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試験投下スレッド

1管理人◆5RFwbiklU2 :2005/04/03(日) 23:25:38 ID:bza8xzM6
書いてみて、「議論の余地があるかな」や「これはどうかなー」と思う話を、
投下して、住人の是非をうかがうスレッドです。

2聖者の信仰:2005/04/04(月) 00:27:40 ID:XYHByV2k
おかしい。
ゲルハルト・フォン・バルシュタインは、眼下の少女を見下げながら思った。
祐巳君と潤君がここを出てからもう二時間は経つというのに、一体どうして戻ってこないのだろう?
少し話しただけだが、彼女たちの内、潤君のほうは中々に手だれのようだったから、それほど心配する必要はないかもしれない。
とはいえ、自分のような吸血鬼を始め常識では信じられない存在がうようよしているこの島を、娘二人だけでいるのは大変に気に掛かる。
先ほどまでの一時の油断をも許さぬ状況と違い、幸いこちらの彼女のほうは朝と比べて多少容態が安定してきたようだ。
この近辺を軽く一周してくるくらいなら、おそらく問題はないだろう。
そう考えた子爵は、アメリアの傍を離れて辺りを見渡しに行った。尤も、彼女をあまり長い間一人にすることは出来ないから、周囲を少し見て回るだけだ。
ふよふよと宙に浮く血液の固まりは、傍から見れば随分とアンビリーバブルな光景だったが、幸運にも彼の姿を目にした者は居なかった。
このときもしどこにも行かずその場に留まっていたら、彼は異形化した祐巳を発見していたことだろう。
しかし彼は、そこから離れてしまった。―この偶然の悪戯が、彼と彼の保護した少女との運命を決定付けた。

―ふむ、見当たらないか。と、なるとやはり彼女らの身に何かが起こったのだろうか?

もっと遠くまで捜索に行きたかったが、置いてきた少女のほうも心配だ。
そう思った子爵は再びふよふよと浮遊しながら元の場所まで戻る。
その道中には、いつの間にか誰かが通ったような跡が残されており、子爵は祐巳と潤が帰ってきたのかと思った。
しかし、かれのごく楽観的な判断は180度間違っていると言わざるを得なかった。
―彼が戻った先に居た者、それは血の海の中で横たわる少女だった。―

子爵が去ってから数分後、倉庫から海へと向かって真っ直ぐに走っていた祐巳は途中の草原で一人の少女を見つけた。
尤も、このときの祐巳を『祐巳』と言うのは彼女が可哀想かもしれない。
人間としての理性も記憶も失われた彼女にとって、この瞬間あったのは獣としての本能のみであったのだから。

獣は自分の進行方向に倒れている丁度良い少女を見つけた。
獣はこの時腹が減っていた。
獣は―。

3聖者の信仰:2005/04/04(月) 00:28:54 ID:XYHByV2k
アメリアは自分に何が起こったかわからなかった。
何か恐ろしい生き物が自分の目前にいたことまでは辛うじて覚えていたが、それが何だったのか判然としない。
(ああ、そうだ…私、吸血鬼に襲われて…それから…?)
身体を起こそうとするが、全身を襲う激痛は、彼女に一切の行動を許さない。
己の意思では、指一本動かすことすらできそうにはなかった。
身体のあちこちからだくだくと流れ出る血液は、さながら彼女の魂までも押し出してしまいそうだった。
もはや目はかすみ、痛いという感覚さえろくにない。
それでも彼女は、喉から絞り出すようにして声を出した。―友に届けと。
「…リ…ナさ…」
『いかん、喋ってはいけない!』
子爵が綴る言葉を目の端に捕らえ、アメリアは少し自嘲的に思う。
(ふふ、私、とうとう幻覚まで見えるようになっちゃたみたい…でも、どうせ幻覚を見るのなら、リナさん達の姿の方が良かったけれど…)
そう思う彼女に、神は最後の慈悲を与えたのだろうか。薄く目を閉じた彼女の目蓋の奥に浮かんだのは、何よりも大切な三人の仲間の顔だった。
(リナさんにゼルガディスさん…それにガウリィさんも…)
戦いの中に身を置いていたとはいえ、楽しかった日々の映像が脳裏に浮かんでは消えていく。
馬鹿話をして笑いあった。皆で食事をした。そんな何でもないことが、宝物のような記憶となって蘇る。
瞑った目から一筋の涙がつぅっと流れ落ち、ぽたぽたと草の葉を濡らした。
苦しみと悲しみ、そして死の淵からの手招きによって混濁する意識の中、アメリアは誰に聞かせるでもなく、無意識に呟いていた。
「…リナっ、さん…ゼル、ガディ、ス…さ…ごめ、な、さ…」
それだけ言うと、彼女は残る力を振り絞って両手を胸の上へと掲げ、指を組んだ。ずきずきと痛む傷も、崇高な祈りの前には気にならなかった。
何もない空をもがく彼女の両手の指に力が込められ、固く固く閉じあわされる。
「…せ、めて…あなた、たちは、いきのび、て…」
彼女が最期に願ったのは、友の無事だった。ゲームが開始すらする前に、目の前で最も信頼する友人の一人を失い、今まさに自身の命も消えようとしている。
けれど、けれど自分以上の強さを持つあの二人なら、きっと大丈夫。
この下らないゲームの中でも、きっと生き残れるはず。

だから神様、お願いです。二人が生きて元の世界に戻れますように。

少女はそのまま、ゆっくりと息を引き取った。
彼女の死を看取った赤い形状不定物は、己の無力を噛み締めながら一言、少女のための言葉を手向けた。
それがひどく陳腐だと分かっていても、彼はその言葉を残したかった。

『少女よ、安らかに眠り給え』と。

4聖者の信仰:2005/04/04(月) 00:30:16 ID:XYHByV2k
【残り93人】
【死亡 アメリア・ウィル・テスラ・セイルーン(027)】
 【D−4/草原/一日目、09:00】

【ゲルハルト・フォン・バルシュタイン子爵】
 [状態]:体力が回復し健康状態に 
 [装備]:なし
 [道具]:デイパック一式、 「教育シリーズ 日本の歴史DVD 全12巻セット」
 [思考]:祐巳と潤の不在を気にかける/食鬼人の秘密を教えたのは祐巳だけであり、他者には絶対に教えない
     アメリアの死を悼む
[補足]:祐巳がアメリアを殺したことに気づいていません

【A‐4/海/一日目9:15】
【福沢祐巳】
[状態]:看護婦 魔人化 記憶混濁
[装備]:保健室のロッカーに入っていた妙にえっちなナース服 ヴォッドのレザーコート
[道具]:ロザリオ、デイパック(支給品入り)
[思考]:お姉さまに逢いたい。潤さんかっこいいなあ みんなを守ってみせる 聖様を救う 食鬼人のことは秘密
[補足]:この後、海へと向かい正気を取り戻す。
自身がアメリアを殺したことに気づいていません

5遠のく感傷 </b><font color=#FF0000>(W1AT6yro)</font><b>:2005/04/04(月) 14:16:20 ID:prAD.KRk
「申し訳ありません、師匠。確実に眉間を狙えと仰っていたのに」
 立ち上がり服の草を払うと、キノは師匠に詫びた。
 殺すつもりでいたのに、また腹部や足を狙うとは……。
 師匠の呆れ顔が目に浮かび、キノは小さく首を振った。
(きっと彼らが武器を構えていなかったせいだ)
 どうやら相手に殺意がない限り、殺さない方針でいた普段の習慣が体に残っていたらしい。
 だが、これからは違う。これからは確実に殺す。
 今回は真正面から戦ったが、今回だけだ。
 一度は一緒に行動しようとしようとした二人と、師匠と共にいてくれた一人に、敬意を表しただけにすぎない。
(次からはどんな手を使ってでも――)
 決意を新たに固めたキノは、ふと自分の得物に目を落とした。
 カノンは、あと一発しか撃てない。
(そういえば、あの二人も銃を持っていたな)
 キノは階段に近づいていった。

6遠のく感傷 </b><font color=#FF0000>(W1AT6yro)</font><b>:2005/04/04(月) 14:17:07 ID:prAD.KRk
 そっけなかった階段は、二人の人間と夥しい血により様相を変えていた。
 まずキノは、足を打たれただけならまだ救いがあったであろうがバランスを崩したせいで頭が陥没し、
 もはや顔の確認すら出来ない不運な少年の銃とデイパックを奪い取る。
 そしてこつこつと数段のぼり、腹部の銃創からどくどくと血を流す男のそばへ歩み寄った。
 男の傷は、誰が見ても瀕死の重傷で、放っておいても死ぬだろう。
 しかしキノは構わずカノンを男の眉間に向けた。
 無粋な行為といえないこともなかったが、キノの頭には師匠と一緒にいた男の不思議な力があったのだ。
 よくわからない力を持つ者がいる。
 もしかしたらそのせいで、この先自分の常識が及ばないことが起こるかもしれない。
 例えば、瀕死の人間が回復するとか。
 腹部を狙っておいて言えることではないが、確実に止めを指しておきたかった。

「……う……」
「!」

 しかしいざ引き金を引こうとした時、男が覚醒した。
 キノは驚いて思わず手を止めてしまう。
 カノンを構え警戒をしていたが、男はやけにうつろな瞳で、自分の現状に気付いていなかった。
 どうやら、死を目前に幻覚でも見ているらしい。

7遠のく感傷 </b><font color=#FF0000>(W1AT6yro)</font><b>:2005/04/04(月) 14:17:49 ID:prAD.KRk
 男は色を失っていく目を這わせ、やがてキノの姿を認めると、呟いた。
 ごぼごぼと口の端から血が泡となって溢れ出て、声は全く聞き取れなかったが
 
 
  か・い・る・ろ・ど


 男の口は、確かにそう動いた。
(ああ、そうか)
 冷めた目でキノは思い出す。酷く大昔に思えることを。

(そういえばボクは、この人の知り合いを探してたんだっけ)
 ――でももう、どうでもいいことだ。
 


 カノン最後の銃声が、響いた。
 
 【C-5/階段付近/1日目・06:20】
 【イルダーナフ(103)死亡】
 【残り91人】
 
【キノ (018)】
[状態]:通常。
[装備]:『カノン(残弾無し)』  師匠の形見のパチンコ
    ベネリM3(残り6発)
    ヘイルストーム(出典:オーフェン、残り20発)
[道具]:支給品一式×4
[思考]:最後まで生き残る。

8宮野の刻印講座:2005/04/08(金) 01:06:06 ID:O4HOskRM
「嫌ですわ」
 これまでのお互いのいきさつを話し終えた後、エンブリオの効果と、それを彼女に使いたいと言う言葉を聞いた茉衣子は、寸分の間も置かずに開口一番そう答えた。あまりにも即急な否定に、流石の宮野もわずかに呻きを漏らす。
「なぜかね?」
「わたくしは少なからず自分の能力に誇りを持っています。なぜなら、それが自身の資質と努力のみによって培われたものだからです。それを今更、そんな趣味の悪い何とも知れぬ十字架によって覆されるなど、冗談ではございません。ましてやそれが班長によってもたらされた物などと……わたくし清水の舞台から身を投げ打ってでも拒否致しますわ」
 肩を抱いて大仰に身を震わせながら、茉衣子はまくし立てた。
『おいおい、この娘さんアンタの弟子じゃあなかったのか?』
 その言葉に、この十字架にしては珍しく飽きれを含んだ声で問いかけた。それにもまた、誰よりも早く茉衣子が反論する。
「誰が誰の弟子などと。班長とは、極めて不幸にも偶発的、一時的に組織での上下関係に置かれているだけに過ぎません」
『おーおーひどい言われようだな相棒、ひひひひひ』
「むぅ……そこまで拒否されるようでは仕方なかろう。しかしどうしたものかなこれは。無駄に持っていても五月蝿いだけで一向に利益がないのだが」
「班長が他人を五月蝿いとのたまうなど、冗談にしても笑えませんが……。力を引き出すためのものなのでしょう? でしたら、この状況を打破できうる能力の持ち主に使用させるべきですわ」
「例えばどんな能力かね?」
『オレとしちゃ、誰であろうと殺してくれりゃ文句はないんだがねぇ』
「そうですわねぇ……。一つは、このゲームの主催者を倒しうる力を持つ能力。もう一つは、この煩わしい刻印を解除できる能力。最後に、この島から脱出できる能力。……といったところでしょうか?」
 指折り数えながら、茉衣子は答えた。
「なるほど。その中でならば刻印の解除を優先させるべきであろうな」
「あら、なぜでしょう?」

『なーんかオレらまるで居ないことのようにされてねぇか? ヒヒヒ』
『まぁ、所詮ラジオと十字架だ。こんな扱いだろうさ』

「一つ目の主査使者を倒しうる力だが、刻印がある限りその例え持ち主とて簡単に殺されてしまう。無意味だ。三つ目の脱出の能力は、その能力者だけが逃げてしまう可能性もある。さらに、脱出できたとて刻印が必ず消えるとは限らん」
「なるほど……」
「そしてもう一つ。茉衣子君も気付いておろうが、今現在我々のESP能力はかなり低下している」

『どうよ、ラジオのアンタ。アンタでもいい俺を殺してみねぇか? 喋るラジオが、喋るMDラジカセぐらいになるかもしんねぇぜ?』
『いらん』

「ええ、それは分かっておりますが」
「その原因は、高い確率でこの刻印によるものだと私は推測しているのだよ」
 その言葉に、茉衣子は首をかしげた。
「何故でしょう? 島全体に結界のようなものをかけているのやも知れませんわ。刻印のせいだと言う確証は――」

『そう連れないこと言うなよ。同じ喋るガラクタ同士じゃねぇか、ひひひひ』
『誰がガラクタだ誰が!』

「ええい、お黙りなさい!」
 いい加減耐えかねたのだろう。茉衣子が宮野の持っていた十字架をもぎ取り、ペイとラジオに向かって投げつけた。カコンと実に小気味良い音が響く。
『ぐあ! 何しやがる、ただでさえガタが来てるってーのに!』
『なぁんだよ、どうせならもっと思いっきり投げてくれや。そうすりゃ晴れて殺されて俺も万々歳だってのによ』
「黙りなさいと言っています! ……コホン。ええと、なんでしたかしら……。そうそう、刻印のせいだと言う確証はないはずですが?」
「ふむ。では聞こう。その結界とはどういった原理で力を抑制するのかね?」

9宮野の刻印講座:2005/04/08(金) 01:07:29 ID:O4HOskRM
「どういったといわれましても……」
 分かるわけない、と首を振る。そのことに、宮野はさも当然と言うように頷いた。
「であろうな。なぜなら一つではありえないからだ。一概にESP能力といっても、効果は様々だ。テレパスやサイコキネシスに始まり、発火能力、透視能力、どこぞの加速装置じみた能力もあったな。それら全ての能力は効果の違いに従い、発生のプロセスも違うはずなのだ。ならば、それぞれに対応した結界が必要となる! その結界全てを島全体に張り巡らすなど無駄もいいところだ。各個人単位に、それぞれにあった結界をかけた方が遥かに効率が良いに決まっている」
 なるほど、と納得する。確かに理論は通っている。
「では決まりましたわね。刻印を解除できる能力者、あるいは素質を持つ方を探しましょう。……それで、どこを探すのでしょうか?」
 その問いかけに、宮野はむぅと腕を組んで黙り込んだ。十数秒ほどそうした後、おもむろににディパックから地図を取り出して、床に広げた。
 さらに転がっていたエンブリオを拾い上げ――ヒョイと極めて適当な動作で地図の上に投げ落とした。乾いた金属音を立てわずかに転がった後、十字架が地図の一端を指し示す。
「……Eの5だ!」
「あまりにも適当すぎます!」
 自信満々の表情で述べた宮野に、茉衣子は思わず怒鳴り声をあげた。

【今世紀最大の魔術師(予定)とその弟子】
【残り94人】
【Dの1/公民館→Eの5/時間(1日目・8時00分)】

【宮野秀策】
[状態]:健康
[装備]:自殺志願(マインドレンデル)・エンブリオ
[道具]:通常の初期セット
[思考]:刻印を破る能力者、あるいは素質を持つ者を探し、エンブリオを使用させる。


【光明寺茉衣子】
[状態]:健康
[装備]:ラジオの兵長
[道具]:通常の初期セット
[思考]:刻印を破る能力者、あるいは素質を持つ者を探し、エンブリオを使用させる。

10Escape!修正案(111〜114):2005/04/10(日) 11:08:56 ID:KbP906tc
「彼女から離れよ」
振り向いた先にはハックルボーンのむくつけき姿があった。
「不浄なる者よ。彼女から離れよ」
由乃に向かい断言するハックルボーン、その口調に怯えキーリの背中に隠れる由乃。
「あっ…ああああっ、あの、それはわかるんです、でも」
「ほら…いいいいろいろ未練がありまして、その…ねぇ」

自分でも何を言っているのかわからない、とにかく成仏する意思はあるのだということを
伝えないと…折角戻れたのに、このまま何も出来ないままではあの人に申し訳がたたない。
だが由乃のそんな葛藤などこの神父は一切考慮しない。

「未練など捨て、神の御許へ召されよ。迷う必要などない。迷いこそ神への背信」
ずいと進み出るハックルボーン、気押され下がるキーリ。
「ですけど神父さま…由乃は嫌がってます」
「それこそが神への背信に他ならない」

ああ…この人も同じだ…。
キーリの頭にヨアヒムの顔が浮かぶ。
でも…欲望に忠実なだけヨアヒムの方がまだマシな奴かもしれない。
少なくとも自分の正義に酔ってる奴より。
「神を疑うことなかれ」

ハックルボーンはただでさえ厳しい顔をさらに険しくして、キーリらに迫る。
キーリは由乃をかばうように立ちはだかる。

11Escape!修正案(111〜114):2005/04/10(日) 11:09:51 ID:KbP906tc
「あなた方の神に祝福を」
ハックルボーンは拳を構える。
「2人そろって神の御許へ召されよ」
その時だった…彼らの間を分かつように銃弾が飛来したのは、
ハックルボーンの注意がそれた時にはキーリはすでに逃げ出していた。

「死んじゃえ」
そう捨て台詞を吐いて。

当然後を追おうとするハックルボーンだが、さらなる銃弾が彼の脇腹に命中する…しかし
「我が鋼の信仰はこのような物で砕かれたりはせぬ」
ムン!とポーズを決めると脇腹の傷から弾丸がひしゃげて床に転がり落ちる。
そしてハックルボーンは弾丸の飛来した方角へと猛ダッシュをかけるのだった。

「なっ…なによあいつは」
ハックルボーンの恐るべき肉体を目の当たりにしたパイフウ。
気で弾丸の軌道を曲げておかなければ、今ごろここを捕捉され…あえない最期を遂げていただろう。
なれない事はするんじゃない、あの最初の一撃が命中さえしていれば…。
とにかく脱出口が開いた、もうこの城には用はない。
パイフウも神父が戻らぬうちにと撤収を開始した。

一方のキーリと由乃。
「はやくっ!はやく逃げて!!」
かんかんとリズミカルに階段を降りるキーリ、ふと振り向くと由乃が転んでいる。
「あなた幽霊でしょう!!何人間みたく転んでるのよ!!」
「まだなって2時間しか経ってないんだからいいじゃないの!!」
口論しながら走る2人。

12Escape!修正案(111〜114):2005/04/10(日) 11:11:33 ID:KbP906tc
「そこ、そこから私城にはい…」
鈍い音がしたかと思うと額を押さえうずくまってるキーリ。
「あ…ここすり抜けたんだ、私」
「どうせ落ちは読めてたけど…死んじゃえ…もう死んでるか」
恨みがましい目で由乃を睨むキーリ。
どうしよ…そんな表情でおろおろする由乃、その時。
「え…あ…はい」 

突如僅かだか耳元に聞こえる声に返事をする由乃、声の主は若い男のものだった。
「何…右に亀裂……はい」
男の声は用件を一方的に告げて消えてしまった。
今のがさっきキーリが話していた、「声」なのだろうか?
なんか自分がまた一歩本格的に幽霊になってしまった、そんな気がして落ち込む由乃、
そんな彼女はさておき、キーリはすでに亀裂から外へと脱出していた。



そして…残されたのは神父と、
「何をしている?こちらに来られよ」
傍観しなくりで怯えまくりの地人だった。
「この地には不信神者が多すぎる。汝はどうなのだ?」
静かな、しかし途方もなく深い怒りと悲しみを込めてハックルボーンはボルカンに問いかける。
「そ…それはぁ」
殺される、何か言わないと殺される。
社会の底辺に生きる者ゆえの生存本能でボルカンは危険を察知していた…。

13Escape!修正案(111〜114):2005/04/10(日) 11:12:29 ID:KbP906tc
しかし察知しただけで何も出来ないのが地人の悲しさだったが、しかし。
「全部オーフェンが悪い」
思わず口をついて出た言葉に自分でも驚くボルカン。
「オーフェン?何者か?」
もはや止まらなかった…ボルカンはここぞとばかりにオーフェンがいかにひどい奴か、
そしていかに自分が虐げられているかを、
次々と脚色をふんだんに交えまくしたてていった…そして。

「そのオーフェンとやらを即刻浄化せしめよう」
神父がその気になるのにそうは時間はかからなかった。
「そ、それじゃあそういうことで…」
わなわなと義憤に両手を握り締めるハックルボーンを横目に見ながら、そっと退場しようとするボルカン。
「待つがよい。ここで我らが会えたのも神のご加護に他ならない」
その肩をむんずとつかむやたらとでかい掌。
「共に行こう。それが神の御意思である」
もはやボルカンに抵抗することはおろか、選択する余地すら与えられていなかった。

【G-4/城の中/1日目・08:52】

【ハックルボーン神父】
 [状態]:健康
 [装備]:宝具『神鉄如意』@灼眼のシャナ
 [道具]:デイパック(支給品一式)
 [思考]:神に仇なすオーフェンを討つ
 
【ボルカン】
 [状態]:健康
 [装備]:かなめのハリセン(フルメタル・パニック!)
 [道具]:デイパック(支給品一式)
 [思考]:打倒、オーフェン/神父から一刻も早く逃げたい

14限界を超えて:2005/04/10(日) 19:01:19 ID:wiv5AJwY
意識がここに還ってきた。
同時に、右肺と左脇腹の神経が再び痛みを告げ始める。
だが、彼女はそれを黙殺して立ち上がろうとする。
不意に、喉元から何かが込み上げてくる感覚。
そのまま跪いて、彼女は盛大に血を吐いた。
(……そーいや肺に一発喰らってたっけ)
今更のように、撃たれた事を認識する。
しかし、それでも彼女は立ち上がる。

「君の命はもう残り少ない」

どこかで聞いた事のある声が聞こえた。
「君の人間離れした身体をもってしても、おそらく1時間と保たないだろうね」
(勝手な事言ってくれるじゃねぇか……)
「だからこそ、君は彼女を助けるというのかな?」
(……)
自分はそこまで殊勝な人間ではない事は、彼女自身良く知っていた。だが、知り合ってしまった人間を
見捨てる事が出来るほど、彼女は冷徹ではなかった。

なんとか立ち上がったものの、身体がうまくいう事を聞いてくれない。

しかし、いやだからこそ──。
世界から見放されて、誰かの気を引く事しか出来なくて、そんな空しい自分だけれど。

(祐巳……待ってろよ…………今、助けにいくからな……)
強すぎる力を持ってしまった彼女を救いたかった。

だから──。


そして彼女は吼えた。

15限界を超えて:2005/04/10(日) 19:02:29 ID:wiv5AJwY
スコープで彼女の様子を見ていた萩原子荻は、その様子を見て冷静にライフルを構え直した。
「……さすがは『赤き征裁』、といったところですか」
照準を左太腿へと合わせて、静かにトリガーを絞る。

命中。彼女の身体がくずおれた。
「何か言ったかい?」
「いえ……、何でもありません」
「そう、それならいいけどね」
淡々とした臨也との会話。
当たり前と言われれば当たり前の事。彼との同盟は、完全に利害だけで成り立っている。
寝首を掻かれる事を前提とした、薄氷のような同盟。
思考を切り替えて、意識をスコープの先へと移す。

彼女は、再度立ち上がろうとしていた。
しかし、先の太腿を合わせて三発も銃弾を受けている身体では、うまく立ち上がることは出来ないようだ。


その姿を見ていて彼女は気付いた。
『人類最強の請負人』哀川潤の瞳が、こちらを向いている事に。

16限界を超えて:2005/04/10(日) 19:03:33 ID:wiv5AJwY
身体中の震えが止まらなかった。
只相手に見つめられただけで、こうなってしまった。
(あの眼は何!? 私は……、あんな眼を見た事がない!!)
萩原子荻は動揺を隠せなかった。
スコープから見えた彼女の瞳は、子荻が見た事のないものだったからだ。
(あれは”殺意”や”敵意”とは違う……。ましてや”狂気”でもない)
(あの意志すら見られない瞳……、あれはまるで──)

そこまで考えて、急にライフルが火を吹いた。それと同時に、子荻の意識が現実へと引き戻される。
どうやら、身体の震えを制御できずに誤ってライフルを撃ってしまったらしい。
すぐに彼女の状態を、スコープで確認する。
彼女の左手が右肩を押さえていた。
僅かに身体を揺らすが、すぐに彼女は歩きはじめた。その向かう先にあるのは、このビルだ。
この後どうするかを彼女は考える。
だが既に答えは出ていた、そしてそれしか生きる道はない。
「ここから逃げます」
ライフルを片付けながら、子荻は臨也に告げた。
「……」
理由を告げないことを不信に思わずに、臨也も手早く片づけをはじめる。

しかし──、

荷物を片付ける手を休める事なく、彼女は思った。


あんな眼をした『赤き征裁』から、無事に逃れられるのかと。

17寝起きハイテンション【修正案】:2005/04/10(日) 19:21:00 ID:VlqsSz3o
 まぶたの裏に眩しさを感じ、出雲・覚は目を覚ました。
「……なんだ、もう朝か」
 どうやら何事もなく朝を迎えることができたようだ。
「ま、好き好んでこんなとこまで来る暇人はそうそういねぇわな」
 身を起こそうとしたところで、妙な重さを感じる。
 見ると、自分の腕の中でアリュセが丸まって眠っていた。
 左腕を見ると、へたくそながら布がきつく巻いてある。
 布の出所は……
(俺の服かよ)
 左の袖がなかった。
 多少寒いが、手当てしてくれたことを思えば腹も立たない。
 まだジクジクとした痛みはあるが、出血自体はすでに止まっているようだった。
「さーて、これからどう動くか。とりあえずは腹ごしらえと現状確認だな」
 支給品のうまか棒を咀嚼しながら、勝手にアリュセのデイバッグを漁る。
 そして取り出したアリュセの支給品を見て、
「こっ……これはあぁぁあぁッ!!!」
 覚は驚愕の雄叫びを上げた。

「……ふぇ?」
 耳元の大音響でアリュセも目を覚ました。
 まだ半分閉じたままの目をこしこしとこする。
「なに、どうしたんですの?」
 寝ぼけ眼で聞いてくるアリュセとは対照的に、覚は興奮した面持ちでその支給品を掲げ上げてのたまった。
「どうしたもこうしたも、おおぉ何で男の夢、男のロマンがこんなところに!!」
 その手に掲げられているのは、黒いワンウェイストレッチ。
 そして周りには、網タイツ、付け耳、蝶ネクタイに白いカラー、カフスおよびしっぽ。
 完全無欠のバニーガールの衣装一式がそこにあった。
「……ロマン?」
「おおよ、男ってのは特殊な趣味の野郎を除いて、こういうのに燃えて萌えるものなんだ。
 と言っても、コレ単体で萌えるわけじゃないぜ。誰かに着せてこそ萌えるんだ」
 よくわからないという面持ちで聞き返すアリュセに、無駄に力説する。
 ここに風見・千里がいたら、子供になんてこと教えるのかと手加減なしで蹴り飛ばされていただろう。
「も、もえ?」
「ああ、漢(おとこ)が力を発揮するために必要なエネルギーだ。
 装着者がナイスバディであればあるほど効果が高い」
 例えば、と、覚は最初の会場で見かけた黒髪のクールビューティー(=パイフウ)を脳内具現化する。
 似合いすぎた。

18寝起きハイテンション【修正案】:2005/04/10(日) 19:22:05 ID:VlqsSz3o
「危ねえ、逃げろっ!!」
「ひゃ!?」
 ひざの上に乗っていたアリュセを抱え上げて目の前に正座させる。
「な、なんなんですのいきなり!? ……なぜ前かがみ?」
「ぬぅ、聞いてくれるなリトルガール。俺の猛り狂う熱き魂を鎮める儀式中だ」
「ふ、ふーん……」
 呆れたように見つめるアリュセをよそに、今度は風見・千里にスイッチする。
(おおぅ…イイ)
 やっぱ千里が一番だなとノロケたことを考えながら、身体の輪郭にそってわきわきと手を蠢かせる。
 アリュセが恐れおののくような目で見ているが、今の覚は気にしない。
 と、アリュセが急にいたずらっ子の顔になった。
 きゅぴーんという擬音が聞こえたかもしれない。
 まだ犯罪的な手つきをしている覚の側面に回ると、耳元でこしょこしょと話し始める。
「あのね、最初の広間で"ないすばでぃ"の人見かけましたわよ。背が高くて……」
「ほぅ」
「胸の大きい……」
「ほぅほぅ」
「傷だらけの髭のおじさん!」
 その人物は覚も見ていた。
 一瞬でバニー姿の千里がバニー姿のトレパン巨漢(=ハックルボーン神父)に差し代わる。
「ぐはぁっ!?」
 精神に大打撃を食らい、もんどりうって倒れた。
(いけねぇ……やばいぜこれは、なんて恐ろしい支給品なんだ。まさにヘルアンドヘヴン……)
 あまりのインパクトに脳裏に焼きついてしまった。
 しばらく立ち直れないような気もする。
 だが、けらけら笑っている目の前の少女を見ていると、まあいいかとも思えてきた。
(ま、暗くなるよかなんぼかマシだろうよ)
 決して狙ってやったわけではなく本気で妄想していたのだが、結果オーライとしておこう。
 と、そういえばまだお互い自己紹介もしていないことに、いまさらながら気づいた。

 名を聞こうと――したところで、ガバッと勢い良く起き上がる。
 表情は硬い。
 アリュセも笑うのをやめ、真剣な顔つきになった。

 ――頭に直接響き渡る男の声。
 ――死者の名を告げる、最初の放送が始まったのだ。

19禁止エリアがもたらすもの【修正案】:2005/04/10(日) 19:23:35 ID:VlqsSz3o
「こいつぁ随分ヤバいことになっちまったな……」
地図を見ながら、出雲は苦悩する。
死者の中に自分とアリュセ(やっと自己紹介をした)の知る名が無かったのは幸いだったが、
崖だけでなく禁止エリアまでもが、彼らの移動の邪魔となってしまった。
「ねえ、これからどうするんですの?」
「どうするも何も、まずはここから移動しないといけねえ。
ほれ。食いながらでいいか?」
出雲は立ち上がると、山ほどあるうまい棒からアリュセに一本差し出す。
「ええ、大丈夫ですわっ」
「よーしいい子だ。そいじゃ、行くとするか」
出雲はバニースーツをデイパックに戻すと、二人分のデイパックを持ち上げた。
「ふぇ? わたし、自分で持てますわよ?」
「いいんだアリュセ。今日はたっくさん歩くことになりそうだからな。
荷物は俺様のスーパーパワーに任せて、お前は体力温存しとけ」
出雲は放送内容を思い出す。
23人という死者数。それは相当な殺人者がいることを意味する。
安全な場所を確保するのは、簡単なことではないだろう。
「そう? それじゃ、お願いしますわねっ」
足取り軽く、アリュセは歩き出す。
そして、出雲もその横に並んだ。
――こんな年端もいかねえ子、殺させるわけにゃいけねえよなあ……。
守ってやらねば。
出雲はそう思いながら、彼女の横を歩くのであった。

20Double passes【修正案】:2005/04/10(日) 19:25:20 ID:VlqsSz3o
「ねえ、これからどうするんですの?」
海岸を行くアリュセが、後からついてくる出雲に訪ねる。地図を見ながら歩く出雲は、何処に向かうかずっと
考えていたのでアリュセの問いかけには気付かなかった。


最初の放送で互いに知り合いの名前が呼ばれなかったか確認した後、2人は朝食のパンとうまか棒
を食べながら今後の方針について話し合っていた。
結果として、アリュセの方の知り合いを先に捜す事になったが、その間ずっとアリュセは子供扱い
されていたのが気に入らなかったらしい。
ちなみにその時「子供扱いも何も、まんま子供じゃねえか」と出雲がそう言ったせいで、アリュセから股間に
鋭い一撃をもらったのはまぁどうでもいい事である。


それはともかく、出雲はこれから何処に向かうべきか考えていた。正直に言えば、捜す手立てがない以上
何処へ行っても一緒だと思った。
「なぁお嬢ちゃん、ちょっとこっちに来てくんねえか?」
出雲はアリュセを手招きして、こちらの方へ呼び戻したあと地図を見せてこう言った。
「お嬢ちゃんの知り合いのいそうな場所とか、わかんねぇか?」
アリュセはしばらく地図を眺めて、ある一点を指した。
出雲がその理由を尋ねるとアリュセは、「王子って盆栽が趣味だから、盆栽の有るところにいるんじゃないか
と思いまして」と答えた。
正直、盆栽が趣味の王子様というのはどうなのかと出雲は思ったが、流石にもう一度股間に一撃をもらうのは
嫌だったので口にはしなかった。
「それじゃ、そこに向かうか」
出雲がそう言ってから、2人はまた歩きはじめた。

21限界を超えて【修正】:2005/04/10(日) 20:37:17 ID:wiv5AJwY
意識がここに還ってきた。
同時に、右肺と左脇腹の神経が再び痛みを告げ始める。
だが、彼女はそれを黙殺して立ち上がろうとする。
不意に、喉元から何かが込み上げてくる感覚。
そのまま跪いて、彼女は盛大に血を吐いた。
(……そーいや肺に一発喰らってたっけ)
今更のように、撃たれた事を認識する。
しかし、それでも彼女は立ち上がる。

「君の命はもう残り少ない」

どこかで聞いた事のある声が聞こえた。その声の主の事は少しだけ知っている。
黒い帽子をかぶった筒形のシルエットに、男か女か分からないその顔。
人かどうかすら怪しいそいつの名は──、
(ブギー、ポップ……か)
「君の人間離れした身体をもってしても、おそらく1時間と保たないだろうね」
(勝手な事言ってくれるじゃねぇか……)
「だからこそ、君は彼女を助けるというのかな?」
(……)
自分はそこまで殊勝な人間ではない事は、彼女自身良く知っていた。だが、知り合ってしまった人間を
見捨てる事が出来るほど、彼女は冷徹ではなかった。

なんとか立ち上がったものの、身体がうまくいう事を聞いてくれない。
身体を揺らしながら、よろよろと彼女は歩き始める。

「きゃぁぁ!!、アイザック、グリーンを止めてぇぇ!!」
「よーし!! まかせとけミリゃぶへぇ!!」
「わぁぁっ!! アイザックー!!」

目の前に男が立ち塞がったが、それを軽く振払って彼女は再び歩きはじめた。


世界から見放されて、誰かの気を引く事しか出来なくて、そんな空しい自分だけれど。
しかし、いやだからこそ──。

(祐巳……待ってろよ…………今、助けにいくからな……)
強すぎる力を持ってしまった彼女を救いたかった。

  


そして彼女は天に向かって吼えた。

22Marionette </b><font color=#FF0000>(5jmZAtv6)</font><b>:2005/04/15(金) 01:48:00 ID:NLXnHML2
突如、空に轟音…しかしそれは何か慌てふためくような声がしたかと思うと、
それっきり音沙汰がなかった。
参加者たちは時計を見る…AM10:45。
まだ放送には早すぎる…何があったのだろうか?

「びっくりした」
鳥羽茉理は手にしたメガホンのスイッチを切って、隣にいるシズの顔を見る。
このメガホンは草原に放置されていたディバックの中から回収したものなのだが、
まさか島中全てに…おそらく何らかの仕掛けがあるのだろう、聞こえるようになっているとは
思わなかった。

だが、これは思わぬ拾い物だ…。
もともとこれで仲間たちの名前を呼びながら人探しをしようとしていたのだが、
これで手間が省けた。
2人は顔を見合わせ頷き合う。

AM11:00
2人はとあるビルの屋上にいた。
はやる気持ちを抑え、深呼吸をする茉理…頭の中で何度も何度も考えた言葉を反芻する。
大丈夫だきっと出来る…。
(始さん…私を守って)
頷くとおもむろに茉理はメガホンのスイッチを入れた。

また島中に声が響きわたった。
『皆さん聞いてください、愚かな争いはやめましょう、そしてみんなで生き残る方法を考えよう』
まずはシズが口火をきる。
『確かに私たち個々の力は微々たるものかもしれないが、だからこその協力だ!
 みんなで一緒に戦おう』
『そうよ!あいつらの好きになんかさせちゃダメ!…わたしは…ダンダンダンッ!!』
銃声が茉理の声を掻き消した。

23Marionette </b><font color=#FF0000>(5jmZAtv6)</font><b>:2005/04/15(金) 01:48:41 ID:NLXnHML2
背後からの銃声にいちはやく気がついたのはシズ、
放たれた弾丸は3発、その内1発はシズのレイピアが弾いた、
だが外れたかに見えた2発は屋上の手すりに当たって跳弾し、1発は背中からシズの胸板を、
そしてもう1発は茉理の腹部を無情にもそれぞれ貫いていた。

さらに2発、今度もシズは茉理をかばおうとするが、傷ついた身体では間に合わず
弾丸は茉理の肩口と、わき腹を抉る。
『ああああっ!』
悲鳴がメガホンに乗せられ、島中に響き渡る。
(どこだ…どこに…いる…)
シズは激痛に顔を顰めながらも必死で気配を探る。
もう自分たちは長くない、だが…それでもせめて刺し違える、でなければ後に続く者たちに
申し訳がたたない。
(そこか…)

射撃地点を割り出したシズはレイピアを構え、ふらふらと屋上の給水塔の影へと回りこむ。
(頼む…せめてこの一撃だけでも)
裂帛の気合と同時に繰り出した一撃、しかし…
レイピアは無情にも空を切る、と同時にその背後…非常階段脇に潜んでいたパイフウの気を帯びた手刀が、
振り向く間もなく、シズの片腕をレイピアもろとも切断し、さらに返す一撃がシズの背中をなぎ払う。
そして止めの一撃がシズの胸板を貫こうとしたのだが、それは残念ながら空を切った。
何故ならシズはもうすでに、自らの血で足を滑らせ無様にも非常階段を転がり落ちてしまっていたからだった。

その様子を潤んだ瞳で見つめるパイフウ…彼女だって本当は彼らに協力したいに違いない。
だが…それはもはや叶わない。
自分はたった一人で戦わなければならない、いかなることになろうとも…
したがって標的たちが団結されることは非常に困るのだ。

24Marionette </b><font color=#FF0000>(5jmZAtv6)</font><b>:2005/04/15(金) 01:49:31 ID:NLXnHML2
『たす…たすけ…始さん…』
一方の茉理はか細い声で…メガホンに向かい今はもういない人の名前を呼ぶ。
もう島のみんながとかそういう気持ちはどこにもなく、ただ愛しい人への思い…
それのみが彼女の心を支配していた。

だがパイフウはそんな彼女にも無慈悲な一撃を放つ。
『がっ!』
弾丸は茉理の太股を貫いていた、一撃で仕留めるつもりが視界が涙で曇り狙いが外れてしまった。
『いや…やめて…こないで…始さん…聞こえているんでしょう?、なんできてくれないのよお!
 始さんっ!続くん!終くん!余くんっ!』
もう一度銃口が、泣き叫ぶ彼女の頭を捉える。
『死にたく…ない』
狙いをつけるパイフウの両目から涙が止め処もなく溢れ出し、噛み締めた唇からは一筋の血が流れ出す。
(ごめん…ごめんね)
ガンッ!その銃声を最後に放送は終了した。

そして放心したかのように路上をさまようパイフウ
この襲撃は紛れも無く自分の意志で行ったことだ…今後の戦略上、参加者に団結されるわけにはいかない。
だが今の行為がどれほどディートリッヒらの思惑に沿うことに、
彼らのやっていることを助けることにになるのかも、彼女は承知していた。
「なによ…これって…」

彼らの誘いに乗った時点で、彼女は自分を犬と自嘲していた…だが、
今の自分に比べれば犬ですらまだ自由だ、自分の思い通りに動いたようで、実は何一つままならない…、
自分はもはや犬以下の操り人形に成り下がってしまった。
そして操り人形の糸を操るのは…。
(殺す…殺してやるわ…絶対に)
あの男だけは…ディートリッヒだけは許さない!
絶望と悲しみで狂いそうな心を憎悪で繫ぎ止めながら、パイフウは次の標的を求めていた。

25Marionette </b><font color=#FF0000>(5jmZAtv6)</font><b>:2005/04/15(金) 01:50:32 ID:NLXnHML2
「待ってて…かならず…助けを…」
シズは全身を朱に染めながらも、未だ生き永らえていた。
最も片腕は切断され、胸は撃ち抜かれ、さらに背中を引き裂かれて…両足は転落の際に砕けてしまっている。
それでも…とうに死んでいるはずのダメージを受けながらもシズは、
強靭な意志と責任感で命の灯火を燃やし続けていた。
「何も…できない…まま死ぬわけには…いかない…から」
ずるずると血に染まった身体を引きずり着いた先は。
(地下か…)
坂道を上がれないため低いところ低いところと転がるようにしていたら、結果たどり着いてしまった、
中は妙にがらんどうでやけに広かった、駐車場だろうか?
先の見えない闇の中に身を進めるのはさすがに気が引けたのだろう、シズは壁にもたれるようにして
ずりずりとカニのように鈍く進んでいく。

その時だった…、前方に人影が僅かに見える。
もうほとんど見えない目を凝らすと、2人の少女がいつの間にか自分の目の前に立っていた。
「お願い…たす…たすけ…」
「おいしそうな匂いがしたら起きてみたんだけど…男だ…私いらないや、死んで」
おいしそう…何言って…
少女の口元に牙が光ったようなそんな気がしたかと思うと、もうシズの喉は命もろとも、
剃刀で切り裂かれてしまっていたのだった。

「佐藤さん飲まないの?おいしいのに」
四つんばいになってぴちゃぴちゃとシズの血を啜る千絵、壁や路面にこぼれた血も丁寧に舐め取っていく。
「だから私男の血は飲みたくないんだってばさぁ」
「根っからレズなのね…やっぱりあそこの生徒ってみんな…」
「ふふふっ、それは歪んだ情報…心配ないって、みんな素朴で可愛い女の子ばっかりよ、
 私が保証するんだから」
聖はまるでどこかの占い師のような怪しい言葉で千絵に説明する。

26Marionette </b><font color=#FF0000>(5jmZAtv6)</font><b>:2005/04/15(金) 02:01:36 ID:NLXnHML2
「その素朴な女の子をみんな吸血鬼にしちゃうのよね、悪い人ねぇ」
「そうよ、あーあ、由乃ちゃんもあんなに早く死んじゃうなんて勿体無い…せっかく仲間にしてあげようと
 思ってたのに」
その言葉には死者に対する手向けなど一片たりとも含まれていなかった。
もはや彼女らは心まで獣に堕ちてしまっていた。

「でも…やっぱり欲しいのよね?」
千絵は物欲しげな聖に表情を見逃さなかった。
「私の血ならいいでしょ…はい」
千絵は自分の唇を聖の唇に重ね、そこから飲んだばかりのシズの血を口移しで流し込んでいく、
「あは…おいし…しおりぃ…」
恍惚の表情でうっとりと喉を鳴らす聖、だが千絵はもう次の準備に取り掛かっていた。
「飲み終わったら死体の処理をして、また隠れましょ…次の隠れ場所も任せて…」

【鳥羽茉理 シズ 死亡】【残り88人】

【C-6/住宅地/1日目・11:00】
【パイフウ】
 [状態]健康
 [装備]ウェポン・システム(スコープは付いていない)
 [道具]デイバック一式。
 [思考]主催側の犬になり、殺戮開始/火乃香を捜す

【C-6/住宅地/1日目・11:00】
【佐藤聖】
 [状態]:吸血鬼化/身体能力等パワーアップ、左手首に切り傷(徐々に回復中)
 [装備]:剃刀
 [道具]:支給品一式
 [思考]:次の隠れ場所に移動
 吸血、己の欲望に忠実に(リリアンの生徒を優先)

【海野千絵】
[状態]: 吸血鬼化/身体能力等パワーアップ
[装備]: なし
[道具]: なし
[思考]: 聖についていく/己の欲望に忠実に

27チャンス到来/戦友 その1  </b><font color=#FF0000>(wh6UNvl6)</font><b>:2005/04/17(日) 00:45:36 ID:Lfg1/.X6
商店街の入り口に5人が立っている。
「こっちのほうに飛んでったのよね?」
その中の1人、千鳥かなめが尋ねる。
「はい・・確実ではないですけど・・。」
しずくが答える、彼女の探し人を追って中央まで来たのだが
そこから足どりがつかめなくなっていた。
「さて、これから、これからどうする?」
「そうね・・最悪しらみつぶしに探すしか・・」
ぐう。
疲れからなのか盛大に腹がなった・・。
「千鳥、空腹は思考を鈍らせる、腹が減っていたのなら・・」
「うるさい!」
バックパックがもろに顔面をとらえた。
「何故殴る?」
「あんたの辞書にはデリカシーって言葉が載ってないの!?」
首を傾げる宗介、それを見てかなめは確信した。
『載ってないわね・・。』
「それじゃあそろそろ朝ごはんにしましょうか、そのあとこれからの行動を考えましょう。」
しずくが提案した。
「え・・でも・・。」
「大丈夫ですよ、それに私も少し疲れました。」
「私も賛成しますわ、幸いここならば食料には不自由しないでしょうから。」
まだいけると言おうとするかなめをしずくと祥子が押しとどめた。
『それに・・ここならば逃げることも恐らく可能ですし。』
祥子はチャンスと思った。
ここまで逃亡のチャンスを伺ってきたが
常に注意を払っている宗介のもとから逃げ出すのは不可能だった。
「そうだな。それでは、それでは二手に分かれて食料を調達するとしよう。」
「じゃあ私とオドーさんとしずくさん、相良さんと千鳥さんで分かれるのはどうでしょう?」
しめたとばかりに祥子がきりだす。
「そうだな・・それで、それでいこう。よろしいかな皆の衆。」
オドーが同意を求めた。
「ハッ!」
「ええ。」
「じゃあ15分後にあそこの店に集合ってことで。」
宗介、しずくが承諾し最後にかなめが集合場所と時間を決めた。

28チャンス到来/戦友 その2  </b><font color=#FF0000>(wh6UNvl6)</font><b>:2005/04/17(日) 00:46:31 ID:Lfg1/.X6
2人で商店街を歩きながらかなめはいつもの光景を思い出していた。
「ねえ宗介・・。」
「なんだ?」
「なんかさ、こうしてるといつもと変わんないよね。
この商店街いつも学校から帰るときに通るとことなんか似てる・・。」
「そうだな。確かに似ているかもしれない。」
「まだ少し信じられないんだよね〜、
今あたしたちがいる場所が戦場の真っ只中なんて。」
「千鳥・・。」
会話をしながらもかなめは店先においてある食材をバックパックに入れていく。
「わかってはいるの、分かってはいるけど・・怖くはないんだ。
あんたと一緒にいるからかもね。」
少し微笑みながらかなめは言った。
「そうか・・ならよかった。」
宗介も微笑む、が、どこか寂しげだ。
「宗介・・。」
「クルツは・・。」
「・・・。」
あえて触れていなかった名前を宗介は出した。
「あいつは・・女がとにかく好きなやつだった。」
かなめは少し笑って言う。
「なによそれ。」
宗介も少し微笑んだ。
そして言葉を紡ぎだす。
「だから・・おそらく手当たりにしだいに声をかけて・・・失敗したんだろう。」
「・・そうよね・・きっとそう・・。」
かなめも頷いた。
「まったく・・馬鹿なやつだ。」
その口調は淡々としていた。
「バカはあんたも同じでしょうが・・。」
微笑みを崩さずにかなめは言う。
「そうだな・・。」
「・・宗介・・我慢しなくていいわよ・・。」
「俺は何も我慢してなどいない、君こそ・・」
言いかけたところで言葉が止まった。
微笑んだ彼女の目には大粒の涙があった。
そして彼女は宗介の胸に顔をあてた。
「別にあたしは・・何も我慢してないわよ・・。」
その声は震えていた。
「そうか・・。」
そして、彼は自分の頬を伝わるものを感じた。
「ねえ宗介・・あんたまで勝手に死なないわよね・・。」
「・・・当たり前だ、最後まで君を守りきるのが俺の任務だからな。」

29チャンス到来/戦友 その3  </b><font color=#FF0000>(wh6UNvl6)</font><b>:2005/04/17(日) 00:48:07 ID:Lfg1/.X6
【C3/商店街/10:30】
【正義と自由の同盟】
残り90人
【相良宗介】
【状態】健康、精神面に少し傷
【装備】ソーコムピストル、スローイングナイフ、コンバットナイフ
【道具】前と変わらず
【思考】大佐と合流しなければ。クルツ・・。


【千鳥かなめ】
【状態】健康、精神面に少し傷
【装備】鉄パイプのようなもの(バイトでウィザード/団員の特殊装備)
【道具】荷物一式、食料の材料。
【思考】早くテッサと合流しなきゃ。 クルツくん・・。


【小笠原祥子】
【状態】健康
【装備】銀の剣
【道具】荷物一式(毒薬入り。)
【思考】どのタイミングで逃げるか。祐巳助けてあげるから。


【しずく】
【状態】機能異常はないがセンサーが上手く働かない。
【装備】エスカリボルグ(撲殺天使ドクロちゃん)
【道具】荷物一式
【思考】BBと早く会いたい。食料探さなきゃ。


【オドー】
【状態】健康
【装備】アンチロックドブレード(戯言シリーズ)
【道具】荷物一式(支給品入り)
【思考】協力者を募る。知り合いとの合流。皆を守る。食料を探さなければ。

30</b><font color=#FF0000>(LJVmSKgk)</font><b>:2005/04/17(日) 08:54:56 ID:5x7FWE3M
ミズーを寝かせた後、俺と新庄は周囲で役立ちそうな物の探索をしていた。
今のところ
そして部屋の片隅にあったデスクの引き出しを開けた。
「……新庄、これは何だと思う?」
中に入っていた数十枚の紙をデスクの上に広げながら俺は新庄に言った。
棚を漁っていた新庄がこちらに来て、その紙を見て驚いた。
「これって…地図?」
「ああ、どうやら各エリアの地図が拡大されているようだ。
支給された地図よりも詳しく書かれているな」
地図には建物の後に数字が記されていたが、その意味は最後の紙を見て理解した。最後の紙には数字の後に文字が書かれていた。
ああ、神様ありがとう! どうやら今まで不幸だった俺に幸運が舞い込んできたようだ。
「おそらく数字のところにアイテムが置かれているんだろう。
そして、その中には俺の贖罪者マグナスと咒式用弾頭がある!」
咒式が使えるようになればミズーの治癒もできるし、俺も戦える。この二つを手に入れればかなり有利になる。
「なら、早く取りに行った方がいいね。他の人に取られちゃうかもしれない」
マグナスと咒弾の場所はB-1とD-1。現在地から考えると運が良かったとしか言いようがない。
しばらく考えた後、俺は新庄に言った。
「ミズーを頼む。俺が一人で行く」
「え?! 一人じゃ危ないよ!」
「この状態じゃ一人でも三人でも変わらない。
ミズーを看てて欲しいし、外は危険だ。
女の子を危険に晒すわけにもいかないからな」
新庄は納得していない顔で言う。
「でも…」
「行きさえ無事なら、ある程度の敵でも勝てる自身はある。心配するな」
「…うん、わかった」
心配そうな顔で了承してくれた。やっぱりいい子だ。
足の痛みも多少、引いてきた。どうせ咒式で直せるんだから無理してでも走って行けばいい。
「とりあえず、まずは屋上に行って人のいない道を確かめる。
その道を通れば多少危険は低くなるだろうし」
「がんばって、ガユスさん」
「ああ」
俺は部屋を後にし階段を上る。
どん底の俺たちに希望の光が差し込んできた。

31</b><font color=#FF0000>(LJVmSKgk)</font><b>:2005/04/17(日) 08:57:43 ID:5x7FWE3M
今のところ

今のところ、マッチや糸などの小道具ぐらいしか見つかっていない。

すみません、ミスりました。

32ベリアルは沈黙する </b><font color=#FF0000>(qBC89beU)</font><b>:2005/04/17(日) 09:12:41 ID:kysYzkug
うっかり相談したのが間違いだった。ベルゼブブは、盟友の不幸を悲しむより先に、
笑顔で現状分析を始めた。もう四時間以上ずっと、ややこしい仮説を語り続けている。
「あのアホを黙らせてくれっ」とバールに泣きついたら、無言で耳栓を贈られた。
最終的に、「ああもう嫌や、堪忍やぁ!」と叫んだあたりで目が覚めた。

夢を見ていたようだったが、内容は忘れてしまった。
(ええと、なんやったっけ……)
眠い。まぶたが再び閉じそうになる。災難にあった記憶が、脳裏をよぎった。
……その記憶は、夢だったのか現実だったのか。まだ頭がぼんやりしている。
「―〜―〜―〜―っ!!!!」
無意識に姿勢を変えようとして、激痛で涙が出た。声も出せないほど痛かった。
けれど、そのショックで頭が冴えた。そして同時に、違和感に気づいた。
違和感の正体を探るべく、息を殺して、静かに集中する。
『……? ……ッ……!』
何か聞こえる。声だ。人の声か。他にも物音が聞こえる。誰かいるのか。
(反響で、何を言うてるのか分からへん。俺が居るって事はバレとるか?)
声はダクトの中から聞こえている。別の部屋の音が、ダクトを伝声管がわりにして
届いているようだ。そういう具合の反響だった。
どうやら少人数の集団らしい。声の雰囲気からして、今すぐ殺し合いを始める
ような気配は無い。こちらを発見していないのか、もしくは罠か。
音をたてないよう注意しつつ探知機を取り出し、確認する。画面中央に光点が一つ。
自分以外の反応が無い。50メートル以上、相手と離れているようだ。
この探知機は、呪いの刻印そのものを探知する、と説明書に書いてあった。
説明が本当なら、刻印を解除する以外に、参加者が探知を無効化する方法は無い。

33ベリアルは沈黙する </b><font color=#FF0000>(qBC89beU)</font><b>:2005/04/17(日) 09:15:02 ID:kysYzkug
(このまま隠れてやりすごすか?)
自分は今、普段の力を出せず、武器を持っておらず、おまけに負傷している。
相手は複数で、ひょっとすると、もっと多くの仲間がいるかもしれない。
この状態でケンカを売っても、まず間違いなく勝てまい。
交渉して仲間になる、という選択肢もあるが、ハイリスクだ。様子を見たい。
(今んとこ、考えるくらいしか出来る事あらへんなぁ)
仕方がない。とりあえず、今後の方針を再考してみる。
(最終目的は生き残る事……必須条件は刻印の解除やな)
その為の方法は二つ。他の参加者全員を死なすか、自力で解除できる参加者を
探し出すか。ちなみに、自分自身だけで解除するのは無理だ。
オカルト関連の知識は有る方だが、戦闘以外の技術は専門外なのである。
(ううむ、「最後の一人は解放する」って約束、ほんまかどうか微妙やしなぁ)
情報が足りない。不確定要素が多すぎる。分からない事だらけだ。
ふと時計を見る。七時半を過ぎていた。なんと、放送を聞き逃している。
少しだけ後悔したが、疲労回復が必要だったのも確かだ。反省はしない。
(そういや、そもそも俺の存在自体が最大の謎やったっけ)
考えても答えが出ないので、あえて考えないようにしていた問題だった。
けれど、ヒマ潰しには良いかもしれない。
(『オリジナルの俺』は死んどる。そのコピーやった『悪魔の俺』も消滅しとる)
そして気がつけば何故か生き返っており、この戦いに参加させられていた。
(両方の『俺』から記憶と人格を継いどる『今の俺』は、たぶん三人目か)
いや、この認識さえも、本当に真実だとは限らない。疑おうと思えば疑える。
(あるいは『今の俺』は、『俺』やないのかもしれへんなぁ)
だが、もしも全てが幻だったとしても――それでも。
(ああ、それでも俺、やっぱり死にとうないなぁ)

34ベリアルは沈黙する </b><font color=#FF0000>(qBC89beU)</font><b>:2005/04/17(日) 09:15:50 ID:kysYzkug
改めて、やりたいようにやろう、と決める。今さら生き方は変えられない。
少し気分が落ち着いた。すると、唐突に疑問が浮かんだ。
(……ん? あれ? もしかして主催者って、死者の復活が出来たりするんか?)
今さら気づいた。他ならぬ自分自身が、文字通り「生き証人」だというのに。
(いやいや、でも『今の俺』って、ほんまに『俺』かどうかも怪しいしな)
よく似た別人を造る術ならば、反魂法でもネクロマンシーでもない。別の術だ。
(せやけど、ほんまに本物の復活かもしれへん……)
一応、探ってみるだけの価値は有るだろう。ハイリスクだが、ハイリターンだ。
(ふむ、あとは……やっぱりカプセルを探さんとな)
この島の中で、カプセルが有るとすれば、どこだろうか。ゆっくりと考える。
例えば、自分と同じ世界から呼ばれた三人は、きっとカプセルを探しているだろう。
(他の参加者よりは、入手しとる可能性が高そうやな……接触するか?)
接触するなら、相手からこちらに近づくよう、仕向けるべきだろう。
(そうやな……「物部景の名を騙ってメッセージを送る」とか)
これならば、三人全員が無視できない。物部景は、己の偽物をどうにかする為に。
甲斐氷太は、物部景と戦う為に。海野千絵は、仲間と合流する為に。
それぞれが、それぞれの理由で動くだろう。結果的に彼らを欺けずとも、
何らかの流れを作る「きっかけ」くらいには、なるはずだ。
(……俺、ちょっとバールやベルゼブブに似てきたか? なんか嫌やなぁ)
朱に交われば赤くなる。昔の人は、よく言ったものだ。
(さーて、これから、どないしようか……)

35ベリアルは沈黙する </b><font color=#FF0000>(qBC89beU)</font><b>:2005/04/17(日) 09:16:51 ID:kysYzkug
【B-3/ビル2F、階段を左に行った奥から二番目の部屋/1日目・07:55】
【緋崎正介】
[状態]:右腕・あばらの一部を骨折。それなりに疲労は回復した。
[装備]:探知機(半径50メートル内の参加者を光点で示す)
[道具]:支給品一式(ペットボトル残り1本)
[思考]:カプセルを探す。生き残る。次の行動を考え中。


※ミズーらの入った入り口とは別の入り口からある一室まで血痕が続いています。
※緋崎正介(ベリアル)は、六時の放送を聞いていません。

36狂戦士の会合・改  </b><font color=#FF0000>(wh6UNvl6)</font><b>:2005/04/17(日) 22:37:51 ID:Lfg1/.X6
森の中を男が歩いている。
彼の体には血が付いているが顔にはとても今さっき人を殺したとは思えない笑みを貼り付けている。
『ちっ、さっきのガキとっとと殺っちまったかのはまずったなぁ、もうちょっと楽しんでから殺すんだった。
それにしてもどいつもこいつも馬鹿みたいに馴れ合いやがって・・・反吐がでるぜ。
カシムの野郎も奴らみたいになってんだろ〜な〜、はぁ〜あ、全く腑抜けたもんだ。』
言葉と裏腹に益々笑みを深くする。
気がつくと目の前にまるで本人がいるかのように呟いている。
「とっとと本性現しちまえよ、一緒にゲームを楽しもうぜカシムゥ〜。」
益々笑みを深くする。
ふと向かい側の方に人影が見える。
気配を消しもせずにまるで散歩をしているかのように歩き回っている。
『おめでたい獲物ま〜た発け〜ん。』
先ほど殺した相手から奪い取った銃を
ためらいなく撃つ、距離は10m、弾は相手の眉間を打ち抜いた・・筈だった。
だが少年は気にすることもなく歩みを止める気もない。
『ああん?外しちまったのか?』
向こうから声がした
「隠れてないでてきたらどうだ?」
「へいへい!」
姿を表すと同時に3発放つと同時に義手の充電を始める。
「待っていてやる。」
その男の姿はごく普通だった、体にフイットした服には汚れ一つついていない、・・この森の中で。
「くたばっちまいな!」
容赦のない一撃が彼を襲った、骨すら残っていないだろうとガウルンは確信した。
「あ〜あ、また楽しみ忘れちまった。
ガキ相手に俺様としたことが・・・」
言いかけたところで彼の義手が・・・弾けた。
「おいおい!?」
新たな敵が現れたかと思ったところで彼にしては珍しく驚きを見せた。
目の前に男が立っていた、先程葬り去った筈の男が。
「どうした、まさかそんなもので俺を殺せると本気で思っていたのか?」
冷ややかな目で見下ろす彼の雰囲気は普通の少年のそれとは明らかに異なっていた。
「ああん!?普通思うだろうよ!」
「そんな程度で自惚れていたのか?お山の大将にもほどがある。」
「猿と同じ扱いたぁひでーなー。」
少年は怒っていた、彼が人を殺したことにではなく、
彼のような弱いものが自分に向かって来たその行為に対して。
『あ〜らら、どうやらここで終わりみたいだな、愛してるぜカシムゥ、続きは地獄で・・・』
彼の思考が途切れた
「俺と対等なものは一体どこにいるんだ?」
歩いていく彼の後ろには左腕と首のない死体が一つ、赤い花のように咲いていた。


(A-5/1日目/4:45)
【死者】ガウルン
【残り人数】96人


【フォルテッシモ】
【状態】やや不機嫌気味。
【道具】ラジオ
【装備】荷物一式(食料は回復する。)
【思考】 強者を倒しつつユージンを探す、一般人に手を加える気はない。

37別れ(修正版)その1 </b><font color=#FF0000>(wh6UNvl6)</font><b>:2005/04/21(木) 01:15:00 ID:Hw7b583Y
宗介とかなめがクルツの死を悲しみつつ商店街を歩いている時、
彼らと一時別れた祥子・しずく・オドーの三人はまじめに食料を探していた。

「BBは何処にいるんでしょうか…?火乃香さんのことも気がかりです」
誰にともなくしずくはつぶやいた。
今、自分は商店街の端にある酒屋の中で食料を探している。
しかし意識はこのゲームに参加しているはずの知人の方へと向けられる。
「そもそもザ・サード管理下にある私達をどのように連れ出したのでしょう…痛っ!」
思考に集中していたため、足元にあるわずかなへこみに足をとられて転倒。
(何してんでしょう私…)
「大丈夫ですか?」
転んだしずくに祥子が手を伸ばす。
「あ、はい、大丈夫です」
しずくは手をとって立ちあがった。
「そういえばオドーさんはどこですか?」
「彼ならお店の外で待っていますわ」
店の外を見ると思考にふけっているオドーの姿があった。
背中には背負っているデイバックは食材を詰め込んでいるはずなのにちっとも膨らんでいない。
『何を考えているのかしら?まさか・・・』
自分のことに勘づいたのか?祥子の顔に不安の色が浮かんだ。

オドーには気がかりな事があった。
「恐ろしい、恐ろしい民族だな。日本人とは…」
原因は先ほどからの千鳥と宗介の様子だった。
宗介に出会ったのもつかの間、いきなり千鳥は宗介に蹴りを入れ、
空腹を指摘されるとバックで顔面を殴打した。
しかも彼女にはそれが日常らしく、彼女は普通の高校生だという。
「ならば、ならば普通の高校生は日常的に闘争の中に置かれていることになる」
日本で暮らす事になった自分の唯一の血族である、
ヒオ=サンダーソンのことが猛烈に心配だった。
(あの娘は、あの娘は本当に大丈夫だろうか…!)
そんなオドーの心を吹き飛ばすように声が聞こえた。
しずくが自分を呼んでいる。
「どうかしたんですか?オドーさん」
「いや、少々、少々気になることがあってな。
これで買うものは揃えたか?」
「ええ、大体は。
まだ少し時間がありますね、どうしましょう?」
「そうだな、どうせなら、どうせなら隠れる場所も見つけておくとしよう。
先ほどの場所は色々と都合が悪い」

38別れ(修正版)その2 </b><font color=#FF0000>(wh6UNvl6)</font><b>:2005/04/21(木) 01:15:42 ID:Hw7b583Y
---数分後---

三人は少し怪しげな地下にある店の中にいた。
「オドーさん、ここって・・・。」
看板を見る『クラブ・パラダイス』と書いてある。
「いわゆる、いわゆるクラブだな」
「なぜこのようなふしだらな場所に?」
祥子が不機嫌そうに問う。
「見つかる可能性が低いし出入り口が一つだけだから奇襲が不可能だ。
お嬢さん方には少々、少々居心地が悪いかもしれんが」
少し笑いながらオドーが言った。
「私は大丈夫ですけど・・・」
「仕方がないですか・・・」
オドーに続いて祥子・しずくも店に入っていく。
中はいかにも《それ》な感じだった。

どっかりと座れるソファー、机がありカウンターもある。
少し奥の部屋にはキッチンもあった。
「これは、これは休憩するにはもってこいの場所だ。」
笑いながらオドーが言う。
「それではこちらに集合しましょうか?」
「そうするとしよう。しずく、千鳥と軍曹を呼んできてくれ」
しずくが去った後、オドーと祥子だけが残された。
二人はソファーに座って向かい合った。
「・・・さて、さて我々は本題に入ろうか」
急に真面目な顔つきになったオドーをみて祥子はたじろぐ。
「何のことです?私に問題でも?」
「なかなかの、なかなかの演技力だった。しかし貴様は軍曹に注意を払いすぎだ。
 不自然なほどにな」
「当然です。あの人は、会ったばかりの私を殺そうとしました」
「あくまで、あくまでしらを通すつもりか?ならばこちらにも考えがある。」
そういうとオドーは指を鳴らした
見えない力が祥子を押し付けた。
「ぐっ!なんですかこれは!?」
ソファーに押し付けられて祥子は口を開いた。
「これが、これが私の力だ、手加減はしているが。」
「…」
相当な力で押し付けられる、体が潰れそうだ。
「時間が、時間が無いのでな。駆け足で質問させてもらおうか」
ここぞとばかりにオドーが睨み付ける。
喋らなければ殺される、そう察した祥子は真実を話した。


「そういう、そういうことか。要するに人探しの途中か、危ない橋も渡ってきたようだな」
「はい…」
祥子は全て真実を話したが、一つ嘘をついた。
彼女の殺人は全て相手が襲ってきてそれに立ち向かった結果とした。
オドーの指が扉をさす。
「止めはしない、彼らが、彼らが来ないうちに行くといい」
「私は敵となるかもしれないのに…なぜ?」
「簡単な、簡単なことだ。獅子身中の虫などいらぬ、だが自ら進んで殺す気もない。
 私はこんな下らんゲームには反対なんでな」
「そうですか・・・では、私はお言葉道理に行かせてもらいます」
銀の剣を握りしめ、踵を返す。
パラダイスから去り行く祥子にオドーは声をかける。
「探し人が、探し人が見つかったら戻ってきてほしい。
 共に脱出法方を考えよう…」
祥子の返事は聞こえなかった…。
しずくに呼ばれた宗介達は少し遅れてパラダイスにやってきた。
飲料水確保に手間取っていたらしい。
宗介は祥子が居ないことに気づき、
「大佐、あの女は何処に?野放しにすると危険ぐはぁ!…何をする千鳥」
「うるさい!ったくあんたはどーしてそうネガティブな方向へ話を持ってくのよ!」
「しかし、常に最悪の状況を考えて行動しなければ最悪の事態に陥る、この前とある国の…」
オドーは二撃目を叩き込もうとする千鳥を制し、
「もうよい、もうよいのだよ軍曹。彼女は人探しの途中だった、群れるより
 単独の方が動きやすい。だから別れた、過去のことはこの際忘れろ」
「…了解しました」

39別れ(修正版)その3  </b><font color=#FF0000>(wh6UNvl6)</font><b>:2005/04/21(木) 01:16:55 ID:Hw7b583Y
場に漂う気まずい雰囲気を壊すため、かなめが口を開いた。
「それにしてもこんな場所で休憩ってなんかヤダなー」
「そうか?これほど敵からの奇襲を防ぎやすく心休まる場所はなかなかないと思うが」
「そういう意味じゃないってんの、全くこれだからこいつは・・・」
「ハッハッハ、確かに、確かにそのとおりだ軍曹。
かなめ、おまえのボーイフレンドはおもしろいやつだな。」
「お褒めに預かり光栄であります、サー」
「褒めてないって・・・。
それとオドーさん、こいつはボーイフレンドでもなんでもありませんから!」
「アプローチは、アプローチはかけてないのか軍曹?」
「いえ、大佐、今以上のアプローチはおそらく不可能かと」
「ちょっ・・・!あんた何勘違いしてんのよ!」
「ん?アプローチの意味ぐらい理解しているが?」
「馬鹿!この場合のアプローチっていうのはね、その・・・」
「前途、前途多難だなかなめ」
会話が大分それてきた所でしずくが本題に引き戻す。
「じゃあこれからどうしましょうか?」 、
「おっと話がそれていたな。そうだな、とりあえず、とりあえずは食事を取るとしよう。
 そのあとはこの後の行動の検討。私と軍曹の腕の見せ所だな」
さらに宗介をを見て、
「軍曹、軍曹は何か意見があるか?」
「ハッ、進路を決めるのは次の放送の後からのほうがよろしいのではないかと。」
「ふむ・・・そうだな、それでは、それではそうするとしよう」
「そんじゃあ今からはあたしの出番ね、しずくも手伝ってくれる?」
「はい。」
二人はキッチンへ向かっていく。
「軍曹、彼女の、彼女の料理の腕は?」
「ハッ、自分が食したところでは問題ありません。」
「食べたことがあるのか?やはり、やはり軍曹、君は彼女に・・・」
「オドーさん、そこらへんにしとかないと・・・。」
いつのまに後ろにいたのか、かなめだ。
釘を刺した後再びキッチンに戻っていく。
「軍曹、君も、君も大変だな」
「肯定であります、サー」
二人がため息をつくのは同時だった。

40別れ(修正版)その4  </b><font color=#FF0000>(wh6UNvl6)</font><b>:2005/04/21(木) 01:19:26 ID:Hw7b583Y
【C3/商店街/11:00】
【正義と自由の同盟】
残り88人

【相良宗介】
【状態】健康
【装備】ソーコムピストル、スローイングナイフ、コンバットナイフ
【道具】荷物一式、弾薬
【思考】大佐と合流しなければ。

【千鳥かなめ】
【状態】健康、精神面に少し傷
【装備】鉄パイプのようなもの(バイトでウィザード/団員の特殊装備)
【道具】荷物一式、食料の材料。
【思考】早くテッサと合流しなきゃ。

【小笠原祥子】
【状態】健康
【装備】銀の剣
【道具】荷物一式(毒薬入り。)
【思考】オドーに借りができた。祐巳助けてあげるから。

【しずく】
【状態】機能異常はないがセンサーが上手く働かない。
【装備】エスカリボルグ(撲殺天使ドクロちゃん)
【道具】荷物一式
【思考】BBと早く会いたい。

【オドー】
【状態】健康
【装備】アンチロックドブレード(戯言シリーズ))
【道具】荷物一式(支給品入り)
【思考】協力者を募る。知り合いとの合流。皆を守る。

この作品はID:6xnzi/yZさんの作品『別れ』を自分が改造、修正したものです。

41まもるべきもの </b><font color=#FF0000>(p2cIn2/A)</font><b>:2005/04/24(日) 08:25:31 ID:2SF39t2A
「大事な……妹さんなんですね」
 歩きながら藤花が訊いた。
「まあね」
 少し照れながらも麗芳は答える。
 二人は広い草原を、雑談を交わしながら歩いていた。
(いいな――麗芳さん)
 藤花に姉妹はいない。それどころか親との仲も大してよくない。
それに対して守るべき妹がいる麗芳を、素直に「いいな」と思っていた。
 しかし、藤花はそんなことをおくびにも出さずにまた雑談を始める。
本人は気付いていないだろうが、麗芳の話は全て、妹と言う淑芳につながっていた。
「しかし、自分よりも他人を愛す、それは少しだけ危険だ」
 唐突に藤花が口を開く。しかしその声は、男のようでも女のようでもある、奇妙な声だった。
「え?」
 そう言って、麗芳は立ち止まってしまう。
「今、藤花ちゃん…なんて?」
「へ?わたし、別に何も言ってませんけど……」
 困惑気味の麗芳に対し、不思議そうに言う藤花。
(空耳?それにしてははっきりしていた様な……)
「ごめん……なんでもないわ。少し疲れてるみたい」
「はぁ……」
 そんなやりとりをして、二人は再び歩き出した。
しかし、少し歩いたところでまた声がした。

42まもるべきもの </b><font color=#FF0000>(p2cIn2/A)</font><b>:2005/04/24(日) 08:26:27 ID:2SF39t2A
「でも、そんなもの行き過ぎなければ世界の危機でもなんでもない。まぁ、世界の危機なんてものは、
 たいていそういった“行き過ぎなければ大した事の無い物”なんだけどね」
「またっ!?」
「えっ?…またって……何がですか?」
(やっぱり、この娘が言ってたんだわ。でも自分が言ったことに気づいていない……?)
 少し考え込んでしまう麗芳。そんな麗芳に、後ろから声がかかる。
「どうやら君は、世界の敵ではないようだ。しかし、相手の話を聞かないと世界の敵かどうかも分からない
 なんて、ブギーポップの名折れだな」
(油断した!?後ろを取られた!)
「しまっ――」
――とんっ
 振り向こうとする麗芳。しかし彼女が振り向くより早く、藤花の手刀が麗芳に当て身を食らわせていた。
「うっ」
 崩れ落ちる麗芳を藤花は見ようともせず、バックの中から奇妙な衣装を取り出していた。
藤花は、その筒のような衣装を着終わると、麗芳を見下ろしていった。
「悪いが、少し寝てもらうよ。存在を制限されている今、自力で『世界の敵』を探さなくてはいけないのでね」
 奇妙な衣装を着た藤花は、麗芳をうまく背の高い草で隠した。
「それではさようなら麗芳くん。君の守るべきものが妹さんであるように、僕の守るべきものは世界なんでね」
 麗芳を隠した藤花はそう言うと、スタスタと歩いていった。
それは、今から世界の敵を倒しに行くような足取りではなく、『ちょっとコンビニへ』と言うような
軽いものであった。

43まもるべきもの </b><font color=#FF0000>(p2cIn2/A)</font><b>:2005/04/24(日) 08:27:18 ID:2SF39t2A
  ―― 数分後 ――

「おや?こんなところに女の子が」
 涸れた湖から出た『ED』ことエドワース・シーズワークス・マークウィッスルは、
草原に倒れる一人の少女を見つけた。

【C−7/湖底のそば/07:00】
 【宮下籐花(ブギーポップ)】
 [状態]:健康
 [装備]:ブギーポップの衣装
 [道具]:支給品一式。
 [思考]:世界の敵の捜索

 【李麗芳】
 [状態]:気絶
 [装備]:凪のスタンロッド
 [道具]:支給品一式
 [思考]:淑芳を探す/ゲームからの脱出

【ED(エドワーズ・マークウィッスル)】
【状態】健康
【道具】飲み薬セット
【装備】仮面
【思考】同盟の結成/ヒースロゥを探す
【行動】少女をどうにかする

※この話は『Are You Enemy? 』に続きます。

44不幸の打ち止め 1◆6xnzi/yZ:2005/04/27(水) 18:27:28 ID:D7qZuQnc
ギギナから逃れたヘイズとコミクロンはF-6エリアの砂浜で休息していた。
「あー、くそ。右手が動かないのがこんなに不便だったとは…パンの袋が開けられん」
「命が有るだけいいじゃねえか。<天才も不滅ではないと言うことほど、
 凡人にとって慰めになることはない>って言うしな。ほらよ」
ヘイズがコミクロンの袋を手に取り、パンッと小気味いい音がした。
「悪いな。しかし今のは誰の言葉だ?俺の世界じゃ聞かない台詞だ」
「ゲーテっつう昔の詩人だ、ちっとわ慰めになったか?」
「十分だ。それに詩か…、こういうのが趣味か?ヴァ−ミリオン」
パンを頬張りながら意外そうにコミクロンが返事を返す。
どうやらある程度の疲労は取れた様だ。
「いいや、俺が最近出会った読書と水玉模様が好きなお姫様が名言集を読んでてな。盗み読みした。
 他にもあるぜ、<天才とは、何よりもまず苦悩を受け止める先駆的な能力のことである>
 …どうだ?博識っぽく見えるだろ?」
「後の方はあえて無視するが、俺には相応しい言葉だな。ただ現状この大天才には思考すべきことが
 多すぎて苦悩どころじゃない」
ヘイズの言葉を軽く聞き流しながらコミクロンは右腕を見る。
相変わらずまともに動かないが、魔術師の自分には致命傷ではない。
「一番の問題は著しい能力低下だ。医療関係の構成にかけては、予定ではなく大陸一を自負していた
 この大天才が傷口をふさぐのが精一杯だとはな…。次にこの<呪いの刻印>
 とかいうもんをどうにか…ムグッ!ムグムゴムッガ!」
ぶつぶつとつぶやくコミクロンの口をヘイズはふさぎ、有機コードをわめくコミクロンの頭につなぐ。

45不幸の打ち止め 2◆6xnzi/yZ:2005/04/27(水) 18:28:55 ID:D7qZuQnc
有機コード伝いならコミクロンの頭に声を直接送ることができる。
(ぺらぺら喋るな馬鹿。刻印には盗聴機能があり、音声は開催者側に筒抜けだって
 教えといただろーが!これ以上独り言を漏らしてたら、魂を消し飛ばされちまうぞ!)
(すまん。少し冷静さを欠いてたみたいだ。こんなことで死んだら笑いもんにもならないな)
(刻印のほうは今俺が情報処理に特化したI−ブレインで、己の情報を偽って侵入してる。
 論理回路とは若干異なる系統の構造や、未知の力の働いている部分も多いんで
 分からないことが多いんだが…今お前の脳にだいたいの構造を送ってみる)
ヘイズが送って来たのは、幾種類の魔術構成から成る<呪いの刻印>の構造式だった。
(うおっ!なんだこりゃあ?随分と複雑でしかも強力な構成だ)
コミクロンが派手に驚く。ヘイズはなかなかのリアクションだと思いながら、
(何か分かるか?)
(人の精神…いや魂その物と強く結び付いてるようだ…無理に引き剥がすと、
 恐らく魂がダメージを受ける。最悪死ぬな)
主催者が説明していた事だが、ハッタリではなかったらしい。ヘイズは天を仰いだ。
(厄介なもんつけられちまったぜ。取るのミスれば即昇天かよ)
まだ不幸は打ち止めではないらしい。

しばらく二人ですったもんだしながら、I−ブレインの機能低下による演算効率の悪さと、
手強いガードにてこずりながらコミクロンの協力でなんとか解析してゆく。
しかし、ある地点で二人の全く知らない構造にぶつかってしまった。
(ヴァーミリオン、ここから先は俺の知らない魔法の構造だ。
 くそっ、白魔法をもっと勉強すりゃ良かった)
(ここまで分かりゃあ上出来だぜコミクロン。とりあえずはここまで解析した構造を
 元にして俺が刻印の解除構成式を組み立てる。だが俺のI−ブレインは記憶容量不足だ。
 代わりにお前の脳に構成式を保存する…良し、終わった)

46不幸の打ち止め 3◆6xnzi/yZ:2005/04/27(水) 18:30:22 ID:D7qZuQnc
「この世界に来て二つ目の収穫だ。ようやく運が回ってきたな」
二人は有機コードをはずして今後の予定を立てることにした。ヘイズが地図を広げる。
「とりあえず構成式の完成が優先だな。こういうのに詳しそうな奴らが集まるのは…」
「海洋遊園地だ」
「なあコミクロン、学校にいい思い出が無いからって何でそんな所に行きたがるんだ?」
「学校が嫌いなんじゃないぞ。絶対に。ただ俺は遊園地というのに興味があるんだ」
ヘイズはFのエリアをなぞりながら地図をにらんむ。
「じゃあまずは島を横断する。遊園地に着いたら北上して公民館→学校の順で回ってみるか」
「異義なし、だ。日が暮れるまでには着いときたいな。残ってるならエドゲイン君も回収したい」
「そういえば俺達丸腰だな…パンの袋に砂でも詰めとくか。目潰しに使えそうだ」
しゃがんで砂を集めるヘイズを見ながらコミクロンはつぶやく。
「クレア、いーちゃん、しずくを探すのは後回しか…」
なんだか名残惜しそうだった。

二人の魔法使いは荷物をまとめて歩き出した。反撃のために。


【F-6/砂浜/一日目10:40】

【ヴァーミリオン・CD・ヘイズ】
[状態]:健康
[装備]:砂袋
[道具]:支給品一式
[思考]:刻印解除構成式の完成。騎士剣を探す。
[備考]:刻印の性能に気付いています。


【コミクロン】
[状態]:軽傷(傷自体は塞いだが、右腕が動かない)
[装備]:未完成の刻印解除構成式(頭の中)
[道具]:無し
[思考]:刻印解除構成式の完成。クレア、いーちゃん、しずくを探す。
[備考]:服が赤く染まっています。


【残り85人】

47犠牲が出た時点で幸福ではない◆R0w/LGL.9c:2005/04/29(金) 00:24:31 ID:U/lyfmso
ぼんやりとした意識。
こんな経験は始めてだった。
請負人として今まで数々の修羅場をくぐった。
曲弦糸を極限に鍛えた大好きな娘と戦ったときも。
最悪の殺し名<零崎>を2人相手にしたときも。
親父を二人殺したときも。
アタシは常にクールで、シニカルに笑ってたはずだろう?
それがなんだ。策士にごときに。
策? 全部力で打ち砕いてやる。
祐巳。すぐに助けてやる。
依頼は絶対に遂行する。それが最強の義務だ。
体の痺れを無視して。目の前は真っ暗で見えないが、起きる。
ぼたぼたぼたっ
何か液体が落ちる音。自分の腕でももげたか? 脳漿でもブチ撒けたか?
どうでもいい。
不意に視界が戻る。目の前は赤くて紅くて。
オーバーキル・レッド

「動いたら駄目デシ!」
意識がいつものクリアーな状態に戻る。
自分では起き上がったと思っていたが実際は上半身だけむっくり起こしていた。
目の前にはでかい竜が、自分の前足に裂傷をつけて血をかけていた。

48犠牲が出た時点で幸福ではない◆R0w/LGL.9c:2005/04/29(金) 00:25:12 ID:U/lyfmso
「・・・・・デシ・・・?」
ファルコンが横向きに倒れる。
「アタシは人類最強の請負人哀川潤だ。
 アタシの体を好きにしようなんて超サイヤ人だろうが許されねぇぜ」
そう言って彼女はシニカルに・・・・いつもと同じ笑みを浮かべた。
そのままつかつかと高里要に近づいていく。
「兄ちゃん上着貰うぜ」
とんでもない速さで上着を剥ぎ取り、細長く破いた。
「あ」
ぐるぐるとシロちゃんの腕の傷口に巻きつけていく。
「止血はこれでいいか・・・・
 ちょっとあっちのビルまで運ぼう。こんなでっかいドラゴンは目立ちまくりだからな」
「グリーンだね・・・・・」
「グリーンだ・・・」
「あ゛?」
不機嫌そうに振り向く。
アイザックとミリアが瞳を輝かせていた。
「ちょっぴり照れ屋でうっかりホワイトを殴っちゃう!」
「でも心配してやっぱり介抱はしっかりする!」
『グリーン復活だ!!』
「やかましいっ!
 誰がグリーンだ!大体、戦隊だったらアタシがレッドだろうが!」
「グリーングリーン♪ グリーンは強くて優しいのー」
「だけどちょっぴり照れ屋なのー」
「ええいくそ!アタシにレッドをよこせ!」
「ああ潤さん、まだ傷が完璧に治ったわけじゃないんですから・・・・」
喜ぶアイザックとミリア。
暴れる哀川潤。
困る高里要。
そんなこんなで数分間、騒ぎっぱなしだった。
・・・シロちゃん放置で。

49犠牲が出た時点で幸福ではない◆R0w/LGL.9c:2005/04/29(金) 00:26:36 ID:U/lyfmso
【C−4/ビルの正面/一日目/10:10】
『誘拐戦隊赤桃緑黄白』
【哀川潤(084)】
[状態]:怪我が治癒。血が流れたので体力激減。致命傷は治ったが太腿と右肩が治ってない。
[装備]:なし(デイバッグの中)
[道具]:なし
[思考]:ファルコンをビルに運ぶ。祐巳を助ける 邪魔する奴(子荻と臨也)は殺す アイザック達に興味  レッドはアタシだ
[備考]:右肩が損傷してますから殴れません。太腿の傷で長距離移動は無理です。(右肩は自然治癒不可、太腿は数時間で治癒)


【アイザック(043)】
[状態]:超安心
[装備]:すごいぞ、超絶勇者剣!(火乃香のカタナ)
[道具]:デイパック(支給品一式)
[思考]:やったねグリーン!ホワイト大丈夫かな!

【ミリア(044)】
[状態]:超安心
[装備]:なんかかっこいいね、この拳銃 (森の人・すでに一発使用)
[道具]:デイパック(支給品一式)
[思考]:そうだねアイザック!!

50犠牲が出た時点で幸福ではない◆R0w/LGL.9c:2005/04/29(金) 00:27:36 ID:U/lyfmso
【トレイトン・サブラァニア・ファンデュ(シロちゃん)(052)】
[状態]:気絶。前足に深い傷(止血済み)貧血
[装備]:黄色い帽子
[道具]:無し(デイパックは破棄)
[思考]:思考なし


【高里要(097)】
[状態]:正気
[装備]:不明
[道具]:デイパック(支給品一式)
[思考]:潤さんとロシナンテが・・・・
[備考]:上着はホワイトの止血に使いました。

「チーム方針」
シロちゃんをビルに運ぶ

51 不幸の打ち止め 2(修正):2005/04/29(金) 07:01:03 ID:D7qZuQnc
有機コード伝いならコミクロンの頭に声を直接送ることができる。
(ぺらぺら喋るな馬鹿。刻印には盗聴機能があり、音声は開催者側に筒抜けだって
 教えといただろーが!これ以上独り言を漏らしてたら、魂を消し飛ばされちまうぞ!)
(すまん。少し冷静さを欠いてたみたいだ。こんなことで死んだら笑いもんにもならないな)
(刻印のほうは今俺が情報処理に特化したI−ブレインで、己の情報を偽って侵入してる。
 論理回路とは若干異なる系統の構造や、未知の力の働いている部分も多いんで
 分からないことが多いんだが…今お前の脳にだいたいの構造を送ってみる)
ヘイズが送って来たのは、幾種類の魔術構成から成る<呪いの刻印>の構造式だった。
(うおっ!なんだこりゃあ?随分と複雑でしかも強力な構成だ)
コミクロンが派手に驚く。ヘイズはなかなかのリアクションだと思いながら、
(何か分かるか?)
(人の精神…いや魂その物と強く結び付いてるようだ…無理に引き剥がすと、
 恐らく魂がダメージを受ける。最悪死ぬな)
主催者が説明していた事だが、ハッタリではなかったらしい。ヘイズは天を仰いだ。
(厄介なもんつけられちまったぜ。取るのミスれば即昇天かよ)
まだ不幸は打ち止めではないらしい。

しばらく二人ですったもんだしながら、I−ブレインの機能低下による演算効率の悪さと、
手強いガードにてこずりながらコミクロンの協力でなんとか解析してゆく。
しかし、ある地点で二人の全く知らない構造にぶつかってしまった。
(ヴァーミリオン、ここから先は俺の知らない魔術の構造だ)
(ここまで分かりゃあ上出来だぜコミクロン。とりあえずはここまで解析した構造を
 元にして俺が刻印の解除構成式を組み立てる。だが俺のI−ブレインは記憶容量不足だ。
 代わりにお前の脳に構成式を保存する…良し、終わった)

52犠牲が出た時点で幸福ではない(状態修正)◆R0w/LGL.9c:2005/04/29(金) 12:15:58 ID:U/lyfmso
【哀川潤(084)】
[状態]:怪我が治癒。内臓は治ったけど創傷が塞がりきれてない。太腿と右肩が治ってない。
[装備]:なし(デイバッグの中)
[道具]:なし
[思考]:ファルコンをビルに運ぶ 祐巳を助ける 邪魔する奴(子荻と臨也)は殺す アイザック達に興味  レッドはアタシだ
[備考]:右肩が損傷してますから殴れません。太腿の傷で長距離移動は無理です。(右肩は自然治癒不可、太腿は数時間で治癒)
    まだ血が流れているので止血して12時間は休憩と食料が必要です。

【トレイトン・サブラァニア・ファンデュ(シロちゃん)(052)】
[状態]:気絶。前足に深い傷(止血済み)貧血
[装備]:黄色い帽子
[道具]:無し(デイパックは破棄)
[思考]:思考なし
[備考]:血を多く流したのと哀川さんのボディーブローで気絶中です。
    回復までは多くの水と食料と半日程度の休憩が必要です。

53初めてのピクニック>行き違う幸せ 3/5 ( </b><font color=#FF0000>(jjRBLcoQ)</font><b>:2005/04/29(金) 15:27:47 ID:rA3V8e5g
一方、ヘイズ一行はエドゲイン君捜索中、ほのかを視認で確認する。
二人うなずきあい、戦闘態勢に移った。
(I-ブレイン35%で起動、未来予測開始)
ヘイズは木の幹に隠れつつそちらを向く。女?が2人、バンダナが長物で金色の目が短刀を装備。
こちらは森、向こうは草原、おそらく視認まではされて無はず、
それでも向こうが先に気づいたということは相手は何らかの策敵能力を有すると考えられる。
下は地面、靴での理論回路形成は無理、
ヘイズは慎重に策を練リ続ける。
こちらの攻撃手段は基本的に遠距離攻撃、向うは近接が主体の可能性が高い
こちらに近接武器は無し、向うの遠距離攻撃能力は不明だが高くは無いはず
向うはこちらに比べ優秀な策敵能力を有する
向うに警戒態勢、ただし敵意があるかどうかは不明
大雑把な選択肢は3つ、
1攻める2逃げる3呼びかけを行う
「逃げるのはなしだな、策敵能力と短刀が危険すぎる、追い詰められる可能性が大だ」
コミクロンにささやいた。
「敵意があるとはかぎらんだろ、ここは平和的に話し合いを…」
「俺もそうしたい」
ヘイズは続ける
「だが、俺もアンタも近距離格闘は苦手だろ、殺意があった場合、即ゲームオーバーだ、
 武器を狙え、無力化して降伏勧告をする、話し合いはそれからだ
 もし格闘を挑んできたら見晴らしのいい草原へ弾幕を張りながら逃げる、いいな」
「了解だ」
「俺はバンダナ、もう一人は任せる、2人同時発動は出来ないからアンタが先だ。
 うまくすればあのどちらかが騎士剣かもしれない、いくぞ」
コミクロンが構造を組み立てて、ありえないことが起こった。

54初めてのピクニック>行き違う幸せ 4/5 ( </b><font color=#FF0000>(jjRBLcoQ)</font><b>:2005/04/29(金) 15:29:49 ID:rA3V8e5g
バンダナが金色の目を突き飛ばした。二人とも構造の外へ転がっていく。

「なにっ」
(――稼働率85%で再設定 ノイズ減算成功、予測演算成功、『破砕の領域』発動)
ヘイズは急いでバンダナの手元に計算をあわせ、指をはじく
またもバンダナがそれに気づき、今度は刀でガードする構えを見せ、
今度は理論回路そのものが消し飛んだ。
「森から出て逃げるぞ、接近させんな」
コミクロンに指示を飛ばし、森から飛び出て、すぐにバンダナに向き直る。
バンダナは目をしばたかせながらも刀を腰だめに構えなおした。

――こいつも理論回路が見えてるのか、本人も驚いてるところを見ると消し飛ばしたのは刀のほうだな

一方金色の目のほうはバンダナのほうを向いてわけが分からないという顔をしている。

――あっちは見えてねえか、おそらく策敵能力を持っているのもバンダナだな、

騎士剣かもしれない刀、もう一人の理論回路が見える人物、どちらも自分が探していたものだ。
しかしそれらから自分たちは背を向けて逃げなければならない。というか逃げ切れるかも怪しい。
転がってきた幸運が自分の手でつぶれてしまった。
「つくづく縁がねぇ」
ヘイズはため息をついた。

55初めてのピクニック>行き違う幸せ 4/5  </b><font color=#FF0000>(jjRBLcoQ)</font><b>:2005/04/29(金) 15:32:01 ID:rA3V8e5g
【F-5/北東境界付近/1日目・11:00】

【チーム・ソードダンサー】

【火乃香】
[状態]:健康
[装備]:魔杖剣「内なるナリシア」(出典:されど罪人は竜と踊る)
[道具]:デイパック(支給品一式) 
[思考]:1赤髪、三つ編の戦闘意思の有無を確認 2シャーネの人捜しを手伝う


【シャーネ・ラフォレット】
[状態]:健康
[装備]:騎士剣・陰陽
[道具]:デイパック(支給品一式) 
[思考]:1状況を把握する 場合によっては赤髪 三つ編は殺す 2クレアを捜す


【凸凹魔術師】

【ヴァーミリオン・CD・ヘイズ】
[状態]:健康
[装備]:砂袋
[道具]:支給品一式
[思考]:1戦闘からの離脱 2刻印解除構成式の完成。騎士剣を探す。
[備考]:刻印の性能に気付いています。


【コミクロン】
[状態]:軽傷(傷自体は塞いだが、右腕が動かない)
[装備]:未完成の刻印解除構成式(頭の中)
[道具]:無し
[思考]:1相手との和平交渉 2刻印解除構成式の完成。3クレア、いーちゃん、しずくを探す。
[備考]:服が赤く染まっています。

【備考】
戦闘状況は現在も続行中、
両チームとも海上遊園地へ向かう。

【残り85人】

56反則技 その1  </b><font color=#FF0000>(wh6UNvl6)</font><b>:2005/04/29(金) 19:02:24 ID:Hw7b583Y
「ん?」
油断をしたくてもできないという彼の性質が狙撃者の気配を捉える。
瞬時に自分の前にもはや反射ともいえるスピードで歪みの壁を展開、
銃弾はそこに止まった。
クンと右手を軽く振る、弾は撃った方向にそのまま戻っていった。
だが敵に命中した手ごたえがない、どうやら撃った直後に移動したようだ。
そんなことを考えているうちにもう一度彼の絶対防御が弾を捕らえる。
また撃ち返す、また避けられたようだ。
「おいおいかくれんぼか?
…そんなにガキでもないんだがな!」
能力を発動し周りの柱を破壊しながら移動する。
何十本もあるのだ、いくつか無くなってもビクともしない。
そのとき彼は視界の隅に敵を発見した。
どうやら女のようであり手には少々異形の銃を持っている。
入り口のほうへ走っている、逃走を決めたようだ。
「逃がすかよっ!」
入り口に向かい疾走する。
…が、その足が止まった。
目の前に男が現れた、その男は…主催者の一人だった。
「人の人形で遊ぶのはやめてほしいんだけどな〜、
手に入れるのに結構苦労したんだよ。」
へらへらと笑みを浮かべながら男は言った。
フォルテッシモも笑みを浮かべた、そして言う。
「ほう…じゃあおまえが代わりに遊んでくれるのか?」
ピリピリとした空気が周囲に流れる。
そして主催者の一人、ディートリッヒが火に油を注ぐようなことを言う。
「無理無理、今の君じゃあ僕には勝てないよ。」
「じゃあ…試してみるか!?」
フォルテッシモは相手を攻撃しようとした、
が、その行動は急な体の痛みによって遮られる。
「くっ!」
感じたことの無い強烈な痛みが彼を襲う。
歪みに引っかかっている命を外す、
もとい引きちぎられているような感覚だった。
上から声が響く。
「ね?」
「貴様…何をした!?」
苦痛に顔を歪ませながらフォルテッシモが尋ねる。
「君の呪印を少し発動させたんだよ。
まともに戦って万が一負けちゃったら洒落になんないからね。」
笑みを崩さずにディートリッヒは言う。
「そうそうそういえば君の働きは少々期待はずれだよ、
せっかく制限を少し緩めてあげたのに。」
「何?」
「君の能力は制限するのが少し難しかったんだよ。
こっちも人手が少なくてさ、
君みたいに積極的にゲームに参加してる人に手間をかけるよりも
他のもっと危険な人たちを制限することを優先したのさ。」
「…いずれ後悔させてやろう、俺をこのゲームに参加させたことを。」
「楽しみにしてるよ。おや、ケンプファーに見つかってしまったみたいだ。
もう行かなくっちゃ、じゃあね、最強さん。」
そしてディートリッヒは現れたとき同様唐突に消えた。

57反則技 その2  </b><font color=#FF0000>(wh6UNvl6)</font><b>:2005/04/29(金) 19:04:10 ID:Hw7b583Y
「参加者への接触は禁止といった筈だが?」
「君も彼女に会ってきたんだろう?おあいこだよ。」
「挙句の果てには参加者の逃走を手助けしたようだが。」
「そんなつもりはなかったよ。」
「…次また同じようなことがあったときは《あの方》に報告させてもらうぞ。」
「あーそれは怖い、分かった分かったもうしないよ。」
ディートリッヒを戒めた後ケンプファーは部屋から出て行った。
出て行った後ディートリッヒは心の中でつぶやく。
『残念、もうあえないんだね。
これは渡してあげれないみたいだ、この正体に気づいたときの君の顔が見たかったのに。』
ディートリッヒの手には例のアンプルがあった。
その中身は…ただのブドウ糖だった。

フォルテッシモは完全に不機嫌だった。
結局自分のやっていたことは病気の子牛を食べるような
もったいないことだったのだ。
『これでは奴と戦い勝利したとしても、満足は出来ないだろう。』
彼が思い浮かべていたのは彼が再戦を約束した男だった。
『まずはこのつまらない呪いをどうにかしなければな。
…まてよ?もしあの男が卵から奴に似た能力を手に入れたとしたら…。』
彼の表情に笑みが浮かぶ、自分の考えを反芻し
うんうんと何度も頷く。
『頼むぞヒースロゥ・クリストフ、
俺がこのゲームを楽しめるかどうかはおまえに懸かってるんだからな!』

58七人の反抗者_1 </b><font color=#FF0000>(/qijB8Gk)</font><b>:2005/04/30(土) 01:03:02 ID:.Td6y2f2
 ギシギシと、木造の廊下を歩く足音が二つ。
 秋せつら、ピロテースの二人である。
 血の匂いを辿って進み、案の定無残な死体を発見した二人は、そこで足音を殺すのをやめた。
 この学校内にいる何者かがやる気になっているなら、足音を聞いて不意打ちを仕掛けてくるだろう。
 逆に、それでも話し合いを望んで来るならば、ゲームに乗っていない可能性が高くなる。
 身の危険は増すが、相手を知る上で手っ取り早いと考えたのだ。

 足音が止まった。
(そこだな)
 二人の視線の先――教室一つ分先の突き当たりに扉が見える。
 その横のプレートには、『図書室』と書かれていた(ピロテースは読めなかったが)。
 そして、扉の向こうには人の気配。それも複数とせつらは読んだ。
 そろりと、示し合わせたかのように左右の壁際に寄る。
 せつらは掌の中の鋼線と懐の銃を確かめ、ピロテースはいつでも精霊を呼べるよう精神を研ぎ澄ませる。
(さて……鬼が出るか蛇が出るか)


 足音が止まった。
(俺達に気付いたな)
 ゼルガディスはちらりと視線を背後に移す。
 クリーオウ、サラは本棚の影でこちらに注目している。サラは衣服の中で何かを握っているようだ。
 空目は堂々と読書したまま。
 そしてクエロは、援護するつもりなのか少し離れた位置で身構えている。
(……さすがに、この局面で妙な真似はしないか)
 来訪者の実力はおろか、敵か味方かすらも分からないのだ。
 ここで事を起こせば、最悪全員を敵に回すことになる。そんなリスクを敢えて負うほど、この女は馬鹿ではあるまい。
 あごをしゃくって目配せし、ゼルガディスは引き戸の脇に寄った。
 クエロも意図を理解し、ゼルガディスとは反対側に寄る。
(さて……呼びかけてみるか)

59七人の反抗者_2 </b><font color=#FF0000>(/qijB8Gk)</font><b>:2005/04/30(土) 01:04:01 ID:.Td6y2f2
「こちらには戦闘の意思はない。今から扉を開ける。ゆっくり入ってきてもらおう」
「僕達には争う気はない。そちらに行ってもいいかな?」

 互いのセリフは同時だった。



「これはまた、大所帯で」
 図書室に入ったせつらの第一声がそれであった。
 正直、男女合わせて五人もの人間がいるとは思っていなかった。
(まあ、これなら騙し討ちの線も薄いかな)
 室内に入るまでは奇襲を警戒していたのだが、杞憂だったようだ。
 一人二人ならまだしも、これだけの人数が集まっていて全員やる気とは思えない。
 牙を隠している者がいるとしても、そうそう滅多なことは出来ないだろう。
(それに、こんな怖い人がいるのではね)
 扉のすぐ脇で待ち構えていた、岩のような肌をした男。
 その左手は、腰の剣に添えられている。
 妙な真似をすれば、一気に斬りかかって来る腹積りだろう。

「戦う気はないと言いながら、随分と物々しいことだ」
 こちらも油断なく目を光らせているクエロを目を細めて見返し、ピロテースがそう漏らす。
 その視線に、クエロは申し訳なさそうに僅かに目を伏せた。
「ごめんなさい。けど、あなた達が信用できるか分からなかったから……出来る限り仲間を危険な目に合わせたくないの」
 ピロテースは、真意を探るようにクエロの表情を伺う。
 実際は、無論これも演技である。
 クエロにしてみれば、まずは集団を纏め上げ、主催者に対抗しうる勢力を作り上げることが必要なのだ。
 こんな序盤で六人もの、しかも総じてゲームに乗っていないと思われる者達と遭遇するなど僥倖と言うしかないが、ゼルガディスには疑われている状況だ。
 早いうちに出来るだけ皆の信頼を勝ち取っておきたかった。

60七人の反抗者_3◆1UKGMaw/Nc:2005/04/30(土) 01:05:22 ID:.Td6y2f2
 パン、パン、と手を叩く音がして、皆がそちらに注目する。
 サラとクリーオウが歩み寄って来るところだった。
「いや、すまないお客人。何分こんな状況だ。自衛策を講じなければならないことを考慮してもらえるとありがたい。
先ほど彼が言った通り、我々は殺し合いに乗らないという点で意見が一致している」
「そうなの。クエロもゼルガディスも本気でやってるわけじゃないから!
……もういいでしょ? 二人とも。こんなんじゃ信じてもらうなんて無理だよ」
 その言葉を皮切りに、クエロは構えを解いた。
「……そうね、クリーオウ。ごめんなさい、ちょっと過敏になりすぎていたみたい」
「いや」
 ピロテースも幾分警戒を緩めたようだ。
 他の者はともかく、どう見てもこのクリーオウという娘が殺人を許容するようには思えない。
 ピロテースの態度が軟化したのはクエロにも分かった。
(意外と役に立つじゃない。クリーオウ)
 これで、ゼルガディスに続いて目の前の女もだ。
 相手の気勢を削ぎ、信用させやすくするという一点において、この娘は非常に使える。
(やっぱり、単純に戦闘能力の高い者を集めればいいというわけでもないわね)

「やれやれ、一応お互いを信用するということでいいのかな?」
「そのようだ。不快な思いをさせたな」
「いいさ。立場が逆なら僕だってそうする」
 せつらとゼルガディスの緊迫した空気も霧消していた。
 クリーオウがほっと息をつく。
 サラがその場を取り仕切るように口を開いた。
「さて、では互いの情報交換といかないかね。そちらも殺し合うつもりがないなら、我々は協力し合えると思うのだが。
よいだろうか、色男殿」
「秋せつらだ。そういうことなら、心の垣根を取り除く素敵アイテムを僕は持っている」
 言ってせんべいの袋を取り出し、
「新宿一のせんべい屋、秋せんべい店のせんべい。皆でこれでも食べながら話し合うとしようか」
 毒入りでないことを示すように、自らパリッと食んで見せた。

61七人の反抗者_4◆1UKGMaw/Nc:2005/04/30(土) 01:06:21 ID:.Td6y2f2
「――なるほど。そうすると、ここに集った者の大半の共通意思は人捜しか」
 サラは皆の話に出てきた内容をまとめ、口を開いた。
 クリーオウとクエロは、オーフェン。
 ゼルガディスは、リナとアメリアという人物をそれぞれ探している。
 そして、今出会ったせつらとピロテースは、アシュラムという人物を捜しているという。
(そういえば、殿下はどうしているだろうか)
 友人であり、同じ師に学んだ兄弟弟子であり、帝国の皇女でもある女性――ダナティアのことを思い浮かべる。
 まず間違いなく、ゲームには乗っていまい。
 それどころか、現状打破のためにすでに自ら行動を開始しているだろうとサラは見ていた。
(そういう方だ。殿下は)
 恐らく自分とダナティアの進む道は同じ。
 ならばいずれ交わるだろう。
 今無理に捜さなくとも、生きていれば必ず出会える。
(むしろ、互いに勢力を形成し、その後で合流すべきだな。それよりも今は――)
 再びサラは目の前の話し合いに注意を向けた。

「じゃあ、皆で手分けしてその全員を捜せば早く見つけられるよね」
「そうね。私もそう思うけど……」
 クエロはクリーオウのその意見に賛成し周りを見渡すが、他の者の反応は今ひとつのようだ。
 情報交換のため同じ席に着いてはいても、皆、完全に互いを信用したわけではない。
 ゼルガディスとピロテースに至っては、そもそも群れる気もなかったのだ。
 自らの探し人の容貌を他人に教えるのは、やはり抵抗があった。
 仕方のないことではあるのだが――
「できれば、僕は協力し合いたいと思うな」
 秋せつらはクリーオウの意見に賛成であった。
「お前……」
 ピロテースが睨みつけてくるが、どうどうとそれを手で制しせつらは続ける。
「アシュラムさんを捜すにしても、ピロテースさんと僕だけでは正直言って困難ですよ。なにせ島の広さが広さだ。
人数が多いほうが格段に発見率が高くなる。そして、それは他の皆さんにも言えることだ」
「確かに……あんたの言うことも分かるがな」
 と、ゼルガディス。
 彼の懸念は、自分と別れたこの中の誰かが心変わりし、リナやアメリアを殺害することだ。
 自分の名前を出されたら、どうしても警戒が緩むだろう。

62七人の反抗者_5◆1UKGMaw/Nc:2005/04/30(土) 01:07:26 ID:.Td6y2f2
「君の懸念も分かるがね。ピロテースさんも、恐らく同じかな?」
「多分。この中の誰かが将軍の命を狙わないとも限らない」
 皆が思っていても言わなかったことを口に出す。
「そんな! だってここにいる皆はこんな殺し合いには乗ってないって……!」
「お前はそうだろうが、本心を隠している者がいないと言い切れるか?
それに、一階にあった死体。あれもこの中の誰かの仕業でないと言い切れるか?」
 激昂するクリーオウにぴしゃりと言い放った。

(まずい流れだ)
 空目恭一は思った。
 先ほどから発言を控えてせんべいをかじっているだけだったが、話を聞いていなかったわけではない。
 クリーオウはこの中で一番素直で人畜無害だと皆に認識されている。
 その上、必死に人を信じ、ここに集った者達を繋ぎ止めようとしているのだ。
 そのクリーオウがここで言い澱んだりしたら、メンバー内に決定的な亀裂が入りかねない。
 基本的にどうなろうとあまり関心はないが、クリーオウがまた落ち込む姿は何故だか見たくなかった。
 だから、空目は先に発言した。
「言い切れはしない。初対面の者ばかりだからな」
 沈黙を守っていた空目の発言に、皆が注目した。
 最悪の事態は免れたことを確認し、空目は先を続ける。
「だが、それでもここは協力すべきだろう。探し人が見つかった後、君等は一体どうするつもりでいるんだ」
 ピロテース、ゼルガディスの顔を順に見ながら問いかける。
「見つかった後、だと」
 ピロテースは訝しげに空目を見返したが、二の句を告げることが出来ず、押し黙った。
 正直に言えば、考えていなかった。
 とにかく、アシュラムの元に馳せ参じる。今まで、それだけを考えて行動していたのだから。
「俺は……この世界からの脱出方法を探す」
 絶句したピロテースに代わって、ゼルガディスが答えた。
 空目はその言葉に頷くと、さらに先を続ける。
「では、それ以後に他の人物、集団と出会ったらどうする」
「敵対するなら戦うだろうな。同じ目的を持っているなら……」
 そこで言い澱む。
 正直な話、他の参加者と馴れ合う気はないのだが、リナと……特にアメリアはそうはいくまい。

63七人の反抗者_6◆1UKGMaw/Nc:2005/04/30(土) 01:08:40 ID:.Td6y2f2
「協力する、だろうな」
「つまり、ここで協力関係を結ぶのと結局変わらない。だが、そうして作られた集団には派閥が出来る」
「派閥……?」
 クリーオウがおうむ返しに聞き返す。
「ああ。知り合いと合流した後では、どうしてもその連中で寄り集まる。意識しなくても、自然とそうなる。
クリーオウ、そのオーフェンと合流した後にクエロやゼルガディスと出会っていたら、君は誰を頼りにする?」
「あ……」
 それは、オーフェンだ。
 一人でどうしようもない状況でクエロと出会い、ゼルガディスと出会い、クリーオウは二人を信頼するに至った。
 だが、先にオーフェンと出会っていたら、その信頼感は生まれただろうか。
「派閥が生まれれば、それは亀裂の元となり得るか。……なるほど、私は空目の言いたいことが読めた気がする」
「私も。本気で脱出や反抗を考えるなら一枚岩になる必要がある。でも集団と集団が寄り集まると派閥が出来る。だから……」
 サラに続いて発言したクエロは、ここで一拍置いた。
「ここにいる七人で一つの集団を作り出す。個々の探し人は、それに肉付けする形で加わってもらう。そういうこと?」
 空目はその言葉に無表情に頷いた。

64七人の反抗者_7◆1UKGMaw/Nc:2005/04/30(土) 01:09:22 ID:.Td6y2f2
「……しかし、裏切りの確率は……」
「変わりませんね。ですが、僕はここにいる人達は信用してもいいと思いますよ」
 なおも反論するピロテースに、せつらは諭すように話しかける。
「合流して終わりではなく、むしろそこからが本番ですしね。そこまで考えれば、彼の言葉通り今協力したほうがいい。
それに、合流できる確率も考えてください。そもそも合流できずに終わるよりはずっといいと思いませんか」
 その言葉に、ピロテースは難しい顔をして考え込んだ。
 今までの話を頭の中で整理して、自分なりの答えを導き出す。そして――
「……いいだろう。ただし、私のその後の行動は将軍次第だ」
 ついにピロテースは折れた。
 クリーオウの顔に笑みが浮かぶ。
 残りの反対派は一人。必然的に、その人物に視線が集中する。
「さて、あとは君か。えぇと……ゼルディガス君」
「せつら君、間違えているぞ。ゼガルディスだ」
「ゼルガディスだ……みなまでいうな」
 根負けしたかのように一つ溜息をつき、手を上げる。
「分かった。俺も賛成する」
 ぱあぁ、という擬音が聞こえそうなほどクリーオウの顔が明るくなった。
「ありがとう、ゼルガディスー!」
「分かったから引っ付くな」
 どこで選択を誤ったのだろうと思いながらクリーオウを引き剥がす。
 と、こちらを見るクエロと目が合った。
(……こいつの同行を許した時、だな)
 この女だけはどうにも信用ならない。
 完全に信用しないという点では全員同じだが、こいつは別格だ。
 この後のチーム分けで、こいつはどうするべきだろうか。
(同行して俺が目を光らせたほうがいいか? それとも……)
 考えにふけるゼルガディスをよそに、会議は進行していく。

「うむ、晴れてめでたく運命共同体結成だ。では次の議題に移ろう」
 幾分空気が軽くなった図書室に、サラの声が朗々と響き渡った。

65七人の反抗者_8◆1UKGMaw/Nc:2005/04/30(土) 01:10:29 ID:.Td6y2f2
【七人の反抗者】
【D−2(学校内3階図書室)/1日目・07:00】

【クリーオウ・エバーラスティン】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:支給品一式
[思考]:みんなと協力して脱出する/オーフェンに会いたい


【空目恭一】
[状態]: 健康
[装備]: 図書室の本(読書中)
[道具]: 支給品一式/原子爆弾と書いてある?(詳細真偽共に不明)
[思考]: 書物を読み続ける/ゲームの仕組みを解明しても良い
[備考]: 刻印の盗聴その他の機能に気づいている。


【クエロ・ラディーン】
[状態]: 健康
[装備]: ナイフ
[道具]: 高位咒式弾、支給品一式
[思考]: 集団を形成して、出来るだけ信頼を得る。
+自分の魔杖剣を探す→後で裏切るかどうか決める(邪魔な人間は殺す)


【ゼルガディス・グレイワーズ】
[状態]:健康、クエロを結構疑っている
[装備]:光の剣
[道具]:支給品一式
[思考]:リナとアメリアを探す


【サラ・バーリン】
[状態]: 健康
[装備]: 理科室製の爆弾と煙幕、メス、鉗子
[道具]: 支給品一式/巨大ロボット?(詳細真偽共に不明)
[思考]: 刻印の解除方法を捜す/まとまった勢力をつくり、ダナティアと合流したい
[備考]: 刻印の盗聴その他の機能に気づいている。刻印はサラ一人では解除不能。

※刻印についての情報を話したかどうかは不明


【秋せつら】
[状態]:健康
[装備]:強臓式拳銃『魔弾の射手』/鋼線(20メートル)
[道具]:デイパック(支給品一式/せんべい詰め合わせ)
[思考]:ピロテースをアシュラムに会わせる/依頼達成後は脱出方法を探す


【ピロテース】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:デイバッグ(支給品一式)
[思考]:アシュラムに会う/邪魔する者は殺す/再会後の行動はアシュラムに依存

66呪いと封印 〜Curse&Seal〜 その1  </b><font color=#FF0000>(wh6UNvl6)</font><b>:2005/04/30(土) 16:25:16 ID:Hw7b583Y
それなりに大きな公民館の中を一人の男が闊歩する。
「まさかと思ったがこんな場所まであるとはな、まったくご苦労なことだ。」
一人つぶやく、このような場所なら誰かがいると思ったが今のところ出会ってはいない。
彼がもしあと少し早く来れば彼の求める強者とアイテムがあったのだが。
『次は学校にでも行ってみるか、人が集まるなら向こうのほうが何かと効率がいいからな。』
などと呑気に今後の行動予定を立てていると、
油断をしたくてもできないという彼の性質が狙撃者の気配を捉える。
瞬時に自分の前に条件反射ともいえるスピードで断裂の壁を展開、
2階のほうから撃たれた銃弾はそこに止まった。
クンと右手を軽く振る、弾は撃った方向にそのまま戻っていった。
だが敵に命中した手ごたえがない、どうやら撃った直後に移動したようだ。
そんなことを考えているうちにもう一度彼の絶対防御が弾を捕らえる。
また撃ち返す、また避けられたようだ。
「おいおいかくれんぼか?
…そんなにガキでもないんだがな!」
能力を発動し周りのものを破壊しながら移動する。
目隠しとなっていた障害物が吹き飛んでいく。
そのとき彼は視界の隅に敵を発見した。
どうやら女のようであり手には少々異形の銃を持っている。
入り口のほうへ走っている、逃走を決めたようだ。
「逃がすかよっ!」
入り口に向かい疾走する。
…が、その足が止まった。
目の前に男が現れた、その男は…ホールで見た主催者の一人だった。
「人の人形で遊ぶのはやめてほしいんだけどな、
手に入れるのに結構苦労したんだよ。」
へらへらと笑みを浮かべながら男は言った。
フォルテッシモも笑みを浮かべた、そして言う。
「ほう…じゃあおまえが代わりに俺と遊んでくれるのか?」
ピリピリとした空気が周囲に流れる。
そして主催者の一人、ディートリッヒが火に油を注ぐようなことを言う。
「無理無理、今の君じゃあ僕には勝てないよ。」
「じゃあ…試してみるか!?」
フォルテッシモは相手を攻撃しようとした、
が、その行動は急な体の痛みによって遮られる。
「くっ!」
感じたことの無い強烈な痛みが彼を襲う。
隙間に引っかかっている命を外す、
もとい引きちぎられているような感覚だった。
上から声が響く。
「ね?」
「貴様…何をした!?」
苦痛に顔を歪ませながらフォルテッシモが尋ねる。
「君の呪印を少し発動させたんだよ。
まともに戦って万が一負けちゃったら洒落になんないからね。」
笑みを崩さずにディートリッヒは言う。
「そうそうそういえば君の働きは少々期待はずれだよ、
せっかく制限を少し緩めてあげたのに。」
「何?」
「君の能力は制限するのが少し難しかったんだよ。
こっちも人手が少なくてさ、
君みたいに積極的にゲームに参加しそうな人に手間をかけるよりも
他のもっと危険な人たちを制限することを優先したのさ。」
「くっ…。」
痛みが酷くなる、体の中をいじり回されているみたいだ。
「さて、そんな君にペナルティだ。
君のその能力、使えるのは1時間に5回までとしよう。
五回使ったら君の能力は一時的に使えなくなるからね。」
罰ゲーム発表のような調子で気軽に言う。
「…貴様は必ず俺の手で始末してやる…首を洗って待っていることだ…。」
痛みの中でフォルテッシモは宣戦布告した。
「呪印が発動してる中でそんな強がりを言えるとは立派だね。
…おや、ケンプファーに見つかってしまったみたいだ。
もう行かなくっちゃ、じゃあね、楽しみにしてるよ最強さん。」
そしてディートリッヒは現れたとき同様唐突に消えた。

67呪いと封印 〜Curse&Seal〜 その2  </b><font color=#FF0000>(wh6UNvl6)</font><b>:2005/04/30(土) 16:28:54 ID:Hw7b583Y
一室の中2人の男が会話をしている、片方は先ほどフォルテッシモと対峙していた少年だ。
「参加者への接触は禁止といった筈だが?」
「君も彼女に会ってきたんだろう?おあいこだよ。」
「挙句の果てには参加者の逃走を手助けしたようだが。」
「そんなつもりはなかったよ。」
「…次また同じようなことがあったときは《あの方》に報告させてもらうぞ。」
「あーそれは怖い、分かった分かったもうしないよ。」
ディートリッヒを戒めた後ケンプファーは部屋から出て行った。
出て行った後ディートリッヒは心の中でつぶやく。
『残念、もうあえないんだね。
これは渡してあげれないみたいだ、この正体に気づいたときの君の顔が見たかったのに。』
ディートリッヒの手には例のアンプルがあった。
その中身は…ただのブドウ糖だった。

フォルテッシモは完全に不機嫌だった。
自分の体に付きまとう妙な感覚。
あのあと一度能力を使ってみたが、そのとき自分の体が重くなるのを感じた。
『これでは奴と満足に戦うこともできない。』
彼が思い浮かべていたのは彼が再戦を約束した男だった。
『このつまらない呪いをどうにかしなければな…
…まてよ?もしあの男が卵から奴に似た能力を手に入れたとしたら…。』
その可能性は充分にある、それ程二人の男の本質はよく似ている。
彼の表情に笑みが浮かぶ、自分の考えを反芻し
うんうんと何度も頷く。
『頼むぞヒースロゥ・クリストフ、
俺がこのゲームを楽しめるかどうかはおまえに懸かってるんだからな!』
敵に頼ろうとして悪い気分ではない自分に苦笑しながら彼は公民館をあとにした。

【D−1/公民館/1日目・10:30】
【パイフウ】
 [状態]健康
 [装備]ウェポン・システム(スコープは付いていない)
 [道具]デイバック一式(茉理の分も回収)
 [思考]主催側の犬になり、殺戮開始/火乃香を捜す

【フォルテッシモ(049)】
【状態】不機嫌だが少し楽しみ/体に若干のダルさ。
【装備】ラジオ
【道具】荷物ワンセット
【思考】ブラブラ歩きながら強者探し。早く強くなれ風の騎士
【行動】いずこへかと歩みさる。

注:ffの能力制限について
・射程、威力は変わらない。
・1時間に5回までしか能力を使えない。
・6回目は能力が発動しない。
・10:30に一度使ったので11:30まで4回しか使えない
(ただし、それまでにもう1回使った場合11:30までは3回、仮に11時に使ったとすると
11:30〜12:00までは4回、12:00からは5回となる。)
・能力を使うたびに若干のダルさが加算されていく。
(1回も使ってなかったら普通、5回使いきると微熱並みのだるさ。)

68最強の堕落 その一  </b><font color=#FF0000>(wh6UNvl6)</font><b>:2005/05/01(日) 18:35:35 ID:Hw7b583Y
それなりに大きなビルの中を一人の男が闊歩する。
「中々洒落た建物だな、こんな場所まであるとは…まったくご苦労なことだ。」
一人つぶやく、このような場所なら誰かがいると思ったが今のところ出会ってはいない。
少し離れた場所のビルには彼の望む敵がいたのだが。
『次はどこに向かうとするか、人がいそうな場所とすると…。』
などと呑気に今後の行動予定を立てていると、
油断をしたくてもできないという彼の性質が狙撃者の気配を捉える。
瞬時に自分の前に条件反射ともいえるスピードで断裂の壁を展開、
2階のほうから撃たれたと思われる銃弾はそこに止まった。
クンと右手を軽く振る、弾は撃った方向にそのまま戻っていった。
だが敵に命中した手ごたえがない、どうやら撃った直後に移動したようだ。
そんなことを考えているうちにもう一度彼の絶対防御が弾を捕らえる。
今度は1階から撃ったらしい。
また撃ち返す、また避けられたようだ。
「おいおいかくれんぼか?
…そんなにガキでもないんだがな!」
能力で細心の注意を払い、途中障害物を排除し見渡しやすくしながら移動する。
そのとき彼は視界の隅に敵を発見した。
どうやら女のようであり手には少々異形の銃を持っている。
入り口のほうへ走っている、逃走を決めたようだ。
「逃がすかよっ!」
入り口に向かい疾走する。
…が、その足が止まった。
目の前に男が現れた、その男は…ホールで見た主催者の一人だった。
「人の人形で遊ぶのはやめてほしいんだけどな、
手に入れるのに結構苦労したんだよ。」
へらへらと笑みを浮かべながら男は言った。
フォルテッシモも笑みを浮かべた、そして言う。
「ほう…じゃあおまえが代わりに俺と遊んでくれるのか?」
ピリピリとした空気が周囲に流れる。
そして主催者の一人、ディートリッヒが火に油を注ぐようなことを言う。
「無理無理、今の君じゃあ僕には勝てないよ。」
「じゃあ…試してみるか!?」
フォルテッシモは相手を攻撃しようとした、
が、その行動は急な体の痛みによって遮られる。
「くっ!」
感じたことの無い強烈な痛みが彼を襲う。
隙間に引っかかっている命を外す、
もとい引きちぎられているような感覚だった。
上から声が響く。
「ね?」
「貴様…何をした!?」
苦痛に顔を歪ませながらフォルテッシモが尋ねる。
「君の呪印を少し発動させたんだよ。
まともに戦って万が一負けちゃったら洒落になんないからね。」
笑みを崩さずにディートリッヒは言う。
「さて、これからの君の動きは楽しみだよ、
君への制限は少し特殊にしておいたからね。」
「何?」
「君の能力は普通に制限するのが少し難しかったからさ。
他の人たちと違って君のはゼロか百にしか制限できなかったんだよ。」
「くっ…。」
痛みが酷くなる、体の中をいじり回されているみたいだ。
「そろそろ効果が現れ始めると思うけど、
ほぼ1時間後、君のその能力は0になる。
最強と呼ばれる君がそこらへんの高校生にまで堕ちたあと、
どんな行動をとるかはなかなか興味深いものだね。」
至極軽い調子で言う。
「…貴様は必ず俺の手で始末してやる…首を洗って待っていることだ…。」
痛みの中でフォルテッシモは宣戦布告した。
「呪印が発動してる中でそんな強がりを言えるとは立派だね。
…おや、ケンプファーに見つかってしまったみたいだ。
もう行かなくっちゃ、じゃあね、楽しみにしてるよ最強さん。」
そしてディートリッヒは現れたとき同様唐突に消えた。

69最強の堕落 その二  </b><font color=#FF0000>(wh6UNvl6)</font><b>:2005/05/01(日) 18:36:32 ID:Hw7b583Y
一室の中2人の男が会話をしている、片方は先ほどフォルテッシモと対峙していた少年だ。
「参加者への接触は禁止といった筈だが?」
「君も彼女に会ってきたんだろう?おあいこだよ。」
「挙句の果てには参加者の逃走を手助けしたようだが。」
「そんなつもりはなかったよ。」
「…次また同じようなことがあったときは《あの方》に報告させてもらうぞ。」
「あーそれは怖い、分かった分かったもうしないよ。」
ディートリッヒを戒めた後ケンプファーは部屋から出て行った。
出て行った後ディートリッヒは心の中でつぶやく。
『残念、もうあえないんだね。
これは渡してあげれないみたいだ、正体に気づいたときの君の顔が見たかったのに。』
ディートリッヒの手には例のアンプルがあった。
その中身は…ただのブドウ糖だった。

フォルテッシモは完全に不機嫌だった。
自分の体に付きまとう妙な感覚。
少しずつだが裂け目がぼやけてきている。
どうやら本当にあと1時間で自分は一般人と同等の存在に戻ってしまうらしい、
そう彼は思っていた。
だが実際のところ、彼の強さの秘訣は能力ではなかった、
彼の恐ろしさは決して油断しないこと、その用心深さが彼を彼たらしめる所以だった。
『これでは奴と満足に戦うこともできない。』
彼が思い浮かべていたのは彼が再戦を約束した男だった。
『このつまらない呪いをどうにかしなければな…
…まてよ?もしあの男が卵から奴に似た能力を手に入れたとしたら…。』
その可能性は充分にある、それ程二人の男の本質はよく似ている。
彼の表情に笑みが浮かぶ、自分の考えを反芻し
うんうんと何度も頷く。
『頼むぞヒースロゥ・クリストフ、
俺がこのゲームを楽しめるかどうかはおまえに懸かってるんだからな。』
敵に頼ろうとして悪い気分ではない自分に苦笑しながら彼はビルをあとにした。

【B−4/ビルのホール/1日目・10:50】

【パイフウ】
 [状態]健康
 [装備]ウェポン・システム(スコープは付いていない)
 [道具]デイバック一式
 [思考]主催側の犬になり、殺戮開始/火乃香を捜す

【フォルテッシモ(049)】
【状態】不機嫌だが少し楽しみ/体に若干のダルさ。
【装備】ラジオ
【道具】荷物ワンセット
【思考】ブラブラ歩きながら強者探し。早く強くなれ風の騎士
【行動】いずこへかと歩みさる。

注:ffの能力制限について
12時間ごとに能力がなくなる、
およそ1時間前から症状が進行、徐々にひび割れがぼやけてくる。

70魔女と魔術師 <前哨戦>:2005/05/02(月) 01:28:57 ID:PO1IA.1s
「さて、とりあえず我々は目的地に到着したわけだが──」
「どうでもいいですけど班長、人に話すときはせめてその人のほうを向いて話すのが礼儀ではない
のですか?」
「いやいや茉衣子くん、我々を監視する者達のためにもこういったパフォーマンスは必要なのだよ」
「そんなパフォーマンス必要ありませんわ」

いつもの尊大な態度で茉衣子の質問に返す宮野。ちなみに宮野の視線の先にある樹木には監視
カメラの埋め込まれた樹があったのだが、今回の話にはまったく関係ないので割愛させていただく。

「しかし班長、今度からあのような方法で向かう場所を決めるのは控えるべきだとは思いませんか?」
「『成功の影に失敗はつきもの』と言うではないか、さしたる問題ではあるまい」
「その方法に問題があったから、こうして申し上げているのですっ!! しかもまだあんな方法で行
く先を決めるつもりですか!?」

宮野に罵声を浴びせた茉衣子は、嘆息した後に目の前にあるものよく観察する。
そこにあったのは、佐山達や悠ニが利用した小屋であった。しかし「小屋」と呼ぶには少々、いや多少
腐敗が進んでいてむしろ「廃屋」と呼ぶべきではないかと思わないでもない。
廃屋の周りも調べてみるが人影はなく、生き物の気配すらまったく感じない。生き物のいない森と
いうのがこうも不気味だとは茉衣子も思わなかったが、逆にそれが安全であるという証明であるなら
仕方がないと自分に言い聞かせる。
仮にあと数分早く着いていれば悠ニと出会っていたのだが、これも今回の話とは関係ないのでどう
でもいいことである。
先ほどからずっと虚空を見つめていた宮野が、やっと口を開いた。

「しかしいつまでもこうしている訳にはいくまい、とりあえず中に入るか」

なんの衒いもなく廃屋の中に進む宮野、そしてそれに付き従うかのように茉衣子が後に続く。口先
では罵倒しながらもこういった場面で付き従うあたり、やはり自分は班長を信頼しているのだと再
認識する。
(まぁ、師と仰ぐべき人間としては最底辺の部類ですけど……)
今更どうしようもない事を考えながら、茉衣子は廃屋の中を見渡す。
廃屋の中には、無数に散乱した錆びた工具と2枚の紙切れ、そして水の入ったペットボトル。よく
見れば、それは参加者全員に支給された物と同じだとすぐにわかった。

「それにしても、何でこんなところに水が?」

誰かが一時的にここへ置いたものだろうか? しかし、辺りに人の気配がまったくなかったことを
考えれば、その可能性は全く無いように思える。
すると、横合いから宮野が一枚の紙を茉衣子に差し出した。内容を見ると、尊大な文面でこの水
を有効に活用しろと書いてあった。

「なんとなくですけど、班長と気が合いそうな方のように思えますわ」
「何を言っておるのだね茉衣子くん、正義と真実をこよなく愛する公明正大がモットーの私が、何が
悲しくて悪役志望の偏った思考を持つ変態生徒会副会長と仲良くせねばならんのだ」

71& </b><font color=#FF0000>(9sC3tEkM)</font><b>:2005/05/02(月) 01:30:25 ID:PO1IA.1s
「妄想の如き班長の戯言はともかく、この水はどうしましょうか?」
「ふむぅ……」

思案すること数秒、宮野はペットボトルを手にしてこう言った。

「まぁ、さほど気にすることでもないだろう。ここは佐山御言なる人物の厚意に甘えるのも悪くはあるまい」

そう言ってから、宮野はペットボトルの蓋を外す。ご丁寧にも左手を腰に添えて、ペットボトルの中の水を
口に含む──

その寸前に宮野は手を止めて、わずかにペットボトルの中の水に視線を向ける。
『どうした? 飲まねぇのか?』
宮野の胸元のエンブリオが話し掛ける。すると突然、宮野は中の水を室内に盛大にぶちまけた。

「なっ、何をなさるのですか突然!? 奇特な行動は控えた方がよろしいとあれだけ──」

間一髪で水を避けた茉衣子が、宮野に罵声を浴びせる。しかし宮野の顔を見て、茉衣子は声を出せなく
なった。
宮野のその表情はまさしく「戦慄」。普段の宮野からすれば、全く予想出来ない表情である。
(へらへらした班長からこのような表情が見られるなんて、正直意外ですわ……)
いつもの宮野からは想像出来ないその表情に、茉衣子は僅かに心を奪われたがすぐに正気に戻った。

「突然どうしたのですか班長? その水に何か異常でもあったのですか?」
「……分からん。 だが何か毒のようなものが入っていたかも知れん」
「毒!?」
「本当に毒だったのかは分からん。だがコレを飲むと、なんとなく危険なような気がしたのだよ」

額に浮かんでいた脂汗を、白衣の袖でぬぐう宮野。

「しかし、一体誰がこのような事を……」
「それも分からん。 佐山御言なる人物の厚意を利用したものか、本人が仕組んだものかさえな」
「……」

沈黙が廃屋の中を漂う。
その中で二人は、これが生死を賭けた椅子取りゲームであることを結果的に再認識することになった。

72魔女と魔術師 <前哨戦>:2005/05/02(月) 01:31:45 ID:PO1IA.1s
【今世紀最大の魔術師(予定)とその弟子】
【Eの5/廃屋の中/1日目・8時23分)】

【宮野秀策】
[状態]:健康
[装備]:自殺志願(マインドレンデル)・エンブリオ
[道具]:通常の初期セット
[思考]:刻印を破る能力者、あるいは素質を持つ者を探し、エンブリオを使用させる。

【光明寺茉衣子】
[状態]:健康
[装備]:ラジオの兵長
[道具]:通常の初期セット
[思考]:刻印を破る能力者、あるいは素質を持つ者を探し、エンブリオを使用させる。


[備考]
廃屋内にあったペットボトル(詠子の血入り)は破棄、「物語」はまだ読んでいません。
廃屋内にあったペットボトルの中に、毒物に類するものが混入されていたと考えています。
ペットボトルに毒物を混入した犯人として、佐山御言が挙げられています。ただし同時に佐山御言の名を
利用した行為であるとも考えています。

<前哨戦>
● 魔女VS魔術師 ○
決め技:宮野の直感(と言うかEMP能力の一端)

73タイトル未定 1/1  </b><font color=#FF0000>(jjRBLcoQ)</font><b>:2005/05/02(月) 11:46:53 ID:pBSSTsig
保胤は暗闇の中を歩いていた。
月も星もない、夜とはことなる闇の中、傍らにはあの化け百足、足元に数多の蟲たち。
彼らに敵意は感じられなかった。ただ親しみを込めたようにキチキチと笑うだけである。
その理由が保胤には分かる。彼らは皆、蟲毒の成れ果てだ。
食われたもの。倒れたもの。生き残り、そして退治されたもの。
死は必然とはいえ怨に飲まれた彼らの死は、いずれにせよ安らかなものではありえない。
今、自分は彼らと同じ道の上にいる。
無論、それがすべてというわけでも無い。あくまでこの殺し合いの一つの側面として蟲毒の術があるというだけだ。
自分には吸精術があった。使う使わないはべつにして、本来の威力ならば四方一里に満たないこの島など半刻のうちに荒野と化す。
今では使ってみないと分からないが、おそらく地図にして1枡ぐらいの範囲の人を気絶させるのがせいぜいだろう。
自分の死と引き換えに。
まったくもって不便な力だと保胤は思う。諍いを止めることも身を守ることもない。
また、セルティの話では、自分は千年も過去の人間らしい。
名簿の名前を見ても、見慣れぬ名前のほうが多い。昨日見た夜空の星も自分の知っているものとは少しばかり異なる。
新しい技術や武器、道具。おそらく一人では満足に自分の状況すら理解できないだろう。
だから彼らは笑うのだ。
自分が彼らと同じ立場に立ち、強力で大味ゆえの制限で切り札を失い、しかもこの殺し合いの場で人に頼らなければならないことを、
親しみと侮蔑をもって笑っているのだ。
保胤は暗闇を歩く、道に凹凸はなく歩きやすい。考えをするにはいい場所だ。
自分の力がどこまで通じるのか。自分がなにをしたいのか。なぜこのような殺し合いの場にいるのか。
諍いのさなかに出くわしたときどう動くのか。先ほどのように襲撃されたときどう身を守るのか。
そしてどうすればこの殺し合いをとめることが出来るのか
かしゃかしゃという足音を聞きながら。保胤は暗闇を歩いていく


【A−1/島津由乃の墓の前/1日目・09:45】
『紙の利用は計画的に』
【慶滋保胤(070)】
 [状態]:不死化(不完全ver)、昏睡状態(特に危険な状態ではない)
 [装備]:ボロボロの着物を包帯のように巻きつけている
 [道具]:デイパック(支給品入り) 、「不死の酒(未完成)」(残りは約半分くらい)、綿毛のタンポポ
 [思考]:自分の行動の指針を考える/静雄の捜索・味方になる者の捜索/ 島津由乃が成仏できるよう願っている


【セルティ(036)】
 [状態]:正常
 [装備]:黒いライダースーツ
 [道具]:デイパック(支給品入り)(ランダムアイテムはまだ不明)、携帯電話
 [思考]:静雄の捜索・味方になる者の捜索/保胤が起きるまでこの場に待機
[チーム備考]:『目指せ建国チーム』の依頼でゼルガディス、アメリア、坂井悠二を捜索。
       定期的にリナ達と連絡を取る

74特殊制限発動 その1  </b><font color=#FF0000>(wh6UNvl6)</font><b>:2005/05/02(月) 21:02:56 ID:Hw7b583Y
それなりに大きなビルの中を一人の男が闊歩する。
「中々洒落た建物だな、こんな場所まであるとは…まったくご苦労なことだ。」
一人つぶやく、このような場所なら誰かがいると思ったが今のところ出会ってはいない。
少し離れた場所のビルには彼の望む敵がいたのだが。
『次はどこに向かうとするか、人がいそうな場所とすると…。』
などと呑気に今後の行動予定を立てていると、
油断をしたくてもできないという彼の性質が狙撃者の気配を捉える。
瞬時に自分の前に条件反射ともいえるスピードで断裂の壁を展開、
2階のほうから撃たれたと思われる、
おそらくショットガンの類であろう銃弾はそこに止まった。
クンと右手を軽く振る、弾は撃った方向にそのまま戻っていった。
だが敵に命中した手ごたえがない、どうやら撃った直後に移動したようだ。
そんなことを考えているうちにもう一度彼の絶対防御が散弾を捕らえる。
今度は1階から撃ったらしい。
また撃ち返す、また避けられたようだ。
「おいおいかくれんぼか?
…そんなにガキでもないんだがな!」
能力で細心の注意を払い、途中障害物を排除し見渡しやすくしながら移動する。
そのとき彼は視界の隅に敵を発見した。
どうやら少年のようであり手からショットガンを投げ捨て
代わりに異型の銃を持っている。
「そこか!」
一気に距離を詰める、相手も逃げながら発砲するが、
全て裂け目に引っかかる。
「無駄だ、そんなものでは…」
言いかけたとき彼にとって驚愕の事態が起こる。
一発の銃弾が彼の頬を掠めたのだ。
『バカな…遅れただと?』
いつもならまさに一瞬、銃弾が放たれたあとでも間に合うはずが
その壁が出来る前にすり抜けてきたのだ。
『…こいつは…』
走るスピードを落とす、そして足を止める。
向こうはそのまま駆けていった、どうやらいったん距離をとったようだ。
二、三度周りに能力を発動する。
…いつも通りだ、周囲のものがバラバラになった。
『どういうことだ…偶然なのか?』
頬の傷をさすりながら呟いた。

75特殊制限発動 その2  </b><font color=#FF0000>(wh6UNvl6)</font><b>:2005/05/02(月) 21:03:56 ID:Hw7b583Y

それから1時間がたった、
2人の狩人に直接的な戦闘はなかった。
だが常に狙われているというのは普通相当のストレスだ。
そしてその差は明確に2人の間に現れている。
コツン、と床に音を響かせた襲撃者がしまったと思ったとき、
下の階にいる男と目が合った。
同時に自分を支える床が崩れる。
「何!?」
浮遊感の後になかなか強烈な痛み、
1階に落下したようだ。
「どうした?
不用意だな…あの放送が気になったのか?」
せせら笑うように言う。
あの放送とは11時の放送のことだ。

「くっ…。」
襲撃者はなおも銃を向けて引き金を引こうとする、
「無駄だというのがわからないのか?」
クンと指を曲げると銃はバラバラになった。
相手に諦めにも似た色が浮かぶ。
「なかなか楽しめた、礼をいわなければな。
代わりといっちゃあなんだが・・・・」
貴様は楽に殺してやろう、と言いかけたとき、
1時間前を遥かに上回る驚きが彼を襲った。
彼の文字通り生命線ともいえる罅割れがぼやけ始めているのだ。
『バカな!こんな事が…』
その思考に被さるようにして頭の中に声が響いてきた。
『やあ、諸君、元気に殺しあっているかな?
ただいまより…』
ここまできたとこで彼は思考を現実に戻された、
襲撃者のナイフが彼を襲っていたからだ。
通常なら間違いなく終わっていたが彼のもう1つの生命線、
《決して油断の出来ない性格》が功をそうし、
かろうじて右手を左手を犠牲にして受け止めることが出来た。
「ぐっ・・・。」
相手はそのまま逃走に移っていた、
走り去る相手に向かって能力を…
『罅割れが…見えないだと?』
使用することは出来なかった。
襲撃者は結局そのまま逃げ出すことができた。

放送が終わってもなおフォルテッシモは思案に暮れていた。
『こんなことは今までなかった。
こいつはおそらく俺の体につけられたあの忌まわしい呪印とやらに
よるものだろう、問題はいつまでこの状態が続くかだ。
放送のときにちょうど能力が消えた、
このことから考えて12時間後には戻るかとは思うが、
もしかしたら外すまですっとこのままかもしれんな。』
彼にとって能力とは自分の性格への付属物だった。
だからこそ彼はこれほど冷静に分析をすることが出来たのだろう。
『どっちにしてもこのままじゃちとマズい事になるな。
これでは奴と満足に戦うこともできない。』
彼が思い浮かべていたのは彼が再戦を約束した男だった。
『このつまらない呪いをどうにかしなければな…
…まてよ?もしあの男が卵から奴に似た能力を手に入れたとしたら…。』
その可能性は充分にある、それ程二人の男の本質はよく似ている。
彼の表情に笑みが浮かぶ、自分の考えを反芻し
うんうんと何度も頷く。
『頼むぞヒースロゥ・クリストフ、
俺がこのゲームを楽しめるかどうかはおまえに懸かってるんだからな。』
敵に頼ろうとして悪い気分ではない自分に苦笑しながら彼はビルをあとにした。
『とりあえずはパートナーを探すとしよう、
やれやれ、ああいう演技はあまり好きじゃないんだがな。』

76特殊制限発動 その3  </b><font color=#FF0000>(wh6UNvl6)</font><b>:2005/05/02(月) 21:07:11 ID:Hw7b583Y
【B−4/ビルのホール/1日目・12:10】

【キノ】
[状態]:通常。
[装備]:カノン(残弾無し)、師匠の形見のパチンコ
[道具]:支給品一式×4
[思考]:最後まで生き残る。 武器の採取。


【フォルテッシモ(049)】
【状態】能力封印、左腕に刺し傷
         (それなりに深手、重いものを持つなどはできない)
【装備】ラジオ、折りたたみナイフ
【道具】荷物ワンセット
【思考】パートナーを探す。早く強くなれ風の騎士
【行動】いずこへかと歩みさる。

注:ffの能力制限について
12時間ごとに能力がなくなる、
およそ1時間前に若干の兆候が見られる。

注2:キノ及びフォルテッシモは12時の放送を全部聞いてません。
(ただしキノは制限エリアぐらいからなら聞いている可能性あり)

77凶姫乱舞 1#松:2005/05/02(月) 21:26:42 ID:D7qZuQnc
ヘイズが半身のまま指先を前に突き出す特異な姿勢へ移行し、
接近戦の覚悟を決めたその時。
ヘイズと同じく森まで押し戻されたコミクロンは一つの決断をした。

「ヴァーミリオン、俺はエドゲイン君を探す。そいつの相手は任せた!」
叫んで森の奥へ走り去る。
だが逃走ではない。
なぜなら自分とヴァーミリオンは魔術と論理回路の同時発動が出来ず、
援護攻撃できる武器が無い現状では近接戦は不利だからだ。
ギギナと戦い腕を斬られた事が頭を過ぎる。
ならば相手の行動予測が可能がヴァーミリオンが相手を足止めしている間に
自分が武器を探して同時攻撃を仕掛けた方が効率が良い。

「エドゲイン君は確実にここら辺にあるはずだ」
ギギナは剣を持っていた。
両手持ちのエドゲイン君を持っていくとは思えないし、
あの男の戦闘スタイルからして、わざわざ飛び道具を使用するとも思えなかった。


森の奥に向かって疾走を始めたコミクロンを確認し、
ヘイズはドレスの少女へ向き直った。
(何でバンダナが逃げてコイツがここに残ってるんだよ…!)
最初は囮かとも思ったが、バンダナが戻ってくる気配は無い。
「ま、向こうから見りゃこっちも同じようなもんか」
肩を落としつつ接近戦に備える。
<I−ブレインの動作効率を85%から95%に再設定。未来予測開始>
「そんじゃまあ、威嚇攻撃といきますか」
<予測演算成功。『破砕の領域』展開準備完了>
こちらに向かって突撃してくる少女の剣を狙って指を鳴らす。
パチンッ
論理回路が形成され、少女が剣を落と――さなかった。
「なんだと!情報解体が効かねえのかよ!まさか…騎士剣か!」

78名無しさん:2005/05/02(月) 21:27:35 ID:D7qZuQnc
うわトリップミスか?

79凶姫乱舞 2 </b><font color=#FF0000>(h8kojB1Q)</font><b>:2005/05/02(月) 21:29:22 ID:D7qZuQnc
現時点で自分が捜索し、しかし自分と最も相性の悪い武器――騎士剣
情報的にも物理的にも強固なこの剣は、
能力低下中の『破砕の領域』では傷一つ付ける事はできないだろう。
「やばい…銃さえあれば…」
後悔先に立たず、もう少女は5メートル程手前まで接近してきている。
砂袋を探すためデイパックに手を入れたヘイズは、ある物に気づいた。
「こんな物でも、一回くらいなら…」
意を決してヘイズは少女の行動を予測し始めた。

3メートル手前で少女は更に加速。
寸分違わずヘイズの頚動脈を狙って超高速の一撃を放つ。
常人なら反応すらできない速度の斬撃、しかしそれは目標を大きく外れ、虚しく空を切る。
ヘイズは足を軸にして背中から回転し少女の側面へ回り込む。
対して少女は更に素早い回転でヘイズを正面に捕らえ払い切りを叩き込む。
それすら予測しているヘイズは既に射程の一歩手前に後退している。
それは戦闘を超越していた。
近づき、離れて、回転し、しかし決してぶつからず。
それは舞踏。
赤いふたりは森で華麗に舞っていた。

だが舞踏は唐突に終わりを告げる。
赤い男、ヘイズは消臭剤を投擲する。
赤い少女は右手の剣でそれを打ち落とした。
ヘイズは更に砂袋を投擲。
反射的に少女はそれを左手の剣で打ち落とす。
袋が破け、砂が少女の視界を潰す。
さらには両手で防御に回ったために斬撃の嵐が一瞬途切れる。
<予測演算成功。『破砕の領域』展開準備完了>
「悪いな、我慢してくれ。アンタは隙が無さ過ぎるんだ」
パチンッ
ヘイズが狙ったのは騎士剣ではなく右手首だった。
血管と共に腱が切れ、出血と共に剣が落ちる。
少女の脇に飛び込み剣を掴む。
「騎士剣、ゲットだぜ」

80凶姫乱舞 3 </b><font color=#FF0000>(h8kojB1Q)</font><b>:2005/05/02(月) 21:30:40 ID:D7qZuQnc
しかしそれもつかの間だった。
少女はドレスを切って止血をすると、先ほどの倍の早さで斬撃を繰り出す。
舞踏の再開だった。
しかも今度は二倍速だ。
予測可能で今度は防御可能とはいえこちらに少女を殺す気が無いので、
どうしても押され続けることになる。
剣戟音が響く中ヘイズはぼやく。
「今度は流石にヤバイな…コミクロン、マジで急げよ」
白衣のおさげからの答えは返ってくるはずも無く、目の前の少女は常に無言のままだった。


突然、少女が木の枝を切り飛ばしてきた。
先ほどの自分の攻撃同様、次が来るかとヘイズは構える。
しかし、少女が取った行動はヘイズを驚愕させた。
「斬るのは木その物かよ…」
細木だったので少女の剣速と騎士剣の硬度なら不可能ではない。
破砕音と共にヘイズめがけて倒れてくる。
「発想のスケールで…負けただと、くそっ」
ヘイズは横っ飛びで木を回避するがそこには少女が立っている。
死神に見えるのは気のせいではあるまい。

死神はその左手で必死の一撃を繰り出した。
ヘイズに高度演算能力が無ければそれは確かに必死だった。
しかしヘイズは軌道を予測し、僅かに体を逸らした。
結果、剣は心臓を逸れ、しかしヘイズの左肩に突き刺さった。
「ぐああああああぁぁぁぁぁ!!」
絶叫が森にこだました。

81凶姫乱舞 4 </b><font color=#FF0000>(h8kojB1Q)</font><b>:2005/05/02(月) 21:31:50 ID:D7qZuQnc
【F-5/北東境界付近/1日目・11:06】

【シャーネ・ラフォレット】
[状態]:右手首負傷、疲労
[装備]:騎士剣・陽
[道具]:デイパック(支給品一式) 
[思考]:1、赤髪・三つ編みを攻撃 2、クレアを捜す

【凸凹魔術師】
【ヴァーミリオン・CD・ヘイズ】
[状態]:左肩負傷、疲労
[装備]:騎士剣・陰
[道具]:支給品一式 ・有機コード
[思考]:1、オレ、死にそう。火乃香らと交渉に失敗? 2、刻印解除構成式の完成。
[備考]:刻印の性能に気付いています。


【コミクロン】
[状態]:軽傷(傷自体は塞いだが、右腕が動かない)
[装備]:未完成の刻印解除構成式(頭の中)
[道具]:無し
[思考]:1、エドゲイン君回収。戦闘が終わったから相手との平和交渉、情報交換 
    2、刻印解除構成式の完成。3、クレア、いーちゃん、しずくを探す。
[備考]:服が赤く染まっています。


【備考】シャーネ大暴れ中。火乃香が接近中。両チームとも海上遊園地へ向かう。

82存在しえない守るべき者 </b><font color=#FF0000>(rmar5YFk)</font><b>:2005/05/03(火) 00:56:36 ID:reSibVbM
「本気…? もちろんです…。だって、ミラを、たす、けなきゃ…」
撃たれた腿を押さえながらもきっぱりとそう言い放つ青年に、古泉はとりあえず肩を貸した。
何とか立ち上がる彼に、古泉は再び声を投げかける。
「ミラさん…ですか。その人を探しているんですか?」
向き合った相手がこくりと頷く。その顔に先ほどまでの修羅の如き恐ろしい表情はない。
「れが…俺が、守らなきゃ、いけ…ないんです、…ミラはまだ…ちい、さいから」
青年は、脚の痛みも気にせずに必死に訴える。
吐く呼吸が少し荒くなっているのは、銃創のせいというよりも『ミラ』を思い出したことによる焦りや興奮からだろう。
「なるほど…」
古泉一樹は目の前の青年にそう言うと、不審気に思うのを顔に出さず、持っていた名簿を片手で取り出した。
ざっと一瞥すると、彼の記憶は正しくその紙に『ミラ』という名は載っていなかった。
顔に貼り付けた笑みを絶やさないまま、古泉は目まぐるしく考える。
この人がミラという少女を探そうとしているのは間違いないようですね。
もしも楽に殺人を行うために人探しの振りをしているのだとしたら、さすがにどんなに馬鹿な人でも名簿にある名前を口にするでしょう。
そもそも、この状況下ではだまし討ちをする必要もないはずですし…。
武器も防具も何一つ無い己の有様を思い、古泉は心中苦笑した。
いくら傷を負っているとはいえ、あちらはピストルを手にしているんですから。あれでずどんと一発やればいいだけですからね。
この近距離なら、特に狙わずとも身体のどこかに当てることくらいは難しくないでしょうし。
それをしないということは、やはり彼は本心からその人を見つけようとしていると考えて間違いはないようです。
しかし、それならばなぜ彼はこの場にいない者を探そうとするのでしょうか…?
古泉は青年の思惑を推測する。とりあえず思いつくのは二つのケース。
一つは、彼が何らかの理由でまだ名簿を見ていない場合。
もう一つは、名簿の既未読に関わらず、彼が『ミラ』をこの島にいると勝手に思い込んでいる場合。
一体、どちらなんでしょう? 前者ならともかく、後者の場合はちょっと厄介になりそうですね。

83存在しえない守るべき者 </b><font color=#FF0000>(rmar5YFk)</font><b>:2005/05/03(火) 00:57:18 ID:reSibVbM
先刻銃を振り回していたときの恐ろしいまでの形相を思うに、彼は思い込みが激しい―もっと言えばごく近視眼的で視野の狭い人間のようです。
それに加えて拳銃の所持、見たところ戦闘経験も十分にありそうなことを加味すると、下手に刺激するのはまずいかもしれません。
主催者打倒を掲げていることを思えば、決して味方になりえない訳ではないでしょうが…。
古泉は、とりあえず『ミラ』の名が名簿に無いことをこの場で指摘することは止めることにした。
…それを指摘して向こうの逆鱗にでも触れることがあれば、その瞬間に僕の命はお終いですからね。
「とにかく、一旦どこかの部屋に行きましょう。傷の手当てをした方がいいですから」
相手を肩に抱いたままずるずるとホールの脇に延びる廊下を歩く。
突き当たった端に物置のような小さな部屋を見つけ、人の気配がないのを確認してそこに入った。
室内は様々なガラクタがうず高く積まれ、お情け程度に敷かれた灰色の絨毯には一面にうっすらと埃が積もっている。
かび臭いそこに眉をひそめながら、運んできた相手を床に座らせると、古泉は室内をぐるりと見渡した。
窓に近づき、そこに掛けられた色褪せた薄手のカーテンを力任せに引き裂く。細長い短冊状になったそれを、青年に手渡した。
「もっと使えるものがあるかと思ったんですが、ちょっと見つかりませんね。…とりあえずこれで止血してください」
青年は渡された布きれを手に取ると、痛みに顔をしかめながらペットボトルに入った水を傷口にばしゃばしゃと掛けた。
流れ出る血が、汚れた絨毯に染み込んでいく。青年は撃たれた腿に器用に布を巻きつけると、端をぎゅっときつく縛り上げた。
「く、い、痛…っ」
苦悶の表情で歯を噛み締める彼の、その手の中にある拳銃をちらりと見て古泉が言った。
「少し眠った方がいいですよ」
「そんな、で、できません。だってミラが…」
心底心配そうに言うその言葉に、古泉はにこりとして答えた。
「大丈夫ですよ。僕がちゃんと見ていますから。もし彼女を見つけたら、すぐに貴方を起こして知らせます」
「でも…」
言い淀む相手に、古泉は駄目押しとばかりに言葉を重ねる。
ここでこの青年を眠らせられれば、あの拳銃を自分のものにすることが出来るかもしれない。
わざわざ自分から彼を殺してまで銃を奪うつもりはない。そんなリスクの高い賭けをしても、得られる物は少ない。
だが、眠ってしまった人間の所持品を持っていくくらいなら危険も罪悪感も少ない。
上手くすれば、あるかどうかも分からない包丁などを探すより、より高確率で戦闘能力の高い武器を手に入れることが出来る。

84存在しえない守るべき者 </b><font color=#FF0000>(rmar5YFk)</font><b>:2005/05/03(火) 00:58:27 ID:reSibVbM
「その怪我でミラさんを守れるんですか? 貴方には休息が必要ですよ」
「でも…」
眼前の彼が放った単語は二度とも同じものだった。だが、それを口にした時の表情は一度目と二度目で真反対に豹変していた。
刹那、青年は右手に握ったままだった拳銃を無機的に古泉に向け、引き金に掛けた指に力を込めた。
―――――タンッ!
鋭い銃声が狭い室内に響く。一瞬の後、古泉は燃えるような激痛に襲われた。
見れば、左肩にぽっかりと開いた穴からどくどくと血が溢れ出ている。
「なっ…」
驚いたような顔で相手を見つめる古泉には気にもとめずに、青年は急ぎ足で部屋から出て行った。
無感動な、それでも何かを決意したような声で台詞の続きを呟きながら。
「でも、それでも俺は…ミラを守らなきゃいけないんです…」

【G-4/城の中/1日目・07:30】

【アーヴィング・ナイトウォーカー】
[状態]:情緒不安定/修羅モード/腿に銃創
[装備]:狙撃銃"鉄鋼小丸"(出典@終わりのクロニクル)
[道具]:デイバッグ(支給品一式)
[思考]:主催者を殺し、ミラを助ける(思い込み)


【古泉一樹】
[状態]:左肩に銃創
[装備]:なし
[道具]:デイパック(支給品一式) ペットボトルの水は溢れきってます
[思考]:長門有希を探す/怪我の手当て

85Black shuck </b><font color=#FF0000>(5jmZAtv6)</font><b>:2005/05/03(火) 05:56:45 ID:QYaLvLSA
「俺から離れるな!」
かなめの手を引き街を駆ける宗介、その背後から迫るのは少年の姿をした古の魔女、カーラだ。
命令違反と知りながらも、様子を伺いに戻った宗介…そこで彼が見たもの
それは己の体を刺し貫かれ絶命するオドーの姿だった。
わすかとはいえ行動を共にした者の死を目の当たりにしたのだ、いかに歴戦の戦士といえど動揺を隠すことはできない。
それゆえ彼はほんの一瞬だったが気配を隠すのを怠ってしまったのだ。

(殺すところを見られたのは厄介ね)
一方、予定外の戦闘を強いられたことに、わずかに困惑しているカーラ、
だがこうなった以上は逃がすわけにはいかない。

宗介の放った弾丸を軽くステップして避けるカーラ、
あの程度の口径ならば鱗を貫通することはないだろうが…それでも痛いのは嫌だった。
避けながらもスピードを速めるカーラ、そろそろ止めを入れねば、
しかし…必殺の呪文を唱えようとしたところで、カーラは突如違和感を感じる。

「ぐっ…」
頭を抱えその場に立ちすくむカーラ。
自分の支配力が弱くなっている…このままでは中の少年が目覚めてしまう。
自分は所詮は寄生体だ、一度本体が目覚めてしまえば、もうイニシアチブを握ることは出来なくなってしまう。
「連続の戦闘は無理なようね…今は見逃してあげるわ」
今ここで無駄な力を消費して、本来の標的を仕留めそこなうわけにはいかない。
カーラは舌打ちすると最後に数発の火球を周辺にばら撒いて、今度こそ商店街を後にするのだった。

カーラの火球を受けて老朽化した木造アパートが根元から崩れる、どういう仕掛けか炎は延焼することなく
しばらくすると消えていったが…。
これが魔法というやつだろうか?いまさらながらその威力に恐れを禁じえない宗介。
ともかく逃げ切ったようだ、まだ油断は禁物だが。

しかし…また新たな問題がここで発生していた。
「しずくがいないの!」
「手を引いていたんじゃなかったのか!?」
明らかに取り乱し、落ち着きなく周辺を見回すかなめ、
「お願い…宗介」
かなめの言わんとしていることはわかっていた、だが…。
「ダメだ…今は戻れない、わかるだろう?」
「そんな!」
宗介の言葉に食い下がるかなめ、彼女とて状況は理解している、だがそれでも
彼女は思っているのだ、わずかでも可能性がある限り、守れる命は守りたいと。
そんな彼女だからこそ守ってやらねばならない、守りたいと宗介は思う。

86Black shuck </b><font color=#FF0000>(5jmZAtv6)</font><b>:2005/05/03(火) 05:58:38 ID:QYaLvLSA
「どうしてもというのなら、俺が1人で探しにいく」
宗介の言葉に首を振るかなめ。
「あたしも一緒に行くわ」
「ダメだ…許可できない、危険すぎる」
それでも不満げなかなめの肩を抱え、その顔を真摯に見つめる宗介。
その顔はもう歴戦の戦士のそれだ。
「俺が今まで帰ってこなかったことがあったか、俺を信じてくれ…かならず彼女を見つけ出してくる」
しかしそれでも宗介の言葉に頷かないかなめ。
「違う!そんなんじゃない!あたしが言いたいのは!」
自分でも予測できなかった言葉、そこまで言って…それから後の言葉は出てこなかった。


「かなめさん…宗介さん…どこですか?」
逃走中、はぐれてしまったしずく、しかもセンサーがまた上手く働かなくなっている、
どうやら場所の状況によって範囲が著しく制限されてしまう場合があるようだ。
仕方なく視覚センサーに頼ることにしたしずく、
かんかんと音を立てて非常階段からビルの屋上へと上がっていく。
屋上に上がったしずくが最初にみた物、それは…。

「祥子さん?」
オドーらから何とか開放され、ようやく安心したのだろう。
屋上の給水塔の影で寝息を立てる祥子がいた。

「オドーさんたちはどうなさったのですか?」
「オドーさんは…」
逃げながら宗介から話は聞いたが、オドーとのいきさつを知っているしずくとしては、
彼女に真相を伝えるのは憚られた。
だが…しずくは時計を見る、あとわずかで放送の時間だ、後で告げられるのなら、
今、自分の口で伝えた方がいい。
「死にました…私たちを守って」

「それで今宗介さんたちとはぐれてしまっていて…」
祥子はもうしずくの言葉を聴いてはいなかった、ようやく頭の中から消えかけていた死の恐怖が
祥子の中で蘇り始める。
ふらふらと立ち上がる祥子、しずくは屋上の手すりから乗り出して宗介らの姿を探している。
(祐巳のため…祐巳の…)
自分を見逃してくれたオドーの姿が一瞬浮かぶがすぐに消えた、そう…もうあの人はいない。
消えてしまった…、だから…もう。
剣をそっと抜いてしずくの背後に立つ祥子。
「祥子さ…」
振り向いたしずくの視界が真っ赤に染まった。

87Black shuck </b><font color=#FF0000>(5jmZAtv6)</font><b>:2005/05/03(火) 05:59:30 ID:QYaLvLSA
「ど…して…どど…して」
言語機能がやられたのかうまく話すことができない、運動センサーや思考回路にも致命的異常ありだ。
ぐらりぐらりとゆらめくしずく、その頭は銀の刃に貫かれてしまっている。
「いや…いやよ…こないで…」
頭から刃を生やして、ゆらゆらとこちらに近づくしずくの姿をみて半ばパニック状態の祥子。
その手に転がっていた鉄パイプが触れた。
そして目の前にはしずくの姿。
「うっ、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!」

めちゃくちゃにパイプを振り回す祥子、そして避けることも叶わず殴られるがままのしずく、
鉄パイプがみるみる間にぐにゃぐにゃに変形し、そしてしずくの身体も次々に壊されていく。
それでも…訴えかけるように祥子を見つめるしずくの瞳。
それを見た瞬間、渾身の力で思い切りしずくを突き飛ばす祥子、
よろよろと無抵抗のままふらつくしずく、そしてその身体は大して高くない屋上のフェンスから
ぐらりとすべり落ちた…屋上から地上までの距離は、彼女が翼を広げるには低すぎ、
そしてその身体を破壊するには十分な高さだった。

ぐしゃり…そしてそれから3秒後、しずくはその機能を停止した。

そしてそれから数分後
「宗介…あれ…」
震える声でかなめが指を指す、そこには何者かが倒れ伏していた。
確認に駆け寄る宗介、少し進んでその肩がうなだれる…ということはやはり。

「ダメだ見るな!」
宗介の制止の声は僅かに遅かった。そしてかなめは見てしまった…。
しずくの頭に刺さっていたもの…それは、祥子が持っていた銀の剣だった。

「どうして…どうしてよ…祥子さんこんなのって酷い、酷すぎるよ」
しずくの残骸の前でへたりこむかなめ、瞳には涙が光っている。
その涙はしずくの死を悼む涙というよりは祥子の裏切りに対する悲しみの方が多いように、
宗介は感じていた。
(あの女…)
自分を裏切っただけならまだ仕方ないと思える、ここはそういう場所だ。
しかし…かなめを裏切ったのだけは許すわけにはいかない。
そんな宗介を上目遣いに見上げるかなめ。
「祥子さんを…どうするの?」
無言の宗介、それが回答だった。
「ダメよ…そんなの嫌よ…」
かなめの瞳からまた涙が零れ出す。

「お願い!宗介はあんな風にならないで!…お願いだから、あそこで殺しておけばよかったとか
そんな風には思わないで!」
「それでも俺は…」
苦渋の表情で拳を握る宗介、その時、時計の針が12時を指した。

88Black shuck </b><font color=#FF0000>(5jmZAtv6)</font><b>:2005/05/03(火) 06:03:06 ID:QYaLvLSA
【C-3/商店街/一日目、12:00】
【しずく:死亡】残り84人

【相良宗介】
【状態】健康
【装備】ソーコムピストル、スローイングナイフ、コンバットナイフ
【道具】荷物一式、弾薬
【思考】大佐と合流しなければ。

【千鳥かなめ】
【状態】健康、精神面に少し傷
【装備】鉄パイプのようなもの(バイトでウィザード/団員の特殊装備)
【道具】荷物一式、食料の材料。
【思考】早くテッサと合流しなきゃ。

【小笠原祥子】
【状態】健康
【装備】なし(ただし、しずくの荷物をルートしてます)
【道具】荷物一式(毒薬入り。)
【思考】祐巳助けてあげるから。

89Black Shuck </b><font color=#FF0000>(5jmZAtv6)</font><b>:2005/05/03(火) 15:45:56 ID:75yAlH6M
「痛い…」
アーヴィング・ナイトウォーカー…略してアーヴィは商店街の薬屋の中で
傷口を抱え蹲る。
薬屋ならなにか薬があると思っていたが…陳列棚はほとんど空だった。
かろうじて残っていた栄養ドリンクを飲み干し、得体の知れない塗り薬を傷口に塗りつけ、
一息つくアーヴィ。
もう何が何だかわからない、そもそも何でこんなところでこんなことをしなきゃならない。
ミラを探さなきゃいけないし、母さんの食事も作ってあげなきゃいけない。
あれでも何か変だ、母さんはもう…どうだっけ、よくわからない。
この足のせいかもしれない…痛い痛い痛い…。

そこに遠くから轟音が聞こえてきた。
何だろう?何だろう?…ふらりと店を出るアーヴィ…そこには2人の少女を連れた
少年の姿があった、少年は剣呑な視線でアーヴィを眺める。
その間、わずか一瞬…だが、
その瞳と瞳が重なった瞬間、アーヴィは銃を構えていた。

「俺から離れるな!」
かなめの手を引き街を駆ける宗介、その背後から迫るアーヴィ。
戦闘よりも逃走を優先しているので、けん制程度のものだが、それでも応戦しつつ舌打ちを禁じえない宗介、
何故だ何故こちらの攻撃は当たらないのだ、しかも相手は怪我をしているにもかかわらず。

一方のアーヴィはなにやらわけのわからない言葉を呟きながら、ふらりふらりと相変わらず無造作に
歩いているだけだ、そして時々ばかでかい銃を構えて射撃する。
その一撃が壊れかけの木造アパートに命中し、彼らの間を分かつように崩壊していく。
「千鳥っ!」
飛び交う瓦礫の中で手を伸ばす宗介、かなめもまた宗介へと手を伸ばす。
しかし…その時かなめの手が汗ですべり、もう片方の手で握っていたしずくの手がするりと抜けてしまう。
そして彼らの間を分かつように瓦礫の雨が降り注いだ。

90Black Shuck </b><font color=#FF0000>(5jmZAtv6)</font><b>:2005/05/03(火) 15:47:28 ID:75yAlH6M
道をふさぐ瓦礫を前にしてようやく一息つく宗介、どうやら逃げ切ったようだ、まだ油断は禁物だが。

しかし…また新たな問題がここで発生していた。
「しずくがあの向こうに!」
「手を引いていたんじゃなかったのか!?」
明らかに取り乱し、落ち着きなく周辺を見回すかなめ、
「お願い…宗介」
かなめの言わんとしていることはわかっていた、だが…。
「ダメだ…今は戻れない、わかるだろう?」
「そんな!」
宗介の言葉に食い下がるかなめ、彼女とて状況は理解している、だがそれでも
彼女は思っているのだ、わずかでも可能性がある限り、守れる命は守りたいと。
そんな彼女だからこそ守ってやらねばならない、守りたいと宗介は思う。

「どうしてもというのなら、俺が1人で探しにいく」
宗介の言葉に首を振るかなめ。
「あたしも一緒に行く」
「ダメだ…許可できない、危険すぎる」
それでも不満げなかなめの肩を抱え、その顔を真摯に見つめる宗介。
その顔はもう歴戦の戦士のそれだ。
「俺が今まで帰ってこなかったことがあったか、俺を信じてくれ…かならず彼女を見つけ出してくる」
しかしそれでも宗介の言葉に頷かないかなめ。
「違う!そんなんじゃない!あたしが言いたいのは!」
自分でも予測できなかった言葉、そこまで言って…それから後の言葉は出てこなかった。


「かなめさん…宗介さん…どこですか?」
逃走中、はぐれてしまったしずく、しかもセンサーがまた上手く働かなくなっている、
どうやら場所の状況によって範囲が著しく制限されてしまう場合があるようだ。
仕方なく視覚センサーに頼ることにしたしずく、
かんかんと音を立てて非常階段からビルの屋上へと上がっていく。
屋上に上がったしずくが最初にみた物、それは…。

91Black Shuck </b><font color=#FF0000>(5jmZAtv6)</font><b>:2005/05/03(火) 15:48:25 ID:75yAlH6M
「祥子さん?」
オドーらから何とか開放され、ようやく安心したのだろう。
屋上の給水塔の影で寝息を立てる祥子がいた。

祥子さん…祥子さん。
揺り動かされ目を覚ます祥子、どこで見つけてきたのだろうか?
掛け布団代わりに使っていたコートを羽織直して立ち上がる。
その片方の袖口が括られている、聞くところによると転んで怪我をしたのでそうしているのだという。

「ところでしずくさん?オドーさんたちはどうなさったのですか?」
「オドーさんは…」
逃げながら宗介から話は聞いたが、オドーとのいきさつを知っているしずくとしては、
彼女に真相を伝えるのは憚られた。
だが…しずくは時計を見る、あとわずかで放送の時間だ、後で告げられるのなら、
今、自分の口で伝えた方がいい。
「死にました…私たちを守って」

「それで今宗介さんたちとはぐれてしまっていて…」
祥子はもうしずくの言葉を聴いてはいなかった、ようやく頭の中から消えかけていた死の恐怖が
祥子の中で蘇り始める。
ふらふらと立ち上がる祥子、しずくは屋上の手すりから乗り出して宗介らの姿を探している。
(祐巳のため…祐巳の…)
自分を見逃してくれたオドーの姿が一瞬浮かぶがすぐに消えた、そう…もうあの人はいない。
消えてしまった…、だから…もう。
コートの中の短剣をそっと抜いてゆっくりとしずくの背後に立つ祥子。
「祥子さ…」
振り向いたしずくの視界が赤くスパークした。

「ど…して…どど…して」
言語機能がやられたのかうまく話すことができない、運動センサーや思考回路にも致命的異常ありだ。
ぐらりぐらりとゆらめくしずく、その頭は銀の刃に貫かれてしまっている。
「いや…いやよ…こないで…」
頭から刃を生やして、ゆらゆらとこちらに近づくしずくの姿をみて半ばパニック状態の祥子。
その手に転がっていた鉄パイプが触れた。
そして目の前にはしずくの姿。
「うっ、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!」

92Black Shuck </b><font color=#FF0000>(5jmZAtv6)</font><b>:2005/05/03(火) 15:49:12 ID:75yAlH6M
めちゃくちゃにパイプを振り回す祥子、そして避けることも叶わず殴られるがままのしずく、
鉄パイプがみるみる間にぐにゃぐにゃに変形し、そしてしずくの身体も次々に壊されていく。
それでも…訴えかけるように祥子を見つめるしずくの瞳。
それを見た瞬間、渾身の力で思い切りしずくを突き飛ばす祥子、
よろよろとやはり無抵抗のままふらつくしずく、奇声を上げて逃げ出す祥子。

そしてそれをまた一方のビルの屋上から眺める影があった。
「ミラ…」
遠めだからよくわからないけど、あのコートの着方はミラしかいないよね。
少し髪型が変わっているけど、イメチェンしたのかな?
まぁいいや、今助けてあげるよ。
アーヴィは鉄鋼小丸を構え、その引き金を引いた。

「まて…まっ…て」
私は大丈夫だから、こんなくらいじゃ壊れないから…だから祥子さん逃げないで、
怖いのはみんな同じだから、だからまたお話しましょう。
そう言いたいのに言葉が通じない。
でも、誤解を解かないと…壊れかけのセンサーを総動員しながら一歩一歩踏み出していくしずく。
しかしそこに対戦車ライフルの無慈悲な一撃がしずくの身体を貫いていた。

まず着弾の衝撃で、首がいずこかへと吹き飛ぶ。
そしてその身体は大して高くない屋上のフェンスから、己の臓物たる機械を撒き散らしながら、
ぐらりとすべり落ちた。
ぐしゃり…そしてそれから3秒後、しずくはその機能を停止した。

そしてそれから数分後
「宗介…あれ…」
震える声でかなめが指を指す、そこには何かが転がっていた。
確認に駆け寄る宗介、少し進んでその肩がうなだれる…ということはやはり。

「ダメだ見るな!」
宗介の制止の声は僅かに遅かった。そしてかなめは見てしまった…。
しずくの生首に刺さっていたもの…それは、祥子が持っていた銀の短剣だった。

93Black Shuck </b><font color=#FF0000>(5jmZAtv6)</font><b>:2005/05/03(火) 15:49:55 ID:75yAlH6M
「どうして…どうして…祥子さんこんなのって酷い、酷すぎるよ」
しずくの残骸の前でへたりこむかなめ、瞳には涙が光っている。
その涙はしずくの死を悼む涙というよりは祥子の裏切りに対する悲しみの方が多いように、
宗介は感じていた。
(あの女…)
自分を裏切っただけならまだ仕方ないと思える、ここはそういう場所だ。
しかし…かなめを裏切ったのだけは許すわけにはいかない。
そんな宗介を上目遣いに見上げるかなめ。
「祥子さんを…どうするのよ?まさか!」
無言の宗介、それが回答だった。
「ダメ…そんなの嫌…絶対ダメ!!」
かなめの瞳からまた涙が零れ出す。

「お願い!宗介はあんな風にならないで!…お願いだから、あそこで殺しておけばよかったとか
そんな風には思わないでよ!」
「それでも俺は…」
苦渋の表情で拳を握る宗介、
「もしどうしてもいうのなら…」
宗介の行く手を阻むように両手を広げ立ちふさがるかなめ。
「あたしを殺してから行って!薄汚い人殺しになんか守ってもらいたくなんかないわ!!」
その姿を見て、宗介はうなだれるように両手の力を抜く。
その時、時計の針が12時を指した。

94Black Shuck </b><font color=#FF0000>(5jmZAtv6)</font><b>:2005/05/03(火) 15:51:26 ID:75yAlH6M
【C-3/商店街/一日目、12:00】
【しずく:死亡】残り84人

【相良宗介】
【状態】健康
【装備】ソーコムピストル、スローイングナイフ、コンバットナイフ
【道具】荷物一式、弾薬
【思考】大佐と合流しなければ。

【千鳥かなめ】
【状態】健康、精神面に少し傷
【装備】鉄パイプのようなもの(バイトでウィザード/団員の特殊装備)
【道具】荷物一式、食料の材料。
【思考】早くテッサと合流しなきゃ。

【小笠原祥子】
【状態】健康
【装備】なし(ただし、しずくの荷物をルートしてます)
【道具】荷物一式(毒薬入り。)
【思考】祐巳助けてあげるから。

【アーヴィング・ナイトウォーカー】
[状態]:情緒不安定/修羅モード/腿に銃創(止血済み)
[装備]:狙撃銃"鉄鋼小丸"(出典@終わりのクロニクル)
[道具]:デイバッグ(支給品一式)
[思考]:主催者を殺し、ミラを助ける(思い込み)

95風切る翼 </b><font color=#FF0000>(GSuxAXWA)</font><b>:2005/05/03(火) 23:28:08 ID:8sMUamU2
 駆ける、駆ける、駆ける。
 三人分の足音が、無人の商店街に響く。
 時折背後から轟音が響いてくるのは、間違いなくオドーと見知らぬ少年の戦闘のためだ。
 三人は背後を気にしつつも、去る事を命令したオドーの意志を思って走り続ける。
 何か強力な衝撃が地面に加えられているのか、アスファルトには亀裂が走り、周囲の建物の振動が激しい。
「きゃ――!」
 と、しずくが振動に身体のバランスを崩す。
「しずくっ?」
 慌ててかなめが立ち止まり、振り返った瞬間、アスファルトの亀裂に裂け目が走った。
 裂け目に巻き込まれて周囲の建物が倒壊を始め、かなめと宗介の二人としずくを隔てる。
 そして、しずくの足がそのまま裂け目に飲み込まれ――
 にげて、としずくは二人に叫ぶ。
 しずく、とかなめはしずくに叫ぶ。
 逃げろ、と宗介はかなめに叫ぶ。
 しかしそれらの叫びは崩壊の音に紛れ、砂煙に掻き消えた。

96風切る翼 </b><font color=#FF0000>(GSuxAXWA)</font><b>:2005/05/03(火) 23:29:25 ID:8sMUamU2
 握り締めていたはずの金属バットの感触が無い。
 無くした――?
「……っう」
 と、その思考を皮切りに意識が回復。
 ほんの数秒、衝撃によって意識が飛んでしまったようだ。
 耳元で響く轟音が、舞い散る埃が、やけに精彩を欠いている。
 センサーに異常をきたしたらしい。
 耳元に落ちてきた小石の音に反応し、咄嗟に跳ね起きる。
 周囲を見回すと、ザ・サードの施設で見た格納庫に似ている。
 そこはどうやら地下空間を利用した何かの倉庫であるらしい。
 だが、その倉庫も天井部分の崩落によって、次々に埋まり始めている。
「――! このままじゃ……」
 流石に大量の瓦礫に埋め尽くされれば、機械知性体の自分であっても良くて大破、悪くて全壊だ。
「何か、何か……」
 このままでは、もう火乃香にも、看護婦さんにも、浄眼機にもかなめにも会えない。
 BBにも、会えない――
 そう思った瞬間、涙が零れ始めた。
 機械知性体にも感情はあり、それを表すための器官も存在する。
 ぽろぽろと零れ続ける涙が、どうしても止まらない。
「B、B……」
 と、涙で歪んだ視界の端に、何かが映った。
 何の変哲も無いバックパック。
 しかし、何か自分に訴えるものがあるような――
 そうしてしずくは、己の直感に従った。

97風切る翼 </b><font color=#FF0000>(GSuxAXWA)</font><b>:2005/05/03(火) 23:30:10 ID:8sMUamU2
「離してっ! しずくが!」
「もう遅い! かなめ、君まで巻き込まれるぞ!」
 未だ濛々と砂煙の舞う道路の裂け目の側に、そちらに駆け寄ろうとするかなめと、それを押し留める宗介が居た。
「だからって見捨てろって言うの!?」
「それは――」
 瞳を潤ませ叫ぶかなめに、宗介が一瞬口ごもる。
 その隙をついて駆け出すかなめを、宗介が慌てて追おうとした瞬間――


・――光とは力である。


 己から滲み出るような声が、響いた。
 それが概念条文と呼ばれる存在であることを知るオドーは、偶然にもこの時ほぼ同時に命を落とす事になる。
「かなめさんっ! ソースケさんっ!」 
 光の翼が、羽ばたいた。
 降り注ぐ瓦礫を僅かな見切りで避け、風を読み、卓抜した飛行で地上に現れたのは――
「しずくっ!」
 かなめが歓声を上げ、宗介が翼を生やしたしずくを唖然とした表情で見る。
 が、拡大する亀裂を見るとすぐさま表情を改め――
「ここから離れるぞ!」
 強引にかなめを抱えて走り始める宗介と、低空を滑るように滑空してその後を追うしずく。
 亀裂は拡大し、地下の倉庫を埋めていく。

98風切る翼 </b><font color=#FF0000>(GSuxAXWA)</font><b>:2005/05/03(火) 23:33:13 ID:8sMUamU2
【C-3/商店街/一日目、11:51】

【相良宗介】
【状態】健康
【装備】ソーコムピストル、スローイングナイフ、コンバットナイフ
【道具】荷物一式、弾薬
【思考】この場を離れる

【千鳥かなめ】
【状態】健康、精神面に少し傷
【装備】鉄パイプのようなもの(バイトでウィザード/団員の特殊装備)
【道具】荷物一式、食料の材料。
【思考】この場を離れる

【しずく】
【状態】落下の衝撃でセンサー類の感度が人間の五感レベルにまで低下。
【装備】X−Wi
【道具】荷物一式
【思考】この場を離れる


・商店街の道路の一角と、その周囲の建築物が地面の陥没によって崩壊しました。
・地下空間の一角に、倉庫らしき場所がありましたが崩落によりほぼ埋まってしまったようです。
・エスカリボルグが地下のどこかに転がっています。(埋まってしまったかもしれません)

99Black Shuck </b><font color=#FF0000>(5jmZAtv6)</font><b>:2005/05/04(水) 05:03:57 ID:g9edauqs
「痛い…」
アーヴィング・ナイトウォーカー…略してアーヴィーは商店街の薬屋の中で
傷口を抱え蹲る。
薬屋ならなにか薬があると思っていたが…陳列棚はほとんど空だった。
かろうじて残っていた栄養ドリンクを飲み干し、得体の知れない塗り薬を傷口に塗りつけ、
一息つくアーヴィ。
もう何が何だかわからない、そもそも何でこんなところでこんなことをしなきゃならない。
ミラを探さなきゃいけないし、母さんの食事も作ってあげなきゃいけない。
あれでも何か変だ、母さんはもう…どうだっけ、よくわからない。
この足のせいかもしれない…痛い痛い痛い…。

そこに遠くから轟音が聞こえてきた。
何だろう?何だろう?…ふらりと店を出るアーヴィ…そこには2人の少女を連れた
少年の姿があった、少年は剣呑な視線でアーヴィを眺める。
その間、わずか一瞬…だが、
その瞳と瞳が重なった瞬間、アーヴィは銃を構えていた。

「俺から離れるな!」
かなめの手を引き街を駆ける宗介、その背後から迫るアーヴィ。
戦闘よりも逃走を優先しているので、けん制程度のものだが、それでも応戦しつつ舌打ちを禁じえない宗介、
何故だ何故こちらの攻撃は当たらないのだ、しかも相手は怪我をしているにもかかわらず。

一方のアーヴィはなにやらわけのわからない言葉を呟きながら、ふらりふらりと相変わらず無造作に
歩いているだけだ、そして時々ばかでかい銃を構えて射撃する。
その一撃が壊れかけの木造アパートに命中し、彼らの間を分かつように崩壊していく。
「千鳥っ!」
飛び交う瓦礫の中で手を伸ばす宗介、かなめもまた宗介へと手を伸ばす。
しかし…その時かなめの手が汗ですべり、もう片方の手で握っていたしずくの手がするりと抜けてしまう。
そして彼らの間を分かつように瓦礫の雨が降り注ぐ、

かなめが何かを叫ぶがさらなる銃声にかき消され宗介の耳には届かない。
アーヴィーは構うことなくそのまま何発もライフルを放ち、結果次々と道路に瓦礫が積もっていく。
自分の視界が完全に瓦礫でふさがれたのを見て、ようやく攻撃を止めるアーヴィー、

100Black Shuck </b><font color=#FF0000>(5jmZAtv6)</font><b>:2005/05/04(水) 05:04:43 ID:g9edauqs
ああミラ、どこにいるの?
こんなごみだらけの場所じゃ見つけられない、でも君と出会ったのもこんな場所だったような気がするよ。
そうだ高いところに行こう、高い場所からならもしかしたら君を探し出せるかもしれない。
ライフルを肩に担ぐとよろよろと奇妙なステップを踏むようにアーヴィーは移動を開始した。

街の出口、道をふさぐ瓦礫を前にしてようやく一息つく宗介、どうやら逃げ切ったようだ、まだ油断は禁物だが。

しかし…また新たな問題がここで発生していた。
「しずくがいないの!」
「手を引いていたんじゃなかったのか!?」
明らかに取り乱し、落ち着きなく周辺を見回すかなめ、
「お願い…宗介」
かなめの言わんとしていることはわかっていた、だが…。
「ダメだ…今は戻れない、わかるだろう?」
「そんな!」
宗介の言葉に食い下がるかなめ、彼女とて状況は理解している、だがそれでも
彼女は思っているのだ、わずかでも可能性がある限り、守れる命は守りたいと。
そんな彼女だからこそ守ってやらねばならない、守りたいと宗介は思う。

「どうしてもというのなら、俺が1人で探しにいく」
宗介の言葉に首を振るかなめ。
「あたしも一緒に行く」
「ダメだ…許可できない、危険すぎる」
それでも不満げなかなめの肩を抱え、その顔を真摯に見つめる宗介。
その顔はもう歴戦の戦士のそれだ。
「俺を信じてくれ…かならず彼女を見つけ出してくる、だから」
しかしそれでも宗介の言葉に頷かないかなめ。
「違う!そんなんじゃない!あたしが言いたいのは!」
自分でも予測できなかった言葉、そこまで言って…それから後の言葉は出てこなかった。


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