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( ^ω^)文戟のブーンのようです[3ページ目]

1【学校案内】:2018/09/04(火) 23:31:37 ID:/HhqdvjQ0

≪とりあえずこれだけ分かっていれば万事OKなQ&A≫


Q.ここってどんなスレ?
A.お題に沿った作品を指定期間内に投下
投票と批評、感想を経て切磋琢磨するスレ

Q.投票って?
A.1位、2位とピックアップを選ぶ
1位→2pt 2位→1pt で集計され、合計数が多い生徒が優勝

Q.参加したい!
A.投票は誰でもウェルカム
生徒になりたいなら>>4にいないAAとトリップを名前欄に書いて入学を宣言してレッツ投下

Q.投票って絶対しないとダメ?
A.一応は任意
しかし作品を投下した生徒は投票をしないと獲得ptが、-1になるので注意

Q.お題はどう決まるの?
A.前回優勝が決める。
その日のうちに優勝が宣言しなかった場合、2位→3位とお題と期間決めの権利が譲渡されていく

Q.使いたいAAが既に使われてる
A.後述の「文戟」を参照



詳しいルールは>>2-9を参照してください!

また雰囲気を知りたい方は

スレ1
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/21864/1531744456/

スレ2
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/21864/1533540427/

へGO!!

808Σz ゚ー )リ[文戟中] ◆ij8xCb.PrY:2018/10/04(木) 01:32:14 ID:ap8GyIuU0
('A`) あとお前ら、なんとなくだけど、デレが食堂出る時に俺たちのそばを通るような気がする感じの席を選ぶだろ?

( ・∀・) おっ提示がすごくフワッとし始めたぞ

('A`) そう、フワッと、匂いとか、嗅ぎたいんだろ?

( ・∀・) いや別に

('A`) 俺は嗅ぎたいよ?

(´・ω・`) そんなんだから女子から避けられるんだよドクオ

( ・∀・) 人間やめて豚になれ

('A`) 辛辣〜

(´・ω・`) 順当の間違いでは?

('A`) まあそれはそれとして、何より確定的なのが、お前ら、俺が最近席選ぶとやたら不機嫌だよなぁ!?

( ・∀・) あーたしかに

(´・ω・`) それはそうかも

('A`) フ、わざとデレが見えたり逆に一切関連の無い席を選んでるからな! 逆説的にお前らが先の二つの席を選ぶ思考ルーチンも証明されるというわけだ

(´・ω・`) だってドクオが席選んだ時、スゲえニヤニヤしててなんか気持ち悪いんだもん…

( ・∀・) 飯が不味くなるからやめてほしいんだよなあの顔

('A`)

(´・ω・`) 要するに、僕らがデレを好きっていう証拠をでっち上げられて嬉しいという邪な笑みだよね

( ・∀・) あー気持ち悪いはずだわ、外面も悪ければ内面も悪い、最悪すぎる

('A`)

('A`) 精神攻撃で反撃するのも根拠にしておくからな!!


【根拠⑤:追及者を精神攻撃で撃退しようとする】


( ・∀・) はいはい…

:('A`): 好きでこんな顔と性格になったわけじゃねえぞ!!!

(´・ω・`) 分かったよ

809Σz ゚ー )リ[文戟中] ◆ij8xCb.PrY:2018/10/04(木) 01:34:23 ID:ap8GyIuU0
:('A`): 根拠六はなぁ

(´・ω・`) ドクオの心が折れかけてる、カラオケまであと少しだよモララー

( ・∀・) むしろまだちゃんと出せる根拠があったのかと驚いてるとこだよ、スタバな

('A`) 根拠六は、下校の時間だ。お前らは下校時間に何かと融通が利くのを利用して、デレと同じくらいの時間に帰る


【根拠⑥:二人ともデレと同じくらいの時間に帰る】


(´・ω・`) またフワッとしてんなぁ

('A`) 匂いが?

(´・ω・`) つっこまないよ

( ・∀・) 同じくらいの時間って、どういうことだよ?

('A`) 知っての通り、デレは陸上部だ……それもエースだよな

( ・∀・) よく集会で表彰されてるよな

('A`) 調べてみたところ、彼女の帰りは練習で遅くなって夜八時くらいになる事もよくあると分かった

(´・ω・`) へえ

( ・∀・) ちなみにそれどうやって調べたんだ?

('A`) 一ヶ月半の張り込みの結果だ、足で稼いだ確かな情報だぜ

(´・ω・`) ストーキングか

( ・∀・) 今お前と友達をやっていられる最低のラインまで来てるぞドクオ

('A`) だから張り込みだっつの、しかもお前らの動向調査も兼ねてのな!

( ・∀・) 夜八時まで張り込むその情熱を他の何かに使えよ帰宅部

('A`) 余計なお世話だ美術部、そう、美術部モララー!

( ・∀・) なんだよ、急に

('A`) 美術部は活動自体は七時までに終わるらしいじゃないか、ええ? モララーさんよ

( ・∀・) それがどうした

810Σz ゚ー )リ[文戟中] ◆ij8xCb.PrY:2018/10/04(木) 01:40:27 ID:ap8GyIuU0
('A`) だというのに、お前は七時に帰る時もあるけど割と七時半とか八時とか八時半とか九時に帰るみたいだな!

(´・ω・`) 最大誤差が前後1時間あるのは『同じくらいの時間』って言っていいのドクオくん

('A`) いや、そもそも活動時間をオーバーしてデレを待ち構えてると言えなくもない時間に美術室から出ていくからOKだ

(´・ω・`) お前の頭の中では何がどうなってOKになってるんだよ

('A`) モララー、吐け! お前はデレを待って、帰り道が一緒になるくらいの時間に美術室を出ていくんだろう!?

( ・∀・) 普通に制作が長引くとそれくらいの時間になってるだけなんだが

('A`) 一言で済まさないで

( ・∀・) 一言で済まされるガバガバ根拠を使うな

('A`) 美術室から外を見て下校するデレを眺めたりしないの?

( ・∀・) 制作に集中してるから外なんて見ないが

('A`)

('A`) いや、しかし、まあ、あれだ、うん

( ・∀・)

('A`) うん!うん、うん!

( ・∀・) 幼児退行してもかわいくないしただただキモい

(´・ω・`) お前何も押し通せてないし根拠がガバガバなのを全く誤魔化せてないからな

('A`) ……ショボン! 今度は余裕こいてるお前の番だ

(´・ω・`) はぁ…

('A`) 溜息で返事するな

( ・∀・) 溜息で返事されるような話題提供しかしてねえんだろお前が

('A`) いや、ショボン、お前にも下校時間に関する根拠はある、上手く回避できるかな!?

(´・ω・`) 回避される事前提に殴りかかる悲哀、侘び寂びだね

811Σz ゚ー )リ[文戟中] ◆ij8xCb.PrY:2018/10/04(木) 01:43:23 ID:ap8GyIuU0
('A`) ショボン、お前、毎週火曜と木曜の夜八時丁度にこの辺りを私服で歩いてるのは何故だ?

(´・ω・`) ちびっこ空手教室のバイトの帰りだけど

('A`)

( ・∀・) 一言で済まされたな

(´・ω・`) うちの道場のイベントの一つでさ、時給いいんだよね

('A`)

('A`) あっもしかして、デレの下校時間に合わせてそのバイトを始めたのかぁ〜〜?

(´・ω・`)

('A`) 分かった次行こう、な、うん、拳を下ろしてくださいおねがいします、うん

( ・∀・) そろそろ根拠を数打ちゃ当たるって訳でもないことに気づけよ

812Σz ゚ー )リ[文戟中] ◆ij8xCb.PrY:2018/10/04(木) 01:46:15 ID:ap8GyIuU0
('A`) 次の…えーと、次は根拠いくつだっけ

( ・∀・) 次は七

(´・ω・`) 自分で覚えてろよ

('A`) 根拠七、ああ根拠七…最後の根拠だな

(´・ω・`) やっと終わりか

('A`) ……ククク!!

( ・∀・) なんだ、悪魔に取り憑かれたか?

(´・ω・`) 死人みたいな顔してるしとっとと成仏して

('A`) ……デレには彼氏がいるんだが

( ・∀・) この前別れたろ

(´・ω・`) ジョルジュでしょ? もう今別の娘と付き合ってるよ

('A`)

('A`)

('A`) 何で知ってんだよ?

(´・ω・`) いや君が机に突っ伏して寝てる時に、教室でデレが女子達に慰められてたよ

('A`)


【根拠⑦:デレに彼氏がいるって言えば動揺する予定だったんだけど?お?】


('A`) お?

(´・ω・`) 突然内藤にならないで

813Σz ゚ー )リ[文戟中] ◆ij8xCb.PrY:2018/10/04(木) 01:46:56 ID:ap8GyIuU0
( ・∀・) 大方、『デレに彼氏がいるんだが』の文言で動揺したところを根拠に挙げようとしてたんだろ

(´・ω・`) 見え見えすぎるし、意地汚いし、そもそもみんな知ってる情報を自分しか知らないと思ってたのが哀れだよね

( ・∀・) 張り込みしたりするのもいいけど、誰がどんな情報握ってるかちゃんと知らないとだし、クラスの中の事くらい把握しておけよな

('A`)

('A`) い……いや、お前ら、

('A`) お前ら、反応が早すぎる、早すぎるぞ、ははは、


【根拠⑦(訂正版):デレの情報に対して反応が早すぎると思う】


( ・∀・) とっととガバ理論に付き合うのをやめたいだけなんだけど

('A`) はははは!

(´・ω・`) カラオケ行こうか?

( ・∀・) 俺スタバがいいな






ζ(゚ー゚*ζ 〜♪

ζ(゚ー゚*ζ 〜♪ 〜〜♪

ζ(゚ー゚*ζ …あら?

814Σz ゚ー )リ[文戟中] ◆ij8xCb.PrY:2018/10/04(木) 01:48:56 ID:ap8GyIuU0
('A`) まだ…まだ根拠があるはずだ…

( ・∀・) 俺やっぱスタバ行きたいんだよね、売り切れる前に食べてみたいし

(´・ω・`) 洒落てるねえカラオケの方がいいけど

('A`) そもそもモララーお前、なんでデレと二年間同じ委員会なんだ???本当は好かれてんじゃないのか???好きになっちゃえよ

( ・∀・) 図書委員を決めるの二年連続でくじ引きだったろ

(´・ω・`) どんだけクラスの行事に興味無いのよキミ

( ・∀・) ああホームルームの時突っ伏してるから分からないんだ…

('A`) 死ねーッッ みんな死んじまえーッッッ

(´・ω・`) かわいそう……

ζ(゚ー゚*ζ ショボン、モララーくん、それにドクオくん!

(´・ω・`) あ、デレ

ζ(゚ー゚*ζ こんにちは!

( ・∀・) よう、どうした?

ζ(゚ー゚*ζ 部活が無いから暇でね! ちょっと声かけただけ、三人とも何してるの?

('A`) 僕は一生無職です

ζ(゚ー゚;ζ え、ドクオくん、どうしたの?

('A`) 私は蛆虫です

( ・∀・) いつもこんな感じだから…

ζ(゚ー゚*ζ そ、そうなの?

('A`) そう私は蛆虫…

815Σz ゚ー )リ[文戟中] ◆ij8xCb.PrY:2018/10/04(木) 01:51:47 ID:ap8GyIuU0
( ・∀・) ちょっと拗ねてるだけだ、なまじ自分の頭に自信がある分、意見が通らないとすぐこうなるんだよ

ζ(゚ー゚*ζ ……そっか

( ・∀・) ほっときゃいいと思うぞ

ζ(゚ー゚*ζ うーん

('A`) ……蛆虫って蛾になるんだっけ、蝶になるんだっけ

(´・ω・`) ハエだろ

('A`) プーーーーーーーーン!!

(´・ω・`) 内藤になるな

ζ(゚ー゚*ζ ドクオくん

('A`) はい?

('A`) あ、うるさかったですか?

ζ(゚ー゚*ζ あのね、

ζ(゚ー゚*ζ 意見が通らなかったり、人とうまくいかない事って良くあるけど、案外、近くにいる友達って、自分のいいところをたくさん知ってるんだよ

('A`)

('A`) アッハイ

ζ(゚ー゚*ζ ね、ショボン、モララーくん、ドクオくんのいいところたくさん知ってるでしょ?

(´・ω・`) まあ、たくさんかは分からないけど、勉強関連で恐ろしく助かってるところはあるね

( ・∀・) あーそうそう、テストの範囲の解説とか先生の話より分かりやすかったりはするよな

('A`) …

816Σz ゚ー )リ[文戟中] ◆ij8xCb.PrY:2018/10/04(木) 01:53:15 ID:ap8GyIuU0
ζ(゚ー゚*ζ 他には?

(´・ω・`) あーゲーム強すぎて殺したいとか

('A`) それはてめえが弱いだけだろ

( ・∀・) お前とゲーセン行くと格ゲーで勝ちすぎて終わらなくて色々回れねえしな、面白いものは見られるけど

ζ(゚ー゚*ζ うふふ、その感じだと、まだ他にもあるでしょ?

(´・ω・`) まあ、挙げればまだいくつかあるね

( ・∀・) 実際良いところがなきゃこんな奴と付き合わねえよ

('A`) 褒めてるようで貶してるよなソレ?

ζ(゚ー゚*ζ まあまあ、ドクオくん

('A`) ハイ

ζ(゚ー゚*ζ 自分で自分をダメだと思う事があったり、友達とぶつかったりしても、君のいいところは無くなったりしてないの

ζ(゚ー^*ζ 分かったでしょ、ね、元気出して!

('A`) ……!

('∀`) ハイ!

ζ(^ー^*ζ うん!

817Σz ゚ー )リ[文戟中] ◆ij8xCb.PrY:2018/10/04(木) 01:54:39 ID:ap8GyIuU0
(´・ω・`) …デレって、昔からなんだけど、やっぱりすごくプラスの力があるなあ

( ・∀・) ああ、ドクオのあのひねくれを中和しちまうとはな

( ・∀・) デレがジョルジュと別れてから、野郎連中からの人気が再度高まったのも頷ける

(´・ω・`) …ドクオなりに、僕らの幸せを考えて、どっちかがデレと付き合ってほしいとか考えたのかもね

( ・∀・) はは、ありうる…そういう小学生みたいなところあるしなコイツ

(´・ω・`) ははは

(´・ω・`) ……

(´・ω・`) ところで、モララー

( ・∀・)あ? なんだよ

(´・ω・`) 君さ、本当はデレの事好きだけど、ドクオに看破されるのがなんか悔しくて意地になって否定してたりとかしないよね

( ・∀・)

( ・∀・)何? どういうことだ?

(´・ω・`) いや、そうだったら面白いなって思っただけだよ

( ・∀・)

( ・∀・)そういうお前こそ、実は言われた事が全部図星だけど上手くごまかしたりしてんじゃねえの?

(´・ω・`)

(´・ω・`) おいおい、僕はそんな短編コメディの主人公になるつもりはないよ

( ・∀・)…

( ・∀・)…ま、そうだよな

(´・ω・`) うん

( ・∀・)

(´・ω・`)

818Σz ゚ー )リ[文戟中] ◆ij8xCb.PrY:2018/10/04(木) 01:57:21 ID:ap8GyIuU0

ζ(゚ー゚*ζ あ、じゃあ私これから友達と用があるから!

(´・ω・`) あ、うん

( ・∀・) またなデレ

('∀`) ありがとうデレさん!

ζ(゚ー゚*ζ どういたしまして!




ζ(゚ー^*ζ じゃあ、またね!

(*'∀`) じゃあ、また!

(*・∀・) またな

(*´・ω・`) またね、デレ




('∀`) …

('A`) ふぅ

('A`) なあ、ショボン、モララー…

(*・∀・)

(*´・ω・`)

('A`) おい?

Σ(´・ω・`)

Σ( ・∀・)

(´・ω・`) うん、ど、どうした? また次の根拠?

( ・∀・)オイ、いい加減諦めろよな、く、くどいぞ?

('A`) いや…

819Σz ゚ー )リ[文戟中] ◆ij8xCb.PrY:2018/10/04(木) 02:01:27 ID:ap8GyIuU0
('A`) 俺、デレの事がちょっと好きになりそうだ

(´・ω・`)

( ・∀・)

('∀`) …あの人は、なんて素晴らしいんだ! すごくいい人じゃないか!

(´・ω・`) ……

(´・ω・`) …はぁ、まったく、付き合ってらんないよ

( ・∀・)ああ、本当に価値のない時間だったな、とっとと行こうぜ

(´・ω・`) カラオケに?

( ・∀・)スタバに

('∀`) 正直、素性が見えないから心配してたんだが、お前らがデレ好きになるのもちょっと分かるかもなーって思ったぞ

(´・ω・`) だから違うって

( ・∀・)好きじゃねえっての

('∀`) んもー強情だな二人とも

('A`) じゃあとりあえずスタバ行ってからカラオケ行こうぜ

( ・∀・)お、その手があったか

(´・ω・`) ま、その折衷案でもいいけどさ

('A`) 俺がいて助かったろ?

(´・ω・`) まあね

( ・∀・)ふん、ま、そうだな

('A`) さ、行こうぜ、楽しめるうちによ







820Σz ゚ー )リ[文戟中] ◆ij8xCb.PrY:2018/10/04(木) 02:02:30 ID:ap8GyIuU0
Σz ゚ー )リ 投下は以上です

Σz ゚ー )リ 品評会の作品もがんばるぞ〜〜〜

821名無しさん:2018/10/04(木) 02:04:56 ID:Hv0gM5cQ0
みんな男子してるな
デレちゃんのこと好きすぎたろ
俺?お、俺は別にそーでもないよ

822名無しさん:2018/10/04(木) 02:23:51 ID:8BZrJDac0
マジ?じゃあ、俺狙っちゃうかな
投下乙

823名無しさん:2018/10/04(木) 08:47:53 ID:7c9hCf2k0
テンポ良くて面白かった


824名無しさん:2018/10/04(木) 11:08:26 ID:5YSbisVU0
デレちゃん可愛いし男子たちが男子達してて好き

825(-@∀@)[文戟中] ◆q5Dei.01W6:2018/10/04(木) 17:18:07 ID:1W0hEZII0
(-@∀@) 「投稿ラッシュ前に間に合ったぞ」

(-@∀@) 「投下だよ」

826(-@∀@)[文戟中] ◆q5Dei.01W6:2018/10/04(木) 17:18:31 ID:1W0hEZII0

( ・∀・) 「のどが渇いたな」

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( ・∀・) 「お、自動販売機だ」

( ・∀・) 「そしてポケットには150円」

( ・∀・) 「こりゃあちょうどいい」

827(-@∀@)[文戟中] ◆q5Dei.01W6:2018/10/04(木) 17:18:53 ID:1W0hEZII0
( ・∀・) 「さてどれにしようかな」

( ・∀・) 「・・・」

( ;・∀・) 「あ」

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( ;・∀・) 「手が滑って50円がドブに落ちてしまった」

( ;・∀・) 「やっちゃったな」

( ・∀・) 「仕方がない。家まで我慢するか」


     「「お困りかね!!!!」」

828(-@∀@)[文戟中] ◆q5Dei.01W6:2018/10/04(木) 17:19:16 ID:1W0hEZII0
( ・∀・) 「だれだ!?」


  ( ^ω^)('A`) ばあああん

829(-@∀@)[文戟中] ◆q5Dei.01W6:2018/10/04(木) 17:19:40 ID:1W0hEZII0
( ・∀・)

( ;・∀・) 「どちら様?」

  ( ^ω^)('A`) ばあああん

( ・∀・) 「いや、ばあああんじゃなくて」

  ( ^ω^)('A`) ばあああん

( ・∀・) 「まいったな」

( ^ω^) 「・・・」

( ^ω^)つ◇ スッ

( ・∀・) 「ん?紙?」

830(-@∀@)[文戟中] ◆q5Dei.01W6:2018/10/04(木) 17:20:06 ID:1W0hEZII0
( ・∀・) 「なんか書いてあるな」

( ・∀・) 『お、お前たちはまさか』

( ^ω^) 「フッフッフッ、ようやく気づいたかお」

('A`) 「クックックッ、さすがは俺の見込んだやつだ」

( ・∀・)

( ・∀・) 「会話が進んだ!!」

831(-@∀@)[文戟中] ◆q5Dei.01W6:2018/10/04(木) 17:20:28 ID:1W0hEZII0
( ^ω^) 「僕らのことを知っているとはなお」

( ・∀・) 「いや、知らないよ。誰だよ」

( ^ω^)('A`)

( ・∀・)

( ^ω^)('A`)

( ・∀・)

( ・∀・) 『ま、まさかこんなところでご当地守る戦隊ブンドクジャーにあえるなんて』

( ^ω^) 「フッフッフッ」

('A`) 「クックックッ」

832(-@∀@)[文戟中] ◆q5Dei.01W6:2018/10/04(木) 17:20:52 ID:1W0hEZII0



ご当地守る戦隊ブンドクジャーのようです

833(-@∀@)[文戟中] ◆q5Dei.01W6:2018/10/04(木) 17:21:14 ID:1W0hEZII0

('A`) 「さ、面倒な話も済んだところで」

( ^ω^) 「お話しましょうお」

( ・∀・) 「何度も言ってるけどお前ら誰だよ」

( ^ω^) 「えー、そちらについては先程お渡しした名刺に書いてありますお」

( ・∀・) 「急に言葉が丁寧になったね」

( ;・∀・) 「てか、名刺?そんなん貰って・・・」

( ・∀・) 「あ、あの紙か」

('A`) 「クックックッ、さすがは俺の見込んだやつだ」

( ・∀・) 「うるさいよ」

834(-@∀@)[文戟中] ◆q5Dei.01W6:2018/10/04(木) 17:21:42 ID:1W0hEZII0
( ・∀・) 「なになに」

( ・∀・) 『我々ブンドクジャーはご当地ヒーローになるために』

( ・∀・) 『日頃の成果を十分に発揮し皆さんのためになるよう努めます!!』

( ・∀・) 「選手宣誓かな」

( ^ω^) 「つまり、ご町内の皆さんのお手伝いをすることで」

('A`) 「街をより良いものにするとともに」

( ^ω^) 「ご当地ヒーローになるくらい有名になりたいんだお」

( ・∀・)「へえ」

835(-@∀@)[文戟中] ◆q5Dei.01W6:2018/10/04(木) 17:22:04 ID:1W0hEZII0
('∀`) 「やがてテレビや雑誌に紹介されちゃったりして」

( ^ω^) 「それがきっかけで番組が作られちゃったりしちゃったりして」

('∀`) 「おもちゃやフュギアが飛ぶように売れちゃったりして」

( ^ω^) 「フッフッフッ」
('A`) 「クックックッ」

( ;・∀・) 「生臭いヒーロだな」

( ^ω^) 「この壮大な夢のためにも356日パトロールしているお」

( ;・∀・) 「ずっとしてるじゃないか。仕事とか無いの?」

('A`) 「まあ、強いて言うなら」

('∀`) 「街の平和を守るのが仕事かな?」

( ・∀・) 「無職かよ」

836(-@∀@)[文戟中] ◆q5Dei.01W6:2018/10/04(木) 17:22:27 ID:1W0hEZII0
('A`) 「さて、我々の紹介が済んだところでそろそろ本題と参りましょう」

( ^ω^) 「あなたの困ったことはなんでございましょうかお」

( ・∀・) 「ほんとに良いの?」

( ^ω^) 「もちろんだお。できる限りのことをするお」

( ・∀・) 「そんなに言うなら頼むけど・・・」

( ・∀・) 「50円をドブに落としてしまったんだ」

( ^ω^) 「おおなんという悲劇お」

('A`) 「我々がなんとかせねば」

('A`) 「しかし、それならばすることは決まったな」

( ^ω^) 「こんな時はプランEだお」

( ・∀・) 「そんな大げさな」

('A`) 「危ないからあなたは下がっててください」

( ;・∀・) 「危ないの!?」

837(-@∀@)[文戟中] ◆q5Dei.01W6:2018/10/04(木) 17:22:47 ID:1W0hEZII0
('A`) 「出たな、自動怪人ハンバーイ」

( ^ω^) 「お前の悪行はすでにバレているお」

('A`) 「街中の50円玉をかき集めてずいぶん私腹を肥やしているらしいな」

( ^ω^) 「ご町内の平和は僕らが守るお」

('A`) 「おまえに引導を渡してやるよ」

( ^ω^) 「死にたくなかったら50円出すお」

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838(-@∀@)[文戟中] ◆q5Dei.01W6:2018/10/04(木) 17:23:10 ID:1W0hEZII0
(;^ω^) 「く、顔色ひとつ変えないとはお」

('A`) 「だがこれを見たあともそんな態度を取れるかな」

( ^ω^) 「そ、その構えはドクオオリジナル空手の基本の構え」

( ^ω^) 「これはマジでやべーお。早く謝ったほうが良いお」

('A`) 「これを出したからにはもはや謝って住むような問題じゃないんだよ」

('∀`) 「ま、50円くれるなら考えてやってもいいけどな」

( ・∀・)

( ・∀・)

( ・∀・) 「ちょっとまって」

839(-@∀@)[文戟中] ◆q5Dei.01W6:2018/10/04(木) 17:23:36 ID:1W0hEZII0
( ^ω^) 「なんですかお?」

('A`) 「止めないでください」

( ・∀・) 「いやいやいや」

( ・∀・) 「え、何やってんの?」

( ^ω^) 「そりゃあプランEですお」

('A`) 「PLAN Extortion略してプランEだ」

( ・∀・) 「Extortion?」

('A`) 「強要、ゆすり、恐喝そのあたりの意味だな」

( ・∀・) 「自動販売機を恐喝しても意味ないだろ!」

(;^ω^) 「そこはほら、ヒーローだから怪人を倒さなきゃいけないって感じで」

( ・∀・) 「どこがヒーローだよ。発言見返せよ」

('A`) 「ダークヒーローみたいだろ」

( ・∀・) 「ただのチンピラじゃないか」

840(-@∀@)[文戟中] ◆q5Dei.01W6:2018/10/04(木) 17:24:06 ID:1W0hEZII0
(;'A`) 「しかし、まさかプランEが効かないとはな」

(;^ω^) 「ブンドクジャー始まって以来のピンチだお」

(;'A`) 「ちくしょう。俺達の夢はこんなところで終わってしまうのか」

( ・∀・) 「ドブの蓋をあげて取ってくれると思ってたんだけどな・・・」

( ゚ω゚)(゚A゚)

( ^ω^) 「お前天才かお」

('A`) 「驚いたな。そんな手があったなんて」

( ・∀・) 「あの流れから恐喝が始まったほうが驚きだよ」

('A`) 「クックックッ、さすがは俺の見込んだやつだ」

( ・∀・) 「うるさいよ」

841(-@∀@)[文戟中] ◆q5Dei.01W6:2018/10/04(木) 17:24:26 ID:1W0hEZII0
( ^ω^) 「早速開けてみるお」

('A`) 「ああ、プランOを始めよう」

( ・∀・) 「プランO・・・ああ、Openか」

( ^ω^) 「ドクオ、そっちを持つお」

('A`) 「何を言ってるブーン」

('A`) 「俺は週刊少年ジャンプより重いものは持てないんだぞ」

( ;・∀・) 「そんなんでよく恐喝しようと思ったね」

( ・∀・) 「仕方ない、僕が片方持つから君は50円を拾ってくれ」

('A`) 「クックックッ、さすがは俺の見込んだやつだ」

( ・∀・) 「気に入ったの?それ」

842(-@∀@)[文戟中] ◆q5Dei.01W6:2018/10/04(木) 17:25:39 ID:1W0hEZII0
( ・∀・) 「じゃあ持ち上げるよ」

( ・∀・) 「せーの」

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843(-@∀@)[文戟中] ◆q5Dei.01W6:2018/10/04(木) 17:26:02 ID:1W0hEZII0
              (・∀・ )

( ∵)         ('A`)

              (^ω^ )




              (・∀・ )

( ∵)         ('A`)

              (^ω^ )




              (・∀・; )

( ∵)         ('A`;)

              (^ω^; )

844(-@∀@)[文戟中] ◆q5Dei.01W6:2018/10/04(木) 17:26:28 ID:1W0hEZII0
              (・∀・; )

( ∵)Hello         ('A`;)

              (^ω^; )




              (・∀・; )

( ∵)         ('A`;)

              (^ω^; )




              (・∀・; )

( ∵)         ('A`;)

              (^ω^; )

845(-@∀@)[文戟中] ◆q5Dei.01W6:2018/10/04(木) 17:26:48 ID:1W0hEZII0
 バッ
  ⊂( ∵) Welcome!!
   / ノ∪
   ̄ ̄ ̄ ̄

( ;・∀・) 「ぎゃああこっち来た!!」

( ;゚ω゚) 「なんかヌラヌラしてるお。絶対やばいやつだお」

( ;・∀・) 「そ、そうだ。今こそプランEをやってくれ」

(;^ω^) 「そうだおドクオオリジナル空手をお見舞いしてやれお」

(;'A`) 「バカヤロウ!俺は格下としか戦わないんだよ」

( ;・∀・) 「つくづくヒーローとはかけ離れているやつだな」

( ;・∀・) 「と、とにかく逃げるぞ」

('A`) ブヘ

(;^ω^) 「やべ、ドクオが転んだお」

( ・∀・) 「善良な市民の盾になってくれたんだ。彼も本望だろう」

( ^ω^) 「それもそうだお。ドクオの犠牲を無駄にしないためにも逃げるお」

(;'A`) 「ブーーーン!!てめえ裏切りやがったな」

846(-@∀@)[文戟中] ◆q5Dei.01W6:2018/10/04(木) 17:27:09 ID:1W0hEZII0
( ∵)ガシッ

('A`) 「ぎゃあああ」

( ^ω^) 「とうとうドクオが追いつかれてしまったお」

( ・∀・) 「君という尊い犠牲は忘れないよ」

( ∵)

('A`) 「クソッ、一体俺をどうする気だ」

( ∵)

847(-@∀@)[文戟中] ◆q5Dei.01W6:2018/10/04(木) 17:27:31 ID:1W0hEZII0
   スッ
( ∵)つ㊿  ('A`;)

( ∵)   ㊿と('A`;)

(∵ )   ㊿と('A`;)


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848(-@∀@)[文戟中] ◆q5Dei.01W6:2018/10/04(木) 17:27:55 ID:1W0hEZII0
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( ・∀・)

( ^ω^)

('A`)

849(-@∀@)[文戟中] ◆q5Dei.01W6:2018/10/04(木) 17:28:23 ID:1W0hEZII0
( ・∀・) 「あれにはこれ以上関わらないほうが良い気がする」

( ^ω^) 「世の中不思議なこともあるもんだおね」

('A`) 「なんだか俺ヒーローする自信がなくなってきたよ」

( ^ω^) 「僕もだお。明日からは真面目に働くお」

('A`) 「ああ」

('A`) 「だが今日は休もう」

('A`) 「今日の疲れを忘れるためにも」



今日もこうして二人の無職が救われた。
ありがとうご当地守る戦隊ブンドクジャー。
さようならご当地守る戦隊ブンドクジャー。

【ご当地守る戦隊ブンドクジャーのようです  】

850(-@∀@)[文戟中] ◆q5Dei.01W6:2018/10/04(木) 17:28:44 ID:1W0hEZII0
( ・∀・) 「全くひどい目にあった」

( ・∀・) 「・・・・・・」

( ・∀・) 「・・・・・・あ」

( ・∀・) 「あの野郎そのまま50円持って帰りやがった」

【ご当地守る戦隊ブンドクジャーのようです 了】

851(-@∀@)[文戟中] ◆q5Dei.01W6:2018/10/04(木) 17:29:15 ID:1W0hEZII0
(-@∀@) 「終わりだよ」

852名無しさん:2018/10/04(木) 17:39:34 ID:7c9hCf2k0
投下乙
AAがいい味出してるな

853( "ゞ)[文戟中] ◆x4POrpflHM:2018/10/04(木) 21:09:02 ID:wPvBbzeU0
( "ゞ)「投下するよー」

( "ゞ)「それにしても……今回なんか静かじゃない?」

854( "ゞ)[文戟中] ◆x4POrpflHM:2018/10/04(木) 21:10:19 ID:wPvBbzeU0

彼女にぱしん、と頬を叩かれる音で、わたしの意識は夢から現実へと帰ってきた。

「……」

左の頬を撫でてみても、かすかな痛みすら走らない。夢だから当たり前だ。
単なる夢ならどれほどよかっただろう。あれは遠くなり始めた記憶の残渣。
時間の流れに磨かれて、その輝きと鋭さを増し始めた檸檬色のナイフだ。

わたしがこの夢を見るのはこれが初めてじゃなかった。
かつては毎晩のように見て、目覚めるたびに泣いていた。
いつからか泣かなくなったけれど、それでも泣きたくなるくらいに心は痛む。

時間を確認しようとスマホの画面をのぞき込む。
未読のグループラインが何十件と表示されていたけど、あいにくそれを確認する気分にはなれない。
寝てたと嘘をつくことを決め込んで、わたしはスマホをその辺にそっと放り投げた。

「……トソン」

愛おしく、懐かしい名前を呼ぶ。返事は当然ない。それでいいのだと分かっている。
それでもわたしはいま、彼女のいない寂しさに苛まれていた。

だから、わたしは頭の中で、ひとつの箱を手に取る。積もったほこりを払って、そっとそのふたを開く。
その中にあふれんばかりに詰まっているのは、もう取りに戻れないあの日の忘れ物。
そして、甘酸っぱくて苦い檸檬の香り。

855( "ゞ)[文戟中] ◆x4POrpflHM:2018/10/04(木) 21:11:18 ID:wPvBbzeU0
.













あの日、彼女にすくわれた日から順に、指先でそっとなぞるかのようにわたしはふたりの日々を思い返す。














.

856( "ゞ)[文戟中] ◆x4POrpflHM:2018/10/04(木) 21:11:56 ID:wPvBbzeU0
.













Love Will Tear Us Apart














.

857( "ゞ)[文戟中] ◆x4POrpflHM:2018/10/04(木) 21:12:33 ID:wPvBbzeU0

消せない、暗い過去の話をしようと思う。

わたし、三瀬ミセリには幼馴染がいた。名前は藤村トソン。かけがえのない親友だった。
わたしたちが出会ったのは、小学校に上がる前。あのころ、わたしはひとりぼっちだった。
引っ越してきたばかりで、当時は内気だったわたしは友達もろくに作れなかった。

「ねこちゃん?」

「え?」

「それ、ねこちゃん?」

毎日ひとりで、道路にチョークで落書きばかりしていたわたしに声をかけてくれたのが、トソンだった。
このころのトソンはとても活発な子で、髪が短かったこともあってまるで男の子のようだった。
男の子と混じって元気に遊ぶ彼女を羨ましくも、ちょっと乱暴そうで怖いとも私は思っていた。

「……いぬ」

「わんちゃんはおひげはえてないよ」

「……ちょっとはえてるもん」

だからだろうか。トソンの悪意はなかったであろう言葉にすら、わたしは打ちのめされていた。
うちで飼ってた大好きな柴犬のコロを猫と言われて、半泣きになる始末だった。

858( "ゞ)[文戟中] ◆x4POrpflHM:2018/10/04(木) 21:13:03 ID:wPvBbzeU0

「……わんちゃんはね」

トソンはわたしがその辺に放り投げていた中で一番長いチョークを手に取った。
そして、彼女いわく猫だった私の絵の隣に、自分も絵を描き始めた。

「こうやっておはなのところがとがってて」

「……わあ」

「おかおがしゅっとしてて、あと……しっぽはくるんってしてるね!」

「……コロだ! すごい!」

トソンが緑色で描いてみせたのは、紛れもなくわたしの描きたかったコロだった。
アスファルトに緑色で書いたから、見えにくいのがもったいないくらいだった。

「ねこはね」

「うん!」

「おかおはわんちゃんよりまるくて、おひげがはえてて……」

わたしはすっかりトソンの描く絵に夢中になっていていた。
彼女の手が次は何を描いてくれるかが楽しみで仕方なかった。
これがわたしとトソンの最初の出会いだった。

859( "ゞ)[文戟中] ◆x4POrpflHM:2018/10/04(木) 21:13:37 ID:wPvBbzeU0

トソンは引っ込み思案だったわたしを連れて、よく遊びに混ぜてくれた。
最初はみんなどこかよそよそしかったけど、次第にトソン以外の友達も増えていった。
小学校に入り、学年が上がるにつれて、わたしはトソンの助けを必要としなくなっていった。

トソンはその逆だった。

学年が上がるにつれて、年不相応に落ち着かないところがあったり、協調性のないところが目立つようになった。
トソンと仲の良かった子たちもだんだんと離れていって、ひとりで絵を描いている時間が増えていった。
同じ中学に進学するころには、わたしとトソンの立場は小さいころとは真逆のものになっていた。

わたしはそれでもトソンを見捨てることはしなかった。
今度は自分がそうしてもらったようにトソンを助ける番だと強く思った。
遊びに行くときでも、何かのグループ分けでも、わたしは積極的にトソンを自分のところに混ぜるようにした。

「いつもごめんなさい、私なんかを気遣ってくれて」

すっかりふさぎ込んで、わたしにすら敬語を使うようになったトソンは、事あるごとにそう言っていた。

「いいよ。だってトソンも昔そうしてくれたでしょ?」

「ですが……」

「それに、わたしがトソンといっしょにいたいからそうしてるの。わたしたち友達じゃん?」

860( "ゞ)[文戟中] ◆x4POrpflHM:2018/10/04(木) 21:14:12 ID:wPvBbzeU0

「……友達?」

「……え? もしかしてそう思ってるのわたしだけ?」

「……いえ、友達です。ミセリは、私の大事な友達です。ありがとう、ございます」

「あーもー、ちょっと泣かないでよトソン!」

「大好きです……」

「うんうん、私も大好き! だから泣き止んでー!」

わたしたち自身が、立場が変わっても、わたしたちは友達だった。

確かにトソンは人と話すのが苦手になったし、かつての明るさは見る影もなくなった。
でも、彼女の絵の才能はめきめきと開花して、いまやコンクールで賞をもらうくらいだ。
苦手なことはあるけど得意なこともある。そして得意なことはとことんすごい。

そんなトソンのことをわたしは尊敬していたし、自慢できる最高の友達だと思っていた。

861( "ゞ)[文戟中] ◆x4POrpflHM:2018/10/04(木) 21:14:40 ID:wPvBbzeU0

どこで私たちの歯車が狂ったのかと聞かれたら、すぐに答えられる。
あれは、修学旅行の初日の夜の出来事だった。

「じゃ行ってくんねー」

「先生きたらよろー」

「ん……」

男子の部屋にお呼ばれして、意気揚々と出ていく友達たち。
わたしはその背中を見ることもなく、布団をかぶって手を振るだけで見送った。

「……もう大丈夫ですよ」

「ほんと?」

「嘘言ってどうするんですか」

「……ぷはっ」

わたし以外ではひとり部屋に残ったトソンの声に、暑苦しかったかけ布団をようやく引き剥がす。
仮病を使って面倒くさいお誘いを断る作戦は、わたしの演技力とトソンの助演もあって大成功だった。

862( "ゞ)[文戟中] ◆x4POrpflHM:2018/10/04(木) 21:15:14 ID:wPvBbzeU0

「いやー、ありがとね。口裏合わせてもらっちゃって」

「いえ、別に。ミセリが心底面倒くさそうだったので、これは協力してあげようと」

暇つぶしに落書きしていたメモ帳から顔を上げて、トソンはわたしを見つめて微笑む。

「友達なので」

「んもうトソーン! 大好きー!」

「入る班のないわたしを入れてくれたお礼です」

「そっけない! でもそういうところも好き!」

修学旅行特有の高揚感と、女子の付き合い特有の面倒くささからの解放感が胸を満たす。
みんなはわたしのことを可哀想だとか言ってたけど、わたしはわたしでとても楽しんでるので心配無用だ。

「ねえねえトソン。恋バナしない?」

「なんです、藪から棒に」

浮足立った気持ちが、普段はしないようなことをわたしにさせる。
例えば、色恋沙汰に興味がなさそうなトソンに修学旅行の夜の定番を持ちかけるとか。

863( "ゞ)[文戟中] ◆x4POrpflHM:2018/10/04(木) 21:15:47 ID:wPvBbzeU0

「いや、普段そういう話しないなって。でも修学旅行の夜ではするもんじゃん?」

「まあ、はい」

筆記用具を置いて、トソンは話を聞く態勢に入ってくれる。
向かい合わせに敷かれた布団のせいか、これからふたりだけの秘密を作るんだという気分になる。
なにより、色恋沙汰に興味のなさそうだったトソンが話に乗ってくれたのがうれしかった。

「トソンはさ、好きな人とかいる?」

「いますよ、ゴッホとか」

「そうじゃなーい! ライクじゃなくて! ラブ! わかる?」

「ええ、わかってますよ」

そう言っていたずらっぽく笑ってみせるトソンを、わたしは初めて見た気がした。
なんというか、小悪魔的というか、色っぽいとでも言えばいいのか。

「……わかってるならちゃんと答えてよー」

とにかく、トソンの表情を見た瞬間、ふと胸の鼓動が高鳴ってしまった。
そんな自分に戸惑いを覚えながら、ごまかすように笑みを浮かべた。

864( "ゞ)[文戟中] ◆x4POrpflHM:2018/10/04(木) 21:16:17 ID:wPvBbzeU0

「愛する人ですか……愛する人」

堅苦しい言い方で真剣に悩むトソン。彼女のそういうところをわたしはときどき愛おしく思う。
ときどきだから、いまがそのときでも不思議じゃないし、慣れているはずなんだけど。
なぜか今日はやたらと心臓の音がうるさい。本当に具合が悪いのかもしれない。

「あっ、消灯の時間ですよ」

答えを待っていると、それを遮るようにアラームが鳴った。
友達たちからは偽装工作も頼まれている。邪魔をされた腹いせにそれをしないわけにもいかない。

「おっけい。さ、話の続きしよ」

電気を消して布団に戻ると、トソンの顔は暗闇の中にぼんやりとしか見えなかった。
部屋の扉から差し込んでくる廊下の明かりだけが、いまはこの部屋の光源だ。

「……そうですね。いろいろ、ちょうどよかったです」

「へ?」

「明るかったら、たぶん言えなかったですから」

865( "ゞ)[文戟中] ◆x4POrpflHM:2018/10/04(木) 21:16:42 ID:wPvBbzeU0

次々と聞こえてくる意味の飲み込めない言葉たちに、わたしはぽかんと口を開けるだけだった。
トソンはわたしの相づちを待っていたのか、それから少し黙っていた。

「愛する人なら、いますよ」

だけど、いつまでもどう返していいのかわからずにいると、やがてトソンは自分から会話を再開した。
その声色をわたしは知っている。本当に好きな人のことを考えているときの声。
その人への想いを大切に、口の中に含んでいるときの声だ。

「……あなたです」

「……」

「あなたですよ、ミセリ」

トソンの艶めいた声が二度、わたしの全身を貫いた。
そのときにわたしの中身が全部漏れ出てしまったのか、わたしの意識はもうなにも反応できなかった。

「……なんで?」

それでも唇が反射的にそう紡いだのは、たくさん恋バナをしてきた経験則からくるものだったのかもしれない。

866( "ゞ)[文戟中] ◆x4POrpflHM:2018/10/04(木) 21:17:08 ID:wPvBbzeU0

「……なんででしょう?」

その自問自答には、いろんな意味が込められていたと思う。
どうしてわたしなのか。どうして好きになったのか。

同性同士なのに、どうして。

「愛する人について考えてて、顔を上げるとミセリがいて」

「うん」

「なぜかわからないけど、この人のことだ、ってピンときました」

「うん」

被った布団の中よりも熱を持ったトソンの言葉。
まだ中身が補充できてないわたしの空虚な相づち。
ふたつが混じって、部屋の中はぬるま湯のような雰囲気に満たされる。

「……好きです」

筆記用具に触れるよりもずっと優しく、トソンの指先がわたしの手に触れた。

867( "ゞ)[文戟中] ◆x4POrpflHM:2018/10/04(木) 21:17:34 ID:wPvBbzeU0

「大好きです。ミセリ」

トソンの指先は熱かった。その熱が空っぽなままのわたしの中身を満たしていく。
満たされ切ったときにはもう、わたしはわたしの形をした誰かだった。

「トソン」

触れた指先を、手のひらを、両手で包み込む。
離さないように。あるいは、逃げられないように。
そのままもぞもぞと布団から這い出て、トソンの眼前にやってくる。

「本当にわたしのこと、好きなの?」

「……愛してます」

まっすぐに見つめて放たれた言葉に、背中を押された気がした。
見えない手が少しずつ、少しずつ私の上半身を押して、トソンとの距離が縮まっていく。
わたしはもう、到底、引き返せないところまで来てしまったんだと悟った。

「……っ」

「ん……」

868( "ゞ)[文戟中] ◆x4POrpflHM:2018/10/04(木) 21:18:01 ID:wPvBbzeU0

最初はそっと触れ合う程度の口づけだった。
そこから加速度的に、もっと、もっとと、トソンの感触を求めて、口づけは深くなっていく。

「ふっ、ふぅっ」

「はぁっ……あっ、ん」

トソンの指先からはいつの間にか力は抜けて、いまはただわたしに唇をむさぼられるだけの存在になっていた。
それをいいことにわたしは唇をしゃぶり、舌をねじ込み、唾液を舐めとり、甘い吐息で呼吸する。
檸檬の味はしなかったけど、初めてのキスをそう例えたくなる気持ちははっきりと理解できた。

どれほどそうしていただろう。

「んっ!?」

閉じられていたトソンの目が開いて、肩を叩かれる。
ただならぬ気配にわたしはしぶしぶ唇を離した。

「……なに?」

「足音っ……!」

「はっ……!」

869( "ゞ)[文戟中] ◆x4POrpflHM:2018/10/04(木) 21:18:42 ID:wPvBbzeU0

先生の巡回か、あるいは友達たちが戻ってきたか。
どちらにせよ、もうわたしたちは離ればなれにならなければならない。
向かい合わせに敷かれた布団の数十センチすら、いまははるか遠くに思える。

互いに布団に潜り込んだところで、部屋の扉が無言で開かれた。
そのまま入ってくる気配はない。先生の巡回らしかった。
だけど、布団に戻ったいまは、もうそんなの問題じゃなかった

ようやく戻ってきた本当のわたしが、掛け布団の下でパニックに陥っている。
告白されてしまった。キスしてしまった。しかも同性の幼馴染が相手。
こんなのどうかしている。きっとわたしは本当に何かの病気に違いない。

でも、不思議と不快な感じはしなかった。
むしろ、トソンに嫌な思いをさせてないかとか、口の匂いは大丈夫だったかとか。
そういう、いわゆる『普通』の悩みで頭がいっぱいで、それが一層わたしを混乱させた。

もしかして、これは恋の病というやつなんじゃないか。
そんな馬鹿げた考えが浮かんだけど、否定するすべがない。
トソンに聞いてみようか。いや、そんなことができるわけがなかった。

わたしはもう布団から顔を出せなかった。
悶々と感触とか、温度とか、匂いとか、誰かの例えを借りるなら檸檬の味とか。
そんなことばかりが胸に残って離れなかった。

870( "ゞ)[文戟中] ◆x4POrpflHM:2018/10/04(木) 21:19:16 ID:wPvBbzeU0

それから数日が経った、ある日の放課後のこと。

「……あれ」

ちょうど修学旅行の部屋の面子から、トソンだけが抜けていた日。
わたしの下駄箱に、一通の手紙が入っていた。

「ミセリー、なにそれ?」

「もしかしてラブレター? うわー!」

差出人も宛先も書いてないな、なんて考えているうちに、周りの方が先に騒ぎ始める。
いつの間にか私の周りには人の輪ができていて、なんだかこのまま読むような流れだ。

「ちょ、ちょっと待って。出してくれた人に悪いよ」

さすがに晒し者は可哀想だと思って、わたしはいったんみんなを制そうとする。

「えー、でも気になるじゃん。ねー?」

「うん、それに出した方もこうなるかもって考えてるっしょ」

「でも……」

871( "ゞ)[文戟中] ◆x4POrpflHM:2018/10/04(木) 21:19:45 ID:wPvBbzeU0

まだ抵抗を続ける私に、グループの中でもなんとなくリーダーシップをとっている子が、ちくりと言う。

「ミセリばっかワガママ言うのもね。こっちはいつも藤村さんのこと入れてあげてるのに」

「……っ」

なんてずるい言い方なんだろう、とわたしはその瞬間、その子のことを少し嫌いになった。
言っていることは確かにその通りだけど、トソンを馬鹿にされているようで腹が立つ。

「そうだよそうだよ。たまにはワタシたちのわがままも聞いてよね」

「そうだー! 横暴だー!」

「……」

誰も、何も疑問を持たずにその子に賛同する。みんな合わせて、少し嫌いになった。
だけど、平和に学校生活を送っていくには人付き合いは欠かせないもので。
この子たち以外にはトソンしか付き合いのないわたしにとって、こんなのでも切ってしまうには惜しい繋がりだった。

「……わかったよ」

直接何か言われたわけでもないのに、なぜかトソンに申し訳なかった。
今度会ったら謝ろうと思った。思いながら、手紙の封を開いた。

開いて、しまった。

872( "ゞ)[文戟中] ◆x4POrpflHM:2018/10/04(木) 21:20:16 ID:wPvBbzeU0

「え……」

手紙の内容はいたってシンプルだった。
話したいことがあるから明日の放課後、校舎裏に来てほしい。それだけだった。
結局、名前は書かれていなかった。だから、差出人はわからない。

普通は。
わたし以外は。

小さい頃から飽きるほど見てきた筆跡が分かるわたしでなければ、差出人はわからない。
だから周りは告白だなんだと、わたしの気も知らないではやし立てる。
お願いだから誰も気付かないでほしい。わたしも名前を出さないようにこらえるから。

「……なんかさ、男子の字っぽくないよね」

なのに、珍しく神様に真剣に願ったのに。
どうしてそういうときに限って、願い事は届かないんだろう。

「……言われれば」

「え、てことは入れ間違い?」

「そうでしょ。だってそうじゃなきゃおかしいもん」

873( "ゞ)[文戟中] ◆x4POrpflHM:2018/10/04(木) 21:20:42 ID:wPvBbzeU0

「でもちゃんと三瀬さんへ、って書いてあるよ?」

「え、じゃあマジで女子から?」

「やだ・……」

ざわつく友達たち。一声あげるたびに好感度が下がっていく。
もう友達かどうかも、いまは定かじゃなかった。

「気持ちわるっ……」

「あのさっ、もうやめにしよ! やっぱり相手に悪いと思うし!」

何か別の、取り返しのつかないものが爆発する前に、わたしは声を張り上げた。
足元に置いていたカバンをひったくるように掴んで、人の輪を無理に引きちぎって外に出る。

「わたし好きな人とかいないし、どっちにしろ断るよ! だからこの話はこれでおわりね!」

「ミセリ大丈夫ー? 顔色悪くない?」

「大丈夫!」

誰のせいだ、と皮肉を込めてそう叫んだ。
そのままわたしは自転車も置き去りにして、走って校門を駆け抜ける。
とにかく、いますぐ、人のいないところへ行かなければという想いで、頭がいっぱいだった。

874( "ゞ)[文戟中] ◆x4POrpflHM:2018/10/04(木) 21:21:10 ID:wPvBbzeU0

人気のない公園にたどり着いて、わたしは息を整えながらスマホを取り出した。
そして、そのまま手紙の差出人へと電話をかける。
だけど、いつまで経っても彼女は出てくれない。

だったら、とメールを送ってみる。すぐに返事をしてほしいとも添えた。
普段ならこれだけやれば何事か、と連絡を返してくれる。
それでも、何回かけても、何通送っても、何の音沙汰もない。

「……当たり前か」

明日告白する相手とまともに話せるわけないし、連絡を返せるわけがない。
そんな簡単なことに気付いたのは、日が暮れ始めて頭が冷えてきたころだった。

「……いま、どこにいるの」

何をやっても届くわけがないから、いっそ口に出してみた。
彼女への恋しさが、雪のようにしんしんと積もっていくだけだった。

「なにしてるの」

ならばいっそ、明日会えるまでにどれだけ積もるか試してみよう。
そして、会えたら全部ぶつけてやろう。

「……トソン」

あなたへの、この曖昧な愛情を。

875( "ゞ)[文戟中] ◆x4POrpflHM:2018/10/04(木) 21:21:35 ID:wPvBbzeU0

次の日の放課後。人気のない、野良猫たちの憩いの場になっている校舎裏。
待ち合わせ時間より少し早めに着いたわたしを待っていたのは。

「……なんで、いるの」

昨日から友達としての存在意義が怪しくなった人たちだった。

「いやー、だって気になるし」

「大丈夫だよ、こっそり隠れてるから!」

野良猫たちを押しのけて木陰に身を隠した彼女たちは、あっけらかんと笑う。
わたしは迷った。もうすぐトソンが来てしまう。彼女たちに差出人がばれてしまう。

いますぐ連絡するか。連絡がとれなかったら直接会いに行って来ないよう伝えるか。
入れ違いになったらそれこそまずいか。だったらいっそ告白の一部始終を見てもらうか。
そうしたら明日からのわたしたちふたりはどうなるのか。

「言っとくけど、ここまで来てるのに帰れとか言うなら絶交だから」

時間がないのに余計な選択肢を増やさないでほしい、とわたしはこの赤の他人に対して思った。

876( "ゞ)[文戟中] ◆x4POrpflHM:2018/10/04(木) 21:22:03 ID:wPvBbzeU0

そうこうしているうちに、遠目に見つけたのはトソンの姿だった。
何も知らないまま、まっすぐこちらへとやってくる。

「やばっ」

野次馬たちは慌ててその姿を茂みに隠す。
影からひそひそと話す声の中に、藤村さん、と混じっていた。
もう人違いでした、という手段は通用しなくなっていた。

「っ!」

せめてもの抵抗に、わたしはトソンに走って近づいていき、茂みからなるべく離れた場所で落ち合った。
横目に確認すると茂みはかなり遠く、野次馬の声も聞こえない。
ここでならわたしたちも声を潜めれば話を聞かれずに済む。

「ど、どうしたんですかミセリ、こわい顔して」

「しっ、お願いトソン、ちょっと小さい声で話して」

それからわたしは事のいきさつを包み隠さずトソンに話した。
途中で何度ごめん、と挟んだのか数えきれない。
トソンはいつものようにうんうんと頷きながら、すべてを聞いていた。

877( "ゞ)[文戟中] ◆x4POrpflHM:2018/10/04(木) 21:22:38 ID:wPvBbzeU0

「ごめんねトソン、ごめんね」

いつの間にかわたしの目からは涙があふれて止まらなくなっていた。
泣きたいのはわたしじゃなくてトソンの方のはずなのに、自分が情けなくて仕方ない。
そんな感情がまた視界を滲ませる堂々巡りが、わたしの頭の中で繰り広げられていた。

「……」

トソンは話を聞き終えてから、ずっと何かを考えていた。
わたしの背後にある茂みから、いまの光景はどう見えているのだろう。
トソンがわたしを泣かせたように見えていたら嫌だな、と思った。

「……こうしましょう」

「え?」

「……私を振ってください。なるべくひどい言葉で」

「……どうして」

「あ、もちろん茂みにも届くような大きな声で、ですよ」

878( "ゞ)[文戟中] ◆x4POrpflHM:2018/10/04(木) 21:23:04 ID:wPvBbzeU0

「だから、どうして?」

しつこく尋ね続けて、ようやくトソンはどう答えようか悩み始めたらしく、会話は止まった。
わたしを好きだと、愛していると言ってくれたのはあなただったのに。
今日はきちんとその話をするはずで、わたしは首を縦に振ってあげるはずだったのに。

「……だって、茂みに友達がいるんでしょう」

「あんなの、もう友達じゃない。友達じゃないよ」

「それでもです。ここであなたが私を振らなければ、あなたまで学校での評判が下がってしまう」

「トソンはどうなってもいいなんて、わたしが考えると思ってるの?」

「思っていません……」

トソンは困ったように眉を八の字にして笑った。
揺れた前髪に、ぽつりと雨粒がひとつ落ちて、弾けた。
きっと、もうすぐ雨が降る。

879( "ゞ)[文戟中] ◆x4POrpflHM:2018/10/04(木) 21:23:32 ID:wPvBbzeU0

「じゃあ、あなたの聞きたかったことを、私が話したかったことを話しましょう」

トソンはより一層声を潜めて、そう言った。
まるで、ふたりだけの秘密を永遠のものにしようとしているようだった。

「私はあなたが好きです。愛してます。付き合ってほしいと思っています」

「……わたしも」

「同性同士なのに変だと分かっています。それでも、この気持ちに嘘はないと思っています」

「……わたし、も」

布団を被って、誰にも聞こえないように囁き合う修学旅行の夜が、そこにはあった。

「……ミセリも同じ気持ちで嬉しいです」

照れくさそうに赤くなった頬を掻くトソンの愛おしさも、世界中でわたしだけのものだ。
わたしだけのものでなければならないなんて、あんまりだ。
世界中の人たちに、こんなに可愛い女の子がわたしを好きだと言ってくれている、と伝えたいのに。

880( "ゞ)[文戟中] ◆x4POrpflHM:2018/10/04(木) 21:23:53 ID:wPvBbzeU0

「だから、私は大丈夫です」

「なにがだからなの……!」

「確かに私たちは愛し合っていた。その事実さえあれば」

トソンがあまりに大切そうに、嬉しそうにそんなことを言うから。
どんな雑音にも掻き消えてしまわないよう、全部覚えていようと夢中で聞いていたから。

「私はこれから先、何があっても、大丈夫です」

いつの間にか振りかぶられていたトソンの手に、わたしは気付かなかった。

「え」

ぱしん、とトソンの手がわたしの頬を強く打った音が、校舎の冷たいコンクリートを震わせた。

881( "ゞ)[文戟中] ◆x4POrpflHM:2018/10/04(木) 21:24:21 ID:wPvBbzeU0

「もうミセリのことなんて知りません! あなたとは絶交です!」

悲痛に叫んだトソンは踵を返して、どこかへ走り去ってしまう。
あとには何も理解できていないわたしと、左の頬のぴりぴりとした痛みだけが残った。

「ちょっとミセリ大丈夫?」

「何があったの?」

茂みから矢継ぎ早に野次馬が飛び出してきて、わたしを囲む。
大丈夫なのかも、何があったのかも分からない。ちょっと待ってほしかった。
いや、ちょっとどころでは足りないかもしれない、なんて、漠然と思った。

「なにあれ……サイアクじゃん。絶対振られた腹いせでしょ」

「ミセリが何言ったか知らないけどさ……叩くとかありえない」

「受け入れてもらえるとでも思ってたのかな……」

わたしを差し置いて騒ぎだした野次馬の言葉に、徐々に意識が戻ってくる。
トソンがどうして急にあんなことをしたのか。点と点が繋がって、線になっていく。

882( "ゞ)[文戟中] ◆x4POrpflHM:2018/10/04(木) 21:24:48 ID:wPvBbzeU0

わたしが何を言っても絶対に振ろうとしないことを、トソンは分かっていたんだ。
だから、あたかも自分が振られたかのような態度をとって、わたしが振ったように見せかけたんだ。

「っふ、う、うう……」

「大丈夫ミセリ? 痛いよね? 保健室行こっか」

大丈夫じゃない。痛い。頬じゃなくて、心が痛い。保健室でも、病院でも治せないくらいに。
泣き崩れるわたしを野次馬たちは友達面して、いつまでも心配していた。
だけど、誰もわたしの心の傷までは気付くことはなかった。

「ごめん……ごめんなさい……」

いつの間にか本格的に雨が降り出しても、わたしはそこから動けなかった。
ようやく保健室にたどり着いて、雨が降りやんでも、家には帰れなかった。
胸に刻まれた檸檬色の傷が痛んで、いつまでも、いつまでも、わたしの体と心を動かしてくれなかった。

883( "ゞ)[文戟中] ◆x4POrpflHM:2018/10/04(木) 21:25:14 ID:wPvBbzeU0

これがわたしの消せない、暗い過去の話。

高校に進学して、当時の友達と呼んでいた人たちとも疎遠になった。
大事な大事な親友の、愛を込めた言葉をすぐには思い出せなくなった。
それでもわたしはあの日から、なんだかうまく呼吸ができなくなったような気がしたままだ。

わたしはあなたに救われたはずだった。きっとあなたにとってわたしに与えたのは救いだった。
自分さえ犠牲になればわたしは幸せになれると、あなたは思っていたのかもしれない。

だけど、それは違う。
だって、あなたがいない幸せは、まだ見つかっていない。
いまでもあなたはわたしの光のままだ。

ふと、思うときがある。
あなたがわたしと同じような思いを抱きながら、日々を過ごしていたら、と。
もしもそうなら、叶うなら、たったひとこと伝えたい。

どうかわたしのことなんて忘れてください、と。

【了】

884( "ゞ)[文戟中] ◆x4POrpflHM:2018/10/04(木) 21:26:49 ID:wPvBbzeU0
( "ゞ)「投下終了だよー」

( "ゞ)「大ヒットしたあの曲を話のモチーフにしてみたよ、探してみてね」

885(-@∀@)[文戟中] ◆q5Dei.01W6:2018/10/04(木) 22:02:17 ID:1W0hEZII0
(-@∀@) 「少しづつすれ違ってしまう二人を見て悲しくなってしまったよ」

(-@∀@) 「投下お疲れ様」

886ミセ*゚ー゚)リ ◆.B6BIc9Qqw:2018/10/04(木) 23:18:04 ID:oHseY2Ho0
ミセ*'⊿`)リ「どもども、ミセリだよ」

ミセ*'⊿`)リ「連日のサビ残――」

ミセ*'⊿`)リ「――塾通いに、身も心も疲弊しきっているよ」


ミセ*>ワ<)リ「そんなこんなで完成したボクの作品を皆見ろ〜〜〜〜〜」




ミセ*゚ー゚)リ「あっ、一応【閲覧注意】って入れておくけど」



ミセ*>ワ<)リ「投票するには読まなきゃいけないからね! ふふふっ!」

887ミセ*゚ー゚)リ ◆.B6BIc9Qqw:2018/10/04(木) 23:19:20 ID:oHseY2Ho0


棍棒で殴られた衝撃で、
腕時計の硝子は割れてしまっていた。

しかし、短針長針は歪みながらも正確に時を刻んでいるらしく、
少しばかり安堵する。

時刻は21時39分。
この時計は日本の標準時に合わせたままなので、
恐らくこの国では18時前後といったところか。

木製の檻は存外丈夫に出来ていて、
その内部に放り込まれた時から血液特有の鉄分要素を含んだ臭気に満ちていた。


(´<_` )(どうしたものか……)


俺は眉間に皺を寄せながら首だけを後ろに巡らせる。
同じ檻に入れられている現地のガイド兼通訳が膝を抱えて震えていた。


(;‘_L’)「だから言ったんだ……チンドウィン河の上流には行きたくないって……」


あいにくビルマ語は聞き取れるので、
彼が俺の采配に文句をつけている事は分かった。

俺はため息をわざとらしく吐くと、檻の隙間から見える村の風景に目を凝らす。





.

888ミセ*゚ー゚)リ ◆.B6BIc9Qqw:2018/10/04(木) 23:20:00 ID:oHseY2Ho0

広場――と形容して良いのだろうか。
アラカン山脈の奥地の森を切り開いた円形に沿うように
竪穴式住居じみた粗末な家が並んでいる。

円の中心には祭壇と言って差し支えないような大きな櫓と篝火が、
そこからチンドウィン河のほとりに近い南側に、俺達の入った檻が置かれている。

先程まで殺気籠もった視線で俺たちを見ていた部族の民たちは、
全員自分の家に入り、それから一向に出てこない。

一際大きい住居に、複数の男達が入っていったのを見るに、
恐らくあれが族長の家であり、そこで我々の今後でも話し合っているのだろう。

俺たちを捕えた部族の民は全員仮面を被っていたので、
その素顔がどの人種に寄ったものなのかわからない。

ビルマとインドの間であることを考えると、アジア系の平たい顔か
東南系の彫り深い造詣も考えられる。

時折仮面の隙間から漏れ聞こえる言葉から鑑みるに、
印欧言語の系譜であることは間違いなさそうだ。

そこに特有の舌遊び音と、短い息音を混じらせるのは
意外にも南アメリカ大陸に住む先住民と同じ特徴だ。


そこまで考えて、再び自分が捕えられて命の危機に瀕していることを思い出す。
つくづく自分の性格が嫌になった。

この状況でさえ、こういうことを考えずにはいられない性質なのだ。



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889ミセ*゚ー゚)リ ◆.B6BIc9Qqw:2018/10/04(木) 23:20:56 ID:oHseY2Ho0

俺がベトナム戦争の取材を終えて、その足でビルマに寄った理由。

それはは"チン鳥"と"反魂香"に起因する。

"チン鳥"とは、中国の古文献である山海経に登場する毒を持つ鳥である。

山海経以外にも複数の文献に登場し、
時の権力者をその毒で殺した描写が何度か出てくる。

いわゆる伝説上の存在であり、実在するとは考えられていなかったが、
近年ニューギニアの方で尾羽根に毒を蓄積する"ピトフゥーイ"なる鳥が発見され、
チン鳥も実在の可能性が示唆され始めている。

そしてそれに目を付けたのが我がカストリ雑誌の編集長だった。
中国怪奇ブームの到来を予測し、次なるターゲットを"反魂香"に決めたのだ。

反魂香も中国、それからインドの一部に伝わる霊薬、
あるいは"魔術道具《マジックアイテム》"のようなもので、
その香を嗅いだ死者が蘇るという伝説がある代物だ。

その製造方法には諸説あり、曰く蓬莱山で採取された香木が原料だとか、
竜涎香と呼ばれる石(実際にはクジラが排出した胆石なのだが)を粉末にしたものを練り固めただとか、
手を変え品を変え現代まで伝わっている。

その中の一つに、"天竺茸"というキノコを使った製造法があり、
それに非常に似た伝説が、ここビルマはアラカン山脈の奥地に伝わってると言うのだ。

程近いマンダレー市にて情報収集を行ったところ、
いくつか類似の話を聞くことが出来た。

用法としては蘇生薬と言うよりも気付け薬に近いもので、
心臓の脈拍が弱まった時に無理やり拍動を強くするカンフル剤のようなものらしいのだが。



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890ミセ*゚ー゚)リ ◆.B6BIc9Qqw:2018/10/04(木) 23:21:49 ID:oHseY2Ho0

ともかく完全な眉唾というわけでも無いという裏取りを終えた俺は、

一度編集長へ国際電話で連絡を取り、
現地通訳を雇いアラカンの奥地へ言ってみることへ決めたのだ。

現地通訳と言っても、中国語、ヒンドゥー語、ビルマ語は日常会話程度なら話せるので、
更にその言語圏から離れた独自の言語グループに属する部族との通訳を探した。

見つかった男は気さくな奴で、相場の2倍近い金額を提示したら
装備含めてすべて準備を整えてくれた。


(‘_L’)「ただしチンドウィン河の上流だけは行かないぞ。あそこには首狩りの風習がまだ残ってる」


その言葉だけは妙に真面目な顔つきだったので、俺は分かったと返した。


しかしいくつかの部族を巡っても、目的のキノコが見つからないとあれば話は別だ。

いくらベトナム戦争に付随して特需景気で日本の経済が潤ったからと言って、
相場の2倍の報酬を支払って(しかも前金で)、何も結果が得られないとあっては
いかに公俗に反するカストリ雑誌の編集長と言えど、お怒りに違いない。

俺は自分のポケットマネーから幾らかを通訳に握らせ、無理やり河の上流へと押しやった。

旅の途中で、奥さんの妊娠の話を聞いていたので金が入り用なことにつけ込んだ形だ。

後は渋る彼の背中を金と言葉で巧みに追い立てて、ついにここまでやってきたという訳だ。



そして彼の忠告通り、あっという間に首狩り族らしき部族に捕えられ、
この木製の檻に閉じ込められるという結果になってしまった。




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891ミセ*゚ー゚)リ ◆.B6BIc9Qqw:2018/10/04(木) 23:22:32 ID:oHseY2Ho0


(´<_` )(なんで拳銃をショルダーバッグに入れてたかなぁ……)


護身用にと準備していた拳銃も、背中にあっては即座に使用できなかった。
更に後ろから棍棒で打ち据えられたとあっては、懐にあっても怪しいものだ。

バッグ含むその他装備品は、通訳共々一通り剥ぎ取られ、
身につけるは服と時計と靴のみといった状況だ。


(´<_` )(これは死んだかもな……)


生命の危機が一歩手前まで来ているという状況はあまりにも現実感が無くて
逆に冷静になってしまう。

これが例えば、首刈り用の斧を携えた屈強な男が、鼻息荒く目の前に立っているという、
一歩手前どころか肩組んで、隣に死がやってきた、なんて状況なら震えもするのだろうが。

俺たちが檻に入れられてからゆうに6時間は経過している現状とあらば
恐怖も薄れ、打開の模索に入るというものなのではないか。



――そこまで考えていると、長の住居の入り口にぶら下がっていた藁の簾が上がった。


恐らく俺たちの処遇が決定されたのだろう。
複数人の男が、族長と思われる老人の後ろに従ってこちらへと向かってくる。

広場の篝火の灯が彼らの浅黒い肌にぬらぬらと反射する。

上半身には何も身に着けておらず、
代わりに紅い染料で描かれた文様が筋肉の上を走っていた。

下半身は獣の革と木の繊維をほぐしたと思われる束で作られた腰蓑で覆われていた。



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892ミセ*゚ー゚)リ ◆.B6BIc9Qqw:2018/10/04(木) 23:23:39 ID:oHseY2Ho0

そして距離が近づくにつれ、彼らの顔が顕になる。
今度は仮面を付けていなかった。


(;゚_L゚)「ひっ……」


俺より先に、通訳が喉の奥を引きつらせた。
俺の頬も引きつった。




異様が"2つ"




1つ目は、族長含む男衆の相貌。
彼らは皆一様に、鼻が無かった。

それは先天的な部族に共通する遺伝的特徴ではなく、
明らかに後天的にその部分を欠損させた、

もっと端的に言えば"削ぎ落とした"ような状態だった。

しかも削ぎ落とした後に、焼きごてでも当てたように、
爛れた皮膚が完全に鼻腔を塞いでいた。

瞬間いくつかの言葉が頭をよぎる。

例えば首長族なんかは、生まれた時から首に真鍮の輪を取り付け、
それの数を徐々に増やすことで頚椎を繋ぐ軟骨を伸ばすという。

他にもアフリカのフンバ族は唇と耳に大きな穴を開け、
そこに輪状のピアスを嵌め込み、年々口径の大きなものに取り替えていく。

他にも割礼の儀式として、男は男性器の包皮を、女は小陰唇を切り取る部族もいる。



しかしそれにしても、この風貌は異常で異様だった。




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893ミセ*゚ー゚)リ ◆.B6BIc9Qqw:2018/10/04(木) 23:24:38 ID:oHseY2Ho0

そしてもう一つの異様。


それは族長の手に握られていた。


獣、のようだった。
犬ほどの大きさの、ずんぐりとした生き物。

造形は、ちょうど昔住んでた借家の前を走る側溝に潜むドブネズミに似ていた。

しかし鼠にしてはあまりにも巨大で、しかも体毛が殆ど生えていなかった。
全体的に薄桃色の皮膚に覆われており、その下には血管や臓器が透けて見えている。
皮膚自体は弛んでいて、何本もの深い皺が刻まれているようだ。

一番奇妙なのが、頭頂部から背中の半分程度まで
人間の髪に似た体毛が生えていて、それが美しい黒髪を思わせる直毛であることだった。

黒髪の帳を割くように鼠特有の吻口が伸びていて、
その先にはげっ歯類であることを象徴するように、上下に対になった大きな歯牙が伸びていた。

尻尾は巨大なミミズか蛇のようでもあり、その終わりの所を族長は握っている。


川 - 川「……」


鳴き声一つ上げずにぶら下がっているそれは、死んでいるものだと思ったが、
時折鼻先をぴくぴくと扇動させるので、生きていることが分かった。


(;゚_L゚)「ス……、ス=クゥ……」


ふいに、背後の通訳が声を上げた。
振り返ると、後ずさるようにして、檻の奥に背をピッタリとつけた彼が
目をコレでもかと見開いて、獣を凝視する姿がそこにあった。


(´<_` )「ス=クゥ?」


俺は通訳の言葉をそのまま返す。
"ス=クゥ"が何を指すのか知りたかった。ビルマ語には無い言葉だ。



.

894ミセ*゚ー゚)リ ◆.B6BIc9Qqw:2018/10/04(木) 23:25:20 ID:oHseY2Ho0


(;゚_L゚)「あの……生き物……ス=クゥだ……」

(´<_` )「そ――」


通訳の言葉に俺が返すよりも早く、彼は俺の肩を掴んで小声ながらも極まった声でこう言った。


(;゚_L゚)「アンタッ! 絶対嘘を吐くなッ!」

(;゚_L゚)「ス=クゥは嘘を見破るッ!」

(;゚_L゚)「いいかッ!? 嘘を吐いたら、終わりだッ! 終わりなんだッ!」


――訳が分からない。

しかしその真に迫った表情と口ぶりに、俺は首を縦に振る他無かった。



カンッ!


硬質な音が背後に響き、俺は再度広場の方へ向き直る。
族長が獣の尻尾を握る腕とは反対に持った杖で、檻を叩いたのだと分かった。


( ФωФ)「……」


鼻がなく、のっぺりとした顔だが、唇だけが前に突き出ている。

目の上下には上半身に走る文様と同じ色をした染料で隈取がされており、
他の男衆にそれが無いのを見るに、恐らくは長の証なのだろう。



.

895( ^ω^) ◆DD/QFCGk1c:2018/10/04(木) 23:25:42 ID:iARF2BBY0
( ^ω^)「支援だお!」

(;^ω^)「投下ラッシュ来そう……僕今から風呂と飯食うから一時頃に投下しに来るお!」

896ミセ*゚ー゚)リ ◆.B6BIc9Qqw:2018/10/04(木) 23:26:05 ID:oHseY2Ho0

それと先程から気になっていたのだが、
彼らがこちらに近づいてきてから、妙な芳香が漂っているのだ。

その香りは、決して不快なものではなく、むしろ芳しいといって良いものだった。

紅梅の香りに、南国特有の果実の甘く粘度の濃い芳香を混ぜ合わせたような
鼻腔の奥にへばり付く甘ったるい香りだ。

気になってから、その出処が知りたくて、何度も鼻をヒクつかせてしまう。

数度ほどそうしていると、族長がもう一度杖で檻を叩いた。


( ФωФ)「――*************** チイッ ******************** チイッ **************** シィー」


何を言っているのかは分からない。
言語グループが完全にビルマ語とは異なっているようで類推すら難しかった。

文の合間に挟まる舌打ちは、日本語で言うところの句読点にあたるものなのだろう。

最後の歯の隙間から息を漏らす音で、自身の発信の終了を示す。

この特徴はアマゾン奥地の先住民も持ち合わせる"タンギング"に近い。



ともかく言葉が分からなければ反応のしようも無い。

俺は族長の言葉に答えること無く、後ろを振り返る。

当然通訳の役目を果たしてもらおうと考えた訳だ。

案の定通訳は震えていたが、俺の視線で求めているものは伝わったらしく、
戦慄く唇を開き、長の言葉を翻訳し始めた。

897ミセ*゚ー゚)リ ◆.B6BIc9Qqw:2018/10/04(木) 23:26:56 ID:oHseY2Ho0

(;゚_L゚)「檻の外に、腕を出せ――と」

(´<_` )「……腕を切り落とすのか?」

(;゚_L゚)「いや、違う」

(;゚_L゚)「今から行われるのは、"審査"だ。"審判"と言い換えてもいい……」

(´<_` )「理解は出来ないが、憶測は出来るよ」

(´<_` )「ともかく、"嘘"を吐かなければいいのだろう?」

(;゚_L゚)「そうだ……絶対に、嘘を吐くな……。ス=クゥに……気づかれるな……」


そこまで言うと、通訳は再び抱えた膝の間に顔を埋めた。

俺は檻の格子の隙間から右腕を外に出した。

それを見た族長は、獣――ス=クゥをそっと地面に下ろしてやった。
ダブついた皮膚が地面をなぞる。頭頂部から伸びた黒髪を引きずるようにして
二度三度その場を嗅ぎ回るみたいにグルグル回ってみせた。

やがて、俺の存在に気がついたのか、鼻先が俺の顔へと向けられる。
上を向いた事で、ス=クゥの顔前面を覆っていた髪が横に流れた。


川 ゚ -゚)「……キュゥ」


小さく鳴いた。
げっ歯類特有の前に伸びた鼻と吻なのは変わらないが、
その瞳だけは妙に"人間"を思わせた。

それはきっと、動物には似つかわしくないパッチリとした二重瞼と、睫毛がそうさせるのだろう。

例えばキリンなんかも睫毛を多く湛えているが、
ス=クゥの睫毛は、本当に人のようにある一定の感覚で整然と並んでいるのだ。

それが酷く気持ち悪くて、俺は吐き気を覚えた。

これは人特有の傲慢なのだろうが、
人類の造形というものは神から与えられた唯一無二のものであると意識せずとも考えているものだ。

人に近いサルやチンパンジーでさえも、全く同じ造形の器官は存在していないと言っていいだろう。



.

898ミセ*゚ー゚)リ ◆.B6BIc9Qqw:2018/10/04(木) 23:28:06 ID:oHseY2Ho0

しかし、目の前の獣はそうではない。
その目と、黒髪は、紛れもない人間のものであると俺の脳は認識してしまっている。
それが得も言われぬ不快感と吐き気を、澱の様に意識の底から舞い上がらせるのだ。


川 ゚ -゚)「……」


腕を引っ込めたくなる気持ちに抗うように、俺は下唇を噛みしめる。

そうしたのはこれから始まるであろう"審判"とやらが俺たちの命運を握っていることを確信してるからであり、
そして男衆が俺たちを射抜く視線があまりにも鋭すぎたという点に尽きる。


( ФωФ)「……」

(´・ω・`)「……」

( ^ω^)「……」


どいつもこいつも鼻がない。
その理由が、目の間の獣とリンクしている気がしてならない。
俺は身震いした。


ス=クゥは俺を見上げたまま、ゆっくりと差し出された右腕に近寄ってくる。
そのまま濡れた鼻先を俺の腕の内側に沿わせるように匂いを嗅ぎ始めた。

ゴム質の皮膚は森の湿気でうっすら濡れていて、
生々しい感触と、青魚の表面のようなぬめりを感じた。

鼻息が腕にかかる度に、そこに鳥肌が立つ。


(´<_` ;)「――――ッ!」


思わず顔を背けそうになるが、その隙にこの生き物が、俺の腕に
どんなことを仕掛けてくるのかと思うと、目を逸らす訳にはいかなかった。


( ФωФ)「――*************** チイッ  **************** シィー」


無表情のまま、族長は俺に向かって何事かを語りかける。
当然理解の出来ない俺には、後ろを振り向き通訳を見ることしか出来ない。

899ミセ*゚ー゚)リ ◆.B6BIc9Qqw:2018/10/04(木) 23:28:48 ID:oHseY2Ho0

(;‘_L’)「――お前たち……つまり俺たちは、この部族に害をなすものか、と言っている」

(´<_` )「それは――もちろん"NO"のつもりだが、どう答えればいい?」

(;‘_L’)「"YES"はヤック、"NO"ならクパ、だ」


ヤック、クパ、共にこの辺りの部族の言語グループとは異なる。
アラカン山脈だとナガ族が有名だが、言語はインド系譜を引いているはずだ。
しかし部族の言葉は、どちらかと言うと古代マヤ文明を気づいたアステカ族に近いのではないだろうか。

ともかく長々落ち着いて彼らの出自を探っている時間は無いだろう。
俺は族長の眉間に皺が寄る前に、答える。


(´<_` )「――クパ」


ぴちゃり。

予想していなかった感触が手の甲あたりに生じて、即座にそちらを見る。


川 ゚ -゚)「……」ペロペロ

(´<_` ;)「――ぐ」


ス=クゥが俺の手の甲に舌を這わせていた。
ぶよついたその質感は、陸上の生き物というよりも海の軟体生物に近い。

小さく短い舌ではあるが肉厚で、唾液をふんだんに纏っているせいで
舐められた箇所には蛞蝓が這いずったような跡が残った。




.

900ミセ*゚ー゚)リ ◆.B6BIc9Qqw:2018/10/04(木) 23:29:48 ID:oHseY2Ho0


『嘘を吐くな』


先程の通訳の言葉が蘇る。
この奇妙な生物はこうやって人間の言葉の真偽を確かめることが出来ると言うのだろうか。

確かに嘘を吐いたことによって、その緊張から発汗量が変わる人間もいるだろう。

厳密に検査すれば、その時の分泌物の成分も真実を口にしたときとは異なるのかもしれない。


しかしこの獣がそんな上等な機能を持ち合わせているものだろうか。

そもそも生物として生きていく上で、
ネズミ程度の存在がその機能を有効に活用する場面などあるのだろうか。


次々に疑問符が湧いてくるが、
それもすぐに不愉快な舌の感触に塗りつぶされていく。


( ФωФ)「――********** ッチ ********************** ッチ *********** シィー」

(´<_` )「……今度は何て?」

(;‘_L’)「――お前に家族はいるのか、だと」


俺は檻を見下ろすように立つ族長の顔を見る。

櫓の炎を背景にしているせいで細やかな表情は読み取れないが、
我々を捕えたときのような怒りは少なくとも和らいでいるように思える。





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901o川*゚ー゚)o[文戟中] ◆r65.OITGFA:2018/10/04(木) 23:30:05 ID:wVYKCCbw0
みんなお疲れ!
キューちゃんも投下宣言だけさせてもらいます!

902ミセ*゚ー゚)リ ◆.B6BIc9Qqw:2018/10/04(木) 23:30:53 ID:oHseY2Ho0

それでこの質問だ。


最初に思ったのは身代金に関すること。

家族の有無を問いただし、家族がいるようであれば、そいつに身代金を請求する。

この部族にとっては思わぬ臨時収入となる訳だから、怒りも収まったという説。


しかしこの広場から垣間見える文明レベルから察するに、
自給自足の狩猟生活、日本でいうと縄文時代程度の知見しか持ち合わせていないらしい彼らに
果たして、旅行者を捕えて身代金を要求するような上等な真似が出来るのかという疑問も湧く。



次に考えられるのが、"家族"という言葉に、"仲間"のようなニュアンスが含まれているという説。

つまりは彼らは我々のようなある意味侵略者、簒奪者のような存在に対し、
伏兵がいるのではないかと訝しんでいるのではないかということだ。

実際通訳と言えど、相手の言葉に沿って完全な意味合いで言葉を訳せる訳じゃない。

そこには意訳や、民族間で共通しない言語に無理やり意味を持たせると言った事も生じるはずだ。


しかしこちらの説も、族長の妙に穏やかな表情に否定されてしまうだろう。


(;‘_L’)「はやく答えてくれ……」


哀願とも取れる悲痛な顰めきが背後から投げられる。

この沈黙に俺ではなく通訳のほうが先に音を上げてしまった。




.

903ミセ*゚ー゚)リ ◆.B6BIc9Qqw:2018/10/04(木) 23:31:50 ID:oHseY2Ho0

俺は家族について少し考える。


父は俺が母の腹の中にいる時に、太平洋戦争に出征し、サイパン島で死んだ。
母はつい最近病死した。

姉も数年前に息子を産む際に死んだし、当時赤子だった妹は終戦直後に餓死した。


そうなると、必然思い出されるのは、厄介者の顔だった。

俺には双子の兄がいる。

本来なら忌み子として縊り殺されるはずだったと聞いている。
産婆が奴の首に手をかけるより早く、奴は産婆の指を噛み千切り、
産婆が悲鳴を上げて後ろ手に倒れると同時、乳房めがけて母の肢体を駆け上がったという話だ。

それ故、なのか。

奴は幼い頃から訳の分からぬ性質を持っていて、
二・三日居なくなっては『天狗と将棋を差していた』だの『ジムグリ達の巣を埋めていた』だの
終戦間際の閉塞感など露知らず気狂いじみた言動を繰り返した。


家を出たのは俺の方が早かったが、
その後奴も独り立ちをしたようで、祓い屋稼業を始めたと聞いた。

それも霊や妖夷の類ではなく、『《狂神"クルガミ"》専門』という
これまた異端の道をひた走るような隙間産業だ。

何でも終戦後の農地改革に伴って、土地神が信仰を失った結果、
狂って祟り神になる事案が近年増えているのだという。

それを物理と科学と脳髄力学で始末をつけるという仕事らしい。

これは数年前に本人から聞いた話だ。

その時に、俺は奴との縁を切った。

意外なことにそれは俺からではなく、奴から言い出したことだ。


( ´_ゝ`)「これから祓う狂神は実に厄介でな、下手打ったら親族まで殺されかねん。だから一応な」


そういって、俺含めた家族全員の家々を回り、奇妙な儀式を持って奴は俺達と縁切りをしたのだ。


.

904ミセ*゚ー゚)リ ◆.B6BIc9Qqw:2018/10/04(木) 23:32:30 ID:oHseY2Ho0

そういった背景を鑑みるに、今現在俺に家族はいないということになる。
悲しいことに独り身だしな。


俺は指先を舐めるス=クゥの鼻先を避けるように回しながら、


(´<_` )「ヤック」


と答えた。


瞬間、指の先に強烈な痛みを感じて、俺は檻の外に出していた腕を引っ込めた。
中指の先端が紅く染まり、鮮血が湧き出すようにして手の甲の方まで垂れている。
最初はス=クゥに食いちぎられたのかと思ったが、そうではなかった。


――爪だけ剥がされていたのだ。


俺は痛みに顔を歪めながら檻の外の獣に目を向ける。

上下の前歯の間に、確かに半透明の板が咥えられていた。


(;゚_L゚)「――嘘を吐くなと言ったのにッ!」


怒声とも、悲痛な叫びとも取れる声と共に、通訳が俺に飛びかかってくる。
肩を地面に押さえつける形で馬乗りになり、今にも殴りかからんという形相で俺を睨む。


(´<_` ;)「待て、嘘は吐いていないッ!」

(;゚_L゚)「それならなんでス=クゥに噛まれた!?」

(´<_` ;)「分からんッ! そもそもあんな獣に何が分かるんだッ!」


そこから始まる俺達の口論を、硬質な音が中断した。

再度族長が杖で檻を叩いたのだ。

半狂乱だった俺たちは、音の方向――族長に顔を向ける。

今まで見せることのなかった満足げな笑みがそこにはあった。

905ミセ*゚ー゚)リ ◆.B6BIc9Qqw:2018/10/04(木) 23:33:15 ID:oHseY2Ho0

( ФωФ)「――******** シィー」

(;゚_L゚)「――う、嘘だろ……」

(´<_` ;)「奴さん、何だって?」

(;゚_L゚)「俺たちを、"客人"として迎えるって……」

(´<_` ;)「――助かったのか……?」

(;゚_L゚)「分からない……」


まだ馬乗りの体勢のままだった通訳と、俺は顔を見合わせる。
爪の剥げた中指の痛みが再度主張を始める頃には、檻の扉が開かれ、俺達は開放されるに至った。

呆然と円形広場の中心に立ち尽くす俺たちに、
部族の男たちが寄ってきて、すぐに装備品各種を返却してくれた。

とりあえず俺は背負鞄からサスペンダー式ホルスターと拳銃を取り出し、
ベストの内側に装着する。

無骨な質感が俺の浮いた肋を圧迫するが、それで逆に安心感を得る。

ついでにハンカチを取り出すと縦に裂いて簡易包帯として、
未だ鮮血の滴る中指にきつく巻いた。


俺たちは族長の導きのままに、一際大きい住居の裏手にやって来る。

そこには木で組まれた小型の高床式住居があった。
東南アジアで見られる高温多湿で降水量が多い環境に対応できるように作らる様式だ。

日本で言うと、東大寺の裏手にある正倉院の校倉造なんかに近いのではないだろうか。
あるいはインドネシアの奥地にあるブンブンと呼ばれる簡易住居にも似ている。




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906ミセ*゚ー゚)リ ◆.B6BIc9Qqw:2018/10/04(木) 23:34:07 ID:oHseY2Ho0

( ФωФ)「*********** ッチ ************** シィー」


尚も好々爺の如き笑みを湛えたまま、族長は杖の先であの建物を指す。


(;‘_L’)「あそこに泊まれ……と」


通訳は族長の笑顔に返すようにひきつった笑みを浮かべながら俺にその内容を説明する。
俺がス=クゥに噛みつかれたにもかかわらず、厚く持て成すような空気に、
なにか裏を感じずにはいられない、そんな表情だ。

俺もこの展開にすべて納得がいっている訳じゃない。
それでも、すぐに処刑されないことと、懐に護身用の武器があることで、
かなり冷静さと広い視野を取り戻してきている。

ともかく目的は"天竺茸"に関する伝承の蒐集だ。

それに加えて、俺はあの『ス=クゥ』も気になり始めている。
オカルトカストリ雑誌の記者として長年やってきた経験と勘が、あの獣と目的の茸の繋がりを示唆していた。


( ФωФ)「*********************** ッチ ************************** ッチ ******** ッチ *********** シィー」

(;‘_L’)「……今日は早く寝ろ、と。何か聞きたいことがあるなら、明日私の家に来い、と言っている」


通訳は雇い主である俺に判断を委ねるような顔をしながらこう伝えた。

気持ちとしては一刻も早くこの場を去り、チンドウィン河を下って元の街へ帰りたいのだろうけど、
あいにく日も完全に落ちた今の時間に、アラカン山脈の大森林を下るのは逆に命を落とす危険が高い。

その二律背反がよく表情に現れていた。


(´<_` )「――ともかく、好意に甘えるとしよう。今後の進退は、一眠りした後に考えよう」


俺はそれだけ言うと、住居へと伸びる木製の階段を上がった。

907ミセ*゚ー゚)リ ◆.B6BIc9Qqw:2018/10/04(木) 23:34:48 ID:oHseY2Ho0

( ФωФ)「*********** シィー」


階段の中ほどで、族長の言葉が後頭部に投げられた。


(´<_` )「……何だって?」

(;‘_L’)「村の掟で、夜は出歩くな、と」


それを伝える通訳の顔は青ざめていて、
恐らくは、出歩いた場合の処遇に関しても含まれていたものだと察する。
少なくとも郷に入っては郷に従えが取材の基本だ。

俺は夜に出歩かなという旨を心に刻む。


入り口には他の竪穴式住居と同じ様に藁の簾が掛かっていて、
腕でそれを押し上げるようにして中に入る。

中は8畳程度の広さがあり、ベッドの代わりなのか、藁束が乱雑に敷き詰められていた。

右手と左手それぞれに窓があるものの、障子紙のような薄い膜で閉じられている。
しかし外の櫓からの淡い光と月光が、それぞれ透過し、室内をうっすらと照らしている。

俺はその障子紙のような膜を指でなぞる。
そのぶよぶよとした質感に覚えがあった。




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