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上条さんと美琴のいちゃいちゃSS part29

1■■■■:2015/12/07(月) 21:01:15 ID:WEwdZ/zM
上条さんと美琴のSSをじゃんじゃん投下していくスレです!
別に上条さんと美琴だけが出てくるスレじゃありません。
上条さんと美琴が最終的にいちゃいちゃしていればいいので、
ほかのキャラを出してもいいです。そこを勘違いしないようにお願いします!

◇このスレの心得
・原作の話は有りなのでアニメ組の人はネタバレに注意してください。
・美琴×俺の考えの人は戻るを押してください。
・このスレはsage進行です。レスする際には必ずメール欄に半角で『sage』と入力しましょう。
・レスする前に一度スレを更新してみましょう。誰かが投下中だったりすると被ります。
・次スレは>>970ぐらいの人にお願いします。

◇投稿時の注意
・フラゲネタはもちろんNG。
・キャラを必要以上に貶めるなど、あからさまに不快な表現は自重しましょう。
・自分が知らないキャラは出さないように(原作読んでないのに五和を出す等)。
・明らかにR-18なものは専用スレがあるみたいなのでそちらにどうぞ。
・流れが速い時は宣言してから書き込むと被ったりしないです。投稿終了の目印もあるとさらに◎。
・創作しながらの投稿はスレを独占することになりますので、書き溜めてから投稿することをお勧めします。
・このスレはsage進行です。レスする際には必ずメール欄に半角で『sage』と入力しましょう。
・以前に投稿したことがある人は、その旨記述してあるとまとめの人が喜びます。
・ちなみに1レスの制限は約4096byte(全角約2000文字)、行数制限は無い模様。

◇その他の注意・参考
・基本マターリ進行で。特に作品及び職人への過度なツッコミや批判は止めましょう。
・このスレはsage進行です。レスする際には必ずメール欄に半角で『sage』と入力しましょう。
・クレクレ(こうゆうのを書いてください)等はやりすぎに注意。
・読んだらできれば職人にレスしてあげましょう。職人の投稿するモチベーションを維持できます。
・誰か投下した直後の投下はできれば控えめに。
・倫理的にグレーな動画サイト、共有関係の話題はもちろんNG。
・書きたいけど文才無いから書けないよ!
  →スレの趣旨的にそれでも構いません。妄想と勢いでカバー(ネタを提案する程度でも)。

◇初心者(書き手)大歓迎!◇

前スレ
上条さんと美琴のいちゃいちゃSS part28
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/6947/1415780549/

まとめページ
とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫 / 上条さんと美琴のいちゃいちゃSS
ttp://www31.atwiki.jp/kinsho_second/pages/81.html

まとめページの編集方針
ttp://www31.atwiki.jp/kinsho_second/pages/213.html

スレ立て用テンプレ
ttp://www31.atwiki.jp/kinsho_second/pages/82.html

872■■■■:2017/01/26(木) 17:57:10 ID:F1hcrTYI
告白にあこがれがあった。

「当麻、本当にありがとう」
「美琴・・びっくりしたぞいきなり公の場でカミングアウトして」
「ごめんなさい。でも・・当麻への気持ちを隠すことはできなかった」

「美琴は、まだ僧正の事がトラウマなのか?」

「気にしていないと言えばうそになる。だけど・・いやだからこそ」
私は腹に力を籠める。
「トラウマの元をもとに戻した。」
「そうか・・美琴らしいな。AAAを止めるために俺の学校を再建するとか
やっぱり美琴はスケールが違うよ。俺と違ってな」
一歩を超えて私は素直に、そして正直に答える。
「まずは褒めてくれてありがとう。」
「でも、当麻には全然かなわないわ、世界をまるごと救う当麻には」
私は、アップルサイダーを飲みながら当麻を褒める

「美琴は・・俺に夢見すぎだよ。」
「はっきり言えば俺の右手に」
私は当麻の顔を凝視する。いつにもない真剣なまなざしに心打たれる。
その熱い視線に心を震わせながら言葉を発する。

「当麻はいつも言う。不幸だ・・神の加護さえ打ち消す右手で幸福をも打ち消すと」
「でもね。当麻・・私はその右手に救われたのよ」
「妹も、学園都市も・・いや世界さえも」
私はさらに言葉を続ける
「もちろん・・当麻の右手の限界も知っているわ・・」
「それが無敵でないことも、当麻に多くの不幸をもたらしたことも」
「八竜を当麻の意のままに操ることができないことさえもね」

「私は、当麻と違って、一人で世界を救うことなんかできない」
「だけど、・・自分の周りの世界ぐらいは自分で守る、インデックスも当麻も
守る。いつかは学園都市そのものだって守れるようになる」
「当麻の不幸も私も背負う、一緒に不幸に立ち向かいましょう」

当麻が、嘆息したようにしゃべる
「美琴は・・本当に前向きで強いな・・」

「でも・・無理しなくていい。あ・・美琴に期待しないわけじゃない。もちろん
美琴の能力のすごさや、強さは分かっている。」
「だけど美琴は頑張りすぎる」
「美琴は意思が強すぎるから、どんな強敵でも立ち向かうとする」
「でも・・そんなに頑張りすぎなくてもいい」
「立ち止まって周りを見回して、頼ることも覚えてほしい」

「それに・・」
「御坂美琴とその周りの世界は俺も守る」
「だから・・、自分ひとりだけで立ち向かう必要なんてない。俺のことも頼ってほしい」
当麻は私の顔にそっと軽く唇を頬によせる

私の瞼から涙が零れ落ちる。常盤台の子達の前ではみせない私の涙。
その涙を拭い私は当麻へ声をかける。
「ありがとう、当麻、・・ええ・・私は今回の騒動で自分だけの能力でできないことも
力を対処することを学んだ・・だから当麻の力がいるときはもちろん当麻にも頼る」

「当麻・・」
「美琴・・」
私と当麻は立ち上がり、当麻は両手を腰に回し、しっかりと抱擁する。
耳元で当麻は私に囁く
「何があっても俺は美琴も守る」
私も囁く
「私も、当麻の周りの世界を守る」
「そして・・死ぬときは一緒よ」
そして・・2人の距離が0になり、・・熱い接吻の感覚が私の脳裏を駆け巡る。

紆余曲折の末、相思相愛となった2人。アレイスターの負の遺産の解消はそんな
簡単ではなく、多くの困難が2人を襲うだろう。だが・・どんな困難も・・
上条当麻の熱い心と、御坂美琴の技術で乗り越えるだろう。
これは後に統括理事として辣腕をふるい、学園都市を文字通り科学の世界の中心と
して名声を博す基礎を作った2人のなれそめの始まりにすぎなかった・・

FIN

873■■■■:2017/01/26(木) 17:58:08 ID:F1hcrTYI
以上でクリスマスの奇跡4話 (完結)の
投稿を終わります。

874■■■■:2017/02/09(木) 13:29:54 ID:RTuyQ23Y
とある科学の超荷電粒子砲Ⅲ 16話:4章―①

9月26日 (土)5時

薄暗い早暁の街並みを、いつもように散歩する。
長すぎた夏は終わりを迎え、乾いた冷涼な空気が辺りを包む。
昨夜は、深夜まで祝勝会でどんちゃん騒ぎで結局床に就いたのは午前2時だった。

生体電流を操作し精神の制御ができる能力は便利なもので、
生体電流を操作し2時間死んだように眠り、何事もなく起きる。
(まあ電極までぶっこんで能力者にもなってこのくらいできなきゃメリットないわ)

婚約者にはその恩恵はなく、いまだに死んだように眠っている。
叩き起こすのも可哀そうなので一人で歩く。私は選手兼警備責任者としての
慌ただしい日々が終わり、いつも通りのリズムを取り戻す

過酷な能力開発時も雪が降ろうが欠かしたことのない朝の散歩。現時点の
自分の位置を確かめ、将来への道のりを再確認する場。20分ほどだが、眠気もとれ頭の回転をよくする
儀式として欠かせないもので私の生活のリズムに組み込まれている。

落ち着いてみると、この街の大人の事情に嫌でも関わる自分の立場に気づかされる。
木原の乱の後処理は何も終わっていないのだから。

・・・・・・・・・・
7時

私は、久しぶりにブルームバーグの経済ニュースを聞きながら、朝食
を作り終える。
ECB(欧州中央銀行)が、金融危機対応で量的金融緩和政策とマイナス金利政策を決定した
以外に特に大きなニュースもなく、淡々と作業を続ける。

久しぶりに、朝食に時間をかける。かぼちゃの冷製スープ、オニオンと大根、ニンジンとレタスに軽くオリーブ油を軽くかけたサラダ。そこにいり卵と軽く焼いたベーコン、カットして軽く焼いたフランスパン
(まあささやかな朝食だけどね・・)

パンとベーコンの香りが食欲を誘う。寝坊助の婚約者を起こしにベットルームに向かう
婚約者は、まだ眠そうだが一応起きていた。

「おはよう目は覚めたようね。朝食ができたわよ」
「ありがとな・・でも美琴て本当タフだな・・」
「まあ体力は自信あるからね・・それに能力で最適化できるし」
「さすがだな・・でも無理するなよ」

私は当麻を連れて食卓へ向かう、久々の休日思いっきり当麻に甘えよう。
一山超えた安ど感が2人を包む

当麻が食卓に座り、目を凝らす
「久しぶりに手間かけたね」
「まあ、普通の朝食メニューだけど」
「いやいや、本当に食欲をそそります」

私と当麻は、呼吸を合わせて唱和する
「いただきます」
15分ほどで食事を食べ終え、一方通行の影響で飲むようになったブラックコーヒー
を飲みながら、私は話を切り出す。昨晩突然急きょ決まった出張その話を婚約者に
告げなければならない。私は、コーヒカップを食卓におき、おもむろに語り始める

「当麻、突然なんだけどフランスへ出張することになった」
「え?」
「私もびっくりよ、本当なら木原唯一が主宰するAI兵器開発の国際学会に統括理事会から
直々のご指名で代わりに私が指名されたわけよ」
「だけど・・」
「代わりがいないそうよ」
「そうか・・まあ美琴ならそうかもな」

「学園都市のAI兵器開発部門の元締めは木原唯一だった」
「その穴を埋める存在は私しかいない。そうゆうわけよ」

「でいつからいつまで?」
「現地時間で9月27日から9月29日までよ。明日正午に出国するわ」
「えらく急だな」
(まあ当麻がそう思うのも、無理はない私が聞いたのも昨晩だしな・・)

875■■■■:2017/02/09(木) 13:32:11 ID:RTuyQ23Y
「で・・風紀委員会副委員長はどうする?」
「まあ、AI任せかな、その辺はいつもと一緒」
私は少しいたずらっ子のような表情を作り、話を続ける

「それと・・当麻にはボディーガードを頼みたいわ」
「はあ?美琴にそんなものいるのか?」
当麻が釈然としない顔をする。学園都市のレベルファイブとは軍隊に比肩する存在
一人で戦争ができるレベル・・ましてやその1位。お遊びで本気のレベル3〜4の
能力者1000名を片手間で捻りつぶした存在だ。

私は多少笑いながら話を続ける
「もともとレベル5の出国には制約があるのよ?それに能力の使用は原則禁じられている」
「何枚の誓約書を書かされて、やっと出国ができる」

「え?まあ・・だけど・・美琴は無視するじゃん」
当麻はイギリスやアメリカで私が少々実力行使をしたことを指摘している。
後で大量の始末書を書かされたことは当麻はしらないだろうけど。

「前わね、緊急事態だったし」
「それに・・あの時と違って今回私はただの科学者としての身分・・」
当麻が、まじまじと私の顔を見つめる。

「どうせ、刑法36条の正当防衛とか言うつもりだろう?」
ふふふふ・・・私は声を出して笑い始める。

「当麻わざと言っている?」
「え?」
「まったく・・そんなの建て前に決まっているじゃない」
当麻がきょとんとしている
「え?」

「婚約旅行したいだけよ・・実際は」
当麻が申し訳なさそうな顔で私をみつめる
「ああ・・そうか御免・・」
私はわざとらしく溜息を聞こえるようにつく

「ふ・・まあもう少し乙女心の機微に敏感にならないと当麻は砂鉄剣か電撃の槍で刺されるわよ」
当麻が苦笑いする
「ああ怖い怖い、そのうち殺されそうだ」

「馬鹿ね・・そんなことするわけないじゃない」
「愛しているからね」
「俺もだ・・」

私は軽口をたたきながら、化粧を整え、出立の準備をする。出張前の準備をするために

玄関で軽くいつもようにキスをかわし出勤する。
・・・・・・・・・・
9時

私は、久々に研究所へ出勤する
約1週間ぶりの出勤だ。実際には、ウエアブル端末を脳に直接脳につなぎリアルタイムで
研究員の研究状況や体調もデータで把握はしているが、やっぱり顔を見たい時もある。

それに今日は、私にとって大事な日でもある。
唐突な人事異動なのだから。

「所長1週間ぶりに出勤しました」
「いや悪いね、フランスなんかに付き合わせて」

「いえ私たちの研究成果が学園都市幹部に認められた成果ですから」
「木原唯一も失脚したしな」
「ええ・・その分面倒なことも増えますが」

「で・・今日は」
所長は立ち上がり机の上の辞令を取り出す
「御坂君へ新たな任務を付与しなきゃな・・」

「御坂美琴:9月26日付けで、統括理事会兵器開発部開発主幹に任ずる」
「それと当面はここの副所長は兼務ね」

「え?」

876■■■■:2017/02/09(木) 13:34:21 ID:RTuyQ23Y
私は絶句する。統括理事会兵器開発部開発主幹?
(まあ確かに・・木原唯一の後任だけど・・いきなり?)
(14歳の若造がやる仕事じゃないでしょ)

所長がにやにや私の顔を眺める。
「まあ御坂君も疑問に思うのも無理はない」
「実は私も昨日付で開発部長になった」
(なるほど・・論功行賞か・・)

私は頭の中で統括理事会の権力抗争の見取り図を描く。
(統括理事会の中で親船統括理事代行が、木原幻生派を重用するという話か・・)
(その子飼いの所長と私を重用すると・・)
(まあ、学園都市のパワーバランスなんかどうでもいいけどね)
まあ、統括理事長でない今所詮は宮使えの身、ありがたく受けることにするか・・
私は、常盤台で叩き込まれた完璧な作法で、恭しく辞令を受理する。

「学会の出発前に親船統括理事代行に会わなくてよろしいですか?」
「いや・・帰国後でいいと本人から聞いた」
「親船さんは、能力者の人権について殊の外、考慮されている」
「本来なら、まだ14歳の御坂君にこれほどの重責を負わせることについて、
代行も忸怩たる思いだが、現状は余人に代えがたいそうだ」
「そうですか・・」

所長は私の顔を眺めながら、少々含み笑いを籠めて話始める。
「ところで、婚約者さんも連れていくそうだが」
「ええ、欧米では夫婦同伴というのがレセプションの決まりですから」
「まあそうだな、南仏はそろそろ秋だしな。まあ婚約旅行を楽しみたまえ」

私は、所長に黙礼をし、話を切り上げる。
急遽決まった、出張前にどうしても済ます行事があるのだから

・・・・・・・・・・・・・
10時 風紀委員会本部

「御坂さん、おはようございます」
私は、ほとんどこの部屋にいないので、実際の主はこの花飾りの女性と言っても
過言ではない。その部屋の実質的な主に私も返礼する

「おはよう、初春さん」
「あれ・・でも今日は休みじゃないの?」
初春飾利ははきはきと返答する
「御坂さん・・犯罪者に休みなんてないですよ」
生真面目で、なおかつ情報システムの構築に全精力を注ぐ彼女は、土日も関係なく
大覇星祭のさいには、ほぼ泊りがけで捜査の管制指揮をここでとっていた。

「まあそうだけど、ほぼ完全オートなシステムだからログ解析と、ウイルスチェックだけ
してくれればもう十分よ。ほぼ1月運用して初期不具合も解消したでしょう?」
「もう一覧端祭までは、1日5分間のリモートコントールでいいわよ」
「まあ釈迦に説法かもしれないけど」

私は、この糞真面目で職人肌の彼女に言い聞かせる。まだ13歳の女の子、少しくらい、気を楽にしてほしい。それに大学院へ入学した私と違ってまだ高校入試だってある。この
能力偏重の学園都市でレベル1の生徒が、進学するのは結構大変な事だ。

風紀委員活動は確かに内申点の底上げになるが、それでもレベル3以下ではきつい、ましてや恐らく彼女が行きたがっている長点上機では・・今のままでは、学力点・・特に語学は大丈夫だろうか?まあ英語くらいは大丈夫だろう。
でも第2外国語はどうだろう?フランス語が今の状況で手が回るだろうか?

名門校の受験はレベル1、2の学生にとってはたやすいものではない。能力値の下駄
がない彼女には相当つらいはず・・だから彼女には早く日常へ復帰してほしい。
だが・・彼女は私の想いとは違う返答を始める。

「御坂さんが今、私の成績や学校を気にされて、仰ったことは感謝します」
「ですが、私はこれに命をかけています。」
普段は、穏やかな彼女が心境を吐露し始める。私はそれを黙って聞く。

「私は・・実戦で司令官ができる御坂さんと違って、これしかできません」
「国際学会を主催できるほどの学識も、ほぼすべての言語を流ちょうにしゃべること
も、できません」
「御坂さんが構築したこのシステムを一から立ち上げるなんてこともできません」

877■■■■:2017/02/09(木) 13:37:06 ID:RTuyQ23Y
「だから、御坂さんが私に預けたこの子を完全なものにさせてください」
「私はこの子に人生をかけています」

正直、過大評価もいいとこだ。
(学園都市のありもののリソースを繋ぎあわえた、アレに人生をかけるなんてね・・)
(だけど・・初春さんは本気だ・・)
私は、腫物をさわるように慎重に言葉を選ぶ
「初春さんありがとう、でも無理はしないでね」

「ええわかっています」
私は、初春さんの表情を確認し、さきほどの激情が収まったことを確認し、話を続ける
「初春さんが倒れたら、佐天さんやご両親に申し訳ないわ」
「だから絶対無理しないで、私だって力になれるから」
「御坂さんありがとうございます。」

初春さんの少しにこやかになった笑顔を確認し、私は離席する。
他に何か所か回らなければならない私は初春さんのサインに気が付くことはなかった。

だが、私はもう少し、初春さんの立場で考えるべきだったかもしれない。
もの見え方や視線が立場によって異なり、その認識のずれがもたらす問題に
だが私のその時点でその問題に気が付くことはなかった。

それが引き起こす問題の深刻さに
・・・・・・・・・・・・・
12時 常盤台中学 談話室

私が社会生活を営む上で必要な資金を拠出するために盟友である食蜂とはどうしても
会う必要があり、いつもようにここで幕の内弁当をテークアウトして食べる。

味の事はよくわからない。ただようは時間の節約。ある程度の品質と栄養バランス
をしっかり管理栄養士が判断している点で安心だ。

まあ、アウトソーシングよね。
時間は無限ではなく、人生は有限。専門家にある程度権限を譲渡しなければならないこともある。私は、統括理事会の兵器開発の実質的な長になった以上、今の広げすぎた手を縮小して、非中核事業を他者へ引き渡す必要がある。

その一つが、投資ファンドの実質的な共同経営者の地位。私はそれを、全部食蜂へ引き渡すつもりを固めている。もうちょっとした国家の年金ファンドに匹敵するほどの規模のそれを、片手間でやること自体に無理がある。

学園都市の幹部、殊に統括理事会や、常盤台の父兄、つまり日本の政財界に巨大なコネを
持つ食蜂なら私の資金も含めてうまく運用してくれるだろう。
所有と経営の分離は近代資本主義の原則、私は一株主の立場として経営からは身を引こう。

食蜂が幕の内弁当を食べ終え、ナプキンで口を拭きながらしゃべり始める

「御坂さん、正気力ある?投資ファンドの経営から手を引くなんて」
「ええ?ああ・・まあコンプライアンスの観点でね」

「統括理事会事務局入りするからァ?」
「ええ利益相反取引とかいわれると面倒だしね」

食蜂のしいたけのような目が、いたずらぽい輝きを発し始める
「御坂さんも変わったわね。権力者になりたがるなんて・・研究と金さえ
あればそれでよかったんじゃないの?」

「別に権力に色気があるわけじゃないわ」
食蜂が愉快げに笑い始める
「権力は目的のための単なる手段とでも」

私は食蜂に聞こえるように溜息をつく
「私は不幸な婚約者を不幸から救いだけよ。究極的にはね」

「え?」
食蜂があっけにとられた顔をする。が、しばらくして私の意図を理解したかのように
少し真面目な顔に変わる。
「なるほど、彼の不幸力の根を断ちたいと?」

私は苦笑いを始める。
「まあ、私の力なんて微力だけどね」
「せめてこの街だけでもきれいにしたいわ」

878■■■■:2017/02/09(木) 13:40:26 ID:RTuyQ23Y
食蜂が音と立てて笑い始める
「御坂さんて難儀な性格ね、御坂さんならなれないものなんてないでしょ。
そうゆう面倒な事をせずに世俗的な成功を求めるだけなら」

はっきり言ってそんなものならもうすでに達成済みだ。
金、地位、研究成果、14歳の少女では過分すぎるほどのそれを
だが、・・・

「そうね・・でもアイツは、上条当麻はそれで止る男ではないでしょ」
「この街が非人道な街であり続ける限り、アイツは不幸であり続ける」
「私はアイツを幸せにしたい」
「誰よりも不幸や不条理を許せない目の前の不幸な奴すべてを救おうとするアイツをね」
「だから私は少しでも内側からこの街を変えたい」

私は水で飲みながら話を続ける。
「簡単な話じゃないでしょ。実験動物と学生を呼んで憚らない
研究者、それを放置し、わけのわからないプランを推進する
独裁者に取り入り得体のしれない実験を、壁に囲まれた閉鎖
空間でマスコミの監視もない、親御さんのけん制もない環境で
ひそひそ行う、いかれた研究者の意識を変えるのは」

「それが私は微力という本当の意味」

食蜂が面白そうに私の顔を眺める
「で、微力と言いはる学園都市1位の御坂美琴さんは
この街をどうしたいの?」

そんなのは簡単な事だ。私ははっきりと言う。
「上条当麻が右手で幻想を壊す必要がない学園都市にしたい」

「で?・・統括理事長でもなりたいの?」
「それが上条当麻を幸福にできるならね・・どんな手も使う。
手段は選ばない」
食蜂が溜息をついて語り始める。

「そうね・・私も旗幟を鮮明しなきゃないかな・・」

食蜂が私の手をしっかりと握る。うんちで握力が25KGくらい
しかないはずなのに
以外にしっかりと握ってくる、まるで決死の覚悟でもあるかと
告げるように

「美琴、私の命と派閥の力を全部貴方に捧げる」
「ありがとう、操折。あなたの力を無駄にしない。」

私と食蜂は立ち上がり、がっちりと抱擁を始める。

人の心理を操るエキスパートと、機械・兵器のエキスパートが
がっちりと手を握る
これ自体がささやかなでも重大な転換点かもしれない。

「上条当麻を、一緒に幸せにしましょう」
「私達の力で」

こうしてささやかだが、重大な意味を持つ同盟が成立し、私は
食蜂に深々と礼をして退出する。顔さえ覚えてもらえない少女は、それでも
彼を信じて、その婚約者である
私ともともに立ち上がる。

・・・・・・・・・・・・
16時

私は、学会出席前に必要な挨拶をすまし、自宅へ戻る。
婚約者はリビングでPCの端末でせっせと、学校の課題をこなしている。
だいぶ、学習も慣れてきたのだろうか、動作が洗練され板についている。
その光景が微笑ましい。
私は婚約者がやる気を出してくれたことを素直に喜ぶ。

「ただいま」
「おかえり」
「どう?はかどっている」

「ふ・・、まあ徐々にですよ・でも少し勉強も楽しくなったかな」
「よかった」

「でもさ・・前に美琴が言った通り小さな結果積み重ねは大事だな」
「そうね。どんな小さな一歩でも自発的にやることが大事よね」

「まあそれも美琴の開発したアプリのおかげだけどな」

879■■■■:2017/02/09(木) 13:45:02 ID:RTuyQ23Y
「それも当麻がやる気をだしてくれなきゃ意味がない。
当麻が一歩前に進んでくれた」
「それがどんな小さな一歩でもね」
「だから私は全力で当麻を支える」
私は立ち上がり、こぶしを握り、上条当麻の顔を見つめる。

「美琴・・」
当麻がほほえましい表情を作り私を見つめる。
「ああそうだな、2人で不幸を卒業することにした」
「小さな幸福を積み上げ、幸福のためを作るだったな」

私は、当麻の言葉にうなづき、さらに言葉を繋ぐ。
「そう。ヒロインを救う主人公が不幸だなんて、シャレにならないわ」
「ジャンヌ・ダルクのように一つの国家を奇跡で救い、死後聖人になっても、処刑されて
は意味がない」

「私は、当麻にはガンジーやマンデラのように最後は成功し、盛大な葬式の元死んで欲しい」
「私は、そのために必要な事はなんでもする。能力・人脈・財力・科学知識すべてを捧げる」
「だから・・ともに荒海へ漕ぎ出そう」

私と当麻は立ち上がり抱擁を始める。無言で2人の体温を、吐息を、鼓動を感じながら
(もう言葉なんていらない)
熱い何かが、まるで生体電流の奔流のように私の体を貫いていく。
(やっぱり私にはコイツしかない。それは理屈じゃない)

だから、・・私はこいつを、上条当麻を何があっても支える。

限界なんて知らない、意味ない、この力が光り散らすその先まで

続く

880■■■■:2017/02/09(木) 13:49:18 ID:RTuyQ23Y
以上とある科学の超荷電粒子砲Ⅲ 16話 4章―①の投稿
を終わります

881■■■■:2017/02/11(土) 00:18:21 ID:3blkAcc6
ここも投稿者減ってるけどガンバって最後まで書ききってくださいね
陰ながら応援してます

882■■■■:2017/02/14(火) 18:11:39 ID:9vY1CdV.
感想ありがとうございます
完結まで頑張ります

883■■■■:2017/02/14(火) 18:22:41 ID:9vY1CdV.
とある乙女のバレンタインデイ・キス 1話

私は忘れていた。
記憶から抜け落ちていた。恋する乙女にとって最も重要なあの日を

これは、明らかなチョコレートメーカーの戦略に出遅れたうぶな、恥ずかしがりの少女の
決死の告白とそれに伴う大騒動を書き残したものである。

2月13日(月) 午前7時

(正直眠い・・)

私は、寮生の前であくびを噛み殺しながら、急いで朝食を食べる。

12月の熱波事件、クリスマスの最後の審判事件で壊滅的な大損害を
受けた学園都市。その傷跡は決して浅くはなかった。

幸い学びの園は、熱波事件の教訓で私と食蜂が防備を固め、クリスマスの最後の
審判事件での打撃を受けず、年明けに授業を再開することができた。

私は、上条当麻と命を懸けた果し合いの末、彼の説得に応じ、AAAを手放したが、空白
部門を除き、AAAの単なるAIM拡散力場の投射装置としての機能を利用した駆動鎧と
して建設工事に活用する装置へ改良し、9割以上破壊された学園都市の再建事業のお手伝いを行った。アレイスターの隠し遺産約100兆円を利用し、数万もの土木用駆動鎧を効率的に運用することで、急ピッチに再建工事は進み、10年かかると言われた再建工事は
2月10日(金)に無事完了した。

ローラの原型制御崩しによる暴露戦術により、アレイスターの過去の非人道的な実験のほぼすべてが明らかになり、魔術師、反科学原理主義者の特攻攻撃を受けた最後の審判事件。

その中で唯一生き残った学び舎の園。私は多少なりともそこへ避難した
200万人を守り抜くことに貢献できた・・とは思う。

だが・・上条当麻の最後の決戦に、彼一人を生かせたこと。あの子とともに、見守ることしかできなかったことが、釈然としないわだかまりを作ったことは事実。

もう周回遅れではなかったとは思う。原型制御を外され、この世の真の姿は分かって
いたとは思う。だが・・AAAの空白部分は理解できても、結局彼の心を私は理解できて
いたのだろうか?そんな空虚な気持ちを補うように必死に働いたのだろうか?

私は、多くの学び舎の園の学生とともに、まるで何かにとりつかれたように再建工事を
成し遂げた。・

だが・・なぜか・・いや・・意図的にか・・彼の事を・・忘れていた。

無力な自分に触れる事を恐れていたのだろうか?
それとも、彼の真の姿に向き合うことができなかったのか?
それは私にはわからない。だが、約40日本当に忘れていたのだ。

・・・・
食後、疲れの溜まった私は5分ほど食堂でうとうと眠っていた。

疲労というよりは、成し遂げた達成感による、安心感なのか心地のよい疲労感。
張りつめた糸がまるでぷっつり切れた、安ど感なのだろう。昨日は16時間以上
寝ていた。それでも・・まだ眠気は取れない。

意思の力で起きようとするが、体がそれを拒否している感じだ。
(はあ・・こんなことなら、生体電流を操作して無理やり疲労を取ればよかった・・)
私は、ここ2日の選択を悔やむ

私は生体電流を操作することで、強引に疲労を解消することはできる。
現に正月以降の復興工事では、ほぼ2時間程度の睡眠を40日続けていた。
それを強引に生体電流操作という力技で乗り切った。

でもすべてが終わった今それをする気にならなかった。私は自分の体力には過信というべきほどの自信があり学校では化け物級の体力と呼ばれるほどだから、普通に乗り切れると思っていた。だが体の隅々までたまった疲労は想像以上だった。

結局丸2日休んでも全く体調が回復しない。
(所詮は・・生身の女子中学生か・・ああ・・能力使えばよかった・・)
(本当・・今日は休みたいけど・・いっそ風邪ひいたことにして休むか・・?)
私は、ずる休みを思案し始める。

884■■■■:2017/02/14(火) 18:24:24 ID:9vY1CdV.
(だけどな・・今日は復興式典だったしな・・一応学生代表なんて大役を
しなきゃないし・・)

結局は、周囲の期待や要望に流される私は、ずる休みという選択を拒否し、のろのろと
朝の支度を始める。
(ああ・・面倒くせ・・・食蜂に押し付ければ・・な・・)
私は、式典で生徒代表を拒否し私に押し付けたあの女の顔を思い出し苦笑いを浮かべる。

確かに、学園都市復興事業で、事業計画、施工管理、駆動鎧の作成・制御・運営に貢献したことは自分でも達成感はあるし、誇りには思っている。

自分は多くの学生の先頭には立ってはいた。だけどそれは電子制御系の最高の
能力者として当然のことをしただけにすぎないのでは?なんて自分では思っている。

あの上条当麻は、右手ひとつで、プランを破壊されたことに逆上し、「すべて」を壊そう
とした独裁者を完全にぶち壊した。そんなことは彼一人にしかできない。

( はあ‥結局は蚊帳の外か・・)
負の感情に包まれそうになる。

最後の審判事件の流れ弾の襲来から学び舎の園へ避難した約200万人の
避難民を守ることくらいしかできない。それ以上の事は・・私にはできなかった。

だけど・・無力感にさいなまされる必要なんてない
そんなことは分かっている。私は一生懸命自分にできることはしたつもりだ。

誰にも後ろ指刺されることもない。市民を暴虐から守り抜き、そして灰燼に帰した学園都市
を再建した。これ以上、14歳の女の子に無慈悲な神は何を望むのか?

そんなとりとめもない非生産的な後悔の念を頭に抱いていた私は、縦ロールが似合う
知り合いの問いかけによって目を覚まされた。

「御坂さん、どうかされましたか?」
「え?ああ・・最後の審判事件を思い出していた」
「まだうなされますか・・?」
「ええ・・でも私は無我夢中だったけど、他の子のほうがつらいんじゃないの?」
縦ロールさんが首をかしげる
「でも御坂さんと食蜂さんのおかげでこうして生きています」
「は・・本当ね・今もこうして自分が生きていることが信じられないわ」

私は、誰にも知られることなく、一人でこの宇宙そのものを崩壊から救った上条当麻を
思い浮かべる。だが・・そのことを知っているのは、数人くらいしかいない。
「でも・・御坂さんはすごいですね・・本当、200万人を生物兵器や隕石の襲来から
守り抜き、再建工事の陣頭指揮をとられて・・」

上条当麻の功績は・・すべて伏せられており学園都市でも限られたものしか知らない。
(私なんてたいしたことはしてないけど、・・でもアレは知られない方がいいだろうな)
私は一般人の無責任な会話に適当に話を合わせる。

「まあ、でもみんなの協力のおかげよ・本当」
縦ロールさんは、にこやかに話しを続ける
「御坂さん、明日のバレンタインデーに女王が御坂さんの慰労会を開くのでぜひ出席していただけませんか?」

私は、すっかり仲良くなった食蜂の側近に、肯定の合図をする。
「え?ああそうね。じゃ・・あとで食蜂によろしくね」
目もすっかり覚めたが・・私はある単語を思い出す・・
「バレンタインデー?」
「え?御坂さんまさかお忘れでした?」
「ああ・・そうか・・」

私はすっかり忘れていた。あの男とともにチョコレート会社の策略で始まった
行事の事を・・
(くそ・・出遅れた・・なんの準備もしていない・・)
私は、慌てて部屋に戻ろうとする縦ロールさんを呼び止める
「悪い・・急用を思い出した・・慰労会はパスするわ・・」
縦ロールさんが悲しそうな顔をする。
「え?ですが・・主賓の御坂さんが来ていただかないと・・」

正直悩ましい・・少し前ならともかく、今は食蜂とは良好な関係を構築している。
あの木原唯一の乱以降、盟友のような関係になりつつある。そんな食蜂の顔に泥をぬる
事態は避けたいところだ。

885■■■■:2017/02/14(火) 18:26:39 ID:9vY1CdV.
(はあ・・なまじ立場とか、目立つとつらいものね・・公的な立場を持つという事は)

正直フットワークのよさを維持するために帰宅部や孤高を維持していたが、一人で対処
できない異常事態に対処するために、派閥のようなものを作り、食蜂と手を組みかなり濃密なネットワークを形成した自分には無視できないしがらみがある。
(はあ・・・めんどくさ・・)
(しょうがない・・狙いは見え透いているがあんな奴でも今は「親友」だ)

私は、折衷案を提示する。
「そうね・じゃ・・途中で抜けると伝えて」
縦ロールさんが明らかにほっとした顔をする。
「御坂さん本当ありがとうございます。では女王に伝えますので、
明日は宣しくお願いします」

( ああ・・中途半端にえらくなると大変だな・・)
学園都市を救ったヒロインなんて実体に合わない過大な肩書が独り歩きを始め、身動きが
とれなくなりつつある自分。公的な立場を今まで嫌ってきたがそれが自分を縛る。

(昔のように気楽になりたいなんて・・無理だろうな・・)

本当憂鬱な気分になる。自分が望みもしない、
学生のトップに祭り上げられ、食蜂とともに権威が失墜し、親御さんの信頼を失った学園都市の最後の希望としてコテコテに飾りつけられる。アレイスターの負の遺産が、その呪縛が私の進路をふさぐ。
(はあ・・たかが客寄せパンダならよかったけど・・正直救世主扱いはつらいわ・・)

だけど・・この崩壊した街がなければ、能力者は生きられない
だから・・私は彼との約束を守る・・「御坂美琴とその周りの世界は自分で守る」という
約束を

私は気を取り直し、背筋を伸ばし、顔を叩く。
「さあ・・御坂美琴・・自分の勤めを果たすのよ」

なんとか、学生たちの生存本能だけでかろうじて生き残っているこの街を支えるために
私は微力を尽くす。
・・・・・・・
親船統括理事長代行と学園都市の最高幹部が列席する中の復興式典はしめやかに
執り行われた、灰燼に帰した学園都市・・だがわずか40日で復興させた
ボランティア・・殊にその中心で尽力した私は最大限の賞賛を浴びた。

だが、本当に賞賛を浴びるべき存在の彼は賞賛を浴びることがない。
その現実に私の心は揺れ動く。

だが、公式には自殺したアレイスター・クロウリーが
実際には宇宙ごとこの世界を抹殺しようとした事実とそれを防ぐため右腕一つで特攻
した彼の功績は永久に表には出ない。

私は叫びたい・・本当に祝福されるべきは上条当麻だ・・
だが・・彼は・・その彼は・・

私は不意に思い出した。なぜ・・上条当麻を愛していた私が、莫大な感情で闇落ち
すらしかけた私が彼を忘れていたか・・

上条当麻は・・・昏睡状態になったことを・・その事実に耐えられず、私が彼を忘れた
事を・・

・・・・・・・・
私と命を懸けた果し合いの末、私を黙らせ完全に覚醒した上条当麻は
アレイスターとの最終決戦の後、身も心もボロボロになり、昏睡状態になった。

まるでHPを使い果たしたように。シスターインデックスの回復呪文も全く効力を示さず、蛙顔の医師の治療も徒労に追わり、すべてを終えた彼はすやすやと笑顔を浮かべ眠っている。

その光景をフラッシュバックのように思い出し、あのシスターが泣き崩れた
光景がまざまざと脳裏によみがえる。なぜか・・いやその光景に耐えられなかった
私は、地獄のような、隕石や異形の化け物どもが、学園都市を蹂躙するそんな
状態に耐えた、雷神になり、身をもって盾になったそんな私が、上条当麻の凄惨な
その姿に耐えられず、気絶したことを今思い出す。

(アイツはどうしているだろう?・・)

886■■■■:2017/02/14(火) 18:28:52 ID:9vY1CdV.
常盤台の仲間達と表彰を受けながら、私はアイツの顔を思い浮かべる。
傷つき、しかも賞賛されることもない、アイツ。
75億人類のすべての業をしょって神降ろしの術式を飲みつくした上条当麻
その真相を唯一見た私がなぜかその事実を失念していた。
なぜだろう?本当に40日前の自分が理解できない。

まあいい・・しでかしたことはしかたない。私は、ひな壇の学園都市のお偉方を
眺めながら、挽回計画を立て始めた。ほかの子達に勝つために・・
・・・・・・・・・・・・

式典がつつがなく終わり、常盤台の理事長や校長、教職員の賞賛を受けつつ
私は式場を去り、忘れてしまった上条当麻へ会う準備をする。

だが・・上条当麻は信じ難いことにまだ昏睡しながら昏睡中だった。

昔の、12月以前の私と違うことは手段を選ばなくなったことだ。
学園都市復興ボランティアの長のような地位に祭り上げられた私は、書庫や
軍事クラウドへのフルアクセス権を有している。そんな私にとって一学生の
所在を掴むことなどたやすい。書庫にアクセスし、上条当麻の居場所を掴む。

同時に病院のサーバーにアクセスし、電子カルテも読み込む。
(いまだに・・原因も不明?あのヘブンス・キャンセラーが?)
私は信じがたいアイツの惨状に吐き気を覚える。

正直昏睡状態なら彼に会ってもしょうがない。だが・・
( やっぱり顔を見たい・・)数少ない真相を知る、もっとも彼に
近い人間として・・

・・・・・・・・・・・・
私は、あらかじめ掴んでいたアイツの病室へ急ぎ足で進む。

アイツは病床へ横たえ相変わらずスヤスヤ眠っている。蛙顔の医師の話では、いろいろ覚醒措置を試すが、カルテに書かれている通り起きない。ということだ・・

まるで上条当麻の魂が現世への復帰を拒否しているかのようだ。
心電図、血圧、脈動にはなんら問題なく、意識だけが現世への復帰を拒んでいる
そんな感じだろうか?
(ふふ・・だらしない顔・・)
まるで安ど感に包まれた彼は本当にすこやかに、すやすや眠っている。
(不幸な彼を現実へたたきおこす権利は私にあるのだろうか?)

私は反問する。アイツは本当に起きて幸せになれるだろうか?
不幸しかしらない上条当麻、その苛烈な人生にアイツは、アイツの魂はもはや
耐えられなくなっているのではないか?

だとしたら・・そのままアイツが自分の意思で起きようとするのを待つのが正しい
選択じゃないか?そう思う。

私はアイツの見舞いに持ってきた日持ちのきくチョコ・クッキーを机の上におき、そろそろ
完全下校時間も近いので帰ろうとする。

だが・・思わぬ声を聴き足を止める
「御坂美琴ちゃんですか?」
「あれ・・月詠先生?今日は・・」
身長135cmの小さな博識の教師を私は見つめる。
「上条ちゃんは私の大事な生徒です、なので毎日通っています」

「そうですか・・」
「上条ちゃんは、御坂ちゃんを大変気に言っていました。アイツはずごい、アイツには
何度も助けられたと」
(へえ?アイツがねえ・・私の事をそんなに評価していたんだ・・意外だな・・)
思わぬアイツの高評価に私は顔にほっこり笑顔を浮かべる。
だが、その後の月詠先生が語った思わぬ事態が私を動揺させる。
「正直・・上条ちゃんは今微妙な状況です」
「へ?」
「上条ちゃんは今留年の危機です」

「へ?・・でも彼は最後の晩餐事件の被害者では・・」
「ええ他の真面目に通っていた子には何ら問題はありません」
「ですが、上条ちゃんはもともと熱波事件の前から留年の危機でした・・」
「私は、上条ちゃんを守るためにいろいろやっていました。ですが・・今のままでは
、もうかばいきれません」
私はおかしくなる。75億人を3度も救った彼がたかが出席不足だけで断罪される。

887■■■■:2017/02/14(火) 18:29:49 ID:9vY1CdV.
そのしょうもなさに、呆れる。正当に評価できない大人とはいったいなんだろう・・
「ですが・・上条当麻は多くの事件で人類を・・・」
言いかけて私は口噤む・・人類を抹殺しようとしたアレイスターの所業は触れる事さえタブー私はそのことを改めて思い出す。
月詠先生はさらに痛いところ突いてくる。
「御坂ちゃんは、学業成績はどうですか?」
「まあ・・悪くはないとは思いますが・・」

「奥ゆかしいですね・・御坂ちゃんは・・ものすごく良いの間違いではないですか?」
「御坂ちゃんは人助けと自分の立場をちゃんと両立させています。しかも文句のつけようがないレベルで」

「ですが・・」
「ええ・・、ですからここからは私のお願いです」

「御坂ちゃんに上条ちゃんを託したいのです・・」
月詠先生がロリ顔に真剣な表情を浮かべる。
「少し具体的な話をしましょう・・正直期末試験で80%以上の評点がないと
留年させるしかありません」
「まず・・上条ちゃんを叩き起こし、しかも後2週間で80%の評点を取らせる
そんなことが可能なのは学園都市で御坂美琴しかいない・・とそう思ったわけです」

「ですが・・」
「御坂ちゃんは上条ちゃん大好きですか?」
まるで私の恋心などお見通しなようにみかけ10歳のロリ教師は話を続ける。
「私は残念ながらクラスの担当にしかすぎません・・ですが・・御坂ちゃんはどうですか?」
月詠先生が深々とお辞儀をする
「今上条ちゃんを救えるのは御坂ちゃんしかいません」

「月詠先生顔を上げてください」
「私は上条当麻に何度も命を救われました。ですから先生に頼まれなくても、私は上条
当麻を助けるためになんでもします・・ですが・・・」
「正直、あのシスターがいては・・無理ではないですか?」

「御坂ちゃんはなかなかするどいですね」
「そういうと思っていました。上条ちゃんが危機状態を脱するまで私が預かります」
(もう受けるしかないだろうな・・アイツは私の命の恩人だ)
「分かりました、微力を尽くします」

私は月詠先生に深々とお辞儀をして退室する。
まずはアイツを叩き起こす、そんな決意を秘めながら

私は、冥土返しの医師から上条当麻の症状を聞き、すべきことを頭に描き始める。
恐らく生半可ことでは起きないだろう。

普通の医学的な方法では無理だ。
しかもインデックスさえ方法を思いつかないとなると・・

(食蜂でも使うか・・それでだめなら・・・)

私は、アイツを、アイツの留年回避のためになんでもすると誓う
そして、・・その手段は選ばないと・・
まるでこの世を捨てたアイツを、この世へ戻すために・・私は走り始める。

2話へ続く

888■■■■:2017/02/14(火) 18:30:42 ID:9vY1CdV.
以上とある乙女のバレンタインデイ・キス 1話
の投稿を終わります

889■■■■:2017/02/17(金) 19:46:12 ID:xVLGpr5E
歴史上では高卒や中卒で総理や社長になった人とかもいるし
上条当麻の実績や能力や学園都市暗部での扱いなどを考えると
中退でも金や職などには困らないんじゃないかなあ。

890■■■■:2017/02/24(金) 19:03:00 ID:XuQ7L.6g
感想ありがとうございます
おしゃるとおり人間の価値は学歴では測れません

が、学歴のない人間は実際には苦労するのは事実だと
私は思います

891■■■■:2017/02/24(金) 19:05:01 ID:XuQ7L.6g
とある乙女のバレンタインデイ・キス 2話

2月13日(月) 夕刻17時

私は、食蜂に会う前に大丁の提案を纏める。
あの女にはノープランで会うのは危険で誘導されるのも嫌なので
こっちペースで進めることにする。
正直食蜂の力を借りるのは癪だが、他に手段もない以上
選択も余地もない。そもそも上条当麻はなぜ昏睡しているのか?
心電図にも脳波も異常もない、つまり自分の意思で起きることを拒否している。
そういう結論になる。

だとすると、叩き起こすというよりは、アイツがこの世へ復帰する意思を促すよりほかに
ないという結論になる。クリスマスの最後の審判事件とそれ以降の学園都市の復興事業
で気が付いたことだが、アイツのアレイスターによって作られた不幸と、オティヌスとの
対峙で無限ともいえる期間繰り返された一方的な虐殺、アイツはその不条理に耐えた。

私は怒りがふつふつ沸いてくる。何がこの世の基準点だ。何がこの世の審判者だ。
だけど、それは自分にも突き刺さる。自分も含めて誰もアイツの苦悩を理解できていな
かった。アイツの右手を過度に信頼し、知らないうちにアイツなら何があっても大丈夫
と思っていなかったか?

そんな周囲の過度の、過信とも言うべき信頼が知らず知らずのうちにアイツを追い詰めて
いたのではないか?後悔の念が私の脳裏をよぎる。もっとアイツに触れ、アイツの悩みに
アイツの立場に立って考えることはできなかったか?

だけど、覆水盆に返らず、起きてしまったことはどうにもならない。
これから、自分の本当の気持ちを伝えて行こう。そのためにはどんな手を使う。たとえ
自分が苦手な奴だろうが、そんなことは関係ないのだと、自分を納得させる。
・・・・・・・・・・・
私は再建された常盤台中学の生徒会室にいる。食蜂が副会長で私が会長だ。
あの女は、私を焚き付け、「この非常時には御坂さんの野蛮力が必要なの」
なんていい半ば強引に生徒会長に据えた。
(まあそのおかげで金集めもボランティア集めをはかどったのは事実だけど・・)

私は、この女が苦手だ。どちらかと言えば余り関わりたくない。ドッペルゲンガー事件
以来腐れ縁になりつつあるがその関係性にはさほど変わりがないと思っている。
だが、・・上条当麻の事なら話は別
それに、これはおそらく私だけでもダメ、食蜂だけでもダメだろうから・・

私は、会長席に座りながら対面の女に話かける。ほかの委員は席を外している。
「慰労会の件、ありがとうね」
私はとりとめもない世間話から話を始める。
「で、今日はどうゆう風の吹き回し、御坂さんからわざわざ私に依頼ごとなんて・・意外力
一杯ね」
私は席が立ち上がり、防弾仕様の窓から外を眺める。改装時に、木原唯一襲撃や熱波事件
の教訓から、学園の主要部分は核戦争を想定した作りへ私が改装した。

「アンタの事だから知っているだろうけど、上条当麻が昏睡状態なのよ」
食蜂は笑い始める。
「え・・まさかァ知らなかった?」
「意外?正直必死だったのよ・・200万人の家を失った学生や教師のためにこの街の日常
を取り戻す活動でそれ以外の周りが見えていなかった」

「そう?・・」
私は自分の古傷をえぐりそうな食蜂に待ったをかける。
「それ以上は言わないで。ええ・・私は彼の悲惨な姿に心を閉ざしていたかもしれない」

それまでいたずらっ子のようにクスクス笑いをかみ殺していたあの女の表情が真剣なものに変わるのを私は見逃さない。

「それでエ・・御坂さんは今さらどうしたいの?」
「彼は科学力的な方法では覚醒しないわよ。もちろんオカルト力でさえもね・・」
私は溜息をつく。まったくこの女の情報網には適わない。いつも私が知らない情報を
どこからかかき集めて私を焚き付ける。
(それでも・・コイツも結局常識の範囲を超えない・・)

「ええ・・普通の方法ならね・・」
私は、低音で少しドスを効かした声に変える。
「だけど・・アイツを殺す気でやればどうかな・・」
食蜂がぶるぶる震え始める
「正気?」
「このままでは・・アイツは、人生を踏み外すわ・・人助けの末にアイツが人生をふみはず

892■■■■:2017/02/24(金) 19:07:02 ID:XuQ7L.6g
すような事は絶対あってはならない」
「だから私がアイツを叩き起こす」

食蜂が驚いたような半ば呆けた顔で私を見つめる
「本気なのね・・」
「ええ、大嫌いなアンタに頭を下げるほどには・・ね」
私は食蜂へ深々と頭を下げる。

「残念ながら今回も微力な私の力では、上条当麻を正気に戻すことができない」
「だから今回も食蜂操祈の全力を貸してほしい」
2人の間には微音の空調音のみしか聞こえない。

沈黙を破り食蜂が声を発し始める。
「御坂さん・・頭をあげて・・御坂さんは簡単に頭を下げてはいけないわ・・」
「私を変えた彼のことだもの、私も微力を尽くすわ・・」

あの飄々とした食蜂の目から涙が零れ落ちていることを私は確認する。
(食蜂も・・私と同じように彼に救われた一人だから・・)
「ありがとう」
食蜂は目から流した液体をさりげなく、ハンカチで拭き私に囁きかける
「で、・・具体的にはどうする気?」
「科学もオカルトを見逃した彼をどうやって救う気?」

私は、食蜂の服越しでもはっきりわかる豊かな胸を眺めながら口を開く
「ね・・なんで上条当麻は覚醒を拒否しているのかな・・」

「それは・・・・」

「脈動も呼吸も脳波も正常、普通なら8時間も睡眠すれば起床する」
「これは、医学の問題ではないと思うわよ。」
「だから・・これはどっちかというと食蜂の領域だと思うわ・・」
食蜂は慌てて、否定し始める。あらゆる幻想をぶち壊す幻想殺しに洗脳などできない
とでも言いたいように。

「だけど・・御坂さんも知っているように彼の洗脳はできないわよ・・」
「ええ・・全身に効果が及ぶ能力は彼に効き目はない。だけど、確かテレパスなら
私と同じく、貴方の能力も上条当麻へ届くはずよ・・」
「え?・・」
「ダメ元とも言う・・諦めることを確定する前にやれることは全部やろう」

「分かっているわよ・・」

・・・・・・・・・・・・・
病院 2月13日 20時

アイツは、上条当麻は本当に幸せそうな顔で目を覚まさない。
(本当に幸せそう・・正直・・コイツにとって何が幸せか・・私にはわからない・・だけど
私は幸せになるためにコイツに起きてほしい)
それは、私のエゴかもしれない。だけど・・コイツには笑って生きてもらいたい。
それは隣にいる食蜂も同じだろう。それだけでなく、コイツに救われた多くの
不幸な運命をコイツに救われた女の子達の願いだろう。

私はコイツの左手を握る。
「さて始めるわよ」
私は頭に紫電を蓄え、数億Vに達する静電気を作り出す。
「まずは・・これを左手に流す・・」
私は右手でアイツの左手を掴み、左手で頭を触り電流の回路を作る。
青白い眩い輝きが当たりを包む。

「そろそろいいかな・・」
私は夏休みのレベルアッパー事件を思い出す。木山春生を電撃で気絶させた後で
偶然つながった電気回路ごしに、伝わった彼女の記憶。

もちろんそれだけでは、上条当麻の心のドアを開ける事はできない。
だから、
「食蜂・・今回路がつながっている・・私の心の声を彼につなげてくれる・・?」
食蜂が、ち密な操作で私の心の声を上条当麻へ繋ぐ。

食蜂には足りない電気的な出力を私がこじ開け、私ではできないち密な精神回路制御を
食蜂が行うことで、上条当麻の強固な精神に風穴を開ける事に成功する。
とはいえ、強大な電流でまだ心をこじ開けただけにしかすぎない。
私は精神を研ぎ澄まし、繋いだ回路で呼びかけを始める。

893■■■■:2017/02/24(金) 19:08:29 ID:XuQ7L.6g
「よし・・」
莫大な情報が彼の心の声が聞こえる。

多くの不幸な少女を救った記憶。
何度も強大な力に蹂躙され、それに抗い生き残った記憶。
魔神オティヌスに幾万回と殺された記憶。そして、あらゆる時空・次元を
破壊しようとしたアレイスターの狂気。彼の狂気のような経験が奔流のように流れ込んでくる。

分かっていたつもりだった。彼の置かれた理解しがたい異様な環境。彼が立ち向かってきた
この世のあらゆる悪意。その重苦しさに私の心は壊されそうになる。彼が最終局面で私の
参戦を拒否した本当の理由を始めて悟る。直接触れたわけでないのに、少し触っただけで
押しつぶされそうになる。

だけど・・ここで私が折れるわけにはいかない。全人類のため?
いいや、そんな御大層な物じゃない。
救ってくれた幾万の不幸な少女なため・・それは違う。
そう・・全部自分の為だ。だから私はそのすべてをかけて今度こそ彼を救い出す。

・・・・・・・・・・・

正直楽じゃなかった。私は自分の心を侵食する悪意にくじけそうになる。
「くそ・・このままじゃ飲み込まれる」
彼の引き籠った心を邪悪な心が包み込んでいるのがはっきりわかる。
「食蜂・・私の脳を刺激して」
私は生体電流を操作し、私への精神攻撃を物理的に破壊する。

電圧・電流を精緻に操作し、彼の心へ悪意を植え付けている回路を特定し、超電磁砲の
イメージを形作り攻撃を加える。細胞と神経細胞の単位で超電磁砲に見立てたナノ単位の
電磁パルスを使い外科手術的に粉砕する。

だが・・破壊しても破壊してもまるでガン細胞にように再生され、一向に減る気配はない。
(AIMバーストやドッペルゲンガーと同じ・・再生の核を壊さない限り何度も復活する)
私は、食蜂にサインを送り、微細に回路情報から彼に負のイメージを送る核をサーチさせる。
私はその情報を読み取り、素粒子の単位で位置を特定する。
(魂とは言ったところで、脳細胞なしに心は成り立たない。私はそのエネルギーの核を
叩く)
正直私の脳細胞もきつい、普段しないような、数百億を超す脳細胞とその脳細胞から
張り巡らされたニューロン、小さな宇宙とさえ呼ばれる複雑極まりない世界を、慎重に
なおかつ、私の脳への精神攻撃を防ぎつつコアをサーチする作業は目もくらむ作業だ。

雨あられのように悪意の塊が高速回転する電磁シールドに見立てた防壁に突き刺さり
まるで精神内とは思えない程の衝撃を感じる。だけど・・

食蜂だけなら出力が足りない、私では細かな操作ができない。不足するものを補い合った
2人の少女の協業は、ついに・・悪意のコアを見つけ出す。

「みいつけた」
「これがコアね・・」

電圧・電流をち密に調整し、周りに被害を与えずかつ完全に破壊する超電磁砲に見立てた
電磁パルスを形成する。
「アンタを追い詰めている悪意を粉砕する」
「いけえ・・」

閃光が辺りを包みコアの破壊を確認する。
「終わったわね・・」
すべてが終わった私は、精力を使い果たしへたり込む。
(久しぶりの電池切れね・・)

だけど・・本当に良かった・・
(今の自分でやれることはすべてやった)

・・・・・・・・・・・・・・・
2月13日 23時30分 病室

時間にして20分くらいだろうか・・へたり込んだ私は意識を取り戻す。
彼は・・どうなったんだろうか・・

まだはっきりしない意識の中・・私の目は彼を捉える。
あ・・私は兆候を見逃さない。生き物のように瞳孔が動いている。
(よかった・・)

894■■■■:2017/02/24(金) 19:10:55 ID:XuQ7L.6g
「御坂か・・」
「おはよう・」

「ふ・・しばらく・・寝てたな・・生まれて初めて・・ここちよく寝れた」
陰惨な感情から解放された彼はとてもまばゆく見える。

「ところで、御坂・・俺は何日寝ていた・・?」
「えーと51日になると思うわ・・」
「は?・御坂今なんて言った」
「アンタは51日寝ていたのよ・・」
「嘘だろう・・そんなバカな・・」
つやつやとしていた上条当麻の顔色が変わる。
「御坂今何月何日だ・・?」
「え・ああ‥2月13日 のもう後25分で2月14日になるわ」

上条当麻の顔に落胆の表情が浮かぶ
「うそ・・」
「まじで?」
「そうか・・」
上条当麻が血相を変える。
「はあ・・とうとう・・ダメか・・」

世界を3度も救った英雄がたかが日常のそれも底辺校の期末試験で
思い悩むそのギャップに可笑しさを隠し切れない。

「ふ・・はははは・・」

「へ?」

「ふふ・・感謝してほしいわね・・」
「上条当麻の顔が驚きに包まれる・・」

「それは・・」
「まあ・・世の中には知らないことがいいこともあるんじゃないかな・・」
「まさか・・」
「ふふ・・細かいことは気にしないの・・」
私は、彼の学校のサーバーを改竄し、出席日数の記録をごまかそうとした。
(だけど・・そんなことは上条当麻が喜ばない)

「いや・・御坂の能力のすごさはよく知っているし、絶対それがバレないこともわかる
けどさ・・」
「だけど・・不正はよくないと思う・・」
「もちろん、俺の留年を回避するために御坂がそんな事をしたことは感謝する」

「だけど・・俺のために御坂に犯罪に手を染めさせるわけにはいかない」

「ありがとう。だけどね。・・」
「正直アンタは日本とか学園都市の基準で何か誇れる実績がある?」
「アンタが学園都市はおろか世界を3度救ったなんてさ・・誰が評価するの?」
「それを評価すべきアレイスター・クロウリーはもうこの世にいないのよ」

「それは・・」
「もちろん私にとってアンタは命の恩人よ。それにイギリス清教とか・・アンタを慕う
人間は少なく無いでしょう・・」
「だけどそれがアンタの・・」
私は敢えて核心はつかない。またトラウマをこじらせても困る。
「まあ・・ここから先は言うまでもないわね・・」

「ああ・・御坂の言う通りだよ」
「俺は確かに自分自身が見えてねえ・・いくら魔神や最強の魔術師に勝とうが
俺の成績不振や出席日数不足の事実は消えしねえ・・」
「つまんねえよな・・ライトノベルの主人公なら全部チャラになってさ・・なんとなく
出席不足も成績不振も全部うやむやになってさ・・」

「安心して私もアンタの悩みは分かっているつもり」
「ちゃんと・・後づけだけど統括理事会の特別公休に振り替えているわ」
「まあ・・やろうと思えば成績だって下駄をはかせるわよ。」

「御坂・・」

「約束したでしょ・・」
「私は、必死で御坂美琴と周りの世界を守り切ったわよ」
「その中にはアンタの世界を守ることも含まれるのよ」

895■■■■:2017/02/24(金) 19:12:27 ID:XuQ7L.6g
「御坂にはかなわねえな・・ありがとう」

上条当麻にとって特に11月以降、御坂美琴の存在は多きなものになりつつある。
その事実は、12月の頃には第3者には見え見えの事実だが、以外に鈍感な美琴は
気が付くことはなかった。だけど・・3度目の命を懸けたやり取りで美琴も上条の
自分に対する思いを感じ取ったのだろうか・・初めて美琴は自分の心を伝える覚悟
を固める。

「いいのよ・・」
「私はいつでもアンタの味方になる。」
私は、気分が高揚していたのだろう・・それに・・正直アイツは、上条当麻は
いつみても危なかったしい。最後の審判事件のあの時だって、結局自分の命を投げ出した。
そんなアイツに単純に明日は明日の風が吹くなんて予定調和はあり得ない。
そのことに気が付かされた私は、いつもなら絶対しない選択を選んだ。

(もっと・・いい雰囲気で言いたかったわね・・)
(だけど・・今この場で言わなければ後悔する)

一言いえば結果は出る。だけど、臆病な自分は10月のある日にそれを意識して以来
何度も言う機会があったにも関わらず最初の一歩を踏み出す事が出来なかった。
(だけど・・今しかない。)

「ね・・」
正直、一言言うのがつらい。鼓動が高まり、脈動が早くなる。
バクバクと効果音のような心臓の鼓動。美琴は入学試験もレベル5に初めて認定された
システムスキャンもいつも驚くほどの平常心で乗り越えてきた。

だけど、この恋愛感情だけは、うまくコントールできない。自分だけの現実を侵食され
レベル5には恥ずかしい能力の暴発する引き起こすほどの、管理できない感覚。
(だけど・・それは決して恥ずかしいことではない)
(そして、・・分かってもらえるなんて・・そんな他力本願では通じない)

自分が思うなら、自分が抱えきれない思いを抱えるなら、それを伝えなければならない。
だから・・私はこの思いをはっきりと誤解のしようがない、あの鈍感野郎にも分かる言葉
で伝える。

「ね・・上条さん・・当麻の傍に私の居場所はあるのかな」

言い方を変えたせいなのか、上条当麻の目に驚きが浮かぶ
「え?御坂何を」

「これは一人の女の子の話よ・・」
「8月の夜、その子は、化け物に蹂躙され、1万人の血を分けた親族を嬲り殺しに
された。助けを求めようにも敵はこの街そのもの」
「アンタはその絶望した女を右手ひとつで救いだした。」
「でも素直になれないその子は、自分の気持ちを気が付くこともなく、その想いを伝える
こともできなかった。」
「でもその子は、アックアという化け物に、アンタが立ち向かったときに自分の莫大な感情にようやく気が付いた」
「それが、恋という固有名詞で書かれる感情であることにようやく気が付いた」

いつもはおちゃらけた上条当麻の顔色が真剣な表情へ変わる。
「本当に・・不器用だったわ・・御坂美琴という女は」
「でももう私は自分の心を偽らない」
(もう言ったことに後悔しない)
「上条当麻さん、私は貴方の事が、大好きです。私は貴方のためになんでもやりますので
どうか、私を傍においてください」

「御坂・・」
上条当麻の顔が驚きに包まれる
ふう・・
上条当麻はよろよろと長期の入院で弱り切った体力を振り絞り立ち上げる。
「本当に・・いいのか?」

「え?」
(いったい何を言いたいんだ・・この男は・・まさか・・)
「俺は・・美琴が知っている通り、不幸な男だ」
「しかも・・成績も良くない」
「金銭的にも恵まれない」
「まあ・・そんなことは御坂美琴ほどの人物が全部承知な事は分かっている」
「正直・・美琴の気持ちはうれしい」

896■■■■:2017/02/24(金) 19:14:36 ID:XuQ7L.6g
「だけど、美琴は、常盤台いや学園都市の顔と言ってもいい存在」
「そんな美琴に俺は釣り合うのか・・?」
「底辺の高校で、進級さえままならないそんな男に」
「学園都市でも最高レベルの学校でトップの成績を誇る御坂美琴がな」

(私はおかしくなる・・魔神さえ、学園都市の独裁者さえ右腕でぶっ飛ばした人智を超えた
存在そんな人物がたかがレベル5くらいで何をためらうのだ)

(だけど・・そこまで真面目に考えてくれるのは嬉しい)
私は、少し変化球を投げ返す
「ふふ・・当麻ありがとう。そこまで私の事をちゃんと考えてくれて」

「美琴・・」
「だけど・・当麻・・私は当麻を愛する気持ちに嘘はつけない」
私ははやる気持ちを抑えて呼吸を整える

「ごめんね当麻」
「いつも素直になれなくて私は、自分の思いをきちんと伝えなかった」
「だけど、不器用な女の子の告白は本心よ・・嘘偽りもない。それに・・」
「私が、上条当麻とその周りの世界を守る。どんな手を使ってもね」

「美琴・・」

「だから答えを聞かせて、こんな可愛げもない御坂美琴は上条当麻の傍に居ていいの?」

「え・・それは」
「まだ答えを聞いていないわ。」
何かを悟ったのか当麻が訥々としゃべり始める。

「正直突然の事で、本当に俺が美琴を幸せにできる自信もない」
「だけど、俺は美琴を大事に思っているし、とても頼りにしている」
「だから、美琴の俺を思う気持ちは大事したい」

当麻は、背筋を伸ばし惚れ惚れするほど真摯な顔で、私を見つめる。
「俺は、正直一人の女の子の人生を保証できるほどの甲斐性もない」
「だけど・・」
当麻は私の手を病み上がりとは思えない意外としっかりとした握力で握る。
「美琴は自分の気持ちを偽らずに答えてくれた」

「俺も、自分の気持ちに偽らずに答える。」
「美琴を幸せにすることは多分俺にはできない」
「だけど、俺は美琴が傍にいれば幸せになれると思う」
「だから俺が美琴の傍に居させてほしい」

「本当に・・本当にいいの・・?」
私は当麻の手を握り返す。
そして、私は当麻にはっきりと伝える
「2人で一緒に、お互いとその周りの世界を守ろう」
当麻は笑い始める。

「そうだな・・」

「まずは・・期末試験から頑張ろうか」
「そうね。しばらく人助けは忘れてね・・」
「ああ」
「それと」
病室のデジタル時計が2月14日の午前0時を確認し、私は病室の冷蔵庫から、
病院内のコンビニで買ったショートケーキと缶コーヒを当麻に渡す

「これは私の気持ち」
「え?」
「御免、最近までボランティア活動でバレンタインデーのこと
すっかり忘れていた」
「だから」
私は、無防備な当麻の頬へ軽く接吻する。
その頬の感触が甘酸っぱくとても暖かい

「明日からまず勉強頑張ろう」
「そして当麻の失った日常を取り戻そう」
「ああ」
やっと届いた片思いの恋
これでやっと自分に素直になれたそんな気がした。

続く

897■■■■:2017/02/24(金) 19:15:57 ID:XuQ7L.6g
以上とある乙女のバレンタインデイ・キス 2話の投稿を終わります

898■■■■:2017/03/09(木) 11:35:43 ID:XdD4pC7s
とある乙女のバレンタインデー・キス 3話 (完)

3月1日(水) 19時

「当麻できたわよ」
私は、作り終えたブランド豚とキャベツの生姜焼きを机の上に並べ終える。
適度にカットしたレタスとオニオンと大根とプチトマトとキュウリに胡麻をあえた
サラダと、カブと油揚げとオニオンを赤みそで煮た味噌汁を添える。

少量の麦と雑穀を混ぜた栄養バランスを考慮した無洗米をどんぶりに盛る。
16歳の高校生の食欲を考慮し、溢れんばかりに盛り付ける。

宿題を終えた当麻は目を輝かせ、食卓に着席する。

「ありがとう。でも本当飯くらい俺が作るぞ。美琴の分を含めて」
「いいのよ。もう少し基礎力がつくまでは私にさせて」
当麻が苦笑いを始める。
「はは、ありがとう。でもさ期末試験も無事終わったしもういいよ」

「まだ油断するのは早いわよ。でもよく8割取れたわね」
私は、全科目赤点回避どころか8割を達成した当麻の偉業を称える
「全部・・美琴先生のおかげです」
「何言ってるの?私はお膳立てしただけよ。全部当麻の実力よ」

バレンタインデーの電撃告白から約3週間、当麻の学寮へ通いほぼ毎日勉強を
付き合っている。炊飯・洗濯・買い物、いわば雑事をすべて私が引き受け、通い妻のような
日々を続けている。犬も歩けば不幸にあたる少年に机に向かせる作業は困難を極める。

私は12月の熱波事件以来築き上げた人脈をフル稼働させ、問題へ向き合った。

出席日数不足は、当麻の記憶をもとに魔術関連や暗部関連の欠席日数をすべて統括理事会へ掛け合い、
特別公休へ振り替えさせた。これで期末試験で8割突破の必要はなくなったが、ほとんど
授業に出ていない当麻に可を取らせること自体が難しい。

そこで、月詠先生経由で入手した指導要領と過去の期末試験をAIで解析し、分かりやすい
レジュメと解説集を作成した。それの徹底した反復学習だけをしてもらった
夕刻4時から7時まで、時間缶詰めにして、勉強に集中してもらった。
(それにしても・・)
私は笑いたくなる。本当に想定問題集してやっていない。だが
上条当麻は、知識はないが異様な集中力発揮し、とんでもない高得点をマークする。

(へえ・BIG DATAのAI解析の想定問答集だけやっていきなり全科目8割突破?)
当麻がにこやかに、食事を終えてしゃべり始める
「本当に美琴先生には感謝しかありません」
私は、当麻の幸せそうな顔を見て満足する。
「ありがとうでも、まだ油断しないでね。アレは出る問題を予想しただけだから」
「まあ今は贅沢言えないけど、基礎なんて無視よ・・そんな時間もないしね」
「だからそうね3月いっぱいは付き合うわ・・基礎をやり直すまで」

「え?」
「えじゃないわよ」

「いや・・もうしばらく休んでもいいんじゃない?」
「まったく・・基礎なんか全然できてないわよ」
私は少々声を荒げる。喉元過ぎれば熱さを忘れる?いい加減にしろと言いかけるが
当麻は申し訳なさそうに話を続ける
「いや・・」
「美琴に何から何までやってもらって申し訳ない」
私は当麻からの意外な答えに当惑する
「え?」
私は、留年回避の緊急事態とはいえ当麻を拘束しすぎていたのか不安になる。
「ごめん拘束して迷惑だった?」

「とんでもない、美琴が一生懸命俺の留年回避のために骨を折ってくれたことは
本当に感謝する。」
「今回こんないい点が取れたのも全部美琴のおかげだ」

「そう?じゃ・・まだそばにいてもいいわよね?」
当麻が溜息をつき始める
「いや・・不安与えたら御免・・そんなつもりじゃないんだ」
「せっかく美琴が告白してくれたのに、デートもできなくてさ・・」
私は鈍感だと思っていた当麻からの思わぬ提案に単純だが嬉しくなる
「え?それって」

899■■■■:2017/03/09(木) 11:36:52 ID:XdD4pC7s
「美琴もそそかしいな・・今のところは何にもできない俺の感謝の気持ちよ」

「そんな・・何もできないなんて、私は当麻に何度も助けてもらって」
「助けてもらった大恩を返していないわ」

当麻がにこやかに笑いかける。
「なあ美琴・・もう美琴は十二分の俺を助けてくれた。それこそ何度も何度も
危ないところを・・しかも自分の命を懸けて、だからもう8月の件なんて
とっくに返済済みじゃねえのかな」

「本当にそう?」
「ありがとう、ふふデートなんて楽しみね・・」
「いつ行く?」

「2日早いけどさ 3月12日なんてどうかな?」
私は目を丸くする。
「へえ・・いいじゃない?日曜日だし・・まさか・・?」
「ああそのまさか」

「ふふ・・当麻て気が利くのね、うれしいわ」
「ありがとう」

期末試験の乗り切りが忙しく、せっかく告白したのに全然甘い時間を過ごしていない。
そんな中での当麻からの申し出に心を躍らせる。

「デートプランはお任せするわね・・楽しみにしているわ」
私は、食器を洗い終え、当麻の手を握る。彼はこの謎の手ひとつで世界を救った。
その熱い想いがじんわりと伝わる。
「当麻の手が気持ちいい」
「美琴の手もな・・」

「じゃそろそろ帰るわね」
「ああ門限だったな・・」

「本当は泊まりたいけど、当麻を浴室に寝せるわけにもいかないしね」
私は、うきうきと心を弾ませながら、玄関で当麻に軽く接吻する。

「じゃ・・また明日ね」
・・・・・・・・・・・・・・・・
3月12日 (日)午前9時

俺は、生まれて初めてのデートでどきどきしている。
(まあ・・今にして思えば・・9月30日のアレはデートだったんだろうな)

さすがに鈍感な俺でも、ここバレンタインデー以来素直な美琴を見ればあれが
照れ隠しのオブラートに包んだデートであるのは分かる。
(まあ美琴らしいちゃらしいけどそれに気がつかない俺も大概だな)
(紆余曲折の末こうして、晴れて恋人になったわけだけどな)

俺は、学寮で朝食を美琴と一緒に食べた後、美琴が呼んだタクシーの後部座席で
美琴の腰に手をあてながら目的の遊園地へ向かう車内で他愛のない会話を始める。

美琴が少し申し訳なさそうにしゃべり始める。
「本当はこんな時くらい、おしゃれしたいけど」
「え?」
「まあ、校則で外出も制服着用義務があるからね」
「私が無名ならいいんだけど、さすがに最近は少しばかり顔が売れちゃったし」

「少しばかりか?」
「ただのボランティアよ」

「そんな有名人を1月も拘束してすまねえなあ」
「美琴本当にありがとうな」

「え?」
「留年回避と奨学金増額に奔走してくれて」
「まあ多少はね だけど基本は全部当麻の頑張りよ」
俺は、美琴のサラサラの茶髪を撫でる。ほのかなリンスの香りが漂ってくる。

(本当、柑橘系か美琴はいつもいい匂いがするな・・)
俺の美琴のイメージはこの匂いの記憶がバック・グラウンドにある。

900■■■■:2017/03/09(木) 11:38:39 ID:XdD4pC7s
柔らかなでも弾力のある太ももの感触、小さなだけど、形のいい胸、引き締まり少し
割れた腹筋、服越しに伝わる感触がすべて健康的で艶めかしい。
(今更だけど美琴は綺麗だな)
(それに・・前より随分大人になったな)

夏休みの頃はまだ子供のような顔だった。素材のよさはあれど、まだ粗削りの
面はぬぐえなかった。だが11月以降の戦いと学園都市崩壊の危機は彼女の
精神を研ぎ澄まし、その鍛錬が彼女の顔を研ぎ澄まされた美しい大人の女性へ変えている。
(こんないい女を恋人にして不幸なんて言ったら罰当たりだな)

俺は、美琴の綺麗な顔を撫でながら今は自分の恋人になった女性を眺める。
「今日は、楽しもうな・・」
美琴がまばゆいばかりの笑顔で答える
「うん・・」
・・・・・・・・・・・・・・・
遊園地で、ひととおり絶叫系マシンを試し、おなかもすいたので少々遅めの
昼食を取る日替わりランチを注文し、水を飲みながら会話を始める

美琴が楽しそうに会話を始める

「久しぶりに楽しかったわ」
「そうか?美琴には物足らないんじゃないか?」
「は・まあ高所の飛行は慣れているけど、これはこれで楽しいわよ」
「それに当麻の気持ちがとても嬉しい。バレンタインデーの返礼に
ホワイトデーの前にこうゆう場を設定してくれたことがね」
「ちょっとありふれていたかなて反省しているけど」
「いいのよ・・こうゆうのは気持ちが大事だから」
「ありがとうな」
美琴は、本当に心の底から楽しそうに笑うのを見て俺は楽しくなる。

そしてウエイターが、日替わりランチのハンバーグ定食を2人分机上へ置き
伝票をおく。ウエイターが美琴の顔を見て顔が微笑むのに俺は気がつく。

結構イケメンのウエイターが、超電磁砲の御坂美琴と気がついたのか声をかける
「御坂美琴さんですか」
美琴が、目をぱちくりさせる
「え?」

「やっぱりそうですか・・うちの学校を再建されているときにお会いしました」
「え?ああ××さんですか・・」
「うそ・・覚えていました?・・さすが記憶力もレベル5ですね、感激です」
「そろそろバイト時間終わるので後でサインもらっていいですか、着替えたら来ますので」

(やっぱ・・美琴は凄いな・・)
分かってはいた。能力開発で教育の成果と言われていた美琴。そしてクリスマス以降
崩壊した学園都市再建を主導した美琴。それに多くのファンがいて、美琴が広告塔
のような役割をはたしている事も。そんな学園都市で誰もが名前を知っているような
女が彼女な事も。

少し悩んでいる間にいつも間にかバイトのウエイターが着替えを終え、サインペンと
Tシャツのようなものを持ってくる。
「御坂さんここにサインしてもらってよろしいですか?」

「どうぞ、でもこそばゆいわね。私なんかのサインでいいの?」
「学園都市の住民は、御坂さんがあの日体を張って学園都市住民の避難民を守り
その後の再建工事の陣頭指揮に立っていたことをよく覚えいます」
「私には芸能人なんかより御坂さんのほうがよっぽど素晴らしい人です」

「なんか照れるわね・・私は皆のちょっと前に立っていただけで、大したことは
してないわ。本当皆で力を合わせたおかげよ。」

美琴は照れながらも、サインは書き終えた。
「御坂さん、本当ありがとうございました、うちの生徒会長も今度、御坂さんに
講演を開いてほしいと言ってましたので後日常盤台の生徒会へご連絡するとおもい
ますのでよろしくお願いします」

「え?ああ**さん?よろしくお願いしますね。副会長の食蜂にも伝えておきます」

俺が寝ている間に、少女だった美琴はすでに深く学園都市に根を張り
独自の世界を構築していることに驚きを感じる。

それは誇らしい。自分は、こんな素晴らしい女を彼女にしているんだ・・だけど、

901■■■■:2017/03/09(木) 11:42:39 ID:XdD4pC7s

胸がもやもやする。嫌・・はっきり言えば面白くない。

(俺てこんな嫉妬深かったのか?)

俺がそんな負の感情に包まれているとき、突然耳元で声がひびく
「ね・・当麻・・なんか悩んでる?」
「え?」

「あの子のこと?」
美琴には全部バレていたらしい。下に恐ろしくは女の直感
「ふふ・・うれしいな・・あのフラグ男に嫉妬されるなんてね・・」
「え?」
「私も当麻にいつも嫉妬していたの」
「だからよくわかるわ、当麻の気持ち」
「でも・・私には当麻しか見えないから安心して」

「そうか?」
「当麻て女の子にモテモテだったじゃない正直私はいつもいらいらしていた。それが
嫉妬という感情だという事に気が付いたのは後の事だった」
俺は美琴の言葉に驚く、俺がモテモテ?誰が?いつ?

「はは・・そうか?」
「今にして思えば、私がAAAに手を出したのも当麻に、もて男の上条当麻に
捨てられたくない一心だったかもね」

俺は美琴の衝撃の韜晦に驚く
「俺がもて男?いや・・そんな」

「不思議よね・・あれほどいろんな子に好かれていたのに
最初に告白したのが私なんてね」

「でも私が最初で本当によかった」
「え?」
突然美琴が小言でささやく
「ALLis fair in love and war」
「何?」
俺には美琴の早口の無駄に発音のいい英文らしき
言葉の意味が全く理解できない
「恋する乙女のひとりごとよ」
「そのうちわかるわ」
「だから今日は楽しみましょう」

素直になった美琴は好意をはっきりとぶつけてくる
手を握り、無防備の健康的な太ももを見せつける。
(ほんとう、コイツはいいやつだな)
いるだけで周りを照らし、生きる勇気を与える存在。
匂い、雰囲気、そして実力に裏付けされた自信

そしてとびっきりの笑顔が眩しい。この笑顔が見たくて
デートをしているんだから

・・・・・・・・・・・・

3月12日 17時

楽しい時間ほどすぐに終わる。そんな経験はないだろうか
今日の俺がまさにその状態だ。美琴はいつも以上に素直に俺に好意をぶつけ、その
笑顔に俺の全身が活性化する。いつまでもそんな時間が続いてほしい。本当に
そう思う。だけど・・楽しいひと時はあっという間に終わり、俺たち2人は観覧車で
最後のひと時を過ごす。まだ肌寒いが順調に伸びた早春の残照が明々と照らす。

その残照で美琴の顔が赤く染まる。だがその赤さに俺への気持ちが混じっている
事を俺は見逃さない。

俺は、可憐な少女の顔が俺への意識で赤く染まるのが素直にうれしい。
(今日は本当に楽しかった)
ファンシー・グッツの店できゃきゃと少女らしくはしゃぐ少女の素顔、そんな少女
が超電磁砲という御大層な2つ名を持ち、学園都市の再建の陣頭に立っていたギャップ
に驚かされる。そんな素顔を知っていることがうれしい。

「なあ、美琴」
「ん?どうしたの当麻」

「俺は、美琴から告白されたときうれしかった
「え?」

902■■■■:2017/03/09(木) 11:44:43 ID:XdD4pC7s
「美琴は、さっきの子みたいに、多くの子に慕われている。常盤台でも、学び舎
の園でもそして、学園都市全体でも」
「そんな御坂美琴に俺は釣り合うのかなんてな」

美琴が何か言いたそうだったが、俺が目で止める

「だけど、美琴の鼻歌を歌いながら夕食を作るときの
生き生きとした表情や、毎日学校へ出るときの笑顔を見るうちに、そんな
小さなことに事にこだわった自分が
恥ずかしくなった」

「今は美琴の気持ちに誠実に答えることが大事だと思うようになった」

俺は、内ポケットから小さな宝石箱を取り出す、そこから安物のリングを2つ
取り出す。

「正直まだ俺は高校生で、美琴のようなお嬢様を一生ささえるだけの甲斐性も
ない」
「それに美琴も知っている通り俺は目の前の困った女の子をいつも助けようとすること
をやめるつもりもない」

「だけど・・美琴を思う気持ちは本物だ」
「エンゲージリングなんてそんな大層なものじゃなく安物だけど」

「これを一緒にしよう」

小さな、ささやかなリングを美琴の指にはめる
何をしゃべるかわからずどきどきしていた美琴の顔がぱあーと明るくなる。

「本当に、はめていいの?」
「ああ」

「ありがとう」
「これからは一緒に生きていこう」

「私も精一杯努力するわ」

俺は美琴を抱き寄せる
「美琴、・・今まで美琴の気持ちに気が付かなくて御免」
「だけど、これからは何があっても一緒だ」

俺は美琴を強く抱きしめる
「今はこんなことしかできなくて御免な」
美琴がそっとよせた頬に想いを籠めて接吻をする
む・・むちゅう・・

ぶは・・
美琴が開口一番しゃべり始める
「いままで私はいつ当麻に捨てられるか、置き去りにされるか不安でしょうがなかった」
「でも、今日やっと言える。私は本当に当麻と一緒に同じ目線で歩いていける」
「だから・・」

「当麻は今まで通り、自分の信じる道を歩いてほしい」
「私は、当麻を信じるから」

観覧車は、1回転を終え、入口へ戻る

俺は美琴をエスコートして、出口から出る
「今日は、1日ありがとう」
「残念ね、でも・・当麻本当ありがとう」

美琴がどこか遠いところを見るような表情を見せる
「正直私悩んでいた」
「え?」
「当麻が信じられなくてね、実は飛び級を申請しようかと思っていたのよ」
「はあ?」
「少しでも当麻の傍に居たかった、離れたくなかった」

「でも、常盤台の生徒会長なんてしてるし、こんな学園都市や学び舎の園が
混乱している時期にそれも無責任だと思ってね」
「でも今日リングをもらって本当当麻と一緒になれると確信できてうれしかった」
「ありがとう」

「美琴・・」
「ね。この前の約束覚えている?」

美琴が今度は、満面の笑みで俺を見る

903■■■■:2017/03/09(木) 11:47:08 ID:XdD4pC7s
こんな笑顔が素敵な女の子の一番になれたことが本当にうれしく、そして
誇らしい

俺は、忘れもしない、その言葉こそ美琴が一番のぞんでいるものだから
「2人で一緒に、お互いとその周りの世界を守ろう」
「もう、何があっても美琴を離さない」

「ね・・今日はホテルへ行かない?」
俺に断る理由もなかった、もちろんすることはちゃんとした上だが、その晩は
俺と美琴にとって、特別な一夜になった

・・・・・・・・・・・・・
その4年後 2月14日 (日)

今日は私にとって、特別な日になる。そう女性にとって一番特別な日
を迎えている。結婚し姓が変わることになった。もちろん上条へ変わる。

激動の4年を乗り越え、ようやくこの日を迎えられた。死にかけたことも1度や2度じゃない。その間に私は駆け足に高校と大学の学部を飛ばし、大学院も先日卒業した。
忙しくも充実した日々だった。まだ妹達問題を含めて、解決していない問題は多い。
だけど、一歩一歩2人・・いや常盤台の関係者それに多くの人の協力を得て一度は地の底へ落ちた学園都市の再建進めている。

今日の式は身内だけのささやかなものだが、披露宴には何人参列するんだろうか?
招待状は約1万枚出したが・・

神父さんの声を聴きながら私はこの4年ですっかり精悍になった当麻を見つめる。
いよいよ、当麻の宣誓も終わり、私ははっきり、腹の底から声を出す
「誓います」
女として、自分の信じる者守るために、そして愛した人間を必死で守る喜び
を噛みしめる。
安物でない、本物の結婚指輪を眺めながら、
私は誓う、何があろうと当麻を守る
私は誓う、何があろうとこの街を守る

そして2人で絶対幸せな家庭を築くと


終わり

904■■■■:2017/03/09(木) 11:48:45 ID:XdD4pC7s
以上とある乙女のバレンタインデー・キス 3話 (完)
の投稿を完了します

905■■■■:2017/03/12(日) 21:00:45 ID:Fm/FqZk2
ありがとう!!!!ありがとう!!!!!

906■■■■:2017/03/16(木) 15:40:46 ID:inah4EXk
とある科学の超荷電粒子砲Ⅲ 17話:4章―②

9月27日(日)中部欧州標準時(夏時間) 午前7時30分 
パリの北東25KM シャルル・ドゴール国際空港

私と当麻は、学園都市を正午に定刻通り出発し、約9700KMを約2時間の
フライトののち、現地時間の午前7時に到着する。
(時差7時間)

秋も深まったせいか、ようやく日が昇ったばかりで、しかもまだ夏の気配が残っている
学園都市からきた私達には晩秋の気配する感じる陽気だ。

学園都市発行の外交官用パスポートの威力でごく簡単な検査で入国手続は終わり、VIP
出口から、足早にタクシー乗り場へ向かう。

予め予約した送迎タクシーを見つけ、当麻をそこまで誘導する。たった49ユーロで大型バンでホテルまで運んでくれる。
(まあ以外に物価の高いパリの割には安いわね)

私は、当麻と後部座席に乗り、運転手に行先を念押しし、バンは動き始める

フランス語の表記が珍しいのか、それとも私がフランス語を喋るのに感心しているのか
当麻がお上りさんのようにきょろきょろしている。

「美琴はすごいな・・」
「え?」
「当たり前のようにフランス語喋っているのがさ・」
「まあ常盤台では、授業は英語、第2外国語までは最低の教養だからね」

当麻は、驚いたような顔をする
「へ・・俺の学校じゃ日本語さえ怪しい奴が多いのにな」
「当麻それは・・自慢することではないわよ」
(まったく・・こいつは・・だけど・・まあ些細な問題ね本質的には)

「へいへい美琴先生」
「茶化さないの、まあでも・・これつければ会話は分かるわよ」
私は、当麻がまったくフランス語ができないことを思い出し、それをカバーする装置をカバンから取り出す

「あ・・これね・・英語とフランス語を日本語へ翻訳してくれるイヤリングね」
「まだ試作品のレベルだけどね」

「へ・・すごいな」
「まだ、ネイティブから見るといまひとつらしいけど実用性の点では問題ないわね」

「AIか・・」
「そうそれが今回の会議の主題」
車窓からパリ郊外の副都心ラ・デファンスの超高層ビルをながめながら
私には当麻に語り掛ける

街並みが郊外から都市のそれに代わり、絵葉書のような大都市が広がる
「そろそろパリ市か?」
「ええ」

外周高速道路を超え、パリ市に入る。モンマルトルの丘を越え、どこかの旅番組で
見たことがあるパリ中心部に入る。
「ホテルは?」
「インターコンチネンタル・パリ・ル・グランよ」

「へえ・・高そうだな、でなんでそこ?」
「会議場もそこだから」
「なるほど」
「中心部だから観光にもいいわよ」
「ルーブルなんかも歩いていけるわ」

当麻は、パリの中心部をお上りさんのようにきょろきょろ見回す。
学び舎の園というパリの模型のような街を見慣れていた私にはさほど
珍しくない風景だが、当麻にはよほど物珍しいのだろう。

「さあそろそろかな」

渋滞もなく空港から40分、目的地のホテルへついたようだ

907■■■■:2017/03/16(木) 15:42:16 ID:inah4EXk
タクシーはホテルのエントランスへ停車し、私は当麻を促し外へ出る。
「なかなかいいホテルでしょ」
「ああ、本当街の中だな」

「荷物おいたら少し観光しようか、今日は行事ないし」
「ああ」

チェックインを終え、荷物を部屋に置き、エントランスへ出る。
WEBで予約したタクシーが到着していることを確認する。

「じゃ・・お上りさんツアーでもしましょうか?」
「どこへ?」

「まずはベルサイユよね・・」
当麻がバカにしたような顔をする、どうせ言いたいこと分かっている
「まあいいじゃないの、定番も大事よ」
私は何か言いたそうな当麻の口を封じる。
「じゃ、いくわよ」
私は当麻をタクシーの後部座席に乗せ、憧れのベルサイユへ向かう。
・・・・・・・・・
中部欧州標準時(夏時間)9時 パリ近郊ベルサイユ

「ついたわね」
「へえ・・写真通りだな」

「まあ、そうね観光の目的の一つは記憶の確認作業だからね」
「まあ庭園にトリアノン宮殿もあるけど、全部回る時間もないわ」
「さっさと回りましょう」

日曜日のせいだろうか、柔らかな晩秋の日差しが降り注ぐ中、入館
待ちの観客でごった返している
「随分混んでいるな・・」
「日曜日だからね・・」

スマートフォンで自撮り撮影をする、中国人やターバンを巻いたインド系のご婦人
などそこに世界の縮図のような風景が広がっている。
18世紀の啓蒙主義が作り出した幾何学模様の庭園と、雑多な人々がそこに「近代」という
姿を形づくる。

「へえ?さすが世界一の観光地フランスは違うね・・」
「ふふ・・さっきは馬鹿にしてたじゃない?いいでしょベルサイユ」

「まあ、予想通りだけどな、でもそこで空気を吸うのはいいわ」
私は恋人繋ぎをしながら、会議用の黒のタイトミニスカートと7CMのハイヒールの
履き具合を確かめながら当麻の腕をつかみ、ベルサイユ宮殿の庭を観覧する。
陽光に白のブラウスと黒のジャケットが映える。

「へえ・・まるでルイ16世になった気分だな」
私は頭を抱える、よりによってその言葉の選択はないだろう?
コンコルド広場でギロチン処刑されたその人を選ぶか?デート中に
「縁起でもないわね、末路は知っているでしょ?」

「え?有名な王だよな?」
「フランス革命で処刑されたね」
(一般常識がないのは罪ね・・まったく)

「え?」
「まったく・・中学生でも、ここはルイ14世と言うでしょうに、太陽王と呼ばれた」

「ああそうか・・でもベルばらだと確かルイ16世が王だったじゃん」
私は少々おかしくなる。
当麻が大昔のアニメを、しかも少女向けを知っていた事実に
「へえ?当麻がベルサイユのばら知っているんだ?」

「意外か?」
「まあでもいいわ・・今度ベルばらの話を教えてあげるわね」
当麻が明らかに嫌そうな顔をするが私は敢えて無視する。
私がさらに名作ベルサイユのばらをのツボを語ろうとするが肌に異様な雰囲気を感じ
小声に切り替える
「ん?」
「ねえ・・なんか嫌な感じがする」
「嫌な?」

908■■■■:2017/03/16(木) 15:43:23 ID:inah4EXk

「人の精神を誘導するような、微弱のエネルギーを感じる」
「人払いの術式か?」

「おそらくね」
「どうする?」
「まあ、攻撃する気なら攻撃するでしょ」
「多分・・そのうち」
さっきまでごったがえしていた、庭園がまるで最初から誰も
いなかったように無人になる。

何秒かの静寂の地突然爆音が響き渡る

そこへ軍用ヘリらしきものが忽然と出現する。

ご丁寧にミサイルまで備え付けている。バルカン砲もぴったりと私と
当麻を狙っている。
「へえ・・」
(私を殺すには力不足もいいとこだけど)
私は舌打ちをする。あれを落とすことはさほど労力は要しない。
(だけど・・私を狙ったテロとなると会議そのものがおしゃかになる)
(仕方ない・・)
私は頭で最善解を練り上げ、即実施する。
・・・・・・・・・・・・
9時40分

ヘリは突然方向を変え、どこかへ飛び去り、人払いの術式は解除されたのか
元のにぎやかな観光地の風景を取り戻す。

当麻が驚いた顔で私を見つめる
「一体何が・・」
「え?制御装置をハッキングして無理やり遠隔操縦で移動させているわ」
「はあ?」
「外の軍用ヘリの運行プログラムの解析なんて余裕よ」
「まあ、今頃はドーバー海峡へ向かっているんじゃないの?」
私は、冗談めかして言う。
実際には学園都市のパリ近郊の協力都市へ向かっているはずだ
(まあ、捕虜よね・・背後関係を調べる必要があるし)

「いやそれより」
当麻の言葉を遮り結論を先に言う。
「決まっているじゃない相手は私の邪魔をして、会議をぶち壊すつもりよ」
「おそらく、短期な私がヘリをぶち落とすことを期待してね」

当麻の頭にはてなマークが浮かぶのを苦笑いしながら眺める。
「はああ・・?」

「フランス軍のヘリを公然と学園都市の超能力者がフランス領内で撃墜した」

「さてCNNやBBCやアンテナ2などのマスコミから私はどういわれるかしらね・・」
「学園都市のモンスターが民主国家を破壊する?なんてさ・・」
「十字教系のマスコミがここぞとばかり私や学園都市を責め立てる」
「膨大な力を振舞う悪魔が学園都市で世界征服を狙っているとね」

「いやだからって・・」
「学園都市なんて当麻は知らないかもしれないけど外では胡散臭く見られているのよ」
「その超能力者1位、しょせん外では正当防衛なんて言い訳は通用しない」

「鼻から成功するなんて思っていないでしょ・・」
「いわゆる自爆テロ。最初から私に撃ち落とされることを前提に行動している」

「はあ?そうか?」
「まあそうゆうこと」

「でどうする」
「別にいいんじゃない?何をおきてないし」
当麻は苦笑する。
「はあ・・美琴は気楽だな・・」

「別にいいんじゃないの?誰も死ななきゃ」
「まあそれもそうか・・」

「せっかくの観光を続けましょう」
・・・・・・・・・・・

909■■■■:2017/03/16(木) 15:44:23 ID:inah4EXk
11時30分

「本当、観光ガイドみたいだな」
順路に従い、入口でもらった日本語の案内図を見ながら、宮殿の観覧を終える
私は当麻の左腕にしがみつきながら、話始める
「まあなかなかでしょ」
「まあね・・」

「気のない返事ね」
「いや・・いつもなく美琴が甘えるから・・どきどきしてさ・・」
「そう?じゃもっと甘えようかな・・」

「いやそれは・・」
「いいじゃない減るもんじゃないし」
周りに見せつけるように左腕にしがみつきながら私は話を続ける

「そろそろ食事しようか?」
「ああ・・」
当麻が顔を少し赤らめているのに気がよくし、私は宮殿内のカフェに入る

「じゃ・・予約済みだから行きましょう」

昼食はサンドイッチとコーヒーを注文する。健康な男子高校生には少なすぎる気もするので3人分注文する。
当麻は、私の顔を感心したように見つめる。私は当麻のその視線に気が付き、当麻を
見つめる。

「美琴はこうゆうこと慣れているな」
「え?カフェのこと?」
「いや、暗殺未遂を何食わぬ顔でやり過ごす。何一つ発生しなかったように」
私は吐き捨てるように言う。私を殺そうとするのはいい。だがそのために、多くの
人間を使い捨てにする魂胆が気に食わない。

「馬鹿らしいじゃない、せっかくベルサイユに来たのにこんなことで邪魔されるなんて」
「それに・・私は常に狙われ続ける・・」
「それを恐れることも、避けることもできない」
「だから当麻だけは私を甘えさせて」
「いいわよね・・」

たった一言、でも一番聞きたい一言、私だけのヒーローがその一言を放つ
「ああ、最後まで何があってもな」
「ありがとう」

絵画のような雰囲気のカフェーで2人はお互いの存在を確かめ合う
・・・・・・・・・・
ベルサイユを午後2時に出立し、あらかじめ予約したタクシーでルーブルへ向かう
定番すぎるほど定番だが、実質1日の自由時間では回るところは限られる

その途中、車窓から反AI・学園都市のデモがあったようだが今更なので
気にはしない。とはいえ、改めて学園都市が歓迎されているだけではないことを
実感する。元々感じていたが、結局話しても理解できないどころか、話せば話すほど
理解できない気さえする。だがそれを諦めるわけにはいかない。

取り止めない、考えにふけるうちに約30分でパリ市中心部へ戻り、セーヌ河沿いのルーブルへ到着する。他に行きたいところは数あれど、ここは外せない

「さあついたはね」
「美琴少し疲れたか?」
少し目をつぶり、考え考え事をしていたので当麻に気を使わせてしまったようだ
「え?ああ少し考え事をね、コンコルド広場で処刑されたルイ16世はどんな気分で処刑
されたのかね・・」
「え?」

「もともとルイ16世は、わりに人気のある開明的な君主だったそうよ」
「三部会の再開や、税制制度の改革、少なくともフランスと言う国家に改革が必要な
事は理解していた。だけど・・アイスランドのラキ火山や浅間山の大噴火に始まる天候不順による飢饉とアメリカ独立戦争支援による財政悪化には勝てなかった」
「結局は、コンコルド広場で処刑される」
「政治はすべて結果責任、言い訳は許されない」

「私も、その世界を志せば、言い訳が許されないことになる」

910■■■■:2017/03/16(木) 15:45:38 ID:inah4EXk

「それは・・」
「昔、小学校の夏休みの自由研究で、「英仏抗争におけるフランス革命の影響」
なんて論文を書いてね・・」
当麻が目をぱちくりさせる。
「小学生が書くような自由研究か・・それ大学の卒論レベルだろう?」

「え?内容は独創性のかけらものないつまんない内容よ、今見る?」
私は、携帯情報端末を操作し、それを当麻に見せる

「読めないな・・まさかフランス語?」
「ええ・・」
「住む世界が違うな・・」

私はクスクス笑う
「今回の出張で私たちの住む世界の雰囲気に早く当麻にも馴染んでもらいたいわ」
「学会、官界、財界、世界の頂点という世界にね」
「そんな時間はかからないでしょ」
「別に中身なんて理解しなくてもいいわ、将来上に立つ上条当麻は専門家になる必要なんかない。」
「専門家を状況に応じて使いこなせばいい、特に私をこき使えばいい」

当麻は、苦笑いをしながら、私の手をとり、ルーブル美術館へ入る
「姫、お手柔らかにお願いしますよ」
「茶化さないの、でも一緒に頑張りましょう」
私はにこやかに笑う、当麻の暖かい手を握る。
その手が力強く、私は立ち向かう勇気を貰う。
「じゃいこう」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
午後5時 ルーブル中庭

俺は、3時間の詳細なガイド付きの観覧を終え、ガラスのピラミッドの前にいる
「いや美術館がこんなに楽しいとは思わなかったな」
「いや引き出しが多い彼女がいると、見る目が変わるよ」

「へえ?でもモナリザとかハムラビ法典とかなんて知っているでしょ」
「え・・まあそうだけど。でもその背景なんて普通は知らないじゃん」
「知識があるとないで見える風景が変わる。美琴がそれを教えてくれた」
「美琴は教え上手だし、これからもいろいろ教えてほしい」
「ええ喜んで」
秋の柔らかな残照が美琴を照らす。その柔らかな残照の中で赤身に染まった美琴が
本当にうれしいそうに頬を赤らめる。

「じゃ・・そろそろホテルへ戻りましょう」
「ああ」

俺は、美琴の手をつなぎチュイルリー公園を歩く、コンコルド広場のアラベスク、エト
ワールの凱旋門、グランド・アルシュへ続くパリの都市軸を西へ向かう。コンコルド広場まで歩き、そこで待たせているタクシーを拾うつもりだ。

秋の暖かい日差しに心まで温かくなる。好きになった女の子と、恋人繋ぎでパリの街を
歩く、まるで・・新婚旅行みたいだ。
「こうやって当麻と一緒に同じ道をパリで歩けるなんて嘘みたいね」
「ああ」

「でも、まだまだ課題は多いわね」
「え?」
「それは・・」
異変はコンコルド広場についたときにおこった。

それまでそこで普通に日曜日の午後の光景が広がっていたはずだった。
観光客や買い物帰りのパリ市民でごったがえす。

が、広場のオベリスクの脇に場違いなガソリン輸送車が突然停車する・
美琴が手を放し突然右手を前に突き出す。

「やっぱりどこへ行っても退屈しないわね」
「へえ?」
「終わったわよ」
俺には何が起きたか理解できない。タンクローリーから髭もじゃの運転手が慌てふためいて運転席から走り出す。
「警察に通報しておきましょう」

911■■■■:2017/03/16(木) 15:57:21 ID:inah4EXk
美琴は、あらかじめ連絡先に登録していた、フランス内務省の担当部署へ連絡を入れる。
同時に学園都市の統括理事会の事務局へ連絡する。
「予定通り会議をしなきゃないし」
「起爆装置をマイクロ波で破壊したわ」

「まあ穏便にすましましょう。ただのタンクローリーの故障とね」

「最近、宗教原理主義者はね、ソフトターゲットに、ああゆう産業機材でテロするのよ」

「はあ?」
「タンクローリーを火薬で、パリ中心部でドッカンするつもりだったようよ」
「あのサイズのタンクローリーが爆発すればこの広場だけでなく、パリ中心部が
火の海になる。」
「それをたかが私への嫌がらせとあわよくば、上条当麻を暗殺するつもりで」

美琴の顔が怒りに変わる。周りの被害を考えずに嫌がらせの為に無辜の民の命
をごみくずのように扱う奴らに
俺は、瞬間湯沸かし器のように顔を真っ赤にさせた美琴に抱き着き、怒りを受け止める。
俺は慎重に言葉を選び雷神様をなだめる。
「ここで怒り狂って、パリで暴れれば敵の思うつぼだ」
美琴が癖で放出した莫大な紫電は俺の右手に吸収され消える

我に返った美琴は落ち着きを取りもどす。
「御免、少しテンパった」
「当麻の言う通りよ、私はもっと我慢すべき時は我慢しなきゃない」
「ありがとう」

「じゃ帰ろう」
「ああ」
「今日は甘えさせてくれる」
「美琴のすむまでいくらでもな」
「眠らせないわよ」
「お手柔らかにな」
私は当麻の手を繋ぎタクシーに乗る。パリの夜は長くなりそうだ。
私は、不安な気持ちを当麻にぶつけようと算段する。
明日の会議に響かないようにしなくてはそんなことを思った。

続く

912■■■■:2017/03/16(木) 15:58:48 ID:inah4EXk
以上 とある科学の超荷電粒子砲Ⅲ 17話:4章―②の
投稿を終わります

913■■■■:2017/03/16(木) 16:02:58 ID:inah4EXk
>>905
感想ありがとうございます。
近々に別作品を上げます

914■■■■:2017/03/16(木) 17:50:38 ID:9xzHl0sw
がんばれ!

915■■■■:2017/03/25(土) 02:08:21 ID:kyNYZ7eM
超OK!!(≧∇≦)b

916■■■■:2017/04/02(日) 13:09:44 ID:R554/THU
とある科学の超荷電粒子砲 Ⅲ 18話: 4章―3

9月28日(月) 中部欧州標準時(夏)午後6時
パリ市中心部ホテルの会議場

午前9時から始まった会議は約60分の昼食をはさみ午後6時に終わった
私は基調演説と、最後のまとめの報告を行い、会議の成功を大々的
に出席者の前で謳った。

AIを使った無人兵器開発について米英仏独ロの開発状況と今後の学園都市の開発方針に
ついて、質疑がなされる。各国を代表して6名の研究者が基調報告を行い、それについて
質疑応答がなされる。約200名の出席者は、最先端のAI兵器開発の進捗状況を熱く語っている。
それは、弾丸の飛び交わない戦場のような光景であり、自国の優位性を言葉と
ホログラフと映像で示す場である。

だがその内実を知っている私から見ると茶番にしか見えない。
私はつい厳粛に会議のなされているにも関わらず笑いかける口元を抑える。

もともとすでにほぼ完全な、実戦で有人兵器を圧倒する無人兵器を開発済みの
学園都市、その兵器の開発側の私にとって、もっともらしく、最先端兵器に関する
開発状況を説明するふりをしながら、学園都市では1世代遅れの兵器をもっともらしく
説明する作業は、笑いをこらえながらの作業となる。

学園都市にとって基幹産業である兵器産業の優位性をアピールしながら。
橋にも棒にもかからない周回遅れの外部公開用のそれを、もっともらしく最先端のそれと
装いながら紹介する。

(まあ演技力も社会人の適性の構成要件ようね・・)
私も相応な社会的地位につき、「組織」という枠で部下も、守るべき組織も
持つようになると、ただ切った張ったで済まない。自分の苦手分野の「演技力」
を身に着けないといけない。

私は、会議を終え退出する出席者への挨拶を終え、会場に一人残る当麻の姿を確認する。
当麻と目でアイコンタクトを交わし、歩み出す

「当麻、退屈だった?」
「え」「いや・・そうでもなかった」
私は、当麻の理解力に驚きながら話を続ける。講演内容は、兵器を制御するAIと
演算内容に関する研究成果の話で、一般人にはちんぷんかんぷんなはずだ
それに、会議はすべて英語で当麻には翻訳ソフト越しというハンデもある
「え・・でも結構専門用語多かったでしょう?」

「正直よくわからない言葉ばかりだった」
当麻がにこやかに笑顔を浮かべる
「だけど、美琴の一生懸命な姿を見るだけで退屈なんて吹っ飛んだよ」
「それに美琴の分かりやすい解説で内容がよくわかった」
私は当麻の心暖かい言葉に、心を揺り動かされる
一言感謝を伝える
「当麻・・ありがとう」
私は後援会の後で予定されている宴会に行くことを当麻へ促す。
私はしっかり腕を組み、当麻に体を密着させる
「じゃ・・行きましょう」
「ああ」

・・・・・・・・・・・・・・・・
午後9時30分 ホテルのバンケットルーム

午後6時30分から始まった、会議の夕食会は午後9時に終わりバンケットルームは
私と当麻だけが残されている。
正直、スーツを着て、未成年なので酒は飲まなくて済むが、社交辞令と顔色をうかがいながら、
会話をにこやかにすること自体がかなりのストレスになる。

体力には自信があるが、欲と利害で接触をする軍需産業の要人と腹の探り合いをしながら
にこやかに会話をするのはそれなりに緊張を強いられる。

しかも・・
「ああつかれちゃった」
パーティドレスの裾を直しながら当麻に話かける
当麻の顔が少し怒りに満ちている。
「美琴は、忍耐強いな」
「え?」
「仕事とは言え、あんなセクハラに・・」

917■■■■:2017/04/02(日) 13:11:44 ID:R554/THU
私が、大手軍需企業のCEOに馴れ馴れしく肉体接触を強要されそうになったことを
当麻が怒っている。当麻はすぐに私の手を引っ張り、助けてくれた
「ありがとう助かった」
「だけど・・なんで」
当麻が、不思議そうな顔をする。御坂美琴なら生体電流を操り感情くらいコントロールできるはずだと。
「うーん、断るのは簡単なんだけど、角は立てたくないのよね」

「年間数兆円の取引を学園都市と行っている企業のCEOだし・・」
私は溜息をつきながら話を続ける。
「あの社長はすけべ爺-さんだけど、政財界の要人に顔が効くのよ」
「だから・・」
私は、会議場の監視カメラの映像を見せる、そこにはCE0が丁寧な言葉ながら、嫌がる
私に執拗なボディタッチをしようとするシーンがはっきりと撮影されている
「なんかの役にたつかもしれない・・自衛手段よね・・外ではか弱い女を演じる私にとって」
私は乾いた笑いを作る。

「学園都市なら紫電一発で威嚇すればおしまいだけどね」
当麻が顔を引きつかせる、幻想殺しでも全方位からの飽和電撃攻撃は対処できないことを私は知っている。
「それは・・あんまりやらないほうがいいんじゃないか?」
私は、苦笑いを口元に浮かべる
「冗談よ、でも明日は・・」

私は突然決まった、協力都市での能力実演デモを思い浮かべる。珍獣みたさか?
怖い物みたさか、最初は予定にないのに、突然フランス政府の要望で組まれた
能力実演デモ。結局、どこへ行こうが私は学園都市の広告塔という立場から逃れることはできない。
(色物扱いは慣れているけど・・しょうがないわね)
当麻は少々怒ったように私に語り掛ける、14歳の少女に重要会議の議事進行を押し付け
夜は、セクハラまがいの接待をさせることにだ。
「人遣い荒いね・・学園都市も?」

「まあ、人権無視の旧暗部よりはいいでしょ」
「それに・・」

「まあ、せっかくフランスに来たんだからもう少しいろいろ行きたいじゃない
モン・サン・ミシェルとか」

「ああそうだな」
「で、いつまでいれるんだ?」
「まあ明日デモやって、明後日の午後6時に帰国」
「そうか・・」
当麻の顔がぱあと明るくなるのが私にもうれしい。そして・・・
「よし・・最高の婚約旅行にしよう」
さりげない一言が、セクハラや商談の疲れでささくれだった私の心を癒してくれる
私は、感動を抑え一言で返す
「ありがとう」
そして、2人でスイートルームの寝室へ向かう

・・・・・・・・・
9月29日(火)正午前 フランス北部協力都市

パリからヘリで1時間ほどにて協力都市へ到着し、そこで午前10時から、始まった能力実演デモは
約60分で終え、清掃ロボットや駆動鎧破壊された無人機や、無人ヘリや、無人戦車が散乱している。

その前に模擬弾による疑似戦闘で有人機を圧倒した無人戦闘機。その性能が観客の
度肝を抜くとともに、その無人戦闘機を地べたから私が撃墜することで、いわば
2段階で観客を驚かせるという仕掛けだ。

(まったく・・本気でやれば秒殺なんだけどな・・)
本当は、マイクロ波やEMPで瞬殺するのは容易だが、それでは面白くないので
少し観客受けすることをやらないといけない。

最初は、数十人のスナイパーが乱射するライフル弾を磁力で防御するところから始め、駆動
鎧を投げ飛ばし、地面から数万トンの大量の砂鉄を巻き上げ、高さ100M以上の人型の巨人を
拵え、ヘリを叩き潰したり、人型の砂鉄から、砂鉄砲を放ち10KM先の戦闘機をぶっ壊す。
そのまるで怪獣映画のようなシーンに観客が沸き立つ。50両の無人戦車を磁力で止め、
ひっくり返し、砂鉄巨人で踏みつぶして戦車をぶっ壊す。

できるだけゆっくりやったつもりだったが完全武装の1ケ師団に相当する武装は1分ほど

918■■■■:2017/04/02(日) 13:14:40 ID:R554/THU
で無力化され、残骸に変わり果てる。

ひととおり観客に挨拶を終え、清掃中のフィールドに当麻が駆け寄ってくる
「美琴、お疲れ」
「まあ・・マイクロ波や赤外線レーザーでつぶすほうが簡単だけど・・」
「映像では意味わからないでしょう」

「美琴はそこまで考えているのか・・」

「まあこれでも一応学園都市の顔みたいなpositionだしね・・230万人のためにもね・・」
「加減は難しいのよ、一応1位だからしょぼくてもいけないし、かと言って外ですべての
手をさらけ出すわけにもいかない」
「だから外では基本は電撃と砂鉄と磁力しか使わないわけ」
私は苦笑いを浮かべる
「なるほど・・」

「私が電撃と磁場しか扱えないと思わせておけば・・」
「敵への対処がしやすくなるか・・」

「そう」
「じゃ・・そろそろいきましょう」
「モン・サン・ミシェルへ」

・・・・・・・・・・・・・・・・
16時 モンサンミッシェル

フランス北部の海岸沿いの協力都市から車で1時間世界遺産モンサンミッシェルへ到着する。モン・サン・ミシェルは8世紀、フランク王国時代に
大天使ミカエル(サン・ミシエル)
がこの地に修道院を開けという夢を見たサン・オペールにより開設されたと伝えられる
島全体が修道院である世界遺産である。英仏海峡の要衝で英仏100年戦争時実際には
要塞として使用された。修道院とともに大砲が見ものの世界遺産である。

実際、周りを潮流の早い海に囲まれ、断崖絶壁の地形を利用した修道院は城として何度も
改修を重ね外観はむしろ要塞に見える。

元々は大天使ミカエルの巡礼地であったこの島は、1979年に世界遺産になっていらい
世界でも有数の観光地として知られる。

俺は仕事を終え、修道院や要塞の観光を終え終始ニコニコな美琴の
顔を見つめている
干潮で干上がった海の中野島と陸を結ぶ道路を2人で歩く。
今晩は島のホテルに泊まるのでゆっくりと島を味わう。

「まるで定番のフランス旅行コースね」
「天気もいいしな・・」
「それにしても・・」

「え?」
美琴はなんかの雰囲気に気が付いたみたいで少し口調が変わる
「なんでもない」
なんでもなさそうな美琴の口ぶりから容易ならざる事態を俺は感じ取る。
「また・・テロか?」
「ええ・・今回はなりふり構わないみたいよ」

「当麻・お客様よ」

どこから現れたのか、目に生気のない死体のような「人間」が
1000人ほど現れる

「美琴・・?」
「生体反応がほとんどない」
「え?」
「いや・・多分・・」

「誰かに遠隔操作されている」
「じゃ・・触れば解除できるのか?」
「理屈じゃそうだけど・・」

「え?」
「アレは・・ゾンビみたいな奴じゃないかしら」
「明らかに凶暴性を増しているし、それに・・」

ゾンビのような、人間は私と当麻へ噛みつこうと必死に飛んでくる。
人間離れした跳躍力で飛び跳ねてくる。それを高圧電流で撃ち落とすが、

919■■■■:2017/04/02(日) 13:17:06 ID:R554/THU
回復力が増しているのか、あまり効果がないようだ。

一瞬で炭化させるのは簡単だが、これでも恐らくもとはまともな人間であった
事実がそれをためらわせる。
何秒か私は沈思したのち、脳を強力な電流でショックを与え、気絶させる選択を選ぶ

「しゃあない・・」
「多分・・意識を操作される術式とウイルスのようなものに感染していると思うわ・・」
「殺すのは簡単だけど・・」

「どうする?」
「まあ・・少し時間をかせぎしましょう」

美琴は、右手を操作し、地中から莫大な砂鉄を巻き上げる、その砂鉄が
磁化し、砂鉄をまぶせられたゾンビを地面を縛り詰める。さらに、砂鉄の鞭をからめ、1ケ所へかき集める。

「炭化させるのは・・簡単なんだけど・・だけど殺したくない」
美琴が苦笑いしながら、俺に語り掛ける。
それでも、生体電流を操作し、ゾンビの記憶を消せば終わる・・はずだった。

だが多数のヘリが状況をさらに悪化させる。バルカン砲が、ロケットランチャーが
俺たちを狙う。御坂美琴が、学園都市の顔が、外で全力をふるうことができず、市民
を殺す事ができないことに付け込んだ卑劣極まりない攻撃。

俺は、この攻撃を仕組んだ敵の狡猾さに歯ぎしりする。攻撃力では太刀打ちできない敵が
絡め手で襲ってくる。

「正直、私を殺す事はできないでしょう」
「だけど、このゾンビと・・当麻を守りながらヘリと戦うのはなかなか難しいわ・・」

「今一瞬でもゾンビの拘束を解けばゾンビが襲い掛かってくる
「生体電流を操れる私はともかく当麻にはウイルスの感染が予想されるからね・・」

「仕方がない」

俺は美琴が決意を固めたことに気が付く。
「美琴・・殺す気か?」
「通常の方法で倒れない奴は、再生速度を上回る速度で完全に炭化する意外に
ないじゃない、それに復活できると思うわ」
「だけど・・・それではお前の手が汚れるかもしれない」
抜群の操作性と汎用力を誇る美琴の電撃でも、加減を誤ると完全に殺すかもしれない
美琴もゾンビ相手に絶対の確信などないだろう。加減だって普段よりはるかに困難だ。
「じゃ・・どうするの?」

「美琴・・俺の右腕を切断してくれないか・・」
「え?」
美琴の顔が驚きに包まれる・・
「本当にいいの?」
「時間がない、すぐにやってくれ」
2秒ほど考え込んだ美琴は決意を固め、左腕を操作する。

右手でゾンビを封じ込め、頭から磁力と電撃で銃弾とミサイルを撃墜しながら、左腕を操作するという器用な事をしながら溶接ブレードを形成する

無音とともに質感を伴った美琴の溶接ブレードは、まったく痛みを感じさせることもなく
あっさりと俺の腕を吹っ飛ばす。
そこから幻想殺しにブロックされた俺の真の力 八竜が現れる。

八竜・・あらゆる異能を食い尽くし、無に還元する謎の力。
俺は正直いまだにその力を使いこなすことはできない。だが・・美琴に俺を守るために
その手を汚させるわけにはいかない。

考える必要もない、・・そして・・
俺の右腕からあふれ出た力が轟音と閃光が辺りを包み、八竜がゾンビ1000体を包む・・
刹那、異能でゾンビが発する異能を八竜が食らい尽くし、異能でゆがめられた空間から
発せられるエネルギーを吸収しつくす。

そして・・力を使い果たし俺はその場に倒れ果てる。
・・・・・・・・・

何分たったかわからない

920■■■■:2017/04/02(日) 13:19:56 ID:R554/THU
俺は美琴に膝枕されていることに気が付く
俺が寝ている間に、事後処理はすんでいた。

美琴がヘリを磁力で無理やり着陸させ、事件を首謀した何者かは逃げたのか人払いの
術式は解除され、辺りは元の観光地の喧噪を取り戻す。フランス政府へ手を回し、
事件の後処理を終える。
表向きには何事もなかったように、すべてが収まる。

後から聞いた話だが、敵はロケットランチャーや、戦闘機を駆使し、戦争でも起こす構え
だったらしい。

だが、そんなものが美琴に通用するはずもなく、一切の攻撃は、届く前に無効化され
世界遺産モン・サン・ミシェルと観光客に何らの被害も発生がない。

あれだけ猖獗を極めたゾンビと化した1000名は八竜の力で、術式を解除され、元に戻っている。

俺の右腕は何事もなく復活している。一体そこにどんな秘密があるのか俺も全く
理解してはいないが、美琴は大した驚くこともなく現実として受けて入れている。

その間に、学園都市の統括理事会事務局と初春飾利へ電話をしていた美琴が通話を終え、俺の元へ歩み寄る。

「ありがとう、助かったわ」
俺は、これだけの事態を何事もなく収拾する美琴の手腕に舌を巻きながら、当然の疑問を
口から発する。

「だけど・・このまま放置していいのか?」
「え?」
「美琴を暗殺しようとした奴の件」

「そうね・・やっぱり事件の首謀者には相応の罪が必要よね・・」
「とは言えここはフランス、私が簡単に動ける場所でもない、だからフランス政府
に事件解決をお願いしたけど、フランス政府に裁けるかしらね・・」

「え?それは」
「当麻・・あのおっさん覚えているわよね、セクハラ親父」

「え?」
「今回の事件は、私に大量殺人の疑惑をかけ、なおかつ十字教の
聖地モン・サン・ミシェルの破壊をイスラム原理主義者に着せる
一石二丁を狙っていた」
「は?・・」

俺は、事態の奇怪さに驚愕させられる。
「それは・・」
美琴が明るい顔で奇怪な話を始める。
「まあ事実は小説よりも奇だったわね・・」
美琴が軽口のようにとんでもないことを話始める
「今回の事件の背後に、イスラムと学園都市の排除を唱える、
イスラム原理主義の皮を被った十字教魔術集団と、それと結託した
軍産複合体がいる・・まあそんな話」

「はあ?・・」
「ようは、現代の十字軍を学園都市と中東へ起こそうとした・・そんな話よ」

「それて・・悪辣だな・・」
「私が・・イスラム原理主義と手を組む?ありえない。だけどそんなねつ造をするのが
十字教と、十字教よりのマスコミのフェイクニュースなのよ」

「まあ、でも・・売られた喧嘩を私は買う主義」
「どうせあの糞爺さんはたたけば埃がでるでしょう」

「いいのか?」
「本来外の世界の政治に絡むのは、ルール違反だけど・・私の名誉棄損し、当麻を殺そうとしたことは絶対許せない」
美琴の顔が精悍な表情に変わる。
「行きましょう・・私に大量殺人者のぬれぎぬを着せ自分の
都合で大量殺人をする奴に鉄槌を食らわせましょう」
「ああ」

久しぶりに見る、正義感の塊の美琴、その誰もが見惚れる笑顔を守るため
俺も立ち上がる
俺と美琴の周りの世界を守るため

続く

921■■■■:2017/04/02(日) 13:21:17 ID:R554/THU
以上とある科学の超荷電粒子砲 Ⅲ 18話: 4章―3
の投稿を終わります

922■■■■:2017/04/02(日) 13:27:55 ID:R554/THU
>>915
遅れてすいませんが数日中に新シリーズを開始します。

923■■■■:2017/04/10(月) 14:29:03 ID:.I78PthU
卒業式 1話

2月12日(日)午後6時

外の世界では、笑点シンドロームとか、さざえさん症候群という言葉がある。
倒産寸前の原子炉メーカーがスポンサーをしている国民的アニメ番組を見終わった
後、勤め人が、翌日からの辛気臭い労働を思い出し、憂鬱な気分になる現象らしいが、
ちょうどいま私もそんな気分に襲われている。

1年前のバレンタイン・デーに自分の気持ちを想い人に告げて以来毎週、私は
ここへ通ってくる。多忙な平日はそれぞれの活動を続け、土曜日の夜から
日曜日の夜までの1日甘美なひと時を過ごす。

土曜日夜に1週間分の食材を買い込み、食欲という煩悩塗れのインチキシスターから
食材を守るため購入した鍵付きの大型冷蔵庫へ食材を購入する。

その冷蔵庫から食材を取り出し、テーブルの上にお肉と白菜としらたき・ネギと高野豆腐を、形よくカッティングした食材と携帯ガスコンロを食卓にセッティングして本日のメインデッシュのすき焼きの準備を終える。割り下をベースした関東風ではなく、肉を直接鉄板の上で焼き、しょうゆと砂糖をまぶし味付ける。お肉の香ばしい香りが漂い、そこへ白菜とネギを入れる。笑点の放映が終わるころには、ぐつぐつとすき焼きセットが出来上がる。

野菜と肉の香りが食欲を誘う。
(安いお肉の割には美味しそうね・・)

「さあ召し上がれ・・」
ご飯を形よく盛り付け、隣にネギとワカメの赤みその味噌汁を配膳する。
「いただきます」

「どう?」
「この肉うまいな・・」
当麻が生卵に、安物の牛肉をつけ、一気に飲み込んでいる。高校生の食欲は恐るべしで
咬まずに、飲み込んでいる。
「ありがとう」
「ふふ・・まあ今日は、あの子には小萌先生と焼肉食べ放題バイキング店に行ってもらって
いるし・・ゆっくり食べられるしね」
当麻は100g200円のカナダ産の安物のお肉を本当に美味しそうに食べてくれる。

私は自分が出すからせめてAランクの100ℊの1000円くらいの肉にしようと言っても
断るのだ。
一通り当麻が食べ終え、少しペースが鈍ったところで私は話を始める

「でも、なんかあっという間ね」
私は当麻の旺盛な食欲を母親のような気持ちで微笑ましく眺めながら、ゆっくりと
安物の固い肉をかみ砕く。
喰うことに夢中の当麻が、私の凝視する視線に気が付いたのか言葉を返す。
「え?ああそうだな」
私は、当麻がようやく話を聞く気になったのでは話を続ける。
「楽しいひと時はつかの間の夢みたいね」
「え・・?」

「違う学校だし、雑事もある。当麻はいつも目の前の誰かを助けている。」

「土曜の夜から日曜の夕方まで、たった24時間しか会えない」
「せっかく・・告白したのに、全然距離がつまらない」

「え?どうしたんだ美琴・・」
白菜を食べ終えた当麻が話に乗ってくる。
「なんか・・せっかく告白して交際を始めたのに全然甘い雰囲気ならないてね・・」

「え・・え・・毎週こうやって会っているじゃん」
「まだ美琴は中学生だし・・」

「そうね・・でももう後1月で私も高校生よ・・」
当麻はしゃべりながら卵とすき焼きの汁に染まったご飯を口へ詰め込みながら
会話を続ける。
「ああそうだな・・」
何かを思い出したのか当麻が私に今更の確認を聞いてくる
「で、本当にレベル5の御坂美琴さんはとある高校なんかに進学なさるんですか?」

私は安物お肉のはちみつで味を誤魔化した安い牛脂を飲み込みながら、話を続ける。
「ふふ・・なんか内の担任みたいなこと言うのね・・」

924■■■■:2017/04/10(月) 14:30:16 ID:.I78PthU
「え?」
「最近、私の担任の綿辺先生が考え直さない?て言ってくるのよ」
「長点上機や霧が丘へ変更する気はない?てね」

「そうだろうな・・月詠先生が御坂美琴の研究開発なんて対応できないとか言ってたしな・・」

私は箸を置いて苦笑いをする。
「まあ、とある高校に勉強や能力開発は期待してないわよ」
「はっきり言って当麻がそこにいなければ行く意味なんてないわ・・」

「私は、いますぐ当麻と一緒に暮らしたいわ」
「こんな週1日じゃ満足できない」
「え・・」
私は本音をぶつける
「ね・・当麻は私といるのが楽しい?」
お肉を食うのを中断した当麻が私の顔を見つめる。
「美琴・・どうしたんだ?」

「いや・・当麻が目の前の困った女の子を助ける事をどうこういうつもりはないの」
「私もそんな当麻に助けられた女の子だし・・」
「その恩を一生忘れることはないし、ささやかだけど少しでも当麻へ恩を返したい」

「だけど・・今は・・できるだけ私だけを見てほしい・・」
「つまんない、ちっぽけな女だけど・・私は当麻の一番になりたいし・・そのために
なんでも努力したい・・」

「美琴・・」
「俺はそんな・・大層な男じゃない・・」
「それに・・」

(しまった・・サザエさんシンドロームで変な事を言ってしまった)
私は当麻が自分を卑下しそうな気配を感じ、軌道修正を図る。
「御免・・当麻と居るのが詰まんないわけじゃないの」

「え?そう・そうか・・?」
「私はもっと当麻に触れたいし、当麻と一緒に過ごしたい」
「でも・・春になれば・・私がとある高校にいけば・・一緒に住めるわよね」

「え?」
当麻は少し、びっくりしたように話を返す
「は・?」
「前から考えていたのよ・・私が卒業したら一緒にマンションに住みましょう」
「そうすれば毎日会える」
「毎日、一緒に学校へ通って、毎日一緒に同じ屋根の下で暮らせる」
「ね・・いいでしょう」

「だけど・・学寮は・・」

「当麻・・アンタの学校の実態を私が知らないと思っている?」
「当麻の学校の雲川さんはずいぶん豪壮な屋敷に住んでいるわよね」
「私達がマンションに住むことになんか問題あるかしら?」

当麻が箸を置いて沈思している。
私は当麻の神妙な顔を眺めながら話を続ける。
「私はね・・とある高校へ勉強しにいくわけじゃないのよ・・」
「そこに当麻いるから行くのよ」
「だから・・来週新居を探しにいきましょう」
「いい?」

「ああ・・」
私は当麻が同意してくれたことを素直に喜んだが、その返事が心からでないことに
もっと注意を払うべきだった・・
だが、自分の世界で盛り上がっている私はそのことを気が付かなかった。

・・・・・・・・・・・・・・
2月13日(月)常盤台中学 面談室 

私は、突然校長先生に呼び出され、校長室へ入室する。
生徒会長として通いなれた場所だが、正直気が重い。その原因を
考えると、余り気が進まない。

(はあ・・やっぱりそうなるかな・・)

925■■■■:2017/04/10(月) 14:33:08 ID:.I78PthU
「失礼します」

「御坂さん、着席ください」
「はい」
校長秘書が、入室し、最高級品であろう銘柄の紅茶を入れる
校長がマナー通りの丁寧な作法で紅茶を一口口に着け2秒ほど間を空け口を開く

「御坂さんは言うまでもなく、この学校にとって誇るべき生徒です」
「能力値、学力、そして熱波事件以降の学び舎の園再建工事や、最後の晩餐事件で
の避難救護活動、その後の学園都市再建におけるボランティア活動」
「そのすべてに置いて、この学校のみならず学園都市の中でも模範的な生徒だと
思っています」
「この学校を代表して、3年間の活動に感謝します」
(あちゃ・・やっぱりそうか・・)
(やっぱりね)
私は心の中で溜息を飲み込む

「ですが・・」
「単刀直入にいいます。御坂さんの進学先には正直当惑を禁じえません」
「とある高校と決められたようですが・・」
「正直・・常盤台の生徒がいくような学校では・・ないですよ・・」

「設備、学力水準、能力開発はっきり言って低レベルです」
「それにこれは老婆心ですが・・」
校長先生が畳みかける
「御坂さんの一生にとってもあまり賢い選択だと思えないですね」
「御坂さんは、将来世界の指導者になりうる逸材だと我々は思っています」
「学園都市の統括理事長や超巨大企業のCEOや世界的な研究者」
「道を誤らなければいづれも御坂さんなら可能でしょう」
「ですが・・とある高校という選択は本当にベストチョイスですか?」

正論すぎる。これに反論するのは困難だ。
確かに校長先生の言うとおり、はっきり言って、自分の将来を考えるなら
余り賢明な選択とは言えない。私の表情を読んだのか、校長先生はさらに
畳みかける。

「「少年老い易く学成り難し」とも「光陰矢の如し」とも言います。
10代の3年は貴重です。その3年を無駄にしていいですか?」

私は必死に反論を始める
確かにとある高校はFレベルで授業水準も、設備もお粗末なものだ。
だけど・・去年、飛び級卒業の要望をけられ1年待ったのだ。そして信頼の失墜した
常盤台や学園都市の顔として、必死に頑張ったのだ。自分の進路ぐらい決めさせて
もらいたい。

「校長先生、私へ過分な評価をいただいて本当にありがとうございます」
「ですが、これは未熟とは言え私なりに必死に考えた結論です」
「人生万事塞翁が馬とも言います。たとえ回り道に見えても
私の一生にとってFランクの学校へ行く事自体が悪いとは・・」

校長が蔑むように溜息をつく
「ウサギと亀の話は知ってますよね・・」

「御坂さんの現時点の優位なんて3年、こつこつ頑張ったレベル4の子
なら追いつけるレベルですよ・・」

「残念ながら人間は怠惰な動物です。いくらストイックで勤勉な御坂さんでも、電子工学や
機械工学では天才的な才能を有する御坂さんでも・・その研究や活動は常盤台のような
名門校の潤沢な資金がなければできないでしょう?」

「御坂さんの制作したAI機器や駆動鎧、大変立派な性能です。そのスペックや仕様書
を見た統括理事の面々は驚嘆されていましたよ」
「正直もったいない」
「こんな逸材をFランクの底辺校で腐らせるのかとね」
「私はそう言われました」

「まあ御坂さんの懸念は分かりますよ・・」
「もう今更出願には間に合わない・・」
「まあ普通ならそうでしょう」
「ですが」
「御坂さんの学力なら・・・長点上機だろうが、霧が丘だろうが今からでも推薦で入れます」
「なんなら、私が今推薦状を書いてもいいですよ」

926■■■■:2017/04/10(月) 14:34:45 ID:.I78PthU

校長先生が常盤台のロゴ入りの推薦状を机の引き出しから取り出す。

そしてサラサラとサインを書きその上に学校の印影を押印する。
「さあ、私は推薦状を書きました」
「金曜日まで待ちましょう」

「私は確信していますよ・・聡明な御坂美琴は賢明な判断を下すとね」
「それと・・」
「八竜も幻想殺しも忘れなさい・・もう有事は終わりです」
「リアルの世界では・・上条当麻は無力ですよ・・」

校長は私も気にしている残酷な事実を指摘し、私に退出を命じた。
・・・・・・・・・・・・・
2月13日 午後4時

私は、よろよろと校長先生の一言にぶちのめされ、部室へ戻る。

机の上には駆動鎧の仕様書や、作業レポートが山積され、私の一読を待っている。
10月に部長は辞めたが、部員達は私を手放さず、部長よりも顧問扱いの私の顔ばかり
見ている。基本義理人情にとらわれやすい私は、部員達を放置できず、結局ここへ
来て、レポートの添削や指導をする羽目になる。

だが今日はさすがにそんな気になれず、部員達へ声をかけ後そそくさと、会議室へ籠る。

「ああ・・言われちゃったな・・」
今の常盤台の校長は切れ者で知られ、私にあそこまではっきり言う以上、必ず私を
長点か霧が丘に入れる自信があるはずだ。

「だけど・・いったい・・どうゆうつもりだろう?」
確かに、校長のいう事は正論だ。学園都市でも最上層の御坂美琴がFランクの学校へ進学
することは余り賢明な選択と言えない。大学院に相当する教育を完璧に習得した
御坂美琴に低レベルの高校で教えられることなどあるはずもない。

会議室のソファーに座りながら、沈思を始める。

それにしても余りの校長のいいようにいまさらながら腹が立つ。
確かに、とある高校はFランクの高校だ。
100人に聞けば99人は校長先生の言葉を正しいと言うだろう。

そもそも幻想しか殺せない男の為に、その研究成果や対戦シミュレーションが
軍事レポートや機械工学や電子工学の教科書に実名が何度も乗るほどの超電磁砲が
人生を捧げるなんて間違っていると言われるだろう。それは私自身が分かっている。
だから・・一層言われたくない。

私自身の事はまあいい。自分の決断だから、それはいい。
だけど、世界を何度も救った上条当麻へ失礼じゃないか?
私は心の中に段々不満がたまっていく。

報道管制で何も知らされていない、一般人が上条当麻を貶すのはいい。
だけど、統括理事長代行にコネがあり事情を知っている校長が、危機に陥った学園都市
を救った学園都市を何度も救った上条当麻へあんな態度をとることが私には許せない。

上条当麻を敬えとは言わない。そんなことは上条当麻が望んでいない

そうではなく、彼の功績に正当な評価を与えてほしい
それだけなのだ・私の希望は

(だけど・・、もしも私が努力をやめれば・・)
(結局は学園都市の超電磁砲を腐せたことでさらに彼の評判が下がる)
それに・・ブラインドの向こうの部室で、駆動鎧の研究を続ける部員達を見ながら
私は決意を固める。
(この活動を続けたい気持ちはあるわね・・)

学園都市の復興活動をする中で私は得難いものを得た。
断ち切ることではなく、人と人を繋ぎ合わせる力が難局を解決することを、
区別することでなく、受け入れることが大きなうねりを作り出すことを学んだ。
一人ひとりの力は小さくとも、力を合わせればできることもある。

この学び舎の園という小さな世界を飛び出したおかげで知ったこの学園都市の現実
私に現実へ立ち向かう勇気と力を与えた上条当麻に正当な評価を与えてもらいたい。

927■■■■:2017/04/10(月) 14:37:01 ID:.I78PthU
(それに・・妹達の問題もある)
行方不明になったアレイスタ・クロウリーのプランが雲散霧消した今、深刻な財政難に陥っ
ている学園都市にとって、基本たかだかレベル2からレベル3にすぎない私の遺伝子を分けた9973人の
クローンの維持が負担になっているだろう。
「結局私が頑張るしかないわね・・」

「いいでしょう・・私は学校に関係なく、自分の思いがこの世を
変える事を立証しましょう」
「校長先生・・私は障害が大きい程、頑張ってその障害を乗り越える女です」
私はしっかりと拳を握り、目的に向かって突き進む。
(こんな話・・あの僧正から受けた屈辱に比べれば些細な話)
「必ず、貴方の幻想をぶち壊すわ・・」

「さあ・・うじうじ悩むのは性に合わない行動開始よ」
私は立ち上がり、頭の中で、組み立てたプランを実施へ移す。

だけど・・そうね・・目の前の書類の束を処理しよう・・

私は、もともとただのレベル1だった自分はこうやって一つ一つの課題を
堅実に処理して今の地位を構築したのだから。
・・・・・・・・・・・・・・
17時

一通り、部員の書類の添削を終え、私は寮へ戻る。

予め予約した会議室に鍵をかけ、ホワイトボードと
付箋紙を用意して考えを書きなぐる
脳内で計画したプランを反芻しながら、可否を一つ一つ検証する。

前提に漏れはないか、正常化バイアスは入っていないか、自己を
ちゃんと客観視できているか、周りの反発を無視していないか、他の
方法をただ面倒くさいから無視していないか
頭脳をフル回転させて考え抜く。

私はある意味自分の限界はよくわかっている。結局、凡人の
自分は、積み上げて反復練習するしかない。それを丁寧に欠かさず
やるから非凡に見えるにしかすぎない。
こうやって考え抜いて、決めたことを実施し問題点を整理して
PLAN-DO-CHECK-ACTIONを繰り返す。それだけだ。
そもそも、・・とある高校に私が進学するデメリットは何だ?

設備か?教育水準か?時間の無駄か?研究か?能力開発ができないことか?
私は課題を分類してホワイトボードをざっと眺める。

(ふーん・・)
私は想像以上に悲惨な状況に頭を抱える
(はあ・・確かにある意味校長の言う通りだわ・・)
(設備や教育水準はどうしようもないわね・・)
(そもそも常盤台以下の授業を受けること自体が時間の無駄だしな・・)

上条当麻の宿題やら、期末テストの問題をざっと解いたことが
あるが、余りの
低レベルに驚いたことを思い出す。

私は無駄になる時間をざっと計算して見る
週30時間✖45✖3=4050時間
(4050時間あくびをしながら復習以下の事で時間をつぶすのか・・?)

私は脳裏に白井黒子や婚后光子を思い出す。彼女達に3年遊んだ
自分に勝てる道が見えない。(これは仕切り直しね・・)
(とある高校に進学するのは、確かにもったいない・・)
校長は確かにやり手だ。私がすべての可能性を検証することを承知の上であの
謎かけをしたのだろう・・その事実に私は打ちのめされる。
(とは言っても・・今更、校長に頭を下げて長点上機や霧が丘に進学するのもしゃくだな・・)
(なんか・・この状況を解決する方法はないのか?)
(いっそ・・大学でもいくか?どうせ長点上機でも常盤台の繰り返しでしょう?)

思考がぐるぐる回転しだし、発散しだす。
(今日はここまでにしよう)
私は、ホワイトボードを写真撮影し、付箋紙を回収する。
「少し、外気にあたりましょう」

私は、あの橋へ向かって歩き始める。
・・・・・・・・・・・・・・
午後6時30分 あの橋の上

久しぶりに寮から磁力による高速移動を使ってここまで移動する。

928■■■■:2017/04/10(月) 14:39:37 ID:.I78PthU
あの日以来私は何か困った時にはここで、しばらく考え事をする。
煮詰まった時は視点を変え、気分展開を図る。

まだ夜風は冬のままで糞寒い。

正直・・自分は甘えていたのかもしれない。常盤台というブランドの
恩恵を受けながら
そのことに結局気が付いていなかった。こうしてその事実を校長に
突き付けられいまさら動揺している。
そんな自分にひたすら橋の上の北風が冷たく感じる。

とはいえ、自分が今まで構築した人間関係や、技術・能力が無駄だったとは
思いたくもないし、それを失いたくもない。この力があるからこそ
救えた人もいる。

(どうしたらいいのかしらね・・)

多分、このまま進学校ルートで進むのが一番楽だろう
だけど・・本当に私がしたいことはなんだろう・・

超能力者でも、AI開発者でもない。ただあらゆる不幸に右手一つで立ち向かう上条
当麻の傍で一緒に戦いたい、それだけだったはずだ。
できるだけシンプルに考えてみよう

よし・・もう1度考えよう、私が踵を返そうとしたときに、私の目は
想い人を捉える。

「美琴・・」
「当麻どうしてここへ」
「白井に聞いた、美琴がただならぬ表情で思い悩んでいると」

「まったく・・黒子も余計な事を・・」
「でも、当麻が来てくれてうれしいわ・・」

「なあ美琴・・もうとある高校なんてやめないか?」
「え?」
「とある高校はいろいろ考えたけど、御坂美琴を受け入れられる
学校じゃない」
「ね・・当麻何言っているの・・」
「美琴だって分かっているだろう、俺の学校のレベルを・・」
「嘘・・」
「なんで当麻がそんな事言うの・・」
「美琴が悩んでいるからだよ・・」
「え?」

「美琴が思い悩んでいる事は俺にも分かっていた」
「お前が俺に遠慮して悩みを言わないこともな」

「白井じゃないが、美琴は優しい、いや優しすぎる、自分が傷つくことを
厭わず全部自分で受け止めようとする」
「それは凄いことだと思うし、俺は美琴のそんなとこすごい好きだ・・」
「でも・・目の前の男はそんなに頼りないか?」
「俺はアステカの魔術師に約束をした。御坂美琴とその周りの世界を守ると」

「だから、俺は美琴がどんな決断をしようが常にそれを支える」
私の目から涙がこぼれだす、ここまで当麻に言わせた私は愚か者だ。
その言葉、本来私が背負うものだ。私こそがリアルの世界では上条当麻を守る
と誓ったのに・・当麻に私の迷いで迷惑を掛けた。
「御免・・私が悪いのね・・」
当麻が寄り添ってくる。
「いや・・美琴が不安になる気持ちはよくわかる」

「もっと早く気が付けばよかった・・」
「な・・美琴・・今日は一緒に学寮へ行かないか?」
「いいの?」
「俺が美琴と一緒にいたい。俺はもっと美琴の傍にいたい」
私の目から涙が止まらない
「ありがとう・・」
「ね・・こんなつまんない女だけど・・今日は泊まっていいの?」
「俺には美琴しかいない、だから美琴の言うことは何でも聞く」

心の中から熱い何かはあふれ出す、その思いが、とてもうれしい。
告白いらい1年、私は初めて当麻と心がつながった気がした。

続く

929■■■■:2017/04/10(月) 14:41:07 ID:.I78PthU
遅くなりました
卒業式 1話の投稿を終了します。

930■■■■:2017/04/21(金) 19:24:43 ID:do8VD7AU
卒業式 2話
2月14日(火)午前7時

制服の上にエプロンを装着して、朝食を作り終える。
炊飯器で米を5合炊き、量だけは大量の朝食を作り終える。
卵8ケと、ベーコンを入れた、ベーコンエッグ、それにほうれん草400gを
軽くサラダ油で炒め、さらに盛り付ける。

もちろんその60%はインチキシスターが食べるわけだが、これでも
全然足りないらしいからどんな食欲なんだと言いたくなる。

味噌汁は、鍋一杯に炒めたもやしと豆腐を1kg投入したもやし味噌汁だ。
味的には・・まあ素材が素材だけにそれなりとしかいいようがないが
これでも当麻とインチキシスターは歓喜してくれる。

私は自分も食べるので材料費は全部出すと言うのだが、妙なところが
潔癖な当麻はそれを拒否し、結局半分を私が出す事で話はついている。
それでも、少々大げさに感謝されるのが私には少しおかしくもある。

配膳を終え、私も着席する。
一同「いただきます」

ご飯をかきこむように食べ終え、当麻が少し食べ始める。
「美琴美味しいな・・」
「え・・そう?材料費なんて一人の200円くらいよ」
「美琴の愛情だよ・・」
インチキシスターは食うのが忙しいのか一言もしゃべらない
「ふふ・・ありがとう」
「美琴もずいぶん素直になったよな・・」
「え?ツンデレアーマーなんてとっくに解除済みじゃない」

「はあ・・そうか?」
「まあ、1年たったしな・・」

「そうね」
「私も・・素直じゃなかったわね・・」
「でも・・」
「もう・・当麻に隠し事はしないわ」
「これからは一緒に暮らすんだもの・・」

私は、軽い食事を終え、方付けを始める。

「じゃ‥当麻そろそろ行きましょう」
「ああ・・」
「美琴も今日はしっかりと頑張れな・・」
「ええ。はっきり自分の意思を示して後悔しない」
私は、昨晩当麻と話あった結果を告げに学校へ通う。
・・・・・・・・・・・
午後4時
今日はバレンタイン・デー

授業も終わり、私はクラスの子からもらったチョコやクッキーを整理し内容を
チェックする。その数の多さにげんなりする。
(まったく・・私は男じゃないのに・・ほぼ全員じゃないの・・)

驚くことに明らかに食蜂派閥の子まで私にチョコやクッキーをプレゼントしてくる。
(まあ元生徒会長への虚礼て話?かな)

基本ノンケの美琴は、女子校の中でどれほど自分が崇拝され、頼れるお姉様扱い
されている事に鈍感だった。そんな美琴にとって、毎年バレンタイン・デーで、
ほぼクラス全員からプレゼントを貰うのが基本煩わしい。

基本女子校である常盤台で本来ならバレンタイン・デーは無縁なイベントに見えるが
なぜか、友人間でプレゼントを贈る日と脳内変換され、盛大に行われる。
しかも・・いつも美琴と食蜂の間でどちらが多くのチョコを集めるかというくだらない・・
ことが去年からイベント化し、結局同数で引き分けとなった。

(まったく・・面倒くさい・・なんで女の私が食べきれないチョコ貰うのよ)
抱えきれないチョコやクッキーの山を宅配便に梱包し、託送の手配を終える。

(部活も含めれば多分100人はいるわね・・)
御礼状と、返礼品の手配を考えると頭が痛くなる。

931■■■■:2017/04/21(金) 19:26:45 ID:do8VD7AU
だけど・・それも・・ことしで終わりか・・
卒業すれば、この子達は私の事はしだいに忘れ、それぞれにパートナーを見つけ
私の記憶は単なる青春の1ページに埋没し、やがて忘れていくだろう。

それでいいのだ。
私は、一人の男を愛し、常盤台の超電磁砲から、ただの学生に戻るのだから・・

・・・・・・・・・・・・
常盤台中学 校長室 17時

私は、上条当麻と話あった結果を伝えに校長室へ向かう。
当麻と腹を割って話あった結果それを校長先生へ伝える。
昨日は緊張したが今日はむしろ晴れやかな気分だ。
「失礼します」

「御坂さんさすがに決断は早いですね」

「校長先生、ありがとうございます」
「あやふやな自分に将来を考えさせる機会を与えてくれて」
「校長先生のおっしゃるとおりとある高校へそのまま進学するのはやめます」
校長先生が安堵した表情を見せる
「さすが・・御坂さんは賢明ですね・・」

「で・・どちらにしますか・・長点上機か霧が丘?」

「長点上機でお願いします」

「まあ御坂さんの能力ならそうでしょうね・・御坂さんは汎用性に優れた能力ですし」
校長はサインした推薦状を机の上に置く

「ただし・・」
「え?」
「私が長点上機へいくのには条件があります」
「条件?」
心拍数が高くなる。これが断られたら、常盤台との関係が決定的に悪くなる
いくら、超能力者でも「大人」と決定的な対立をすることは決して得策とは言えない

「高校がスキップしたいと思っています」
校長が何かに気がついたのか興味深い視線を私に向ける。

「長点上機大学へ進学したいと思います」
校長先生が、飲みかけていた紅茶のカップを机の上に置き、苦笑いを始める。
「なるほど」
「で・・大検を受けると?」

「ええ」
校長先生が立ち上がり、窓辺を見つめる。敢えて私からの視線を無視するかのように
言葉を発する
「つまり・・夏の大検合格までは・・フリーだと?」
「ええそのつもりです」
校長先生は、私にほうへ顔を向け、苦笑いを口元に浮かべる

「なるほど・・とある高校に行っても1年しか一緒に入れない。だったら先回りして
長点上機大学へ進学する・・御坂さんはなかなかやり手だわね・・」
「校長先生はさすがですね。とてもかないません」
「私の意図を、的確に見抜かれました。さすがです」

「確かに御坂さんの学力ならどの高校へ通っても常盤台の繰り返しになりそうですね」
「いっそ・・高校を飛ばして大学へ行く、そのほうが合理的かもしれません」
校長先生が微笑みを口元へ浮かべる。
「いいでしょう。御坂さんが夏の大検取得後、すぐに長点上機大学への推薦状を
出しましょう」
「まあ1年くらいリフレッシュして、周りを見るのも悪くないかもしれないし」
「結果的に2年早く大学生になるのですから遠回りでもないでしょう」

「いいでしょう・・ノープランでとある高校へいくよりはるかに合理的な選択です」

「それで1年フリーな御坂さんはどうするつもりです?」
「それはまだノープランです」

校長がなにやら思いついたように不思議な表情を示す。
「そうですか・・」

932■■■■:2017/04/21(金) 19:29:54 ID:do8VD7AU
校長先生は座りなおして、私に顔を近づける。

「御坂さんは駆動鎧や兵器、AIを開発する部活を始めました」
「その研究水準は非常に高く、統括理事会からも非常に高い評価を得ています」

「ですがその活動は、現状ではまだ御坂さんの圧倒的な能力と人脈に依存しています」
「常盤台にとって、この活動は統括理事会との関係上非常に有用な活動です」
私は校長の予想外の反応に当惑する。
「え・・と・・それは・・」
校長先生の言葉が熱を帯び始める
「御坂さん・・これはお願いです・・」
校長先生が頭を下げる、机に頭をこすりつけんばかりに

「はっきり言って御坂美琴を手放すのは惜しいんですよ・・」
この突然の行動に私は動揺する。
「校長先生・・そんな・・頭を上げてください」
私は心の中でこんなことまで校長先生にさせた自分の虚名の重さに当惑する。
「常盤台は、御坂さんが始めた部活をさらに規模を拡大して正式の研究所へ格上げしたいと思っています」
「今後1年間その研究所の顧問として正式に招聘したいのですが」
「これは学校長としてのお願いです」

私はますます当惑する。単純な一学生の進路の話が学校経営の方向性がなぜ絡む?
確かに私はそれなりに目立つ学生だった。だけど・・しょせんは一学生じゃないか
疑問がだんだん、こみあげるが・・が校長先生の真摯な姿勢が私の気持ちを揺り動かす

さらに校長先生が話を続ける
「まあそんなに悪い話でもないと思いますよ・・」
「え?」
「御坂さんの進路の方向性ですよ」

「それは・・」

「御坂さんの能力は確かに素晴らしいですが、しょせんは電磁気系にすぎません」

「未元物質のようにあらゆる、物理原則を捻じ曲げ物質を生成するわけでも、
あらゆるベクトルを解析し未知の運動法則を解析するわけでもありません」
「それは一般常識や物理原則を捻じ曲げる力ではありません」
「そんな御坂さんが頂点を目指すのならば、既存の研究成果を極めなければならない
のではないでしょうか?」

「そんな私が頂点だなんて・・」
私はただ、上条当麻に並び支える力が欲しかっただけだ・・学園の都市の頂点なんて
別に望んでもいない。周りと自分の認識の差異に驚愕する

「まあ御坂さんが奥ゆかしい性格であることは理解します」
「ですが・・御坂さんが熱波事件以来駆動鎧・AI・クラウドなどの開発に力を入れたのが
力を追い求めるものではなかったのでは?」

「それは・・」

「知的好奇心だといいますか?」
力を求めるなんてとんでもない、学校や学園都市の余りの惨状に自分の力をすこしでも
活用したいとおもっただけだ。

「私は、ただボランティア活動の一環で・・効率的な駆動鎧や情報処理システムが
必要だと思い・・」

校長先生が苦笑いを始める。
「御坂さんの純粋な気持ちを私は理解しているつもりです」
「学園都市を守りたい、困った人を助けたいその純粋な気持ちを疑う気持ちは
ありません」
「ですが、学園都市の上層部は違う考えを持っている人もいるんですよ」

「御坂さんはご自分が思っているより大きな存在です」
「知名度、能力、実績、そしてボランティア活動で多くの学生に慕われた存在・・」
「その御坂さんが学園都市のクラウド・駆動鎧・AI開発のすべての情報を収集し
最先端の開発を行ったという事で学園都市の勢力図に多大な影響を与えうる存在と
上層部には思われています。」

「それに御坂さん・・世の中で正義を通すには、力がいります」
「御坂さんには・・心あたりがあるのではないですか?」

933■■■■:2017/04/21(金) 19:31:31 ID:do8VD7AU
「学園都市の不条理・・」
私は言われたくない過去を先生が言いそうで、感情が高ぶる。
そう・・私は2年前自分の力不足で1万人以上のクローンを、遺伝子を分けた存在を
むざむざ学園都市と一方通行に虐殺された。その無力感を忘れることはない。

だが、その過去への想いは、私に無意識に圧倒的な感覚を呼び起こす。無意識な思いが
放電を形成し始める。その雰囲気を感じ取ったのか校長先生は話をやめる。
(先生の言う通りかも・・確かに私は無自覚に圧倒的な力を行使する)
私は、結局一般人の校長先生を圧倒的な力で無意識とはいえ威嚇した事実に赤面する。

「校長先生申し訳ありません。私は無意識に能力を行使しようとしました」
私は深々と頭を下げる。事情はどうあれ、スタンガンなぞ目ではない莫大な放電を
しかけたことは事実だから。

校長先生は、平静を取り戻し話を再開する。
「御坂さん・・レベル5は、戦略兵器とみなされています」
「その行動には慎重さが求められます、砂鉄で超高層ビルに匹敵するような怪獣を
操作し、超電磁砲で八段階目の赤を破壊できる御坂さんはなおさらです。」
「怒りは人間の感情で当たり前の感覚ですが、抑制できないとそれを利用
されてしまい、悪い方向へ誘導されるでしょう」

「人間は自分の利益や、組織の為に平気で人の弱点を突く動物です」
「御坂さんの軽はずみな行動は、そんな輩に付け入るスキを与えます」

正直、それを言われるとつらい。・・あの夏の日々、私は怒りという感情で
学園都市へ公然と破壊活動を行った。その後上条当麻の介入と一方通行の敗北
でうやむやになったが・・その事実を問題にされると厄介な話になる。
(校長先生はおそらくその事実を知っている・・多分妹達も・・)

校長先生は意外に柔和な表情で話を続ける
「勘違いしないでください、私は御坂さんのそんな正義感の塊でまっすぐなところは嫌いではありません」
「ですが、御坂さんのその思いも利用する輩や、逆手にとる人も上層部にはいます」
「そんな中で御坂さんの理想や目標を達成するのは簡単な話ではないでしょう」

「今回私達がお願いする件、検討してください。決して御坂さんにとって悪い話ではないでしょう」
「返事は今月中にください。もちろん賢明な御坂さんなら・・断るはずはないと
思っていますが」

私は内心で舌打ちをする。すっかり私の失態で校長先生のペースになってしまった。
弱弱しく返事をするだけに追い詰められた・・
「わかりました・・」
・・・・・・・・・・・・・・・・
私は重い足取りで当麻の学寮へ向かう。

すっかり日も沈み、本来なら自分の学寮へ帰らないといけない。
(だけど・・とてもそんな気にならない)
(私は弱いな・・大人には今時点では到底太刀打ちできない)
まあ最悪の結果は回避したが・・すっかり校長先生の策略に乗せられた。
能力を持たない一般人を電撃で威嚇するなど最悪だ。

相手は、私の性癖・性格すべて知った上で挑発してきた。その策略に乗ってしまった
自分の迂闊さがうらめしい。

「確かに私は子供だ・」
「口では到底校長には勝てない」

「はあ・・」
自分の力のなさ、未熟さが恨めしい。いくら最先端の駆動鎧やAIが開発できたところで
学園都市のしがらみをどうすることもできない現状がはがゆい。

「結局・・自分で自立し、稼がないと発言権はない・・て話ね・・」
「まあ校長先生の言うとおりだわね・・いくら優秀だろうが所詮は学生」
「その事実を踏まえて発言しなきゃならない」

「今は耐えるときか・・」

いくら学園都市の広告塔とか復興ボランティアの活動で代表のような位置を占めたと言っても
結局は、アマチュアにすぎない。そんな現状では校長以上の知恵はなかなか浮かばない
それに・・私にはあの子たちの存在がある。結局はその事実が私の心を重くする。
「結局、これが校長先生の最初から仕掛けだったわけね」

934■■■■:2017/04/21(金) 19:34:28 ID:do8VD7AU
最初から校長先生は私が進路に悩んでいることに利用し、私の性格からこの1年フリーに
なり大検をとるということさえ読んでいたのだ。その洞察力に驚く。
「まあ・・それでも・・最悪よりはまし、と考えるしかないわね・・」
私は、今日が改めて気が付いた事実に考えを巡らせる。

下手に名前の売れてしまった自分には、平凡に生きる道など最初から閉ざされていたのだ。
それは、素養格付けでレベル5になることが予言され、細胞が採取され
クローンが製造された時からの自分にとっての運命と思い受け入れるしかない。

「だけど、当麻と一緒に生きる事だけは変えない」
私は改めて誓う。1年前に告白したときからそれは変わらない。

・・・・・・・・・・・・・
当麻の学生寮

私は、よろよろと通路を進み、当麻の学寮へ向かう。
そこから、肉と人参が醤油で煮詰まったような甘い香りが漂ってくる。
「美琴・・肉じゃが作ったから食べるか?」
当麻への、誘いに従い肉じゃがを味わって食べる。味が染みてとても美味しい。
皿を洗おうとするが、当麻に断られ当麻がちゃちゃと洗浄を終える。
気を利かせたのかインデックスは月詠先生のところに遊びへ行った。

「御免当麻とインデックスに迷惑かけちゃった」
当麻は優しい顔で私を見つめる。まるで私が何を言うか理解しているように
「美琴・・大変だったな?」
「わかるの?」
「1年付き合っているからな・・なんとなくわかる」
「ありがとう」

私は当麻の顔を見つめる、
「校長に言われたわ・・妹達の事」
「その事実とそれが学園都市の首脳部には当然の事実であること」
「そして私の足かせであること」
「それに怒った私は校長先生に電撃で威嚇しようとした」
「やらかしたわ・・」
私はその恥ずかしい事実に赤面する。
「後は校長先生のペースで話が進んじゃった」

「美琴・・」

「正直そんなことで怒るほうがどうかしている」
私は溜息をついてしまう。自分の子供ぽいところに
「私は復興ボランティア経験で大人に立ち向かえると自己を過大評価していた」
「何千人の頂点に立ち、交渉事をこなし、大人なんて大したことないと思っていた」
「だけど、・・私の弱点を責めてくる大人には敵わなかった」

「まあ・・今思えば正直政治的なことは食蜂に任せきりだった」
「私は・・技術者としてはそれなりだと思うけど、リーダーとしてはどうかしら」
「自信なくすわ・・」

当麻は私を真剣な顔で見つめる
「美琴・・」
「いや・・美琴らしいなあ・・」
「え?」
「いや・・やっぱり俺の美琴らしくてさ・・」
「当麻・・それはどうゆうこと?」
「理不尽な事、怒らなければならない時に怒れる美琴はやっぱりいい奴と思うわ・」
「そう?」
「妹達は、美琴にとっては大事だろう?自分の命を捨ててまで」
「その妹達を元に美琴を責めた大人に美琴が怒ることを俺は理解する」

私は溜息をついてしまう、せっかく有利だった交渉を私の不手際で逆手に取られたことに
「だけど・・それを逆手に取られて・・交渉を有利に運ばれた」
真剣な顔だった当麻が柔らかい表情に変わる
「美琴は糞真面目だよな・・」
「え?」
「学園都市の悪事と投げ出さず、妹達の問題を自分の問題をきちんと受け止めている」
「それに美琴は・・中学3年にしては大人だよな・・」
「え?」
「はっきり言ってさ・・何千人のボランティア活動の長をやって、それを完全になしとげて

935■■■■:2017/04/21(金) 19:36:18 ID:do8VD7AU
常盤台という名門学校から、この年で研究所の顧問に招聘される」
「そんなこと・・普通の中学生じゃできないと思うけどな・・」
私は目をみはり当麻の顔を見る。物事には別の側面があることを当麻が教えてくれる。
「当麻・・それは・・?どうゆうこと?」

「普通、敵が学園都市そのもので、その超能力者の1位が実験の被験者なんて言ったらさ・・
そこで立ち止まると思う」
「美琴はその事実を知ってもそれでも止まらず自分でケリをつけようとした」

あの僧正の時もそうだった。当麻は弱い私を、当麻に必死に追いつこうとする私をかばって
くれる。でも・・私はいつまでも当麻に甘えるわけにはいかない。
「でも・・私は結局当麻がいなければ実験を止めることはできなかった・・」
私は自分の弱さ、力のなさを思い起こす。あの無念は一生忘れる事はない。
「私は当麻がいなければ今ここにいることもない」

当麻が柔らかな表情で私を見つめる。
「美琴・・あの時、俺だけの力であの実験は止まったか?」
「美琴がそして妹達が風車を回してくれたから止まったじゃないか」
「それは・・でも・・当麻が一方通行をぶち壊してくれなければ・・」

「美琴・・それは違うと俺は思うぞ・・美琴が命を懸けて実験を止めようとしたから
俺の心を揺り動かし、妹達も協力してくれた」
「それに・・美琴に俺も救われた、何度も・・その恩を俺も忘れることはない」
「当麻・・」
「それに、美琴は無力なのか?・・美琴は復興事業で先頭にたって迅速に献身的に
学園都市の再建に取り組んだじゃないか・・それは学園都市の大人も認めている」
当麻が吐き捨てるようにしゃべり始める。
「俺は確かに・・この幻想殺しでそして八竜で幻想をぶち壊すことはできる」
「だけど・・物を作るとか、秩序を再建するとか、現実の世界を構築することはできない」

「現実の世界を構築し、地に落ちた学園都市の再建・再興なんて俺にはできない」
「それは、美琴のような研究者や実務家の仕事じゃないかな」

私の萎びた心が、しだいに当麻がしめした未来への希望へ心が高まる。
「当麻・・そうね・・私のような微力な存在でもできることはあるかもね」
当麻が笑ってくれる、その笑顔が私に力を与えてくれる。私は何度もこの笑顔に救われた。
「当麻、おかげで元気が出たわ」
「ねえ・・月曜日も話したけど土曜日に不動産でも物件を見に行かない?」
私は当麻の背中に手を回す。
「え?」

「当麻・・一緒になろう」
「ふふ・・これから同棲するのよ・・しかも私は、フリー」
「毎晩同じ部屋で、当麻と一緒に夢を語りたい」
「もっと私は当麻を知りたい。当麻と一緒に呼吸したい」
「ね・・いいでしょう」
当麻があきらかに狼狽え始める。顔が赤くなるのを私は見逃さない
「あれ・・私と一緒じゃいや?」
「いや・・美琴が魅力的でその・・」
「え?」
「いや・・美琴はまだ中学生だし・・その・・」
「ふふ・・あの子はどうなるの?1年半も一緒に暮らしているでしょ」

私は小悪魔な表情で当麻を見る。少し狼狽した当麻へアクションをかける。
「1年待ったもの」
「もう・・待てないわ・・当麻」
私は当麻の顔を見つめる。
「今日はキスだけど・・」
私は当麻の頬に顔を近づける。そして・・軽く接吻を交わす
「もういいわよね・・」
「卒業式が来たら答えを教えて・・」
当麻が私を真剣な顔で見つめる
「もう・・答えなんか決まっているだろう」

「俺には美琴しかいない・・」
当麻は私抱き寄せる
「だから・・2人で一緒に生きていこう。なあ」
「ありがとう」
私は心の底から当麻へ感謝する。そしてまた当麻とともに生きることの誓いを捧げた。

続く

936■■■■:2017/04/21(金) 19:37:43 ID:do8VD7AU
以上 卒業式 2話の投稿を終了します

937■■■■:2017/05/02(火) 21:11:45 ID:Ryye2k3c
誕生日1話

5月2日 午後5時
私は、今日15歳の誕生日を迎えた。
正直世間一般ではまだ子供、でも・・1年前には想像しえない濃い体験をした。

そして・・その1年で知り合った多くのかけがえないの友人・知人に囲まれて
結構大人数で、祝って貰っている。

黒子や佐天さん、初春さんだけでなく、相園美央や、繰歯涼子、一時帰国した
布束さん、そしてなぜかこの会場を自分名義で借りてくれた食蜂
1年前のボッチな自分には信じられない光景だ。

正直1年前の自分は手に入れた力に奢っていた子供だった。
学校でも研究所でも特別扱いで学校を代表してロシアへデモに行ったり、知らず知らずに
レベル5とか学校教育の成果ともてはやされ、レベル0を始めるとする低能力者を
心のどこかで見下していた。

でもそれが如何に井の中の蛙にすぎないか、そんな私の力くらいでは、救えない無条理
がこの世に横行しているか、その現実をたたきつけられた。

でも、・・こうして1年なんかと自分は生き延び、その現実と向き合った過程で得難い
友人を得ることができたのだから、私は幸せ者だ。

それに、・・私自身の力は小さくとも守れたものもある。
アイツと違って全部を救うことなんて私にはできない
それでも、こうやって周りの皆と力を合わせて救えた命もあるのだから・・

私は、今日は笑って自分の誕生日を祝うことにしよう。
アイツの所在はいまだにわからないけど

少なくともこうして自分は生きているのだから。
・・・・・・・・・・・・・・
「黒子、今日はありがとうね・・誕生会の幹事なんてしてもらって」
「いえ・・お姉様こそ・・」
「え?ああ・・結構多忙だったわね・・」
私は、学び舎の園の再建工事やら、部活やら、論文の推敲やらで1月以降多忙だった。
私は、何かにとりつかれたように、体を動かしていた。

多くの常盤台の生徒は、責任感の強い私が、私が常盤台を熱波事件のさい守り切れなかった
自責の念で身を粉にして働いていたと思っているようだが、事実は違う。

それはクリスマス以来姿を消したアイツの事で心が消えそうになるのを隠す為に頑張っていた面があった。
それを知っているのは・・食蜂と黒子だけだ。
黒子は、私の気配を伺うようにしゃべり始める。
「お姉様、余り思いつめるのは体に毒ですわ・・
少し・・気を楽にされたらいかがですか?」

「え・・ああ御免・・そうね・・私が辛気臭い顔していたら迷惑よね」
私は、せっかくの誕生会に辛気臭い顔をしていたことを恥じ、精いっぱい笑顔を作る
「お姉様・・私達では力不足でしょうけど今日1日だけでも笑いましょう」

「ありがとう」
私は、自分の辛気臭い顔でせっかくの誕生会を企画してくれた黒子達に余計な心配
をかけたことに気が付き、今日だけは笑顔になろうと決意する。

それにしてもいろんな人が集まったものだ、1年前では考えられない事だ
すべては、黒子に会い、佐天さんや初春さんに知り合いそしてアイツに知り合った
ことから始まる。

今日の誕生会はなぜかホテルのバンケットルームを借り切った食蜂が、発起人になり
黒子や佐天さん、初春さんが幹事になり、開催された。

荒廃した学園都市の再建がひととおり終わり、また食蜂や幹事たちがいろんなところへ
声をかけてくれたおかげで100人以上集まり結構盛大な誕生会になった。

(こんなにいろんな人に巡り合ったんだな・・)
しみじみ私は感慨にふける。
(こんな私でも、力不足な私でも一生懸命、過酷な現実に立ち向かった事で多くの人
とともに微力ながらこの街の為に尽くすことができた・・)
だから・・今日だけは皆と一緒に自分がこの世に生まれた誕生日を祝おう。
・・・・・・・・・・

938■■■■:2017/05/02(火) 21:13:56 ID:Ryye2k3c
私は、アイスケーキを大皿一杯に盛り付けた初春さんに声をかける
初春さんは、アイスケーキを口一杯に詰め込み、自分だけの世界に頭上の花に
栄養を与えるように、勤しんでいたが、私に気が付き、ケーキを飲み込む。
「初春さん誕生会幹事ありがとうね」
「御坂さん15歳の誕生日おめでとうございます」

初春さんには、いろいろお世話になった。私が開発した、建設工事用駆動鎧のOSの
バッグ取りやら、なによりもアイツの調査に協力してもらった
「本当初春さんのおかげよ・・私の駆動鎧の開発だってね。それにアイツの事も」
初春さんが笑顔で答えを返す
「まあそれも御坂さんの基本仕様がとびぬけているからで、私はバッグ取りを
しただけですから、でもよくあんな技術を学習されましたね・・最高機密レベルだと思いますけど」

「まあ・・その辺はいろいろ事情があるので・・」
はっきり言ってAAAの解析と木原唯一のラボから駆動鎧の仕様書を手に入れた過程
が極めてイレギュラーなのでそのことにあまり触れたくない
「でもさすが御坂さんですね・・誕生会にこれだけ人が集まるなんて」
「1年前では考えられないわ・・みんな・・黒子や初春さん佐天さんのおかげよ」

「御坂さん・・」
「また・・一緒にファミレスで女子会でもしません・・」
「本当ね・・もう少し落ち着いたらいいわね」
(そうね・・、もう・・いいわよね・・当麻・・)

「それと・・久々にハッキング対決でもしませんか?」
「え?やりたい・・?」
「私は秋には撃退されたけど・・」
「御坂さん・・謙遜はいいですよ・・バックドアをあちこちに仕掛けていません?」
私はちょっと驚いたふりをした。
(さすがは‥初春さんにはバレているか・・)

「そんな事するわけないじゃない・・そんなの犯罪行為よ」
「御坂さん・・いくら御坂さんでもやりすぎはダメですよ」
「まあ御坂さんが学園都市上層部を警戒されているのはわかりますが・・」

「え?」
「御坂さんは悔しかったんですよね・・木原唯一に常盤台を破壊されたこと」
(はあ・・私は分かりやすいのかな・・隠していたつもりだけど)
「そうね・・今でも時々くやしさで目を覚ますこともある」
「でも・・そこから立ち直れたのはみんなのおかげ」
「初春さんには本当にお世話になった」

「御坂さん・・」
yy
「え?」
「ちゃんと問題に向き合って、必死に立ち向かって」
「私と一つしか年が違わないのに、これだけの人を動かして・・」
「ちゃんと自分の手で問題を解決する」

「だから・・もしも次になんかあったら今度こそ私達も巻き込んでください。」
「私達の力なんて御坂さんに比べたらささやかなものですけど、
白井さんも佐天さんも御坂さんの力になりたいんです」

私は、敏腕オペレータの大げさな感嘆に頭をぼりぼりとかく
初春さんは本当に、いつも私の為にいろいろ調べてくれる。
「ありがとう」

黒子や佐天さん、繰歯さんや、名前は知らないけど、リーダーと名乗る偽装風紀委員
それに学園都市崩壊の危機を一人で演出した相園美央、とにかく事件のたびに首を
突っ込んだ。そのおかげで、多くの人と知り合う事ができた。

だから・・なんとかアイツの不在を乗り切ることができた。

だが・・楽しい時間は瞬く間に過ぎ去り、誕生パーティは終わりの時間を迎える。
門限の問題もあるのでとりあえず7時に中締めとなる。

私は、楽しいひと時を一緒に過ごした来場者ひとりひとりに頭を下げ、見送る。
そして・・感じの黒子や佐天さん、初春さんを除いてほぼ全員を見送った時に

まだあの女・・食蜂が残っている事に気が付く。
私は今日の会場を手配し、費用を出した食蜂に声をかける
思えば大覇星祭以来、多くの事件で結果的に共闘した食蜂、私のとってはライバルであり

939■■■■:2017/05/02(火) 21:15:57 ID:Ryye2k3c
同時に一番頼りになる相棒、そして誰よりも私の事を知る女食蜂操折

「会場の件、ありがとう」
「あらぁ・・御坂さんから感謝してもらえるなんて・・みさき感激だぞオ☆」
一見ふざけたものいいだが、この言い方にも慣れてみるとそれほど気にならない。
食蜂はなんだかんだいいつつ私の事をよくわかっている。本当に私が忌避することは
多分避けている。
「いや・・正直驚いているわ・・でも本当ありがとう」
「まったく・・御坂さんは・・無自覚なんだぞぉ」

「え?」
「御坂美琴の誕生日をお祝いしたい人の数よ・・」
「いや・・私はアンタと違って・・派閥なんてやっていないし・・」
「まったく・・常盤台の裏学生会長が・・よく言うわよ・・」
「でも、人数なら本当アンタの言うとおりね・・」

「でも・・それもアイツのおかげかな・・」
私をあの地獄の日々から救い出し、そして文字通り世界を救った男
「ええそうねえ・・彼の自己犠牲力で皆生きているわね・・」

私はクリスマスの日に私や一方通行を振り切り一人で、最後の戦いに
消えたアイツの姿をはっきりと思い出す。いわば人類の業を背い、それを受け止める
かのようにアイツは消えた。

「だけど・・」
「ええ・・アイツは絶対生きている、死ぬわけがない」
「そうね・・でも御坂さんもやっとこうやって笑えるようになったのねぇ」

「アイツが守ろうした世界とその中の私達がくよくよしてもしょうがないでしょう」
「だから今度こそ私は、自分とその周りの世界を自分で守る」
「それがきっとアイツの想い、それに・・絶対アイツは帰ってくる」

「そうね・・私もそう思っているわ」
私は、この誕生会をなぜか企画してくれた食蜂に深々と頭を下げる。

その後、レベルアッパー事件以来戦友という関係になりつつある、女子4人で
カラオケで2次会、最後ホテルで3次会を続けた。

学園都市を巻き込んだレベルアッパー事件、ポルタガイスト事件、八段階目の赤事件など
一つ間違えば、学園都市全員が死ぬような事件をこの4人で何度も解決できた。
(まるで・・戦友みたいね・・)

会話を交わすたびに、激動の1年間が脳裏にフラッシュバックする。
濃密なこの1年が如何に私にとって大事な時間だったのか、改めて認識する。

本当に、黒子や佐天さん、初春さんには感謝する。

そして、この4人を核に食蜂や、友人になった、繰歯さん、相園美央、スカベンジャーの
リーダー、柊元、婚后さん、固法先輩、帆風さん、この1年に私の電話帖は分厚くなった。
きっと私の人生にとって多感なこの時期にこれほど、多くのすぐれた人々
に出会ったことは大きな財産になるだろう。

だけど・・笑顔で、笑いながら私は心の奥底は決して晴れないことに嫌でも気が付く

私が、平和になりつつあるこの街で、本当に笑顔を向けたいアイツがいない事を
いやでも認識する。

どこか空虚な、空白部分がしこりように心の奥底を侵食して、それを隠そうとしても
浴槽にこびりついたカビのように消えない。

(でも・・今日は笑おう・・こうやって、取り戻した日常を・・・)
だが、・・意外な一言が私の心をかき乱す

「御坂さん・・なんか辛そうですね・・」
佐天涙子が何か言い始める、この子は、的確に私の心のわだかまりを付いてくる
「私達じゃ・・だめですか・・?」

「え・・佐天さん何を?」

「御坂さんがいつも一人で問題立ち向かうとしてきました」
「今日集まった人はすく無からず御坂に助けられた人達です」
「御坂さんは凄い能力者で、私なんて全然足元に及ばないのはわかっています」

940■■■■:2017/05/02(火) 21:16:58 ID:Ryye2k3c
「だけど・・こんな私でも、少しでも御坂さんの力になりたいです」
「佐天さん・・」
私は佐天さんの意外な言葉に、心を揺り動かされる。

「御坂さんは、「アイツ」のことにケリをつけたいんですよね・・」
私は、直球を佐天涙子から投げられ動揺する。
だけど・・こんなことに誰も巻き込みたくない・・

もしも本当にアイツが死んでいたら私はその事実を受け入れることはできるだろうか・・
正直自分に自信が持てない。私信じているつもりだ・・アイツは死ぬはずないと・・
だけど・・心のどこかにアイツを信じきれない弱い自分がいる。

「佐天さんありがとう・・だけど・・探す方法がないわ」
「それに・・私が調べた範囲では記録はないわ・・」

アイツがいつも通う病院、学校、アイツの友人の土御門元春さん、一方通行
浜面さん、アイツの縁のありそうなとこは全部聞いた。
それに統括理事会のサーバーはハッキングしてひとおり調べた。

だが・・いくらあさってもアイツの生存を示す記録は出てこない。
もうはっきり言って手づまりだった。それに、自分の仕出かした不始末による
学び舎の園の復旧事業もさぼるわけにいかず、いつの間にか時だけがむなしく流れ
、次第に私の心に空白と諦めが占めていく。

「御坂さん・・それでいいんですか・・?」
「御坂さんが簡単にあきらめるなんて、らしくないです」
「いままでも何度も絶望的な事はありました。だけど・・御坂さんはいつも諦めずに
問題にぶつかっていったじゃないですか・・」
私は力なく苦笑いで返す。
「そ・・そう?でも・・熱波事件は防げなかったわ・・」
自分の判断誤りで木原唯一の攻撃を防げなかったのは私にとっては、悔いの残る失敗だ。

「白井さんに聞きました。御坂さんは気の狂った科学者に破壊された学び舎園の再建に
尽力したと、それこそ寝る暇も惜しんで・・」

「もう1回やってみませんか?」
「御坂さんだけでなく、初春も、白井さんも、もちろん私も頑張ります」

「もう・・御坂さんのつらい顔なんてみたくありません」
「また一緒に立ち向かいましょうよ・・」

「それに・・御坂の力になりたい人は御坂さんだけじゃないですよ・・」
「え?」

「これは・・今日出席された人の動画メッセージです」
「これって・・」
今日私の誕生日パーティに出席した子達のメッセージ・・
「みんな・・」

「みんな御坂さんに助けられた恩を返したいんですよ・・そしてその御坂さんを
救った上条さんを救いたいんです・・」

私の目から、涙が零れ落ちる。アイツが上条当麻が失踪したあの日から心の奥底に
ため込んでいた莫大な感情が水滴になって零れ落ちる。

「ありがとう・・」

「黒子、佐天さん、初春さんひとつ聞いていい?」
「アイツは世界の頂点で、私なんかには想像もできない敵と戦っていた」
「危険なことはあるかもしれないし、私も皆を守れるかわからない」
「それでも本当に力を貸してくれる?」
白井黒子が、佐天涙子がそして初春飾利が立ち上がる
そして3人が私の手を握る。
「今更ですよ、御坂さん・・もう何度も学園都市が、世界すら消滅しそうなことに皆で
立ち向かったきたじゃないですか・・もう覚悟はできています」

「私達でがんばりましょう。」
「わかった」
正直アイツが見つかる保証なんてどこにもない、だけど、・・
久しぶりに私は心の底から笑う事ができた。そしてきっとアイツがみつかる気がした。

続く

941■■■■:2017/05/02(火) 21:17:42 ID:Ryye2k3c
以上 誕生日 1話の投稿を終わります

942■■■■:2017/05/10(水) 09:40:49 ID:r6S/hg6U
良いぞ良いぞ!!

943■■■■:2017/05/22(月) 13:29:09 ID:Rj2nhIBs
とある科学の超荷電粒子砲 Ⅲ 19話: 4章―4

9月29日(火)20時 TGV アトランティック線 パリ(モンパルナス)行 車中 

モン・サン・ミシェルからレンヌまでタクシーで40分ほど飛ばしTGVに飛び乗る
結構ぎりぎりだったが19時27分の便に間に合った。
レンヌとパリは約370kmあり、
そのうちルマンからレンヌ間は在来線を走行し、所要時間は約2時間である。名古屋と東京よりやや長い距離である。

正直な話、磁力による高速移動なら30分ほどで到着するが、晩秋の夜風に当麻をさらすのはきつい。それに
仕掛けをするのにそれなりに時間を要するので敢えて、フランス新幹線
を利用することにした。

それに・・いくらなりふり構わず、テロを強行する連中でもさすがに10両の高速鉄道を
破壊する真似はするまいと計算はする。

現在インドや、東南アジアで高速鉄道が続々と建設されブームになっている。
新興国へのTGV輸出はドイツに比べ経済力の劣るフランスに大事な輸出商品で
あり、それが悲惨な事故を起こせばフランスの威信は地に落ちる。

だからまあ危険はあることは承知でTGVを利用する。それに多少観光気分はある。
私は車中でノートPCを開く作業を始める。ひととおり風紀委員会関係の書類を決裁し、
作業を終えたところで、状況を見守っていた当麻が私に話しかける。

「てっきり磁力で移動するかと思っていた」
「え?」
「美琴ならそのほうが早いじゃん・・それに・・」
「ええそうね・・だけど・・私はあのセクハラ爺さんを殺しにいくつもりはない」
「え?・・そうなのか・・」
「当麻・・ここはフランス領内・・私達が好き勝手に暴れるわけにはいかないわ・・」

「いくら外交特権があり、不逮捕特権があっても現地政府ともめごとを起こすのは得策ではないわ」
「まあ・・いざとなれば力は行使するけどそれは最後の手段」

「それに・・少し休みましょう」
「え?・・ああそうだな・・」
私は、目をつむり仮眠をする。能力行使とは結構過酷な作業で脳を酷使する。
それに能力デモのような、ちまちまと局地戦をやるほうが、能力全開よりも疲れるくらいだ。
今日はちまちまと能力を使い結構疲れてしまった。
(まあ10分寝れば大丈夫だけど・・)
気が付くと私はうとうとと眠ってしまった。
・・・・・・・・・・・・
美琴は相当疲れていたのだろうか・・
生体電流で脳波をも制御できる能力者だからだろうか・・
2分で熟睡モードになりやすらかな吐息を立てている。
(この辺の切り替えの早さが超能力者なんかな・・)
あれほど、いろいろもめ事に巻き込まれ解決したのにそんなことは忘れて惰眠を
貪っている。

(寝ている姿は普通のJCだけどな・・)
実験や会議、戦闘時の美琴は、大人びたお姉様風だが、こうやって座席で寝ている
姿は年相応の少女にしか見えない。
(まあ容姿は整っているけど・・まだJCだな・・寝ている姿は)
しかも華奢だ。
身長こそ14歳の平均身長より5cm高いが、華奢な体つきな事は間違いない。
その華奢な体で戦闘やら過酷な実験をこなす。
(超能力者美琴の頭はどうゆう構造しているだろうな・・)
俺は会議での美琴の姿を思い出す。普通に英語で会議の司会と、基調演説を行う。
大の大人でも日本人は英語の国際会議の司会なんてできないと聞く。
(まあ・・普通の中学生ではないな・・)

俺なんかにはもったいない存在だろうな・・
(美琴に言えば否定するだろうけど・・)
(だけど・・白井ははっきりそう言っていたな・・お姉様にはふさわしくないと)
俺は右手を突き出しまざまざと眺める
(結局はこの右手か・・)
結局いつかはその問題へ、相対しなければならない。
・・・・・・・・

美琴は約束通りちょうど30分で目を覚ます
(まるで目覚ましでもつけているみたいだな)

944■■■■:2017/05/22(月) 13:30:08 ID:Rj2nhIBs

「まだ眠くないか?」
「え・・ああ仮眠だし。でもまあ頭がすこしすっきりした」
まだパリまで1時間以上かかるし、俺は起きる必要もないだろうと思うがこうゆうところ
は美琴は糞真面目だ。
「で・・どうする?」
「うーん、当麻はどうしたい?」
「え?」
「あの糞爺と十字教の幹部に会いたい?」

「そりゃ・・なあ」
俺は、モン・サン・ミシェルでの惨劇未遂を思い出す。
無差別に多くの人間を、ただ御坂美琴を侮蔑するためだけに殺そうとする
その卑劣さを思い出す。
「私は腹立つわよ・・でも証拠ある?」
「それに誰か死んだ?」

「え?」
「美琴は・・見逃すのか・・自分が侮蔑されようとしてまかり間違えば殺されて
かもしれない、それなのに・・」

「そうね・・事実はそうよ」

「でも真実かどうかは誰が決めるのかしら」
「それに誰も死んでないし、何も壊れていない」
「共謀の事実と、予備罪はあるけれど、その証拠がない」

「はあ?」
俺には美琴が言っている意味がよくわからない。
「ハッキングや盗聴で得た証拠はどこまで捜査機関が捜査するかしらね・・」

「あ・・」
「刑法の原則は不正な手法による捜査で得た証拠は証拠能力を有しない」
俺は美琴の言っている意味を理解する。
「それにここはフランスで学園都市じゃない」
「そもそも私や当麻に捜査権もない」
「まさか・・殺すわけにもいかないし・・さーて、どうしたものかしらね・・」

言われてみれば、確かに外国人でやれることには限界がある。合法的には。
「まあ殺すことは簡単だけど、学園都市とフランス政府の外交問題になれば私の責任問題になる」
「正直やれることには、限界がある」
美琴が皮肉小悪魔な笑みを浮かべる
「さて私は、どうすればいいのでしょうか?上条当麻さん・・?」
「会社ごと、ぶっ壊す?それは・・できないわよね」
美琴は、楽しそうに話しを始める

「まあ・・とはいえ・・」
「このまま済ますわけにいかない」

「まあ先方が会いたくなるような手は打ったけどね」
「え?」

美琴はスマホを操作し画面を示す。
「まあコラ画像だけど・・昨日の晩作った」
「内容は全部事実よ」

「あのスケベ爺さんは・・パナマに口座持っているらしいのよ・・愛人名義で」
「パナマ?」

「タックス・ヘイブン知っている?」
「タックス・ヘイブン?」

「日本語で租税回避地というところよ、パナマやバハマ、ケイマン諸島が知られている」
「世界の富裕層は名義上のペーパーカンパニーを法人税や相続税のない国に設置しそこに資産を集めている」
「パナマはそのひとつ」

「まあそれが悪とは言えない。口座があるだけなら。現実に多くの富裕層は利用している
し、租税回避地に口座を持つこと自体は禁止されていない。」
(なにより私も利用しているしね・・)

945■■■■:2017/05/22(月) 13:31:02 ID:Rj2nhIBs
「だけど・・アイツはフランスの大統領選にでるらしいけど、租税回避地に口座が
有ることを隠しているのよ」
「でその事実をコラ動画にしておいた」
「それを・・メールで送付と・・・」
「さて何が起こるかお楽しみ・・ね」

「回りくどくないか?」
美琴は、瞬間湯沸かし器のような性格で本来はこんな遠回しのやり口はしないはずだ。
「そう思う?」

「当麻・・情報は時には弾丸より強いのよ・・」
「それに・・」

美琴の目が細くなり表情が変わったのに俺は気がつく
「やっぱり・・ね」
「やっぱり?」

「どうやら私達はつけられていたみたいよ」
「え?」

俺は周りの雰囲気が張りつめたものに変わったことを理解する
戦場のそれに・・

まるでテレポートで運ばれたように突然屈強な男たちが複数
座席を取り囲み手に自動小銃をかかえ、乗客を威嚇する。
他の乗客たちは、恐怖で声も出ないのか押し黙っている。

美琴は流ちょうなフランス語で話しかける。
「なんのようかしら?」
俺は美琴からもらったイヤリングを耳につけ会話を聞く

「さすがに驚かないな・・」
「いつでも殺せると?」
無視されたテロリストは、自分の優位を確信しているのかべらべらと喋り始める。

「同志は俺たちだけじゃない」
美琴は余り驚いていないのか、それとも相手との心理戦で隙を見せるつもり
がないのか表情を変えない。
「私が誰かはご存知ですよね」
「あなたが、発砲する前に私はあなたを殺すこともできますが」

「ああ・・そうだろうな」
特殊部隊の隊員のように瞬足で、隊員が俺ののど元に銃口を突き付ける。
「だが・・上条当麻も別の車両の乗客も守り切れるかね・・」

「いくら学園都市1位様でも・・」

「なるほど・・私の事は一応知っていると」
美琴が溜息をつく、答えを予測しているかのようだ。

「で・・要求はなんですか?」

「ここで、これから我々の同志が行うことに目をつぶってほしい」
「しばらく10分間くらい放置してくれさえそれでいい」
「この世界には不正があふれている」

美琴は目をつぶり、じっくりと考え事をしているようだ。
「我々は欧米のムスリムに対する不当な弾圧に抗議して聖戦を緩行する」
美琴は目をつぶり無視を決め込む
「御坂美琴・・無視か?」

無視を決め込まれた黒覆面テロリストはイライラし始める。
「俺たちは爆弾も持っているし、この列車を脱線させることもできる」
「たとえお前が化け物でもこの時速320kmで移動するTGVの脱線で
無傷なわけがない」
「それに上条当麻は右腕・・」

変化は突然だった。男は理解できなかっただろう。目の前の化け物が本当はどのような
化け物か理解することさえできなかったに違いない。予備動作も、前兆する感じることもなかったろう。

100kgの巨体が制御を失い倒れこむ。美琴は眉一つ動かさない。

946■■■■:2017/05/22(月) 13:32:12 ID:Rj2nhIBs

「終わったわ・・」
淡々と美琴は日常作業が終わったように、つぶやく。
普通の刑事ものや、映画ならもう少しハラハラドキドキさせる場面だろう。
人質をとられ、しかも目視できない複数の車両に分散して、自動小銃で武装した
複数の実行犯、モサドやシールズでも簡単には動けない事態だ。

犯人と主人公の息詰まる攻防のシーンになるのが普通だが、そんなものは化け物には
通用しない。

正味1秒のほどの作業で、実行犯全員が気絶している
こんなのは戦闘と呼べないだろう。ただの「作業」だ。

「まあ・・べらべら口の軽い奴で助かったわ・・」
俺は平然と「作業」を終えた美琴の顔を見つめる

「美琴・・いったい?」
「え?知りたい?」
美琴はpcの画面を見せる
「これは監視カメラの映像」

「なるほど・・そうゆうことか」
美琴は、目をつむり監視カメラの映像を直接脳で展開し、武装集団の位置を掴み
攻撃を加えたわけか・・

「私は心理系は得意じゃないけど」
「生体電流を操ることはわけないわ」
「だけどちょっと早まったかな・・」

「へ?」

「普通なら調子に乗らせてべらべらしゃべらせる場面だけどね」
「まあ、過激派の意見を聞いてもしょうもないし、なによりアイツは当麻を侮辱
しようとした」
「それに・・」
「爆弾もあるし、いつ一般乗客に発砲するか読めない」
「だから仕方ないわ・・しばらく寝てもらいましょう」
・・・・・・・・・・・・・・・・
美琴は、手際よくテロリストの爆弾を解除し、全車両の様子を確認して戻ってくる
俺は一緒についていくとは言ったが、複数のサブマシンガンに俺の右手は役に立たないと指摘されて引き下がる。美琴が状況を説明する。

「爆弾は2ケ、起爆装置は分解したわ、10人いたテロリスト全員しばらくは行動できないようにしてきたし、武器は分解しておいたわ」
「とりあえず、フランス政府の内務省にテロリストは拘束済みと連絡したわ」

相変わらず美琴の手際はいい。
「そうか、で、どうする?」
「当麻ならどうする?」
聞かれるまでもない、こんなやからは放置できない
「決まっているだろう直接談判するだけだ」
美琴の顔が満面の笑みに包まれる
「まあ、私の顔に泥を塗ろうとした罪に罰はいるわよね・・」

「いいわ・・ちゃんと教訓を与えましょう」
美琴は、力強く俺に答える

・・・・・・・・・・
美琴が携帯電話を操作しながら俺に話しかける。
「まあ・・見逃してもよかったけどね」
「え?」

「前にも話したけどフランス国内であの糞爺を殺すわけにはいかない」
「それに学園都市にとってある程度有用な人物でもあった」
「フランス政府、そしてEUとの全面戦争は統括理事会も望まない」
美琴は溜息をつく、暴落した株を損切りするかどうか悩む投資家のような
表情を見せ、しばし考えたのち決断したのか意思を明確に示す。

「だけど・・このまま放置するわけにはいかないわよね」
「それに知られて困るような真実を抱えているほうがどうかしている」
「しかも・・フランス大統領に立候補するような人物が」

947■■■■:2017/05/22(月) 13:33:24 ID:Rj2nhIBs
「まあ・・代わりならいくらでもいるでしょう」
「この企業も他にCEO候補くらいいるでしょう」
「だから・・外科手術しましょう」

俺は美琴に一つ確認をとる。
「そうだな・・まあ美琴がやりたいようにやればいいよ」
「だけど、殺さないよな?」
美琴が、くすくす笑い始める

「当麻も優しいわね・・まあ殺すのは簡単だけど・・」
「まあ・・死よりもある意味辛いことになるかもね・・」

「当麻・・公人にとってつらいことでなんだろうね・・」
「え?」

「社会的地位が高い人物が、大統領になりたいほどの人物がその夢を断たれたらどうなるかしら」
「不正会計・脱税・セクハラ」
「今まで何十年もかけて積み上げたすべてを奪われ、私がその証拠を全部持っているならどうなるかしら」

「さてと・・メールと・・」
「どうした?」
「悪友にメールした」
「悪友・・?」

「私の欠点と性格を一番知る女よ」
「メンタルアウト、食蜂操折」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
食蜂操折は美琴からメールを受け取りつつ悪態をつく
面倒くさがりの美琴は政界工作や、投資活動は基本食蜂へ丸投げする

「まったく・・全部自分で一瞬でできるくせに・・」
電子世界でチートな存在の美琴には、あらゆるセキュリティは意味をなさないが
掴んだ情報での投資活動や、政界工作は食蜂任せだ。
多分のその気になれば、あのエロCEOが暮らせなくなるほどのネット工作ぐらい一瞬で
できるだろう。預金を奪い、怪文書の山をフランスのYOU TUBUのサーバーを直接いじくり、
コラ映像を林立させるだろう。
ロシアのハニートラップに引っかかりフランスの
原潜のプロペラシャフトの情報を提供したとか、パナマやバハマ、ルクセンブルクの隠し
預金口座とその残高、脱税の動かぬ証拠、マスコミが泣いて喜びそうな情報の山
その情報はすべて、このチップに入っている。

「まったくう・・ここまで掴んでいるならぁ・・自分でやりなさいよぉ・・」
食蜂は毒好きながら、某巨大企業の会議室にいる。
「御坂さんも悪趣味よね・・CEOさんが知らないうちに取締役会を招集させてエ・・」

メンタルアウトは使っていない。食蜂がやったことはただ一つこの企業の大株主の
フランス政府の大統領府へ電話を掛け送付した資料を基に交渉しただけだ。

大統領にとって、盟友にあたる人物だが、莫大な証拠の数々でかばいきれないと判断したのだろうスムーズだった。

食蜂は、別室で待機しながら、何も知らないCEOが議場へ入室するのを確認する。
CEOは自分の悪だくみが失敗したなんて知らないだろう。

自分がまさかすでにCEOを取締役会で解任され、ただの平取締役に降格された
事に知らずに、ロイターの流したTGVテロニュースに気色を隠さず、会議室
へ入る。

(馬鹿な奴・・学園都市1位がたかがテロくらいで死ぬわけないのに・・)
・・・・・・・・・・・・・・・・・
彼は起きたことが信じられなかったに違いない。

今まで何十年かけた人生の成果が、フランス大統領も手の届くところまで登り詰めた
人生が否定された。

CEOを解任されたことだけなら、やりなおしはできる。
フランス大統領に立候補すればどうせ退職しなければならない。いわば既定路線

問題は・・彼の横領と不正会計が大統領と取締役にバレたことだ。
勲章も、大統領選挙もパー、横領は見逃してくれそうだが、アメリカの原子力事業の

948■■■■:2017/05/22(月) 13:34:15 ID:Rj2nhIBs
失敗により減損会計により会社自体の屋台骨を傾け、公的資金の投入を受けることで
社会的信用もなくなる。
(これもすべて・・あの小生意気な学園都市の超能力者のせいだ。)

CEOは、自分を出し抜いた糞生意気な小娘に対峙する。
目に憎しみをと憎悪を籠め、明確な敵意を体から放出する。
「はめてくれたな・・」
「TGVのテロ速報でだましやがって・・」

CEOはテロ発生のテロップにだまされ出席した取締役会で喜んで自分のCEO解任決議と取締役退任の書類にサインさせられた。

「まさかあの程度の特殊部隊で私を制圧できるなんて、思っていないでしょう?」
「一人で軍隊に対抗できる学園都市の超能力者が」

「ああ・・だが他の乗客は殺すことはできる、後は車両を爆発させて殺すつもりだったが」

「知りすぎた女は殺すと三流サスペンスドラマのようなあらすじですね」
「まあそのくらいで死ぬような玉ではなかった・・な」

「だが確信したよ」
「何をですか?」

「学園都市とその超能力者1位御坂美琴がわがフランスとNATO及び十字教世界にとって許すべからざる存在だと・・それに・・」
「もう私は終わりだ・・次期大統領にすべての犯罪は暴かれ刑務所行きだ」
「この世に未練はない・・だから」
「パリ都市圏1000万人全員に死んでもらう」

「え?」

「3分前に、パリへ大西洋の原潜からSLBM4基、20発の
核ミサイルを撃ち込んだ」
「フランス政府のミサイル防衛網では防ぐことさえできない」
「弾頭一つで広島に投下された原爆の10倍の威力の100キロトン」
「それが、20発」
「合計2Mトンの核の業火に焼き尽くされパリ及びその周囲数十キロは何も残らない
だろう」
「世界政治の中心地のひとつ、EUの実質的な首都パリはこの世から消滅する」
「いくら君でも到着まで後10分ですべてを防ぐことができるかね」

男は乾いた笑いで自分を嘲笑するように、佇んでいた。

・・・・・・・・・・・・・・・・
フランスは、冷戦終了後も原潜4隻に48基の核ミサイルに240発の核弾頭を
搭載するなど小規模だが、主に対ロシアへの最小限の核抑止力を持っている。

その発射はフランス大統領の暗号コードが発信され原潜の司令官がそれを受領し
発射を担当する副官と2名でボタンを押さないと発射されないはずできわめて厳格
に管理されている。だが・・このCEOは原潜に裏コマンドを仕込み、遠隔操作で
発射できる仕組みを用意していた。そして原潜の司令官は・・このCEOの友人
というよくある話だ。つまりCEOが失脚すれば公職を追われるというよくある話。

美琴には男の行動が理解できなかった。

はっきり言って死刑制度のないフランスなら、保釈され長々と裁判を行えば
10年くらいは贅沢三昧の暮らしはできる。大統領が変われば大統領恩赦を受け
赦免されることだってありえる。

殺されることはありえないし、落ち着いて考えれば自殺特攻をする理由がない。
(ようするに、私に・・超荷電粒子砲を打たせようとしている?)
(だけど・・それで何をしたいんだ・・?)

考えてもしょうがない、わずか5分で音速の10倍以上の速度で飛翔する20発の核弾頭
を打ち漏らす事なく撃退するのは米国でも不可能だ。

私は頭脳をフル回転させ対処方針を決めるようとする。
防ぐことはできる、だが・・
(超荷電粒子砲なら可能だけどね・・)
(だけど・・ヨーロッパの中心のパリでそれを放てば・・全欧州が電磁パルスで
活動を停止する)

949■■■■:2017/05/22(月) 13:35:12 ID:Rj2nhIBs
御坂美琴が超荷電粒子砲を使えない(使わない)理由は電磁パルスで半径数千キロを
壊滅状態にするからだ。その破壊力は莫大だが、がゆえに使えない。

だが・自分が死ぬことはないが、1000万人のパリ首都圏のほぼ全員となにより
当麻と悪友食蜂を守れないかもしれない。そんなわけにはいかない。

(とはいえ・・ほかに手段がない以上数千億ユーロの損害が出てもしょうがないか・・?)
数億台のPC、全欧州の電気施設が止まる。停電は1週間くらいでは恐らく復旧しない。

全欧州にまたがるブラックアウトで暴動・略奪・生産施設が止まることの2次被害は
想定さえもできない。
(だけど・・ほかに選択肢がないなら・・)
私は、究極の選択を迫られる・・パリ首都圏の1000万人を殺すか、全欧州の10億人の
文明を破壊させるか

・・だけど・・上条当麻と食蜂操折の命に比べれば些細な問題だ・・
私は覚悟を決め、超荷電粒子砲のチャージを開始する。
だが・・食蜂が私の脳に直接同期を求める
「御坂さん・・正気?」
「え?」

「超荷電粒子砲なんて血迷うんじゃないわよ・・」

「食蜂・・もう時間ないわよ・・今座標計算とチャージ中だから脳に
アクセスしないで」
「他に方法あるでしょう・・?」
「え?」

「わずか6ℊのコインを亜光速で射出し、弾頭を破壊できる方法があるじゃない」
「え・・ああ・・あれ?でも」

「座標計算?なんでも一人でやる必要なんてない。初春さんだっているじゃないのぉ」
「だけど・・」

「御坂さんに欧州を破壊させるわけにはいかないわ」
「ここは、3人で対処しましょう」
私は、悪友の思わぬ提案にうれしくなる。冷静な食蜂はカーと血の上った私の
思考を覚ましてくれた。

久々に撃つか・・たった6グラムのコインの奇跡にかけてみよう
コインの超電磁砲の欠点は射程が短いことだ。摩擦熱でコインがとけてしまう。このため
50Mしか射程がない。

だが美琴と食蜂の能力を同期させコインを水分でコーティングすることで、極限まで
摩擦熱を減らし、なおかつ水蒸気の揮発のより爆発力さえ推進力へ変え射程をのばし、
レールガン本来の、速度に限界のない、極端にいえば亜光速に達する射出速度を得ることができ、けた外れの火力を実現する。

さらに初春飾利の脳を連結させ座標計算を行い、米軍のサードシステムでもできない
ミサイル防衛を可能にする。美琴はポケットから20枚のコインを取り出し発射準備を
整える。頭の中に数百キロの弾頭計算を終え、コインのレールを整える。

窓をぶちやぶり、磁力を使い数秒で駆け上がり超高層ビルの屋上へ駆け上がる。

パリ郊外の新都心ラ・デファンスの煌々と灯りをつける高層ビル群を見下ろしながら、
数百キロ上空の20発の核弾頭へむけて腕を伸ばし、発射態勢を整える。

「いっくわよ・・」
轟音がとどろき、オレンジの閃光が大気をつらぬいて、莫大なエネルギーの奔流が貫いて
いく。10秒後いくつかの尺玉花火のような光が空を埋め尽くした。

・・・・・・・・・・・・・・
上条は、なかば狂人のように、うわの空で、ぶつぶつ独り言をつぶやくCEOと
会議室で座りながら佇む
彼の右手も・・ただの物理現象にすぎない20発の核弾頭には中の力さえもすべてを
ふせぐことはできない。物理現象の世界では、ただの高校生なのだから。

だから美琴のミサイル防衛をじっと待つ。5分経過しても核爆発も電磁パルスも発生しないことで成功したことを知る。
「さあ・・この男をどうするか・・」
正直パリへ原潜から核ミサイルの雨を降らせる気の触れた男と一緒にいるのもつらい
ものがあるが、美琴に託された以上付き合うしかない。

950■■■■:2017/05/22(月) 13:36:13 ID:Rj2nhIBs
だが・・命以外のすべてを失い錯乱した元企業経営者は、予想もできない行動を
始める。一瞬だった・・突然机の中から拳銃を取り出し上条のこめかみにつきつける。
「簡単な事だったな・・さっさとこうすればよかった」

「上条当麻・・死んでもらおうか・・」
「どうせ我がフランスには死刑制度はない・・何人殺そうが死刑はない」
俺は失笑する。大企業の経営者がこんなことで逆上するのか?

「つまんねえ野郎だな・・美琴に手がだせねえから俺を殺す?」
「そうやって弱い者を虐めて、大統領になって何がしたかったんだ・・テメエは・・?」
「ただ大統領になって社会の底辺で必死に働いている貧民や移民を虐めて国民の歓心を得るつもりだったのか・・?ええ?」

こめかみに銃をつきつけた元巨大企業経営者に顔がみるみる怒りに包まれる。
怒りの余り、拳銃を手放し、直接殴りかかる。そうこれが上条の狙いだった。
上条は100㎏を超える中年経営者の姿勢をそらし背負い投げの要領で投げつける。
そして拳銃を蹴っ飛ばし、よろよろ立ち上がった男の襟首をつかむ。

「テメエは・・やりすぎたんだよ・・美琴は全部テメエの悪事は分かっていたんだ」
吐き捨てるように中年男が喋り始める。

「分かっていないな・・小僧・・あんな化け物を、一人で文明を破壊する存在を放置する
学園都市がどれほど危険な存在か・・」
「俺は騙されない、御坂美琴は少女の皮をかぶった深淵からこの世に現れた悪魔だ」
俺は悔様に足元もおぼつかない中年男に右フックを加える。

「テメエに美琴の何がわかる・・」
ぐえ・・殴られた中年男は奇声を発する。

「アイツはな・・自分が動けばさっさと終わるのに極力自分の力を使おうともしない」
「テメエなんぞさっさと無害化できるのにそれも敢えて遠慮してしない」
「テメエが、自分の悪事を棚に上げ、きれいごとを言い続けるなら、そんな幻想はぶち殺す」
強烈な右アッパーを食らった男は、数メートルノーバウンドで吹っ飛び声を失う。
男は、再び立ち上がることはなかった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
目いっぱい頭脳を酷使した美琴が駆け寄ってくる。

「当麻・・ありがとう」
中年男はパリ警視庁に連行される。あらかじめフランス政府内務省に事情は
説明済みなので、殺人未遂の目撃者の取り調べは免除される。
「終わったな・・」
「ええすべてね・」

「え?でもゾンビ魔術師は?」
「衛星解析画像と、顔写真をフランスの実際の国家元首へ送ったわよ」
「はあ?」
俺に美琴の言っている意味は理解できないがまあどうでもいいことだろう。

「まあフランスの内政問題はどうでもいいわ」
久々に美琴の顔が満面の笑みに変わる。
「もっとゆっくりしたかったわね」
「せっかくフランスへ来たのに観光もおちおちできないわね」
「まあこれでフランス出張は終わり・・さっさと学園都市へ帰りましょう」
「でもその前に・・今日はいいわよね」

「ああ・・」
「今日はオペラ座のそばの最高級ホテルにいきましょう」
「ね・・いいでしょう?」
美琴が腕を絡め、甘えてくる。

正直コイツが悪魔だろうが、文明を壊す存在だろうが、そんな評判はどうでもいい。
俺にとって美琴は、不器用な年相応の夢見がちなただの少女なのだから。
言いたい奴には言わさせておけばいい。それだけの話だ・・

「ああ・・今日は腰が立たないくらいな・・」
「へえ・・怖いわね・・私の体力を知ってそんな事言う?」
「お手柔らかにな・・」
「その前にデートしましょう」
「ああ」
いろんな事があったがこんな出張なら悪くない俺はそう思った。
続く

951■■■■:2017/05/22(月) 13:37:45 ID:Rj2nhIBs
以上とある科学の超荷電粒子砲 Ⅲ 19話: 4章―4
の投稿を終わります

952■■■■:2017/06/02(金) 19:33:11 ID:NfaPyXtE
卒業式 3話 

2月18日(土)

5時に起きてしまった。
まるで遠足の朝に、はやる気持ちを抑えきれない子供のようにうきうきしている。

多少早くなったといえまだ2月、日の出までは1時間もあり、まだ真っ暗だが
土日とも愛しの当麻と外出できる喜びで浮ついている自分にはそんなことは関係
ない。どこか、浮ついた気持ちと睡眠不足のせいで、少し足元がおぼつかないが
そんなことは些細なことだ。

今日は、2人の新たな、そして・・実質的に夫婦としての門出の日だから。
・・・・・・・・・・・
「おはよう 当麻」
「おはよう 美琴、えーとすごいな・・これ?」
私は24時間営業の食品スーパーに立ち寄り、1週間分の食材を買い込んだ

「大丈夫か?重いだろう?」
「ふふ・・私を誰だと思っているの?」
「え?ああ・・美琴が開発した買い物用小型ドローンか・・?」
「まあまだ試作品みたいなものだけど、結構役立つわよ」
当麻は私の顔に何かがついているかのようにまじまじと見つめる。
「なるほど・・常盤台が手放したくないはずだ」
「え?」
「こうやって、当たり前のように先端技術を取り扱う」
「やっぱ俺の恋人の御坂美琴は凄い奴だと思うわ」

「ありがとう当麻・・じゃ・・冷蔵庫に収納させてもらうわね」
私は、スーパーで購入した米や食パン、肉や野菜、牛乳1週間分を手際よく収納する。

インデックスがここに居ないことに安堵する。とはいえ・・インデックスにも女心は
あるはずだ。明確な好意を向ける上条当麻にはっきりとした恋人である私ができた。
(まあ今はいいわ・・私がインデックスも含めて当麻の周りの世界を愛すればそれでいい)

「今日はわかっているわよね」
「え・・ああ新居探しか?」
私は予想通りの反応にわざとらしく膨れてみせる。
「なーに言っているだが・・こんなかわいい子と1日歩き回れば、それは
デートと言うのよ」
当麻がわざとらしく頭をぼりぼり掻き始める。どうせ私の反応を試していたに違いない。
突然しゃがみ私をお姫さまだっこする。
「美琴は可愛いな、でもあんまり他の男には見せるなよ」
「ばーか、当麻にしか見せないわよ・・ね・・」

「じゃ・・そろそろいく?」
「ああいこう・・」
・・・・・・・・・・
最近は外れる事もあるが、いちおう天気予報どおり冬晴れで無風の中、すこし黄砂で
靄っているが、春先の暖かい日差しが降り注ぐ。

予め配車アプリで手配したタクシーにのり、お目当ての不動産へ向かう。
当麻の遅刻のリスクを考慮し、当麻の学校近くの物件で、日当たりのいい、タワー
マンションに目をつけていた。不動産会社社員の案内の元物件へ向かう。

「当麻ここよ」
「へ・・こりゃすごいな・・」
50階建ての、タワーマンションその上層階にたまたま空きがあった
「じゃ・・行きましょう」

「広いな・・」
当麻はもの珍しいそうな顔つきで日当たり良好な50階の部屋を眺める
「これは・・すごいな」
50㎡(30畳)のリビング、整ったシステムキッチン、
そしてなぜか2つあるベッドルーム、ジャグジー付の風呂・・
165㎡のそこそこ広いマンションだ。

「はあ・・これが貧富の格差か・・」
私は当麻の発言に今更感を持つ
「え?」

「まあ・・常盤台の子だと狭い部類だけどね・・」

953■■■■:2017/06/02(金) 19:35:40 ID:NfaPyXtE
「まあ常盤台ならそうかもな・・」

「ふふ・・ねえ・・当麻・・別にお金の心配なら不要よ。十分奨学金で賄える範囲だし」
「それに、私は当麻には、その力に見合う待遇を受けて欲しいわ・・」
「私はお金にこだわるつもりはないけど、当麻は世界を救った。その事実は、
知っている人はみんな知っている。なにより・・ほかの誰が否定しようとも当麻の歩んできた道は私が
保証する・・だから当麻はその功績に見合う待遇を受けるべきだわ」
「それに・・私にも一応世間体もあるので・・ね」
当麻はひとしきり部屋を眺めた後、溜息をつきながら意外な感想を言い始める。
「な・・美琴・・?」
「え?」

「俺は・・常盤台のエース様の恋人にふさわしいのか?」
私は今更当惑する。私の立場なんて今更じゃないの?私は当麻しか愛せない
「それは結構今更かな・・僧正の時の話覚えている?」

「私は・・別に僧正の圧倒的な「位相」て奴を捻じ曲げるほどの力に無力感を
感じたわけじゃない・・」
私は絶望にうちひしがれたあの日を思い出す。僧正の前に私のちっぽけな自分だけの
現実が世界の頂点にまったく通用しない事実を思い知らされたあの日を思い出す。

「一番私が打ちひしがれたのは上条当麻の立つステージにおいて自分が
周回遅れの存在だったこと」
「その現実が自分の目に突き付けられて私は絶望したわ・・」

「美琴・・」

「まあ・・その屈辱と絶望は私がAAAを手に入れ、食蜂と手を組み液状被覆超電磁
砲という圧倒的な破壊力を手に入れ、AIM拡散力場を機械的に制御するSYSTEMを
構築した事で、ある程度埋め合わせる事はできた」
「その力であの混乱した日々を乗り切ることもできたと思うわ」

「でも・・結局私は当麻と違って世界の頂点に立つことは出来なかった」
「かろうじて・・援護ができただけ・・」
「まあ・・でも・・最後まで見届けることはできたのは私にとっては誇りかな・・」

当麻が窓の下に広がる再建された学園都市を眺めながら笑い始める
「美琴は・・正直俺を過大評価しすぎだよ」
「美琴がAAAで援護して、AIM制御機構で力場をコントロールし、制御装置を
亜光速の特大液状被覆超電磁砲でぶち抜かなければ俺も死んでいた。」

「正直・・俺の八竜も幻想殺しもそれでできたことなんてごく些細なこと」
「美琴やインデックスが必死で障害を排除したからこそ、そしていつも
周りが支えてくれたからこそ・・道を切り開く事ができた」
当麻は私を抱き寄せる、当麻の鼓動・・当麻の呼吸が熱く感じる。

「美琴は熱波事件以来・・いつも命を懸けて俺を助けてくれた」
「俺は美琴を周回遅れなんて思ったことはない」
「俺にそんなことを言う資格なんてそもそもあるわけがない」
「だから・・悪夢は忘れような」

「精神攻撃なんてさ・・吹き飛ばせばいい、それが連中のやり口だから」
「御坂美琴の歩んできた道と、それによって救われた人たちがいることは
俺が保証する、だから美琴は自分の思った通りやればいい」

「ありがとう」

・・・・・・・・・・・・・・
私は何件か物件を確認し終え、時間もちょうど昼になったのでいつものファミレス
に入店する。座席に座り、高校生のバイトらしき女性がメニューと水を座席に置く。
私が歩きまわりのども乾いたので軽く出された水を一気に飲み干す。

なにか言いたそうな当麻が軽口をたたく
「美琴は、しぐさが豪快だよな」
「え?」
「趣味駆動鎧制作、で部活がAI開発・・女性というより、理科少年かな」
今更・・この男は何を言うのだ・・
「まったく・・それ恋人に言う話?・・それに今日は新生活の拠点探しの目的よ」

「ごめん少しいいすぎた、でもそんな美琴に俺は救われた」

「え?」

954■■■■:2017/06/02(金) 19:37:14 ID:NfaPyXtE

「美琴に言わせれば、俺はフラグ男かもしれないけどさ・・」
「本気で、かつ体当たりで、俺に言いたいこと言って、背中を押してくれたのは
美琴だけだ」

「俺がこうして生きていられるのも美琴のおかげだ」
「だから、本当感謝している。命の恩人だと思っている」
私は当麻のストレートな言葉に顔が熱くなる。ひょっとしたらただのリップサービスかも
しれない。だけど・・今回こそ・・
私の心は緊張でばくばくする。私は、慎重に言葉を選ぶ。
「そんな・・」
「確かに俺に助けられた女の子は一杯いると思う」
「そんな子が俺に好意らしきものを向けている事だってわかっている」

「だけど、利害に関係なく、命を賭して、全力で飛び込んできたのは美琴だけだ」
「魔神を知り、己の限界を知りそれでも屈することなく飛び込んできた」
「そんな女の子を気にしない、男なんているか?」
「俺にとって美琴は、俺の心に飛び込んできた最初で恐らく最後の女の子だろうな」

いつもはどこかふざけた口調な当麻の表情が真剣なものに変わる。
その表情が醸し出すリップサービスではない、本気の感情に触れ、私の心の中に
莫大な感情があふれ始める。私は弾みだす心を抑え、一言だけ返す
「当麻・・ありがとう」

「いつから・・その思ってくれたの?」

「いつかは俺にもよくわからない・・だけど・・あのアステカ野郎に言った頃には
心にどこかに美琴の事を心に刻んでいたと思う」

「そんなに早くから・・?」
私は自分の、告白するまでの空回りぶりを思い出し、赤面する。
「信じられないわ。私馬鹿みたいね・・もっと早く言えばよかったわ」
「私は当麻が鈍感だと思い込んでいた」

「はは・・美琴は・・自分の事どれだけ見えてる?」

「え?」
「いや・・美琴は賢いし、ちゃんと予習も復習も自己コントロールもできるしっかりさん
であるのは知っているけどさ・・意外に自分の癖は見えないんじゃないか?」

「それは・・」
「一緒に暮らすためにはお互いを深く知ることが大事」

「え?」
「美琴は頑張りすぎなんだよ・・」

「何度も助けてもらった自分が言うのもなんだけど、自分の事をもっと大事にして
欲しい。周回遅れの存在なんて悩んで、苦しまないでほしい」
「美琴はいつも頼りない俺の背中をぶれずに、何者に屈することなく叱咤激励して
くれた」
「美琴が俺の周りの世界を一生懸命守ろうとするのはうれしいけど、美琴の周りの世界
くらい俺に守らせてほしい」
(本当・・いつもは鈍感なくせに・・時々やさしいことを言ってくれちゃって)
私は素直に謝意を示す。
「ありがとう」

・・・・・・・・
ファミレスでの食事を終え、不動産会社へ契約に向かう。
私はいろいろ考えた末、最初のマンションで契約することを決める。
タクシーの車内で、私は当麻にもたれかかる。
「ふふ・・本当楽しみだわ・・早く卒業したいわね」

「え?」
「いままで待ったもん、しかも1年も」
「本当なら去年飛び級で当麻の学校へいくつもりだったのよ」
「でもその時は常盤台の理事長に止められた」
「今でも後悔しているわ・・」

「ええ?」
「でも・・やっと念願がかなう」
「当麻と同じ屋根の下暮らせる」
本当に長かった、やっと誰憚ることなく最愛の、自分の命の恩人と暮らせる。

955■■■■:2017/06/02(金) 19:39:27 ID:NfaPyXtE
その事実に比べれば後は些細な問題だ。たとえ暴飲インチキシスターがいようが
そんな事はどうでもいい。いや・・あのシスターを、上条当麻の親戚だと割り切ればいい。

そう妹だと思えばいい。そう思えば可愛いものじゃないか・・
「ああ・・美琴の飯は美味しいしな」
「ふふふ・・春が来ればご飯だけじゃないわ・・私も当麻に食べられたい」
当麻が妙な笑い声を立てる。
「ツンのない美琴は肉食系だな・・」
「え?」
「美琴の積極的な行動力が怖いよ」

「何言ってんだか・・1年待ったんだもん・・もうキスだけじゃね・・」
私は、当麻に全体重を預け、手を強く握る。
「もう絶対離さないから」
「ああ・・俺も同じだよ・・美琴」

・・・・・・・・・・
あの165㎡のマンションの契約を終え、まだ夕方まだ時間もあるので恋人繋ぎをしながら
多摩川そばを歩く。
「懐かしいわね」
「当麻は覚えていないだろうけど・・ここの河原で何度も弄ばれたわ・・」

「ははは・・美琴もさ・・どうせ馬鹿正直に雷でも落としたんだろ」

「え?」
「いつでも勝つことにこだわれば美琴の汎用力なら勝てただろうな・・」
「無数の鉄骨をぶつけるなり、砂鉄でコーティングした風車のプロペラでもぶつけられればあの当時の俺ならTHE ENDだった」

「そんなこと卑怯な真似はできないわよ・・」
「そう・・それが美琴の良さだ」

「ねえ?」

「久しぶりにしない?」

陽気に当麻が笑う。
「は・・?美琴の顔は殴れねえよ・・それに・・」
「美琴も本気は出せないだろう・・」
「え?」
「ふふ・・それもそうね」
「私も、当麻をファイブオーバーでぶち殺すなんてできないわ・・」

当麻の顔が引きつる。
デンマークで当麻は、ファイブオーバー150機から命からがら
逃げ回った以上当然の反応だろう。そう・・私が命令すれば今は改良型ファイブオーバーも
AAAもいつでも動かすことはできる。そんなつもりは毛頭ないが・・

「まあお互い手の内を知りすぎているな」
「もう昔のように河原で気楽に手合わせなんてできないわね」
傾きかけた冬の夕日が赤々と川面を照らす。その照り返しが2人の顔を赤く染める。
「本当・・それだけ時間を重ねたわけよね」
私は当麻の顔をにこやかに眺める
「俺が記憶失って以来いつも美琴が傍に居た」
「俺にとって、美琴がいない日常なんて考えられない」

「ありがとう・・」
私は、いままで疑問思っても聞けなかった事を聞いてみる。
「ね・・一つ聞いていい?」
「え?」
「当麻は将来の進路決めている?」
「え・・?」

「私は当麻の希望が何であれ、それを支えていきたい」
「だから・・今当麻が何をしたいと考えているか教えて?」
「私は当麻みたいに神から与えられた右手・右腕なんてない。普通の・・ちょっと
電気や工学の知識のある普通の少女よ・・だから準備に時間もかかる。
もう周回遅れは御免だから・・ね・・才能のない少女に道を示して」

「美琴・・」

当麻が真剣な顔を見せる。

956■■■■:2017/06/02(金) 19:41:18 ID:NfaPyXtE
「正直・・そんな事を考える余裕もなかった。・・」
「そうよね。多分そうじゃないかと思っていた」
「だけど・・来年には高校は卒業して次のステップを踏まなきゃないわよ」
「だからどんな夢や目標でもいいから愚かな私に教えてくれる?」

当麻が頭をぼりぼり掻き始める
「美琴にはかなわねえなぁ・・」
「え?」

「美琴は自分を周回遅れの存在と言うけど・・普通の世界では・俺は美琴の足元
にも及ばない」
(まったくこの男は・・)
「そんな・・そんなの学園都市や学校の事だけじゃない」
「世界中に当麻を慕う女の子達がいて・・」
「その右手が多くの人を救ってきた」

「美琴が言いたいことはよくわかるよ・・」
「もうそろそろ自分が何になりたいか決めなきゃない時期だってことはな」

「だけど・・今はまだ・・学校の卒業が精いっぱい・・」
私は、不幸な人間は世界の果てまで見える癖に自分の事は分からない男
に慎重に声をかける。
「当麻らしいわね・・でも・・私も一緒に考えていい?」

「え?」
「当麻がやりたいことをやるのは大賛成だけど・・もう当麻には傷ついてほしくない」
「私にも考えさせてほしい」

「それに・・」

「なんでも予防は大事よ」
「え?」

「それわね・・こうゆうことよ」
私は悪友かつ今は盟友の食蜂に電話を掛ける
「食蜂?例の件終わった?」
食蜂は、人遣いが荒いとか一通り悪態をつきつつ、終了した事実を告げ電話を切る。
「なんかさ・・当麻に逆恨みする組織があったみたいで、インデックスの誘拐を企んで
いたみたいだからあらかじめ潰したわ」
「へえ?」

「私はもう当麻を傷つけたくない」
「人工衛星やアンダーライン・駆動鎧・風紀委員・私のコネを結合させた自警団みたいなもの作った」
「当麻を不幸にしようとする奴はあらかじめ叩き潰す」
「統括理事会や学園都市のどんなささいな動きも見逃さない」
「私が命を懸けて当麻を守る」
「だから・・当麻には自分の将来についてゆっくりと考えて欲しい」

「美琴・・」
当麻が私の細い肩に手を回し、抱き寄せる。
「美琴はいつの間にか俺の遥か先まで考えているんだな」
「俺の性格、癖全部考えて、先回りして策を立てる」
「そんなよくできた彼女を不幸にはできない」

「俺は、いままで自分は不幸なんて思っていた」
「だけど・・もう・・不幸なんて言わない」
「それに・・ここまで尽くしてくれる美琴を不幸にはできない」
当麻が滑らかな手つきで私の頭を撫でる。

「正直今まで、自分のやりたいように人を助けていて、自分の事は考えていなかった」
「だけど・・美琴も俺の運命の半分を背負ってくれるなら、俺も美琴の運命の半分を
背負いたい」
当麻が私を真剣な眼差しで見つめる。
「正直、最初の頃は金持ちのお嬢様が不思議な右手に好奇心を持った能力を鼻にかけた
我儘なお嬢様だと思っていた」
「何かとちょっかいをかけたり、すぐにツンツンしたり」
「でもそれが、俺に対する好意と気が付いた時、俺は美琴と一緒にいることが楽しくなった」

「そして僧正以来の一連の騒動、お互いに命を張って、助け合い、そんなこんなを続ける
うちに、美琴を運命の人と思うようになった」

957■■■■:2017/06/02(金) 19:43:28 ID:NfaPyXtE
「去年、バレンタイン・デーに告白されて時は本当にうれしかった」
「だけど俺には自信がなかった・・常盤台のエースの美琴を俺の恋人にしていいかどうか」

「美琴にはあんまり自覚はないようだけど、学園都市で御坂美琴を知らない奴はいない」
「そんな美琴に俺はふさわしいか、いつも悩んでいた」

「だけど・・そんなことは小さな問題だ」
「こんな凄い子が俺に為にすべてを捧げると言っている」
「だったら俺が美琴にふさわしい男になる。それだけの話じゃねえか」
「だから・・」

「美琴・・今の俺は物質的に美琴を幸せにすることできない」
「だけど自分に後悔しないように精一杯自分の道を歩む。そして必ず美琴に
ふさわしい力をリアルの世界でも身に着ける。だから微力の俺に力を貸してほしい」
当麻は90度深々と私に最敬礼をする。私は当麻を起こし、当麻へ返答を返す。

「馬鹿当麻・・生活なんて全部私が支えるわよ」
「宿題や将来の進路だって私のあらゆる伝手を使って実現させる」
「だから当麻は、なりたい自分を決めて、私はそのためになんでもする」
当麻は、しっかりと私を抱擁する。そして・・2人の唇が、ひとつになる。

そして5秒しっかりと、唇でお互いの体温を感じ合った後で、私は自分を当麻に
捧げる一言を告げる。
「私は当麻のすべてを知りたいわ・・今晩こそいいわよね」
「本当にいいのか・・?」
「私じゃ物足りない?」
当麻が私の手を握る。多くの女の子を救ってきた右手、この右手が世界を変えた。
「そんなわけないだろう・・俺も美琴のすべてを知りたい」
「じゃ・・行きましょう」

翌朝、当麻すべてを吸い尽くし疲れ果てた私は、女としての幸せをホテルの一室
で感じていた。そして・・この幸せが一生続くことを願っていた。

続く

958■■■■:2017/06/02(金) 19:44:44 ID:NfaPyXtE
以上卒業式3話を投稿を終了いたします

959■■■■:2017/06/09(金) 11:15:41 ID:05tsRUL.
とある科学の超荷電粒子砲 Ⅲ 20話: 5章―1

10月1日(木) 午前6時30分

「おはよう」
「は・・あ 眠い・・」
当麻は、全然眠れなかったのだろうか、大口を開け、いかにも脳はまだ寝ています
という表情で起きてくる。7時間の時差、わずか90分のフライトで克服できるほど
普通の人間の体はできていない。
「美琴は元気だな」
「あらそう?」
当麻はよほど眠いのだろいかのろのろと半分眠りながら、食卓に着席する
「時差ぼけなんてもんじゃないぞ・・」

「あらそう?で食べられそう?食欲ないなら無理に食べなくていいわよ?」
「はは・・御冗談を?美琴の美味しそうな朝食の食べないなんて選択肢は上条さんには
ありません」
「うれしいわね・・そこまで期待されちゃって」
香ばしい香りが
「では召し上がれ」
「いただきます」
頭はぼーとしても、胃袋は関係ないのか当麻ががつがつと、茶碗ごと食べそうな勢いで
むさぼりつくように食べる。たぶんほとんど嚙んでいないだろう。

「まったく・・アンタ噛んでないでしょ。そんな急がなくても・・」
私は軽く注意したが、一度火が付いた高校生の食欲は止まらない。
ほとんど2〜3分の後には食器が空になっていた。その勢いにつられて私も
せかさせるように、慌てて食べ終える。
私は、きれいに米一粒、汁一滴残っていない食器を方づけ、食器洗浄機へ放り込む

「やっぱ日本食が一番だな・・ごはんと味噌汁、醤油に納豆に焼き魚肉じゃが」

料理を褒めてもらえるのはお世辞であってもうれしい。
私はにこやかに返事をかえす。
「こんな普通の料理で喜んで貰ってうれしいわね」
「でも美琴はタフだな・・時差呆け関係なく、5時起きで」
「まあ・・いつでも体細胞の代謝を整え、疲労回復機能を効果的に使えるのも
高位の電撃使いの売りだからね・・」

「美琴はいつも頼りになります」

「ありがとう、で・・軽口も叩く元気も出てきたみたいだけど学校行く?」
「そうだな・・まあ美琴の美味しい朝食で元気でたし行くわ」

「あら嬉しいわね」
私は粗忽な当麻に寝る前に終えた事前準備を説明する。

「あ・・そうそう教材と筆記用具と録音機、弁当をカバンに入れているから、学生服に
着替えすれば行けるわよ」
「後学生服とワイシャツとベルトは玄関のハンガーにかけているから
それをそのまま着てね」

当麻が苦笑いしながらぼりぼり頭を掻く
「え・・そこまで準備してくれたのか?」
「まあ当麻に不幸だーとか言われるのもつらいから。あらかじめ不幸になりそうな原因
は全部排除するわよ」

「美琴にはかなわねえなあ・・心がけが違うわ・・本当良妻賢母だな」

「そう?当麻にはこんなくだらないことに頭を悩ませたくないのよ」
「日常の事は、全部私は任せなさい・・ね」

「じゃそろそろ準備して」
「ああ 午後4時に校門で会おう」
・・・・・・・・・・・・・・・・・
3日にブランクはあったが何事もなく授業は終了し校門へ向かう。心配していた課題は
俺が知らないうちに完璧に記入され、事なきを得る。

美琴は5分前なのにもう校門前で目をつむり待っていた。
どうやらスマホに能力を使い直接脳を繋ぎ作業をしているようだ。
電磁レーダーで確認したのか、俺に駆け寄ってくる。

960■■■■:2017/06/09(金) 11:19:54 ID:05tsRUL.
「お疲れ、ちゃんと5分前行動身についてきたわね」
「美琴こそ、多忙なのにえらいな」
美琴は俺の左手を握り話かけてくる。
「私の事はともかく当麻が身についてきたことが嬉しいわ」

「じゃ・・今日は・・実用実験用無人ドローンでいきましょう」
「ほう?」
美琴は長点上機大学院が民生用に開発した、2人用小型無人ドローンへ俺を案内する。
「私の研究所と長点上機大学と浜松技研工業が外部へ商業販売を予定している
ドローンよ」
「へえ?・・こんなのが空飛ぶのか・・?」
「まあ発売予定は2年後だけどね・・」

「じゃ行きましょう」
音声認識プログラムが行先を認知し、風紀委員本部へ向かう。
学園都市の低空150mを、自動車ほどの速度で進む。
「へえ・・結構楽しいものだな」
「いいでしょう?信号機もないからすいすいよ」
俺が学校でつまんない課題で四苦八苦していることと比較してこのチートな
婚約者は遥か先を進んでいる。
「オートモードでAIがローターを制御し、時速約100kmで進むわ」
「交通渋滞も、地形も関係ない」

約数キロを3分ほどで移動し、風紀委員の本部へ到着する。
所定の駐機場にドローンを着陸させる。この間美琴は一切コントローラ
を弄ることもなく、完全自動制御で数ミリ単位の誤差もなく着陸する

「もう売れるレベルだな?」
「そう技術だけならね・・問題は法制度や価格と特許と販売網よ」
「え?」

「意外に商売は難しい・・かな。各国の法制度、規制、利権、
下手すればリーバスエンジニアリングで
外部企業がパクるリスクもある」
「学園都市へ特許収入が入るように仕組みをつくりつつ販売するのは結構面倒なのよ」
(見えている世界が違う・・超能力者超荷電粒子砲はここまで違うのか・・)

「なるほど・・さすが統括理事会の兵器開発部長だな」
「そう?」
「当麻はまだ普通の高校生、私は大学院生・・まあその辺はそのうちわかるわよ」
「焦る必要なんてない」
夕日に照り返された美琴の笑顔がとてもまぶしかった。

・・・・・・・・・・・・・・
私は、久々に風紀委員本部へ出勤する。そして10月1日に大学院生になったことにより
風紀委員長へ昇格した。当麻は黒子と風紀委員の研修を受けている。
刑事訴訟法と裁判制度に関する内容だったはず。

「委員長お疲れ様です」
「初春さん、留守番ありがとう」
「あ・・それと初春さんに辞令を交付しないとね・・」
「え?」
私はプリンターから辞令を印刷し、署名し公印を押印して初春さん渡す。
「初春飾利殿、貴殿を風紀委員長付技術委員に任命する。風紀委員長御坂美琴」
初春さんはしばらく言われた意味を理解していなかったが、10秒ほど私の言葉の意味を
咀嚼した後で謝意を示す。

「謹んでお受けします・・風紀委員長殿」
私は、辞令を渡した後妙に固い表情の初春さんに声をかける。
「まあ固いのなし、初春さん、いままでどおり御坂さんでいいわ」

「あ・・はい」
初春さんがぎこちない、言葉で返す。
「それにしても結構たまったわね・・」
「事務処理の秘書が必要かもね・・」
私は机の上の莫大な書類の山脈を見渡す。これでも電子決裁が進み、大部減ったはずだが
供述調書や、事故報告書の類、直轄の組織犯罪対策部の書面は私のサインと公印がいる。
「初春さん、5時からちょっと人に会うから6時すぎから決裁するわ」
「私と当麻は遅くなるけど、完全下校時間になったら私に関係なく帰宅して」

「は・はいわかりました」

今日は久しぶりに面倒くさい相手に面会するのだから・・

961■■■■:2017/06/09(金) 11:22:38 ID:05tsRUL.
・・・・・・・・・・・・・・・
「未元垣根か・・」
木原唯一に、未元物質を吐き出す装置に変えられ、いまだに処分内容が決まらない
垣根帝督だった何か・・臓器らしきものは、ほぼ絶対0度の液体ヘリウムの培養液で凍結処分となり
活動を停止している。

私はその冷蔵装置のスイッチを切り、液体ヘリウムを容器から取り除き、解凍処理を行う
高圧スチームを注入することでついさきまでカチコチだった物体がもぞもぞと動き始める。
いかなる生命体もこの環境では細胞組織は壊滅するはずだが、AIM拡散力場が作り
だした生命もどきにそんな常識は通用しない。

「さすがね・・液体ヘリウム漬けで死なないとは。俺の未元物質に常識は通用しないか・・」

垣根提督であった臓器は急速に膨張を開始し、地下空間そのものを埋め尽くそうとする
サイズへ膨張する。美琴の周辺を除く、すべての空間を覆いつくす。
質量保全の法則をあざ笑うかのように、垣根帝督だったもののふるまいは常軌を逸している。
外壁がこの世で最も固く弾力性のあるカーバイン装甲でなければ突き破っていただろう。

「そうゆうテメエも十分に常識外れだが」
カーバイン装甲で封鎖された、広大な地下空間を埋め尽くそうとする未元物質が
片っ端からプラズマに変換される。
「さすがに、保護膜ではじき返すか・・押しつぶそうとしたが」
「だが・・」
「カーバインも俺の未元物質で変性させれば・・ただの炭になる」
バシバシ・・軋み音を立て、おそらく窓のないビルより強固なカーバイン装甲が
破られようとするが・・

「ああ・・結局話が通じない以上は殺すしかないのかしら・・」

「はあ?」
まさに一瞬だった。それまで空間を覆いつくしていた未元物質が、プラズマに変換され
バレーボールサイズの球体を残し、剝ぎ取られる。
「おとなしくしていれば命は奪わない・・」

「さあどうする?正直私は貴方を救いたい。だけどこうも凶悪では、風紀委員長の
私はどうしたらいいの?一瞬でも目を話せば、無辜の学生の命は保証できない」
「無限の再生力と凶悪な心を持った貴方は、存在自体が危険極まりない」
「この学園都市の治安を預かる私はそれを見逃すわけにはいかない」

「はっきり言いますが・・私は・・いつでもあなたを殺す事ができます」
「その罪は私がすべてかぶりましょう」
バレーボール状の垣根は、なにやらいいたそうだが、基本短気な私は殺す以外
しょうがないと決意を固めているので、その雰囲気を察したのだろうか口を噤む

「さあ・・もう1回聞くわ・・私の手を握る?それとも死を選ぶ?」
「嘘はダメよ、私はAIM拡散力場の揺らぎをスキャンすることができる」

「さあ・・貴方の気持ちを聞かせて」
「私は、貴方と敵対する理由などない」
「今からでも遅くない、さあ私の手を握りなさい、そして・・上条当麻の力に
なりなさい」

「ははは・・いい気になってべらべらと・・」
「御坂美琴、テメエは自分の事を棚に上げて・・」

「辞世の句?一応聞くわよ」

「テメエは全人類75億人を一度殺した」
「まあ・・ごく一部の人間以外その事実に気がついていない」
「俺も悪党だが・・御坂美琴は・・どうなんだ?え?」
「人類にとって許すべからざる悪党でないのか?」

私は、つまらないザレ事に苦笑いを作る。
「つまないわね・・そんなものは・・」
「もう時間稼ぎはいいから結論だけ聞かせて」

バレーボール状の垣根帝督だった何かは吐き捨てるように感情を吐露する。
「テメエも結局・・アレイスターの糞野郎と同じ穴の貉だな・・」

「え?」
「いや・・暗部を全部力でねじふせ自分の物にしようとしているテメエのほうが悪辣だろう」

962■■■■:2017/06/09(金) 11:26:56 ID:05tsRUL.

「最終的には、テメエの愛人を守るためだけにな」
(もう・・我慢できない・・)
「それがどうかしましたか?」

「は・・つまんねえ奴だな・・」
「殺せよ」
「は・・テメエにはできねえか?どうせ口だけで・・また液体ヘリウムにつけるだけだろう?」

「辞世の句は終わり?」
「じゃ・・そろそろ・・処刑しましょうか?」

「ま・・まってくれ・・」
「何を?」

「御坂美琴さん、貴方に従えば・・」
「心にもないことはダメ・・」
ばっさり切り捨てる。
「ご希望ならどんな死に方も選んでいいわよ」
「さあ、ご希望は・・?」
私は、この危険物を最小の労力でどうやって「消滅」させるか演算を始める。

自分が貶されることはどうでもいい、だが、この危険物を、明らかに私や当麻に敵意
を示しているものを放置できない。それに・・どうせ私の手は汚れている。
あの夏に日に75億人を殺した事実は消えない。だったら当麻の不幸になりそうな原因をあらかじめ断つ

だが・・
「美琴」
「え?」
インカムから思わぬ人物からの、声を聴き私は動揺する。
「美琴、いかなる事情にせよ美琴が手を汚すのはダメだ」

「え?」
「はっきり言って釈迦に説法だけどさ・・」
「風紀委員長が法の裁きを無視するな」

「当麻・・」
「それに・・少しは俺の事を頼ってほしい」
「な・・?」

「まったく‥当麻は」
私は電磁レーダーに当麻の影を感じ、後ろを振り返る。
「でも・・本当にありがとう・・」

「なあ美琴・・」
「俺のために人を殺そうなんてもう考えるな・・」
「美琴の力は簡単に人なんて壊せる。だからこそ簡単に力をふるってはいけない」
「思いつめるな・・」
「一人で全部片付ける必要なんてない・・美琴の重荷は俺も背負う」
「だから・・ここは俺に任せてくれ」

私は、当麻の申し出に赤面する。自分で問題を解決するつもりがまた当麻に助けられた。

「ごめん・・私またテンパっていた」
「謝る必要なんてない。美琴はいつも俺を助けてくれているじゃないか・・」

「だから・・今回は俺が美琴を支える」
私は、またもや当麻に救われた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

美琴は、この場を立ち去り、いまここにいない。
美琴は、去り際に、「今の当麻に未元垣根もどきなんて敵じゃない」なんて
いいつつ立ち去った。

バレーボールは、美琴が何かの力場を解除したせいか、膨張を開始し、通常の人サイズへ回復している。俺はその未元垣根に対峙している。

しばらく無言で対峙していたが、均衡はやがて崩れバトルになる。

俺は、垣根へ突進するが・・すんでのところで垣根もどきは俺を躱す。

963■■■■:2017/06/09(金) 11:39:33 ID:05tsRUL.
右手の無効能力を承知している未元垣根は、俺との距離を保ちつつ、気配を伺っている。

「さすがだな・・幻想殺し・・」
「だがな」

俺は目を疑う、広大な地下空間を無数の垣根が埋め尽くす。
背中に羽をつけた垣根人形もどきが一斉に羽根を震わしその騒音が響きわたる。
「右手しか攻撃手段のないテメエにはどうにもならねえだろう?」
「まあせいぜい頑張るんだな」

上条当麻の幻想殺しの最大の欠点は右手で触ったものしか効果がない事だ。
垣根もどき人形の羽根が作り出す、突風やら、ビームを避けながら、一体、一体
地道につぶしていくしかない。超荷電粒子砲を打てるわけでもなく、恒星の中心温度
を遥かに凌駕するプラズマで空間を充満させあらゆる物質をプラズマにできるわけでも
ない。それが幻想殺しの本質だ。だから俺は地道に一体・一体木偶をぶち壊すのみだ。

垣根はその状況をあざ笑う
「オイオイ・・退屈させるなよな・・え?」
未元垣根もどきの大群が一斉に嘲笑を始める。
「テメエが一体潰す間に俺は何体でも木偶を作れるんだぜ」
「キリないぞ・・ええ?」
かさにかかった垣根木偶は、精神攻撃を始める
「幻想殺しさんよ・・愛しの美琴女史へすがりついたらどうだ」
「まあできねえよな?自分にまかせるなんて言いきったしな」
「だが・・」

垣根木偶人形は完全に俺を取り囲み、その羽根から先端をとがらせた槍のような
未元物資で俺を狙う。秒単位なんて生ぬるい、そんなレベルでない高速攻撃が
俺を切り刻むように襲ってくる。まさに斬撃、一瞬の気の緩みが死を招くだろう。

俺は右手を必死に動かし攻撃を弾く。考えることなく、極限まで「前兆の感知」を研ぎ
澄ましその攻撃を凌ぐ。

とは言え、人間の体力には限界がある。1分・2分ならいい。だが無限ともいえる
垣根の未元物質生産能力がじわじわ俺の体力を奪う。
何分たっただろうか・・正確にはわからないだが俺の体力は確実に低下し、動きは
鈍る。そして・・ついに回避できない斬撃が俺の右腕をつらぬく・・
(う・・)
鮮血がぶちあがり、激痛が走る。
だが未元垣根には容赦がない。攻撃の手を緩めることはなく、さらに攻撃を続ける。

俺は必死に右手で未元物質が作り出す謎の剣の絨毯爆撃が降り注ぐ。激痛に耐えなんとか
回避するが、足元の動きが鈍くなるは防ぎようもない。
やがて、左腕、肩、剣がかすりさっか傷を作る。痛みがじわじわ心をむしばむ。

俺は、最悪の事態を覚悟し始める。俺の想像以上に未元垣根は強い。

だが・・・インカム越しの美琴の叱咤が俺を突き動かす。

「当麻・・私はいつでもアンタの味方よ、アンタの正しさは誰が否定しようが私が
保証する。だからアンタは自分の信じた道を突き進め・・」

少女の一言が、最愛の美琴の一言が俺に力を与える。理屈でなく、美琴の言葉が
俺への想いが、心の芯から力を呼び起こすのだ。

あちこち切り裂かれた体はもうとっくに限界なんか超えている。
だが、美琴を殺人者へしたくない俺の気持ちが勇気と力を呼び起こす。

俺は半分、引き裂かれだらんとなった右腕にもう1度力を籠め、未元物質の絨毯
爆撃を叩き落とす。そして・・俺の腕から莫大な力の奔流が空間をつらぬく。
未元の垣根の木偶が一斉に力の奔流に飲み込まれる。垣根が普通の存在なら
消滅してもおかしくないほどの衝撃を受けている。

だが・・垣根はよろよろ立ち上がる。
「か・・上条・・俺は・・まだ負けたわけ・・・」
だが・・強烈な頭痛が未元垣根を襲う。
「無理するな垣根・・」
「分かっているだろう?お前は美琴との対峙でもう本調子ではない」
「無理な再生を繰り返す事で、お前の心にある、相矛盾する要素がお前の再生力を
奪っている」
「く・・そこまでわかっているのか?」
「幻想殺しに頼る脳筋だと思っていたがとんだ勘違いだったな・・」

964■■■■:2017/06/09(金) 11:40:53 ID:05tsRUL.

「別に俺一人の力じゃない・・」

インカムから美琴の明瞭なアルトボイスが響き渡る。
「思った通りね・・未元垣根は再生を繰り返す事で全体の統一性が維持できなくなる」
「善悪、強弱あらゆる垣根の性格が分裂を繰り返す事で表面化する」

「美琴・・教えてくれてありがとう」
美琴はインカムで俺にヒントを与えてくれた。ちゃんと美琴は落としどころを考えていた。

「戦いは一人でするものじゃない」
「美琴は、状況に応じて柔軟にやり方を変える」
「目的が一致するなら誰とでも手を組む。過去の経緯も水に流す」
「プランなんて・・もはや崩れつつあるものに囚われる必要なんかない」

半ばうわの空で話を聞いていた垣根はぼそぼそと自嘲を始める
「俺に何が・・何ができるんだ・・今までの暗部も消滅し、テメエに完敗した」
「生身の肉体を失い、俺にはもう心のよりどころもない」
俺は自分の価値の分からない、心が壊れた男を諭し続ける。
「美琴に聞いた、暗部組織スクールの長のお前には、仲間がいたはずだ・・」
「そいつらは、たかが暗部を失っただけで、お前を見捨てるほどの関係なのか?」
「それに・・」

俺はスマホで垣根に彼の仲間たちのビデオメッセージを見せる。
「これは美琴がさっき収録したものだ」
「これでも・・お前に居場所がないなんて、誰が言うんだ」
垣根はよわよわしく語り始める
「だが・・おれにはもう元の肉体なんかない・・ただの未元物質だ」
「こんな俺に生きていく資格なんか・・」

「垣根・・体がどうした」
「お前は、意思を持ち、こうやって判断認知ができる。立派な生命体じゃないのか?」
「だから・・俺と一緒に、美琴の手を握らないか?」
「このゆがめられた箱庭を一緒に変えないか・・?」

「私からもお願いします」
美琴がどこからか現れる。
「この微力な私に力を貸して」
美琴ははっきりとした言葉で話を続ける。
「アンタが学園都市の首脳部、殊にアレイスター・クロウリーに対して明確な敵意を
持っていること、同様に直接交渉権を持つ私に敵意があることは承知している」
「ですが・・もうそんな不毛な過去は終わりよ」
美琴は、床に座り、頭を床につける。
「私と一緒にこの街を、この腐った街を変えましょう」
「お願いよ」
美琴は頭を下げ続け、微動だにしない。

「御坂さん頭を上げてください」
垣根の表情が変わったことに俺は気が付く。
「正直・・俺はこの街を信頼できない」
「その街で1位を気取るアンタも嫌いだ」
「だけど・・傷ついても、腕をもがれても俺を正気に戻そうとする上条は信じる
そして・・その上条が信頼するアンタの事も信用する」

「だから・・御坂美琴さん」
雰囲気を察した美琴が立ち上がる。元々は相容れない2人が、同じ目的を元に
手を繋ぐ。
「垣根さん・・ありがとう。微力な私を支えて」
美琴が垣根にハグを始める。垣根の顔がほのかに紅くなったことに若干の嫉妬を感じつつ
俺は、なんとか使命を果たしたことに胸をなでおろす。
「御坂さん・・上条をよろしくな」
「垣根さん・・本当にお願いします」
正直立場も考え方も違う。だが・・俺にはこの垣根が・・何かを守るために暗部に入った
垣根が、その初心を思い出した垣根が、小さなただし確実な一歩を踏み出した気がした。

・・・・・・・・・・・・・・・・・
午後8時 風紀委員室

山のようにうずたかく積まれた未決済書類が、手品のようにあっという間にめくら版のようにサインと押印がなされ、決裁済みのボックスに収納される。

「よし・・終わり・・」

965■■■■:2017/06/09(金) 11:42:10 ID:05tsRUL.
私は、決裁番号順に書類を並べ、既決箱へ収納し金庫へ入れる。
私は更衣室で当麻が選んでくれた秋物の白のスーツと、黒のタイトスカートに5㎝の
ヒールに履き替え、当麻の腕に自分の腕を絡ませる。
「当麻‥待たせたわね、じゃ帰りましょう」
「美琴・・見違えるように綺麗だな」
「あら嬉しいわね・・」
私は一瞬で元通りになった右腕を抱きしめ、屋上へ向かう。
ドローン試作機でマンションの駐車場へ向かうためだ

「垣根の件ありがとうね」
「え・・」
当麻は納得していないようだ。だけど私は当麻に何度も救われた・・
「あそこで当麻がこなければ私は垣根を捻りつぶしていた」
「本当にいつも助けられてばかり」
ドローンの座席で私は当麻に肩を寄せる。
「本当頼りない風紀委員長よね」
「こんなんで学園都市の学生の頂点なんて言えるのかしらね」
「美琴・・」
当麻の顔が曇る。私は後悔してしまう。
(あ・・少し言い過ぎた)
「御免・・少し弱気になった」
「大丈夫よ。当麻・・私は」

私は、膝を密着さえ、婚約者の体温を感じる。
「私は・・強大すぎる力に正直どうつきあったらいいかまだよくわからない」
「封印を解除した後、こうやって、民生機器を開発したり、風紀委員長をやったり、
結局自分に向き合うのが怖かっただけだと思う」
「だけど・・いつかはその力に真正面から向き合わなければならない」
「当麻・・私に勇気を頂戴」
「臆病な私が現実に立ち向かうには当麻の助けが必要」
こうやって・・今は当麻の傍にいること、当麻の温もりを感じることが、私に安らぎ
を与えてくれる。
「お願いね」
その晩私は、時間の許す限り、当麻の温もりを寝所で
感じながら、一晩を過ごした。

続く

966■■■■:2017/06/09(金) 11:45:36 ID:05tsRUL.
以上とある科学の超電磁砲Ⅲ 20話 5章ー①を
投稿します

967■■■■:2017/08/04(金) 22:25:10 ID:2/Fjwy5Q
ども、以前ここで書いてたものです。
ちょっと目を背けてたものに取り組もうと思って来たんですが……。


新スレの立て方がわからん


だれか!! ヘルプ!!

968■■■■:2017/08/05(土) 02:17:00 ID:U5/5FaE2
今のスレのまったりさなら、スレ建ては後続の方に任せてSS投下してもいいんじゃないかな
ただ>>1から1年半くらい経ってるからリンク先のURLいじるのが大変そうだ

969・・・:2017/08/05(土) 02:42:52 ID:0Ruv04MA
OKです!!

ごぶさたです。
・・・です。

ずっと目を背けてた長編、続き書きまーす。

改めて、諸注意です。
この物語はフィクションです。実在する人物・団体には一切なんの関係もありません。
で、自分設定が多分に入ります今更ですが!!
むーりー、という方はスルーしていただければ助かります。

それでは

970鉄橋は:2017/08/05(土) 02:44:10 ID:0Ruv04MA
激戦から帰還した家族は、
一旦離ればなれになっていた。
両親が満身創痍だったため、入院していたのだ。
その2人も、父親の回復力が人外レベルだったために、母親より1週間早く退院した。
だが間違いなく、距離は離れていても心は通じあっている。
今日も母のお見舞いに行き、笑顔を見せてくれる両親に、インデックスは赤子ながら幸せを感じている。
だが、現在絶賛困惑中である。

「あ、あうぅ………?」

「インデックス〜元気そうね〜」

「ママは心配症だよなー、インデックス。昨日も来たのにな〜」

「だぶ、ぱーぱ!! まま、げーき!!」

「そうだなー、ママも元気そうでよかったな、インデックス」

「うん、ママ明日の夕方には退院できるから、もう少し待っててねー」

「ぁ、あう〜?」

おわかりいただけただろうか?

そう、両親が会話しない。
すべてインデックスに話しかけるのだ。

病院のベッドに座る美琴と、彼女に抱かれたインデックス。
上条は隣に立っている。
2人はインデックスに話しかけるが、互いには声をかけない。
心は通じているのに、言葉は直通でないのである。
しかし、
チラチラと互いの顔を見ては、ぶわわっと幸せオーラが噴き出し、
カァ〜と顔を赤らめる2人を見て、
インデックスにはいつものようなケンカとは思えないのだ。

「だぅ?」

娘としては、訳がわからないのだった。

「パパな、ママに飲み物買ってきてあげようと思うんだけど、ママ何が飲みたいのかなぁ?」

「ママね、西瓜紅茶が飲みたいなぁ。パパが買いに行ってくれるって。や、やさしいね!!!!」

「ぬばぁっ!!…………ぱ、パパがやさしいのはな、インデックスと、ま、ママの笑顔が、だ、だ、大好きだからなんだ!!!」

すぐ戻ってくる、と叫んで走り去る上条。
ぱちくりと瞬きするインデックスは、美琴へと視線を移す。

「ぷしゅぅ〜〜〜〜」

気絶していた。
パチクリと瞬きしたのち、

「…………めっ、ね」

ぼそりとつぶやき、
赤子は首を振った。

971鉄橋は 1:2017/08/05(土) 02:44:53 ID:0Ruv04MA
ゴン!!!
という音が廊下に響き渡った。
壁にヒビが入り、
主犯のデコからはぷしゅ〜と煙が上がる。

「だ、大丈夫ですか!!?」

と問いかける看護士に対し、
上条は、

「大丈夫です!! 鍛えてますんで!!」

と返答。
はぁ、と呟いて看護士は去っていった。
赤面したまま自動販売機に向かう上条、
販売機の前に立つと、頭を抱えてクネクネと体を揺らし始めた。

(ウギャ〜〜〜!! 恥ずかしすぎる〜〜〜)

2週間前、それはもうクッサイ状態でクッサイ台詞を吐いたのだった。

『お前が、本気でオレを傷つけるわけないだろ?』

(ぬぉぉおおおおおおおおおおお!!)

『お前が隣にいないのは、オレもイヤだ。そんなことになったら、上条さん、泣いちゃいますよ』

(うばぁぁぁぁぁあああああああ!!)

抱き締めたりもした。

(らゃびゃぁぁぁぁああああああ!!)

『お願いだ、オレ達から離れないでくれ』

(ぎゅみゃぁぁぁぁああああああ!!)

熱いチッスもした。

(あぶぅ////////////////////)

『オレの横に美琴がいるのに、理由なんていらない。オレの横に立つのに、資格なんていらない』

(ぐゅにゃぁぁぁぁああああああ!!)

『もし、美琴がオレの横にいるのを否定するヤツがいたら、オレはそいつをぶっ飛ばす』

(あばばばばばばばばばばばばば!!)

『お前のことを、愛してるんだ』

(…………)チーン

甘い口づけもした。

(////////////////////)

『お前が超能力者だろうが魔術師だろうが、人殺しだろうが聖女だろうが、天使だろうが悪魔だろうが関係ない……お前じゃなきゃ、ダメなんだ』

(あぅあぅ…………ぷしゅー)




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