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YOU、恥ずかしがってないで小説投下しちゃいなYO!2

1名無しさん:2010/02/13(土) 18:55:28 ID:UhsYlmek
前スレ
YOU、恥ずかしがってないで小説投下しちゃいなYO!
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/study/7864/1157295929/l100

231こっぺぱん:2013/03/15(金) 23:28:53 ID:73eRlD3A
−−−迷う指先の辿る軌跡−−− ⅩⅩⅩⅤ :曖昧な境界線9:

 その後、顔を合わせることは何回かあったが、二人の関係はそれ以上のものにはならなかった。
 挨拶以上の言葉を交わすこともなく、もちろん触れ合うこともなかった。
 なんとなく、この距離に落ち着いたのだ。ワタルはあのメールがマキからのものかを確認することはなかったし、マキもワタルに連絡はしなかった。
 そして卒業式の日、ワタルは壇上で卒業証書を受け取るマキを見て、もう会えなくなると思ったとき、胸の辺りが痛くなるのを感じた。それはとても切ない痛みだった。
「卒業、おめでとうございます」
 卒業生と在校生でごった返す玄関口で、ワタルは必死にマキを探し、見つけ出すと駆け寄ってそう言った。
「ありがとう。もう会えなくなるね」
 その言葉が再びワタルの胸をツキンと刺す。もう会えない、そう思ったらためらってなどいられなかった。
「先輩、あの……あの、ですね……」
 マキはワタルが何を言うのかわかっていた。わかっていたからワタルが言い出すのを待っていたし、返事も決まっていたからその表情は苦笑いだった。
「えっと、あのですね、その……オレの、彼女になってもらえませんか?」
 周りにいた何人かはワタルのその言葉に反応したが、卒業式のこの日ならそこまで珍しい風景というわけでもなかった。騒がしかったのもあってか、二人のやりとりはそこまで目立たなかった。
「ありがとう、気持ちはいただいておくね。でも、ごめんなさい」
 ワタルは複雑な笑顔を浮かべてその言葉を受け取った。意外というわけではなかったが、一縷の望みは抱いていたので、少なからずショックではあった。
「わかりました。先輩のこと忘れません。あの日のことも忘れません」
「あれは、秘密ね。ごめんね、期待させるようなコトして」
「いえ、嬉しかったです。オレ、先輩のこと好きです」
「ありがとう。私はキミのこと……わかんないな、わかんないから、まだ受け入れることができない」
 まだ、という言葉に少しだけワタルは救われた気がした。いつか受け入れてもらえるかもしれない、と思った。
「曖昧だったね、私らはずっと。私がずっと、か」
 マキは一歩ワタルに近づいた。あのときより伸びた髪がふんわり揺れて、シャンプーの匂いをワタルまで届ける。
「ありがとね、あと、ごめんね」
「いえ、こちらこそ。また、会えたら嬉しいです」
「そうだね、縁がつながってればきっとまた会うことになるよ。今はまだ、なんとも言えないかな」
「それで十分です。ちなみに、年末の試合後にオレにメールしてくれたの先輩ですよね?」
「うん、そうだよ」
「アドレス変えないでくださいね」
「変えたら教えてくださいね、じゃないんだ」
「あ、いや、変えたら教えてください!」
 慌ててワタルがそう言い直すと、マキはたんぽぽの綿毛のように柔らかい笑顔を見せた。そして、ワタルの胸にそっと右手を置くと、くるっときびすを返して手を振りながら去っていった。またねとか、さよならとか、そういう言葉をあえて言わない、言わせない、そんな意図があるようにワタルは感じて、ただ手を振り返すだけに止めた。追いかけたい気持ちは必死に抑えた。

「先輩、オレこないだの地区大会大将で出たんですよ!優勝もしました!」
「お、さすがだね。私が男にしてやっただけのことはある」
「あのとき約束したじゃないですか、先輩の分もオレががんばるって」
「そうだね、よくがんばりました!」
 ワタルの中学時代最後の体育祭を見に来たマキは、当時よりぐっとたくましくなったワタルを見て、なんだか育て親の様な気持ちになった。彼の無垢な笑顔に、マキはまだ明確な形で返事を返せないままだったが、ワタルが未だに自分へ好意を持ってくれてることは確認できたし、それを嬉しいと思った。
 ただそこにあるワタルとマキの境界線は、曖昧なまま今でも二人を繋いでいるのだった。


 −続く− 〜曖昧な境界線 完〜

232名無しさん:2013/03/17(日) 22:57:47 ID:???
素晴らしかったです
GJ!


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