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YOU、恥ずかしがってないで小説投下しちゃいなYO!2
220
:
こっぺぱん
:2013/02/17(日) 00:42:10 ID:5DqYo.Us
−−−迷う指先の辿る軌跡−−− ⅩⅩⅧ :曖昧な境界線2:
二年前の秋、当時中学一年生だった橋本ワタルは、剣道部で毎日稽古に明け暮れていた。
近隣の中学の中では比較的強い方だったこの学校の剣道部は人数も多く、男子はもとより女子もかなりの人数がいて、少なくとも一年生は全員の名前など知るわけもなく、人の入れ替わりがあっても気付かないくらいには賑わっていた。
ワタルは運動神経がよく、剣道の経験は無かったがコツを掴むのは経験の無い他の部員の中で一番早かった。さすがに試合に出るほどの強さはなかったが、部内の模擬戦ではなかなかの戦績を誇っており、ワタルはそれが自分の自信になっているのを感じていた。
そんなとき、夏休みが終わって部活に行ってみると、見慣れない女子部員が誰よりも早く来て素振りをしているに遭遇した。
ワタル自身もかなり熱心だったが、彼女の横顔は必死で、どことなく焦りのようなものをたたえているように見えた。
「おはようございます、ずいぶん熱心なんですね」
素通りするわけにもいかないので、ワタルはそう挨拶した。すると女子部員は素振りの手を止めることなく、竹刀を振るリズムに合わせて区切りながら言った。
「人より、練習、しないと、強く、なれない、からね」
愛想笑いを浮かべることもなく、そもそもワタルのコトを見ることもなく女子部員はそう言った。ワタルはなんとなく彼女がそれ以上のやりとりを望んでいないと感じたので、軽くお辞儀をすると剣道着に着替えに行った。
その日の部活は模擬戦だったのだが、ワタルはイマイチ調子が出ず、久しぶりに勝ち数より負け数が多くなった。模擬戦は経験者とも戦うので、あまり勝敗の数にこだわりはもっていなかったが、この日は他人の戦績が気になった。
そう、あの女子部員である。
彼女は三年生で、同じ女子部員の中では群を抜いて強かった。まだまだ駆け出しのワタルの目から見ても、明らかに強かったのだ。
だが一番強いというわけではなかった。
彼女が勝てない女子が三人いた。
ワタルはこの日の部活が終わった後、友達の部員に話を聞き、その女子が負けた相手のうち二人は女性化した元男子だということを知った。
その女子の名前が、「マキ」というコトも知った。
ワタルはマキの、一心不乱に竹刀を振る姿と、焦燥感のにじむ試合の光景がどうにも忘れられなかった。
それからしばらくの間、ワタルは早めに部活へ行く様にし、行くと必ず竹刀を振っているマキに挨拶をした。会話をすることはなかったが、なんとなくお互いに顔を合わせるのが当たり前になっていった。
そしてある日、ワタルが部活に行くと珍しくマキが胴着ではなく制服で剣道場の中に佇んでいた。
「おはようございます」
少し不思議に思ったが、ワタルは普段通り挨拶をした。
「おはよう、いつも早いね、キミ」
振り向いたマキの表情は、ワタルが初めて見る表情だった。笑顔でもなく、泣いているわけでもなく、ただ、眉をしかめてない顔を見るのは初めてだった。その表情が逆にワタルの気持ちをざわつかせた。
「先輩、今日は稽古しないんですか?」
剣道場の入り口から、剣道場の中央にいるマキに話かける。この距離が、なんともいえない二人の薄くて細いつながりを表しているかのようだった。
「うん、しない。もうしないんだ」
そう言うんじゃないかとワタルは内心思っていたので、あまり驚かなかった。
「キミ、一年生?」
「はい」
「そっか。ねぇ、二個質問してもいい?」
ワタルが少し返事に戸惑っていると、答えを待たずにマキは質問をした。
「剣道好き?」
「はい、好きです。オレはここに来てから始めましたけど、強くもないですけど、好きです」
ワタルはキッパリとそう言った。実際剣道は好きだった。勝ち負けが明確にわかる、自分の練習が如実に実力に反映される、そういった己を研磨するような部分が気に入っていた。
「そっかー。私も好き」
ワタルはこのとき初めて女性の笑顔を真正面から見た。よく花のような笑顔と表現されるが、ワタルはその通りだと思った。華美ではなく、素朴で、道端に自生しているような、誰も名前を知らないような、そんな小さな花が浮かんできた。
「も一個質問ね。キミ、童貞?」
あまりにも予想外すぎる質問に、ワタルは「へ?」と間抜けな声を出してしまった。
−続く−
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