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YOU、恥ずかしがってないで小説投下しちゃいなYO!2

1名無しさん:2010/02/13(土) 18:55:28 ID:UhsYlmek
前スレ
YOU、恥ずかしがってないで小説投下しちゃいなYO!
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/study/7864/1157295929/l100

131名無しさん:2010/11/04(木) 22:28:55 ID:???
GJ!

132名無しさん:2010/11/05(金) 00:11:08 ID:m3ym4dkk
お泊まりまでもう少しです(゚∀゚)

−−−迷う指先の辿る軌跡−−− Ⅹ

「お、ミノルじゃん」
「おぉ、一日ぶり」
「昼飯か? こっちこいよ」
「あぁ、サナエもいるから、買ったら行くよ」
 オレとサナエがトレーを持って行くと、オレ達が隣り合って座れるように席を空けておいてくれていた。たぶんコースケの計らいだろう。
「今日は買い物か何か?」
 珍しくコースケから話しかけてきた。
「あぁ、まぁ、オレは付き合わされてるって感じだけどな」
「えー、ミノリだって買い物したじゃーん、かわいい下着とか」
「おだまり」
 ワタルとコースケが顔を見合わせて順番に口を開いた。
「かわいい、下着……?」
「ミノリ……?」
 明らかにワタルの視線がオレの胸元に向いてる。
「あー、下着はいいとして、名前な、ミノリになるんだと」
「下着はね〜、今日この子お泊まりするから勝負下着を選んであげたのよ〜♪」
 あぁ……頼むサナエ、黙っててくれ。
「お泊まり!? 男の家にか!?」
 ワタル、頼む、黙っててくれ。
「ノンノン、ケイコの家よ」
「え……なんでケイコんちで勝負下着なんだよ」


「だって、二人は両思いだもん」
 オレはもう黙々とポテトを食べることに集中してみた。
「でも女同士じゃん……?」
「それがどうしたの?」
 ワタルの反応が普通なんだろうな。
「けっこう、女性化した人が女の子とくっつくなんて珍しくないんだよ」
 コースケがワタルにそう言う。こいつけっこう詳しいな。
「そうかもしれんけど、でもやっぱ男相手の方がしっくりこないか?」
「体のパーツ的にはそうかもしれないけど、生理的な感覚は別じゃないか? ミノ……リはまだあんまり女の自覚なさそうだし」
 今日のコースケはよく喋るなぁ。
「そうねぇ、言葉遣いもあんまり変わらないし。いい加減オレっていうのはどうにかした方がいいと思うんだけどね〜」
「じゃぁ、なんて言えばいいんだよ」
「私でいいんじゃない?」
「………………善処する」
「まぁそれはそうと、ミノル、じゃない、ミノリはまだケイコのこと好きなんか?」
 ワタルの直球の質問にオレはもう諦めて素直に答えた。
「好きだよ」
「じゃぁ、抱きたいのか? 抱かれたいのか?」
「え?」
 思わず動きが止まってしまった。
「だって、好き同士ならそういうこともするだろうし」
「っていうか、おまえらずいぶん同性の恋愛に寛容だな」
 サナエとコースケは特にそうだ。
「あたしは男も女も好きだもん」
 うわ、何このカミングアウト。
「オレは……まぁ、驚いてはいるし釈然としないものはあるけどな。ただ好きならしょうがねーだろ、うん」
「誰が誰を好きだっていいのさ。器が変わったって魂は変わらないもんな」
 オレは友達に恵まれた幸せ者かもしれない。

「で、ミノ……リは抱きたい側なのか抱かれたい側なのかどっちなんだよ」
 ワタル、いい加減名前で詰まるな。
「う……それ答えなきゃいけないのか?」
「うん、それあたしも気になる。かわい〜く答えてね♪」
「いや、わからんて。体の性別で抱く側抱かれる側が決まるってならそりゃ以前のオレは抱く側でしかありえなかったけど……」
「こうなってみると、どっちもありうるってことか」
 コースケがふむふむといった感じでオレの言葉の先を引き継いだ。
「抱かれる側のミノリ……」
 ワタルとサナエがどうもそういう情景を想像したようで、なんかニヤけてる。恥ずかしいからやめてくれ。

 とまぁそんなわけで時間は過ぎていった。オレをそわそわさせながら。


 −続く−

133名無しさん:2010/11/05(金) 22:18:41 ID:???
お泊り楽しみです

134名無しさん:2010/11/05(金) 23:22:12 ID:IRLlXNxk
お泊まりと言えば一緒にお風呂ですよね、これは外せません( ゚д゚)

−−−迷う指先の辿る軌跡−−− ⅩⅠ

「じゃぁ、行ってくる」
「やるかやられるか、ね……」
「この勝敗が未来を決める、か……」
 サナエとワタルがなんかわけのわからんこと言ってるけど気にしないことにする。
「ま、あんまり気張らずにな」
 コースケだけは苦笑しながらまともな言葉をかけてくれた。まぁ、こいつにまでボケられたらオレ一人じゃつっこみきれん。

 そんなわけでケイコの家までやってきた。二階建ての一軒家だ。

「こんばんは〜」
 親はいないと言われたが、挨拶はちゃんとしないとな。
「はいは〜い」
 ケイコの声が聞こえて、ドアが開く。なんでオレはドキドキしてるんだ。ケイコんちに来るのが初めてってわけでもあるまいし。
「わお、スカートでくるとは意外」
「母さんにコーディネートされた。っていうか、こういうのしかないんだよ」
「そういえばあたしあんまりパンツあげなかったもんね」
 ここでいうパンツが、いわゆるズボンのことであると知るのはもうちょっと後だったが、まぁそれはいい。
「夕飯食べてきた?」
「いや、まだ」
「じゃぁちょっと待っててね、今作ってるから」
 ケイコが思ったより普通の態度なので、さっきまでドキドキしていた自分が少し恥ずかしかった。
 その後夕食を一緒に食べ、一緒に洗い物をして二人で紅茶を飲みながらテレビを見ていると、ピーピーと電子音が聞こえた。
「あ、お風呂溜まった」
 なるほど、お湯張り完了の音か。
「えと、そいえばパジャマって持ってきた?」
「あ、持ってきてない。歯ブラシとかはもってきたけど」
「じゃぁあたしの貸せばいいね。サイズはまぁ、平気でしょ」
「ケイコの方がちょっと身長高いもんな」
 それがちょっと悔しい。
「女としては身長高くない方がいいんだぞ。着れる服限られちゃうんだから」
「そういうもんか」
「ミノル……じゃなくてミノリか、ミノリがまだ成長するならいずれわかるよ」
 こうなってしまうと成長とかだいぶどうでもよく思えちゃうんだけどな。
「で、お風呂なんだけど……一緒に入る?」
「へあ?」
 思わず変な声が出てしまった。
「その方が時間短縮になるし、ほら、お湯の操作とかその場で教えられるじゃん?」
「ってか、ケイコはそれでいいのか?」
「一応女同士……だし?」
「まぁ……ケイコがいいならいいけど……」

 そんなわけでIN THE 風呂

「うわぁ……もう完全に女の子の体なんだねぇ」
 ケイコがちょっと頬を染めながらオレの体を見てそう言う。両手だけだと隠せるところに限りがあって恥ずかしい……
「ケイコの方が女っぽいじゃん」
 オレはそっぽを向きながらそう言った。っていうかなぁ、好きな女の裸が目の前にあるのになぁ、勃つモノがないってのは不思議な気持ちだ。
 その代わり、なんかこう、おしりというか股間というか、その辺がむずむずするというかなんというか……
「ところでさっきからなんでもじもじしてるの?」

 聞くか!? そこでそれ聞くか!?

「………わかんない」
 思わず赤くなって顔を背けるオレ。そしたら後ろ向きにされて背中から抱きしめられた。
「やっぱ、あたしはミノルがミノリになっても好きだわ」
 ケイコの体が暖かい。そして、やわらかい。
「オレ……私も、自分が女になってもケイコが好き」
「一人称が!」
「だって! サナエがいい加減言葉遣い直した方が良いって……」
「まぁ、かわいいから全然いいけど」
「褒められてる気がしなひゃっ!」

 ちょ! ケイコ自重。

「あらー、さっきもじもじしてたのはこれね〜」
 いつの間にかケイコの手がオレの股間に伸び、ちょっとまさぐるとその手をオレの前にもってきて見せた。見せやがったこいつ……
「これがいわゆる、男が勃つってのと一緒なんだと思うよ〜」
 ケイコの指が、トロッとした透明な液体で濡れていた。それはどうやらオレが分泌したものらしい。ってか、見せんな!
「見せるな恥ずかしい!」
「あたしの裸を見て濡れてくれたなら嬉しいな〜」
 とか言いながらケイコは、あろうことかその指を舐めた。
「ぎゃ〜!!!」
「何よ、大げさね。おいしいわよ〜ミノリの蜜は」
 もう真っ赤ですよわたしゃ。


 −続く−

135名無しさん:2010/11/06(土) 22:02:46 ID:???
wktkwktk

136名無しさん:2010/11/07(日) 01:04:50 ID:k4D2V7GI
短いですがいよいよです( ゚д゚)

−−−迷う指先の辿る軌跡−−− ⅩⅡ

「そんなとこいないでこっちきなよ〜」
 波乱の風呂を終えてようやく寝ることになったのだが、ケイコはなんか、一緒のベッドで寝る気満々みたい。
「………警戒してんだよ」
 結局あの後洗いっこすることになり、オレは恥ずかしくて触れないのにケイコにはさんざんあちこち触られるし、一緒に浴槽に入ったら首筋舐められるし耳舐められるし。
 なんでケイコはこんなにいろいろできるんだろうか、女の子とそういうことしたことあるんじゃないか?
「なによー、好きな子の体触りたくなるのは普通でしょ、ミノリはあたしの体触りたくないの?」
「そういうわけじゃないけど……ケイコはなんでそんなに普通に触れるの?」
「う〜ん、女の体に慣れてるからってのはあるかなぁ。それに……」
 ケイコがベッドから降りてきて部屋の入り口にいたオレの手を取り、ベッドまで連れて行く。
「ミノリは女の子の体そのものに慣れてないしね、その点では慣れてる私の方がリードするのは当然でしょ?」
 オレをベッドに座らせ、横から抱きしめてくる。シャンプーの匂いがする。
「初めてなのはお互い様だし、女同士なんだからどっちがリードしてもいいわけじゃん。ミノリが元々は男の子だったからーなんて気負うのはナシね」
 ケイコはケイコなりに、オレのことを考えてこういう風にしてくれてたのか。
 でも、オレが女性化した原因が自分にあるっていう気負いがあるんじゃなかろうか。
「……ケイコこそ、自分のせいでオレ……私が女になったって気負ってない?」
「全然ないとは言い切れないねぇ。でもミノリとこういうことしたいのも事実だし、それにね、平然としてるわけじゃないんだよ」
 ケイコがオレの頭を自分の胸のところで抱きしめる。鼓動が早い……
「ケイコも緊張してるの?」
「そりゃしてるさ! 自慢じゃないがあたしは処女だ!」
 胸張って言うな恥ずかしい。そういえば、オレも処女っていうのか、今は。
「えーと、で、オ……私はベッドのどっち側に寝ればいいの?」
「どっち側でもいいけど、その前に……」
 あぁ、やっぱり、と思いつつオレの小ぶりな胸を触り始めるケイコ。やめろ気持ちいい。
「ちょっと! おやめ!」
「なんでよー」
 ふくれるケイコ。
「電気消せ! 恥ずかしい!」
 と、オレが言うとケイコは嬉しそうににんまりして電気を消した。こいつ、オレが恥ずかしがると喜ぶらしい。S気質だったのか。

 で、オレが恥ずかしくてなかなか服を脱がないでいると、ケイコの方が先に服を脱いでくれた。
 触れるとまだほのかにお風呂上がりの暖かさがあり、柔らかくてすごく良い匂いがして、胸が熱くなる気がした。
「あのさ、ミノリ……こんな状況で聞くのもあれなんだけどさ……」
「ん?」
 ちなみにこんな状況ってのは、毛布の中で裸で抱き合ってる状態な。
「その……あのね、ミノリの初めての相手、あたしでいいの?」
「はぁ?」
 オレは思わず笑ってしまった。
「何を今更。泊まりにまできてて嫌だって言う方がどうかしてるでしょ」
「そ、そっか、そうよね」
「オレ……じゃない、私ももう女なんだし、ケイコと同じように考えればいいんじゃない?」
「が、がんばってみる」
「どちらかといえば気張らないようにがんばってよ」
 オレは苦笑いしてそう言った。

 以前は、オレが今のケイコみたいに悩む側だったんだよなぁ。そう思うとなんだか不思議だ。

「ねぇミノリ……」
「ん?」
 毛布の中で二人で横になり、足を絡め合って、オレの首の下にケイコは腕を通し、オレを抱きしめながらケイコが言った。
「あたしのこと好き?」
 少し不安がるような、呟くような声だった。愛しい人が、オレからの好意を言葉にして欲しいと求める。
「好きだよ、大好き」
 オレは想いをそのまま口にし、その口で柔らかい、唇を重ねるだけのキスをした。


 −続く−

137名無しさん:2010/11/07(日) 22:39:30 ID:???
エロktkr

138名無しさん:2010/11/07(日) 23:00:50 ID:6ojBzYPI
以降18禁です(・ω・)

−−−迷う指先の辿る軌跡−−− ⅩⅢ

「ん……」
 抱き合いながら、ケイコの手がオレ……私の背中を撫でる。それだけでも気持ちいい。
「ミノリ……」
 オ……私を仰向けに寝かせ、毛布と一緒に覆い被さるようにして、わ……たしを見つめる。その艶っぽい瞳にオじゃない私はどんな姿で映ってるんだろうか。
 ケイコの顔が近づいてくる。オレは目を閉じて少し口を開いた。
 重ねられた唇からなめらかに舌が入り込んでくる。私は必死に応じるが、ケイコも同じ気持ちなのかなぁ……
 静かな部屋に、舌を絡め合う音が響く。
「………かわいい胸ね」
 唇を離したケイコは、体を舌にずらしてそう言うと、私の乳首を舐めてきた。
「ひやっ!」
 思わず声が出てしまう。これ止めれないのかなぁ……恥ずかしい。

 しばらくケイコはそうやって私の乳首を舌でもてあそんだ。私は声抑えるのに必死。
 なのにケイコってば、下の方に手を伸ばしてきよった。
「ちょ! あっ、ん!」
 下手に抵抗するとやめちゃいそうなのでおとなしくされるがまま足を開く。
 べ、別に触って欲しいとかじゃないんだからね!
 触られたくないわけじゃないんだけど、反応してしまうのが恥ずかしくてどうしても拒むような言葉や態度が出てしまう。不思議だ。
「痛い?」
「痛くは……ない」
「気持ちいい?」
「………」
 言わすな。
「気持ちいいんだ〜」
 わかってるなら聞くな。
「痛かったら言ってね」
 ケイコがそう言うと、ゆっくりと指の先が体内に入ってくる感覚がした。初めての感覚に声もでない。
 なんかこう、痛みはないんだけど圧迫感があって……異物感が強い。
「大丈夫?」
 ケイコが限りなく優しい声でそう言う。私は笑顔でそれに応えた。

 私のナカはケイコの指を一本飲み込んだ。柔らかいね、とケイコが囁く。
 そしてその指を中で動かし始めた。
「は、あ……ん」
 き、気持ちいい……太ももから腰のあたりにかけてゾクゾクする……
 のだけど、上の方……お腹側の辺りを押されたとき、思わずケイコの手を抑えて止めてしまった。
「え、痛かった?」
「いや、ちがくて、その……」
「う〜ん……あ、おしっこ出そうになった?」
「ど、どうしてわかるの!?」
「そりゃぁ、女の子ですから」
 女レベルはケイコの方が遙かに高いもんな、そういえば。
「大丈夫よ、そう簡単に出たりしないし、出ちゃってもあたしは全然気にしないから」
「私が気にする……」
「じゃぁ、タオル敷いとこうか」
 というわけでお尻の下にバスタオルを敷き、再びケイコは私の陰部をいじり始めた。

「あ、だめ、ちょっと……ん!」
 さっきとは異質な強い刺激がきて、私は思わずのけぞってしまい、足を閉じそうになってしまった。
 驚いて下を見ると、ケイコの顔がちょうど私の股間のところにあった。
 え、もしかして、舐めてる? と思った途端、またあの強い刺激がきた。
「あ! ちょっと!」
 でも今度はやめてくれない。うんまぁ、やめなくてもいいんだけど……にしても刺激が……つよ……
「ん! あ! い、あ! だめ!」
「大丈夫よ〜」
 ケイコは私のこの感覚をわかってるかの様にそう言う。こっちは大丈夫じゃないっての!
「だめ……なんか、これ……あ、く、ん、ん〜!」
 こ、腰が砕ける…………私は体中に電気が走るような強烈な感覚に支配され、その後すごい脱力感に見舞われた。
「はぁ……はぁ……」
 どうにか呼吸をしてるって感じ。男の時とは全然ケタが違う……
「大丈夫?」
「はぁはぁ……たぶん……」
「これがね、女の子のイクってやつなんだよ」
 ケイコがそう言いながら優しく頭を撫でてくれた。つまり私は、クリトリスを舐められてイってしまったらしい。
 確かにすごく気持ちよかったけど、もうなんかいろいろ初めて過ぎて頭も感覚もパンクしそうだ。
「でも、それじゃぁケイコはイク感覚をもう知ってるのね?」
 完全に女としての感覚に支配されたからか、無意識に口調も女らしくなってしまった。
「え、えーと、まぁ、うん」
「さっき処女って言ってたってことは、一人でしてひゃっ!」
 陰部を撫でられて私の言葉は封じられた。こんだけしといて自分ばっか恥ずかしがるとかずるい!


−続く−

139名無しさん:2010/11/08(月) 20:54:04 ID:???
乙!

140名無しさん:2010/11/09(火) 00:47:41 ID:Rvc/xkoo
おつおつ!
こうやって新しい投下があるとおいちゃん嬉しいよ

ちなみにコテとか無いん?

141名無しさん:2010/11/09(火) 04:20:46 ID:kaoo03RU
えと、コテとかは考えてないのですよ(・ω・)
こういう風に書き込みするのもこのお話が初めてなもので(´∀`;)
あとリアル事情で祖父が亡くなってしまいまして……とりあえずキリもいいのでここで一端完結とさせていただきます。
ただ、後日談的なものや、他のキャラ視点、他のキャラのお話ってのも思いついてないわけではないので、お声があれば書きますね( ´∀`)


142名無しさん:2010/11/09(火) 04:21:05 ID:kaoo03RU
−−−迷う指先の辿る軌跡−−− ⅩⅣ

「ねぇ、私にもケイコの体触らせてよ」
 私はそう言いながら互いの位置を入れ替えて、ケイコを仰向けにし、両の掌を押さえて組み敷くようにしてみた。う〜ん、男の時にこうするべきだったか。
「う……なんか、恥ずかしい」
「さっきまでさんざんそういうこと私にしてたヤツがよく言うわ」
 私はまずキスをして、舌を絡めて、ケイコの股に足をおいて足を閉じれないようにし、手を押さえたまま乳首に舌を這わせた。少しだけ、気持ちよさそうな声が聞こえた。
 すぐに大きくなった乳首をしばらくそうして舌で弄び、私は押さえていた手を離してお腹の上に舌を這わせながら陰部に顔をもっていった。
「ミノリの舐めといてなんだけど、汚いから舐めなくていいよ」
「私のが舐めれるほどキレイならケイコのもきっとキレイだよ」
 何を言われたってやめるつもりはない。
 電気を消している上に毛布があるから真っ暗でよくわからないが、本で見た情報を必死に引っ張り出して照らし合わせつつ、ケイコの秘所に手を添えて開いてみる。
 暖かく湿った不思議な、独特な匂いがして、私の動悸を早くさせた。これが女の子の秘密の場所……まぁ、自分にもあるんだけどね。
「ん……」
 どうにか舌でクリトリスを探し当てると、舌先が触れた瞬間ケイコの体がビクッとなって声を漏らした。もっと自分の体をよく見て学んでおけばよかった……
 最初はいろいろ考えながらやっていたのだが、段々頭がボーッとしてきて、夢中でケイコのクリトリスを舌でなぶっていた。
 少しそうしていると、急にケイコの足がぎゅっと私の頭を挟むように閉じて、ケイコの体が撥ね、少し痙攣した。
「ちょ、待って」
 足の力を抜くと、ケイコがそう言って私の頭を押さえてきた。
「え?」
「あの……イっちゃったから……もういいよ」
 暗がりで恥ずかしそうにそう言うケイコがかわいかった。

 とりあえず私は顔を上げ、ケイコの顔を見ながら秘所、蜜で濡れている秘裂に指を這わせた。
「顔見るな!」
 腕で顔を隠されてしまった。まぁ、その態度もかわいいけど。
 私はぬるぬるする秘裂の、蜜の出所を見つけると、中指をゆっくり中へいれてみた。すんなり入るというわけでもないが、きつすぎるということもない。
 お返しとばかりにさっき私がやられたようにやわらかい上の壁を撫でる。
「……仕返しでしょ」
「もちろん」
 そうやってケイコの反応を楽しみながら秘所をいじっていると、ケイコがもどかしそうに私を引き寄せた。
「ねぇ、キスして」
 言われるまま、そっと唇を重ねる。

「あたしにもさせて、ミノリも気持ちよくしたい」
 私は濡れそぼったケイコの秘所を解放し、二人とも横向きに寝て互いの陰部に顔を近づける。
「ミノリ濡れてる、あたしのいじって濡れちゃったの?」
「ケイコだって、滴りそうなくらい潤ってるよ」
 そうやって互いを辱め合いながらそっと、牝の匂いでお互いを求めている秘裂に舌を這わせる。
「あ……ん……」
 少ししょっぱいような、不思議な味がする。
 が、すぐにそんなことも気にできなくなる。私がしてるようにケイコも私の秘所を舐めているのだから。
 ケイコの部屋には、ぴちゃぴちゃと淫靡な水音だけが響く。
 断続的に訪れる、予想できない感覚に翻弄されながらも必死にケイコへとお返しをする。もしかしたらケイコも同じ気持ちなのかも……
「ん……は、あ、だめ、ケイコ、なんか……」
「あ……ん、イキ……そう?」
「わかんない……気持ちいいの……」
 イクというのがどういうものかはまだよくわからないのだけど、なんだか腰の後ろがゾクゾクして意識をもっていかれそうな感じがする。
「いいよ……おいで……」
 ケイコがいっそう強く激しく私の陰部を吸い上げながら舌を這わせてくる。なんか、もう、どうにかなってしまいそうだ。
 声も出ないまま私も必死にケイコの秘所を激しく攻め立てる。ケイコの体も急にビクビクし始めたのはわかった。

 が、わかったのはそこまでで、私は体を電気が走り抜けたような感覚と腰から落下していくような快感に襲われてもう何が何だかわからなくなってしまった。

「ん……あ……はぁ……」
 ぐったりしている私の頭をケイコが撫でてくれた。
「気持ちよかった?」
「……うん……でも私ばっかりだった気がする」
「そんなことないよ、あたしも気持ちよかったし、なにより嬉しかったから」
 ケイコが唇を重ねてきた。さっきまで互いに快感を運んでいた口で今度は愛情を伝え合う。
 そして、裸のまま抱き合って私はすぐにまどろみの中へ沈んでいった。

 こうして、私達の初めての夜は過ぎていったのだった。


 −おしまい?−

143名無しさん:2010/11/09(火) 22:03:09 ID:???
お疲れさまでした

144こっぺぱん:2010/11/20(土) 01:17:29 ID:clJH0DcU
ども(・ω・)
「迷う指先の辿る軌跡」書いてた者です。
続きをちょろっと書いたのでのっけます〜
あとせっかくなのでコテつけさせていただきますね。
こっぺぱん好きなのでそのままこっぺぱんで(笑)
長くてエラーでちゃったので本文は↓です。

145こっぺぱん:2010/11/20(土) 01:20:11 ID:clJH0DcU
「上」と「下」に分かれてます。

−−−迷う指先の辿る軌跡−−− ⅩⅤ 「上」

 翌朝、カーテンの隙間から差し込む陽光で眠りから引っ張り出された私は、真っ先に目に入ったケイコの寝顔を見て反射的に昨夜のコトを思い出してしまった。
 すやすや眠るケイコの隣で赤面して縮こまる私。これでも元男なんだぜ。
「………」
 途中からは無我夢中であんまり覚えてないけど、恥ずかしさと幸福感が混ざったような不思議な時間だったと思う。
 やっぱり、男の頃に抱いてあげるべきだったかなぁとも思ったけど、そうならなかったってことはまぁ、そうなるべきじゃなかったってことなんだろう。
「………」
 とりあえず、もっかい寝よう。


「ミノリ〜そろそろ起きて〜」
 二回目に目を覚ましたときは、もうカーテン全開のリアル太陽拳状態だったのですぐ起きた。パジャマ姿のケイコがベッドの横にしゃがんで私をのぞき込んでいる。
「朝ご飯食べよう。ミノリはまず顔洗っておいで」
 そんな感じで昨晩のことには触れないようにつつがなく朝食を済ませ、特に目的もないので例の如く一緒にゲームをし、昼食を食べてしばらくしたら眠くなってきた。よく寝たのになぁ。
「なんか眠くなってきちゃった」
「お腹いっぱいだしねぇ。ちょっとお昼寝する?」
「う〜ん、なんか寝てばっかになっちゃうねぇ」
「じゃぁ、いちゃいちゃしようか」
 そう言うとケイコが後ろから抱きついてきた。背中が柔らかくて暖かい。
「昨日十分したじゃん」
「そうだけど、こういうのはし続けたって足りるなんてことないもん」
 それはそうかもしれない。
「かわいかったなぁミノリ。ねぇ、おっぱい触ってもいい?」
「だめって言っても触るんでしょーに」
「よくわかってらっしゃる」
 私はてっきり私を抱きしめる手がそのまま上がってくるのかと思ってたのだけど、ケイコは服の下に手を入れて直で触ろうとしてきた。
 まぁ、ブラジャーはしてるけど。
「ちょ、服の上からじゃないの!?」
「じゃぁこっちは服の上から」
 と言ってケイコは片方の手を私の股間に伸ばしてきた。
「そっちはだめ……あ……ちょっと、やめ……」
 反応してしまう体を止めるってのは今の私には無理で、段々艶を帯びてくるケイコの息が私の首をくすぐる。さすがにケイコは女の体には詳しくて、気持ちいいところを的確に攻めてくる。
 徐々に抵抗する力を奪われて、ケイコに抱かれながらあのよくわからない腰の後ろがゾクゾクする感覚が近づいてくる。
 と、そのとき。

「ただいま〜」

 玄関の方でガチャっと音がして、ケイコの親らしき声が聞こえてきた。思わず二人して硬直する。


 −続く−

146こっぺぱん:2010/11/20(土) 01:20:59 ID:clJH0DcU
−−−迷う指先の辿る軌跡−−− ⅩⅤ 「下」

「………いいところだったのに」
 とケイコは言うが、それはこっちのセリフだ。
「しょうがない、とりあえず下に……あ」
「………私のことこんなにしやがって」
 若干はぁはぁしながらおそらく頬を紅潮させて私は言っているのだろう。これが自分じゃなければすごい萌えるんだろうなぁ。
「ご、ごめんごめん」
 だがまぁ、親が帰ってきた以上こんなことを続けるわけにもいかず、とにかくケイコは一階へ降りていった。
 私はとにかく呼吸を整えて身繕いをし、その場で待つ。少しするとケイコが私を呼びに来たので、下へ降りた。ケイコの親には私のことをどう言ったらいいんだろうか……
「友達泊まりに呼んだんだ」
 ケイコがリビングにいる母親にそう言った。私はまだ廊下に隠れている。何故隠れる。
「サナエちゃんでも呼んだの?」
 一回……いや、二回くらいか、ケイコの親に会ったことはある。お母さんはなんかこう、天然っぽいというか、おおらかな感じだった。お父さんは……すごいケイコLOVEだった気がする。
「いや、ミノリ……あー、ミノルだよ、前にウチ遊びにきたことあるじゃん」
「なにぃー!?」
 奥からケイコのお父さんがすっ飛んできた。マンガみたいな展開だなおい。
「お、お、男と一晩過ごしたのかケイコ!?」
「あー、いや、男というか女というか……」
「ちょっとそいつ連れてきなさい!」
 ケイコがリビングから顔だけ出して苦笑し、手招きしたので私はガクブルしながら部屋に入った。
「おまえがウチのケイコ……を……?」
「えと……お邪魔してます」
 けっこうビクビクしながらそう言うと、ケイコのお父さんは毒気を抜かれたようにポカーンとしていた。お母さんは、あらまぁと言って私をまじまじ見ている。そりゃそうだわな。
「え、えぇと、あの、キミは……?」
「以前こちらにお邪魔したこともあるのですが、藤井といいます、藤井……今はミノリです」
 と、いうわけでケイコがいろいろ事情を説明し始めた。
 お母さんの方は最初驚いたものの、なんだかすぐ違和感なく受け入れてしまったようで、普通に娘の友人が来たという感じでお茶など淹れてくれた。
「うぅむ……しかし、この場合女の子だからと言って安心していいものかどうか……」
「平気平気、私が攻めだか……あ」
 またもやお父さんはぽかーんとしている。お母さんは、あらまぁと言っている。私はというと……うつむいてため息つくしかないじゃんか!

 という感じで、いろいろ大変だった。
 で、明日は月曜である。学校である。サナエとワタルとコースケのいる学校である。


 −続く−

147名無しさん:2010/11/20(土) 22:24:51 ID:???
GJ!

148こっぺぱん:2010/11/23(火) 00:53:44 ID:logTZuGI
−−−迷う指先の辿る軌跡−−− ⅩⅥ


「おはよー」
 さすがに着慣れてきたが、下半身の心許なさだけはぬぐえない女子制服を着て普通にいつも通り登校した。いつも通りだよね? 何もおかしくないよね?
「ミノリおはー、ちょっとこっちおいでこっち」
 さっそくサナエに呼ばれる。うむ、想定の範囲内である。
「お、ミノリ来たか。コースケ、行くぞ」
 サナエと示し合わせてでもいたのだろう、ワタルも私に気づくとコースケと一緒にサナエの元にやってきた。想定の範囲内。
「で、どうだった?」
 いきなりかい。でも想定の以下略。
「えぇまぁ、ご期待には添えずといいますか……」
 もちろん正直に答えるわけはない。ヤっちゃいましたなんて言えるか!
「ほうほう」
 あり? この反応は想定の範囲外だ。
「うんうん、想定の範囲内だね、その返事は」
 なんかサナエが余裕の笑みでそんなことを言っている。えー!?なにもしてないのー!?とか言われると思ったんだけど……
「コースケの言ったとおりね」
「え?」
「ミノリのことだから、仮になんかあっても絶対正直に言うはず無いって」
 私はじとーっとした目でコースケを見た。コースケは苦笑している。
「いやすまん、悪気はないんだが」
 それだけ私のことをよくわかってるってことは友達として喜ぶべきかもしれないけど、こういうときに発揮するなと小一時間以下略だ。
「とまぁそういうわけで、真打ち登場のようです。ケイコー!」
 ちょうど登校してきたケイコをサナエがめざとく見つけてこちらへ呼ぶ。私は疲れたように額に手を当てていろいろ諦めた。っていうかすでに疲れた。
「ん? どしたの?」
 机に鞄を置いたケイコがこちらへやってくる。私は机に突っ伏す作戦に出た。
「一昨日ミノリ泊まりに行ったんでしょ?」
「うん、来たけど」
「ミノリが泊まりに行く前に一緒に買い物しててさ、ミノリに新しい下着をオススメしたんだけど、どうだった?」
「あ〜、水色のレースのヤツでしょ、かわいかったよ〜」
 ………ばか。
「じゃぁさじゃぁさ、下着の中身も見たの〜?」
「え……ちょっと、どういう意味よ」
 さすがにケイコも踏みとどまってくれた。まぁ、焼け石に水って感じだけど。
「んもぅ焦れったいわねぇ、えっちはしたのってこと!」
 もっと小声で言えよサナエ。
「あー………ノーコメントで」
 よし、なかなか微妙な返事だ、グッジョブケイコ。
「ふ〜ん、何にもしてないなら別に恋愛感情とかのない友達同士のお泊まりだったのね〜。だったらあたしもミノリとえっちするチャンスはありそうね〜」
「だめ! それはだめ!」
「なんでよ〜二人はただの友達でしょ〜?」
「うぅ……」
 サナエめ……仕方ない、腹をくくろう。私は突っ伏していた顔をあげてケイコの手を取り、引き寄せて腰に抱きついた。
「ケイコはすっごいかわいかったよ。寝顔も、ベッドの中でもね」
 にんまりしながらそう言ってやると、案外サナエたちの方が後ずさった。ケイコは赤面してそうだな。
「ど、堂々とそう言われると対処できねぇぜ……」
 ワタルがそう言う。ちょうどそのときチャイムが鳴ったので、うまいことそれ以上の追求を避けることができた。


 まぁ、結局昼休みにまたさんざん取り調べされたんだけどね。


 −続く−

149名無しさん:2010/11/23(火) 22:08:14 ID:???
待ってました!

150こっぺぱん:2010/11/25(木) 01:05:22 ID:JHGz4tIQ
ネタがないときは新キャラと相場が決まっています\(^o^)/

−−−迷う指先の辿る軌跡−−− ⅩⅦ

 それからしばらく、特に変わったことはなかった。
 私もかなり女として生きることに慣れ、言葉遣いや仕草などもだいぶ[それっぽく]なったと思う。
 頭で考える言葉はまだちょっと男っぽいけど。

 で、ケイコとの関係だけど、うん、まぁ、つつがなくといった感じかなぁ。
 今までと変わらず、ウチでゲームすることもあるけど、サナエも一緒に三人で買い物に行ったりもする様になった。
 ワタルとコースケと遊ぶこともあるし、学校でも相変わらず男女両方と仲良くしてる。女子と関わる機会の方が増えたけど。

 そして、七月に入って早々、げんなりする出来事があった。

「ス、スクール水着………?」
 そう、水泳の授業である。
 私に手渡されたのは、ビニール袋にぴっちりと収まっている紺色の布だった。
 去年までは多少なり女子がそれを着るのを楽しみにしていたものだが、それを知っているだけに、自分が今度はそういう目で見られると思うとなんか、複雑だ。
 それにねぇ、なんかねぇ、どことなく自分が変な趣味の人間なんじゃないかっていう気がしてしまうわけよ。体的には相応しいんだろうけど、さすがにまだ女としての自覚がそこまで根付いてないし。
「これ、着るの?」
「うん」
 サナエとケイコは私が戸惑ってる方がおかしいとでも言うかのようだった。
「誰が?」
「あんたが」
「なんで?」
「あんた、海パンでおっぱい丸出しのまま水泳の授業やるつもりだったの?」
 まぁ、そういうことなのだろう。確かにそれはまずい。
「………男達の視線の意味を知ってるだけに、すごい嫌だ」
「大丈夫だよ、ミノリのおっぱい小さいから」
「……………さすがにそう言われるのはむかつくようになってきた」
 女らしくある方が相応しく、女らしくない方がだめっていう認識になるのはなかなか一筋縄ではいかないのである。
 元男のわかってもらいづらいジレンマなのだ。
 まぁでも女の子の胸は今でも好きなだけに、その魅力が弱いと言われるのはなんか嫌だ。ついに私も女の子の悩みを抱えるようになったかぁ。
「とにかく、これを着ない訳にはいかないから、ちゃんと家で一回着とくんだよ〜」
 それこそなんかすごい変態じみててアレなんだが。

 で、三日後に水泳の授業をひかえたある暑い火曜日、昼休みが終わってみんなが席につき、五限の開始を待っていたのだが、一人、昼休み中からずっと机に突っ伏して寝てるヤツがいて、近くの席のヤツがどんだけゆすってもまったく起きる気配がなかった。
 そうこうしてるうちに先生が来たんだけど、先生がゆすってもまったく起きず、保健の先生を呼ぶことになった。クラスがざわざわとうるさくなる。
 結局保健の先生もよくわからないらしく、あれこれしているうちに五限目が終わろうとしていた。
 そしてチャイムが鳴り、五限の授業の先生と保健の先生が頭を悩ませている中、そいつ「山瀬 レン」がもぞもぞと動き出し、顔を上げた。
「………あれ?」
「山瀬、どこか具合悪いのか? 五限の間ずっと眠ってて全然起きなかったんだぞ」
「え? もう昼休み終わってるんですか?」
「昼休みも何も、五限が終わってるぞ」
 山瀬が時計を見てびっくりしている。その山瀬を見るともないしに見ていた私は気がついた。
 気がついたので、先生に小声でそれを伝えてからちょっと山瀬を教室の外へ連れ出した。
「おい藤井、どうしたんだよ?」
 その質問には答えず、私は急いで山瀬の手を引きながら屋上扉前まできた。ここなら誰もこないだろう。
「山瀬、おまえ、夢見てなかった?」
「え? なんで知ってるの? オレ寝言とか言ってた?」
「………ちょっと失礼」
 私はそう言い、思い切って山瀬の股間に手を当てた。
「ちょ! 藤井何するんだよ!」
「あぁ………うん、ようこそ、こっちの世界へ」
「え………?」
 私がため息と共に苦笑しながらそう言うと、山瀬は慌ててズボンの中に手を入れ、硬直した。

 こいつがウチのクラスで二人目の女性化男子になったのである。


 −続く−

151名無しさん:2010/11/25(木) 22:28:41 ID:???
GJ!

152こっぺぱん:2010/11/26(金) 00:13:05 ID:3iosuKQc
−−−迷う指先の辿る軌跡−−− ⅩⅧ

 そんなわけで水泳の日がきた。ちなみに山瀬はちょっとあれからパニクっちゃっていろいろ大変だったらしく、水泳は見学ということになった。さすがに女体化してすぐ水着はきついだろうと。
 まぁ、私ですらまだきついからね。
「そういえば、どこで着替えるの?」
「プール脇に更衣室があるんだよ」
「へぇ……男子は教室で履き替えて上にシャツだけ着て行くから知らなかった」
 一応先生も気を遣ってくれて、見学でもいいと言ってくれたのだけど、さすがに水泳の授業全部見学するわけにもいかないし、最初やらないと嫌になっちゃいそうだからがんばるのだ。
 というわけで更衣室へ行く。いわゆる銭湯の脱衣所みたいな感じだった。ただ、窓が小さくて照明が少ないから暗い。あと狭い。
「えと……ここでみんな着替えるの?」
「そうだよ?」
「……恥ずかしいんだけど」
「またまた〜女同士じゃな〜い」
 ためらっていたらすでに下着姿まで脱衣が進んでいるサナエにどんどん服を脱がされてしまった。
「ほらほら、早く着替えなさ〜い」
「うぅ〜……」
 渋々脱がされた服を棚に入れ、棚の方を向いてブラジャーを外す。そのとき皆の目がキラーンと光った、らしい。私は見えてないから。
「ちょっと見せて!」
「男の子が女の子になるとどんな胸になるの!?」
 急にクラスの女の子達が群がってきて私の胸を凝視する。もちろん手で隠したけど。
「えぇ!? みんなと変わらないよぅ! ちっちゃいから見る価値ないよぅ!」
 ついつい口調まで女の子っぽくなってしまう。う〜ん、成長したなぁ私。などと悠長なことを考えている場合ではない。
「いいじゃない、あたしのも見せるから!」
 とみんなが口々に言う。それはちょっと見てみたいけどこっちが見られるのは……
 すると、後ろからケイコが私を抱きしめてきた。
「はいは〜い、みんなそれくらいにしてあげて。ミノリはシャイなのよ。それに、ミノリの体はあたしのものなの」
 ニヤッとしながらケイコがそう言った。それも十分恥ずかしいんだが。
「えぇ〜! ケイコの独り占めずるい〜!」
「だってあたしらはカップルだもん。彼女が困ってたら助けるのが彼女の役目でしょ」
「いや、それは彼氏の役目かと……」
 という私の言葉は誰も聞いていないようだ。
「けち〜!」
「修学旅行の温泉で見れるじゃない。それまではあたしに独占させてよ」
「しょうがないなぁ。でもケイコはもう見たのよね?」
「そりゃまぁ、全身くまなく……」
 それを聞いて赤面する私を見た女子達が急に息を荒くし始めた。おいおいこのクラスやばいんじゃないか。みんなレズっ気ありすぎだろ。

 というわけでようやく水着に着替え、プールサイドに出る。今日は日差しが強いので早く水に入りたいなぁ……
 などと思っていたらぞろぞろと男子が入ってきた。思わず硬直する。
「堂々としてなって。下手に恥ずかしがると男子は喜ぶだけよ」
 サナエがそう呟いてくれたので、かなりのがんばりを必要とはしたけどとりあえず堂々とすることにした。まぁ、ぶっちゃけ注目浴びるほど胸が大きいわけでもないし……と考えると少し悔しい。
 と思ったのだが、男子はどうやら女としての魅力云々よりも、クラスで初の女性化した元男子の体が気になるようで、すごい視線を感じる。
「う〜ん、見事に話題の的になってるね」
「すごく帰りたい」
 こういうときの女子の団結力は見事で、なるべく男子の目につかないようにとみんなが壁になってくれた。
「おい男子、あんまり藤井をじろじろ見るな。他の女子に失礼だぞ」
 体育の先生がそう言って男子をたしなめる。いや、まぁ、私を見るなって言うのはいいんだけど、その理由がちょっとおかしくないですか。

 そんな感じで授業はつつがなく進み、水に入ってしまえば視線も気にならなくなって、私はスク水の洗礼をどうにかこなしたのだった。
 クラスで初とか学年で初とか、過酷。


 −続く−

153名無しさん:2010/11/26(金) 22:14:25 ID:???
乙乙!

154こっぺぱん:2010/11/27(土) 00:33:31 ID:G8KOKJWQ
ちょと別の世界のお話として、短編をうpしていきます。
そんなに長くするつもりはないので、終わりまではこれを続けて書かせてもらいます〜
けっこう重くて暗いお話です。でもこの世界でないと書けない話なので(・ω・)

−−−失意の先、希望の終わり 「1」


 少年は、ずっと女の子になりたかった。
 自分は何故女の子に生まれてこなかったのだろうか、とずっと思っていた。

 女の子の着ている服が羨ましかった。
 女の子の持っているものが羨ましかった。
 女の子の仕草が羨ましかった。
 女の子の髪の長さが羨ましかった。
 女の子の小さくて柔らかい体が羨ましかった。

 だがこの世界には、彼にとってまだ救いがあった。
 15歳〜16歳まで、つまり17歳の誕生日まで女性と交わることがなければ、体が女性になるという奇跡が。
 メカニズムは未だ諸説入り乱れており判然としないのだが、ほぼ例外なく規定の歳まで女性との交わりのなかった男は女性となっている。
 小学生の頃そのことを知った少年は、ずっとずっとその日を待っていた。

 仕草が女っぽくて気持ち悪いと言われても、のばした髪をからかわれても、密かにもらったり買ったりした女性ものの服を着て、化粧をして、いつかこの体が女になるんだと夢を見て過ごした。

 中学時代、女性化した先輩達に憧れ、いろいろと話を聞いたりもした。
 相変わらずバカにされたり、気持ち悪いといわれたり、ただ自分が自分らしくするだけで疎まれもしたが、彼はずっと、毎日毎日いつか自分が女性化するときのことを考えて耐えていた。



 だが、彼の夢は、心ない者の手で潰されてしまった。


 −続く−

155こっぺぱん:2010/11/27(土) 23:58:23 ID:/E1wY3FM
−−−失意の先、希望の終わり 「2」

 15歳になり、あと二年の間に女になれる、いつ女になるのだろうと毎日わくわくしながら過ごしていたのだが、ある日彼は机の中に入っていた手紙、いかにもラブレター然としたその手紙に書かれていたとおり、放課後プール脇に訪れた。
 彼は男性が好きだったので、無骨な字と色気のない手紙と封筒に喜びを隠せなかった。
 手紙の主に会ったら、「もうじき女になれるから、それまで待ってて」と言うつもりだった。

 だが向かった先にいたのは、一組の男女。評判の悪い、彼を目の敵にしていた者達だった。
 彼は予想外の事態に歩みを止める。と、その瞬間を狙ったかのように後ろから羽交い締めにされ、先にいる二人にも拘束されてプールの中へ連れ込まれ、更衣室の床に仰向けに寝かされ、両足と両腕を押さえられてしまった。
 場所が場所なだけに声を出しても誰も来てくれそうになかった。
 もちろん抵抗はしたが、顔と腹を殴られてかなり力を奪われてしまい、評判の悪い男に足を押さえられ、もう一人の先ほど羽交い締めににされた男が彼の両腕を押さえていた。

 その男は、同学年の別クラスの男子で、密かに彼が好意を寄せていた人だった。
 意地の悪い下品な笑みを浮かべながら自分を押さえつけるその姿を見たとき、彼は最初の絶望を感じた。

「おまえきもちわりーんだよ」
「オレのコト好きだとかすげー迷惑なんだよ。女になってから改めて告白ーとか超気色わりぃ」
「男のくせに女になりたがるとかイカれてんじゃねぇの? きもちわりーしゃべり方しやがって、動きとかもきもちわりーんだよオカマ野郎」

 容赦なく彼に浴びせられる悪口雑言。
 そしてずっと見ているだけだった女が動き出し、彼に猿ぐつわをかけ、声を出せないようにしてから彼のズボンのチャックを下ろした。
 彼の血の気が引く。最悪の結果が頭の中をかけめぐる。


 −続く−

156こっぺぱん:2010/11/29(月) 00:41:34 ID:S9XE2YbU
−−−失意の先、希望の終わり 「3」

 二人の男がニヤニヤしながら彼を見下ろす中、同じくニヤニヤと下卑た笑みを浮かべながら彼の性器を下着から出した女は、おもむろにそれを口に含んで勃起させようとする。
 彼は女性に興味はなかったが、体の反応は性指向とは関係なく、彼の性器を勃起させる。
 彼は猿ぐつわをされながらも懸命に叫び、全力で手足を動かそうともがいた。涙を流しながら必死に暴れようとする。が、動こうとすると彼が思いを寄せていた男に頭突きをされてその力を奪われてしまう。

「あたしとヤれるんだから光栄に思いなさいよね」

 女はそう言って、彼の性器を己の性器に挿入した。



 行為が終わった後、男二人と女が去った薄暗い更衣室の中で、彼は座り込んでいた。
 口の端が切れて血を流しており、顔は涙で汚れ、手首は鬱血し、顔は殴られたのと頭突きで赤く腫れていた。
 しかしそんなことは彼にとっては些細なことだった。
 これならまだ、無理矢理レイプされる方がマシだ、と彼は思っていたかもしれない。
 ただ、虚ろで光の消えた彼の瞳からは、失意と絶望以外のものを感じることはできなかった。


 その日から、彼は笑顔を失った。


 彼が唯一すがっていた夢と希望、叶うまであと数日、もしかしたら数時間だったかもしれない、彼が幸せになるための唯一の道を、彼は理不尽に奪われた。
 それも、単に彼が性的マイノリティであるというだけで、それを不快に思ったというだけで、彼を失意の底へたたき落としたのだ。


 だが彼は一縷の望みを持ち続け、枷のような失意と絶望を両手に嵌められながらも、生き続けた。
 中学を卒業し、高校に入学し、16歳の誕生日を迎える。
 彼を蔑む者のいない環境で、女性化した者に羨望と嫉妬の視線を向けつつも、つつがなく高校生活を続けた。
 毎日うつむきながら暮らし、1%もないかもしれない可能性だけを頼りに生き続けた。
 食は細り、どんどんと痩せていく。
 絶望は時間がたっても色濃く、明るい態度など微塵も出せない彼はなかなか友達ができることもなかった。
 それすらも、彼にとってはどうでもいいことだったかもしれないが。


 そしてある冬の日。
 彼は、17歳の誕生日を迎えた。




 その次の日、彼は姿を消した。


 −続く−

157名無しさん:2010/11/29(月) 22:32:16 ID:???
いいですね〜。暗くて思い話は大好きです!

読んでいたら、自分も書いてみようかな…とか思うけど書けない…

158こっぺぱん:2010/11/29(月) 22:49:19 ID:EEHsRV8k
ちょっとこれは暗すぎたかなぁと思ったんですけどね(´∀`;)
こういう風に世界とテーマが確定してるとけっこう書きやすいですよ〜(・ω・)

ちなみに今回はかなりのグロ注意です。まじで。

−−−失意の先、希望の終わり 「4」

 彼が失踪して、もうすぐ一年が経つ。
 家族は捜索願を出し、自らもあちこちと彼を捜して回った。
 学校も生徒へ呼びかけたが、ほとんどの者は他人事としてしか受け取っておらず、彼を気にかける者などいなかったと言ってもいいだろう。

 そして、彼の同級生が高校三年生になり、卒業まで残すところ半年となったある初冬の朝。
 彼を絶望へ堕とした三人が共に進学した学校の門の前におびただしい血の後があった。
 すでに冷え切って地面に染み込み、赤黒くなっている血は最初、登校してくる者達にとってなんだかよくわからなかった。


 だが、一人が校庭を横切ろうとしたとき、悲鳴を上げた。


 その声に驚いた他の生徒や教師が続々と校庭に集まってくる。
 そして、校舎の方を見上げて皆が絶句していた。
 あまりのことに悲鳴も上げられない、そんな感じだった。


 そこには、屋上の鉄柵からそれぞれ三本のロープで両手首と首を釣られた三人の、惨殺死体があった。
 真ん中に、無理矢理彼の童貞を奪った女が、その両隣に彼を押さえつけていた男が、吊されている。
 その死体は言語に絶するほど無残だった。

 男達は性器を切断され、眼球に割り箸を突き刺され、情けなく垂れ下がっている舌には無数の針が刺さっており、両手足の爪は剥がされ、肛門から引きずり出された腸で足を拘束されていた。

 そして女の方は……更に惨い死体だった。
 乳房を根本から切り落とされ、どうやったのか足は腿から縦に裂かれてそれぞれ三枚の肉の板になっていて、眼球はえぐり取られてその中に切り落とされた指が詰めてあり、口の中には大量の排泄物が詰め込まれていた。
 そして……性器には切り落とされた隣の男の性器が挿れられ、肛門にももう片方の男の性器が挿れられていた。
 腹は切り裂かれて引きずり出された腸が首を絞め、剥き出しの子宮には大量のカッターが突き刺されていた。


 教師達は何事かと校庭に集まってくる生徒を止めることもできず、その場に硬直してこの想像を絶する光景に縛られていた。
 そして集まってきた生徒達はこの光景を目にして、その場で阿鼻叫喚の騒ぎを起こす。気絶できた者は幸せだったかもしれない。


 この惨劇は、後に歴史に残るほどの衝撃を持っていた。


 −続く−

159こっぺぱん:2010/11/30(火) 22:49:43 ID:vPkX.Bdc
−−−失意の先、希望の終わり 「5」

 あまりにも凄惨すぎる事態に対応は後手後手になり、ほとんどの生徒がこの惨死体を見て絶句し、あるいは叫び、あるいは暴れ出し、病院送りになるほどのショックを受けた者も少なくなかった。
 この日欠席していた生徒以外はほぼこの凄惨な光景をまぶたに焼き付けられ、その後は授業にならなかった。皆、目を閉じるとその光景が浮かび上がってじっとしていられず、過呼吸を起こして倒れる者や、発狂したかのように大声を上げて失神する者などが後を絶たなかった。
 目撃者に壮絶なトラウマを植え付けることになったこの事件は、警察を呼んでからもあまりの事態になかなかコトが進まなかった。
 そもそも警察の人間すらあまりの凄惨さに動くことができず、言葉を失うほどだったのだから。


 そして同時刻、ある人里離れた山奥で、爆発音があったと通報があった。


 伝えられた山道の脇には、うち捨てられたタイヤのない車が一台有り、ドアが吹き飛んで窓ガラスが全てはじけ飛んでいた。
 その中には、まったく原形をとどめていない肉片と骨片だけが、血まみれになって散らばっていた。
 そして汚れた車のボンネットには、ペンキでこう書いてあった。


『私は許さない 世界を呪い殺してやる』


 と。


 −続く−

160こっぺぱん:2010/12/02(木) 21:14:42 ID:NBXS60J2
一応これで完結です(・ω・)

−−−失意の先、希望の終わり 絶望の底、終わりの始まり

 歴史に残る惨劇は、各メディアで放送されることはなかった。
 だが、警察が保管していた写真がどこからか流出し、世界中に広がり、見た者を震撼させた。
 誰がどういう理由でこれを行ったかというコトに関しては、証拠がなく、憶測が飛び交うだけであった。
 ただ一つわかっていたこと、それは動機であろう。
 それは、恨み以外のなにものでもなかった。


 それから一年、この惨劇を直接目撃した者のほとんどが精神に問題を抱え、人によっては未だに入院している者までいた。
 さらには、このトラウマによって自殺する者までいた。
 それほどの衝撃だったこの事件も、直接目にしていない人達は一年経ってほとんど忘れていった。

 その頃、あちこちで怪死事件が相次いだ。
 犠牲者はほとんどが学生。しかも、どちらかと言えばガラが悪く評判も悪い、件の惨劇で殺された者達と同じ様なジャンルの者達ばかりだった。
 死に方もどこかそれを彷彿とさせるようなもので、眼球を棒状の物で突き抜かれていたり、腹を引き裂かれて内臓をぶちまけていたり、性器を切り落とされてそれを己の口に突っ込まれていたり、生理的嫌悪感を最大限に引き出すのが目的とでもいうかのような惨い死に様ばかりだった。

 しかも原因は不明。犯人と呼べるような存在すらなく、ほとんどが日常の中で突然苦しみだし、さんざん苦悶の悲鳴を上げた後このような無残な死体になるらしい。
 そして再び以前の惨劇が人々の話題に並ぶようになった。

 それと共に、惨殺事件と時を同じくして起こった怪死事件も、同時に話題に上った。
 おそらく車の中で爆発物を抱いたまま爆死したと思われる自殺者の、呪いだと。
 その車のボンネットに書いてあった呪いの言葉が、現実になったのだ、と。

161名無しかもしれない:2010/12/22(水) 20:02:14 ID:U4QwyX6s
凍結してるので投稿

朝だ。

…うん、寒い…
何なんだこの寒さは…
俺の息子さんの意識がなくなりそうなくらい寒い…

半開きの目で布団から顔を出してカレンダーを見た

12月22日、か
…《冬至》 最も夜が長い日。

「んなこたぁどーでもいーんだよ…」
ん? 声が高いな… んなこたぁどーでry
・・・・・・・え?

もう一度カレンダーを見直す。

12月22日
《冬至》


……《俺の誕生日》

162名無しさん:2010/12/22(水) 22:05:48 ID:???
続きwktk

163名無しかもしれない:2010/12/22(水) 22:06:44 ID:U4QwyX6s
続き

「なんで俺が…」
女体化するなんて思ってなかった。
あと一年耐えられるだろうと思っていた。

「……ハァ」
とりあえず状況確認

時計の針は10を指していた
朝の冷え込みからして午後はありえないだろう。

両親は旅行中、妹は学校にいってるとして
おそらく家には俺一人…

「兄ちゃん?」

!!!!!!
まさか伏兵がいたとは…
いや、部屋の外にいるからまだセーフだ。

「マンガ読みたいから部屋入るね。」

あっけなくドアを開けられてしまった。

164名無しかもしれない:2010/12/22(水) 23:05:59 ID:U4QwyX6s
続きかも

「えっ…」
妹の発言から何秒たっただろうか…
ウサイン・ボルトが1秒で10メートル走るとして
100メートルは走っただろう。
それくらい速いようで遅い時間がたった…

「…兄ちゃんなの?」

俺はゆっくり頷いた。
すまない妹よ…もう兄としてお前を守ることができない…

「もしかして…童貞なの?」

お前…はっきりと言いやがって…
そーだよ、童貞だよ。

ったく、愚か者が俺の顔を凝視してやがる。
これが童貞の末路だ、
何とでも言うがいい

「…かわいい」

「……は?」
何故だ、お前が出すべき言葉ではないはずだ…

「…とりあえず鏡みてきたら?」

165名無しかもしれない:2010/12/23(木) 12:44:55 ID:wOc1quHQ
表現下手でスミマソ
ツヅキ

妹にひっぱられ、俺はとうとう鏡の前に立った。
実は夢オチも考えられるのではないか?

《鏡》…通常、主な可視光線を反射する部分をもつ物体である (wiki参照

つまり俺が動くと鏡のなかの【何か】が動く…

鏡の中の妹を見た。
早くしろと言わんばかりの表情をしている。

焦ってはいけない。
夢なら鏡から【何か】がでて襲ってくるはずだ…

「もー…じれったいなぁー…」
突然妹が俺の首筋を触った。

「ふあぁっ!!」
こ、これは俺が出した声なのか?
鏡の中の【何か】も同じ行動をとった…

信じたくなかった…
しかし頭の固いwikiにもかかれていたように、
鏡は変わり果てた俺の姿を映していた…

166ファンタ ◆jz1amSfyfg:2010/12/31(金) 15:59:56 ID:ttwadXpA
【目指せ、甲子園−16】





「ふう……」

俺は今、花坂高校の食堂にいる。
すでにトイレで用は済ませたが、色々な事がいっぺんに起きて疲れたため、座れる場所で休憩をとっている。
しばらく休んで、だいぶ楽になってきた。

「もう大丈夫そうですわね」

春風さんが、俺の顔を覗き込み笑顔で言った。

「あ、はい。すいません、ご心配をおかけして……」
「気にしなくてもよろしいですわ。治ったなら行きますわよ、野球部を見学するのでしょう?」
「はい!」

春風さんには『俺が野球部を見学する』と説明しておいた。
春風さんは野球部に所属している上に、多分だが顔を覚えられた。なら、むしろ『見学』と称して堂々と見に行けばいい。
皮肉な事に、コンプレックスに思っていた高校生に見えない低身長が、今回に限っては俺を『高校見学に来た中学生』に見せるという状況にしてくれた。俺としては不本意な方法ではあったけど。
と、そんな訳で今、俺は野球部へと『案内』してもらってる。
しばらく無言で歩いてたが、春風さんが口を開いた。

「ところで、あなた」
「なんですか?」
「ポジションはどこですの?」

この場合の『ポジション』と言うのは、野球の守備位置の事だろう。

「キャッチャーです」

嘘だらけだと、ボロが出やすくなるだろうから、嘘はできるだけ少なめに。それ以外は本当の事を答える。

「女性でキャッチャーとは……珍しいですわね」

春風さんは、ジロジロと物珍しそうに俺を眺めている。
まあ、しかし実際珍しいかもしれない。
うちの先輩女子は二人とも内野だし、クラスメイトの女子は色んな面で捕手向きじゃない。春風さんも口ぶりからして捕手ではないだろう。
それにプロ・アマ問わず大体のチームでは男が正捕手やってるから、女性キャッチャーは確かに珍しい。

「昔からずっと捕手やってて、他の守備位置を経験した事ないんです」

だから、今となっては捕手をやっているというより、捕手しか出来ない状態に近い。

「そうでしたの」

春風さんの言葉を最後に、またしばらく無言の状態が続く。

「貴女、ここに見学に来たと言う事は受験するつもりですの?」

春風さんが、唐突に聞いてきた。

167ファンタ ◆jz1amSfyfg:2010/12/31(金) 16:00:38 ID:ttwadXpA
他に適当な言い訳が思いつかないし、ここは受験するつもりだと答えておいた方がいいだろう。

「はい、そのつもりです。入学できたら、もちろん野球部にも入るつもりです」
「そう……でも、ここの野球部はレベルが高いですわよ」
「それくらい承知の上です。むしろ望むところです」

言ってから少し後悔した。
たかだか中学生なのに、ちょっと発言が強気すぎただろうか。
生意気だとか思われたらどうしよう……悪いイメージはできるだけ与えたくないのに。

「自信満々ですわね。ま、それくらい自分に自信を持っていたほうがよろしいのですけど」

あれ? 意外と悪く思われてないっぽい。
とりあえず悪いイメージはないようで助かった。
そんな話をしているうちに玄関まで戻ってきていた。

「それじゃ、私は向こうの玄関から入ってきたので……」
「わかってますの。待ってますから早く靴を履き変えてきなさいな」
「はいっ!」

急いで来客用玄関まで戻って、靴を履き変えた。
そして、外から生徒用玄関に戻る途中で携帯電話に着信が入った。

「おっと、電話か……あ」

画面に表示されているのは【山吹陽助】の四文字だ。
トイレに行くって言ったきり、三十分以上も戻ってないからな……怒ってるだろうな。
恐る恐る通話ボタンを押し、電話口に出る。

「も、もしm」
「遅い!」
「うわっ!?」

いきなり怒鳴られた。
陽助は普段あまり怒ったりしないから、こういう時は怖い。普段怒らない人が怒ったりすると特段怖く思うアレな感じだ。

「今どこだよ」
「い、今は玄関にいるけど……」
「オレ、野球部が使っているグラウンドの近くのベンチにいるから、急いで来い。話はそれからだ」

それだけ告げられて、通話を切られた。
通話時間は三十秒にも満たなかったけど、かなり怒っている事は感じとれた。
トイレから出た後に、連絡の一つでも入れておいた方がよかったかもしれない。

「ヤバいかなぁ……」
「何がヤバいんですの?」
「うひぃ!?」

ビックリした! 凄くビックリした!

「きゃっ!? ど、どうしましたの? 『うひぃ』なんて変な声出して」

いきなり、後ろから声かけられたからだよ!

168ファンタ ◆jz1amSfyfg:2010/12/31(金) 16:01:25 ID:ttwadXpA
なんで、春風さんが俺の後ろにいるんだよ!

「ちょっと、聞いてますの?」
春風さんが俺の前で手をヒラヒラと振る。

「……あ、はい」

まだ少しビックリした時のショックが残っているが、なんとか気持ちを落ち着かせ、返事する。

「驚かせてしまったようですわね、ごめんなさい」
「いえっ、大丈夫ですから」

頭を下げ謝る春風さんに、恐縮してしまう。

「大丈夫ならよろしいんですが……ところで何がヤバいのか話して下さいません?」

もしかして、陽助との話を聞かれていた?
一瞬、背筋に寒いものを感じたが、さっきの会話をよくよく思い出してみたら、別に全部聞かれても正体がばれるような内容でもなかったと思い、野球部近くのベンチに向かいながら春風さんに話す事にした。
話す、とはいっても事実をそのまま話す事はなく、大筋はそのままに俺の仮の立場を考慮した話にアレンジした。

「なるほど。つまり、貴女は見学する前に用を足す事にした。だけど時間をかけすぎて貴女のお兄様はご立腹だと」
「まあ、そんな感じです」

アレンジを加えた結果、陽助は何故か『俺の兄』という事になった。どうしてこうなったんだろう。
ま、いいか。

「わかりました、私の方から貴女のお兄様に説明いたしますわ。野球部の二人が貴女に迷惑かけた事が原因の一つでもありますし」

……いい人だ。

「あ、ありがとうございます!」

キレ気味な陽助と対峙するのに、一人じゃ何かと心細い。なので、この願ってもない申し出をありがたく受けさせてもらう。
そうこう話しているうちに野球部が使用しているグラウンドが見えてきた。

「近くのベンチって言ってたから、ここら辺にあるはずなんですけど……」

辺りを見渡してみるが、ベンチらしき物は見当たらない。

「こっちですわ」

春風さんが、俺の手首を掴み歩き始めた。

「あ、はいっ!」

俺は慌てて春風さんに着いていきながら、気づかれないように携帯電話を取り出し、陽助にこっそりと一通のメールを送った。

169ファンタ ◆jz1amSfyfg:2010/12/31(金) 16:02:17 ID:ttwadXpA
送ったメールにはこう書いておいた。

『もう少しでそっちに着く。それと、お前は俺の兄になったから。説明は後でするから、それまでそういう事にしておいてくれ』

陽介は、俺が陽介の事を兄に仕立てあげた事を知らないので、伝えておく。
これを陽助が読んで兄のフリをしてくれれば、春風さんに怪しまれる事はないだろう。

「居ましたわ」

春風さんが囁くように呟き、俺の手首から手を離した。
春風さんの視線の先には、携帯電話の画面を覗きこんでいる陽助がいた。
送ったメールを読んでくれただろうか。
ふと、陽助がこっちを向いた。
俺の存在に気づいた途端、不機嫌そうな顔つきになった。

「遅いぞ」

顔つきと同じ不機嫌そうな声だった。
うわ、やっぱり怒ってるよ。
俺が怯んでいると、春風さんが一歩前に出た。

「失礼ですが、貴方は…………」

そこまで言い、言葉を切る。そして俺の方を向いた。

「そういえば、まだ貴女の名前を聞いてませんでしたわね」

このタイミングで聞くの!?
まあ、黙っている訳にもいかないので答えるけど。

「青や……っ」

つい本当の名前を言いそうになったが、ギリギリで気づいて言葉を止めた。危ない危ない。

「青や?」

春風さんは、中途半端な俺の言葉に首を傾げていた。

「あ、青……青谷翔子です」

とりあえず偽名を名乗っておいた。
考える時間が無かったのと、本当の名前を一部晒してしまったせいで、本名の名残が少し残ってしまっているが問題はないだろう。

「青谷翔子さんね」

小さく頷くと、春風さんは陽助の方に向き直った。

「お待たせして申し訳ありません。貴方は、ここにいる青谷翔子さんのお兄様で間違いありませんか?」

ここは、この偵察をバレずに済ませるか、否か、の重要な質問である。
ここで『いいえ』なんて答えようものなら、生徒でもないのに休日にここにいる陽助は、多分かなり不審がられるだろう。
それは陽助も承知しているはず。
加えて、さっきメールも送っておいたから大丈夫だ。
多分大丈夫なはずだ。

170ファンタ ◆jz1amSfyfg:2010/12/31(金) 16:02:59 ID:ttwadXpA
「ああ、そこにいるのはオレの妹だよ」

陽助の答えを聞き、内心で安堵のため息をついた。
よし……もしかしたら、メールを読んでいないんではないかと思ったが、無用な心配だったようだ。

「それではお兄様、貴方の妹さんが予想以上に時間を浪費してしまった事についてですが」

春風さんの言葉に、陽助が表情を変えた。

「その件については、私達の側に非がありますの」

そう前置きし、春風さんはさっき校舎の四階で起こった事について全て話した。

「……と言う訳です。うちの部員が貴方の妹さんに迷惑をかけてましたの。本当に申し訳ありませんでした」
「あ、いや、別にいいよ。あんたは妹を助けてくれたんだから、謝らなくてもいいと思うんだけど。それに結果的に妹は無事だったんだし」

頭を下げた春風さんに対して、陽助はやや焦りながらも謝らなくていいと答えた。

「しかし、部員のせいで迷惑をかけたのは事実ですし、誰かが頭を下げないと……」
「だから、あんたが下げなくても、ナンパした奴らに謝らせれば……」

謝る、謝らなくていい、と両者互いに一歩も譲らない。
このままだと時間が無駄になるので、別の事で気を逸らすしかないな。
春風さんの服を袖を軽く引っ張り、春風さんの注意を自分に向けてから、考えついた台詞を言う。

「春風さん、野球部の練習に戻らなくていいんですか……?」
「あ……そうでしたわ。結構長い時間抜けていたから早く戻らないと……できるならば、ゆっくりと見学していってほしいですわ」

春風さんはそう言い、急いでグラウンドに戻っていった。
春風さんの姿が見えなくなってから、陽助がポツリと呟いた。

「あの人、マネージャーじゃなかったのか……」





【目指せ、甲子園−16 おわり】

171ファンタ ◆jz1amSfyfg:2010/12/31(金) 16:03:43 ID:ttwadXpA
とりあえず、ここまで
引き続き、第17話をお楽しみください

172ファンタ ◆jz1amSfyfg:2010/12/31(金) 16:05:49 ID:ttwadXpA
【目指せ、甲子園−17】





偵察を終えた俺達は、行きと同じくみちる先輩のお父さんの車に乗せてもらっている。ただし、行き先は先輩の家ではなく泉原高校だ。
というのも、偵察を終えた俺達は、先輩のお父さんが来る前に、学校にいる市村さんに偵察が無事終わった事の連絡を携帯電話で入れた。
すると、坂本先輩が話したい事があるようなので学校に来るように伝えられた。
っていう事があり、現在泉原高校に向かっている訳だ。
それにしても……

「………………」
「………………」
「………………」
「………………」

俺を含め、全員が口を開こうともしない。はっきり言って、すごく気まずい雰囲気だ。

「き、君達、何かあったのかい?」

居心地悪そうに運転している先輩のお父さんが、やや遠慮がちに尋ねてきた。
誰も答えそうにない雰囲気だったので、俺が「まあ、少し……」と答えておいた。
実際には少しどころではなく結構、色々とあった。





俺達は春風さんと別れた後、どこから行こうか迷っていたが、坂本先輩が打撃練習を探れと言っていた事を思い出した。
そんな訳で、グラウンドの一端でマシンを並べて打撃練習をしている連中を見にいった。
連中の実力は、さすがの一言に尽きる。
マシンの球とはいえ、ほぼ全員が良い当たりを連発している。
これ……もしかしたら、今年の夏よりも打線の破壊力上がってるんじゃないか?
まずいな、こっちのピッチャーは陽助ひとりだから、この打線に捕まっても交代できない。好きなだけ打ち込まれる。
そうならないように、一人ひとりをじっくりと観察し、打撃時のクセ、得意なコースと球種・苦手なコースと球種をできるだけ頭に叩きこむ。

「なあ、翔太……じゃなかった、翔子」
「……なんだ?」
「いや、熱心に『見学』するのはいいんだけど、もう少しどうにかならないか?」

陽助に言われて俺は、今の自分がどんな状態なのか気づく。
グラウンドと歩道を隔てているフェンスにしがみつき、食い入るように練習を見つめていた。
この光景は、見学というには少々異常に思われるかもしれない。
いかん、目立ちそうだ。

「もっと早く言ってよ」

陽助に文句を言いつつ、フェンスから手を離す。

173ファンタ ◆jz1amSfyfg:2010/12/31(金) 16:06:49 ID:ttwadXpA
「すまん」
「もういい。それより、お前もちゃんと見ろ。そして覚えろ」

謝る陽助に、ちゃんと打者を見るように促す。
俺だけじゃ、とても全ての打者の事を覚えきれない。

「あいよー」

隣から気の抜けた返事が聞こえた。
その後、しばらく打撃練習を見て、覚えられる限界まで打者のデータを頭に詰め込んだ。

「よし、次行くぞ」
「おう」

暗記した打者データを忘れないように気をつけながら、走塁練習が行われている場所まで移動。

「ここだな」

走塁練習の場(から一番近い歩道)に到着。
走塁練習もしっかりと『見学』させてもらった。
だが、結局注目するほどの選手は見つからなかった。

「打線に比べると明らかに見劣りするな……」

打撃練習とは迫力が段違いだ。

「長打重視の重量打線に切り替えたのかね?」

これで全員ではないから、断言はできないが、おそらくそうだろう。
夏は、走攻守の全てが高いレベルでバランス良く整ったチームだった。
だが、目の前の練習風景からはその片鱗すら感じ取る事ができない。
思えば、夏に対決した俊足バッターは全員三年生だった。
となれば、人材不足でチームのスタイルを変えざるをえなくなったのか。
名門校でもこういう事があるとはな。
しかし、投手が一人しかいないこちら側にとっては最悪の辞退だ。
ただてさえ、陽助は球威や球速ではなくコントロールで勝負するタイプなのに、交代できずに投球回重ねて、スタミナ切れて、コントロールが乱れて、一気に打たれて……なんて状況が容易に想像できる。
今日、帰りに学校に寄って坂本先輩と話し合わないといけないな。

「よし、次だ」

一通り見てから、移動する事を陽助に伝える。

「え、もういいのか?」
「ああ、もういいや。ほら、行くよ」

不思議そうにしている陽助に手招きをし、次の目的地へと進む。

174ファンタ ◆jz1amSfyfg:2010/12/31(金) 16:07:50 ID:ttwadXpA
この後、守備練習の方にもいったのだが、飛び抜けてすごい選手はいなかった。上手いことは上手いんだけど。
ここら辺の予想外な感じは、走塁練習時と通じるものを感じる。
とにかく、次で最後だ。
最後に投球練習を見に行った。
投球練習の見学場所には、龍一とみちる先輩がいた。
よしよし、二人ともちゃんと練習の見学しているようだ。
意外な事に、龍一はあまり注目を浴びていなかった。遠めだからか、それとも練習に集中しているからか。
なんにせよ、いい事だ。
さて、俺達も練習を見学しよう。
とはいえ、ここにも大きな期待は寄せてはいない。
夏、向こうのエースは三年生だった。
超高校級の選手で、その人が一人でほぼ全ての試合を投げ抜いていた。
その反面、他の投手はほとんど登板していなかった。
さらにいうと、花坂高校はここ数年の間、人材は不作らしい。特に投手が酷いらしい。
って事なので、投手もある程度のレベルだろう。
坂本先輩を軸にすれば、投手攻略は決して難しい事ではない。
とはいえ、投手のレベル自体は花坂高校の方が、数も質も数段上なので気を抜かずに『見学』する。

しばらく『見学』し、めぼしい選手を見終えた頃、フェンスの向こう側から声をかけられた。

「あら、翔子さんじゃありませんの」

この特徴的な口調は、俺の知る限り一人しかいない。
声のした方を向くと、俺と同年代ぐらいの、セミロングの茶髪が妙に印象的な少女がそこにいた。

「やっぱり、春風さんだ」

予想通りだった。

「今はこっちの見学に来てますのね」
「はい、捕手ですから。ここが一番のメインのつもりです」

俺がそう言うと、春風さんは満足げな笑顔を見せた。

「ゆっくり見学していってほしいですの。私もこれから練習再開しますし……」
「はい、じっくりと勉強していきますっ!」

春風さんは頷くと、ブルペンに入り、横一列に並んでいるピッチャーの列に加わった。
春風さんはピッチャーか。
キャッチャーの方も列に加わり、しゃがんで捕球体勢に入る。それを確認した春風さんは、ゆっくりと振りかぶって−−

175ファンタ ◆jz1amSfyfg:2010/12/31(金) 16:08:40 ID:ttwadXpA
「着いたぞ、翔太」
「ん? ああ、学校か……」

どうやら、偵察の事を思い返しているうちに学校に着いたようだ。
しかし、思い返してみればみるほど、憂鬱になる。
まさか、春風さんがあれほどの投手だったとは。
あのストレートは本気で打てる気がしない。
これも皆に報告すんのか。
はぁ……気が重いなあ。





【目指せ、甲子園−17 おわり】

176ファンタ ◆jz1amSfyfg:2010/12/31(金) 16:09:46 ID:ttwadXpA
とりあえず、ここまで
今年は2話同時投下で終わりです
今年もこんな駄文に目を通してくださった方々、ありがとうございます

それでは皆さん、よいお年を!

来年こそ、野球パートが書けると信じて……

177名無しさん:2010/12/31(金) 23:22:08 ID:???
GJ!

178医学書的な小説 ◆wM2L2Jw7ro:2011/01/11(火) 02:10:41 ID:dOTnj9ZA
はじめまして変身シーンに特化した作品を作りたいと思いましたのでよければご覧ください

179医学書的な小説 ◆wM2L2Jw7ro:2011/01/11(火) 02:32:06 ID:dOTnj9ZA
性交未経験で15歳から16歳の年齢を迎えた男性は女体化する。この人類の謎に挑む学者は多かった。
医療技術の進歩が目覚しい21世紀においても性交以外で女体化を阻止したという事例は皆無なのである。
宗教の中では伝記や言い伝えなどで阻止を成功させた例が上げられているが怪しいものである。
性交をせずに男性のまま存在させる方法はあるのであろうか?

某一流大学某学部は学生を集めて女体化を実際に観察する実習が行われているのである。
通常の大学なら実習では男性被験者が女体化していく映像をDVD等で見ることが多いが、一流大学ともなれば実際に女体化を観察する実習が存在するのだ。
B1F第3実習室はそのために作られた教室で、観察室と実験室にガラスで区切られている。
学生と解説を行う教授は観察室へ入り実験室には被験者と安全の配慮から医師が待機する形を取ることが常識であった。
7月に被験者見つかったという事で女体化見学授業の日程が学生課の窓口に張り出される、申し込みはまずまずといったようである。
観察室は定員70名に対し35名が見学を希望した。残りの椅子は教授や撮影を行う助教授が陣取った。

つづきます

180医学書的な小説 ◆wM2L2Jw7ro:2011/01/11(火) 20:35:31 ID:dOTnj9ZA
それぞれバラバラと席につくと入り口が閉められる。
夏休み突入の講義ではあるが、35名の集まりは多いほうであろう。
実験室はまだカーテンで閉じられており最初に教授が30分ほどの講義を行った。
その後、カーテンが開けられるといかにも童貞であろうと思われる3名の被験者が全裸で入場してきた。
1人目はデブ、2人目はチビ 3人目はガリでヲタクっぽい連中だった。
全員、陰毛を残して全ての毛が綺麗に剃り落とされておりつるつるであった。
教授がバイト代を1人70万払ったと口にすると観察室から笑いが起こる。
その後、プリントが配られ被験者の名前以外の趣味から性癖にいたるまでの情報に目を通す。無論誕生日は3人とも本日であった。

つづきます こだしですみません

181名無しさん:2011/01/11(火) 21:59:44 ID:???
続きが気になる

182医学書的な小説 ◆wM2L2Jw7ro:2011/01/12(水) 02:29:34 ID:KLffF/dM
しかし、何時何分に変身が起こるのかは未だに大まかな時間以外予測不可能で教授、学生達もその時を待たなければならない。
巷では誕生日SEXと言う物が一時期はやっていたことがある。15歳から16歳の誕生日にSEXをする祝いも込められているのだが実はこれで100%女体化を防げていないのである。
発表された論文によると誕生日前日にSEXをした男子の女体化率は98%であるのに対して当日のSEX後の女体化率は90%と落ち込んでいるのだ。
これはどういうことなのか?実はSEXをしても手遅れな時間があるのだ。これを変化準備と論文では表現している。
変化準備後でも男性器は作用するため回避したと誤解されがちなのだが実はもう手遅れなのである。
変化準備はシャックリに似ているもので分かりにくいと書かれている。またコンドームも女体化を手助けしているのだ。
女性器から分泌される粘液に含まれる物質が女体化回避の重要ポイントこれを男性器が吸収することにより女体化を防ぐのである。
コンドームを装着してしまうと吸収が阻害され性行為が行われなかったのと同じ事になってしまうのである。
また、女性が分泌する粘液は酸素に弱く若干の温度差でも構成を壊してしまうガラス細工のようなものであり女性から搾取することは不可能に近いのであった。
こういう教材に目を通したり、被験者を観察したりしながら全員はその時を待つのである。
特に真性包茎のデブとカントン包茎のチビの陰部をスケッチする学生が多かった。包茎者の女体化はデータが少ないのである。
だが、1時間も経つとやる作業はなくなってくる。
学食に出かけるもの携帯で話し出す者も現れだす時間である。
まじめな学生は、以前被験者の三人をジッと監視している。その時である、ガリが痙攣するような動きを見せた。
ガラス向こうの実験室では医師の様子もあわただしくなった。ガリの変化準備現象が起こった数分後にチビとデブも変化準備現象が起こった。
誕生日の似たもの同士を狭い空間に置くと変身開始が似た時刻になるという説にここで納得する学生達。
変化準備現象から変化開始までは大体2時間程なのでここでまじめな学生も席を立つものが多かった。

次回変身です

183医学書的な小説 ◆wM2L2Jw7ro:2011/01/15(土) 02:29:52 ID:W8OHfoYI
変化準備が完了して2時間が経とうとした頃に被験者3人同時の変化が開始した。
女体化で一番最初に変化が起こる場所はペニスである。
3人のペニスは石垣から這い出そうとする蛇のようにピクピクと動き始め硬くなってゆく、普段の勃起レベルに達ししばらくはビクビクと震えるだけになるが
ペニスが主人の意思に逆らうのはここからである。
ビクビクと震えながら角のようにそそり立とうと更に硬く大きくなってゆくのだ。
ここでビキ、ブチという皮が裂ける音が聞こえた、真性包茎のデブとカントン包茎の肉棒が最後に皮を破りより大きく天を突いたのである。
既に勃起が激しく痛みは感じていないようである。異常ともいえる大きさに成長したペニスは血がみなぎり真っ赤リップのような姿でビクビクと震え続けている。
被験者の顔が快楽を味わうかのような表情を見せるしたで睾丸も意思を持つ生き物のように玉袋のなかで動きながら最後のお勤めを果たそうとしている。
そして、火山が噴火するかのようにそそり立つペニスから最初の白濁液が勢いよく放たれた。
何時もの何十倍たる量の精子打ち出され、そのまま床にべちゃべちゃと落ちて行った。
ペニスは荒れ狂う火山のように射精を続けさせ、被験者は立っているのもやっとな快楽に支配される。
女体化時における射精量は平均的男子で10リットリから20リットルと目を疑う多さなのだ。
ペニスから精液が噴出すたびに上がる情けない声、そして必死にシャッターを切る音、異様な空間である。
つづきます

184医学書的な小説 ◆wM2L2Jw7ro:2011/01/19(水) 21:04:32 ID:muAgspFk
角のようにいきり勃ち、噴出するマグマのように精液を噴出すこと30分が過ぎた。
床は3人の精子がドロドロと排水溝めざしながれている状況であるがそんなことはお構い無しであった。
快感が全てを支配しているため脱糞などの現象もみられ、その都度シャワーを掛け彼らの身体を洗い流しているのだ。
そしてとうとう最後の大噴火が起こった。人生最後の精子が振り絞るようにペニスから放出されると、角のように
燐としていたペニスはその長さのままデレンと垂れ下がってしまう。
こうなるといよいよ大きな変化が始まるのである。
まずは、睾丸がグリグリと腹部の奥へと入り込み、尿道や腸が遠慮をするように場所をあけていく、平均身長のガリは身体心臓に吸い込まれるような感覚を訴えている。
デブの方は肛門から余分な脂肪がが放出されはじめ目に見るがわかりやすい変化をみせてきた。

つづきます

185名無しさん:2011/01/20(木) 00:03:06 ID:7phhwnEU
乙!

186名無しさん:2011/03/19(土) 22:56:48 ID:5upCITMw
トリップってどうやってつけるんですか?

187名無しさん:2011/03/21(月) 00:18:08 ID:???
>>186
#のあとに好きな言葉入れる

188 ◆KitIyj783Q:2011/03/21(月) 20:03:49 ID:???
てす

189 ◆KitIyj783Q:2011/03/21(月) 20:05:01 ID:???
>>187
ありがとうございます

190ファンタ ◆jz1amSfyfg:2011/05/16(月) 17:29:47 ID:fbX9gnHw
【目指せ、甲子園−18】





試合当日。
試合開始前独特の緊張感を抱え、部室のドアを開ける。
やっぱり、誰もいない。
今の時間は八時。昨日伝えられた集合時間である九時より一時間早いのだが、緊張感から落ち着かなくて来てしまった。
さて、着替えるか。
偶然とはいえ誰もいないから、堂々と着替えられる。
…………やっぱり、万が一に備えてカーテンの向こう側で着替えよう。
いつもは女子部員が使っている部室の隅にあるカーテンスペースの中に入り、着替える。

「なんか、自分が段々と臆病になっていくみたいだ……」

ポツリと独り言を漏らし、頭に浮かんだマイナス思考を振り払うように、勢いよく首を振る。
いかんな。これから試合だってのにテンション下がるような真似をしちゃ。
テンションが下がるって言えば、先週は大変だったな。
偵察も偵察で大変だったんだけど、本当に大変なのはここに帰ってきてからだった。
まず、車から降りてグラウンドに向かったのだが、野球部員全員から『誰?』的な視線を向けられた。
まあ、俺達四人とも変装してたから仕方ないといえば仕方なかったのかもしれなかったのだけれども。
……まあ、すぐに偵察から帰ってきたメンバーだとわかってもらえたんだけど。ただし、俺以外。
だって、俺、女装してたし……。
俺以外の三人は、髪型変えるとか眼鏡などの小物使ってたりとかで変装して身分を偽っていたけど、俺なんか身分どころか性別まで偽っていたからね。
いや、生物学的には一応女なんだから真の姿だと言えない事もないけどさ。
とにかく、俺だけ俺だとわかってもらえるまで結構時間がかかった。
俺だと皆に認知されてからは、地獄だった。
坂本先輩は「ほう……」と妙な関心を受け、望からは「可愛い、ムカつくくらいに……」となぜか敵意を向けられ、麻生はただただ無言。安川は「うはwww生の女装少年wwwww」と相変わらずのテンションで接しられ、成田からは「楓たんの方が百倍可愛いですけど」と謎の優越感に浸られた。そして、市村さんにいたっては何をトチ狂ったのか、携帯電話のカメラ機能で俺の女装姿を撮るという暴挙にでた。

191ファンタ ◆jz1amSfyfg:2011/05/16(月) 17:30:30 ID:fbX9gnHw
当然、俺は止めてほしいと懇願したが、市村さんは笑顔で「大丈夫です、待ち受け画像にするだけですから」となんの答えにもなっていないどころか、ツッコミ待ちとしか思えないような台詞を吐き、携帯電話(俺の女装画像データ入り)をポケットにしまってしまった。

「あああ……」

市村さんの様子から見るに、消してほしいと説得しても聞きそうになかった。
というか、なんで俺の写真、しかも女装verなんかのを待ち受けにしたがるんだ。
冗談だと思いたい。
せめて、男の時のだったら、こう……好き……なんじゃないかと思ったりしてドキドキしたりするんだけど。
しかし、女装写真を待ち受けにされるという事でもドキドキする。ただし、誰に見られるかわかんないという恐怖心でドキドキする、というものだけど。
ちなみに後で、望から「早苗は可愛いものには目がない。だから、あんた撮られたんでしょうね……チッ」という、説明と舌打ちが入った。
実は、俺は市村さんに嫌われていて、撮影行為は嫌がらせの一種かも……なんて考えが頭をよぎっていただけに、望の説明はありがたかった。舌打ちは余計だったけど。
話が逸れたな。本筋に戻そう。
一悶着あった後、一旦全員を部室に集合させ、偵察の結果を口頭で告げた。
予想通り、全員が無言のまま俯いて、テンションの下がり具合が目に見えてわかった。
まずい、正直に言い過ぎたかな。しかし、相手の実力を抑え気味に言ったところでどうにもならないだろうしな……。
この後、坂本先輩が「さて、敵の力量もわかった事だし、対策を立てた練習を始めるぞ!」と皆を練習へと駆り立てたが、レベルの違いによるショックは尾を引き、その日はまともな練習にならなかった。
翌日以降は、練習の形を保てはしたが、昨日の悪い空気を引きずっており、皆どこか練習に集中しきれてなかった。
そんな状態の中、日付ばかりが進んでいき、変わらない重たい空気のままで今日を迎えた。
これ、どうすんだ。
こんな状態で勝てる訳がない。
あのクソ監督に「勝ってみせる」なんて大口叩いて、色々と手を尽くした結果が、今のこの状況だ。

「どうすればいいんだ……」

俺は、誰もいない部室で答えの出ない呟きを漏らす。

192ファンタ ◆jz1amSfyfg:2011/05/16(月) 17:31:08 ID:fbX9gnHw
俺が精神的に沈みかけた瞬間。
ガチャリ、とドアノブが回る音。
ビックリして反射的に一瞬だけ体が震える。

「おはようございます。一番乗り……と言う訳ではなさそうですね」

カーテンで隠されているので入口側は見えないが、声で来た人物が市村さんだとわかった。
しかし、市村さん来るの早いな。まだ一時間前なのに、と思い壁掛け時計に目をやると、すでに集合時間三十分前になっていた。
いつの間にっ!?

「あの、中にいるの坂本先輩か山岡先輩です……よね?」

市村さんが、恐る恐るといった口調でカーテンの向こう側にいる人物(俺)に声をかける。
市村さんが、なぜカーテンの向こう側にいる人物を確認するような行動をとったのか、理由はわかる。
もし、ここにいるのが俺じゃなく坂本先輩か山岡先輩だったら、市村さんが来た時点で挨拶の言葉をかけていただろう。
俺が知る限りじゃ、二人の先輩は、部室に来た部員に挨拶の言葉をかけないような人物じゃない。それは市村さんもわかっているはず。
だからこそ、挨拶の言葉のないこの状況をおかしく思っているのだろう。

「もしかして、望ちゃんですか?」

市村さんの足音と同じタイミングでキシ、キシと床の軋む音が聞こえる。
音の聞こえ方からして……こっちに近づいて来ている!
ちょっと待って。俺、まだ着替え中なんだけど!

「開けますよ、いいですね?」
市村さんが、カーテンに手をかける。

「ちょ、ちょっと待った!」
「えっ、青山君?」

カーテンにかかった手が止まった。

「あ、うん、俺。ちょっと着替え中でさ」
「青山君でしたか。返事ないから不安になったじゃないですか」
「ごめん、ちょっと考え事してたから」

カーテンから手が離れた。
ふう、危ないところだった。
なんせ、今の俺の格好はサラシ巻くために上半身裸という見られたら一発で女だとわかる……わか……らないかもな、この絶壁クラスの貧乳じゃ。
…………はあ、サラシ巻く意味あるんだろうか。まあ、万が一に備えて巻くけど。

「青山君、聞きたい事があるんですけどいいですか?」

さらしを巻いている途中で、市村さんが質問をしてきた。

「いいよ、なに?」
「なんで、わざわざそこで着替えるんですか?」

193ファンタ ◆jz1amSfyfg:2011/05/16(月) 17:31:56 ID:fbX9gnHw
さっきも言ったと思うが、ここは基本的に女子部員の使う着替えスペース。そして、男子部員は基本的に人目を気にしないので部室では人前でも普通に着替える。
つまり、俺がカーテンで区切られた空間の中で着替える事は不自然な事であり、市村さんが疑問に思うのも十分に考えられる。

「えーと……」

さらしを巻きながら、どんな理由をでっちあげようかと頭を働かせる。
…………うーん、思い浮かばないし、ここは別の話題にシフトしよう。丁度聞きたい事もあるし。

「後で話すよ。それより確認したい事があるんだけど」
「なんですか?」

よし、市村さんが会話にのってきた。

「あのさ、先週の事なんだけど」
「はい」
「その……俺の女装写真、撮ったよね?」
「はい、ちゃんと待ち受けにしてありますよ」
「あ、してあるんだ……」

市村さんの答えに気落ちする。
待ち受け発言は、冗談か、気の迷いであってほしかった。
さらに、落ち込んだ気分に連動するかのように、サラシが上手く巻けなくなる。
あと少しで巻き終わるってのに!

「〜〜っ!」

つい苛立ちに任せて、壁に拳を叩きつける。
ドン、と音が響き、右手に軽い痛みが走った。

「い、今の音なんですか? 何かあったんですか?」

カーテンの向こう側から市村さんが、どこか慌てたような口調で尋ねてきた。

「ちょっと体のバランス崩れちゃって、壁にぶつかっただけだよ」

苛ついて壁を殴った、などと言えるはずもなく、咄嗟に嘘をつく。

「あのー……どこか怪我とかは」
「してない、全っ然! どこも痛くないし!」

本当は、まだ右手に微かな痛みが残っているがほっとけば消えるだろうし、怪我を口実にこっちに来られちゃマズイので、必要以上に無傷をアピールした。

「でも、本人が気づかない怪我ってのもあるし……」
「無い無い。本当に大丈夫だって」

現在、出来うる限りの最高スピードでサラシを巻いている。
何故かって? 市村さんがカーテン越えてこっちに来そうな確率が増えたからだ。

「でも試合前ですし、ほんの少しだけでも具合のチェックを……」

サラシを巻き終えた(ただし、巻き具合が緩くて不安感有り)時点で、カーテンに市村さんの手がかかる。

194ファンタ ◆jz1amSfyfg:2011/05/16(月) 17:33:02 ID:fbX9gnHw
「あ、開けますよ〜?」

そう言い、市村さんがカーテンを開ける一瞬前に、試合用ユニフォーム(上)を着る。
結構きわどいタイミングだったけど、間に合ったよな? 上半身隠せたよな?

「さあ、ぶつけたとこ見せてください」

市村さんのこの反応からして、見られてないか、見られたけどバレてないかのどっちかだな。

「はい、気の済むまでどうぞ」

壁にぶつけたという設定の左腕を前に出すと、市村さんがしげしげと眺め、たまに触り、一部を押したりして痛くないか聞いてきたりした。
ひとしきりやり終えたところで満足したのか「大丈夫そうですね」と呟き、左腕から手を離した。

「だから言ったでしょ、大丈夫だ、って」

俺がそう言うと、市村さんはジトッとした目を俺に向け、ため息を吐いた。
なんだよ、その反応。

「青山君は不注意すぎです」
「俺が?」
「そうです。よりによって試合当日に怪我するなんて気を抜きすぎてます!」
「いや、怪我はしてないんだけど」
「言い訳なんて聞きたくありません!」

言い訳じゃなく、ちゃんと間違いを指摘したのに、この言われよう。
理不尽だ……。

「いいですか、今後このような事がないように気をつけてくださいよ」
「気をつけろと言われてもな……」

実際、気を配っても怪我する時はしてしまうんだし。

「次に同じような事があったら、お仕置きしますからね」
「お仕置きって、どんな?」
「そうですね…………今のわたしの携帯の待ち受け画面をクラスの皆に見せる、とかです」

それって、あの女装姿を公開するって事か。
……ひどい。

「わかった、気をつける。だから絶対に誰にも見せないでくれよ」
「はい、絶対に見せません」

これからは、どんな事があっても絶対に怪我しないようにしようと固く決意した。

195ファンタ ◆jz1amSfyfg:2011/05/16(月) 17:33:47 ID:fbX9gnHw
それから三十分が経過し、部室に全員が集まった。

「さて、それでは今日のオーダーを発表する」

坂本先輩が皆を見渡せる位置に立つ。手にはメモ用紙を持っていた。

「今回のオーダーについてだが、守備位置は元からいた部員は本職のポジションを、新入組は練習の成果を考慮した上で私が独断でポジションを決めた。打順については長打力より巧打力を重視し、上手い者から一番から順に入れている。その事を頭に入れた上でオーダーを聞いてくれ」

全員が頷く。
それを見て、坂本先輩はメモ用紙に視線を移した。

「では、発表する。

1番 ショート 坂本
2番 キャッチャー 青山
3番 セカンド 山岡
4番 ライト 川村
5番 ピッチャー 山吹
6番 センター 麻生
7番 レフト 明石
8番 サード 安川
9番 ファースト 成田

これが今回のオーダーだ」

俺を含めた数名が戸惑いや驚きの表情を浮かべた。しかし、文句や不満を言う者はいなかった。

「今回のオーダーについて、異議や意見のある者はいるか?」

全員、揃って閉口。
異議・意見無しと見た先輩は時計に目をやる。

「では、このオーダーで決定だ。この後は、試合の時間までグラウンドでストレッチとランニングを行う」

坂本先輩が部室を後にし、他の部員もそれに続く。

「いよいよか……」

誰もいなくなった部室で、一人呟く。
高校に入って初めてのスタメンでの試合。
正直な話、かなり緊張しているけど精一杯頑張らないと。

「おーい、翔太。何してんだ?」

なかなか部室を出ない俺に不思議に思ったのか、陽助が部室の中を覗き込んできた。

「なんでもねぇよ」
「ほら、早くグラウンド行こうぜ」
「ああ、今行く」

俺は、緊張で早まる心臓の鼓動を感じつつ、グラウンドへと向かった。





【目指せ、甲子園−18 おわり】

196ファンタ ◆jz1amSfyfg:2011/05/16(月) 17:34:32 ID:fbX9gnHw
とりあえずここまで
色々あって、これが今年初の投下となりました
今年は去年以上にスローペースになりそうですが、何卒よろしくお願いします


では、また次回

何か単発もの書いて投下して気分転換でもしようかな……

197名無しさん:2011/05/16(月) 21:18:18 ID:???
GJ!
投下待ってるよ

198名無しさん:2011/05/17(火) 01:44:43 ID:tkbLVnmM
乙乙!
避難所だけじゃなくて本スレにも投下して是非盛り上げてくださいな!

199 ◆jz1amSfyfg:2011/05/20(金) 23:10:12 ID:UgLvwPvo
>>198
今書いてる単発は本スレへの投下を検討しています

200名無しさん:2011/05/21(土) 09:15:08 ID:???
>>199 是非とも!楽しみにしてます。

201こっぺぱん:2011/06/25(土) 03:27:03 ID:xDO1X.e2
お久しぶりです!

ゆるゆると新章を書き始めたのでのっけますね〜

−−−迷う指先の辿る軌跡−−− ⅩⅨ :新しい性別1:

 夏休みまでもう少しとなったある日、暑い部屋の中で窓を全開にしながらカーテンを閉めて、二人の少年が裸でベッドに横になっていた。
「そういえば、友達が女の子になっちゃったんだっけ?」
 汗ばんだ額にかかる髪を上げて、小柄な方の少年がそう言った。
「あぁ、最初はいろいろ苦戦してたけど、最近はだいぶ慣れたみたいだよ」
 背の高い方の少年がベッドから体を起こしてそう答える。
「僕も早く女の子になりたいなぁ」
 小柄な少年は幸せそうな顔でそう言った。今年15歳になる彼は、女性にまったく興味が無いので、このまま順調に女体化の道を進むことを望んでいた。
 だが、背の高い少年は複雑な表情をして、カーテンを開けた。暑い西日が差し込み、彼、コースケを照らす。
 コースケは汗ばんだ体を風に晒しながら、西日に照らされる町並みを見ていた。そのコースケを見る小柄な少年は、コースケを見てなんとも言えない、愛しさと憂いを混ぜたような表情をしていた。


「あぢぃ……」


 期末テスト最終日を終えて、ちょうど暑さ絶頂の時間帯に学校から放り出された生徒達は陽炎の上るアスファルトの上を汗だくになって歩いていた。
「せめて地面が土ならいいのに……」
 手の甲で額の汗を拭うワタルに続いて、ミノリもぐったりした顔でそう言った。
 ワタルやコースケは校門を出るとすぐさまシャツをズボンから出し、ボタンを上から三つくらい外してバタバタさせはじめた。
 さすがにケイコやサナエ、特にミノリはそんなこともできないので、持参したウチワでパタパタやっている。
 女性化した当初は短かったミノリの髪もだいぶ伸び、今は小さいポニーテールにしている。暑いから。
 それにしても今日は異常に暑かった。
 先頭を歩くコースケとワタルの姿が、最後尾のケイコから見ても陽炎でほんの少し歪むほど、太陽がこれでもかと日本を照らしている。
 そして、もうすぐ皆がばらばらに家路に着く路地にさしかかる辺りで、異変は起こった。
 陽炎による歪みとは言い切れないほど、コースケの体がぐらりと揺れたのだ。
「!!」
 コースケの隣にいるワタルは暑さのあまり気づかず、ミノリとサナエはちょうどコースケが視界に入らないあたりを見ていて気づかなかった。
(熱射病……?大丈夫かしらコースケ……)
 健康体そのもので人に弱味を見せないコースケをここで心配するのが、ケイコはどうにも気が引けてしまい、できなかった。
「じゃぁみんなまた明日な」
 ワタルが手の甲で顎の汗を拭いながらそう言う。
「うん、途中で倒れないように気をつけてね〜」
 サナエのその言葉は、ケイコがコースケに向けて一番言いたい言葉だった。

 そして五人はそれぞれの家路に着いた。

「う………なんだ……さっきからずっと……」
 振り返っても皆が見えない場所まで来ると、コースケは必死にふらつきながら木陰を探してどうにかそこにしゃがみ込んだ。
 木にもたれかかりながら、持参しているぬるくなったスポーツドリンクを飲むが、体の異変は収まらなかった。
 それは、聞いていた熱射病の症状とは明らかに違ってきた。
 目眩と動悸から始まったそれは、次第に頭痛、息苦しさ、関節痛へと変化し、更には筋肉、神経までもが一斉に痛みを訴え始めたのだ。
 無論、それだけの痛みをただの中学生男子が長く耐えられるわけはなく、まもなくコースケの脳は意識の緊急停止をした。

 ある夏の、とても暑い日、少年の友人達の知らぬところで、少年は存在に危機にさらされていた。
 命ではなく、存在の。


 −続く−

202名無しさん:2011/06/25(土) 22:29:12 ID:CWB40kjY
乙です!
続きwktk

203DU-02 ◆Gqxh2MML9s:2011/06/26(日) 11:06:20 ID:sljr9cbc
新章キター!
乙GJ!続きに期待

204こっぺぱん:2011/06/29(水) 00:26:47 ID:FCZ4O1u.
wktkされたら書かずにはいられまい!!!

−−−迷う指先の辿る軌跡−−− ⅩⅩ :新しい性別2:

「おはー」
 翌日、サナエがそう言って教室に入ってきたとき、ケイコとミノリは二人してだるそうに団扇でパタパタと扇いでいた。
「おはよー」
 その姿を男子達は遠巻きに眺めながら複雑な表情をしていた。
「………夏服っていいな………」
「っていうか、ミノル……じゃないのか、ミノリを見てそう思ってるオレらって、何?」
「まぁ、女からしたら外道、なんじゃね?」
「男からしたら至極健全なだけなんだけどな」
 今日は風があるとはいえ、暑いものは暑い。シャツのボタンを二つまで外して団扇で中に風を送っている姿は、中三男子の視線を奪うに十分だった。
 ミノリは今日も髪を束ね、ちょこんと小さなポニーテールを作っている。
 が、本人の女子としての自覚はやはり薄く、机の上に座って足を開いて座っているのだ。
 そこへおあつらえ向きに強い風が入ってきた。
「うわ!」
 慌てて女子生徒達はスカートを押さえる。が、ミノリはすぐさまそれができず、周りの女子を見てから3テンポくらい遅れてスカートを押さえる。意味ねーし。
「………おい」
「あぁ、見た」
「水玉か……」
 男子達がそんなことをぼそぼそ呟くのを聞いて、女子達がいきり立った。
「あんたたちなんでミノリのパンツしか見てないのよ!!!」
「い、いや、だっておまえらの見ても怒るじゃねーか」
「それとこれとは話が別!!!」
「どう別なんだよ……」
 当のミノリは苦笑しながら少し恥ずかしそうにしている。
「あいつら、私のパンツなんか見て何が嬉しいのかね」
「そりゃーあんたが女だからよ」
「………確かに」
 まぁそう簡単に自覚できないよね、とケイコは思いつつミノリを見た。
 どんどん女になっていく、仲良しだった男の子。大好きだったことを、男の時代に伝えられなかった、今でも大好きな女の子。
 複雑な感情だった。加えて、ミノリがどんどん自分より可愛くなっていくのが、妬ましいような悔しいような、変な気持ちになったりもする。

「あぶねー! ギリギリ間にあったぜ!」
 ホームルームちょい前になって、汗だくのワタルが教室に入ってきた。
「あれ? コースケは?」
「あれ? そういえば今日はまだ見かけてないね」
「コースケが学校休むなんて珍しいね」
(もしかして昨日のあれ? ホントに熱射病で倒れたとかだったら……あのとき声をかけとくべきだった……?)
 ケイコがそんなことを思っていると、竹本先生が入ってきた。
「センセー、コースケって今日休みっスかー?」
 先生が口を開く前にワタルがそう言った。
「あぁ、しばらく休むそうだ、お母さんから電話があってな。どうも入院しているらしい」
「え!!!」
「詳しくは先生もわからないんだ。現時点では連絡を待つしかできん」
「そうッスか………」
 コースケは健康で、穏やかで、誰にでも優しくてあまり口数の多くない、少し大人びたヤツとしてクラスの皆がけっこう頼りにしている存在だった。
 そのコースケが入院するとなって、少なからず動揺を受けた者はけっこういた。
 特に、昨日一緒に下校したメンツは一気に心配でたまらなくなった。
(………いくらなんでも熱射病で長いこと入院はないよね……それに、それなら先生が容態を聞いてるはず。となると………)
 ケイコは嫌な予想を無理矢理押し殺すように唇の端を噛んだ。


 −続く−

205名無しさん:2011/06/29(水) 20:14:44 ID:vgIvHe5A
wktkwktk

206こっぺぱん:2011/07/02(土) 02:19:09 ID:UY0I91M.
−−−迷う指先の辿る軌跡−−− ⅩⅩⅡ :新しい性別4:


 飲み物を持ってリビングに行き、どう説明しようか困り果てたミノリが結局率直に皆に説明すると、案の定みんなポカーンとしていた。
「でまぁ、コースケは両性具有になった、と……」
 一番度肝を抜かれたのはおそらくワタルだろう。なんせ小学生の頃からつるんでいた親友だったのだから。
「声帯がイマイチ安定してなくて、かすれ声しかでないから説明もあんまり上手くできないんだって」
「前例はあるの?」
 ケイコの質問はミノリも気になっていたことだった。
 女性化に関しては掃いて捨てるほど前例があるので、多少の個人差はあれど、どれくらいの期間でどういう変化が起こるかは膨大なデータを元に予測できる。
 だがコースケの様な例を、皆は見たことも聞いたコトもなかった。
「ある」
 カスれた声でコースケがそう答える。
「すまん、声がこんなんでうまく説明できない。これを読んでくれ」
 そう言ってコースケはある冊子をミノリに渡した。その表紙にはこう書かれていた。

『新生半陰陽』

 コースケの様な存在を、新生半陰陽とカテゴライズするらしい。
「男性と女性、両方の性的特徴を持ちながら睾丸、子宮は存在せず、子孫を残すことは不可能……また、変化は男性の女性化よりも緩やかで、苦痛を伴う場合もある」
 ミノリはページをめくった。
「加えて、変化の過程で臓器ないし変化が著しい部位に欠損が生じる場合もある。時間をかけてのリハビリや、場合によっては手術などの処置も必要となる……」
 ミノリがコースケの方を見ると、彼……というか彼女というか、コースケは苦笑した。
「声はちょっと形成が遅れてるだけで失うことはないってさ。手術もしてないけど、成長痛のかなり強いのみたいのが不定期に来るから学校には行けなかった」
「ねぇ、原因っていうか、そのなんだっけ、新生半陰陽ってやつになる要因ってのはあったの?」
 サナエの質問にコースケは困った顔をして答えなかった。
 答えられないのか、答えたくないのか、それは誰にもわからなかったが。
「まぁいろいろ聞くならとにかく体が落ち着いてからの方がいいよね」
 ミノリはそう言って冊子を閉じ、コースケに返した。コースケは、すまん、と言ってそれを受け取った。


「………オレ、どう接したらいいんだろう」
 帰り道、ワタルがそう呟いた。
 そう思うのも無理はない。ミノリのときとはまた事情が違うのだ。サナエもいつになくおとなしく、複雑な表情をしている。
「今まで通りに接っすればいいと思うけどね、あたしは」
 ケイコはそう言いながらミノリの方を見た。意見を求めているようだ。
「今決めなくていいと思う。私がミノルからミノリになっても変わらない部分があるように、コースケも変わらない部分はあるハズ」
 つまるところ、悩めということだ。
 ここで悩めない程度なら、その程度の友情ということだろう。
「ただまぁ、なんか困ったら頼るのが友達だからね、私らはコースケもサポートするけど、ワタルもサポートするよ」
 ミノリはそう言って、その日を締めくくった。


 −続く−

207こっぺぱん:2011/07/02(土) 02:20:41 ID:UY0I91M.
あ、3と4間違えちゃった_| ̄|○
なので3を今載っけます_| ̄|○

−−−迷う指先の辿る軌跡−−− ⅩⅩⅠ :新しい性別3:

 結局その後、コースケは登校することなく終業式を迎えてしまい、皆は宿題と共に夏休みに入った。
 なので、宿題を届けついでにコースケの家にいつものメンツで行くコトにした。
「もしかして、コースケも女性化したとか?」
「あー……確かに15歳にはなってたけどなぁ」
 そんなことを話しながらアスファルトの上を歩いていく。
 今日は薄い雲が太陽をうっすら隠していて、風もあるので涼しい過ごしやすい日だった。
 程なくして、四人はコースケの家の前に着いた。住宅街の中のこじんまりした一戸建ちの家である。
 そして、少し緊張しながらワタルがインターホンのボタンを押す。
「あ、そういやコースケんち両親共働きだ」
 押してからワタルがそんなことを言い出した。
「おいおいおい、それじゃコースケが退院でもしてない限りウチら無駄足やんけ」
 サナエがバシッとワタルを叩きながらそうツッコミをいれる。
 が、そんなことをしているとおもむろにドアが開いた。
 そこには、少し痩せたように見えるコースケが立っていた。
「コースケ!!!」
 皆の驚きの声よりも、コースケは皆が来たことに驚いていたようだった。
「長いこと学校休みやがって、寂しかったぞおい!」
 ワタルが嬉しそうにそう言いながらコースケの肩を叩こうとしたとき、妙な違和感を感じた。
 コースケもいつもと様子が違うし、一言も喋っていない。
「コースケ、夏休みの宿題持って来たんだ。ここで渡すだけでもいいけど、よかったらしばらく休んでた事情とか教えてくれない? みんな心配してたんだよ」
 コースケは、彼らしからずしばし逡巡してから頷くと、家の方へ親指を向け、皆に家へ入るよう促した。


「おじゃましま〜す」
 家にはコースケ以外誰もいないようだった。
 ケイコとミノリは最後に玄関へ向かい、目配せをしてからコースケの方を見る。
 そして、目で何事か訴えてくるコースケの視線に頷き返し、ケイコとミノリはもう一度目配せをして頷いた。
「リビングあたりに勝手に陣取っちゃってもいい?」
 ケイコがコースケにそう言うと、コースケは頷いた。
「じゃぁ私はコースケと飲み物の用意でもしてくるよ」
(だからあの二人よろしく)
 と、後半はケイコにだけ聞こえる声でミノリが言った。


 そしてミノリはカバンをケイコに預けると、コースケと共にキッチンへ向かった。
「喋れない、元気そうだけど学校は来れない、皆へまとめて事情を説明するのが難しい、ってことから大体予測はついてるけど……」
 ミノリはそう言うと、容赦なくコースケの胸に手を置いた。
「ふむ、なるほど。私より大きい」
 チッと舌打ちしてそう言うミノリ。そこで悔しがるあたり彼女の成長が伺える。
「なぁミノリ」
 か細い声でコースケがそう言った。それは本当にか細くかすれていて、まるで声帯が機能していないかのような声だった。
 ミノリは不思議に思った。自分が女性化したときは、最初はそこまで大きく声変わりはせず、数日かけて少しずつ声が高くなっていったので、コースケが女性化したのなら、一ヶ月も経っているのに声が出ないのはおかしいのだ。
「オレが女性化したと思ってるだろ?」
「うん」
「ちょっと、違うんだ」
 コースケは手招きしてミノリを近くへ寄せ、ミノリの右手をとると、それを自分の股間へもっていった。
「…………え?」
「すまない、ミノリ以外にこうして証明するのは難しくて、損な役をやらせてしまって申し訳ない」
 ミノリはきょとんとしたまま少しの間呆然とした。
 コースケの下着の中で自分の手に触れたのは、二つの性器だったのだ。


 −続く−

208名無しさん:2011/07/03(日) 23:31:39 ID:oumDzyJM
うぉ、気になる展開!
続きに期待

209名無しさん:2011/07/04(月) 21:55:22 ID:???
ISネタは大好きです
難しい題材ですけど頑張って下さい

210こっぺぱん:2011/07/09(土) 01:16:02 ID:384xU/e2
ここでの肉体変化ルールは、あくまでも私の中での設定です(・ω・)

−−−迷う指先の辿る軌跡−−− ⅩⅩⅢ :新しい性別5:

 夏休みが始まって一週間経った。今日はミノリの家にケイコとサナエが来る予定だ。
「やほ〜宿題写しに来たよ〜!」
 サナエが元気よく堂々と宿題やらねぇ宣言してから入ってきた。
「はい、ジュース買ってきたよ」
 ケイコがスーパーの袋をミノリに渡す。
「ありがと。とりあえず私の部屋行ってて」
 ケイコは何度も来ているが、サナエはミノリの家に来るのは初めてだった。
「へぇ〜……なんか、男っぽくも女っぽくもない部屋ね」
 サナエの感想はそうだった。
 キチンと片付けられた整然とした部屋には、ポスターが貼られていることもなく、ぬいぐるみが置いてあることもなく、なんだかこざっぱりしすぎているように感じた。
「元からこんな感じだったけどね」
「ミノリってあんまり男らしくもないし女らしくもないから、納得といえば納得かな〜」
 ミノリがミノルだった頃も、特段男らしい面はなく、どちらかといえばおとなしい方だった。
 そして女性化した後も、決して女らしくもないが男っぽいわけでもなかった。
 彼女が今現在も、両方の性別の友達に恵まれている由縁はそのあたりにありそうだった。
「おまたせ〜」
 ミノリが飲み物を持って部屋に入ってきた。
「さて、それじゃまずは」
「宿題写す!」
「………嫌だと言ったら?」
「ふふふ……キミの弱点が首だということは発覚しているのだよ」
「ケイコ、彼女のピンチだよ、助けて」
「う〜ん、この場合あたしはサナエと一緒にミノリを喘がせてもいいんだけどねぇ」
「げ、外道が二人もいる……!」


 というわけで宿題写しは恙なく成功し、三人は今日集まった本題に入った。
 ちなみに夏期講習に行ってないのは、彼女らの学校が中高一貫で、ミノリもケイコも割と成績優秀な方だからである。
「あのあとちょいと調べてみたのよ」
 サナエがカバンからファイルを取り出すと、テーブルの上にネット上のページを印刷したものを並べた。
「以前ミノリに言ったと思うけど、あたしの先輩が女性化して女性と付き合ってたってのを知ったときに、いろいろ、調べてみたのよ」
 サナエは並べた紙の中から一枚を指さした。
「ちらっと見かけたことがあるだけでうろ覚えだったからこないだ思い出そうと必死だったんだけど、ページ辿っていったらこんな情報を見かけてね」
 それは誰かのブログの様だった。
 そのページに書かれていたことはこうだ。

『僕が新生半陰陽になった原因、いや、要因を考えてみる。原因と書くとなんだか印象が悪い。僕は新生半陰陽のこの体を気に入っているのだから』
『先生は教えてくれなかったけど、おそらく女性化との関わりも深いだろう。というか、女性化の別パターンと捉える方が正しいかもしれない』
『女性化が、遺伝子に組み込まれた作用だとするなら、女性との性的交わりで女性化を防ぐというのは、その行為によって【体が変化する遺伝子】に変化が起こるから、と考えられる』
『つまり、あらかじめ【女性化する遺伝子】と【女性化する遺伝子を変化させる遺伝子】が男性には備わっているのだ』
『それが、女性との交わりという行為によって、選択されるのだろう。それが何故かは、今は置いておくことにする』
 そう読み進めていった先、サナエが青いペンでマーキングしてある箇所をミノリとケイコが読んだとき、二人は驚きを隠せなかった。


『新生半陰陽の要因は、【女性化】と【女性化しない】という選択がされる前に、男性と交わることだと考えられる』


 −続く−

211名無しさん:2011/07/10(日) 22:58:19 ID:???
引きが上手い!続きwktk

212こっぺぱん:2011/07/24(日) 00:02:28 ID:6EC2RiH.
だいぶ時間がかかりました。流れけっこう変わります。

−−−迷う指先の辿る軌跡−−− ⅩⅩⅣ :新しい性別6:

 ミノリとケイコは固まった。
「………サナエ、これってマジ?」
「マジ。少なくとも、女性化が遺伝子による云々ってのは、正式に公開されてるよ」
 この文書の内容を信じるならば、コースケはすでに誰か、男とSEXをしていた、ということになる。
 すなわちそれは、コースケがホモセクシュアルかバイセクシュアルであることを意味していた。
「驚いた……」
 ミノリがそう呟く。
「コースケのやつ…………そんな大胆なことしてたのか」
 ずるっ、とサナエとケイコがこけた。
「驚くのそこかい!?」
「え? 二人とも違うの?」
「男とSEXしてたってことに驚くでしょ普通!」
 サナエが珍しくツッコミ側にまわった。
「いや、だって、私とケイコだって、ねぇ」
「あー、言われてみると確かに」
「ノロケか、ノロケかこのビッチ共!」
「ビッチとはなんだ失礼な! 女としかヤってないわ!」
「くぁぁぁぁムカツクぅぅぅぅ!!!」
 張り詰めた空気はあっという間にどこかへ行ってしまったようだ。


「あーあー、こんにちは、あーあー」
 コースケはようやく普通に喋れるくらいにまで調子を取り戻した声帯で発声練習をしていた。
 病院の先生に聞きたいことも山ほどあるし、なにより友達に伝えたいこと……いや、伝えなければならないことがあった。
 だがそれはとても億劫で、かなりの勇気を要求されるコト。
 拒絶や奇異の視線に晒される覚悟が、必要なコト。
 自分が、男性を性的対象としていたことの、カミングアウト。
「………」
 今までに築いてきた友人との絆が揺らぎ、あるいは切れてしまうかもしれない。
 それでも、今更嘘をついたり、取り繕ったりするよりはマシだ、と心を決めた。
 あとは機会と勇気。だがそれが一番困難な要素とも言える。
 期待はしない。でも自分を偽ることがないように、コースケは自分に言い聞かせながら発声練習を続けた。


「まぁとりあえずそういうわけだから、コースケはゲイもしくはバイなわけ」
 サナエはひとしきりミノリとケイコをいびってからそう、やや無理矢理まとめた。
「ってことはあいつ、彼氏いるのか」
「ねぇねぇ、これって受けと攻めどっちだと新生半陰陽になるの?」
「たぶん攻めじゃない? 女性化との関連性が云々って書いてあるみたいだし」
「っていうか、新生半陰陽って長いよね」
「もしかしてあれ? みんなが夢見るあの言葉?」
『ふたなり!』
 この三人には、コースケの変化はそんなに重い問題ではないようだった。


 −続く−

213名無しさん:2011/07/24(日) 00:14:40 ID:???
続き楽しみにしてました!

214こっぺぱん:2013/02/07(木) 00:43:39 ID:atvxkEY6
一年半もたってしまいましたが、続きを書いてみました。
見てくれる人がいなかったとしても思いつく限りは書いていきますね〜

−−−迷う指先の辿る軌跡−−− ⅩⅩⅤ :新しい性別7:

 そして新学期が始まった。
 まだ全然暑い九月の初日は、決まって防災訓練がある。
 ケイコ達は今までと何ら変わりなく登校し、ミノリはやはりどうしても短いスカートが慣れないらしく、できる限り丈を長くして登校している。
 去年の夏までは、周りにいる男子生徒と同じように、白いYシャツをだらしなくズボンの外に出しながら机に座ってくだらないことを話していたのだが……
 今年は、自分が話題の的になっている。
 中学三年生ともなると、夏休み中にいろいろアレなコトが周りのメンツに置きたんじゃないかと妄想したりするものだ。
 こと今の時代においては、この女体化現象を防ぐためにこれくらいの年頃でのSEXも珍しくなくなってもいたので、余計気になるようだった。
「おはよー」
「あちーよー」
 先に教室にいたサナエにミノリが挨拶すると、サナエはまたもブラウスの胸元を大きく開けてうちわでパタパタしていた。
「あんたねぇ……」
「あぁ、いいのいいの、あたしのBカップなんて見て喜ぶ男子はいないから」
 Bカップと聞いて男子達がざわついた。Bカップの乳ってどれくらいの大きさなんだ?と思ったようだ。
「変に男子煽るんじゃないよサナエは」
 ケイコがため息をつきながらそう言った。コースケの姿はまだ無い。
 そうこうしているうちにギリギリでワタルが教室へ入ってきて、すぐにホームルームが始まった。
「よーし、夏休みは終わったぞー現実を受け止めろー」
 竹本先生がそう言ってから出席を取り始めた。そのとき、コースケの名前は呼ばなかった。
 そして始業式のため、皆は体育館へ移動し始め、そのときミノリはケイコに言った。
「もしかして、コースケ転校とか?」
「ありえない話じゃないね……女体化とは違うから、ミノリみたいな対応で済むわけじゃないもんね……」
 同じコトを思ったのか、ワタルも複雑な表情をしていた。いつもの明るくてお調子者な様子は影を潜めている。
 始業式は始まったが、行われることは毎度同じで聞く必要もない話ばかりだったので、ミノリはコースケのコトを考えていた。
 自分は女性になってしまったが、それは前例の多い割と当たり前な出来事だった。変化になかなかついていけないこともみんな知っていて、サポートしてもらえた。
 だがコースケの場合は、その身に起こったことそのものが、周囲には未知の出来事と扱われるだろう。
 それに加えて、同性……男性だったころに、男性を性的対象としていたことも発覚してしまう。
 いつだって多数派は少数派を駆逐しようとする。今のように性別に関する事柄が以前より柔軟に受け入れられるようになったとはいえ、簡単に受け入れられるとは思えない。
 もし転校しないにしても、自分達のクラスですら受け入れてもらえるかわからない。そもそも、男女どっちとして扱うかを周りがどう決めるかも、わからない。
 そんな風にコースケのコトを思うと胸が痛んだ。


 始業式が終わり、ミノリ達は教室へ向かっていた。
「コースケ、どうなるんだろうね」
「単にまだ体が安定してなくて来れないってだけかもしれないよ」
 ケイコはそう言うが、サナエが見つけてきた情報によれば、変化は長くても二ヶ月前後で安定し始めるとのことだった。
 やはり、このままこの学校に通うのは無理なのかもしれない、そう思った。
「あれ? あなた教室間違えてない?」
 最初に教室のドアを開けた女子が、教室の中を見てそう言った。怪訝に思って皆もそれに追随し、もう片方のドアも開けられた。
 確かに見覚えのない生徒が教室の中にいる。制服は女子のモノだ。肩上くらいで髪を切りそろえた、長身で痩身の女子。
「間違えてないよ」
 皆が教室へ入ってその女子のところへ集まる。そして、よく顔が見れるところまできた男子が気づいた。
「もしかして………コースケ?!」
 ざわっと教室が騒がしくなりかけたが、そのときちょうど竹本先生がきて、とりあえず皆を静かにして席につかせた。


 −続く−

215名無しさん:2013/02/07(木) 23:51:14 ID:???
GJ!
続きとても嬉しいです

216こっぺぱん:2013/02/08(金) 23:57:33 ID:bNtL74f2
長いってerror出ちゃったんで二つにわけます。


−−−迷う指先の辿る軌跡−−− ⅩⅩⅥ :新しい性別8:

「えー、というわけで、新入生の紹介をする」
 竹本先生は皆を席につかせると咳払いをしてそう言い、コースケの席に座っている女生徒に自己紹介を促した。
「コウ、です。みんな知ってるとおり、元コースケです」
 真っ黒なストレートヘアーを肩できっちりと切りそろえ、コースケのときよりは低いが女子の中ではダントツに高い身長のその少女は、緊張した面持ちでそう言った。手足は非常に細く、女性らしさをそんなに感じさせない容姿だった。
「ワケあってコウは男性用の更衣室と男性用のトイレを使ってもらう」
 竹本先生がそう言うと、皆は訝しむような顔をした。それはそうだろう、女子生徒の制服を着ている者が男子トイレを使うのは不自然だと思うのが当たり前である。どうして? という声が上がるの無理はない。
 元々コースケはあまりおちゃらけた感じがなく、クラスでも物静かな方だったので、皆もどう対処したらいいかわからなかった。
 と、ミノリが立ち上がってこう言った。
「コウはさ、ぶっちゃけ男と女のどっちが好きなの?」
 皆の視線がミノリに集まった。そう、皆が聞きたかったのはそういう部類のコトなのである。
 ミノリとて注目を浴びたくはなかったし、これは一種の賭けでもあった。が、今こんなことを言えて、この空気をどうにかすることができるのは自分しかいないと思った末の発言だった。
「………私は………男が好きです」
 クラスはざわつかなかった。なんというか、一人称がオレの男っぽい女子が男を好きだと言っているビジュアルは、そんなに不自然ではなかったからだ。
 が、少しずつそのコトの意味を理解してきた者が出てきた。
「ちなみにそれって、いつから?」
 ミノリの質問に、コウはミノリの方へ向き直って答えた。
「ずっと前から」
 コウは手をぎゅっと握りしめ、顔をこわばらせてそう言った。近くの座っていた者は、コウの体が震えているのに気づいた。

217こっぺぱん:2013/02/08(金) 23:58:43 ID:bNtL74f2
新生半陰陽編はこれで終わりです〜


−−−迷う指先の辿る軌跡−−− ⅩⅩⅥ :新しい性別8:下

「先生、コウの扱いが男子の理由を説明してください」
 ミノリは、自分はわかっていたがあえてそう言った。先生も、それを承知の上で続けた。ちなみにミノリは後から先生に、助け船ありがとうと感謝された。
「あー、まぁなんというかな、コウのケースはちょっと希でな、男性器も女性器もあるんだ。だからまぁ、一応男性器のある者を女子のグループにいれるわけにはいかんのだ」
 これにはさすがにクラスがざわめき始めた。が、次に言ったミノリの言葉で、クラスは別に意味で騒がしくなった。
「ちょっと……それって………夢のふたなりじゃん!」
 ミノリが大げさにそう言って驚いたことで、クラスの中の張り詰めた空気が崩れた。
「すげぇ! ふたなりとかマジすげー! 羨ましすぎるじゃねぇか!」
 そう言ったのは、ワタルだった。
 その言葉を皮切りに、男子達の間で「たしかに……」「男の夢じゃねーか……」などと言う言葉がちらほら聞こえ始めた。それを見てミノリはホッと息を吐き、ワタルを見た。ワタルは複雑そうな笑顔を浮かべていたが、どこか吹っ切れたような印象もあった。

 こうして見事に、コースケはゲイだったという事実のインパクトを、コースケはふたなりになったという事実の方のインパクトで上書きしたのである。

 そして放課後、詳しい話を聞こうと集まってきたクラスのメンバーの間にサナエが入ってきて言った。
「ねぇねぇ、コーちゃん顔色よくないけど、まだ調子悪いんじゃないの?」
 質問責めにされているコウに助け船を出したのである。
「うん、ちょっとまだ本調子じゃないみたい」
 コウは苦笑いしながらそう言った。確かに顔色はあまりよくない。
「体が変わるときにすごい負担がかかる場合もあるんだってね、コーちゃんはそうだったんでしょ?」
「たぶん、ね。おかげですごい痩せちゃって」
 確かにコウの体は健康と言えないくらいには痩せていた。
「お話はまた今度聞かせてもらおうよ、ね、みんな」
 サナエがそう言うと、皆はコウの体を心配しながらそれぞれに散っていった。
 そしていつも通りのメンバーで、いつも通りの道を歩く。ついに男子生徒の制服が一人になってしまった。
「いやしかし、ナイスだったね今日のワタルは」
 まだ暑いアスファルトの上を歩きながらミノリがそう言った。
「っていうか、マジでミノリすげーな。オレはのっかっただけで、おまえがすげーよ。神かと思ったぜ」
「いやいや、生まれたときから神なんで」
「謙遜しねーのかよ!」
 ミノリとワタルのこんなやりとりを見て、コウは本当に本当に良い友達を持ったと思った。そう思っていたら、自然に涙が流れていた。
「二人とも、ありがとう。本当に感謝してる。二人が困ったときは私が全力で助けるから」
 涙を流しながら笑顔でそういうコウの顔は、とても魅力的な中性の美しさで彩られていた。


 −続く−

218名無しさん:2013/02/09(土) 00:50:14 ID:???
続きwktk

219こっぺぱん:2013/02/12(火) 02:19:39 ID:A9w.I97I
新章入りました〜

−−−迷う指先の辿る軌跡−−− ⅩⅩⅦ :曖昧な境界線1:

「秋だねぇ」
 五限目が始まる前の昼休み中に、ミノリは外を眺めてそう言った。木々に少しずつだが黄色や赤の色彩が混じってきている。今はもう10月だ。
「なんかさぁ、ウチのクラスあんまり女性化しないね」
 ミノリが教室に向き直ってそう言った。
「まぁねぇ、みんなけっこう対策とってるんじゃない?」
 ケイコがそう言う。
「ビッチがいるのか非処女が少ないだけなのか、どっちなんだろう」
「ミノリって未だに女視点と男視点が混じってるよね。今みたいなこと女子が言ったら酷い目に遭うよ」
 サナエがミノリに後ろから抱きつきながらそう言った。女性化して以来、サナエのスキンシップ率が異常に上がっている。ケイコより多いし、サナエも女同士だからかスキンシップまでは遠慮しなかった。それより先は遠慮していたが。
「そういえばさ、ワタルは女性化しないのかね」
 話題は三人の視線の先でコウと話しているワタルにうつっていった。ちなみのこの二人はなんだかんだで今でも仲が良い。最初は少し接し方に戸惑っていたが、今時は性的嗜好や性別変化で友情が壊れるなんてことの方が希だ。
 コウはその後顕著に肉体が変化することもなく、医者が言うには安定期に入った、とのことだった。傾向としては安定するのが早い方だったらしく、体の負担も少なくて済んだ。
 一説によると、心的ストレスが安定期を遠ざけるという話もある。安定期が早くきたということはそれだけ精神的に安定していた、ということなのかもしれない。
「本人曰く、もう童貞じゃないらしいよ」
 ミノリは以前ワタルがそう言っていたのを思いだして言った。あのときはまだコウはコースケだったなぁなどと思いながら。
「ぶっちゃけ見栄張ってるんだと思ってたけど、もしかしたらホントかもね。あ、私がそう思ってたって言わないでよ」
「言わないよ〜男ってそういうの気にするもんね。でも相手が誰かは気になるな〜」
 サナエがそう言ったところでチャイムが鳴り、皆席に戻っていった。

 そんなことを話していた翌週、体育祭の最中にミノリはワタルが見覚えのない女性と話しているのを見かけた。しかもかなり嬉しそうに話していた。
 あまり近くに行くのもどうかと思ったので、印象でしかわからないが女性はけっこうな美人だった。背中まである茶色い髪と170㎝近くはありそうな身長、細身でバランスの良い体はモデルと言っても通用しそうだったが、服装はラフで、女性的とも男性的とも言えなかった。
 おぼろげにしか見えなかったが、ワタルを見る表情は男を見る目というよりは弟を見る目の様だった気がする。が、ワタルに姉がいるという話は聞いたことがない。
「と、いうことがあったのだけど」
 そのことをミノリは体育祭が終わった後、着替えながらケイコとサナエに言った。
「体育祭に来てたってことはここのOBかなぁ? ワタルの彼女でワタルに会いに来たっていう可能性は?」
 こういった類の話はサナエが好むところである。
「う〜ん、彼女かどうかはわかんないなぁ。OBかどうかはもっとわかんない」
「やっば、すごい気になってきた」
「これは私も気になるわ」
 ミノリとサナエがなにやら盛り上がっているのを見ながら、ケイコは自分はあまり興味がないなぁと思っていた。少しひっかかるような気持ちがどこかにはあったが。
 そして帰り道でいつものメンバーになると、ミノリが間接的にその話題に触れた。
「ワタルってさ、彼女いるの?」
「なんだよいきなり!」
 予想通りの反応である。
「いや、ほら、女性化しないなーって」
 ワタルはすでに15歳になっている。童貞であればいつ女性化してもおかしくはない。
「オレは童貞じゃねーから女性化はしねぇって」
「ふむ、で、彼女は?」
「いないよ、残念ながらな」
 そう言うワタルの顔は本当に残念そうだった。


 −続く−

220こっぺぱん:2013/02/17(日) 00:42:10 ID:5DqYo.Us
−−−迷う指先の辿る軌跡−−− ⅩⅩⅧ :曖昧な境界線2:

 二年前の秋、当時中学一年生だった橋本ワタルは、剣道部で毎日稽古に明け暮れていた。
 近隣の中学の中では比較的強い方だったこの学校の剣道部は人数も多く、男子はもとより女子もかなりの人数がいて、少なくとも一年生は全員の名前など知るわけもなく、人の入れ替わりがあっても気付かないくらいには賑わっていた。
 ワタルは運動神経がよく、剣道の経験は無かったがコツを掴むのは経験の無い他の部員の中で一番早かった。さすがに試合に出るほどの強さはなかったが、部内の模擬戦ではなかなかの戦績を誇っており、ワタルはそれが自分の自信になっているのを感じていた。
 そんなとき、夏休みが終わって部活に行ってみると、見慣れない女子部員が誰よりも早く来て素振りをしているに遭遇した。
 ワタル自身もかなり熱心だったが、彼女の横顔は必死で、どことなく焦りのようなものをたたえているように見えた。
「おはようございます、ずいぶん熱心なんですね」
 素通りするわけにもいかないので、ワタルはそう挨拶した。すると女子部員は素振りの手を止めることなく、竹刀を振るリズムに合わせて区切りながら言った。
「人より、練習、しないと、強く、なれない、からね」
 愛想笑いを浮かべることもなく、そもそもワタルのコトを見ることもなく女子部員はそう言った。ワタルはなんとなく彼女がそれ以上のやりとりを望んでいないと感じたので、軽くお辞儀をすると剣道着に着替えに行った。

 その日の部活は模擬戦だったのだが、ワタルはイマイチ調子が出ず、久しぶりに勝ち数より負け数が多くなった。模擬戦は経験者とも戦うので、あまり勝敗の数にこだわりはもっていなかったが、この日は他人の戦績が気になった。
 そう、あの女子部員である。
 彼女は三年生で、同じ女子部員の中では群を抜いて強かった。まだまだ駆け出しのワタルの目から見ても、明らかに強かったのだ。
 だが一番強いというわけではなかった。
 彼女が勝てない女子が三人いた。
 ワタルはこの日の部活が終わった後、友達の部員に話を聞き、その女子が負けた相手のうち二人は女性化した元男子だということを知った。
 その女子の名前が、「マキ」というコトも知った。
 ワタルはマキの、一心不乱に竹刀を振る姿と、焦燥感のにじむ試合の光景がどうにも忘れられなかった。

 それからしばらくの間、ワタルは早めに部活へ行く様にし、行くと必ず竹刀を振っているマキに挨拶をした。会話をすることはなかったが、なんとなくお互いに顔を合わせるのが当たり前になっていった。
 そしてある日、ワタルが部活に行くと珍しくマキが胴着ではなく制服で剣道場の中に佇んでいた。
「おはようございます」
 少し不思議に思ったが、ワタルは普段通り挨拶をした。
「おはよう、いつも早いね、キミ」
 振り向いたマキの表情は、ワタルが初めて見る表情だった。笑顔でもなく、泣いているわけでもなく、ただ、眉をしかめてない顔を見るのは初めてだった。その表情が逆にワタルの気持ちをざわつかせた。
「先輩、今日は稽古しないんですか?」
 剣道場の入り口から、剣道場の中央にいるマキに話かける。この距離が、なんともいえない二人の薄くて細いつながりを表しているかのようだった。
「うん、しない。もうしないんだ」
 そう言うんじゃないかとワタルは内心思っていたので、あまり驚かなかった。
「キミ、一年生?」
「はい」
「そっか。ねぇ、二個質問してもいい?」
 ワタルが少し返事に戸惑っていると、答えを待たずにマキは質問をした。
「剣道好き?」
「はい、好きです。オレはここに来てから始めましたけど、強くもないですけど、好きです」
 ワタルはキッパリとそう言った。実際剣道は好きだった。勝ち負けが明確にわかる、自分の練習が如実に実力に反映される、そういった己を研磨するような部分が気に入っていた。
「そっかー。私も好き」
 ワタルはこのとき初めて女性の笑顔を真正面から見た。よく花のような笑顔と表現されるが、ワタルはその通りだと思った。華美ではなく、素朴で、道端に自生しているような、誰も名前を知らないような、そんな小さな花が浮かんできた。
「も一個質問ね。キミ、童貞?」
 あまりにも予想外すぎる質問に、ワタルは「へ?」と間抜けな声を出してしまった。


 −続く−

221名無しさん:2013/02/17(日) 22:29:06 ID:???
GJ!

222こっぺぱん:2013/02/21(木) 23:23:27 ID:dPd8MSv2
−−−迷う指先の辿る軌跡−−− ⅩⅩⅨ :曖昧な境界線3:

「あー、やっぱ童貞だよね。一年生だもんね」
 ワタルの反応を見て、マキはそう言った。
「そ、それってどういう……」
 ワタルがそう言いかけたところで、他の部員達が剣道場に入ってきた。
「あ、おはようございます」
「おはよう」
 マキは挨拶してくる部員達にそう短い挨拶だけ返して部室を後にした。ワタルはその後ろ姿を見ることができなかった。

 その後もワタルは誰よりも早く部活に来たが、あれ以来マキの姿を見ることはなかった。
 部員達がマキについて、受験のために引退したのではないか、と言っていたが、ワタルにはそうは思えなかった。もしそうなら、事前に言ってもいいはずだ、何も後ろめたいことなど無い。何も言わないのは何か言いにくい理由があるからではないか、とワタルは思っていた。
 このときはまだ、何故こんなにもマキのコトが気になるのかなどというコトに意識が向く余裕はなかった。
 そして年内最後の大会で、ワタルは二軍の先鋒だったが試合に出場することができた。
 チーム自体は負けてしまったが、ワタルは相手チームの先鋒と次鋒に勝ち、他の部員達から賞賛の言葉を浴びた。これは本当に嬉しかった。
 ただ一つ気がかりなのは、試合中一瞬だけ遠くにマキの姿を見たような気がしたことだった。試合後にそちらを確認したが、マキの姿は無かった。
「なぁ、今日マキ先輩来てたりしないか?」
 ワタルが帰りに同じチームの男子生徒にそう聞いた。
「オレは見かけてないけど……おまえやたらマキ先輩気にするな、惚れた?」
「いや、試合中見た気がしたんだよ」
「あー、そりゃ惚れてるなー」
「なんでそうなるんだよ」
 ワタルは少しムキになってそう言った。それを見て周りのメンバー達は、ほらなと言って笑った。
「なんだよおまえら、オレはそんなんじゃねーって。尊敬はしてるけどな」
 それには皆同意の様だった。
「まぁ確かに強かったよなー。オレ一回試合したけど、3秒で負けたよ」
「オレは7秒もったぜ!」
「大差ねーじゃんか」
 そんなことをみんなで話ながら帰路についた。結局マキは誰も見かけていないとのことで、マキの話題もすぐに出なくなった。

 その日の夜、ワタルの携帯電話に見知らぬアドレスからのメールが一通届いていた。
『初出場、初勝利おめでとう』
 それだけ書いてあり、差出人はわからなかった。
 が、ワタルはそれが、マキからのメールではないかと思った。わざわざチームメンバーがそんなことを送ってくるハズはないし、選手に選ばれなかった生徒がそんなことを言うとも思えない。ワタルは一年なので、憧れてくれる後輩がいるわけでもない。名前も知らない先輩がわざわざそんなことを言ってくるとも思えない。
 そうなると、マキしか思い当たらなかった。クラスの友達は試合に来ていないし、誰かがわざわざワタルの試合結果を話すとも思えなかった。
 ワタルは深夜になるまで返事を考え、こう返事をした。

『ありがとうございます。今度稽古をつけてもらえませんか?』

 そのメールを送ってから、ワタルは自分の中にある不思議な、焦燥感にも似た感情があることに気がついた。


 −続く−

223名無しさん:2013/02/24(日) 22:44:34 ID:???
続きwktk

224こっぺぱん:2013/03/01(金) 23:33:20 ID:Il0J.YuY
−−−迷う指先の辿る軌跡−−− ⅩⅩⅩ :曖昧な境界線4:

 新年最初の部活は、寒稽古という慣習に沿った稽古となった。
 学校に集まった部員達は、全員胴衣に着替えると、素足に草履で外へ出て、震えながら竹刀を振るう。
 が、元々剣道場は寒い。素足など剣士にとっては当たり前のことで、この寒さも200回程度竹刀を振るえば感じなくなる。もちろんその中にワタルもいた。
 三年生は引退してしまったが、物好きな数人がこれに参加している。稽古する側ではなく、サポートする側で。
「がんばれ〜終わったらおしるこだよ〜」
 三年生女子部員の一人がジャージ姿で後輩達にそう声をかける。
「おしるこより先輩が食べたいです」
「ダメ、諦めて女性化しろ」
 後輩のさりげなくないアプローチを同じくさりげなくない形で却下したのは、女子の中で一番強かったアユミという女子だった。
「先輩そこは可愛い後輩の前途のために純潔を捧げるとか……」
「いやないから。ないから」
「二回も言うなんてそんなに大事なコトですかそれ」
「大事大事。それにもうあたし純潔じゃないし」
「えー!!!」
 アユミの周りでおしるこを食べていた男子部員達がそう声を上げた。そこまで驚いたわけではない、どちらかといえば落胆した、が近いだろう。
 このご時世、中学時代に経験してしまう女子は少なくない。だからこそ逆に、純潔に希少価値があるとも言える。まぁ、処女幻想といったところだろう。
「そんな……オレ先輩のこと好きだったのに……」
「いやいやいや、処女じゃないからってなんで好きじゃなくなるのよ」
 アユミは男子部員のそんな冗談(好きなのは本当かもだが)に笑顔で答えた。言われて嬉しくなくはない。
「でも先輩、女性化したら剣道も厳しいんでしょう? けっこうそれで辞めた人いるじゃないスか」
「あーまぁね、男子の時みたいにはいかないよね。そのギャップに耐えられない人がいても不思議じゃないし、仕方ないと思うよ」
 部内最強の女子だからこそ、言えることだった。サボったり怪我をしたりではなく、いきなり自分が今まで勝ててた相手にまったく勝てなくなったら、それは精神的にかなりきついだろうということが、アユミだから言えた。彼女とて最初から強かったわけではないのだ。
「でも女性化してもやってる人いるよ? 剣道って試合の勝ち負けより自分を研磨することが大事だからね。マキも頑張ってたじゃん」
 少し離れておしるこを食べていたワタルの手が止まった。

 マキ先輩は、元男?

 そう思ったワタルは、その可能性を否定できなかった。
 マキを見かけ始めたのは突然で、それが目立たない男子部員が女性化したのだと考えれば納得がいく。必死に練習していたのも、どうにか元の状態に追いつこうと思った結果で、急に辞めると言い出したのも、限界を感じたから、と思うと、マキが女性化した元男である可能性の方が遙かに高いと思えてしまった。
「あの、アユミ先輩……」
「ん? 何? 純潔はあげないよ? もう無いし」
「いえ、あの、マキ先輩のコトなんですが……」
「あー、マキは純潔じゃない? 何、マキが気になるの?」
 そういうことを聞きたかったわけではないのだが、それを聞いたワタルは何故か顔が赤くなるような感覚を覚えた。マキが純潔であるというのを喜んでいる自分を気付かされた。
「マキはどうかなーちょっと頑なな子だからねー、まぁがんばんな!」
 あっけらかんとそう言うアユミに曖昧な笑顔で応じ、ワタルは元の場所に戻った。
 その後部員数人と一緒に片付けをし、ワタルは戸締まりを任されておしるこを作った鍋などを学校に返すと、カバンを取りに剣道場へ戻った。

 そこに、マキがいた。


 −続く−

225名無しさん:2013/03/01(金) 23:59:22 ID:???
wktk

226こっぺぱん:2013/03/06(水) 00:18:41 ID:U8akVWMg
−−−迷う指先の辿る軌跡−−− ⅩⅩⅩⅠ :曖昧な境界線5:

「おつかれ、おしるこおいしかった?」
 マキはワタルに背を向けたままそう言った。
「はい、おいしかったです」
 ワタルは平静を装いながらそう言った。まさかマキがいるとは思わなかった。
「稽古、つけてほしいんでしょ?」
 マキは振り返ってそう言い、ワタルに竹刀を渡した。ワタルは少しためらってから、竹刀を受け取った。
「でも先輩、防具つけないと」
「いいよ、本気だけど本気で打たない稽古だと思ってさ」
「いえ、でも女の子の肌に傷ついたら……」
 ワタルが言い終わる前にマキが打ち込んできた。ダンッ!と踏み込みの音が稽古場に響く。ワタルは咄嗟に竹刀を掲げてそれを受け止めた。互いにすぐさま間合いを取る。よく見ると、マキが打ち込んできた一撃は片手によるものだった。その一撃の重さにワタルは驚き、歯噛みした。悔しいと思った。
「やるね、不意を突いたんだけど」
 マキが右手を竹刀に添える。ワタルも竹刀を握り直し、足下を整えて構える。二人が完全に静止し、互いの目線が交錯する。
 時が止まったかのような静寂の後、先に動いたのはワタルだった。ワタルの竹刀の切っ先がほんの少し下がったのを見たマキは、素早く踏み込みながら最小限の軌道で竹刀を振り下ろした。後の先を狙ったワタルの誘いを見越して、それでは対応できないくらいの速さで動いたのだった。
 ワタルは咄嗟に竹刀を振り上げるが、マキの方がわずかに早かった。マキの竹刀が一瞬先にワタルの頭を捉え、竹刀の切っ先はワタルの肩に命中した。
「キミ、優しいね」
 マキは竹刀を引くと、ワタルにそう言った。ワタルは痛みに耐えながら、ぎこちない笑顔を返す。
「やっぱ、これじゃ稽古にならないか。でもキミは上手いね」
 マキはワタルを褒めたが、強いとは言わず上手いと言った。
「さすがに、防具着けてない女の子に本気出せませんよ」
 ワタルはそう言いながらマキの竹刀を受け取り、防具部屋に歩いて行った。マキから顔が見えなくなった途端に表情は痛みで歪んだ。マキの一撃は重く、やせ我慢もこれが限界だった。
「キミ、何も知らないの?」
 竹刀を置いて振り向いたワタルに向かってマキがそう言った。防具部屋のスライドドアに手を置いて、ワタルの方を見ずに、そう言った。
「知ってますよ」
 ワタルもマキの方を見ずにそう言った。
「そっか、それでも本気は出せなかったか」
 マキは少し笑った。ワタルからは逆光でシルエットしか見えなかったが、それはどこか自虐的な笑顔だった。
「先輩、本気にこだわりますね」
「そりゃね、だから剣道やめたんだもん」
 マキはドアに背中を預けて、右手を前に突き出した。
「手、握ってみ」
 ワタルは言われたとおり、おそるおそるマキの手を握った。そのコトでワタルがどきっとする前に、ワタルの手がぐっと力を込めて握られた。握力測定をするような感じだった。
「先輩、痛いですよ」
「ね? 振りほどくほど痛くないでしょ? これ私の本気なんだよ。前はみんな、痛がってすぐに振りほどいた」
 ワタルは言葉が出てこなかった。なんと言えばいいかわからなかった。
「ごめんね、ただの八つ当たり。キミが将来有望そうだったからつい、ね」
 マキはパッと手を離すとそう言って笑った。悲しそうな、しかし女性的で魅力的な笑顔だった。
「先輩、処女なんですか?」
「へ?」
 不意にワタルの口から出てきた言葉はそんな言葉だった。
 そしてお互い、今の光景を以前どこかで見たことがある、と思った。


 −続く−

227こっぺぱん:2013/03/07(木) 23:12:06 ID:3CGnJzBA
−−−迷う指先の辿る軌跡−−− ⅩⅩⅩⅡ :曖昧な境界線6:

「あ、えーと……なんて言ったの?」
「いや……すいません、なんでもないです」
 予想外の質問に狼狽えるマキと、気まずそうに顔を背けるワタル。稽古場に差し込む夕日は徐々にその色を濃くしていき、まだ冬休み中の学校はとても静かだった。
 沈黙はわずかな時間だったのだが、二人にとってはとてつもなく長い時間に感じた。次にどんな言葉を発したらいいか、二人とも必死に考えていた。相手も必死だということに気付かずに。
「処女だったら………どうするの?」
 おずおずとそう口を開いたのはマキだった。日の傾きは徐々に夜へと向かいつつある。
「いや……その……以前オレが童貞なのは知られちゃいましたし、オレも先輩のコト知っててもいいかなって……」
 マキは、そのワタルの発言が本当に言いたいことではないということがわかっていた。自分がワタルの立場だったら、と思うと何を言いたいかは想像がついたし、ワタルの立場になって考えるコトはマキにとって難しいコトではなかった。
 ワタルなりに、この質問ができるだけ不自然じゃないようにしようと必死に考えた末の理由付けだったのだろう。マキはその姿を、いじらしいとかかわいらしいとか、そういう風に感じた。それはマキにとってとても不思議なコトだった。
 マキの足下を見つめてそれ以降何も言い出せないワタルに、マキは少し安心感を覚えた。
「私は処女だよ。でもって、童貞だよ」
 マキは自嘲気味にそう言った。それは女性としては少し恥ずかしいカミングアウトであり、元男性としての重大なカミングアウトでもあった。
「私のコトは誰かにもう聞いてるんでしょ?」
「はい、さっき」
「さっき!? ずっと知らなかったの!?」
 マキは大分前からワタルは自分が元男であることを知っていると思っていた。
「私がそんなに自然に女をやれてたのかなぁ……それともキミが女慣れしてないのかなぁ」
「どっちもじゃないですかね」
「ま、そうだよね、女っ気ありそうには見えないし、童貞だしね」
「なんか、先輩の容姿から童貞って言葉が出てくると変な感じしますね」
「私も、自分のコト言ってるみたいで変な感じするわ」
 そう言って二人は笑い合った。
 そしてマキは、そっとワタルに歩み寄った。
「キミ、私のコト欲しいでしょ」
 ワタルはその質問には答えず、少しの間逡巡してから、不器用にマキの腰を抱き寄せた。マキはワタルがそうするのをあえて待った。自分だったらそうする、と思ったから。
「いいよ、しよっか」
 マキは、何を、とは言わなかった。言う必要は無かったし、それを言葉にするのはなんとなく、自分もワタルも抵抗がある、と感じていた。これからすることはあえてうやむやで、曖昧なままにしておきたかった。
 ワタルは今度は小さく「はい」と言い、両手でマキの体を抱きしめた。
 不器用で未経験の二人はそこからどうしていいかわからず、ワタルはマキの頬にキスをし、首元にキスをし、胸に手を置いた。その膨らみは小さく、ほとんどがブラジャーのパッドで作られている膨らみだったのだが、ワタルはマキの胸に触れているという事実にとても興奮した。
 興奮していることに少し罪悪感を感じながら。ワタルはマキの制服の裾から手を入れてブラジャーの中に手を滑り込ませた。
「うわっ!」
 すると、マキが素っ頓狂な声を上げた。そういう行為をしているときに出る様な声ではなかった。そのコトで二人はまた笑い合い、抱き合ったままそこにしゃがみ込んだ。
「なんか、くすぐったい」
 マキにはまだ胸を触られて気持ちいいという感覚がわからなかったが、嫌だとは感じなかった。
「先輩、寒くないですか」
「寒いけど、大丈夫。でもドアは閉めてね、明るいのは嫌」
 ワタルは防具部屋の中にある、綺麗なタオルを何枚かつかんで床に敷き、ドアをほんの少しの隙間だけ残して閉めた。完全に閉めてしまうと真っ暗になってしまうので、少し開けておいた。
「息、荒いね」
「すいません」
「いいよ、うん、ありがと」
 ワタルはこのとき、マキが言ったこの『ありがと』の意味がわからなかった。それがわかるのはもっとずっと先のことだった。


 −続く−

228名無しさん:2013/03/10(日) 21:43:13 ID:???
続きが楽しみすぎる
GJ!

229こっぺぱん:2013/03/11(月) 00:58:08 ID:J91NApNU
−−−迷う指先の辿る軌跡−−− ⅩⅩⅩⅢ :曖昧な境界線7:

 ワタルはそっとマキのスカートに手をかけたが、ファスナーの位置がわからなくて戸惑っていた。
「ふふ、男の子はこれわからないよね。ここだよ」
 マキは少しおもしろそうに笑いながら、そう言ってワタルの手を誘導した。ワタルは照れたような、バツが悪そうな表情でマキのファスナーに手をかけると、壊さないよう丁寧に下ろした。
 そして、あまり色気のない下着の上から、陰部に手を這わす。
「う……」
 マキは複雑な声を出した。苦しいのか痛いのか驚いているのか、ワタルにはわからなかった。マキとしては、自分の股間を男子に触られているという想像もしていなかった感覚が、脳にまだ馴染んでいない、という感じだった。
 が、その声もやがて艶っぽいモノに変わっていった。自分からそんな声が出るのかとマキは驚いていたが、ワタルはまったく余裕がない様子だった。それを見てマキは逆に安心した。彼も自分と同じなのだ、と。
「先輩、下着脱がしますよ」
 ワタルはそう言うとマキのスカートを脱がしてから下着を脱がし、マキの下半身を露わにさせた。暗くてよくはわからなかったが、ワタルを興奮させるには十分すぎる状況だった。
 上半身は制服姿で、下半身は紺のソックスだけという姿は、ひどく蠱惑的だった。
 ワタルは落ち着くよう必死に自分に言い聞かせながら、マキの陰部に指を這わせた。二人とも床に座っている状態だったので、マキは恥ずかしさに耐えられずワタルに抱きついた。声も必死に抑えていた。
 すでにマキの陰部は潤っていたが、ワタルは指一本から慣らして、時間をかけてゆっくりと、初めて相手を受け入れるマキの秘所をほぐしていった。指二本がどうにか入るようになったころには、ワタルの自制も限界だった。
「先輩……オレもう辛くて……」
「ん……そうだよね、いいよ、おいで」
 マキは少し震える声でそう言った。恐ろしさというモノがここにきて出てきてしまったようだ。が、ワタルはそれを感じてもやめることはできなかった。逆にここでやめても失礼だろう。
 ワタルはタオルを敷いた床の上にマキを寝かせ、自身も服を脱いだ。ジャージで来ていたワタルは、シャツ一枚の姿になってマキに覆い被さる。二人の肌が触れ合う。部屋は寒いのに、二人とも汗ばんでいた。
「先輩……いれますよ」
「うん……手、握ってくれる? ちょっと、怖い」


 −続く−

230こっぺぱん:2013/03/11(月) 23:41:12 ID:J91NApNU
−−−迷う指先の辿る軌跡−−− ⅩⅩⅩⅣ :曖昧な境界線8:

 ワタルははやる心を抑えながら、マキの手を握り、首元に何度もキスをしながら陰部同士を触れさせた。そして、更にはやる心をそれはもう必死に抑えつつ、ゆっくりとマキの中に入っていった。
「う……」
 マキが苦しそうな声を上げた。痛みはまだないが、圧迫感が強く、その感じたことのない感触に頭がおいついていなかった。余裕がないのはマキも同じだった。
 ワタルはゆっくりと浅いところで出し入れを繰り返しながらマキの反応に全神経を集中し、苦しそうな声の中に艶っぽい声が混じりだしたところで、少し深くマキの中に入った。そこで、抵抗感を感じた。ワタルの先端が処女膜に触れたのである。
「先輩……」
「うん、わかってる。いいよ」
 ワタルも苦しそうにそう言うと、マキは笑顔を見せてそう言い、ワタルを抱きしめた。ワタルも体をマキに預け、マキの体を抱きしめた。
 そして、ぐっと力をいれてマキの中に入った。
「んうっ……!」
 お互いにマキの破瓜を感じた。マキがなんともいえない、苦しさや痛みをかみ殺した声をあげる。
 ワタルはマキの様子に注意しながら、ゆっくりと出し入れを繰り返す。自分の快感よりも、マキのことばかりが気になってしまうのは、ワタルの優しさと自制心の強さから来ているのかもしれない。
 が、マキはそんなワタルの気持ちをわかっていた。
「ねぇ、いいよ、もっと動いても。キミも辛いでしょ?」
「でも先輩、痛いでしょう?」
「痛いくらいどうってことないよ、私は女剣士だよ?」
 動きを止め、心配そうにマキを見つめるワタルに、マキは笑顔を見せてそう言った。汗ばんだ額にかかる黒い髪がなんともいえず艶っぽかった。
 その後のことを、ワタルもマキもよく覚えていなかった。二人とも必死で、二人とも恥ずかしくて、二人ともわけがわからなかった。お互いにそうだ、ということ以外はよく覚えていなかった。
「先輩……!」
「中は、だめだよ、お腹の上に……」
 その言葉がワタルをより興奮させ、ワタルを絶頂に導いた。マキは制服の上着をたくし上げ、ワタルは寸前で自身をマキの中から引き抜くと、マキを抱きしめたまま達した。マキの白くて痩せたお腹の上に、濃い白のどろっとした液体がはき出される。
 二人とも、しばらく荒い息をするだけで、言葉も交わせなかった。
 こうして、マキは女になり、ワタルは二つの意味で男になった。


 −続く−


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