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Ammo→Re!!のようです

1名も無きAAのようです:2015/02/08(日) 19:35:24 ID:F94asbco0
前スレ
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/13029/1369565073/

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                            配給

【Low Tech Boon】→ttp://lowtechboon.web.fc2.com/ammore/ammore.html

【Boon Bunmaru】→ttp://boonbunmaru.web.fc2.com/rensai/ammore/ammore.htm

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862名も無きAAのようです:2017/12/04(月) 20:24:47 ID:v4yXdykE0
(=゚д゚)「……誰が殺人やら暴行罪で逮捕したって言ったラギ?」

( ><)「……え?」

(=゚д゚)「こいつは、野生動物を殺したラギ。
    しかも、狼を二匹だ」

殺人、暴行が駄目なら別の罪で捕まえればいい。
警察官であれば誰もが使う手だ。
この男が現場経験をほとんど積んでいない事は明白だ。
故にこの手に対して、彼は脊髄反射的な反論をしてしまう。

それが罠だとは気付かないままに。

( ><)「証拠はあるんですか?
     それがないと、ただの言いがかりなんです!!」

(=゚д゚)「証拠だぁ?
    あるに決まってるだろ」

( ><)「言っておきますけど、トラギコさんの目撃証言では意味がないんです!」

発想が実に貧相だ。
目撃証言だけで事件を立証することが難しいのは、五年以上現場にいる人間なら誰でも一度は経験する。
温室でぬくぬくと育ってきた人間には決して分からないだろう。
事件にならない事件を追う人間の口惜しさなど、一生分かるはずもない。

(=゚д゚)「勿論、俺以外の人間で尚且つ絶対公平な証拠ラギ」

そう言って、トラギコは動かぬ証拠をベルベットに見せつけた。
それは――

(;><)「フィ、フィルム……?!」

(=゚д゚)「ここにばっちり写ってるラギ。
    ジョルジュが狼を撃ち殺してるところがよ」

――スクープと真実を追う、とある男の手柄だった。

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人は己の指を見る。 針と布を持つ指が失われれば、布は不完全なものになるからだ。
                              ――己の保身を重視する人間の答え

      撮影監督・美術監督・美術設定・ビジュアルコーディネート【ID:KrI9Lnn70】

August 13th
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863名も無きAAのようです:2017/12/04(月) 20:25:57 ID:v4yXdykE0
トラギコが切り札をベルベットに突きつけた時、アサピー・ポストマンは徒歩で道路を伝って山を下っている最中だった。
脚は疲労感から動かすのも面倒になっていたが、歩かなければならない理由があった。
本当であればトラギコの車に乗って街に戻れたはずだったのだ。
だが現実は非情であり、アサピーは自力で戻るほかなかった。

状況判断をすれば確かにこれが最善だが、トランクに入れて途中まで運んでもらえるだけでもいいのにとは言えなかった自分が憎い。

(;-@∀@)「あー、寒い……」

――ジェイル島にトラギコが向かってから、アサピーは言われた通り徒歩で安全で尚且つトラギコと合流しやすそうな場所を探していた。
そうしている内にアサピーは狼と遭遇し、追い立てられることとなった。
唸り声と跫音から逃げている間、アサピーは死に物狂いで山を駆ける事となった。
日ごろの運動不足が嘘のように足取りが軽く、息苦しさなど忘れてしまっていた。

どうやらここ数日でトラギコにこき使われたことで体力が付いたのかもしれないと、内心で感謝することになったのは大分後の事である。
追われている間生きた心地がしなかったが、いつまでも狼が襲い掛かってこないことに不信感を抱いたが、次第に自分がどこかに誘導されているのだとは気付かなかった。
いつの間にか狼達が消えたことに安堵しつつ、アサピーはとにかく一分でも早く道路に出て街を目指すことにした。
無意識の内にカメラを両手で構えながら山中を移動していると、一台のセダンが眼下の道路で停まるのを目撃した。

この状況で走るセダンは極めて怪しく、スクープの匂いを彼の嗅覚が嗅ぎ付けた。
本能に従ってアサピーが茂みに隠れて様子を見下ろしていると、男が一人車から降りて来た。
フロントライトに照らし出された男の顔は、ジョルジュ・マグナーニに相違なかった。
間違いなくスクープだと判断し、彼の一挙手一投足を見守ることにした。

ライトが照らし出す倒木の前に立ち止まり、そして、行動を起こす。
奇しくもジョルジュがライトを背にしているため、その顔は逆光で黒く影ってしまっている。
だが焦りは感じなかった。

『Go ahead. Make my day』

棺桶の起動コードを耳にしたとき、アサピーの指はカメラの設定を変更して夜間撮影に最適な物に切り替え終えていた。
逆光ではあるが、アサピーの予想では、フラッシュは不要だった。
それを証明するかのように、爆発音に聞き間違うほどの銃声が四度鳴り響く。
シャッターボタンは四度押された後だった。

発砲炎が彼の顔を照らし出し、アサピーは銃声ではなくその光を事前に読み取ってシャッターを切ったのだ。
望遠レンズの向こうに映る影の動きを見て、次にいつ銃爪を引くかを予想する。
タイミングを逃せば光は失われ、暗闇だけがフィルムに写ることになる。
興奮する気持ちを落ち着かせ、手ぶれの無いようにしっかりと両脇を締め上げる。

(;-@∀@)「……っ」

かつてジュスティア警察で活躍し、その破天荒な行動から多くの敵を産んだ警察のダーク・ヒーロー。
彼が対応した事件の多くは彼抜きでは迷宮入りしたと言われ、実力の高さも相まって一時期は彼の信仰者のような警官が生まれ、犯罪者の射殺率が上昇したこともあった。
その男が銃を構えている姿は、彼の事を詳しく知らない人間でも魅了されるぐらい美しかった。
まるで無駄がなく、そうある事が自然であるかのような芸術的な姿。

そんな彼を前にして胸が高鳴らないカメラマンはいない。
多分に漏れず、アサピーも胸の高鳴りを押さえきれずにいた。
歩けば問題が起き、動けば事件が解決するとさえ言われた男。

864名も無きAAのようです:2017/12/04(月) 20:27:56 ID:v4yXdykE0
(;-@∀@)「おっ……?!」

思わず声を出しかけたのは、後部座席からするりと現れ、立ち去る女の姿を目視したからだ。
その妖艶な姿と肉食獣を思わせる静かな歩き方を見紛うはずもない。
快楽殺人鬼、ワタナベ・ビルケンシュトックだ。
と言う事は、ジョルジュはワタナベと同じ組織の人間として今活動している。

この状況は、正に千載一遇のチャンスだった。
何が起きてもおかしくはないし、何かが起きなくてはおかしい状況。
呼吸を意図的に浅くし、極限まで集中力を高める。
それから間もなく怒号が山に響き、黒い影がジョルジュの周囲に現れた。

あまりの速さにアサピーはその正体を視認することが出来なかったが、予測は簡単についた。
あれは、狼だ。
タイミング的に、アサピーを追い立てた狼と見て間違いない。
円を描くようにして静かに移動をする狼達は今、ジョルジュを獲物と定めて狩りを始めようとしていた。

ここで助けるのも一つの選択だが、アサピーはその選択を選ぶ気はなかった。
助けてしまえば折角のスクープ写真が撮れない。
やがて、ジョルジュが動いた。
襲い来る狼に向けて銃を構え、そして――

――車が嘘のように吹き飛び、ジョルジュがそれに巻き込まれたのを目撃した時、アサピーは絶句した。
何が起きたのか、第三者の視点から見ている彼でさえまるで分からなかった。
いや、それ以前に狼の群れがどのようにして車を吹き飛ばしたのか。
狼の群れを率いる何者かがいるということなのか。

今から、あらゆる瞬間がシャッターチャンスとなり得る時間となる。
先ほど以上に集中力を必要とし、瞬きさえ禁じなければならない程の緊張状態が生まれていた。
フィルムの残り枚数は二十枚。
シャッターチャンスは二十回であり、それ以上はないと考えなければならない。

アングルを考慮し、移動するべきかと考えたが、それは一瞬の内に否定した。
顔が見える角度で見下ろすというだけでもかなりの好立地なのだ。
欲を張りすぎてはいけない。
レンズを通して見える世界を切り取り、そこに全てを収めきるのだ。

何も真実全てを収める必要はない。
必要なのは、切り取られた真実であり、効果的かつインパクトのある真実なのだ。
カメラマンの仕事とは真実を伝える事ではなく、真実から切り取られた真実を生み出すことなのだ。
彼が狼に襲われて反撃している真実ではなく、彼が狼に食い殺されるか、狼を撃ち殺すという真実さえあればいい。

それを記事にすれば、アサピーはスクープを手にすることになる。
しかも、今この島を騒がせている人間達の一味だという事を考えれば、嫌がらせとしてその効果は極めて高いだろう。
そして巣から出てくれれば、大きなスクープがアサピーに手柄となる。
息を呑み、指に汗がにじむ。

865名も無きAAのようです:2017/12/04(月) 20:29:54 ID:v4yXdykE0
突如として訪れた静寂。
その静寂は極めて短く、コンマ数秒の世界だった。
だがそれで十分だった。
アサピーはその静寂の意味を理解しており、彼の人差し指と親指は脳が信号を発するよりも早く動いていた。

銃声とシャッターはほぼ同時。
アサピーは夢中でシャッターを切り、巻き、そしてまた一枚とジョルジュの姿を写真に収める。
狼が二匹撃ち殺された瞬間は一寸の狂いもなく撮影された。
やがて、怒りが頂点に達したジョルジュによって車が殴り飛ばされて森の中へと消え去った。
  _
(#゚∀゚)「耳付きが俺に喧嘩を売るっていうんなら、容赦はしねぇ!!」

ジョルジュの怒号。
耳付きの登場という予想外の展開に、アサピーは夢中でシャッターを切った。
仁王立ちになり、両手に銃を構える姿が月光に照らされ、幻想的な姿を現す。
月下のガンマン、という言葉が脳裏によぎった時にはシャッターが切られていた。

風が吹き、不気味な静けさが辺りを包む。
一瞬の間に十発の連射行われ、辺りが一瞬真昼の明るさに包まれた。
アサピーは俯瞰した位置から全てを見ていたが、分かったのは、黒い影がジョルジュの銃撃を全て回避し、一撃で倒したことだけだった。
そして、影と狼はその場から何事もなかったかのように消えた。

狼の死体も消えていた。
嵐が去った後でも、アサピーはその場から動かなかった。
ジョルジュはまだ生きている。
僅かに動く彼の体を見て、アサピーは迂闊に動かないで時間が過ぎるのを待った方が得策だと感じた。

やがて、一台の車が近付いてくる音が聞こえてきた。
ジョルジュの仲間だろうか。
セダンがジョルジュの前に止まり、そこから降りて来た男の姿を見てアサピーはようやく安堵した。
トラギコだ。

何事かをジョルジュに話しかけ、そして、手錠をかけた。
それを確認してから、アサピーはトラギコの元へと駆け寄った。

(;-@∀@)「トラギコさん!!」

(=゚д゚)「よう。 こんなとこで何してんだ?」

気のせいか、トラギコの顔に疲労が窺えた。
元から目つきが鋭いのもあるが、それがいつにも増して鋭くなっている。
気が立っているのだろうか。

(;-@∀@)「トラギコさんが徒歩で帰れって言ったんでしょ!!」

(=゚д゚)「……忘れたラギ。 それより、お前写真撮ったラギ?」

首から下がったカメラを指さされ、アサピーは頷いた。

(;-@∀@)「ま、まぁ、スクープになりそうだったから撮りましたけど……」

866名も無きAAのようです:2017/12/04(月) 20:30:50 ID:v4yXdykE0
(=゚д゚)「どんなのを撮った?」

(-@∀@)「ジョルジュ・マグナーニが狼に襲われて、狼を撃ち殺したところです。
      あ、後はジョルジュを倒した人間との戦闘ぐらいですが、そっちは撮れてる自信がないです」

(=゚д゚)「よし、フィルムを寄越せ」

(;-@∀@)「ちょっ!! 何でですか!?」

(=゚д゚)「お前が使うよりも俺が使った方が意味があるからだよ。
    代わりにスクープのネタを一つやるよ」

(-@∀@)「マジですか!!」

その言葉を聞いて、アサピーは嬉々としてフィルムを手渡した。
ケースに入れたフィルムを懐に入れ、トラギコは親指で山の向こう側を指し示した。

(=゚д゚)「さっき砲撃音があっただろ?
    あそこに、ショボン達がいるはずラギ。
    逮捕されたら間違いなく街に連れて行くから、それを撮っておくといいラギ」

つまり、秘密裏に逮捕された人間が運び出される瞬間を独占できるという事。
情報を持たない他社に先んじることが出来る。
さっさとセダンに乗ろうとしたアサピーの肩をトラギコが掴んだ。

(=゚д゚)「駄目ラギ。 お前は徒歩ラギ」

(;-@∀@)「え?! 何でですか?!」

(=゚д゚)「俺はあっちこっちから狙われているラギ。
    知ってるだろ? そこにお前を巻き込みたくねぇんだ」

(;-@∀@)「まぁ、そうですね……」

こうしてジョルジュを捕まえたとなれば、更にその危険性は高くなる。
戦闘能力のないアサピーがいたとことで、トラギコの足手まといになるだけだ。

(=゚д゚)「だから、お前は徒歩だ」

結局、アサピーは走り去るトラギコを見送り、肩を落として街へと歩き始めたのだった。

867名も無きAAのようです:2017/12/04(月) 20:32:16 ID:v4yXdykE0
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人が見るのは結果だけ。 過程など、見てはいないのだ。
               ――結果を重視する人間の答え

     総作画監督・脳内キャラクターデザイン・グラフィックデザイン【ID:KrI9Lnn70】
            撮影・演出・音響・衣装・演技指導・編集【ID:KrI9Lnn70】

August 13th AM07:05
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八月十三日。
キュート・ウルヴァリンは朝食としてカリカリに焼いたベーコンとスクランブルエッグ、分厚いトーストとサラダの朝食に舌鼓を打っていた。
トーストにこれでもかと濃厚なバターを塗り、サラダにはシーザードレッシングを浸るぐらいかけた。
朝食は一日の活動を左右する重要な要素だと彼女は考えていた。

例え彼女達にとって事態がよくない方向に進んでいるとしても、それは変わらない。
状況など知った事ではない。
まずは食事。
それから行動である。

ジュスティア警察に与えられたホテルのスイートルームで彼女は事態の悪化を耳にしても焦る様子も見せず、食事を続けた。
デザートのヨーグルトを平らげ、砂糖がたっぷりと入ったコーヒーで食事を締めくくる。
紙ナプキンで口元を拭い、それを皿の隣に綺麗に折りたたんで置く。

o川*゚-゚)o「……さて」

彼女はラジオの人気パーソナリティとしての肩書を持ち、その甲斐あって今回ジュスティア警察が立案した作戦に急きょ参加することが決まった。
勿論、それは事前に用意されていた保険があったからこその展開であり、彼女が保険としてこの島に滞在していなければ事態の修復は不可能となっただろう。
だがその人気故に彼女は副業に追われ、本業に力を入れることが難しい立場だった。
彼女の部屋には本業と副業で使う原稿や資料が散乱しており、床に落ちている物に関しては全て暗記されていた。

そうしなければどちらの仕事も回らなくなってしまうのが、彼女の立場だ。
本業のあまりにも唐突な作戦の変更に、だがしかし、彼女は不満を感じることはなかった。
往々にして臨機応変な対応が求められるのが実戦。
予定通りに全てが進行している時にこそ疑い、備えるべきだということをよく理解していた。

何より、保険として動くことを志願したのも、立案したのも彼女なのだ。
何もかもが上手くいっていれば、デレシア一行とトラギコ・マウンテンライトはこの島に到着した日に死んでいたはずなのだが、それが失敗。
続く追撃も交わされ、遂にはジュスティア警察の高官にティンバーランドの存在が察知される事態へと悪化した。
作戦は変わらざるを得ず、警察の高官には速やかかつ自然な死が求められた。

こうして、作戦が不測の事態に陥った際に発動する保険が動き出すこととなる。
キュートが己に与えた役割は、“予定通りに死んだライダル・ヅー”の声を真似る事。
普通に感がえれば一蹴されるような作戦だが、これは今の状況ではジュスティアにとって、極めて重要な役割だった。
犯罪者に対して宣戦布告をした張本人が、宿敵に殺されたなどと、どうして公に出来ようか。

868名も無きAAのようです:2017/12/04(月) 20:33:32 ID:v4yXdykE0
斯くしてキュートはまだヅーが生存しているかのように思わせる為、その声を使って島中に声を届けることを任されることとなった。
ここまでは予定通りであるが、問題は別にあった。
島から脱出をする予定だった仲間達が全員、例外なく失敗し、ジョルジュ・マグナーニに至っては逮捕されるという始末。
だが彼はこの島で、まだ何も逮捕されるようなことはしていない。

仮に円卓十二騎士と対峙したことを咎めるのであれば、証拠不十分のためそれはどうとでも言い訳が出来る。
トラギコの努力は無に帰すのだが、保釈金と身元引受人を用意しなければならないのが面倒だ。
事態の悪化には何か、計画の計算に入っていない存在がいるに違いないと、キュートは思った。
予想外の何かを持つ、予想外の誰かの介入。

最近組織内でその名が頻繁に出てくるデレシアと言う人物による影響が予想以上の物だったと見て、まず間違いないだろう。
一度は直接相手にしてみたいと思うが、今はその想いは抑えておかなければならない。
他の者がその好奇心に従った結果、今の状況を引き起こしたのだと忘れてはならない。
愚か者とは言え、彼らの残した判断材料は利用しなければ無駄な徒労であり、浪費として終わってしまう。

キュートは溜息とも吐息とも判断しかねる息を吐き、三枚つづりの書類を読み始めた。
それはデレシアに関する書類だった。
ティンバーランドの上層部がその名を禁忌の様に扱う女。
これまでに多くの作戦を台無しにした旅人。

正直、キュートはそこまでデレシアの事を脅威に思っていなかった。
強いとは言っても、所詮は人間。
毒を使い、兵器を使い、弱みを狙えば訳のない相手だと思っていた。
だが資料に目を通す内に、彼女の考え方は変わっていった。

一か月以内の間で彼女が成した業績の数々。
それは敵ながら天晴れと言わざるを得ない程、実に見事な物ばかりだ。
ほぼ単身でここまでやれる人間は、確かに、生半可な存在ではない。
危険極まりなく、不可解極まりなく、それでいて興味の尽きることの無い存在。

o川*゚ー゚)o「ふぅん……」

数分後、キュートはその書類を暗記し終えていた。
だが書類を地面に捨てることはせず、クリアファイルに入れてそのまま机に置いた。
これは極めて興味深いもので、捨てるような物ではない。
恐らくページ数はこれからも増えて行くだろう。

このままでいけば、だが。

o川*゚ー゚)o「面白そうな相手じゃない」

あのアメリア・ブルックリン・C・マートが殺されるはずだ。
あのスコッチグレイ兄弟が深手を負う訳だ。
あのワタナベ・ビルケンシュトックとツンディエレ・ホライゾンが仕損じる訳だ。
あのシナー・クラークスとショボン・パドローネが苦戦するはずだ。

あのジョルジュ・マグナーニが執心し、ティンバーランドのNo1も警戒するはずだ。
現に、キュートもすっかり彼女に興味を持ってしまっていた。
知的好奇心が抑えきれない感覚に陥ったのは、果たして、どれほど以来だろうか。
きっと、ティンバーランドの存在を知った時以来だろう。

869名も無きAAのようです:2017/12/04(月) 20:34:35 ID:v4yXdykE0
o川*゚ー゚)o「ふふ、一度相手をしてみたいものねぇ……」

そう言ってキュートはコーヒーを一口飲み、気分を落ち着かせた。
少しつまみ食い程度に相手をしたいという欲望を押さえるには、カフェインはまるで意味がなく、勿論、煙草も意味をなさない。
今はただ堪えなければならない。
最高の獲物を前にして、キュートは別の役割を果たさなければならない己の不幸と同志の不甲斐なさを呪った。

本来の予定から大分ずれてはいるが、組織の目的自体は果たされている。
少しずつ。
着実に。

o川*゚ー゚)o「まずはこの舞台、どう降りるつもりなのか見せてもらおうかしら」

チェス盤の上の駒を動かすような心地で、キュートはすでに手を打っていた。
この島から逃げなければならないのは、何も、ティンバーランドの人間だけではないのだ。

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Ammo→Re!!のようです
Ammo for Reknit!!編

第十章【Ammo for Reknit!!】

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                     //
         /`‐──-、_____,-‐´ /
        ./  / ̄ ̄/ 三三=  彡 /
       /  /__/ 三三=  彡 /
     ./     August 13th AM08:45
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その日の朝刊の一面を飾ったのは、デミタス・エドワードグリーンが爆死し、脱獄に加担した犯人が全員捕まったという記事だった。
だが逮捕された犯人の姿を映した写真を載せる事の出来た新聞社は一社だけであり、モーニング・スター新聞はその日記録的な売り上げをものにした。
島全体にライダル・ヅーの声で放送がされ、全ての事件は解決し、昨晩の砲撃は犯人たちの船を破壊するための行いとして小さく紹介された。
事後処理が終わった島には活気が戻り、漁師たちは嬉々として漁に出かけ、観光客は“グレート・ベル”だけでなく戦闘のあった場所に足を運んだ。

報道されたことは事実と偽りが混ざった物だった。
第一に、脱獄に加担した人間は全員ではなく一部しか逮捕されていない。
第二に、砲撃はたった一人の人間を殺すために行われた物である。
そして第三に、ライダル・ヅーはすでにこの世にいない。

警察の仮設本部も撤去され、犯人たちは護送車に乗せられていた。
ショボン・パドローネ。
シュール・ディンケラッカー。
そして、ジョルジュ・マグナーニ。

870名も無きAAのようです:2017/12/04(月) 20:35:54 ID:v4yXdykE0
全員、拘束具を身につけ、目隠しと猿轡、そしてイヤーマフが付けられていた。
互いに会話をすることも出来ない上に、周囲の状況も分からない状態にされてもまだトラギコは護衛を付けるべきだと抗議した。
彼の講義は却下された。
彼は本来ジュスティアに戻らなければならない人間であり、その他の事に首を突っ込んでいい状況ではないのだ。

代わりに上層部が現場に命じたのは、デレシアと言う旅人の捕獲だった。
トラギコの帰還とデレシアの捕獲。
二つの任務が現場に命じられ、動き始めていた。

( ><)「トラギコさん、部下に送らせるんです」

機材も書類も撤収が終わったエラルテ記念病院の一室に、トラギコとベルベットの姿があった。
薄手のスーツを着てネクタイを締め、マスコミ用の姿を作り上げたベルベットとは対照的に、トラギコはダメージジーンズにポロシャツと言うラフな格好だった。
チーズバーガーを三つ食べ終え、食後のアイスコーヒーを飲みつつ、トラギコは新聞に目を通していた。
くつろぐトラギコに対してベルベットが放った言葉に、トラギコは紙面の向こう側から答えた。

(=゚д゚)「断るラギ。 また事故を起こされたら嫌だからな。
    円卓十二騎士にでも頼むラギ」

( ><)「駄目なんです。 あの二人は今からデレシア捜索と捕獲をしに行くんです」

(=゚д゚)「なら一人で帰るラギ」

新聞を畳み、コーヒーを一気に飲み干して、そのカップを握り潰してゴミ箱に放り捨てた。
席を立とうとするトラギコの左肩に、ベルベットが左手を乗せた。

( ><)「……それは絶対に駄目なんです」

(=゚д゚)「何でだよ? 俺が迷子になるとでも思うラギ?」

僅かにベルベットの手に力がこもる。
怒りか、それとも焦りからか。

( ><)「貴方が逃げる可能性がある以上、一人で行かせるわけにはいかないんです」

(=゚д゚)「ならよ、お前が一緒に来いよ」

目にも止まらぬ速度でトラギコの右手がベルベットの細腕を掴み、そのまま握り潰さんばかりに力が込められた。
骨が軋む痛みにベルベットの眉が歪む。
トラギコは容赦なく力を徐々に強くしていく。

(=゚д゚)「お前の指名した部下は信用できねぇラギ。
    だからよ、お前が直接俺をジュスティアに送れよ。
    また不出来な部下を送ってよこしたら、俺は何をするか分からねぇラギ」

(;><)「手を離して下さい!!」

(=゚д゚)「お前が俺を殴る可能性がある以上、手は離せねぇラギ」

先ほど言われた言葉を真似て返すと、ベルベットは苛立ちを表に出した。

871名も無きAAのようです:2017/12/04(月) 20:37:47 ID:v4yXdykE0
( ><)「警官を続けたいのなら、僕にあまり刃向かわない方がいいんです」

(=゚д゚)「生者でありたいんなら、俺にちょっかい出すな」

一触即発の空気の中、一人の女が香水の匂いと共に現れた。
櫛を通していないのだと一目で分かる程乱れた黄金色の髪と、海を思わせる深い青色の瞳。
素顔を見抜くのも難しいほどの濃い化粧。
目元に引かれた赤色のアイラインが妖艶かつ情熱的な印象を演出し、それを強調するかのような黒いワンピースは喪服の様ですらあった。

(=゚д゚)「手前は?」

o川*゚ー゚)o「私、キュートと言います。 キュート・ウルヴァリン。
       極道ラジオFM893でメインパーソナリティーをやっています」

確かに、その声を聞いた覚えがトラギコにもあった。
“極道ラジオFM893”と言えば、かなりの人気番組だ。
何故ラジオの人間が、と言いかけて次にキュートが見せた芸当に言葉をひっこめた。

o川*゚ー゚)o『私、声真似が得意なんです』

それは、ライダル・ヅーの声だった。
極めて精巧な声真似。
この女がラジオ放送でヅーの代役を担った張本人。
そして、恐らくは例の秘密結社の息がかかった人間。

そうでなければ警察がこの女を引き込むはずがない。
ジュスティア警察は世界一融通の利かない機関だとトラギコは考えている。
それが、緊急時とは言え名の知れた人間を急遽引き入れて重要な役割を与えるなど、あまりにもおかしい。
現場判断の領域を越えた判断だ。

o川*゚ー゚)o『どうです? 似てますか、トラギコさん?』

ベルベットの手を解放し、トラギコの敵意はキュートに向けられた。
否、敵意ではない。
それは殺意だった。
怒りから来る純粋な殺意だった。

(=゚д゚)「……おう、女。 次に俺の前で相棒の猿真似をしてみろ。
    前歯をへし折って二度と真似できないようにしてやるラギ。
    あいつはお前みたいに糞の匂いがする下品な声をしてねぇラギ」

o川*゚ー゚)o「……あら、ごめんなさい」

女の口は笑みを形作っているが、目は笑っていなかった。
周りから持ち上げられることには慣れているだろうが、落とされることには慣れていないようだ。
逆に、争う事が好きそうな印象を感じ取った。

(=゚д゚)「それと、あいつは俺が街に連れ帰るラギ。
    それならどっかに俺が逃げる心配はねぇだろ?」

872名も無きAAのようです:2017/12/04(月) 20:38:49 ID:v4yXdykE0
( ><)「……分かったんです。
      ヅーさんの遺体を運ぶというのであれば、いいんです」

昨夜、ヅーの遺体はトラギコの一報によってセカンドロックから極めて慎重に運び出され、病院の遺体安置所に連れて来られていた。
トラギコがジョルジュを逮捕して病院に戻ってまず行ったのは、ヅーの体を綺麗にすることだった。
至近距離の爆発によって彼女の体は血塗れで、あちらこちらに鉄片や固まった血がこびりついていた。
それらを全て手で洗い落とし、清め、整え、出来る限り生前に近い状態にまで一人で戻したのだった。

医者たちがその手伝いをすると申し出たが、トラギコはそれを断固として拒否した。
代わりに、肉片と化したデミタスの復元を任せ、ようやく数時間の仮眠を取り、周囲の物音で面倒くさげに起床して軽い食事を摂って今に至る。

(=゚д゚)「言っておくが、余計な見送りは結構ラギ。
    目立ちたくないんなら、分かるよな?」

意味もなく車列を形成すれば、必ずマスコミが嗅ぎ付けてくる。
ヅーの死が公になればジュスティアは大恥をかくだけではなく、社会的な信用を失ってしまう。
死を一度隠ぺいした以上、公にする時期を慎重に選ばなければならない。

( ><)「仕方ないんです。 ですが、もしも規定日時に到着しなかった場合、指名手配犯として処理するんです。
      これは上層部の許可も得てあるんです」

指名手配犯となれば、世界中にいる警察官がトラギコを見た瞬間に襲い掛かってくる。
それだけではなく、賞金を目当てにした人間にまで狙われる。
そう言った人間と組んできたこともあるトラギコは、指名手配がどれだけ厄介な物かよく分かっていた。

(=゚д゚)「へぇ。 随分と手際がいいラギね。
    なら、スモークガラスのワゴン車を用意するラギ」

( ><)「分かったんです」

まるでこうなる事を予期していたかのような迅速な対応に、トラギコは思わず冷笑がこぼれそうになるのをこらえた。
いくら何でも、ベルベットの行動は大げさすぎるのだ。
恐らくはトラギコを殺す計画が頓挫した段階で動き出し、それらしい大義名分を掲げて上層部の許可を得たのだろう。
ベルベットは間違いなく黒だ。

そして、トラギコはもう一人の男がこの事件に関わっている証拠を持っていた。
“鷹の目”の渾名を持つ、ジュスティア最高の狙撃手がカメラマンを撃つ瞬間を収めた写真を――

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  〈/_j{_|l^ゞ尖ー=ィ'赱ァ⌒ u :|l /ノ} LVニニニニ
ニニ「ニニニ|l, }'^` `ヽ ̄´ ^''   |lィ´,’ハ}l7^ ァ'<ニ
  |ニニニニニ|l∨__、   、   j,' /: }l:.}/ /  /`
.  Vニニニ|∧´Vニニヘ} }  /|/: ノ:/≧s。., /
斗r'^Vニニニニ∧ {(__,ノノ   /彡': : : :August 13th AM11:06
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――ジュスティア最高の狙撃手、カラマロス・ロングディスタンスは激昂していた。
彼は作戦を任され、万事上手くいくはずだった。
狙撃の腕はジュスティアでは当然だが、世界一だと自負する程の物。
一キロ先の獲物でさえ仕損じはしない。

873名も無きAAのようです:2017/12/04(月) 20:40:18 ID:v4yXdykE0
その自負を、僅か数日の内に瓦解されていた。
彼の誇りは傷つけられ、踏み躙られていた。
かつて彼の祖父がこの地で勇敢に戦い、散ったと父から嫌と言うほど聞かされた身としては、この地での作戦失敗は最悪の展開だ。
何としても成功させなければならない。

この島で殺す予定だった人間はまだ生きている。
それが彼には我慢ならなかった。
是が非でも殺さなければならない人間を探し求め、カラマロスはモスグリーンのコンテナを背負って街を歩いていた。
懐には支給されたベレッタM92Fが忍ばせてあり、万が一遭遇したとしてもすぐに戦闘できるように準備が整っている。

(  ・ω・)「……」

狙うのは二人。
トラギコ・マウンテンライトとデレシアという女だ。
あの日、エラルテ記念病院が燃えた日。
その日に、トラギコはカラマロスの手によって死ぬはずだった。

だが、あの無能な医者のせいでカラマロスは誤射してしまい、仕留めそこなった。
あれは棺桶の使用が許可されていなかった事が原因であり、もしも最初の段階から許可されていれば、遠慮なく殺せたのだ。
だが気を取り直し、何度か機会を窺ったが、それを悉くトラギコは回避した。
悪運と野生動物じみた勘の良さが影響しているのは間違いなかった。

動物を相手にすると考えれば、対処の方法にも種類が増えてくる。
ただの動物ならばまだしも、トラギコは気性が荒く勘のいい獣だ。
彼が何かに勘付く前に手を打たなければならない。
遠距離からの攻撃や、毒による暗殺が最も有効だろう。

しかし。
それが成功する確率は極めて低い。
トラギコはすでにカラマロスが狙撃犯であることを確信し、その証拠であるフィルムを所有している。
つまり、カラマロスの行動については常にチェックをしているはずなのだ。

例えばこうして彼が街を歩いていることも、その背中に背負った棺桶の存在も知っているのだろう。
だからこの手は使えない。
彼が直接手を下すことにだけは、トラギコが常に警戒している事なのだ。
ではここで手詰まりか、と問われればカラマロスは首を横に振るだろう。

まだ手段が無いわけではない。
状況打破のために一計を講じてくれた人間は、実に狡猾だと思った。
ヅーの死を公にするのと同時にトラギコを処分できる最善の方法。
爆殺である。

ヅーの遺体を収めた棺桶に仕込んだ高性能爆弾。
遠隔操作によって起爆するように設定され、振動や火によって誤爆することは絶対にない。
トラギコがヅーの死体をジュスティアに持ち帰りたがることは予想できたことであり、計画を考えた人間はそれを見越して爆弾を仕込んだのだ。
同時に二つの厄介ごとが処理できるとあって、この計画は他の同志達からも賛同を得ていた。

874名も無きAAのようです:2017/12/04(月) 20:42:05 ID:tYwUJZRQ0
支援

875名も無きAAのようです:2017/12/04(月) 20:44:27 ID:v4yXdykE0
カラマロスの任務は、トラギコの抹殺ではない。
この島に潜んでいる組織最大の敵を殺すことである。
デレシアと名乗る旅人。
その女が生きている限り、組織に害をなすことは最早明らかだ。

単独行動は決して褒められたことではないが、デレシアを殺すためには今一度狩人として動かなければならない。
他の誰かに頼まれたからではなく、自分の意志でデレシアを殺そうとカラマロスは考えていた。
同志達があの女をどれだけ評価しようとも、カラマロスにとってみればただ腕の立つ女と言うだけだ。
奇抜な格好や予想外の行動によって攪乱しているだけで、その実、ただの女なのだ。

女が男に勝てる道理がない。
ましてや、カラマロスは世界最高の狙撃手なのだ。
軍人としても男としても、負ける姿をイメージすることは出来ない。
例えあの女に彼の狙撃銃を破壊されたとしても、だ。

あれはアサピー・ポストマンとトラギコを撃ち殺そうとしていた時であり、別の事に意識を集中させていたという状況が生み出した物だ。
偶然の産物で勝った気になられるのは良い気がしない。
いつまでも世界の天敵として調子に乗られているのは、彼のプライドが許さない。
ここで一気に終わらせることが出来れば、組織の夢が成就するための時間を短縮することが出来る。

(  ・ω・)「……どこだ、どこにいる」

物陰。
人混み。
あらゆる場所に目を向け、狙撃手としての勘を総動員してデレシアの姿を探す。
高所に陣取るのも一つの手段だが、グレート・ベルを再び使う事は無理だろう。

そうなると、山以外に有効な高所はない。
市街地での狙撃となれば、ホテルなどの建物を使う他ない。
いずれにしてもデレシアの姿を確認してから場所を定めなければならず、カラマロスは忌々しい女の姿を探しているというわけだった。
あの出で立ちであればすぐに見つけられそうなものだが、それ以外の服装をされていた場合、探し出すのは極めて難しい。

こうしている間にも島から出て行ってしまっている可能性があるが、その先は行き止まりだ。
ティンカーベルから陸路で外に出るためにはジュスティアを経由しなければならず、その検問を突破することは不可能。
停泊しているオアシズに逃げ込まれたら手出しが難しいが、情報によると船には乗り込んでいないらしい。
となると、まだこの島にいる可能性の方が高い。

森に隠れられていたらと思うが、あの女に限ってそれはなさそうだ。
あれだけの自信がある人間が、わざわざ森に隠れるなどあり得ない。
絶対に己の力を過信して街中で過ごしているはず。
狙撃手としての勘がそう告げるのだ。

(<::ー゚::::>三)

(  ・ω・)「っ……?!」

偶然の産物によって一瞬だけ開けた視界に突如として現れた女を見た瞬間、彼の手は懐の銃へと伸びていた――

876名も無きAAのようです:2017/12/04(月) 20:48:33 ID:v4yXdykE0
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           ノ|  r‐‐ 、!  !   i|   リ/ ´又ヅ,川 |  |
            レ | ヽ \ 从 小 ,//    ¨¨ イ リ ! iト、
            {  /  { ̄ ̄ヽく爻 ヽ{ 乂(i:     厶イ从 iト、ヽ }
           /  ∧  ̄ ̄ヽ             ハ/i}  ,リ j\}
.          /  / ∧   ̄ ̄ヽ   ー‐一   ∠   / /  ト ))
         /  人/ ∧  ¨マ_ノ}>   __  イ  `/ August 13th AM11:33
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

――ようやく、獲物が罠にかかった。
だがあえて構う事はせず、デレシアは近くにあった土産物屋に入って行った。
しっかりと後を着いてきている事を確認しつつ、奥まった場所にある化粧室へと入る。
人の気配が化粧室へと近づき、擦りガラスの向こうに明らかに男の姿が浮かんだ。

デレシアの姿は死角にあり、向こうからは確認することはできない。
少しでも考える力があり、慎重な人間であれば足を踏み入れることはしないが、デレシアは相手が必ずここに入ってくると確信していた。
何故なら、デレシア相手にここまで接近し、隙を見せている時点で間違いなく状況判断に必要な勘が鈍い人間であるからだ。
どこの誰だか知らないが、その迂闊さが命取りになる事を教えてやらなければならない。

今、デレシアの機嫌はあまり良い物とは言い難かった。
ティンバーランドの人間を三人逮捕させることは出来たが、残党が未だこの島に潜んでいる。
彼等の性質上、残党は必ず仲間を見捨てることはせずに奪還を試みるはずだ。
そうした後にこの島から逃げ出すのだろう。

ならば奪還のために何をしているのかを聞き出し、余計な手間を省くのが賢い方法だ。
本当は向こうからデレシアを狙って襲ってくることを期待したのだが、全く期待していない三下が現れたことによって幻滅した。
戸が音もなく開けられ、基本に忠実にまず銃が入ってきた。
それを見逃さず、デレシアは銃ごと腕を掴んで化粧室へとその人物を引きずり込んだ。

あまりにも唐突な展開に、追跡者は踏鞴を踏んでバランスを崩す。
男はジュスティア軍人のカラマロス・ロングディスタンスだった。

ζ(゚ー゚*ζ「入るトイレを間違えた、なんて言い訳をする予定はあるのかしら?」

銃を掴んだ時点でデレシアはすでに撃鉄と撃針の間に親指を挟み、発砲を阻止していた。
虚しく銃爪を引こうとするカラマロスだったが、掴まれた右手の痛みの為か、人差し指は虚しく震えるだけだ。
この状態であれば棺桶も使えない。

(; ・ω・)「く、くそっ!! 放せ!!」

銃を掴むデレシアの手に力が一瞬だけ込められ、親指を除くカラマロスの指の骨が折れた。
悲鳴を上げそうになった彼の首を掴んで戸に叩き付け、銃を口に突っ込んで声を封殺する。
脚を使った抵抗を防ぐためにデレシアは彼の股間を膝で思い切り蹴り上げ、睾丸を一つ潰した。
股間とは言わば足の付け根であり、付け根が動かせなければまともな攻撃は生み出せない。

折れた人差し指を無理やりに動かし、いつでも銃爪を引けるようにした。

ζ(゚ー゚*ζ「貴方もティンバーランドの人間なのでしょう?
      一つ教えてもらいたいのだけど、返事はどう?」

877名も無きAAのようです:2017/12/04(月) 20:49:27 ID:v4yXdykE0
空いている方の手でカラマロスがデレシアに反撃を試みたが、それを見逃す程デレシアは耄碌していない。
この期に及んで反撃をする神経については軽蔑するが、根性については祖父譲りだ。
カラマロスの右手を拳銃ごと握り潰し、激痛によって攻撃を強制的に中断させた。
更に喉も締めあげることで、悲鳴は蚊の鳴く様な小さなものしか生まれなかった。

ζ(゚、゚*ζ「話しているのは私よ?
      勝手に遮らないでくれるかしら?」

(; ・ω・)「かっ……ひゅ……!!」

ζ(゚、゚*ζ「クール・オロラ・レッドウィングはどこ?」

共に旅をするヒート・オロラ・レッドウィングの母であり、彼女が殺し屋になった原因を作った人物。
父と弟を爆殺されたヒートにとって、その女の生存は断じて許せないものだ。
そして女が逃げ遂せることによって、ヒートの苦痛は長引いてしまう。
復讐は本人の手で決着を付けさせるのが何よりの特効薬であり、その機会まで奪うつもりはない。

ただ、デレシアはその女を捕えてヒートの前に連れて行くだけだ。
生殺与奪はヒートに任せ、もしも彼女が何らかの理由でクールを生かすのであれば、デレシアがクールを殺す。
生かしたところでメリットは何一つなく、むしろ殺した方が有益に違いない。
雑草とは小さなものの集まりであり、一つでも見逃すとたちまち増えてしまうものなのだ。

ζ(゚、゚*ζ「あら、首を締めたら喋れないわよね」

窒息死寸前のカラマロスを一時的に開放し、酸素を吸わせてやる。
赤黒くなっていた顔に血の気が戻る。

(; ・ω・)「だ、誰が……!!」

再びデレシアの手が彼の喉を圧迫した。
カラマロスは目玉が飛び出そうなほどに目を見開き、必死にジタバタとあがくが、その攻撃がデレシアに触れることはない。

ζ(゚、゚*ζ「これが最後のチャンスよ。
      クール・オロラ・レッドウィングはどこ?」

再び手を離し、カラマロスに酸素を吸わせてやる。
せき込み、涙を流し、虚ろになった瞳でデレシアを見下ろして、カラマロスが口を開いた――

ζ(゚、゚*ζ「……ちっ」

――次の瞬間、デレシアはカラマロスから手を離し、その場から大きく飛び退いた。
直後、化粧室の扉がカラマロスごと爆ぜ、タイルの上に飛び散る。
カラマロスは破片の下敷きとなっているものの、死んではいなかった。
背中に棺桶を背負っていなければ、今頃彼の背骨は地面に転がる扉と同じ末路を辿った事だろう。

川[、:::|::,]『……私に何か用か?』

878名も無きAAのようです:2017/12/04(月) 20:50:38 ID:v4yXdykE0
現れたのは、青白い光をヘルメットの奥に灯した小柄な黒い棺桶。
一見して細身の人間が甲冑を着ているようにも見えるが、その実、それは遠隔操作に特化した棺桶、“アバター”だった。
髪のように後頭部から垂れ下がる直径一インチの繊維は高性能なアンテナの役割を果たしており、電波の届きにくい地下などでも性能を発揮できる。
有効範囲は約546ヤードと短めだが、実用的な遠隔操作型の棺桶としては世界で初の機体であり、先駆け的な存在だ。

だが、その機体はヒートの駆る“レオン”によって破壊されていた。
杭打機による一撃はバッテリーと共にアバターの中枢を破壊し、それ以降の登場はあり得ないと考えていた。
だが、現にこうして現れたのを見ると、イーディン・S・ジョーンズの棺桶に対する熱情が桁外れに高いと認識を改めざるを得ない。
破壊された装甲の痕が残っていることから、これが修理途中で投入されたことが分かる。

不完全な状態での参戦は、相手が焦っていることの表れでもあった。
今、クールはデレシアの周囲546ヤード以内にいる。
そして、どうして今このタイミングで現れる事が出来たのかと言う事を組み合わせ、デレシアは一つの答えを出した。
クールは、デレシアの攻撃が届かない安全極まりない場所にいる。

ζ(゚、゚*ζ「人形には用はないわ。
      ヘリコプターの乗り心地はどうかしら?」

セカンドロックを襲撃した際、彼らは小型のヘリコプターを使っていた。
ならば、ヘリの中にコンテナを乗せておけば、安全かつ広範囲での移動が出来るはずだ。
それだけの安全性が確保できていなければこうして姿を現すはずもないし、不完全な状態の棺桶でデレシアに戦闘を挑むはずがない。
果たしてデレシアの予想は的中していた。

川[、:::|::,]『お見通しか』

ζ(゚、゚*ζ「臆病者の考えそうなことぐらい、誰にでも分かるわよ」

問題は、ヘリコプターは非常に目立つ物であり、それをジュスティアが見過ごすとは思えない事だ。
恐らく、ヘリコプターは目くらましが目的であり、本命は別にあるのだろう。

川[、:::|::,]『雑菌の塊を愛でる趣味の人間に理解されるのは、極めて不愉快だな』

ζ(゚、゚*ζ「雑菌の塊? あぁ、ティンバーランドのことね。
      貴女達を愛でたいと思ったことはただの一瞬たりともないわ。
      長い事付き合っているけど、ドブネズミの方がまだ愛嬌があるわよ」

刹那、アバターが右手足を同時に前に出し、接近戦を仕掛けてきた。
構えは堂に入っているが、動きは単調だ。
拳を捌き、回し蹴りを回避し、デレシアは左手で腰のホルスターから抜いた水平二連式ショットガンを構えると同時に至近距離で発砲した。
装填されているのは散弾であり、棺桶の装甲を撃ち抜くには威力が不足している。

だが、アバターの動きを止めるのには都合のいい弾である。
アバター最大の弱点は、遠隔操作の要であるアンテナを損傷することだ。
近距離ではなく遠距離になればなるほど、その存在は重要となるため、必死に防御するはずだ。
防御しなければ捜査の精度は格段に下がり、最悪の場合は動かすことすらできなくなってしまう。

散弾を至近距離で受け止めればアンテナはかなりの数を失うことになる。
ましてやそれがケーブルの集合している頭部となると、根元から全てのアンテナを破壊されることになる。
これだけ狭い空間と咄嗟の状況にも関わらず、クールの動きは素早かった。
両腕で頭部を守り、散弾を一度に受け止めることに成功した。

879名も無きAAのようです:2017/12/04(月) 20:51:47 ID:v4yXdykE0
が、防御のために動きを止めた時、決着はついた。
デレシアの右手には漆黒のデザートイーグルが魔法の様に出現しており、銃爪は一部の隙も無く引かれていた。
一発目の銃弾は腕を貫通し、ヘルメットを強打。
銃撃による衝撃で跳ね上がった腕の隙間を狙った二発目が頭部を破壊し、遠隔操作の要となる集積回路を粉砕した。

倒れたアバターの頭部に更に三発の弾を浴びせ、OSを司る場所を粉々にし、修理不可能な状態にした。
ジョーンズが知識だけのアマチュアではなく、強化外骨格に関するかなり高度な技術も習得している事を考えれば、徹底的な破壊は当然と言えよう。
結局クールを捕まえることは敵わなかったが、これで相手の底が知れた。
遠隔操作の棺桶を好んで使っていることからも分かる通り、あの女の本質は極めて臆病であり、極めて卑劣。

そして、極めて慎重で計算高い人間だ。
己が戦闘に参加する事が味方にとってそこまで大きなメリットを見出せない以上、攪乱することに徹した方が味方にとってはありがたい事だろう。
今になってデレシアを襲撃したのは、味方が逃げる時間を稼ぐことと、単独でデレシアに襲い掛かった狙撃手を逃がすことが目的だったのだ。

ζ(゚、゚*ζ「……」

いつになく動きが機敏なことに、デレシアは違和感を覚えた。
いつものティンバーランドではない。
これまでとは異なる何者かが指揮を担当し、デレシアの力を測ろうとしている。
頭の切れる誰かが急きょ参加し、陣頭指揮を執っているのだろう。

ただでさえ面倒な状況に拍車をかける行為に、デレシアは苛立ちよりも先に感心した。
相手もようやく進歩したようだ。
やみくもになってデレシアを攻撃するのではなく、推し量ろうというのだ。
実に面白い発想だが、その発想に付き合ってやる義理はない。

銃声で騒然となった店内をデレシアは悠然と進み、店の外へと出た。
そこで、相手が仕掛けた第二の手に思わず失笑した。
今回の指揮者は実に狡く、そして他者を駒として使うことに長けている。

( ><)「……なるほど、タレこみの通りなんです」

警官が十名以上、完全装備の状態でデレシアを店先で出迎えた。
装備はショットガン、アサルトライフル、拳銃と非常にバリエーション豊かだ。
これが本命だと、デレシアは確信した。
本来追うべき相手を警察に戻したデレシアの行動を無に帰すための一手。

世界中に点在する警察にデレシアを追わせれば自分達の手間が省けると考え、この手を考えたのだろう。

ζ(゚ー゚*ζ「ふふ……」

面白い。
もしもカラマロスを逃がすだけで終わっていたならば、こうは思わなかった。
ただの不快な輩、虫螻が一匹増えた程度にしか感じなかっただろう。
だがしかし、新しい策士は一味違い、組み立て方を心得ている。

これまでとは違い、歯応えがある。
よほど大切に秘匿してきた駒なのだろう。
心意気だけでなく実力を備えてきており、明らかに前回の時と比べて進化している。
質の向上はデレシアにとっては嬉しくない予兆だが、成長し切った大木ほど倒しやすいのも事実だ。

880名も無きAAのようです:2017/12/04(月) 20:52:34 ID:v4yXdykE0
熟れた果実が地面に落ち、大木が倒れ、朽ち果てるのは自然の摂理。
今しばらく経過を観察し、その成熟し切った姿を見るのは少し先になりそうだ。
そう言った意味では楽しみであり、同時に、興味の対象として考えてもよさそうだ。

ζ(゚ー゚*ζ「逮捕するつもりかしら?」

( ><)「勿論なんです。 抵抗は無意味です」

ζ(゚ー゚*ζ「罪状は?」

その目は逮捕だけが目的ではない事を雄弁に物語っていた。
肉を前にした犬のように貪欲な光をその奥に輝かせ、涎を垂らしてその時が来るのを待っている状態だ。
演技が下手な男だ。
ジュスティア警察で生きて行くには、もう少し演技の勉強が必要になる。

( ><)「話す義務はないんです」

ζ(゚ー゚*ζ「あら、ジュスティア人にしては乱暴ね。
      ランダ警告すらしないで逮捕なんて、フォックスが何て言うかしらね」

実力で正義の都の市長に上り詰めたフォックス・ジャラン・スリウァヤは、些細な手違いでも決して妥協をしない女だ。
仮にも、正義を信仰する正義の街に相応しい女の部下である人間がそれを破るのは乱暴と言う他ない。
末端の人間ならばいざしらず、報道担当官となれば己の言動がジュスティア警察の意志と捉えられても仕方ないことは分かっているはず。
それを無視してでもデレシアを捕まえようというのは、流石にフォックスの意志ではない。

己の意志がそこに介入し、フォックスからの命令を都合よく変えているだけだ。

( ><)「さ。 来るんです」

ζ(゚ー゚*ζ「お断りする、と言ったら?」

( ><)「力づくで捕まえるんです」

迂闊な男だ。
本当に、迂闊だ。
捕えるという事は殺さないという事。
殺さないという事は、警官たちに下された命令は戦闘ではなく捕縛。

ならば、話は早い。

ζ(゚ー゚*ζ「勇ましい事ね。
      なら、まずはこの状況を打破して見せなさい。
      英雄狂――ドン・キホーテ――らしく、動揺することなく勇敢にね」

( ><)「何を言って――」

――直後、大地が大きく揺れ、不意を突かれた人間は全員転倒し、地震対策を施していない棚からは食器などが溢れ出し、遂には棚まで倒れた。
大地が揺れる寸前、もしくはほぼ同時に届いた爆発音は、あまりにも巨大すぎたために爆発音として認識されていなかった。
地鳴りのように低く、そして圧倒的な音は聞いた者の体を麻痺させるだけの力があった。
島民が未だかつて経験したことの無い巨大な地震。

881名も無きAAのようです:2017/12/04(月) 20:58:20 ID:v4yXdykE0
それとほぼ同時に、猛烈な突風が島中を駆け巡り、多くの物を宙に舞い上げた。
誰もが地面ではなく、空を見上げる。
まるで、そうしなければならないと命令されたかのように。
地に伏せた状態のベルベットはまるで悪夢を見るかのように、空を仰いだ。

空が。
青々とした蒼穹が。
彼を無表情に見下ろし、彼を嘲笑うような大空が。
今は、たまらなく恐ろしいものに映っていることだろ。

(;><)「な……」

空に立ち上る巨大な雲。
それはまっすぐに。
大蛇が鎌首をもたげるようにゆっくりと上空に向けて成長し、大きな樹木や薔薇を思わせる姿を形作る。
その雲の名前を知る者はほとんどいない。

それはかつて世界を滅ぼした炎の代名詞として、大勢の人間の目に焼き付いたものだ。
見下ろされることの恐怖。
見上げることの恐怖。
幻想的であると同時に、破壊的な何かが起きた時にだけ人が目にする雲。

それは、きのこ雲、と呼ばれて恐れられ人間の遺伝子に刻み込まれていた。
最古は火山噴火の際に。
そして最新では核爆発の際に。
島中の意識がきのこ雲と地震に向けられている隙を、デレシアは決して見逃さなかった。

店の奥へと風のように移動し、小窓から難なく路地裏へと抜け出した。
銃弾は遅れてデレシアの軌跡をなぞるように発砲され、店の商品を穴だらけにする。
最初からデレシアを殺すつもりだったなら、一発ぐらいは掠ったかもしれないが、初めにその意図を口にした時点で弾が当たらない事は分かり切っていた。
それに、核爆発を知らない人間達がその威力を目にした時に呆然とするのは無理もない。

人知を超えた物を目の当たりにすれば、人間は固まってしまう生物なのだから。
何にしても、デレシアがこの島に上陸した目的はこれで達成された。
即ちニューソクの安全な無力化だ。
ニューソク、それは小型で大出力の核発電装置であり、世界が栄華を極めた時代の遺産。

デレシアがこの島に立ち寄ったのは、そもそもニューソクを無力化する為だった。
その過程でショボン達がデレシアを嵌めるために余計な画策をし、島で騒動を起こし、それを鎮静化するトラギコに手を貸したに過ぎない。
本当であれば無視してもいい事態だったが、ブーンの教育にトラギコが役立ってくれたこともあって力と知恵を貸したのだ。
ようやく事態があるべき場所に収まるかと思われたが、警官たちの登場によって再びデレシアに警察の目が向けられた。

だがすでにデレシアは手を打った後だった。
グルーバー島から西に離れた場所にある島の地下へと向かい、デレシアは無効化するための処置と爆破装置の設置を一夜で終えた。
必要なことを心得ていたデレシアはニューソクの爆破処理の場所として、ニューソクの補完されていた島の地下を選んだ。
分厚い特殊壁によって守られた地下は、軍事施設の中心部として機能していた場所でもある。

882名も無きAAのようです:2017/12/04(月) 21:00:15 ID:v4yXdykE0
第三次世界大戦の際にこの島はかなり重要な拠点として役割を担い、多くの戦闘が行われた地だ。
最後の防衛ラインである地中深くに設置されたニューソクの爆発は、地震にも似た揺れを引き起こし、キノコ雲を生み出したが、放射性物質は漏れ出なかった。
津波や地震の被害によって放射性物質が流出した過去を生かし、度重なる開発研究の末に例え爆破されたとしても放射性物質を即時吸収、無効化する素材が作られた。
そしてその素材は、ニューソクが設置される場所を覆うようにして幾重にも重ねられ、今回の爆発に於いてもその力を発揮した。

島そのものが消し飛ぶことはなく、灼熱の炎が空を目指して上昇し、あのような雲を作るだけでとどまっている。
だがその威力はあまりにも強力であったため、今頃、施設の直上は大変なことになっているだろう。
土砂の中から埋もれていた強化外骨格が姿を現しているかもしれないし、逆に、土に埋もれたかもしれない。

ζ(゚ー゚*ζ「……」

先ほどの店から三ブロック程離れた通りを歩いていると、一台のワゴン車がデレシアの傍を通り過ぎたところで路肩に停まった。
運転席の窓が開き、見覚えのある手が車に乗るように促す。
後部席にあるスライドドアが自動で開き、デレシアはそこから車内に入った。
車はすぐに発車した。

ζ(゚ー゚*ζ「どういう心境の変化かしら?」

運転席の男の顔を見ずに、デレシアは質問を投げかける。
後ろには本物の棺桶が積まれていた。
僅かに香る花の芳香は、棺桶の中に遺体と共に敷き詰められた色とりどりの花弁を連想させる。
運転手の男はルームミラーを一瞥してから答えた。

(=゚д゚)「貸し借りの問題ラギ。
    それに、ここは歩調を合わせた方がいいだろ?
    まずは何があったのか教えてもらうラギ」

ζ(゚ー゚*ζ「お互いにその時間が必要そうね」

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          ""'''ー-┤. :|--〜''""   Ammo→Re!!のようです
              :|   |        Ammo for Reknit!!編 Epilogue
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            ノ ,. , 、:, i,-、 ,..、
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天高く成長していくキノコ雲を見上げて、イーディン・S・ジョーンズは声を上げて笑っていた。
これが嗤わずにいられる物か。
世界を滅ぼしたとされる炎が、今こうして目の前に現れている。
文献と写真でしか見たことの無い雲の出現に、ジョーンズは勃起していた。

(’e’)「おいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおい」

883名も無きAAのようです:2017/12/04(月) 21:01:49 ID:v4yXdykE0
学者である彼の口からは、まともな言葉が出てこない。
興奮が彼の頭脳を支配し、下着の中に射精したことにすら気づかなかった。
眼前の雲は破壊の化身であり、滅びの象徴。
こうして目の当たりにして興奮しない研究者はいない。

未知は学者にとって最高の興奮材料になる。
多くの学者はその未知に惹かれ、破滅の道を歩んだ。
破滅の一歩手前に味わえる快楽は、その味を知る者だけにしか分かり得ない。

(’e’)「いやはや、いやはや。
   まいったね、いや、本当に」

その様子を、ワタナベ・ビルケンシュトックは冷めた目で見ていた。

从'ー'从「ただの雲じゃない」

素直な感想が口を突いて出てきたが、ジョーンズは気にする様子も見せず、学者らしく饒舌に語り始めた。
余計な地雷を踏んだと後悔してもすでに遅く、ジョーンズはニューソクに関する講義を始めていた。
適当に相槌を打つこともしないワタナベだが、そもそもジョーンズが求めているのは相槌でも理解でもなく、胸に溜まった知識の発散である。
故に、彼はただ知識を垂れ流し、悦に入るだけで十分満足しているのであった。

奇妙な問答、と呼んでいいのか分からない事を続ける二人はバンブー島の喫茶店からその景色を目撃していた。
バンブー島はグルーバー島の西に位置し、ジュスティアと繋がる橋のある唯一の島だ。
多少の犠牲を払い、二人はいち早くこの島へと逃げ込むことに成功し、島からの脱出が完了するのは時間の問題だった。
迎えはすでに海中に来ているが、肝心のメンバーが揃っていない。

ヘリコプターを使って上空に留まっているクール・オロラ・レッドウィングとクックル・タンカーブーツ。
この二人の帰還があって初めて潜水艦、“レッド・オクトーバー”は潜航を開始する。
ショボン達は別の手段でそれぞれ逃げさせる他なく、潜水艦に同乗させることは出来ない。
始めの頃の予定は今や原形を留めておらず、一人でも多く敗走することが最優先となっていた。

陣頭指揮を執るのはキュート・ウルヴァリン。
ワタナベをティンバーランドの作戦に加担させた張本人であり、クックルやビロード・コンバースよりもずっと上の立場にいる人物だ。
彼女は狂気と知性を兼ね備えた悪魔のような性格をしている。
こうすることが今は最善の手であり、欲を捨てなければならない事は明白だった。

(’e’)「しかし、この島にまさかニューソクがあったとは、思いもよらなかったなぁ!!
   ははは、貴重な一基をまさかあんな風に使うとは!!」

ジョーンズの興奮は冷めるどころが、むしろより一層過熱している。

(’e’)「見たまえよ、君!!
   こんな光景、一生の間に一度見られるなんて極めて、実に幸運なことなのだよ!!」

同じ喫茶店にいる客たちは皆ジョーンズの奇行よりも、巨大な雲と地震に対する恐怖の方が圧倒的に勝っている。
あれこそが破滅の炎であり、天罰であると叫ぶ信心深い者もいたが、誰も聞く耳を持たない。
考えているのは皆同じである。
あれは一体、何なのだ。

884名も無きAAのようです:2017/12/04(月) 21:03:01 ID:v4yXdykE0
グルーバー島での騒動は終わったはずではないのか。
まだ悪夢から覚めてはいないのか。

(’e’)「いやぁ、いいなぁ!!
   あの炎!! あの雲!!」

無邪気にはしゃぐジョーンズの傍らで、ワタナベは腕時計に目を向けた。
果たして、後数時間で何がどう変化し、結末と言う一枚の布を織りあげるのか。
雲よりもワタナベの関心はそちらの方にあった。
ジュスティア、ティンバーランド、そしてデレシア。

この三つ巴の状況下では、何が起きてもおかしくないのだ。
それこそ、一生に一度見る事が出来るかどうかの物になるかもしれない。

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         ィ'/三三三三/| .| /三三三三三三三三三|三三三三三三三三三ニハ  |
        イ/三三三三/ .| .| |三三三三三三三三三 |三三三三三三三三三三.|   |
      /   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |  |. `=ニニ三三三三三三ニ|三三三三三三三三三三ノ  |
     //          _ | ..|. , -.、           |_________     _|
    ./ ./          ィ =ッ/  ! l || l            .| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄     |i|
  ./_|           ̄/.  !  `.-.'            .|.=============|i|
  |__|           /   .|            August 13th PM00:47
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(=゚д゚)「……」

ζ(゚ー゚*ζ「……」

車内は沈黙で満ちていた。
状況説明は極めて手短に済ませられ、余計な詮索は一切行われなかった。
両者はこの島で起きたこと、起きようとしていることを理解し、どのように動くべきなのかを共通認識した。
互いに意見が一致したのは、この島を出ない事には事態の大きな変化は見込まれない事だった。

トラギコ・マウンテンライトはライダル・ヅーの遺体をジュスティアに運び、デレシアは旅を続けるために島を出なければならない。
オアシズに戻るのも一つの手だが、これ以上リッチー・マニーに迷惑をかけたくはない。
ティンバーランドはデレシアを狙ってまた何かしてくるだろう。
となれば、今度こそオアシズは沈められかねない。

一方で、デレシアは安全にブーンとヒート・オロラ・レッドウィングの両名を連れて島から出るという極めて難しい状況下にあった。
力で押し通ろうと思えば可能だが、それをすることでジュスティアを全面的に敵に回すことになる。
世界中の街にいる派遣警察官に手配されれば、それこそ逃避行となってしまう。
追手を含め、ジュスティア関係者を皆殺しにすればそれも済むが、それは面白い話ではないし、ブーンの教育上よくない。

そんなデレシアの状況とは異なり、トラギコはただ車を運転してジュスティアに向かえばいいだけだった。
勿論、そんな簡単にトラギコを見逃すはずがない。
彼は多くを知りすぎている。
特に、ティンバーランドに関する情報は現職の警官で最も多く得ているはずだ。

(=゚д゚)「俺の提案は受け入れるのか、入れないのか?」

885名も無きAAのようです:2017/12/04(月) 21:05:37 ID:v4yXdykE0
ζ(゚ー゚*ζ「悪くない提案だけど、もうひと押ししましょうか」

トラギコから受けた提案は、実に彼らしいものだった。
彼はティンバーランドから命を狙われており、単独でジュスティアまで生きて到着するのは困難だと考えていた。
そこで、デレシアをジュスティアに連れて行きそこで解放することを条件に、トラギコの護衛を頼んだのだ。
男としてのプライドやその他諸々を捨てた提案に、デレシアはトラギコへの評価を更に上げることとなった。

この男は矜持の捨て所を知っている。
かつてジョルジュ・マグナーニが正義と言う光が生み出す影として生きてきた時でさえも、彼は矜持を捨てなかった。
彼は警官で在り続けようと、その矜持だけは最後まで握っていた。
握り続けていたからこそ、彼は警官でいられた。

だがそれを捨てた今、ジョルジュはただの独善者の尖兵となってしまった。
対してトラギコは、最初から捨てるタイミングを知っているだけに、矜持によって存在が保たれているわけではない。
ある意味で産まれながらの警察官であり、生まれついての才能だ。

(;=゚д゚)「もうひと押し? あのなぁ、状況は分かってるだろ?
    俺もお前も、欲を張って平気な立場じゃねぇラギ」

ζ(゚ー゚*ζ「いいえ、大丈夫よ。
      そのためにまず、オアシズに行きましょう」

(;=゚д゚)「あのなぁ、俺の動向は監視されてるラギ。
    あの小僧たちを乗せてる時間も、そんなスペースも、ましてや隠し通せるだけの余裕はねぇラギ」

オアシズによるという行為に、トラギコが思いついたことは確かに含まれている。
ブーンとヒートを連れてこの島を出なければ、まるで意味がない。
しかし、逃げる際には人数が少ない方が絶対的に有利なのは確かだ。
怪我人と子供を加えれば、トラギコが考えている方法でジュスティアに至るのは不可能だ。

ζ(゚ー゚*ζ「貴方、ジュスティアに戻るよう言われているんでしょう?
      オアシズであった事件の証人として。
      だったら、オアシズに忘れ物をしたと言えばいいだけよ」

(=゚д゚)「……何で知ってるかについては訊かねぇとして、だ。
    忘れ物ってのは?」

ζ(゚ー゚*ζ「白いジョン・ドゥよ」

白い装甲に木をあしらった金色のロゴ。
その悪趣味な棺桶は、オアシズに保管されている。
外装の変更だけならまだしも、起動コードの書き換えまで行われたそれは“ゲイツ”全滅に大きく関与する物だ。
使用されている部品から内藤財団に行き着く可能性は大いにある。

それがあればトラギコの説明にも説得力が出てくる上に、ジュスティアにティンバーランドの存在を認知させる材料になる。

(=゚д゚)「それで、それを積んだらどうするラギ?」

886名も無きAAのようです:2017/12/04(月) 21:16:06 ID:v4yXdykE0
ζ(゚ー゚*ζ「マニーに言って、車を用意してもらいましょう。
      今乗っている車に貴方とヅーを。
      もう一台にジョン・ドゥと私達を。
      そうすれば全員でジュスティアに行けるわ」

(;=゚д゚)「……」

ζ(゚ー゚*ζ「そうそう。 あの記者さんも呼ばないと、たぶん、今日中に殺されるわよ」

アサピー・ポストマンという男はトラギコと共にこの島で動き、多くの事件をその目に焼き付け、写真に収めた男だ。
すでに極めて利用価値の高い二枚の写真を入手しており、これ以上生きていられればティンバーランドにとっては邪魔にしかならない。
ならば、ジュスティアに連れて行きそこで保護させておけばまだいくらかは安全なはずだ。
エラルテ記念病院の事を記事にするなど、ジュスティアからは良く思われていないだろうが、それ故に監視の目は強くなる。

(=゚д゚)「だけど、今あいつがどこにいるのか俺は知らねぇラギ」

ζ(゚ー゚*ζ「大丈夫よ。 今頃オアシズにいるから」

トラギコは無言だったが、心中でアサピーの境遇に少しだけ同情を禁じ得なかった。

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アサピー・ポストマンは仔犬のように震えていた。
それでもカメラを手放さないのは、彼の体に染みついたカメラマンとしての本能故だろう。
昨夜は幸運に見舞われ、ジョルジュの写真の撮影に成功し、今朝は逮捕されたショボン達の姿を撮ることが出来た。
それを記事にして印刷し、外部委託によって世界中に配る算段が出来たところで気を失い、気が付けば窓のない部屋に寝かされていたのだ。

自分の置かれた状況をまだ理解できていないアサピーは、とにかく、部屋の写真を撮ろうと考えた。
だが彼のカメラに入っているはずのフィルムは抜き取られ、何も出来ない状態になっていた。
分厚い鋼鉄の扉は固く閉ざされ、アサピーの細腕でどうにかなるものではなかった。

(;-@∀@)「はぁ……」

とりあえず部屋の隅に座り、何か変化が起きることを待ち続け、すでに三時間以上が経過していた。
殺風景な部屋ではあったが、サンドイッチと紅茶の入った魔法瓶が用意されており、不自由はなかった。
正午が過ぎ、次第に不安が大きくなってきた頃、扉がゆっくりと押し開かれた。

(=゚д゚)「よう」

887名も無きAAのようです:2017/12/04(月) 21:17:04 ID:v4yXdykE0
現れたのはトラギコだった。
アサピーは泣きだしたくなるほどに安堵し、彼の元へと駆け寄り、抱き付いた。
その脳天をトラギコの拳が容赦なく襲い、たまらずその場にうずくまる。

(;-@∀@)「いってぇぇぇ……!!」

(=゚д゚)「男に抱き付かれる趣味はねぇラギ。
    それより、仕事ラギ」

(-@∀@)「へ?」

(=゚д゚)「お前、車は運転できるだろ?」

喜びもつかの間。
アサピーは再び不安な気持ちを抱いたが、同時に、期待している気持ちもあった。
トラギコがアサピーに何か物を頼む時、それは例外なく大きなスクープに直結している。
すでに手に入れた記事のネタだけで、アサピーは新聞社内で即日英雄となることが出来るだろう。

これ以上温存させるのもどうかと思うが、ネタはあればあるだけいい。
フィルムはトラギコに渡しているため、記事にするには時間がかかってしまう。
それを考えると、再び別のネタに関わることが出来れば出世の道が近付くことになる。
今はとにかく走り続けるしかないことに、アサピーは気付いていた。

(-@∀@)「え、えぇ……」

(=゚д゚)「よし、俺とドライブするラギ。
    いいとこに連れてってやるよ」

(-@∀@)「嫌な予感しかしないんですが……」

(=゚д゚)「あ? 俺の言う事が怪しいってことラギ?」

(;-@∀@)「いえいえ、めっそうもない!!」

(=゚д゚)「なら素直に言う事をきけばいいラギよ。
    スクープの約束、ちゃんと守ってるだろ?」

そう。
確かにトラギコはスクープの現場にアサピーを遭遇させ、写真の撮影までさせている。
その写真が全てトラギコの手元に渡っていることを除けば、約束は守られているのだ。

(;-@∀@)「ぐぬ……
      分かったよ、分かりましたよ!!
      それで、どこに行けばいいんですか?」

(=゚д゚)「ジュスティア」

888名も無きAAのようです:2017/12/04(月) 21:18:16 ID:v4yXdykE0
時間が停止した気分だった。
今、トラギコが口にした街の名前を知らないわけではない。
警察の総本山であり、今、この島で最も活発な活動をしている街の名前だ。
ある意味、世界で一番安全な場所かもしれないが、アサピーのような人間にとっては極めて居心地の悪い場所だ。

ジュスティアから恨まれている身で街に入ろうものなら、熱烈な歓迎を受けることは間違いない。
最悪の場合新聞記者としての生命が断たれかねないのだ。
それだけでなく、トラギコがジュスティアに戻ればどういう扱いを受けるのか、想像に難くない。

(;-@∀@)「本気ですか?」

(=゚д゚)「当たり前だろ」

それでも街に向かうからには、何かしらの算段、勝算があるのだ。

(;-@∀@)「じ、じゃあやりますよ……」

(=゚д゚)「なら、今から行くラギよ」

(;-@∀@)「えぇ?!」

(=゚д゚)「善は急げって言うだろ?
    お前はただ俺の後について車を走らせればいいだけラギ」

そう言ってさっさと部屋を出て行くトラギコの後ろについて行くと、アサピーは自分がいた場所がどこであるのかを理解した。
ここは、オアシズだ。
オアシズの船倉付近にある小さな部屋に、アサピーはいつの間にか連れ込まれていたのだ。
船内を歩き、見たことのある景色にアサピーは安堵すると同時に疑問を抱いた。

(-@∀@)「そう言えば、僕をここに連れてきたのは誰なんで?」

(=゚д゚)「さぁな。 気にしない方がいいラギ」

そしてトラギコはスモークガラス使用の白いワゴン車と白いSUVの前で立ち止まる。
詳しい話の無いまま、トラギコはアサピーにSUVに乗るよう無言で指示をした。
運転席に座り、エンジンをかける。
静かにエンジンが始動し、車内に明かりが灯る。

後部座席と運転席は分厚い板で仕切られており、こちらから後ろの様子を見ることは出来なかったが、バックモニターが装備されているおかげで駐車には困らなそう立った。
一体アサピーは何故車を運転しなければならないのだろうか。
そう思った時、聞き慣れた声が車内のスピーカーから聞こえてきた。

(=゚д゚)『どうだ? 運転できそうか?』

隣に停まるワゴン車の窓が降り、トラギコがそこから顔をのぞかせて耳を指さした。

(-@∀@)「トラギコさん!!
      すげぇ!! これ最新の遠距離無線通信機ですよね!!」

(=゚д゚)『あぁ、盗聴防止のな』

889名も無きAAのようです:2017/12/04(月) 21:19:21 ID:v4yXdykE0
(-@∀@)「すっげぇ!!」

流石はオアシズ。
惜し気もなく高級な装置を車に搭載し、それをこうして提供してくれるとは。

(#=゚д゚)『うるせぇ馬鹿。
     いいか、俺の言った通りに運転するラギ』

(-@∀@)「あ、はい……」

窓を戻して、トラギコが先に車を発進させる。
その後ろにアサピーの乗るSUVが続く。
オアシズから降車した二台を、オアシズの市長が複雑な表情で見送っていたことにアサピーは気付くことが出来なかった。

¥・∀・¥「……」

勿論。
それ以外の視線に気づくことなど、アサピーだけでなくトラギコも不可能だった。

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           ∨. . . . ./. .// . .  ̄i 、_彡芹ミ' / /./i . .i . . . .,j.|
        、__,ノ. . . . //. ./ ̄{. . . . .|.| __  {t{'./ /.厶j . j| . . .,ノiノ
       `て. . . . . .lハ|{  人 . . . い二  ̄i′ノイjナ7. ノj. / ′
         ⌒ミ. . . . . 人\__, \. . トミ        {_,ノィ´.,|(___,
        __,ノ. . . . ´{. .`ト _,、 ヽ.{         t .ノ 从.ノj,厂
        ‘⌒て. . . .弋 ト|   {        --- , /  ノ′
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   人__       `丶  \ { \        /
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観測者からトラギコが一度オアシズに立ち寄った事を聞き、ビロード・コンバースは思わぬ幸運に内心で歓喜した。
一石二鳥とは正にこの事。
忘れ物をしたと連絡があったらしいが、オアシズに立ち寄ったのはデレシアを回収するために違いない。
どんな理由があったのかについては分からないが、あの二人が協力関係にあるのは紛れもない事実。

二人まとめて殺すことが出来れば、ティンバーランドの脅威が二つ減ることになる。
極めて僥倖と言わざるを得ない。

( ><)「……くくっ」

ヅーの棺桶に仕込んだ高性能爆弾を使えば、車ごと全員粉々に吹き飛ばせる。
デレシアと言うテロリストによる特攻によってトラギコとヅーが殺された、としておけば万が一デレシアが生き残ったとしても、指名手配によってどこまでも追う事が出来る。
どう転んでもビロードにとって都合のいい結果にしかならない。
仕掛けた爆弾は極めて性能が高く、小型で、そして専用の探知機が無ければ決して発見できない。

発信機から指定された距離から離れた時に爆発する設定は、万が一にも爆殺が失敗しないための保険だ。
遠隔操作での爆破も可能だが、やはり、タイミングが肝心となるため、ビロードとしては後者の装置による起爆が望ましかった。
ジュスティアに行く前に、トラギコを乗せたワゴンは橋の付近、人気のない場所で爆発四散する。
グルーバー島を出る頃には、木っ端みじんになっているだろう。

890名も無きAAのようです:2017/12/04(月) 21:20:41 ID:v4yXdykE0
思いがけない展開だ。

o川*゚ー゚)o「嬉しそうだな、同志ビロード。
       あぁ、ベルベット、と呼ばないといけないんだったな」

( ><)「人払いはしてあるから大丈夫なんです。
     トラギコがジュスティアに向かったんです、しかも、デレシアを乗せて!!」

興奮を隠そうともせず、ビロードは転がり込んできた最高のニュースをキュート・ウルヴァリンに伝えた。
さぞや喜んでくれるだろうと期待したのだが、キュートは眉を潜めた。

o川*゚-゚)o「……車は何台だ?」

( ><)「……? 二台なんです」

o川*゚-゚)o「どこかに立ち寄ったのか?」

( ><)「オアシズに……」

直後、キュートの脚がビロードの膝を襲った。
バランスを崩した彼の胸倉を掴んで引き寄せ、キュートは静かに告げる。

o川*゚-゚)o「やってくれたな、この馬鹿が。
       お前のせいでデレシア達はこの島から大手を振って逃げるだけじゃなく、余計なものまで連れ帰ることになった。
       私の計画はこれで終わりだ。
       頭の中に糞でも詰まってるのか、お前は」

今にも噛み付きそうな距離で、今にも喉仏を握り潰されるほどの剣幕。
ビロードは何が起き、何故、自分が今キュートに“本当に”殺されそうになっているのか理解できなかった。

(;><)「え? え?」

o川*゚-゚)o「頼みの綱は円卓十二騎士だけだ。
       手遅れだと思うが、今、起爆させろ」

言われるがまま、ビロードは言葉に従って起爆装置の電源を入れた。
だが、その日ティンカーベルで爆発音が聞こえることは一度もなかった。

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                           ‐― 〇 ――
                   , ⌒⌒ヽ      / l \
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891名も無きAAのようです:2017/12/04(月) 21:21:31 ID:v4yXdykE0
――ブーンは窓の外を流れて行く景色を見て、それから、ヒート・オロラ・レッドウィングの方を見た。
ジュスティアまでは四時間ほどで到着するということで、ヒートは少しでも体力を回復するために睡眠をとっている。
ブーンは彼女の傍に身を寄せ、自分も瞼を降ろして眠ることにした。
ヒートの呼吸に合わせ、ブーンも呼吸をする。

こうしているだけで、ブーンはこの上なく落ち着くことが出来た。

ζ(゚ー゚*ζ「……」

その様子を、デレシアは慈母の笑みを浮かべて眺めていた。
リッチー・マニーに提供させたSUVの後部席は極めて性能のいいサスペンションの力で振動をほとんど感じることもなく、また、外部の雑音も聞こえてこない仕様になっていた。
二人分の寝息だけが聞こえる、静かな車内。
もう間もなく、車はバンブー島に通じる橋へと至るところだった。

前方を走るワゴン車にはトラギコが乗っており、その後ろには極めて重要な証拠品が収められている。
一つはライダル・ヅーの遺体。
一つは白いジョン・ドゥの残骸。
そしてもう一つは、デレシア達の移動手段である大型バイク“アイディール”である。

大型バイクを積んだワゴン車には余計なスペースがなく、ジョン・ドゥの部品を全て載せることは出来なかった。
それでも、かなりの収穫物になるはずだとデレシアは考えていた。
ティンバーランドとしてはあまり表に出したくないだろうし、ジュスティアに知られたくないはずだ。
最も彼らが嫌っているのは、トラギコが生きてジュスティアに戻る事だろう。

オアシズで起こった事件の詳細を知っているだけでなく、グルーバー島で起きた事件にも深く関わり、ティンバーランドの事についても知ってしまった。
恐れるべき厄介な生き証人。
所有する証拠品も全てがティンバーランドに不利益を生み出す存在だが、厄介極まりない存在故に安易な方法で殺すことが出来ない。
暗殺に複数失敗し、ついにここまで来てしまった。

最後に選んだ手段に間違いはなかったが、そのタイミングが間違いだった。
トラギコと合流した段階でデレシアは気付いていたが、何事もなくオアシズに到着し、アイディールをワゴン車に積む段階でブーンも気付いた。

(∪´ω`)「……お?
      へんなおとが、します……」

ワゴン車の前でアイディールが積み込まれるのを見ながら、ブーンは小首を傾げた。

(=゚д゚)「あ? 俺の腹の音か?」

トラギコがブーンの言葉に反応した。
すでに面識のある二人の距離は心なしか近く、ブーンもトラギコに怯えた様子は見せていない。

(∪;´ω`)「ち、ちがいます……
      なんか、じーって、へんなかんじのおとです……」

ζ(゚ー゚*ζ「あら、やっぱり。
       刑事さん。 ヅーの棺桶、交換した方がいいわよ」

アイディールの横に並ぶ黒い棺桶を指さし、デレシアが提言する。
その言葉にトラギコは噛み付くこともせず、純粋な質問で返した。

892名も無きAAのようです:2017/12/04(月) 21:24:01 ID:v4yXdykE0
(=゚д゚)「……何かしてくるはずだと思って調べたんだが、見逃しがあったってことラギ?」

彼ほどの警戒心があっても、知識が無ければあの棺桶はただの棺桶にしか見えない。
正しい知識を持っている人間は専門家の中にも数えるほどしかいない事だろう。
何より、専門の道具を用意しなければ発見は不可能なのだ。

ζ(゚ー゚*ζ「そう簡単に気付けないだけよ。
      あの棺桶自体が爆弾なの」

ブーンに視線で車に乗るよう促す。
大人が困る姿は見せたくない。
素直に頷き、ブーンはヒートが待つSUVに乗り込んだ。

(;=゚д゚)「マジか……」

オアシズでは爆弾解体の経験があると言っていたトラギコは、己の見逃しに頭を抱えた。
彼の警戒は間違っていなかったし、手段も恐らくは正しかったはずだ。
気にすることなど何もないだろうに、責任感の強さは流石警察官と言うべきか。

ζ(゚ー゚*ζ「気に病む必要はないわ。
      それより、そろそろ出発するから運転手を連れて来てもらえるかしら?」

(=゚д゚)「あぁ、分かったラギ。
    ……だけどその前に、もう一度確認するラギ。
    俺はお前らをジュスティアまで連れて行く。
    お前は俺が殺されないようにジュスティアまで付いてくる。

    到着するまでの間の関係ってことで良いラギね?」

ζ(゚ー゚*ζ「ふふ、用心深いのね。
      貴方のお願いを叶えてあげたでしょ?
      その最後の仕上げは、刑事さん、貴方の手でしないとね」

無表情のまま、トラギコは溜息を吐いた。
この男は物事の優先順位を考え、的確に立ち回れる人間だ。
デレシアを追っているという立場を忘れ、力を貸すことで得られる利益の大きさを理解している。

(=゚д゚)「分かってるラギ。 言っただろ、確認だって」

そう言い残し、トラギコはアサピーを迎えに行った。
実に優秀な警官だが、いつかその優秀さが仇となって命を失わなければいいのだがと、デレシアは静かに思った。

ζ(゚ー゚*ζ「……ロウガ、聞いていたわね?」

物音ひとつさせずに、黒いジャケットを隙なく着込んだロウガ・ウォルフスキンが物陰から姿を現す。
黒いつば広帽の下で、深紅の瞳が怪しげに輝く。

リi、゚ー ゚イ`!「はい」

893名も無きAAのようです:2017/12/04(月) 21:25:42 ID:v4yXdykE0
ζ(゚ー゚*ζ「棺桶の入れ替えをしておいて。
      それと、あれは手に入ったかしら?」

首肯し、ロウガが懐から取り出した茶封筒を手渡す。

リi、゚ー ゚イ`!「こちらです」

ζ(゚ー゚*ζ「ありがとう。
      イルトリアに戻ったら、皆によろしく言っておいて」

リi、゚ー ゚イ`!「かしこまりました。
       どうかご無事で」

ζ(゚ー゚*ζ「えぇ」

握手を交わし、二人は別れる。
ロウガは静かに姿を消し、デレシアは車に乗る。

ノパ⊿゚)「ジュスティアに行くんだってな。
    あたしらお尋ね者じゃねぇのか?」

扉を閉めると、半臥の状態でくつろいでいるヒートが当然の疑問を口にした。
街中に警察官のいるジュスティアに降り立てば、半日ともたない。
トラギコがいない今なら、今後の動向を話しても大丈夫だと考えたデレシアは手短に伝えることにした。

ζ(゚ー゚*ζ「ジュスティアはあくまでも経由する場所だから問題ないわ」

ノパ⊿゚)「経由?」

ζ(゚ー゚*ζ「貴女の“レオン”を直さないといけないでしょ?
       だから、ラヴニカに向かうわ」

――“ギルドの都”、ラヴニカ。
それは、永久凍土の地に広がる街、シャルラを越えた先にある、無数のギルドによって構成された巨大な都市。
世界中に流通している電子機器や棺桶の修復に深く関与しており、例えコンセプト・シリーズの棺桶であっても修理が出来る。
ヒートのレオンは極めて重要な切り札であり、ここで失うのは惜しい。

幸いなことにレオンの損傷は軽微であり、別の棺桶の部品を流用すれば修理は可能なはずだ。

ζ(゚ー゚*ζ「ラヴニカには?」

ノパ⊿゚)「いいや、行ったことねぇな。
    だけど、偏屈な人間が集まってる街なのは聞いたことがある」

(∪´ω`)「へんくつ?」

ζ(゚ー゚*ζ「変わっている、ってことよ」

(∪´ω`)゛「おー」

894名も無きAAのようです:2017/12/04(月) 21:27:21 ID:v4yXdykE0
ζ(゚ー゚*ζ「棺桶の入れ替えをしておいて。
      それと、あれは手に入ったかしら?」

首肯し、ロウガが懐から取り出した茶封筒を手渡す。

リi、゚ー ゚イ`!「こちらです」

ζ(゚ー゚*ζ「ありがとう。
      イルトリアに戻ったら、皆によろしく言っておいて」

リi、゚ー ゚イ`!「かしこまりました。
       どうかご無事で」

ζ(゚ー゚*ζ「えぇ」

握手を交わし、二人は別れる。
ロウガは静かに姿を消し、デレシアは車に乗る。

ノパ⊿゚)「ジュスティアに行くんだってな。
    あたしらお尋ね者じゃねぇのか?」

扉を閉めると、半臥の状態でくつろいでいるヒートが当然の疑問を口にした。
街中に警察官のいるジュスティアに降り立てば、半日ともたない。
トラギコがいない今なら、今後の動向を話しても大丈夫だと考えたデレシアは手短に伝えることにした。

ζ(゚ー゚*ζ「ジュスティアはあくまでも経由する場所だから問題ないわ」

ノパ⊿゚)「経由?」

ζ(゚ー゚*ζ「貴女の“レオン”を直さないといけないでしょ?
       だから、ラヴニカに向かうわ」

――“ギルドの都”、ラヴニカ。
それは、永久凍土の地に広がる街、シャルラを越えた先にある、無数のギルドによって構成された巨大な都市。
世界中に流通している電子機器や棺桶の修復に深く関与しており、例えコンセプト・シリーズの棺桶であっても修理が出来る。
ヒートのレオンは極めて重要な切り札であり、ここで失うのは惜しい。

幸いなことにレオンの損傷は軽微であり、別の棺桶の部品を流用すれば修理は可能なはずだ。

ζ(゚ー゚*ζ「ラヴニカには?」

ノパ⊿゚)「いいや、行ったことねぇな。
    だけど、偏屈な人間が集まってる街なのは聞いたことがある」

(∪´ω`)「へんくつ?」

ζ(゚ー゚*ζ「変わっている、ってことよ」

(∪´ω`)゛「おー」

895名も無きAAのようです:2017/12/04(月) 21:28:06 ID:v4yXdykE0
ノパ⊿゚)「でもよ、ジュスティアから出て行くんならもう一度スリーピースを越えないといけないだろ?
    トラギコ抜きで平気なのか?」

街を覆う巨大な三枚の防壁は、世界で最も優れた検問所の役割も担っている。
世界最高の検問を三度潜り抜けなければジュスティアに入ることも、出ることも出来ない。
ジュスティアよりも北に位置するラヴニカに行くには、ジュスティアに入ってジュスティアから出て行かなければならないのだ。

ζ(゚ー゚*ζ「大丈夫。 エライジャクレイグの新型車両がちょうど停まっているから、それに乗って行くわ」

鉄道都市“エライジャクレイグ”。
それは世界中に敷かれた線路を使用する全ての鉄道車両が停まる、終着の街。
テ・ジヴェを保有するシーサイドシュトラーセ鉄道もエライジャクレイグの一部であり、ポートエレンからジュスティア、そしてその途中まで海岸沿いに走る列車を担当している。
つまり、街の一部である鉄道が世界中を駆け巡っているという点で言えば、オアシズに極めて近い街なのである。

鉄道の恩恵は世界的に巨大であるため、線路が敷かれている街でも列車だけは特別な扱いを受ける。
スリーピースを通ってジュスティア内に入る列車は通常よりも手早い検問が求められるため、実際にスリーピースで受ける検問よりも簡易的になる。
列車から降りるのであればスリーピースでの検問を受けるが、列車から降りない場合か街から列車に乗る場合に限ってはその検問が免除される。
従って、スリーピースをもう一度突破する必要はないのだ。

ノパ⊿゚)「チケットがいるだろ?
    結局、その発行に……
    ってことは分かってるだろうから、用意は済んでるわけか」

ζ(^ー^*ζ

デレシアは笑みで肯定を示したのであった。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

  Q: 糸は針を見る。 針は布を見る。 布は人を見る。 では、人は何を見る?

  A:人は時を見る。
   これまでに己が縫い上げてきた物。 今縫い上げている物。
   そして、これから己が縫い上げる物。
   全て、時を見ているのだ。

                                         ――“魔女”の答え

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

バンブー島を走り抜け、トラギコ達を乗せた車はジュスティアへと通じる橋の前にもう間もなく到着するところだった。
大陸に通じる巨大な橋が見えてきた事で、トラギコはジュスティアに戻るのだと痛感した。
オアシズに乗り込む前に寄った以来だが、随分昔の事のように感じる。
この島であった“デイジー紛争”以来、ジュスティアとティンカーベルを繋ぐ橋の重要性は極めて高いものになっていた。

いわば、ジュスティアとティンカーベルの友好の証のような物だ。
これがなければティンカーベルはただの寂れた街でしかなく、観光での発展も安全な街もなかっただろう。
橋の前に立つ二つの人影を見て、トラギコはゆっくりと速度を落とした。

(´・_・`)

896名も無きAAのようです:2017/12/04(月) 21:29:53 ID:v4yXdykE0
<_プー゚)フ

円卓十二騎士の二人だ。
トラギコがオアシズに寄っている間にここに来たのだろう。
そして、彼らが受けている使命はデレシアの捕獲。
今のトラギコとは相反する目的を有している。

二人の前で停車させ、トラギコは窓を開けて身を乗り出した。

(=゚д゚)「よう」

車から降りずに、トラギコはそう声をかける。
二人の騎士は強化外骨格のコンテナを背負い、鋭い眼光をトラギコに向けている。

(´・_・`)「ジュスティアに行くのか」

ショーン・コネリの問いに、トラギコは皮肉たっぷりな笑顔を浮かべた。

(=゚д゚)「まぁな。 呼ばれちまったからよ」

(´・_・`)「話によれば車は一台だけだが?」

(=゚д゚)「予定は変わるものラギ」

しばしの沈黙。
海風がトラギコの顔を殴るように吹き付ける。
ショーンが一歩踏み出し――

(´・_・`)「そうだな。
    それなら仕方ない」

――そして、トラギコに道を譲った。

(=゚д゚)「……いいのかよ」

(´・_・`)「俺達が受けた指令は、デレシアを捕まえろ、だ。
    本部から帰還命令の出ている人間の足止めをしろ、ではない」

(=゚д゚)「わりぃな」

<_プー゚)フ『借りは、これで返したぞ』

(=゚д゚)「へっ、律儀な奴ラギ」

別れの言葉はそれで十分だった。
彼らは彼らの仕事がある。
トラギコはジュスティアに向かい、オアシズで起こった事件の真相を語る。
騎士たちはジュスティアの街に巣食う寄生虫の動きを見張るため。

二台の車が走り出す。

897名も無きAAのようです:2017/12/04(月) 21:30:43 ID:v4yXdykE0
(=゚д゚)「……」

島が遠ざかる。
一直線に続く橋の先に待つのは何か、今は、まるで予想が出来ない。
トラギコは街につき次第、すぐに軍から尋問を受けることになるだろう。
ティンバーランドという組織を認知するかどうかは、白いジョン・ドゥの残骸次第だ。

助手席に置かれた小型無線機に手を伸ばし、その向こうに声をかける。

(=゚д゚)「おい、カメラマン」

無線を使い、後方を走るアサピーに連絡を入れる。

(-@∀@)『はい?』

(=゚д゚)「ジュスティアに着いたら、フィルムはお前に渡す。
    後は任せるラギ」

(-@∀@)『え?! いいんですかい?!』

(=゚д゚)「俺が持ってるってことになれば、連中は俺を狙うだろう。
    そうなった時に、保険としてお前が持っていてほしいラギ。
    到着して俺から連絡が三日以上取れなかったら、そのフィルムを世間に公表するラギ。
    いいな?」

すでにジュスティア内にティンバーランドの細胞が紛れ込んでいることは確実だ。
ベルベット・オールスター程の立場の人間であれば、街の中にいる人間を買収してトラギコを殺させることが出来るだろう。
警察署内には出世を邪魔され、狙っていた事件の手柄を先に取られただけでトラギコを目の敵にしている人間が大勢いる。
彼等なら飲食物に毒を盛ることも、トラギコを尋問の過程で殺すことも出来る。

そうなってしまえば、せっかく手に入れた証拠も意味がなくなる。
ならば、一度トラギコの手にあると見せた証拠品を別の人間の手に渡し、最悪の場合に備えておくのは当然のことと言えた。

(=゚д゚)「面倒をかけるが、頼んだぞ」

何かアサピーが言っていたが、トラギコは無線機の主電源を切った。
当然のことだが、フィルムを全て渡すというのは嘘である。
実際にアサピーに手渡すのは、狙撃の瞬間を捉えたフィルムとダミーのフィルムであり、ジョルジュが狼を撃ち殺す物については彼自身が管理する。
これが無ければトラギコの行動はただの暴走となるが、そうでなければ、ジョルジュが犯罪者である証拠として残すことが出来る。

嘘を吐いた理由は二つある。
アサピーを欺くことで、万が一に備える事が出来るという点。
そして、この車に盗聴器が仕掛けられている場合に備えてという点だ。
この二点を考慮して、トラギコは半分の嘘を吐くことにした。

これから先、事態がどのように変化していくのかは今しばらく静観が必要になる。
準備を整え、次にまた同じような事態が起きたとしたら今度は自力で解決出来なければならない。
デレシアは気まぐれでトラギコに手を貸しただけにすぎず、もしもその助力が無かったら今頃島は修復が出来ない程の混沌に包まれていた事だろう。
混沌の中でいくつもの主導権が奪われ、いくつもの細菌がジュスティア内に潜り込んで、内部からジュスティアを崩壊させる原因に繋がったかもしれない。

898名も無きAAのようです:2017/12/04(月) 21:32:26 ID:v4yXdykE0
同時に、ティンバーランドという秘密結社の危険性がよく分かった一件でもあった。
本当に今追うべきなのは、デレシアではなくティンバーランドなのかもしれない。
オセアンからここまで追ってきて、デレシアは幾度となくその尻尾を見せたが、掴ませるまでには至らなかった。
否、こちらが掴もうという気にならなかった、というべきだ。

彼女がいたから解決した事件や状況を考えると、捕えるのはあまりにも意味がなかった。
ひょっとしたら、オセアンで起きた事件もティンバーランドが関係しているのではないか。
憶測でしかないがその可能性は極めて高く、フォレスタで捕まえた男が消えた理由も説明がつく。
デレシアに関わり始めた時からすでに自分はレールの上に乗っていて、そのレールの続く先も分からないまま走り出していることに気が付いてしまう。

――果たして、自分がこの先向かうのは一体どこなのだろうかと、トラギコは思わざるを得なかった。

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                              ┓
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    `-、_ニニニ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄二二二二二二二二' ̄ ̄ ̄`,二二二二ニイ*√]
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原子力潜水艦“レッド・オクトーバー”は海底を北に向けて航行していた。
ただでさえ淀んだ空気の船内には、険悪な空気が漂っていた。
険悪な空気を醸し出しているのは一人の女とそれに対峙する男だった。

(#゚∋゚)「また、やらかしたようだな」

从'-'从「馬鹿が勝手にやらかしただけでしょ」

クックル・タンカーブーツの怒号にも似た声を受けても、ワタナベ・ビルケンシュトックは怯まなかった。
怯えるどころか、真っ向から彼を見据えて嘲笑するような表情さえ浮かべている。
体格差は圧倒的。
腕力は言わずもがなだ。

(#゚∋゚)「同志達を危険に晒し、あまつさえ対象を逃がすようなことをしでかしたのは貴様だ!!」

从'-'从「煩い、怒鳴るなよ。
     あんたの声、頭に響いて不愉快なのよ」

ワタナベは非常に細身の体をしているが、体に染みついた暗殺術の数々は単純な膂力を凌ぎ得るだけのものがある。
人体の弱点を知り尽くし、必要最低限の力と動きで最速の死を与えてきたからこその自信となっている。
彼女が道具を使わずに殺めてきた人の数は、クックルが道具を使って殺めてきた数に決して劣らないだろう。
老若男女、必要とあれば容赦なく殺し続けてきた彼女にとって、体格の差など殺す上ではあまり関係はない。

(#゚∋゚)「同志ショボンもジョルジュも、シュールさえ捕まったんだ!!
    しかも折角得た同志を一人失う始末……!!
    全て貴様のせいだろ!!」

899名も無きAAのようです:2017/12/04(月) 21:34:09 ID:v4yXdykE0
从'-'从「私の何がどうしてそんなことに繋がるのかしら?
      勝手に失敗した連中の責任まで私に擦り付けるの、止めてもらえる?」

ワタナベは己の信念と欲望に従って動いただけである。
それがたまたま組織の不利益につながっただけの事。
気に病むことは何もない。

(#゚∋゚)「情報を流して全体の妨害をしたのは誰だ?!
    同志シュールの邪魔をしてトラギコを逃がしたのは誰だ?!」

言い終わるよりも早くクックルの握り拳がワタナベの顔に放たれ、ほぼ同時にワタナベは隠し持っていたナイフがクックルの心臓に向ける。
互いに攻撃が触れるほんのわずかな位置で止め、互いにまっすぐ相手の目の奥を睨んでいた。
瞬き一つせず、二人はその状態からゆっくりと元に戻る。

( ゚∋゚)「銃を降ろせ、同志クール」

二人の成り行きを完全な傍観者として見ていたクール・オロラ・レッドウィングは両手に拳銃を構え、二人に向けていた。
銃の安全装置は解除されており、撃鉄も起きている。
本気で撃とうと思えば撃てる状態だ。
刺激させるのは得策ではない。

川 ゚ -゚)「殺し合いをする必要はないだろう」

从'ー'从「じゃれてただけよぉ」

両手を挙げておどけて見せるワタナベ。
その目は嗤っていない。
折角のチャンスを奪われたことに対する激怒の炎すら、目の奥に浮かんでいる。
しかし表情は笑みのままで、クールは銃爪から指を離す事が出来なかった。

川 ゚ -゚)「どうだかな。 それより今は、同志ショボン達をどう助け出すかが問題だ」

从'ー'从「その辺は大丈夫でしょ。
     向こうにはキュートがいるんだしぃ。
     それに、こういう時のためのビロードとシナーでしょ?」

キュート・ウルヴァリンとビロード・コンバースはジュスティアの人間として、島に滞在している。
ショボン達を自由の身にするのは造作もない事だ。
それに、シナー・クラークスもまだ島に残っている。
彼が陽動を担当すれば、赤子の手をひねる要領でショボン達を解放することが出来る。

川 ゚ -゚)「さっき連絡があって、デレシア達が島を出たそうだ。
     お前の愛しいトラギコの手引きでな」

無事に島を出て行った先にあるのは、正義の都、ジュスティア。
トラギコのホームグラウンドにして、ティンバーランドが少しずつ浸食を開始している街。
警察の本拠地であり、世界の秩序を守らんとする世界最大の治安維持思想の集まり。

900名も無きAAのようです:2017/12/04(月) 21:36:09 ID:v4yXdykE0
从'ー'从「……ふぅん。
     そっちは仕損じたんだぁ。
     残念ねぇ」

一度でも戦いを見れば、あのデレシア達がそう簡単に仕留められるとは思えないはずだ。
あれは、ワタナベがこれまでの人生で出会った女の中で最も恐ろしい人種だった。
道具に頼って戦う人間とは違い、純粋な戦闘能力で他を圧倒する姿は、ワタナベにとってはある意味で理想の境地だ。
最小限の道具で最大の殺戮を行う姿は、快楽殺人者にとっては究極の姿だ。

絶対に勝てる状況でなければ、まずこちらの意図した通りには行かないだろう。
それが分かっていない人間が組織にいることが、ワタナベにとって不満な点だった。
無知は全体の危機につながる。
組織が潰れたとしてもワタナベは何とも思わないが、自分が困るのだけは断じて看過できない。

しかしながら、これから先、彼女達の旅がどうなっていくのか実に気になる。
世界を変えようとする秘密結社と敵対する、五指にも満たない旅人たち。
絡み合い、歪んだ作品は今新たな布へと仕上がった。
デレシアはほぼ単独で編み直し――reknit――を成し遂げたというわけだ。

从'ー'从「楽しくなりそうねぇ」

ワタナベの呟きを聞いて同意した人間は、その場に一人もいなかった――

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

                       Ammo→Re!!のようです
                     Ammo for Reknit!!編 The End
                               ・
                               ・
                               ・
                               ・
                               ・
                               ・

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901名も無きAAのようです:2017/12/04(月) 21:37:00 ID:v4yXdykE0
「ふーんふふふふふーん、ふーんふふふーん」

背の高い男だった。
肉付きがよく、引き締まった体は彫刻を思わせる美しささえあった。
だが陰鬱気な気配を漂わせる顔と剣呑な表情は、まるで堅気の人間には見えない。
しかし彼は堅気の人間だった。

上機嫌に鼻歌を歌い、不器用な笑顔を浮かべてリラックスしていた。
不審者そのものの姿だった。

「ふーふふふふふふーん、ふふふーふふん?」

時折途切れる鼻歌は、昔から伝えられる列車の歌だった。
男は列車のチケットを手に、喫茶店の窓から見える大型の列車を見つめていた。
白い巨体。
まるで白い大蛇のような姿でありながら、禍々しさは一切感じられない。

その列車の名前は“スノー・ピアサー”。
男の手元に置かれているパンフレットによれば、世界で初めて強化外骨格を使用した列車との事だった。
詳細はまだ非公開との事で、明日の始発式で公表されるらしい。
字面を見ても男にはその列車の凄さが分からない。

男には強化外骨格の意味は分かっていたが、その姿や実際の使われ方がよく想像できなかった。
それだけではなく、彼には過去の記憶がまるで残っていないため、これから乗ろうとする列車の背景についてもまるで分かっていない。
彼はオセアンと言う街で彼は大きな事件に巻き込まれ、生存が絶望的な状況下から意識を取り戻した人間だった。
ビルの高所から落ちた彼は病院で目覚め、ほとんどの記憶を失っていた。

彼の名前はサイレントマン。
病院でもらった仮の名前だったが、彼はその名前が気に入っていた。
退院の際に受け取ったのは何とかやりくりできる金額の金貨と最低限の衣類。
多くを望まなければどこかの街で働き、住めるように配慮された結果だった。

彼はこの街を去ることにしていた。
ジュスティアは、彼にとって育ての親のような街だが、今、彼にはある衝動があった。
意識を取り戻してからずっと脳内で蘇る女性に会い、自分の正体を尋ねたかった。

( ゙゚_ゞ゚)「らららー」

               R e r a i l
そして、人生のレールに乗りなおすのだ――
           ___________|\
          [|[||  To Be Continued....!    >
            ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|/

902名も無きAAのようです:2017/12/04(月) 21:42:15 ID:v4yXdykE0
これにてReknit!!編は終了となります

質問、指摘、感想などあれば幸いです

903名も無きAAのようです:2017/12/04(月) 22:51:33 ID:Soo8s5oA0
>>870

互いに会話をすることも出来ない上に、周囲の状況も分からない状態にされてもまだトラギコは護衛を付けるべきだと抗議した。
彼の講義は却下された。


抗議

904名も無きAAのようです:2017/12/04(月) 23:00:05 ID:Soo8s5oA0
>>878

防御しなければ捜査の精度は格段に下がり、最悪の場合は動かすことすらできなくなってしまう

操作

905名も無きAAのようです:2017/12/04(月) 23:07:29 ID:Soo8s5oA0
>>888

そしてトラギコはスモークガラス使用の白いワゴン車と白いSUVの前で立ち止まる。

仕様?

906名も無きAAのようです:2017/12/05(火) 10:07:24 ID:N4yYdoF20
投下乙
ギルドの都、ラヴニカとかギルドパクトがいたり迷路で競争してそう

907名も無きAAのようです:2017/12/05(火) 19:26:04 ID:FyOS55eg0
>>903-905
うわぉ……
ご指摘ありがとうございます!!

>>906
(Z→)90°-(E- N2 W)90°=1

908名も無きAAのようです:2017/12/05(火) 20:13:58 ID:m.6EcyJA0

オサム再登場は意外だった

909名も無きAAのようです:2017/12/10(日) 16:22:57 ID:PTv.d11I0
一先ず、reknit編乙。今回も戦闘続きで面白かったけどブーンが出て来た瞬間和む雰囲気も大好き…。この時代無理だろうけどブーン大好き組合の皆で海水浴とか行って欲しくなるね…。 エピローグでは懐かしいキャラが現れたし、初めから読み直しつつ次編も楽しみに待ってるよ。

910名も無きAAのようです:2018/01/13(土) 18:06:11 ID:LubOinKI0
まさかの葬儀屋仲間フラグ!?
でもデレシア様にはぼろくその評価いただいちゃったからなぁ・・・(身内以外には辛辣だからしゃーないが)
restart編見直して好きになったから活躍に期待

911名も無きAAのようです:2018/01/18(木) 09:48:23 ID:Nbwydewo0
最初から読み直して解ったわ
オサムは葬儀屋か
最初の方に出てきてたがっかりさん(デレシア目線)

912名も無きAAのようです:2018/02/02(金) 16:34:51 ID:MpKQRFpM0
俺的お気に入り棺桶一覧(起動コード含めて)
マン・オン・ファイヤ…火力モリモリ男のロマン
ラスト・エアベンダー…飛行型強化外骨格。正直使ってて楽しそう
マハトマ…腕用強化外骨格。使い方次第で脅威になる点が好き
アバター…戦い方がゾクゾクする・・・


他にもあるけど割愛。いちいち中二心くすぐられてたまらんぜ
まだまだ続きは先だろうけど楽しみにまってるぞ

913名も無きAAのようです:2018/02/02(金) 19:36:42 ID:cch2m9qc0
>>912
その一言で、私はとても救われました……
ありがとうございます

続きは今しばらくお待ちください

914名も無きAAのようです:2018/03/02(金) 13:49:05 ID:hCPC5V.U0
最近読み始めてやっと追いついた
歯車はリアルタイムで読んでて、こっちはある程度溜まったら……と思いつつ読まずにいたら、キリの良いところで終わっててラッキー

相変わらず登場人物がみんなかっこいい
これからは追いかけるぜ!

915名も無きAAのようです:2018/03/04(日) 08:06:00 ID:anLzR0HQ0
ショボンさんの警察時代は香りを見抜いたり根城を突き止めてたりしたんですか?

916名も無きAAのようです:2018/03/04(日) 17:35:54 ID:wmcYoMNg0
新作についてはもうしばらくお待ちください

その間と言っては何ですが、本編に出てきた('、`*川の昔話を描いた

('、`*川魔女の指先のようです
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/21864/1513341134/

をお読みいただいてお待ちいただければ幸いです。

>>914
追いかけていただけるよう、これから必死に書き進めてまいる所存です

>>915
小ネタにお気づきいただけて光栄の極みです

917名も無きAAのようです:2018/03/20(火) 11:43:01 ID:MeItrJ7o0
ワクテカ支援
  _
( ゚∀゚)ジョルジュ
http://boonpict.run.buttobi.net/up/log/boonpic2_2512.jpg
文字付
http://boonpict.run.buttobi.net/up/log/boonpic2_2513.jpg

918名も無きAAのようです:2018/03/20(火) 17:14:15 ID:AxyQdoRU0
>>917
うひょおおおお!!
ありがとうございますうう!!
イメージにピッタリなイラストありがとうございます!!

919名も無きAAのようです:2018/03/20(火) 20:27:33 ID:dN8fF8RQ0
渋みグッド

920名も無きAAのようです:2018/04/15(日) 23:54:45 ID:myDcEJm20
川 ゚ -゚)バツイチ()奥様

ttp://boonpict.run.buttobi.net/up/log/boonpic2_2518.jpg

921名も無きAAのようです:2018/04/16(月) 19:39:02 ID:Lni1d/FI0
>>920

あああああ、ありがとうございます!!
正にこのイメージです!
       ____
     /      \
   /  _ノ  ヽ、_  \
  / o゚((●)) ((●))゚o \  ほんとはすぐにでも投下したいんだお…
  |     (__人__)'    | でも書き溜めがなかなか終わらないんだお……
  \     `⌒´     /

922名も無きAAのようです:2018/04/16(月) 20:47:50 ID:YhMXv.0w0
待つさ いくらでもな
支援絵みて思ったけど
そういえばクールってどうやって棺桶操作してたんでしょう?

川 ゚ -゚)=つ≡つ           川[、:::|::,] =つ≡つ
 (っ ≡つ=つ            (っ ≡つ=つ
 /   ) ババババ           /   ) ババババ
 ( / ̄∪                ( / ̄∪

こんな感じで動きがリンクしてたのかな?

923名も無きAAのようです:2018/04/16(月) 21:22:42 ID:Lni1d/FI0
>>922
ttp://boonpict.run.buttobi.net/up/log/boonpic2_2519.jpg
イメージとしてはこんな風に棺桶内でセンサーを取り付け、
脳波などの信号を利用して遠隔操作をする形になります。
使用者はこういう風に動かしたい、と思うだけで動かせる医療技術の応用です。

924名も無きAAのようです:2018/04/17(火) 23:00:37 ID:/krqGYHA0
つまりGガン方式とみてよろしいですね?
棺桶ファイト、レディ……ゴー!!

925名も無きAAのようです:2018/04/18(水) 22:19:02 ID:uaLR5v.k0
あんたなら安心して待っていられる
体に気をつけて頑張ってー

926名も無きAAのようです:2018/08/16(木) 18:00:01 ID:e5lk5UKs0
ツヅキマダー?(・∀ ・)っ/凵⌒☆チンチン

927名も無きAAのようです:2018/08/16(木) 22:51:43 ID:gNwqOhZ60
>>926
( ・∀・)つスッ
(=゚д゚)夢鳥花虎のようです
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/21864/1525688264/

928名も無きAAのようです:2018/08/26(日) 23:07:01 ID:ZxnroBlY0
トラギコの過去編もいいが本編もう9ヶ月くらい来てないのね
待ってるわ

929名も無きAAのようです:2018/08/27(月) 06:14:50 ID:c.O/xg9U0
>>928
今年中には必ずや……必ずや投下いたしますので……

930名も無きAAのようです:2018/09/17(月) 12:23:38 ID:upY76Haw0
いつまでも待ってるよ

931名も無きAAのようです:2018/10/03(水) 12:17:50 ID:FggxNyDs0
↑ストーカーそのまんまで気持ち悪い

932名も無きAAのようです:2018/10/03(水) 20:10:42 ID:02crF5Lc0
【+  】ゞ゚)……

933名も無きAAのようです:2018/10/08(月) 18:13:07 ID:WrQfU.uE0
無理にとは言いませんが、公式の方に一言入れてもらえると安心します
「このブログは一か月以上〜」という広告?があると、「あぁここももう終わりか……」と思ってしまいます。。

934名も無きAAのようです:2018/10/08(月) 18:39:05 ID:4f2wXDes0
>>931
ストーカーは待つんじゃなくて追うんだぞ

935名も無きAAのようです:2018/10/08(月) 20:50:55 ID:opfiMnyw0
【+  】ゞ^)

936名も無きAAのようです:2018/12/27(木) 16:50:49 ID:sP8Mbeug0
大変長らくお待たせいたしました

明日の夜VIPでお会いしましょう

937名も無きAAのようです:2018/12/27(木) 20:59:13 ID:hJ1mS2Hg0
うおおおお!!

938名も無きAAのようです:2018/12/29(土) 08:52:32 ID:P5VaBOs60
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世界が一つになる事は出来ないが、私達は世界を繋ぐお手伝いをする。

                          エライジャクレイグの線路に刻印されている言葉

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August 14th AM 09:00

世界最長の街、エライジャクレイグ。
それは人々のたゆまぬ努力と理解、そして長い年月をかけて作り上げられた他に類を見ない鉄道都市だ。
彼らは大昔に作られた線路を発掘、修復してそれを使用可能な状態にし、多くの街の傍に線路が通る事を認めさせた。
街の中を通る線路もあったが、そこを停車駅にすることで人の行き来が活発になることから歓迎され、喜ばれた。

太古の技術を活用した列車は他に比類が無く、街が経営する複数の鉄道会社は世界に散る事で、互いに切磋琢磨して良い質を目指すことが出来た。
そして今日、エライジャクレイグが世界に向けてまた新たな列車を発表することになっていた。
始発式を行う街として選ばれたのは、“正義の都”と呼ばれ、屈指の防犯率の高さを誇るジュスティア。
純白の列車の前には百人を超す報道陣が詰めかけ、最新車輌の姿をカメラに収めている。

流線型の車体は空気力学を考えて設計され、滑らかな表面には傷一つ、継ぎ目一つ見当たらない。
窓ガラスすらなく、白い鳥の嘴のような外装が取り付けられているだけで、他には何もない。
外装が覆っているのは客車、貨物車も同様で、車輌同士の継ぎ目以外は全て白い装甲が多い、窓もない。
光沢は最小限に抑えられているのか、陽の光を浴びていても眩いフラッシュを浴びても反射する様子が無かった。

近未来的な全体の造形も然ることながら、一際目立つのは最前部と最後尾の車輌だ。
鋭く尖り、銃弾のような形をしている。
これまでに発表されてきた高速鉄道でも同じような形状はあったが、必ず、窓があった。
だが今回のそれには、窓もライトも、何もない。

一直線に並ぶ二十両の白い車両はまるで白い槍にも見える。
速度を求めているのか、それとも別の目的があるのか、今の状態からは想像しかできない。
ただ、この場にいる人間達にも分かっているのは、この車輌はかつてのどの時代にも存在しなかった試みによって誕生したという事だけだ。
軍用第三世代強化外骨格、通称“棺桶”を核として作られた世界初の列車。

何を目的に、そしてどのような棺桶が使われているのか、多くの人の興味を集めている。
発表の時間となり、エライジャクレイグからこの列車の車掌を任命されたジャック・ジュノが記者の前に現れた。
用意された演台の上に置かれていたグラスから軽く水を飲み、話を始めた。

豸゚ ヮ゚)「本日はお忙しい中お越しいただき、ありがとうございます」

ジュノは四十代前半の女性車掌で、これまでにも多くの列車を走らせ、鉄道ファンの中では知らぬ者はいない有名人だった。
“定刻のジュノ”、とは彼女の時間に対する精確さを表した渾名であり、彼女の誇りだった。
ややハスキーな声は彼女が長い時間をかけて作り上げた物で、マイクを使わずとも屋外にいる百人の記者に己の声を届けることを可能にしている。

939名も無きAAのようです:2018/12/29(土) 08:53:25 ID:P5VaBOs60
豸゚ ヮ゚)「ご覧いただいている車輌が、本日より運行を開始するスノー・ピアサーです。
     その名の通り、この車輌は雪の降り積もる土地を通るために特化した車輌で、主にシャルラ方面での走破を前提としています。
     二十両編成であり、貨物車、食堂車、ラウンジとバーを兼ねた車輌が二両ずつ。
     先頭と最後尾を除いた残りの十二両が寝台車となります。

     あまり難しい説明をしても仕方がありませんから、そうですね……」

そう言って、ジュノは腕時計を一瞥した。
銀色の腕時計。
彼女のトレードマークであり、彼女のかけがえのない仕事道具だ。

豸゚ ヮ゚)「二分で説明を済ませましょう」

記者の内、好奇心の強い数名が腕時計のストップウォッチ機能を静かに始動させた。

豸゚ ヮ゚)「事前発表にあったように、この車輌には強化外骨格を使用しています。
     詳しい説明は保安上できませんが、コンセプト・シリーズを使用しています。
     これにより、雪と雪崩による列車の遅れを失くし、定刻通りスムーズに豪雪地帯を通り抜ける事が出来ます。
     最前車輌をご覧ください」

言われるまでもなく、誰もがその奇妙な車輌を見ていた。
どのようにして前を見て、どのようにして運転をするのか。
滑らかに紡がれる彼女の言葉に傾注し、報道陣は一言一句を聞き逃すまいとメモを走らせる。

豸゚ ヮ゚)「あの白い外装、全てが我々運転手にとっての眼なのです。
     全ての車両も同様に、我々は列車の周囲全てを見る事が出来ます。
     最早、ガラスですらないのです。
     銃弾、汚水、爆弾など、あらゆるものから車輌とお客様、そして我々の眼を守るだけでなく、積もり固まった雪を砕く矛となります」

そして突如、ジュノはグラスに入っていた水をスノー・ピアサーにかけた。
水滴が白い外装に付着し、滴り落ちる――

「ええっ?!」

――はずだった。
だが水は一滴も落ちることなく、そして、外装は濡れてすらいなかった。
驚きの声を上げる記者たちに向け、ジュノは説明を始めた。

豸゚ ヮ゚)「これが、スノー・ピアサーです。
     それでは、説明は以上とさせていただきます。
     列車は定刻通りシャルラ方面に向け出発いたします。
     定刻通りの発車にご協力お願いいたします」

彼女は時計を見なかった。
記者たちが時計を確認するまでもなく、話はしっかり二分で終わっていた。
無論、彼女が質問の時間を設けるはずもなく、代わりに質問は代理人の男が対応することとなった。
代理人は若く見えるが、経験豊富であるかのように堂々とした姿勢で演台の前に立つ。

マイクのスイッチが入っていることを確認して、男は静かに話を繋いだ。

940名も無きAAのようです:2018/12/29(土) 08:54:57 ID:P5VaBOs60
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                (・大・)「では、質問がある方はどうぞ」

     _   , -─- 、
   / ニ `′二_`ヽ.\
  / / ヘヽ  -‐、 \  ヽ
 / / , l f'``"" | ト  l l |
 ! | 〃 , |     l | l |、 | |.|
 | l /イノー-、  rヽ!'ヽ!ヽ  |
. | /l''==a= , =a==''|r、!   「では、質問がある方はどうぞ」
  |,イ| ` ̄ 〈|    ̄´ ||'イ
.  ド||. ,__ヽ__、 l'イ|
  l l.ト、   __   イ l |
-‐'''l ! l.\     /:| ! |`:ー-
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最前列にいた記者が挙手し、代理人に指名される前に質問を始めた。

「何故棺桶を使おうと?」

(・大・)「今の我々、いや、この時代に作り上げられる技術はたかが知れています。
    現に、電子機器のほぼ全てが過去の技術を発掘し、再利用しているものばかりです。
    当時に使われていたのと同じ方法で利用しているばかりでは、発展はありません。
    すでにある物を異なった視点で組み合わせて使う事で、新たな発展につながると考えたからです。

    既存の物を組み合わせることで新たな発想を生み出し、それが発明のヒントになると言えば分かりますか?」

「あぁ、はぁ」

気の抜けた返事を死、あまり理解をしていない風の記者を置いて、代理人は咳払いをして次の質問を募った。
指された記者は声を大きく張り上げた。

「シャルラに通じる線路の整備はかなり大変だったと想像されますが、どのようにしてこの短期間で実現したのでしょうか。
特に、クラフト山脈沿いはかなりその……治安が悪いですから」

クラフト山脈。
それは世界最大級の標高と長さを誇る山の連なりであり、世界を隔てる巨大な壁として知られている。
当然ながらその山に阻まれ、近くの町は常に物品の流通に苦しんでいる。
一年を通じて厳しい気候に見舞われる為、農業は常に天気との戦いであり、収穫を喜ぶよりも雪害に悩まされることの方が多い。

ジャーゲンを経由して運ばれる物資は彼らにとっての生命線であり、それを買えない貧困層は、自然な流れとして野盗と化す。
陸運の人間達は多少の遠回りになろうとも、クラフト山脈を避けて走る傾向にある。
荷物と命を奪われでもしたら、配送が遅れるよりもよほど悪いことになる。
故に、多くの企業はクラフト山脈沿いへの出店はせず、見守るだけに留めているのが現状だ。

何か特産品やそれに準じたものがあればいいのだが、それすらもないとなれば、利益を追求する人間達にとっては何一つ旨みが無い。
助ける義理などないのだ。
だが発表された線路図には、あえてその危険な地域を通るように線路が引かれていた。

941名も無きAAのようです:2018/12/29(土) 08:57:33 ID:P5VaBOs60
(・大・)「なるほど、いい着眼点ですね。
     ですが同時に、こう考えてみてはいかがでしょうか。
     何故、治安が悪いのか、と。
     理由は簡単ですよ、仕事が無いんです。

     だから我々は仕事を作り、労働力を求めました。
     土地勘があり、体力があり、そして何よりも仕事と金を欲している人間を。
     彼らの協力があったからこそ、線路を敷く事が出来たのです。
     彼らなくして、今日の発表はなかったと言っていいでしょう。

     線路が人と街を繋ぎ、こうして夢を繋いだのです」

記者たちの内数人が、代理人の言葉で彼の正体に気付いた。
彼は、エライジャクレイグの市長、トリスタン・トッド・トレインの息子であり、テ・ジヴェを有するシーサイドシュトラーセ鉄道の社長。
ナマコブシ・ナスティー・トレイン、その人だった。

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                                         The Ammo→Re!!
                                    原作【Ammo→Re!!のようです】

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スノー・ピアサーの記者会見が始まる十分前、二台の白い車がジュスティアのスリーピースを通過し、街への通行を許可された。
恐らく、ここ数年で最も早い検査だっただろう。
その車にはジュスティア警察と軍から事前に許可が下りていただけでなく、市長から直々に余計な時間を使わないようにと言う通達が下されていたからだ。
ワゴン車とSUVは一度花屋に寄り、それから警察本部に向かった。

警察本部前には数名の警官が立っていたが、彼らの腰には一様にテーザー銃が下がっていた。

(=゚д゚)「おう、出迎えご苦労ラギ」

ワゴン車から降りてきたのは、“虎”と呼ばれるトラギコ・マウンテンライト。
そして後ろのSUVから降りたのは、記者のアサピー・ポストマンだった。
長い運転が終わり、アサピーは頭上に輝く太陽に目を細めた。

(-@∀@)「へへっ、遂に僕も――」

その時、アサピーが想像していたのは決して明るい未来ではなかったが、絶望的な未来でもなかった。
彼が手にした多くの真実と写真は、必ずや彼を有名にしてくれる。
早ければ今日にでも、真実の報道者、真実の代弁者の渾名が付けられるかもしれない。
ジュスティアの大地に靴の裏が触れ、空気を吸った僅か数秒で、アサピーは輝かしい未来を妄想した。

( ''づ)「お前はこっちで話を聞かせてもらうぞ」

そして、妄想は終わった。

(;-@∀@)「――ちょっ!?」

942名も無きAAのようです:2018/12/29(土) 09:01:12 ID:P5VaBOs60
アサピーは何か気の利いたことを言う前に警官二人に署内に連れ去られ、残ったトラギコは出迎えに来た警官の一人と向かい合っていた。
夏だというのに黒い長袖の服は極めて異質に見えるが、それは同時に彼女が自らの立場と正体を一切隠すつもりが無いことを意味している。
警察副長官、ジィ・ベルハウスは逃げも隠れもせずにここにいる、という事を宣言したいのだ。
その為であれば暑さなど、彼女にとってはあまり気にするべきことではないのかもしれない。

爪゚ー゚)「ご苦労だったな。さて、話を聞かせてもらうぞ」

高圧的な言葉にしか聞こえないが、これが彼女の素なのだとトラギコは知っていた。
警察の上層部にいる人間で柔軟性のある者など、ほぼ皆無なのだ。
柔軟性に富む人間は早々に首を切られるか、自ら離職するかしかない。

(=゚д゚)「あぁ、俺も話をしたい気分ラギ。
    ところで、軍の方は?」

爪゚ー゚)「それも含めて、だ」

ジュスティア警察からの呼び出しを受け、トラギコは自らの足でこうしてこの街に戻り、知っていることを話すと決めていた。
豪華客船、船上都市オアシズで起きた一連の事件。
更に、ティンカーベルで起きた事件の真相。
世界の裏で暗躍する組織についての話をするために、今日、この場にやってきたのだ。

そして、ライダル・ヅーの遺体を故郷に連れて帰るために。

(=゚д゚)「そうかよ。ヅーはSUVの方に乗ってるラギ。
    ……くれぐれも、丁重に頼むラギよ」

爪゚-゚)「お前に言われなくてもそうする。
    ワゴンの方には何があるんだ」

(=゚д゚)「証拠品が一つと、借り物が一つラギ。
    バイクはくれぐれも丁重に扱えよ、外交問題に発展するラギよ。
    そいつは借り物だから署の前に置いておけば、後で持ち主が取りに来るラギ」

ワゴン車に積載されている大型バイクは、仮に副長官だとしても、購入するにはかなりの苦労が必要になる。
金銭的な苦労ならばまだしも、命の危険が伴うとなれば彼女も慎重にならざるを得ないだろう。
破損させようものなら、現所有者に何をされるか分かった物ではない。

爪゚-゚)「お前と違う。心配はいらない」

ジィが合図をすると、警官達がSUVの後部ドアを開け、棺桶を慎重に降ろし始めた。
棺桶の上には白い花束が乗っていた。
ここに来る前に寄った昔なじみの花屋で適当な物を選んでもらい、手向けの花束としたのである。

943名も無きAAのようです:2018/12/29(土) 09:02:27 ID:P5VaBOs60
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    _/⌒、 (     `くヾ_三≧、
  厂    `ヽ〉    0  )l )_ _ ``
 '        '.ヽ_    、ヽ  く
    o     }ーミ-、_ノ⌒ヽ 〈 _
         ノ  Yl__,イ 。 ) Y__ヽ
 、      ノ  ゚  }  Z-‐ヘノ___
 ノ`ゝ‐--‐く\_ノ  _>  r、)-ヽ
  ∠  ゚  ヾ⌒ヽ{ 、Y⌒ヽ‐ヘ
 ∠ィ   ト..、> ノ``''ーァ。`j``
 ヽ‐{, イ>ノ⌒>‐' ゚  <、__ノヽ
 -、__, 。 ∠_   ト、\‐t`) 、 ヽ
 ___)_r━‐-' く| ,ハ/>、)( フヽ、`ヾ
 ``ー'(__, ゚  t' ゙ヘ. |/∧´  { )
 <フ{゙〈`ーァ' ヽ、 | |//ヘ  `'
    、 V/!   `ヽ !//ヘ
     | ̄'|  (⌒j V/∧
     ∨/!   `ヾ ∨/ヘ
     ∨ヘ、     ∨/ヘ
      ``''*。._    `<∧
           `ヾ>、 `ヾ、                     ,、_
             `</,>、 ゚*.                    ゝ __>
              }/∧  `*、_
              ノ,イツ    `<>ュ;,,,、
             '´ '′     ` <///≧;,、
        {'ー‐-、              ` <//,>、
         ー‐ '                 `</トヽ
                             ヾ
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

爪゚-゚)「あれは?」

花束を指さし、ジィが尋ねる。
トラギコと花束程不似合いな物はない。
至極当然の疑問だ。
自分自身花束が似合うとは思わないが、花束と無縁というわけではない。

縁というのはどこで繋がっているのか、分からない物なのだ。

(=゚д゚)「馴染の花屋に頼んで用意させたラギ。
    花の事は良く知らねぇが、あいつは女だったからな」

爪゚ー゚)「……らしくない事をするものだな」

それは呆れでも、ましてや嫌味でもなかった。
どちらかと言えば、ジィの声と目は新たな発見に驚いているようだった。
ここで皮肉の一つでも言われても致し方ないと思っていただけに、トラギコは少しだけ拍子抜けした。
思えば、女に進んで花束を買ったのはいつ以来の事だろうか。

(=゚д゚)「自分でもそう思ってるラギ」

944名も無きAAのようです:2018/12/29(土) 09:03:08 ID:P5VaBOs60
そしてトラギコは本部のビルへと足を踏み入れたのだった。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

                脚本・監督・総指揮・原案【ID:KrI9Lnn70】

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ジュスティアで花屋を経営するカレン・クオリスキーとサンディ・フィッシュバーンは突然の来訪者に、流石に戸惑いを隠しきれなかった。
恩人であるトラギコからの依頼で花束と引き換えに、三人を店の奥に少しの間匿う事になったが、これは彼女達がトラギコと出会ってから初めての事だった。
彼が個人的な依頼をしてくるというのは、十五年の中で一度もなかった。
よほどの事情があるのだろうと考え、カレンとサンディは詮索をしないことにした。

(<::*´ω::>)「おー」

カーキ色のフードを目深に被った少年が店の奥に並ぶ花を見て声を上げていた。
どうやら少年はこれだけの花を見るのに慣れていないらしい。
花屋の商売は時間よりも時期で忙しさが変わる。
この時期はあまり忙しくならない為、カレンは少年のところへと向かった。

( ゚ー゚)「お花、好き?」

バックヤードに並ぶ花は、彼女達が丹精込めて育てているものもあれば、遠くの街から輸入して保存している物もある。
寒い空気を好む花もあれば、水につけておくだけで長生きする花もある。
色とりどりの花を見上げ、少年は目を輝かせていた。
カレンに声をかけられたことに気付いた少年は、少し驚いた様子だったが、返答を口にした。

(<:: ´ω::>)「おっ…… す、すき……ですお」

人見知りをするようで、言葉は途切れ途切れだった。
だがそれでも返答をしてくれたという事は、単純に緊張をしているだけの様だ。
中には人と話すこと自体が嫌いという人間もいる。
彼はそうでは無いと分かり、カレンは目線の高さを合わせて話を続けた。

( ゚ー゚)「そっか、それは良かった。
    どんなお花が好きなのかな?」

(<:: ´ω::>)「おー……いいにおいのするおはなが、すきですお」

僅かな会話を通じて、カレンは少年にどこか親しみを覚えた。
彼の放つ雰囲気が、どことなく自分に似ているのだ。
酷い環境にあって、そこから救い出された自分と似た境遇なのかもしれない。

( ゚ー゚)「そっか、いい匂いかー」

(<:: ´ω::>)゛

少年は小さく頷く。

945名も無きAAのようです:2018/12/29(土) 09:04:13 ID:P5VaBOs60
( ゚ー゚)「ここにあるのは皆いい匂いがするお花だから、気に入ったのがあったら教えてね。」
    それと、好きに見てていいからね」

(<:: ´ω::>)「あ、ありがとうございます……」

カレンがその場を去り、少年に再び目を向けると、早くも花に集中していた。
少年が特に熱心に目を向けているのは、小鉢に入ったサボテンの赤い花だった。
久しぶりに花をつけたそのサボテンは売り物ではなく、彼女の私物だった。
数年前、市場に花を仕入れに行った際、売り物にならない大きさだったために捨てられる物を譲り受けたのだ。

小さな花だが、鮮やかな赤は実に綺麗で、そして可愛らしく、彼女のお気に入りの花だった。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
          /^ヽ
          { i  }
     ,-‐'゛ ゙̄"'ヽ  ノ⌒゙'' 、,
     `、.._  ヽ r'⌒ヽー,  ノ'
       ゙'.,.ィ´ト、*,イ⌒`',、
        / /  }  ``  }
        |_,.イ´i`ー,--‐'′
         /.ヽ_,i、ノ'⌒*:.:.:\
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それが少年にも好かれたのだと思うと、誇らしくあった。

 ∞
( ゚ー゚)「何、ああいう子供が好きなの?」

サンディが店先の花に霧吹きで水をやりながらそんな冗談を口にする。
客が来ていないのをいいことに、好き勝手に言うのが彼女実にらしい。
お互い恋人もいない身であるために、こうした恋愛に関係した冗談がよく口から出てくる。

( ゚ー゚)「まぁね。 何だか私と似てるのよ。
    あと、放っておけない感じがするの」

 ∞
( ゚ー゚)「そう? どっちかって言ったらトラさんに似てない?」

( ゚ー゚)「えぇー? でもまぁ確かに、ちょっと雰囲気的にねー。
    トラギコさんは虎で、あの子は仔犬って感じかなぁ」

小さな少年は、無邪気にサボテンの針を軽く指で触れ、驚き、笑っていた。
それはまるで仔犬が蝶と戯れているように見えた。
かと思えば、別の花に目を移し、香りを楽しんでいる。
花を乱暴に扱う事はせず、注意していなくても大丈夫なようだ。

946名も無きAAのようです:2018/12/29(土) 09:05:36 ID:P5VaBOs60
 ∞
( ゚ー゚)「トラさん、晩御飯とか食べるかな?」

( ゚ー゚)「あ、それ訊くの忘れてたね。
    カレーとか食べるかな」

 ∞
( ゚ー゚)「疲れてそうだったから、お肉一杯入れなくちゃね。
   後で電話して訊かなきゃ」

花屋の商売は正直、儲かる物ではない。
人生に潤いが必要であると感じたり、花を送る必要がある人間だけが利用する為、生活に余裕はない。
金に余裕のない人間にとって、花は買う物ではない。
子供の頃に思い描いていた花屋への羨望とは異なり、現実はかなり厳しかった。

定期的に花を購入してくれる得意先はいるが、それは彼女達の努力がようやく実った結果であり、これまでの境遇に甘んじて得た物ではない。
軍、そして警察。
この二つは必ず花を必要とする為、安定して確かな商品を提供できる彼女達の仕事が活かせると考え、営業を行った賜物だ。
安定した収入が入るが、商売を続けるには厳しいものがある。

それでも、この仕事は辞められそうにない。
花を愛でる人間がこの荒んだ世界にいる。
それだけで十分なのだ。
彼女達が届けた花が誰かを癒す手伝いになれば、それで十分働く理由になる。

夢を抱き、夢を追い続けることになった出来事は今でも彼女達の胸に深く刻まれている。
十五年前の、二月二十六日のあの日を。

( ゚ー゚)「じゃあ、いいお肉も買おうね」

二人は少女のような気持ちに帰り、恩人を想って胸を躍らせたのであった。

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     総合プロデューサー・アソシエイトプロデューサー・制作担当【ID:KrI9Lnn70】

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トラギコが誘導されたのは警察本部で最も重要な部屋、即ち最高責任者がその執務を行う長官室だった。
これまでに何度も来たことのある部屋ではあったが、相変わらず、そこに座るツー・カレンスキーの放つ雰囲気には慣れない。
カミソリを指で撫で続けるような、落ち着かない雰囲気。
人を疑い続け、信じ続けるという矛盾じみた信念のみが生み出す歪な雰囲気。

かつて関わった“砂金の城事件”以来、彼女は長官の椅子に座り、街の治安維持は勿論、世界中にいる警官達への意識改革を行った。
その一環としてトラギコは彼女と話す機会が他の警官よりも多くあり、その度に口論をした記憶があった。
彼女がトラギコを切り捨てないのは、かつていたジョルジュ・マグナーニと同じように、誰かが汚れ仕事をしなければならない事を知っているからだ。
そして、彼が解決してきた事件の多さと難易度をよく理解している人間でもあった。

947名も無きAAのようです:2018/12/29(土) 09:08:20 ID:P5VaBOs60
長官室にある応接用のソファには、予期していた通り、海軍大将のゲイツ・ブームが座っていた。
木製のローテーブルの上にはクリップで止められた何の資料が置かれていた。
ツーは己の席から優雅に立ち上がり、ローテーブルの傍に立った。

(=゚д゚)「何だ、俺の昇進についての話ラギか?」

(*゚∀゚)「相変わらずだな、トラギコ。
    お前の昇進は警官である以上、有り得ないということを忘れたか」

(=゚д゚)「別に、昇進なんて興味ねぇラギよ。
    相変わらず冗談の分からねぇ人ラギね」

(*゚∀゚)「冗談など、仕事にはいらないからな」

串刺し判事、そう呼ばれていたツーは自他共に認める堅物であり、冗談は全く通じない。
関わったほとんどの事件の被疑者を死刑、もしくは求刑された最高の罰を与え、時にはそれを越えさえもした。
電気椅子、ガス室、絞首刑の場にも率先して足を運び、スイッチを押した。
彼女は仕事と全てを割り切り、犯罪者たちの命を合法的に奪ってきた。

トラギコとはある意味で真逆の存在ではあったが、確かに、警察官としての理想像を一般人が思い描くとしたら彼女のようなものになるだろう。
不退転の意志を持ち、悪と断定した物に対しては一切の容赦をかけない姿。
正義の化身を演じる、正義の集団の長。
どこかのネジが外れていなければ、その座に座る事は決して敵わない。

覚えている限り、彼女は昔から全く変わっていない。
生まれてからそうなのか、それともある時期からなのか知らないが、友人に欲しくない人間なのは間違いない。

|  ^o^ |「それより、説明を。 何故 私の部隊が 壊滅しかけたのか」

チック症の影響で、ブームの言葉が途切れ途切れに紡がれる。
だが彼が苛立ち、そして焦っているのがよく分かる。
彼の前に置かれている資料はかなり読み込まれていることが見て取れた。

(=゚д゚)「壊滅じゃねぇ、全滅ラギ」

|  ^o^ |「何?」

(=゚д゚)「全滅、って言ったラギ。
    確かな情報筋で、あんたの部隊がオアシズ到着前に入れ替わってる事が分かっているラギ」

(*゚∀゚)「どこの情報だ?」

(=゚д゚)「まぁ待てよ。 まずは座らせてもらうラギよ」

許可の言葉よりも先にブームの正面に座り、トラギコは溜息を吐いた。
柔らかい、良いソファだった。
それからツーを見て、嫌味をたっぷり効かせた言葉を送る。

(=゚д゚)「コーヒー」

948名も無きAAのようです:2018/12/29(土) 09:10:37 ID:P5VaBOs60
(*゚∀゚)「……砂糖とミルクは」

トラギコなりにからかったつもりだったが、ツーはそれに応じなかった。
この程度で喧嘩腰になるようでは、警官達を束ねる長官は務まらない。
それに実際、これから彼女達に話す内容を考えれば、そう簡単に激昂されても困るのだ。

(=゚д゚)「たっぷりラギ」

ツーがどこかへと立ち去ったのを確認してから、正面のブームの眼を見た。

(=゚д゚)「……実際にオアシズに乗船したのは、隊長だけだったラギ。
    なぁ、大将さんよ。
    ここから先の話はお互い腹を割って話そうや」

一軍の長を前に、トラギコの姿勢はまるで揺るがなかった。
それを見て、ブームは僅かに眉を顰めたが、頷いた。

|  ^o^ |「いいでしょう。 隠し事をしても 損しかありません」

(=゚д゚)「そう来なくっちゃな」

その話が終わると同時に、トラギコの前に紙コップに入ったコーヒーが乱暴に置かれた。
溶けきっていない角砂糖が薄茶色のコーヒーの表面から飛び出しており、極めて強い悪意を感じた。

(=゚д゚)「わりぃな、次はジィを呼んでくれラギ。
    ……俺が持ってきた証拠品と一緒にな」

トラギコは決してヅーの事を過小評価している訳ではない。
彼女は努力家であり、そして研究家だ。
彼女が長官に任命される前に取り組んでいた事が警官達の人相と人間性の把握であり、何かを得るために相応の努力をする事は知っている。
だからこそ、彼女をからかうのはもうおしまいだ。

ここから先、トラギコがする話はジュスティアだけに限らず、多くの街を巻き込むことになる。
いや、街だけならばまだいい。
彼の予想では、世界を巻き込む大きな事件に発展する可能性が大いにある。
彼が所属する部署、“モスカウ”はそういった難事件や組織を取り締まる事を目的に設立され、誰もがそのために働いているのだ。

ヅーは内線を使い、トラギコの要求通りジィを呼び出した。
今のトラギコは唯一の生き証人であり、複数の事件に関する貴重な情報を持っている人間だ。
彼の言葉に逆らう意味がない以上、例え長官であっても指示には従うしかない。
十数分後、長官室の扉を開いてジィが現れた。

彼女の手には大きなスーツケースが握られている。

爪゚-゚)「持ってきたぞ」

(=゚д゚)「じゃあそいつを見ようか」

ケースを受け取り、テーブルの上に乗せる。
重みでテーブルが軋んだ。

949名も無きAAのようです:2018/12/29(土) 09:12:53 ID:P5VaBOs60
(=゚д゚)「これは誰も開けてないラギね?」

爪゚-゚)「お前がそう言ったんだろ」

(=゚д゚)「念のためラギよ。
    ……こいつは、ティンカーベルで使われた棺桶の一部ラギ。
    勿論、それ以外の場所でも使われたことが分かっているが、まぁ、見た方が早いラギ」

ケースを開き、そこに収められていた部品を取り出した。

(=゚д゚)「白いジョン・ドゥ。 しかも起動コードが違うラギ」

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              _ノ -‐-      _ '、
           r '"  /⌒`  / ̄   ¨i!
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それは、黄金の大樹をモチーフにしたエンブレムを持つ、ジョン・ドゥの頭部だった。
ヘルメット部に輝くエンブレムを見て、ツー、そしてジィは息をのんだ。
彼女達はそれに見覚えがあった。
無論、そうであろうことはトラギコの予想の内であり、この証拠品がトラギコの言葉を後押ししてくれることを確信していた。

(=゚д゚)「見た事、あるラギね」

(*゚∀゚)「……話せ、トラギコ」

爪゚-゚)「……」

長官、そして副長官がトラギコを睨みつける。
出し惜しむつもりはない。
トラギコは彼女達、そしてジュスティアの理解と協力を得るためにここにいるのだ。
机の上にある書類に一瞬だけ目を向け、確認をしてから視線を前に戻す。

(=゚д゚)「フォレスタ、ニクラメン、オアシズ、そしてティンカーベルで使用されたのを確認しているラギ。
    そこで何が起きたのかは、アサピーに渡してある報告書の通りラギよ」

机上にあった資料は、アサピーに持たせていた報告書の写しだった。
あの短時間で報告書をコピーしたこともそうだが、それに全て目を通したであろうこの場の人間がトラギコにとっては頼もしかった。

(*゚∀゚)「一点追加だ。 その棺桶、ジュスティアでも使用されている」

950名も無きAAのようです:2018/12/29(土) 09:14:39 ID:P5VaBOs60
(=゚д゚)「……話が分かりそうで助かるラギ。
    なら分かるだろうが、この棺桶は個人でどうこう出来るレベルの代物じゃねぇラギ。
    大規模な組織が関わっているのは間違いないラギ。
    さっき“ゲイツ”が全滅したと言ったが、出発の段階で隊長以外はほぼ入れ替わった後ラギ。

    どういうことか分かるラギ?」

その言葉を投げかけられたブームは、トラギコが持つジョン・ドゥの頭部を見つめながら、静かに言った。

|  ^o^ |「つまり ジュスティア内で 殺されて 入れ替わった と」

(=゚д゚)「正解ラギ。 ワタナベ・ビルケンシュトックって女がゲイツの中にいたから間違いないラギ」

爪゚-゚)「ワタナベ……だと?」

その名前に反応したのは意外なことにジィだった。

爪゚-゚)「冗談だとしたら笑えないな。 そいつは、本部のモスカウ――難事件解決専門の部署――が追ってる快楽殺人鬼だ。
    ジュスティアにそんな女が入り込むなど、有り得ない」

(=゚д゚)「だが事実ラギ。
    この街で会ったから間違いないラギ。
    キャメルストリートの536って店ラギ」

|  ^o^ |「貴様 まさか 逮捕しなかったのか?!
     女を 相手に 油断する ような――」

(=゚д゚)「あの女がどういう女か知っているんなら、酒場で奴が何をするか想像ぐらい出来るだろ。
    あいつはニクラメンでプレイグ・ロードを使っていたラギよ。
    第一、あいつをモスカウが追ってるなんてのも今聞いたことラギ」

プレイグ・ロード。
その悪名、そして非人道的な兵装については威力も合わせて報告書にまとめ――アサピーに書かせた――が済んでいる。
民間人を相手に容赦なくそれを使える人間は、感情的になった時が最も恐ろしい。
536でそういった兵器を使われる可能性を考えれば、あの場は相手を興奮させるようなことはしない方がよかったのだ。

実際、彼女を逃した結果得られた情報は極めて有用な物が多かった。
そして命を救われたことも合わせて、トラギコはワタナベを今はまだ泳がせた方がいいと考えている。
無論それを口にすれば、目の前で憤っている男は更に激憤するだろう。

(*゚∀゚)「このトラギコは確かに粗暴だが、女相手に手を抜いたりするような奴じゃない。
   私が保証する」

思わぬところからの助け舟に、トラギコは思わずその声の主を見た。
記憶が確かなら、女犯罪者の顔が変わるまで殴った時、彼女はトラギコを罵倒したはずだ。
意外なことが信頼につながる物だと、トラギコは感心した。

(*゚∀゚)「それに、問題はそこじゃない。
   トラギコ、その女、ジュスティアに入り込んでいたのは事実か?」

951名も無きAAのようです:2018/12/29(土) 09:15:50 ID:P5VaBOs60
ツーは状況を理解していた。
問題はトラギコがワタナベを逃がしたことではなく、どのようにしてワタナベがこの街に入って来たのか、だ。
快楽殺人鬼としてジィが知っているレベルの人間であれば、この街に入り込むことはまずもって不可能なはず。
スリーピースを力ずくで突破したのではないことぐらい、流石に頭の固い軍人でも分かるだろう。

(=゚д゚)「間違いねぇラギ。
    このジョン・ドゥを使う組織、ジュスティア内に潜り込んでいるラギよ」

沈黙が部屋に訪れた。
どこかに置かれた時計の針が時を刻む音が静かに続く。
トラギコはコーヒーを飲み、息を吐いた。

(*゚∀゚)「お前の言わんとすることは分かった。
    お前の言葉が全て事実だとして、そいつらの目的は何だ?」

(=゚д゚)「俺が知るわけないだろ。
   それを調べるためには、まだ時間が必要ラギ。
   俺の捜査を邪魔するなよ」

(*゚∀゚)「お前次第だ。
    ……ところで、デレシア、という人間の名前を聞いた事は?」

その名前は良く知っているが、どうしてそれが彼女の口から出て来たのかが分からない。
トラギコは咄嗟に嘘を吐いた。
報告書にも名前は載せにいるのは、別に恩義があるからではない。
ここでジュスティアが絡んでくると、デレシアに関する手がかりを逃す可能性が高いからだ。

(=゚д゚)「聞いたことねぇラギな。
    誰ラギ?」

(*゚∀゚)「これまでの一連の事件に関わっているとされる人物の名前だ。
    ニクラメンの事件を起こしたというタレこみがあった」

それについてはトラギコも考えていた。
あのビルで起きた爆破事件に関する証拠品はないが、まず間違いなくデレシアが関係していると言っていい。
実行犯か否かは重要ではない。

(=゚д゚)「へぇ…… ちなみに、誰からのタレこみラギか?」

(*゚∀゚)「内藤財団の西川・ツンディエレ・ホライゾンだ」

(=゚д゚)「デレシアってのは、どんな奴ラギ?」

思いがけないところでデレシアの名前が出てきたこともそうだが、内藤財団副社長の名前が出た事にも驚きがあった。
やはり、トラギコが思った通りティンバーランドという組織は、かなり巨大な規模の組織と考えた方がいいだろう。
後援に彼女がいるのか、それとも財団がそうなのか。
それはまだ分からないが、調べるべきは内藤財団であることが分かった。

952名も無きAAのようです:2018/12/29(土) 09:17:54 ID:P5VaBOs60
しかし、トラギコにとっては内藤財団の情報よりもデレシアに関する情報の方が欲しかった。
人間離れした強さを持ち、旅をする謎の多い女。
トラギコがオセアンで担当することになった事件の主犯と睨んでいる人物だが、あまりにも謎が多すぎ、その正体を推測する事すら出来ないでいる。

(*゚∀゚)「……ジュスティアの歴史を紐解けば、必ずその名前に突き当たる。
    一部の人間だけが知る女の名前だ」

(=゚д゚)「ほぅ」

(*゚∀゚)「問題なのは、デレシアという女が数千年前の歴史に名を残してるという点だ。
    その女の正体如何で、捜査が変わってくる」

人の名前など、いくらでも被るものだ。
数千年どころか数億年前の人間と同じ名前があったとしても、何一つ不思議はない。
同一人物でもない限り、気にする必要はない。
そう言うべきなのに、トラギコは何も言えなかった。

――デレシアと云う旅人について、トラギコは何一つとして正しい情報を知らないのだから。

(*゚∀゚)「もしもその女を見つけたら、参考人として連れてこい。
    もしくは近くの警官に引き渡すんだ」

(=゚д゚)「見つけたらな」

(*゚∀゚)「そうしてくれ。
    さて、次の話だ。
    ティンカーベルでの一件、詳細を聞こうじゃないか」

実際、トラギコにとって今回の報告の中で最もやりにくいであろうと推測していたのが、ティンカーベルでの事件だった。
ショボン・パドローネ、ジョルジュ・マグナーニそして脱獄犯。
あまりにも多くの情報がありすぎるだけでなく、彼を困らせているのはすでに内通者の影を見つけてしまっていることだった。
どこから話せばいいのか、そう考えたトラギコはまずショボンの事から報告を始めることにした。

(=゚д゚)「まずはオアシズ、そこから話をしなきゃならねぇラギ」

今日はいつにも増して長く、そして充実した一日になりそうだった。

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           編集・録音・テキストエフェクトデザイン【ID:KrI9Lnn70】

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警察本部の前に、一台の大型バイクが駐車されていた。
三つ目のライトは猛禽類の眼のように鋭く、車体を覆うカウルは、空気力学は勿論、航空力学をも参考に設計された物だ。
このバイクは世界に現存する僅か三十台の内の一台で、最も状態がよく、現役で走っている唯一の車輌だった。
その価値を知る人間は少ないが、その堂々とした佇まいは道行く人間の目をくぎ付けにした。

953名も無きAAのようです:2018/12/29(土) 09:19:30 ID:P5VaBOs60
開発名、Ideal――アイディール――はこの世に誕生したバイクの中で、世界最高の物と言っても過言ではない。
アイディールは大昔、人類がまだ科学と技術で栄華を誇っていた時代に作り出された、バイク乗り達にとっての理想形として設計され、生み出された。
搭載された人工知能は乗り手の好みや癖を理解し、自動的に操縦者の状況と環境に合わせて運転の最適化を行う。
例えば乗り手が背の低い女子供であればそれに合わせて車高を低くし、悪路を走破する際には車高を高くすることもサスペンションを柔らかく設定することもある。

個を理解するという概念、そして自己理解による進化を可能にした人工知能は、後にも先にも、バイクの中で搭載したのはこのアイディールだけだった。
このバイクには開発名とは別に、個体を識別するための名前が個人によって与えられていた。
それはその人工知能にとって、初めての経験だった。
これまでのどの持ち主も、バイクを道具として扱い、開発名以外の名前は呼ばれたことが無い。

たった一人、ある少年を除いては。

(#゚;;-゚)

一人の少年にディ、と名付けられたバイクは周囲の状況と現在地から、ここがジュスティアであることを認識していた。
前の持ち主がこの街の出身者で、ここを何度も走った事がある。
その時と街並みは少しだが変化をしており、地図の更新が必要だった。
無駄だと分かりながらも、短距離通信を行い、周囲にいる同型機からの情報共有を求める。

予想していた通り、返答はなかった。
何度か世界を巡った際にも応答はなかった。
現存するアイディールは金持ちにとっての鑑賞品となり、本来の用途で使われているのは自分だけだろう。
制作された日から現在までの時間を考えれば、それも当然だった。

(<::ー゚::::>三)「お待たせ、ディちゃん」

名を呼ばれ、ディはエンジンを始動させた。
その声は名付けた少年と親しい女性で、これまでの所有者の中で最も腕のいい人間だった。
そして、初めてディの声に気付いた女性でもあった。

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(<::ー゚::::>三)「お出かけしましょう」

その言葉でディはスタンドを自ら外し、声のした方に向かって走りだした。
ディは完全自動運転、そして二輪にも拘らず自動自立走行が可能だった。
独りで走り出すバイクを見て、通行人たちが驚きの目でディを見る。

(<::ー゚::::>三)「いい子ね」

954名も無きAAのようです:2018/12/29(土) 09:21:03 ID:P5VaBOs60
ディはカーキ色のローブをまとい、フードの下で笑みを浮かべる女性の前で停車した。
その女性こそが、ディの今の所有者だった。
名前は、デレシア。
詳しいことは、よく分からない。

(<::ー゚::::>三)「安心して。ブーンちゃんも一緒よ」

その名を聞いて、ディはエンジンを吹かし、喜びを露わにした。

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      撮影監督・美術監督・美術設定・ビジュアルコーディネート【ID:KrI9Lnn70】

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ヒート・オロラ・レッドウィングは花屋のバックヤードで迎えが来るのを静かに待っていた。
殺し屋だった過去を持つ彼女でも問題なくジュスティアの街に入る事が出来たのは、トラギコの機転と協力があったからだ。
店の主人二人はどうやらトラギコと知己の仲であるらしく、詮索も何もせず、三人を受け入れてくれた。
この後に待ち受けているのは、エライジャクレイグを利用してラヴニカに向かう事だ。

先日の一件でヒートの棺桶である“レオン”は左腕に重大な損傷を受け、使えなくなっている。
それを修理するためにデレシアは目的地をラヴニカへと設定し、手段としてエライジャクレイグを選択した。
ラヴニカに行ったことはないが、どのような街なのかは聞いたことがある。
複数のギルドが混在し、職人気質な人間達が肩を並べる街。

発掘された棺桶は勿論、DATなどもその街に運び込まれることが非常に多く、修理や改修も行えると聞く。
何か目的のある旅ではない為、遠回りという事もない。
ヒート自身も右肩を骨折しており、満足に戦える状態ではない。
左手だけで銃を使えばいいが、やはり、利き手を使えないのは手痛い。

一カ月もすれば骨は治るだろうから、己の負傷については不安にならなくてもいいだろう。
しかし、ヒートはティンバーランドが手段を選ばないようになってきていることに、不安を感じずにはいられなかった。
不安の対象は、やはり、まだまだ子供であるブーンを守り切れない事だった。
今の状況で何か起きたら、ヒートは戦力として使い物にはならない。

彼が何か危険に巻き込まれる可能性は極めて高く、ヒートやデレシアのように武力である程度解決できる力はない。
今はまだ誰かに守られなければ、ブーンは生きていくことも世界を歩く事さえ出来ない。
最近は技術を身につけているが、それでも、武器や兵器を使う大人には勝てない。
実質、デレシアがヒートとブーン二人を守らなければならない状況であるため、極めて危険な状況であることは間違いない。

列車という閉鎖的な空間は、オアシズで起きた事件を想起させる。
逃げ場のない空間で襲われたら、反撃する以外に身を守る方法はないのだ。
最終目標や目的地の無い旅であるため、何も焦らなくてもいい事は重々承知している。
これ以上ティンバーランドの人間が彼女達を狙わなければ、ブーンの成長を見守りながら穏やかに余生を過ごすことも悪くはない。

だが、それだけでは駄目になってしまった。
ティンカーベルで遭遇した母親、クール・オロラ・レッドウィングを殺すという目的が生まれてしまった。
ヒートの弟、そして父を殺したあの女をこの手で殺さなければならない。
その激情に憑りつかれた結果がこの怪我であることは分かっているが、気持ちが萎えることはない。

955名も無きAAのようです:2018/12/29(土) 09:22:02 ID:P5VaBOs60
今もまだあの女を殺したくて仕方がないのだ。

(<:: ´ω::>)「ヒートさん、おはな……です……お」

物思いにふけっていると、ブーンがおずおずと歩いてきた。
彼の手には鮮やかな赤色の小ぶりな花束が握られている。
微妙に色が異なる複数の花が束にされ、ところどころに白くて小さな花が見えている。
店主が気を利かせてブーンに持たせてくれたのだろうか。

(<:: ´ω::>)「あの……これ……」

ノパ⊿゚)「ん? どうした?」

(<:: ´ω::>)「これ、ヒートさんに……」

花束を差し出され、反射的に屈んでそれを左手で受け取る。
花の芳香がふわりと漂ってきた。
生まれて二十五年を迎えているが、異性からこうして花束を貰ったのは初めての事だ。

(<:: ´ω::>)「おねーさんたちに……おねがいして、あの……つくってもらって……」

ノパ⊿゚)「お、おう」

驚いたのはブーンの行動力だった。
あれだけ人見知りが激しい彼が、全くの初対面の人間に話しかけたのだ。
ジュスティアは人種差別の激しい街であることは事前にデレシアから伝えられていたのにも関わらず、だ。

(<:: ´ω::>)「ヒートさん、げんきないから……」

ブーンの小さな手が、ヒートの頭に乗せられた。
そして優しく撫でられた。

(<:: ´ω::>)「げんき、だしてください」

ノパー゚)「ははっ、まいったな……」

元気づけたりしなければならない立場だと思っていたが、どうやら、ブーンは思った以上に成長を遂げているようだった。
旅の中で彼が成長していく様は、やはり、ヒートにとっては我が事のように嬉しいものがあった。
まさかこうして、慰められるとは思いもしなかった。
ブーンの手を取り、ヒートは彼を抱きしめた。

店の裏口から静かなエンジン音が聞こえてきたが、ヒートの心はそれに向けられることはなかった。
その時ばかりは、彼女の心の中にあった増悪は微塵も姿を見せなかった。
あるのは、愛おしいという感情だけだった。

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     総作画監督・脳内キャラクターデザイン・グラフィックデザイン【ID:KrI9Lnn70】

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956名も無きAAのようです:2018/12/29(土) 09:23:05 ID:P5VaBOs60
ζ(゚ー゚*ζ「……あらあら」

裏口から入ってきたデレシアは、ブーンを抱きしめているヒートを見て思わず頬が緩むのを禁じ得なかった。
どうやら、二人の仲が更に親密なものになったようだ。
ヒートの手に小さな花束があることからある程度の推測をし、特に何かを言う事はしない。
どれだけ強くても、人間は完璧に強く在り続けることはできないのだ。

二人分のヘルメットを手に、デレシアは二人の様子を少し見守ることにした。
焦る旅ではない。
目的などあってないような旅なのだ。
ならば今は、二人の成長を見守ることに時間を割いても何ら問題はない。

仮にこの場にティンバーランドの人間が攻め入って来ても、デレシア一人でも対処できる。

ノハ;゚⊿゚)「おっ?!」

(<:: ´ω::>)「おっ?」

ζ(^ー^*ζ

ようやくヒートがデレシアの存在に気付いたのか、ブーンと共に奇声を発した。
ブーンは最初から気付いており、ヒートの声に驚いた様だ。
二人分のヘルメットを掲げ、デレシアは笑顔を浮かべる。

ζ(゚ー^*ζ「そろそろ行きましょうか。
      準備はいい?」

ノパ⊿゚)「あぁ、あたしはOKだ」

(<:: ´ω::>)「だいじょうぶですおー」

ζ(゚ー゚*ζ「ヒートちゃんにお花をあげたの?」

(<:: ´ω::>)「はいですお」

これまでの旅を通じ、ブーンが花をプレゼントという考えを自ずと導いたとは考えにくい。
となれば、第三者の助力があったと考えるのが自然だ。

ζ(^ー^*ζ「いいセンスね。
       お花屋さんが選んでくれたのかしら」

(<:: ´ω::>)「おー、そうですお」

ζ(゚ー゚*ζ「ちょっとお礼を言ってくるから、二人とも先にディちゃんのところにいてちょうだい。
      ブーンちゃん、ヒートちゃんのお手伝いをお願いするわね」

(<:: ´ω::>)゛

ブーンは頷いて、ヒートと共に店の裏口から外に出ていった。
残ったデレシアは店先に向かい、二人の女店主に声をかける。

957名も無きAAのようです:2018/12/29(土) 09:24:25 ID:P5VaBOs60
ζ(゚ー゚*ζ「いきなり来た上に、色々とごめんなさいね」

( ゚ー゚)「いえ、いいんですよ。
    もうお出になりますか?」

ζ(゚ー゚*ζ「えぇ、迷惑をかけるわけにはいかないもの。
      そこにある小さなヒマワリを二輪いただいてもいいかしら」

 ∞
( ゚ー゚)「ありがとうございます。
    十セントになります」

ζ(゚ー゚*ζ「ありがとう。
      ……はい、お釣りはいらないわ」

デレシアは店員の手に、百ドル金貨を一枚乗せた。

 ∞
(;゚ー゚)「えっ?! これはもらいすぎです」

ζ(゚ー゚*ζ「いいえ、正当な対価よ。
      ちゃんとお手入れをしたお花なのは見ればよく分かるわ。
      それに、貴女達があの子に選んでくれた花束、とても素敵だったもの」

(;゚ー゚)「でも、流石にこれは……」

ζ(゚ー゚*ζ「なら、一つだけお願いをしてもいいかしら?
      多分今夜、トラギコはここに立ち寄るから、その時に美味しいものをご馳走してあげてちょうだい」

花を受け取り、デレシアは軽く礼をしてその場を去った。
実際、二人の仕事は丁寧で良いものだった。
本来、ジュスティアの人間ならば不審者を匿ったりはしない。
だが二人はトラギコの頼みを受け入れ、更にはブーンとヒートの距離をより一層縮める手伝いをしてくれた。

その報酬については、バックヤードに置手紙と共に置くことにした。
彼女達を経由してトラギコにも礼が出来れば御の字である。
扉を開くと、店の外に停めておいたディの前に二人は立っていた。

ζ(゚ー゚*ζ「お待たせ。
      はい、これはブーンちゃんに。
      それでこっちは、ディちゃんに」

そう言いつつ、デレシアは先ほど買ったヒマワリをブーンに手渡し、もう一輪をディのスクリーンの前に置いた。
極めて性能のいいウィンドスクリーンであるため、ここに置いておけば風で飛ばされることはない。
ヘルメットを被り、ディに跨る。
ディのメーターの色が変化し、感謝の意を示した。

958名も無きAAのようです:2018/12/29(土) 09:27:20 ID:P5VaBOs60
二人が乗りやすいよう、自動で車高が下がる。
ヒートがタンデムシートに座るのをブーンが手伝い、最後にブーンがタンクの前に座る。
そして車高が元の高さに戻り、デレシアはギアを入れてアクセルを捻った。
エンジンが静かに唸りを上げる。

三人と一台は次の目的地に向かい、走り出した。

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            撮影・演出・音響・衣装・演技指導・編集【ID:KrI9Lnn70】

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ジュスティア駅には複数の線路が走り、複数のプラットホームがあるが、スノー・ピアサーが停車している場所を見つけ出すのは極めて容易だった。
人だかりとカメラのフラッシュを見つけ出せば、この場に初めて来た人間でも見つけられる。
記者会見後、乗車を開始したスノー・ピアサーの前には鉄道ファンや記者が大勢詰め寄せ、写真撮影をしていた。
他に類を見ない新型車両はその性能の詳細を未だに発表しておらず、人々の好奇心と想像力を掻き立てた。

(ΞιΞ)「乗車券を」

駅員はこれまでにない人だかりの中で、淡々と業務をこなしている。
偽造不可能と称される乗車券を確認し、客を一人一人見てから乗車をさせ、不審者が入り込まないよう細心の注意を払っていた。
その補佐として、ジュスティア警察からも武装した警官が派遣され、様子を見守っている。
実際はジュスティアとエライジャクレイグは契約関係にないため、このような事をする義理はない。

だが、エライジャクレイグを利用するとスリーピースを通過しないという問題が発生する為、せめて乗車の際に不審な人間がいないかを確認する必要があった。
ニクス・バーキンは最も高額な特別車輌を担当することになり、他と比べて楽な仕事に内心で大喜びをしていた。
この高級車輌は他の寝台車とは違い、一両を個人の寝台として使う事が出来る。
その為、金持ちしか利用できない事から人はまばらで、しかも行儀がいい。

中途半端な金持ちは荷物を積み込めと命令をしたりするが、この車輌を利用する人間はそもそも大荷物を持ち歩かない。
荷物は特別車輌に供え付いている巨大なスペースに置けばいいのだ。
その日、スノー・ピアサーに一番の荷物を持ち込んだのは、ニクスが担当した客だった。

ζ(゚ー゚*ζ「荷物はどこに預ければいいのかしら?」

最初、ニクスはその女性の美貌と美声に心を奪われたが、後ろに控えていた大型バイクを見て正気に戻った。
見たことのないバイクだが、それが高級かつ普通ではないことはすぐに分かった。
スタンドはおろか、誰も乗っていないのにバイクが自立しているのだ。
かなりの大荷物を積載しながらも、まるでバランスが崩れる様子もない。

スノー・ピアサーと同じように、多くの技術が使用されているバイクに違いない。
そんな相手に無礼な真似は間違っても出来ない。

(ΞιΞ)「あ、あちら……です」

思わず上ずった声を出しながらも、彼は寝台車の後ろにある空間を指さした。
これを果たして乗せられるか、それが心配だった。

959名も無きAAのようです:2018/12/29(土) 09:29:27 ID:P5VaBOs60
ζ(゚ー゚*ζ「ありがとう。
      じゃあ、またね」

女性がバイクに手を振ると、バイクはゆっくりと走り出し、タラップを上って車輌に入って行った。
誰も運転していないのに、とニクスは己が正気であることを確認する為、何度も瞬きをした。
夢でも何でもない、現実だった。

ζ(゚ー゚*ζ「はい、三人分」

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                             、 {                     /
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乗車券を三枚渡され、ニクスは一応人数を確認した。
赤毛の女性と、ニット帽を被った少年が一人。
特に問題はなさそうだった。

(ΞιΞ)「では、どうぞ」

半ば放心状態だったが、どうにか三人を車輌に案内することは出来た。
一人で走るバイクというのがこの世にある事を知り、ニクスは己の見識の狭さを知った。
規格外の金持がいるのと同じように、規格外の乗り物が存在するのだ。
例えば、目の前にあるこのスノー・ピアサーもそうだ。

強化外骨格という兵器を、まさかこうして交通の手段に変えるなど、誰も思いつきもしない。
発想というのは人間次第でいくらでも広がり、実現するのだ。

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             制作協力【全てのブーン系読者・作者の皆さん】

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スノー・ピアサーの特別車輌の乗客には個室が割り当てられ、その広さは三人で過ごすには最適な広さだった。
ホテルの一室、とまでいかないが、ベッドやシャワーがあるのは嬉しい。
食事は食堂車輌に向かえばよく、特に不自由はしない。
一般車両は二階建てで一両に八人が寝泊まりする為、この部屋よりも半分以下の広さしかない。

960名も無きAAのようです:2018/12/29(土) 09:31:26 ID:P5VaBOs60
一人旅であればそちらで十分だが、三人旅ならばやはり、この大きさの部屋が一番だ。
一両を使い切る事が出来れば、人目を気にすることなく旅を楽しめる。
更に、食事を内線で依頼することも出来る為、ブーンを迂闊に人目にさらさずに済むというメリットもある。

(∪*´ω`)「おー」

ニット帽を外し、ブーンはようやく一息つく事が出来た。
彼は耳付きと呼ばれる人種で、人間の耳の代わりに垂れ下がった犬の耳を持っている。
身体能力も人間離れしており、彼の耳と鼻、そして筋力は大人をも凌ぐものがある。
部屋に入ってからすぐにローブの下で尻尾が揺れ、驚きと喜びが現れた。

ノハ;゚⊿゚)「おおぉう!」

ヒートも同じように驚きを口にした。
外装に窓が存在しないが、部屋から外の様子は驚くほどに見える。
壁があるはずの場所は透き通り、外の様子が全て見通せる。
継ぎ目のない外の景色は解放感に溢れ、列車の旅を退屈なものにさせない。

無論、外からは白い外装しか見る事が出来ない。
これは強化外骨格の演算装置を駆使して作られた映像であり、スノー・ピアサーの特徴でもあった。
一切の遅延なしに映像を同期させるこの技術は、デレシアの知る強化外骨格としての“スノー・ピアサー”の持つ力の一つだった。
豪雪地帯での高速戦闘に特化して作られたスノー・ピアサーは本来、全身をこの列車のような装甲で覆い、高周波振動発生装置を用いて雪の中を苦も無く移動する。

カメラが雪で覆われることを想定してスノー・ピアサーは全身に極小のカメラを取り付け、周囲の映像を使用者に見えるように工夫されている。
それをここまで巨大な構造物に用いるとなると、相当な技術が必要になるはずだ。
同じ技術自体は存在しているため、スノー・ピアサーを使う必要はないが、それでもかなりの金がかかっただろう。
シャルラへの高速鉄道需要は確かに存在しているが、ここまで金をかける必要はあるのだろうか。

採算を取る事の出来る算段があるからこそ、この列車を作り出したに違いない。
ブーン達が部屋の中を見ている中で、デレシアは新聞が置かれているのに気付き、その見出しに眉を潜めた。
内藤財団による、世界統一単位の発表。
新聞を開き、目を走らせる。

ζ(゚-゚ ζ「……」

新単位は世界中で採用され、すでにほとんどの街で置換が始まっているらしい。
ここまで唐突な発表にもかかわらず賛同者が大勢いるという事は、かなりの時間をかけて浸透させていたのだと分かる。
業腹だがブーン達にも新単位を学ばせ、適応してもらうしかない。
単位がヤード・ポンド法から切り替わるのは実に喜ばしい事だが、作為的な何かを感じる点が気に入らなかった。

人間が自力でそれを導き出したのならばいい。
それは人間の進歩であり進化である。
しかし、偽りの進化は歓迎できない。
今しばらく動向を見て、ティンバーランドの動きを予想しておいた方がいいだろう。

芽吹く前に潰すのは容易だが、思いがけない場所に根を張っていると再び彼らが現れないとも限らない。
潰すのであれば一気に、何もかもを、一切の容赦なく。
いつまでも叶わない夢を見せる組織が再興することなどないように、徹底的に滅ぼさなければならない。

ノパ⊿゚)「なぁ、ラヴニカについて訊きたいんだが、いいか?」

961名も無きAAのようです:2018/12/29(土) 09:33:02 ID:P5VaBOs60
ヒートの言葉で意識を切り替え、デレシアは答えた。

ζ(゚ー゚*ζ「私に答えられる範囲でならね」

ノパ⊿゚)「いくつもギルドがあるって話だが、どこに持って行けばいいのかは分かるのか?」

ζ(゚ー゚*ζ「えぇ、棺桶の修理が一番上手い所に持って行くわ。
      ただ、あの街はちょっとギスギスしている事が多いから、そこがネックね。
      ま、どうにかなるわ」

人が支配する組織である以上、やはり、衝突は避けられない。
ラヴニカでは水面下での探り合いや衝突があり、死人がよく出る。
観光客は護衛を生業としているギルドで腕の立つ人間を雇い、ガイドブックにない場所には決して近づかない。
長生きをしたければそうするべきだし、街の情勢について無知なのであれば当然だ。

ギルド同志の争いに巻き込まれないようにするためには、ギルドを知らなければならない。
棺桶の修理を依頼することは、実際、ほぼ全てのギルドで行える。
しかし、それをどこに持って行くのかによってその後が変わってきてしまう。
格安のギルドに持って行けば、その商売敵が機嫌を損ねるし、高額なギルドを選べばそれを面白く思わないギルドが腹を立てる。

目的によってギルドを慎重に選ばなければ、修理どころではなくなってしまう。
閉鎖的な部分と開放的な部分が入り混じる街、ラヴニカ。
混沌とした雰囲気の部分もあるが、常に活力に満ちているその街がデレシアは好きだった。
群雄割拠、という点で言えばデレシアの故郷に似ていない事もない。

以前までは一カ月以上の時間を要した旅も、スノー・ピアサーを使えば一週間もあれば到着するだろう。
道中、何事もないことを願うばかりだが、ティンバーランドが何もしてこないとは思えない。

ノパ⊿゚)「頼もしい限りだ。
    あんたがいて助かるよ」

ζ(゚ー゚*ζ「あら、私も貴女がいて助かってるわよ、ヒートちゃん。
      ブーンちゃんも、いてくれてとても助かるわ」

(∪´ω`)゛

気恥かしそうに頷き、ブーンは外の景色に目を向けた。
どうやら、ここからの眺めが気に入ったようだ。

ノパ⊿゚)「そういや、トラギコは大丈夫なのか?
    あいつ、あんたの事をずっと逮捕したがってたが、この列車に誰か呼んでないとも限らねぇだろ」

ζ(゚ー゚*ζ「大丈夫よ、ああ見えて、結構律儀な人なのよ」

もっと言えば、トラギコは律儀で愚直な男だ。
かつてのジョルジュ・マグナーニがそうであったように、トラギコもデレシアを追おうとしているのは分かっている。
それでも彼は、状況を読んで行動を切り替えるだけの自制心があった。
ティンバーランドが如何に巨大な組織であるか、その断片を見ることになったティンカーベルでの一件により、トラギコは一時的にだがデレシアから目を逸らすことにしたのだ。


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