【3:266】ラノロワ仮完結作品投下スレッド
- 1 名前: ◆5Mp/UnDTiI :2011/05/25(水) 19:44:34 ID:vP/xCASw
- したらば雑談スレの>>905であんなこといってたわけですが。
無様に前言撤回。出来たものから小出しにしていきます。
↓以下言い訳タイム。読んでも時間が無駄になるだけです。
というのも、制作が遅々として進まないわけです。 人数が多くなるとそれぞれのキャラが動かしにくい、というのもあるんですが、 本質的に私の制作方法に問題があるんじゃねーかと最近思い始めました。 というのも新しい話書いててそれに詰まると、私は過去作の校正に逃げる悪癖がありまして。 そうしてる内にいいアイディアが浮かぶと これから各作品のプロット変更してでも組み込もうとするわけです。 そうすると結果として話が全然進まないので、 自分を追い込む意味でも容易に話を変えられないように投下してしまおうと思い立ちました。
↑言い訳タイム終了。以下テンプレと本編。
- 260 名前:そして全ては収束していく :2014/04/22(火) 18:40:39 ID:f0Abop4o
- 彼らを取り囲む周囲の人間が、驚愕にざわめいた。
「……彼女がリナ・インバースという人物を殺害したと?」 「少なくともいまの発言は嘘だった。つまり彼女はリナ・インバースの死に関して、その一端を担ったという自覚がある」 佐山が発した問いに、カーラが答える。同調するように、周囲のざわめきは更に大きなものとなっていく。 千絵はそのざわめきを耳から締め出すように、自らの身を強く掻き抱きながら数歩、後退した。 「違う……違う……!」 「そう、違うね」 声は千絵の正面から。 声の主――臨也は千絵を見もせず、視線を別の人物に注いでいた。 「俺が質問したのは"実行犯"のことだよ――どうして君は答えないんだい、ベルガー?」 全員の視線が転じる。 その先には臨也の言葉を受けてなお、微動だにしないベルガーの姿があった――臨也の言葉によって身動きのとれなくなったベルガーの姿があった。 野犬の顔に浮かぶ感情は苦悩と焦燥。発するべき言葉を探すように、何度も何度も視線が激しく宙を切り返す。 「答えられないかい? まあ、そうだろうねえ。こればかりは誤魔化しようがないし」 ――計算通りだ、と臨也は胸中で言葉を続けた。 (省略されました・・全てを読むにはここを押してください)
- 261 名前:そして全ては収束していく :2014/04/22(火) 18:42:39 ID:f0Abop4o
- ◇◇◇
センス・ライ。 嘘を100%見抜くというこの呪文は、一見、名探偵が真っ青になるほど便利なものに思える。もはや証拠集めも鑑識も、果てには裁判すら不要になってしまうであろうほどの。 だがそういった用途に使おうとするのなら、このセンス・ライにはひとつだけ大きな欠点が存在しているといえた。 それは、センス・ライは確かに『嘘を感知する』呪文であるが――しかし『真実を見抜く』呪文ではない、という点である。 例えば呪文を掛けられる対象の認識次第では、事実と異なる証言を口にしても『嘘』として感知されない。リナの直接の死因は光の剣での自殺だったが、そもそもの発端はベルガーが黒い卵の作用で致命傷を負わせてしまったことだ。それが無ければ待機組は未だ健在で、臨也もその庇護下にあっただろう。 だから臨也にとって、先の言葉は嘘にならない。"自分は同盟を裏切っていない"ことと、"ベルガーがリナに致命傷を与えた"こと。この二つは、彼の中で等しく真実として扱われている。 そして逆に、対象の認識次第では事実と相違ない発言も"嘘"だと感知される可能性もあった。 だから先ほどの海野千絵の言葉は"嘘"になってしまう。待機組で起こった惨劇を、自らの責と抱え込んでいる彼女にとって。 そして当然のことながらカーラはこの欠点を知っていた。 知っていて、彼女はセンス・ライのみによる犯人探しを提案したのだ。 何故なら、カーラにとってダウゲ・ベルガーと海野千絵、そして折原臨也の価値は等価だったから。 カーラの目的は、火乃香を利用して神野とアマワを倒し、その後に火乃香さえ始末して、ロードスへの介入を防ぐこと。 ベルガー達と臨也。どちらが嘘をついていて、どちらが生き残ろうがカーラには関係が無い。片方が追放され、この集団内にトラブルの火種がなくなりさえすればそれでよかった。 (省略されました・・全てを読むにはここを押してください)
- 262 名前:名も無き黒幕さん :2014/08/23(土) 23:13:29 ID:f0Abop4o
- ◇◇◇
状況は全て折原臨也の予想通りに動いた。 何一つ計画に狂いはない。全員の視線は、意識は、確かにその一瞬だけ、ダウゲ・ベルガーのみに注がれた。 だから、臨也は予定通りに動いた。 腕を伸ばす。その先には動かない頭で懸命に反論の為の思考を紡いでいた海野千絵の体があった。 ベルガーに詰め寄る様に一歩を踏み出したのはこの為の布石。リナ・インバース殺害を糾弾する瞬間、臨也は千絵の身柄を拘束できる位置に居なければならなかった。 「っ、な――きゃっ!?」 右腕を千絵の首に掛け、力任せに引き寄せる。同時に左腕をコートのポケットに突っ込み、この場を脱出する為の保険として用意していたものを掴んだ。 千絵は抵抗しようともがいたが、お世辞にも運動神経が良いとは言えない彼女では、こうした荒事に多少は慣れている臨也の拘束を振り払うことは難しい。 そこまでくれば、周囲の人間も状況の変化に気づく。あるものは武器に手を掛け、ある者は己の異能を発現させようと意識を集中させ、 「――動くな!」 臨也の発した短い警告に、その動きを止めた。 それを確認してから、臨也は素早く自分とそれ以外の位置取りを確認する。もっとも近くにいるベルガー。そこからやや離れた場所に居る、仲裁役だった佐山とカーラ。そして遠巻きにこちらを見ている同行してきたヘイズ達。 (省略されました・・全てを読むにはここを押してください)
- 263 名前:名も無き黒幕さん :2014/08/23(土) 23:14:17 ID:f0Abop4o
- そんな彼の表情を見て取ったのか、臨也はコミクロンの属するグループがいる方に向けて肩を竦めて見せた。
「騙して悪いけど、これは"禁止エリアを操作する支給品"だ。バッテリーも隙を見て事前に入れ直させて貰っておいた。もう指の動きひとつで作動できる状態にあるし、必要なら俺はこれを使う――さて、俺は嘘を言っているかい、カーラちゃん?」 臨也の問いかけに、カーラはゆっくりと首を横に振った。それは臨也の言葉が嘘ではないことの証明。 ざわり、と臨也を取り囲む者達の間に緊張が走る。臨也の言葉は、あの装置を使えばこの場を禁止エリアに変えられる、と言う風に取ることもできるからだ。 無論、臨也の掲げている黒い機械はあくまで禁止エリア"解除"装置であって、自由に禁止エリアを設定できるというものではない。だが臨也以外にその真実を知る者がいない以上、臨也の言葉は確かに脅しとして成立する。その可能性がある以上、強硬策に出ることは難しいだろう。おまけに、今の言葉が嘘ではないと保証するセンス・ライという魔法があるせいで、余計に"現実味のある言葉"として影響してしまう。 加えて、臨也がボタンを押し込む前にあの装置を破壊、奪取できる手段も乏しい。この場に居る異能を持つ者――魔術士や念糸使い達の能力は、ボタンひとつ押し込むより早く効果が発現するものではないのだ。 可能なのは人の意識をよりも素早く動き敵の装備を切断した実績のあるギギナか、指を鳴らすのとほぼ同時に効果が発現するヘイズの破砕の領域。だが前者は三塚井ドクロと交戦した際に深手を負い、コミクロンによる治療の申し出も拒んだ為、かつての剣速は発揮できない。ヘイズにしても無思慮な行動はとれなかった。あの装置の情報強度がどれほどのものか分からない以上、ヘタに刺激すれば最悪の結果を招きかねないのだから。 「俺の要求はただ一つ。この場で俺を見逃すこと。まったく、ここを離れなきゃいけないのは残念だよ。その吸血鬼とやらに会ってしまったら、俺は絶対に死ぬだろうしね――だからできればその前に、君たちが倒してくれるといいんだけど。それを祈っているから、君たちに俺は手を出さないよ。見逃してくれるんなら、このエリアに対しては今後も装置を使わない」 カーラの張り巡らせているセンス・ライの感知網を潜りぬけるように、言葉を慎重に選びながら臨也は喋り続ける。既にセンス・ライの魔法に穴があることは、この数度のやり取りではっきりと確信していた。 「とはいっても、この装置だけじゃ心もとないから、もうひとつ保険は張らせてもらうけど。千絵ちゃんは俺の安全が確定するまで……そうだな、このエリアから離れるまで人質になって貰う。もちろん危害は加えないし、用が済めば傷一つ付けないで開放する。どうだい? ……と言っても、返答がほしいわけじゃないけどね」 再び問いかけるような視線。それを受けたカーラは、再び"嘘はない"と仕草で全員に伝えた。 緊迫する雰囲気の中、じり、と臨也が交代する。全員がそれを睨みながらも、しかし行動は起こさない――臨也の言葉に激昂した千絵を除いて。 「誰が、あんたなんかにっ!」 首をほとんど絞められていたが、移動の為に僅かに拘束が緩んだ。その隙に、大口を開けて臨也の手に噛み付こうと、 「喋るな、って言ったのが聞こえなかったのかな?」 (省略されました・・全てを読むにはここを押してください)
- 264 名前:名も無き黒幕さん :2014/08/23(土) 23:15:06 ID:f0Abop4o
- (……手が出せない。このままだと、逃げられる)
この手に"運命"があれば、あの拘束を断つことは容易だ。装置も奪えるだろう。だが己が半身たる強臓式武剣はここにない。アラストールの炎を通じて『無名の庵』に落ちてしまった。 そも、この状況も自分の不甲斐なさが招いたようなものだ。佐山・御言との交渉よりも、吸血鬼への対策よりも、何よりも先に海野千絵の状態を確認し、対応しておくことが必要だった―― (……過ぎたことを言っても仕方がない。まず、この状況にどう対応する?) 臨也を連れてきた連中は無視してもいい。どうやら先ほどのホノカという少女の言動を見る限り、臨也はあの集団の中で確固とした地位を築いているわけではない。おそらく、ただの同行者程度の関係だろう。自分が臨也に対して攻撃的な行動を行っても、それを妨害される可能性は低い。 そして同時に、連中からの援護も期待できない――彼らにとって、この問題は対岸の火事だ。火種の臨也がここから去り、海野千絵も戻ってくるというのなら、つまりは実質的な被害が出ないというのなら良心が痛むこともない。むしろ万々歳というところだろう。危ない橋を渡る必要はない。 (……そして、その図式は俺にも当てはまる) 感情の面で言えば確かに臨也をここで逃したくはない。だが、それとこの場にいる全員の命は釣り合わない。 (臨也の狙いもそれか。千絵の安全は、カーラのセンス・ライで保障されている――先ほどの"用が済めば生きてそっちに返す"って言葉は嘘じゃないみたいだからな) ベルガーは横目でカーラを睨む。それに気づいた魔女は嫣然と微笑んで見せすらした。灰色の魔女もここで動くつもはないらしい。例外は佐山くらいのものか。だが、佐山は今の自分と同じく、特に異能を持ち合わせているわけではない。二人掛かりで飛び掛かれば臨也を拘束することは容易だろうが、仮にあの装置でここを禁止エリアにできるとしたら、完全に拘束する前に、盛大な自殺に付き合わされることになる。 結果として、この後のことを考えるのならここで臨也を見逃すのが最善手であるという結論が出てしまう。既に生存者のほとんどがここに集まっている、あるいは集まりつつある現状を考えれば、単体では人並み以上の戦闘力を持つわけではない折原臨也はさほど脅威ではなくなるからだ。 感情は、噛み殺せば済む――だからベルガーはぎり、と歯を強くかみ合わせ、退いて行く臨也を睨みつける。それ以上はしない。できない。言葉(テクスト)を発することすら。 だが、 「……駄目」 静寂を打ち破る声が響いた。 (省略されました・・全てを読むにはここを押してください)
- 265 名前:名も無き黒幕さん :2014/08/23(土) 23:15:48 ID:f0Abop4o
- その気配を察して千絵は口を噤んだ。全身から力を抜く。諦めたわけではない。ただ、準備をしただけ。
必要な言葉はあと一言。それを紡ぐ決心をした。 (ごめんなさい……) 問いかけるような視線を向けてくるベルガーを視界に収めて、千絵はもう外に出す機会はないであろう謝罪の言葉を胸中に浮かべた。 悔恨はある。それも、数えきれないほどに。 (それでも、私は……) 目を閉じる。 この島に連れて来られて、海野千絵の瞳に強く焼きついた光景。それが瞼の裏側に幾重にも投射された。 それは例えばアメリア=ウィル=テスラ=セイルーンの死であるとか、初めて人の血を啜った瞬間だとか―― そうしたろくでもない光景ばかりであるのは、この舞台の性質上、仕方のないところだろう。 だけどそうでない光景もある。その光景を自分は目に焼き付けている。 千絵は手を自分の胸に当てた。その奥にある感触を確かめながら、欲した光景を想起する。
リナ・インバースは手袋をしていた。
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- 266 名前:名も無き黒幕さん :2014/08/23(土) 23:16:39 ID:f0Abop4o
- それでも、その時千絵の胸の内を占めていたのは生命が終わる悲しみではなく、むしろそれとは正反対に位置するものだった。
(やった――) もう声を出すこともできそうにないが、千絵は胸中で小さく勝鬨をあげた。地面に体を支配している筈の激痛も気にならない。千絵の心は目的を果たせた満足感で満たされている。暴走し、歪んでしまった正義は、それでも目標を達成した。 代償は大きい。意識が消えていく。焼き切れた傷口からは満足に出血もしないが、光の剣は生命を維持するにあたってもっと大切なものを奪っていく。 「……そんな……酷い……酷い……な」 だけど、それは気にならない。 地面に倒れ伏しても、なお臨也の声は背後から聞こえた。消えかけた感覚がそれを捉えた。あの神経を逆なでするような声の調子は失せ果てて、いまの臨也の声は非常に弱く、この現状を悔いているように感じられた。 (やった――!) 表情筋が動けば千絵は満面の笑みを浮かべていただろう。 胸中を満たすのは狂気/狂喜。人生の全てを賭け、使い果たし、欲しかったものを掴めたというかけがえのない誉れ。 折原臨也を止められた。皆の仇を討った。自分は、正義を―― 「……本当に……酷い自己満足だよねぇ」 ――その達成感が打ち砕かれる。 耳に届いた臨也の囁きに、歓喜の渦中にあった海野千絵の思考は瞬時に停止した。 (何を……言っているの?) (省略されました・・全てを読むにはここを押してください)
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