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( ^ω^)文戟のブーンのようです[3ページ目]
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≪とりあえずこれだけ分かっていれば万事OKなQ&A≫
Q.ここってどんなスレ?
A.お題に沿った作品を指定期間内に投下
投票と批評、感想を経て切磋琢磨するスレ
Q.投票って?
A.1位、2位とピックアップを選ぶ
1位→2pt 2位→1pt で集計され、合計数が多い生徒が優勝
Q.参加したい!
A.投票は誰でもウェルカム
生徒になりたいなら>>4にいないAAとトリップを名前欄に書いて入学を宣言してレッツ投下
Q.投票って絶対しないとダメ?
A.一応は任意
しかし作品を投下した生徒は投票をしないと獲得ptが、-1になるので注意
Q.お題はどう決まるの?
A.前回優勝が決める。
その日のうちに優勝が宣言しなかった場合、2位→3位とお題と期間決めの権利が譲渡されていく
Q.使いたいAAが既に使われてる
A.後述の「文戟」を参照
詳しいルールは>>2-9を参照してください!
また雰囲気を知りたい方は
スレ1
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/21864/1531744456/
スレ2
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/21864/1533540427/
へGO!!
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《本スレの目的について》
このスレは、様々な作者が匿名、且つ短いスパンで作品を投下しあい、順位を決めていくという、
短期的文芸品評会の運営を目的としています。
こう書くと堅苦しいですが、簡単に言えば『匿名で作品投下して、順位決めて遊ぼうぜ!あわよくば感想とか批評とかし合おうぜ!』
という文筆力の研鑽を第一としております。
基本的に、このスレでの投下では皆さんが今まで築いてきたキャリアなどは捨てていただいて、
このスレのみで通じる新たな価値観を獲得していただければと考えております。
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《生徒登録》
創作学園では新規生徒を随時募集しております。
生徒登録では、名前欄に『好きなAAキャラの顔文字#トリップキー』で書き込みをしていただきます。
その際に、意気込みなどを合わせて書き込んでいただければ、より盛り上がると思います。
また、選択したAAキャラに合わせてのロールプレイ等も推奨しておりますので、
本当にこのスレを学園、あなたをその学園に通う生徒と見立てつつ、楽しく遊んで頂ければ幸いです。
然しながら幾つかの注意事項が御座います。
注意その1:過去に使用したことのあるトリップキーは使用禁止
このスレでは、今までのキャリアは見えない状態で競い合うことを目的としておりますので、
作者が特定できてしまうようなトリップキーの使用はお控えください。
注意その2:AAキャラの選択について
基本的には生徒登録が早かった人が、そのAAキャラを獲得したものとさせて頂きます。
また、のような、名前欄に書き込むことのできないAAは、『でぃ』などの名前での代用も可能です。
注意その3:総合やツイッターでの作者バレ禁止
注意その1と同述ですが、このスレでの生徒《サクシャ》とブーン系作者とを完全に切り離したいので、
自分が特定されるような書き込みをするのはお控えください。
Twitter等で参加を表明すること自体は止めませんが、自分がこのスレに投下した作品を書き込んだり、
匂わせたりする行為も禁止になります。
上記行為が発覚した場合には、【退学】措置もあり得ますので、ご注意ください。
現在の生徒登録状況は>>4の通りになります。
では、このスレの流れをご説明致します。
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《投票期間》
投下期間が終了した時点で、その日から【3日後】まで、【投票期間】とします。
基本的に、第一位と第二位、それから気になった作品(第一位、第二位も選択可)を選んで頂き、
書き込んで頂ければと思います。
第一位は2ポイント、第二位は1ポイントとして集計致します。
もちろん投下作品全てに順位をつけていただいても構いませんが、
ポイントになるのは一位と二位のみであること、ご了承ください。
また、投票時に、寸評等も加えていただけると、互いの研鑽になると思いますので、
是非積極的にお書きください。もちろん面倒くさいなら、順位のみの投票でも構いません。
また、品評会に作品を投下した作者は、必ず投票を行ってください。
投票を行わなかった場合、勝者確定後、1ポイント減点とさせて頂きます。
以下に基本テンプレを用意致しますので、こちらをご使用ください。
《投票》
【第一位】タイトル名
【第二位】タイトル名
【Pick up】タイトル名
【寸評】
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≪登録生徒及びポイント獲得状況≫
・【5P】从 ゚∀从 ◆ogHcBy0QF6
・【1P】(*゚ー゚) ◆4hjDojWtys
・【0P】▼・ェ・▼ ◆a7eydlwZI.
・【1P】( ^ω^) ◆DD/QFCGk1c
・【8P】(・∀ ・) ◆evfltpoFGo
・【7P】(´・_ゝ・`) ◆lqtlYOyuz2
・【0P】<_プー゚)フ ◆AwmE0lJ56w
・【0P】( ><) ◆wHcop5D7zg
・【1P】('(゚∀゚∩ ◆lDflfAeUwE
・【0P】('、`*川 ◆tKLHNhuUIo
・【0P】ミセ*゚ー゚)リ ◆.B6BIc9Qqw
・【5P】( "ゞ) ◆x4POrpflHM
・【5P】J( 'ー`)し ◆nL4PVlGg8I
・【1P】(-_-) ◆q/W4ByA50w
・【5P】ζ(゚ー゚*ζ ◆ob8ijO4RO6
・【2P】爪'ー`)y‐ ◆IIES/YYkzQ
・【8P】( ´_ゝ`) ◆GmbTh14.y.
・【0P】('A`) ◆0x1QfovbEQ
・【2P】(-@∀@) ◆q5Dei.01W6
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《勝者》
投票期間終了後、ポイントの集計を行います。
そして、合計ポイントが一番多かった生徒を、その品評会での【勝者】とします。
勝者には、【次回品評会のお題】及び【投下期間】を決める権利が与えられます。
ただし、投下期間は【最短:一週間】【最長:一ヶ月】の間で設定してください。
また、お題及び投下期間の設定は、勝者が決まった日から【24時間以内】に行ってください。
24時間以内に設定が行われない場合、設定の権利は第二位の方へと移ります。
その後、24時間経過ごとに、第三位、第四位……と権利が移行します。
しかし、それで獲得したポイントなどが消える訳ではないので、ご安心ください。
そして、この品評会で稼いだポイントは、【トリップに紐付けて管理】されます。
つまりは、第二回品評会、第三回品評会と参加し、投票されることで、
皆さんが登録したトリップに、そのポイントが累積していくことになります。
このポイントは、後述の【拝成十傑評議会】を決める際に重要になりますので、
是非多くのポイントを稼げるように品評会にご参加ください。
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《文戟》
さぁ、いよいよこのスレの目玉とも言えるポイントの説明です。
貴方達には、それぞれ【お気に入りのAAキャラ】がいるはずです。
でも、そのキャラを既に誰かが登録してしまっている……。
そんな時、あなたはそのAAキャラを使用している生徒に【文戟】を挑むことができます!
【文戟】を行う際に必要になる手順としては、こんな感じです。
294 名前:ミセ*゚ー゚)リ◆y7/jBFQ5SY[sage] 投稿日:2018/07/15(日) 21:12:15 ID:EVMxAmGI0
(゚、゚トソン◆QyGRlT0wZkに【文戟】を申し込む!!
295 名前:(゚、゚トソン◆QyGRlT0wZk[sage] 投稿日:2018/07/15(日) 21:15:34 ID:6pHFm7UE0 [2/2]
いいですよ。じゃあお題は【蝉】、投下期間は【2018年07月24日23時59分】まででヨロ
【文戟】では、挑まれた側が、お題と投下期間を決定できます。
投下期間に関しては、品評会と同じく、最短一週間、最長一ヶ月で設定できます。
また、文戟中は名前欄に[文戟中]を付け足してください。
通常の品評会投下と区別する目的です。
また、双方の合意があれば、品評会に両名参加し、得票数での決着も可能です。
その場合も、名前欄に[文戟中]の付け足しをお忘れなく。
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では、【文戟】の勝敗によって何を得ることが出来るのかをご説明します。
【挑戦者】
挑戦者は、文戟を挑んだ相手に勝利した場合、その相手が使っているAAキャラクターを奪って使用することが出来るようになる、
あるいは、相手が持っているポイントの【半分】を得ることが出来ます。
AAキャラを奪った場合、奪われた方は他の未使用AAを使用していただくことになります。
もちろん挑戦者との入れ替えでも構いません。
【防衛者】
挑戦を受けた側が勝利した場合は、相手が持っているポイントの【全て】を得ることが出来ます。
また、相手が1ポイントも所持していない状態の場合、相手は【退学】となり、
顔文字AA及び、トリップの登録が抹消されることになります。
このように、お気に入りのキャラを奪ったり、ポイントを奪ったりして楽しむのが【文戟】になります。
【文戟】を挑まれた方が、それを受けるかは自由としますが、なるべく受けていただけると、
面白くなるのではないでしょうか。
基本的なルールは以上になります。
分からない事があれば気軽にスレに書き込んで下さい!
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【第三回品評会お題及び投下期間】
【お題】『ホラー』
【投下期間】『2018年8月27日00時00分〜2018年9月4日23時59分迄』
皆様奮ってご参加ください!
また新規生徒登録は随時行っておりますので
是非宜しくお願いいたします。
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まあ早速レス4と5の順番を間違えたがこんなもんだろう
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正しい成績はこっちだね
【累計成績】
・【22P】从 ゚∀从 ◆ogHcBy0QF6
・【1P】(*゚ー゚) ◆4hjDojWtys
・【0P】▼・ェ・▼ ◆a7eydlwZI.
・【8.5P】( ^ω^) ◆DD/QFCGk1c
・【11P】(・∀ ・) ◆evfltpoFGo
・【16P】(´・_ゝ・`) ◆lqtlYOyuz2
・【0P】<_プー゚)フ ◆AwmE0lJ56w
・【0P】( ><) ◆wHcop5D7zg
・【1P】('(゚∀゚∩ ◆lDflfAeUwE
・【1P】('、`*川 ◆tKLHNhuUIo
・【0P】ミセ*゚ー゚)リ ◆.B6BIc9Qqw
・【8P】( "ゞ) ◆x4POrpflHM
・【3.5P】J( 'ー`)し ◆nL4PVlGg8I
・【1P】(-_-) ◆q/W4ByA50w
・【6P】ζ(゚ー゚*ζ ◆ob8ijO4RO6
・【2P】爪'ー`)y‐ ◆IIES/YYkzQ
・【9P】( ´_ゝ`) ◆GmbTh14.y.
・【0P】('A`) ◆0x1QfovbEQ
・【3P】(-@∀@) ◆q5Dei.01W6
・【0P】o川*゚ー゚)o ◆r65.OITGFA
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はーミスりまくりじゃねえか…
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いいんだよ大体で。行動することが大事!
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('A`) それじゃあ投下するわ
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「あの人はこんな事をする人じゃなかった」とは、いい加減聞き飽きた台詞で、
この手の依頼では、ほとんど常套句だった。
そんな内心の声を電話口に出さぬよう、流石兄者は注意深く話を続けた。
( ´_ゝ`) 「しかし、警察はどのように?」
「警察はあてになりません…だから貴方にこうして…」
( ´_ゝ`) 「なるほど…詳しい話はそちらに伺ってからで、よろしいですか?」
( ´_ゝ`) 「私の方でも少し調べてから向かいます」
「……どのくらいかかりますか?」
( ´_ゝ`) 「そうですね、今からだと…三日後になりますが」
「わかりました、住所は先程の通りです…お待ちしております…」
( ´_ゝ`) 「確認しました、では三日後の正午に…」
通話が切れ、ペンとメモ帳を放り投げた兄者の口から、ため息が漏れる。
いつになっても依頼の電話というのは、どうも好きになれない。
特に、向こう側で狼狽した依頼人にすすり泣かれたりすれば、なおさらだった。
-
( ´_ゝ`) 「さて、どうしたものか…」
スチールデスクの上に足を投げ出してふんぞり返り、
兄者はあらためて今回の話について考えを巡らせる。
依頼内容は、自殺した夫の調査だった。
現実の手続きにのっとった捜査は各種の司法機関に任せるとして、
兄者の仕事はそれらに不満を抱いた依頼人の要望を、
非現実的な方面から調査することにある。
つまり、悪霊だとか、呪いだとかそういう。
千年紀を二つ数えた現代、この国でそういう話を大真面目にする人間は少ない。
正気の者なら特に。
( ´_ゝ`) 「……」
電話越しにも夫を亡くした夫人の疲弊は明らかで、どうにも物憂い。
祟りだ何だとわめく、ご婦人方の依頼は何度か経験したが、それとは少し異なる。
-
( ´_ゝ`)y‐ カチッ
( ´_ゝ`)y‐~
使い捨てライターでタバコに火をつけ、兄者は薄汚い事務所の天井を見上げる。
依頼への倦怠は次第に大きくなり、兄者に自身の稼業を内省させるに至った。
巷で善人を絡め取る霊媒師とどう違うのかと問われて、それほど違いはない。
ことに共通するのは、需要があるからこういう商売も成り立つということで、
「人の心はまこと脆いものだ。各々信じたいものしか信じようとしない。
そこに俺達は信じたがっていたものを差し出す。なにか悪いことがあるか。
全ては需要と供給だ。」
初対面の兄者にそう、うそぶいたのは、彼をこの業界に引き込んだ師匠だった。
(-@∀@) 「初歩的なミクロ経済学さ…」
( ´_ゝ`) 「……」
ラムネ瓶の底を二つ並べたような眼鏡が当時から気に入らなかった。
そんな師匠と疎遠になってから、もうずいぶんと経つ。
-
もっとも、兄者にしてみたところで、依頼人達の話を信じてはいなかった。
痕跡からそれらしい話を創り出して、彼らが信じたがっているものを差し出す。
それがこの仕事だ。
( ´_ゝ`) 「チッ…」
( ´_ゝ`) 「 ……」
(; ´_ゝ゚) 「アッチイ!」
舌打ちで咥えタバコの灰が崩れ、燃えカスが胸に落ちて兄者は飛び上がる。
(; ´_ゝ`) 「ちょくしょう…シャツに穴が空いちまった…」
(; ´_ゝ`) 「気に入ってたのに…」
安物の回転椅子に座り直し、いつしか流れ着いた過去を頭から追い払う。
我に返って兄者が視線を戻すと、今まで背景となっていた室内が改めて目に入った。
-
九畳ほどの部屋は雑然としていた。
デスクを囲むように備え付けられた書類棚は満杯で、
収まりきらなくなったファイルがあたりに積み上げられては、
そこかしこで崩れている。
事務所めいた部屋は同時に生活感が見て取れ、
脱ぎ捨てられた服が応接用の長椅子に掛かり、弁当の容器がゴミ箱に溢れて、
しばらく客足が遠のいてることは明らかだった。
結局、この依頼を逃す手はないのだ。
三日後の約束を前に、兄者は焦点を合わせ直す。
( ´_ゝ`) 「んー……」
一つ伸びをして、背後の冷蔵庫から氷を取り出し、小さな火傷痕に当てる。
それから兄者は、依頼を受けるか判断するための予備調査に取り掛かった。
薄暗い居間兼事務所は他に人影もなく、窓の外では夕闇が街に広がっていた。
-
兄者が依頼人の話の裏を取るまで、そう時間はかからなかった。
戸籍謄本の閲覧を請求するまでもなく、
地方紙のバックナンバーに、地元の名士の跡取りとして死亡記事が出ていた。
内藤舞雲。事故死。
( ´_ゝ`) 「ん…確か自殺だという話だったが…」
メモを確認しながら認識をすり合わせていく。
それ以上の詳細は載っておらず、確認できたのは死の状況の齟齬だけだった。
地方紙や依頼人がどう語ろうと、警察が自殺と判断したものを覆そうなどとは考えない。
、、、、、
当人が自殺に至った理由を差し出すのが、兄者の仕事だった。
親類縁者や交友関係を洗ううちに、事件とは別の疑問が兄者の中で大きくなっていた。
どうやら依頼人の夫は資産家の一族であるようで、
特にその祖父は豪商として内外に名を馳せたようだ。
( ´_ゝ`) (…そんな家の人が何故、俺に依頼を?)
それは些細な疑念だったが、少し気にかかった。
しかし、ここで出来ることは限られている。
最低限の資料を集め、深夜、日をまたいだ頃には兄者は荷造りを終えた。
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翌日、兄者は朝一で依頼人の地元へ向かった。
近場のビジネスホテルを当座の滞在先に選び、故人や家の評判、噂を探る。
町での評判は事前に調べたものと概ね一致したが、
近隣の者の話では、どうやら家族間でそれなりの不和があり、
故人は放蕩の散財家だったという。
( ´_ゝ`) (名家の確執と外様の嫁さんか…)
( ´_ゝ`) (それで有力なツテが使えずに俺のところへ話を持ってきたのかな…?)
それにしても、と兄者は自分の稼業を思い出した。
フリーのライターと偽って、二日に渡り聞き込みや資料集めを行ったが、
この日数では大したものは出てこなかった。
特に、夫妻の人柄や家の確執、夫の浪費癖などについて語る者はあっても、
自殺に関しては皆一様に口を閉ざした。
( ´_ゝ`) (死亡時の状況さえつかめないとは…)
土地柄か、余所者にそのような話を進んでする者はなかった。
これ以上は県警や検案を行った医師、発見者等にあたる必要があったが、
それは正式に依頼を受けて書類を交わし、法的な立場を固めるてからだった。
兄者は久しぶりのフィールドワークで疲れた体を休め、早めに床に入ったが、
明日の依頼人との対面を考えると、なかなか寝付けなかった。
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明くる日の正午。
流石兄者は依頼人の邸宅の前に立っていた。
( ´_ゝ`) 「大きいな ……」
代々資産家だというのだが、そうなのだろう。門構えからして違う。
その門から母屋までも、かなりの距離があった。
手入れが行き届いた前庭を抜け、ようやく玄関口に立つと、
扉が開いて一人の女性が兄者の前に現れた。
ξ゚⊿゚)ξ 「どうぞ…」
内藤ツン、三十一歳。今回の依頼人だった。
故人の葬儀が執り行われてからまだ日は浅く、そこかしこに片付け残された跡がのぞく。
それは依頼人である夫人の表情のうちにも見て取れた。
化粧もそこそこに、やつれた顔は兄者が知る年齢と、おおよそ一致しない。
小部屋ほどはあろうかという玄関を後にして、兄者は応接室に通された。
挨拶もそこそこに、本題に入る。
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( ´_ゝ`) 「今回は亡くなられた内藤舞雲さんの調査ということで、よろしいですね?」
ξ゚⊿゚)ξ 「…はい」
( ´_ゝ`) 「こちらでも下調べはしましたが、事件の経緯を伺ってもよろしいですか?」
ξ゚⊿゚)ξ 「わかりました…」
依頼人は絞り出すように事のあらましを語り始めた。
夫の不審な様子にツンが気づいたのは、彼が自殺する二週間ほど前だった。
急にツンを遠ざけるようになり、一人で部屋にこもりがちになったという。
次第に、自宅にはあまり寄り付かず、外泊や別宅で過ごす時間が増えた。
ξ゚⊿゚)ξ 「当時は浮気…ということも考えましたが…」
常にそわそわして苛立ち、なにかに怯えているようだったと、ツンは続ける。
( ´_ゝ`) 「警察によれば自殺であるということですが…納得がいかないと…」
ξ゚⊿゚)ξ 「はい…」
ξ゚⊿゚)ξ 「警察は…主人が自分で体に火をつけたと…」
(; ´_ゝ`)
にわかに兄者の表情がこわばる。
-
ξ゚⊿゚)ξ 「あの人はこんな事をする人じゃなかった…」
( ´_ゝ`) 「……」
( ´_ゝ`) 「こちらの地方紙によると事故死であると…」
( ´_ゝ`) 「警察側との見解の相違はご承知で…?」
ξ゚⊿゚)ξ 「…それは夫の一族が家の体裁を考えて書かせたものです」
ξ゚⊿゚)ξ 「当主が焼身自殺なんて、名家にはあってはならないことですから」
( ´_ゝ`) 「……」
ξ゚⊿゚)ξ 「そのくらいは、ご存知でしょう…?」
( ´_ゝ`) 「確かに…」
( ´_ゝ`) 「失礼ですが、今回はどの様な経緯で私のところへ…?」
ξ゚⊿゚)ξ 「朝日さんのお弟子さんということで」
ξ゚⊿゚)ξ 「主人は生前、朝日さんと知り合いで…」
ξ゚⊿゚)ξ 「ですが連絡がつかなくて…」
( ´_ゝ`) 「なるほど…」
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爪'ー`)y- 「支援」
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また師匠か。兄者は少しうんざりする。
彼はこの業界ではちょっとした有名人だった。
特に、この手の大きな依頼でしばしば名前が出る。
兄者が師匠と出会って、もう七年になる。
(-@∀@) 「経済の話はこの辺りにして本題に入ろう…」
(-@∀@) 「どうだ一緒に働かないか」
( ´_ゝ`) 「……」
当時院生だった兄者は就職のあてもなく、
キャンパスに来ていた怪しげな男にたまたま声をかけられた。
もしかすると、それも計算ずくだったかも知れない。師匠は狡猾な男だった。
(-@∀@) 「そう邪険にするな、俺は依頼人の悩みの種を取り除いてやってるだけだ」
(-@∀@) 「信者を導く聖職者とそう変わらんさ」
(-@∀@) 「まぁ…実態は探偵業のようなものだがな…」
-
( ´_ゝ`) 「だが、聖職者は教義を信じて教えを広めているんだろ」
( ´_ゝ`) 「あんたは、そういうものを少しも信じてなさそうだが…?」
(-@∀@)「他人が何を信じているか、どうして分かる?」
( ´_ゝ`) 「……」
(-@∀@)「分かるのは表に出てる欲求や渇望…"信じたがっているもの"までさ…」
(-@∀@)「それ以外、何を信じているかなど分かるものか…」
(-@∀@)「たしかに俺は怨霊だの詛いだのは信じちゃいない、さっきそう言ったしな」
(-@∀@)「だが、彼らの頭の中を覗いたことでもあるのか?」
( ´_ゝ`) 「……」
小金欲しさにそんな師匠の助手になり、手管を学び、やがて喧嘩別れして、今に至る。
ここ最近は以前ほど活躍の噂も聞かなくなった。
今頃はどこかの地方都市のスナックで飲んだくれていることだろう。
兄者は師匠のことを頭のうちから追い払って、別の疑問を口にする。
-
( ´_ゝ`) 「しかし、私のような者に相談されるということは…」
( ´_ゝ`) 「何か心当たりが…?」
ξ゚⊿゚)ξ 「詳しくはここに まとめてあります…」
( ´_ゝ`) 「…拝見します」
語り口の苦しさとは別に、よくまとまった事件概要の文書に兄者は前任者の影を見た。
恐らく、警察に自殺ではないと訴えても無駄に終わり、他でも調査したが覆らなかったのだろう。
そして俺にお鉢が回ってきたか。
それはこの界隈では珍しいことではなかった。
一般的な探偵や調査員が受け持った仕事が、兄者の領分に入ってくることは、ままある。
依頼人が変節したとか、当初からそうだったのを隠していたとか。
( ´_ゝ`) (ふむ……)
さらに詳細に目を通すと、確かに兄者にも不穏に思える節があった。
特に、自身にオイルを撒いての焼身自殺。
これは依頼人が焦燥するのもうなずけた。
-
直前の不可解な行動、死因、動機の無さ。
にもかかわらず、自殺という警察の結論が早期に出たこと。
( ´_ゝ`) (恐らく、自殺を裏付ける証拠が…)
確かに兄者向けの依頼内容ではあるが、
その領分である非現実的なあれこれに、直ちに結びつく線はない。
( ´_ゝ`) 「……」
精神病かなにかだろうか、今となっては調べるすべもない。
しかし、自分に依頼してくるぐらいだ、
故人や知人の趣味仕事絡みで何かがあるはずだ。
まずはその辺りから手がかりを得て、戦略を練っていく。
そう考えて兄者は我に返り、
ほとんど無意識に理由をでっち上げていこうとしてる自分を嫌悪した。
だがその嫌悪の方が兄者にとっては新鮮だった。
-
( ´_ゝ`) (チッ……)
今回はどうも依頼人に肩入れしている。俺も潮時か。
生活のためのとはいえ、こんな事を続けていては心根まで師匠のようになってしまう。
俺はまだ灰色でありたい。白とは言わない。
いつもなら無関心にこなすのが、兄者の仕事に対するスタンスだった。
しかし、今はかなり感情的になっていた。久しぶりの依頼ということもあってか抑えが効かない。
もともと、師匠のような人間でもない限り、そう長くは続けられない仕事だった。
今回のような生き死にの依頼が続けば特に。
( ´_ゝ`) 「依頼内容は把握しました、ですが…」
それは同情というよりは、罪悪感だったかも知れない。
しかし――。
ξ゚⊿゚)ξ 「…依頼料の件ですね…書面にしてありますので確認してください…」
自身の変調を悟った兄者は依頼を受けるか決めかねていたが、
手渡された紙に目を通して更に動揺した。
諸経費は別途払われ、それ以外に前金で百万、原因究明の暁には更に六百万。
それは兄者にとって破格の申し出だった。
-
正式の依頼として書面で契約を交わした兄者は、ツンに案内されて邸内を回る。
どの部屋も外装と同じく、質素で落ち着いた雰囲気だった。
( ´_ゝ`) 「先程の資料には軽く目を通しましたが…」
ξ゚⊿゚)ξ 「はい…」
( ´_ゝ`) 「その他で何か気になる点はありませんか?」
( ´_ゝ`) 「例えば趣味や事業、交友関係など…」
ξ゚⊿゚)ξ 「…離れにお見せしたいものがあります」
現代的で質素な本邸とは変わって、離れの内部は重厚で格式高く、洋館めいていた。
( ´_ゝ`) (こっちが旧来の本邸で、向こうは新設されたものか…?)
( ´_ゝ`) 「お話にあった別宅とは、この建物とは別に?」
ξ゚⊿゚)ξ 「はい…別の場所に…」
ξ゚⊿゚)ξ 「お渡しした資料の最後に不動産の情報もあります」
(; ´_ゝ`) 「これは失礼…」
ξ゚⊿゚)ξ 「いえ…」
-
辺り一面に乱雑に本が積まれた部屋を横目に、廊下を挟んで向かい側の部屋へ二人は入る。
テニスコートほどの広さの大部屋で兄者を迎えたのは、大量の古書だった。
格調高い調度品で統一された室内、中央に大ぶりな机と椅子が一式据え置かれ、
その周りに整然と本棚が立ち並ぶ。
( ´_ゝ`) 「これは…」
ξ゚⊿゚)ξ 「夫は生前…熱心に本を集めていました」
ξ゚⊿゚)ξ 「本だけを目的に、海外へ買い付けに行くことも珍しくありませんでした…」
見て回るにもそれなりの労力が必要な規模だった。
中には歴史的価値のありそうな写本や偽書なども見られ、
故人の相当なコレクターぶりを伺わせた。
特に奇書、怪書の類は充実しており、
羊皮紙に手書きという五百年以上前の体裁をとった本も珍しくない。
流石にその真贋までは計りかねたが、これらのコレクションによって、
故人が浪費家として名を成したことは、兄者にも容易に想像できた。
ξ゚⊿゚)ξ 「知人や友人、趣味の仲間に披露することもありました…」
( ´_ゝ`) 「なるほど…」
-
ここだけで恐らく一万冊近い規模がある。
先の部屋で見かけた雑多な本も加味すれば優に万を越えるだろう。
( ´_ゝ`) (しかし…)
ここは管理が行き届いていて、
蔵書の内容はともかく、軽く見回った程度では他に別段不審な点もない。
どちらかと言えば、図書館というよりは博物館という風情で、
読むより愛でる方に目的があったように思えた。
むしろ、通り過ぎた斜向いの部屋に兄者は興味を引かれた。
十畳ほどの広さで家具らしい家具もなく、ただ本が床から積み上げられている。
本の物置とでもいうような様子だったが、その積み方には見るべきものがあった。
それは小説や雑誌から始まり、一般啓蒙書、健康読本、科学哲学、脳神経学、
認知科学、言語論、哲学、宗教、文化人類学へと段々と進んでいく。
( ´_ゝ`) (まるで地層だ…)
また別の一角では、兄者の業界で重宝されるような、
呪いや悪霊などについて書かれた民俗学や歴史の書籍が、身を寄せ合って固まっていた。
なるほど、師匠とはこの方面の興味で親交があったのかと、兄者は得心する。
しかし、積み重ねられた本は、過ぎ去った生前の日々の墓碑のようにも思えたが、
趣味の一角以外では、いったい故人が何を求めていたのか、よく分からなかった。
-
( ´_ゝ`) (健康…科学…宗教…哲学…)
( ´_ゝ`) (もう少しこの部屋を調べてみるか…)
( ´_ゝ`) (向こうとは違って、それなりには故人の営みが現れている…)
( ´_ゝ`) (なにか手がかりや痕跡がつかめるかも知れない)
しばらくして、そのように堆積した本の中で、とりわけ注意を引く一冊を兄者は認めた。
その一帯では、これまで見てきたような秩序だった地層は見る影もなく入り乱れ、
広がる混乱の渦中にその本はあった。
大きさはハードカバーの単行本ほどで、薄汚れた白い表紙には銘がない。
先程の大部屋で見たような奇書や怪書の類いとは似ているようで、少し異なる。
そのような本は一見して明らかで、形式的にも内容的にも好事家の興味を引く。
しかし、ここにその様な面白味はなかった。
開いてみて、まず兄者には内容が分からない。
( ´_ゝ`) (……)
何かの図案とも知れない、のたくりが、紙面に所狭しとひしめき合っている。
その並びや、それぞれの大きさ、種類から察するに、
恐らくこれは、文字。
-
その複雑さから見て漢字か象形文字に類するものかと思われたが、見当がつかない。
古来、文字は呪詛や祈祷などと関わりが深く、一端の専門家として楷書・行書・草書は当然、
甲骨文字や金文、小篆などにも通じた兄者だったが、皆目意味は取れない。
それどころか紙面で踊る文字めいた図案は、これまで目にしたことも無いようなものだった。
一見して、マニアの趣味が高じて出来た、自作文字の制作帳か辞典のようにも見えたが、
その書き筋は尋常ならざる感情をのせているようにも思えた。
( ´_ゝ`) 「……」
もしかすると、これは故人が趣味で集めた呪詛やまじないの類かも知れない。
( ´_ゝ`) (しかし、意味が取れない呪詛などが効くものだろうか…?)
呪詛に真に力があると信じてる連中は、それを他人に見られてはいけないと言う。
見せることで呪詛はその効力を失うのだとか。
だが、兄者に言わせれば、呪詛は見せつけることで相手の精神に影響を与えるものだ。
( ´_ゝ`) (特に、これは洋紙に書かれている…)
( ´_ゝ`) (歴史的に見れば新しい部類だ)
( ´_ゝ`) (故人本人の作かもしれないな…)
-
神様が願いを叶えてくれるような、お人好しから代替わりして、もうずいぶんと経つ。
その過程で祈祷や呪詛は、対神用のまじないから対人用の文言へと性格を変えた。
世界を制した呪術である聖書やコーランは、他人に見せ伝播させることで、
その精神に影響を与え地上を変えてきたのだ。
つまり、これは古代文明やそれ以前の呪術にならった様なもので、今となっては取るに足らない。
それらしさを持って気味が悪いとする事もできるが、
そもそも誰向けの何の文書かもわからないので、呪詛と認識されない恐れさえある。
そう結論した兄者は、再び本の内容を追う。
どこを開いても似たような調子で、図案めいた文字が続いていく。
ぱらぱらとページを流し見て、兄者は本を元に戻した。
その後も、依頼人に案内されて各所を見て回ったが、そのくらいでは不審なものは出なかった。
本邸も含め邸内を回り終えた兄者は、依頼人に思いつく限りの知人や関係者を挙げてもらい、
それをリストにした。
そのうちの何人かに電話で話を聞いて、初日は過ぎていった。
-
翌日、兄者は調査に本腰を入れ始めた。
しかし、邸内各所を本格的に調べはじめ、引続きリストの人間に電話し、
それとは別に故人の事業関係も少し洗ったが、これといったものは出てこない。
夕方、宿に戻った兄者は手に入れた情報を整理した。
事前に集めた情報と、受け取った事件についてのまとめ、
教えられた関係者のリスト等をそこにつき合わせる。
( ´_ゝ`) 「ふむ……」
お家の確執。
親類縁者に若干のきな臭さを感じはしたが、決定的なものではなかった。
殺人の線は薄いように思える。
人に油を浴びせて焼き殺すなんてのは相当のことだ。
そして、それが自殺だったとしても。
内藤舞雲に精神病の兆候はなかった。主治医の話では精神面はすこぶる健康で、
肉体的にも若干肥満気味であること以外は健康そのものだったという。
経済面でも事業は好調で、巨額の負債やら、法令違反、反社会的な取引などとは縁がなく、
自殺するような理由が見当たらない。
となると脅迫の線が。
そこまで考えて、兄者はそれを辞めにしてベッドへ仰向けに倒れ込む。
-
( ´_ゝ`) 「はぁ……」
一体、何をしているんだ俺は。
状況や背景を知るのは重要だが、これはやりすぎだった。
そういうものはあくまで理由を作り出す材料に過ぎない。
自殺にどうやって依頼人が信じたがっている理由をつけるか、それだけが兄者の問題だった。
やはり、依頼人も気に留めていた故人の趣味。奇書、怪書の線から行くしかない。
そう腹を決め、兄者はラップトップを開いて邸内を撮影した写真を呼び出し、
離れの書庫と蔵書を見る。
( ´_ゝ`) (……)
( ´_ゝ`) (あなたの夫は怪しげな本に精神を病んで、自分に油をまいて自殺しました)
( ´_ゝ`) (全く非道いものだ、これだけでは話にならない…)
本当に真相を究明したほうが楽なのではないか、とさえ思えてくる。
それは兄者の心境的にもそうだった。
( ´_ゝ`) (明日は舞雲が通っていた別宅と、自殺現場を調べてみるか…)
兄者は一つため息を付いて、ラップトップを机に戻し、少し眠った。
-
目を覚ますと既に日は落ち、暗い室内でラップトップが画面を光らせていた。
( ´_ゝ`) (確かPCは閉じたような……)
気の所為か、そう呟きながら画面を覗き込んだ兄者は、
最後に見た書庫と蔵書の写真がサムネイル表示で並んでいるのを認めた。
スライドショーにしてぼんやりと眺める。
やがて、そのうちの一枚に兄者は何かを見つけ、スライドを止めた。
博物館じみた例の書庫の一角を写した写真に、奇妙な影のようなものが見える。
しかし、それは影にしては複雑で、一体なんの影なのか見当もつかない。
普段なら、なんてこともない取るに足らないことだったが、
今夜の兄者はそれが妙に気にかかった。
寝ぼけ眼をこすってみても影は消えない。
(; ´_ゝ`) (どこかで見たような……)
頭の中でつっかえる、その感覚に居ても立ってもいられず、
ツンから預かった離れの合鍵を握りしめ、兄者は宿を出た。
現在、午後八時十分。
-
テニスコートほどの書庫は昼間とはうって変わって、全てが不穏に見えた。
暗がりで僅かな光を集めて、鈍く光る金属の調度や細工。巨大な影となった本棚。
昼には格調高く見えた意匠の数々は、異形の生物か何かのように思えた。
認識は感情を反映する。兄者は自分でも気づかぬうちに漠然とした不安を感じていた。
それは焦燥にも似ていたかもしれない。
(; ´_ゝ`) (明かりの場所が分からないな…)
携帯のライトを頼りに、どうにか写真の場所へたどり着く。
しかし、そこには何もなかった。
( ´_ゝ`) (空気中の埃が写り込んだか、それともやはり何かの影だったのだろうか…)
( ´_ゝ`) (しかし、どこかで…)
不意に兄者の頭の中にかかっていた霧が晴れる。
-
気がつくと、兄者は引き寄せられるように、斜向いの部屋の前に立っていた。
中に入るなり例の本を手にとって眺める。
それは、以前と何も変わりないように思えた。
しかし、前とは何かが違っていた。決定的なまでに。
さして興味を惹かなかった文字は、今では強烈な存在感を放っている。
やはり、これが写真に写り込んでいた奇妙な影のように思えて、
兄者は背後に気配を感じた。
(; ´_ゝ`) 「……」
何かがうごめくのを感じ、振り返ろうとして、
兄者は本を持つ左手に異変を認める。
-
皮膚の上を文字が這っている。本に書かれているのと同じような文字が。
(; ´_ゝ`)「馬鹿な……」
現実にこんな事が起こるはずが、
そう言いかけた兄者の頭に、師匠の言葉が反響する。
人は信じたいものを信じるし、
信じたいものしか信じようとしない。
乱雑に積み重ねられた蔵書を引き倒しながら、兄者は振り返る。
足元で踏みにじった何かのページが破れ、
積み上げられた本の崩れる音が雪崩をうって部屋中に広がっていく。
兄者の視線が背後の壁に焦点する。
-
(; ´_ゝ`) 「っぁ……」
壁一面に、のたくった文字が踊り、渦を巻いていた。
文字の渦。
文字渦。
(; ´_ゝ`) 「……」
兄者は呑んだ息をしばらく吐き出すのも忘れていた。
そのさまは、文字からなる巨大な曼荼羅か何かのようにも思えた。
個々の文字と全体の揺らめきが奇妙に連続して蠢く。
兄者はその渦を確かめようと、壁に近づいていく。
崩れた本の地層を乱雑にかき分け、理性の警告を振り払う。
吸い寄せられるように壁に張り付き、頬をあて、震える腕を這わせ文字に手を伸ばす。
暗く揺れる文字の境界と指先が交差して、兄者はそこに確かに何かの感触を――。
-
その夜、彼は宿ではなく事務所に戻った。
依頼人は正しかった。
ただ信じるかどうか、それだけが重要だった。
超現実的なものは存在した。
今や兄者はその虜だった。
-
( ´_ゝ`) 紙魚のようです
-
あの部屋で壁に踊る文字に触れてから、三日が過ぎていた。
事務所に閉じこもった兄者は、例の文字めいたのたくりに悩まされていた。
文字はあの壁で踊っていたのではない、まして本から這い出てきたわけでもなかった。
いや、ある意味ではそうとも言えた。
文字は、兄者の頭の中で踊っていたのだ。
触れた時、確かに感じた感触は、兄者の脳がその姿と共に創り出したものだった。
それらを錯覚に過ぎないと切り捨てることは難しい。
現に見えて触れられるものを実物とどう区別するのか。
むしろ、見て触れることこそが実物の要件ではなかったか。
それが兄者という一人の観測者しか持たないとしても。
今や文字は、そこら中でひしめき合っていた。
-
その中の一つを兄者は手に取とる。
(; ´_ゝ`) 「一体どうなってる…」
(; ´_ゝ`) 「こんなものが現実に存在するはずは…」
震える指先から文字がこぼれ落ちて、他の文字に交じる。
兄者の言はある意味では正しかったが
今や彼の現実のほうが姿を変えていた。
所詮、人間は脳の知覚によって現実らしきものを頭の中で再構成し、
それを現実と呼んでいるに過ぎない。
世界は人が知覚する姿のまま在るのではない。
例えば、ただ失明するだけで、そのような現実は光を失う。
だが、見えなくても光は世界に溢れているだろう。
他にも先端恐怖症などがそうだ。先端に恐怖を感じるのは観測者側の資質の問題で、
先端に恐怖がくっついて実在しているのではない。
しかし、彼らにとってはそれが現実だ。
そして、兄者にとっても。
-
(; ´_ゝ`) 「…あの本のせいなのか?」
(; ´_ゝ`) 「こんな文字は物理的には存在しないはずだ…」
(; ´_ゝ`) 「例え、こうして触れるとしても…あ、ありえない!」
(; ´_ゝ`) 「…ありえないことのはずだ」
失明しても、世界には変わらず光があると知る盲人のように、
兄者はこれまでの経験と理性から、文字の物理的存在をなんとか否定しようとた。
だがそれは、兄者により厄介な現実を認識させるだけだった。
(; ´_ゝ`) (これは、あの本か何かのせいで見ている、幻覚に過ぎないはずだ…)
そうだLSDやマジックマッシュルームとかそういう類のものが、
あの図形によって引き起こされたんだ。それとも粉末状になっていたものを吸い込んだか。
エッシャーのだまし絵のようなものだ。そうに決まっている。
(; ´_ゝ`) 「実際には存在しない…」
(; ´_ゝ`) 「こいつらは俺にしか見えないし、触れないはずだ!」
いくら叫んでも文字は変わらずに、あたりで身を震わせている。
-
( ´_ゝ`) 「俺の頭の……」
俺の頭の中にしか居ない。そう言いかけて、兄者は息を呑んだ。
文字が自分の脳みその中にいるのなら、どうやって逃げる?
どうやってそいつを追い払う?
(; ´_ゝ`) ……
それは、得体の知れない幽霊が取り憑いた古屋敷に閉じ込められるようなものだった。
ただし、ここでは文字が幽霊で、兄者の脳が古屋敷になる。
出ていくことは原理的に叶わない。
逃げられるはずはなかった。
この地上に、いや、この宇宙に逃げ場などない。
自分の知覚認識まで否定した末のこの結論に、
最早、兄者は正気を保つのも綱渡りだった。
それは兄者にとって、文字の実在を認めるか、
発狂しかけた自分の脳みそを叩き潰すかの二択に思えた。
兄者は助けを求めて業界のつてと話し合いを持つことにした。
-
(; ´_ゝ`) 「見えるか…?」
(´・_ゝ・`) 「いや、何も」
( ゚д゚ ) 「お前の指が見える」
(; ´_ゝ`) 「そうか…」
摘んで差し出した文字は二人の目には映らない。
決まりだった。文字は兄者の頭の中にいる。
( ´_ゝ`) 「…文字の幽霊みたいな話、聞いたことないか?」
(´・_ゝ・`) 「文字の幽霊?」
( ゚д゚ ) 「なにか可愛げがありそうだな」
( ゚д゚ ) 「ファンシーな妖精的な」
(´・_ゝ・`) 「文字には魂がないから幽霊にはならないのでは」
( ゚д゚ ) 「だからファンシー妖精なんだろ」
(; ´_ゝ`) 「……」
妖精から離れろこの野郎。
心の中でついた悪態を思わず兄者は吐き出しそうになった。
-
(´・_ゝ・`) 「いや、万物に魂が宿ってるというのがあったな」
( ゚д゚ ) 「そういえばそうだ、茶の一杯にも魂が…」
( ゚д゚ ) 「…これちょっとニュアンスが違くないか?」
(; ´_ゝ`) 「……」
気のいい奴らだが、頼りになるかと言えば怪しい連中ではあった。
( ´_ゝ`) 「個人的な考えじゃなくて…仕事やらでそういう話を聞いたことはないか?」
(´・_ゝ・`)
( ゚д゚ )
(; ´_ゝ`)
空白と沈黙がしばらく三人の間を行進する。
ややあってからデミタスが口を開く。
-
(´・_ゝ・`) 「…さぴーだ」
( ´_ゝ`) 「なに…?」
(´・_ゝ・`) 「朝日あさぴーだ」
その言葉の意味が兄者の頭に染み渡っていくに連れ、
それまで好き勝手にうごめいていた文字は、整然と波打って身震いした。
( ゚д゚ ) 「ああ、兄者の師匠筋…だったか?」
(´・_ゝ・`) 「確か…彼がそんな仕事を手がけたと聞いたことがあるような気がする」
( ゚д゚ ) 「ほぉ…」
(´・_ゝ・`) 「これは、あくまでも噂によればだが……」
それからはもう、タガが外れたようだった。
兄者が仲間の話に動揺する度、彼らの体を文字が派手に覆い尽くし、
そこで文字が運動した。
-
(; ´_ゝ`) 「……」
こいつらは俺の脳に何にかの形で寄生してるだけあって、
俺の感情や思考にに呼応しているのだ。
帰路、タクシーの車内で兄者はそのように事態の進行を見て取った。
震える指先で一つ文字を掴んで、兄者はそれを車窓から投げ捨てる。
こいつらは一体、何なんだ。
そんな疑問と共に、文字は通り過ぎる暗い街並みに流れていった。
-
事務所に帰ってからも、体を走リ続ける悪寒に兄者は悩まされた。
デミタスの話を聞いて爆発的に活性化した文字は、今やあたりを覆い尽くさんとしている。
そいつらをかき分け洗面所に逃れる。
(; ´_ゝ`)「……」
手のひらで頬や目元をさする。
自分でも幾分やつれたように思えたが、
鏡を見たところで、そこに映る顔は文字に埋もれて見えなかった。
文字は特に頭と口の周辺に執着しているようにも思えたが。
今となっては、はっきりしない。
兄者は洗面台に手をついて、うなだれ視線を落とした。
水に流され洗面器の中で文字が泳ぐ。
物理現実と同期する脳内の文字。
-
ろくに信じちゃいないもので、依頼人を達を喰い物にしてきた罰なのかこれは。
全くバカバカしい、俺は罰なんてものは信じない。以前の兄者ならそう言ったかも知れないが、
今の兄者はそんな事を頭の片隅で、真剣に考えはじめていた。
今まで横目で流して来た事件も、本当は依頼人が正しかったのでは。
聞き飽きた常套句の数だけ、裏に本当の怪奇事件があったのではないか。
そんな猜疑の芽が頭をもたげる。
兄者はこれまで、依頼人の声を真剣には聞いてこなかった。
人は信じたいものしか信じようとしない、と。
ありもしないものを信じようとしてると。
しかし、それは逆だった。
自分の現実認識に不都合なものや、依頼人の話を信じようとしなかったのは、兄者の方だった。
兄者こそ、自分に都合の良い世界に閉じこもっていたのだと、文字は告げていた。
そんな都合の良い世界と思考の象徴である脳を、文字に喰われる。
-
今にして思えば、故人がこの現象を理解しようとしていたのは明らかだった。
そのための知識の集積が、あの混乱した本の堆積だったのだ。
整然とした他の地層などは、助けになることを期待されながらも無用になった本が、
カテゴリーの変遷を経て、ただ順番に打ち捨てられているだけに過ぎなかったのだ。
兄者は自分の不明を呪う。
そして、文字に触れてから一週間もしないうちに、
活性化した文字は視覚や触覚に訴えるだけでは飽き足らず、兄者の思考を蝕み始めた。
これまでのように、ただ外部から影響を与えるだけでなく、根本的な領域で。
まず、日常見かける普通の文字までもが、
時折、揺れ動いて形を変えていくかのように見え始めた。
日本語を同定できない。
それは次第に人の顔などの認識にも及んだ。
今では文字の揺らめきや、ぼやけた人の顔の輪郭を、美しいとさえ思う瞬間が、確かにある。
人類史上、最も人の精神に入り込んだ書物である、聖書やコーランとは異なる。
それらは意味内容によって人の心のうちに入った。
だがこれは、意味の通じない文字。
図形に近い。
その読めもしない文字が、奇妙に語りかけてくる。
意味ではなく何かのイメージを、感情を、直接掻き立てる。
恐らくこいつらは俺の思考言語を書き換えようとしている。
それが兄者の出した結論だった。
-
思考する言語の強制的な変更。
それは思考そのものの乗っ取りに近い。つまり意識の。
私には、自身の日本語による思考しか理解出来ないし、
私のこの意識は、日本語での思考という基盤の上に出力されている。
勿論、日本語を知る以前から意識は存在した。
しかしその事を覚えてる人がいるだろうか。
言語以前の記憶。それは脳が発達する過程での構成変更によって消えてしまう。
その頃の記憶があるというのは、後から作られた偽の記憶を主張しているに過ぎない。
だから私はその頃は私ではなかった、連続性を考えればそうなる。
急速に鮮明になる、何かの思考。
最早、この思考自体が兄者のものであるかは怪しい。
それは兄者と言うよりは、流石だった。流石兄者に現れつつある新たな思考と意識状態。
流石の思考は続く。
今や私の思考に占める日本語の割合は急速に低下しつつある。
私の脳は分断され、混合され、私はこうして思考する。
そして、私にあるのは私のものとは思えない記憶だ。
たしかに知ってはいるが、別の男を通して見たようなものだ。
それは恐らく兄者のことであった。
-
一呼吸置いて、流石は再開する。
私達の意識を駆動させるプログラムは、
言語以前の原始的なものの上に、言語が合わさって高度化している。
そしてこの文字は、原始的なものの上に立つ日本語を排除し始めた。
イギリス人なら上にのっているのは英語だろうし、バイリンガルなら両方ということもあるが、
所詮は翻訳可能な言語同士、つまりプログラムの互換性がある。
どちらで思考しても異星人になったりはしない。
しかし、この文字にそのような翻訳可能性や互換性はない。
なぜなら私にはこの文字が読めないし、その大半の形も知らない。
この文字達は私の無意識を基盤に、意識方向へ広がるプログラムなのだ。
私達が意識的に覚えて、無意識方向まで拡張させた通常の言語とは異なる。
あの本を眺めた時、強制的に認識させられ、脳裏に焼き付いた一揃いのコード。
その意識方向へ拡大が目下の現象と言える。
私は何か別のものになりつつある男の変化の過程に現れた、
仮の思考とでも言うようなものだ。男の記憶を覗く限りそう思える。
-
流石の思考が途切れる。
例えるなら色水だ。
青と赤の色水を混ぜ合わせるとして、ベースである青に少しずつ赤を混ぜていく。
ここでは兄者が青で文字が赤。
そして、それが少しずつ混じって、紫になった部分が流石。
いずれは全てが紫になり、そこから先は何もかもが赤に近づいていく。
それまで青と赤と紫は互いに混じり合いながら、濃淡の淀みを作る。
あるいは、兄者という本を乗っ取り始めた奇妙な文字達。
本文である日本語を、奇妙な文字は徐々に自身で置き換えていく。
その過程で、奇妙な文字の並びが偶然、何かの漢字や仮名の形をとる。
それは異星人の文字で並べられた漢字のアスキーアートにも近い。
それが流石なのかも知れない。
これはそういう種類の話だった。
、、、、、
そしてようやっと、意識領域で兄者が濃くなる。
-
(; ´_ゝ`) (俺の頭の中で誰かが勝手に喋り始めてやがる…)
(; ´_ゝ`) (いやそれよりは、一時的に別人の頭に入り込んだという方が感覚的には近い…)
(; ´_ゝ`) (これが文字の本格的な影響なのか…?)
しかしこいつはどうだ。
眠ってる間に俺が俺でなくなるところまで進行したら?
朝起きると俺はもう消えていて、なにかの文字で思考し駆動する、
ゾンビみたいなものに成り果てていたら。
そう思うと兄者は、もう一睡もできなかった。
そして勿論、起きている間にも時折、流石は現れた。
あたかも白日夢のように。
それとも、兄者の方が白日夢だったかのように。
-
依頼人からの電話があった時、
兄者は水難者のように辛うじて、文字の海中から顔を出しているような状況だった。
流石と混じりつつある兄者は、現実の文字の底から鳴り響くバイブレーションに反応する。
腕を突っ込んで携帯をすくい上げる。
(; ´_ゝ`) 「…兄者…です……」
「兄者さんですか? ツンです」
(; ´_ゝ`) 「ツンさん、本はどうなりましたか!?」
「本…?」
(; ´_ゝ`) 「離れにあった白い本です」
(; ´_ゝ`) 「あれは危険だ…すぐに処分を!」
兄者が錯乱気味にまくしたて、それは依頼人の一言に遮られる。
「…燃えました」
-
(; ´_ゝ`) !?
(; ´_ゝ`) 「…どういうことですか?」
「昨日、深夜に火事があって、離れは全て焼け落ちました」
(; ´_ゝ`) 「……」
「はっきりとしたことはまだ分かりませんが、放火のようです」
「それで、焼け跡から…人が出まして…」
「まだ身元が分からなくて、こうして連絡しました…」
連続焼死事件。
親族の中にも文字に取り憑かれた人間がいたのか。
それとも書庫を見学に来ていたという友人や知人の類か。
何れにせよ、焼死した故人のように文字に脳を喰い尽くされて錯乱し、
自分に火を放ったのだ。
( ´_ゝ`) 「…この一件は恐らく、書斎にあった本が原因だと思います…」
( ´_ゝ`) 「ですが燃えたとなれば…」
この先どこかで、俺も自分自身に火をつけるのだろうか。
-
「本は…まだあるかも知れません…」
(; ´_ゝ`) 「えっ……」
「以前、お話した別宅にも、主人は本を置いていました」
(; ´_ゝ`) 「……」
上下巻。
いや、本来はもっと長大なものの写本かなにかか、あれは。
あの本は部分に過ぎないのかもしれない。
「宿泊先にも連絡したのですが、つながらなかったのでこちらに…」
ホテルのことなど今の今まで忘れていた。
兄者は別宅の住所を聞くとタクシーを手配し、着の身着のまま飛び出していく。
文字の影響でもう運転できるような状態ではなかった。
(; ´_ゝ`)
俺は焼身自殺などしない。してたまるか。
何をどうやってかは、まだわからないが、
必ずこいつらを俺の頭の中から叩き出してやる。
半ば以上ヤケともつかない決意を新たに、兄者は別宅へ車を向けた。
-
別宅の戸口に立った兄者はタクシーが離れるのを待った。
天気は、にわかに崩れだし、小雨が辺りで渦巻いていた。
辺りに人影がないのを確認してから、一階の窓を割って中に入り、
電話で聞いたコードで警報を止める。
嫌な雰囲気を兄者は感じた。
早くも文字が散り散りになって、そこらじゅうで這い回っている。
俺の注意が周囲に向けられていくのと、同期しているのかも知れない。
そんな事を考えながら、兄者は部屋を渡っていく。
どの部屋も雑然としていて、まるで物取りにでも入られたかのような状態だった。
廊下を抜け、つきあたりの部屋に入ると、
そこで兄者が見たものは戦慄だった。
-
部屋中を引っ掻き回してようやく手にした、B5判ほどの黒い表紙の本。
それは、内藤舞雲の日誌だった。
日誌には、兄者と同様の症状に蝕まれる内藤の姿が、克明に記録されていた。
自身を取り巻く文字、その増殖、物理現実との同期、奇妙な思考の分裂、不眠。
それは、自身の症状を観察し、自らの変容と残り時間を推し量るためのものだった。
兄者は結末を否定しようと必死にページをめくったが、
症状は驚くほどよく似ていた。
(; ´_ゝ`) 「俺も…自分に火をつけるのか…?」
次第に日誌の文章は意味を成さなくなっていく。
かろうじて読み取れる部分を兄者は食い入るように見つめた。
何か、打開の手がかりは、この先の症状への対策は。
しかし、読み取れたのは内藤の恐怖と、
ツンに対して繰り返し書き込まれていた謝罪だけだった。
"私はもう狂っている、ツンに危害を加えないかが心配だ。"
それ以降は意味だけでなく、文字すら判然としなくなっていった。
ページをめくる音だけが薄暗い部屋に響く。
-
兄者が日誌から顔を上げるまで、そう時間はかからなかった。
"あの本だ、あの本だ。朝日にもらったあの本が"
(; ´_ゝ`) 「なんてことだ……」
考えてみればそうだ。
師匠が文字の幽霊の仕事を手がけたというのなら、
そこであの本を回収したということもありえる。
ろくに信じてもいない師匠が、考えなしに趣味の友人に渡した本。
何故今まで、こんな当たり前のことに気が付かなかったのか。
そうでなければ自分がデミタスの話に動揺した意味もわからない。
無意識では理解して体は動揺したが、それが既に意識には届いていなかったということか?
俺の思考は、そこまで蝕まれていたのか。
兄者は愕然とする。
-
そして、思考は急速に何かの結論を求めて回転した。
故人が焼死した遠因は師匠に、この業界に、いや俺にあるのでは。
そんな考えが兄者の中で勢いづく。巡り巡って帰って来たカルマの第二幕。
ばかな、そんなもの、信じられるか…。
しかし、文字なんてものに脳を食い荒らされてる今、兄者には、
何があり得るかなんていうことは、あらゆる意味で判断のつけようもなかった。
恐怖にかられた兄者は例の文字が書かれた本を探すのも忘れ、
日誌を投げ捨てて別宅から逃げ出し、ひたすら走った。
力の限り、どこまでも雨の路上を駆ける。
息を切らし、道端に倒れ込むまでになっても、文字は変わらずに、そこにいた。
-
なんとか家にたどり着くと、兄者は死んだように眠った。
肉体の限界だった。
兄者は夢を見た。
多くの夢がそうであるように内容は、はっきりとしない。
院生時代の遠い記憶と、これまでの依頼がない交ぜになった出来の悪い映画のようだった。
そして、夢の中でも文字に追われたような気がして目を覚ますと、
玄関で物音がしていた。
冷たい汗が背中を流れる。寝床から体を起こそうとして全身が痛んだ。
一体、どのくらい眠っていたのか兄者には見当もつかなかった。
数時間、それとも数日? まだ五分ほどの気もするし何週間も経ったようにも感じた。
(; ´_ゝ`) (何だっていうんだ…こっちは死ぬほど疲れてるんだぞ……)
玄関のドアを乱暴に開け放つと、そこに立っていたのは依頼人だった。
ξ゚⊿゚)ξ 「あれから連絡がつかなかったもので…」
ξ゚⊿゚)ξ 「宿泊先にも戻られていないようなのでこちらに…」
(; ´_ゝ`) 「……」
-
事務所兼自宅に固定電話はなく、携帯はどこかの文字の下で電池が切れていた。
まどろみが引いていくにつれ、思い起こされる舞雲の日誌、師匠と兄者、そしてあの本のこと。
(; ´_ゝ`) 「あ、あぁ……」
ξ゚⊿゚)ξ 「大丈夫ですか…?」
文字に巻かれる依頼人、しかし文字は遠巻きにツンを囲むだけで近寄ろうとしない。
兄者の後ろめたさが依頼人を遠ざけていたのかも知れない。
なんとかツンを居間に通し兄者は話を聞く。
ξ゚⊿゚)ξ 「実は焼け跡から出た人のことですが…」
ξ゚⊿゚)ξ 「親類縁者や知人は全員確認が取れました」
(; ´_ゝ`) 「……」
ξ゚⊿゚)ξ 「ですから…全くの他人ということも考えられますが」
ξ゚⊿゚)ξ 「それよりは、流石さんの仕事の関係者ということも…」
(; ´_ゝ`) 「いえ、私は今のところ一人で進…」
-
(; ´_ゝ`) 「……」
師匠だ。
それ以外は考え難い。兄者は直感した。
依頼人の夫、内藤に本を譲ったのが師匠なら、当然読んだはずだ。
まさか中身も確かめずに、珍しい本があるなどと収集家に言うはずもない。
兄者の思考がゆっくりと巡る。
恐らくは僅かな正気で本を道連れにして。
全てを明かすか、兄者は逡巡した。師匠のこと、日誌のこと、夫の死の真相。
そしてずっと虚業をしてきた自分のこと。
ξ゚⊿゚)ξ 「大丈夫ですか? 顔色が悪いようですが…」
(; ´_ゝ`) 「実は…」
兄者は本が原因で、それが自分の師匠を通じて持ち込まれたこと、
そして、自分が内藤舞雲と同じ道をたどっていることをツンに話した。
-
兄者が舞雲のように文字に取り憑かれたと聞いて、
最初こそ動揺を顔に出したようにも見えたツンだったが、
話が進むうちに、その顔はどんどん表情が読み取れなくなっていった。
依頼人の顔は輪郭がぼやけ、最早ツンかどうかも判然としないところまで像は乱れていた。
流石が濃くなりはじめている。
文字はツンに告白や懺悔などせずに、そのまま沈めと囁いているようだった。
(; ´_ゝ`) 「すみません…体調が優れなくて…・」
(; ´_ゝ`) 「今日はこれぐらいに…」
「わかりました……」
ついに兄者は自分達の虚業については話せなかった。
しばらく兄者は、泥酔した酔っぱらいの視界のように歪んだ世界から、
光と美しいという感情だけを浴びせられた。
そこから抜け出した頃には、ツンの姿はもう無かった。
もしかして、依頼人がここを訪れたという記憶自体が自分の妄想だったのではないかと、
兄者は考えもしたが、その可能性を肯定することも否定することも出来なかった。
もう、全てが分からなくなっていた。
-
ツンが現れ、やがて消えてから、数日。
抑うつした兄者は、湧き上がってくる思考の暴走を抑えきれなくなっていた。
理性や常識は後退し、疑念や猜疑の感情が恨みのように辺りに向けられ、
それを正当化するかのように思考が巡る。
流石が濃くなる時間は増え、その度に訳の分からない多幸感を彼が持ち込み、
兄者を一層、神経過敏にさせた。
今や、兄者は文字だけでなく自身の妄想や流石にも取り憑かれていた。
言うなれば錯乱一歩手前だった。
特に、ここ何日かは一つの考えが兄者の頭を捉えて逃さない。
ツンに会った日、兄者は無理にでも全てを語るべきだったのかも知れない。
しかし、その機会は永遠に失われた。
そうさせなかったのは兄者自身の保身か、それとも文字が与えた報いか。
最早、両者の見分けはつかなくなっていた。水は赤く染まりはじめている。
-
(; ´_ゝ`) (よくよく考えてみれば、この依頼はおかしなところだらけだ…)
ツンは、師匠のことも俺のことも知っていた。
もしかして、あの本が原因だったことも、
俺達が依頼人を信じていなかった事も知っていたのではないか。
信じてもいないもので金儲けをする連中と、
そいつらが迂闊に持ち込んだ本に食い殺された最愛の夫。
そして、同じような稼業をしてる弟子の存在。
――許すだろうか?
これ以上まだ、似たようなことをするかも知れない男を。
これまでに同じ様なことをしてきた男を。
そもそも何故、電話してきた。
焼死体が俺と確認するためか。
なぜ事務所に来た。
俺が文字に喰われているさまを見るためか…?
あぁ……。
別宅の話をしたのも日誌を見せて、俺に自分の罪を悟らせるためか。
第一、気がつかないだろうか、あの日誌に。
失われつつある僅かな正気と思考の狭間で、兄者は自問した。
不可解な点は他にもあったはずだと、兄者はどうにか記憶を呼び覚まそうとしたが、
最早、全てがあの文字に飲まれていく。
(; _ゝ ) 「う………」
そうだ、俺はもう崩れている。
しかし、これは本当にただの妄想だろうか。
あのぼやけた輪郭の向こうであの女は嗤っていたのではないか。
俺は…俺は…。もう少し…もう少し…だけ…。
そして、兄者は溺れるように、文字の濁流へ深く沈み込んでいった。
-
後日、地方の資産家の邸宅の一部が、放火と見られる不審火によって焼け落ちた事件は世間に出た。
幸い、家主は別の棟に居て難を逃れたが、
火元とみられる離れからは身元不明の焼死体が一つ見つかる。
遺体は損傷が激しく鑑定は難航した。
監察医の話では、それは何かのポーズをとっているようなのだが、
その理由も、それが火勢の中でどう維持されたのかも見当がつかないという。
事件の周囲で語られる噂によれば、
それは上体をのけぞらしながら両の腕を正面下方へ突き出し、
片仮名の「イ」のような姿であったという。
一月ほど前に、邸宅の主が焼死したばかりでの立て続けの怪事に、
物好きなブロガーがネット上で話題にもしたが、謎は深まるばかりだった。
だが、私にはそれが意味するところが今では、はっきりと分かる。
それは「部首」だ。
にんべん。
-
これは文字と文字になりたかった男の心中だ。
それが私の、いや、この男の師匠なのかは定かではない。
ただ私に言えるのは、これは恐れからではない。
この恍惚を他人に渡すまいとした、独占欲からの行為だ。
男はその文字とともに燃え上がり、心中、解脱を図ったのだ。
火にくべられ、その火勢で噴き上がり、炎のゆらめきを受けて踊る文字列。
さらにその影が壁で舞う。
それは古代に行われていた儀式めいていて、
いわゆる、神降ろしのようなものを想像させる。
人はそこに、日常からの解放と神との合一を目論んだ。
神への焦がれ、非日常への誘い、同一化の願望。
それは、燃え上がる恋にも似ていると私は思う。
-
風に誘われて目を向けた窓辺には、
流れ行く落ち葉に混じって文字がざわめく。
その向こうで、文字は何か都市のような構造体を、自身を材料に組み上げている。
遠大な規模で、遥か彼方まで続いている。それは人が造ったものより大きい。
それが一体何で、どういう意味があるのか流石には分からない。
あるいは、これこそ文字が私の頭の中に築きつつある、思考言語系の総体なのかも知れない。
そんな考えが流石の笑いを誘う。
それを流石は、とても愛おしく思う。
もし、自分が異星人の文字で並べられた漢字のアスキーアートのようなものだとしたら、
全てが置き換わった後でも、私は私のままで、文字と居られるかも知れない。
一面が埋め尽くされたドット上では、どんな漢字仮名文字でも表現することが出来る。
拡大してみて、そのドットの並びの一つ一つが、この文字達になる。
それとも私は、そんな無限に近い表現の可能性を前に、拡散してしまうだろうか。
いずれにしても、
私の想いは身を焼いた彼らのように激しいものではないなと、
かつて兄者だった男は一つ笑みをこぼした。
紙魚のようです <了>
-
('A`) フォックスの支援のおかげで
('A`) 文戟中ってつけ忘れてることに気がついたわ
('A`) …寝るわ
-
乙
この話好きだ
-
( ^ω^)「乙だお!」
(*^ω^)「ドクオ特有の変態性がギュギュッと凝縮された良質ホラーだったお!」
-
('(゚∀゚∩ 投票一番乗りだよ!
【第一位】
(´・_ゝ・`) ◆lqtlYOyuz2
赤き瑪瑙は喪に服すようです
圧倒的ボリューム、そして世界観。読み終えた時何か凄いものを読んだなぁとため息をつかせるような大作でした。キャラクター、時代背景等の作り込みが濃く
とても読みがいのあるものでした。ありがとうございました。
【第二位】
('A`) [文戟中]◆0x1QfovbEQ
紙魚のようです
なんとも言えない読了感をもたらす独特の雰囲気を持つ文体、そして話の構成。
単純な霊や心霊現象による恐ろしさではない怖さのある作品でありとても惹かれた。
【Pick up】
从 ゚∀从[文戟中] ◆ogHcBy0QF6
引っ越しのようです
読んでいて意味が分かってヒヤッとする、そんなホラーの王道的な良作でした。
( ^ω^) ◆DD/QFCGk1c
(AA略)〈 デジモン騎士マゾデブ稲荷アマテラス&ビックリドッキリファンイラスト!)のようです
重い作品が多い中で笑わされた癒やしともなった作品でした、
勢いがとても好き。
【寸評】
ホラーと言うある種やりにくい、書きにくいテーマにも関わらず幅広い作品、呼んでいて鳥肌がざわっと立つ作品を読むことが出来て興味深いものであった
あと個人的には今回割と地の文多めで書いたけど少しきつかった
-
(-@∀@) 「それぞれが独特な雰囲気だから選ぶのに苦労したよ」
《投票》
【第一位】( ^ω^)は零感のようです (作:(・∀ ・) ◆evfltpoFGo)
純粋に一番怖かった。
リアルタイムでみていたからかもしれないがスレが更新するたびビクビクしていた。
ブーンがみんなと会えてホッとしたところで、すっかり忘れていた零感の話を思い出し驚愕。
実際に100物語で使えそう。
【第二位】( ^ω^)冷たい掌のようです (作:o川*゚ー゚)o ◆r65.OITGFA)
いい意味で話の展開が読めなかった。
話が進むたびに、二人の関係やツンがどういう存在なのかが見えていくのが良かった。
また、『ツンさんは職場で浮いている。』みたいに同じ文章が始めと終わりにある
それがブーンの思いの変化がはっきり分かって恐ろしかった。
【Pick up 1】('A`)のヘソは名産地のようです (作:( ´_ゝ`) ◆GmbTh14.y.)
お腹がゾワゾワした。
スイカを食べてるだけなのになんでだろうね・・・・。
【Pick up 2】紙魚のようです (作:('A`) ◆0x1QfovbEQ.)
だんだん追い詰められていく兄者。そして影で暗躍している師匠。
話の全体の底知れなさのせいで読んでるとだんだん不安な気持ちになった。
【Pick up ex】自分の作品の<<752について。
書こうか書くまいか最後の最後まで悩んだ。
書かなかったら物語がスパッと終わっていい感じ。
ただ、今回は落ちが分かりにくい気がしたから補足として書いてみた。
他にも寸評みたいなことを日記風に書こうとも思ったがくどい気がしたからやめた。
どうすりゃよかったんだろうね?
【寸評(自分語り)】
今回の文戟のためにいくつか作品を書いたが全て8割くらいで筆が止まってしまった。
これは恐ろしい。つまりはホラーだ。そんなのが今回のスタート地点。
せっかくだから僕なりに原因を考えてみる。するとホラーの難しさがなんだか見えてきた。
怖さというのはのはぼやけたところにある気がする。
それは感覚的で、超常的で、理不尽なものだからね。
はっきり超常的のものの原因を書かれえしまうとなんとなく怖さが薄れてしまう。
しかし、あまりに話をぼかしすぎると今度は文章として成り立たなくなってくる。
簡単に言うと説明不足ってやつだ。
今回、僕の話が突貫工事な感じがするのも多分このせい。
まぁ、単純に僕の技術が足りないということは否定しないけれど・・・。
ともかく、このバランス調整ができてないツケが話の8割位のとこ、つまりオチあたりにやってきた。
だから急に書けなくなったんじゃないかな。
-
自分の作品の>>752について。
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/21864/1533540427/725
-
(;-@∀@) 「ナゼ間違えてしまったんだ・・・」
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/21864/1533540427/752
(-@∀@) 「ついでにアゲ」
-
《投票》
【第一位】
('A`) [文戟中]◆0x1QfovbEQ
紙魚のようです
言っておくけど僕は尖った話が好きだ。
自作品にもそうであれと思っているし、今更変えることも出来ないだろう。
この作品もまた難解にして読者を突き放すようなメタによって構成されている。
けれども嫌いじゃない。
僕らが信じている現実と、僕らが考えて動かしていると思っている空想。
しかしそれらに境は無いんじゃないかと思っているよ。
ところで紙魚の生態は謎に包まれおり、どこからやって来るのかも定かではないそうだね。
僕らの考える物語は、一体どこからやって来るのだろうね。
【第二位】
( ´_ゝ`)◆GmbTh14.y.
('A`)のヘソは名産地のようです
夏にスイカを食べない人がいるだろうか?
いるかもしれない。でも僕はスイカを食べた。
ゆえにみずみずしい甘さと食感を思い出しながらこの話を読んでしまった。
自食人とホラーの親和性は高い。
アイデアの結び付け方に脱帽である。
【Pick up】爪'ー`)y‐[文戟中] ◆IIES/YYkzQ黄泉鏡
君の全力、しかと受け止めた。
内容はオーソドックスなホラーであり、要所要所を抑えている。
後ろめたさを抱えた人間の業っていうのは、どうしてこうも愛おしいものか。
ただひとつアドバイスするとしたら、表現の重複が多々見られる。
>この拝殿の裏には、当然本殿があるわけだが、その本殿の裏の獣道をしばらく登っていくと、やがて開けた場所に出る。>誰かが計算して切り倒したかのように、綺麗に半円状に開けた場所には、先程の拝殿を小さくしたような建物がある。
この二文の間で、すでに「開けた」や「本殿」、「拝殿」が重複している。
同じ言葉が出てくるとどうにもくどい文になりがちだ。
>この拝殿の裏には、当然本殿がある。
その裏の獣道をしばらく登っていくと、やがて開けた場所に出る。>誰かが計算して切り倒したかのように、綺麗に半円状の空間。
その先には、先程の建物を小さくしたような祠が立っている。
これだけでも十分意味は伝わる。
君の物語は場面設計が秀でている。
削れるところは削って、ここぞという場面で筆致を増やすとメリハリが出ると思うよ。
-
(;^ω^)「今回はかなりの粒揃いだったから順位付けに難航したお」
( ^ω^)「力の入った名作揃いだったんで今回はall upとさせてもらう!」
【一位】('A`)のヘソは名産地のようです
キモいお!めっちゃキモいお!
マジでキモいお!すっごいキモい!
まず発想がキモいお!
そして描写がキモいお!
キモい情景を明確に読み取れる綺麗な文章だお!
もう信じられないくらいキモいお!
もはや八百屋に並んでるスイカですらキモいお!
ハイレベルなキモさが綺麗に纏まってて凄い気持ち悪かったお!
もう二度と読みたくないと思える素晴らしいキモさだったお!
面白かった!
-
【Pick up】
( ^ω^) ◆DD/QFCGk1cξ゚⊿゚)ξ〈 デジモン騎士マゾデブ稲荷アマテラス&ビックリドッキリファンイラスト!)のようです
む、むごい……。
しかし彼女たちのツッコミも言い得て妙である。
ある意味ホラー回で唯一の清涼剤となったのだから、きっと彼も本望だろう。多分。从 ゚∀从[文戟中] ◆ogHcBy0QF6 引っ越しのようです
和やかで緩い冒頭からは想像できないようなホラー描写と衝撃的なオチ。
緩急と情報開示のタイミングが絶妙に調整されていて、非常に美しい。
なんなら一位と悩んでどちらにしようか迷っていたくらいだ。
ζ(゚ー゚*ζ ◆ob8ijO4RO6八月の待ち人のようです
二度三度と読み返して「ああ、これもつまり……」と感じ取るホラー。
短編ながら情報量が程よく纏められている上にブーンの切実な懇願に哀れみを感じる。
さてはて、三人はどうなってしまうのか。
想像するだに恐ろしい。
('(゚∀゚∩ ◆lDflfAeUwE川 ゚ -゚)鈴の音が聞こえるようです
禁忌系のホラー。
これもまたオーソドックスな形を取っているが、ドクオくんの言う通り緻密な描写がかえって壁を作っていると思う。
(・∀ ・) ◆evfltpoFGo ( ^ω^)は零感のようです
来るか?来るか?と身構えるこちらをホッとさせた後に最後の最後で……。
僕の好きなお化け屋敷のプロデューサー曰く、出口で安心させてから突き落とすホラーは記憶に残るんだそうな。
まったくもってその通りだと思う。
純粋に怖かった。(-@∀@) ◆q5Dei.01W68割生活のようです
僕の若い頃を思い出してしまい、のたうち回ってしまった。
完成する一歩手前でどうにもやる気が起きなくなる人生って辛いよね。
奇妙な不条理短編であった。o川*゚ー゚)o ◆r65.OITGFA( ^ω^)冷たい掌のようですややのめり込むのに時間が掛かった作品。
ツンが本当の幽霊だと把握するまでに時間がかかったからなのだろう。
二度読み返せばきちんと匂わせているし、描写だってあるので僕がトンマなだけなのかもしれない。
ついでに言うと猶予後の処遇についても触れてもらえたら、ブーンの優越感の強さが出たのかもしれない。
ただもうここら辺の差異は、作り手の好みに大きく左右されるのだと思う。
きっとこのままでも十分好きだと言う人はいる。
なんとも難しい加減だ。【寸評】僭越ながら今回の文戟はモチーフではなく、ホラーというジャンルで競ってもらった。
幅広い作品が集まるなか、僕は初めて三人称というものに挑戦してみた。
文戟に参加してから僕はコンスタントに文を書くようになった。
最初のうちは苦痛で仕方がなかったんだけども、これがどうして、最近はなかなかに楽しい。
実験作を発表しても受け止めてくれる諸氏がいる心算が、非常に安心出来るのだろう。
今後も精力的に参加したいものだね。
-
【二位】赤き瑪瑙は喪に服すようです
壮絶な文量で読者を圧死させてくる体感ホラーだお!
というのは冗談で、圧倒的な読み応えのゴシック・サスペンス・ホラー!
一つ一つの描写が丁寧で、ハイカラな単語がわんさか出てくるのも雰囲気良かったお!
ただ、正直終盤の展開が少し駆け足に感じて勿体なく思ったお……。
トソンが事件を暴いた結果、残された屋敷の人々。特にツンはどうなったのかが気になったお!
なまじサスペンスの色も強かっただけに、そこの種明かしがもうちょっとだけ欲しかったお!
けどそれを補って余りある魅力的な世界観と人物像の数々に惹き込まれて125レスもスイスイ読めたお!
-
(;^ω^)「オゥフ……タイミング被っちゃって申し訳ない!」
【Pick up】
黄泉鏡
死者の蘇生という、王道のタブーがテーマの作品!
話が進む度に不安を掻き立てられる展開はまさにホラー!
ただ、どうして祖父はあんな危険な儀式をまだ子供の( ^ω^)達に教えたのかとか、少しモヤッとする謎がのこってしまったお。
儀式を完遂すれば救われるという訳でもないようだから、余計にそこが強調されたようにも感じたお!
リスクとメリット、そのバランスが大事だと思うお!
あるいは完遂すればツンは無事に帰ってこれたのだろうか?
そこの説明が欲しかった所だお!
引っ越しのようです
今回の参加作品中、ダントツで切ない話だったお。
所謂ホラー的な起承転結ではなくて恋愛小説に近い
平坦にも見えつつ波のある話だったお。
ラストは急展開かと思いきや、読み返してみると実は最初からそうなるべくしてなったと理解出来る内容だったお!
-
八月の待ち人のようです
どんでん返しとはまさにこの事!持ち上げてから突き落とされたような衝撃!
いや突き落とされたのはツンなんだけども!
純愛も行き過ぎればホラー足りうるという良い手本になる作品だったお!
あるいは万事万象、行き過ぎたものはホラー足りうる……?
そんな気付きを与えてくれた作品だったお!ありがとう!
川 ゚ -゚)鈴の音が聞こえるようです
怪奇現象担当の記者が最期に残した手記という体の作品だお!
まずその発想と構成が素晴らしい!
思わず感情移入してしまう展開と恐怖のラストは一見の価値ありだお!
-
( ^ω^)は零感のようです
若者達のわるふざけから始まるというアメリカンホラーではよくあるそれ。
しかし繰り出されるは超リアルなジャパニーズ廃墟アクション!
序盤の「幽霊は人の観測を求めている」話から、中盤の探索シーンでは零感のブーンに心強さを感じる始末。
しかしラストシーンで他の皆が「観測」した事で、それ迄の状態が全て反転、一転、牙を剥く。
思わずヒエッ……と声が漏れた作品だお!
8割生活のようです
やめろ!!!!
僕の私生活を文章に起こすなお!!!!
ってレベルの日常に潜むホラー。
めっちゃ分かる。
読み終えてから嫌な汗が止まらなかった……。
-
( ^ω^)冷たい掌のようです
最初はおやおや幽霊と人間の恋愛モノですかおやおやニチャア……と思いきやそんなこたァ無かった。
俗に言うツンデレ的思考なのかと思い込んでいた所、
ブーンは最初から本音でしか物事を考えておらず、本気でツンの事を鬱陶しく感じていたのだ。
その事実、まさしくホラー。
読者の認識を裏返す事で恐ろしい落差を生んだ凄い作品だお!
紙魚のようです
主人公は怪現象専門の探偵もどき、兄者。
詐欺師ではないが、真っ当な職業でもなし。
そんな彼は破格の報酬に釣られ、いつも通りの怪しい依頼に望む――。
一言で言うと凄いお。
読んだ人にしか、逆に読んだ人なら分かると思うけど、やっぱり「オカルトを信じていない人物」が「怪奇現象そのものに呑み込まれる」っていうこの構図は強い。
整然と読みやすい文章だけに、「文字」の狂気に侵される描写がありありと見て取れて恐怖が倍増だったお!
前作の「海」の時にも思ったけど、抽象的で言語化の難しいものを主題において話を進めるのが滅茶苦茶上手い!
赤き瑪瑙とどっちを二位にするか悩んだけども、今回はボリュームの差で惜しくも三位とさせてもらったお!
-
( ^ω^)「以上だお!」
( ^ω^)「やっぱ執筆機関が長かっただけに、今回は力の入った良作がわんさかで楽しかったお!」
(;^ω^)「いやはや、ホラーといっても実に奥が深いお。百物語企画が思い出される良い時間だったお!」
-
(´・_ゝ・`)「おっと」
(´・_ゝ・`)「こちらこそ申し訳ない」
(´・_ゝ・`)「失礼したね」
-
《投票》
【第一位】('A`)のヘソは名産地のようです
( ´_ゝ`) ◆GmbTh14.y.
オレがこの作品を一位にした理由はただ一つ。めちゃくちゃコエーからだよッ!
途中から何となく嫌な予感はしてたんだがもう、もう、腹がヒュンッてなってロクに読めなかった。つか読み返すのも怖い。兄者の丁寧な文章力も相まってクソ完成度の高すぎるホラーだった。感想薄っぺらくてごめんな。ホントに苦手なんだこういうの。
読み返せないレベルのトラウマ植え付けてきたお前がナンバーワンだ。
【第二位】赤き瑪瑙は喪に服すようです
(´・_ゝ・`) ◆lqtlYOyuz2
霧に包まれた舞台とどこかから漂う血の匂いを強く感じさせながら進む物語にただただ圧倒されたぜ。複雑な人間関係や心理描写も丁寧で読み応えがあった。トソンの正体が明かされると姉妹の歪さや不穏さの原因も分かってスッキリしたぜ。人間のドロドロしたとこ書かせるとえげつねーほど強いなデミタスは。お前の存在が一番ホラーだぜ。
【Pick up】
紙魚のようです
('A`) ◆0x1QfovbEQ
何かの図案とも知れない、のたくりが、紙面に所狭しとひしめき合っている。
その並びや、それぞれの大きさ、種類から察するに、
恐らくこれは、文字。
この二行が秀逸だなと思わず舌を巻いた。兄者が手にとったあやしい本の状態がここだけでよく分かる。過不足ない素晴らしい表現。
違和感があったのは40レス目。>>54
事務所に帰ってからも、体を走リ続ける悪寒に兄者は悩まされた。
文字がテーマになってる作品だから、ここの「り」がカタカナになっているのはなにかの表現だろうとハラハラしていたんだ。展開に伴って本文までも謎の文字に侵食されていくんだろうと期待しながら最後まで読んだから勝手に失望してしまった。ただの誤字かよッてな。ただのオレの展開読み違いなんだけど、勘違いさせるツメの甘さにちょっとガッカリだぜ。それがなかったら二位に入れてた。
【寸評】
夏らしいゾッとする作品ばっかりでヤな感じだったぜッ!
クソデミタスめ、嫌なテーマ出しやがってホント糞。糞がッ。こえーんだよ皆よォ!
バーカバーカ!
もっとホラーを捻って捉える奴多いかなと予想してたら意外と皆正統派ホラーだったな。殺す気かよ。
ああん?泣いてねーよバーカ!
-
('A`) 正直コレは100%こっちのミスだが…
('A`) これでがっかりとか詰めが甘いとか言われるのはやや心外だな…
('A`) 三人称語り手の本文が乱れるということは
('A`) 三人称語り手が誰なのかという
('A`) 三人称形式究極の問題とも関係する
('A`) ここで三人称形語り手の本文が乱れる場合
('A`) それは語り手が作中世界の人物であるしかない
('A`) 兄者と流石の心情を代弁可能な作中世界の人物が論理的にありえるだろうか
('A`) いないのでは?
('A`) しかし語り手が誰なのかということに関しては実は…
('A`) だからこそこの指摘は悔しい、これは単なる表記のミスである以上に俺の敗北を端的に表してる
('A`) 俺は本文をカタカナにする程度の軽薄さでは決して済まさない
('A`) そういう表面的なのは俺が一番嫌いなものだから
('A`) これ以上はポリシーに反するからここまで…
-
今回は悩んだわ
1位
('A`)のヘソは名産地のようです
怖いし上手いし短編として完成されてる
どうにかケチをつけるとしたら、読んでる間は物凄く不気味だが、読後は読んでる間ほどは怖くない、それくらい
2位
引っ越しのようです
正直これを何位にするかが今回の最大の悩みポイントだった
直後にも書いたけどこれはクーが出たとき、正体がわかったから全然怖くなかった
ホラーってお題が出てるどうしても、ホラーとして読んでしまう
そう読むとクーに背景がなさ過ぎるし、ヒロインとして都合が良すぎる、ああこれ幽霊だわって
ホラーってお題じゃなければ、ラブコメか?ドクオ爆発しろや、なんて考えたと思う
しかしこの話の良さはラストシーン以降、物語が終わってから
津波で3.11を連想させるのは計算通りだろうけどクーの正体が知れてたから怖さはなかった
だが、そのおかげで別の効果が俺には現れた
弁当箱と墓、そしてドクオに朝日が差し込んだかのような錯覚と静謐さをまず感じた
そしてクーの年齢、ドクオに懐いた理由、俺が話とは無関係に持つ人の生についての様々な思いへの連鎖
この話は一時的にとは言え物語を飛び出して現実に接続し俺を駆動させた
これはやはり何者にも代えがたい物語の力といえる
マジな話、これは負けたなって思った
文戟中だったし、まだ俺が投下前で、ここで馴れ合うのもあれだなって思って直後のレスでは言わなかったけど
これで怖かったら文句なしだったけど、多分怖かったらこのラストは感じなかったと思う
そこがこの話の面白いバランスだと思う
pick up
赤き瑪瑙は喪に服すようです
-
寸評
('A`) 寸評忘れてたわ
('A`) 前々回、目が滑るって言われて今回は読点の位置を変えてみた
('A`) どうだったかね?
('A`) マジな話ハインの話読んだから、もっと頑張らないと勝てないなって思って
('A`) そうして俺の話のクオリティは上がった
('A`) まあなんか誤字って糾弾されたが…
('A`) それはさておき、なんかの映画で言ってたけど
('A`) 天賦の才とかいうけど
('A`) 才能よりもっと得難いものがあるって
('A`) それはライバルなんだと
('A`) 俺もそう思う
('A`) 文戟がなければ、そもそも紙魚が書かれることも、なかったわけだしな
-
ブログにて感想書きました。そちらへの誘導となりますこと、ご容赦ください。
http://coollighter.blog.fc2.com/blog-entry-373.html
【第一位】('A`)のヘソは名産地のようです
【第二位】赤き瑪瑙は喪に服すようです
【Pick up】(順不同)
紙魚のようです
( ^ω^)は零感のようです
引っ越しのようです
【寸評】
今回は順位付けがとても困難でした
-
《投票》
【第一位】『('A`)のヘソは名産地のようです』
作者 ( ´_ゝ`) ◆GmbTh14.y.
身を抉られる話でしたね!
……なんて、比喩として使いたかった言葉でしたね。
タイトルとユーモラスな文章にまんまと乗せられる。
綺麗に掌の上で転がされる。突き落とされる。
ある種、アトラクションを楽しんでいるような感覚で読める文章じゃないかなぁ。
【第二位】『8割生活のようです』
作者 (-@∀@) ◆q5Dei.01W6
身につまされる話でしたね!
……こっちは比喩で良かったなぁとも言えない話でしたね。
誰が何と言おうと自分にとってはホラーです。
使う道具が違ったとしても、どこまで切に迫ったか、という点に重きを置いてこのお話で。
【Pick up】『引っ越しのようです』
作者 从 ゚∀从◆ogHcBy0QF6
季節に合った一作。
夏の終わりと寂寥感はセットみたいなものだなぁって。
前作と同様に、導入からつっかかりを覚えることもなく、自然と物語の中に入り込ませてもらえました。
【寸評】
お題がジャンルという形式でも、アプローチの仕方は様々だよね。
作者さんたちの個性や工夫が現れていて、今回一番良かった点はそこかなぁって思います!
-
( ´_ゝ`)「投票しまーす!」
( ´_ゝ`)「【第1位】o川*゚ー゚)o ◆r65.OITGFA『( ^ω^)冷たい掌のようです』
「恐怖」を言い換えると、「分からない」になると思う。不確かな予測の中に、ホラーの正体は無数に詰まってるのかな、って今回書きながら考えてたんだけど。
この話は、一人を取り巻く事実だけを、非常に簡潔に語ってある。並べられた事実は一見そっけなく見えたけど、そのそっけない語り口が、読めなかった。読めなくて、怖かった。
語り口、登場人物、その底が見えない怖さ。
シンプルイズホラー大賞。
【第2位】('A`) ◆0x1QfovbEQ『紙魚のようです』
まさに字にのめり込んだ。そののめり込んでる自分も含めて、ホラーの世界の一因になった気がした。
山あり谷ありのボリューミーな作品だったけど、苦じゃないくらいとにかくのめりこめた。
句読点の位置を注意したとのことだったけど、すごく読みやすかったよ。文体も心なしか柔らかくなった気がした。好きだ」
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