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【失敗】廃棄小説投下スレッド【放棄】
154
:
ロシアン・シュー </b><font color=#FF0000>(dkDoE4AQ)</font><b>
:2005/03/20(日) 13:44:55
「樅兄の考えはよく分かり…」
「待てよ、おーむ」
大村の言葉の語尾にかぶせるようにして、いつの間にか顔を上げた藤田が手
を差し出して「ストップ」と表す。その目は、どこか怒ったように尖り、大村
は思わず口を噤んだ。
「ねぇ樅兄」
「…何?」
「俺の今日のカッコ、イケてます?」
「ん?…いや、おまえその格好で家から来たんか、て思うけど」
「…おかしい」
常に無い、真剣な声色。大村が尋ね返す代わりに眉をひそめると、藤田は苛
ついた様子で居酒屋のテーブルをひとつ叩いた。周囲の客が一瞬こちらを注視
したが、すぐに興味を失った様子でそれぞれの会話に集中を戻した。彼らのそ
の動きはどこか不自然で、もしかしたら石の能力の中には他人の自分への興味
を失わせる、そんなものもあるのかもしれないと大村は頭の片隅で考える。
「…どうしたんだよ藤田」
「まず根本的なところがおかしいんだよ」
「…だから何がだね」
「今の樅兄が、石を持ってるはずがねぇ」
石を持っているのは芸人だけのはずと聞いているから。
これまで石を持っていたとしても、つい最近、樅野は石を手放していると考
えてもいいはずだ。彼の肩書きは、『作家』ではないか。
「…でもよ、石を手放すってのもすぐにはいかねぇだろ。少しくらい、猶予が
あるのかも」
「それより、この樅兄も幻覚だって考えた方がしっくりこないか?」
藤田が、テーブル上にあった割り箸を大村の肩越しに投げる。大村は振り返
らなかったが、背後の樅野から声が上がった様子はない。普通、箸を投げつけ
られたら「わぁ」だとか「何すんだ」とか、とにかく声を上げるはずだ。
「…マジか…」
…そう考えれば、さっき周囲の客がこちらを見てすぐに興味を失ったのもな
んとなく分かる。大村が一切振り向かなかったこともあって、傍から見れば、
自分たちは“二対一で揉めてる集団”ではなく“ただの二人連れ”なのだ。二
対一の状況なら多少目を引いただろうが、ツレ同士にしか見えない藤田と大村
だけなら、さして注目することもあるまい。
ライブ前、大村が“一人で”何かと対峙していたように、実は「一人足りな
い」。言い換えれば、一人は幻覚。
大村が鋭く振り返る。そこには誰も居なかった。
「…幻覚の樅兄さ、ちょっとだけ笑って、フッて居なくなった」
ずっと樅野(幻覚)が立っていたのを見ていた藤田が、ぽつりと呟く。それ
を口に出してみると、ひどく象徴的な言葉になってしまったことに、藤田自身
が驚いた。驚いたけれど、そのことが藤田にある核心を抱かせた。
「居るんでしょう?」
「藤田?…誰に話し掛けてる?」
さっきから、藤田は千里眼でも持ったかのように大村の思考の先を行く。大
村にとってみれば、いつもおちょくっている藤田の言動に驚くやら少しムカつ
くやらといったところだ。
「居んの、分かってんすよ」
「藤田ぁ」
俺にも分かるように言いたまえ。
大村がそう言おうとした矢先だった。
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