続けた。

「ああああああ!!殺されてなるものかぁぁぁ!!」
「ククク…。抵抗するな。貴様の方が、俺よりも力は数段に下回っているからな!!“I order you to give up. You should be died by me!!(あきらめて、俺に殺されろ!!)」
「だ…だまれ!!このくそったれがぁぁぁ!!」

俺は、彼の強調構文に屈する事なく、彼が握る赤色の波紋をまとった小さき刃物を、喉元(のどもと)から遠ざけようと抵抗し続けていた。だが、抵抗し続けている内に徐々に両腕に疲労が溜まり、彼の意志をはねのける力が弱まりつつあった。“俺はまだ死にたくない!!死ぬワケにはいかないんだぁ!!誰でもいい…誰か助けてくれ!!”俺が、最後の力を振り絞るように両目を激しくつむり、叶うハズのない願いを心の中で願っていると、彼が急に俺へ赤色の波紋をまとった小さい刃物を突きつける事をやめ、両耳を動かして辺りを警戒し始めた。

537適当:2013/02/24(日) 12:11:56 ID:Dbksyv72
「誰か、いるな。」“誰か…いる?誰もいないハズのステージに…。”
ガサッ… ガサッ
「“Damn…。Maybe…Fanction of Telepotation breakdown…(チッ、テレポート機能の故障か…。)”」
“故障?”
「“You are Lukky kids male!!(小僧、運が良かったな!!)”」

俺には聞こえなかったが、彼には聞こえたのだろう。それもそのはず、彼は兎の遺伝子が強くなった、赤い目に額には夜空を主張する月の模様、体を闇にとけ込ませたブラッキーに属するからである。彼は、自分にしか聞こえない何者かの足音を耳に入れた後、舌打ちをし、自分の推測を言い放った。俺は、彼の言葉を聞いて疑問を浮かべた瞬間、彼が俺から離れ、俺に“死に損(ぞこ)ないめ!!”と言い放ち、暗闇の森の中を走り去っていった。“はぁ…はぁ…。助かった。誰かはわからないが、感謝する。”彼が走り去った後、仰向けになりながら呼吸を落ち着かせて、自分を救ってくれた見えない者に感謝していると、背後から草を踏む音と何者かの声が聞こえ始めた。

ガサッ ガサッ
「師匠、今こっちから声が!!」
「ああ、レオ確かめに行こう。何が起きているか気になるからな。」
ガサッ ガサ
「く…そ…。新手か…。」

“今は、闘える状態じゃない。”俺は、背後からの音と耳に入れるとすぐに、“今度こそ、殺されるかもしれない。”という懸念を抱き、腕時計に着いているリタイアボタンに手をかけ、【闇】のステージから姿を消した。

「あれ?おっかしいな…。確かにここだったと…思うんですけど…。」
「私もそう思う。いん…、妙だ。足音も立てないで、その場を去る生き物なんているのか?」
「でも、無事だといいですね。さっきのは、声っていいましたけど、悲鳴だったと思いますし…。」
「ふふ、助かってるといいな。さぁ、もう行こう。」
「はい!!」

538適当 レス537ミス:2013/02/24(日) 12:16:44 ID:Dbksyv72
「誰か、いるな。」
“誰か…いる?誰もいないハズのステージに…。”
ガサッ… ガサッ
「“Damn…。Maybe…Fanction of Telepotation breakdown…(チッ、テレポート機能の故障か…。)”」
“故障?”
「“You are Lukky kids male!!(小僧、運が良かったな!!)”」

俺には聞こえなかったが、彼には聞こえたのだろう。それもそのはず、彼は兎の遺伝子が強くなった、赤い目に額には夜空を主張する月の模様、体を闇にとけ込ませたブラッキーに属するからである。彼は、自分にしか聞こえない何者かの足音を耳に入れた後、舌打ちをし、自分の推測を言い放った。俺は、彼の言葉を聞いて疑問を浮かべた瞬間、彼が俺から離れ、俺に“死に損(ぞこ)ないめ!!”と言い放ち、暗闇の森の中を走り去っていった。“はぁ…はぁ…。助かった。誰かはわからないが、感謝する。”彼が走り去った後、仰向けになりながら呼吸を落ち着かせて、自分を救ってくれた見えない者に感謝していると、背後から草を踏む音と何者かの声が聞こえ始めた。

ガサッ ガサッ
「師匠、今こっちから声が!!」
「ああ、レオ確かめに行こう。何が起きているか気になるからな。」
ガサッ ガサ
「く…そ…。新手か…。」

“今は、闘える状態じゃない。”俺は、背後からの音と耳に入れるとすぐに、“今度こそ、殺されるかもしれない。”という懸念を抱き、腕時計に着いているリタイアボタンに手をかけ、【闇】のステージから姿を消した。

「あれ?おっかしいな…。確かにここだったと…思うんですけど…。」
「私もそう思う。うん…、妙だ。足音も立てないで、その場を去る生き物なんているのか?」
「でも、無事だといいですね。さっきのは、声っていいましたけど、悲鳴だったと思いますし…。」
「ふふ、助かってるといいな。さぁ、もう行こう。」
「はい!!」

539適当:2013/02/24(日) 12:21:37 ID:Dbksyv72
俺は、暗闇の森から無事に元の部屋へ戻る事が出来た。俺は、この時初めて、この味気ない真っ白な監禁部屋に対し、唯一安らぐ事が出来る空間であったのだと気づかされた。それ程、先程の死闘から来る感情は強く印象に残るものだった。俺は、暗闇の死の世界から、無事生還出来た事への喜びを表すように、胸をなでおろしていた。

「はぁ…はぁ…。ふぅ、無事に戻ってこれた…。あのまま…殺されるかと思ったな。」

俺は、ため息をつき、更に安心感を感じ、目に装着している黒いレンズの機械を取り外し、自分の目に直接安らぎの空間の光景を入れていた。自分を襲う者の存在は無く、自分一匹だけしか部屋にいない事を確認し終え、俺はもう一度安堵(あんど)のため息をついた。自分に少し落ち着きを取り戻させると、俺は【闇】の間の番人であり、規則を無視して俺の息の根を止めようとしていた彼との闘いを振り返った。思い出してみると、いくつかの疑問点が思い浮かんだ。まず一つは、彼がどうして俺の刀での技を、鏡に写したように真似する事が出来たのか。という事である。“ブラッキーって、オウム返しが使えたか?いや、使えないハズだ。オウム返しじゃない…。だとすれば、一体あれは何なんだ?”通常相手の技を真似する技は、鳥獣(鳥ポケモン)に属する者達である。彼は、鳥ではなく兎に属する。この技を行う事は出来ないハズである。これは、万事(ばんじ)の掟(おきて)として決まっていて、努力あるいは、天才肌でどうにかなるものではない。だが、彼はこの技と同じ効果の別の技を俺へ仕掛けて来た。彼が仮に、鳥獣(鳥ポケモン)であったとして、オウム返しが使えると考えても、もう一つ矛盾点が生じる。それは、真似の対象となる技の威力があまりにも大き過ぎるという事である。俺は、彼よりも10もレベルが下。すなわち、彼との力の差は歴然である。俺の技を真似しても、俺にこんなにも大きなダメージを与える事は出来ない。当然だが、彼の方が俺よりも力はある。だが、彼がいくら力を出し切って俺を切りつけても、刀とナイフでは与えるダメージが違い過ぎるのである。

540適当:2013/02/24(日) 12:25:51 ID:Dbksyv72
俺が、武器として用いている刀は八つの波紋がついた、打撃のみではあるが、通常の木刀でダメージを与えるよりも“8倍”威力は上だ。そして、彼が武器として用いているナイフ(おそらく軍用ナイフだろう。)は一つのナイフに4つの波紋。俺の武器と同じ打撃(のみとは言えない。現に俺は、もう一つの色の波紋で殺されそうになった。)で、通常の木の小手刀…どちかというと十手(じって)と言う方が正しいだろうか。通常の十手(じって)でダメージを与えるよりも5倍威力は上だ。彼は、実は二刀流ナイフ使いであった事が発覚したので、10倍といった所か。倍数では確かに、俺の刀を上回る。だが、よく考えてみて欲しい。金属製の切れない刀と十手(じって)、どちらが威力が上だろうか。当然刀である。十手(じって)は、刀の数分の一の威力しか無く、リーチも短い。リーチが短い故(ゆえ)に、刀で行う技は、十手(じって)ではとてもとは言えないが、通常真似する事は出来ないハズである。いくら接近戦闘に長けているからといっても、二足の俺よりはやや接近戦闘力が劣ってしまう四足型。俺の技を真似しても、大きなダメージを与えられない。俺は、二足で刀を用いているので、対戦相手をダウンさせるぐらいは出来る。彼は、四足でナイフを用いている。四足に属する者は、銃は上手く扱えても、片手で握って相手を切りつけるような武器は上手く扱えない。並ならぬ訓練を重ねても、やはり与えられるダメージは知れているものである。四足は二足よりも、片手武器(片手で扱える拳銃は除く)を扱う事は難しい。その為、相手を強く切りつけ過ぎると、片手で握っている武器を落としてしまう。彼の握力がもの凄いとしても、長時間強力な攻撃を持続させる事は不可能に近い。四足はそもそも、手で握る事にあまり適してない生き物である。軽いフォークやスプーン程度なら長時間でも握る事は出来るだろう。だが、彼が扱っている武器は軍用ナイフ。軍用ナイフは、何度切りつけても折れないように、構造がしっかりしている為、最低でも400〜500gはある。フォークやスプーンは、ナイフの重さは遥かに下回る。故に、軍用ナイフを長時間装備し続けるには、二足の何倍もの、握る筋持久力が必要なのである。四足が二足よりも、握力を持続させる筋持久力があるとは思えない。

541適当:2013/02/24(日) 12:29:49 ID:Dbksyv72
更に、彼のナイフ攻撃の威力があり過ぎる矛盾点はもう一つある。それは、相手を蹴り上げた時、相手の体を切りつける高さまで飛び上がった時から、切りつけた後に地面に降りる時までの滞空時間が限られているという事である。極僅(わず)かな滞空時間で俺は、攻撃の対象へ、素速く、力強く何度も斬りつける。刀の技を行った後は、自分の両腕にかなりの疲労が溜まる。その為連発は出来ない。二足の俺ですら限られた滞空時間で相手を何度も斬りつける事が容易では無いにもかかわらず、彼はいとも簡単に、俺と同じ事を絶大な威力込みでやってのけたのである。俺に技を行った後、俺の倍以上の疲労が溜まっている前足で、ナイフを持ち俺の喉元(のどもと)へナイフを突きつけた。四足が激しい疲労を伴(ともな)う技の後に、ナイフを握り続けるのは、いくら訓練を重ねても無理だろう。しかも彼は、一本のナイフを両前足で持って行うのでは無く、二本のナイフを用いている。二本のナイフを握る事を持続させるには、相当の集中力と筋持久力を必要とする。重いナイフを一本、一本交互に動かし、攻撃対象の腹部に何度も十字を描くのも難しい。俺は、彼が自分の刀で行う技を真似し、威力も伴(ともな)わせた事の複数にわたる矛盾点を突き止め、刀の刃先に、天井から降り注ぐ真っ白い光が反射する様を眺めながら、首を傾げて自分の推測を呟(つぶや)いた。

「やはり、アイツは何かがおかしい…。異常過ぎる。力だけで、俺の連続十字切りの威力を上回る事は出来ない。これだけは…どうにもならない。」

“まぁ、アイツにとてつもない集中力が無かったとは言えないが、集中だけで発揮できる力の範囲はとうに超えている。”俺は、彼が自分の技よりも威力を上げて、自分の技を真似出来た事を、あごに手を添えて考え始めた。

542適当:2013/02/24(日) 12:34:00 ID:Dbksyv72
“うん…。威力か…。ありえない威力の技…。何か引っ掛かるな。”

頭を働かせてみると、彼とほぼ似たような現象を目の当たりにした事があるのではないかと考え、今日(こんにち)の死闘を除く、監禁された初日から今日までの各番人との死闘を思い出した。すると、彼女達も彼と同じように体の大きさからは通常出す事が出来ないであろう技が使えるという事に気が付いた。前々からおかしいとは思ってはいたが、“もしかしたら、ブラストバーンも、ハイドロカノンも、イーブイ進化系にあたるブースターやシャワーズは使えるのかもしれない。たとえ、威力が高すぎて体の割には合わないとしても…。”とも考え、彼女達が絶大な威力の技を放つ事が出来るのは、強さ、そして進化に長(た)けた特殊な種族によるものだと結論付け、おかしいとは思わなかった。だが、今回の死闘の対戦相手の彼の異常さを見て考えが反転した。“スターもシャーズも、軍のやつらに何か改造手術でもされたんじゃないか?だとすると、アイツの異常とシャーズとスターが一撃必殺技を使える事の異常さに合点(がってん)がいくな!!”俺は、結論付け直し、【氾濫】の間の番人から聞いた、最も危険な情報を思い出し、最も危険な情報に出てくる、最重要者の行いに、声には出さなかったが、驚きを隠せないでいた。

“なんてヤツだ…。隊員の体を改造するなんて…。”

心の中で唖然とした表情を浮かべ、俺は【氾濫】と示された扉へと目を向けた。現実世界でも心の中でも、扉の番人である彼女に向けては、何も言わず、しばらく【氾濫】と示された扉を見つめた。“シャーズ、君は改造されたんだな…。ボスの道具にされて…かわいそうにな。”扉から目を背けて、下をうつむき目を閉じて、心の中で【氾濫】の間の番人である彼女を憐(あわ)れんだ。“アイツは改造されていた。だから、アイツはありえない程の威力の十字切りが出来たんだ。”【氾濫】の間の番人である彼女を憐(あわ)れみ終えた後、【闇】の間の番人である彼が、ありえない現象を引き起こした事に納得し、俺は、次の疑問点に頭を働かせた。

543適当:2013/02/24(日) 12:44:18 ID:Dbksyv72
「俺の所へ向かって来ようとしていたのは、本当に敵だったのか?敵と決めつけて、確かめもせずここへ逃げて来たが…。」

俺が次に疑問を抱いたのは、彼が俺をやむを得ず拘束解除するきっかけとなった、謎の者の声と足音である。彼に拘束されていた時は、俺には足音すら聞く事は出来なかったが、彼は俺が後(のち)に耳にした、草々を踏みつける音を先に耳にした為、俺の拘束を解除し一匹で逃げ去って行ったのである。なぜ、彼が俺よりも遠い距離の者の足音を聞く事が出来たのかは、言うまでもないだろう。彼が、音に敏感なのは、【零下】の間の番人と同じ兎の遺伝子が強く出ているからである。兎というのは、俺のような生き物(ポケモン)の中の兎獣(とじゅう)を除いて草食動物である。まぁ、森の中に住む文化的な生活を営(いとな)んでいない者(野生のポケモン)は、草食なのかもしれないが、それは今考えない事とする。草食動物は、肉食動物に食べられてしまう。当然、肉食動物が密(ひそ)かに忍び寄る僅(わず)かな足音も聞き分けられなければならない。故に、兎のような草食動物全般の多くは聴覚(みみ)が優れている。彼も【零下】の間の番人である彼女も、文化的生活を営んでいて、肉食動物には食べられる事は無いので、耳が敏感になる必要は無いが、動物の兎と似たような姿をしている為、おそらく兎と同じ遺伝子も体の細胞の中には、組み込まれているのだろう。であるならば、当然聴覚(みみ)が優れる生き物となる。俺が、文化的生活を営んでいて、敵に食べられる事は無いが、動物のネズミと似たような姿をしている為、ネズミの遺伝子が体の細胞に組み込まれていて、嗅覚(はな)が優れる事と同じ事である。彼は、兎の遺伝子が体の中に組み込まれているおかげで、俺よりも先に何者かが自分の元へ忍び寄る足音を聞き分け、俺の元から去っていった。彼が走り去った後、俺にも彼が聞いたハズの足音。更に、足音立てているであろう者の声まで耳にする事が出来た。足音の主は、何人(なんぴと)…いやおそらく人では無いだろう。あんな暗い森の中を夜中に、ライトも照らさずに歩いているワケがないからである。だとすれば…動物か、俺のような生き物(ポケモン)か…。俺が人では無いと断定出来たのは、もう一つの事のおかげでもあった。

544適当:2013/02/24(日) 12:51:21 ID:Dbksyv72
それは、鼻。つまり、嗅覚である。俺を含めて、文化的な生活を営む者(ポケモン)達は、人間に雇われて生活している者もいれば、人間と同じ街に独立して住居を構え、生活している者もいる。俺は、後述の方である為、人間の匂いは頭の中で記憶している。俺が何者かの足音と声を耳にした時に感じた匂いは、人間では無かった。俺が感じた匂いは、犬系に属する生き物が放つ個性的な匂いである。俺は、姿を見たワケでは無いので、この位しか言い切る事は出来ない。“犬か犬獣(犬型のポケモン)か…。本当に悪いヤツだったのか…。”俺は、次に謎の者が敵か味方であるかを考えた。謎の者は、声質からして雄であろう(声がたとえ雌っぽくても、匂いですぐに分かるのだが。)。そして口にした台詞(セリフ)は、“師匠……。”である。謎の者が口にした台詞(セリフ)はよく覚えていない。印象に残る言葉しか覚える事は出来なかった。冷静に聞けば、全て覚える事が出来たかもしれない。だが、俺には、冷静さを保っている余裕は無かったのである。俺があの時いた場所は、“命を奪ってはいけない。”とルールが定められた街中では無い。自分が考えている常識など全く通用しない野生の中である。嗅いだ匂いが、猫とか猿だったならば、もう少しとどまっていたかもしれない。だが、俺が鼻で判断したのは、犬、もしくは犬獣(犬型のポケモン)。犬は、肉食動物。俺をエサと認識して、食す予定だったかもしれないのである。せっかく、彼の拘束から解放され命が助かったにもかかわらず、姿を見る為にあのままその場にとどまり、姿を見せた者に食い殺されては元も子も無いのである。謎の者が口にした台詞(セリフ)は、“師匠、今夜の晩ご飯を見つけました。”だったかもしれないのである。謎の者が呼びかけた“師匠”という名を持つ者の匂いは、ハッキリ言ってわからなかった。匂いの重点的な所だけあげるなら、まず犬、次に猫…。後は、わずかに猿のような匂い。これらが混ざり合い俺の鼻に感じさせたので、どんな生き物なのかは検討がつかない。もしかしたら、伝説種族(伝説ポケモン)に属する者だったかもしれない。犬と猫と猿が組み合わさったような生き物がいるとすれば、前述で述べた種族であってもおかしくはないだろう。俺は、謎の者と共にいる者(ヤツ)の姿を想像出来るかと言われたら、“無理だ”と答える。よく考えて欲しい。犬と猫ならまだまだ想像をつける事が出来るだろう。

545適当:2013/02/24(日) 12:58:08 ID:Dbksyv72
だが、そこに猿が混じってはもう想像のつけようも無い。そもそも、組み合わさる遺伝子がおかしいのである。今、冷静になった所で考えてみると、得体の知れない匂いと自分を食い殺す者の匂いを嗅ぎつけて、“これは敵に違いない!!”と決め、暗闇の森の中からすぐに抜け出したのだと思っている。俺は、鼻が利く鼠獣(そじゅう)【ネズミ型のポケモン】に属したおかげで助かったと、以上の事から思い直すも、自分の本当の願望を口にしてしまっていた。

「どんな姿だったんだろうな。イヌとネコにサルか…。」
スゥー ハァ…
「見たかったな…。きっと、すごいヤツだったんだろうな。」

俺は、深呼吸にも見える後悔のため息を一つ吐いて、命が助かる事とは反して、“死んでも良かったから見れば良かったか?”と自分に疑問もぶつけてしまっていた。命が助かる選択肢を、素早く的確に選択したはずなのに、俺は目線を落として後悔の念にかられていた。犬と猫と猿の遺伝子が混ざる生き物。そんな生き物は、一生の内で中々目にする事が出来ないだろう。“助かったのに、俺は何を考えているんだろうな。”自分が、なぜこんなにも強い後悔に駆られているのかがはっきりと理解出来ていたが、謎の者達の姿を見てしまったなら、自分が一番最優先しなければならない事が出来なくなっていたともう一度考え直し、“なんてバカな事を考えているんだ!!”と自分に強く叱責(しっせき)を行い、後悔の念を消そうとしていた。何度か、自分に叱責(しっせき)を行っている内に、“姿を見たい!!”という強い願望から生み出された、“見れば良かったな。”という後悔が、見事に消え去っていった。後悔の念を消せば、本望が強く見えてくるし、感じられる。俺は、【闇】と示された扉へと目を向け、自然と笑みをこぼし感謝の言葉を呟(つぶや)いた。

546適当:2013/02/24(日) 13:00:44 ID:Dbksyv72
「誰かは、知らないが君達のおかげで俺は、アイツに殺されずに済んだ。ありがとう、感謝する。」

俺が殺す者と思った、謎の者達に感謝したのは、謎の者達が彼に、彼を警戒させる足音を立ててくれたおかげで、自分自身の命が今時(こんとき)まで続いているからである。謎の者達が現れなければ、俺は彼に喉元(のどもと)を小さい刃物で切り裂かれ、とっくにこの世にいないだろう。俺が巻いているハチマキは、絶対に死なないと謳(うた)っているが、どれ程のものかは確証出来ないし、検討もつける事は出来ない。絶対に死なないハチマキがどうゆう仕組みになっているかを推測するとすれば、特殊攻撃を軽減すると言った所であろうか。骨が折れる、刃物で切りつけられた時の傷など、体に直接ダメージが伴(ともな)う攻撃は、軽減はおそらく無理であろう。と考えるなら、彼に拘束され、彼に突きつけられたナイフで喉元(のどもと)を切り裂かれるなら、俺は即死しただろうと考えられる。俺は、彼に力で勝つ事は出来ない。彼を押しのけて、自分で体勢を立て直すなどとうに不可能なのである。故(ゆえ)に、俺が今時(こんとき)まで生き続けるには、何者かによる、彼の行動を止めるきっかけがかかせない。“ふぁ…。眠いな。普段は慣れてないから仕方が無いか。”命からがら助かったにもかかわらず、呑気(のんき)に欠伸(あくび)をしている様を見た者は、誰であろうと、“気が抜けてるな。”と思うかもしれない。が、俺も生き物だ。食欲、性欲、睡眠欲。この3つのどれかが欠けていれば、体が自然に欲してくる。体が欲して来るので、俺にはこれらの欲に逆らう事は出来ない。まぁ、二つ目は自分の意志もあり、無理矢理もあって今の所、というか今後一切考えないだろう。これとは、別に自分の愛する雌のが今どうしているかは考えるが、瞼(まぶた)が重くなって来たので、それももう考えない事にする。俺は、背中に結んであったさやに刀をしまい、自分の横へと置き、体の思うがままに眠りの世界へと旅立っていった。

547適当:2013/02/24(日) 13:05:15 ID:Dbksyv72
Day14

パチッ…
「ふぁ〜あ。ああ…。」

俺は、唯一の生活空間である真っ白い部屋で目を覚ました。起き上がらずに、片方の目だけ閉じて大きく口を開けて欠伸(あくび)をし、小さくため息に近い声を上げた。目を覚ましてすぐに、ため息をついたのは、“小鳥でもさえずっていればな…。”と心の中で願っていたからである。監禁されていなければ、今頃毎朝の目覚めには、爽(さわ)やかな日の光が差し込み、日の光に負けるまいと小鳥達が合唱し、自分達の存在を知らしめる、二つがそれぞれ主張しあう様を見る事が出来るだろう。小鳥の声が聞こえる所に住むかどうかはわからないが、少なくとも日の光ぐらいは浴びる事が出来るはずである。各番人が待ち受けるステージの中で、お気に入りのステージがあればそこで代わりの生活空間を作りたいが、これらのステージには【18:00〜6:00】までは出入り不可能というルールがある為、それは叶わない。ルールを無視しても、必ずこの部屋に戻される事であろう。体力が闘えない状態まで低下すれば、自然にこの部屋へ戻されるのだから、当然ルールを破ってお気に入りのステージに居座り続ける事は出来ないだろう。お気に入りのステージをあげるとするなら、【若葉】の間の番人が待ち受ける草原2のステージである。木陰もあるし、月の光も浴びる事が出来る。雨が降ったなら、この部屋に再び戻って来ればいいだけである。環境もそうだが、ステージの番人も親しみやすい、あどけない表情を持つあの少女である。彼女は、純粋な可愛さに、純粋な性格を持っている為、見ていても、話していても飽きが来ない。今、俺に愛する雌である“綾”がいなければ、あの少女を彼女にしたいと思うであろう。現に、彼女から求められた性交も、気がつくと途中から自分の意志で行っていた。親しみやすかったと言わなかったのは、まだ生きていて欲しいと願っているからかもしれない。会いに行って、生きているかどうかを確かめに行く事は出来る。だが、行った所でこれから死ぬ運命をたどる…。死ぬ運命へ導いた者は、自分であるのに、あの少女にどんな言葉を掛けられようか。何も声は掛けられないであろう。俺に、“俺の命を使え”と示すような、彼女と中身を入れ替えるが出来る能力があれば、彼女へ会いに行く事が出来る。

548適当:2013/02/24(日) 13:11:39 ID:Dbksyv72
だが、俺にはそんな夢のような能力は無い。能力があったとしても、彼女が俺として生きる事を選ぶかどうかである。俺の立場は、監禁される立場である。“命が助かるが、自由の身とはなれない運命”を選ぶか、“殺されるが、少しは自由が利く運命”を選ぶか。俺の推測だが、あの少女なら“いやだ。”と舌を出して可愛らしい表情で拒否の意思を示しそうである。想像して楽しむのもいいが、想像した所で現状が変わる訳でもないので、全く無意味である。話が大分それてしまったので、理想の世界から現実に戻る事にしよう。俺は、“小鳥がさえずっている声が聞きたい”という叶わない願望を、心の中でほんの少し願いつつも、現在の時刻が気になり腕時計へと目を向けた。

チラッ…
【15:00】
「3時だとぉ!?」

俺は、腕時計に表示されている予想の域をはるかに超えた時間帯の表示を見て、現実世界で目を見開き、部屋中に声を響かせて驚いてしまっていた。“3時か…。なぜだ?”俺は、先程願っていたはずの叶わない願望を忘れ、想定外の時間帯に起きてしまった原因を考えた。冷静に考えてみると、一つだけ原因を見つける事が出来た。それは、【闇】の間の番人である彼から受けたダメージが、自分が思っていたよりもかなり大きかったという事である。彼からダメージをもらったとはいっても、彼から受けた技は、【バック転・けたぐり】と【コピー連続十字切り】である。これだけ(まぁ、連続十字切りは結構ダメージがあるが、彼は刀よりも数倍威力が劣る軍用ナイフを使っているので、普通の技と同等の扱いとする。)の技を受けただけで、半日以上も無駄にしなければならない程の休息が必要だったのである。“マズイな…。アイツからのダメージが大き過ぎる…。次に負けると本当に殺されるんじゃないか?アイツは、俺を殺したがっている。アイツは、今度は本気で向かってくるハズだ。”力の差を思い知らされるのは、非常に恐ろしい事である。俺は、食事ルームへと駆け出し、急いで食事を済ませた。食事の後、すぐに中央へ掛け出して戻り、そばに置いてあった刀を拾い、一心不乱に刀を振り始めた。

549適当:2013/02/24(日) 13:16:59 ID:Dbksyv72
ブン ブン…
「はぁ!!たぁ!!はぁ!!」

右へ左へと、刀を一閃(いっせん)させる攻撃を何度も行った。“連続十字切りは見切られた。新しい刀の連続技を考えなければ!!”俺は、先程よりも右へ左へと刀を一閃(いっせん)させる攻撃を速めた。

ブン ブン ブン ブン…
「はぁ!!たぁ!!はぁ!!はぁ!!はぁ!!…」

何度、左右交互に振っただろうか。気がつくと、俺は全身汗だくになっていた。スーツのすぐ下の自分の肌からは、かなりの熱を帯びている事が感じられた。“休んでいるヒマはない!!勝たなければ、殺されるんだ!!”俺は、極度の疲労にとりつかれつつも、自分にムチを打つように言い聞かせ、俺は刀を横へ向けて構え、体勢を低くして足腰に力を溜め始めた。

「はぁぁぁぁぁ!!」

“よし、たまった!!果たして上手くいくか?”俺は、部屋中に声を響かせながら、足腰に力を溜め終えたと感じ取り、新しい刀の連撃技の技名を叫び、足腰に溜めた力を解き放って、低空飛行で勢いよく前方へ進みながら、左、右へと刀を振った。

「空中十閃(くうちゅうじゅっせん)!!はぁ!!はぁ!!はぁ!!はぁ…」
ブン…スタン
「はぁ…はぁ…。よし、十じゃなくて八ぐらいだったがよしと…するか…。」

九回目横へ刀を振ろうとした時に、地面に近づいたので、俺は刀を振る事をやめて、地面を両手に着き無事に着地を成功させた。着地をし終えた後、激しく呼吸を行いつつも実際に空中に浮いている状態で、横に刀を振る事が出来た回数を言い聞かせ、自分を満足させていた。“これは、アイツもコピー出来るハズがない!!ブラッキーがランチャーヘッドバッドなんて使えるワケがない!!”肩で呼吸しつつも、俺は少しの希望を見出す事が出来たので、喜びの笑みを浮かべた。“一応、他の技も練習しておくか。練習して損という事は無いハズ。”呼吸を落ち着けた後、俺は刀を背中に背負(しょ)う鞘(さや)にしまい、硬質化させた尻尾を前方に進みながら、何度も振った。

550適当:2013/02/24(日) 13:21:32 ID:Dbksyv72
「エンドレスブレードテイル!!はぁ!!はぁ!!はぁ!!はぁ…」
ガクン
「うう!!はぁ…はぁ…。無理だな。疲れ過ぎた。」

先程の激しい動きが足に来てしまったのか、五回目を振りかぶった所で、膝が悲鳴を上げ、限界を訴えるように、俺の意志を無視して折れ曲がった。膝が折れ曲がり、俺は膝に地面をつけ、自分に“これ以上のトレーニングは無理だ。”と言い聞かせた。“まぁ、この二つがあれば、負けないだろう。ブラッキーがブレードテイルを使えるのなら、コピーされるかもしれないが、その前にアイツの体力を0(ゼロ)にしてしまえばいいだけの事だ。”歴然な力の差がある者の体力を無くす事は、容易ではないが、俺は、激しいトレーニングから来る満足感から豪語してしまっていた。“よし、風呂に入って寝るか。”俺は、呼吸を完全に落ち着かせ、静かに自分の体の熱を感じながら、シャワールームへと歩を進めた。シャワールームへとたどり着き、スーツを脱ぎ、シャワールームの中へと入り、先程の激しい特訓により、体から噴き出した汗を流し始めた。

キュッ
ジャアアア…
キュッ

俺は、体を洗い終えお湯の蛇口を片手で止め、シャワーの勢いを断った。“よし、スーツを着て寝るか。疲れたまま、アイツに挑んだら負けてしまうからな。”シャワールームから出て、俺は体を震わせて水気を飛ばした。“なんか、俺は犬みたいだな…。”俺は、毎回体を洗い終えると用意されているタオルは使わずに、体を勢いよく震わせ水気を飛ばしている。水気を飛ばす時の姿勢が、水に濡れた犬が水気を飛ばす様に似ていたので、俺は水気を飛ばし終えた後“野蛮だな。”と自分の行いを嘲け笑った。“まぁ、いいか。この方が早いからな。”俺は、汚れたスーツを手に持ち洗濯機が設置されている場所へ歩を進め、洗濯済みのスーツと汚れたスーツを交代して、汚れたスーツを洗濯機の中へと放り込んだ。“やる事も、終えたし寝るか。”洗濯機を作動させ、洗濯機の作動音へ耳を貸すことなく、中央へと歩を進め、スーツを着て仰向けになり、【闇】の間の番人である彼との戦闘までの、少し短い休息を取った。

551適当:2013/02/24(日) 13:25:23 ID:Dbksyv72
Day14【20:40】

俺は、短い休息を取り終えて目が覚めた。目が覚めると、夕方の時間帯に行った激しい特訓の疲れが、ウソのように消えていた。疲労の代わりに感じたのは、自分の腹の空きであった。俺は、起き上がって、この魔法のような感覚に驚いていながらも、不思議だとは思わなかった。なぜ、疲労が消えて腹が空くかは誰だって大方予想はつくし、俺は予想では無く完全に理解していた。休息を取ると、体の中の栄養分を、傷ついた細胞や疲労している筋肉に行き渡らせて体を修復する機能が存在する。この機能は、生き物が誰しも持っているものである。故に、俺の体は、昼食を摂った栄養分を使い、夕方の時間帯に行った激しい特訓の疲れを取り除いたという事になる。“当たり前とわかってはいるが、やはりすごいな。”世の中に起こる現象は、どうゆう仕組みで起きるのかを理論で説明する事は出来ても、理論通りに事が進み実感…。という事は、容易なものではない。理論はあくまで、現時点で考えられる“現実に現す事が出来る唯一の方法”としてでしか無く、必ずしも正解だとは限らない。理論を述べても、正解でない例の一つとして、エスパータイプが持つ、超能力がそれに当てはまる。エスパータイプが技に用いる“念”は、科学では証明する事は出来ない。念力の仕組みは、結果を見て“こうでは無いだろうか。”という予想しか出来ない。絶対に証明出来ない“念の力”による代表的な技として、“テレポート”があげられる。テレポート…つまり瞬間移動は、科学の世界では“宇宙の数十個分のエネルギーを必要とする”と述べられていたが、エスパータイプがこの現象を技として容易にこなした事で、“必ずしもそうではない。”と結論付けられたのだ。かの科学の天才の人間も言った。“証明不可能と思われた相対性理論は、完全に証明する事が出来ても、念の力は証明出来ない。念の力は、我々が不可能と思っていた現象を容易にこなしてしまう不思議な力として、我々は認めるべきではないだろうか。”と。天才科学者である彼の意見に反する者も当然の如く現れた。彼らは、彼の意見を覆してやろうと、必死に念の力の証明の研究を行った。だが、一向に証明出来ず、結局時間の無駄であったのだ。否定する者達は否定する者達の力により、唯一導き出せたのが、念という“形の表せないエネルギーが実在する”という事だけだ。

552適当:2013/02/24(日) 13:29:11 ID:Dbksyv72
だが、今となっては、否定する者達の研究の成果から導き出した理論も、“実は違うのではないか”という意見も出始めている。以上に述べた事が、理論を述べても正解には当てはまらない事例の一つである。話が大分それてしまった。そんな事はどうでもいい。話を現実に戻す事にしよう。俺は、過去に得た知識から“寝たら回復するのは、食事を摂ったから当然の理(ことわり)だ。”と判断し、体が今一番欲する事を行う場所へと歩を進めた。歩を進め終え、用意された食事を口へと運んだ。“負けたとすると、殺される…。これが、俺の一生の最期の食事になるのかもしれない。”という事が、頭の中にかすかに姿を見せていたので、俺は自分が定めた時間の許す限り、一口一口味わっていた。いつもよりも、数倍遅い速度で体の中に栄養を浸透させ終え、残す所、あまり口に入れたくは無い、恒例のあの青い液体であった。俺は、青い液体を飲みながら、自分自身の強い決意を固めた。

ゴク…ゴク…
“こんな、マズイ飲み物を最期には出来ないな。”
ゴク…

“いや、最期の飲み物にしてたまるか!!絶対に生きて帰って来てやる!!”俺は、言葉では形容もしたくはない液体を飲み終え、液体が入っていた容器を食事のトレーに置き終えて自分に強く言い聞かせた。“よし、行くか。絶対にアイツを倒してやる。もう誰も殺させやしない。”誰も殺させはしないとは、言っても彼が一体どの位の生き物を殺めて来たかはわからない。であるから、誰もというのは自分も当然の如く含まれる。いや、あんなに血に飢えているのなら、あんなに残虐(ざんぎゃく)な性格なら、彼は、自分が一番欲する事を何かに制限されて生きて来たかもしれない。だから、あんなにも俺を殺したがっているのではないだろうか。だとすると…。俺だけが“誰も”という言葉の対象となるだろう。俺は、彼に“絶対に殺されるものか!!”という思いだけを心の中に宿して中央に歩を進め、刀を背中へと結びつけた。黒いレンズの機械も目に設置し、すべての準備が整え終えたので、残虐(ざんぎゃく)な彼と闘おうと、【闇】と示された扉へ歩を進めた。だが、俺の足取りは決意を固め終えた後だとはとても思えない、重い足取りであった。

553適当:2013/02/24(日) 13:33:23 ID:Dbksyv72
スタン……
スタン……
スタン……

なぜ、こんなにも重い足取りなんだろうか。食事を摂り終えた後の強く固い決意はどこへ行ったのであろうか。俺は、軽快な足取りで向かえない自分に、原因を訊ねてみた。すると、一つの答えが浮かび上がった。“恐怖”という感情。“彼に殺されたくない”という強い拒否の意思。しまいには、“ここから脱出(で)られなくてもいいから、まだ生きたい!!闘わないでおこうか…。”という常軌を逸(いっ)した感情まで抱き始めていた。俺に、食事を摂った後の強い決意を台無しにするが如くの三つの感情を抱かせたのは、彼が行った行動と彼が放って来た言葉であった。「I never give you side again.」「I will not talk with you.Die come down!!」「お前と話すつもりはない。なぜなら、お前を今から殺すから。」彼が放った言葉は、その意味を持っていた。俺は、彼の言葉と彼の恐ろしい表情の光景にとりつかれ、一匹でに苦しみ始めた。

“うう…。くっそ!!なんで…。なんで…。なんで、扉が開けられないんだ!!”

俺は、【闇】と示された扉の前までは三つの思いに駆られた、重い足取りでもなんとかたどり着く事は出来た。だが、彼と闘うステージに移動する為の行動を起こす事は出来なかった。“死にたくない…。死にたくない…。”俺は、彼に抱く恐怖の感情を、心の中には留めておけず、ついには現実世界にまで出してしまっていた。“うぅ…。”扉のノブには手をかけられるものの、彼に抱く恐怖の感情が強すぎた為か、捻り回す事は出来ないでいた。“今闘うべきは、アイツじゃない。アイツを恐がっている自分…自身…。”俺は、自分が現時点で最優先すべき敵を見つけ、奮闘を始めた。

554適当:2013/02/24(日) 13:36:31 ID:Dbksyv72
“行ったら死ぬ…。お前は、まだ勝つ事は出来ないかもしれないぞ?”
「くっ…。」
“命が惜しいだろう?”
「うう…。くっそ…。」
“行かない方が…”
「うおおおお!!黙れ!!黙れぇぇぇ!!止まった所で何になる!?今行けなければ、もう一生行けないんだ!!」

“はぁ…はぁ…。くっそ!!ふざけやがって!!”俺は、現実世界で声を張り上げ自分の弱い意志を消し去った。もう一つの意志を消し去った後、気がつくと俺は少々の激しい息切れを起こしていた。しばらく、呼吸を整える事に集中し、自分の胸にそっと手を当て、自分自身に言い聞かせ始めた。

「大丈夫だ。勝てる。お前なら…俺ならやれる。だから、安心しろ。死にはしない。こんな所で、お前は死ぬようなヤツじゃない。そうだろう?」

“そうだ。俺は、こんな所では死なない!!俺は、死にに行くんじゃない…。生きる為に闘っているんだ!!”俺は、自分自身の安心させる言葉に、強い意志を込めた言葉で返し、意を決して、恐怖の対象である彼が待ち受ける【闇】の間へと歩を進めた。

555適当:2013/02/24(日) 13:40:06 ID:Dbksyv72
俺は、【闇】の間へとたどり着いた。“あれ?今日は、フクロウと鈴虫の鳴き声がしないな。”【闇】の間にたどり着くと、すぐさま昨日聞く事が出来た、二つのいやしの鳴き声が無い事に気がついたので、黒いレンズの機械を作動させ辺りを見回した。

「あっ…。ウソだ…。ここは、昨日俺が来た場所じゃない!!」

目の中に、黒いレンズの機械が映した光景が入った瞬間に、俺は驚き、声を上げた。俺が見た光景は、昨日の光景とは全く異なっていた。木々が支え合うように密集していた森が、まるで俺を取り囲むように円状の森へと姿を変えていた。耳を澄ましても、何の生き物の声も聴くことは無かった。鼻を動かしても、草木の匂い以外は何も感じられなかった。“初めて来たステージで、アイツともう一度…闘うのか…。”俺は、自分を睨みつける木々を順に目を向けていると、三本目に目を向けた所で、視界の隅に何やら黒い影が映り込んだ。“アイツか。”ここへ来る生き物など、相手である彼以外にはいない。俺が黒い影にすぐさま目を向けると、彼は、昨日と同様に、俺を不安にさせるような邪悪な笑みを浮かべ、満足気に辺りを見回しながら、俺へ言い放って来た。

「ククク…。コイツはいい。昨日の“うっとおしい鳥”の鳴き声も“うっとおしい虫”の鳴き声も聞こえない。しかも、中心が広くて闘いやすい。それに、貴様は俺から逃げられない。ククク…。」

“逃げる…か。”彼が言う“逃げる”とは、おそらく密集しあった木々に俺自身がのぼって、彼との戦闘を一旦中断する事であろう。俺は、彼が言い終えた後の邪悪な笑い声を耳に入れ、彼へ自分の強い意志を言い放った。

556適当:2013/02/24(日) 13:41:51 ID:Dbksyv72
「逃げるつもりはない。お前を倒しに来た。昨日のようにはいかない。」
「とっておきでもあるのか?」
「ああ。これで、お前を倒す。お前が攻撃出来る時は、もう存在しない。」

俺は、不敵な笑みを浮かべる彼へ、宣戦布告を行った。彼は、俺の言葉を聞いて高らかと笑い、俺に脅しをかけて来た。

「倒す?ハハハハハ!!いいだろう。その言葉だけは受け取ってやる。貴様は、今日俺に殺されるのだからな。俺の欲の糧(かて)となるがいい。」

“糧(かて)…。俺は、死にに来たんじゃない。”俺は、自分の思いを軸にして彼へ強く言い返した。

「お前には殺されない。殺しで満足するお前を“更正”させてやる。」
「更正?ククク…。ハハハハハ!!」
カチッ
「では、始めるとしようか。お前が俺に勝ち、宣言通りになればいいがな。」

彼は、俺の言葉に首を傾げて、俺の言葉を切り捨てるように笑い、黒い軍服の右ポケットに前足を忍ばせ、俺へ邪悪な笑みを向け、言い放って来た。俺の言葉の数秒後、静寂で奇妙な形の森に恒例の戦闘開始の合図が鳴り響いた。

557適当:2013/02/24(日) 13:45:48 ID:Dbksyv72
『READY…GO!!』
「行くぞ小僧!!殺してやる!!」

戦闘開始の合図を耳にした彼は、俺へ殺意をむき出しにした目線を送り、俺へ走って向かって来た。“ランチャーヘッドバッドは避(よ)けられる。なら、コイツはどうだ!!”俺は、彼へ駆け出し、彼が俺の元へたどり着く数歩手前で突然立ち止まり、硬質化した尻尾を勢いよく振った。

「返り討ちだ!!カウンターブレードテイル!!」
「この技が、当たると思っているのか?」

彼は、俺の攻撃を見極めて、飛び上がり俺の背後へと回って来た。“なに!?避(よ)けられた…。あんなに走って来ているのに、どうやって。”俺は、彼が自分の攻撃を避けた事に驚いていたが、彼は俺に何の感情も抱かせる隙を与えず、軍服の胸元の専用のホルダーから小さい刃物を取り出し、俺へ切りつけて来た。

シャン
「隙だらけだ!!くたばれ!!」
「当たってたまるかぁ!!」

俺は、素早くバック転を行い、彼の背後からの攻撃をかわし、背中から刀を抜き彼へ反撃に出た。

「一閃。はぁ!!」
「それも当たらんぞ!!」

彼は、俺の抜刀切りにも似た刀の一撃を前足に持つ小さき刃物で防いだ。“今だ!!さすがに、これはナイフで防げるワケが無い。”俺は、彼が攻撃を防いで満足気な表情を浮かべている所で、彼の体を何度も刀で突いた。

「連続突きぃぃぃぃ!!」
「ぐぉ!!ぐふぅ!!」

“よし、これは効いたハズだ。”彼は、俺の急な反撃に対応出来ず、刀の先端の打撃を肩や腹部に何度も受けてしまっていた。俺は、彼が体勢を崩すと予想し、彼を遠くへとばそうと硬質化した尻尾を振った。

「ブレードテイル!!」
ガキン

“は?ま…まさか、これでもひるんでいないのか!?”彼は、俺の硬質化した尻尾を小さい刃物で防ぎ、俺に不敵な笑みを向けて言い放った。

「クク…。小僧、今のは効いたぞ?なかなか痛かった。」
「な!?」
「受けるがいい。自分の技をな!!」
「くそっ!!はぁ!!」

彼は、腰元から別の小さい刃物を抜き、俺が刀を突く持ち方と同じ持ち方を行って来た。“まずい!!あれが来る!!”俺は、彼の次の攻撃を予測し彼が小さい刃物を構えると同時に、素早くバック転を行い距離を取った。彼から、刀が当たらない距離まで移動し終えた俺は、肩で呼吸しつつ、彼を警戒し始めた。彼は、俺が昨日とは違って慎重に攻めている様を、邪悪な微笑みで指摘した。

558適当:2013/02/24(日) 13:50:27 ID:Dbksyv72
「ククク…。そんなに恐いか?自分の技を受けるのが。」
「くそっ!!なんで、お前はアレを受けて平然とたっていられる?」
「簡単な事だ。貴様が、俺を倒す程の力は持っていないからだ。」

“違う!!本気で闘(や)っている…。なのに…なぜ!?なぜ効いていない!?”俺は、彼から距離を一定に保ちつつ、自分の攻撃が全く効いていない彼に、心の中でうろたえていた。彼は、俺が何も言い返して来ない様子を、まるで答えがわからないから言い返せないと決めつけるように、俺へ衝撃の言葉を告げた。

「では、言い方を変えよう。貴様は、俺に恐れるあまり俺を倒す程の力を“発揮”出来ていない。」
「はっ…き?」
「敵を殺す時は、気を抜くものじゃないぞ?」

“な!?くそぉ!!彼は、俺に指摘しつつ、口へ小さい刃物をくわえ俺に向けて飛び上がり距離を縮めて来た。俺は、彼の攻撃を受けるまいと、刀を彼へ振り下ろしたが、彼は小さい刃物を前足に持ち替えて、俺の攻撃を防ぎ腰元から小さい刃物を取り出し、俺に反撃を行って来た。俺は、彼の攻撃を刀で防ぎ、彼の持つ二つの小さい刃物と刃と刃を合わせ、彼を押しやろうと力を入れた。

「ぐぅぅぅぅ…。」
「ハッハッハ!!力でかなうワケがないだろう?いい加減あきらめたら、どうだ?」
「誰が、あきらめるか!!お前には、殺されない。はぁ!!」

俺は、彼には力でかなわないので、素速く後退し、彼の持つ小さい刃物が自分の刀の刃から離れた所を見計らって、彼へ横向きに刀を振った。だが、彼は一方の小さい刃物を口へくわえ、もう一方を腰元におさめ、高く飛び上がって俺の攻撃を避(よ)け、再び俺の背後を取った。俺が、驚いて彼へ振り向いた時、彼は、俺に自分の心を抉(えぐ)るような言葉を掛けてきた。

「小僧、いい事を教えてやろう。敵と闘う時は、“殺す”気持ちが無ければやられる。」
「な!?いつの間に…。」

彼は、俺に言葉を放ち終えた直後、口へくわえていた小さい刃物と腰元の小さい刃物を前足で握り、俺が最も恐れていた攻撃を行って来た。

559適当:2013/02/24(日) 13:55:43 ID:Dbksyv72
「小僧ォ!!隙なんて、与えると思うカァァ!?」
“くそっ。まだ、溜まってないがやるしかない!!”
「空中十閃!!はぁ!!はぁ!!…」

俺は、彼が自分に急接近して来たので、やむを得ず不完全な力の状態で、力を解き放ち低空飛行をしながら左、右と交互に刀を振った。だが、彼は走る事をやめて、小さい刃物を抜き、俺の攻撃を正面から受け止めた。

ガキン
「な!?」
「これは、避けられんぞ?三連バーストシャドーボール!!」
「なにぃぃ!?ぐわぁ!!」

俺は、自分の刀の刃と彼の小さい刃物が合わさる事で生じる金属音を耳にして、驚き目を見開いた。彼は、小さい刃物で俺の勢いを止め、俺が地面に体を着ける前に前足に、黒色の光を灯し、俺へ黒色の玉を連続で放って来た。俺は、彼の攻撃を防ぐ事が出来ず勢いよく後ろへ飛ばされ、背中を強打してしまっていた。“さ…逆手に取られた。くそっ…。”俺は、急いで立ち上がろうとするも、彼からのダメージを受けすぎたせいか、すぐには立ち上がる事は出来なかった。彼は、俺に目掛けて駆け出し、俺の体へ飛び乗り馬乗りを行って来た。俺は、彼に乗られた衝撃で声を上げ、彼の方へと目を向けた。彼は、今までとは違う欲を満たす事が出来る喜びを表す笑みを浮かべて、俺の喉元(のどもと)に小さい刃物を突きつけて、勝負の感想を告げた。

「ククク…。小僧、なかなか楽しかったぞ?空中十閃か。あれには、驚かされたな。」
「くそぉぉぉ!!離れろ!!この野郎ぉぉぉ!!」
「まぁ、落ち着け。俺は、貴様を殺したりはしない。いろいろ考えたが、貴様の言うとおりだ。やはり、殺すのはよくない。」

“ウソだ!!コイツは、俺を油断させて殺す気だ!!”俺は、彼の言葉を聞き入れても彼を体の上からどかそうと、彼の腕を押し返し始めた。彼は、俺に押し返されないように、前足に力を込めたまま、俺へ不可解な発言を行った。

560適当:2013/02/24(日) 14:00:19 ID:Dbksyv72
「がぁぁぁぁ!!この野郎ぉぉぉ!!」
「貴様は殺さない。今から、別の貴様を引き出してやる。」

“は?どうゆう…事だ?”俺は、彼の発言を耳にして彼に抵抗する事をやめ、彼が不可解な発言をした事に対して、頭の中を混乱させていた。彼は、俺に不可解な発言をし終えると、前足で握る小さい刃物を口へくわえ、軍服の胸ポケットから小型の注射器を取り出した。“な…なんだあれは!?俺を一体どうする気なんだ?”俺は、彼に前足に新たに握る不安要素の使用目的を問うた。

「何をする気だ?」
「ククク…。喜べ、貴様はもっと強くなれるぞ。この、リミットブレイク溶剤でな。」
「リミ…ット。ブレイ…」
「“See you again.(さらばだ、小僧。)”」
「な!?」

俺は、彼の新たな言葉を聞き入れて更に頭を混乱させていると、彼は俺を地獄に突き落とすような笑みを向けて、俺の首元へ小型の注射器の針を打ち込んだ。俺は、突然の彼の行動に驚いていたが、彼から受けた注射の中身が体へ入り、脈が速くなり、自分の意識が徐々になくなる事を感じ始めた。俺は、突然の事態に襲われるも、彼が油断した所を押しやって立ち上がり、自分の心臓を抑えて苦しみの声を上げ始めた。

「ああああああ!!」
ドクン…
「ぐわぁぁぁぁぁ!!」
ドクン…
「くっ…くそったれがぁぁぁ!!」

俺は、自分の意識が消え去り別の意識に支配されていた。意識が無くなると同時に、体中から自分が感じた事もない高圧の電流を周りへ解き放っていた。彼は、俺の変わり果てた姿を見て驚きつつも、興奮したように高らかと笑った。

「ハハハハハ!!ついに、来たか!!やはり、元帥様の言っていた通りだ!!」
フッ…
「終わったか。さぁ、俺を存分に楽しませろ。ククク…ハハハハハ!!」

561適当:2013/02/24(日) 14:05:22 ID:Dbksyv72
ふぅ…。久しぶりの下界よ。長き封印から、やっと自由の身になれたわ。黒き雷を体に纏(まと)う暴神・素戔嗚尊(スサノオ)とは我の事。いかなる理(ことわり)で、我が宿主(こやつ)の意識をのっとる事が出来たかは知らぬが、これはいい。ん?目の前に、見知らぬ者がうつけの如く(バカみたいに)笑っておるわ。一時(ひととき)、黙らせん(だまらせよう)。我は、目の前の愚か者へと問うた。

「童(わっぱ)、主か?我を目覚めさせた、うつけ(バカ)は?」
「わっぱ?まぁいい。ククク…。黒い雷のピカチュウなんて初めて見たぞ?貴様は、電気から悪に変わったようだな。」

“悪?こやつ何を言っておる?うつけ(バカ)の言うことは、やはりわからぬわ。神である我に畏(おそ)れ抱かぬ(いだかない)とは、肝(度胸)だけは認めてやろう。”と我が、 思っておったら、目前のうつけ(バカ)がまた何か吐(ぬ)かして来よったわ。

「喜べ、貴様とは本気で闘ってやる。貴様を見てると…殺したくなってくる。クハハハハハ!!」
「殺(あや)める?我を?」
「そうだ。それとも、まだ俺と闘うのが恐いか?」

神である我に、そのような口を聞くとは…。笑止千万(わらえない)。我は、目前の愚か者の吐(ぬ)かす事に、方腹痛し(腹が捻れる程笑った)。

「フハハハハハ!!」
「何がおかしい?勝てなくて笑うしかなくなったか?」
「この暴神・素戔嗚尊(スサノオ)と同格に争う事などありえぬわ。このうつけ童(わっぱ)【バカガキ】めが。目にものを見せてくれよう。」

さて、口うるさいこのうつけ(バカ)を殺(あや)めんとす(殺す)。」特別に、愚か者に我の神技を見せつけん(見せつける)。我が語るのも面倒だ。あの愚か者にでも語らせておけ。

562適当:2013/02/24(日) 14:10:04 ID:Dbksyv72
ブラッド視点

見れば、見る程小僧の力を感じる。コイツは、さっきの殺しに迷っていたピカチュウの小僧とは、一味も二味も違う。ククク…楽しみだ。黒雷のピカチュウとでも言っておくか。コイツが、神と言うのなら、俺がコイツを殺して新たな神となる。神になれば、元帥様の側近(そっきん)にもなれるからな!!目にものを見せてくれるか。お手並み拝見といくか。俺は、ヤツを前足で挑発する。

「新しい力を俺に打って来い。かかって来い。」
スッ…
「は?」

コイツ、何してんだ?右手を俺にかざして何をしようと…。俺が不思議そうに眺めていると、ヤツは黒く巨大な電気玉を、かざした右手から撃つ。

「朽(く)ちよ。雷撃破(らいげきは)。」
「なんだと!?うぉ!?」

俺は、ヤツが撃つ巨大な黒い電気玉を、横へ飛び込みかろうじてかわした。驚いた。これが、あの小僧なのか?そう思っていると、ヤツは瞬間移動を使う。俺は、ヤツの声を背後から聞く。

「はぁ…はぁ…。ハハハハハ!!凄い!!凄いぞ!!そうだ、もっと撃…」
「そのつもり…であるか。」
「な!?と、何度もさせんぞ!!」

俺は、後ろに急いで振り向いて、胸のホルダーから軍用ナイフを取り出しヤツに切りつけた。ヤツは、俺がそうすると読んでいたように刀を背中から抜き、当たり前のように俺と刃を合わせ始める。

ガキン キン…
「ほれ、どうした?さっきまでの威勢はどこへ行ったのだ?童(わっぱ)よ。」
「なかなか、やるな。だが、コイツはどうだ!!ハァッハァ!!」

ククク…。刃を合わせるだけが、闘いじゃねぇぜ!!小僧ォォォ!!俺は、ヤツにフルパワーの頭突きを打つ。しかし、ヤツは俺の攻撃を刀を持っていない左手で受け止め、俺を逆に頭突き返した。

「効かぬな。むん!!」
「がぁっはぁぁ!!」

うっ…。ちっ、威力が高過ぎる!!そう思っていた所を、俺は、ヤツからアイアンテールを打ち込まれた。俺は、ヤツの速過ぎる攻撃を防げず、遠くへ飛ばされる。

「刀尾撃(とうびげき)。」
「ぐっはぁぁ!!」

が…ああああ!!コイツ、絶対に殺してやる!!殺す!!殺す!!殺す!!俺様に本気を出させた事を後悔しろ!!俺は、ナイフを胸のホルダーにおさめ、両方の手に悪の力を溜め、三つのシャドーボールを打つ。

563適当:2013/02/24(日) 14:16:04 ID:Dbksyv72
「ハッハッハ!!貴様ァァァ!!もう、終わりだ!!三連バーストシャドーボールゥゥゥゥ!!」

さぁ、コイツはどうだ?おっと、避(よ)けられては意味がないから、誘わなければナァ!!俺は、ヤツを挑発する。

「逃げなければ、死ぬぞ?ヘタレピカチュウの小僧ォォォ!!」
「む?是非もなし(仕方ない)、我と童(わっぱ)の差を見せつけてくれよう。」

ハッハッハ!!バカめ!!成功した!!これで、ヤツのヒットポイントは…ゼロだぁ!!と思っていると、ヤツは何かを喋る。

「雷磁誘導(らいじゆうどう)。」
「雷…磁?何だそれは?」

電磁誘導なら聞いた事はあるが、雷磁?コイツ何を言ってやがる? 俺が不思議そうにしていると、ヤツは、俺の目の前で三つのシャドーボールを止めた。俺は、その様子を見て驚く。

「あ…あ…。う…ウソだろ?何で、磁力も無いのに…電気で止められるんだ…。」
「どうした、童(わっぱ)よ?足りぬな。もっと、打てばあたるやもしれぬぞ?(あたるかもしれない)」

シャ…シャドーボールが、ヤツの周りに浮いている!?消えずに…。俺は、ヤツが三つのシャドーボールをヤツの周りに浮かべている所を見て、目を疑った。いいだろう。どうやって、やっているかは知らんが、今度こそ死ね!! 俺は、ヤツの言葉に乗り再び三つのシャドーボールを打つ。

「では、望み通り…。死ねぇぇぇ!!」

さぁ、これはどうだ?俺の三つのシャドーボールは、ヤツの目の前にまで走った。俺は、ヤツに攻撃が届くと思ったが、結果はさっきと同じく、三つのシャドーボールを宙に浮かせ止めた。俺は、そのありえない様子を見て驚くも、ヤツを殺そうとヤケになり、同じ技を何度も打つ。

「くそぉ!!死ね!!死ねぇぇ!!」
「効かぬわ。」
「あ…。ああ…。“What the hell….Isn't it…false….(う…ウソだろ…。)” 」
「フハハハハハ!!ほれ、返してしんぜよう。受け取れ、うつけ童(わっぱ)【バカガキ】よ。」

返すだとぉぉぉぉ!?ぐっ…ぐわぁぁぁぁ!! 俺は、ヤツに止められた、十個のシャドーボールを避けられずに全て受けてしまった。ヤツのカウンターシャドーボールが速過ぎて、見切れなかった。俺は、血を吐きながら遠くへと飛ばされた。“あ…あいつにはもう打たない方がいい…な。”俺が、立ち上がろうとした時、ヤツは笑い何かを言う。

564適当:2013/02/24(日) 14:21:37 ID:Dbksyv72
「ぐっ…がっはぁ!!こ…小僧、よく…も…」
「神雷域(じんらいいき)、むん!!」
「“ゴ…God of thunder field!?Gu…Haaaaa!!(神雷域だとぉぉぉ!?ぐはぁぁぁ!!)”」

ヤツの次の攻撃は、俺が生きてきて一度も見たことの無い程の広範囲の黒い雷で取り囲む攻撃だった。俺は、ヤツの攻撃を避(よ)けられず、手痛い(どころじゃねぇな。)電流を浴び身動きを止められた。“こ…これは!?電磁波!?しまったぁぁ!!”俺は、焦りながらも、必死に体を動かそうとする。だが、一向に体は動かない。しかも、ヤツは俺を赤子同然に見ながら、どんどん距離を縮めて来る。

スタン…
スタン…
スタン…

あ…あ…。俺はコイツに殺されるのか…。俺は、必死にもがき動こうとする。ヤツは俺に迫って来る。ヤツしか、行動は成功せず、俺はヤツの黒い電流を受けたせいから来る、言葉では言えない程のマヒで体を縛られながら、頭の中に“死”という言葉が現れた。ついに、俺はマヒで完全に身動きを封じられたまま、ヤツを目の前にまで近づけさせてしまった。ヤツは、苦しんでいる俺を見て、俺を嘲(あざ)笑う。

「フ…ハハハハハ!!苦しいか?童(わっぱ)よ?」
「ぐ…ぐぅ!!」
「喜べ、我の真の姿を見せてやる…ぞ?」

真の姿!?って事は、コイツあれでも本気じゃなかった!? 俺は、ヤツの言葉を聞き終え、全身に衝撃が走った。次の瞬間、ヤツは俺の目の前でさらに力を増やし、ついには目の色まで変えた。こ…これが…コイツ。俺が見たのは…まだ力も出していない時だった…。ヤツのエメラルドグリーンに変わった目を見て、俺はその場に尻を着き、顔を青ざめて、恐怖に脅え、涙を流す。

565適当:2013/02/24(日) 14:27:11 ID:Dbksyv72
「うぅ…。あ…あ…。」
「そう悲観するな、童(わっぱ)よ。我は、真の姿を下界の者に見せた事は無い。主が、初めてよ。フ…ハハハハハ!!」
“ここここコイツ…何言ってやがる!?ししし…真の姿を見たのは俺が初めて!?”
「さて、飽きたし、終(しま)いにせん(終わりにしよう)。童(わっぱ)よ、宿主の記憶をたどると…。主は、我の血が欲しいと吐(ぬ)かしておったな?」
「えぐっ…。血?血肉を…」
「求めんとす(求める)、生き物。フハハハハハ!!我も、主と同じ血肉を求めんとす(もとめている)神。よって、主をここで殺(あや)める事をせん(殺す)。」

あ…あやめるって何なんだ!?でも…この状況から言ってコイツに、俺は殺される…って事だよ…な?俺の考えは、的中した。ヤツは、刀に自分の黒い電流を送り、無いはずの波紋を作り出した。俺は、ヤツが作り出したありえない波紋の色を見て、体を震わせ、股下から温かいものが流れている感触を、後足と尻で感じ始めた。うっ…漏らしてしまった…。と 恥ずかしがっている余裕は無かった。それ程、コイツに抱く恐怖心が今までに闘い殺して来た、実験対象のヤツらとは、一味も二味も違っているからだ。いや、いくら考えても、俺がビビったのはコイツだけだ。ショーン中尉は優しいし、カオス小佐もそれ程恐い獣(ポケモン)だとは思えない。カオス小佐は背は高いが、威嚇(いかく)しているイメージは無い。ただ、あの方は元帥様の言いなりになっているだけだ。俺が…今からカオス小佐を超えて元帥様の右腕となろうとしていた時に限って、コイツに!!こんな所で、こここ殺されるなんて…。ヤツは、恥を丸出しにした俺に笑いかけ、俺の股間から出た尿に手でふれ、俺をからかう。

「フハハハハハ!!どうした、こんなに濡(ぬ)らしおって。主は、それでも雄か?」
「うぅ…。た…頼む!!命だけは…命だけは助けてくれぇぇぇ!!」

も…もうなんでもいいから助かりたい!!殺されたくない!!俺は…どうしてあの小僧にあの注射なんかしたんだ? 俺は、強くここからの生還を願っていた。生還を願うと同時にある事を思い出した。

566適当:2013/02/24(日) 14:32:10 ID:Dbksyv72
“シャーズ、これが何だかわかるか?”
“それは何ですか?ブラッド小尉。”

あの雌(おんな)が俺に質問をぶつけると、俺は大声で笑った。

“ククク…ハハハハ!!”
“な…何がおかしいんです?”

あの雌(おんな)は、俺に驚きの顔を見せる。俺は、答えを言う。

“これは、限界突破の薬だ。”
“げ…限界突破ですってぇ!?”
“ああ。これを、あのピカチュウの小僧に打つ。ククク…楽しみだ。どれ程…強くなるかがな!!そして…強くなった所を殺す。ククク…ハハハハハ!!”

俺が、あの雌(おんな)に使用目的を言うと、あの雌(おんな)は生意気にも、俺に意見する。

“ブラッド小尉。あのピカチュウを甘く見てはいけません。あのピカチュウは、天才。いえ、言い方を変えます。やめなさい!!坊やを殺す事も!!坊やへの注射も!!”
うるさい雌(おんな)だ。黙らせてやるか。
“じゃあ、お前が今ここで俺を殺して止めたらどうだ?”
“うっ…。そ…それは…。”
“出来無い。ククク…ハハハハハ!!お前が弱いから、お気に入りのピカチュウの“坊や”とやらも、明日死ぬ…な!!ハハハハハ!!”
“ううっ…。ぐっす…。お願いです、ブラッド小尉。目的を忘れてはいけません。殺しては…ダメです。”

これだけ言ってもまだわからんか。しょうがない。触れたくはないが。俺は、あの雌(おんな)の顔を思いっきりはたき、あの雌(おんな)を仰向けにする。

バチン
“ああ!!ぶ…ブラッド小尉…。”
“黙れ、βのザコが。俺に逆らうな。裏切りをはたらいた所を生かしてやったのは、どこの誰だ?”“うぅ…。そ…それは、ブラッド小尉です。”
“そうだ。生かした本当の理由も教えてやろうか?”
“ほ…本当の理由?”

泣いても、胸に来ない。どんな雌(おんな)が泣こうと、俺は性欲なんぞないからな!! 俺は、泣いているあの雌(おんな)の目の前まで顔を近づけ、鼻をくっつけて脅す。

“俺が、処刑獣(処罰を下す担当のポケモン)だからだ。”
“うぅ!!あっ…そ…そんなぁぁ!!”
“このプログラムが終わり次第、あの小娘も、お前も…。あの世行きだ。”

567適当:2013/02/24(日) 14:37:04 ID:Dbksyv72
俺が言った瞬間、あの雌(おんな)は泣き崩れやがった。ハハハ。当たり前だろう。元帥様が裏切り者を生かすものか!!バカめが!!この、お楽しみは最後にとっておくという余裕さも今は無い。俺は、死ぬ。殺される。あの雌(おんな)の言っていた通りだ…。忠告を無視した為に…。ヤツは、俺の命乞いを無視して、手に付いた、俺の尿を蒸発させた。俺は、ヤツの起こした行動を見て泣き叫ぶ。

バチッ ジュウウウ…
「ひ…ひぃぃぃぃぃぃ!!」
「これ以上、主と闘っても詮無き事(甲斐がない)。去ねぇい(死ね)。我に、殺(あや)められる事、誇りとし、八蓮の上(あの世)に…。逝(ゆ)くが良い。」

ヤツは、俺にそう言った後、刀を大きく上にあげ、俺へ切りかかって来た。うわぁぁぁ!!殺される!!いやだ!!いやだぁぁぁ!! 俺はヤツに向けて、体の奥底から悲鳴を上げた。おれが、思いっきり目を閉じて、死を覚悟した瞬間、ヤツが刀を落とし、頭を抱えて苦しみ始める。

「が…。がぁぁぁぁ!!宿主(ぬし)か!!邪魔をするな!!寝ておれ!!」
“お前の好きにはさせない!!”
「黙れ!!我は、今からこのうつけ(バカ)を肉塊と化せん。我の愉(たの)しみを、奪う事赦(ゆる)さぬぞ!!」
“お前は、何か勘違いしている!!これは、殺し合いじゃないんだ!!”

や…ヤツは…一体どうなっているんだ?俺は、ヤツの苦しむ様子を、脅えながらも見ていた。ヤツは、俺を殺す事を見えない何かに叫ぶ。

「ぐがががぁ!!わ…我は、宿主(ぬし)と違って容赦などせぬ!!宿主(ぬし)は…甘過ぎるわ!!たわけ(バカ)がぁ!!」
“うるさい消えろ!!俺の体を好きにはさせないぞ!!”
「宿主(ぬし)が消えろ!!」
“消えろ!!”
「消えろ!!」
“消えろぉぉぉぉ!!”

568適当:2013/02/24(日) 14:41:18 ID:Dbksyv72
“はぁ…はぁ…。やっと、意識が戻った。突然、別の俺が出てきて…。”俺は、もう一匹の自分を消し、肩で呼吸をしていた。“あっ…これは…。”呼吸をしている途中に、頭の中に残る記憶を感じ取り、俺はすぐさま目の前の彼へ目を向けた。

「お前!!大丈夫か!!」
「あ…あ…。」

彼は、尻餅を着き、涙で顔をぬらし、体を震わせていた。彼の下腹部へ目を向けると大量の黄色の液体が目に受けられた。俺は、意識が無かった時の記憶を感じ取っていたので、彼が脅えている原因を理解し、彼の肩へ手を置いて彼を落ち着かせ始めた。

「すまない。お前を…こんなに痛めつけてしまって。」
「俺は、た…助かったのか?」
「ああ。もう、大丈夫だ。アイツはいない。」
「そうか…良かっ…た。」

俺が彼へ返事を返すと、彼は恐怖で脅えていた表情を安心した表情へと変え、そのまま気を失い、後ろへ倒れ込んだ。俺は、あわてて彼を抱きかかえ、彼に声を掛けた。

「お前!!しっかりしろ!!大丈夫か!!」
「すー。すー。」

“良かった、息はしているようだ。傷がひどい、手当てをしてやりたいが…。コイツも裏切らせてしまう事になる。それは、出来ない。すまないが、自力で起きて自力で帰ってくれ。”俺は、彼の呼吸音を聞いて安心し、彼の胸についている“λ(ラムダ)”と描かれた、藍色のバッチを手に取り、スーツのポケットへ収めた。“俺には、もうどうする事も出来ない。”俺は、彼が仰向けになり、安心した表情で目を閉じている様を見届け、そばに落ちた刀を拾い、奇妙な森から姿を消した。

569適当:2013/02/24(日) 14:45:43 ID:Dbksyv72
俺は、彼と死闘を繰り広げた奇妙な森から、全く別世界の平坦(へいたん)な部屋へと姿を戻した。“うん…。俺がアイツをあんなにしてしまったのか…。もう一匹の俺…。厄介だな。”姿を戻した後、俺は目線を落として、頭を悩ませていた。しばらく、もう一匹の自分をどうやって抑制しようかと考えていたが、何も答えは導き出す事は出来なかった。俺は、自分の胸に手を当て、自分自身に言い聞かせた。

“大丈夫だ。俺が、俺自身がもう一匹の俺を出て来れないようにする。俺なら、出来る。俺の体を好きにはさせやしない。”

俺は、強い決意を固め、黒いレンズの機械を取り外そうとした。だが、両手が空間を切り何も無い状態へとなっていた。“壊れた!?まさか、腕時計も!?”俺は、驚いて自分がいつも腕時計をはめている腕へと目を向けた。俺の、懸念通り腕時計の表示画面は割れ、時計として機能はしなくなっていた。“はぁ…。バカたれが…。”俺は、もう一匹が招いてしまった事態にため息をつき、途方(とほう)に暮れていた。途方に暮れていたのもつかの間。俺は、すぐに別の不安要素に襲われた。

570適当:2013/02/24(日) 14:48:00 ID:Dbksyv72
「はぁ…。時計が無ければ、この先どうしようも…」
ヒュッ…
「は?まさか!!」

俺は、額に妙な寒気を感じ取り、手を額へと触れさせた。手を触れてみると、いつも額に巻いていたハチマキの感覚が消えていた。“そ…そんなバカな!!俺は、一度に二つの欠かせない道具を失ったのか!?”死なないハチマキが消えている事を知らされ、俺は頭を抱えて現実から逃げたいと思っていた。“はぁ…。力が隠されてる事を知れたのはいいが…。この先どうすればいいんだ。”二つの重要な道具を失った俺への精神のダメージは、とてつも無く大きなものであった。しまいには、雄らしくも無いめそめそと泣き出してしまいそうにもなった。“泣くな。仕方無い。この先の闘いは、殺されないように、限界を感じたら逃げるしか無い。”俺は、自分を安心させ、気を紛らわす為にシャワールームへと歩を進め、スーツを脱ぎシャワーを浴び始めた。

ジャアアア…
「ぐっす…。ハチマキが…。」
キュッ
「泣くな!!お前は雄だ!!元々、死なない時点でおかしいんだ!!死なない事を普通だと思うな!!」

涙を止めるのは、やはり無理だったようである。俺は、シャワーの水の勢いを止め、自分に強く言い聞かせた。“そうだな…。もう、泣かない。綾に会う、嬉し涙までは!!”俺は、涙を拭って決心を固め、体を震わせて水気を飛ばし、スーツを着た。これ以上起きていると、情けなくわんわんと大声で泣いてしまいそうになったので、中央へと走り出した。

タッタッタ…
ピタッ
「この野郎!!ふざけるな!!お前のせいで、大事な物を失ってしまったじゃないか!!お前は二度と現れるな!!」

俺は、中央へとたどり着くと、部屋中に声を響かせ、自分では意識はしていないが、雄らしくも無いふて寝をし、今、抱く感情から逃げ去っていった。

試練7 【闇】 完


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