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小ネタ投下スレ

521名も無き黒幕さん:2010/04/29(木) 23:07:40 ID:owUuycZo
 誤解を招くというか誤解なのかどうかすらとても怪しい光景ではある。
 とはいえ、表面的な事象を一瞥してそのまま鵜呑みにするというわけにはいくまい。
 確かに出雲は良くも悪くも男らしい人物だが、いくらなんでも仲間の遺骸のすぐ横で
色欲を全開にするほど脳が膿んではいない。その証拠に、彼が浮かべる表情は、絵画に
見惚れる芸術家のごとく純朴だった。驚嘆と畏敬と賛美の念しか見て取れない。
 頬が引きつりそうになるのを堪えながら、アリュセは自分に言い聞かせる。
「たぶん淫祠邪教の類ではなくて、子宝祈願か何かに関連した異教……ええと、その、
 性書神話とか何とか言っていましたし、きっとそれにちなんだ信仰なんですわ」
 健気に自己暗示を試みる連れへ、収納作業中の出雲がさりげなくつぶやく。
「ところでアリュセ、物陰に隠れてこっちの様子をうかがってる奴がいるんだが」
「……え?」
 さっきまでとほぼ同じ悠然とした雰囲気ではあったが、彼の瞳には鋭い光がある。
「殺気は感じねえ。まともな相手じゃねえとしたら達人級のろくでなしだ」
 アリュセは思わず息を呑んだ。いかがわしい本を片付けつつ、出雲が続ける。
「まさか、凄腕の変質者がアリュセを盗撮しようと狙って……」
「よ、よく分かりませんけれど、覚の世界を基準に考えるのはどうかと思いますの」
 半裸の女体が表紙を飾る淫猥な本を握り締め、大真面目に出雲は言う。
「おっと、変態を侮っちゃいけねえな。どこにいてもおかしくねえ連中だぞ本当に」
「あー……確かに否定はしきれませんけれど」
 眼前の仲間が変態だという大変な現実が、アリュセに重くのしかかった。
 うっかり脱力しかける連れに対し、出雲は渋い表情で頷いてみせる。
「知らなかったことにしたくなる気持ちはよく解るけどよ、目ぇ逸らしてると危ねえぞ
 マジで。大事なことだからもう一回言うが――変態を甘く見ちゃいけねえ」
 顔つきは真摯で格好いいのだが、『女攻性咒式士の淫らな午後』等の扇情的な文言が
書かれた雑誌を片手に持ったままということもあり、総合的には間抜けな姿だった。
 くずおれそうになる体を、アリュセは気力だけでどうにか立て直した。


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