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23〜26日に実施された欧州連合(EU)欧州議会(定数751)選挙の開票が26日始まった。EU域内の主流派政党は、ポピュリスト(大衆迎合主義)政党からの攻勢をよそに自らの立場を堅持した。過去20年で最高となった投票率は、親EU的な姿勢を取るリベラル派と緑の党に有利に働いたようだ。
欧州緑の党ユース連盟(Federation of Young European Greens)の広報担当者カトリ・イリネン(Katri Ylinen)氏は、「緑の党の選挙結果は、若者たちがストライキを起こしたことによるもの。気候変動についての運動は、特に若い女性たちの間で重要なものになってきている。欧州の選挙でこの問題を争点にしているのは若い女性たちだ」と主張する。
スウェーデン人の環境活動家、グレタ・トゥンベリ(Greta Thunberg)さんは、世界経済フォーラム(WEF)の年次総会(ダボス会議)で温暖化対策を呼び掛け、わずか16歳で世界中に広がる運動の旗手となった。トゥンベリさんに触発された大勢の若者が各国で授業をボイコットし、気候変動対策を求める運動組織「フライデーズ・フォー・フューチャー(Fridays for Future)」の世界一斉デモに参加した。
大学生のルイザ・ノイバウアー(Luisa Neubauer)さん(23)もそのうちの一人だ。今では「ドイツのグレタ」と呼ばれている。三つ編みがトレードマークになったトゥンベリさんは、その他の同世代の若い女性たちにも影響を与えている。ベルギーのアヌーナ・デウェーフェル(Anuna De Wever)さん(17)とキーラ・ガントワ(Kyra Gantois)さん(20)、ウガンダのレア・ナムゲルワ(Leah Namugerwa)さん(14)は数か月前からそれぞれの国で温暖化対策を求める運動の中心になっている。
A EU基本条約は、加盟国の首脳で構成する欧州理事会(EU首脳会議)が欧州議会選挙の結果を「考慮」して提案した委員長候補を、欧州議会が多数決で選出すると定める。これに従い前回2014年に導入されたのが「筆頭候補制」。欧州議会選で最大勢力となった政治会派が指名する人物(筆頭候補)を委員長に選ぶ仕組みだ。加盟国の首脳による密室の話し合いで選んできた慣行を変え、EUの「顔」選びに民意を反映させて選挙への関心を高める狙いがあった。
A 筆頭候補制は、議会選の結果を「考慮」するとのEU基本条約に沿ったルールとして導入されたものだが、条文で明記されていない。このため、欧州理事会は「筆頭候補が自動的に委員長候補に選ばれるわけではない」と解釈してきた。今回の人事は、筆頭候補制を巡る欧州理事会と欧州議会というEU機関内の対立を招いた。手続きの維持を訴えてきた現職のユンケル欧州委員長は「私が筆頭候補制で選ばれた最初で最後の委員長になった」と愚痴っている。
Q フォンデアライエン氏はかろうじて選出された。何を意味するのか?
A 最終的に支持を表明した親EUの主流3会派の合計は444議席。だが実際に獲得したのは383票だった。「密室選考」に反発が強かった中道左派票を取り込むために掲げたフォンデアライエン氏の公約が、身内の中道右派の離反を招いた可能性がある。投票は無記名の秘密投票だったが、欧州メディアによれば、イタリアやポーランドでは政権与党の意向を受けてEU懐疑派議員たちが賛成票を投じた。これらの勢力の動向が勝敗を分けたとすれば、「見返り」を求める動きが組織運営の足かせとなる局面が訪れるだろう。【八田浩輔】