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YOU、恥ずかしがってないで小説投下しちゃいなYO!
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どんどんこーい。
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そして…
女「あたし?持ってるよ〜♪」
女装の友達が持っていた。
女装「良かった、貸してくれない?こいつ、忘れたのよ」
そう言い、俺を指で指す。
女「うん、いいよ〜」
女は快く、キレイに畳まれている体操着一式を貸してくれた。
女体「ありがとう」
女「いいよ」
とりあえず、これで授業には出られるな。
俺が安堵のため息を漏らすと、女装が横から肩を叩いてきた。
女体「なんだよ?」
女装「私との勝負、くれぐれも!忘れないでよね!」
女体「へいへい、わかってるよ」
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体育の前の時間の休み時間。
女装「さて、着替えに行きますか。ほら、あんたも」
女体「……」
女装「どうしたの?」
女体「…忘れてた…」
女装「はぁ!?あんた…まだ忘れ物あるの?」
女体「いや、その…着替えって事は…更衣室でだよね?」
女装「当たり前でしょ。廊下や教室で着替えられる訳ないんだから」
女体「お、俺も同じ更衣室で着替えるのか…?」
女装「当たり前でしょ!あんたはもう女なんだから」
女体「う…」
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確かに体は女だけど、心というか意識は男のままなんだよな。だから、女と一緒に着替えるのに抵抗というか罪悪感みたいなものを感じてしまう。
女体「でも…しょうがないのか」
女装「そういうこと。さ、休み時間は短いんだから、早く」
女体「…って、お前はどうするんだよ」
女装「そりゃ更衣室で着替えるわよ…もちろんバレないように」
女体「おまっ…それは…」
女装「し、仕方ないじゃない!」
女体「猛烈に体育を休みたくなってきた…」
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そして、更衣室の前に立つ。
ドアノブに手をかける、が開けるのをためらってしまう。
女体「……」
女装「早く開けなさいよ」
女体「ちょっと待って。今深呼吸を」
女装「してる暇はない」
女装はそう言うと同時に、強引にドアを開ける。
ドアを開いたその先には、思春期の男子には少々刺激的な光景が広がっていた。
俺はそんな光景を前に
女体「あ…あ…」
女装「どうしたの…小刻みに震えて」
女体「頭から鼻血が出そう!」
取り乱すことしかできなかった。
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女「あ、2人ともやっと来た。遅いよ〜」
着替え中で下着姿の女が手をぶんぶん振っている。
女体「あ、ああ…悪い…」
俺はそんな姿を直視出来る訳もなく、うつむきながら壁側のスペースをキープする。
この妙に居心地の悪い空間から抜け出すために、急いで着替える必要がある。そう思いながら、女が貸してくれた体操着に着替えようとして…手が止まった。
女体「なあ…女」
女「なに?」
女体「体操着を貸してくれたのは感謝してる。だけど…」
女「だけど?」
女体「なんで、よりによってブルマなんだ!」
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この学校の指定体操着は2つある。1つは普通のジャージでもう1つはブルマである。しかし、この時代にブルマはやはりというか、当然というか、女子の間では圧倒的な不人気でわざわざ好んで着用する物好きはおらず、全員がジャージだった。そんな状況だというのに…
女体「なんでブルマなんだよ!?」
女「だってそれしか無かったし〜」
女体「ジャージの半ズボンとかあっただろ?」
女「ん〜ん、あたしのジャージと予備のブルマしかなかった」
女体「マジかよ…」
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女体「他の奴から借りようかな…」
女「でも、あたし以外に体格近い人いるの?」
女体「いや、この際多少サイズが大きくてもいいや」
女「え〜」
女体「…なんだよ、その不満そうな声は」
女「だってさ〜女体君のブルマ姿見てみたいな〜って思って」
女体「…やだよ、恥ずかしい」
女「お願い、穿いてよ〜」
女体「お断りだ」
女「じゃあ、しょうがないな〜」
女の目に危険な光が宿る。女は軽く一息吸い、更衣室の全員に聞こえる声で告げた。
女「みんな〜!女体君がブルマの穿き方わかんないんだって〜!みんなで着けてあげない!?」
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女がそう言った瞬間、俺は心臓が止まりそうな感覚に見舞われた。
女体「おまっ、いったい何を…」
そこで、更衣室が静まり返っている事態に気づく。妙だと思い未だ女子でいっぱいの更衣室内を見渡す。女子は着替え途中のまま、動きを止め俺と借りた体操着を交互に見ている。
そして、誰かが静寂を破る一言を呟く。
女1「そうよね…着方がわからないんじゃあ、しょうがないわよね」
女2「私達が手伝ってあげる他、手段はないわよね…」
そして、女子が一斉に邪悪な笑みを見せる。この笑顔を俺は一生忘れることは出来ないだろう。
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わずかな沈黙の後、女子が一斉に俺めがけて跳躍した。
女体「ぎゃあああああああああああ!」
咄嗟の出来事に反応することも出来ず、あっけなく押し倒され四肢を押さえつけられた。
女「さて、と…みんな、しっかり押さえていてね〜」
借りた体操着を拾いながらの女の一言に女子連中は軍隊ばりの威勢のいい返事を返した。
女「さ〜て、お着替えの時間だよ〜♪」
女体「や、やめっ…離せっ…」
女「その問いには肯定しかねるよ〜って事でまずは上からいってみよ〜♪」
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女は俺の制服を器用に脱がせていく。
女体「止めろおおぉぉぉ!」
女「止めな〜い、えいっ♪」
抵抗虚しく、上半身の制服が脱がされ、下着だけになる。
女体「っ…」
俺は羞恥心のあまり、目を固く閉じる。多分、顔も真っ赤になっていただろう。
女「あれ?女体君って意外と貧乳だね」
女がそう言った瞬間、全員から同情の視線が注がれる。
俺の心は男のままだ、悔しくなんかないよ。
女は手早く、俺に学校指定の半袖シャツを着せた。
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女「じゃあ、次はお待ちかねのブルマだね」
女がブルマ片手に悪魔(としか思えない)の微笑みを向ける。
なんか…さすがに下の方はシャレにならないんじゃないか?
女体「ぬぐ…うううぅぅ!」
抵抗を試みるが、片手、片足につき4〜5人で押さえつけられているせいでピクリとも動かせない。
女「まずはスカートを…えいっ♪」
スカートも手早く脱がされ、下半身の下着姿も晒された。
女「って柄パン!?」
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そう、俺は制服は女子用に変えたが、さすがに下着の変更は心のふんぎりがつかず、男物のままにしていた。
女「まいったな〜これじゃあ、ブルマは着けれないね」
もしかして止めてくれるのかと思ったが、そう甘くはなかった。
女「しょうがないから、ノーパンか、誰かの下着の予備を穿いてから着せようか」
女体「お前は俺に恨みでもあるのか!?」
女「え? ないよ?」
明らかに恨みがあるとしか思えない行動なのだが…
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結局、女子の1人がパンツを渡してくれて、俺はノーパンブルマという最悪の事態だけは防ぐことができたが、大切な何かを失った気がする。
そして、悪夢の着替え時間も終わり、解放された。
女体「ううっ…」
女装「な、なに泣いてるのよ」
女体「本当に…泣いてる理由がわからないのか?」
女装「…ごめん、よくわかるわ」
こいつは、俺に注目が集まっている間に素早く着替えた。俺を助けようともせずに。
女装「だって、あんたが私の立場だったら、あの状況で割りこめると思う」
女体「…やっぱ無理だな」
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更衣室から出た俺を見て、先にバレーの準備を始めていた男子連中が凝視してきた。
男1「(ブルマ…だと…)」
男2「(ktkrwwwwww)」
男3「(もしかして神光臨?)」
男4「(生足がたまんねぇwwww)」
男5「(俺は生足より、ペッタンコな胸が…)」
男6「(カメラ、カメラ、写メ撮らねーと)」
邪な視線ばかりだ。俺は思わず一歩下がる。
っていうか、今日はやけに嫌な事が続く。厄日か?
帰りに神社に寄って、厄を祓ってもらおうかと考えつつ、男どもを睨みつけた。
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結局、女装との勝負の結果は俺の圧勝だった。
ストレスが溜まりに溜まっていた俺は、女装のチームとの勝負で全力のスパイクを連発した。
女体「なんとなくスッとした」
そして、体育も終わり下校時間。
俺は神社に行き、偶然いた巫女さんに事情を話して、御祓いをしてもらった。
その後、境内の賽銭箱に小銭を入れ、明日から幸せになれるようにと……かなり本気で祈った。
【終わり】
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これで終わり
やっぱり名前が無いと色々と違和感があるような…
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乙乙
…と向こうのノリで良いのだろうか
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「ごちそうさまでしたー」
「おいよ、おそまつさん」
おなかいっぱいで幸せそうに微笑む少女と、仏頂面で二人分の弁当箱を片付ける少年。
普通なら逆のシチュエーションのような気がするが
微笑む少女は、実は女体化した元少年なので何も問題はないのである。
「特に卵焼きはサイコーだったよ、ふわふわあまあま……なんで味覚変わっちゃったのに僕の好みの味付け分かるの?」
「んぁ? たまたまだろ」
「そりゃそっかぁ……」
ふにゃぁ、と表情をすにょたっこ。
その無邪気で純粋な瞳に見つめられ、少年は内心焦りまくる。
実は卵焼きのレシピは彼女の母親に教えてもらった事。
実は、最近弁当作りに励んでいるのは「彼女との昼休み」という至福の時間を過ごしたいからという事。
そして、元男であり元親友でもある目の前の少女に、自分が好意を寄せてしまっている事。
それら隠しておきたい事が、全部筒抜けになってしまっているような……そんな気がしてしまうのだ、彼女のまなざしは。
「んにゅ……」
「どした、また寝不足なのか?」
「んー、最近やらなきゃいけないゲームおおくてー」
「お前女体化しちまったんだから、夜更かしはマズイんじゃないのか?」
「んー……そうなんだけどー……」
ふらふらしながら寝たか覚めたかな状態で言い訳になってない事を呟くにょたっこ。
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「ねー、今日もいい?」
「ぅあ……わ、わかった……」
「ありあとねー」
ふにゃふにゃー、と少年の脚を膝枕にして寝転がるにょたっこ。
ドクン!と、少年の心拍数が一気に跳ね上がるが、おねむなにょたはそんな事には気付けないようだ。
「なんちゅーか、こう、絵的にマズイと思わんか?」
「ぅー? 逆ならともかくオトコ側がひざまくらするほーならいいんじゃないふぁわわ……ごめん、もーねりゅー」
ここ数日、毎日行ってるやり取りをしながら、にょたっこはさっさと眠ってしまった。
そして残された少年に、歓喜と拷問の時間が訪れる。
少しでも身動ぎしちしまったら、起こしてしまうかもしれない。
足がしびれようが鼻が痒かろうが、彼女目覚めるまで動く事は出来ないのだ。
だが、そんな事は少年にとって瑣末なこと。
今の彼の全神経は、目の前の眠り姫に集中しているのだ。
仄かに立ち昇る甘い香りが、微かに漏れる吐息が、呼吸に合わせて上下する胸が、
長い睫毛が、肌理細やかな、美しい髪が、柔らかそうな唇が
そう、彼女の全てが少年を至福へと追い込むのだ。
眠りを妨げないようにそっと……本当にそっと彼女の頬を擦ると
「うにゅ……」とか呟きながら微笑み、
指を差し出すと、赤子のようにきゅっと握り返してくる。
昨日、我慢できずに彼女の美しいうなじに触れた時など
「ぅー」と器用に寝がえりをうって少年の服にしがみついてきさえしたのだ。
こんな事をされては、たまったものではない。
相手が親友だろうが女体化者だろうが、惚れてしまうのは仕方がないのではなかろうか。
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誰も来ない文化部の一室。
昼休みの喧騒すらもかすかにしか聞こえてこない、二人だけの空間。
目の前には、彼を信頼しきって身を預けている眠り姫。
少年を咎める者も、妨げる物も、何もない。
彼は、この関係が始まってから一度でいいから近づきたい、触れたいと思っていた場所……彼女の唇に狙いを定めた。
ゆっくりと、這うようなスピードで、彼の中指が頬から口元、そして上唇をなぞっていく。
端までたどり着いたら今度は下唇……指から伝わる感触に感動を覚えながら、ゆっくりと、ゆっくりと……。
目眩がする。
いつの間にか少しだけ開いている彼女の唇。
その合わせ目に指が少しづつ滑り込む。
熱くなる吐息、ピンクに色づいていく頬。
全ての神経を指先に集中させている彼には、
彼女が内履きの中で足の指をぎゅっと握っていることにも
唇から広がる感覚に声が漏れそうになるのを必死にこらえていることにも
気付けないのであった。
そのころ、某ゲームショップには
このゲームなんか長引いていいかねぇー、と人気のゲームタイトルを吟味している彼女の母親の姿があった。
「あの子を夜更かしさせて、彼にお世話をさせる……我ながらいいアイデアよね♪
おっと、卵焼き以外のレシピも伝授しとかなきゃよねー……」
どうやら全て策士の計算通りに事が運んでいるようである。
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しまった、上げてた…orz
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別にあげても問題無いべ。乙です。
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GJ!
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『魔法少女 その1』
【夜のお仕事1】
夜の闇へと染まった街。
ほとんどの者が眠りにつくであろう時刻。
静寂に包まれた空間をハンターとその助手、そしてターゲット。と3つの影が駆け巡る。
「くそっ、素早いな」
ターゲットを追いかけているハンターは苛立ちを隠せない声で呟く……まあ、ハンターってのは俺のことだが。
「見た目から察するに…元は犬かな〜」
そんな俺とは対照的に呑気な声を出しながら少し後ろからついてくる助手……って言っても熊のヌイグルミだが。
「人間のくせにしつこいなっ!」
そして、そんな俺達から必死に逃げ回るターゲット……見た目は女の子なんだが、犬の耳と尻尾がついている。
「いいかげん、逃げるなっ!」
体力を無駄に消耗するだけの追いかけっこに三十分も付き合わされている俺としては、もう我慢の限界だった。
「ちょっ、何するつもり!?」
熊のヌイグルミが、どこか焦りを感じさせる声色で俺に問いかけた。俺が我慢の限界を超えたことでも感じ取ったのだろうか。
「決まってんだろ。こうすんだよ!」
俺は手に持っていた『金属バット』を犬耳少女に向けて全力でぶん投げた。
金属バットは空気を切り裂き、犬耳少女に直撃した。
犬耳少女は頭から地面に滑り込み、動かなくなった。どうやら仕留めたようだ。
「よし、当たった!」
「よし、当たった! じゃないよ!」
ヌイグルミが俺を咎めるような口調で叱りだす。時間を配慮してか小声だったけど。
「自分の武器を放り投げるなんて何を考えてんの! もし、外れでもしたらどうするつもりだったの!」
俺は無視して犬耳少女に近寄る。
犬耳少女は小刻みに痙攣している。
「やれやれ、まだ出てこないつもりか?」
バットを拾いあげると同時に犬耳少女の体が光り、背中からまばゆい光を放つ球体が出てきた。
「ようやく出てきたか」
その球体にバットを向け『魔法』を一言呟く。
「滅せよ」
俺が一言呟いた途端、光の球体の動きが一瞬止まり、どんどん小さくなり、完全に消えた。
そして、犬耳少女が居た場所には普通の犬が一匹いるだけだった。
「もう馴れた?」
熊のヌイグルミが、戦闘後の余韻を感じさせない口調で俺に訊いてきた。
「何に」
訊かなくてもわかってはいるが、一応言ってみた。
「もちろん、魔法少女として、だよ」
予想通りだ、畜生め。
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【夜のお仕事2】
「さぁな、まだわからん」
適当に答える。
「そんな投げやりに言われても」
熊のヌイグルミは困ったような口調で言う。
それだけならいいんだが、目の前をウロウロと飛び回られると、ぶっちゃけウザイ。
「……ふう」
思わずため息をつく。と共に一陣の風が吹き、スカートの裾がはためく。
「…っ!」
慌ててスカートの裾を押さえ、辺りを見渡す。人影はなし。
「くくく…」
訂正。人影はないが、ヌイグルミはいた。
「くくくくくはぁー! いやぁ、いいものを見せさていただいたよっ! 魔法少女のパンチラとはね! それにしてもいいもんだねースカートを押さえながら頬を赤らめるその姿! 男とは思えないね! あ、でも今は体も格好も女のk」
「だらっしゃあああぁ!」
色々と五月蠅いヌイグルミを金属バットでフルスイングしてみた。
意外と飛距離が出たようで少なく見積もっても1kmは飛ばされていっただろう。
「ったく、近所迷惑だろ」
俺はバットを降り抜いた姿勢のまま、ヌイグルミが肉眼で視認不可能な場所に飛ばされるまで眺めた。
「あ、見えなくなった…さて、帰って寝るかな」
俺は欠伸を我慢しつつ、自宅へと帰った。
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【一か月前1】
そもそも、俺がなんで『魔法少女』とやらをやっているなか、話は一か月前までさかのぼる。
俺は市内の中学に通う平凡な中学生で、受験も終わって後は卒業を待つだけだった。
そんな時、俺は幼馴染みのツバサから相談事をもちかけられた。内容は
「実は僕、魔法少女なんだ」
ツバサの頭がおかしくなったのかと思った。
だって、いきなり「魔法少女なんだ」と言われて信じられるか? 「魔法少女萌えなんだ」ならまだしも「魔法少女なんだ」とは。お前は男だろう。
で、俺は当然疑いのまなざしを向けた。
するとツバサは
「嘘じゃないよ。証拠を見せてあげる」
と言い、制服のポケットから錠剤がギッシリと詰まった容器を取り出し、錠剤を一粒飲み込んだ。
その瞬間、ツバサの体は光に包まれた。
光の中、シルエットだけの存在となっていたツバサ。そのツバサのシルエットが突然一回り程大きくなり、それから間も無く光は消えた。
光が晴れたその先にはツバサがいた。が、服装が変化していた。
よく、日曜の朝などに子供向けのアニメで『魔法少女』が来ている、他人には見せれそうにもないド派手な服。
そんな服に身を包んでいるツバサがいた。
「…………」
突然の出来事にただ呆然とすることしか、俺にはできなかった。
「どうかな? これでも信じられない?」
当たり前のように話す、ツバサの声が心なしが少し高くなったように感じた。
「…………」
俺はまだ、目の前で起こっていることに頭の処理が追いついていない。
一言で言えば混乱中だ。
ノーリアクションの俺を、ツバサはまだ疑っていると思ったらしく
「そんなに信じられないのなら自分の身で試してみる?」
などと言った。
そして、錠剤を一粒取り出し、俺の口に放り込んだ。
普段の俺なら、そんな得体の知れない物は飲まないが、混乱していたせいなのか、反射的に飲みこんでしまった。
飲みこんだ瞬間、俺も光に包まれた。
「っ!?」
同時になんとも形容しがたい何かが体中にみなぎっていく。
「(な、なんだこれ。でも、なんか温かく感じる…)」
なんて、悠長な事を考えていられたのは一瞬だった。
なぜなら、俺の来ていた服が一瞬で光の粒子に変わり、強制的に全裸にされたからだ。
「ぎゃあああああああぁぁぁ!?」
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【一か月前2】
俺の絶叫とは関係無く、事態は進んでいく。
ついさっきまで俺の服だった光の粒子が俺の体を包み込み、一つの形を作っていく。
それはさっきまでツバサが着ていたド派手な服の色違いバージョンだった。
「なあぁぁぁ!?」
光が消えていく。と共にこの姿が人目に(と言ってもこの場には俺とツバサしかいないが)晒されていく。
「あ、似合ってるじゃない」
微笑を浮かべながらのツバサの一言が妙にムカついた。
「あのなぁ…ん?」
「どうかした?」
「なんか俺の声、妙に高くね?」
「そりゃそうだよ。だって『魔法少女』だから。変身と同時に女の子になっちゃうよ」
「…マジで?」
「マジで」
俺は恐る恐る自分の股間に手を伸ばす。
男には必ずあるはずの物が、そこには無かった。
「そんな…バナナ…」
「とりあえず、僕が『魔法少女』だって信じてくれた?」
タネも仕掛けもなく、これだけの事が起こるのだから『魔法』の存在は認めざるを得ない…しかし。
「これを持ってるからってお前が『魔法少女』だって事にはならないじゃん」
「あ、それもそうか」
ツバサは微笑し
「じゃあ『魔法少女』のお仕事見せてあげるよ、一緒に行く?」
などと言った。
この後、俺はツバサと一緒に静かな夜の街へ出かけ、人ならざる者と戦うツバサを見て『魔法少女』である事を信じ、とある事情により変身用の錠剤を借りたのだが、これはまた後日話す事にする。
そして、それから一か月。俺はツバサの代わりに『魔法少女』として、人ならざる者と戦い続けている。
「よっ…よっ…と」
あらかじめ鍵をかけていない2階の窓から自分の部屋に入る。
魔法少女の身体能力なら普通にジャンプするだけで楽に2階まで辿り着くことができる。
「おかえり、遅かったね」
俺の部屋にはすでに熊のヌイグルミが俺のベットに横たわっていた。
「いつも思うんだけど…必ず俺より早く帰ってきてるよな」
「回復速度と移動速度には自信があるからね」
「そうかい」
この熊のヌイグルミも『魔法少女』と関係している。
でも、その話もまた後日。
今は、もう、眠い。
俺はド派手な服のままベットへとダイブした。
【終わり】
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これで終わり
魔法少女ものを書いて見たかった、ただそれだけ
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GJ!!!!!!!!!!!!!!
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すばらしい
特にリリカルでない所が
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クンクン クンスカクン お芋タンの香りがする
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『魔法少女2 その1』
【愚痴】
魔法少女になって一月と一週間程経ったある日、俺はツバサの家に遊びに行った。
「最近、眠い…」
「へえ、なんで?」
「魔法少女になってからというもの、したくもない夜ふかしをさせられているからな」
俺は、魔法少女の敵である『人ならざる者』との連日連夜の戦いで睡眠時間が削られ、睡眠不足になり、そのせいで注意力や反応速度が落ち、戦闘が長引き、さらに睡眠時間が削られる、という悪循環に陥っている。
「ははは、大変だね」
呑気に笑っているツバサの頭を鷲掴みにした。
「誰のせいだと思っている!? だ・れ・の!?」
「誰かなぁ? あはは」
ツバサは悪びれもせず、笑いながら言う。
このまま「俺のこの手が(ryと叫びながら全力のアイアンクローを味あわせたい衝動をなんとか抑え、頭から手を放す。
「お前のせいで睡眠不足になってるんだ。せめて休日だけでも仕事を代わってほしいもんだ」
「ん〜……めんどい」
ブチッ
「俺のこの手(ry
渾身のアイアンクローを味あわせてやった。
俺は、頭を押さえながら悶絶するツバサを見ながら、今までの生活が一変した『見学』の日を思い出していた。
-
【変身解除】
ツバサから相談を受け、俺がはじめて『魔法少女』になった日、ツバサの自称『魔法少女』への真偽の程をはっきりさせるため『仕事』に着いて行くことにした。
『仕事』は夜に行うため、それまで俺はツバサの家で待つ事にした。
なぜなら『仕事』の時間は決まっているものではなく、急に入るため、わざわざタイムロスを作りたくないとツバサが言っていたため、一緒に行けるようにということだった。
しかし、それは俺にとっても好都合だった。
実は変身は未だ解けておらず(というか解き方がわからない)こんな情けない格好で家に帰るなんてことは絶対に嫌だった。
夜に『仕事』ということは遅くなるかもしれないから、念のため家には「今日はツバサの家に泊まるから」と連絡も入れておいたから、問題は無い。
と、いうわけで特にしなきゃいけない事もないのでツバサとゲームをやっていた。
しばらくして、急に俺の着ていたド派手な服が光の粒子に変わり、変身前に着用していた中学の制服に一瞬で変わった。と同時に申し訳程度に膨らんでいた胸が完全に平らになり、体格も丸みを帯びた女のものから男のものへと変わった。
一言で言えば、変身前の状態に戻った。のであった。
「あ…?」
俺は変身時と同じく、いきなりの展開に呆気にとられていたが、一度同じような体験をしたせいか惚けた状態からの復活は早かった。
「な、何が起こったんだ?」
「あ〜、変身時間の限界みたいだね」
声のした方を向くと、俺と同じく変身が解けたツバサがやや苦笑気味の笑顔をこっちに向けた。
「変身には制限時間があるのか」
「うん、とはいっても2時間くらいあるから『仕事』中に時間オーバーでは変身が解除される事は滅多にないけどね」
「時間オーバー『では』ってことは他にも解除の手段はあるの?」
「あるよ、魔法少女ってくらいだから魔力と引き換えに魔法を使えるけど、魔力が尽きたら強制解除。ってか、任意での解除は無理なんだよね」
「えー、解除方法が強制のみって不便だ」
「仕方ないよ。そういう仕様らしいし」
この後もゲームしたり、話したりしながら過ごしてる内に夜中になり、そろそろ眠ろうかと思った頃
「来た…行くよ」
「どこに?」
「だから『仕事』だよ」
「……ああ」
すっかり忘れていた。
ツバサから変身薬を貰い、変身する。
「じゃあ行くよ、準備はいい?」
「いつでも」
俺達は窓から夜の街へと飛び出した。
-
【見学】
家を出てから五分ほど経った。
ツバサが近づき、小声で話す。
「ほら、あそこの男がターゲット」
「ターゲット?」
ターゲットってなんだ、こんなド派手な格好で尾行でもするのか、と思いながら、ターゲットの男を見る。
その男は体格も顔も普通のどこにでも居そうな二十代の男だった。…頭に生えている耳と尻の辺りにある尻尾を除けば、の話だが。
「な、なんだ、あれは…」
「形と毛の色から推理して、多分……狸かな」
「そういう意味じゃなくて!」
「わかってるよ。まあ、後で話すから」
そう言い、ツバサは手を前にかざす。すると、何も無いところからいきなり日本刀が現れた。
「え、手品!?」
「ふふっ、違うよ。これは魔法少女にとって、基本的な魔法の一種で『創造攻具』って言うんだ。魔法少女一人ひとりが自分の心の中に描いている一番の武器を瞬時に召喚する魔法だよ」
そういうなり、ツバサは姿勢を低くして狸男に凸っていった。
その速度は明らかに一般人の出せるレベルでは無く、狸男が気がつく間もなく肉薄し、手にしている日本刀で一閃、無造作に振るった。
「うわああぁぁぁ…ぁあ?」
ツバサは首を狙って刀を振るい、確かに首に刃がめりこんでいた。
だからこそ、俺は絶叫しかけたのだ。が、ツバサの剣には血は一滴も着いてなく、また斬られて、たった今崩れ落ちるように倒れた狸男の首もしっかりと繋がっていた。
どういう事だ?
「ほら、ぼーっとしてたら駄目だよ。本当の敵が出てくるからね!」
ツバサがそう言った瞬間、倒れている狸男の背中からまばゆい光を放つ球体が浮かび上がった。
「な、なにこれ…魂?」
「違うよ、これは人間以外の生物に寄生し、その生物のコントロール権を乗っとり、人間への悪事を働く寄生虫さ」
ツバサは説明を終えると、刀の切っ先を球体へと向けた。
「これで終わりだ。『滅せよ』」
ツバサが静かに呟いた。次の瞬間には光球はみるみるうちに小さくなり、完全に消えた。
「そして、その寄生虫を倒して人間と寄生された生物を助けるのが、僕達『魔法少女』の役割さ」
ツバサが顔を向けた方には無傷の狸が安らかな寝息をたてていた。
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【頼み】
「お願いがあるんだけど」
「断る」
敵を倒し『仕事』を終えた、ツバサはすぐに俺を連れて撤収し、家へと戻った。そして、家に戻ってくるなり開口一番「お願いがあるんだけど」と言い出した。
「酷いよ、まだ内容言ってないのに」
「どうせ、ろくでもない内容なんだろ」
「甘いね、とっても有意義な提案さ」
「ほう、言ってみろ」
「僕さー、魔法少女はじめてから寝不足で体調不良なんだよね。だから、しばらく僕の代わりに魔法少女になってほしいな〜なんて」
「やっぱり、ろくでもないじゃねーか。全力で断る」
冗談じゃない。誰が好んで、こんな情けない格好続けるか。
「へえ〜…僕が寝不足で体調崩そうが、それが原因で風邪になろうがどうだっていいんだ……そこまで冷酷な性格だとは思ってなかったよ」
なんて人聞きの悪い事を。
「べ、別にそこまで言ってないだろ」
「じゃあ、僕の代わりにやって♪」
「でも……」
「やっぱり、僕がどうなろうとどうでもいいんだね……ううっ…」
「あーっ! 泣くな! わかったよ、やりゃいいんだろ! やってやるよ!」
「へへ、ありがと。お詫びに魔法少女になったまま、添い寝してあげるよ?」
「いらん!」
こうして、俺はツバサの代わりに魔法少女として戦うこととなった。
「で、その後一か月と一週間が経ち、今に至る、と」
言い終わってから気づいたが、俺の回想のはずなのに、いつの間にか声に出ていた。
「大変な目にあったね〜」
「だから100%お前のせいだろうがあああぁ! ぶわあぁぁああくねつ! ゴッd(ry
渾身のアイアンクロー(2回目)が決まり、ツバサは気絶した。
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【魔法少女は眠れない】
「ああ…今日もか」
今日も『寄生虫』の存在を感じ、変身する。
「さあ、行こう!」
俺を促す、この熊のヌイグルミ(後ろ頭に『クッキー』と書かれた名札が縫いつけてあり、なぜか『クッキー』と呼ぶと嫌がる)はツバサから変身薬を貰ったその日に来た。
なんでも、未熟な魔法少女のサポート役として、魔法使いの世界から来たサポーターらしく、これでも有名なサポーターらしい。一週間前に魔法少女(俺)の下着見て、テンション上げてた姿を見ていると、とてもそうとは思えない。
「へいへい、今行くよ『クッキー』」
「その名で呼ぶなぁぁぁ!」
「ふぅ、危なかった……」
今日も『創造攻具』で召喚した金属バットで寄生虫を仕留める事が出来たが、寝不足がたたってかなり眠い。
…よし、明日は学校休んで寝よう。
俺が寄生虫と戦った場所から、遥か彼方にそびえたっている高層ビル。その屋上に一人の少女が地上を見下ろすように立っていた。
その瞳はただ一点をまっすぐに見据えていた。
「あれが新しい魔法少女……」
少女はそう呟いた後、苛立たしげに下唇を噛み、屋上から飛び降りる。
『風』の魔法を展開し、宙に浮きながら、忌々しげに唇を動かす。
「なんで…なんで、あんな奴なんかが『魔法少女』を…」
俺はその少女の憎しみのこもった視線も、視線を送られる理由も、存在も、今はまだ知るよしも無かった。
【終わり】
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終わり〜
なぜか新キャラ登場フラグ立ててしまった
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新たな魔法少女はツンデレですね
わかります
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『魔法少女 その3』
【激闘】
夜の闇へと染まった街に銃声が響く。
タンタンタンッ!
「うわっ!」
少女の手に握られている、やや大きめの銃、その銃口から放たれた鉛の弾が、俺の足元のアスファルトを削りとる。
「ちっ!」
少女が舌打ちし、ゆっくりと前身しながら連射してくる。
「やばっ!」
とっさに飛び退き、かわし続ける。
「鬱陶しいわね、チョロチョロと!」
少女は苛立ちを露にし、前身の速度を早める。段々と銃弾をかわしてから、次の銃弾をかわすまでの間隔が短くなっていく。
「(こ、このままじゃ、かわしきれない…)」
そんな考えが頭をよぎった直後、左足が撃ち抜かれ、焼けつくような衝撃と激痛が走った。
「〜〜〜〜っ!」
痛すぎて声が出ない。いや、出せない。
痛みに耐えかね、地に膝が着いてしまう。
すぐに立ち上がろうとしたが、それより早く、額に銃口が押し当てられる。
「これで終わりね」
少女は俺を見下ろすと冷たく笑い、引き金を引く手に力を入れた。
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【妙な力】
なぜ、俺が今、死ぬ一歩手前の戦いをしているか、俺自信にもわからない。
今日は連夜の戦いで疲弊しきった体と心を少しでもまともな状態にするためにずっと寝ていた。
ちなみに今日は平日で当然登校日なので、サボった。
家族は俺が起きる前に家を出てしまうし、耳元でしつこく大声で「学校へ行け」と怒鳴り続けていた五月蠅いヌイグルミはガムテープでグルグル巻きにして、逆さにしたゴミ箱の中に閉じこめておいたので、邪魔者はいなかった。
そして、夜まで思う存分寝て久々にいい気分でベットから起き上がった特に、妙な力を感じた。
おおまかに言うと『呼ばれている』感じだった。
いつも感じる、寄生虫に支配された動物の気配とは質が違う。なにより、感じ取れる妙な力の感覚は魔法少女の使う魔力に酷似していた。その力がまるで自分の位置を知らせるかのように強い力を出し続けている。一般人に魔力の存在を感じ取る事は無理なので、俺に向けてのアクションだと解釈すると理解できる。
俺は変身薬を飲み、魔法少女に変身すると、ゴミ箱な閉じこめていたヌイグルミを取り出し、ガムテープを乱暴に取ってやった。
「痛ああああぁぁぁ!!」
「五月蠅い、黙れ」
ただでさえ、今は家族が家に居るというのに、配慮のなってないヌイグルミだ。
「だからって、朝から監禁プレイの末にこの扱いはないんじゃない?」
「お前が俺を起こそうとするからだろ」
俺の健康への被害を抑えるために睡眠を妨げないようにするのがパートナーというものではなかろうか。配慮のなってないヌイグルミだ。
「そんな、酷い……この代償は、その控え目かつベストな大きさの胸の中で泣かないことには収まりがつきそうにもない。そう思わないk」
「バットの一撃で星になるのと、ライターで炙り焼き。好きな方を選べ」
「すいませんでした」
ようやく静かになってくれた。
「よし、じゃあ行くぞ」
「うん……それにしても、今日は感じる力が変だね。まるで魔法少女の魔力のような」
どうやら同じように感じていたらしい。
「…ま、行けばわかるだろ」
部屋の窓から外へと飛び出る。
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【襲撃】
魔法少女の強化された脚力で屋根から屋根へと高速で飛び移り、目的地を目指す。
結構離れていた場所にも関わらず十分足らずで到着した。
変身してない状態だと自転車でも三〜四倍ほどの時間はかかっていたかもしれない。
「この辺りのはず…なんだよな」
ビルの屋上に立ち、魔力を感じた辺りを見渡す。
すると突然、渇いた銃声が響き、それとほぼ同時のタイミングで銃弾が目の前を横ぎった。ちなみに、変身していない状態の動体視力だったら銃弾とは判断できなかっただろう。
「な…?」
銃弾の飛んできた方角を見極め、その方向を見る。ここから三軒ほど離れたビルの屋上だ。
そこにいたのは漆黒のドレスに身を包む、見た目年下の少女だった。
その小さな手には不釣り合いに思える、大きめの銃を持っており、少女の視線は鋭く俺を見据えていた。気のせいが殺意まで感じる。
いや、違う…気のせいではない!
ほぼ確信に近い唐突な直感…俗に言う『閃き』のような予感を感じ、真横に飛ぶ。
と同時に少女は銃の引き金を引いた。銃弾が一瞬前まで俺が居たところを通過する。
「な…あの子も魔法少女…だよね。魔力の感じは魔法少女のものだ…なのに、なんでこっちに撃ってくるんだ…?」
ヌイグルミのクッキー(その名で呼ばれるのは嫌いらしいので(仮)にしておく)は驚いた様子で声を出した。
だが生憎、クッキー(仮)が満足できる返答はできそうにない。てか、そんなもん俺が知りたい。
あの子、魔法少女だろ…なんで俺を撃つんだ?
そもそも、俺を呼び寄せたのも、あの子だろう。感じた魔力の質がまったく同じだ。
俺を呼び寄せておいて、俺を撃つ。なぜだ…………まてよ、俺を撃つために、殺すために呼び寄せたのか…?
背筋が一瞬ゾクッとしたが冷静に考えて、俺は殺されるまで人に恨まれた記憶はない。
俺が大した事無いと思っていてるだけで、その子にとっては殺そうとしてもしょうがないほどの理由とか……いや、無いな。
そもそも、俺とあの少女は面識が無い。しかも魔法少女サイドともなると、知り合いはツバサとクッキー(仮)程度だしな。
と、なると、他には……ええい、今はこの状況をなんとかする方が先だ。
こうして、俺と少女の戦いは始まったが、バトルスタイルの相性が悪かったのか、俺は跪き、額に銃口を突きつけられている。
大ピンチと言うやつだ。
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【決着】
少女は冷笑を顔面に貼り付けたまま、無慈悲にトリガーを引く。
銃口から放たれた弾丸は俺の頭へと一直線に向かっていき……頭を貫くはずだった銃弾は後ろのコンクリートのみを削った。
「えっ?」
少女は間の抜けた声が漏れ、冷たい笑みしか浮かべなかった顔には困惑の表情が浮かんでいる。
当然だろう、仕留めたと思った瞬間に敵が消えたんだから。
出来るだけ身を屈めて銃弾をかわしていた俺は、その困惑に乗じて、少女の足元近くから、魔法で呼び出しておいた金属バットを振るった。
「うおおぉ!」
「何っ!?」
いきなり下方から現われた俺に対して、完全に対応が遅れている。
「もらったあ!」
アッパー気味のフルスイングは少女の拳銃を手から弾き飛ばした。
「あ…」
これで反撃の手は封じた。一旦武器を消して『創造攻具』で再召喚されると、また手元に戻るからあんまり意味はないんだけど、そんな暇は与えない。
次で終わりだ。
俺は少女の腹にバットの先端を押し当てる。
怪訝そうな表情をしている少女に一言呟いた。
「悪いな。ちょっとおとなしくしててもらうぞ」
そう言い、意味ある言葉…すなわち『魔法』を唱える。
俺が唱える魔法は自分の武器に、自らの扱う魔法の属性を付加させる魔法。
「我が分身に宿れ、雷の力」
俺が唱えた瞬間、雷がバットに向かって落ちてくる。
雷の速さはとてつもない速さで、少女は回避行動をとる間もなく、バットに宿った雷が通電して、膝から崩れ落ちた。
「なんとか…勝てた」
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【戦い終えて】
「お、おーい、起きろ〜」
戦闘が終わってから一時間。
命を狙われたとはいえ、気絶している少女を冬の寒空の中に放置しておくのも気がひけるので、つい俺の家に運んできてしまったが……雷のショックが強すぎたのか、一行に起きやしない。
「まいったな…」
このまま、朝まで起きないなんてこと…ないよな。起きてすぐ暴れられても困るし、見張ってなきゃいけないけど、万が一、朝まで起きなかったら…明日も学校を休む羽目になる。さすがに二日連続は避けたいところだ。
「ん……」
寝かせておいたベットから少女がゆっくりと起き上がった。いつの間にか変身が解けていたらしく、漆黒のドレスからブレザーへと変わっていた。
あのブレザーは隣りの中学の物だから…コイツも中学生か。
少女は起き上がるなり、数秒ほど、ぼーっとしていたが、俺の方を向くと突然弾かれたように飛び上がり、鋭い目つきで睨んできた。
「ここ、どこよ」
目つきと同じ、鋭い声だった。
「俺の家だけど…」
「なんで、私がアンタの家にいるのよ」
「いや、お前気絶してたからさ。あのまま放っておくのも後味が悪いしさ」
「大きなお世話ね」
あからさまに不機嫌そうな態度で対応される。
あまりの態度の悪さに怒鳴り声をあげそうになるが、我慢だ。今は深夜だし、生意気な態度ごときで実際に声を荒げるほど、馬鹿でもない。
怒りを抑え、聞きたかったことを聞く。
「お前…」
「ユキよ」
「え? 雪? …降ってないように見えるが」
「違うわよ、私の名前!」
「あ、ああ、そういう事か。(この時期には紛らわしい名前だな)」
「それで、何よ」
「聞きたいんだが、なぜ俺を殺そうとした?」
「あ、あれは別に殺そうとした訳じゃ……」
「嘘だっ! 明らかに殺す気だったじゃないか!」
「違うわよ! アンタの実力を計るためにやったのよ!」
「俺の実力?」
「そうよ、ここ最近だらしない戦いばっかしてたから見てられなかったわ。あれじゃ魔法少女が格下に思われそうじゃない」
「だって…俺はまだ」
初心者。と言おうとしたが、それより早くユキが微笑を浮かべ
「まぁ…今日の戦い方は良かったわよ」
などと言った。しかし、すぐ後で慌てたように
「で、でも負けて悔しいとか全っ然思ってないからね!」
と付け足した。
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【眠る少年】
この後、ユキは帰っていった。だが、帰り際に「また明日」と言っていたのが気になる。
明日も会うのか…
ユキが帰った直後に変身が解け、俺も眠りについた。
完全に眠る寸前、朝日が上りかけてきたのを見て、今日からまた寝不足と戦う事になるのか、と心の中で嘆息した。
【終わり】
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終わり
書けば書くほどアクションの描写の未熟さが目立つ……
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もし、最近このスレを知って、wikiをちょろっと見ただけのオイラが拙い表現で、小説とも言い難いような文字の羅列を投下したら住人様方は怒ったりするだろうか?
それだけが、ただ知りたい。
萌えとか、そういう表現はあまり得意ではないのだが。
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>>344
大丈夫だとは思いますよ。
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>>343
GJ!
>>344
おk。かも〜ん!
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〜青色通知〜
人生のターニングポイントってのは大抵、本人の意志に関係無く唐突に訪れる。それは俺も例外じゃないらしい。
……何があったかって?
今週末、俺は16の誕生日を迎える。……後は言わなくても分かるだろーが。
最先端医学を根拠に言うならば、性交渉の経験がない―――ぶっちゃけて言うならヤッたことのない―――俺は、その日が最もムスコとオサラバする可能性があるらしい、とのことだ。
そんなの、今更俺だけが特別じゃないってことくらいわかってる。
わぁってるけどよ……。溜め息ばかりが増えちまっても不可抗力だろ、こればっかは。
「―――まぁた塞ぎ込んでたのかよ。
毎度毎度飽きねーなぁ?」
校舎のてっぺんで、寝転がりながら夕焼け空を眺めてた俺に、背後から乱暴な口調とは不釣り合いな高い声が飛んでくる。
……起き上がって確認するまでもない、『初紀』だ。
「テメーにだけは言われたくねーよ―――クソアマが」
「んだと……?! ヤんのかオイ!?」
迫力もクソもあったもんじゃねぇ、むしろ虚勢にすら聞こえる甲高い声が夕焼け空に響いて消えていく。
「今のテメーなんぞ相手になんねーんだよ。男ナメんじゃねーぞ」
「あぁっ?!」
オレンジ色の視界に、急に飛び込んでくる黒髪をシンプルに結った女の―――あからさまな不機嫌な顔。
スッと通った鼻筋、柔らかそうな唇、いい香りがしそうな長い黒髪、吸い込まれそうな黒い瞳、控えめだが確かに膨らみを感じさせる……胸。
9割方の男子に"美少女"と形容されそうな女の顔が、吐息が掛かりそうな程近くにあって……―――って!
「―――か、顔、近ぇんだよ、いい加減自覚しろバカっ!」
「あっ、……わ、悪ぃ」
そーいう方面に酷く鈍感なコイツは、激昂した俺の姿で漸く察してくれたらしい。初紀は顔を真っ赤にしながら、改めて俺の横に腰掛けた。
……端から見ると、まぁ、その、なんだ、そんじょそこらじゃお目に掛かれない可憐な美少女なんだよな。が……胡座に頬杖をついて俺をジト目で見る姿は、以前のものと全く変わりがない。
だから、何か調子が狂う。
俺の横で、自分は男だと主張するポーズのまま仏頂面になってる美少女が、本当に昔から喧嘩友達だった……あの初紀なのか、って。
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〜青色通知〜
頭じゃ分かっててもキモチが付いてこない。
だから……なんつーか、こう……心臓の周りが妙にモヤモヤする。
だってよ、ガキの頃から互いの胸ぐらを掴み合って、いつ拳が顔面を捉えてもおかしくねぇ、そんな間柄のダチがよ、その……
……女になるなんて。世の中どっかブッ飛んでるっつの。
初紀が女になったことは―――正直言うとかなり意外だった。いろんな意味で。
まず、女になるまでの過程。稀少例とか言うヤツらしい。誕生日とか云々をまるで無視したタイミングでコイツは……女になってた。
それに、コイツは俺なんかとは比べモノにならないほどモテた。屈託のない笑顔を浮かべ、性別とかそんなものを通り越して、どんな相手だろうと分け隔てなく接していた。
てっきり女なんぞ両手じゃ数え切れないほどベッドで泣かせているとか、そんな下世話な想像をしていたのは俺だけじゃなかったハズだ。
それが、今じゃセーラー服姿がハマる美少女って―――「―――そーだ」
不意に俺の思考を遮る初紀の声。
俺が返事をする間もなく、コイツは二の句を繋ぐ。その目は明後日の方向を向いたまんまで。
「言うの忘れてた。変わったんだ、名前。字はまんまだけど"ハツノリ"じゃなくて。"ハツキ"だ」
指で文字を空間になぞりながら、"初紀"は事実を淡々と話す。
その悟ったような口調が、なんだか余計に腹立たしくて……俺は寝転がったまま隣に座る奴に背を向けた。
……そんな俺の内心を知ってか知らずか―――
「―――ま、どっちでも好きな方で呼んでくれや。今は決めらんねーってんなら苗字でもいいぞ?」
―――とだけ言って"初紀"は取って付けたようにカラカラと笑う。
つーか……何で笑ってられるんだよ? 女になっちまって、これからの一生を女で過ごさなきゃなんねぇのに。
このまま遠くない未来に俺もそうなるってのを見越して言ってんのか? 喧嘩売ってんのかコイツは。
……いや、他意は多分ねーんだろうな。妙な所が敏感で、大抵の所が鈍感なコイツのことだ。今は自分のことで頭が一杯なんだろ、そう思うことにした。
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「―――なぁ、どうなんだよ?」
藪から棒に初紀が俺に話題を振るが、主語が欠けていて何が言いたいのかさっぱりだ。
「何が"どう"なんだよ?」
俺は当然のクエスチョンで返しながら、傍らに置いといた紙パックの茶を口に含む。
「青色通知、来てんだろ? 役所から」
霧散。
口から勢い良く吹き出た茶は一瞬だけ空に虹を描き、僅かに口に残った茶は俺の気管支に見事なオウンゴールを決めた。
……くそっ、思いっきり噎せちまったじゃねぇか! わざとやってんのか?!
「げほっ、けほっ……何で俺に青色通知が来てるってコトになってんだよ?!」
……いや、実際にはちょっとした山開きが出来る位に玄関に放置されてんだけどよ。それを前提に物事を進めようとしてる初紀に腹が立つ。
「俺もしてないことをお前がしてるワケねーだろ?」
「だっ、だから何で決めつけんだよ」
「お見通しなんだよ、お前のことなら何でも」
言いながら俺のデコをつつく初紀。端から見たら完全にバカップルじゃねぇか。別に今の初紀なら悪い気はしな…………いかん、正気よカムバック。
「……はぁ。他人様が聞いたら誤解するようなこと言うんじゃねーよ」
寸でのトコで俺は正気を取り戻せたらしく、普段の素っ気ない素振りで切り返すことが出来た。
「あははっ、だいじょぶだいじょぶ。誰も来ねぇって、こんなとこ」
……論点はそこじゃねぇだろ。このバカはホントに天然だな、救いようがない。口元で手を合わせながら笑う仕草が愛らしくてまた腹が立つ。
―――"青色通知"。
正確かつ厳密に言うならば
"異性化疾患に於ける性別選択権の行使についてのお知らせ"だったっけけか……長ぇ。
その中の小難しい文章を身も蓋もなく要約すると、『男でいたいなら相手を寄越すからとっととヤッちまえ』的な通知だ。
お国様が把握しうる限り、漏れなく思春期真っ只中のチェリーボーイの皆様に誕生日の数ヶ月前からしつこく送られてくるらしい。
どうやって把握してんのか知らないが『それってさ、プライバシーの侵害じゃないの?』って、お昼のおば様たちのアイドルにまで言わせるまでだった………とはウチのお袋の談。
その封書の色と、通知が来た際の自分の顔面の色を総じて"青色通知"っていう通称が広まったらしい。ホントかどうかは知らん。
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「―――そんで、実際はどうなんだ?」
先程までおどけていた初紀の口調が途端に引き締まる。
そういった時だけ、妙に男らしくなっててサマになる。それは女になっても同じで、少し悔しい。
―――腹を括って、俺は学ランのポケットをまさぐる。……あった。
「ほらよ」
ご丁寧に【親展】と判の押された、くしゃくしゃの"青色通知"を左に突き出す。受け取るのは、元は俺と同じ性別だったとは思えない繊細な細い指。
その中央に小さく印字された名前は間違いなく俺だ。
前田 陸。
ちなみに言っとくが読み方は"りく"じゃねーぞ。読み方はあの大物芸人の松っちゃんと同じだ。
「あー、やっぱな。心の友よぉー」
初紀は"青色通知"をまじまじと見つめてから俺に抱擁を求めてきた。
てめーは剛田タケシか。つーか抱きつこうとすんなっ。その満面の笑みがすンげぇムカつくぞ、この野郎。
……いや、野郎じゃねぇけどよ。
「別に俺が女になるっつーことが決まったワケじゃねぇだろーが」
元男の抱擁のおねだりを左手一本で拒否しながら俺は言う。
「う……ん。まぁそうだけど……」
何だぁ、その好きな人に彼氏が居たことを知ったような切ない乙女顔は?
いや、実際に見たことねぇけど。
「あん? 言いたいことはハッキリ言えっての、男だろ」
「っ、ちげーよ!」
そこを真っ先に否定すんなよ。顔真っ赤にして。……かわいい……っじゃなくて。
「……じゃあ"元は"男だろ」
半分は俺自身に言い聞かせるように、もう半分は初紀の話の続きを促すように俺は言う。
「じゃ……じゃあ聞くけどよ」
畏まるなっての、告白でもされるんじゃねぇかってドキドキ……じゃねぇっ、ヒヤヒヤすんだろうが!
「―――通知、受けんのか?」
「――――っ」
核心を突く言葉だった。
俺が一人屋上で途方に暮れる、なんつー似合わねぇことをしてた……一番の理由。
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"青色通知の受諾"
―――さっきも言った通り、青色通知はお国様は把握してる限りの『純潔を守る青少年』全員に対し、"性別選択権の行使"を促す通知を送りつけている。
国からすりゃあ少子高齢化に拍車がかかる中、更なる追い討ちであるこの病気の蔓延を阻止したい目論見がある。
"選択権"なんて如何にも自由意志を装ったそいつは完全なる善意で運営されてるワケじゃない。
だから躍起になって通知を何度も何度もポストに突っ込んでいく。血税の無駄遣いもいいとこだ。
で、そのお国様の目論見にまんまと乗っかった女を知らないケダモノは……国の用意した素性の知れない女を貪るって寸法だ。
その、男であるために女を抱くか、自分を貫いて女になるか。
理不尽な二者択一を俺はたった今、この瞬間に!
………迫られているんだってよ。
〜以下遂行中〜
お目汚し失礼しました。
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>>351
GJ!続き待ってるよ!
良かったらトリだけじやなくてコテも付けるヨロシ。
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>>351
GJ!!
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>>352
では、お言葉に甘えまして。
>>353
恐縮です。お互いがんがりませう
以下チラ裏
メモ書で書いた時の行間やら何やらが全部省略されてたorz
中二臭さが半減しちまったい、ちくしょう。
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〜青色通知2〜
『いらっしゃいませぇー2名様ですかぁー?』
『お待たせいたしましたぁ、こちらイタリアンハンバーグと小エビのカクテルサラダになりまーす!』
俺と初紀の座るテーブル席の横を、俺達とそんなに年の違わなそうな制服姿の女の子達が慌ただしく駆け回っている。
―――今の気分を表現するなら"曇天、波今だ高し"……っつーところか。
晴れやかな面をして、半熟卵のミラノ風ドリアを喜々と頬張る対面席の美少女、と比較すると正に天と地の差がある。
「……おい」
「んぁんだぉ〜ひぇっはふひほがほ〜はんひ―――」
「―――せめて飲み込んでから喋れバカ……っ!」
……我慢、我慢だぞ、陸。こんなとこで暴れたら店の人や他のお客さんに迷惑だろ!?
握り締めた拳がプルプル震え、振動でグラスの氷がカラカラと高い音を鳴らしている。……俺が、どんだけ俺って奴が腹に据えかねてんのかってのを分かって貰えたらありがたい。
「んく……はぁ、おいし」
そんな怒りを全く意にも介さず、半熟卵のミラノ風ドリアを満足そうに飲み下す初紀。ホント、コイツ喧嘩売ってんのか?
「だってよー。旨いもんでも食べねーと気持ちも落ち着かねーだろ?
旨いもん食って、それでから相談に乗ってやろうっていうマブダチの優しーい心遣いに感謝して欲しいよね」
そこまではな。あぁ、百歩譲って認めてやるよ。手を口元で合わせて悪戯っぽく笑う、わざとらしい可愛らしい仕草にいくらムカついても。でもな……
「なら……なんで俺がお前の分を奢らにゃならんのだ!? しかも食後の生チョコケーキまでっ!!?」
「あれ? 彼氏が彼女のメシ奢んのは当たり前じゃないの?」
「んなっ、な、なに、なにを言ってんだバカっ!!?」
どこぞのwiki小説だっつの!?
やべぇ、顔熱い、何慌ててんだ俺。
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「……そんな態度しなくてもいいじゃんかよ……」
え。初紀のヤツ、結構マジで凹んでねぇか? え、俺のせいかよっ!?
う、嘘泣きしたってスグわかんだぞ!?
「いくら……お、俺が……ひくっ……元男だか……らってさぁ……っく、そん……言い方、えくっ」
うわ、わ、マジ泣き!? やべぇ、向かいのテーブルこっち見てんし……つーかこっち見んなっ!! ヤんぞコラァッ!? ……嘘ですすみませんこっち見ないでください。
……だぁーっ!
「悪かった! わぁるかったから泣くなっ!!」
エクスプラメーションマークは付いてるものの、俺は精一杯の小声で初紀を宥める。
なんだ……この羞恥プレイ。俺が泣きたい。
「……ほん……と……?」
目頭を抑えながらハナを啜る初紀。その泣き顔は一つ間違えるとホントに女かと錯覚しちまうかのような可愛らしい顔。
涙は女の武器たぁよく言ったもんだな……はは、はぁ。どんなコイツのパンチよりも効いたぜ……。
「……あぁ、俺が悪かった。お詫びに飯代も出す、な? 機嫌直してく―――」
「―――よっしゃ、勝ったぁっ!」
……は?
さっきまで顔を覆ってた両手でガッツポーズを取りながら、嬉しそうにテーブル席のソファに寝転がる初紀。……と、呆気にとられた俺。
「あっははは、ひっかかったひっかかったーっ! うん、こりゃ青色通知来るな。反応がまんま童貞だもんな、うんうん。おねーさんには分かっていたぞー?」
……あー、そうか。そーいうことか。ほう。
コイツは、俺の純情可憐な俺の男心を弄び、完膚無きまでに叩きのめしたワケだ。……コイツ泣かす、マジ泣かす。
「っわわ!? テーブルナイフ握んな!!?」
「……男に二言はねぇ。飯代は奢ってやる。……だからよ。きぃっちり"相談"に乗ってもらうぜぇ……?」
初紀は、多分今ホントに泣きそうになってるんだろうが、もぉ許さねーぞ。半ベソかくまで、じぃっくり腹割って話合おうぜ?
なぁ、"初紀ちゃん"?
〜一旦中断〜
-
>>356
乙乙
いいね〜。
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〜再開します〜
「……そんで? 結局のとこ、お前さんはどーしたいんよ?」
生チョコケーキのフィルムについたチョコクリームを舐めとりながら、初紀が話の口火を切る。
はしたないからやめろって前々から言ってんのに……。
「あぁ」
「……あぁ、じゃわかんないだろっ」
気が付くと、眼前には頬を膨らませた初紀。……やべ。なんかボーッとしてた。初紀のはしたない姿に見とれて……ねぇって! 違うって!
……はぁ、もうやだ、この俺。
「ったく、そんな曖昧でいーのかよ。自分の事だろ?」
「ぐ……」
初紀の正論に返す言葉もない。
目の前で慣れないスカートを穿いてるコイツとは違って、俺には悩む猶予があるし、あまつさえ自分も大変な時期だってのに――こうして相談に乗ってくれてるダチが居る。
なのに、今も結論を出すことから逃げてる俺って……マジ死んでいいわ―――「―――こら」
陰に入りかけた俺の眼前に目一杯映る、初紀の顔。唇には、生チョコクリームが少しくっついてて……って、冷静に分析してる場合かっ!?
ち、近い、近いっ!!
「今、"俺マジ死んでいいわ"って思っただろ」
「お、思ってね―――」「―――うそつき」
……見抜かれてる。
笑いながら、でも目だけはマジなその面構えが、カマかけじゃないってことを物語ってた。
「そうやって、何でもかんでもテメーのせいにして、誰が喜ぶんだよ」
「……」
「建設的じゃねーだろ。こんなこと言う為に此処来たわけじゃねーし」
怒る、というよりは少し呆れた初紀の口調。さっきまで怒りに任せて主導権を握っていたのは俺だったはずなのに。
「な?」
でも初紀は、そんな俺を見捨てなかった。優しく諭してくれて……なんか、悔しい。
……そうだ。悔しいけど、今は落ち込んじゃいられねーな。
「―――そう、だな」
「閑話休題だな」
そう言いながら、初紀は生チョコケーキをつつく。
「あぁ」
……ふと、ある疑問が浮かぶ。
「その前に、いっこ質問いいか?」
「なんだ?」
「……"かんわきゅうだい"って、なんだ?」
初紀がフォークをくわえたまま、テーブルに突っ伏した。
なんだ? 俺、悪いこと言ったのか?
-
改めて、俺は青色通知をテーブルに差し出した。悪い夢じゃねーかってもう一回宛名を見直すが……"前田 陸"。俺の名前。
やっぱ夢じゃない、つーか過去の経験を思い返せばすぐわかることじゃねーか。……言ってて幾分虚しいが。
「どー見ても本物だな、うん。正真正銘のどーてーだ」
笑顔の初紀のトドメの一言。爽やかな乙女のツラだが、うん、ぶん殴りてえ。
「……で、さっきも聞いたけど。どうすんだ? 受けんのか?」
……国から派遣された赤の他人の女を抱いて、男という性別にすがりつくか。信念貫いて、その末に女になるか。
理不尽な二択。
「俺は―――」
言葉に詰まる。迷ってた。……いや、答えは出てる。でも、それを口にする勇気が出なかった。
ビビってる理由?
その決断が、ホントに後悔のないもんなのかなんて、わかんねぇから。
けど時間は待ってはくれない。
だからせめて、この今の気持ちにだけは、正直で居たい。
でも……怖ぇ。
……はは、情けねぇな。喧嘩した時だって、こんなブルっちまったことはねぇのに。
ほんの、ちっちぇ決意の一言が、出ない。
……くそっ。初紀もさぞかし呆れてんか、笑ってんだろうな―――
―――あ……。
初紀と目が合う。喧嘩でも見たことないような透き通った目。それは俺の情けなさを責めるようなものじゃなくて……俺の二の句を、じぃっと待っている。
ただ、それだけ。
ざわざわとしたファミレスのノイズなんか一切耳に入ってこない。ただ、コイツは俺の言葉を待ってる。
……応えなきゃなんねぇ。目の前に居るコイツが男だ女だなんてカンケーねぇ。マジで、俺の吐き出す言葉を待つ、ダチのために。
口を結んで、
ビビる気持ちを奥歯で噛み締めて、
俺は、言葉を吐き出す。
「―――俺は、受けない」
-
「そっか」
重々しく吐き出した俺の言葉に対し、待っていたのは随分とあっさりとした一言。
……なんか拍子抜けしてしまう。
「んだよー。人が漸く決心したのに、その態度」
「だって諦めるんだろ? 男で居ることを」
「は? 誰がンなこと言ったよ?」
「通知を受けないってことはだ。女になるってことを認めるってことだろ? 消極的にだけどよ」
何か、生チョコケーキを頬張る対面席の女と会話が噛み合ってない気がする。
あ……そうだ。肝心なこと言ってなかった。確かに、このまんまじゃ状況になんの変化もない。
「―――俺、告白する」
―――カラン。
初紀のくわえてたフォークが床に落ちる音がファミレスのホールに響く。
「は……はぁぁあっ!?」
続いて、初紀自身の声がファミレスのホールに響く。
集まる他の客と店員の視線。
「う、うるせぇよ、静かにしろバカっ!」
「で、でもよ。陸、お前、好きな人居たのかよ?!」
「あぁ」
「お、俺、知らねーぞ!?」
「そりゃ言ってねーもん」
「だ、誰だよ?」
「言わなきゃダメなのかよ?」
「ダメっ!」
「どーして?」
「どーしてもっ!!」
なんだ、この痴話喧嘩みたいなやりとり? それに、どうして初紀がこんなにも必死なのかも理解に苦しむ。
「で……誰なんだよ?」
初紀の目がさっきよりも爛々と輝いている。どうしても白状しなきゃならねぇらしい。……仕様がないか。ここまで腹割った仲だ。
「―――坂城だよ! 3組の坂城るい!」
……ハズい。死にたい。
「……ほーぉ、ショートカットの美人が好みかお前は」
「うるせーな、やめろそのニヤニヤ顔」
「でもよー。お前と坂城さんて接点あったっけか? それに、いくら告白したからって上手くいくとは限んねぇだろ? 上手くいったとしても、数日で即寝技で一本勝ちなんて無理じゃないか?」
落ち着きを取り戻した初紀が言う言葉は紛れもなく正論だと思う。
確かに分の悪い勝負だし、途中まで上手くいっても女になっちまったら元も子もない。
でも、やれるだけのことはやって納得したい。たとえダメだったにしろ、無駄に足掻いた分だけ、納得した分だけ、後悔は軽くなるだろうしな。
-
「……よしっ、決めた」
不意に初紀は拳を握りしめ立ち上がる。何かすげー気合い入ってるけど、俺には何のことやらさっぱりだ。
「"決めた"って……何がだよ?」
当然の疑問を投げかけると、初紀は胸に手を当てながら大仰なポーズを決めながら―――
「この御堂初紀サマに任せなさいっ!
この甘酸っぱーい童貞クンの恋を見事に成就させてしんぜようッ!」
―――と大声で叫んでいた。そして再び集まる好奇の注視。
……本人に悪気は無いんだろう、多分。それは理解できる。
だが、それをさっ引いたとしてもだ。
俺は目の前の、頬にチョコクリームをくっつけた女をブッ殺したくなった。
"愛のホームベース帰還大作戦"(命名:御堂初紀)
―――……多分ホームベースってのは坂城の名前に引っ掛けたものなんだろうが、坂城の名前は平仮名の"るい"であって、決して"塁"じゃないことを主張しておく。
そしてネーミングセンスの無さにも激しくツッコミを入れたかった。が、そんな猶予や余裕はもう無い。
俺は、出来る限りのことをしたい。全力を尽くしたい。
上手くいくにしろ、女になるにしろ。後悔だけはしたくない。
こうして、元男と童貞による、一世一代の勝負が幕を開けることになるのだが――――。
「うっし、陸、そうと決まれば明日、放課後デートするぞ!」
「おうっ!
……って、なにぃ!? なんでお前とデートなんだよ!?」
「予行練習だよ、予行練習! 俺だって今や立派な女だ。代役くらいにはなるだろ? 緊張して失敗しねーよーにな!」
―――……それはまだ、少し先の話らしい。
〜青色通知2〜
終
-
〜青色通知3〜
―――最初に俺が初紀と会ったのは中1の時だった。
入学式で同じクラスになって、最初は名前順に座らされる席の関係で、初めてクチをきいたのが初紀。
俺らの名字が"前田"と"御堂"じゃなかったら、今の関係は築けてなかったかもしれない。
とは言っても最初の印象はサイアクだったけどな。お互いに不良まがいな格好をして、髪を染め、チャラチャラしてて、顔を合わせる度に拳が飛び交った。
まぁ、先に手を出してたのは大抵俺で……言っちまえば同族嫌悪ってヤツか?
名前の呼び方だ、態度だ、なんだってイチャモンつけて喧嘩をふっかけてた気がする。が、負けるのもいっつも俺。で、躍起になってまた喧嘩をふっかけて、軽く去なされる。その繰り返し。
普通ならそんな奴、当事者じゃなくても毛嫌いするだろ?
けど、アイツは―――初紀だけは違った。
俺が修学旅行の班決めで、案の定あぶれると思った矢先に"一緒に回ろーぜ"って誘ってくれた。他の奴らの反対を押し切ってまで。
アイツはあの人懐っこい性格でクラスの人気者で、俺は一匹狼気取り。……今思えば、少なからず初紀に嫉妬してたんだろうな。
もちろん素直じゃない俺は"お情けなんか受けねぇ"ってアイツの申し出を突っぱねた。……そん時だっけか、初めて初紀から喧嘩を売ってきたのは。
「負けたら一緒に修学旅行、回れよ? サボんじゃねーぞ?」
―――って。
喜び勇んで挑んだが、瞬殺だった。無論俺が。後で聞いた話だが、アイツ、空手をやってたらしい。しかも有段者だと。……そりゃ勝てねえわ。
ハズい話だが、校舎裏でぶっ倒れた俺は悔しくて半ベソかいてた。そしたら―――
「お前、やっぱ強いな」
―――とか抜かしやがった。最初は嫌味だと思ってたけどそうじゃなかった。
「大抵の奴は刃物とか出して威嚇したりすんだけど、陸だけはずっと素手で俺に挑んできたじゃん」
……今思えば、初めて名前を呼んでくれたのも初紀だった気がする。
それに、俺をこんな素直に認めてくれたのも家族以外じゃ初紀が初めてだった。
それが、無性に嬉しくて。でも、ちっとばっかり悔しくて。
「いつか、てめぇをブッ倒す」
とか言ってたっけか。ははっ、我ながらガキだなって思う。
……けど、それはもう叶わない。
俺は男で、初紀は女になっちまったんだから。
-
……なんかヤな夢を見てた気がする。
よくは覚えてねぇけど、未練がましい夢だった気がする。
やっぱ学校の硬い机を枕代わりにしてちゃ良い夢は見られないのかもしれねーな……。
ブブブ…ブブブ…
メールの着信を報せるバイブがズボンのポケットから鳴り響く。先公にバレねーようにケータイを開いて中身を確認すると、それは初紀からのメールだった。
件名:
本文:放課後、裏門で待ってる。
………。
件名:Re:
本文:めんどくせぇ。正門じゃダメなのか?
―――送信、と。
………。
ブブブ…ブブブ…ピッ
件名:Re:RE:
本文:ダメだ。坂城さんに見つかってヘンな誤解に繋がったらどーすんだ?
………。
件名:Re:RE:Re:
本文:了解
―――送信、と。
………。
ブブブ…ブブブ…ピッ
件名:Re:RE:Re:RE:
本文:あ、あと女の子へのメールの返事は顔文字とか絵文字とか使えよ?
冷たいって思われんぞ?(>_<)
―――……余計なお世話だ。
………。
件名:Re:RE:Re:RE:Re:
本文:了解\(^O^)/
送信、と。
………。
ブブブ…ブブブ…ピッ
件名:Re:RE:Re:RE:Re:RE:
本文:待て、その顔文字は色々な意味で終わるぞ?!
―――色々と注文の多い野郎だな。……いや、野郎じゃねぇか。
-
とりあえずここまでです。何か分かりにくいとことか表現がおかしいとことか指摘してくれるとありがたいです。
-
>>364
乙。俺は特に気になったところは無かったな。
-
昔投下したやつのキャラの性格を変えてリメイクって感じなんだけど投下してよさげ?
-
よさ気。どんとこ〜い。
-
星の境界線
―イントロダクション― 1
――本格的な夏の幕開けとなった五年前の夏。
「性転換って知ってる?」
陰鬱な梅雨の季節の只中のこともあり、その日はいつもより暗い天候に見舞われていて、教
室内で静かに過ごしていた美崎と彰二の二人は一見、空色模様のような気分を打ち消すように
他愛のない会話を交わしながら、給食が乗せられたトレイを囲んでいた。
「…………ふぇ?」
その最中に、彰二が突然そう切り出したものだから、美崎は一瞬呆気にとられる。
発音が少しあやしいのは、芋ようかんを運んでいたスプーンを口にふくませたまま聞き返し
たからだ。星は彼との長年の付き合いからその行為がいかにうっかりしたものであったのかを
熟知し、ネタ振りをしてしまった事に若干の後悔を抱く。
対して彰二は待ってましたと言わんばかりに目を爛々と輝かせ続けて、
「性転換だよ性転換。ほら、よくあるだろ? 男が女になったりーとかよくさ」
「やぶからぼうになんだそれは。お前が好きな漫画の話か?」
「いやそうじゃなくて一種の都市伝説なんだけどね。16才まで童貞だといつか女の子になっち
ゃうって病気があるらしんだよ。興味わかない?」
彰二は人差し指を立てると手とうでそれを切った。
人差し指を折り曲げて見せただけなのは言うまでもないことだが、その意味がわからないほ
ど彼の言いたいことがわからない美崎ではない。
要するに美崎の事情を知っている彼なりのアドバイスなのだ。
「どう?」
「……それでどうと言われてもな」
それでも、困惑する美崎を前にわざとらしいジェスチャーを続けて興味を仰ぐ彰二。
握りこぶしで作った穴に人差し指を入れて上下させている……。
なんて、ハレンチな奴だと美崎は思った。
-
「ジョークのつもり? それともいらぬお節介か?」
一瞬、スプーンを片手に固まっていたが彰二の行動に深く溜息を吐くとやや半目にしながら
ジトーっとした視線を送った。
「……な、なんだよ。その目は」
「わからないか? 非常識な奴を見る軽侮の眼差しだ。美崎はまだ子供だが、そんな戯言を真
摯に聞けるほど幼くはないんだよ」
「む、難しい言葉使わないでよ」
彰二は何も言い返せず、そのまま黙り込んだ。
――やや堅い言い回し、それが美崎の特徴だった。
そんな言葉が理解出来る筈がないと踏んだ上で彰二を言い包めるために敢えて使っているの
で、彼にしてみれば厄介な話だが難しい語句を並びたてられては当然そうなる。
「恥を知れと言っている。食事時にそのような下品な話を持ち出されては甚だ不快だ」
そう言い放ち、芋ようかんを掬ったスプーンに目を向けながら、
「噂話と言うより彰二の作り話だろう」と小声で呟いた。
「…………うっ」
彰二は創作である事を看破され口を噤む。それに追い討ちをかけるが如く、
「あと、お前はお前の心配をしたらどうだ。その理屈でいくと彰二は女性に直行だぞ?」
邪悪な笑みを浮かべ彰二に止めを刺した。
「…………う、うぅ……うわあああ!
そうなった時は星の嫁に行くから良いんだよー!」
泣き叫びながら、彰二は教室を飛び出した。それを見て美崎はようやく一息付く。
「……ふん」
一見御伽噺のようでいて、世界ではありふりた現実であることをよく知っている。
そのことを思う美崎の心には、どこか哀愁が漂っていた。
そんな会話を交わしたのも、遥か手の届かない空のように遠い昔のこと。
楽しかった日々が永遠に続くこともなく、幕切れも呆気ないものだった。
次の日、美崎は海外へと引っ越した。
だがあの夏の日、突如やってきた別れを別れと認識しないまま渡独してから五年後のこの日。
美崎、いや――私は、こうしてこの場所に立っている。
彼がいる、学び舎。見上げると『2-H』と掲げられたプレート。
ここが私の新しい教室になる。
耳をすますと扉を隔てた教室からの喧騒が、零れ出ている。
その中に宮穂の声を聞き、そして彼の声を聞き……つい動機が激しくなった。
扉の前に伸ばす手はとても震えていて、全身の血が脈を打って駆け、立っているだけで重圧
が圧し掛かった。でもそれは、仕方のないことだった。
この数年、日本を離れていてわかりかけていたことがある。
それはここに至ってようやく確信に至った。今なら自信を持って言えるのだ。
私は、彼のことが好きなのだと。
――今日は、あの日と違って雲一つない快晴。春風吹く、出会いの季節。
-
―イントロダクション― 2
本来ならば出会いや別れなどで忙しくなるこの季節。
とは言え、俺の世界は何の変化もない至って平凡な日常の繰り返しだ。
日常――非日常の境界とは何だろう。非日常とは突然やってくるものであり、日常と一線を
隔すファンタジーの分野……それが俺の認識。
だからと言って平凡な日常に永遠なんてものありはせず、当然終わりというものは来る。
単に短く終わるか、長く続くかそのどちらかだ。
……なんて月並みな言葉で語るつもりはないが、変わらない日々にいつも変えにやってくる
のは決まって“アイツ”だ。
「ふぁ。眠くて、辛くて……最悪」
赤く染まっているであろう俺の目を想像し、つい見えない敵を殺したくなった。
俺様は今、花粉が、とても憎い。
-
――始業式当日。
あの日の終わりから時を経て、その思いも吹っ切れた今は風が吹きすさぶ春。
俺に言わせれば陰鬱以外の何ものでもない四月。
要するにまた花粉症に悩まされる日々が始まってしまった、と言える。それから解放されて
いる者の喜びが、俺の心情における不快度を更に上げる。
でもそんな粒子の介入とは関係なく、新しい日々に浮かれることなく平凡に送ろうとしてい
る者が多いのがこのクラスの特徴だ。
「……はぁ」
窓側の一番前――授業をサボるにも真面目に受けるにも安心とは言い難いこの場所に席を置
く俺は、外の景色を無為に眺めながら、そんな思考停止状態のときに流れる無秩序な思惟に気
付き深い溜息をつく。
「――彰二、ねぇ彰二ってば」
「ああー?」
俺の後ろの席になった奴が背後から話しかけて来る。
だらけ気味に身体を後ろに反らせながら、声の主を見遣ると全体的にまだ幼い感じが残る華
奢なナリの短髪美少女だった。あぁ、季節に無関心なこの教室にも一人例外はいたようだな。
「また一年よろしくー」
ハートが頭上に飛び出してしまいそうな満面の笑みを浮かべて、その少女は言った。
新学期、こんなとき女子に話しかけられると嬉しくなるものだろうか?
――そんなわけがない。俺はこの人物の正体に心当たりがある。
「はぁ〜。なんだ、また栄か」
「なんだとはなんだよぅ」
栄の顔を見て、これみよがしに溜息をついてみせると、栄は上目遣いをして早速男を勘違い
させそうな女々しさを爆発させた。
「それは悪かった、言い直そう。
――やったー! また栄かよー! うれしー!」
この場合、極めて棒読み的に言うのがコツだ。その反応を見て栄はぷぅっと頬を膨らませる。
女々しさここに極まれリ。
-
「なんだかちっとも嬉しそうに見えない……」
「事実嬉しくないものは嬉しくないからしょうがない」
なんでいつもいつもこいつはこのポジションに居座るのか……理解に苦しむ。
さては、教師と密約の一つや二つでも交わしてるんじゃなかろうな。
あるときには身体を売って、とか。
「まさかお前、俺のいやらしいストーカーだな!」
「……何その強引な決め付け方? それにそこはフォローするとこじゃないの」
「お前をフォローして俺に何の得がある」
「彰二には唯一、優しさが足りない……」
優しさ? そんなものは必要ない。大事なのは次の行動に移る『速さ』だ。
「ははっ。俺が優しさを与えるのは惚れた女だけさ!」
机の上に立ち上がりガッチリポーズを決める俺。
よっしゃ、決まったァッッ!
「あぁっ……正直格好良すぎて濡れそうっ!」
栄から溢れんばかりの羨望の眼差しを浴び、ついでにクラスの連中から好意の視線も受ける。
「僕を騙って無意味な混乱を生むのはやめてね」
「バレたか」
「それに僕じゃ意味も違ってくるからね」
「良いじゃん、お前男みたいなんだし」
「――は?」
「ごめん、素で間違えた。女みたいだし……だったな!」
「……………………絶対ワザとだ」
「うん、ワザとです……ワザとです……ワザとです…(フェードアウト)」
果たしてピロシは元気にしているだろうか?
もし会えるのであれば、釣りばかりしてないで黒歴史と称されるドラマ版の意見を聞きたい。
「……元気ないと思ったら違ったのか。
言い直すよ、彰二ったらいつにも増してテンション高いね」
テンション高い……か。フフ、お前にはそう見えるのか。
-
「なに、お前は『世界五分前仮説』を信じるか?」
「はあ?」
「『世界は実は5分前に始まったのかもしれない』というバートランド・ラッセルに提唱され
た仮説さ。それを今俺はひしひしと感じてるんだぜ」
「………………じー」
「何だ、その可哀想なものを見るかのような目は」
「彰二が良いならそれで良いんじゃないかな」
「馬鹿、そんなポジティブなら解決する的な台詞で世の中まかり通るという考えは危険だ。
世の中ネガティブにしか生きれないネガティブ主義者の人だっているんだぞ」
仮に俺がネガティブ主義者なら、その発言は危険doレベル4に属する。
「今後、発言に気をつけ給え」
「……やっぱいつにも増して変だ」
「けっ……お前も女なら俺に惚れてるくせによ」
「そ、それは……っ。否定は出キナイケド、でもソレとコレとは話が……」
ちょっと煽ると早速煩悶し出す。
――恩田 栄(おんだ さかえ)
性格もなよなよしてるが、一応こいつは男だ。俺の中である日突然女体化しそうな奴ナン
バー1に位置する男。これだけ仲が良くとも、数いる友達の一人でしかないわけで俺がそのこ
とで悦に浸っていると、
「その友達と言っても深く付き合っているような間柄の人って一人もいないでしょ」
というような悲しい現実をともなったツッコミが即座入れられた。
「……貴様、この俺に親友が一人もいないとでも言いたげだな」
「だって、彰二っていわゆる三枚目のキャラで終わりそうなタイプだもん。
だからこそ永遠にナンバー1にはなれないっていうか〜」
「くっ……可愛い顔して辛辣な評価を下しやがって!」
それはまるでエロゲの友人キャラのよう……と言っているかのような救われない物言いだ。
「確かにそれは認めるが、BLならメインヒロインなんだぞ……!」
「全てを履き違えてる……っ!」
「あぁ、履き違えてるさ。穿き違えて見せよう……っ! この際トランクスを女モノのパンツ
に変えたって良い。主役になれるものなら何だってしてやる」
「純粋に気持ち悪い」
処断された。酷い言われようだ。
-
「グス……俺だってなぁ! 親友の一人や二人ぐらい探せば――」
そこまで口に出して、笑うアイツの姿がフラッシュバックした。
「………………」
――思いは振り切ったはずだったのに。
この先を言おうかどうか考えていると言葉につまり、結局無言を決め込む。
「一人や二人?」
「……親友は、確かにいたよ。うん」
「なんかいきなり沈んじゃってるし。どうしたの? 明るくなったり暗くなったり」
浮き沈みが激しいのは感情が豊かな証拠だとポジティブに考えてみる。
「俺が暗いと似合わないか?」
「そりゃあ、まぁ……」
栄は言いかねているが、そのようだ。嬉しい反面、嫌な感情に駆られた。
俯いてる間に顔を作ると、心配そうに覗き込む栄に視線を合わせる。
「お前も誰かに告白するときは気をつけろよ?」
「彰二は脈絡というものを考えたことある?」
コイツは女みたいな顔なので、こうして顔を近づけていても気持ち悪くない。
むしろ、そのままキスしてやりたくもなる。そんなイケない欲情を押し殺すために、俺はと
っておきのお話を披露することにしたのだ。
「フラれて失意のままに山に出かけると宇宙船に跳ね飛ばされて霧散するだろ?」
「聞いてないし」
「そしたら女体化して再生されるだろ? でも一旦霧散して死んでるわけだからそれを考える
とどっからどこまでが生でどっからどこまでが死なのかっていう定義が曖昧になってさ。
生と死という二つの概念……。全ての生あるものの片隅にある死と言う呪縛……。
なぜ、人はこうも死を選び次世代に種を紡ぐ手段をとるのか、クラゲのように生活環を逆回
転させることは出来ないのか。死は、免れられぬものなのか……そんな漠然とした不安で夜も
眠れなくなってさ。事実昨日は寝てないんだ」
「へーそれで眠たそうにしてたのか。でもそんなピンポイントなフラグないからね」
「そりゃそうか」
《キーンコーン・カーンコーン》
「あ……新任の先生来たよ」
キリの良いところで始業の鐘が鳴り、同時にうら若き美人さんが教室内に入ってきた。
新任というだけに、教室外でハラハラしながらチャイムが鳴るまで待っていたに違いないと
いらぬ邪推をしていたら、よく見るとそれは宮穂先生だった。
化粧が濃いから一瞬まじでわからなかった。
-
「佐久良宮穂です。今日からあなたたちのクラスの担任になります。まぁ、2-Hの諸君は優秀
だからこれと言った問題も起こらないでしょうけど」
教卓について早々、初っ端から軽い重圧を受ける俺たちであった。
「だから、担任なんてほっぽいしても良いと思うんだけども。まぁ、一年間よろしくね」
「……なぁ、ほっぽいって何だ?」
「さあ。多分、いつもの略語だろうけど」
略しても他人に伝わらなければ意味がないと思うのだが。
そんないい加減な略語の使い方をするのが佐久良宮穂(さくら みやほ)。
やはり既に顔見知りの身だったりする。
「さて、佐久良宮穂さんというと三十路前であるのが気になるが女性教員の中でもとりわけ気
立ての良い美人さんで、どこか大人の魅力を感じてならないわけだが」
「三十路前は余計よ」
「すみません。まさか先生が俺の心の声を読める三十路前の能力者だとは知らなくて」
「だからついでのように付け加えるのは止めなさい」
「で、お約束なんですけど先生」
「何かしら」
「抱きしめても?」
「セクハラで訴えるわよ」
「でも先生、恋人はいませんよね? 立候補して良いですよね?
出来れば今すぐにでも僕の息子を現世に繋ぎとめる、フィアンセになっていただきたい」
あるときはイケメンにも程がある鏡の前の俺を想像し、笑顔で宮穂を落としにかかる。
「――悪いけど、既婚者なの」
「な、に?」
「おぉっ! 早速彰二の奴がフラれた!」
瞬間、教室中がざわめき立つ。
俺の失敗を喧伝するために教室から出て行ったものまでいる。
しかしほどなくソイツは何やら顔を赤くして戻り、静かに席に座る。
……なんだ?
「“彰二の奴が完全にフラれた件”“あぁ、フラれたな”“さすが彰二だ”」
見てください、なんて無秩序なクラスであろうか?
担任の顔が見てみたい。
-
「担任は私だけどね」
「いまのはご冗談と受け取ってよろしいのですよね?」
「冗談なんかじゃないわよ」
「新学期早々ナンパしたあげくフラれるとはな……大した奴だ」
だの、ああだのこうだの、あることないことだの、無責任なことを言うモブたちだが俺は動
じない。こんなことで足が震えたりしない。
なぜなら彼女の言うそれには決定的な穴があるからだ。
「よ、よく恋人募集中とか言ってたじゃないですかかか」
「彰二、足震えてるよ」
「男女男男女男女は黙ってろ」
「なっ」
俺の策略に嵌まり、最終的にどちらかなのかで悩んでいる様子の栄。
「女を選ぶと後で得するかもしれんぞ」
「なっ――」
「で、どうなんですか先生」
「恋人最近見つかったの」
いや待て。そこらにいる男を貪り食いたいとも言ってた気がするぞ。ここ一年、この学校に
女体化者が生まれないのは彼女が原因という噂をまことしやかに聞いたものだ。
「おいおい見苦しいぞ彰二〜」
「うるせえ、外野は黙ってろ!」
「悪いけど、先生軽い男は嫌いなの」
「えー、朝ナンパされたいって言って――……って何奴!?」
瞬間、ガタっとイスが倒れる音がする。
俺は正面から黒い影に抱きしめられ、地面に押し倒された。
――クラスに割りといるノリの良い野郎、伊藤だった。
「もうやめろ! お前はフラれたんだよ! 現実を見ろ!」
伊藤は、俺の頭を両手で引っつかむと顔を近づけてきた。
いや、この場合引き寄せられたのか? いずれにせよヤメロ、カオチカイ、ハナレロ。
「彰二っ!」
俺が半ば放心状態であることを悟ったのか、伊藤は再び俺を抱きしめる。
「うおおぉ……っ!?」
しかし先程コイツは何と言った? 俺がフラれた……だと?
「莫迦な……。スポーツ万能、眉目秀麗たるこの俺様が……フラれた……?」
「フラれた。お前はフラれたんだ」
「いや……まさか、そんな……そうだ、夢に違いない……! 夢だこれは!
でなければ容姿端麗なこの俺がフラれるはずがない……!」
「あんた男でしょう」
「なに……俺は男……? 女……?」
「わからない、もう何もわからない。お前はもしかしたら女になるかもしれない」
「コホン」
俺的にもわりとどうでも良い問答を見た宮穂先生が、やや白け気味な所作で咳払いをした。
-
「いい加減はじめて良い? 後が支えてるのよ」
「「はい、すみません」」
悪ノリして教室内を賑わしていた男子達が元の席に戻ると小声で談笑する者が多くなる。
やや冷え固まっていた空気が温まり、いつもの様相を呈し始める。
「静かにー」
「全くだ。静かにしろよお前ら」
「「「「「お前が言うな!」」」」」
野次が何十音にもなって飛んできた。やれやれ、さすがモブ。息がぴったりだな!
「――実は、転校生が一人いてね」
「!」
思わぬ、急展開ぶりに俺の思考が停止した。
当然ざわついていた教室は更に喧騒を増し、誰もが予想外の事態に周囲の様子を窺った。
「転校生って……まじか」
「珍しいね。どんな子だろ」
栄も驚いているようだ。
何しろ、こんな半端な時期に2-Hに編入してくる奴がいるなど不意打ちもいいとこだった。
なぜなら、ここは中高一貫の固定学級。ゆえにその顔ぶれもこの四年間一緒であり、クラス
仲が良くとも外の世界には疎いような特異性を併せ持つ、そんなクラスだ。
そんな閉鎖された場所に転校生が来る――?
「転校生って、2-Hではないんですよね?」
「残念ながらここのクラスよ」
更にざわつく。心臓の鼓動が激しくなり、別種の感情が入り混じったような感覚に襲われる。
なんだ、この感じ。
「うわー、本当に転校生来るんだー」
まるで夢物語を見ているようなものだろう。栄は感嘆の息を洩らす。
でも俺は違う。好機や珍しさだけではこうはならない、複雑怪奇な感情を抱いていた。
「海外からの帰国子女さんでね。正直、めっちゃ可愛いわよ」
男子諸君が妄想するであろうまるで理想上の条件でしかなかった台詞を聞き、教室内の空気
は最高潮に達し、調子づく者まで現れる始末だ。
「栄、俺は嬉しいんだよな」
人の気持ちなど解るわけなどないのにその滑稽さすら忘れて、俺は後ろに振り返り栄に尋ねた。
他人の目に映る俺を、なぜだか無性に知りたかった。
「さぁ……僕に聞かれても。というか彰二の顔怖いよ?」
怖い……?
「そんな顔してる?」
「してるよ、してる……っ! 怖いからずっと前向いてて欲しい」
「ぬっ」
-
前を向き、改めて自分の心情を顧みる。
転校生を前に、今まで通りの自分でいる気か? それとも素の自分をさらけ出すのか?
そのことを巡り、頭が混乱を始めた。
『もうずっとこのままだと思っていたのに』
四年間自分を偽り続けてきたからこそ、今更元に戻せやしないと思っていた。
でも、出来ることなら素の自分でありたいとも願っていた。
そして今、俺を知らない人がこの壁の向こうにいる。
――だから焦ってるのか。
閉鎖されたこの場所だからこそ、急激な変化が恐ろしいのだ。
このクラスも俺も、代わり映えのない日常に転機を迎えようとしていて、転校生がどんな行
動を取るか、転校生をどう扱うかで今後の生活が変わるかもしれないから。
たった一人の転校生が大きな波を生むほど、このクラスは人見知りになりすぎたから。
「入って良いわよ。あたしが空気暖めといてあげたから」
「はい」
先生の言葉に呼応し、教室の外で小さな声が聴こえた。
それは芯のある、自信で満ち溢れているような、そんな懐かしい雰囲気をともなった声――。
扉が開く。転校生が姿を見せる。教室中がいつしか固唾を呑んでその最初の言葉を待つ。
「――はじめまして」
各々が抱く、未知への期待。それは果たしてどのようなモノだったのか。
期待のベクトルが違う俺にはわかるはずもない。だってそこにいたのは、
「この度、このクラスに転入して参りました美崎 星<みさき あかり>です」
「あ…かり……?」
-
一目見てわかった。俺は、どんな表情で、どんな声でその一声をかけたのだろう。
今再び、アイツを目の前にして、どっと沸き起こるこの感情を抑え切れなくて、それでも
『美崎 星』と名乗る少女は、
「星と書いてあかりと読ませるというのは、やはり変わっていますよね。
でも私は大好きなんです、この名前」
可憐な少女のようでいて既視感ある懐かしい微笑みを浮かべた。
「先日海外から帰って来たばかりなので何分この地の事情に疎く、ときにご迷惑を皆さんにお
かけすることがあるかもしれません――」
「迷惑なんてないない、むしろもっとかけてくれーッ!」
迷惑という言葉に男子達が反応する。そこから挨拶の内容は覚えていない。
――まず面影があった。アイツが成長すればそのまま彼女の姿になるような、そんな力強い
イメージさえ植えつけた。事実、目の前に立つ彼女を見て、容易にアイツと繋がった。
でも、信じたくなかった。知りたくなかった。
なぜこんなにも、理解出来ない感情が溢れているのか。
挨拶を終えた少女は、俺の列の一番後ろの席に座る。すれ違いざまに視線を交わすことはな
かったが、しばらくすると美崎星は何か思うことがあったのか立ち上がって、
「あの、先生。私視力が悪いので一番前の席に移ってもよろしいでしょうか」
「!」
「あら、配慮が足りなかったわね。真ん中の席にくる?」
「いえ……この列の、一番前の席が良いです」
あぁ。なんで、コイツは。
「美崎はこういってるけど、宮元……あんたは問題ない?」
「別に、ないですけど」
席の移動が始まる。俺が前から二番目に、美崎星が一番前になった。
俺のすぐ目の前には、彼女の背中が見える。依然として収拾が付かない教室では、主に俺に
向けての野次が飛び交うがその意味を気にするほどの余裕は無かった。
「美崎さんといきなりお近づきになれるなんてうらやましー」
「あぁ……お前はホモじゃなかったんだな」
「違うから。憧れとかあるけどそれだけだからっ……」
栄との会話で少し気が和む。心臓は相変わらずフル稼働中で、冷や汗たらたらだけど。
それからというもの、知恵熱でも出たのかってほど身体が異常に熱くなり、朦朧となった意
識が明晰さを取り戻す頃には、既にホームルームが終わっていて目の前には転校生よろしく、
周囲を取り囲まれている美崎星がいた。
その様子を傍観している俺を見て、伊藤が物珍しそうに話しかけてくる。
-
「お前は参加しないの?」
「参加しろったって……」
「へぇ、お前ともあろう者が珍しいこともあるもんだあね」
「俺だってナイーブになるときぐらいあるわ!」
「しっかし、可愛い子が転校してきたな。やばいよ俺、恋したかも」
「お前、彼女いなかった?」
「あいつとは、別れる」
思わず、その彼女さんを見てしまう。
――せいぜい刺されないように祈ってるよ。
そんな様相もあり話しかけることも出来ず、常に傍観者の立場を取る俺と栄。
本来なら俺がいの一番にあの連中の一人にならなければならないのに、事態が事態なだけに
当然話しかけることも出来ない。
……どうやって話しかけろってんだよ、アイツに。
「うわ、こっち見た」
栄が無駄に反応し、そして美崎星と目が合う。合った。今。
俺の思惑を察したのか、彼女は近づいてくるや否や、唐突に俺の手を引いた。
「ちょっと、良い?」
「え――」「ええ……っ!?」
あまりの成り行きぶりに素っ頓狂な声を上げてしまう。俺は俺で、栄は展開についていけず
あわあわしてる。どうにも焦っているようにも見えたが、把握はしかねた。
だって、この状況だぜ?
「ちょっ……何を!?」
「私と、来てください」
思う間もなく星に手を引かれる。なすすべなく人並みを掻き分けさせられて、教室を出るこ
ろには小走りになり、彼女は人気がなくなるまでだらけきった俺の身体を力強く牽引した。
――あぁ、本当にアイツなんだと確信に至る瞬間だった。
その状況が、過去全てを想起させたのだ。
よく、アイツに苛められたことを。
よく、アイツに振り回されたことを。
よく、アイツに手を引かれたことを。
懐かしい後姿と手のひらの柔い感触に感情は高ぶる一方、どんな状況にあれど今だ変わらな
い立ち位置を知り、そして最後にあの手紙を思い出した。
今それが出来るんじゃないのか? と思った。なのにまた、流されてしまうのか?
それだけは、男として、見過ごせない……ッ!
俺は持ち前の瞬発力で星を追い抜いて、彼女の手を引いてひた走り校舎の外に飛び出した。
無論、上履きのままでだ。今星と二人きりになれるのなら、その他諸々の事情なんて関係なかった。
-
「今度こそ、お前が話しかけてくれるものと踏んでたんだ」
第一声がそれすか。つーか言葉遣い戻ってんぞ。
「……まぁ、お前らしいけどな」
「“お前”……?」
星はピキンと目を鋭くさせる。
「うぐっ……星ちゃんらしい――……って! この歳になってちゃん付けはないだろ!」
「まぁ、それもそうだが」
星の前でツッコミを入れるのがこれほど恥ずかしいとは……。
ボケの当事者はあまり気にすることなく、乱れきった髪を梳いてみせる。
ぐぅぅ、そんな女っぽい仕草が異様に癇に障る……!
「そこは、“見ほれる”の間違いではないでしょうか?」
「――――っ!?」
こいつ、確信犯だ……! 絶対確信犯だ!
ここに確信犯がいますよー! 警察さん現行犯逮捕してください!
「やれやれ……混乱すると、わけがわからなくなる癖は相変わらずだな」
「もう、ほっといてくれ……」
「嫌だな」
「はあ?」
「期待してたんだぞ。なのに、私から話しかけるというのはどういう了見だ?」
どうしても話しかけられなかったんだよ……。
「……そういやもう『美崎』って言わないのか」
「あぁ、たまに言ってしまうこともあるが……これは私なりのけじめなんだ。“あっち”の方
の性格にしても、どちらが本当の自分なのかたまにわからなくなるときがあって困る」
「え……?」
どこがで聞いたような話だった。
「しかしアレだな。
あらかじめ聞かされていたことだが、皆が皆予想以上の反応をするものだから驚いたぞ」
「あのクラス、変化に飢えてんだ……」
「そんなに私は可愛いのか?」
澄ました顔をして言うことじゃなかった。
当然、恥ずかしさ等の関係で肯定出来るわけもない。
-
「「はぁ、はぁ、はぁ……」」
その間会話を挟むことなく人気のない場所を探し、校内にある高台へとやってきていた俺は
切らせた息が落ち着きを取り戻すまで待ち続けた。
「見てみろ……もう俺の方が、絶対早い…だろ…」
星はそんなこと関係ないと言わんばかりの態度を示す。
「私は女だぞ」
「それは、見りゃわかる」
「一応改めて言っておくべきことだと思ってな」
「感染者自体は珍しくない世の中だしな……女体化したのって最近なのか?」
「違う。私は元々女だ」
「へ? あ? 女?」
WHY? なぜ? 俺にはコイツが男だった頃の記憶があるんだが。
この記憶が植えつけられたものだとおっしゃりたいのかかやつは?
「何を根拠に私を男だと決め付けてたんだ?」
「いやだって、お前男だったじゃん」
「馬鹿、お前私の裸を見たことなんてないだろ」
「だけど男……」
事実、俺の中でコイツは男としてインプットされているわけだし。
小学校でも男子だったし、一緒にチンコ晒して立ちションした思い出も――……アレ?
してなくね? 何気に俺コイツの裸見たことなくね?
「いや、その……彰二は私の……を見たことなんてないだろう」
「え? なに?聴こえなかった?」
「だから私の……を見たことないだろ」
ごにょごにょと何を言っているのか決して聴こえはしなかった。
「……本当は聴こえてるだろ」
「聴こえない! 全身全霊を賭して聴こえない……っ!」
「……………………」
「だからぁ、聴こえなかったってぇ。もう一回言って?」
「……うるさい」
ブチという音が聞こえた気がする(実際は幻聴)
「あ?」
「うるさいうるさいー! 実際、美崎のチンコなんて見たことないだろお前ーっ!」
「あ……はい……」
勢いに気圧されて、つい固まってしまう。
驚いた。いや、本来驚くべきところを驚けない状況というのがこれほど驚くものだったとは。
-
「とにかくっ、私は男じゃなかったんだ」
「そう、なのか」
「そうなんだっ。女だと知らずに男として過ごしてきた、ただそれだけの……よくある話だ。
話すと長くなるから日を追って、暇なときにでも気が向いたら話してやらないこともないか
もしれないが……いや、ある」
「どんだけ後ろ向きだよ。言葉尻に不安なら一言で済むよね」
「まぁ、とにかく」「――お前が、自分を変えようと必死だったのはよくわかったよ」
絶句した。
あぁ、なんで。コイツは。
――俺の世界をこうも簡単に変えてしまうのだろう。
「随分、無理をしたようだな」
「そう……だな」
あのクラスでの俺の役割は、調子に乗っては毎度痛い目に合うトラブルメーカーだった。
例えそれが本当の自分ではないと理解していても、おちゃらけた自分を演じなければなけれ
ばならない。それがいつしか苦痛に変わったときでさえ、彼らは本当の俺を知らないから。
だから、戻れなかった。素の自分を見せるのが怖かった。
あの日から弱い自分を変えたくて、いつか本当に強くなれるように精一杯に自分を欺き演じ
続けてきた結果、俺は、弱くなったんだ。
「強くなったよ、彰二は」
「俺なんかのどこが強くなったってんだ……っ!」
「――私の手を引いたじゃないか」
「…………――――。」
「お前は、私を追い抜いてここまで来たじゃないか」
今、正直、俺は星の顔が見れない。太陽が眩しいと言うのもあるのだろう、逆光に立つ星が
眩しくて、つい言ってしまいそうだったから。何より、知ってしまった。
五年前のあの言葉が、お節介などでなく俺の願望であったことに。
星はいつまで経っても星のまんまだ。
素直で、強くて、優しくて。誰よりも一番に先手を切って。だから、
そんな星の手をいつか引けたらって、思ってたんだ。
「ただいま……彰二」
「――うん」
http://www6.uploader.jp/user/1516vip/images/1516vip_uljp00213.jpg
-
うう・・・投下ミスった・・・・
>>380-381の間にこの文章が入ります。
「「はぁ、はぁ、はぁ……」」
その間会話を挟むことなく人気のない場所を探し、校内にある高台へとやってきていた俺は
切らせた息が落ち着きを取り戻すまで待ち続けた。
「見てみろ……もう俺の方が、絶対早い…だろ…」
星はそんなこと関係ないと言わんばかりの態度を示す。
-
終わり。
ゲーム用に書いてたんでちょい日常シーンが長いですけど、
完結してないのに放置したままにするのもアレなので区切りをつける意味で投下しました。
ちなみに続きます……。
-
(・∀・)凄くイイッ!!
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【徒然なる女人日記-本スレに投下するほどでもない編-】
☆月℡日
体育祭とか面倒臭い。
とか思ってたけど、よくよく考えてみたら一日中女子の体操服姿や、チアリーダー姿を拝める絶好の視姦デイじゃないか!
外? ピーカン照りですよ。おんなじオチなんか使いませんよ。
で、俺の参加種目は100メートル走。
奇遇なことに委員長と同じレースとは……!
これはね、もうね、真横で委員長の控えめなオパーイの揺れを見よっ!っていう神の啓示としか思えないだろ!
運命のクラウチング。となりの委員長が一言。
「負けないからねっ!」
ふっ、甘いな委員長よ、俺の勝利はカタいんだぜ? レースなんざハナからアウトオブ眼中さ!
号砲。
速えっ!!? 委員長速ぇっ!!!
全力で走ってるはずなのに追い越せる気がしないってどういうこっちゃ!?
くそっ、元男の意地と性欲で何とかデッドヒートに持ち込めてるもののオパーイなんぞ拝める気がしねぇっ!!
ま、負けねーっ!!
…………。
ゴールテープの感触。
僅差、ホントにギリギリだった。ほんの数センチ。他の女子なんか遥か後ろをまだ走ってるのに……。委員長、ホントに君は強敵だった……。
こんな爽やかな気持ちは久方振りだ。俺は委員長を称えようと握手を求めた。
「強かったぜ、委員長……」
「そんなに私に見せつけたいの……っ!? 最っ低!!!」
何故か委員長に泣かれた。走り去られた。何故だろう。訳も分からず俺も1位の旗を握りながら泣いた。
結局、同じオチでした。
-
>>385>>387
Gj
-
寝る前にえーもん読ませてもろたわ(*´Д`*)
二人ともGJ!
-
〜青色通知3〜の続き(>>363から)
ウチの学校の裏門ってのは、俺ら1年の校舎からかなり遠い場所にある。どれくらい遠いかっつーと……だ。
―――階段を駆け下り、
1年の校舎である西棟から実習室と職員室のある中央棟へ抜けて、
昇降口にたどり着く。
まずここまでで半分だ。
更に、靴を履き替え、
運動部用の多目的球技コートを横切り、
更に放課後は陸上部しか使わない200メートルトラックのグラウンドを突っ切り、
その先にある古びた傾斜のキツい階段を37段ほど駆け下りる。
……要約、すっと、かなり、めんど、くせぇ、位置に、ある、わけだ……。
はぁ、はぁっ、心臓、いてぇ……。
「―――おそいっ!!」
初紀との待ち合わせ場所には、ビシッ! という効果音が付きそうな勢いで、俺に人差し指を突きつける女子が待っていた。
―――って、あれ?
「はぁっ、はぁっ……お前……初紀?」
そこに居た女子は、……初紀だった。まぁ、消去法で考えたらコイツ以外考えられないのだが……。
「……へへっ、どーだ?」
どこか楽しげに、クルッと一回転して見せる初紀。
その格好は昨日のものと、かなり違っていて初紀を普通の女の子と見間違えた原因がそれだ。
短く纏められたポニーテールに、薄手のパーカー、そして今まで気付かなかったキレイな脚が誇張されたスカートと黒いハイソックス。
なんつーか、その、……好みのタイプだ。
……くそっ、走ってきたせいか顔が熱い。
なんかこのまんまじゃ俺が照れてるみたいじゃねぇかっ!?
-
―――って、何動揺してんだ……?
フツーにしてりゃいいじゃねーか。
いくら可愛いっつったって相手はあの初紀だぞ? なんで動揺しなきゃならねーんだよ……いい加減落ち着け心臓。
「はぁ。……んだよ、失恋でもしたのか―――うぉっと!?」
目の前を、まるで疾風のごとく掠めるローファの靴底。
その先に、自慢(かどうか知らんが)の美脚を高く上げる初紀の姿。
……縞……じゃなくてっ!!
コイツ、今マジで俺の横っ面を蹴り倒すつもりだったぞっ!?
女になったとはいえ空手有段者の蹴りは凶器だろ、キョーキ!!
「あ、あ、あ、あっぶねえじゃねーかっ!!?」
「―――減点」
憮然とした初紀の声。
「……は?」
「減点だ減点! いいか、陸。女の子の心ってのはお前が想像してる以上に傷つきやすいんだぞっ?! デリカシーが無いっ!」
……つい数週間前まで思う存分に男としての人生を謳歌してた奴が、女心を語ってる事にツッコミを入れたい。
それに、その減点法にもだ。
が、アイツの蹴りを二度かわす自信は正直無いので黙っておこう。
代わりに、当然の疑問符で返してみる。
「じゃあ、こういう場合は何て言えば良いんだよ?」
「そりゃ……その、うん……」
……何でそこで口ごもんだよ。
「〜〜〜っ! それくらい自分で考えろっ! 減点2っ!!」
蹴りこそ飛んでこなかったものの、返ってきたのは、よくわからない感情の高ぶりを伴った初紀の八つ当たりだった。
-
多分次からは初紀視点になると思います。思うだけでなーんも構想なんぞ浮かんでません。行き当たりばったりでごめんなさい。
-
wktk
-
〜青色通知3.1(初紀の場合)〜
初めに言い訳をさせてくれ。
喧嘩に明け暮れて、異性との交遊を蔑ろにしてたコイツだから、ある程度は予想出来てたんだ。だからこその『予行』だし。
―――でもそれは、あくまで"ある程度"の話であって。
「はぁ……減点18点目」
「またか!? 何がダメなんだよっ!!?」
「女の子と食事するのにカウンター席しか無い牛丼屋を迷わず入ろうとするか普通っ!?
……はぁ」
……どうしよう。今日、陸と待ち合わせてから溜め息ばっかりだ、俺。
女になっちまった俺より、言い方を選べば"硬派な"、身も蓋もなく言えば"異性交遊の経験値が少ない"不良崩れにデリカシーを求めるのは、そりゃ……酷ってもんだけどさ。
けど、この喧嘩バカのセンスのなさとニブさと言ったら……。はぁ、……泣きたい。
―――好きな子とのデートの臨場感を出すために、わざわざ髪を切ったり、クラスの子達に頭下げて、女の子らしい流行りの服を借りたり、恥を忍んでスカートの丈を少しあげたり……。
なのに、このバカ、開口一番が言うに事欠いて『失恋したか?』だぞ?
もっと何か言うことあるだろ?! ……はぁ……。
……"予行デートしよう"って突拍子もないことを持ち掛けたのは、確かに俺だし、隣で"?"マークを無数に浮かべてるコイツの鈍感さは、今に始まったことじゃないけどさ……。
でも、この現状になーんかモヤモヤしてる俺がいる。なんでかは、わかんないけどさ……。
「んじゃ、あそこじゃダメか?」
「えっ? あぁ……うん」
俺が思い悩んでいる間に、陸は陸で無い知恵を絞って考えていたのだろう。
コイツが指差した先には、チェーン経営の喫茶店の看板。……まぁ、及第点ってトコかな。
普通の人の及第点だから、コイツにとっては、かなりの進歩と受け取るべきかも。だから、皮肉を込めて精一杯に笑って言ってやる。
「"ひーちゃん"にしては、頑張った方じゃん?」
「っ! ひーちゃん言うなっ!! 小学生かよ!?」
お、赤くなった、赤くなった。
「〜〜〜っ! ほら行くぞっ!!」
照れ隠しなのか、顔を背けたまま陸は俺の左手を掴んできた。
「あ………」
―――少し前まで軽く去なしてた喧嘩友達のゴツゴツした右手の感触に、何故か少し顔が熱くなってた。
……なんでかは、わかんないけどさ。
-
「二名様ですね、こちらへどうぞ」
とりあえず二人とも制服ってコトで有無を言わさず禁煙席に通された。
別に俺も陸も煙草なんて吸わないから構わないんだけどさ……。
……なんて言うか、店員さんの陸を見る目が気に入らなかった。
如何にも"コイツは煙草を吸うだろう"っていう……眉をしかめた態度が。
我慢できずに、俺は立ち去りかけたその店員さんの背中に言葉を投げかけようとした。
「ちょっと―――!」
「―――やめろバカ」
店員さんに文句の一つでも言ってやりたかったのに、それを遮ったのは他の誰でもない、陸だった。
「なんでだよっ!?」
"そういう目"で見られてるのは自分だってのに、どうしてそんな落ち着いていられるんだよ?!
「他人が俺をどう見ようが別にどうでもいいじゃねーか」
「よくないっ!」
陸がそういうふざけた奴じゃないってことは、俺がよく知ってる!
素直じゃないし、鈍感だし、口は悪いし、その口よりも手が先に出るけど……真正面から悩みとぶつかって、逃げずに考えてる。
不器用だけど、根っこは真っ直ぐな奴だって俺は知ってる!
だから―――
「―――しつけーんだよ……バカ」
「えっ……?」
いきなりの罵倒に目を白黒させてたであろう俺を見ながら陸は言葉を続ける。
「……そりゃ、少しは俺もムカついたけどよ」
「じゃ、どうして―――?」
普段なら、そんな状況に出くわせば文句だけじゃ済まさない陸が、俺よりも先に、簡単に引き下がるなんて。
不思議でしょうがなかった。その理由が知りたくてしょうがなかった。
「………」
でも、陸はなかなか口を開こうとしない。……なんだか俺一人でヒートアップしてたことを陸にバカにされてる気さえしてくる―――そんな失礼なことを俺が本気で考えかけた、その時だった。
「……なんつーか……その……。
俺をわかってくれてる奴が居てくれんなら、それでいいかって……」
「え……?」
「―――だからっ!! 俺のために怒ろうとしてくれる奴が居てくれんなら、それでいいかって思ったんだよっ!
悪りぃかよっ!?」
そう言って、バツが悪そうにそっぽを向く陸。
「……うぅん。そんなわけあるか」
―――俺、多分ニヤけてたと思う。その陸の不器用だけど真っ直ぐな言葉がなんだか無性に嬉しくて。……その頬が赤く染まった横顔が、男だった俺から見ても見惚れそうなくらいに、カッコ良くて。
-
「〜〜何笑ってんだよっ!?」
バカにされてるって思ったんだろうか、陸は拳を構えながら俺を精一杯睨みつけていた。……ったく、陸はそれさえなければなぁ。顔だって悪くないし、女の子だって寄ってくるのに。
「悪い悪い、だからその握り拳はヤメナサイ。物騒だから」
「……ったく」
とりあえず俺が頭を下げて、この場を諌める。うん、これがいつもの感じだ。
………ん?
でも、それはいつもの俺と陸の関係であって、女の子とデートする時にこれはマズいんじゃないか?
「……なぁ、陸。デートする時もこんな感じじゃ十中八九嫌われるぞ?
もーちょっとこう、ソフトな感じに接することは出来ないのかよ?」
「んな事言ってもよ……」
鼻頭を掻きながら、言葉を濁す陸。
なんだなんだ。これは"予行"な訳だから、本腰入れないと困るのは自分だぞ?
そりゃ……元男とじゃ不満かもしれないけどさ。
「……やっぱ俺じゃ不満か?」
「そういう訳じゃっ……ねぇけどよ」
意外だった。口の悪い陸のことだ。てっきり"当たり前だボケ"くらいの罵声が返ってくると思ったんだが。
「じゃあ、なんだよ?」
「……言葉」
陸から返ってきたのは、日常の喧騒の中では消え入りそうなくらい小さな声。
「は? 単語だけじゃ意味が全く分からんぞ。どういうこっちゃ?」
「……お前の言葉遣いが男のまんまだから、どう接して良いかわかんねーんだよっ」
……悩んだ末の決死の告白。とでも表現すればいいのかコレ? それくらいに陸は大真面目なのだが、内容が伴っていなくて俺はキョトンとしてしまう。
「……細かいなーお前。予行なんだから俺だったとしても女の子として扱わなきゃ意味ないだろ―――」
「―――そうじゃねぇんだよっ、予行だけの話じゃなくてっ!」
まだ、かなりシリアスな空気が陸の周りに漂っている。というか、俺もシリアスになるべきなのか?
とりあえず、ここは陸の言葉を待った方がいいかもしれないな。
「……お前、女になってから何も気にしてねぇみたいに振る舞ってっけどさ。
そんな筈ねぇだろーが……」
「っ」
……いきなり、だな。随分と。
-
とりあえずここまで。寝起きの頭で書いてるから構成おかしいかもです。もともとがおかしいかもです。
-
普段のアイツから想像もつかない程に思い詰めた陸の表情。……大多数の他人から発せられる喋り声が沈黙を埋めていく。
気付くと俺は口を噤んでた。
……もしかして、陸は何を考えてるかって―――全部知った上で俺に質問を投げかけてるのか?
「な、なんだよ。似合わない顔して、俺の何を知ってるって言うんだよ―――」
「―――知ってんだよ」
せき止められた言葉に、跳ね上がる心音。
「……それくらい分かるんだよ。俺にだって」
バカ言うなっ! いつも、いつまでも、どこまでも鈍感な陸に、俺の気持ちが分かってたまるかっ!
「お前、さ―――」
―――やめろっ!! 言うなっ!!!
口は動くし、声も出る。なのに俺のカラダはそれを拒絶する。
………本当はわかってる。
陸の言葉を遮らないのは、他の誰でもない、俺自身なんだって。
だから、こうして怯えた振りで淡い機体を隠してるんだって。
……それを自覚して、理性がそれを止めようとした時には―――。
―――もう、陸が言葉を放った後だった。
「―――まだ、決めかねてるんだろ?」
「…………。へ?」
重々しく放たれた言葉と、間抜けに上擦った裏声。
「俺だって、"青色通知"を受けた身だ。それくらい想像出来んだよ。
……けどお前は俺と違う。
何の前触れもなく女になっちまった。
だからって、"ハイそうですか"なんて自分の生き方を急に変えられる器用な奴なんかそうそう居ねぇ。
だから、お前は……そんなに宙ぶらりんな状態なんだろ?」
……やっぱ、陸は陸だった。何もわかっちゃいない、いつもの鈍感な奴だった。
……はぁ。なんなんだろ。
ホッとしたような……肩透かしを喰らったような……。
でも、あながち間違ってはいないな。
俺が"どうすればいいのか決めかねてる"っていうのは本当のことだし。
……ま、陸にしては良い推論だったよ、うん。
……俺は力無く首を縦に振ることにした。
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