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从 ゚∀从二人暮らしのようです(-_-)

1名も無きAAのようです:2016/05/07(土) 10:11:46 ID:KbZp5als0
※ハートフル同棲ものですが少しエロがあります

158名も無きAAのようです:2016/05/28(土) 18:37:29 ID:QihcY4Xc0
普通は大人の女性を好きになるもので私のような年齢の子供を性的な目で見るのは特殊なカテゴリに振り分けられるそうです。
店に来るのはそういう特殊なカテゴリに属する小児愛者ばかりでした。普段はその性癖を出す場がないのだそうです。
だからこの店は特殊なのだ、楽園なのだとお客様の一人は語りました。楽園という意味が分からず教えてもらいました。
楽園。シャングリラ。エデン。ジハード。難しくて理解出来ませんでした。しかし喜んでくれたので私も嬉しくなりました。

とても若く希少性価値があるという事で私は一回十万円と極めて高価な額で売られていたそうです。
私は店から出る事は許されませんでしたが食事と衣食住は与えられました。
それに射精をするとお客様は皆喜びます。そうすると私も嬉しくなるのです。
一日に六回ほどの仕事をこなしました。疲れるものの疑問は感じませんでした。

159名も無きAAのようです:2016/05/28(土) 18:38:23 ID:QihcY4Xc0
やがて私は初潮を迎えてお客様とセックスをするようになりました。更に高値を払ってたくさんのお客様が来ました。
セックスをするに当たっては様々な勉強が新たに必要となりました。教習なのだと店長とも何度もセックスをしました。
初潮が来たあと、セックスの勉強をする前に一度だけお客様とセックスをしました。
初めてのセックスは極めて高い価値があるのだと私は店長に説明されました。
ただされるがままで良いのだと、そう言われて私は送り出されました。

いつもは口で受け止めている肉棒が体内に入り込んできました。とても身体が熱くなりました。
痛みと正体不明の波が押し寄せて私は混乱しました。変な声も出てしまいました。
初めてのセックスで自分の中の何かが破れた感覚がありました。これが価値のあるものなのかなと思いました。
セックスは他者との融合だと思いました。自分という絶対的な独立した存在の中に他者が入ってきます。
繋がって一つになる事なのだと考えるとヒリヒリとした痛みも次第に気持ちよくなっていきました。
口の中で舌を絡ませるのも秘部を指で掻き回されるのも肉棒を膣で受け入れるのも他者との融合なのです。
その初めてのセックスに数百万を積んだお客様は満足されたようでした。

160名も無きAAのようです:2016/05/28(土) 18:39:51 ID:QihcY4Xc0
様々なお客様とセックスをしました。皆私の幼さに興奮して、射精をすると喜びます。
取締役社長。医師。外交官。銀行員。官僚。学校の教師。色んな方と交わりました。
家庭があり子供がいる方もいました。娘が君と同い年なのだと言われた事もありました。
やはり普段は私のような幼い子供が好きだと公言している方は一人もいませんでした。
大人が私のような子供とセックスをするのは犯罪なのだそうです。犯罪の意味は分かりませんでしたが悪い事だと教わりました。
店長に雇われてお客様とセックスをして私は暮らしています。そうする事で寝床を用意してもらい食事をいただいているのです。
それが悪い事だというのは不思議な事でした。悪い事というのは良くない事です。それでも私はそうして生きているのです。

161名も無きAAのようです:2016/05/28(土) 18:40:35 ID:QihcY4Xc0
次の転機が訪れたのは私が十四歳の頃でした。
私の人生を大きく動かす事となるお客様はセックスにすっかり慣れた頃に初めてやって来られました。
まだ若く三十代だと自己紹介をされました。私を気に入ったそうで何度も来店されました。
必ず私を指名して店長もお得意様だと言っていました。しかし彼は他のお客様とは少し違ったのです。
彼が通い始めてから半年ほど経った時に私は君に恋をしているのだと告げられました。
私は恋というものが分かりませんでした。セックスは生活であり恋愛感情など一度も抱いた事がありません。
そもそも恋愛も愛も理解の及ぶものではないのです。セックスをするのにそのような経由地はありませんでした。

彼は私を自分のものにしたいと言いました。しかし私は店長に買われた身なのです。
それは出来ないと答えました。彼は大丈夫だと言いました。君を攫うのだと、耳打ちしました。
攫う、その意味も分かりませんでした。色んな言葉を覚えましたが私の語彙はまだ貧しいものです。
そのため私はそう告げられても店長に相談する事もありませんでした。

162名も無きAAのようです:2016/05/28(土) 18:41:33 ID:QihcY4Xc0
彼の告白の数週間後の事でした。また彼は私を求めて店にやって来ました。
私に充てがわれた部屋で会話をしていつも通りシャワーへ行こうとしましたが彼は優しく制しました。
彼はどうしてかシャワーを浴びようとはしないのです。それにしきりに腕時計を気にしているようでした。
時間だ、と彼が言うと階下から物音がしました。続いて怒号も聞こえます。店に流れていた音楽が止められました。
彼は私の手を引き部屋を出ました。まるで構造を知っていたかのように入り組んだ通路をさっと進んでいきます。
怒号や悲鳴があちこちから聞こえていました。彼は気にせずにずんずんと進んでいきます。

そして裏口から外へと出ました。店から出る事を許されていなかった私にとっては売られてきた時以来の外の世界でした。
既に遅い時間で闇夜が街を包んでいました。店のビルの付近は赤い灯りが幾つも回転していました。
傍らに停められていた車に乗せられました。彼は車のエンジンをかけてその場からさっと離れていきます。
四年以上を過ごした店があっという間に遠くなっていきます。私は店長に何も言っていません。きっと怒られてしまいます。
しかし彼はその心配は必要ないと言いました。君はもう解放されたのだと。解放。その言葉を新たに私は学びました。

163名も無きAAのようです:2016/05/28(土) 18:42:57 ID:QihcY4Xc0
彼は警察に店の正体を密告したのでした。そして独自のルートで警察が店に踏み込む時間を知りその混乱に乗じて私を攫ったのです。
犯罪をすれば、悪い事をすれば、逮捕され罰せられるのだという事は知っていました。きっと店長も捕まってしまうのです。
良くない事だと思いました。しかし彼は君を奴隷のようにこき使い続けた報いだと言い放ちました。

車は走り続けました。彼はそれまでの生活を捨てたのだと語りました。
私との生活のために新しい環境を用意したのだと。車は見た事のない幾つもの街を駆け抜けていきます。
夜が明けてやがて車は大きな街に着きました。そこは街と表現するべきものが何十何百も連続していました。
空まで届きそうな大きな建物が連なっていました。更に人がいっぱい歩いているのです。
男性も女性もたくさんいるのです。彼の運転する車が止まるとその人達は立ち止まっていたのに一斉に歩き出しました。
大勢の人が同じ方向に向かって歩いていく様は圧巻でした。私には異様な姿に見えました。

164名も無きAAのようです:2016/05/28(土) 18:44:28 ID:QihcY4Xc0
更にあれほどたくさんの人がいても男性と女性のどちらかなのです。
あれだけ多くの男性もやはり射精すると喜ぶのでしょうか。
黒い服を着込んでいますがあの中には肉棒があるはずです。
あれだけ多くの女性もやはり男性の肉棒を咥えているのでしょうか。
黒い服を着込んでいますがあの中には秘部や胸があるはずです。
車がいくら進んでも大きな建物が続き、止まるたびに大勢の人が横切っていきます。

彼の用意した新しい住まいも大きな建物にありました。マンションというのだと彼が教えてくれました。
そのマンションは海沿いにありました。海というものを聞いた事はありましたが実際に見るのは初めてでした。
どこまでも永遠に水が続いているのだと聞いていましたが水の終端は比較的近くにあります。
マンションの向かいには同じようなマンションや工場が建ち並んでいました。
下を見下ろすと車がびゅんびゅん走り抜けていく道路と灰色の棒が続いています。
灰色の棒を時折長細いものが這うように走っていきます。
彼は手前が首都高、奥が東京モノレールだと順に説明してくれました。
それにこの海は厳密に言えば運河と呼ばれるものだと付け足しました。

165名も無きAAのようです:2016/05/28(土) 18:46:41 ID:QihcY4Xc0
彼との二人だけの生活が始まりました。一日中男性の肉棒を咥える事はなくなりました。
セックスは彼とだけします。彼は朝に仕事へ出掛け夕方に帰ってくると私とセックスをしました。
私はその間彼の本を読んだりしました。彼と暮らすようになってから文字を教えてもらいました。
ひらがなから始めカタカナを学びました。そして漢字を教えてもらいました。
漢字はひらがなやカタカナと比べると種類が多く複雑であるため非常に難しいものでした。
しかし新たに知識を蓄えていく事が楽しかった私は根気よく勉強をしました。
一年ほど経ってようやく多くの漢字を書けたり読んだりする事が可能になりました。
彼が毎朝コーヒーを飲みながら目を通している新聞も読める事が出来るようになりました。

彼には文字や言葉以外の多くの事も教えてもらいました。この世の仕組み。社会構造。経済。倫理。道徳。
生と死についても学びました。母親と父親、妊娠と出産についても教わりました。
私の母親も男性の肉棒を咥えてセックスをして私を妊娠して出産したのです。
生の仕組みはたいへん不思議なものでした。また死というのも不可解なものでした。
前者は今現在私がこうして生活しているので理解が出来ました。しかし後者は違います。
死というものは実感する事が出来ません。死を迎えると虚無だと彼は言います。
何も見えず何も聞こえず誰にも会えず何も感じ取る事が出来ない。全ての終わり。
そう彼が説明すると寂しいものだと私は思いました。そうなりたくはないとも思いました。
生に至るには一つしか方法がないのに死に至るには様々な方法があるのだそうです。
事故であったり病気であったり、色んな要因で死んでしまうのだそうです。
そういえば私も人の死を見た事がありました。あの養成施設の脱走者です。
殴られ爪を剥がされたあと錆びたドラム缶に詰められセメントを流し込まれていました。
あれはきっと死だったのだと彼に言うと彼は何も言いませんでした。

166名も無きAAのようです:2016/05/28(土) 18:48:12 ID:QihcY4Xc0
彼との生活は楽しいものでした。しかし彼も私を外には出してくれませんでした。
それはやはり戸籍がないからです。ノーナンバーである以上、私はこの国に存在していない事になります。
存在するはずのない人間が存在していたらどうなるか、と彼に言われました。外には出られないのです。
戸籍があればいいのに、と私は思いました。母親が出生届を出さなかったばかりに私は外に出られません。
私は望んで戸籍がない訳ではないのに、なんだか不条理だと思いました。
ベランダに出ては運河という海を眺めました。この運河の向こうには本当に終端の見えない海があるそうです。
いつか見てみたいと思いを馳せながら私はそちらの方を見るのでした。

彼は日中仕事をしていましたがマンションに帰ってきてからもパソコンをいつも見ていました。
画面にはグラフと数字が表示されています。彼は株の説明をしてくれましたがその説明は特段に難しいものでした。
どうやら彼はそのグラフと数字を見極める事で別の確立された収入を得ているようでした。むしろそちらこそが年収の大半なのだと。
会社でもいつもチェックしているのだ、と彼は言いました。そうする間にもグラフと数字は変動していきます。
いつか君も挑戦しているといいとどこか楽しそうに話しました。

167名も無きAAのようです:2016/05/28(土) 18:49:13 ID:QihcY4Xc0
ある日、彼が仕事に出掛けている時の事です。私はソファーに座って本を読んでいました。
部屋のインターホンが鳴らされ見に行くと水道の点検だという男が訪ねてきていました。
作業服を来た中年の男は人の良さそうな笑顔で業務を説明しました。
水道の点検を断るよう指示を受けていなかった私は部屋に上がってもらいました。
男は部屋を見渡して君一人なのかいと尋ねたのでそうですと答えました。
すると男の笑顔が消え私に飛びかかってきました。私はソファーに押し倒されました。
男は私とセックスをしました。男は乱暴に私の服を脱がし肉棒を押し込みました。
私はそれを受け止めました。男も男性なのだから射精をすると喜ぶのだと思いました。
しかし男は射精をしても慌ただしく服を着るのみでした。そして男はそそくさと帰って行きました。

彼が帰宅してから私を見てひどく驚きました。そしてすぐに問い詰めました。私はきちんと出来事を話しました。
私は彼に頬を打たれました。じんと痛みました。叩かれるのは久しぶりでした。彼は何度も私を打ちました。
そして私を強く抱きしめました。私にはまだ倫理というものが足らなかったそうです。

168名も無きAAのようです:2016/05/28(土) 18:51:01 ID:QihcY4Xc0
次の転機は十八歳の時です。私も少女の時期を終え大人へと変貌しつつありました。
相変わらず外には出してもらえませんでしたが多くの本を読み知識を蓄積していました。
こうして部屋から出ず家事をして主人の帰りを待つのはまさに専業主婦であると考える事も出来るようになっていました。
その日は彼の仕事が休みの日で、二人で映画を見ていました。映写機で部屋の白い壁に映画を映すのです。

映画が中盤に差し掛かったところでインターホンが鳴りました。彼がモニタで確認すると宅配業者が荷物を抱えて待っていました。
何の荷物だろうと首を傾げながら彼が立ち上がりドアを開けました。するとすぐに宅配業者が彼を突き飛ばし部屋に入ってきました。
そして荷物のように見えたポリタンクのキャップを外して中身を部屋に撒き散らします。異臭のする液体でした。
久しぶりだな、と宅配業者が深く被った帽子を脱いで言いました。それは宅配業者を装った店長でした。どうして、と彼は狼狽します。
出所したのさ、と店長は答えました。お前の居場所を調べさせたのだと。やはりこの女が目当てだったのだなと彼に言いました。

169名も無きAAのようです:2016/05/28(土) 18:52:23 ID:QihcY4Xc0
抵抗すれば火をつけると脅し無抵抗の彼を何度も殴りました。店長が部屋に撒いたのはガソリンでした。彼はひたすらに殴り続けられます。
肩で大きく息をして店長は私を見ました。でっぷりと太っていた店長はいくらか痩せたように見えました。
大人になってしまったな、と悲しそうに店長は言いました。小児愛者は大人になってしまうと興味がなくなってしまうのです。
もう私は店長が好む少女ではなくなっていたのでした。彼は小児愛者であるはずなのに私をずっと好んでいるのだとも気付かされました。

さようならだ、と店長は言いました。火のついたライターを床に落とし部屋を去って行きました。一気に部屋は炎に包まれます。
私の身体も炎に焼かれました。血まみれの彼が叫びました。とても熱く私はのたうち回りました。
水がかけられます。しかし私の全身の熱さと強烈な痛みは消えず意識が遠のいていきました。

170名も無きAAのようです:2016/05/28(土) 18:57:42 ID:QihcY4Xc0
ちょっとカバネリ見るので中断します

171名も無きAAのようです:2016/05/28(土) 19:08:03 ID:I1Y9ol3E0
おい
待ってる

172名も無きAAのようです:2016/05/28(土) 19:51:04 ID:7zBJRUNg0
前半の二話は読者を油断させるためのブラフだったんだな
どれも面白いけど

173名も無きAAのようです:2016/05/28(土) 21:49:20 ID:rsid.5cs0
む、無名ちゃん…無名ちゃん…ウッ


再開します

174名も無きAAのようです:2016/05/28(土) 21:52:21 ID:rsid.5cs0
目を覚ました場所は彼と住むマンションではありませんでした。薄暗い部屋でした。
彼の姿が見えました。少し老けた気がしました。やつれているような気もします。
私はベッドで眠っていたらしく身体を起こしました。手や足を動かしてみてくれと彼に言われその通りにしました。
手と足を動かしてみるときちんと動きます。しかしそれはまるで私自身のものとは思えませんでした。
触ってみるととても巧妙に出来ていますがそれは作り物でした。知識にあった義手なのではと彼に訊きました。
しかし彼の答えは私の予想を遥かに上回るものでした。

店長が部屋にガソリンを撒いて火を付けたあの火事で私は全身にひどい火傷を負いながらも一命は取り留めたそうです。
しかし皮膚は壊死しておりこのままでは死を待つばかりの状態だったそうです。
そのため彼は私の脳データのコピーを取り市販されている量産型アンドロイドに転写しました。
私という人格や記憶はそのままにそれまでの身体からアンドロイドに乗り代わったのです。
覚醒するまでに半年近くかかり焼けただれた身体はとうに腐ってしまったそうです。
私は彼になんとか生かされたのでした。私という記憶を全てきちんと引き継いで新たな身体を手に入れたのです。
身体は腐ってしまいましたがこうして私という人格は健在です。私は生きているのです。
私は彼に感謝しました。

175名も無きAAのようです:2016/05/28(土) 21:58:18 ID:rsid.5cs0
アンドロイドという機械の身体になりましたが本物の人間の身体と遜色なく動く事が出来ます。
むしろ本物らしくするために過度な性能は抑えてあり見た目は完全に人間のようです。
おかげで私はこれまで通りの生活を送る事が出来るようになりました。
まずは歩いたり、コップを持っていたり簡単な動作確認から始めます。
それらがきちんと行われれば走ってみたりボールを投げてみたりしました。
まるで退院後のリハビリのようでもありました。
機械の身体は私の意志にきちんと答え自分の身体も同然のように感じました。
今までどおり食事も出来るしその代償としてごく普通に排泄もします。
リハビリの最後に彼とセックスをしました。機械の身体でも彼としっかりと感じる事が出来ました。
私はこれで完全に元の生活を取り戻したのです。

彼は私を連れて地方へ住まいを変えました。田舎と呼ばれるようなところです。
店長はまた逮捕されたのでもう押しかけられる事はないでしょう。
しかし放火をされ注目を集めてしまった以上はもうあのマンションにはいられませんでした。
もう私は世間体というものを理解する事が出来るほどでした。

176名も無きAAのようです:2016/05/28(土) 22:01:21 ID:rsid.5cs0
新しく移り住むのは東京から遠く離れた四国の海沿いの街でした。
私が店から連れ出された時よりも長く車は高速道路を走りました。
およそ四キロメートルの長さがあるとても大きな吊り橋を渡り長閑な風景の中を進んでいきます。
高速道路を降りて長いトンネルを抜けます。そうするとリアウインドウいっぱいに海が見えました。
太陽の光が当たって水面がきらきらと輝いています。私は助手席から身を乗り出してそれを観察しました。
本当に水ばかりで終端が見えないのです。運河とは違います。これが本物の海というものなのです。
下り坂を降りると道路はすぐ海沿いにまで達していました。その海沿いに小規模な街が広がっています。

ここは自分の生まれた街なのだと彼が教えてくれました。生まれ故郷というものです。
既に両親は他界しており生家も駐車場になって残っていないそうです。
海沿いに車を停めてすぐ近くにまで歩いてみます。砂浜はとても歩きづらいのだと知りました。
波は寄ってきたり去ってきたりそれを繰り返します。それを見ているだけでもどこか安心します。
時折大きな波がやって来て白い波飛沫を起こしました。手ですくってみると冷たい海水が指から漏れていきます。
海はどこまでも青い色を保持しているのにすくった水は透明で不思議なものです。

177名も無きAAのようです:2016/05/28(土) 22:02:22 ID:rsid.5cs0
彼は砂浜に座って本当はこの街が嫌いだったんだ、と話し始めました。
典型的な田舎と言えるこの街には何もない。それが嫌だった。
だから必ず都会に出るのだと幼少時から決め、実際に都会の大学に進んだそうです。
けれど今はこの何もない街に帰ってきたいと思ったのだと。
どうしてだろうね、と彼は訊きました。私は首を傾げました。
きっと君に僕が見た景色を見せてあげたかったんだ、と彼は笑いました。

海沿いの街の数少ない物件に私と彼は住む事になりました。
すぐそばに海が来ていて夜になると波打つ音が聞こえるぐらいでした。
眠る時にその音を聞くと安心して深い眠りに誘われるのです。
私はよく海を見に行きました。そのぐらいなら彼も許してくれました。
どれだけ海にいても日焼けはしませんでした。また汗をかく機能もありませんでした。
人間の身体を見た目も機能もほぼ完璧に再現したこの機械の身体も不要とみなされたものは搭載されていません。
爪は伸びず無駄な体毛もないので処理が必要ないという点ではとても楽なのです。

178名も無きAAのようです:2016/05/28(土) 22:03:35 ID:rsid.5cs0
彼は株取引をやめました。普通に働く事にしたのです。
せっかく田舎に帰ってきたのだから都会とは縁を切ろうという事だそうです。
車もドイツ製のものから国産の軽自動車に変えました。
この田舎町にはこちらの方が似合うよと満足気でした。

海沿いの街を彼と一緒に歩きました。
彼が通った小学校、毎日歩いた通学路、よく遊びに行った公園。
そうやって彼の足跡を辿ったのです。彼をまた少し知る事が出来た気がしました。
生まれ故郷といえば私にもあったはずです。久しぶりにそれを思い出しました。
教育を受けていなかった上に連れ出されるまで地下で過ごしたのでどの街なのかも分かりません。
車に乗せられ養成施設へ連れて行かれる時に見た最初で最後の故郷の流れていく風景も殆ど思い出せません。
最後に私の名前をたった一度だけ呼んだ母親。その母親の顔も、もうぼんやりとしか覚えていないのです。
今になって寂しい気持ちになりました。私は彼の手を握りました。

179名も無きAAのようです:2016/05/28(土) 22:04:48 ID:rsid.5cs0
二十年ほどが経ち、彼が病気になりました。完全治癒が極めて難しい病気でした。
彼は入院する事を断り二人で住む家のベッドで長い時間を過ごしました。
病院に入れば君に会えなくなってしまう。それにもう苦しい思いをしてでも生きようとは思わない。
彼はそう語りました。もう満足なのだ、と本当に幸せそうな顔で言うのです。

私はこれまで以上に彼に世話をしました。もうセックスをする事もありませんでした。
彼は五十代となっていて随分と老け込みました。若い頃の不摂生だなと彼は自嘲気味に笑いました。
私は機械の身体なので容姿は変わりません。十八歳の時から見た目は変わっていないのです。
そのためやはり私はあまり外に出る事は出来ないでいました。買い物は配送が基本でした。
彼だけが老いていき私だけが若い姿のまま置いて行かれるのでした。
同じ時間を過ごしているはずなのに私だけが取り残されたような気がしました。
ずっと一緒にいたのに別々の時間が経過しているような感じがしました。
しかし彼は僕が好きだった姿のままだと言ってくれました。

180名も無きAAのようです:2016/05/28(土) 22:05:55 ID:rsid.5cs0
彼の病状は悪化しいよいよ残された時間は少ないのだと彼は言いました。
いつか彼に教えてもらった死が現実のものになろうとしています。生とは違って死は体感出来ません。
死とは無と同然なのです。そこで全てが終わるのです。その先はないのです。
その虚無に間もなく彼は行ってしまう。どうすれば良いのか分かりませんでした。
色々な事を教えてもらったのにまだ分からない事があるのです。
彼に何かやり残した事はないか、最後にしたい事はと訊きました。
すると彼は首を横に振り何もないよと答えました。君がいるじゃないかと。
せめてと彼の一番の好物を作ると嬉しそうに食べました。私が箸を使って食べさせました。
ゆっくりと咀嚼する彼はあまりにも弱々しく見えました。

静かにしていると波打つ音が聞こえてきます。
窓から海風がふんわりと吹いてきてカーテンを揺らしました。
ありがとう。彼は言いました。君がいてくれて良かった。
君に見守られながら死んでいけるのだから幸せだよ。
そう言って彼は目を閉じました。私はずっと手を握っていました。
フォックス。私は彼の名前を呼びました。しかしもう呼びかけに応じる事はありませんでした。
私はもう動かない彼を埋葬しました。盛った土の上に花を手向けました。
悲しいと思うのに涙は流れませんでした。どうやら涙という機能も不要とされ搭載されなかったようです。

181名も無きAAのようです:2016/05/28(土) 22:06:42 ID:rsid.5cs0
彼は私に見送られて幸せだと言いました。しかし残された私はどうすればいいのでしょう。
私は結局一人になってしまいます。これからは一人で生きていかなければなりません。
彼は株取引をやめたので遺産はそれほど多くはありませんでした。
数年のうちにそれは底をつきそうになってしまいました。
働きたいのですが私にはやはり戸籍がないのです。
戸籍がなければ履歴書を出す事も出来ないのです。

容姿は十八歳のままなのでまた売春婦として働くというのも視野に入れましたがそれは不可能でした。
彼が年老いてセックスをする事がなくなったため長い時間使用しておらずメンテナンス不足だったのです。
私の膣はもう機能しないようでした。

182名も無きAAのようです:2016/05/28(土) 22:08:35 ID:rsid.5cs0
やがて私の身体そのものが機能不良となっていきました。どうやら摩耗のようです。
本物にすら感じたこの身体も機械のものであったと再確認をしました。
定期的なメンテナンスを行わないのならば当然の事です。
思考は正常なのに身体が思うように動かなくなっていきました。
上手く歩けず遂には崩れ落ちるように膝をつきました。
ちょうどその時インターホンが鳴らされました。
きっと配送の業者です。受け取らなければ、と思い這って玄関まで行きました。
業者はそんな私を見てぎょっとした様子で大丈夫ですかと訪ねました。
調子が悪いのですか、と業者が心配してくれたのでいいえ、摩耗だと思いますと答えました。
すると業者の顔色が変わりました。主人は、と訊かれもうだいぶ前に亡くなりましたと返しました。
業者は荷物を渡さず去ってしまいました。どうしてだろうと不思議がっていると数十分後に業者は再び現れました。
しかし背後には何人もの男が控えています。その控えていた男達は私を持ち上げて部屋から運んでいきました。
外にはバンタイプのハイドロライドが停まっており私はそれに乗せられました。男の一人が合図をするとライドは発車します。
彼を埋葬した庭が、一緒に暮らした家が、終端の見えない海が遠ざかっていきます。あっという間に見えなくなりました。

183名も無きAAのようです:2016/05/28(土) 22:10:15 ID:rsid.5cs0
どうして私を連れて行くのですか、と尋ねるとお前が主人のいないアンドロイドであるからだと返答が来ました。
主人のいないアンドロイドが一人で生活する事を禁止する法律が施行されていたのです。
アンドロイドはそもそも人の手助けをする役割を持っており単独の意志で生活する事は許されないのです。
そのため主人を失ったアンドロイドは回収されるか処分されるのだと言います。
しかしそれは人工知能を積んだアンドロイドなどに限るはずです。何故なら私は独立した人格を持っているからです。
本来の肉体は火事で焼けてしまいましたが私という人格はきちんと今日に至るまで健在なのです。
けれどそう伝えてもしかしお前はアンドロイドなのだから法律が適用されるの一点張りなのです。

車内は同じように確保されたアンドロイドでいっぱいでした。
人扱いされず荷台に放られて積まれていきました。
皆が声を上げて抗議をしました。私達は生きている。ここから出してくれ。家に帰りたい。
しかし国直属の執行業者だという男達は取り合いません。
私はもはや身体の自由が効きませんでした。もう動けないのです。
車内に乗せられているアンドロイドは全員もう動けない者達でした。

184名も無きAAのようです:2016/05/28(土) 22:11:16 ID:rsid.5cs0
このライドはどこに向かっているのだと一人が訊きました。
処分場だと男の一人が答えました。お前達は処分されるのだと。
そんなのおかしいじゃないか。一人が声を荒げます。まだ生きているのだぞ。
お前らは人間ではない。男の一人が笑います。
見た目はそのままでメンテナンスをしっかり行えば半永久的に生きてしまう。
そんなものが人間なものか、と嫌悪感を隠さずそう吐き捨てました。

確かにその通りではあると思いましたが私の意志でこうなったのではありません。
ひどい火傷を負ってもう助かるまいとなった時に彼が機械の身体に私の脳データを複写したのです。
その経緯を訴えても男はその本体の身体が死んでいるのならばお前はやはり死んでいるのだと答えました。
それは不条理に思えました。肉体が死んでいても私という人格はずっと一貫して生きているのです。
ならば生きているのと死んでいるの境界線はどこにあるのでしょうか。
私は死んでいないのです。生きているのです。しかし聞き入れてはもらえません。

185名も無きAAのようです:2016/05/28(土) 22:12:43 ID:rsid.5cs0
ライドが白い大きな建物へ入りました。ごみ焼却施設です。
処分場だと男は言っていましたがこれから燃やされるのです。
ライドが停められドアが開かれました。眼下にはごみが溜められた底の深いピットがあります。
横でごみ収集車が荷台を持ち上げていました。斜めになった荷台からごみがピットへ雪崩れ込んでいきます。
ああやって私達も放られるのです。やめてくれ、助けてくれ、私は生きているのだとアンドロイドは口々に叫びました。
しかし男達は気にする様子もなく次々とピットに放り込んでいきます。私も二人に手と足を掴まれ投げ込まれました。

ピットの底は深く下から見上げるとライドが停められていた場所が恐ろしく高く見えました。もう戻れないとも感じました。
生ごみも一緒に放られているのでピットはひどい腐敗臭がしました。付近には同じようなアンドロイドが多く捨てられていました。
頭上からクレーンがやって来て近くをすくっていきました。何人かのアンドロイドがクレーンに挟まれて持ち上げられていきました。
あのクレーンはすくったごみをベルトコンベアーに載せるのでしょう。そのベルトコンベアーの先には焼却炉が待っているはずです。
いわばあのクレーンこそ最終審判なのです。あれに捕まったら焼却炉に連れて行かれるのです。
クレーンが来ない事を祈りました。すぐ近くをクレーンが掴みまたアンドロイドが捕まりました。
助けてくれやめてくれと懇願するもクレーンは無情にも運んでいきます。悲鳴はすぐに聞こえなくなりました。

186名も無きAAのようです:2016/05/28(土) 22:13:42 ID:rsid.5cs0
恐ろしい時間でした。いつ自分が処刑台に上がらされるのかも分からないのです。
しかしピットに落とされてから五時間後、遂に頭上にクレーンがやって来ました。
なんとか逃れようとしましたがもう身体は動きません。呆気なくクレーンに捉えられました。
私の下にあったビニール袋などを掴みクレーンは高く上がっていきます。
そしてベルトコンベアーの上で私を放ちました。なすすべも無く進んでいきます。
その先に真っ赤に燃える火の海が見えました。あれが焼却炉なのでしょう。
そこにあるのは死のはずです。死、無、虚無。全ての終わり。
ものすごい熱気でした。それで私は焼かれるのです。死ぬのです。

187名も無きAAのようです:2016/05/28(土) 22:18:38 ID:rsid.5cs0
私の過ごした四十年ほどが駆け巡っていきます。
彼と二人で暮らした四国の海沿いの街。生まれ故郷。歩きにくい砂浜。寄せては返す波。
彼が通った小学校、毎日歩いた通学路、よく遊びに行った公園。彼のルーツ。
運河のほとりにあったマンション。首都高を走る車と隣の東京モノレール。
都心の摩天楼。信号が変わるたび行進をするスーツ姿の人の波。
多くの人と交わった店。でっぷりと太った店長の毛深い腹。
ベッドとシャワー。口の中に放たれる粘っこい精液。
彼が私を連れ出した時に見たパトカーの赤色灯。
何も分からなかった養成施設。何十もの衝立。
あまりにも恐ろしかった初めて見た大きな空。
目が焼けてしまうと恐怖を感じた太陽の光。
かびと排泄物のにおいが充満した地下。
暗い世界。暗闇の世界。光なき世界。
最後に一度だけ名前を呼んだ母親。
私の名前。

リハ*゚ー゚リ「アイシス」

ベルトコンベアーは進みます。視界を火の海が覆い尽くしました。


リハ*゚ー゚リ生きているか死んでいるかの境界線のようです爪'ー`)y‐

188名も無きAAのようです:2016/05/28(土) 22:20:30 ID:rsid.5cs0
余談ですが今回のは去年の百物語の『縛りお題:登場人物を喋らせない』用でした

189名も無きAAのようです:2016/05/28(土) 23:20:17 ID:nZgDruis0
あとちょっとで抜けた
冗談です乙

190名も無きAAのようです:2016/05/30(月) 21:49:11 ID:heR8bfEo0
乙!
また怖い話かと思ったよ

次で最後っぽいけど怖い話グロい話するときは先にいえよ!絶対だぞ!

191名も無きAAのようです:2016/06/04(土) 17:58:04 ID:bLfC7y560
>>172
5分の2が暗い話だったので明暗明暗明にしようと思ったんですが二つ目に持ってくるのもなぁ…という事で明明暗暗明になりました。

>>190
もうグロいのないです!エロだけです!

192名も無きAAのようです:2016/06/04(土) 18:00:02 ID:bLfC7y560


「デミタスさん」

透き通るような凛とした声がぼくの名前を呼ぶ。
ぼくはゆっくりと声のした方を振り返る。

(゚、゚トソン「はじめまして、ですね」

(´・_ゝ・`)「はじめまして、だな」

ぼくは彼女を愛した。彼女を愛してしまった。彼女もぼくを愛した。ぼくを愛してしまった。
許されない恋だった。認められない関係だった。叶わない愛だった。
それでもぼく達は愛する事をやめなかった。

193名も無きAAのようです:2016/06/04(土) 18:02:20 ID:bLfC7y560


(´・_ゝ・`)また出会うようです(゚、゚トソン


JR総武線津田沼駅から徒歩6分
鉄筋コンクリート造り 築9年
1K 家賃7.1万円
駐車場1.4万円

194名も無きAAのようです:2016/06/04(土) 18:04:24 ID:bLfC7y560
ぼくの趣味は援助交際だ。

勿論、他人に話す事のない秘密の趣味だ。両親や親しい友人にだって話した事はない。
それにぼくが買うのは高校生ばかりだ。公言すればたちまち逮捕され社会的地位を失ってしまうだろう。
ぼくが女子高生ばかり買うのは単純な理由で、まさしく高校生が好きだからである。
それほど女子高生に執着するのは別に自分の高校時代が寂しいものだったからではない。
高校生の頃には同学年の彼女がいたし、それなりに不器用ながら充実した青春を過ごしたつもりだ。

そんなぼくが女子高生に対して特別な魅力を感じ始めたのは大学生となり成人を迎えた頃であった。
高校から大学へと進んだ同年代の女性達は化粧を覚え、酒を知り、人付き合いが上手くなり、大人になっていった。
ぼくも同じで心身ともに大人へ成長していった。時間を共にする女性もいた。しかし次第にぼくは違和感を覚える。
歳を重ねるごとにぼくは同年代の女性に魅力を感じなくなっていった。より大人になっていくと共にはっきりと自覚した。

195名も無きAAのようです:2016/06/04(土) 18:05:42 ID:bLfC7y560
ぼくは女子高生が好きなのだ。そして制服が好きなのだ。
女子高生の中途半端な幼さ。未完成の美しさ。成長途中の子供でも大人でもない未成熟な身体。
彼女達の着る制服の可憐さ。制服は街を彩る。潤いを与える。華となる。
街で、駅で、カフェで、ショッピングセンターで、制服を見かけると目で追うようになっていた。

やがてぼくは女子高生が好きなのだと気づく。半端な幼さを包む身体に触れたいのだと知る。
自分が高校生だった頃には制服なんて何とも感じなかった。スカートの短さこそが気がかりだった。
しかしぼくはもう大人で、高校生との接点はない。何の関係性も持てない。
だからアダルト動画サイトやレンタルビデオ店で女子高生を主題とするものを探す事が多くなった。

言うまでもなく日本は児童ポルノ大国だ。そこらへんに児童ポルノが散乱している。
ゴールデンタイムのテレビ番組で制服を着用したアイドルグループが踊っている。
十代前半の女の子がテレビ・コマーシャルに多く出演している。
でもそれらは偽物なのだ。女子高生を模した偽物でしかないのだ。

196名も無きAAのようです:2016/06/04(土) 18:06:54 ID:bLfC7y560
ぼくは本物の女子高生に触れたかった。そうして二十代の後半に初めて援助交際に手を出した。
当然それは禁止され罰せられる行為であるが、ぼくは欲求を満たせるし相手も金銭を得られる。
互いに求めているものが得られる訳で、罪悪感というものはなかった。

これまで七人の女子高生を買ってきた。続いた子もいたし、続かなかった子もいた。
飽きれば会うのをやめたし、卒業した子は打ち切った。ぼくが求めているのはやはり女子高生なのだ。
人間は必ず年を取る。女子高生も必ず大人になる。だからぼくはその度に会う子を取り替える。
そうしていれば永遠に女子高生の若さに触れられるのだ。そのループから既にぼくは抜け出せずにいた。

だからぼくは買う女子高生に恋愛感情を抱かないようにしていた。愛してしまっても、その子はいずれ大人になってしまう。
ぼくの好きな女子高生ではなくなってしまう。だから金で買える欲求の捌け口としか考えていなかった。
また相手の女子高生達も恋愛など求めていなかった。若い身体を売るのはやはり金が欲しいからだ。
だから事務的なものでしかない。ぼくとしても心置きなく欲求を満たせた。

197名も無きAAのようです:2016/06/04(土) 18:09:00 ID:bLfC7y560
この前まで会っていた子も先月に卒業を迎えた。そしてぼくは新しいパートナーを探す事になった。
今の時代は、援助交際がむしろやりやすい。今の女子高生はほぼ全員がスマートフォンを所持し、無料通話アプリをダウンロードしている。
法規制によって厳しくなっているが、それらの爆発的な普及によって女子高生と大人のゲートはより開かれたようなものだ。

(´・_ゝ・`)「二十分前か」

ぼくはカーナビに表示された時計を見た。地下駐車場に停めたスバル・レガシィを降りる。
今から会うのはぼくにとって八人目となる女子高生だ。掲示板で見つけて無料通話アプリで暫く連絡を取り、ようやく今日に漕ぎ着けた。
ぼくが女子高生と会う時は彼女の住まいから近い駅にしている。しかし最寄り駅ではリスクが高いので付近の大きなターミナル駅が多い。
今日ぼくが選んだのもこの一帯では一番大きなターミナル駅である横浜駅だ。JRだけで一日の乗車人員は四十万人を越えるという。
改札口では人が多すぎるのでぼくは駅前ロータリーを挟んだ向かいにあるヨドバシカメラの前を指定している。
地下駐車場から階段を上がって地上に出る。土休日なので駅前は多くの人が行き交っている。

198名も無きAAのようです:2016/06/04(土) 18:10:09 ID:bLfC7y560
四月九日、土曜日。十五時四十五分。約束の時間まで、十五分前。
女子高生が現れない事だってある。大体は初めての援助交際の前に怖気づいてしまったものだ。
たまに女子高生を騙ってくる者もいるが暫く連絡を取っていると分かる。それほどに経験がついてきていた。
今回会う女子高生も援助交際は初めてだと言っていた。だから少し心配になってしまう。
それに今回の女子高生は自身の写真を送付する事を拒んだ。それ故に顔が分からない。
会えるだろうか、そう思いながら再び腕時計を見ると

「デミタスさん」

透き通るような凛とした声がぼくの名前を呼ぶ。
ぼくはゆっくりと声のした方を振り返る。

(゚、゚トソン「はじめまして、ですね」

(´・_ゝ・`)「はじめまして、だな」

無事にぼく達は初対面を果たした。

199名も無きAAのようです:2016/06/04(土) 18:10:49 ID:gl/2GwQk0
やった!オジサン今日も抜き抜きしちゃうぞぉ

200名も無きAAのようです:2016/06/04(土) 18:12:50 ID:bLfC7y560
彼女の名前はトソンという。土曜日だが彼女には制服を着用して来てもらっている。
ぼくは制服こそが好きなので、女子高生と会う時は必ず制服で来てもらう。制服でなければ価値は見出だせない。
土曜日ではあるが、街を見渡せばわりと制服姿の女子高生はいるものだ。部活だったり、補習だったり、色々ある。
ぼくはといえばスーツを着ている。制服姿の女子高生と歩くのならば、スーツを着ていれば父親に見えるからだ。
私服姿の青年男性が女子高生と歩いていれば怪しまれるかもしれないが、スーツならば堂々と街を歩ける。
まだ三十代のぼくは年齢的には女子高生の父親には少し若すぎるが、親しい間柄からは老け顔だと揶揄されているぐらいなのでちょうど良い。

(゚、゚トソン「大人っぽい方なんですね」

(´・_ゝ・`)「はは、よく言われるよ」

二人で地下駐車場へと降りる。彼女を助手席に乗せ、車を出庫させる。

(´・_ゝ・`)「それに君も思っていた以上に大人っぽいね」

無料通話アプリで連絡を重ねる内に感じた印象は随分と礼儀正しいというものだった。
写真の送付は断られたので顔は分からないが真面目なタイプの、むしろ性的なものとはどこか疎遠な子を想像していた。
顔合わせをした結果、やはりイメージ通りだったとぼくは思う。トソンはそういう性的なものを感じさせない。むしろ清楚な印象を与えられる。

援助交際に手を出す女子高生というのは背伸びをしている、言うなれば遊んでいるな、という子が多い。
化粧を覚えスカートは短く折って、性的な誘惑の多い子ばかりだ。髪も爪も本来とは別の色をしている。
そもそも援助交際をするのも金が欲しいからで、一般的な女子高生の思考とは一段階違うものである。

201名も無きAAのようです:2016/06/04(土) 18:15:27 ID:bLfC7y560
トソンはそういうぼくがこれまで買ってきた女子高生達とは逆のタイプだった。
髪は肩あたりで綺麗に切り揃えられ、全く染めていない。スカートは折り曲げず規定そのものだ。
制服は清潔で学校指定の鞄にはアクセサリーの一つもない。眼鏡でもかけていればクラスに一人はいる優等生だろう。
何より彼女の言葉遣いと凛とした話し方は育ちの良さすら感じさせる。無料通話アプリで感じた印象そのままだ。
ましてトソンの通う高校は中高一貫で県内でも屈指の私立のお嬢様学校なのだ。

(゚、゚トソン「そんな事ないですよ」

(´・_ゝ・`)「いやいや、正直驚いたぐらいだ」

車は地下駐車場を出る。向かうのはぼくが長年愛用しているラブ・ホテルだ。
建物一階に設けられた屋内駐車場から入り口に直結している上に、基本的に無人対応となっている。
何より重要なのは制服姿の女子高生を連れ込んでも事実上放任されるという点だ。これが一番大きなポイントだろう。
普通のラブ・ホテルでは制服姿の女子高生などまず入店を断られる。しかしこの店ではそれがずっと黙認されているのだ。
そのため援助交際をする者の間では知る人ぞ知る名所となっている。フロントで自分と同じように女子高生を連れる男性を何度か見かけている。

(´・_ゝ・`)「援助交際は初めてなんだよね」

(゚、゚トソン「あ、はい」

トソンは少し緊張しているようだった。初めてなのだから、無理もないだろう。
初対面の男の車に乗っているのだから尚更だ。そわそわしているのを感じ取れる。むしろトソンの初々しさは処女すら連想させた。
援助交際に手を出すのだからそれは考えられない。しかしこんな清純そうな子でもしっかりと男性とセックスをするのだと感心すらしてしまう。
こうやって車でラブ・ホテルへと向かう間、話す子もいればずっとスマートフォンを操作している子もいる。

202名も無きAAのようです:2016/06/04(土) 18:17:01 ID:bLfC7y560
(´・_ゝ・`)「あまり不安にならなくても大丈夫だよ。 すぐに信頼してくれなんて言えないけれど」

(゚、゚トソン「あ、いえ。 モララーさんなら信頼しても大丈夫だなって、LINEで感じました」

(´・_ゝ・`)「そうかい?」

(゚、゚トソン「なんだか誠実そうだなって」

援助交際を持ち掛けたぼくが誠実という印象を持たれるなどと、考えなかった。
確かにぼくは普段はごく一般的な会社員だ。普通に仕事をして普通に生活している。
それに援助交際という特殊な趣味は隠して生きている。しかしそれは他の男達だって同じはずだ。
理由はどうであれ公になれば罪に問われる行為なのだ。

(´・_ゝ・`)「着いたよ」

首都高湾岸線を走る数十分のドライブが終わり、ラブ・ホテルに着く。屋内駐車場に車を停めてフロントに入った。

(゚、゚トソン「へぇ、こうなっているんですね」

空室パネルを見てトソンが驚く。

(´・_ゝ・`)「ラブホは初めてなのかい?」

(゚、゚トソン「はい、どんなところなのか気にはなっていたんですけど」

(´・_ゝ・`)「光がついている部屋が空室で、消えている部屋は使用中なんだ」

(゚、゚トソン「へぇ…」

203名も無きAAのようです:2016/06/04(土) 18:18:36 ID:bLfC7y560
このラブ・ホテルはバリエーションに富んでいる。
オーソドックスな部屋からプールがある部屋、アンティーク調の部屋、和風の部屋、診察台のある部屋、壁いっぱいに水槽のある部屋など様々だ。
最初のうちはオーソドックスな部屋を選ぶが慣れてくれば女子高生の好きな部屋を選ばせてやったりする。
ぼくは一般的な部屋のボタンを押す。エレベーターに乗り込んで部屋のある階へ上がる。
エレベーターのドアが開くと床に設置された光る矢印が出迎える。点滅する誘導矢印は目的の部屋まで続く。

(゚、゚トソン「すごく分かりやすいシステムですね」

(´・_ゝ・`)「初めてでも迷わないようになっているんだよ」

部屋に入って、トソンは部屋を見渡した。普通のベッドなんですね、と感想を言う。
それから行き場がないようだったのでベッドに座っていて良いと声をかけた。
トソンはまだ緊張した面持ちでベッドの端にちょこんと座る。ぼくは先にシャワーを浴びると告げてスーツを脱ぐ。
レディファーストなのではと思われるが相手が先に入ればぼくを待つ間に寒い思いをするかもしれない。これはぼくなりの心遣いなのだ。

ぼくは鞄から財布だけ取ってシャワーへ向かう。こればかりは仕方のない、盗難のリスクを避けるためだ。
ホテルで男が風呂に入った途端に財布だけ抜き取って逃げ帰る、そういう悪意を持った子はどうしても存在する。
だから初めての子の時は財布を必ず風呂に持ち込むし、報酬も後払いだ。これは徹底している。
トソンは無縁そうだが油断は禁物なのだ。用心するに越したことはない。

204名も無きAAのようです:2016/06/04(土) 18:20:34 ID:bLfC7y560
シャワーを出て、入れ替わりでトソンが入る。ぼくはタオルだけを腰に巻いて、座って待つ。
テレビを見る訳でもなく、スマートフォンを見る訳でもない。退屈な時間でもない。
壁を挟んだ向こうからシャワーの音だけが聞こえる。間もなく彼女に触れる事が出来る。
今日はどうしようかと考える。この時間は退屈でも無駄でもないのだ。

やがてシャワーの音がやみ、トソンが出てくる。彼女はきちんと制服を着ている。
これは制服が好きなぼくが必ず指定するのだ。裸になってしまえばただの子供なのだ。

(゚、゚トソン「シャワーを浴びてすぐ制服というのは、少し変な気がします」

(´・_ゝ・`)「ごめんね、でもこれだけは譲れないんだ」

(゚、゚トソン「モララーさんは本当に制服が好きなんですね」

普通の女子高生ならば気持ちが悪いと感じるだろう。援助交際に手を出す子はこういう要望にも慣れていたりする。
わざわざ女子高生を買う大人など、制服が好きか未成熟な幼い身体が好きかのどちらかが多い。
トソンはそういう様子ではなく、不思議がっているようだった。

(´・_ゝ・`)「まだ、緊張してるかい?」

ベッドに座ったトソンの肩に手を置く。華奢な身体つきだ。

(゚、゚トソン「はい。 でもシャワーを浴びたら少し落ち着きました」

(´・_ゝ・`)「良かった」

205名も無きAAのようです:2016/06/04(土) 18:22:28 ID:bLfC7y560
そのまま顔を近づける。トソンも目を閉じた。柔らかい唇が重なる。
何度かキスを交わしてから舌を絡ませる。トソンは健気にそれに応じた。
顔を離すとまだ舌を出したままのトソンがとろんとした目でぼくを見上げる。

(´・_ゝ・`)「キス、好きなの」

(゚、゚トソン「はい、好きです」

舌を交わらせてたっぷりとキスをする。トソンもぼくの背中に手を回す。
緊張は解けただろうか。

(゚、゚トソン「制服、触りますか?」

(´・_ゝ・`)「あぁ」

トソンの身体を包む制服に触れる。紺色を基調としたブレザータイプの制服だ。
プリーツ・スカートも同じ色で統一されている。シンプルではあるが洗練されている。
澄んだ色のストライプのネクタイが特徴的だ。

(´・_ゝ・`)「いいね、この制服」

(゚、゚トソン「私も結構気に入っています」

インターネットで何でも買える現代では女子高生の着ていた制服すら売っている。
顔を晒す事なくそういったものが手に入ってしまうのだ。一昔前と比べると便利になったものだと思う。
しかしぼくとしては、制服は現役女子高生が着ていなければ価値はない。卒業後のOBが着てもそれはコスプレの域を出ない。
女子高生が常日頃着ているからこそ、真の価値が生まれるのだ。

206名も無きAAのようです:2016/06/04(土) 18:24:38 ID:bLfC7y560
(´・_ゝ・`)「じゃあ、脱がすよ」

ぼくは制服を完全に脱がしたりはしない。あくまではだけさせる程度だ。
行為の最後まで制服を脱がしてしまう事はない。嫌がる子もいるので、あらかじめ承諾した子のみを買う。
ブレザーを脱がす。丁寧にアイロンがかけられたシャツが現れる。
制服を愛でる時も良いがゆっくり時間をかけて脱がしていく時間も至高のものだ。
真っ白なシャツのボタンを一つ一つ外していく。宝箱を開ける時のような高揚感がある。

(´・_ゝ・`)「胸大きいんだね」

(゚、゚トソン「そんな事、ないです」

ボタンを全て外したシャツをめくる。下着に包まれた豊かな胸が出迎える。
シャツの上からでも分かったがトソンの胸は同年代の中では大きい部類だろう。
包み込むようにその胸を手で覆う。あまりの柔らかさについ顔がほころぶ。
手で弄ぶとトソンが小さく声を漏らす。見れば手で口元を抑えていた。

(-、-トソン「ま、まだやっぱり恥ずかしいですね」

ぼくの視線に気づいたトソンが弁解する。可愛らしい仕草だった。
別にぼくは処女崇拝者ではないが、やはり彼女は処女を連想させる。
もっと彼女が喘ぐところを見てみたい、どんな声を出すのか聞いてみたい、そんな欲望に駆られた。
トソンをゆっくりとベッドに倒す。そして右手だけを下半身に持っていく。
プリーツ・スカートをめくると可愛らしい下着が見える。上下できちんと揃えられている。
するすると下着だけを脱がす。プリーツ・スカートはそのままだ。
スカートだけを残して秘部が露わになる。このギャップがたまらなく好きだった。

207名も無きAAのようです:2016/06/04(土) 18:26:11 ID:bLfC7y560
(゚、゚トソン「こういうの、好きなんですか」

(´・_ゝ・`)「あぁ。 こういうのがいいんだ」

(゚、゚トソン「変態さんですね」

処女すら連想させる風貌とは裏腹にトソンの秘部はすっかりと開発されている。
指を入れてトソンの反応を確かめる。トソンは小さく喘ぐ。
まだ恥ずかしさが残っていて、口元に手を当てて堪えている。
ぼくは意地悪がしたくなる。トソンを困らせたくなる。
わざと音をたてて激しく指を動かしてやる。
たまらずトソンは声をあげる。それは可愛らしいものだった。
やがて小刻みに震えてトソンは静かに達する。
悲鳴のような小さい喘ぎ声が一際大きく部屋に響いた。
指を離してもトソンの息は荒いままで、呼吸を整えるのに時間が必要だった。

(゚、゚トソン「…デミタスさん、意地悪なんですね」

(´・_ゝ・`)「君の反応が可愛らしいものだったからね」

(゚、゚トソン「じゃあ今度は私が意地悪をします」

トソンがぼくの腰のタオルを優しく取った。
既に充血した肉棒はぴんと上を向いている。
元気ですね、とトソンは笑ってそれを愛おしそうに撫でた。
トソンの細い指に触れられるたびに肉棒は小さく跳ねる。
ぼくが床に立ち、ベッドの上でトソンが四つん這いになる。

208名も無きAAのようです:2016/06/04(土) 18:27:44 ID:bLfC7y560
(゚、゚トソン「いいですか」

(´・_ゝ・`)「あぁ」

トソンの舌が亀頭に触れる。舌でゆっくりと先端を濡らしていく。
やがて唇で包み込むように優しく肉棒を咥える。
何度か時間をかけて亀頭を行き来する。
そのまま徐々に根本の方へ沈み込ませる。
限界まで沈んでから、また頭を持ち上げる。
ぼくは感嘆の声をあげる。それは女子高生には上手過ぎた。
フェラチオを覚えたばかりの一般的な女子高生とは違う。
勢いに任せて激しくするだけの風俗嬢とも違う。
ねっとりとしたトソンのフェラチオは恐らく中年男性仕込みのものだ。
性欲有り余る同世代とのセックスでは会得出来ないだろう。
じっくりと時間をかけて肉棒を咥える。激しくせずしっかりと吸い付いている。
舌が亀頭を舐めまわし手はと殆ど使わずにぼくの腿に添えられている。
確実にトソンのそれはぼくを絶頂に導きつつあった。
その事実に気づいて随分とぼくは驚いた。

(´・_ゝ・`)「トソン、ちょっと待ってくれ」

(゚、゚トソン「はい」

トソンが肉棒から唇を離す。ねっとりとした唾液が糸をひく。

209名も無きAAのようです:2016/06/04(土) 18:28:59 ID:bLfC7y560
(´・_ゝ・`)「少し休憩しよう」

(゚、゚トソン「もしかしてデミタスさんいきそうですか」

(´・_ゝ・`)「もしかしなくてもだ」

(゚、゚トソン「じゃあだめです」

今度は私が意地悪をすると言ったじゃないですか、そう言ってトソンはまた肉棒を咥える。
ぼくは我慢出来ない事を悟った。快感のあまり肉棒に神経が集中していく。
もうこのまま出してしまいたいと思ってしまった。そう考えてから絶頂はすぐにやって来た。
ぼくが射精するとトソンは更にゆっくりと頭を上下させた。精液が残らないように強く吸う。
口の中に放たれた精液をこぼしてしまわないように慎重に肉棒から唇を離す。
別にこちらが指示する訳でもなくトソンは一思いにそれを飲み込んだ。

(゚、゚トソン「あ、飲んでしまって良かったんでしょうか」

(´・_ゝ・`)「あ、あぁ」

(゚、゚トソン「それにしてもたくさん出ましたね」

トソンがぼくを見上げて微笑む。そしてまた肉棒に唇をつけて吸う。

(´・_ゝ・`)「まさか口でいくとは思わなかったよ」

(゚、゚トソン「これでおあいこですよ」

清純そうに見えてトソンの技量は相当のものだ。女子高生としては成熟しすぎていぎる。
どうやってトソンはそれを身につけたのだろう。どんな男性関係を経てここまで成長したのだろう。
訊いてみたいと思ったがそれは憚れた。ぼくはトソンを一時的に買っているに過ぎないからだ。

210名も無きAAのようです:2016/06/04(土) 18:30:25 ID:bLfC7y560
それから少し時間をおいてトソンとセックスをした。
トソンはまた肉棒を吸って大きくしてから慣れた手つきで避妊具を取り付けた。
左手を添えて右手で無駄のない動きで避妊具をするすると根元の方へ伸ばしていった。
避妊具の装着を確かめてから唇を重ねてトソンはベッドに横たわりぼくを待つのだ。
きちんと教育されている。トソンの性に対する方面を教育した者の影が見え隠れする。
トソンに覆いかぶさっている時も彼女は背中に腕を回して足を絡ませた。
本当に身体を預けるだけの女子高生も多い。いわゆるマグロだ。
それに対してトソンはセックスに積極的だった。
むしろどうすれば男が喜ぶのかに成通していると思った。
一度射精しているというのにぼくはほどなく絶頂を迎える。
避妊具越しのトソンの中にたっぷりと射精する。
ぎゅっと身体を抱きしめながらトソンはそれを受け止めた。

(゚、゚トソン「いっぱい出ました?」

(´・_ゝ・`)「いっぱい出たね」

肉棒を引き抜くとすぐにトソンが取り外しにかかった。
避妊具を指で吊るすと精液がたっぷり溜まっている。

(゚、゚トソン「本当にいっぱい出ましたね」

(´・_ゝ・`)「二回目なんだけどな」

(゚、゚トソン「すごいですね」

(´・_ゝ・`)「普段はこんなにいかないなぁ」

211名も無きAAのようです:2016/06/04(土) 18:32:52 ID:bLfC7y560
トソンに報酬を払い互いにシャワーを浴びて部屋を後にする。
出口で料金を清算するとドアが解錠されて外に出られるようになる。
屋内駐車場に停めてあったスバル・レガシィに乗り込んでトソンをまた横浜駅に送る。
もう外は暗くなり始めていてヘッド・ライトを点灯させた。

ホテルを出てすぐに首都高へ合流する。全線片側三車線の湾岸線は流れが良い。
羽田線への分離を過ぎると羽田空港の中央を突っ切る。トンネルの上を飛行機が横切って行く。
多摩川をくぐり浮島ジャンクションを通過すると川崎と横浜に跨る人工島に入る。

ぼくはトソンと学校の話をした。学校生活が楽しいかなどといった内容だ。
女子高生と流行りの話をしようと思ってもそれは難しいだろう。
話題のお笑い芸人ぐらいならばついていけるがそれ以外の流行りは難しい。
女子高生というのはもはや別の人種なのではと思わされるほど自分達の世界を持っている。
そこに三十代の男性が立ち入るのは極めて困難な事なのだ。いくら女子高生が好きでもそれは大変な事だ。
まして彼女達から見れば三十代男性はおじさんのカテゴリに振り分けられる事すらある。
更にトソンとはまだ今日初めて直接会ったほどなので当り障りのない程度にしておく必要がある。

しかしトソンは行きと比べて緊張は解けたようで楽しく会話が出来るようになった。
トソンの通う学校は市内の私立校でレベルも高い。トソンによく合っていると感じた。

(´・_ゝ・`)「ほら、右手が横浜だよ」

212名も無きAAのようです:2016/06/04(土) 18:34:57 ID:bLfC7y560
大黒ジャンクションを過ぎて湾岸線は横浜ベイブリッジに差し掛かる。
右手に見えるのがみなとみらいエリアの夜景だ。
横浜ランドマークタワーや大観覧車などが見渡せる。
みなとみらいエリアは夜景が綺麗だと有名だがその通りだ。
狩場線に入るために左車線に移り制限速度そのままで走る。

(゚、゚トソン「ベイブリッジから見る横浜ってこんなに綺麗なんですね」

横浜ベイブリッジを渡り終えてすぐに狩場線へ分岐する。
いったん狩場線に入り横羽線に移って関内などの中心地を過ぎると横浜駅へのランプに到達する。
速度を落として一般道への坂を降りていく。横浜駅東口のランプで降りて地下広場へ入る。
栄えている西口と比べて東口の方は車も人も少ない。相鉄沿線に住んでいるというトソンは車を降りた。

(´・_ゝ・`)「また、いいかな」

ぼくは名残惜しさを感じていた。
女子高生を買うのは八人目だが、トソンのようなタイプは初めてかもしれない。

(゚、゚トソン「はい、お待ちしています」

そう微笑んでトソンは人混みに消えていった。



ぼくの住まいは津田沼にある賃貸マンションだ。
津田沼という地名はよく誤解されやすいが習志野市の中にあって単独の市ではない。
スバル・レガシィを所有しているが職場は錦糸町にあって毎朝総武線に乗って通勤している。
職場に駐車場はないし千葉からの都心方面は道路事情があまり良くないのもあって朝は渋滞するのだ。
賃貸マンションは駅から近いし駅前の店舗で買い物は事足りるが、それでもぼくは車を購入した。
それには訳があり車を所有していると援助交際はとても円滑に進める事が出来るからである。
車は独立した空間であり周囲の目から逃れる事が出来る。
ぼくの愛用するラブ・ホテルは車で直接乗り入れる事も可能だ。
女子高生の送迎さえ注意すれば他人の目を気にしなくて済む。
援助交際とはそうやって目立たないように行うものだ。

213名も無きAAのようです:2016/06/04(土) 18:36:16 ID:bLfC7y560
ぼくはやはりまたトソンに会いたいと思っていた。
清楚で可憐な女子高生。しっかり仕込まれた性技。
本来は共存しないものをトソンは持ち合わせている。
興味があった。普通の女子高生とは少し違うトソンに興味があった。
育ちの良さを感じさせる話し方とスカートを折り曲げず化粧もしない姿は優等生そのものだ。
それなのに援助交際に手を出し、更に恐らく年上の男に性技を仕込まれている。

ぼくはトソンにまた会いたいと連絡をした。あれからも断続的にメッセージのやり取りをしていた。
本当は金で若い身体を買っているだけなので用がある時だけ連絡しても良いのだがなるべく普段からメッセージのやり取りをするよう心がけている。
トソンは快諾して日時の打ち合わせをした。また土曜日の横浜駅で待ち合わせをする。

住まいから横浜へは東関東自動車道と首都高湾岸線を使う。賃貸マンションの最寄りインターチェンジは谷津船橋で数年前に新設されたものだ。
付近にはららぽーとTOKYO-BAYをはじめとした大型商業施設があり増加する来店客に対応するべく後付で建設された。
実際に近くの交差点は土休日になるとすさまじい渋滞を引き起こして問題になっている。
住まいからは本当は京葉道路の方が近いのだが横浜方面に出るのならば湾岸線経由の方が圧倒的に便利だ。

214名も無きAAのようです:2016/06/04(土) 18:38:10 ID:bLfC7y560
四月二十三日、約束の日にぼくは湾岸線で横浜へ向かう。
台場から大井を結ぶ東京港トンネル近辺が少し渋滞していたが抜けると流れは一気に良くなる。
アクアラインの渋滞情報を横目に浮島を過ぎ横浜ベイブリッジを渡る。
地下駐車場に入れるため横浜駅西口のランプで降りて一般道に出る。

今日もぼくはスーツだ。普通に振る舞っていれば怪しまれる事はない。
また地下駐車場に車を停めて地上へ出た。
ヨドバシカメラの入り口前のベンチにトソンは既に座っている。

(´・_ゝ・`)「やぁ」

(゚、゚トソン「こんにちは」

周囲の人に悟られないよう自然を装ってトソンを連れ出す。

(´・_ゝ・`)「また会ってくれてありがとう」

(゚、゚トソン「いいえ、構いません」

トソンは今日もきちんと制服を来ている。
特に化粧もせず背伸びをしている訳でもない。
本当に援助交際とは無縁の真面目な女子高生に見える。

(´・_ゝ・`)「じゃあ行こうか」

車に乗り込んで出庫させる。トソンは助手席で姿勢を正して座っている。
いつもラブ・ホテルに向かう時にはこうして女子高生を助手席に座らせるがこれほど行儀よくしているのも初めてだ。
首都高に入り湾岸線を使ってラブ・ホテルまで三十分ほどのドライブをする。

215名も無きAAのようです:2016/06/04(土) 18:42:06 ID:bLfC7y560
(゚、゚トソン「あの、一つ訊いてもいいですか」

(´・_ゝ・`)「なんだい」

鶴見つばさ橋を渡っているところでトソンが切り出した。
大黒を過ぎてしまうと東扇島までランプもなく特にカーブもない。
勾配はあるものの殆ど直線で三車線の走りやすい道が続く。

(゚、゚トソン「失礼な事かもしれないですが、デミタスさんは女子高生が好きなんですよね」

(´・_ゝ・`)「あぁ、そうだよ」

(゚、゚トソン「こうして女子高生を買う事はもう長く続けているのですか?」

(´・_ゝ・`)「そうだね、もう十年近くになるかな」

(゚、゚トソン「十年」

(´・_ゝ・`)「もう随分と長いだろう。 だがやめられないんだ」

下り坂に差し掛かったところで追越車線に入りアクセルを少し踏み込んで三台ほど連なっていた車を追い越す。
バック・ミラーに白い光が高速で近づいてきたので走行車線に戻るとAudi・A1が追越車線をかっ飛ばしていった。

(゚、゚トソン「きっかけってなんだったんですか」

(´・_ゝ・`)「大人になって、だんだん自分は女子高生が好きなんだって自覚していったんだ。 
      はじめは女子高生を模したもので満足しようとしていたんだけど我慢出来なくなった、本物が欲しかったんだ」

(゚、゚トソン「それで援助交際を始めた」

216名も無きAAのようです:2016/06/04(土) 18:45:29 ID:bLfC7y560
(´・_ゝ・`)「そう。 勿論それは犯罪だし、罰せられる事だと理解はしている。
      だけどそうする事でようやくぼくは満足出来るようになったんだ」

(゚、゚トソン「なんというか、大変ですね」

(´・_ゝ・`)「そうだろう、特殊な性癖を持つと大変だ。 ぼくも普通の趣向だったら楽だったのにと思う事もあるよ」

(゚、゚トソン「でもデミタスさん、普通にすごく真面目な方に見えます」

(´・_ゝ・`)「そりゃあどんな変態も普段は真面目に仕事をして社会に溶け込んでいるのさ」

(゚、゚トソン「ふふ、面白いですね」

ぼくは煙草を吸う習慣はないがエチケットとして消臭剤を車内に設置している。
三十を過ぎてから体臭が気になるようになったのだ。認めたくないが加齢臭というものの類だろう。
十代や二十代と比べて三十代に入ると一気に身体は老いへと進んでいく気がする。
体力はなくなるし一晩たっぷり眠っても疲れが取れにくい。
オール・ナイトで遊ぶ事などもう不可能だろう。

(゚、゚トソン「すいません、変な事を訊いてしまって」

(´・_ゝ・`)「いいや、いいんだ」

歳の離れた少女と何か話せるのならばぼくの過去の話など喜んで提供する。
まず女子高生が好きで援助交際を十年以上続けている事など普段は誰にも言えない。
女子高生にならば隠す必要もないし今更取り繕って格好つける必要もさほどないだろう。

(´・_ゝ・`)「ぼくも君に訊いてみたい事があるんだ」

(゚、゚トソン「いいですよ」

217名も無きAAのようです:2016/06/04(土) 18:50:39 ID:bLfC7y560
(´・_ゝ・`)「だけどもう着いてしまうね、続きは帰りかな」

左から羽田線が合流して交通量が増える。
間もなく都心部に入る本線料金所に到達するがその直前のランプで湾岸線を降りる。
そこから行きつけのラブ・ホテルはものの数分だ。
工場群と住宅街のちょうど境界線の辺りに建っている。
周囲には高い壁が張り巡らされ中に入るとすぐに駐車場になっている。
建物自体は毳々しい感じはなくむしろ洗練されたシンプルなデザインだ。

ぼくとトソンは二度目のセックスをする。
やはりトソンのフェラチオはねっとりと吸い付くもので女子高生にしては完成されたものだ。
今度は暴発してしまわないようにぼくは気をつける。
制服に包まれた瑞々しい身体を撫でてぼくは更に勃起する。
若い身体に制服を身につけさせたままのセックスは最高だ。
制服をはだけさせてするセックスは最高だ。
ぼくは長い射精をした。

時間をおいてからもう一度セックスをした。
もう三十を過ぎたしぼくもセックスは一日に一回が基本だ。
だけどトソンは別だった。何度でも彼女と交わりたいと思った。
トソンは嫌な顔せず受け入れた。報酬を倍にすると申し出たがトソンはそれを丁重に断った。

(゚、゚トソン「ホテルのシャンプーって不思議ですよね」

(´・_ゝ・`)「そうかい?」

(゚、゚トソン「リンス入りシャンプーってあるじゃないですか。 どうして勝手に混ぜちゃうのか不思議で」

(´・_ゝ・`)「リンスインシャンプーってやつだな」

218名も無きAAのようです:2016/06/04(土) 18:53:53 ID:bLfC7y560
(゚、゚トソン「はい、それって横着じゃないですか。 きちんと別々にしてほしいものです」

(´・_ゝ・`)「君がそれほど強く言うのは珍しいね」

(゚、゚トソン「髪は昔からしっかりするべきだと思っていまして、あれは許せません」

(´・_ゝ・`)「はは、これは参った」

このラブ・ホテルはボディソープとリンスインシャンプーの二つが設置されているだけだ。
出来るならきちんと分かれているホテルを選びたいが女子高生を連れ込む事の出来るラブ・ホテルはここぐらいしか知らない。

清算を済まして駐車場を出る。まるで異世界のような非日常空間が広がるラブ・ホテルから一歩外へ出てしまえばそこは日常だ。
駐車場の向こうには首都高羽田線と海岸通りが走っていてどちらも車の往来がひっきりなしに続いている。
あの外は日常だ。しかしぼくもトソンも日常に帰らなければならない。

(´・_ゝ・`)「行こうか」

車に乗り込んで駐車場から出る。
ラブ・ホテルから出てくると興味津々といった様子で顔を覗き込んでくるドライバーもいるので車の往来が完全に途切れてから道路に出る。
また首都高湾岸線に入り横浜を目指す。ちょうど本線料金所を越えたばかりのところでどの車も元のペースを取り戻そうとスピードを上げている。

(´・_ゝ・`)「行きの話の続きをしようか」

(゚、゚トソン「次はデミタスさんが私に訊く番でしたね」

(´・_ゝ・`)「あぁ」ぼくはやんわりとアクセルを踏む。「どうして君は援助交際をしようと思ったんだい」

トソンは少し考えたのでぼくは付け足した。

(´・_ゝ・`)「君はとても真面目な生徒に見えるし、実際にそうだと思う。 援助交際に手を出すような子には見えないんだ」

援助交際に手を出すのは背伸びをしている子だ。お金が欲しい子。手っ取り早く稼ぎたい子。寂しい思いを抱えた子。
落ち着いた物腰と丁寧な話し方をするトソンは大人びて見せる。しかしそれは援助交際に手を出す女子高生とのは違う。
トソンは本来援助交際とは無縁の、むしろ真逆なところにいるであろう人間なのだ。

219名も無きAAのようです:2016/06/04(土) 18:56:30 ID:bLfC7y560
(゚、゚トソン「そうですね」

トソンは頭上のトンネルを横切るANAの飛行機を見ていた。

(゚、゚トソン「なんといえばいいか…」

(´・_ゝ・`)「いや、言いたくないのならば無理に言わなくてもいいんだ」

(゚、゚トソン「でも、私はデミタスさんの話を訊いたのにそれでは不公平になってしまいます」

(´・_ゝ・`)「いいんだ、ぼくは話したいから話したんだ。 君がいつか話したくなったら話してくれればいい」

(゚、゚トソン「すみません」

料金所の閉鎖しているゲートが赤く発光している。点滅して注意を促している。

(´・_ゝ・`)「ただこれだけは訊きたかったんだ、君は誰かにこれを強いられている訳ではないよね?」

(゚、゚トソン「それは違います、自分の意思です」

トソンはきっぱりと断言した。先程のように言い淀む事はなかった。
こればかりはぼくは安心した。援助交際をしている女子高生の中に親やそれに近い存在からそれを強いられている場合があるのだ。
金銭的な事情があり稼いでくるように言われて仕方なく援助交際をしている子は少なからず存在する。ぼくはそれを買いたくはない。
ぼくの女子高生が好きだという趣味は金で買って達成されるものだが相手のきちんとした同意がなければいけないのだ。
それはぼくのポリシーだと思う。どのみち犯罪ではあり社会的に糾弾され罰せられる事には間違いない。
それでもぼくは自分の意思で援助交際に手を出す子のみを買いたいのだ。
ぼくは女子高生が好きだという性癖を満たせるし相手は一時的に身体を自由にさせ金を手に入れる。
どちらも利益がありいわゆるウインウインの関係というものだ。援助交際はそうあるべきだとぼくは思っている。

220名も無きAAのようです:2016/06/04(土) 18:58:24 ID:bLfC7y560
(´・_ゝ・`)「良かった、安心したよ」

(゚、゚トソン「その、なんというか、あれですね」

(´・_ゝ・`)「なんだい」

(゚、゚トソン「当てつけ、です」

(´・_ゝ・`)「当てつけ」

(゚、゚トソン「ええ」

予想しなかったワードにぼくは考える。

(´・_ゝ・`)「それは、お父さんやお母さんかい?」

(゚、゚トソン「いいえ、そうではありません。 両親と仲が悪い訳ではなかったのです」

(´・_ゝ・`)「そうか」

それ以上はもう踏み込むべきではないと思った。ただ当てつけ、という言葉は引っかかった。
仲が悪い訳ではなかったのです、と過去形にしたのも気になった。
助手席を見るとトソンはエアコン送風口に差した車用ファブリーズをぐにぐにと触っていた。

(゚、゚トソン「デミタスさんは、恋人はいないんですか」

(´・_ゝ・`)「いる訳がないだろう、女子高生が好きなのだから」

(゚、゚トソン「でもそういう趣味を持つ人は普段は社会に溶け込んでそれを隠していると言っていたじゃないですか」

(´・_ゝ・`)「そりゃあ異常性癖を隠して生活する事は可能だ。 しかし恋愛になるとその性癖は大いに左右される」

(゚、゚トソン「実際問題女子高生と付き合うのは難しい」

(´・_ゝ・`)「そう、援助交際という金で一時的に買うだけのドライな関係だから満たされる。 恋愛とは違うんだよ」

221名も無きAAのようです:2016/06/04(土) 19:01:37 ID:bLfC7y560
(゚、゚トソン「今まで関係を持った女子高生で恋愛感情を抱いた事はないんですか」

(´・_ゝ・`)「ないね、あくまでもぼくが好きなのは女子高生なんだ」

(゚、゚トソン「すごい、徹底されていますね」

トソンは感心したようにほう、と息を吐いた。

(゚、゚トソン「じゃあ私もこのまま続いても卒業したらお別れなんですね」

(´・_ゝ・`)「まぁ、そうなるな」

(゚、゚トソン「なるほど」

(´・_ゝ・`)「引いたかい?」

(゚、゚トソン「いいえ、面白いです。 本当に色んな人がいる。
     それは当然分かっている事なんですけど、実際に接してみないと分からない」

(´・_ゝ・`)「分かったつもりが一番よくないからね」

(゚、゚トソン「本当にそう思います。 デミタスさんと話せて良かったな」

追越車線を我が物顔でベンツやAudiなど外国産の車が駆け抜けていく。
前方で粘っていた日産・セレナがベンツ・GLAに走行車線から追い越された。
三車線あるうちの真ん中の車線でぼくは湾岸線の応酬を見つめる。
外国産の車に負けじと三菱・ランサーエボリューションが坂を駆け上がっていった。

(゚、゚トソン「デミタスさん、面白い人ですね」

(´・_ゝ・`)「そうかい? あまり言われた事がないな」

謙遜ではなく本当の事だ。ユーモアセンスのある人間だと評される事は極めて少ない。

222名も無きAAのようです:2016/06/04(土) 19:04:47 ID:bLfC7y560
(゚、゚トソン「良かったらまた、連絡を下さい」

首都高を降りると間もなく別れのサインだ。
トソンは地下の乗降場へ続く坂を降りていくところでそう言った。
ぼくはトソンの方からそんな言葉が出るとは思っていなかったので意外だった。

(´・_ゝ・`)「あぁ、ぜひまた」

トソンは車を降りて雑踏に消えていく。こうして日常に帰ってくる。
相鉄線のどこかの駅まで列車に乗って帰る。自分の家という日常に帰る。
ぼくもトソンとの時間を終えて自分の日常へと帰らなければいけない。
また首都高に入って自分の住む賃貸マンションへ向かう。

ラブ・ホテルという異空間は非日常を与えてくれる。
女子高生に触れるという行為もまた非日常だ。
しかし非日常から日常には必ず帰るものだ。
女子高生を送り家に帰る瞬間はまさに日常に帰るものだ。
出来る事ならば女子高生をずっと手元に置いておきたい。
数週間に一度ではなく毎日女子高生を眺め触れていたい。
しかしそれは叶わない。毎日ではなく時折触れるからこそ貴重であるし満たされる。
欲望の達成にはバランスが必要なのだ。手に入れるばかりでは満足出来なくなってしまう。

帰りの湾岸線では色々な事を考える。会った女子高生を思い出し次の予定を考える。
トソンを思い出す。また、また会いたいとぼくは思っている。強くそう感じている。
彼女の方からも良かったらまたと言われた事を嬉しく思っている。
当然ながらぼくとトソンの関係は援助交際でありぼくは客でしかない。
それでもまたトソンに会いたいと感じているのだ。

223名も無きAAのようです:2016/06/04(土) 19:06:04 ID:bLfC7y560
それはもしかすると恋なのでは、と考えるがやはりそれは違うとぼくは首をふる。
ぼくが好きなのは女子高生だ。永遠に女子高生なのだ。
女子高生の途中である一人の女の子を好きになってもいずれ女子高生でなくなってしまう。
そのためにぼくはもう何年も恋をしていないのだ。女の子を抱きたいのではなく女子高生を抱きたいのだ。
似たような感情ではあるが本質は大きく異なる。そこを履き違えてはいけないのだと思う。
トソンにまた会いたいと思うのは買う事の出来る女子高生としては異質で、完成されているからだ。
清廉さを持ち、性技を仕込まれているちぐはぐさが不思議な魅力としてトソンを彩っているのだ。
きっとトソンが女子高生であるうちは、ぼくは彼女を買い続けたいのだと思う。



ぼくはトソンと連絡を続けた。メッセージのやり取りをした。
それはまたトソンに会いたいと思っていたからだし途切れさせたくないとも思ったからだ。
援助交際は一種の一時的な売買契約みたいなものでその時だけ連絡を取ればいい。
こうして頻繁にメッセージのやり取りをするのはまるで女性と付き合う前の期間のようだ。
トソンはこれまでの女子高生とは違っていて、ぼくはそれに興味を抱いているからだ。
もっとトソンの事を知りたい。純粋にそう思えるのだ。

224名も無きAAのようです:2016/06/04(土) 19:07:22 ID:bLfC7y560
ぼくは自分の性癖すらさらけ出しているのだし隠す事はない。
しかしトソンの事はあまり知らない。知っているのは表面的な事ばかりだ。
毎日欠かさずトソンとメッセージのやり取りをしているが概ね好印象ではないだろうか。
実際のところ三十代も間もなく終わる男と女子高生の話はなかなか噛み合わない。
会話をするに当たって女子高生は全く別の生き物だ。独自の世界観を確立している。
それでもトソンはメッセージのやり取りにおいても非常に大人びていた。
幼稚な部分は見られずしっかりとした受け答えをするのだ。
うっかりしていると女子高生なのだと忘れてしまいそうになるぐらいだ。

やはりまた会いたくなりトソンの都合を伺って、次の日程が決まる。
五月七日、また土曜日だ。ゴールデン・ウィークの終盤に当たる。
今年は憲法記念日・みどりの日・こどもの日が火曜日・水曜日・木曜日に当たる。
月曜日と金曜日が平日として残る、途中で飛んでいる不完全な大型連休なのだ。
逆にその月曜日と金曜日さえ休みを取れれば一気に十連休となる。
しかしそれは単に土休日が休みとなる者だけに限られた話だ。
自分のように土日休みでなくシフトで回っている者には関係のない事である。
ぼくは今のシフトでは金曜日と土曜日が休みなのだ。勿論休日出勤があれば別である。
勤めている会社は交通インフラ関係なので曜日で左右されない。

225名も無きAAのようです:2016/06/04(土) 19:10:18 ID:bLfC7y560
トソンを迎えに行く前にスバル・レガシィをきちんと洗車する。
昨年のガラス・コーティング施工の効果がまだ残っているので水を流せば汚れは大体取れる。
しかしぼくはハイヤーの運転手のように念入りに汚れが残っていないか確かめる。
たっぷりと自動車用洗剤を希釈した水をスポンジに含ませて車体に滑らせる。
水でしっかりと流してからマイクロファイバークロスで拭きあげる。
一周してからよし、と満足してぼくは洗車を終えた。

いつも通り谷津船橋のインターチェンジから東関東道に入る。
左手には京葉線が並走する。ラインカラーであるワインレッドを身に纏ったステンレス製の車両とすれ違う。
あの列車は東京ディズニー・リゾートや幕張エリアへの輸送を任されている。
いつも車内は混雑しているように見えるが湾岸線が渋滞しているとさっと追い抜かされてしまうのでその時ばかりは恨めしく思う。

湾岸線に寄り添っていた京葉線は新木場で一気に右に進路を変えて都心方面に向かっていく。
京葉線を跨ぐとすぐ左手に今度はりんかい線が現れてまた湾岸線と並走を始める。
東雲の駅を過ぎるとりんかい線は地下に潜ってしまいいよいよ湾岸線のパートナーはいなくなる。
晴海線と分岐する東雲ジャンクションの付近はタワーマンションが建ち並び近未来的な光景が広がる。

有明と台場の臨海副都心を通過すると車線変更が禁止され東京港トンネルへ突入する。
前のトヨタ・シエンタが下り勾配になってから何度もフットブレーキを踏んでいるので車間距離を多めに開ける。
土休日の高速道路には不慣れなサンデー・ドライバーが多いものだ。余計な事故に巻き込まれるリスクは減らす必要がある。
どのみち東京港トンネルは車線変更が禁止されているので前に遅い車がいても逃げられない。車線ごとに一蓮托生なのだ。

226名も無きAAのようです:2016/06/04(土) 19:15:30 ID:bLfC7y560
横浜駅に着いて地下駐車場に車を停める。ルームミラーでネクタイを締め直して車を出た。
土曜日の横浜駅は混み合っている。バスロータリーには横浜市営バスや神奈中バスがひっきりなしにやって来る。
今日もヨドバシカメラの前のベンチにトソンはいた。手には読みかけの文庫本がある。
いつもと様子が違うのは二人の男子高校生に何か話しかけられているところだ。
トソンは読んでいたであろう文庫本を膝に置き少し困った顔をしていた。
知り合いではないな、と考えて努めて明るくトソンの方へ歩いていった。

(´・_ゝ・`)「いやぁトソン、おまたせ。 そちらは友人かな?」

(゚、゚トソン「あ、いえ」

(´・_ゝ・`)「どうも、トソンの父です。 娘が何か?」

二人の男子高校生はぼくとトソンを見比べて気まずそうに去っていった。
特に目立つ要素のないありきたりな公立高校の生徒だ。
トソンはお礼を言って読みかけの文庫本をしまい立ち上がった。

(´・_ゝ・`)「明らかに困っていたからね」

(゚、゚トソン「すいません、あまり慣れていないんです」

(´・_ゝ・`)「女子校では仕方がないよ」

トソンが通うのは私立で中高一貫の女子校だ。県内屈指のお嬢様学校として有名である。
彼女自身は相鉄線沿線に住んでいていつも横浜まで相鉄線で出てきて学校のある大船までJRで向かうのだそうだ。

(´・_ゝ・`)「君の学校の制服は有名だし目立つからね」

(゚、゚トソン「そうなんでしょうか」

それは本当の事だ。しかしそれ以上に目を引くのがトソンの胸の大きさだ。
トソンは整った顔立ちをしているし髪も流れるように美しいが、目立つようなタイプではない。
何よりも目立ってしまうのがよく育った胸なのだ。冬制服の上からでもはっきりと分かってしまう。
薄着の夏の制服になればいっそう目立つのではないだろうか。そしてそれは否応なしに男の目を引くものだ。
中高一貫の女子校では男子生徒はいないが学校の外に出てしまえば男性など幾らでもいる。

227名も無きAAのようです:2016/06/04(土) 19:17:35 ID:bLfC7y560
(´・_ゝ・`)「でもぼくとは普通に話せるし、男性が苦手という訳ではないんだろう」

(゚、゚トソン「それは勿論です、でもデミタスさんとはずっとメッセージのやり取りをしているからです」

(´・_ゝ・`)「何者かも分からない男性に急に話しかけられるのは困ると」

(゚、゚トソン「そういう事なんです」

援助交際に手を出すほどの女子高生が街中で男に声をかけられて困ってしまう。
掲示板で出会って実際に会うまでにメッセージのやり取りを何度もしたが、どうしてそれでトソンはぼくに心を許したのだろうか。
そもそも身体を提供する一時的な契約をして援助交際を行っているだけで、トソンが本当にぼくに心を許しているのかも分からない。
まるで彼女に恋をしているように、ぼくはそれについて知りたいのかもしれない。

(´・_ゝ・`)「行こうか」

(゚、゚トソン「はい」

横浜駅は言うまでもなくエリア最大のターミナル駅だ。
相鉄線沿線に住むトソンが来やすいという理由で指定しているが長居はしない方がいいだろう。
トソンの高校は鎌倉市に位置するが広大な土地を持つ横浜市からほど近い。
生徒も半数ほどは横浜市から通学しているそうで、当然この横浜駅を使う者も多いのだ。
今日は土曜日であるし人の多い横浜駅ではまず見つかる事はないだろうが用心するに越した事はない。
援助交際をする女子高生は基本的にそれを周囲に隠しているものだ。特別な事情のある者以外は親にだって言っていない。
また援助交際で欲望を満たす男としてもそれを知られる訳にはいかない。それは明確な犯罪行為であるし社会的地位も失墜する。
そのために車という独立した空間を持つアイテムを所有している者が多いのだ。

(´・_ゝ・`)「女子校だとやはり男子の知り合いは少ないのかな」

(゚、゚トソン「人それぞれだと思います、他校の男子の知り合いが多い人もいます」

228名も無きAAのようです:2016/06/04(土) 19:25:10 ID:bLfC7y560
私は殆どいないんですけどね、とトソンは言った。階段を降りて地下駐車場に出る。
出掛ける前に念入りに拭いたので車体は綺麗だ。蛍光灯の灯りがくっきりと反射している。
車に乗り込んで地下駐車場を出て首都高に乗った。

(´・_ゝ・`)「じゃああまり男子と付き合うっていうのは少ないだろうね」

(゚、゚トソン「共学の学校と比べれば少ないと思います」

(´・_ゝ・`)「トソン自身は今までには?」

(゚、゚トソン「ないですよ、男子の知り合いも殆どいないので」

(´・_ゝ・`)「そうか」

トソンには交際経験がない。しかし男子と付き合った事もない女子高生に男性経験があるはずがない。
ましてあれほどの男を悦ばせる技術を身に着けているはずがない。そもそもそれは同年代のとセックスで身につくものでもない。
トソンは一体どうやってぼくと援助交際をするに至ったのだろう。それはトソン自身から話してくれるまで待つしかない。

狩場線から湾岸線に入るとまた追越車線での応酬が始まる。
湾岸線は横浜の幸浦から始まるが本牧ジャンクションより東から一気に交通量が増える。
住宅地を走る二車線の横羽線と比べると湾岸線は全区間三車線で線形も良く非常に走りやすい。
特に本牧から浮島までの工業地帯をひた走る区間はランプの設置も最低限で分離や合流もない。
まさしく都市のサーキット場であり制限速度を大幅に越えたスピードで走り去っていく。
湾岸線には自動速度取締機オービスの設置が少ないのも原因の一つだろう。
土曜日なので大黒パーキングでは走り屋の集会でもやっているだろう。

大体左の走行車線には遅いトラックが走っているので中央の走行車線を走る。
追越車線を走っていくのは外国産のセダン車や国産のスポーツ・カーだ。
スピードメーターが百八十までしかなさそうなミニバンも頑張ってそれに追随する。
ホンダ・S-MXが逃げるが後ろからBMW・3シリーズに煽られて走行車線に逃げる。
湾岸線の応酬は自らの限界と引き際を知る事も大事なのだ。
再びS-MXは追越車線に戻っていくがすぐにミニ・クーパーが詰めていく。
応酬に下手に巻き込まれないよう車間距離を取りながら羽田空港を過ぎる。
いつものランプで降りて大井競馬場の横を通り右折するとラブ・ホテルが見えてくる。

229名も無きAAのようです:2016/06/04(土) 19:28:07 ID:bLfC7y560
このラブ・ホテルに入れば非日常だ。直前でウインカーを出してさっと入庫させる。
壁は高く外から覗き込めないように少し入り組んでいてもう目線を気にする必要はない。
今日も部屋はトソンに選んでもらう。せっかくなのでとトソンはまた違う部屋を選択した。
このまま関係を続けていれば二人で全ての部屋を制覇するかもしれない。
土休日料金なので最大四時間の休憩料金は少し高めの設定になっている。
更に部屋は様々な形態のものが用意され部屋ごとに料金が変動する。
オーソドックスな部屋なら五千円程度で豪華な部屋ならば一万円ほどする。

(゚、゚トソン「プールのある部屋というのも面白そうなんですが水着がないですからね」

(´・_ゝ・`)「裸で入ればいいんだよ」

(゚、゚トソン「そういうものなんですか」

(´・_ゝ・`)「中高一貫女子校じゃあ知らないかもしれないが男子は女子が出て行ってから裸で入る事もある」

(゚、゚トソン「えぇ、どうしてそんな事を」

(´・_ゝ・`)「裸で泳ぐ開放感はとても良いものだからだよ。 もう二、三十年も前の話だし今の子はやらないかもしれないけど」

(゚、゚トソン「その、裸で開放感があるという事は泳ぐのは速くなるんですか」

(´・_ゝ・`)「いや、水着を履いていた方が速いよ」

ぼくとトソンはたっぷり時間をかけて三度目のセックスをする。
完全密室のラブ・ホテルでは誰も邪魔する者はいない。
二人の関係を咎める者もいない。自由に伸び伸びとしていられる。
まるでこのラブ・ホテルの部屋だけが世界から切り離されたようだ。
この部屋の中でならばぼくとトソンは交わる事が出来るし何も偽装しなくていい。
普段は物静かなトソンがベッドの上で乱れる。制服を掴んだままぼくは射精する。
トソンはぼくの首に腕を回してそれを受け止めた。
ずっとこの時間が続けばいいのにとすら思う。一番幸せなこの時間が。

230名も無きAAのようです:2016/06/04(土) 19:30:13 ID:bLfC7y560
シャワーを浴びて部屋を出て清算をする。屋内駐車場に出ると外から車の往来が聞こえる。
海岸通りと首都高羽田線の往来。聞こえてくるそれは待ち構える日常の証だ。
ぼくは寂しいと思う。トソンはどうなのだろう。この帰り道をどう思うのだろう。

(゚、゚トソン「あの」

空港中央を過ぎたところで不意にトソンが切り出した。

(´・_ゝ・`)「なんだい」

(゚、゚トソン「今日、もうちょっとお話出来ませんか」

(´・_ゝ・`)「ゆっくり話が出来るところがいいかな」

(゚、゚トソン「出来れば、そうですね」

(´・_ゝ・`)「いいよ」

左の車線に寄り浮島ジャンクションで湾岸線から離れる。
幾重にも続くカーブを経て大師から来た本線へ合流するとすぐに下りトンネルへ突入する。
東京湾アクアラインの半分以上を占める海底トンネルはほぼ一直線に続き先が見通せる。
途中には巨大な換気口があり頭上にぽっかりと大きな穴が空いている。
長い上り勾配の先には光が見える。東京湾の真ん中に浮かぶ海ほたるに着く。
本線を別れ大きくカーブして反転するとようやく海ほたるの全景が見えてくる。
海ほたるはまるで戦艦のように海上に浮かんでいる。
橋から続く道路がそのまま戦艦の腹の中へ飛び込んでいく。
まるで大きく開かれた口に車達が吸い込まれていくかのようだ。

駐車場に車を停めてエスカレーターを上がる。
施設に入ったところにスターバックス・コーヒーがあってカウンターの近くは混雑している。
しかしカウンターを離れた場所は空いていて一人掛けの単独のソファーが並べられていた。
それぞれ好みのコーヒーを購入してそのソファーに座る。

231名も無きAAのようです:2016/06/04(土) 20:11:01 ID:bLfC7y560
(゚、゚トソン「我儘を言ってすいません」

(´・_ゝ・`)「いや、構わないよ」

大きなウインドウの向こうは夕陽が沈みかけている東京湾だ。
左手には木更津と君津の工場群があり、右手にも横浜と川崎に跨る工場群が見える。

(゚、゚トソン「この前お会いした時に、こういう事をしているのが当てつけだと言ったのを覚えていますか」

(´・_ゝ・`)「あぁ、覚えている」

援助交際をする事が自分の意思か尋ねた時に不意にトソンが漏らした言葉。当てつけ。
それも両親にではない。ぼくが引っかかり、そしてそれ以上は踏み込めないと思った言葉だ。

(゚、゚トソン「デミタスさんに隠し事をしたかった訳でもありません。 しかし今となっては説明する必要があります」

(´・_ゝ・`)「うん」

(゚、゚トソン「当てつけ、それは私の後見人に対してです」

(´・_ゝ・`)「後見人」

それは両親のいない者の証だ。
両親と仲が悪い訳ではなかったのです。トソンは過去形でそう語っていた。

(´・_ゝ・`)「未成年後見人という事か」

(゚、゚トソン「はい。 私の母親は私が九つの頃に急な病でこの世を去りました。 私は父親に育てられたのです」

トソンはトールサイズのスターバックス・ラテを手に持ったまま、少し考えていた。
話す言葉を順序立てて整理しているようだった。ぼくはカフェ・アメリカーノを飲んでそれを待った。
急かそうなどとは思わなかった。トソンが自身について話してくれるようになった事をむしろ喜んでいた。
それだけで、トソンにほんの少し近づけたような気がするのだ。
いくらトソンを抱いても心の奥にたどり着ける訳ではない。
ましてぼくとトソンは金銭授受で成り立つ契約関係だ。
今現在トソンのセックスはビジネスに他ならない。

232名も無きAAのようです:2016/06/04(土) 20:12:39 ID:bLfC7y560
(゚、゚トソン「先々月、三月の終わりに父が亡くなりました。 仕事中に脳卒中で倒れてそのままもう目を覚ましませんでした」

トソンはまた区切る。二ヶ月前に父親が亡くなった女子高生が援助交際をしている。
その事実だけが急に浮かび上がってぼくは混乱してしまう。

(゚、゚トソン「父は実家を十八で出ており、親からも勘当されていたそうです。 私は父以外に身寄りはありませんでした」

(´・_ゝ・`)「お父さんは何を?」

(゚、゚トソン「秘書をしていました。 その父が担当していた先生とは家族ぐるみの付き合いをしていて、その方が私を引き取ってくれる事になったのです」

(´・_ゝ・`)「ではそのお父さんが秘書をしていた先生が君の後見人」

(゚、゚トソン「はい、そうなります。 今はまだ後片付けもあるという事で父と暮らしたマンションに住んでいますが、間もなく先生のお宅へと住まいを移す事になります」

トソンはまさに激動の人生のまっただ中にいる気がした。しかしまだ援助交際に繋がる要素は見当たらない。
ここでトソンはいったん口を閉ざした。口はきゅっと結ばれ、また何か考えているようだった。
トールサイズのカップを指でなぞっていた。トソンの細い指が円を描く。

(゚、゚トソン「まず」ようやく口を開く。「私と父の関係から」

(´・_ゝ・`)「関係?」

(゚、゚トソン「私と父は一緒に寝る事がありました」

(´・_ゝ・`)「一緒に」

そこまで言って、その言葉の意味に気がつく。とんでもない事を言い出そうとしている。
周囲を見るが近くには誰もいない。

233名も無きAAのようです:2016/06/04(土) 20:14:34 ID:bLfC7y560
(´・_ゝ・`)「それは」

(゚、゚トソン「私と父はそういう関係にありました」

(´・_ゝ・`)「その、実の親子なんだろう?」

紛れも無く、とトソンは表情すら変えずに答える。

(゚、゚トソン「十四の頃からそういう関係になりました。 母は早い内に亡くしました。 父は多忙であったし、私も父のためならと思って応えました」

(´・_ゝ・`)「それでお父さんに、色々な事を教えられた」

(゚、゚トソン「はい」

女子高生としては完成されたねっとりとしたフェラチオも絡みつくようなセックスもトソンの父親から仕込まれたものだ。
初めてトソンに咥えられた時に同年代とのセックスで覚えたものではなく中年仕込みのものに思えたのは間違いではなかった。
トソンの性に関するルーツは父親にあるのだ。

(゚、゚トソン「当然ながら私と父の関係は秘密のものです。 私は今の今まで誰にも話さなかった」

ですが、とトソンは繋げる。

(゚、゚トソン「あの人、私の後見人となるあの人は、その事を知っていた。
     そしてそれを私に求めてきました。 後見人となる代わりに」

(´・_ゝ・`)「では、君に住まいを提供し親代わりとなる代わりに身体を提供しろと?」

(゚、゚トソン「そこまで直接な表現ではありませんが、そういう解釈で間違いありません」

(´・_ゝ・`)「それでは善意で君の後見人になったのではなく下心があったからではないか」

(゚、゚トソン「いえ、善意もあるのだと思います。 父と先生は長い付き合いです。 私自身可愛がってもらいました」

234名も無きAAのようです:2016/06/04(土) 20:16:14 ID:bLfC7y560
(´・_ゝ・`)「だが身体を寄越せというのは横暴過ぎる」

(゚、゚トソン「はい」

トソンは頷いた。そして視線を遠い海の向こうにやった。

(゚、゚トソン「私にはもはやあの人しか身寄りがありません。 断る余地はなかった。」

だけど。そう言ってまたトソンは暫く黙る。

(゚、゚トソン「私は父を愛していました。 父として、男性として。
     父に求められて、両方の思いから応じました。 関係を続けました」

トソンはぼくの方を見る。

(゚、゚トソン「私は交際した男性の人もおらず、父としか関係を持った事がありませんでした。
     あの人に身体を差し出すのは、父との思い出まで奪われてしまう気がした」

(´・_ゝ・`)「当てつけ…」

(゚、゚トソン「はい、当てつけです。 あの人に身体を差し出す前に、誰か他の知らないような人に身体を明け渡してしまおう。
     そう思いました。 それが当てつけです」

(´・_ゝ・`)「それなら、それなら、どうしてぼくだったんだ」

(゚、゚トソン「正直最初は本当に誰でも良かったんです。 自分自身自暴自棄になっていました。
     だからああいう掲示板に書き込んで連絡を待った。 何人も来ました。 その中でデミタスさんが一番誠実そうな感じだった」

(´・_ゝ・`)「援助交際をするような男だぞ」

(゚、゚トソン「それでもメッセージのやり取りを続けるうちに誠実そうな人だと思ったんです。
     そして実際に会って、やはり感じた通り誠実な人だと」

235名も無きAAのようです:2016/06/04(土) 20:18:49 ID:bLfC7y560
(´・_ゝ・`)「そうか」

トソンは後見人への当てつけを果たしたのだ。その後見人に抱かれるぐらいなら見知らぬ他人に抱かれてやろうと。
それがたまたまぼくだった。援助交際を繰り返し新たなパートナーを探していたぼくだった。

(´・_ゝ・`)「どうしてそれを話そうと思ったんだ」

(゚、゚トソン「来週に、あの人の家に引っ越します。 ずっとなんとか引き伸ばしにしていましたが、ゴールデン・ウィークが終わったらという話になっていました」

来週。そんなものすぐだ。二週に一度ぐらいで会えればいいとぼくは呑気にそう考えていた。

(゚、゚トソン「きっと会うのは難しくなります」

東京湾の向こうに夕陽が沈んでいく。夜の帳が下りる。日付が変わって定められた未来に近づいていく。

(´・_ゝ・`)「君は、嫌なんだろう、その後見人に引き取られるのが。 その後見人に抱かれるのが」

(゚、゚トソン「長い間お世話になっている人です。 良い人です。 その人が後見人になる事で私はこの先の未来に安心する事も出来たぐらいです。
     今の学校もこのまま通えるし大学にも進ませてくれるそうです。 だけど」

だけど、もう一度トソンは繰り返す。

(゚、゚トソン「抱かれるというのは違う。 何も対価を払わず満足な生活を手に入れようというのは都合の良い話だとも分かっています。
     しかし私の中でそれは父と繋がる特別な意味を持つものでした。 だから当てつけとしてデミタスさんと会った」

(´・_ゝ・`)「じゃあ、君はこれでいいのか」

トソンはぼくの方を見て、微笑む。

(゚、゚トソン「初めて父以外の人に抱かれて、私の中で徐々に何かが変わっていったのです。
     デミタスさんは面白い方ですし、私の知らない事を幾つも教えてくれる。
     優しく、相手を尊重し、とても気遣ってくれます」

まだ会ったのは今日で三回目なのに変ですよね、と自嘲気味にトソンは呟く。

236名も無きAAのようです:2016/06/04(土) 20:48:48 ID:LKSIJcuI0
トソンの背景が思いの外重かった
たまにデミタスの事をモララーと呼んでいるがデミタスでいいのかな?
エロいがそれ以上に面白い

237名も無きAAのようです:2016/06/04(土) 21:40:38 ID:bLfC7y560
>>236
ぐおお本当だ
元々モララーで書いていておっさん感が足らないのでデミタスに書き換えたんですが漏れがあるみたいです

238名も無きAAのようです:2016/06/04(土) 21:48:28 ID:bLfC7y560
(゚、゚トソン「いつからかデミタスさんだったら良かったのに、と思い始めている自分がいました」

またトソンは窓の向こうの海に視線を戻す。
夕陽を失った海はすっかり暗くなり、寂しく感じられる。
遠くを何機もの飛行機が飛び交い、海上をタンカーが横切って行く。

(゚、゚トソン「でも、もう来週には引っ越しです。 だからデミタスさんにはきちんと話しておかなければならないと考えていました。
     私がそういう反逆心を持ってデミタスさんと会った事も謝りたいと思っていました」

(´・_ゝ・`)「いいんだ、そんな事は」

そんな事は大した事ではない。それよりもトソンが望まない方向に流れてしまう事だ。

(´・_ゝ・`)「その後見人には何とか言えないのか。 他の人に訴え出たり、後見人にも奥さんだとかがいるだろう」

(゚、゚トソン「無理だと思います」

トソンは首を振る。

(゚、゚トソン「あの人は巨大な権力を持っています。 大きな家の人です。 強欲で自分が手に入れたいものを全部手にしてきました。
     父はそんな人の下だからこそ恩恵を受けてきたのです。 あの家であの人に逆らえるものは一人たりともしません。 奥さんでさえも」

(´・_ゝ・`)「その後見人というのはそれほどの人物なのか。 秘書を持っているほどの」

(゚、゚トソン「国会議員です。 平成新党党首ロマネスク衆議院議員」

ぼくは天を仰いだ。言うでもなく大物議員だ。神奈川県横浜エリアを地盤に持ち衆議院議員七期目。
自民党時代には大臣も経験し離党後に平成新党を立ち上げ現在では野党第二位の勢力を誇る。
自由奔放な発言が多く大臣時代にはマス・メディアに随分と叩かれたがその饒舌ぶりは今でも健在だ。
むしろ切れ味の良い発言がある程度の評価を得ておりそれが彼の最大の特徴でもある。

(゚、゚トソン「邸宅は山手にあって、その中での出来事など外に出る事はありません。 あくまでも、その中での出来事です」

239名も無きAAのようです:2016/06/04(土) 21:53:24 ID:bLfC7y560
それはまるで諦めてしまっているニュアンスのように感じられた。
これまでで一番諦めの色の強い言葉だった。

(´・_ゝ・`)「君は、本当にそれでいいのか」

(゚、゚トソン「はい」

そうするしかない。そうするしかないのだ。
父を雇っていた男について行けば、金銭面でも住環境でも苦労する心配はまるでないのだ。
この先もこれまで通りの学校生活と進路が用意され約束されているのだ。案じる事はない。
ただその男に身体を差し出せばいいだけで、その未来が約束されるのだ。

(-、-トソン「今までありがとうございました」

それは諦めと別れの言葉だ。しかしぼくには遮る事が出来ない。

ぼくに何が出来るというのか。
ただの会社員で、三十代終盤にも関わらず未婚で、貯蓄もそれほど多くない。
まして女子高生が好きで援助交際を繰り返す社会的にもどうしようもない男だ。
トソンを引き止める事も出来ないし引き止める術もない。
ただ援助交際でトソンとセックスしただけの男が出しゃばる場所などない。
そもそもトソンとは連絡し始めてから一ヶ月ほどだ。
会ったのもたった三度だ。
ぼくには何も出来ない。まるで何も出来ない。
絶望感と無力感に襲われる。
自分は何とちっぽけな存在なのだろう。

(゚、゚トソン「私の事は気にしないで下さい」

トソンは言う。

(゚、゚トソン「一ヶ月ほどでしたが、楽しかったです。 それに私の勝手な当てつけに巻き込んでしまって申し訳ありません」

240名も無きAAのようです:2016/06/04(土) 21:58:08 ID:bLfC7y560
(´・_ゝ・`)「君が謝る事じゃない」

謝らなくていい。トソンが謝る必要は何もない。

(゚、゚トソン「行きましょうか。 すっかり暗くなってしまいました」

(´・_ゝ・`)「あぁ…」

言葉が見つからなかった。適切な言葉など存在しないように思えた。
気の利いた言葉を放って事態が好転するはずもなかった。

(´・_ゝ・`)「行こうか」

駐車場に戻ってスバル・レガシィに乗り込んだ。料金所を通り川崎方面へと戻る。
長い海底トンネルを経て浮島ジャンクションから湾岸線に入る。
アクセルを強く踏み込む気になれなかった。一番左の走行車線をゆっくり走った。
それでも横浜駅は着実に近づいた。制限速度で走っても確実に近づいていった。
横浜駅で別れてしまえばそれは永遠の別れになる気がした。きっともう会えないと思った。
それなのに会話は少なかった。ぼくは言葉を失ってしまったみたいに話せなくなった。
ボキャブラリーという辞典を無くしてしまったようだった。
何か言わなくてはと焦るほど見つからなかった。
横浜ベイブリッジを静かに渡り、狩場線に入る。
関内、みなとみらいと市街地を過ぎて横浜駅東口のランプで降りる。
地下広場で車を停める。無情にも時間は終わってしまう。

(゚、゚トソン「本当にありがとうございました」

(´・_ゝ・`)「いや」

お礼を言うべきはぼくの方だ。ぼくとトソンは援助交際の契約関係だ。
これにて契約満了となるのだ。

241名も無きAAのようです:2016/06/04(土) 22:00:45 ID:bLfC7y560
(´・_ゝ・`)「元気で」

(゚、゚トソン「デミタスさんも、お元気で」

(´・_ゝ・`)「あぁ」

トソンが鞄を持って車を降りる。ぼくに頭を上げて、踵を返して歩いていく。
ぼくはそれを眺めている。トソンが人混みに紛れて見えなくなる。
これが最後。永遠の別れ。もう会えなくなってしまう。
声をかけるべきだと思った。呼び止めるべきだと思った。
車から飛び降りて追いかけて抱きしめるべきだと思った。
しかしぼくには出来なかった。何も出来なかった。
ここでそうしたとして、この先に未来はないからだ。
ぼくには何も出来ない。トソンの未来を好転させられない。
ぼくは無力なのだ。恐ろしく無力なのだ。
とてもとても、小さい人間なのだ。

ぼくはハンドルにうずくまり、暫くそこから動けなかった。



三週間が経った。ぼくはトソンに連絡をしなかった。彼女からもメッセージはなかった。
もう相鉄線沿線のマンションを引き払い山手の豪華な邸宅に移り住んでいるはずだ。
そこでトソンはロマネスクという男に抱かれている。誰も何も言う事は出来ない。
それはぼくとて同じ事だ。何も変えられないのだ。

242名も無きAAのようです:2016/06/04(土) 22:02:21 ID:mG7urDGc0
円光相手には偽名を語ってたのかと思ってた

243名も無きAAのようです:2016/06/04(土) 22:16:35 ID:bLfC7y560
ぼくは忘れようと務めた。長年援助交際をしてきたがイレギュラーな例だったと。
また新しくパートナーを見つけて思う存分制服のにおいを楽しもうと。
今までそうしてきた。女子高生のパートナーを失えば新しい女子高生のパートナーを探した。
しかしそんな気にはなれなかった。掲示板を覗こうとも思えなかった。トソンは頭のなかから消えなかった。
いつまでも鎮座しているどころか輝きを増していった。

通勤で津田沼から総武快速線に乗る。行き先は横須賀線直通の久里浜行きだ。
このまま乗って行ってしまいたくなる。このまま乗っていれば横浜駅に行く。
トソンの通う高校のある大船駅にも行く。トソンはこの列車に乗って通学するかもしれない。
しかしそれまでだ。そこからどうするというのだ。どうしようもないのだ。
もし万が一ぼくとトソンの関係が知られればどのような事態になるのか想像もつかない。
きっとぼくは男の怒りを買いあらゆる方面から攻撃されて社会的に破滅させられるのだろう。
トソンは念のためぼくとのメッセージのやり取りを綺麗に削除しているかもしれない。
そもそも連絡先すら痕跡の残らぬよう消されているかもしれない。
それはトソンのため、ぼくのためだ。責める事は出来ない。
忘れるべきだ。忘れるべき。頭では分かっているのだ。

244名も無きAAのようです:2016/06/04(土) 22:18:14 ID:bLfC7y560
ぼくの職業はJRの駅員だ。勤務する職場は総武線沿線にある。そのため仕事柄ぼくは女子高生を目にする機会が多い。
大学生のうちはまだ何か物足りないと思う程度だっが、社会人になり女子高生をよく見る環境になってから確信に変わったのかもしれない。
毎朝女子高生を見るうちに目で追うようになっていたのだ。その華やかさに惹かれるようになっていったのだ。
何人かで仲良く登校する者もいれば一人で携帯電話を見ながら改札口を通っていく者もいる。
春には真新しい制服を着てまだスカートを折る度合いを確かめている初々しい女子高生が好きだ。
夏に涼しそうな薄着になりうっすら透けるプリーツ・スカートを履いた女子高生が好きだ。
秋に中学と比べて成熟し始めた身体のラインが浮き出るカーディガンを着た女子高生が好きだ。
冬になりこんもりとしたマフラーに首を覆いながらもスカートをしっかりと折る女子高生が好きだ。
四季のある国で良かったと思う。表情豊かな女子高生を年中見ていられるのだ。
改札口に立って客が清算切符を持って来ない限りはずっと女子高生を見ていられる。

しかしぼくはその時間すら楽しめなくなっていた。女子高生を見るだけでトソンを思い出すのだ。
勿論東京の東端の方ではトソンの通う神奈川のお嬢様学校の制服は見かけない。
それでも制服を見るとトソンの事を思い出して胸を締め付けられるのだ。
ぼくはトソンから逃げ出したのだ。トソンの抱える問題はぼくの力で解決出来る問題ではなかった。
トソンの置かれた環境はぼくの力でどうにか出来る程度のものではなかった。

245名も無きAAのようです:2016/06/04(土) 22:19:40 ID:bLfC7y560
勤務を終えて総武快速線に乗り津田沼駅で降りて徒歩六分のアパートに帰る。
一人の部屋はテレビか音楽を流していないととても静かだ。このアパートに女性を連れ込んだ事はない。
ぼくが好きなのは女子高生で、援助交際を始めてから普通の女性と付き合った事がないのだ。
そして女子高生と会うのは必ずラブ・ホテルだけだ。まず家に連れ込んだりしない。
自分の住まいを知られるというのは後々面倒な事態に発展する恐れもある。
また女子高生が出入りしているのを近隣住民に見られれば不審な目で見られるだろう。
私服で来てもらっても明らかに若い女の子が何度も出入りするのは不自然だ。
援助交際は何より犯罪であるし明るみに出れば逮捕され罰せられる。
とにかくリスクを抑え証拠を残さない事が大事なのだ。
ぼくはこれまでの十年間を徹底してきた。

それなのにこの虚しさは何だろう。
一人の部屋は音もなくあまりにも空虚に感じる。
トソンに対してぼくは何も出来なかった。何もしなかった。逃げ出した。
きっとトソンはぼくに打ち明けるにあたり随分と勇気が必要だっただろう。
ぼくに話している時も考え間を置いて自分の置かれた状況を話したのだ。
それなのにぼくは逃げ出した。自分には何も出来まいと逃げ出した。
いつからかデミタスさんだったら良かったのに、と思い始めている自分がいました。
トソンはそう言った。それはまるでぼくに助けを求めているようにも感じた。
悲しげに、儚げにトソンはそう言ったのだ。それなのにぼくは、何もしなかった。

246名も無きAAのようです:2016/06/04(土) 22:21:43 ID:bLfC7y560
ぼくはただの会社員だ。トソンを抱くのは野党第二位の党首を務める大物国会議員だ。
彼の行為はスキャンダルだ。ぼくの行為は罰せられる犯罪だ。
ぼくはこの状況をひっくり返せない。好転させる事は出来ない。
あるとすればトソンを攫ってしまう事ぐらいだ。
そうすれば少しだけこの現状を変えられる。
歯車を狂わせる事ぐらいは出来る。
そう、それが唯一自分に出来る事だ。
勿論それは全て失う。ぼくの全てを失う。
社会的地位も職も友人も全てを失う。
そんな事は頭では分かっているのだ。
逮捕されれば懲戒解雇になるし名前も新聞に出る。
それでもぼくに出来るのはそれぐらいしかないのだ。

トソン。ぼくは呟いて天を仰ぐ。
仕事中も、運転中も、食事中も、トソンの顔が浮かんでは消える。
クリアに鮮明に現れては水面に浮かぶ月のように儚く消えてしまう。
どうしてだろう。あんな話を聞いたから。彼女に恋をしたから。
ぼくが愛するのは女子高生だ。女子高生はいずれ女子高生でなくなる。
だから恋愛感情を抱いたりはしない。無情にも大人の女性へなってしまう。
それなのにぼくはトソンを想う。恋い焦がれるように想う。
トソン。声に出してみるといよいよそれは現実のものとなる。
この三週間、気づかないように蓋をしてきた。
考えないように奥底に封じてきた。
しかし無理なのだ。それは極めて難しい事なのだ。
考えないようにすればするほど考えてしまう。トソン。
苦しくなる。呼吸が上手くいかなくなる。
いつの間にか、自分の中でトソンがこれほどの大きさになっていたのだ。
自分に置けるトソンがこれほどの割合にまで膨れがっていたのだ。
あぁ、きっとぼくは恋をしていたのだ。ミステリアスなトソンに。
未完成な女子高生トソンに。いずれ大人になってしまうトソンに。
ぼくは無意識の内に携帯電話を取っていた。手のひらよりは小さいソニー製XPERIA。
無料通話アプリでいつも最上位にいたトソン。中ほどにまで落ちてきていた。
それを開いて最下部右端の通話呼び出しボタンを押す。
待ち合わせの時にすら使わなかったボタンだ。
一人の静かな部屋にその呼び出し音はとてもよく響いた。
長い長いコールのあと、不意に呼び出し音が途切れる。

『はい』

247名も無きAAのようです:2016/06/04(土) 22:23:33 ID:bLfC7y560
紛れも無くトソンの声だった。三週間ぶりの彼女の声だった。

(´・_ゝ・`)「トソン、すまない、電話をしてしまった」

『いえ』

(´・_ゝ・`)「今は大丈夫なのかい」

『部屋にいるので大丈夫です』

(´・_ゝ・`)「ぼくの番号はもう消されてしまったかと思った」

『本当は消そうとしました。 消すべきだと。 もし携帯電話を検められて何者なのかと問われると信憑性のある答えを返す事は難しい』

(´・_ゝ・`)「でも消さないでおいてくれた」

『消さなかったのではありません。 消せなかったのです』

ほう、とトソンが一息つく。

『こうして電話が来てはっきり分かりました。 やはり私はデミタスさんの事が好きなのです』

(´・_ゝ・`)「ぼくもだトソン。 君を忘れようとした。 だけどそれは無理だった。 君が好きなんだ」

言ってしまってから言葉は現実のものとなる。形となる。
本物なのだ。この想いは本物だ。

(´・_ゝ・`)「ぼくは君を助けたい。 結果として助けられなかったとしても、少しでも君を助けたい」

『はい』

248名も無きAAのようです:2016/06/04(土) 22:26:17 ID:bLfC7y560
(´・_ゝ・`)「君はどうなんだ」

『助けて下さい。 ここから』

(´・_ゝ・`)「今から行くよ、今すぐ」

電話を切った。ぼくは着替えて車のキーを持って部屋を飛び出した。
もう後先考えるのはやめる。目の前の女の子を救えずして何を格好つけても無駄だ。
たとえこれが救いにならないとしても。助けられなかったとしても。
トソンが望んだのならばぼくは行くべきだ。迷わず行くべきだ。

トソンからメッセージで住所が送られてくる。スバル・レガシィにキーを差し込み起動する。
カー・ナビゲーション・システムに住所を入力する。神奈川県横浜市中区鷺山。
慌ただしく車を発進させ国道三五七線に入り東関東道に入る。
しかし交通情報に湾岸線事故で一部区間通行止めと表示させる。
通行止め区間は浮島から東扇島まで。迂回するほかなく東海ジャンクションで羽田線に転線する。
湾岸線通行止めの影響で羽田線に集中し昭和島ジャンクション合流手前から渋滞が発生していた。
すぐ脇を東京モノレールが走り抜けていく。新型車両の青いデイライトが不気味に闇夜に消えていく。
遠くでは羽田空港の光の数々が見え隠れした。いつもくぐる飛行機のトンネルも羽田線にはない。
羽田を抜け横羽線へ入っても慢性的な渋滞は続いていた。ぼくの焦る気持ちばかりが募っていった。
着実に近づいているはずなのに延々と海側に続く工場が進行具合の遅さを感覚的に助長させる。
工事中の生麦ジャンクションから大黒線を経由して湾岸線に復帰して横浜ベイブリッジを渡る。
長い橋を渡って本牧ふ頭で降り山手を目指す。一軒家ばかりがどこまでも続く。
予想到着時間まで五分を切ったところで信号待ちの最中に間もなく着くと送信する。
スクールゾーンに指定された細い道を登っていくと石造りの立派な玄関が見えた。
邸宅は更に登った先にあるようでその全姿は見えない。しかしそれは必要なかった。
トソンはその玄関よりもう少し先に立っていた。

(´・_ゝ・`)「乗って」

素早くトソンが助手席に乗る。ぼくは確認するとさっと車を発進させた。

249名も無きAAのようです:2016/06/04(土) 22:28:24 ID:bLfC7y560
(゚、゚トソン「すいません、玄関前には監視カメラがあるので」

(´・_ゝ・`)「なるほど、機転が利く」

(゚、゚トソン「いいえ。 携帯電話の電源もここで切った方がいいですよね」

(´・_ゝ・`)「つくづく機転が利く」

(゚、゚トソン「いえいえ」

(´・_ゝ・`)「久しぶりだ」

(゚、゚トソン「三週間ぶりですね」

(´・_ゝ・`)「あぁ」

レクサスやメルセデス・ベンツの高級セダンばかりが顔を揃える高級住宅地を抜ける。
高台から駆け下りるようにレガシィは来た道を戻る。

(゚、゚トソン「まるでドラマみたいですね」

(´・_ゝ・`)「君もテレビ・ドラマを見るのか」

(゚、゚トソン「当たり前じゃないですか、私だって普通の女子高生です」

(´・_ゝ・`)「それはすまない」

(゚、゚トソン「ドラマチックな恋愛を子供の頃に夢見た時があります」

(´・_ゝ・`)「ぼくは白馬の王子様ではないがね」

(゚、゚トソン「それでも助け出してくれたじゃないですか。 じゅうぶん、白馬の王子様です」

本牧ふ頭から首都高に入り横浜ベイブリッジを渡る。左手に横浜みなとみらいエリアの綺羅びやかなネオンの光が見える。
トソンの新たな住まいだった邸宅のある山手はもう遥か闇の向こうだ。これでもう後戻りは出来ない。
不思議と後悔はなかった。あれほど悩んだというのにいざ実行してしまうと晴れやかな気持ちだった。
隣にトソンが座っている。これだけで幸せを感じられるのだ。

250名も無きAAのようです:2016/06/04(土) 22:30:39 ID:bLfC7y560
(´・_ゝ・`)「ひとまずは家に行こう。 なんでもないアパートだけど」

(゚、゚トソン「ありがとうございます」

湾岸線の東行きは通行規制がかかっていなかった。
扇島から東扇島へ移る坂を降りたところで流れが滞る。遠くでパトカーの赤色回転灯が見える。
事故現場が近づいているのだ。事故の様子見たさに速度を落とす車が多いので対向車線もよく混む。
西行き東扇島ランプ付近で大型トラックが横転し三車線全てを器用に塞いでいた。
おおかた携帯電話でも見ているうちに側壁に当たり慌ててハンドルを切ったのだろう。
あれでは現場検証にも撤去にも時間が相当かかるはずだ。
事故現場を通り過ぎるとまた車は順調に流れだした。

(゚、゚トソン「とても長い三週間でした」

(´・_ゝ・`)「長い三週間」

(゚、゚トソン「あそこの家に人は皆優しい。 あの人だって優しかった」

(´・_ゝ・`)「だけど君を抱いた」

(゚、゚トソン「正直なところ、さすがにたまに私を抱く程度だと思っていました。 しかしあの人は旺盛な方だった」

(´・_ゝ・`)「たしか六十手前だっただろう、六十を過ぎても旺盛な男性はいるものだ」

(゚、゚トソン「はい。 まさか毎日だとは思いませんでした」

(´・_ゝ・`)「毎日」

(゚、゚トソン「やはり皆知っていても何も言えないのです。 奥様ですらも」

(´・_ゝ・`)「うん」

(゚、゚トソン「あのでっぷりとした腹で覆い被さられるのです。 あの毛深い胸毛が当たるのです。 あの恐ろしいにおいのする口で舐め回されるのです」

いつもトソンを迎えに行ってから降りた行きつけのラブ・ホテル最寄りのランプを通過する。
駐車スペースのキャパシティを大きく越えた数の車が停まる大井パーキング・エリアを過ぎる。
もうとっくに陽は沈んでいて臨海副都心のビル達はそれぞれ灯りを宿していた。
頭上を新型車両に主役を譲りつつあるゆりかもめの従来車が横切って行く。

251名も無きAAのようです:2016/06/04(土) 22:36:59 ID:bLfC7y560
(´・_ゝ・`)「君を助けて正解だった。 迷っていた自分が恥ずかしいぐらいだ」

(゚、゚トソン「いいえ、こうして連れ出してくれただけで私は助けられました」

(´・_ゝ・`)「そうか」

(゚、゚トソン「本当は家出でもしてやろうかと思っていました。 しかし私には何のあてもない。 女子高生があてもなくふらふらしていればすぐに警察に保護され連れ戻されてしまう」

(´・_ゝ・`)「あぁ、そうだろうね」

東雲のタワービル群、舞浜のディズニー・リゾート、湾岸線の景色は移ろい行く。
横浜から始まった湾岸線は東京を横切り千葉へと入る。浦安では防音壁も高く景色は楽しめない。
東京外環道と繋がる予定地では湾岸線を取り巻くように接続路が取り付けられようとしている。
ETCの確認音が鳴ると首都高から東関東道に入ったサインだ。

(゚、゚トソン「嬉しかったです。 デミタスさんから電話が来て。 夢じゃないかと」

(´・_ゝ・`)「そうするべきだと思ったんだ」

ららぽーとTOKYO-BAYの立体駐車場はまるで要塞だ。無数の光が鉄骨の城のあちこちに点在している。
高い防音壁に寄り添って走ると谷津船橋インターチェンジが現れる。料金所を低速で通過すると料金が表示される。
すぐ訪れる二択の分岐を直進して国道に出る。もう住んでいるアパートはすぐだ。

(´・_ゝ・`)「本当に普通のアパートだよ。 きっと狭く感じる」

(゚、゚トソン「気にしないで下さい」

それに、とトソンが続ける。

(゚、゚トソン「デミタスさんの暮らしている場所を見てみたいとも思っていました」

アパート横の駐車場に車を停める。ETCカードを抜き取り車から降りた。
トソンも助手席から降りる。トソンは制服ではなく私服だ。
家を出てくる直前に着替えてきたのだという。
ぼくは用心しながらアパートに入った。同じアパートの住民に見られるのは避けたい。
制服ではないしトソンは大人びた容姿をしているのですぐには女子高生とは分からないだろう。
しかしやはり何かしらのリスクは減らせば減らしておくだけ良いはずだ。

(´・_ゝ・`)「入って」

252名も無きAAのようです:2016/06/04(土) 22:39:22 ID:bLfC7y560
鍵をかけて部屋に入る。幸いにも誰にも会わなかった。
トソンは靴を脱いできょろきょろと部屋の中を眺めている。普通のワンケーの部屋であり特徴のようなものもない。
ましてこれまで相鉄線沿線のマンション暮らし、最近では横浜山手の邸宅で暮らしていたトソンにとっては狭く感じるだろう。
更に帰宅して衝動的に飛び出してきたのでスーツは脱ぎ捨てられたままだ。部屋も完璧に片付いている訳ではない。

(´・_ゝ・`)「君の制服でない姿は初めてだ」

(゚、゚トソン「デミタスさんこそスーツでない姿は初めて見ます」

お互い笑い合う。笑い合って、トソンが先に言葉を失った。

(´・_ゝ・`)「どうしたんだ」

(゚、゚トソン「…寂しかった」

(´・_ゝ・`)「寂しかった」

(゚、゚トソン「会いたかった」

(´・_ゝ・`)「会いたかった」

(゚、゚トソン「だけど自分からは言い出せませんでした。 未練がましく連絡先も消せなかったのに、巻き込みたくないと思っていました」

(´・_ゝ・`)「あぁ」

(-、-トソン「だから本当に、嬉しかったんです」

トソンの肩が震える。ぼくはその華奢な肩をそっと抱いた。
静かに泣くトソンの頭を撫でる。早く、早くこうするべきだった。
しかしもう後悔しても遅い。これから後悔しないようにしなければならない。
トソンを強く抱きしめるのはその決意のあらわれのようでもあった。

253名も無きAAのようです:2016/06/04(土) 22:42:06 ID:bLfC7y560
それからトソンとセックスをした。制服を身につけないとても普通のセックス。
互いに身に着けていたものを全て脱いで裸でセックスをした。
まさぐりあい埋め合うように二人で何度も交わった。
今日は控えるべきなのでは、と思ったがトソンは求め続けた。
貪欲に欲しがりぼくはそれに応えようと善処した。
そうする事で書き換えなんてものは出来やしない。
出来るとすれば上書きだ。それでも構わないと思った。

交わって、果てて、交わって、果てて、ぼくとトソンは沈み込むように眠った。
目を覚ますともう夜明けが近い事が分かった。カーテンを引くとうっすら明るくなっている。
新しい朝。新しい旅立ち。ぼくとトソンは今日から生まれ変わるのだ。全てを捨てて。

(´・_ゝ・`)「遠くへ行こう」

二人分のコーヒーを入れる。トソンには好みを訊いてたっぷりのミルクを注ぐ。

(´・_ゝ・`)「君が昨夜急に家を飛び出して、家の人は行方不明届けを出しているだろうか」

(゚、゚トソン「恐らくは」

(´・_ゝ・`)「君とぼくの繋がりは残していない。 君のぼくのコンタクトは全て携帯電話で行われた。
      その携帯電話は君が持っている。 電源は家を出てすぐのところで切られている」

(゚、゚トソン「はい」

(´・_ゝ・`)「家出か拉致か迷うところだ。 更に君は自分の意志で家の門を出ている」

(゚、゚トソン「監視カメラに映っています。 デミタスさんの車は映っていないはず」

(´・_ゝ・`)「そして家の方も家主が君を抱いていたというやましい点がある。 それが苦痛で家出をしたと考えているかもしれない」

(゚、゚トソン「それが一番考えられると思います」

熱いコーヒーを飲む。トソンは猫舌のようで慎重に冷ましてから少し口をつける。

(´・_ゝ・`)「どこか遠くに行こう」

(゚、゚トソン「どこか遠く」

(´・_ゝ・`)「ぼく達の事を誰も知らないどこか遠くへ」

254名も無きAAのようです:2016/06/04(土) 22:43:57 ID:bLfC7y560
(゚、゚トソン「いいと思います」

(´・_ゝ・`)「せっかくだし、どこか行ってみたいところはあるかい」

(゚、゚トソン「父は多忙でしたが旅行好きで、色々なところに連れて行ってもらいました。 国内だと沖縄、北海道、神戸、京都、松山、青森、名古屋…」

(´・_ゝ・`)「殆ど行っているみたいだね」

(゚、゚トソン「あぁ、でも九州には行った事がありません。 縁がありませんでした」

(´・_ゝ・`)「九州か。 いいな、とても遠い」

(゚、゚トソン「遠いですよね」

(´・_ゝ・`)「いいんだ、遠い。 ぼく達の事を誰も知らない」

もう振り向く事もない。留まる事も必要ない。

(´・_ゝ・`)「行こう、九州」

(゚、゚トソン「今からですか」

(´・_ゝ・`)「早い方がいいさ。 君の日用品はきちんと買い揃えよう」

(゚、゚トソン「でも」

(´・_ゝ・`)「いいんだ。 君を放したくない。 一緒に行こう」

(゚、゚トソン「はい」

255名も無きAAのようです:2016/06/04(土) 22:45:44 ID:bLfC7y560
職場に今日は体調不良で休むと連絡をする。明日朝までの勤務で明後日以降は怪しまれるだろう。
キャリー・バッグに荷物をまとめてスバル・レガシィに積み込む。トソンの日用品はどこかのドラッグ・ストアで買おう。
まだ夜は明けたばかりで住人が出てくる気配はない。素早くトソンを車に乗せてアパートを発った。
谷津船橋インターチェンジから東関東道に入り湾岸線に出る。有明ジャンクションからレインボー・ブリッジを渡る。
レインボー・ブリッジから日の出が見える。東京の摩天楼はようやく眠りから覚めようとしている。
その眠りから街が覚めない内にぼく達は慣れ親しんだ東京を出て行ってしまう。アクセルを踏み込み、街を置き去りにする。
渋滞名所の浜崎橋ジャンクションも全く混雑がない。交通量は極めて少なく快適に都心を横断する事が出来る。
回送表示のタクシーやトラックがいつもよりスピードを上げて走っていく。渋谷の開けた谷間を通り過ぎる。
マークシティから出庫してきた銀座線の奇抜な色の車両がビルの中に設けられた駅へゆっくり入っていった。
用賀を過ぎてそのまま東名高速道路へ入った。東京インターチェンジからの合流で三車線の道路が始まる。
御殿場から新東名高速道路に入る。駿河湾沼津サービス・エリアでいったん休憩して更に西へ進む。
足柄付近で急カーブの連続だった東名高速と比べて新東名はそれほどのカーブも勾配もなく走りやすい。
三車線区間と二車線区間が交互にやって来るが全線で三車線に出来るスペースは確保されている。
浜松サービス・エリアを出て二月に開通したばかりの区間を通りそのまま伊勢湾岸自動車道に入る。
三つの橋が連なる名港トリトンで名古屋港を一気に駆け抜ける。
東名阪自動車道で流れが悪くなり新名神高速道路でまた一気に流れる。
土山サービス・エリアで刈谷パーキング・エリア以来の休憩を取った。
東京を出て六時間が過ぎていた。そこで昼食にする。
もう関西地方なのだ。西日本までやって来た。
夜が明けるまで東京にいたとは思えないところまで来た。

(゚、゚トソン「随分と遠くまで来ましたね」

(´・_ゝ・`)「あぁ」

256名も無きAAのようです:2016/06/04(土) 22:48:39 ID:bLfC7y560
上下線集約型の土山サービス・エリアのフード・コートで食事を取る。
凝り固まった身体の筋肉をほぐす。長時間の運転で全身が痛い。
普段これほどに長時間運転する事はなく慣れていないせいでもある。
毎日のように長距離を行き来するトラックドライバー達は大したものだ。
サービス・エリアで休憩するたび身体を伸ばしていたがそれでも疲労は溜まっている。

(゚、゚トソン「お疲れのようです」

(´・_ゝ・`)「もう若くないのだと痛感したよ」

三十代に入ってから一気に体力の衰えを感じていた。
間もなく四十代だ。こればかりは考えると気が滅入りそうになる。

(゚、゚トソン「今日はもうやめておきますか」

(´・_ゝ・`)「うん、そうだね、この辺りで泊まろう」

携帯電話で駐車場付きのビジネス・ホテルを探す。
この辺りとは言ってもまだ滋賀県に入ったばかりの山間部なのでその先の大津や草津で探す事にする。
ラブ・ホテルならば駐車場が自動的に用意されている。しかし宿泊ならばやはり普通のビジネス・ホテルの方が好ましい気がした。
結局、大津市内のビジネス・ホテルが良さそうだったのでそこに決める。名神高速道路のインターチェンジからもほど近い。

昼食を終えて車に戻る。柔らかいクッションの購入を真剣に検討する必要がありそうだ。
部分開通の新名神高速道路は草津で終わり、名神高速道路に合流する。
サービス・エリアと併設の大津インターチェンジで遂に高速道路を降りる。
一般道に出て下り坂を進むとすぐに市街地に出る。大津市の市街地は山と湖に挟まれているようだ。
道なりに進んでいくと琵琶湖が見えてくる。先にドラッグ・ストアに立ち寄りトソンの日用品を買い揃える。

予約をしておいた東横インは駅からも近く国道沿いにあった。国道の中央には線路が伸びている。
路面電車でも来るのかと信号待ちの間に待っていると駅から四両編成の普通の列車が走っていく。
道路の上を普通の列車が走るのも衝撃だが急カーブをなんとか曲がっていくのも驚きだ。
東横インにはタワー駐車場がありそこに車を停めてチェック・インを済ませる。

257名も無きAAのようです:2016/06/04(土) 22:51:34 ID:bLfC7y560
(゚、゚トソン「お疲れ様でした」

(´・_ゝ・`)「いやぁ、疲れた」

ベッドに座って深く息をついた。テレビの電源を入れてみると放送局が関東とは違うので戸惑う。
チャンネル一番はやはりNHKだがそれ以外の大手民放は順番が違い混乱する。

(゚、゚トソン「難しいですね」

(´・_ゝ・`)「難しいな」

せっかくなので琵琶湖を見に行く。
中央に線路が敷かれている国道を歩いていくと湖の畔に設けられた駅に出る。
そこで線路は交差点を横切る形で大きく曲がっているため電線が多く張り巡らされている。
歩道橋に上がると駅に繋がっていた。時刻表や運賃表を見ると先ほどの四両編成は京都まで行くようだ。
琵琶湖の近くで道路の上を路面電車のように走り、県境では山間の急勾配を走り、京都市内では地下鉄として走るらしい。
随分とマルチな活躍をするのだと思った。琵琶湖を映したような水色の四両編成は鐘のような警笛を鳴らしながら交差点に入っていく。
歩道橋は駅を出てもペデストリアンデッキとなって続き、そこから広大な琵琶湖を見渡す事が出来た。
吹き付ける風は強すぎずむしろ気持ちいいぐらいだった。

(´・_ゝ・`)「琵琶湖を初めて見たよ」

(゚、゚トソン「琵琶湖の下の方は結構絞られて狭くなっています。 彦根とか長浜の方が大きく見えますよ」

(´・_ゝ・`)「そうなのか。 ここだけでも海みたいに見えるけどね」

駅近くの洋食屋で夕食にする。瑞々しくカラフルなテリーヌが目を引いた。
昨晩にトソンを攫ってからもう丸一日が経とうとしている。
今朝まで東京で今では大津だ。遠いところまで来た。
しかし目指すべき九州はもっともっと先だ。


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