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ライトノベル総合(2)
1
:
真ナルト信者
:2020/06/21(日) 16:49:03 ID:???
ライトノベルについて語ろう。
ライトノベル以外の小説でもオッケー(今はライトノベルの境界があやふやだからね)
42
:
めかぶ
:2021/11/11(木) 23:10:59 ID:0hpZ/cmg
◆君たちは絶滅危惧種なのか?
WWシリーズの第5作目。ドイツの国定自然公園内にある動物園で警官が殺され、飼育員と何かの動物が行方不明に。その後、同じ公園内で釣りをしていた男性が何者かに襲われ大怪我を負う。
その全容解明のため、主人公のグアト達はデータ解析に呼ばれ、パートナーのロジは護衛にセリンとペネラピを連れて行く。この一連の事件の謎に挑むSFミステリ―。
いやあ、内容が難しく,哲学的ですぐには理解できなかった(今も理解はしてないかもw)、でも知的好奇心をくすぐられる内容で、いつも通り面白かった。
もうここまでくると、人類に変わって「ウォーカロン」が新しい人類になるとか、人類の代わりに「人工知能」や「トランスファー」が支配する世の中になるとか、どうでも良くなる、その先を行く内容ですね。
人類は完璧な自由を求めて、電子の世界でデータとなって生きる、現実の肉体は「自殺」して処分する時代へって所まで来ているんだから。一方、長寿を得た代わりに子供ができなくなる問題も、実はかなり前に解決していて企業が利益のために隠ぺいしていたという事実で、すでにこのシリーズの主幹からズレ始めているという。
ただ、電子データとしてヴァーチャル世界で生きるべきか、子供を産んで子孫を残すべきか、奴隷として使役されてるウォーカロン達がそれを黙って見ているか、という勢力がぶつかりそうな気配ではある。いやあ、難しいけど淡々とした文章だけど面白い。
そして、久々に登場した全身サイボーグ化してそうなペネラピ(前シリーズの名前は「アネバネ」で完璧な女装の名人でもあるw)が来てくれて、グアト(前シリーズではハギリ)チームが完成して、彼らの「スパイ大作戦」のような戦闘がまた楽しかった。一見戦闘には役に立たなそうなグアトもアドバイスで大活躍。ロジ(ウグイ)もツンデレで、セリン(サリノ)も素直ないい子って感じで微笑ましく読めました。
今回の題名「絶滅危惧種なのか?」って問いも、ちゃんとグアトが答えを出したし、これは人類自体にも問いかけてるのかもしれない。
ところで、ラスト付近に出てきた最強のトランスファーが良く分からなかったが、これは「デボラ」って事でいいのかなあ。
それから、赤い目をした少女(赤目姫と関係ありそう)も正体も「マガタシキ」(少女バージョン)なのかなあ。そこは良く分からなかった。
まだまだ続いて楽しませてほしいシリーズではある。
43
:
めかぶ
:2021/12/16(木) 21:44:52 ID:vWjVphe6
◆Another2001
言わずもがな、アニメ化もしたホラー小説「Another(アナザー)」の続編。前作から3年後、再び3年3組に掛けられた「呪い」が発動して、毎月必ず3組の関係者が一人以上変死していく。3組の「いないもの(「いないもの」になることで呪いが確実ではないが相殺される)」になった主人公「比良塚 想」と前作のヒロイン「見崎鳴」は3組に掛けられた呪いと立ち向かうが・・という物語。
もう少し詳しく書くと、この呪いのような現象は29年前から始まっており、呪いが発動する年としない年があり、発動する年には、クラスメートの中に死者が混じっていて、机が足りなくなる事でわかる。だれが死者なのかは、学校関係者や生徒の家族や親せきに至るまで記憶が死者がまだ生きてる様に改ざんされて、死者が誰かわからない。そのためクラスメートの一人が「いないもの」扱いされることにより、クラスの人数を合わせてバランスをとると、呪いが発動しないという事が分かってる(確実ではないが)。
それで、主人公が進んで「いないもの」になったのだが、安全策を取ってもう一人「いないもの」をクラスメートから選んだ、そのことにより悲劇が起こるのだが、詳しくは読んでください。
さて感想、途中までは前作と変わらないやんって感じで、面白くなくはないのだが、そこまで嵌まらなかったが、途中で「死者」が誰かわかってからが面白かった。いあや、最初の頃、こいつが怪しいなあって思ってたクラスメートがやっぱり「死者」で、一旦途中で「呪い」が解除されるのだが、その時点で、不登校を続けていた「いないもの」を途中で放棄した主人公の好意を持っていた女の子の存在や入院しているクラスメートの存在やヒロイン鳴の母親の謎の行動や神経科の先生の娘の謎の行動、主人公の母親がやたら会いに来たがる事とか、人間関係で不可解な事が多すぎて、まだ何かあるな、このままでは終わらないだろうなあって感じがとてもワクワクに繋がった。
そしてラスト付近の市立病院での大惨事の際に、「死者」だったクラスメートが主人公にこの呪いの解決のヒントをくれるシーンは「ペットセメタリ―」の幽霊っぽくてスティーブンキング小説っぽくて胸熱でした(まあ、本当に死者が解決に協力してくれたのか、それとも主人公の心が作った妄想なのかはわからないけどね)。大元の呪いが解決してないので、これは続編を書くべきとは思うが、あるとすれば、今度の主人公は神経科の先生の小二の娘(超能力者)だろうなあ。7年後だから「Another2008」かなW
44
:
なると
:2022/01/08(土) 17:12:11 ID:vWjVphe6
開城賭博
六つの中短編からなる日本の歴史に絡めたフィクション小説集。簡単なあらすじを書くと
①開城賭博・・1868年3月、江戸城無血開城に関する条件を博打で決めようとする勝海舟と西郷隆盛の会談秘話。
②ミコライ事件・・中国の有力者T将軍をロシアの仕業に見せかけて暗殺しようとする関東軍のお話。
③防諜専門家・・飛行機エンジンの設計図と大金が盗まれ、防諜専門員の主人公がエリス(ニックネーム)という女性をスパイ容疑で見張る話。
④恋と、うどんの、本能寺・・明智光秀が謀反の前に食べたのは讃岐うどんか三河うどんかに絡んだ主人公二人の馴れ初めの話。
⑤独立馬喰隊、西へ・・江戸城へ御神木を届けようとする「馬喰隊」とそれを阻止しようとする盗人集団「花桜」(本田正信の命による)の少年少女たち同士の激闘を描いた話。
⑥咸臨丸ベット・ディテクティブ・・サンフランシスコに向かう「咸臨丸」内で、船酔で弱ってしまった「勝海舟」と彼を世話する「ジョン万次郎」との粋なやり取りを描いた話。
感想:どれも灰汁が強く、一癖も二癖もある内容と文章で結構楽しめました。①は読む前にだいたい予想がついたし、②③の話は近代日本の話で固くてキナ臭いスパイものって感じ。④はうどんの世界の「ロミオとジュリエット」で無理矢理「これが俺の本能寺だ」って所は苦笑いしました。
⑤は中編小説で、ジャンプなどの少年漫画のような、または山田風太郎の小説の様な忍者合戦の超人バトルで、気軽に楽しめました。ただ、時間がゆっくり動いてその中を人間は普通に動ける世界じゃないと無理な展開、数秒で二転三転大逆転する現実ではありえないめまぐるしい展開に笑いました。
最初に主人公たちの超能力があって、それを生かす舞台を作った感じですね。でも面白かったです。
⑥も、不思議な怪談話に理屈を付けて無理矢理あり得る話にする「勝海舟」の推理が楽しい小説でした。勝海舟が「この世には不思議な事など何もないのだよ」っていいそうな話でしたw
どれもちゃんとオチも納得いくし、深い話もあるし、中短編なので気軽に読めるし、気分転換、時間つぶし、に丁度いい作品でした。続編もありそう。
45
:
なると
:2022/01/28(金) 23:43:33 ID:vWjVphe6
◆びっくり館の殺人
東京のT大学の主人公三知也は「迷路館の殺人」という小説と出会い、過去に殺人事件があった「びっくり館」の事を思い出す。彼は殺人事件の当事者であった。
彼がか語りながら、その事件の真相に迫るミステリー、そしてオカルトホラーチックな小説でした。
子供向け文庫になっていたので、文字も大きくボリュームも子供向けで、読みやすいミステリーだなって思いました。子供向けに書いたものですが、結構面白かったですね。
まず、「はあ〜ん」が口癖の中村青司マニアなあいつも、しっかりちょい役で出てますし、密室トリックもそれなりに、どんでん返しがあって面白かったですね。
何よりも、オカルト色が強かったの新鮮で楽しかったです。まるで666の数字がついたダミアン君の女性版みたいな感じで「オーメン」のオマージュみたいな話でした。多分父親は悪魔関係の人だったんでしょうw
ラストも、すっかり悪魔の子に取り込まれたヒロインや親友がぞっとしましたね。続編があればエクソシストや神父がこの館の何かと戦いそうです。
まあなんというか、館シリーズの番外編みたいな感じでした。あの館に近づくな、気をつけろってのはこういうことだったんですね、くわばらくわばら。
46
:
なると
:2022/03/05(土) 20:13:18 ID:LhRnwsYM
◆七日目は夏への扉
日曜日の夜に昔の恋人が崖からの転落事故で「・ま・・ゆ・・・」といって死ぬ夢を見たところから始まる,主人公「美澄朱音」の時間が戻ったり飛んだりする一週間の奇妙な体験を描いたタイムファンタジーミステリー。
もっと詳しく書くと、本当に火曜日に高校教師の彼は崖から落ちて死ぬのだが、なぜ彼が死に至ったのか,行方不明の教え子で問題児「桐谷麻友香」と関係があるのか,行ったり来たりする一週間を体験しながら主人公はその真実にたどり着けるのか、さらに昔の恋人を事故から救うことができるのかっていう所が面白い話でした。
感想:最初は唐突で煩雑でなんで主人公だけ時間があっちこっちに進むの?ってよくわからない感じのタイムリープSFだなあってあまり面白さを感じなかったのですが、後半「ああそういうことか」ってこの小説が描きたい事や面白い点が段々わかってくると,一気に最後まで読みたくなる感じでした。
読後は「うん、おもしろかった」ってまあまあ満足できて読んで良かったって思える小説で良かった(w)って思いましたね。この主人公が男勝りでがさつで元ヤンキーで口調も男っぽいので、最初はあまり好きになれませんでしたが,こういう性格だから「ある事(ネタバレになるから伏せます)」を成し得たんですね,ってちょっと納得。
最初は事故は「自殺?」って思って読んでいたんですが「他殺」の線もあるな,まさか行方不明の生徒が殺した?それとも意外に教授が犯人?(それだと「館シリーズ」とかの新本格ミステリですね)で時間ループ旅行できる主人公がチート能力で解決するんか?って思っていましたけど、そこまでの「本格探偵もの」ではなかったですね。天才ではなく普通(元ヤンだけど)の人が必死で事態を好転させようと普通の人にできる範囲で頑張るところが,良かったですね。
よくできてる時間ループものだと思いました。ただ、なんでこの主人公にだけこういう都合のいい奇跡が起こるのかってのはわからなかったですが(神様のきまぐれ?)。
あと、ちょっと考えさせられる部分が、元彼の性格ですね。問題児「桐谷麻友香」がグレたのは同情の余地があるんですが、この元彼「森野」は邪悪ですね〜w優しいところもあるんですが、相手が人生転落していく姿を見たいから,その姿を見て安心したいから、表面上は親切にするってのがね〜。いや邪悪。主人公も見る目無いなあ〜って感じです(こんな奴、助けたくないなあ)。でも真っ直ぐで細かいことを気にしない主人公は姪のためにも助けようと頑張るのですが。
この二人は再び結ばれて欲しくないな〜って感じですね。元彼の性格が直ればいいんですけどね。その辺が一番もやっとして,この小説の肝だと感じました。
パズルがまあまあ好きなんで「アナグラム」はすぐわかりましたね。一週間の順番の構成とか見せ方とかよくできてる作品だと思います。
47
:
なると
:2022/05/18(水) 18:36:09 ID:LhRnwsYM
◆暗黒館の殺人
館シリーズの7作目。熊本の山奥にある中村青司が関係する「暗黒館」と呼ばれる浦登一族が住む、湖の中央の島の東西南北それぞれ四つの館かなる屋敷に好奇心から見学に行った「江南」は事故とトラブル(地震)に遭い塔から落ちて記憶喪失になってしまう。
彼は、浦登家のものに発見、保護され、記憶が戻るまで館で看護されることになる。一方、この物語の主人公で、ダリアの日と呼ばれる浦登家が毎年行う「秘密の儀式」によばれた大学生「中也(あだな)」は、この黒ずくめの暗黒館とそこに住む奇妙な住民達に翻弄され、不思議で奇妙で恐怖の体験をしながら、否応なしに、この一族の謎に近づいていくのだった。
そんな折、門番が事故に遭い、その上何者かに殺されてしまう。そして、二人目の犠牲者が出てしまう。そのうえ、度胸試しに暗黒館を見に来た中学生も「暗黒館の浦登家の謎」巻き込まれて、事態は混沌を極めていく、という犯人を見つける推理小説というよりは、ホラーミステリーな内容の物語でした。
なんとも形容しがたい内容でしたね。館にまつわる呪いやおぞましい秘密を暴こうとして、逆に逃れられない危険に見舞われる、恐怖映画を観てるかのような感じでした。後半(下巻)を読まないと、この先どうなっていくのか、どういう物語なのかは、面白いのかは想像がつきませんが、浦登=ウラドなので吸血鬼に関わる感じなのでしょうか、「死ねない」「永遠の命」とかそういう妄想にとらわれた一族ということなのでしょうか。
今までのシリーズなら、ちゃんと犯人がいて、妄想や因縁に縛られた悲しき一族でしたって結末なのでしょうが、もしかしたら本当に化け物や吸血鬼が出そうな内容ですね。
とにかく、ほぼ、普通の住民がいない(シャムの双生児、早老症、知恵遅れ、狂人など)うえ、陸の孤島というか、外部との接触を断ってる、館はほぼ黒で統一され窓は閉め切ってる。船でしか渡れない湖の島に建っている。みんな引きこもり、働いていない。館の中庭には地下墓地がある。そして大量の白骨死体・・・。数々の謎(18年前の殺人事件と自殺、無理矢理食べさせられる何かの肉・・)。恐怖小説としては満点な内容でした。
下巻では、晴れたように謎がスカッと改名されるのか、より深淵へ向かうのか。とにかく、こんな館には住みたくないですね(働かないで贅沢できたとしても)w
48
:
U9
:2022/06/17(金) 15:59:53 ID:LhRnwsYM
◆暗黒館の殺人(下)
暗黒館を好奇心で見学に来た江南は地震により塔から落ちて記憶喪失に。一方今回の主人公「中也(あだ名)」はダリアの肉を食べ玄児の血を輸血され、浦登一族に取り込まれていく。そんな折、使用人が殺され、浦登一族の一人「望和」も殺されてしまう。
果たして、犯人は誰なのか?そして暗黒館と浦登一族にまつわる秘密とはなんなのか?というホラーオカルト系ミステリー。
感想:長いよ〜、長い割には内容がスローテンポでくどいよwまあ、それなりに面白かったけどね。でももう少し、コンパクトにまとめられたのでは?いや、この長さがこのオカルティックな小説を味わうのにふさわしいテンポなのかもしれないが、とも思う。
しかし、まさかのほんとにオカルト的なオチだった。この館を建てた主、玄遙の性に関する非道っぷり、ダリアの不死信仰の狂いっぷり、鬼丸老の異常な忠誠心、一族に精神や体についてまともなやつが一人もいないホラーハウスっぷり、それを約1300ページも付き合わされるんだから、読者も体力がいる小説だよねえ。
そして、合間合間に入る、誰目線なのかわからない幽体離脱したような視点移動や俯瞰視点、一体何を読ませられてるんだ感。(下)巻はだいたい、この一族と館に関する秘密明かしがメインで、後半は火事と殺人の怒濤の厄災で終わります。そして最後の最後で、現実主義的な「鹿屋門実」が現れて、ホッとしましたよ。彼なら浦登一族の呪いなんか関係ねえし、はね除けそうな頼もしさがありますねw
最後まで読んだ感想としては、長かったがまあ納得がいって面白かったですかね。鬼丸老がまだ生きていそうなのは分かったし、ピアノは美鳥ちゃんかなあ。でも玄遙はまだ生きているのだろうか、そこが気になる終わり方でした。そして、中村青司の原点でまさかのやつが中村青司だったとは。
征順が館主になって、しがらみが薄らいで、少しは明るくなったみたいだが、まだまだ、ダリアや暗黒館に捕らわれていそうな感じですね。
中村青司がまさかの探偵役とは思わなかったし、この出来事がまさかの33年前に心がタイムスリップしてしまったオカルティックSFてきな話だとは思わなかったなあ。それでいいのか、このシリーズ?とも思わなくもないけどね。
49
:
なると
:2022/06/30(木) 10:32:49 ID:LhRnwsYM
◆テロリストのパラソル
第41回江戸川乱歩賞受賞作品。アル中のバーテンである主人公「島村」は昼間に公園で飲んでるところで、爆破事件に出くわす。彼は昔、学生運動をやっていて、爆弾で謝って警官を殺したことがある過去があり、今回の爆弾犯の容疑者として指名手配され、逃亡する事になる。
被害者の中に昔の友人と親しい女性がいることを知って、爆弾犯を探し復讐を誓うというミステリーサスペンス。
TVドラマになったと聞いて、早速さわり部分を観てみたが、なんか全体的にチープな感じで演出もおざなりで、もう少し重厚に作れなかったのかって少しがっくりきた。
さて、ドラマはおいといて、原作の感想だが、さすがは乱歩賞を取っただけのことはある、悲哀をかんじる中年男の物語というかハードボイルドって感じで、かつ犯人捜しが二転三転して推理ものとしても面白かった。
ヤクザが活躍する物語はあまり好きではないが、パートナーの元刑事で正義感の強い優しいヤクザ「浅井」は嫌いじゃないし、少し格好いいなって思った。
いやあ、格好いい男の大人ってのはこういうものなんだよなあ。時代遅れなんだが、目的のためには信念を曲げない折れない、時にはクレバーに時には不器用に時には優しく時にはスーパーマンに、自分を犠牲にしても貫く覚悟がある、格好いいねえ。
ヤクザの「浅井」もこりゃ惚れるわw「浅井」もヤクザの癖シテ、何処かヤクザとして非情になりきれてない所が良いキャラクターだなあ。
そしてヒロインの塔子も、もろツンデレで、主人公にきついことを言いながら、結局主人公に惚れて、自分を犠牲にしても助けてあげる、可愛いねえ。
そして優子のタイトル回収の短歌なども切なくてこの物語に深みを持たせてくれて良かった。
出てくる登場人物に無駄がなくて、それぞれが複雑に絡み合ってる人間関係もとても緻密でさすが乱歩賞と直木賞を取った作品だなあって大納得しました。
50
:
なると
:2022/08/13(土) 23:56:08 ID:LhRnwsYM
◆捜査線上のアリア
銀行の仕事が嫌になり、小説家を目指した津村は運良く処女作が文芸雑誌の懸賞小説に入選した。が、それに慢心した津村は、二作目からスランプに落ちて、業界に相手にされなくなり鬱々と執筆中にとあるビジネスホテルで殺人事件にあって、犯人と思われて一躍時の人となる。
有名になった津村は小説も引く手あまたとなったが、気が晴れない日々を送るうちに、自分の潔白を晴らすため、当日殺人現場の部屋から出てきた謎の男の跡を追うことにした。一方、殺された女性の正体や人間関係がきな臭く、別の窃盗事件や別件捜査と何らかの関係があることが分かってくる、果たして殺された動機や真犯人は誰なのか・・という本格派ミステリー。
いやあ、最後の最後のエピローグで、頭が混乱したなあ、どこまでが事実で創作なんだろうって。写真のトリックは技術的な物で、そういうものなんだろうで納得できたが(昭和56年の頃の技術なんですが)、エピローグの内容は、どこまでが現実でどこからが虚実なのかって、誰もがもう一度読み返すことになるだろうって思う。頭が混乱しました。
でも途中もラストのどんでん返しも、しっかりしていて、特に捜査が、特定の探偵が一人で全部解いてしまうというヒーロー性はなくて、大勢の刑事が協力して事件を解いていくというスタイルがなんとなくリアルで、こういう推理小説もあるのかって凄く新鮮だったなあ。
森村誠一の小説にとっては、「那須・河西・助川刑事」や「F県羽代市」や悪の実力者「大場一成」はレギュラーらしいね(他の小説は読んだことないから詳しくは知らないが)。
このどんでん返しは何処かで読んだ小説に似てるなあ、って思ったら(いや、似てないかも知れないが)、「迷路館の殺人」辺りを読んだときの後味に似てるかなあ(こちらの方が後だけどね)。
いや、津村が主役だと思ったのに、途中から刑事ばっかり目立って、全然活躍(登場)しなくなるので、変だと思ったんだよなあ。自分がこの小説を書くなら、実はこいつがっては思いまししたw
それにしても、津村の文学や文学界に対する考えを淡々と綴った162ページから166ページの文章は、森村誠一の文学に対する態度の一端がうかがい知れて、推理トリックと並んで、ここがこの小説の肝(一番伝えたい部分)なんじゃないかって思ったほど、濃かったなあ。
いまのヒーロー性を押し出したの推理小説と違って、こういうヒーロー性はないがしっかりした感じの推理小説もあるんだと知った事が一番の収穫かなあ。
51
:
真ナルト信者
:2022/11/19(土) 18:20:19 ID:???
上げ
52
:
なると
:2022/11/25(金) 13:47:33 ID:LhRnwsYM
◆汝!怒りをもて報いよ
主人公の妻「京子」は帰郷中に、謎の宗教集団「天地教」に掠われて、奴隷として有りとあらゆる屈辱をうけ、教祖の虜になってしまう。妻を探しすため探偵「山沢」の協力を得て,弁護士である主人公「片倉」はたった二人で山中にある天地教の村落に乗り込むが、そこは性の奴隷となった男女の魔窟で有り、教祖は旧日本軍によって特殊な訓練を受けた超人であった。妻の救出と復讐のため二人は死に物狂いの戦いに挑む。
エロとバイオレンスのアクション小説でした。
感想:ごめん、これはライトノベルの範疇をとっくに超えた,完全に成人向け18禁エロ小説だったわ。全ページの半分がエロ&セックス&凌辱 &変態集団描写だった。はっきり言って,もう満腹おなかいっぱいでそういう部分は飛ばしたくなる位でした。その分、アクション部分や二人の反撃部分は爽快感があり、「もっとやれ!」「悪を潰せ!」ってワクワクできました。
こういうエロバイオレンス小説は初めて読みました,いやあ、凄かった。とくに変態セックス行為の部分。主人公が捕まって奴隷にされ、男のチンチン咥えたり,精液を飲まされたり、妻はアソコにヘビを入れられたり、なんとか逃げられても何度もドジで敵に捕まってしまう、読んでて自分も絶望感を味わいましたwまた、敵の幻術に何回もひっかって、また負けちゃうの?って先が読めないドキドキ感がありました。
この小説は1977年発行だから、53年前の作品。その頃って,個人情報は緩かったのか、簡単に市役所の人が車や住所を教えてくれて,今じゃ無理かなあって探偵捜査でした。
読み終わったあと、敵が巨大(地方都市を牛耳る資本家で警察も役所もグル)なだけに、よく決着がついたなあって思いました。エロ部分がキツかったけど、アクションシーンは面白い小説でした
53
:
なると
:2022/12/21(水) 12:49:15 ID:LhRnwsYM
◆十万分の一の偶然
A新聞の「読者のニュース写真」の年間最高賞を取った「山鹿恭介」の「激突」。それは死傷者を何名も出した、高速道路の玉突き大事故直後の写真を撮った物であり、A新聞社の選考委員長「古屋庫之助」よれば、山鹿恭介が十万に一つの偶然に恵まれた決定的瞬間であった。しかし、この写真に疑問を持った婚約者をこの事故で失ったの「中野晋一」は、山鹿恭介が故意に事故を起こして撮影したのではないかと、調査を始めるというミステリーサスペンスでした。
最初は、ニュース写真「激突」作品紹介から、事故の模様を綴って、どんな話なんだろうと全然予想がつかなかったが、中野晋一が事故現場や被害者証言に疑問を持って、色々調べだしてから「ははん、そういうストーリーかあ」ってだいたい予想がつきました。そして、途中から「山鹿恭介」の一人称で、うちに秘めた独白から、刑事コロンボみたいな、犯罪人VS復讐者の心理戦になって、なかなかに読み応えが増しましたね。どう復讐するのか、謎を解いて警察に突き出すのか、どう解決するんだろうと思ってたら、なるほど(最後まで読めば分るのだが)、中野晋一は人生を賭けて覚悟してこの玉突き事故の不審な点に取り組んでいたのですね。ああいう結末になるとは、想像の範囲外でした。
ある意味、必殺仕事人みたいな感じですか。ただ、残りページも余ってるのに、途中で山鹿恭介との決着はついて、どうするんだろう?って思いました。もう一人、復讐の対象がいたことも予想外でした。しかし、もう一人は直接には悪いことをしてないのに、ちょっと可哀想だなあッては思いましたが、第二第三の「山鹿恭介」が現れないようにと社会正義心からでしょうか、いや「坊主憎けりゃ袈裟まで憎し」の遠因であるあいつも思い知らさねば・・の方が人間味があってそっちの解釈のほうがしっくりかなw最後は自分に対するけじめ、または婚約者の元へですかね(覚悟を決めた者には敵わないって感じですね)。面白かったです。
大麻(麻)に関するの蘊蓄も面白かったです。写真に関するサロン写真とかの知識も面白かったです(この小説が書かれたのは1981年なので、今の写真家はどういう風なのかは全然分らないけど、昔はそういう感じだったのですね)。○○殺人事件の探偵ものばかり読んできたので、こういうミステリーは新鮮で面白かったです。
54
:
なると
:2023/04/20(木) 05:08:14 ID:CVo7XjhE
◆時の鳥籠
図書館でお古になった本をもらったんだが、安藤直樹シリーズの二作目らしい(そんなシリーズがある事を初めて知った)。作者はYMO好きらしい。
お話は、父親に,過去の世界で、安藤裕子という高校生が自殺するのを止めろと言われ、無理矢理に過去へ送られて,タイムトラベルのせいで心臓が止まり、死にそうになる主人公の「私(女性)」は、その安藤裕子の通報によって、救急病棟へ運ばれ蘇生され,主治医「甲斐裕介」の家に引き取られて暮らすことになる。
そして甲斐裕介に、自分が未来から来て、その使命を果たすことなど全てを打ち明けた。甲斐裕介はその突拍子ない話を信じて,彼女のために尽くそうとするが・・と言うタイムトラベルSFファンタジー。
(ネタバレを含む感想なので,注意。)
ほんと、フワッとしたポエムのような、運命は決まってる論的な、不思議なループものでした。主人公がいつもめそめそ泣くので、全体的にしっとりジメッとした暗めの話でした。
ミヤノシンイチという甲斐裕介の旧友で,血が大好きな危ないやつが出てきて、こいつがてっきり親友殺しの殺人犯だと思ったら(時系列もあべこべで、ミスリードを誘う)、どんでん返しで頭が混乱しました(誰だってそう思うよ)。
自分で自分を産むという行為に,ロマンティックというよりもゾッとするものがありますね。また、殺人犯の動機が,いまいちピンと来ないんですが,主人公をこの世から消して(ループの輪から解き放って),主人公の悲しみを無くそうとしたらしい(そのために殺人とかなんか発想や考え方が間違ってるw)。
そして、主人公「私」はこのシリーズの主人公「安藤直樹」と一時期恋仲になるのだが、それがこのシリーズのどういう位置づけになるのかは、シリーズ全部の本を読まないとなんとも言えないですね。まあ、なにがしたいのかぼやっとした展開で、不思議なループものでしたが、最後まで読めば、ああそういう事かって、それなりに面白くちょっとした驚きがありました。
それにしてもYMOが大好きらしく、何度も重要な場面(エッチシーンでも)で「YMO]の曲名がでてきます。自分もYOUTUBEで出てきた曲名を探して聞きました。YMOの曲は、時にふざけた感じで、時に不思議で奇妙で,どういう意図で作ったのだろうかって考えてしまう曲が多かったですね。
55
:
なると
:2023/04/26(水) 16:20:57 ID:CVo7XjhE
◆よろず建物因縁帳 鬼の蔵
昔、盆に家の因縁のある土蔵で興味本位で禁止されている隠れ鬼(かくれんぼ)をした兄妹の兄が,恐怖の体験をしてその夏の終わりに変死した。
そして今、その土蔵がある家が主人を失い、村へ寄贈され、道の駅へと改築されようとする。その仕事の取っかかりを務めるのが、広告代理店アークテクツに勤務するヒロインの高沢春菜である。
春菜はその家にある曰く因縁で祟りがあるという土蔵を下見に行くが、そこには小林教授と因縁物件専門の曳き屋(建物を移転する専門業者)の「仙龍」がいて、この土蔵には「オクラサマ」といわれる祟り神が住んでいるという。そして蔵の内扉には人間の血で書かれた「鬼」という文字が。
主人公達が,この村やこの建物に隠されたかなしきもおぞましい物語を解き明かす,ホラーミステリーの第一弾。
感想:面白かった。夜一人で読むと良質のホラー映画を観てるかのようで、怖くて寒気がしますw悪霊に強そうな北斗神拳でも使いそうな陰温羅流の仙龍が悪霊と戦うまたは祓う話だと思っていたら、不思議な力を持つヒロインが勇気と行動力と誠実さで,運良く、なんとなく成り行きで解決してしまうんですね。
仙龍の家系は因縁物件を扱うためか「42歳(死に)」で死ぬそうですが、何らかの方法「六つの悪縁切り」で延命することができるらしいので、ヒロインが彼をなんとか助ける感じになるのだろうか。
其れにしても、この青具村と青具家にまつわる悲話は、想像するに震えが来ますね。江戸時代だから、貞操観念も今と違って,男女交わればどんどん子供はできる、が飢饉で人減らしをしないと村は飢え死に。死ぬのを免れた子供も「人身御供」となって土蔵で育てられ,飢饉の時に村の犠牲になるシステム。ゾッとしますね。
そりゃ,人間扱いをしないその因習を恨んで,鬼や悪霊も生まれますわって所でホラーファンタジーだけどだけど不気味なリアリティがありました。御婆ステさんも因習の子供の一人、しかし最初っからすでに亡霊だったのか、それとも、雷助和尚のお祓いを観て「悪霊」とともに成仏する覚悟を決めたのかなあ。
どこまでがホラーファンタジーでどこまでが現実の出来事か線を引かない所が絶妙ですね。見習いのお調子者コーイチは読者をなんとか現実に引き戻してくれるナイスなコメディリリーフですね。あとヒロインの能力「サニワ」(あの世とこの世の潤滑油)がどう活躍していくのか見所ですね。
もうこのシリーズは完結してるので,できれば全部読みたいと思います。
56
:
なると
:2023/04/30(日) 18:16:37 ID:CVo7XjhE
◆よろず建物因縁帳 首荒い滝
因縁帳シリーズ第二作目。舞台は長野県姥捨山近くの神社とその側の滝。村人しか知らない「首洗いの滝」(かつて村人は落ち武者を騙して,首を切って洗った滝)に近づいたクライマーが、滝から滑落して、岩場で顔を削られて死亡する。
ちょうど仕事へ来ていた広告代理店アーキテクツに務めるヒロイン「高沢春菜」が、その事件に巻き込まれ、再び仙龍やコーイチとともに、神社や滝にまつわる因縁を解き明かし、その因縁を祓おうと立ち向かうホラーミステリー。
長野県の地図を調べたら、本当に「姥捨山」と、近くに「石神仏群」があって、なるほど実在する場所を参考に創ったんだなあって納得。今回は,一部に人だけが体験する悪霊ではなく、村人たちやヒロインの上司まではっきりとした悪霊を見てしまうってシュチュエーションが新鮮。
そして、今度の悪霊は積極派の行動派で、ほっとくと滝から離れていようと,狙った相手のもとにやってきて、顔を剥ごうとするらしい。お寺とか神社とか産女とか鵺とか言葉が飛び交うので、まるで「京極堂」シリーズみたいでした。そして、因縁が複雑怪奇で、因縁の謎解きが面白かったですね。
ラストは,晴れ晴れとした明るい未来がある的な終わり方になってましたが、自分はそういう気分になれなかったかなあ(滝を訪れた観光客に,また祟りが残ってそう、主な原因は取り除いても、落ち武者の恨みとがまだあって、全員成仏させたとは書いてなかったし)。
でも怖くて面白かった。全10巻、どんどん読んでいこうと思います。
57
:
なると
:2023/05/06(土) 16:52:13 ID:CVo7XjhE
◆犬神の杜
よろず建物因縁帳の四作目。今度の因縁物件は嘉見帰来山(やま)。この山には「犬神」という祟り神がいた。この山のトンネル工事を請け負ってる橘高組の事務員が相次いで不審死をして、工事そのものにも不審な出来事が相次ぐ。
数々の因縁物件解決に関わってきたヒロイン「春菜」はそこの部長に頼まれて、現場へ事務員として出向して、原因を探ることになる。そこへ、不吉な夢を見たと、鐘鋳建設社長で陰温羅流の曳き屋の「仙龍」たちお祓いメンバーもやってくる。
今度の相手は、人間の霊ではなく、悪霊(動物の)なので、いつもの成仏させるやり方はできない。だから解決方法もいつもと違うって所が見所でした。他人を恨めば、羨めば、自動的に犬神の攻撃が発動して相手を殺してしまうという、犬神に取り憑かれた村人(神人)の悲しき定めってのも興味深かったですね。
そして、犬神と離れるには、誰かが死を持って犠牲にならなければならないし、死を持って犬神を捨てた場所に、また人がやってくれば、その人に取り憑いて半永久的に悲劇は終わらないというのが、やっかいだなあ。人を呪いば自分にも返ってくるって感じですか。
今回封印したのが「犬神」の最後の一匹ならいいんですが、四国が発祥らしく四国の方にまだ残ってるんじゃないのかなあ。犬神は飼ってる(使ってると)と増えるらしいってのもこれまたやっかい。
ということで、中々面白くて怖いお話でした。あと、ヒロインは「仙龍」に惚れすぎやろ。このシリーズは長野県が中心舞台ですね(作者も長野県出身)。
58
:
なると
:2023/05/13(土) 04:15:24 ID:CVo7XjhE
◆怨毒草紙
長野の善光寺付近にある東按寺の持仏堂を曳いて移転した直後の台風の夜、東按寺の庭師が怪異に襲われ、心臓発作で変死する。その死体には首にノコギリで挽いたような傷と、地面に生首の絵が描かれていた。
その日から、色んな怪異の目撃情報が相次ぎ、原因調査を「怪異を祓う」陰温羅流の導師「仙龍」が社長の「鐘鋳建設」に依頼が来る。そして主人公「春菜」は仙龍のために協力を願い出る。よろず建物因縁帳シリーズ帳第7弾。
今回も怖くて面白かった。ただ、「仙龍」好き好き主人公の部分は少女漫画っぽかったかな。架空のお寺「東按寺」が実際にありそうな詳しい歴史設定やめいwどこまでが本当で嘘かわからなくなる。今回は長野市のど真ん中「善光寺」周辺が舞台。
毎度、都合よく「怨霊お祓いチーム」が集まりますなあ。広告代理店の仕事や曳き屋関係の用語、寺社や神社用語、建物の専門用語とか勉強になります(いちいち調べるのが、読むのが中断されて辛いけど)。建物用語は「建築探偵桜井京介の事件簿 シリーズ」で結構詳しくなったと思ったけど、使わないと忘れちまってまた調べるの繰り返しw
今回の怪異は死体専門絵師に殺された恨みや絵師の抑えきれない欲望が凝り固まって煙のような鬼になったって事でいいのかな。それが、筆や冊子に宿っていたって事ですね。小林教授をはじめ博識の方が多くいて怪異の謎が解明して行く所もこの小説の見所ですね。あと3冊で春菜は仙龍の宿命を取り払うことができるのか。次巻も楽しみですねえ。
59
:
なると
:2023/05/17(水) 05:31:28 ID:CVo7XjhE
◆リアルの私はどこにいる?
久々のWW(ウォーカロン・ダブルの略かなあ?)シリーズ第6弾。人間変わる労働力として、工場で作られる人間そっくりの生きた人造人間が人口より多くなった世界。
そして、ほとんどの政府が専用の人工知能に頼り管理される世界。そして、その人工知能やウォーカロンなどの先進技術が200年前に生まれた「マガタ・シキ」という博士の影響を受けてる世界。
ウォーカロンと人間の区別を判断する装置を作った主人公「グアト(仮名)」はウォーカロン関係者に命を狙われ、今はドイツの片田舎で彼を守るパートナー「ロジ(仮名)」とともに隠居生活を送っていたが、ある日、ヴァーチャルに入ったまま元の体が行方不明になって戻れなくなった「クラーラ」という数値解析技師から、自分の体を探し出して欲しいという依頼を受ける。グアトとロジはドイツ情報局と協力して体探しを始めるのだが、それはアメリカで起こったヴァーチャル国家独立事件と関わっていたというSF物語。
ネタバレもある感想:ややこしい話だったが、大変興味深いお話でした。登場時は素っ気ないドライな任務一筋のキャラだったのに、ロジがだんだん人間味を帯びて来るのが楽しかった(趣味に走ったり、表情豊かになったり、怒ったり嫉妬したり、感情的になったりw)。主人公はもう高齢なので、敵と戦ったりかっこいいアクションは全部女性の「ロジ」や部下の「セリン(ウォーカロン)」任せというしチュエーションが新鮮でいいね。でも「グアト」には最強の人工知能「アミラ」と「オーロラ」に頼りになるトランスファーの「デボラ」が味方にいるからコンピュータ達の電子戦ではかなり最強じゃないのかな。
その上「ロジ」にの部下の「セリン」や「ペネラピ」という頼れる部下もいるし、今回はドイツの最強のウォーカロン「デミアン」も味方だ。そして、「グアト」の突飛な発想が問題解決の強力な武器になってるところが主人公してて、そこがこの小説の肝で痛快なんだよなあ。今回はヴァーチャル国家のテロリストの攻撃で「グアト」と「ロジ」は殺されそうになるのだが、その時お互いに必死にかばい合うのが良かったなあ。
さて、ネタバレになるのだが、今回のヴァーチャル国家の王様(首謀者)はどこの誰って所なのだが(女王様はでてきた)、ケンかクラーラかまたはミニチュアの管理AIと思ったが、マガタシキ博士の200年前に仕込んだ「共通思考」プログラムが表舞台(活動中のAI)に影響を与え始めたって事でいいのかなあ?答えは書いてなかったが、主人公は謎を解明したと断言している(答えをはっきり書いてくれよんw)。
いやあ、面白かった、完結まで作者書いてくれよん。
60
:
なると
:2023/05/25(木) 09:45:34 ID:CVo7XjhE
◆レディ・ヴィクトリア完全版① セイレーンは翼を連ねて飛ぶ
「レディ・ヴィクトリア」シリーズ全5巻を作者が新たに書き直して、別の出版社から「完全版」シリーズを出版したその第一作目。前シリーズの前日譚で、放浪の貴族シーモアと主人公ヴィクトリアとの出会いから、二人が旅行中に日本で巻き込まれた殺人事件。
そしてシーモア子爵が死別した後、旅の終わりのヴェネチアで、レディメイドの「シレーヌ」との出会いまでの中短編3本に見習いメイド「ローズ」が主役のインタールードからなる、イギリス・ヴィクトリア朝時代の女主人「ヴィクトリア」とその仲間達(メイド・執事・料理人など)の波瀾万丈な物語。
3編の物語があるが、始まりの物語と日本の殺人事件は、面白かった。さすが「建築探偵桜井京介シリーズ」や「龍の黙示録」を書いた作者さんだって感じです。ただ、シーモアとの出会いはちょっと、この作者特有の「耽美」ロマンものに走っちゃったかなあ、って無理矢理感が少しあったかなあ。凶悪な殺人鬼で殺し屋兄弟(見た目はね)にそういう感情(恋)を抱くのも変だけど(まあ、変わり者のお転婆主人公だからねw)、運命を感じいたからって、自分お命を危険にさらしてまでも彼らと会ってお話しをしたい(変すぎる)、助けたい、仲間(家族にかな)にしたいはちょっと急すぎて理解できなかったかなあ。あとイタリア好きだねえ、「ジョジョ」の作者みたいだ。
もう2,3クッション殺人鬼兄弟とのエピソードがあれば、自分も自然に受け入れたかもね。日本の殺人事件は交換した翡翠が後々新たなエピソードをつく入りだしそう(それが日本人村事件だったかもだけど、内容を忘れちゃったw)。破産したヴェネチアの伯爵夫人も後で、ヴィクトリアに復讐に来そう(もう出てかかも知れないが、前作シリーズの記憶が薄れてしまってわからん)。しかし、前シリーズを書き直して大幅追加して出版していくそうだから、それを読めばいいんだ。
早く次の巻でないかなあ。というところでまあまあ面白いと思うシリーズなんで、気になったら読んでみてください。本当のメイドの生活が詳しく描かれていると思います(メイドラゴンの小林さんも納得しそう)。
61
:
なると
:2023/06/03(土) 14:35:16 ID:CVo7XjhE
◆憑き御寮
御寮とは貴人またはその子息子女の事。この小説では悪霊となったマサのこと。よろず建物因縁帳シリーズ3作目。豪商と謳われた藤沢家は今は博物館となっており、改修拡張工事の真っ最中。
担当したケチな建築士「長坂」が立ち入り禁止の蔵の封印を破ったために、凶悪な悪霊が復活してしまう。二人も職人が犠牲になり、頼まれて調査に来た主人公の広告代理店プランナー「春菜」と曳き屋「仙龍」達の活躍を描いたホラー。
鬼の蔵や犬神も恐ろしかったが、今回の悪霊が一番凶悪じゃ無いかなあ。まだ読んでない巻にもっと怖いのがいるかも。ネタバレになるが、悪霊のモチーフは「女郎蜘蛛」らしい。
このシリーズ、決して悪霊とゲゲゲの鬼太郎のように、超能力で戦って倒すのでは無く、陰温羅流と呼ばれる一連の儀式によって、悪霊を鎮めたり祓ったり成仏させるところが、なんか大人向けでいい感じですね。
まずは、実際に悪霊にあって、様子見。過去の出来事や歴史資料を調べて、事件に遭った解決法を探るって感じ。一つの悪霊や因縁を祓ったりする度に、導師の仙龍が呪われて行き、42歳に必ず死ぬっていうのもこのシリーズの隠れた肝ですね。
しかし、春菜ちゃんが、ラブコメ少年漫画のような仙龍への片思いに悩むのが、ホラー小説にしてはアンバランスで特徴的でした(毎回思う)。今回の事件は過去の出来事が複雑怪奇で面白いけど結構理解が難しかったですね。
62
:
なると
:2023/06/03(土) 15:02:47 ID:CVo7XjhE
◆魍魎桜
よろず建物因縁帳シリーズ5作目。今回の事件は、長野の地滑り地帯から発見された人身御供となった坊さんの骸骨を学術のために他へ持ちさったっために、彼(坊さん)を慕う桜の木と化した女性(老婆)が悪霊となって、発掘作業関係者を呪い殺す。
いつものように、頼まれて調査に来た「春菜」や「仙龍」も彼女(老婆)に取り憑かれて呪い殺されそうになるという物語でした。
前巻のような犬神や女郎蜘蛛ほどは凶悪でも恐ろしくも無い今回の悪霊だが、物をあまり言わない老婆の不気味さがありました。あと、地滑りで倒れた桜の根に、衝撃的な物が(ここは読んで欲しいな)。想像するだけで不気味で身の毛がよだちました。
悲哀で感動的な物語で締めた今回だけど・・ちょっと待って!、とり殺された人達のことを忘れてない?彼らの無念がまた悪霊となるぞ〜。今回はそういう部分で、桜の木の老婆に同情できなかったなあ。モブの犠牲者の命は軽いw
63
:
なると
:2023/06/14(水) 00:11:02 ID:CVo7XjhE
◆堕天使堂(サタンのいえ)
よろず建物因縁帳シリーズ6作目。今回は評判の悪いクライアントで建築設計士所長の長坂が独立して自分の事務所を持つことになった。だが、長坂が新しい事務所にと安く手に入れた建物は、悪魔の住むといわれる惨殺事件が起こった教会で、今も尚、改築しようとする職人達を祟りが襲う物件だった。
主人公の「春菜」の広告代理店が、その改築の仕事を請け負ったために、サニワ能力を持った「春菜」と陰温羅流(建物を浄化してきた一族)の「仙道」達が集まり、教会に住む悪魔と対決することになる。ホラーミステリー。
今度は西洋の悪魔との対決で、凄くワクワクしました。それも学生9名を狂わせて殺し、教会に住む牧師一家惨殺、教会を調査にきた人々も呪い殺したという、今までで一番最凶じゃないかと思う悪魔ですよ。死んだ蠅を使って攻撃したり、人の心の隙に忍び込んでその人を狂人に変えたり、いやあエクソシストの映画を観てるかのようでした。
日本のそれも基本は建築屋がどう立ち向かうのかってのが興味津々で最後まで読みました。さすがに少年漫画のように超能力合戦とかにはなりませんでしたがねwまあ、無難でシンプルで、普通の人にもできる範囲の解決法でしたが、巨大な建物を何十センチも持ち上げるってのが観たことないので、本当にできるのか?なんか凄いなあって思いましたね。
やっぱ建物は風通しを良くして、日光を当てて明るくするってのは基本だと自分も思いますね。家の中が暗いと心も濁ってきそうですからね〜。
ちょっとあっけなく対決が終わった感じでしたが、まあまあ面白かったです。あの極悪な「犬神」も出てきましたからね(仙龍は俺が呪い殺すんだ!お前にはこの体はやらん!なのでしょうか、それとも救ってくれた誠意からでしょうか)。
あと、春菜と仙道の恋物語の部分はここだけ気恥ずかしい感じの少女漫画ですねえw作者は恋する乙女かと思いましたよ(写真を見たら男性でしたが)。
後は、意地の悪い自分勝手な設計士「長坂」。彼は今回のことで改心してツンデレになったのかなあって思ったけど、次巻では又ちょっと嫌な奴に戻ってましたので、人の心はそう簡単には変わらないって事ですね(もっと恐怖体験をしていれば違ったかも)w
シリーズものこり数巻なんで、全部読みますよ〜。
64
:
なると
:2023/06/23(金) 18:00:07 ID:CVo7XjhE
◆畏修羅(イソラ)
イソラとは上田秋成の「雨月物語」の一篇「吉備津の釜」の出てくる、浮気をした夫を呪い殺そうとする「磯良(イソラ)」という妻を文字ったもの。
仙龍(建物の因縁を祓う導師)の呪いを解こうとする主人公「春菜」は陰温羅流(お祓いの流派)のゆかりの地、岡山の吉備津(岡山)にその手がかりを求めて浩一と共に向かう。
一方、「春菜」の務める会社「アーキテクツ」では髪の長い白い服の女性の幽霊が現れるようになり、その幽霊は「髪の毛」を毎回残しす。そしてその原因が嫌な上司「手島」の浮気の所為だと分かる。
手島の浮気相手や周りの女性を呪い殺し、最後は手島を殺そうとする幽霊。無視できなくなった「春菜」はいつものお祓いメンバーで助けようとするが、というお話でした。
今回の幽霊は西洋の悪魔より、攻撃的で凶悪でしたwていうか、だんだん「祓う相手」が強力になってない?これ解決しても、手島の浮気相手はともかく、周りの女性まで殺してしまって、その人達が報われないなあ(まあ、いつものことだが)。
その幽霊の名前は「伽耶」って言うんだが、「貞子」みたいに、ホラー映画にありそう。
ここまでこのシリーズ読んでいて、ホラーと男臭い建設業のお祓い師に「少女漫画のようなラブストーリー」を加えた感じですね。気になるのは出雲神社にて何かに取り憑かれた人物と主人公の胸の痣を付けた、屋根の神「大屋昆古神(おおやぴこしん)」ですか。
完結まで、あと2巻。頑張って読むぞぉ。
65
:
V10
:2023/06/28(水) 22:57:50 ID:CVo7XjhE
◆蟲峯神
よろず建物因縁帳シリーズ9作目。主人公「春菜」は「仙龍」や「コーイチ」と吉備津神社のある岡山へ向かい、そこで陰温羅流導師に掛けられた呪いを解くヒントを見つけようとする。
どうやら、鉄の女神「金屋子神」と「たたら製鉄(砂鉄などから鉄を作る方法)」に関わる一族の歴史にヒントかがるようだった。旅の途中で、緊急案件の電話が掛かり長野へ戻り、彼らは屋敷に住む「屋根神(民家の屋根に設けられた小さな祠)」に人が殺されたという因縁物件に関わることになる。
それは、陰温羅流の先祖に関わる「屋根神」を模した「蟲峯神」であった。ホラーミステリー。
いやあ、聞き慣れない建築用語がバンバン出るわ、日本の神話や神社に関わる歴史や専門用語は出るわ、それらに密接に関わる「陰温羅流(曳き屋の流派)」の架空の歴史が複雑だわ、理解するのが難しい内容だった(なんとなく理解はできたが、日常必要な知識ではないので、すぐ忘れちゃうだろうなあw)。
まあ、難しいウンチク多めな巻だったけど、それなりに面白かった。「サニワ」とは神や霊的(悪霊も)なものと感じたり、対話できる人の事なんだよね。悪霊的なものが現れる時は必ず気温が寒くなるんだよね。今回は最終巻のための前編的なもので、解決はしなかったが、ラストに読んでいて気恥ずかしくなるような少女漫画的なもので綺麗に締めた感じです。
結局、吉備津神社に祭られた鬼「温羅」とはあまり関係なかったんだね、それがヒントにはなったけど。さて、次が最終巻、どうやって神にかけられた一族の呪いを解くのか、楽しみですねえ(小林教授風に)。
そういや、小林教授って、てっきり太ってる好々爺みたいなのを想像してたんだけど、小柄で白髪のおじさんなのかあ。
66
:
なると
:2023/07/06(木) 10:19:36 ID:CVo7XjhE
◆陰温羅(おうら)
よろず建物因縁帳シリーズの10作目(最終巻)。前巻から引き続き地を好み鉄を生み出す女神「金屋子神」と祀った本人に富をもたらす屋根神の亜種「蟲峯神」の呪いが掛かった坂崎製糸工場を救うため、それに関わる「陰温羅流の一族」の呪いを解くために、ヒロイン「春菜」と曳き屋「仙龍」達が因縁払いして戦う物語。
とうとう、最終巻まで来ました。欲深い悪人を許さない「蟲峯神」と「蟲峯神」の本体(陰温羅流の先祖の死体)と結ばれようとする「金屋子神」の2つの神様を相手にしなければならないという最大の仕事にて、悪徳な銀行出向員「黒沢」の所為で、ラストの戦いが計画と違う思いも寄らぬ方向へ進み、死闘となった所が面白かったです。
しかし、2人も死んでるのに、良く観光地化なんて発想ができるなあ。不気味なもの怖い物を観たい輩はいるかも知れないが、長期でみればそんな因縁渦巻くの建物なんて人気でなさそう(因縁を祓ったとしても)wそれに、この因縁を浄化したからといって、「陰温羅流の導師の呪い」が解けたかどうかは分からない所がなんとも言えないですねえ。
相変わらず、ヒロインと仙龍の恋のシーンは、読んでいて気恥ずかしかったです(ここだけラブラブで甘〜い少女漫画風)。嫌なやつ「パグ男」が改心したシーンは、少年漫画の「昨日の敵は今日の友」的な盛り上がりがあって面白かったです。でも、人はそう簡単には変わらない、これからも嫌なやつって所は、それなりにリアルで良い終わり方。
陰温羅流の呪いも完全には解けて無いっぽい終わり方も良かったです。たしか「虚構推理」も同じタイガ文庫なので、このシリーズも上手くアニメ化すると面白いかも。
ということで、夏の怪談好きににはピッタリの作品だと思います。面白かったですねえ。
67
:
なると
:2023/07/13(木) 18:43:17 ID:CVo7XjhE
◆君が見たのは誰の夢?
WWシリーズ7作目。ヒロインの「ロジ」(情報局員)が未知のウィルスに感染して、ドイツから日本へ精密検査のため、主人公「グアト」(科学者)と一緒に帰国することになった。
すると、グアトもそのウィルスに感染してると判明。そして、未知のウィルスを狙う何者かに二人は狙われるというストーリー。ロジ(本名マーガリィ)の母親「スズコ」(ウィルスの研究者)も出てきました。
感想:え?このシリーズもしかして7作目で完結?って思うような、ちょっとありきたりな感じの終わり方でした。ロジはグアトの事が好きなのに、グアトは「マガタ・シキ」と「共通思考」に信者のように魅せられて、ロジとの生活を振り向かないで先へ進もうとするのが、何か空恐ろしくで、切ないねえ。
マガタ教の信者となってるグアトが今回のことでロジの方を振り向いてくれるのか、人間をデジタルへと変化させるバーチャリズムや人間の究極の在り方「共通思考」vs人間古来の生き方、愛し方って感じで、後者は考え方が古いだけなのか?人間の原点回帰は無駄なエネルギー消費の退化的思考なのか、どちらが正しいのかってのが凄く考えさせられるお話でした。
ペネラピ(本名:アネバネ)は男なのか女なのか、そういう思考がもう古いのか?w・・・もうちょっと続いて欲しいなあ、このシリーズ。面白かったです。
68
:
なると
:2023/07/17(月) 12:43:10 ID:CVo7XjhE
◆呪街 警察庁異能処理班ミカヅチ
「ミカヅチ」シリーズの2作目。主人公「安田怜」は霊が見えるお祓い師であったが、ある事件を切っ掛けに、警視庁の地下三階にひっそりと存在してる、怪異専門の部署で働くことになる。
そこでは担当する「怪異」を「人が起こした事件」として隠蔽するのが仕事であった。ホラーミステリー小説。
面白かったのだが、怪異を退治するのではなく、流れのまま解決、またはそのままにしておく感じで(哲学的な解決かな)、なんかスッキリしない終わり方だなあ。まあ、「呪術廻戦」みたいな少年漫画のように即解決とは行かないところがリアルではあるが。
怖いことは怖いので、夏の夜にピッタリ。でも怪談って別に夏限定じゃ無くて良くないッては昔から思うけどね。
出てくるキャラがそれぞれ能力持ちで、そこは少年漫画風。盲目で性別の無い体の「広目天」は死体の目を眼にはめると、その死体が殺されるまでの映像が見えたり、紅一点の虫使い「松平神鈴」は人間の体内に潜む悪意や病気を虫のようなものにしてポシェットに吸い込む能力(「蠱峯神」と「金屋子神」かなw)。
他には、体に悪魔を飼っている刑事「極意京介」は超身体能力。三人のおばさん清掃員は悪霊の扱いが上手い何でも屋。そして、ミカヅチ班をまとめるのが、首を切られて幽霊となって指揮する元警視正の「折原」。
今のところ三巻まで出ているが、人気が出るかはこれからのストーリーしだいだなあ。ちょっと解決の仕方に「虚構推理」と似た部分があるが、オリジナルで勝負、盛り上がる物語に期待したい。
69
:
なると
:2023/08/01(火) 12:20:27 ID:CVo7XjhE
◆蒼海館の殺人(アオミカンノサツジン)
前作「紅蓮館の殺人」で犯罪を見事に解いたが、人を死なせてしまって心の傷を負った自称名探偵の高校生「葛城輝義」は実家(祖母の家の)蒼海館に引きこもって学校へ来なくなった。
彼を心配した主人公「田所」とその友達「三谷」は東京から二時間の隣県にある「蒼海館」へ行くことになった。時は十月、季節外れの大型台風の所為で、日帰りができなくなった二人は館主の祖父「惣太郎」が亡くなって49日目の法事が行われていた「蒼海館」に泊めてもらうことになる。
彼ら以外にも、謎の招待状を受け取った三人の部外者が来ていた。そして大型台風の所為ですぐ側の「曲川」が氾濫して、徐々に上がる水位に、下方にあるY村や高台にある「蒼海館」さえも水没の危機に。そんな自然災害に備える中、離れで猟銃自殺した兄「正」のしたいが発見される。果たしてこれは自殺なのか、くせ者揃いの葛城家と招かざる客を相手に「田所」はなんとか塞ぎ込む「名探偵・葛城」の復活を願って奮闘するという推理ミステリー。
久々に結構なボリュームの小説だったので、読むのに時間が掛かった。前作の内容はうろ覚えで詳しいことは忘れていたので、ああそういう内容だったなあって思い出しながら読みました。で、内容だがベテラン推理作家に比べると少々表現が少年にも分かり易い語句でライトノベルよりに感じるかなあ。そして推理も多少強引な部分もあるかなあ。しかめっ面を難しい言葉の「眉根を寄せる」って表現で多用する小説はだいたいそう感じるんだよなあ(自分はね)。
でも、それなりに面白かった。ただ後味は悪いかなあ。犯人はこういう犯罪とトリックを用いて、後の人生の苦しさや生きづらさに釣り合わないだろう、犯罪は天才的かも知れないけど、ある意味バカじゃねーの?って思ったw動機がなんか弱いというか、やっぱ犯人は自分の立てた犯罪が上手くいくことに陶酔するやっぱバカだったのではw
それにしても、犯人も一晩であれこれやらなきゃいけない忙しい犯罪でしたね。そして名探偵の推理はまあまあ素晴らしかったが、氾濫した水で館が水没、流される命の危険が迫ってる中で、普通なら「推理なんかやってるんじゃねえ」って言われるところだよw犯人が誰かは4分の3ぐらい読んだ時点で大体分かったかなあ。家族を個別に呼んで尋問するところは「オリエント殺人事件」っぽいよね。家族や客それぞれに弱みがあって、謎が何重にも重なっているところは、凄い力技だなあってちょっとい感心しました。
主人公の悪戯というか「探偵復活」のための布石の所為で殺人が行われやすくなったのは、どう処罰されてしまうのかは結構ドキドキでした。
続編に期待したいけど、火災・水難でもう都合の良い殺人事件の設定やネタが無いかもって思ってしまった。でも続編に期待します。
70
:
なると
:2023/08/04(金) 09:50:02 ID:CVo7XjhE
◆桜底
警視庁異能処理班ミカヅチシリーズ第一弾。ヤクザが「禁足地」に肝試しに入って呪われた(体に爬虫類の鱗ができた)のでなんとかしてくれと、霊能力のある主人公「安田怜」の元へ依頼が入った。
相手は「姦姦蛇螺」、ターゲットになった人間の手足を奪って自分の体にくっつける妖怪である。だが呪いのお祓いに失敗して、若社長を死なせてしまった主人公は、ヤクザに追われることになる。逃亡生活を始めた主人公の元に、今度は警視庁異能処理班の「土門」にリクルートされる。
彼は面接試験に合格して、異能処理班ミカヅチの一員として働く事になる。そこは怪異事件を悟られず秘密裏に処理して、一般の人に怪異など無いんだよって騙し、被害拡大を食い止めることであった。そして、最初の仕事が「姦姦蛇螺」と「やられたヤクザの死体」の処理であった。というホラーミステリー。
つかみの第1話「手足を奪う霊」が凄く面白くて、途中で読むのを辞められなくなった。続く第2話「札の辻キリシタン無念の火」は50人のキリシタンが徳川幕府によって火刑になった呪いの血に立てられた三田警察署の留置所で、謎の出火と留置中の被疑者が焼死する事件が続きそれを処理する話でしたが、こちらは1話に比べると普通かなあ。
妖怪や呪いは多少能力を持った人間数人ごときじゃ、退治も祓いもできないから、被害が拡大しないように応急処置をするだけ、好奇心バカが面白がって近づかないように、妖怪の仕業じゃなかったように処理する、って所がリアルな感じで面白かったなあ。
それにしても、まだ式神使いの「土門」さんの直接の活躍や首を切断され幽霊となった警視正の原因の「将門塚」の事件もまだ描かれてないし、三婆ズの正体もイマイチはっきりしてないなあ。これからシリーズが続けば描かれるんだろうから、第二弾「呪街」は読んだので、第三弾「禍事」に期待します。夏のホラーにピッタリでした。
71
:
なると
:2023/08/17(木) 15:29:04 ID:CVo7XjhE
◆禍事(まがごと)
「異能処理班ミカヅチ」シリーズの3作目。警視庁の地下三階にあって、一般には知られてない、「怪異事件を騒ぎになる前に処理する」部署「ミカヅチ班」。
務める刑事や班員はみんな能力者ばかり。怪異を感じて観る事ができる能力を買われて新しく雇われた主人公「安田怜」は今回も2本の怪異事件に挑む事になる。
ある日、一斉に各地で奇妙な事件が起こり、ミカヅチ班は何か大きな禍事が怒る前触れでは兎感じる。そんな中、「幽霊アパートがネットに載ったり」に「元総理大臣が地獄の怪物に食い殺される」事件が起こり、その処理を通して、幽霊となった班の責任者の「折原(元)警視正」と悪魔憑きの同僚「極意京介」の過去や事情を知ることになる。ホラーミステリー。
感想:今回は事件の面白さ怖さより、「折原」と「極意」の過去や悲しき事情についての語りが中心だったので、ちょっと肩透かしというかたるかったかな。でも、それなりに面白かったです。ミカヅチ班が守る扉にはどんな秘密があるのか、どんな恐ろしいモノが閉じ込められてるのかは楽しみ。
あと、平将門の塚の「何か」に首を切断された「折原」の怪異事件の真相もまだ有耶無耶だし、悪魔との契約や地獄の番犬ケルベロス(契約完了後に魂を取りに来る役目?)との関係やシステムもまだ謎が多い。
そして、主人公「安田怜」の生い立ちや覚醒しつつある能力もまだ謎が多い。妹の病気のため悪魔と契約し、体を悪魔に売った「極意」のエピソードは悲しくてやるせなかったなあ。
その「極意」を悪魔やケロベロスから救うため、主人公が悪魔契約システムの謎を解明して、謎の能力でなんとかするって話になるんだろうけど、悪魔は狡猾で、人知を超えた何かなので、救ったと思わせて悲劇が起こりそうで怖いなあ。
前作「よろず建物因縁帳」では、ヒロインが苦労の末に呪いを解いて、愛する人を救ったが、今回は所詮人間には地獄のシステムには立ち向かえないって事で、救えなかったで終わりそうで怖いなあ。主人公がこのまま人間だったらの話だが。
どうやら今年中に第4作の「迷塚」が刊行されそうなので楽しみですね。
72
:
なると
:2023/08/26(土) 12:10:16 ID:CVo7XjhE
◆トイプー警察犬メグレ 神隠しと消えた殺意の謎
子供が誘拐され、身代金を要求され、犯人にまんまとお金を持ち攫われた「高森山の誘拐事件」から10年後、子供が「尾伏山」で行方不明の事件が起きた。その捜査に警察犬「メグレ」とその訓練士(ハンドラー)の「早乙女」は借り出され、見事に子供を救う。
しかし、ただの迷子捜索事件だと思いきや、その事件に関わる「犯人」が存在すると、犯人の前で激しく尻尾を振る特殊能力を持つ「メグレ」に反応があった。この迷子事件は、もしかしたら「誘拐事件」なのでは?と感じた「早乙女」と「メグレ」は独自に調査に乗り出す。そして10年前の誘拐事件との関わりとは?といった、ちょっと変わったミステリー。
これ多分、昔1度読んでるんだよね。内容すっかり忘れたのと、「トイプー」シリーズの第三作が出た?と勘違いした?ので、また最後まで読んでしまいました。最後まで、事件の真相が思い出せなくて、ジュブナイル小説のように、難しい表現も使われていなくて、するすると二日で読めてしまった位に読みさすく、意外性も充分あり、面白い小説でした。
子供がああなって一家が悲惨な目に会ったのは、痛ましい内容だけどね。現在も警察犬って不足してるのかなあ。あと、「マスティフ」(パワフルって意味の)って犬の犬種だったんだね。表紙の男勝りでキュートでコケティッシュな女性はどっちのヒロインかなって思っていたら、手錠を持ってるので「佐倉綾香」の方かな(ちなみに、もう一人は、巨乳すぎる美人訓練士の「坂巻洋子」)。
あと、主人公「早乙女」(いや主人公はメグレだろw)は必要なことしかしゃべらない無口でクールな感じだ。面白いシリーズなので、第三作も出して欲しいかな。
73
:
なると
:2023/10/08(日) 18:24:03 ID:CVo7XjhE
◆真夜中の全ての光(上)
最愛の妻「皐月」を交通事故で失った失意の主人公「御堂彰」は、大学時やっていた高額のバイト「ヴァーチャル仮想都市」の延長である「仮想空間パンドラ」という娯楽空間と出会う。
そして、「パンドラ」の中で人工人格「シーニユ」と出会い、心の隙間を埋めるように、次第にはまっていく。何度目かの利用時に、死んだ妻「皐月」の仮想人格が、バイトで通っていた研究所の「仮想都市」に存在してることを知る。
一方、一緒に「仮想空間」のバイトをして知り合った「英一」の不審死が気になり始める。ただの交通事故なのか何かの陰謀なのかという疑念が湧く、センチメンタルなミステリーかな。
上巻なので、まずは主人公の今にも自殺しそうな心情と妻「皐月」とのなれ初めや、友人達との過去回想やバイトの内容、そして疑惑のパンドラや友人の家族事情を詳しく描かれていて、まだ、事件性は薄く、物語も淡々として、大きく動かなかった。
下巻で、何か物語を動かす事件が起こるのかなあ。とにかく、どんな内容か全然分からなかったから、ずっと落ち込んだ主人公の心情や過去回想ばかりで、凄くとっつきにくく、引き込まれる内容でも無く、没入感も得られなく、ちょっと苦痛だった。
でも最後まで読むと、ちょっと面白そうな雰囲気は感じられる、といった気長にじっくり読む人向けの読み物でした。
後半、この物語がどこへ向かうのかは気になりますね。研究所の陰謀で、最後までバイトに関わった人達(仮想人格のモデルとなった人達)を、わざと交通事故を起こして死亡させた可能性もありそうな感じ。さて・・。
74
:
なると
:2023/10/30(月) 04:55:57 ID:CVo7XjhE
◆真夜中の全ての光(下)
ヴァーチャル空間で楽しむ施設「パンドラ」で、閉じ込められて自分の肉体に戻れなくなった「英一」と再会した主人公「彰」は、彼を救うため、その事故を隠蔽しようとする「研究所」と対決することになる後編でした。
「英一」の精神が何故ヴァーチャル空間から戻れなくなったかは、自分で読んで欲しいかな(想像すると結構怖い)。
と言うことで、読み終わるまでに結構かかってしまった訳は、途中で読む意欲を無くしてしまったからかな。最後まで読むといい話だったって思うのだが、途中までは、ずっと主人公の心の傷をあれこれ悩んだり、人工人格「シーニュ」とのふれ合いによって、少しずつ癒やされていくのがずっと続いて、これが最後まで続くのはしんどいな〜って思ってしまって、意欲が失せたからかなあ。
でも最後まで読むと、シーニュとの触れ合いが、とてもいい感じな感動を与えてくれました。例えるなら、感情のないはずのアンドロイドが、感情に目覚め始める「僕の妻は感情がない」や「ビートレス」みたいな感じかな。
アクションシーンやハラハラするサスペンスは無いんだけど、こういう事件が起きたら、こうするだろうなあってリアルさがありましたね。
でも、この先「英一」が本当に現実世界に戻れるのか、やっぱ駄目じゃな言うかって一抹の不安が残る終わり方だったなあ(自分はね)。
凄く面白い、ワクワクするって小説じゃ無いから、しっとりとした物語が好きな人向けかなあ。でもたまにはこういう小説もいいもんだとは思いました。
75
:
なると
:2023/11/15(水) 10:08:43 ID:CVo7XjhE
◆未明の家
「推理とはジグソウパズルの絵を完成させるような物です」
建築探偵桜井京介の事件簿の第一弾。W大学の近代日本建築史の神代研究室の研究生である主人公「桜井京介」のもとに、同じ大学生の「遊馬理緒」が事故?で死んだ祖父「遊馬歴」の住んでいたスペイン風の家「黎明莊」を解体の危機から救って欲しいと頼まれる。
早速、助手の記憶能力の優れた「蒼」くん(中高校生?)と多才な大男「深春」と友に、喜々として調査を開始するが、とても奇妙な作りの建築であった。そして、遊馬家の人々の複雑に錯綜する思いや、その家で過去に起った二つの死傷事件、隠された財宝を巡る陰謀が重なる。
桜井京介は事件の破片や「遊馬歴」の思いの断片をジクソウパズルを組み立てる様に、真実の絵を完成させようとする。果たして、遊馬の人々の「呪い」を祓い、その上で解体の危機から家を救えるのか。
これ、昔1度読んでるんだよね、というか「桜井京介」シリーズは全部読んだんだよね(番外編や外伝も含めて)。ほぼ内容を忘れちゃったし、第一弾はこのシリーズに嵌まる前だったから、流し読みしちゃって推理部分も適当な理解しかしてなかったから、もう一度しっかり読んでみようと思って、読み返しました。
いやあ、2度目だったけど、おもしろい。殺人ミステリーは勿論、建築知識もおもしろい、後で解明される「蒼」くんの壮絶な過去もチラリ匂わせているのも、構成が上手いなあって感心した。普段髪の毛で目を隠してるの「京介」のビジュアルは、天パをストレート髪にした、アニメ「鴨乃橋ロン」に近いんじゃないかな。
実は、何作かは、漫画にはなってますね。全15巻+の外伝(何冊あるかは不明だが、結構ある)。蒼くんとの関係が、やや耽美なBL物を連想させるが、さっぱりしているのでそんなに気にならないかなあ。
今回の話で出てくる4姉妹はメインのレギュラーキャラ(恋愛関係的にも)になるのかなあ、って思ったけどそうでもなかった記憶があるなあ。勿体ないかなあっては思うが、便利なお金持ちお嬢様の支援を受けて、事件解決ってのも都合が良すぎるんで、これで良かったのかも知れませんね。(漫画だったら、後の事件にも出すでしょうねw)
あと、桜井京介は、喧嘩や格闘にそんなに強くなくて、犯人に毎回大けがを負わされて、リタイヤしそうになる印象だ。そこで、頼りになるのが大男「深春」と、後に外伝で抜群の推理を発揮して、主人公となる頭の切れる「蒼」くんですね。たしか、外伝で大人になった「蒼」は心理カウンセラーかなにかになるんだっけ?
もう忘れたなあ。また全部読み返したいけれど、それよりもまだまだ、これから出版される、新しい小説をと出会いたいですね。
この作者の「レディ・ヴィクトリア」シリーズの新刊が早く出ないかなあ。
76
:
なると
:2023/11/24(金) 08:35:05 ID:CVo7XjhE
◆ブギーポップは呪われる
「ブギーポップシリーズ」の24作目。今回のテーマは「呪い」。一作目「マンティコア事件」の後あたり、(ブギーポップと対峙した)「水乃星透子」の飛び降り自殺後で、主人公「宮下藤花(ブギーポップ)」がまだ深陽高校の2年生の頃の話。
深陽高校に何気ないことで争いが起ったりして、生徒の間で学校に何かの呪いが懸かってるのではと噂が立つ。そこへ、自称「お祓いさん」という「生成亮」と言う生徒や、「炎の魔女」と呼ばれる不良生徒「霧間凪」がその呪いの解明に乗り出す。
さらに、超能力など特殊能力を持つ者を探して処分する巨大組織「統和機構」のエージェント「ギノルタ」「カチューシャ」や世界の敵を狩る死神「ブギーポップ(宮下藤花の別人格)」も頻繁に現れるようになる。呪いをばら撒く黒幕は、次第に生徒達を支配して行くという話でした。
感想:今回は初心に戻った感じで、一作目「ブギーポップは笑わない」みたいに、時系列が「章」ごとに、行ったり来たりして、「ああ、ここでそう繋がるんだ」って、パズルのような面白さはありました。
それから、都市伝説であるはずのブギーポップの正体が、黒幕や主要キャラ達ににすでにバレていて(新キャラ達にもすぐばれた)、主人公はよく普通に学園生活ができるなあって感じ。ここまでばれていたら「統和機構」や頭の良い「末真和子」にばれそうなんだけど、みんな口が堅いのか、運が良いのか、間抜けなのか「統和機構」にはバレなかった感じですね。
「統和機構」の末端の能力者にはバレていた感じだけど、記憶操作して相手を支配する能力者が多いんで、結局そいつも記憶喪失になって運良く知られなかったって感じですか。それにしても、記憶を操作したり心理的操作で相手の行動を支配する能力者ばっかりやなあw逆に、広範囲爆発で殺す「カチューシャ」みたいな分かり易い能力で相手を倒してしまう能力者の方がこの世界では少ない印象ですね。
一作目、二作目を読んだ人にとっては、懐かしい名前が出てくる話でもありました。最初Pこのシリーズは「悪の組織」と思っていた「統和機構」をブギーポップとその仲間達が壊滅する流れかと思ってましたが、「統和機構」にも正義があり、末真和子などが次期「統和機構」のボス候補だったりして、その末真和子が「どこにもたどり着けない」って言ったように、「ブギーポップシリーズ」も終わりがないのが終わりっぽいですねw
それでも、最終巻を出すときは、何らかの決着を付けて、読者を納得させて欲しいですね。自分は「ブギーポップシリーズ」がどこへ向かってダラダラいつまで続くのか、気になる「呪い」に懸けられてるようです(チャンチャン)。
あ、今までの話の中では、今回の話は意外と面白かったです。群像劇の面白さが感じられて。
77
:
なると
:2023/12/07(木) 01:03:35 ID:CVo7XjhE
◆パンダ探偵
病原菌の所為で人間が絶滅して、他の哺乳類動物たちが,二足歩行になり,知能を持ち、言葉を話し,国を作って人間のように生活を始めた世界。
家族を亡くし天涯孤独のパンダ「ナンナン」が、中国があった場所からインドがあった場所へ移住して、警察官であった兄の遺志を継ぎ、探偵社に入って、正義の「探偵」を目指す、ファンタジー&推理物。
ちょっと馬鹿馬鹿しい有り得ない不思議な世界だが、意外と面白かったです。肉食獣は法律で草食獣を食べては行けない「アフラシア共和国」と草食獣が奴隷や食料のように扱われている「大アメリカ帝国」の諍いの設定も面白いですね。
推理は、いかにも動物的な事件が起るんですけど、ちょっと「キメラな動物当て」「こういう特徴があるの動物は何かな?」みたいなところがあって、幼稚園や小学校の生徒になって、「世界の動物のクイズ」を受けてる気持ちになりましたw
とはいえ、事件や推理やプロットはしっかりしていて、事件の内容は,殺人とか惨殺とかで弱肉強食を感じさせる内容でしたけど,主人公の「ナンナン」が真面目で明るく素直で、行動がトロくマイペースで、のほほんとしたドジっ子で、たまに鋭い推理をする感じで、殺伐な事件内容なのに、ほんわかほのぼのしながら楽しめました。
ラストで、敵国「大アメリカ帝国」のスパイが出てきて、続編作る気満々なのに、未だに続編出てないって事は,もう書かないのかなあ。もう一冊ぐらい続編読みたいなあ。
78
:
なると
:2023/12/24(日) 14:07:40 ID:CVo7XjhE
◆非日常の謎 ミステリアンソロジー
6人の違う作家達の6本の作品の短編集。テーマは非日常の謎。
①十四時間の空の旅
父親の仕事の所為で無理にアメリカ留学してた父親嫌いの女の子が日本へ帰国する飛行機の中で出会うミステリー。
父親の娘を思う愛がテーマだったんだね。まあまあな内容でした。
②表面張力
解体するアパートから出た大量の「恋愛成就のお札」を巡るミステリー。複雑で人間関係を把握するのが大変でした。6本の作品の中で一番歯ごたえがあって面白い群像劇でした。
③これは運命ではない
得意先の女生との偶然の出会い(再会)が5回も続いて、これは偶然ではなく作意めいたものを感じて,友人に相談するミステリー。その相談相手が「桜川九郎」と言うことは、これは妖怪や霊の仕業では?w
虚構な「でっちあげ推理」と真実が垣間見える「あの作品」の番外編かな。杖をついた女性の影もチラリ。
④どっち?
帰宅すると不倫相手の女性が、自宅で首を吊って自殺していた。隠蔽工作をする間に、もうひとつの可能性が。これは自殺ではなく・・。
怖いですね〜、怖いですね〜、別の本性が垣間見える瞬間は。まあ、不倫相手もどうしようもないダメダメ女だったからなあ。
⑤成人式とタイムカプセル
10年前小学校の校庭に埋めたタイムカプセルの中身が空だった。その真相を解くミステリー。真相としてはまあまあの驚きかな。ただ、推理が凄すぎて、多少「神掛かっている」かもね。
⑥この世界には間違いが七つある
よくある「7つの間違い探し」の中の人物に意思を持たせた、突拍子も無い内容でした。<マスター>とは「間違い探し」で遊ぶ読者でした。実際の間違い探しは面白かったけど、内容は何だがなあ〜って感じでした。
79
:
レタス
:2024/01/23(火) 05:48:16 ID:CVo7XjhE
◆歌の終わりは海 SONG END SEA
浮気調査を依頼された探偵の「小川令子」と「加部谷恵美」は早速、夫で有名作詞家である「大日向慎太郎」の素行調査を始めるが、捜査途中で彼の姉の「紗絵子」が敷地内の「離れ」で首つり自殺をしてしまう。
しかし、発見された状況は、体の不自由な姉が自力で首つり自殺は、無理な状況であった。と言う、純文学風なミステリー小説かなあ。
感想:トリックとか事件の展開や推理の面白さは横に置いた、人生をやりきった姉弟のしみじみとした「終活」、確固たる意思を持った前向き?なラストイベントを描いた小説だった。
「鷹知祐一朗」や「雨宮純」「西之園萌絵」などおなじみの人物が出て来るから、もっと派手で高ぶるものを期待していたが、そういう期待は裏切られたが、これはこれで味わい深い小説でした。
自殺の自由・権利・自殺に対する民衆の感じ方変革も、少し論じられたが、多分それがメインではなく、この姉弟の一つの生き方(終わり方)・考え方を、読者に色々考えてもらいたいと言う趣旨なんだろうと思う。
浮気調査というのは表の名目で、アリバイ作りのためか、自殺をさせないためか、自殺幇助のためか、多分妻も色々と複雑な思いだったに違いないと感じました。
まあ、「これ面白いから」と他人には勧められる小説ではないが、読んで損するものではなかったと思う。
実は「詩(うた)の終わりは海」なんだろうね。
80
:
レタス
:2024/02/13(火) 13:32:23 ID:CVo7XjhE
◆ミダスの河 名探偵・浅見光彦VS天才・天地龍之介
数々の事件に関わり事件解決に貢献してきた「浅見光彦」と「天地龍之介」。偶然にも山梨で起きた「ドナー誘拐事件」と砂金の取れる河近くの道路の「事故車から転落死体の事件」が重なり合い、二人が出会い、共同して事件の謎の解決に挑むという内容。
浅見光彦ってのはTVドラマにもなってる有名キャラで、「内田康夫」さんの小説の「ルポライター探偵」。その彼を借りて「柄刀一」さんが、自分の小説のキャラの生涯学習施設の所長で天才「天地龍之介」と出会わせて、共同で解決する作品を描いたらしいですね。
感想:ちょっと強引かなって納得いかない推理もあったけど、まあまあ面白かったです。特に、「来るな!」って叫んだ二つ目の殺人事件。いくら天才でも、それ思いつく?そういうことってある?って真相でしたwあと、最後まで怪しかった犬山さん、最後の最後でまさかの馬鹿な行動。
う〜ん、なんというか、全体的に面白かったんだけど、なんかスッキリしない読後感でした。やっぱり、二人のヒーローも両方とも活躍させ、さらに読者をってすごい!喜ばせるようなストーリーに仕上げるのは、難易度高いのかもなあって思いました。
ただ、ドナーと患者の仕組み(外枠)みたいなのは勉強になりました。ドナーを誘拐するって、人間的に酷いことだぞって思ったね。
81
:
レタス
:2024/02/17(土) 22:55:50 ID:CVo7XjhE
◆迷塚 警察庁異能処理班ミカヅチ
怪異事件を騒ぎになる前に、人間がやったように処理する、警視庁の地下に部屋を設けられた異能集団「ミカヅチ班」の活躍を描いた「ミカヅチ」シリーズの第4弾。
今回は、主人公「安田怜」が、病気の妹のために悪魔と契約してしまった同僚「極意京介」を救うため、長野に居る、霊となって「ミカヅチ班」に協力してきた「小埜」に悪魔の事を聞きに行く。そこで試練として怪異による「連続焼死事件」と対決する事になる話と、
主人公が、試練のつづきで、班のルールを破って、冥界を生身のまま見に行く事になる話でした。
お堅い「本格的な推理物」と違って、ホラーファンタジー物だから、ホラー漫画を読んでる観たいにスルスル読めてしまう所は、まだ「心が幼さ」からであろうか(そんな自分にちょっと戸惑った)。でも、面白かったですね。
死体処理とかやってくれる掃除のおばちゃん達「三婆ズ」の三人が、なぜ霊的な物が見えるのか、なぜ肝が据わっているのかの理由も分かった(癌とかで死にそうになったから)。そして、病気の妹も出てきて、悲惨な状態である事も分かったし、霊が見える主人公に体から光を発して特殊な異能力(霊を慰める?他人の痛みを和らげる?)が有ることも分かった(天狗の子孫かな)。
主人公の「熱き思いが他の人に伝染する」のも能力なのかなあ?
暴力夫と別れられない妻の不思議も興味深かったなあ。呪い殺したいくらい嫌なら、他人に助けを求めたり、別れろよって思うけどね。現実でもそういう人いる・・よね。「人を呪わば穴二つ」ってよく言われるけど、実際は悪い奴を不幸になるように貶めても、それはやり方悪いので、不幸が自分に返ってこないようにする事は可能だよね(じゃないと不公平だし)wホラーファンタジーの世界では絶対ルールだろうけども。
あとは、広目天の能力が垣間見えて、彼が活躍したことですか。果たして、京介と病気の妹は救えるのか?地霊が騒ぎ、その時が来るとは「地獄の蓋」が開いて、大惨事が起ることなのだろうか?その辺が今後の見所ですね。
悲惨でドロドロで怖い部分もあるが、悪霊なんて何のそのってキャラが多くて、ミカヅチ班の人間関係が楽しいホラー小説でした。
82
:
なると
:2024/03/28(木) 12:23:05 ID:CVo7XjhE
◆流星のソード
浅見光彦VS天地龍之介シリーズ第二弾。北海道の小樽に取材に来た「浅見光彦」と北海道旅行にきていた「天地龍之介」は「榎本武揚」が隕石から作らせた「流星刀」を取材・観光しようとした神社で、殺人事件と出会う。
その前の晩、海岸沿いで「流星刀」に関して調べていた探偵「山田」も何ものかに殺され、二つの事件には関連性があるような遺留品があった。
再び二人の名探偵が協力してこの事件の謎に挑んでいくミステリー。
ロックマンとか架空の武器が好きそうな厨二心を刺激する題名だが、そういうヒーローやRPGの話じゃないのでwなんというか、二人の名探偵を同じくらい格好良く推理させてるので、展開がまどろこしくて、こいつらが活躍するために事件が起っているって感が否めないのだが、まあまあ綺麗にストーリーが纏まって、まあまあ面白かったかな?
疑問符が付くのは、やはり均等に活躍させるので、作品の味が薄くなると言うか、色んなヒーローを同じくらい活躍させねばならない「アベンジャーズ」の大味さが、一人一人のキャラの魅力を薄めていて、トリックや推理自体は面白いのに、勿体ないって感じですね。あと、二人が互いを天才だとか褒め合うのが気持ち悪いかなあ。
でも、殺人のトリックとか、流星刀にまつわる秘話、刀鍛冶一族の隠された秘密、石川啄木や榎本武揚についてのウンチクとかは面白かったです。
あと、犯人が情状酌量の余地が少しあったのも良かったかな。ただ、推理の途中で「ピアノ」とか「葉が隠した」とか、1行30文字だからそう見えた・思ったとか、ちょっと人間業じゃない推理や強引さが惜しいかなあ(超天才だからしかたないかw)。
83
:
なると
:2024/07/05(金) 10:13:18 ID:CVo7XjhE
◆情景の殺人者
森博嗣のXXシリーズ(探偵「小川令子」とその所員「加部谷恵美」、親友のジャーナリスト「雨宮純」、知り合いの探偵「鷹知祐一朗」が活躍するシリーズ)の第3弾。
鷹知の紹介で、同棲する恋人の福森(芸能人)の浮気調査を、同じ芸能人の草元から依頼された主人公達は、雪が降る寒空の中、調査、尾行を開始する。しかし調査初日に、
依頼人の草元が何者かに殺されてしまう。スッキリしない主人公(小川、加部谷)はその後も好奇心なのか義憤なのか、調査を続けていくというミステリー。
感想:加部谷と雨宮そして小川のトリオの掛け合いが面白かった(名古屋弁で味があった)。刑事の牛山との淡いロマンスや謎の資産家の横やり、とぼけた感じで活躍する鷹知の行動も面白かった。
内容はというと、一番の疑問は、プロローグが誰の体験なんだろうって事でした。元映画監督の栂原恵悟の体験だとばかり思っていたが、奥さんの沙保里の体験なのか、でも映像に興味があったのでやっぱり恵悟なのか、でも最後まで読むと、沙保里っぽい気もする。でもどこにも看護学校に行ったって書いてないし。
映像・演劇に興味あったけど、看護学校に行ったのかな。二人とも幼少の時に同じような体験をしたのだろうか?
解釈が難しいというより、殺人の動機がよく分からなかったが、自分がスッキリするために定期的に殺人をした(殺人現場を観察したいというオナニー)らしい。ただ、操られていた男達はなんのメリットがあるんだろうか?女王様の魅力に洗脳されただけ?その辺がイマイチよく分からなかったかな。
でも、探偵の仕事の調査中の台詞の掛け合いや行動や思いは面白い、そんなシリーズですね。
84
:
なると
:2024/09/23(月) 14:27:19 ID:CVo7XjhE
◆なぜエリーズは語らなかったのか?
WWシリーズの第8弾。夫婦となったグアト(ハギリ博士)とロジ(ウグイ情報局員)が活躍して、ヴァーチャルや人工知能やウォーカロン(人工生命体)などに関する問題を解決していく未来の地球のお話。
今回は、エリーズ博士がグアトにあいたいという噂を聞く。しかし、エリーズは行方不明となる。世界中は彼女が開発した「究極の恵み」といわれるプログラミングをゲットするために、協力して彼女を探し始める。
グアトとロジもオーロラ(人工知能機械)やクラリス(トランスファ=電子の世界を自由に動き回る知能)の協力を得て、独自の方法で彼女の痕跡を追った。そして、彼女の死体(現実世界でのリアルボディ)が見つかる。
彼女はヴァーチャルの世界に移行して隠れてるのか?「究極の恵み」とはなんなのか?なぜ,過去の痕跡を自ら完全に消したのか?グアトの考察が事件の真相に近づくというミステリー。
普通の自殺?殺人事件では終わらないのがこのシリーズの特徴だ。なにせ、自分の体を捨てて,意識をデジタル化してヴァーチャルで年を取らず好きなように生きる事ができる時代だからだ。
感想としては、「究極の恵み」はなるほどねーって感じだ。「銀河鉄道999」で機械の体となって永遠の命を手に入れた人々も,いつかは生きる事に飽きるかも知れない、そういう感じに似てる。
ただ自分の考えとしては、幸福を感じるのは、不幸なことや危機的な状況からの脱出などを経験する事だから、ヴァーチャルでも擬似的に不幸なことや危機的状況を作り、そこから脱出してああ良かったって感じるプログラミングかなあって思ってました。
それにしても、ヴァーチャル世界で自分のなりたかった自分を体験したいとは思うけど、どこかの少佐みたいに現実世界を捨てて、電子の世界(ヴァーチャル)で生きたいとは思わないかなあwでも年取ったり病気になって死にそうになったら、有りかも知れないかなあ?
今回、ペネラピ(アネバネ)はやっぱり全身に強力な武器を仕込んで,無口で,男なのに長身のモデル美人(女性の姿)の姿でした。この人の日常生い立ちが謎の一つですねえ。そして、子供を出産して、ナイーブになるロジ、彼女を心配して気遣うグアトの関係性が良かったですね。
シリーズを通して、世界は少しずつ動いてるって感じですが、この物語は収束するのか(しないのか)も楽しみですね。
85
:
なると
:2024/10/27(日) 17:26:01 ID:CVo7XjhE
◆鵼の碑
’94年「姑獲鳥の夏」から始まる「百鬼夜行シリーズ(京極堂シリーズ)」の17年ぶりの2023年の新作で、約830ページ及ぶ大作ミステリー小説である。
ストーリーは獣の合成種(キメラ)の化け物「鵼(ぬえ)」のごとく、それぞれの登場人物が、バラバラの目的で栃木・日光に集まり、過去に起こった死体消失の不可解な事件の謎や行方不明の人物捜し、土に埋まっていた書物の謎、親を殺したという娘の謎、その娘を監視する公安、何かの研究に携わっていた叔父の診療所を訪ねてきた女性、そして日光の村で行われていた陰謀の影、それぞれがキメラのごとく合わさって収斂していくミステリー。
もちろん主人公である陰陽師で古本屋の中禅寺秋彦が謎解き(つきもの落とし)に活躍する物語でした。
久しぶりに長い長い小説で、読み終えるのに1ヶ月かかりましたwいやあ、仏教や神社や原子力やらのウンチク部分が長い。それらを端折れば300ページぐらいになるんじゃないかなあw登場人物も多くて、何度もこいつ誰だったっけ?ってなりました。
ある意味、本の重さもあるし、読む修行(苦行)ですかね。何回も誰だっけ?ってその人物が出てきた部分を探し戻りました。
今回は、戦前の過去(約20年前か)に何があったのかの物語で、現在進行形では、殺人事件は起こらなくて、アクションも少なめ、まあそれでも、パズルを組み立てるような面白さはありました。
最初は、「魍魎の匣」みたいに何かの実験をしていて(今回は放射能の人体実験)旧陸軍研究所みたいな所で戦うのかと思ったけど、それも違った、現在では何も起きなくて、全て終わった過去の謎解きで終わりました。
まあ、それでも、何が起こっていたのか?それぞれの事案にどういう繋がりがあるのか、ってワクワクしては読めました。
今回の謎の研究(原爆の製造とか)には中禅寺のライバル堂島も係わっていましたしね。
アインシュタインが出てきた部分は、「オッペンハイマー(原爆を作った人)」って言う映画を思い出しましたけど、こっちの小説の方が先だから、影響を受けたわけではないかな。
あと、もの悲しくてやりきれないのが、薬局の寒川ですね。山にこもってほぼ自殺でもしたのでしょうかね。
あとは、仏教や神社に関する難しいウンチクが多くて、かなり大雑把に読んでしまったかなあ。一文一文、調べて噛みしめて読むと、もう半月ぐらい読むのにかかりそうですしね。
さて、あと何作ぐらいこのシリーズは続くのか解らないけど、まあ、また数年(十数年か)はでないでしょうね。これでおしまいって線もあるし。
また最初っから読んでみたい気もします。苦行になりそうだけどw
86
:
ねごと
:2025/01/04(土) 21:00:44 ID:CVo7XjhE
◆致死連盟
森村誠一の1980年の作品。市の清掃員の就職面接で落とされた50歳前後の4人が、仲良く「警備員」として就職する。そして与えられた仕事が、元ヤクザの組長とその娘の警護。
その娘「典子」は14年前、両親を3人の強盗に殺されてる。そして、その強盗の関係者がなぜか今頃になって口封じに彼らを狙ってきたのであった。素人警備員4人とプロの殺し屋の戦いが始まり、これをきっかけに、街を揺るがす事件へと発展していくというサスペンス&ミステリー。
素人で新人の警備員4人がどうやって、プロの殺し屋と戦うのか、なぜ14年も経ってから口封じに来たのか、そして主人公が街を牛耳るヤクザや悪徳市長と戦うため、選挙に立候補するという展開が面白かったです。ただ、最後のどんよりとしたオチはキツいなーって感じですね。
この人の小説には、共通する「大場一成」って言うマフィアのボス(巨悪)がいるようで、「野戦の証明」でも出てくるらしい。それを知って、「森村誠一」作品を全部読んでみたくなりました。
ラストの嫌などんでん返しを除けば、正義は勝つ!って感じで面白かったです。
87
:
ねごと
:2025/03/20(木) 15:31:19 ID:CVo7XjhE
◆ブギーポップは呪われる(二回目)
まだ読んでないと思ってまた読み始めて、途中で読んだ事あるなあって思ったが、もう一度読んだら違う感想になるんじゃって思い直して最後まで読みましたw
だから、あらすじは書きません、感想のみで。
感想:まあ、最初の感想とあんまり変わらなかったですね(小説の奥の深さが感想に係わってくるのかな、だから変わらないということは・・。)。ただ、木村哲也は百合原美奈子(マンティコアに殺されて、その姿をコピーされた)が好きだったが、行方不明になって心のしこりになり、その思いを乗せて書いた赤い線の呪いが、今回の事件の突破口になッたという事実を再認識できたのは読んで良かった。
前にも書いたとおり、一作目と二作目を読んだ後にこの本作を読むと感慨深いですね。今回は、乱暴な大量破壊人間「カチューシャ」まで出てくるのですが、ほど誰も死なず、何事もなかったように終わるノで、肩透かしを食らうのだが、一作目(主人公が高校一年生から高校卒業して予備校生になってる)で「マンティコア事件」以上の殺し合いや行方不明が起こったって事はないように描かれてるので、学校内での事件は何事もなく終わらせなければならないので、今回の大事件もああいう風に人死にもなく終わらせなければならなかったとも言えますね。
ただ、今回新たな謎が出てきました。それは水乃星透子(ブギーにやられる前に、飛び降り自殺)とブギーポップの戦いの事件に学校全体や凪やギノルタが係わっていた?っぽい事です。この事件はまだ続巻で書かれることでしょう。整合性を付けながら面白い話を作るのは至難の業だと思いますが。
88
:
ねごと
:2025/04/03(木) 18:20:56 ID:CVo7XjhE
◆黒仏
東京銀座で耳を削いで回る殺人鬼が現れる、ちょうど居合わせた異能処理班の赤バッジは犯人の肩に黒い何かが取り憑いてるのが見えて、怪異事件かも知れないと異能処理班に報告する。
その後、犯人の遺物(呪物)を盗んだ警察官が殺傷事件を起こす。主人公たち処理班は「黒仏」と呼ばれるその呪物を封印するために、奔走するという内容。
異能処理班シリーズの第五弾。彼らは怪異を祓うのでは無く、基本は怪異が一般人に知られないように隠蔽するのが仕事である。
この巻異能処理班が守ってる開くと大惨事になる扉を守っているが、今回赤バッジのドジのせいでもうちょっとで開いてしまうことになったり、普段頼りになる清掃員の婆さんたちや紅一点の神鈴さんが、呪物に取り憑かれ暴れ出すという所が面白かった。
主人公が癒やしの異能力に目覚め、赤バッジの妹(重病で入院中)と仲良くなるエピソードも面白かった。サニワ(前シリーズの主人公の能力)という言葉が出てきたのもニヤリとしました。これから終盤に向かって物語が収束していきそうな話でした。
89
:
ねごと
:2025/04/20(日) 20:18:18 ID:CVo7XjhE
◆青屍
「警視庁異能処理班ミカヅチ」シリーズの第6作目。今回の怪異は、上野恩賜公園の美術館付近に現れる骸骨の馬に乗った鎧をまとった騎士に、拷問器具によって殺されるという連続事件。
警察による捜査本部が立ち上げられ、人間の犯人を捜し始めるのだが、それとは別に主人公たちの「ミカヅチ班」は怪異と判断して、独自の捜査を始める。前作の怪異にも係わっていた、死んだはずのイギリス人呪術コレクター「ダーセニー」の影を見る。
新人である主人公「怜」がその能力を開花してチームの中心となって活躍する話でありました。
感想:色んな、拷問器具が出てきて、いちいち写真で調べて確かめながら読みました。いやあ、昔の人(中世)の教会とか、魔女狩りとか異端審問会とかは本当に残酷なことを考えるねえ。今回は悪魔に取り憑かれ、心体が悪魔に成り代わっていく「赤バッジ」に残された時間が少ないということや、「赤バッジ」の病気の妹がアドバイスで活躍する藩士でもありました。
主人公の「怜」が聖なる力に覚醒して、「赤バッジ」を救えるのかガ、今後のメインな話の一つで、もうひとつが死んだ呪術コレクター「ダーセニー」が再び悪霊となって背後で操ってる悪魔(少女の姿)と一緒に襲ってきそうって感じですね。
そして、開くと大惨事になるという扉がどうなるのか?ですかね。前作「よろず建物因縁帳シリーズ」が全10巻なので、このシリーズもあと4巻でまとめるのだろうか?
とにかく、怪異の描き方がスッキリしつこくなく、読みやすく面白いシリーズだと思います。
90
:
なると
:2025/06/04(水) 21:50:06 ID:CVo7XjhE
◆ブギーポップ・パズルド 最強は堕落と矛盾をあざ笑う
ブギーポップシリーズ第24作目。強者を求めて,廃墟地帯の合成人間の取り調べ現場にやって来た最強と言われる「フォルテッシモ」は、ドジを踏んで取り調べてられいた「サーチショート」と相打ちになってしまう。
大けがを負った「フォルテッシモ」は統和機構(世界の裏から危険人物や能力者や裏切り者を排除したりする組織)の構成員の息子「拓未」が住んでる家に匿ってもらう。最強が弱ってると知った他の構成員や合成人間は,普段から目障りなフォルテッシモを倒そうとどんどん集まってくる(100名以上らしい)。
彼に恨みを持つ「ポーラ」と「ボーナム」や「ジッタリン」、裏でこの騒ぎを操る「羽衣石」、命令で「フォルテッシモ」を救おうとする「舞惟」。仕方なしに「フォルテッシモ」に味方する「カチューシャ」。そのうえ、フォルテッシモのライバルの「高城」に今回の事件の「真の世界の敵」は誰かを探している「ブギーポップ」まで加わって,事態はパズルのように複雑に。
感想:今回の話は,合成人間同士の戦闘メインでした。まあ、たまにはこういうのも有りかなあ。今まで,無敵の能力と思われたもの同士の戦いで,弱点があったり,ブギーポップなら倒せそうだなって事が分かっただけでも収穫かなあw
また、ブギーポップでも倒すのが難しそうなラスボスが現れたり、フォルテッシモも無敵ではないって事も分かったことも収穫でした。
しかし、いつまで続くんでしょうね,ブギーポップたちと統和機構の戦いはw終わりがないのが終わりだよ,ほんとに。
空間の割れ目の奥、虚無空間の虚無より生まれたのがブギーポップなのかな。
91
:
なると
:2025/07/03(木) 03:36:22 ID:CVo7XjhE
◆玄い女神 建築探偵桜井京介の事件簿
建築探偵シリーズ第二弾。今から30年も前の作品である。昔1度読んだ事があったが、内容を忘れたのでもう一度読んでみた。
内容は、建築に詳しい大学院生の主人公が、蒼という中学生のアシスタントと共に、建築にまつわる因縁めいた殺人事件ミステリーを解いていくというもの。
今回は10年前にインドで起こった殺人事件を、インドに行ったことも無い主人公が、関係者に頼まれて真相を暴き出そうという、一見無理だろうって思える謎やトリックを解いていくもので、日本の恒河館というホテルに殺人事件が起こったインドで一緒に旅していた演劇仲間を招いて、真相を突き詰めるというもの。
主人公の桜井京介は、依頼人でホテルのオーナー「狩野都」という元名女優のことが好きで、気が進まないながら引き受ける。ホテルには片手の無いインド人ナンディという狩野都の養子で、ホテルマンもいて、こいつが狩野都のためならなんでもやる危険人物である。
さて感想だが、最初の夜は、インド料理を楽しめて、のんびりとした気分で小説を読む事が出来たが、二日目、昔の仲間がやって来てからが、ドキドキハラハラ、ギスギスの不安な展開になる。なにせ、みんながこのホテルから出れないようにするために、「狩野都」が自殺して呪縛をかけるのだ。
おいおい、犯人を知りたいのに先に死んでどうするんだよwそして、犯人を見つけるためには人も傷つける「ナンディ」が意志を継いで凶暴さを表す。
ホテルから逃げ出そうとする昔の仲間も、急に降り出した豪雨で道に迷い、結局ホテルへ舞い戻ってくる。そして、10年前の事件について、少しづつ語り出すのだが、まさか、このホテルでさらなる殺人事件が起こって、10年前の事件の犯人が動き出す展開だ。
最後の方まで、犯人が誰か分からなかったけど、犯人が分かっても、さらなる真実や暗躍があって、愛憎ぐちゃぐちゃそして、インドの神々との関係、麻薬やインドの風習や性の無い種族等も絡んで、最後はもう二転三転する。
作者がシリーズ第二弾にして、この番外編と思われる奇妙な物語をいかにも書きたかったって気持ちが伝わってくる奇妙で不思議な内容でした。インド旅行だけはかんべんさって思わせる内容でもありました。
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