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ラノロワ仮完結作品投下スレッド
265
:
名も無き黒幕さん
:2014/08/23(土) 23:15:48 ID:f0Abop4o
その気配を察して千絵は口を噤んだ。全身から力を抜く。諦めたわけではない。ただ、準備をしただけ。
必要な言葉はあと一言。それを紡ぐ決心をした。
(ごめんなさい……)
問いかけるような視線を向けてくるベルガーを視界に収めて、千絵はもう外に出す機会はないであろう謝罪の言葉を胸中に浮かべた。
悔恨はある。それも、数えきれないほどに。
(それでも、私は……)
目を閉じる。
この島に連れて来られて、海野千絵の瞳に強く焼きついた光景。それが瞼の裏側に幾重にも投射された。
それは例えばアメリア=ウィル=テスラ=セイルーンの死であるとか、初めて人の血を啜った瞬間だとか――
そうしたろくでもない光景ばかりであるのは、この舞台の性質上、仕方のないところだろう。
だけどそうでない光景もある。その光景を自分は目に焼き付けている。
千絵は手を自分の胸に当てた。その奥にある感触を確かめながら、欲した光景を想起する。
リナ・インバースは手袋をしていた。
「――光よ」
口にしたキーワードに従って、上着越しに握っていた光の剣は確かに発動した。
あの部屋から逃げる際に拾っておいた、リナが自刃するのに用いた武器。
刃を発現させるのに素手で直接触れている必要はない。発声と、それを握っているという事実さえあれば良かった。
「なに、を……――?」
千絵の発した唐突な単語への疑問を口にしようとした臨也は、だがその言葉の後半を掠れさせる。体内に強い熱を無理やり刺し込まれた為だ。
光の刃は、魔族の身体さえ容易に切断せしめる魔王の武器は、容易く千絵の体の中心と、密着していた臨也の腹部を抉っていた。
「千絵――!」
絶叫と共に誰かが、あるいは誰かたちが駆け寄ってくるのを千絵は感じた。
だが、間に合わない。背後から首に回された腕の力が緩むのと同時、千絵の膝は折れ、その場に倒れ伏した。拘束していた臨也も同じだ。人間二人分の体重が地面と衝突し、低く重い音が響き渡る。遅れて光刃の消えた柄が懐から滑り落ち地面に転がった。
それがただの刃であったのならまだ希望はあったのかもしれない。だが光の剣はアストラル体をも斬り裂いてしまう。ただの人間が耐えられる筈もない。つまりは、千絵も臨也も助からない。
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