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154エンジェル・ハウリング(弱虫の泣き声):2009/03/19(木) 00:50:12 ID:Fc72kk0o
 瞬間、景色が入れ替わった。肌を刺す寒風が頬を撫でる。
 見慣れた風景だった。精霊の住む硝化の森。ハンター業に就いていた彼女にとって、そこは懐かしささえ覚える場所だ。いや――
 フリウは気づいた。ここはただの硝化の森ではない。その最奥。すべての疑問が発生した場所。

「水溶ける、場所?」
「さあフリウ・ハリスコー。かつてのように答えを召喚してみるがいい。君にとって信じるに足るものならば召喚に応じるはずだ」

 それが嬲るように聞こえるのは、彼女が負けを認めているからか。
 恐らくそうだ――フリウは首を振りながら認めた。自分はもう、信じることが出来ない。信じるに足るものをひとつも持っていない。

(サリオン……アイゼン、ラズ、マリオ、マデュー、マーカス、ミズー・ビアンカ……)

 もう会えない彼らの名前。そこにフリウはいくつか名を付け加えた。チャッピー、要、潤、アイザック、ミリア。
 失ったものは、取り返せない。この異界に来て、フリウ・ハリスコーはすべてを失った。
 十分だと判断したのだろう。さほど時間も掛けず、アマワは解答時間を打ち切った。

「フリウ・ハリスコー。君に解答は期待していない。君はもはや……未知を退けられない」
「なら、どうして来たの……」
「それでも君は有効な手段だ。この催しを計画したのも、少なからず君の影響がある」
「あた、し、が?」

(あたしが、原因――?)

 呆然と立ちつくす中、アマワが言葉を進める。

「君は正答をしなかった。だが、今までにない解答でもあった。
 故に私はそれを試すことにした。人は、どこまで人を信じられるものなのか。
 何故、君やミズー・ビアンカを用意したのかといえば、君たちの在り方や解答が正しかったのかを見届けるためだ。だが」

 そこでアマワは言葉を切った。嘲るでもなく、単に疑問を呈するような口調で続けてくる。

「ミズー・ビアンカは死んだ。私に奪えなかった筈の人間が奪えた。
 フリウ・ハリスコーは人を信じ切れなくなった。ひたすらに破壊を求めるようになった」
「……」

 アマワの姿がフィルムを回すように変わっていく。その中にはフリウが知らない人もいれば、知っている人影もあった。
 奪われてしまった人達。フリウ・ハリスコーが奪わせてしまった人達。全員が彼女を責めるでもなく不自然に微笑んでいる――

「やめて! もうやめて――」

 頭を抱えて絶叫すると、存外素直にアマワは虚像を騙るのをやめた。不定形の姿に戻ると、何事もなかったかのように宣告する。

「だから私は君の前に現れたのだ。フリウ・ハリスコー。君の答えが違っていたのなら、私はまた以前の方法に従う」
「……また、無意味なことを聞いて回るの?」

 精一杯の皮肉に、アマワは動じた様子もない。ただ静かに首を振った。

「言っただろう。もはや君に解答は期待していない」


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