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( ^ω^)文戟のブーンのようです[3ページ目]
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彼女にぱしん、と頬を叩かれる音で、わたしの意識は夢から現実へと帰ってきた。
「……」
左の頬を撫でてみても、かすかな痛みすら走らない。夢だから当たり前だ。
単なる夢ならどれほどよかっただろう。あれは遠くなり始めた記憶の残渣。
時間の流れに磨かれて、その輝きと鋭さを増し始めた檸檬色のナイフだ。
わたしがこの夢を見るのはこれが初めてじゃなかった。
かつては毎晩のように見て、目覚めるたびに泣いていた。
いつからか泣かなくなったけれど、それでも泣きたくなるくらいに心は痛む。
時間を確認しようとスマホの画面をのぞき込む。
未読のグループラインが何十件と表示されていたけど、あいにくそれを確認する気分にはなれない。
寝てたと嘘をつくことを決め込んで、わたしはスマホをその辺にそっと放り投げた。
「……トソン」
愛おしく、懐かしい名前を呼ぶ。返事は当然ない。それでいいのだと分かっている。
それでもわたしはいま、彼女のいない寂しさに苛まれていた。
だから、わたしは頭の中で、ひとつの箱を手に取る。積もったほこりを払って、そっとそのふたを開く。
その中にあふれんばかりに詰まっているのは、もう取りに戻れないあの日の忘れ物。
そして、甘酸っぱくて苦い檸檬の香り。
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