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小ネタ投下スレ

519名も無き黒幕さん:2010/04/29(木) 23:06:04 ID:owUuycZo
 アリュセには、リリアの他にもう一人、セリという名の姉妹がいる。
 彼女たちは、三つ子として生まれた。
 セリ。リリア。アリュセ。
 並べて重ねて続ければ、円を描いて繋がる名前。
 三つ子たちを祝福する、三つで一つの絆の象徴。
 祈りと願いが込められた、かけがえのないもの。
 一つでも欠ければ、循環していた言霊は意味を失う。
 だが、それでもアリュセは自らの意思で輪を断ち切った。
 島にはいない自分の姉妹――セリのことを隠した。
 本当は三つ子あることを、島で出会った誰にも言わなかった。
 是が非でもそうせざるをえなかったのだ。
 極限状況下で仲間を集めるためには、気休め程度の影響力すら重要だったから。
 開会式の間、金と銀の瞳の、よく似た顔をした姉妹がすぐそばにいたから。
 名簿に載っている竜堂始と竜堂終が、二人きりの兄弟かもしれなかったから。
 匂宮出夢の話を聞いて、ただの憶測だった一つの予感が確度を増したから。
 この島に降り立った直後から、ずっとアリュセは考えていた。
 血縁――それも、兄弟姉妹の縁を持つ参加者が一定数いるのではないか、と。
 だからアリュセは自問した。
 一人きりになってしまった兄弟姉妹は、二人しか島にいない三つ子に共感を抱くのか、と。
 血族をすべて失った者は、三分の一が故郷にいる三つ子を妬みはしないか、と。
 余裕がないからこそ、そういった火種が致命的な不和にまで発展するのでは、と。
 並々ならぬ艱難辛苦は、血も涙もない選択肢しか彼女に残さなかった。


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