[
板情報
|
カテゴリランキング
]
したらばTOP
■掲示板に戻る■
全部
1-100
最新50
|
1-
101-
201-
301-
401-
501-
601-
701-
801-
901-
この機能を使うにはJavaScriptを有効にしてください
|
レス数が900を超えています。1000を超えると投稿できなくなるよ。
【失敗】廃棄小説投下スレッド【放棄】
1
:
名無しさん
:2004/11/27(土) 03:12
コソーリ書いてはみたものの、様々な理由により途中放棄された小説を投下するスレ。
ストーリーなどが矛盾してしまった・話が途切れ途切れで繋がらない・
気づけば文が危ない方向へ・もうとにかく続きが書けない…等。
捨ててしまうのはもったいない気がする。しかし本スレに投下するのはチョト気が引ける。
そんな人のためのスレッドです。
・もしかしたら続きを書くかも、修正してうpするかもという人はその旨を
・使いたい!または使えそう!なネタが捨ててあったら交渉してみよう。
・人によって嫌悪感を起こさせるようなものは前もって警告すること。
56
:
51
:2005/02/04(金) 19:14:24
気づくと、脇田は控え室の長いすで横になっていた。
「ワッキー…?」
「…宮迫さん」
意識が朦朧としている。
頭は割れるように痛い。
「大丈夫か…?」
「はい、何とか…」
何があったんだ…?いったい、俺はどうしたんだ…?
脇田は必死に自分の記憶を手繰り寄せる。
「ヒデさん…そう、ヒデさんは?!」
脇田は頭痛も忘れて跳ね起きた。
「宮迫さん、ヒデさん知りませんか?!」
「……悪い…ギリギリ間にあわへんかった…」
「間に合わないって…何がですか!!ヒデさんはどうなったんですか?!」
「………俺にもよくわからん。ただ、ヒデは汚れた石と一体化した。
完全に<向こう>の人間になってもうた…」
「一体化って何ですか?!なんで白かったヒデさんの石がいきなり黒くなるんですか?!」
脇田の矢継ぎ早の質問に宮迫が大声を上げる。
「だから、俺にもわからんねん!!」
脇田はビクっとした。それに気づいた宮迫は、再び穏やかな声で語りだした。
「悪い…マジで、詳しいことはわからん…ただ、お前なら、ヒデを助けられるかもしれん。」
「俺なら…?」
戸惑う脇田の前に、宮迫は白く輝く石を差し出した。
「お前の石…カルセドニーや」
「カルセドニー…」
脇田はその石に強く惹きつけられた。
「攻撃や防御はできへんから、実戦では役に立たへん。
けど、重要な力を持っとる。」
「重要な…?」
「暴走した石を、封印したり、浄化したりできるんや。
うまいこと使えば、戦わなくても『黒いユニット』の連中をこっちに呼び戻せるやろ…ヒデも含めて。」
脇田は、宮迫の手の中にあるカルセドニーにじっと目を注いだ。
この石を手に取ったら、俺はいつ終わるとも知れない戦いの中に身をおくことになる。
狙われたりすることもあるだろう。
命の危険だって、あるかもしれない。
でも…
高校のサッカー部の先輩だったヒデさん。
俺をお笑いの世界に導いてくれたヒデさん。
なかなか売れなかったとき、俺を励ましてくれたヒデさん。
俺の大切な相方、ヒデさん…
「…やります。」
そう言って、脇田は宮迫の手の中のカルセドニーをしっかりと握った。
あれ以来、脇田は何度も戦いの場に自分の身を置いた。
同じ仲間だと思っていた芸人たちが、傷つけあい、争いあうのを嫌というほど見せ付けられてきたのだ。
そして、石の暴走から解放された芸人たちのうちの何人かが見せた、脇田に対する困惑の目。
脇田はその視線の意味を理解できずにいた。
しかし、その視線の意味を脇田はある戦いの後で知った。
「ヒデさんに…ヒデに引きずり込まれたんだ…」
名もない若手芸人がぽつりと言った言葉。
脇田は、それで理解した。
ヒデは、芸人たちを黒のユニットに引きずり込む化物と化したのだということを。
脇田は再び、自宅の洗面所の鏡に映る自分の姿を見た。
(ヒデさんは、俺が助けるんだ…)
脇田は強い決意の表情を顔に浮かべ、洗面所を後にした。
57
:
51
:2005/02/04(金) 19:16:43
う〜ん…コンビ愛…ですかね?(苦笑
なんか友情ものっぽくなってしまいました。
とりあえず、ペナルティだけにサッカー関係のシーンを取り入れてみたくて…
先ほど本スレの方を見てきましたら、ペナの話を書いてくださってる方がいらっしゃるみたいですね。
こっちはお蔵入りかなぁ…
まぁ、とにかく、ご意見ご感想ご指摘等あればお願いします。
58
:
名無しさん
:2005/02/05(土) 01:21:33
私がペナファンだからかもしれないけど、この話いいと思います。
ヒデさんがどうなったのか、これからどうなるのか、すっごい気になる・・・
サッカーってのも、なんかペナっぽいw
59
:
名無しさん
:2005/02/05(土) 15:22:22
「フローライト」はいつここの山田さんが持ってますよー。
60
:
51
:2005/02/05(土) 17:24:13
>>58
さん
どうもありがとうございます。
>>59
さん
えっそうなんですか?
一応、事前に「登場石」ってとこで確認してみたんですけど・・・
もう一度確認してみます。
61
:
51
:2005/02/05(土) 17:31:44
確認しました。
色違いのようですね〜。
混乱するといけないので、変えます。
どうも申し訳ありませんでした。
以前にペナ登場話を書いていた方はいらっしゃいませんか?
62
:
</b><font color=#FF0000>(t663D/rE)</font><b>
:2005/02/05(土) 23:10:34
>>50
感想&本スレへのコピペ、ありがとうございました。
色々登場人物を出して話を膨らませてしまったので
まとめるのが大変ですが、期待に添えるよう頑張ります。
63
:
名無しさん
:2005/02/06(日) 16:31:21
>>62
期待してます!
64
:
名無しさん
:2005/02/07(月) 02:17:31
以前このスレに小説投下した19という者なのですが、
自分の書いた小説の続編、しかも長め(になるかも)でスピワの井戸田さんが能力に目覚める編、
というのを思いついたのでまたこちらに投下してもいいでしょうか?
以前自分の書いた小説を読んでらっしゃらない方には不親切なものになるかもしれないし、
展開の方もスルーしてもらってかまわない話ですが、本編で出番の多いスピワの過去に関わってしまうので躊躇しています。
皆さんの意見を聞いてから投下の有無を判断したいので、
是非意見のほうお願いします。
65
:
名無しさん
:2005/02/07(月) 02:20:00
すみません、変な文章でした…
×展開の方もスルーしてもらってかまわない話ですが
○展開も職人さんたちにスルーしてもらってかまいませんが
66
:
ブレス </b><font color=#FF0000>(F5eVqJ9w)</font><b>
:2005/02/07(月) 07:47:33
>64-65
いいと思いますよ。
ここは試験的に小説を投下する場所(?)みたいなので。
好評なら本スレに、と言う流れみたいです。
それより、続きがあるなら読んでみたい!
めちゃくちゃ期待してます。
67
:
19 </b><font color=#FF0000>(Ps/NPPJo)</font><b>
:2005/02/14(月) 11:50:22
>ブレスさん
ありがとうございます!
お言葉に甘えさっそく投下させていただきます。
今回の話の時間列は前回の話の次の日になります。
ちょっと長くなるかもしれないのですが、しばしお付き合いください。
68
:
19 </b><font color=#FF0000>(Ps/NPPJo)</font><b>
:2005/02/14(月) 11:58:57
小沢の様子がおかしいと、彼を知る人間の内のいくらかが相方である井戸田に警告めいた助言をしてきたが、
それらを全て井戸田は笑って聞き流した。
それらの助言に対して小沢自身が井戸田になに一つ不審に思われるような言動をしなかったせいもある。井戸田から見た小沢はいつもの小沢でしかなった。
昨日と同じような今日。全てがバランス良く存在していた世界。
少なくとも井戸田にとっては。
ノスタルジア
その日は朝から立て続けに仕事が入ったせいか、
夕方に収録予定であるテレビ局の控え室に入ったスピードワゴンは2人共が程度の違いはあるが一様に疲れた表情をしていた。
2人の他には誰もいない控え室の椅子に向かい合いだらしなく腰掛けながらも、
それでも井戸田のほうは昨日久方ぶりのオフだったせいか心なし体が軽い。
しかしそれに対し井戸田と同じくオフだったにも関わらず
小沢のほうは机に突っ伏したままピタリとも動かない。
そういえば朝から顔色が優れないようだったし、今日は言葉数も少ない。
(風邪でも引いたのかな?)
ぼんやりと井戸田は考えたがなんとなく本人には訊けずにいた。
というよりも小沢のほうがその質問を発するのを躊躇わせるほどの痛々しい空気を出していたせいか。
とりあえず寝かしとくかという結論に達すると、井戸田は1つ伸びをして気を緩める。
机の上のペットボトルを持ち上げるが、そのかすかな音に反応した小沢がゆっくりと顔を上げた。
69
:
19 </b><font color=#FF0000>(Ps/NPPJo)</font><b>
:2005/02/14(月) 12:00:45
「ごめん、起こしたか」
と井戸田は謝るが、小沢は首を振りながら起き上がった。
言葉を発してはいないが、井戸田が知っているいつもの小沢の表情だ。
しかし沈黙が苦しくて、それを壊すように井戸田はなにげなく話を切り出す。
「小沢さんはさ、昨日の休みどうだったの?」
その質問に、一瞬小沢が眉をひそめたのを見た。
「…普通。買い物に行ったくらいかな」
井戸田、なにも見なかったかのように慎重に振舞う。
「へぇ〜、なんかいいのあった?」
「特になかったよ。それより潤さんは?昨日の休みどうだったの?」
今度は井戸田が眉をひそめた。明らかに小沢は話を反らせたがっている。
乗るか乗るまいか井戸田は躊躇したが、それよりも言葉を上手に発することが出来なくてうんとかあぁなどと生返事をする。
話題ならいくつかある。
①小沢の調子は大丈夫なのか
②今日のネタ合わせする?
③昨日石を拾った
…無難なのは③かな。
とっさに判断すると自然に頭の中に台詞が浮かぶ。
俺はさ、昨日すごい経験しちゃってさ。道歩いてたときに石拾っちゃて。なんかキレイな石だなって大した考えもなく家に持って帰って、それでも気になるから調べてみたらなんとそれ、宝石だったんだよ。シトリンっていうの、小沢さん知ってる?すごいよね〜道端で宝石拾うなんてさ、どれだけラッキーだっていうの。でもさ、逆に考えるとこれって絶対落し物だよね。ただの石かと思って持って帰ってきちゃったけどさ、落とした人探してるかもだよなぁ。交番に届けるとか、元の場所に返したほうがいいのかな?ねぇ、小沢さんどう思う?
そこまで考えるとパイプ机を挟んだ向かいの椅子に座っている小沢を見つめる。
しかし言うべき言葉が見つかったのに、出すべき声が出ない。
そんなあたりさわりのない話題じゃなくて、自分は小沢になにかを聞かなければならないのにもっと言わなくてはならないことがあるのに、そのなにかが分からなくて井戸田は黙り込んだ。
70
:
19 </b><font color=#FF0000>(Ps/NPPJo)</font><b>
:2005/02/14(月) 12:10:09
「潤さん?」
黙り込んだまま俯いてしまった井戸田をいぶかしげに思ったのか、小沢は井戸田の顔を覗き込もうとする。
が、前かがみになろうとするのと同時に、なにかに詰まったかのようにとっさにわき腹を押さえた。
「…小沢、わき腹どうしたの?」
「なんでもないよ、」
井戸田の心配する声に小沢は何事もなかったかのような顔でわき腹から手を離した。
その言葉と態度に、井戸田のなにかがキレた。
黙ったまま勢いよく椅子から立ち上がり机を回り込むと、
その行動に驚いて思わず椅子を引いた小沢の肩口を押さえ込み、片手でシャツをめくり揚げる。
そうして見たものに、井戸田は息を呑む。
紫を通り越しどす黒く変色した痣が小沢のわき腹の広範囲を覆っている。
思いもしなかった光景に、井戸田は知らず小沢から一歩身を引いた。
「…どうしたの、これ、」
「階段から、」
小沢の言葉を遮るように井戸田が歯軋りをする。
「小沢、今朝から調子悪かったのはこれが原因か?」
「……」
「…答えろよ」
「……」
「小沢!」
怒鳴りながら小沢の襟首を掴もうとしたそのとき、
「すみませ〜ん」
という間延びした声と共に軽めのノック。
唐突な音の乱入に面食らいながらも小沢が反射的に「どうぞ」と扉に呼びかける。
井戸田も我に返ったように小沢から離れた。
「失礼しま〜す」
緊迫した空気を壊すように開いた扉からひょっこりと顔を出したのは、
今日収録予定の番組AD。
71
:
19 </b><font color=#FF0000>(Ps/NPPJo)</font><b>
:2005/02/14(月) 12:17:11
井戸田より扉の近くに立っていた小沢はあからさまにほっとした顔で戸口に立つ。
所在のなくなった井戸田も仕方がないので小沢が座っていた椅子に腰を下ろした。
「どうしたの?もう出番?」
「いえいえ、それはもうちっと時間が掛かるみたいなんすけどね。」
小沢より10センチは低かろうADは、すみませんと口に出しながらもちっとも悪びれた様子を見せないで
自分の胸ポケットから半分に折られた紙切れを差し出す。
「なに、これ?」
紙切れを受け取りながらも小沢の困惑した声を井戸田は聞いたが
(今小沢の顔見たら、絶対殴る)という思いから、ただただ目の前の机をじっと見つめた。
相手に心当たりのない小沢の様子を感じ取ったADも、困ったように首をかしげた。
「いえさっきね、廊下ですれ違った人が、小沢さんに渡してくれ〜っていうから」
心当たりないんなら僕がなくしちゃったことにしときますけど、と付け足す。
小沢はうーんと唸ると、
「名前、名乗んなかったの?」
と言いながら紙切れを広げた。その瞬間、小沢の表情が凍る。
「一応訊いたんすけどね、僕も。でもこのメモ渡せば分かるって…小沢さん?」
紙切れを凝視したまま止まってしまった小沢をADが訝しげに呼びかけ無意識に小沢の手元を覗き込もうとするが、
その視線に気が付いた小沢は避けるように紙切れを折りたたむ。
「…ありがとう、知り合いだったよ」
ぎこちなくお礼を言う小沢は井戸田あたりが見たら眉根を寄せてしまうような酷い笑顔だったが、
付き合いの浅いADはその表情に安心した声をだした。
「あぁ〜よかったっス。人違いだったらどうしょうかと思いました」
「本当にありがとう。助かったよ」
再度お礼を言う小沢に、照れたように手をパタパタと振る。
「いいえ、じゃあ僕仕事に戻りますね。また出番の方になりましたら声かけに来ますんで。」
無事仕事を達成したADは、一礼すると音を立てないようにそっと扉を閉めた。
パタンという乾いた音を聞くと、井戸田は待ちかねたように椅子から立ち上がった。
まだまだ小沢に言いたいこと、聞きたいことは山ほどある。
「小沢さんさぁ、」
「潤」
小沢が通常よりも低い声で井戸田を呼ぶので、負けじと井戸田も身構える。
「分かってると思うけど、」
「ちょっと俺トイレ行って来るね」
「うん、トイレ。ってトイレ?」
素っ頓狂な声を上げながらもその言葉に肩透かしを食らった井戸田は、思わず頷いた。
72
:
19 </b><font color=#FF0000>(Ps/NPPJo)</font><b>
:2005/02/14(月) 12:26:27
控え室を出ると小沢は部屋の中と廊下との温度差に思わず身震いした。
上着を取りに戻ろうかと考えたが、しかし迷っている時間も
戻った際の井戸田への適当な言い訳も考え付かない。
(耐えられないほど寒いってわけでもないしね)
気を取り直し廊下を歩みだす。
出口へと向かい歩いているうちに気が流行り早足になり、早足が駆け足へと変わる。
足を動かすたびにわき腹が痛んだが、立ち止まる気にはならない。
人の流れに逆らい従いながらも何人か知っている顔を見つけるが、
焦りといらつきのため会釈すら出来なかった。
途中すれ違ったおぎやはぎ矢作がすれ違いざま小沢に声を掛けたが、
しかしあいにくそれに応えている余裕は小沢にはなかった。
ただただ走り続ける。
自動ドアをもどかしげにくぐると、小沢は自然に握り締めていた手をゆっくり開く。
汗ばんでいる手の平には、先ほど渡されたメモ用紙。
昨日の件、誰にも知られたくなければ指定の場所まで。
石のことで相談あり。
一読すると息を吸い込む。
額に浮かんだ汗を服の袖で拭いあせる気持ちを落ち着けると、
控え室に置いてきた井戸田のことが気に掛かったが、小沢はそれを振り切るように駆け出した。
73
:
19 </b><font color=#FF0000>(Ps/NPPJo)</font><b>
:2005/02/14(月) 12:28:19
今回はここまでです。
次回からもう少し話が動く予定です。
74
:
ブレス </b><font color=#FF0000>(F5eVqJ9w)</font><b>
:2005/02/14(月) 12:31:41
>68-72
リアタイ更新キタ!!
やばい、めっちゃ面白くて今何してたか忘れちゃいました(笑)
19さんGJです。
続き楽しみに待ってますね。
75
:
19 </b><font color=#FF0000>(Ps/NPPJo)</font><b>
:2005/02/14(月) 12:32:14
あとすみません、やはり連載になりそうです。
なので今回に限りトリップ付けます。
76
:
</b><font color=#FF0000>(arrowTBE)</font><b>
:2005/02/14(月) 20:56:54
めっちゃ面白いです!
続き楽しみにしてます!!
77
:
名無しさん
:2005/02/16(水) 19:39:40
◆IpnDfUNcJoさんの『灰色』(base編)の続きを、
自分が先を読みたいがためだけに書いてしまい、おまけに、
・まだ出ていない、笑い飯哲夫、ダイアン西澤・津田の能力が思いつかない
・base行った事がなく、イマイチ画を想像できない
等の理由で、完結はおろかバトルに行く前に行き詰ってしまいました(´・ω・`)
人様の作品の続きを勝手に書いている等、問題だらけの代物なので、
ここに投下するのも躊躇しています。
よろしければご意見いただければ幸いです。
78
:
名無しさん
:2005/02/17(木) 14:26:57
77>いや、ここなら良いと思いますよ?
79
:
77 </b><font color=#FF0000>(sB4AwhxU)</font><b>
:2005/02/18(金) 01:14:54
>78
何でもあり小説投下スレが出来たので、
そのうちそちらに投下させていただくことにしました。レスどうもです。
80
:
77 </b><font color=#FF0000>(sB4AwhxU)</font><b>
:2005/02/18(金) 01:38:04
トリップ変えます
81
:
77
:2005/02/18(金) 01:42:28
あれ…よくわからん事なんかするもんじゃないですねorz
82
:
名無しさん
:2005/02/18(金) 05:09:25
>>77
他の作者さんの話の続きは此処でいいと思います。
廃棄スレッドなので良し悪しもあまり気にする必要はありません。
只でさえ進みがゆっくりなのですから、そんなにスレッド立てても利用しきれませんし。
他の作者さんの作品の続きを勝手に書いてみたり、
パロディ小説を書いてみた場合は此方に投下する事にしては如何でしょうか。
83
:
</b><font color=#FF0000>(I3kW9CIA)</font><b>
:2005/02/18(金) 18:20:42
かなり前に品庄話を書いていた者なのですが、
話の続きをここに投下しても良いですか?
(本スレはシャロンさんが書いていらっしゃるようなので)
84
:
名無しさん
:2005/02/18(金) 22:15:34
>>83
此処か、または番外編や短編としてなら本スレにも投下できると思いますよ。
85
:
名無しさん
:2005/02/19(土) 13:34:18
先に書いていたのはI3kW9CIAさんですから、本編として本スレに落としてもいい気ガス。
シャロンさんは無許可で書いたのかな?
86
:
名無しさん
:2005/02/19(土) 21:45:20
そういえば、シャロンさんはいきなりでしたね。
87
:
シャロン </b><font color=#FF0000>(71qVmjiU)</font><b>
:2005/02/20(日) 00:42:00
一応、事前に「以前ペナの出てきた話を書いていた方は・・・」のようにお聞きしたのですが・・・。
I3kW9CIAさんがもう一度書きたいと仰るなら、こちらを番外編にしていただいて構いません。
88
:
シャロン </b><font color=#FF0000>(LwUQlNuI)</font><b>
:2005/02/20(日) 00:43:48
すいません、PC買い換えたんでトリップがわからなくなってしまいました・・・。
これ以降、こちらのトリップでお願いします、
89
:
</b><font color=#FF0000>(I3kW9CIA)</font><b>
:2005/02/20(日) 13:39:27
>シャロンさん
私が今あの話を完全に完結できるかどうか分かりませんし、
品庄以外の芸人さんの小説を書くかもしれないので、
こちらの作品の方を番外編とさせてください。
90
:
77 </b><font color=#FF0000>(IbsntW6M)</font><b>
:2005/02/21(月) 01:26:13
トリップ変えました。
なんでもありスレが削除となったりしたので、こちらに投下させていただきます。
82さんアドバイスありがとうございます。
次の作品は◆IpnDfUNcJoさんの『灰色』(base編)の続きですが、
あくまで「勝手に書いたもの」です。
了解をいただいたわけでもないのに投下することをお許し下さい。
91
:
77 </b><font color=#FF0000>(IbsntW6M)</font><b>
:2005/02/21(月) 01:27:25
脚力を高める石の力を使って先を急ごうとする大吾を、ノブは懸命に留めつつ、
そのうちに劇場の扉が見えてくる。
感情のままに突っ走ろうとする大吾を、ノブは久しぶりに見た。
先ほどの西田とのやり取りで、大吾はかなりショックを受けたようだった。
ノブは、性根が大らかなせいか、大吾ほどの拒否反応は起こらなかったが、
大吾の反応はこれまでの笑い飯との付き合いを思えば当然だろう。
しかしノブとてこれからの事を思うと、心中は鈍い色の雲が立ち込めているように重く苦しかった。
ふと少し斜め前の西澤を見れば、先ほどから何度も走らされているせいか、幾分疲れた顔。
しかし相変わらずの無表情であったので、(相方の事心配しとるんか)と思えるほどだった。
劇場に向かうことを促したのも大吾だし、特に必死に走るわけでもない。
西澤はただ大吾に追随しているといった感じだった。
劇場のドアは開いていた。まるでもう戻れない所への入口のように、3人には感じられた。
中に津田と笑い飯がいる事は分かっている。
3人ともはどこか意を決したように、中へ足を踏み入れた。
目に入ったのは普段と変わぬ様子の笑い飯と、傍らには、捕らわれいかにも不安顔な津田。
「おお、みんな。」哲夫はこちらを向くと親戚の叔父さんのように手招きをした。
「よぅ来たな。」同様に親しげに挨拶する西田。
先程の操られた芸人らとは明らかに違う笑い飯の様子に、違和感を覚えたのはノブだけではないはずだ。
92
:
77 </b><font color=#FF0000>(IbsntW6M)</font><b>
:2005/02/21(月) 01:28:11
「先に話、聞かしてもらってもいいですか?」すぐに本題に入ろうとする大吾。
「ええよ。」喧嘩腰の大吾に哲夫は意外なほど素直に応じた。
「なんでアンタらは人の石を奪おうとするんですか。」大吾の口調は刺々しい。
「それが一番聞きたいことやと思てたわ。俺らは石の争いに乗ったんよ。理由はそれだけやね。」
哲夫は普段のようにあっけらかんとしたものだ。
「今日はダイアンの石だけを貰うはずやったけど。せっかくやから千鳥の石も欲しいね。」
哲夫は付け足して言う。
「ホンマは千鳥も誘おうと思てたんやけど無理みたいやな。」
西田は千鳥を値踏みしているかのような目で見た。
ノブの横目には、段々険しくなっていく大吾の表情。
笑い飯の言葉は、大吾にはどのように捉らえられたのだろうか。
「大吾、これはなゲームみたいなもんや。割り切っていこうぜ。」
不機嫌な大吾に、西田はその場に似つかわしくない明るい声を放つ。
「なんで笑い飯がこんなことするん?笑い飯はそんなんやないやろ。」
大吾は耐え切れないといった風に声を大きくした。
「大吾の言う通りや。そんなまでして石が欲しいか?」ノブも続いた。
何で笑い飯が?2人をよく知る千鳥だからこそ、その思いは強い。
「笑い飯なら石なんか必要ないやろ。」ノブは更に続けた。
しかし、次の哲夫から投げかけられた問いにノブは黙った。
93
:
77 </b><font color=#FF0000>(IbsntW6M)</font><b>
:2005/02/21(月) 01:28:52
「ホンマにそう思う?ノブ?」哲夫の思わぬ問い。
「…。」その問いのトーンはいつもの哲夫より低く、ノブの思考は一瞬妙な感情に囚われる。
しかしノブの脳が働きだす前に、西田に追い討ちをかけられる。
「ノブ、お前のその石があったら、どんなこと出来るか分からんか?」
西田の口調はまるで、小学校の先生が聞き分けのない生徒を諭しているかのようだ。
しかし、言っている事は悪魔の誘惑のようにノブの脳裏をえぐった。
「…。」西田の言葉にノブは大きい事小さい事色々思い浮かべたが、
1つあってはならないことが浮かんだ。
それは芸人としてあるまじき行為だった。
思いついた事が憂鬱で、曖昧な顔でいることしか出来ない。
「例えば…」黙ったままのノブを尻目に、哲夫が口を開いた。
「人を笑わせたりとかね。」例えば…と言う割にいきなりノブの図星を付く哲夫。
「そんなん、絶対あかんやろ!」大きく心臓が鳴るのが分かった。
自分がそんな事を少しでも考えていたと認めたくもないし、大吾やダイアンにも思われたくない。
その思いがノブに大声を出させたのだろうか。
「その他にも、吉本の社員さんになんやかんやしたりね。その石なら色々出来るよ。」
哲夫の口調は相変わらず軽々しい。
「ノブの石は「お前ら笑え」言うたら笑うんやろ?ええ石やないか。」哲夫は言った。
「最悪や。」大吾は吐き捨てるように呟いた。
94
:
77 </b><font color=#FF0000>(IbsntW6M)</font><b>
:2005/02/21(月) 01:29:34
「でもな、俺らかて石なんか使いたくないよ。」と西田。
「けどもう良い石持ってないとアカンようになってんねん。」
西田は諦め半分といったような顔をしていた。
「アカンってどういうことやねん。」
ノブには西田の言っている事が曖昧すぎてよく分からなかった。
「だからってな!…」
一方で急に大声を出す大吾。そちらを向くと大吾は何かに気付いているようだった。
しかし、続く言葉は哲夫に遮られた。
「言いたい事は分かるよ。大吾。でもな、俺らがなんぼ他よりおもろくてもな、
石がない限りはアカンよ。」
返ってきたのは石の虜になったかのような哲夫の言葉とどこか冷たさのある目。
「ノブ」西田が口を開く。
「ノブの思てる程、周りで石を仕事に使てる奴は多いんやで。」
話に着いていけてない感のあるノブに西田は告げた。
その瞬間ノブは自分が少し天を仰いだような気がした。
仕事で石の力を使っている奴がいる。西田が告げたその事実は衝撃的だった。
しかし、どこかそれを既に知っていたような自分がいる。
(あって欲しくなかった)そう心の中で呟いた。
石を使って客を笑わせるような者に芸人である資格があるわけがない。
力の石が自分たちを巻き込み、急激に周りを変化させているのを感じた。
呆然とした様子のノブに言うともなしに西田は呟いた。
「石の力には誰も逆らえへん。」
「だから石が欲しい。」静かなbaseに西田の声だけが響く。
95
:
77 </b><font color=#FF0000>(IbsntW6M)</font><b>
:2005/02/21(月) 01:30:51
ほんの少し沈黙が流れ、しばらく黙っていた大吾が静かに口を開いた。
「ていうかな、笑い飯がそんなになってしまったら、終わりや。」
意外にも口調は冷静だった。しかしノブには大吾の怒りや悔しさが伝わってくる。
ノブの思いも同じだった。
笑い飯が地力ではい上がってきたのは千鳥が一番知っている。長い間近くにいたのだから。
今更、石に頼ろうとするなんて、頭がおかしくなったとしか考えられなかった。
「ワシらだけは石なんぞ使わんでもやってみせるわ!目ぇ覚ませ、笑い飯。」
大吾は強く言った。
単なる仕事の後輩でも、年下の友達でもない、それなりの関係がある。
だから大吾の言葉には力があった。
しかし
「お前らこそ目ぇ覚ませ。もう石ない芸人は舞台にも立てなくなるで。」
大吾の思いは届かない。
石が芸人にとって絶対必要な物であるかのように、大吾の言葉を軽く撥ね付ける西田がいた。
「俺らはただ身を守るために石を奪うだけやし、逆に奪われたら取り返すだけや。何がいけない?」
「お前らは今自分がしとることが分からんのか!」
大吾は怒鳴った。周囲を平気で傷つけようとする、その行為がいけないと何故気付かないのか。
「え。さっき言うたやん。」
全然分からない、とでも言いたげな西田に、明らかに失望の顔色を浮かべる大吾。
2人は変わってしまった。出会ってからの数年間がノブの頭を過ぎった。
石の力が2人を変えたのか、それとも…。
96
:
77 </b><font color=#FF0000>(IbsntW6M)</font><b>
:2005/02/21(月) 01:31:46
「さて、そろそろエエ時間やけど、西澤はどうするの?千鳥は石渡す気は全然無いみたいやけど。」
いけしゃあしゃあと言葉を紡ぐ哲夫を千鳥は睨んだ。
「封印してもらったらええんや。白のなんとかに!」
ノブは苦し紛れに藁にもすがりたい気持ちで、噂で聞いた程度の白のユニットのことを叫んだ。
「甘いわ。みんな芸人や。同じこと考えてるに決まってるわ。」軽く一蹴する哲夫。
しかしその時、哲夫の表情が少し歪んだことに気付いた者はいなかった。
「…1つだけ分からんことがあるんですが。」相変わらずの表情で西澤は疑問を投げかける。
「ん、何?」と哲夫。
「どうして俺らやったんですか?」
「石やて。」津田が西澤に言ったが、哲夫は無視する。
「baseの中なら誰でも良かった。」クソ真面目に言う哲夫。
「犯人みたいに言うな。」小声でツッコむ津田とノブ。
「でも反省はしていない。」西田の声が皆の脳に直接響いた。
アホな事に力使うな、津田とノブは怒りゆえにそう思うに留めたが、哲夫だけは笑った。
「まぁ誰でも良かったわけでもないけどね。結構インパクトあったやろ。」
哲夫は少し楽しそうに言った。
「これでこの辺の石を持ってる芸人は俺らに興味持つはずや。」
西田も少し声を弾ませている。
「さて、どうするの西澤?」哲夫は問いかけた。
97
:
77 </b><font color=#FF0000>(IbsntW6M)</font><b>
:2005/02/21(月) 01:37:27
以上です
能力の設定を考えるのが苦手なので、この続きを書くことができず行き詰ってしまいました。
ややこしいものを投下してしまい申し訳ないです。
読んで下さった方がおりましたら、付き合っていただきありがとうございました。
98
:
名無しさん
:2005/02/21(月) 02:57:56
>77様
乙です。意思のすれ違いが切ないですね…よかったです。
所で、当方も作品を投下したいのですがいくつか問題があります。
まだ作品は投下されていないものの、構想中かもしれない方の
使用芸人、石が被るのです。
話自体は本筋に食い込まない、しかもかなりあっさりした話なのですが、
廃棄とはいえこのようなものは大丈夫でしょうか?被ったのは偶然なのですが…。
99
:
“Black Coral & White Coral” </b><font color=#FF0000>(t663D/rE)</font><b>
:2005/02/21(月) 02:59:08
ええと、以下の話は本スレにいきなり投下するには無茶が多いので
これらが大丈夫かどうか一度こちらに投下します。
無茶な点
・小沢さんがトリップしている
・さまぁ〜ず(この話の中ではバカルディ)が2人とも白寄りである
・10年近く前から白と黒の戦いは密かに続いていた
一つ目は話の展開上しょうがないのですが、二つ目と三つ目は他の方の
話にも影響するかなと思いまして。
念のためにこのような方法を使わせてもらいました。御了承下さい。
これで特に問題がないようでしたら、後で本スレの方に改めて投下します。
100
:
“Black Coral & White Coral” </b><font color=#FF0000>(t663D/rE)</font><b>
:2005/02/21(月) 03:00:57
本スレ
>>20-26
の続き
どこか濃厚で、それでいて暖かい金色の光。
それはライブの終わりに舞台に現れた時、浴びせられるライトや客席からの満足げな視線に似ていて。
ネタを演って疲れた身体や心を癒やし、次への励みを与えてくれるそれらのような光は
芸人達をしばし包み込んだ後、ゆっくりと薄れていった。
「・・・赤岡っ!」
やがて視界が元通りになっても、まだ少し感じる余韻を破るかのように上がったのは、島田の声。
彼の目前の床の上には、キョトンとした様子で座り込んでいる、黒い髪の長身の男がいて。
「何だよ、この・・・馬鹿ぁっ!」
よろよろと力なく歩み寄り、床にひざをついて。
どこか叱責するような声と共に島田は男に・・・赤岡に腕を伸ばしてしがみ付いた。
その細い腕は空を切る事なく、しっかりと赤岡の身体を捉える。
「余計な手間・・・掛けさせやがって・・・・・・」
「・・・・・・悪い。」
しばし島田の行動の意図が掴めなかったのか、不思議そうな表情を浮かべていた赤岡だったが
フッと口元に笑みを浮かべ、そう島田に応じてみせた。
「でも、ああしなきゃ、お前の事・・・助けられないと思ったから。」
あの時、落下してくる鉄骨を避ける事自体は赤岡にとってそう難しい事ではなかった。
しかし、鉄骨と一緒に島田も降ってきていた以上、彼を受け止めて逃げようとすれば
どうしても間に合わなくなる。
黒珊瑚のポルターガイスト能力でも、さすがに空中の島田を動かす事まではできない。
ならば。
虫入り珊瑚で島田の落下の軌道を変え、己の残りの存在をかき消して鉄骨を回避すれば。
「俺が助かっても、お前が消えたら意味ないだろ・・・本当に・・・。」
赤岡にしがみ付いていた腕を放し、その頭に軽く拳骨を見舞って島田が憮然と赤岡に告げる。
「その点では・・・まぁ・・・信頼してましたから。」
島田と、そして小沢の事を。そんな言葉の最後の方は口にせず、赤岡は視線をもたげて小沢の方へ向けた。
虫入り琥珀の力が通じなかった小沢なら、何とかして自分を消滅から救うだろうと。
都合の良い信頼ではあるが、実際にこの人はそれに応じてみせた訳で。
「小沢さん・・・?」
淡い青緑の光をこぼすアパタイトを手に、じっと佇む小沢に赤岡は声を掛けた。
「・・・・・・・・・・・・。」
小沢は、答えない。
焦点のあっていない瞳を虫入り琥珀に向けたまま。
「・・・小沢さん?」
島田も小沢に呼び掛ける。それでも、小沢はピクリともしない。
「小沢さんってば!」
再度呼び掛けた島田の声の調子に、3人から少し離れた位置にいた井戸田と江戸むらさきの2人も
何か異常があった事を察して駆け寄ってきた。
「小沢さんっ!」
井戸田が呼び掛ける声にも、小沢は虫入り琥珀にアパタイトの力をぶつけた時と同じ姿勢のまま、
まるで彫像のように身動き一つ取りはしなかった。
101
:
“Black Coral & White Coral” </b><font color=#FF0000>(t663D/rE)</font><b>
:2005/02/21(月) 03:02:11
アパタイトの力を虫入り琥珀に対して行使した、その時。
小沢は貧血を起こした時のような全身の力が抜ける感覚に襲われ、視界も不意に白く染まってしまった。
それからどれだけ時間が経ったのかはわからないながらも、目の前を覆う白い幕のようなもやが晴れて
次に小沢の前に広がっていたのは、青い空と風にそよぐ緑だった。
・・・ここは、どこ? それに、みんなは?
先ほどまで自分が立っていた廃工場とは異なる、どこかの公園とおぼしいのどかな光景に
そして井戸田や島田、江戸むらさきの2人の姿が辺りに見られない事に、当然のように小沢は戸惑う。
・・・あと、これは一体?
もう一つ彼を戸惑わせたのは、そんなのどかな公園には似合わない不穏な気配を漂わせながら
小沢の目の前で2人の青年を取り囲む若者達の姿だった。
これは昼間に再放送されている昔の2時間サスペンスかと思うほどに、彼らの洋服や髪型などのセンスが
揃いも揃って4〜5年近く昔のそれである事に小沢は何とも言えない違和感を感じる。
「あ、あのー・・・・・・」
手をあげで恐る恐る小沢は若者達に訊ねようとするけれど、掠れた小沢の声は彼らの耳に届かなかったらしい。
それ以前に、若者達はすぐ側に現れたにも関わらず、小沢には気付いてもいない様子で。
ただすぐ前にいる2人組の方にのみ、目を向け意識を向けているようだった。
「ようやく追い詰めたぞ・・・いい加減に大人しく、例の石・・・虫入り琥珀を渡して貰おうか。」
「・・・・・・えっ?」
若者達のリーダー格とおぼしい男が、2人組に告げる。
その内容もさることながら、男の声に聞き覚えがあり、小沢は小さく驚きの言葉を漏らした。
・・・確かこの人、3年前に芸人辞めて実家を継いだんじゃなかったっけ?
しかし男や若者達が発するオーラは黒のユニットの芸人達独特の澱んだモノ。
一般人には発する事など出来ない物であろう。
「・・・申し訳ありませんが、お断りいたします。」
どうにも状況が理解できない小沢の耳に、若者達が作る輪の中から凛とした良く通る声が届いた。
「と、言いますか。あなた方黒の側の人間に渡す石など、当方には一つもございません。」
この声にも小沢は聞き覚えがある。ただ、少し記憶にある声よりも不遜な若さが感じられるけれど。
「お断りだァ?」
もしかして・・・と小沢が頭の中で仮定を組み上げている最中、リーダー格の男が素っ頓狂な声を上げた。
「馬鹿か? この状況で・・・・・・素直にこっちに噂の虫入り琥珀さえ渡してくれりゃ、
お前だって顔をボコボコに腫れされて収録現場に行かなくても済むんだぜ?」
なぁ、西園寺 守クンよ?
・・・やっぱりか。
ドラマの役名で名を呼ばれ、憮然と眉をしかめて見せた2人組の片方の顔が若者達の隙間から見えて、
小沢は己の仮定に根拠が与えられたように思え、声にならない呟きを漏らした。
彼は、アリtoキリギリスの石井 正則。ならば彼の傍らでオロオロする青年は相方の石塚 義之だろうか。
彼らもまた若者達同様に一昔前の格好をしているようで、一番最近に小沢が見た彼らとは
別人かと思うほどの垢抜けなさ。
しかし、ここではその格好が正しいのだろう。
どういう原理かはわからないが、多分小沢が今見ている光景は、かつてどこかで起こった出来事。
虫入り琥珀が吸い込み、己の内側に溜め込んだ誰かの記憶の欠片。
現在盛り上がっているとされるお笑いブームの前に、激しく燃え上がったお笑いバブルの時代にも、
石とそれを巡る戦いが存在していたところで、決しておかしい話ではない。
それ故に、異物である小沢の声は若者達には届かず、その姿も彼らの視界に入る事もなく。
102
:
“Black Coral & White Coral” </b><font color=#FF0000>(t663D/rE)</font><b>
:2005/02/21(月) 03:03:16
「どーすんだよ、何か・・・アテでもあるのかよ!」
どっしりと構えた石井とは裏腹に、石塚は顔を青ざめさせながら彼に問うた。
「石井さん、もう結構石を使っちまってンだろ? これ以上長い事あの力は使わせられねぇし・・・
それに、俺の預かったあの石は光りもしねーし・・・。」
「・・・馬鹿っ、よりによって相手の前で暴露するな!」
動転する余りだろうか、それとも天然だからだろうか。
石塚が発する言葉に本来ボケである筈の石井がツッコミの叱責を入れる。
けれど一度口をついた言葉は簡単に訂正できるはずもなく。リーダー格の男の口元に笑みが浮かんだ。
「ふぅん・・・何げに窮地なんだな。お前ら。」
「まぁ、やってみないと・・・わからないと思いますが?」
身長差から見下ろされる形になるリーダー格の男の視線を、真っ向から睨み返して石井は男に告げる。
石井のシャツの胸ポケットの中で何かの石が輝き始める気配を感じ、傍観するしかできない立場の小沢も
その表情を自然と引き締めていく。
「お前ら、やっちま・・・・・・」
周囲の虚ろな目をした若者達に、リーダー格の男が指示を出そうとした、その時。
カッと上空に蒼い稲光が煌めき、走る。
光に遅れるようにバリバリと音も轟き、リーダー格の男の言葉は驚きから途中で止まってしまった。
「あれは・・・しめた、石塚くん!」
思わず小沢が見上げた空は相変わらず青く晴れ渡っていて、稲光が輝くような状態ではない。
青天の霹靂という言葉もあるけれど、これは一体・・・そう小沢が思考する傍らで、石井は石塚に呼び掛ける。
「あ、はいっ!」
素早く呼びかけに応じ、重心を下げた小さな石井の背中に石塚が強引にしがみ付くと
石井は低い体勢のまま目の前に若者がいるにも構わず走り出した。
「お・・・お前らやっちまえ!」
改めて発されるリーダー格の男の指示で、虚ろな目をした若者達が一斉に動き出す。
しかし、最初の一歩でスピードに乗った石井は石塚を背負ったまま若者の一人に突っ込んでいった。
彼が胸ポケットの中に持つ石は、ルチルクォーツ。
己の身体に人間離れした・・・ロボット並のパワーと強度を持たせるその力を用いての体当たりに
若者はくの字に身体を折り曲げつつ跳ね飛ばされ、数秒宙に浮いた後に背中から地面に叩き付けられる。
ぐぇっと若者の口からうめき声が漏れた頃には、石井と石塚は若者達の囲いから完全に脱出できていた。
「ちっ、逃がすな!」
長時間石を維持できないのか、背中から石塚を降ろし、一緒に走って遠ざかろうとする石井達を追うよう、
リーダー格の男は若者達に命令を下すけれど。
再び蒼い稲光が空を走り、若者達の進路を塞ぐように降り注いでくる。
「・・・また、だ。」
こんな良い天気に2度も雷が・・・しかもアリキリの2人を援護するように降ってくるなんて事は
通常ならば有り得ない。
ならば・・・これも、誰かの石の力なのか?
103
:
“Black Coral & White Coral” </b><font color=#FF0000>(t663D/rE)</font><b>
:2005/02/21(月) 03:04:02
そんな小沢の疑問に応じるように、石井が逃げた方向とは違う道から息を切らせて駆けつけてくる
2人組の男の姿が見えた。
片方の男の右手に稲光と同じ蒼い光を放つ石が見え、目論見通りに石井達を逃がす事が出来たと
彼らも察したか、その表情は明るい。
「ちっ・・・お前ら、引き上げるぞ!」
2人対大勢の構図はそのままだけれど、若者達の狙う石は石井達の手にあるモノであり、
遅れてきた彼らが持つそれではないという事なのだろうか。
リーダー格の男が舌打ちと共に若者達に指示を出せば、地面に転がってまだ唸っている男を除いて
彼らは一斉に逃走を開始する。
「ま、待てって!」
まさか駆けつけた途端に相手に逃げられるとは思わなかったようで、援軍にやってきた男の片方が
ハッと表情を強張らせると間の抜けた声を上げた。
コラー! と慌てて若者達を追いかけていく2人の妙な微笑ましさに小沢は苦笑するも
また全身の力が抜けるような感覚が襲ってきて。
小沢の視界がぐにゃりと歪むと、次の瞬間には彼は公園とは異なる場所にポツンと立っていた。
今度は最初の廃工場に似た、薄暗い倉庫のような場所。
みっしりとベニヤ板などの木材で作られた何かが・・・いや、これはセットのパーツだ・・・が収められている。
・・・じゃあ、ここはどこかのTV局か・・・スタジオ?
滅多に足を踏み入れない場所故に、興味深く思えてキョロキョロと周りを見回す小沢の耳に。
不意にがなるような、それで居てどこか切羽詰まった叫び声が届いた。
「・・・・・・・・・!」
声と同時に石の放つ気配が伝わってきて、小沢は気配を感じた方へと走り出す。
「先端が尖った・・・あの・・・その・・・タケノコかっ!」
再び聞こえた切羽詰まった声。聞き覚えのある・・・というよりも他に間違えようのない声に、
小沢はこの人もまた石の使い手だったのかと驚きを覚えるが。
セットのパーツの隙間をかいくぐるようにして小沢が視界が開ける場所に出た、瞬間。
その視界を淡い光を帯びたタケノコが弾丸のように横切っていって、再び小沢を驚かせた。
タケノコから視線を外し、声の主の方を見れば。
そこにいたのはやはり垢抜けない、若いさまぁ〜ず・・・いや、この頃ならバカルディの2人。
身構えている三村の一歩後ろに腕を組んだ大竹が立ち、彼らの前にいる男と対峙している様子だった。
「タケノコ風情じゃ・・・いくら何でも倒せへんよ?」
「うるっさいっ!」
輝くタケノコ弾丸を軽々と避け、余裕ありげに笑う男に三村が怒鳴り返す。
「つか、そもそもお前の振りがおかしい! 何だよタケノコって!」
「・・・お、俺?」
急に三村に振り向かれて大竹が困ったように声を上げた。
「しょうがねぇだろ、変に荒らしたら大道具の奴に怒られるし。」
「関係ねぇよ。どーせ、もうほとんど必要な分はお台場に移動してるって。」
あとは建物ごと解体して、お終いじゃん?
そうどこか気楽な調子で大竹に告げる三村の言葉に、小沢の思考はしばし混乱する。
・・・もしかして、ここはお台場に移る前のフジテレビの旧社屋?
だとしたら、一体石を巡る戦いはどのぐらい昔から存在していたというのだろうか。
104
:
“Black Coral & White Coral” </b><font color=#FF0000>(t663D/rE)</font><b>
:2005/02/21(月) 03:05:02
「せやけど・・・ホンマ、お前達って、若いな。」
そんな小沢には構わず、男は一つ息を吐き、おもむろに着ていたジャケットを脱いだ。
はらりとジャケットを投げ捨てる男の首元には、濃い茶色の紋様が入った黄土色がかった乳白色の石が
幾つも繋がれたチョーカーが揺れている。
「どういう事だよ・・・。」
「冷静に考えてみぃ。黒が白を駆逐し・・・あれが復活したとしても、や。」
ピクッと反応する三村に告げる男の持つ、豹の毛皮を思わせるその石は、レオパードスキン。
レオパードスキンジャスパーとも呼ばれるジャスパーの一種である。
もっとも、その輝きはどこか澱んでいて、負の感情に満ちているように小沢には感じられた。
「別にそれで日本が・・・世界が滅びてしまう訳やない。ライブはいつものように行われるやろし、
それはバラエティー番組かて同じや。何も・・・変わったりせぇへんねんで?」
それやったら、白と黒でいがみ合ってもナンセンスなだけやないか。
「・・・・・・・・・。」
「三村、下がれ。」
そもそも、お前達は何故白の側についとんのや? そう問いかけてくる男の言葉に、
三村は即座に何も言い返す事が出来ない。
けれどその最中にも男の石が輝きを帯び始めたのを見て取り、大竹が前方に立つ三村に囁きかけた。
「・・・お、おう。」
穏やかな中にも真剣な色合いの混じった大竹の言葉に、三村は素直に頷いて後ろに下がる。
その間にも男の石は輝きを増して。
「シャアアアアアア!」
それがある程度まで達すれば、男は先ほどまでの態度はどこへやら、奇声を発しながら
2人の方へと飛びかかってきた。
殴る、ではなく引っ掻こうとする男の手の爪は、いつの間にか鋭い物に変わっており、
男の動き自体も普通の人間のそれを上回る、どこか猫科の猛獣を思わせる力強い物で。
よく見れば男の体付きも少しずつ変容しているようでもあった。露出した顔や首元、手などに
フワッと豹紋が浮かび上がってきている。
「これは・・・獣化?」
豹肌の石だけに、闇のパープルアイですかと小沢が呟く目前で、男の腕が振り下ろされた。
特にその場から逃げようとしない2人に爪が直撃する・・・その寸前。
「・・・・・・・・・!」
男の爪が、虚空で止まる。
しかしそれは、腕の動きが阻害されたというよりも、男と2人の間に不可視の壁があって
それ以上腕を降ろせない・・・そんな様子に見える。
「しっかし、何でこの石がよりによってこんなオッサンに・・・。」
もっとこういう石は若い女芸人が持つべきだろう、と後世のセクハラ男の片鱗を覗かせつつ
大竹は腕を組んだまま面白くなさそうに呟く。
彼が手の中に握り込んでいる星の形に光を反射するその黒い石は、その名もずばりブラックスター。
石の輝きに反応するように、2人の回りを淡い光が覆っていて。男の爪は光に遮られて
それ以上2人の方へ動かす事ができないようだった。
己の腕から伝わる手応えに、男は目を見開くとすかさず腕を引いて今度は横薙ぎに引っ掻こうとするけれど。
やはり今度の攻撃も2人に届く事はない。
105
:
“Black Coral & White Coral” </b><font color=#FF0000>(t663D/rE)</font><b>
:2005/02/21(月) 03:05:57
「俺の『世界』は簡単には崩せませんよ。」
これで飯喰ってる訳ですし、とフッとその口元に自信に満ちた笑みが浮かんだかと思えば、
大竹は組んでいた腕を解き、ズボンの後ろポケットからもう一つ、石を取り出してみせた。
「・・・・・・あれは・・・っ!」
その石が蜂蜜色の輝きを放つ虫入り琥珀だと小沢が気付いた瞬間、石から光を帯びたエネルギー波が放たれて。
至近距離からのそれを避けられるはずもなく、直撃を受けた豹男は数mほど吹っ飛ばされ、
何かうっすらと記憶に残っている古いバラエティ番組のセットに激突した。
「大竹・・・お前、その石・・・っ!」
ブワッと埃がまき上がる中で集中力が切れたのか、男の皮膚に浮かんでいた豹紋が消え、変身が解ける。
けれどそんな事よりもまず、三村は切り札を安易に使った大竹に突っかかっていた。
「勝手に持ち出して使うなってマネージャーにも言われてただろ!」
「別に1回ぐらいなら大丈夫だろ。ケチケチするな。」
「そういう問題じゃ・・・っ」
自分と三村の周囲に張ったブラックスターの力を解除し、豹男に向けた態度が嘘のようにへ
らっと無責任げに笑う大竹に対し、更に言葉を重ねようとする三村だったけれど。
バキッとベニヤ板が割れる音が上がって、すぐに表情を変えて男の方を向いた。
「少し・・・お前達の力を侮っとったみたいやな・・・。」
獣化の影響で肉体強化も施されているのか、男の虫入り琥珀によるダメージは
それほど重いモノではなかったようだ。
ゆっくりと立ち上がり、クックと笑いながら男は首元のチョーカーに意識を集中させていく。
皮膚に再び浮かび上がる豹紋は色濃く、今度は身体も大幅に変容していく。
漫画やゲームなどで見られる半人半獣の如き姿は、なかなかに脅威であろうけれど。
「お前は特撮の悪役かっ! 怪奇、豹柄男!」
さっさと倒れろ! と怒鳴る三村に呼応して彼の石であるフローライトが輝きを放ち、
どこからともなく黒地に白で模様の入った全身タイツを着用したマネキン人形が高速で飛来してくると、
変身途中で回避行動を取る暇のない男の鳩尾に直撃した。
どうやらこれがとどめとなったようで、レオパードスキンの男はまたその場に倒れ込み、気を失う。
場に満ちていた緊迫した空気と石の気配は今度こそ薄れ去っていくようで。
「・・・ったく、手間掛けさせやがって。なぁ。」
「・・・・・・・・・。」
安堵の吐息を一つつき、大竹に告げる三村であったが、当の大竹は何も喋らない。
ブラックスターの維持で精神力を消費し、疲労しているだろうていた事を差し置いても、
何か物憂げな大竹の態度に三村は一瞬キョトンとした表情を浮かべてから。
「まさかお前、あいつの言ってる事・・・真に受けてるんじゃねーだろうな?」
「・・・・・・いや。ただ疲れただけ。」
軽く眉をしかめつつ訊ねる言葉に、大竹は軽く首を横に振って、そう応じて見せた。
「そう。なら良いンだけどさ。」
この男がそう言うなら、そうなのだろう。
そんな妙な納得の仕方で疑問をぬぐい去り、三村はレオパードスキンの男の方を見やった。
「とりあえず石は没収して・・・さっさとずらかろうか。」
「・・・だな。」
いつまた男が目を覚ますかわからないし、部外者が入ってきて面倒な事になる可能性もある。
長居は無用、と大竹の同意を得た事で三村は男から石を回収しようと駆け寄っていく。
「・・・別に、世界の平和を護るために戦っている訳じゃねぇし。」
そんな三村の後ろ姿を眺めながら、不意にボソッと大竹の口から呟きが漏れた。
黒側が主流になれば、白側や元白側だった芸人が不遇に陥る事はあるだろうが、
だからといって一般の人々にはそれほど大きな影響は与えないだろう。
それでも何故、戦うのかと言われれば。
「問題は白とか黒とかじゃなくて・・・単に相手に屈するのが、厭なだけだし。」
そういう事ではまだ若いんだろぉなぁ・・・俺ら。
そう続け、溜息を付く彼の言葉は男からの問いへの彼なりの答えであろうか。
「・・・・・・・・・。」
白き石の使い手の先駆者が発した言葉を、真剣な表情で聞き入っていた小沢であったけれど。、
一通りの出来事の再生が終わった為か、その視界はまた歪み始め、全身の感覚は薄れていく。
虫入り琥珀が次にどこへ小沢を誘い、何を見せようとしているのかはわからないけれど。
・・・赤岡くんの記憶を掴まえて、琥珀の外に引っぱり出すためならば。何が来ても、見届けてみせる。
もしかしたらこのまま琥珀の見せる世界から脱出できなくなるのでは・・・という怖れを押さえ込んで
小沢は改めて意志を固め、おぼろげな感覚ながら両手をグッと握りしめた。
106
:
“Black Coral & White Coral” </b><font color=#FF0000>(t663D/rE)</font><b>
:2005/02/21(月) 03:24:51
大竹一樹(バカルディorさまぁ〜ず)
石:ブラックスター(星形の輝きが浮かぶ黒色のダイオプサイト(透輝石))
理性や知性を表し、冷静で理性的でいられるよう導く。
能力:自分ひとり、もしくは自分と許可された人間数人だけが入れる「大竹ワールド」を出現させる。
相方の三村はこの空間に出入り自由で許可も必要としないが、それ以外の人間は大竹本人による許可が必要。
ある種のバリアーのようなもので、外部からの攻撃はこの空間内に届かない。
条件:三村以外の人間は大竹の許可を得た上、「やってんの?」という
のれんをもちあげる仕種とともに空間内に入らねばならない。
入る人数が多ければ多いほど持続は困難。極端に使える時間が短くなる。
三村と2人の場合、もっとも長い時間持続させることができる。
また、内部からの攻撃には防御不可能なため、許可を与えた人間が内部で攻撃を開始すると弱い。
三村マサカズ(バカルディorさまぁ〜ず)
石:フローライト(螢石)
集中力を高め意識をより高いレベルへ引き上げる、思考力を高める
能力:ツッコミを入れたもの、もしくはツッコミの中に出てきたものを敵に向かって高速ですっ飛ばす。
(例1)皿に「白い!」とツッコんだ場合、皿が飛ぶ。
(例2)相方の「ブタみてェな〜(云々」などの言葉に対し「ブタかよ!」とツッコんだ場合、ブタが飛ぶ。
条件:その場にあるものにツッコむ場合はそれほど体力を使わないが、
人の言葉に対してツッコむ場合は言い回しが複雑なほど体力を使う。
また、相方の言葉に対してツッコむ場合より、他の人間に対してツッコむ場合の方が体力を使うため、回数が減る。
ツッコミを噛むとモノの飛ぶ方向がめちゃくちゃになる。ツッコミのテンションによってモノの飛ぶ速度は変わる。
飛ぶものの重さはあまり本人の体力とは関係ないが、建物や極端に重いものは飛ばせない。
石井正則(アリtoキリギリス)
石:ルチルクォーツ (針入り水晶)←肉体、精神の強化
能力:石を使うことで体がロボット並みのパワーと強度をもつようになる
条件:石を使った後は異常にのどが渇き、全身がガタガタと震えて自由が利かなくなる。
水を飲まないと回復しない。
石塚義之(アリtoキリギリス)
石:虫入り琥珀
能力:不明。発動せず。
アリキリの援護に来た男
石:インディゴライト(青いトルマリン)
能力:どこからともなく落雷を起こす。雷を石で受け止めて蓄電・放電させる事も可能。
雷の威力は強くても相手が気絶する程度。
条件:屋根のある場所で落雷は使えない。
バカルディを襲った男
石:レオパードスキン(豹柄の模様を持つジャスパーの一種)
能力:豹への獣化を伴う肉体強化。
条件:獣のパーセンテージが増えるのに比例して、思考も動物並になる。
石・能力説明はこんなところで。
もしかしたら電撃系は誰かと被るかもですが、時間軸が違いますし大目に見て下さいw
107
:
名無しさん
:2005/02/22(火) 02:08:14
おお、いつもながら上手いですね〜、面白いです。
これで一時期バカルディに仕事が来なくなってしまうんでしょうかね…
次はどんな場面になるのか気になります。
自分的には本スレに投下しても問題ないと思いますよ。
108
:
名無しさん
:2005/02/22(火) 02:30:49
>t663D/rEさま
石の能力スレにアリキリの設定を投下した者です。
使ってくださってありがとうございました。
冷静な石井とパニクっている石塚の対比が面白かったです。
109
:
Monsters </b><font color=#FF0000>(I3kW9CIA)</font><b>
:2005/02/22(火) 19:45:08
品庄編の続きです。
黒ユニット、白ユニットとはちょっと話がズレるので、
番外編だと思って下さい。
110
:
Monsters </b><font color=#FF0000>(I3kW9CIA)</font><b>
:2005/02/22(火) 19:46:28
雨が降っていた。
空には雲ひとつなくまっさらな蒼いシーツのように広がり
太陽は相変わらずその上へ尊大に寝転がっている。
奇妙だと、思う事はなかった。
奇跡を起こす男がこの町にいることを知っていたから。
「おじゃまします」
硬質なドアノブを回し、中に入る。
視界いっぱいの霧は一つのトラップだった。一歩間違えると電流が流れるらしい。
教えてもらった通りの手順でリビングまで向かう。
会うのって、久しぶりな気がする。
ある日、ここの家主は長期休暇を発表した。
あまりにも突然の事態で、マネージャーも誰も知らなかった。
相方の脇田でさえも。
事務所にファックスが届いたのはその次の日だった。
理由は、仕事による過労。そう文章には書かれていた。ただ、それだけが。
111
:
Monsters </b><font color=#FF0000>(I3kW9CIA)</font><b>
:2005/02/22(火) 19:47:11
霧はもうすっかり無くなっていた。
着いたのかな。カバンを床に下ろし、服のかかっている椅子に腰掛ける。
「こんにちはー」
ソファが一つ、部屋の真ん中に置いてあった。
ギシッ、とそれは体を揺らし、一人の男が立ち上がる。
「何、どうしたの」
かけた言葉は休暇前とけた言葉は休暇前と同じものだった。けれどその声は本人かどうか見間違えるほどの低い声であった。
「ちょっと、話たいことがあったので」
すみません連絡いれられなくて。そんなことを言いながら、腕の包帯をぐるぐると解き始めた。
中川は、その包帯から現れる、腕に喰らい付いた異様な「石」を見た。
「それ、どうした?」
「脇田さんの持ってたヤツにやられちゃって。
あれ危険だと思うんです。石を、壊すんですよ。あれは。」
「やっぱり、そうだったか」
「きっと邪魔になります。今のうちに、潰しますか?」
あっさりと言った声を見上げた。目が、正気ではない事を見抜くのは簡単だった。
「別に、それは今じゃなくていいよ。もっと、もっと他の石を壊させた後でさ。」
目を逸らし、外を見つめながら中川が言う。
「それに、お前どうした?ずいぶん雰囲気が変わったみたいだけど。」
庄司は、同じように夕焼けを眺めていた。
目が、沈む太陽に照らされ色づいている___緑色に。
「別に、俺はただ面白くて・・・
もっと楽しくしたいかな、って。」
112
:
Monsters </b><font color=#FF0000>(I3kW9CIA)</font><b>
:2005/02/22(火) 19:47:49
石の思いなのか、庄司の本心なのかは分からなかった。
けれど俺に寄生した石は、あいつの腕の石と呼応し光り始める。まるで夕焼けに染まってゆく空のようだった。
「途中で抜けるとかはナシだよ」
「はい」
その時の顔が笑顔だったかどうかなんて、どうでもいい事だと中川には思えた。
113
:
Monsters </b><font color=#FF0000>(I3kW9CIA)</font><b>
:2005/02/22(火) 20:09:23
以上です。
この話はこちらで投下していきたいと思います。
以下、設定を少し。
・石は人間に寄生する
・ヒデは複数の石を持っている
投下のペースが遅いと思いますが、よろしくお願いします。
114
:
シャロン </b><font color=#FF0000>(LwUQlNuI)</font><b>
:2005/02/24(木) 03:52:02
>I3kW9CIAさま
おお〜、続きがすっごく気になります。
私が本編書いてていいのかしらというくらいに・・・。
続き、楽しみにしています。
115
:
名無しさん
:2005/02/24(木) 19:36:46
>IbsntW6M
久しぶりにのぞいたらbase編の続きが!
とても読みたかったのでうれしいです!
登場人物の行く末が気になりますね。
続きが読みたいなんて言っちゃ駄目なのでしょうが…キニシナイ!!
ともあれ乙です!
116
:
98 </b><font color=#FF0000>(ikNix9Dk)</font><b>
:2005/02/25(金) 00:38:05
98です。手直ししましたので、作品投下させて頂きます。
主役芸人は今まで登場していなかったよゐこです。
時間軸も本編とはずれていますので、番外ということで…。
明け方近い楽屋。深夜の生放送番組の出演を終えた、よゐこ・有野は一息ついて
欠伸をする。さすがに時間が時間だけあって、外は割りに静かだ。
日中とは違って張り詰めた空気も感じられず、落ち着いた空気が流れる。
こんな時間は、最近は滅多に送ることができない。常に周囲で芸人たちが何やらこそこそと話しこみ、
互いのことを窺いあい牽制しあっている。こうして部屋の中にいても、
伝わってくる緊張感で精神の休まる暇がないほどだ。いつからか始まっていた非現実的な戦いが、
既に確実に日常全てを変えている。しかしこんな異常な雰囲気に、
有野も他の芸人たちと同じくいつしか慣れてしまっていた。
ふと、有野は胸元からチョーカーを取り出した。つややかな漆黒の石のペンダントヘッドが付いている。
アクセサリーをつける趣味はないが、今はこれを片時も放すことができない。放せばそれは身の危険に繋がるからだ。
有野がこの石を手に入れたのは何週間か前、同じ深夜番組に出演した帰りだった。
暗闇の中、道の上で光っている石に何故か心を捕らえられ、拾い上げたのが全ての始まり。
その時はまさかこの石が自分の運命さえ変えてしまう大変なものだとは思いもよらなかった。
有野は石を指で弄ぶ。何の変哲もないガラス質の石、
しかしこれを手に入れてしまったばかりに別に望んでもいない力を得、
更に不本意なごたごたに巻き込まれることが多くなった。
まるで彼の好む漫画やゲームの中のような状況を、未だに信じられない気持ちでいる。
常に傍観者でありたい有野にとって、わけのわからない争いの渦に
身を投じざるをえなくなったことは苦痛で仕方がないことである。
しかしそれ以上に、最も有野を暗澹とした気持ちにさせる要因は、別のところにある。
117
:
98 </b><font color=#FF0000>(ikNix9Dk)</font><b>
:2005/02/25(金) 00:39:14
「おつかれーっす」
聞き慣れた、相変わらずの間の抜けた声で、よゐこ・濱口が楽屋に入ってきた。
有野と同じくチョーカーに淡く光る透明な石が付いている。
彼もまたひょんな経緯で石を手に入れ、力を得てしまった一人だった。
この濱口こそが、有野が石の件に関して最も気がかりとしているところである。
考えが回らなくて馬鹿で、苛々させられることも多い相方だが、
有野にとって昔からずっと、一番大事に思っている親友である。
元々争いごとを好まない彼さえ戦いに巻き込まれることが、有野には一番憂鬱なことなのだ。
「この時間の仕事は疲れんなー、は〜眠たいわ」
「お前なー、長いこと待たせといて何言うとんねん。
もう早よ帰んで。お前遅いから待ちくたびれたわ」
「ごめん、勝俣さんと話し込んでもうて」
最近は戦いも激化しているようで、若手芸人が原因不明の重傷を負ったとか
いう話をよく聞く。当然、石が関わっていることは間違いない。
実際二人はこれまで戦闘を幾度か経験している。それを踏まえて、
互いの身を守るため、極力コンビで行動するようにしているのだ。
118
:
98 </b><font color=#FF0000>(ikNix9Dk)</font><b>
:2005/02/25(金) 00:40:58
「ちょっと、待っていただけませんか」
不意に聞き慣れない声が後ろから投げかけられる。
来たか、とばかりに有野は顔をしかめて振り返った。濱口は恐る恐る横目で声の主を窺う。
あからさまに人気のないのを狙って声を掛けてくる奴なんて、
石絡みの人間だけだと相場は決まっている。声を掛けてきたのは、
数度テレビ局内で見たことの有る、名前は知らない若手コンビだった。
案の定、二人ともポケットから出ている携帯ストラップに石が付いている。
海の色のような藍の石と薄い黄色の石。本来美しい色ではあるはずが、
黒くもやが掛かって見え、どこか気味悪く禍々しく感じられる。
(黒か…)相変わらず忙しいことだ、と有野は心中苦笑した。
「よゐこさん、お二人とも石をお持ちだと聞きました。
こちらへ渡してくれませんか?悪いようにはしませんから」
確か突っ込みの方であった男が低い声で凄むように言う。
こうして向かってくる輩の常套句だ。有野はため息をつき、
場に不似合いなほどゆったりした声音で返した。
「そう言う奴に限ってええようにした試しがないねん。
言っとくけど石はやらんぞ、俺らにも必要なもんやからな」
相手は顔を見合わせ、再びこちらに向き直ってにやりと笑った。笑いを含んだ声で言う。
「それでは仕方ないですね、痛い目にあってもらいます。」
大方初めから力ずくで奪い取るつもりだったのだろう。
二人とも力は戦闘向きらしく、顔に自信が窺える
よゐこはどう見ても外見強そうではないし、濱口に到っては誰もが認める考えなしである。一方的な攻撃で遊び程度に力を使う対象としては持って来いだと思っているのだろう。
119
:
98 </b><font color=#FF0000>(ikNix9Dk)</font><b>
:2005/02/25(金) 00:41:55
「おい、こんなところでやるんか?人に見られたら…」
いきなり身構えた相手を見て、濱口が驚いた声を出した。
言い終らない内、前に出たボケの方の男が自らの足元の地面に手をかざす、
と藍色の石が光を発し、同時に凄い音がして刃のような形になった土が隆起した。
更にその手を足元から向こうにいる有野と濱口に向けると、
土の刃は一直線にこちらに向かって来た。
あかん、有野は呟き、驚いている濱口の肩を掴んで一緒に地面に倒れこむ、
と同時に、二人の姿は影に溶け込んだ。影と一体化したのだ。
「!」「影になりよった!!」
虚を点かれて戸惑う男たちの目の前で、影と化した二人は針の山のようになった
地面の上を凄いスピードで走り抜ける。
「逃げてばっかりでパワーが持つわけない、見失うな!」
撹乱させるかのようにぐるぐると周囲を回る影を、黒の二人は見失うまいと
必死に目で追いかけた。
数メートル先の建物の影に入ると、有野と濱口は元の姿を現した。
ボケの方がすぐ見定めて、
「そこだ!!」
と、再び隆起した土を素早く向かわせる。その瞬間、
濱口が相手に向かって人差し指を向け、
「獲った!」
と一声叫んだ。その途端、今度は濱口の首元から光が放たれ、
続々と盛り上がっていた地面の動きがぴたりと止まる。凄まじい音が、嘘のように止んだ。
「な、な…」
相手が唖然としたその隙を逃さず、有野は再び影と化し、
一瞬で相手二人の横まで移動する。そして姿を現した刹那、
有野の足元にある影から真っ黒い大きな手のようなものが二本伸びて、
それぞれが敵を一人ずつ引っ掴んで高く差し上げた。
「うわああぁ!!」
ボケの方が必死で地面をもう一度動かそうとするが、黒い手は彼を羽交い絞めにし、
土に手を向けさせない。もがく二人の首元に、長い指が鋭く打撃を食らわせた。
気を失った二人をそっと地面に降ろし、手は有野の影の中にするりと戻っていった。
120
:
98 </b><font color=#FF0000>(ikNix9Dk)</font><b>
:2005/02/25(金) 00:42:35
「う〜ん、前フリ強そうにしてたのに、めっちゃすぐ終わってもうたな…」
壁の影に取り残されていた濱口が駆け寄ってきて、拍子抜けしたような声を出した。
「こういう奴ばっかりの方がええわ、面倒臭くなくて」
相手の石を拾い上げながら有野が呟く。
…そう、こういう奴らばかりならいいのだ。
それなら、こんなぬるい戦い方で、相手も自分たちも傷つかずに解決できる。
それで全てが済むならどれだけ楽だろう。
しかしそうではない。もっと狡猾で、得体の知れない力を持った奴らが
確かに存在しているのだ。そういう者達も今後確実に
自分たちに関わってくるだろう。例えこんな石や力に興味も執着もなかったとしても、
「白」にも「黒」にも与する気がなかったとしても、だ。
そして数え切れないほどの戦いを経験しなくてはならないだろう。
割りに戦闘向きである有野の石と違い、濱口の石は多少戦えはするものの
元々防御向きだ。一方的に攻撃されたら危ないことは目に見えている。
既に身近な芸人も何人か石をめぐる戦いで酷い傷を負っている。
彼らと同じ目に、濱口もまた遭うのだろうか。
翳った有野の表情に気付かず、濱口は有野の手の中にある二つの石を覗き込む。
「それどないするん?」
「ああ、矢作にでも連絡して、浄化の力持ってる奴連れてきてもらって
処理してもらわななあ」
後戻りできない以上、有野は心から強くなりたいと思う。
ただ大切な相方を守るために、だ。何が正義でも悪でも関係ない。
最低限相方だけを守れればそれでいい。それだけが自分の役割なのだと、
不条理な戦いの中で有野は結論付けていた。
「ここで待つんかー!?もう眠い〜寝たいねんー!」
「我儘言うなあ、アホー」
いつもながらの呑気なやりとりをしつつ、有野はそっと首元の石に手を置いた。
波乱を呼んだこの石が、いつか元の安らげる日々を連れてきてくれることを願いながら。
121
:
98 </b><font color=#FF0000>(ikNix9Dk)</font><b>
:2005/02/25(金) 00:44:12
以上です。乱文真に失礼致しました…。
よゐこの石と能力は以下の通りです。
有野晋哉
石:テクタイト(隕石の衝突によって生じた黒色の天然ガラス。石言葉は霊性)
能力:影を実体化して操る。単純な形なら変形も可能。影と同化して移動することもできる。
条件:自分に影ができていなければ使えない。影の濃さと強さが比例し、
影が薄いと相応のパワーを使わないと相手をすり抜けてしまう。同化中他の大きな影に入るなどすると同化は解除される。
同化している間影の操作はできない。他者の影を使うこともできるが、その人物が自分の完全なる同意者であることが条件。
また他者を伴って影と同化することもできるが、これも条件は同じ。
濱口優
石:セレナイト(透石膏、無色透明。石言葉は洞察力、直感力)
能力:相手の攻撃を静止させる。相手にその攻撃を返す。
条件:攻撃が自分自身に影響を及ぼすと想定できなくてはならない。
他者への攻撃に対しては干渉できず、それを止めたい時には自らその攻撃の前に立たなくてはならない。
「獲った」と言うと攻撃が停止。「逃した」と言うと静止が解除。
静止を解除させると相手にその攻撃が跳ね返る。
武器などによる直接攻撃の場合は、それと同等の衝撃が相手に加えられる。
1ターンの攻撃しか止められないので、相手が何度も攻撃して来ればその都度止める必要がある。
止める攻撃の強さによってパワーの消費量が変わる。
122
:
98 </b><font color=#FF0000>(ikNix9Dk)</font><b>
:2005/02/25(金) 00:44:56
有野の力は単に彼のイメージからです。
濱口のは例の名台詞を使おうと考えたのですが、あんまりそれっぽくないですね。
使っていない設定(カウンター)がありますが御勘弁を…
あと、完璧なちょい役でしたが敵コンビの石。やられ役ゆえ特定はしません。
ボケ:アズロマラカイト(アズライトとマラカイトの混合、地球のような色合い)
土を刃のような形に隆起させて操る。自分の足元を起点としなければならない。
突っ込み:アラゴナイト(薄黄色)
結界を張る。大きさは自分一人が入れるものから半径50メートルまで。
範囲が広いほどパワーを消費。自分の身に何も触れていないことが条件。
123
:
クルス
:2005/02/25(金) 20:37:05
あのぅ…ハロバイ編執筆中のクルスです。
アラゴナイトを金成さんの石にしていたのですが、
こちらで使われたようなので、やはり変えた方が良いでしょうかね?
能力もまるっきり違うので…。
変えた方が良いのでしたら、検討します。
124
:
クルス
:2005/02/25(金) 20:38:40
たびたびすいません。
やはり変えさせていただきます。
他にも沢山あるだろうと思いますので。
すいませんでした。
125
:
名無しさん
:2005/02/25(金) 20:52:54
>>123-124
…先ずスレッドの趣旨に合ってない上に聞く必要も無いでしょう。
そしてコテハンにするならばテンプレを見てトリップを付けてください。
偽者が出たときに困りますので。
後できればsageていただけるとありがたいのですが。
126
:
クルス </b><font color=#FF0000>(AKH3pHwc)</font><b>
:2005/02/25(金) 22:40:27
>>125
そうですね。ごめんなさい。
以後気をつけます。
127
:
19 </b><font color=#FF0000>(Ps/NPPJo)</font><b>
:2005/03/05(土) 00:41:13
>>74
,76
遅くなりましたが、感想ありがとうございます。
頑張ります!
先回から間が開いてしまいましたが、
続きを投下します。
128
:
19 </b><font color=#FF0000>(Ps/NPPJo)</font><b>
:2005/03/05(土) 00:43:22
68-72の続き
小沢と矢作がすれ違ってからどのくらい経っただろうか。
控え室で小沢を待ち続けていた井戸田は軽くため息を吐いた。
(逃げたな、やっぱり)
ここからトイレは目と鼻の先。
というよりトイレに行くということ自体が嘘だったのだろう。
どうせ自分の怒りが納まった頃かそれともさっきのADが呼びに来るまでか、
どこかでタバコでも吸っているに違いない。
(でもまぁ、一応見てくるか)
あの調子じゃトイレでぶっ倒れてるかもしれないしね。
井戸田はひとりごちると椅子から立ち上がった。
しかし小沢がいつ帰ってきても良いように、怒っているという意思表示をした
一定の姿勢を続けていたため、勢いよく立ち上がった途端足がしびれてもつれる。
「うわぁ、俺なにやってるんだろう…」
机や壁に手を借り出口にたどり着き、扉を開けるが、
しかし井戸田はしびれた足のせいか扉の敷居につま先を引っ掛け、大きく前にのめる。
「うおっ」
転びそうになる体を支えるために、近くにあるものに縋り付く。
が、それはちょうどスピードワゴンの控え室の前を通り過ぎようとした
通行人のようで、井戸田に縋り付かれた相手も「おうっ」と声を出しながら
井戸田の巻き添えを食い、足を滑らす。
のしかかってきた井戸田を反射的に避けようと相手が仰け反ったため、
井戸田もバランスが取れない。
相手の肩を押すことで体勢をたてようとしたが、
そのことが逆に相手のバランス感覚を失わせる。
129
:
19 </b><font color=#FF0000>(Ps/NPPJo)</font><b>
:2005/03/05(土) 00:45:05
結局のところ、相手を下敷きにするように井戸田は床に頭をぶつけた。
「痛い!痛い!?あ、重い!」
「痛っ、すみません!」
大声で謝りながら慌てて井戸田は下敷きにしてしまった人物から離れる。
のしかかった体が硬かったから男だろう、
(女性じゃなくてよかったよ)とちらりと思うが、重い思いをさせたのには変わりない。
「本当にすみません!」と座り込んだ体勢のままお辞儀すると相手の顔を見て、
予想もしなかった人物に絶句した。
「……やはぎさん…?」
おぎやはぎ矢作。相方は、あの小沢が「世界で一番好き」と公言する小木だ。
矢作は眼鏡の無事をひとしきり観察すると、「大丈夫みたい」と眼鏡か井戸田か、
どちらに対してか分からないつぶやきを漏らす。
眼鏡を掛け直し井戸田に向き合うと、
「ちょっと〜、どうしたのさ〜」
井戸田を責めるように唇を尖らせた。
「すみません、足がしびれて…」
転んじゃったみたいです。井戸田は苦笑いをすると、自分の足を軽く叩いた。
心地よい痺れが神経を刺激する。
足がしびれた理由には触れずに、矢作が「どっか行くの?」と訊くと、
井戸田は答えにくそうに微かに笑った。
「ちょっとトイレに…」
「あ、漏れそうなの?大丈夫?」
矢作が井戸田を立たせるようと手を差し伸べながら自分の腰を浮かせる。
「いえ、小沢さんがトイレから戻ってこないから様子見に行こうかなって思って…」
「なんかお母さんみたいだね〜」
それは気持ち悪い。茶々を入れる矢作に井戸田は顔を引きつらせながら、
「小沢さん、朝から調子悪かったみたいなんです。
トイレでぶっ倒れてるかもしんないじゃないですか。」
と言い訳をする。
へぇと矢作は感心したように声を漏らすと、
「そういえば」と思い出したように手を叩いた。
「俺さっき小沢君見たよ?」
「えっ!?」
「なんか焦ってすんごい速さで走ってたけどさぁ。
俺声掛けたんだけど、応える暇もなかったみたい」
話し込む気になったのだろう、廊下の真ん中にあぐらを掻きながら
矢作が言うと、それに釣られるように井戸田も正座で矢作と向かい合う。
「小沢さん、どこ行くつもりだったんだろ…」
「なんか急用とか、言ってなかったの?出て行く前に」
矢作の質問に井戸田は大げさに首を振る。
「なんか、ADがメモみたいなの届けてくれて…それ見てからかな?
小沢さん、トイレに行くって出てったまんま、戻ってこなくて」
「メモか…」
名探偵さながらにふうむと顎に人差し指と親指をそえつぶやくと、
矢作は廊下の端に無造作に転がった小さな固形物を見つけ、目を細めた。
そしてそれがなにか判別した瞬間に、一気に血の気が下がる思いをする。
「…あの黄色い石、お前の?」
矢作が井戸田の後ろの壁を指差しながら訊くと、
井戸田は首をひねって矢作の指差す方向に目をやる。
「あ、そうです。ぶつかった時にポケットから落ちたのかな?
ん?あれ?でも俺、この石家に置いてきたような気が…?」
言いながら石を拾い上げる井戸田を、矢作は無表情で見つめると
「その石、どうしたの?」と淡々とした声で訊いた。
「昨日道で拾ったんです。なんか宝石みたいなんで、
警察届けようかとは思ってたんですけど」
矢作によく見えるようにシトリンを目の前にかざす井戸田に、
困ったような顔で矢作が告げる。
「俺、分かっちゃったかもしんない…」
「え?」
「小沢君がなんでいなくなちゃったのか、分かちゃったかもしんない」
矢作と井戸田は見詰め合った。
二人とも相手になにを言えばよいのか分からなかったためだ。
黙り込んだ二人の頭上に影がさす。
通行人だろう、矢作が「すみません」と謝りながら立ち上がろうと腰を上げ、
井戸田もそれに続く。
130
:
19 </b><font color=#FF0000>(Ps/NPPJo)</font><b>
:2005/03/05(土) 00:45:46
「いえ、あのースピードワゴンさん、出番なんですけど…」
立ち上がろうとした中途半端な姿勢のまま二人がそろって声のした方向に首をまわすと、さきほど小沢に紙切れを手渡したADが、
廊下に座るお笑い芸人たちを不思議そうに眺めながらそこに立っていた。
「あー!このADです!小沢さんにメモ渡したの!」
井戸田が勢い良く立ち上がりながらADを指差す。
まるで「犯人はお前だ!」というノリに思わずADも
「え、え!?僕じゃないですよ〜!」と反射的に応える。
「え、こいつじゃないの?」と矢作。
「お前、嘘つくな!」と井戸田。
「僕なんにもしてないですよ!」とAD。
「なに〜黙秘?黙秘?」「俺に会っただろ、お前!」
「だから僕、真面目に働いてますよ〜」
三者がてんでバラバラの話をして収拾がつかない。
ぐだぐたの状況を打ち破るように「あー!」と井戸田が叫ぶ。
その音量に驚いた二人が一斉に口を閉じると、
当たり前のように辺りは静まり返った。
無理して声を張り上げたため、少しむせながらも井戸田はADに訊く。
「お前、小沢さんに渡したメモの中身見なかった?」
「ちらっとは見ましたけど…」
「なんて書いてあった?」
「なんか、昨日の件とか石とか…良くは分かんないです」
井戸田の剣幕に押されながら申し訳なさそうに応えるADに、
がっかりしたように息を吐くと井戸田は壁にもたれ掛かる。
矢作も何も言わない。
それはそうだ、一部始終を見ていた井戸田にすら分からない小沢の行動を、
さっき聞きかじったばかりの矢作が分かるわけない。
(…これじゃ小沢さんの居場所なんて分かるわけないよ…)
自棄になりかけた井戸田の心境に、しかし一筋の光を射すように
矢作が陽気に言い放つ。
「いや、十分だよ」
ぽかんと口を開けた井戸田とAD(このADの場合は今の状況が理解できていないという方が大きいのだろうが)を交互に見やると、矢作は言葉を続ける。
「人探しにうってつけの人、いるぜ」
131
:
19 </b><font color=#FF0000>(Ps/NPPJo)</font><b>
:2005/03/05(土) 00:46:41
「うってつけ、ですか?」
独り言のように小さな声で尋ねる井戸田に適当に視線を投げると、
矢作は道行く人に声を掛けるように、ADの肩を軽く叩いた。
「ちょっと君、ボランティアしてみない?」
「僕、ただ働きは嫌いなんですけど」
「じゃ、地球を救うのに協力するのは?」
「喜んで」
その言葉に矢作はニヤリと微笑んだ。
矢作になにかを頼まれたADがいなくなると、焦る井戸田をなだめすかしながら
二人はスピードワゴンの控え室に向かい合って座った。
「小沢の居場所を探せる人って、すぐに来れるんですか?」
調子よく鼻歌を歌いながら控え室に備え付けのポットと急須で
お茶を入れる矢作に井戸田が訊くと、
「うん」と応えながら矢作は熱めのお茶が入った湯呑みを井戸田の目の前に置く。
「でも石とか昨日とか訳分かんないし、ヒントがないですよ」
こんな状況で探し出せるんですか?と暗に告げる井戸田に、
大丈夫大丈夫と首を上下に振った矢作は自分の分のお茶をすすった。
ふうと一息つくと、
「これからさ、すんげぇ不思議な体験をすることになると思うのね」
なんでもないことの様に唐突に切り出す。
「不思議…ですか?」
きょとんと首をかしげた井戸田に対し、矢作は頷くと、
「でもま、なんとかなるんじゃない?」
蒸気で曇った眼鏡を拭きながら、妙に自信がありげにつぶやいた。
まったく要領を得ない矢作の言葉になにかを言おうと井戸田は口を開くが、
せわしないノックの音に遮らせる。
緊張したように背筋がぴくんと跳ねた。
「どーぞー」
井戸田とは対照的にリラックスした様子の矢作が扉に向かって呼びかけると、
「失礼しま〜す」とさっきのADが扉を開けた。
急いできたのだろう、少々息切れしているが、
矢作が「ありがとね」と軽く礼を言うと
「地球を救うためですから」と笑いながら応えた。
そんな二人のやり取りを強張った表情で見ていた井戸田は
促すように扉を大きく開けたADの後ろに控えていた人物、
―――正確には人物たち―――を見て、呆然とつぶやいた。
「…くりぃむしちゅー?」
132
:
19 </b><font color=#FF0000>(Ps/NPPJo)</font><b>
:2005/03/05(土) 00:49:31
今日はここまでです。
矢作と井戸田がお互いどう呼び合っているのか
調べたのですが分からなかったので、
分かり次第訂正させて頂きたいと思います。
133
:
名無しさん
:2005/03/05(土) 04:10:25
大人のコンソメでならおぎはぎとスピワの絡みがあったから
わかるんだろうけど、誰か見てないかな。
134
:
名無しさん
:2005/03/06(日) 00:46:57
>132
待ってました!!
続き楽しみにしてます。
135
:
oct </b><font color=#FF0000>(dkDoE4AQ)</font><b>
:2005/03/13(日) 02:00:39
こんばんわ、いきなりですがトータルテンボス中心の話を
だらだらと書いておりまして、投下させてもらえたらなぁと
思っています。
ただ、石を使ったバトルらしいバトルはないので、
楽しんでいただけるかが心配です。
また、読みづらい、などのご指摘が欲しいと思ってます。
というわけで、最初の方をこちらで投下させてくださいませ。
よろしくお願いいたします!
136
:
oct </b><font color=#FF0000>(dkDoE4AQ)</font><b>
:2005/03/13(日) 02:10:15
ギターを爪弾く樅野が一音はずした。藤田が思わず顔をあげたら、バ
ツの悪そうな樅野の表情とぶつかった。「はずしましたよネ?」「いい
や…まさか」薄ら笑いで言葉を交わして、その後、大きな声で笑った。
その拍子にベースを弾く藤田の手元も狂った。いっそう笑えた。
ただし笑いながらも、藤田は彼の相方のことを心配していた。20分
ほど前にこの控え室からフラリと出て行ったきり、戻らない。相方が2
0分戻らないくらいで心配するなんて、なんと過保護なコンビだろうと
思われるかもしれない。
今日は、彼らトータルテンボスがボーカルとベースをやっているバン
ドのライブ。しかも不慣れな会場だということで、大村が迷っている、
もしくはどこかを探索しているという可能性も無いとは言えない。
ただ迷っているのであれば、まだいい。むしろ迷っててくれ、と藤田
は念じていた。迷っているのではなく、まっすぐ控え室に戻ってくると
ころを『何者かに』『邪魔されて』いるのであれば、甚だ問題だ。…も
っとも、もし迷っているのであれば「藤田君、ワタシが居るこの場所は
いったいどこなのかね!」と横柄な口調が聞こえてくるであろう携帯電
話が、ちっともちっとも鳴らない。ということは、藤田の希望的観測は
外れているのだろう。だからこそ、藤田は20分戻らない相方を心配し
ている。
「藤田、そういえば入ってきた時から、そんなスウェット履いてた
か?」
藤田の格好を眺めた樅野が、不意に声を掛ける。彼らのバンド「ソー
セージ・バタフライ・パスタ・フェスタ」のギターであり独特の詩の世
界観を紡ぎ出しているのが、この樅野である。
「え?なんすか」
「おまえさ、今日の服、イケてんの?」
くくくと笑われて真っ赤になりながら、藤田は必死に弁解する。確か
に、原色使いの多いコーディネートの中、パジャマ代わりのようなグレ
イのスウェットは浮いている。
137
:
oct </b><font color=#FF0000>(dkDoE4AQ)</font><b>
:2005/03/13(日) 02:11:22
「ち、違うんすよ!今日ジーパン履いてきてたんです!すっげイケてる
カッコしてましたよ!」
「何?漏らしたの」
「違いますって!大村の悪戯ですよ。アイツ、俺の座る椅子にシューク
リーム置いてやがったんです。俺、気ぃつかなくて、座ったらベチャッ
て中のクリームが」
「シュークリーム?」
「余計に作られてた“辛子入り”のヤツです」
あぁ、と樅野は肯く。芸人のライブのクイズコーナーなんかでよく見
かける、ロシアン・ルーレットの小道具だ。大勢がシュークリームを口
に入れて、その中で“辛子入り”シュークリームを食べているのは誰で
しょう、というアレ。
「コントの衣装でたまたまスウェット持ってたんで、とりあえず着替え
てきたんですけど…」
その後、まっすぐこのライブ会場に来たということなのだろう。笑う
樅野に憮然とした表情を返してから、藤田はちらりと時計を見上げた。
大村がこの部屋を出てから、30分近くが経過している。藤田はひとつ
息を吐くと、ベースを置いて立ち上がった。
「あのぉ…樅兄、オレ、ちーっと出てきます」
藤田の声掛けに、樅野はギターから顔を上げぬままに応じる。
「おう、大村連れて戻って来ぃ」
樅野も大村の不在に気づいて心配していたのだろうと知り、藤田は元
気のよい返事をして控え室を出て行く。その後ろ姿を見て、「大村に悪
戯されたことなんか、もうすっかり忘れてるんやろうなぁ」と樅野は可
笑しそうに笑った。
138
:
oct </b><font color=#FF0000>(dkDoE4AQ)</font><b>
:2005/03/13(日) 02:14:19
一方その頃、大村は目の前の相手を値踏みするような目で見ていた。
それからおもむろに口を開く。
「…白ですか、黒ですか」
「え?」
問われた相手は一瞬呆けたように間を置いて、それから、
「あぁ!俺?俺ね?俺、俺、白よ。白」
ほらこんな感じ、と言いながら、男は自分の白いネクタイを指して見
せた。その物にまったく説得力はないはずだが、そんな無邪気ともとれ
る仕種で、そのバックに居るのが『白』のユニットであることが信じら
れてしまう…ような気もする。
アンタッチャブルの山崎はそんな印象の男だ。
ただし、なぜトータルテンボスがやっているバンドのライブハウスに
山崎がいるのか。…ファンとして?顔見知りとして?…それほど暇な身
でもないだろう。
山崎は何が楽しいのか(もしくは地顔と言うべきなのか)ニコニコと
相好を崩したまま。
「でもさ、大村くん、正直、俺が白でも黒でもどっちでもいいでしょ」
「…どうしてそう思うんですか?」
「まぁこれは俺が勝手に思ってるだけだけどさ。白サイドの人ってのは、
俺が敵かどうかを確かめたくて『黒か?』って訊いてくることが多くっ
てぇ。で、黒の側の人間は自分の味方かを確認したくて『黒か?』って
訊いてくる。どっちでもいいやーって人が『白?黒?』って訊いてくる
ことが多いぃの」
納得できるようなできないような、そんな自説を披露して、山崎は爽
やか満面にニッコリと笑った。
「…『おまえは白か?』って訊く人もいるんじゃないんですか」
「いるね」
「そういう人は?」
「うーん…黒から改心した人か、芸人辞めた人か?…もしくは、どっち
かをスパイしてる人」
139
:
oct </b><font color=#FF0000>(dkDoE4AQ)</font><b>
:2005/03/13(日) 02:15:09
「スパイ?」
「そう。本当は黒側なのに白のふりしてるとか。その逆とか」
大村は意外だと思った。各ユニットにスパイがいるという話は初めて
耳にしたが、もちろん争いのあるところには付き物の話であろうから、
それ自体はさほど驚くことではない。そのことを山崎が知っていた、気
にしていたということに驚いたのだ。なんとなく、そういったことには
鈍感、もしくはとんと無頓着に見えていたから。
「…ってことは山崎さん、スパイに遭ったことがあるんすか?」
「それはいいじゃない!ま、どっちにしろスパイとかさ。そういう人は
『おまえ白?』って訊いてくるような気がする」
山崎の言葉の真意を大村は量ることが出来なかったが、それは今は問
題ではあるまい。
「まぁぶっちゃけ?白でも黒でもどっちでもいいって山崎さんの言葉は
アタリです。それで…中立の俺に何の御用で?」
重要なのはそこでしょ?という言葉を眼差しに込めてみる。案の定、
山崎は今度はニヤリと人を食ったような笑みを浮かべて。
「そりゃ中立の人に持ちかける話ったら大体相場は決まってるでしょ
う」
この流れで今更友達になってください、とかナイでしょ。
そう言って笑う山崎を前に、大村はなんとなく腰から尻のポケットに
かけて繋がるウォレットチェーンを幾度も撫でていた。
ジーンズのベルトに繋がるチェーンの金具には、透明感のある黄色を
した石が割と無造作に繋がっている。それがじわりと滲み出すように光
を放ち始めたことに、まだ大村は気付いていない。
「仲間に入れって?」
「まぁそれもあるけど…俺が訊きたいことはそれとは別」
いつもの不敵な笑いを絶やさぬようにしながら、大村は顔が引き攣る
のを感じていた。
なぜだろう。山崎はこんなに友好的な笑顔なのに。
「俺が訊きたいのは…君の石の能力が何か、だよ」
なぜだろう。俺の心臓がドクドクと、こんなに落ち着かないのは。
140
:
oct </b><font color=#FF0000>(dkDoE4AQ)</font><b>
:2005/03/13(日) 02:26:10
中途半端ですが、今日はここまでで…。
お目汚しです。
まだゝ続いています…。
141
:
名無しさん
:2005/03/14(月) 21:45:52
乙です!
きましたね〜SBPF編(勝手に言ってます)
チャブ山崎の行動が気になる今日この頃・・・
頑張ってください!
142
:
91 </b><font color=#FF0000>(ZTKv6W9M)</font><b>
:2005/03/17(木) 00:58:23
はじめまして。
アンジャッシュ&アリtoキリギリス石井の短編を書いてみました。
内容はある番組の収録中の一コマ、という感じのサイドストーリー的なエピソードです。
時期は2004年の11月〜12月ごろのある日。
アンジャッシュについての設定は本編と同じです。
石井については
>>106
の設定を使っていますが
この時点ではまだ力に目覚めていない、ということにしています。
本編中心人物のアンジャッシュを扱っていること、
本編未登場でまだ設定が固まっていない石井が出てくることを考えこちらのスレに投下しました。
番外編ということでお許しください。
143
:
91 </b><font color=#FF0000>(ZTKv6W9M)</font><b>
:2005/03/17(木) 01:00:12
わいわいとスタジオで作業をしているオレンジ色の制服の集団の中にアンジャッシュはいた。
「それではこの紙を重ねて切れ目を入れてくださーい。」
女子アナが出演者に指示を出している。
今日の企画は「ペーパーブーメランを作って飛ばしてみよう」だ。
『地味な番組だよなあ』と児嶋は思う。当然視聴率もいま一つだった。
でもこの番組の雰囲気は彼にとっては居心地の悪いものではなかった。
若手のひしめき合う他の番組では無理にでもテンションを上げていかなければならないが
ここにいる若手はアンジャッシュのほかはアリtoキリギリスの石井だけである。
石井も積極的に前に出ようとするタイプではないので向こうもずいぶん楽だったに違いない。
ゲストの講師の指導でブーメランを作り終え、実際に飛ばしてみることになったとき
あるベテラン芸人が突然
「戻ってきたのを取れなかった奴はみんなにジュースをおごる!」
と言い出した。
珍しく盛り上がるスタジオ。
渡部も「いいですよ!」と俄然やる気を出している。
「では、最初は石井隊員からお願いします。」
アナウンサーの指示に従い石井が前に進み出た。
だが石井の手を離れたブーメランは遥か頭上を通過していく。
精一杯のジャンプも全く意味がなく、石井はバランスを崩して膝をついた。
その拍子に石井のポケットから何かがこぼれ落ちた。
「あー、残念。」「身長が足りない!」
ドッと沸くスタジオの中で「それ」に気づいたのは児嶋だけだった。
『なんだろう、あれ』
目を凝らしてみてもよく見えない。
気がつくと既に渡部の番になっていた。児嶋はこの次だ。
「それ」について考えるのは後回しにして児嶋は収録の方に気持ちを切り替えた。
144
:
91 </b><font color=#FF0000>(ZTKv6W9M)</font><b>
:2005/03/17(木) 01:01:27
「休憩入りまーす。」
スタッフの声がスタジオに響いた。
結局児嶋も渡部もブーメランをキャッチすることはできなかった。
キャッチできたのはジュースの賭けを言い出したベテラン芸人だけだったのだ。
「意外と難しかったな。」
話しかける渡部を「ちょっと待って」とさえぎって児嶋はスタジオの真ん中に歩き出した。
『たしかこのあたりだったはず…』
姿勢を低くして探していると視界の端に何かキラリと光るものが入った。
屈んで拾い上げたそれは透明な石だった。見えにくいはずだ。
よく見ると中に針のように細い金色のかけらがいくつもきらめいている。
石を観察する児嶋にいつの間にかそばに来ていた渡部が言う。
「その石、力持ってるぞ。」
「え?」驚く児嶋の手を石が通り抜けた。すかさず渡部が石を受け止める。
「サンキュ。…ったくこの力便利なんだか不便なんだか。」
児嶋はぶつぶつ文句を言った。
「まだ目覚めてはいないな。この石どうしたんだ?」
渡部は石をあちこち透かして見ながら児嶋に尋ねた。
「石井君が落としてったんだ。」
「石井君か。まさか黒じゃないよなあ。」
石井とはボキャブラ以来の知り合いだがあまり話をしたことはない。
テレビでは真面目キャラが浸透しているが
素の石井のことをほとんど知らないことに二人は気づいた。
もし彼が黒に取り込まれるような人間なら石を返すことは自分たちの首を絞めることになる。
判断に迷っていたその時
「あ、それ僕のです。拾ってくださってありがとうございました。」
後ろから石井の声がした。
145
:
91 </b><font color=#FF0000>(ZTKv6W9M)</font><b>
:2005/03/17(木) 01:02:09
「あーこれ石井君のだったのか、ここに落ちてたんだよ。きれいな石だね。これどうしたの。」
ほとんど棒読みの口調で児嶋は言った。
『もうちょっとうまくごまかせないのかよ』渡部は内心はらはらしていた。。
が、石井は別に不審には思わなかったらしい。
「家の引き出しの奥から見つかったんです。
自分で買ったのか誰かからもらったものなのかも忘れちゃったんですけど
なんだか気に入っちゃってそれ以来ずっと持って歩いてるんですよ。」
「へえ、そうなのか。これどういう石なの?」
「僕もあんまりパワーストーンとか詳しくなくて嫁に聞いたんですよ。
『たぶんルチルクォーツっていう石だと思う』って言ってました。
効果はえーと『持っていると元気が出る』だったかな…?よく覚えてないです、すみません。」
石井の話を聞きながら児嶋は渡部のほうをチラリと見た。
渡部が小さくうなずいたのを確認し
「じゃこれ返すわ。もう落とすなよ。」と石を石井に渡した。
石井は何回も礼を言うとその場を離れ
スタジオの奥のほうにいるベテラン芸人たちの談笑の輪に入っていった。
「…あいつあの中に入っても全然違和感ねーな。」
児嶋はぼそっとつぶやいた。
「で、どうだったのよ。」
児嶋は渡部のほうを振り返って尋ねた。
児嶋が石井と話している間渡部は石井に同調して様子を探っていたのである。
「黒じゃないみたいだな。っていうか石のこと自体何も知らないみたいだ。」
黒の芸人特有の負のオーラは石井からは全く感じられなかった、と渡部は言った。
「そうか、じゃあこれからどっちに転ぶかわからないんだ。」
「ああ。でも石が目覚めたときに黒の連中より先に接触できる点では有利かな。
アリキリはあまり他の若手とテレビに出ないし。」
「あの石が目覚めるまで番組が続くかなあ。ゴールデンなのに一ケタらしいじゃん、視聴率。」
「そう言うなって。この番組が終われば俺たちもレギュラーが一つなくなっちゃうんだから。頑張ろうぜ。」
渡部は児嶋の肩をたたいた。
146
:
91 </b><font color=#FF0000>(ZTKv6W9M)</font><b>
:2005/03/17(木) 01:05:06
だがこの番組はスタッフの不祥事という意外な形で突然の終わりを迎えることになった。
「あーあ、せっかくのゴールデンだったのになー。」
と児嶋は番組が終了した後もしばらく愚痴をこぼしていた。
視聴率のせいではないだけに余計に悔しい。
「頑張って別のレギュラーをとればいいんだよ。へこんでるヒマはないぞ。」
渡部はもう立ち直っているようだ。
そういえば石井の持っていたあの石は今どうなっているのだろう。
番組終了で石井との接点もすっかりなくなってしまった。
「ホリプロのだれかに聞いてみようか。あの石の力も気になるし。」
児嶋の言葉に渡部はやや考え込んだあと
「そっとしといてやろうぜ。戦いに巻き込まれずにすむんならそれに越したことはないんだから。」
と答えた。
「…そうだな。」
あんな思いをする芸人はひとりでも少ないほうがいい。
これまでの苦しい戦いの数々を児嶋は思い出していた。
ちょうどそのころ。
自宅のリビングで自分の手を見つめて呆然としている石井の姿があった。
テーブルの上には無残に握り潰された携帯電話。
ルチルクォーツがポケットの中で光を放ち始めたことを石井はまだ知らない。
END
147
:
</b><font color=#FF0000>(ZTKv6W9M)</font><b>
:2005/03/17(木) 01:06:57
名前欄の91という番号はクッキーの食い残しです。意味はありません。すみませんでした。
以上「ウルトラ実験隊」ネタでお送りしました。
ラストで石井のルチルクォーツが目覚めていますが
この後の話は特に考えていないので
もし石井を使った話を考えている方がいらっしゃったらスルーしてしまってください。
それでは失礼しました。
148
:
名無しさん
:2005/03/19(土) 08:48:16
乙です!
アンジャッシュと石井さんの行方も気にしつつ、
この時のナソチャンのようすもひそかに気になりまつ・・・w
149
:
oct </b><font color=#FF0000>(dkDoE4AQ)</font><b>
:2005/03/20(日) 13:33:06
>>136-139
のトータルテンボス(SBPF)編を書いていた者です。続きを投下させてください。
この後、石は出てこないものの、とある能力だけが出てきます。
その石を悩んでいる上、もしかすると同じような能力が既にあるかもしれず…。
一旦、こちらで皆様のご意見等うかがえればと。(一応、まとめサイトを確認はしたのですが)
よろしくお願いいたします。
150
:
ロシアン・シュー </b><font color=#FF0000>(dkDoE4AQ)</font><b>
:2005/03/20(日) 13:34:37
>>136-139
の続き
「何やってんだアイツは」
控え室を出た藤田だが、1分と経たないうちにトイレの前の廊下で立ち尽く
す大村を見つけた。じっと睨むような目線。握り締めた片方の拳と、もう片方
の手はウォレットチェーンを行ったり来たりしている。
(…あ!アイツ、石使おうとしてやがんだな?!)
瞬時に勘付いた藤田は、そこから猛ダッシュで大村へと近付く。不測の事態
に備えて、彼の片手もウォレットチェーン――といってもスウェットには付け
られないのでポケットに放り込んでいた――を手に取る。藤田の心の焦りに呼
応するように、薄い碧色の石がふっと光を放つ。
「おーむ!何やってんだよ!」
「うるせぇ」
肩を掴むと、大村は藤田の手を振り切り、尚且つ押し退けようとする。その
視線はまっすぐに据えられて、藤田を振り返りもしない。
「うるせぇじゃねぇよ!お前、何やってんだって」
「藤田黙ってろ、向こう行ってろ。なんか胸騒ぎがする。あぶねぇかもしれね
ぇ」
「おい大村!!」
大村の前に回り込んで、その両肩を掴んだ。大村の視線が、初めてまともに
藤田を捉える。
「離せ!」
「“おまえ一人で”何やってんだよ大村!!」
「一人?!お前こそ何言って…」
そう言って、大村は藤田の肩越しに視線を投げ掛ける。
あたかも、そこに石を持った芸人が立っているかのように。
そしてその顔は一瞬の後に、甘いと思ったシュークリームの中に辛子が入っ
ていたかのような表情を上らせて。
「どこ行った?!」
「誰がだよ」
「居たろ!さっきまでそこに!」
「お前、俺が見つけた時からずっと一人だよ。何か睨んでたけど」
「んなわけねぇよ…居たんだ」
「だから誰が居たんだって」
「え?」
改めて訊かれて、大村は即答するのをためらった。
藤田の口ぶりによれば、山崎は『逃げた』のではなく『存在しなかった』も
しくは『見えなかった』のだということになる。任意の者にしか見えずに惑わ
せる“幻覚”の類か。間違いなくそれを生み出したのは「石の力」だろう。だ
とすると、その「石の持ち主」は2通りのことが考えられる。つまり、「山
崎」か「山崎以外」かということだ。
そして、うかつにそんな推測を口に出すべきか、大村は迷ったのである。目
の前に居て話をした山崎が「幻覚」だったと気付かされたばかり。
目の前に居る藤田が“本物の藤田”かどうか、大村には分からない。なにし
ろ藤田は、目の前の幻覚山崎が消えると同時に現れたのだから。
「おい、大村?」
黙りこくった相方を藤田が覗き込む。自分が“本物か”疑われているなんて、
微塵も考えていない表情だ。
「…藤田」
「なんだね。神妙な面持ちだねぇ」
「石、持ってるよな」
「え?あ、あぁ」
ホラ、と石を見せられ、大村はまたしばらく考え込む。さっきの山崎(の幻
覚)は白いネクタイをしていた。身体的特徴だけでなく持ち物までも忠実に再
現するのであれば、石を持っているだけでは藤田である証拠にはならないだろ
う。
151
:
ロシアン・シュー </b><font color=#FF0000>(dkDoE4AQ)</font><b>
:2005/03/20(日) 13:35:50
(どうすればいい?どうすれば、目の前のアフロ男が本物の藤田かどうかを判
別できる?)
普段はネタを考える時か悪戯を考える時にしか見せないくらい真剣な表情が、
大村の顔に浮かぶ。
すると、呼応するかのように腰の辺りにポッと熱が点ったような感覚がした。
大村が改めて確認するまでもなく、自分の石…薄い黄色の黄翡翠(イエロージ
ェイド)が輝いているのだと知れる。
(そうか)
大村はウォレットチェーンを手繰り寄せ、石を指先で確認した。この石があ
れば、藤田の正体を確認することくらいすぐに出来るはず。
「藤田。わりぃ、ちょっと俺、ライブ前でテンパってた」
「なに?」
「疲れてんのかもしんねぇ。ジュースを買ってきてくれたまえ」
いつも通りの大村の様子に誘われて、藤田は眉毛を吊り上げる。
「おまえっ、そのジュース買いに行ってたんじゃなかったか。フザケんなよ
っ」
「…そういやそうだっけ」
実際は控え室を出たところで山崎(幻覚)に行き会ったので、ジュースのこ
となどきれいさっぱり忘れ去っていたのだが、大村はそこをサラリと流す。
「いいや。じゃあじゃんけんで負けた方が買ってこようぜ」
「…負けたら奢りか?」
乗ってきた。
「望むところだ」
「よーし、やる気出てきたぞー」
このノリの良さだけで藤田だと信じても良いくらいだったが、念のため、と
大村は腰の石を発動させる。
「じゃーんけーん、しっ」
大村の手は、チョキ。藤田の手は、パー。石は一瞬キラリと光って、また元
の姿を取り戻す。
負けた藤田があんぐりと口を開けるが、すぐに両手をぶんぶんと振り回して
要求をかざす。
「さささ三回勝負!なっ。オゴジャンなんだから、それくらいアリだろう」
「…しょうがねぇな」
大村の溜め息に口に出さぬ思いが乗っていることに、藤田は気付かないだろ
う。
「ようし、じゃんっけんっ」
「しっ」
大村・グー。藤田・チョキ。
「もういっちょ。じゃんけんっ」
「し」
大村・グー。藤田・チョキ。
「はい、藤田くん三連敗」
行って来い、とスウェットを履いた尻を叩きながら大村は念じた。
(来い、藤田。気付け、藤田。お前が本物なら)
「あッ!!」
大村の願い通り、藤田はそのアフロ頭をもたげ、弾かれるように大声を上げ
た。
「おーむ、おめぇ、石使いやがったな?!」
「…やっと気付いたか」
ほっと息を吐きながら、大村は笑った。藤田が大村の石の能力を看破するか
どうかが、この賭けの重要なポイントだったのだ。
「当たり前だろ、三連勝して余裕綽々な顔してるなんて、お前が成功率上げた
からに決まってる!詐欺だ!…んで、何笑ってんだよ!」
藤田ががなりたてるが、彼が本物と証明できた大村は笑顔を崩さない。大村
の感情に藤田が気付くわけもないから、はたから見るとかなり奇妙なテンショ
ンの二人連れである。
「藤田」
「なんだね。ズルっこしたこと謝りたいのなら聞いてやる」
「俺の石の能力言ってみ」
「…謝らないのかよ」
憮然とした表情ながらも、素直に大村の要求を聞き入れて、藤田は、
「今更説明させるって、なんだよ。…自分か周りのヤツのアクションの成功率
を上げる、だろ。今はじゃんけんで自分勝利の成功率を上げたってところだろ
うが」
過不足なく大村の石の能力を説明して、これで満足か?という目を向ける。
それに向けて大村は、至極満足げに微笑んで肯く。
先ほどの山崎の幻覚は、「君の石の能力を訊きたい」と言った。それはつま
り、山崎の幻覚を操る石持ちの芸人は、大村の能力を知らないということだ。
その人物が白か黒か、敵か味方か、そもそも何が目的で何故大村の石の能力を
知りたがったのかはさっぱり分からないが、藤田に化けることはハイリスクだ
ったのだろう。彼ら二人とも、正確な石の能力を知っているのは、今のところ
本人と相方だけなのだ。
大村は手を伸ばして、飼い犬を撫でるのと大差ない手つきで目の前のアフロ
を撫でた。この感触は間違いなく相方…いや、この場合は、石を巡る戦いの中
でも唯一絶対的に信頼できる、親友のものだと言えた。
152
:
ロシアン・シュー </b><font color=#FF0000>(dkDoE4AQ)</font><b>
:2005/03/20(日) 13:37:35
「それで、ライブ前のあの茶番は何だったんだよ」
モツ煮込みを頬張りながら、藤田が大村をきろりと睨む。ライブ後の打ち上
げと称して二人で居酒屋に来たのはいいが、結局のところ三時間前に石を使っ
ていた大村の行動の理由が気になるのだろう。あの時、石を使ってまで何をし
たのか、藤田はそれを聞きたがっている。さすがに冷静に考えてみれば、ジ
ュースのオゴジャンのためだけに三回連続で石を使って成功率に細工をしたと
は信じられない。
「おやおや…茶番呼ばわりとは穏やかじゃないねぇ」
「穏やかじゃなかったのはおめーだろ。ガラにもなくマジだった」
「…ま、確かに」
さてどこから話し始めたもんかな、と一瞬間を置くと、藤田は間髪入れず、
「誰が居た?」
いいところを突いてきた。
「…誰も居なかった」
「誰か居たんだろ」
「誰も居なかったのはお前も見たろう」
居なかったのを見た、とはおかしな言い方だが、藤田は肯かないわけにはい
かない。あの時の大村は、確かに虚空を睨んでいたから。
「ただし、俺の目にはある男が映ってた」
「誰だよ」
「…俺らより知名度のあるコンビの、ボケの方」
「石は?」
「…持ってなかった」
じゃあ丸腰の相手に向けて石を使おうとしていたのか?藤田が眉を寄せるの
を見て、大村が続ける。
「俺の目には見えてたけれど、実際は居なかったって言っただろう。つまり、
幻覚だ。幻覚が、石を持っているわけはねぇ。それに、あの時点で俺は、相手
が幻覚だとは知らなかった」
そういうことだ、と言って藤田を安心させるようにひとつ肯く。
「つまり、どこからかその幻覚を操っていたやつがいたはずだ。石の力を考え
ると、多分すぐ近くで。…それが誰か、俺には分かんねぇけど」
「…」
藤田は、アフロの下の力強い眉毛をぎゅっと寄せて、何かしら考え込んでい
る。
「藤田」
「…一人だけ、可能性がある。いや、俺自身はこれっぽっちもそんな可能性信
じてねぇけど」
「…藤田?」
「俺らが今聞いてるとこを信じるならよ。石を持ってるってことは、芸人って
ことだろ。今日はいつものライブじゃねぇよ。俺らのバンドのオンリーライブ
だぜ?」
「…藤田おまえ」
驚いた表情の大村に、藤田がその人物の名前を告げようとした瞬間。
「もうええよ、藤田」
額を寄せ合って話をしていたふたりの上に、影が差す。その人物は、大村の
背後から近付いており、声を掛けられた藤田が先に顔を上げて、その人物を見
とめた。
それはまさに、藤田が名前を口にしようとした人物。
「…樅兄…?」
153
:
ロシアン・シュー </b><font color=#FF0000>(dkDoE4AQ)</font><b>
:2005/03/20(日) 13:39:11
大村は振り向かないまま、藤田の表情だけを観察している。騒がしいはずの
居酒屋の中で、自分たちを中心に半径1メートルだけがぽっかりと音を無くし
ているような感覚。腰にぶら下がった石が、自分の鼓動を表すように忙しなく
明滅しているのが感じ取れる。
「ライブ前のアレは、俺の石の能力や」
確かにそれは樅野の声。だが、振り向けばその瞬間から、樅野が白や黒のこ
ととは別に、“自分とは違う側”の存在になってしまうような気がして、大村
は振り向く意思すら見せずに問う。
「…なんで、あんなマネしたんすか」
別に、幻覚山崎にも、その操り手だったという樅野にも、身体的な攻撃を受
けたわけではない。ただし、幻覚と対峙した間、そしてその後、幻覚かどうか
判然としない藤田を前にした時、言いようのない恐怖が胸に拡がったことは事
実だ。それは精神的な攻撃とも言えた。
「…理由は、あんまりたいしたことでもないよ。…大村、怖かったやろ?」
「…」
背中越し、淡々と聞こえてくる樅野の言葉に、大村は応えない。否定も肯定
もしない。
「石の戦いをどこ吹く風、って白にも黒にも属さんことはできるよ。現に、そ
ういう立場を選んでる芸人もいっぱいおるはずや」
目のまえの藤田は、信じられないという顔で樅野を見ている。
「ただ、石の能力は千差万別。その戦いの途中で、今まで白か黒かなんてたい
して気にも留めてなかった相方まで信じられんようになる時は来る。相方が自
分と同じ考えなのか。実は自分はたった一人で戦ってるんじゃないか。そもそ
も、相方は本当に昨日まで隣にいた相方なのか。…疑いが生まれたら、なかな
か消えることはない」
「そのことを俺たちに教えてくれようとしたってことですか?」
「そんな優しい気持ちやったかな。どっちかっていうと、試したってのが正し
いかもしれない」
「俺たちを試して、あなたに何が残るんです、何か残りますか」
「何も残らんよ。何ひとつ、残ったらだめなんです」
謎掛けめいた返答にも、思い当たる節はある。
「樅野さんは、白っすか黒っすか」
ついに頭を抱えるようにして俯いてしまった藤田のアフロヘアーを眺めなが
ら、大村は今日二度目になる質問をぶつけた。この問いに、山崎の姿を借りた
樅野は白だと答えた。
「…知りたいか?」
「知りたいことがありすぎるんで、手近なとこから知りたいですね」
「俺は、おまえらは白に入るべきだと思ってる」
そんなことは訊いてない、と言おうとしたが、幻覚山崎の(ひいては操り手
である樅野の)せりふを思い出して、言葉を飲んだ。
――…『おまえは白か?』って訊く人もいるんじゃないんですか。
――いるね。
――そういう人は?
――うーん…黒から改心した人か、芸人辞めた人か?…もしくは、どっちかを
スパイしてる人。
あの台詞で樅野が言いたかったことは、石を巡る戦いを知った人間で、且つ
その戦いから身を引いた人物…『芸人を辞めた人間』は、石を封印することを
願う、ということなのではないか。だから今も、彼は自分たち二人を白のユニ
ットにいざなっている。
154
:
ロシアン・シュー </b><font color=#FF0000>(dkDoE4AQ)</font><b>
:2005/03/20(日) 13:44:55
「樅兄の考えはよく分かり…」
「待てよ、おーむ」
大村の言葉の語尾にかぶせるようにして、いつの間にか顔を上げた藤田が手
を差し出して「ストップ」と表す。その目は、どこか怒ったように尖り、大村
は思わず口を噤んだ。
「ねぇ樅兄」
「…何?」
「俺の今日のカッコ、イケてます?」
「ん?…いや、おまえその格好で家から来たんか、て思うけど」
「…おかしい」
常に無い、真剣な声色。大村が尋ね返す代わりに眉をひそめると、藤田は苛
ついた様子で居酒屋のテーブルをひとつ叩いた。周囲の客が一瞬こちらを注視
したが、すぐに興味を失った様子でそれぞれの会話に集中を戻した。彼らのそ
の動きはどこか不自然で、もしかしたら石の能力の中には他人の自分への興味
を失わせる、そんなものもあるのかもしれないと大村は頭の片隅で考える。
「…どうしたんだよ藤田」
「まず根本的なところがおかしいんだよ」
「…だから何がだね」
「今の樅兄が、石を持ってるはずがねぇ」
石を持っているのは芸人だけのはずと聞いているから。
これまで石を持っていたとしても、つい最近、樅野は石を手放していると考
えてもいいはずだ。彼の肩書きは、『作家』ではないか。
「…でもよ、石を手放すってのもすぐにはいかねぇだろ。少しくらい、猶予が
あるのかも」
「それより、この樅兄も幻覚だって考えた方がしっくりこないか?」
藤田が、テーブル上にあった割り箸を大村の肩越しに投げる。大村は振り返
らなかったが、背後の樅野から声が上がった様子はない。普通、箸を投げつけ
られたら「わぁ」だとか「何すんだ」とか、とにかく声を上げるはずだ。
「…マジか…」
…そう考えれば、さっき周囲の客がこちらを見てすぐに興味を失ったのもな
んとなく分かる。大村が一切振り向かなかったこともあって、傍から見れば、
自分たちは“二対一で揉めてる集団”ではなく“ただの二人連れ”なのだ。二
対一の状況なら多少目を引いただろうが、ツレ同士にしか見えない藤田と大村
だけなら、さして注目することもあるまい。
ライブ前、大村が“一人で”何かと対峙していたように、実は「一人足りな
い」。言い換えれば、一人は幻覚。
大村が鋭く振り返る。そこには誰も居なかった。
「…幻覚の樅兄さ、ちょっとだけ笑って、フッて居なくなった」
ずっと樅野(幻覚)が立っていたのを見ていた藤田が、ぽつりと呟く。それ
を口に出してみると、ひどく象徴的な言葉になってしまったことに、藤田自身
が驚いた。驚いたけれど、そのことが藤田にある核心を抱かせた。
「居るんでしょう?」
「藤田?…誰に話し掛けてる?」
さっきから、藤田は千里眼でも持ったかのように大村の思考の先を行く。大
村にとってみれば、いつもおちょくっている藤田の言動に驚くやら少しムカつ
くやらといったところだ。
「居んの、分かってんすよ」
「藤田ぁ」
俺にも分かるように言いたまえ。
大村がそう言おうとした矢先だった。
155
:
ロシアン・シュー </b><font color=#FF0000>(dkDoE4AQ)</font><b>
:2005/03/20(日) 13:45:28
「…大村じゃなくて藤田に見破られんの、ちょっと悔しいな」
聞き覚えのある、標準語と交じり合って柔らかな響きの関西弁。
今、背後に立つ人物が、山崎・樅野、二人の幻覚を大村に見せたのであり。
そして、振り返る前から分かった。その声は聞き間違えようもなく、
「や…まもと、さん?」
樅野の相方だった、山本のもの。
「ライブ、実はこっそり見てたよ。よかった」
「…マジで山本さん?」
「大村は、びっくりしてるなぁ。…藤田は、いつから分かってたん?」
穏やかな顔に、多少剣呑な表情を浮かべて、山本が藤田に向けて顎をしゃく
ってみせた。
「樅兄が出てきたところ」
山本の問いに、藤田はお気に入りのおもちゃを取られた子供のような顔で答
える。
「なんで分かった?」
「樅兄がこんなことすんのおかしいって思った。下手したら俺らが石使って抵
抗してくっかもしれないのに、しらっと出てきて、無防備過ぎんなぁって。幻
覚って考えれば説明がつくでしょう。幻覚に俺らが反撃したって、本体は傷付
かない」
それに、と言いさして、藤田は自分のスウェットを見下ろす。
「決定打はこのスウェット。樅兄は俺が今日なんでスウェット履いてんのか知
ってるんですよ。おーむの悪戯のせいで途中で履き替えたんであって、この格
好は家からじゃねぇってことも」
あちゃあ、と山本の茶化したような声がした。たいしてダメージは負ってい
ない。
「…それで、その幻覚の本体が俺やって、なんで分かったん?」
「…手放した石を、樅兄がどうしたか考えたんです。あんまり考えたくはなか
ったけど、もし俺が樅兄と同じ状況ならどうするかってことも考えた」
「それで?」
「俺なら…」
藤田はそこで一度言葉を切り、対面に座る大村に視線を合わせた。
「持たなくなった石は、きっと大村に預けます」
山本の返事はない。おそらく、藤田の推察は的を射たものだったのだろう。
樅野はもう自分で持たなくなった(持てなくなった?)石を、元相方に預けた。
「石は、芸人じゃないと持たない。石は、俺らがコンビだったって証にもなる
でしょ。だから俺ならきっと大村に預けます。…同じように樅兄も山本さんに
預けたんじゃねぇかなって」
樅野が何を考えて、石を山本に預けたのかは知らない。山本にすら分からな
い。
しかし、藤田の言葉は拙いながらもある種の説得力を持っていた。芸人にな
らなくては持つことのなかった石。自分の笑いへの情熱に反応しているような
石。それを『自分が芸人である間となりに居た男』に託したとしても、驚くこ
とではない。
「…おまえらを、試しただけや」
拗ねたようにそう呟いて、山本が二人に背を向けた。くちびる噛んで黙って
いた大村が、先輩の背中に声を掛ける。
新着レスの表示
名前:
E-mail
(省略可)
:
※書き込む際の注意事項は
こちら
※画像アップローダーは
こちら
(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)
スマートフォン版
掲示板管理者へ連絡
無料レンタル掲示板