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Ammo→Re!!のようです

864名も無きAAのようです:2017/12/04(月) 20:27:56 ID:v4yXdykE0
(;-@∀@)「おっ……?!」

思わず声を出しかけたのは、後部座席からするりと現れ、立ち去る女の姿を目視したからだ。
その妖艶な姿と肉食獣を思わせる静かな歩き方を見紛うはずもない。
快楽殺人鬼、ワタナベ・ビルケンシュトックだ。
と言う事は、ジョルジュはワタナベと同じ組織の人間として今活動している。

この状況は、正に千載一遇のチャンスだった。
何が起きてもおかしくはないし、何かが起きなくてはおかしい状況。
呼吸を意図的に浅くし、極限まで集中力を高める。
それから間もなく怒号が山に響き、黒い影がジョルジュの周囲に現れた。

あまりの速さにアサピーはその正体を視認することが出来なかったが、予測は簡単についた。
あれは、狼だ。
タイミング的に、アサピーを追い立てた狼と見て間違いない。
円を描くようにして静かに移動をする狼達は今、ジョルジュを獲物と定めて狩りを始めようとしていた。

ここで助けるのも一つの選択だが、アサピーはその選択を選ぶ気はなかった。
助けてしまえば折角のスクープ写真が撮れない。
やがて、ジョルジュが動いた。
襲い来る狼に向けて銃を構え、そして――

――車が嘘のように吹き飛び、ジョルジュがそれに巻き込まれたのを目撃した時、アサピーは絶句した。
何が起きたのか、第三者の視点から見ている彼でさえまるで分からなかった。
いや、それ以前に狼の群れがどのようにして車を吹き飛ばしたのか。
狼の群れを率いる何者かがいるということなのか。

今から、あらゆる瞬間がシャッターチャンスとなり得る時間となる。
先ほど以上に集中力を必要とし、瞬きさえ禁じなければならない程の緊張状態が生まれていた。
フィルムの残り枚数は二十枚。
シャッターチャンスは二十回であり、それ以上はないと考えなければならない。

アングルを考慮し、移動するべきかと考えたが、それは一瞬の内に否定した。
顔が見える角度で見下ろすというだけでもかなりの好立地なのだ。
欲を張りすぎてはいけない。
レンズを通して見える世界を切り取り、そこに全てを収めきるのだ。

何も真実全てを収める必要はない。
必要なのは、切り取られた真実であり、効果的かつインパクトのある真実なのだ。
カメラマンの仕事とは真実を伝える事ではなく、真実から切り取られた真実を生み出すことなのだ。
彼が狼に襲われて反撃している真実ではなく、彼が狼に食い殺されるか、狼を撃ち殺すという真実さえあればいい。

それを記事にすれば、アサピーはスクープを手にすることになる。
しかも、今この島を騒がせている人間達の一味だという事を考えれば、嫌がらせとしてその効果は極めて高いだろう。
そして巣から出てくれれば、大きなスクープがアサピーに手柄となる。
息を呑み、指に汗がにじむ。


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