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YOU、恥ずかしがってないで小説投下しちゃいなYO!2

222こっぺぱん:2013/02/21(木) 23:23:27 ID:dPd8MSv2
−−−迷う指先の辿る軌跡−−− ⅩⅩⅨ :曖昧な境界線3:

「あー、やっぱ童貞だよね。一年生だもんね」
 ワタルの反応を見て、マキはそう言った。
「そ、それってどういう……」
 ワタルがそう言いかけたところで、他の部員達が剣道場に入ってきた。
「あ、おはようございます」
「おはよう」
 マキは挨拶してくる部員達にそう短い挨拶だけ返して部室を後にした。ワタルはその後ろ姿を見ることができなかった。

 その後もワタルは誰よりも早く部活に来たが、あれ以来マキの姿を見ることはなかった。
 部員達がマキについて、受験のために引退したのではないか、と言っていたが、ワタルにはそうは思えなかった。もしそうなら、事前に言ってもいいはずだ、何も後ろめたいことなど無い。何も言わないのは何か言いにくい理由があるからではないか、とワタルは思っていた。
 このときはまだ、何故こんなにもマキのコトが気になるのかなどというコトに意識が向く余裕はなかった。
 そして年内最後の大会で、ワタルは二軍の先鋒だったが試合に出場することができた。
 チーム自体は負けてしまったが、ワタルは相手チームの先鋒と次鋒に勝ち、他の部員達から賞賛の言葉を浴びた。これは本当に嬉しかった。
 ただ一つ気がかりなのは、試合中一瞬だけ遠くにマキの姿を見たような気がしたことだった。試合後にそちらを確認したが、マキの姿は無かった。
「なぁ、今日マキ先輩来てたりしないか?」
 ワタルが帰りに同じチームの男子生徒にそう聞いた。
「オレは見かけてないけど……おまえやたらマキ先輩気にするな、惚れた?」
「いや、試合中見た気がしたんだよ」
「あー、そりゃ惚れてるなー」
「なんでそうなるんだよ」
 ワタルは少しムキになってそう言った。それを見て周りのメンバー達は、ほらなと言って笑った。
「なんだよおまえら、オレはそんなんじゃねーって。尊敬はしてるけどな」
 それには皆同意の様だった。
「まぁ確かに強かったよなー。オレ一回試合したけど、3秒で負けたよ」
「オレは7秒もったぜ!」
「大差ねーじゃんか」
 そんなことをみんなで話ながら帰路についた。結局マキは誰も見かけていないとのことで、マキの話題もすぐに出なくなった。

 その日の夜、ワタルの携帯電話に見知らぬアドレスからのメールが一通届いていた。
『初出場、初勝利おめでとう』
 それだけ書いてあり、差出人はわからなかった。
 が、ワタルはそれが、マキからのメールではないかと思った。わざわざチームメンバーがそんなことを送ってくるハズはないし、選手に選ばれなかった生徒がそんなことを言うとも思えない。ワタルは一年なので、憧れてくれる後輩がいるわけでもない。名前も知らない先輩がわざわざそんなことを言ってくるとも思えない。
 そうなると、マキしか思い当たらなかった。クラスの友達は試合に来ていないし、誰かがわざわざワタルの試合結果を話すとも思えなかった。
 ワタルは深夜になるまで返事を考え、こう返事をした。

『ありがとうございます。今度稽古をつけてもらえませんか?』

 そのメールを送ってから、ワタルは自分の中にある不思議な、焦燥感にも似た感情があることに気がついた。


 −続く−


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