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【失敗】廃棄小説投下スレッド【放棄】

101“Black Coral & White Coral” </b><font color=#FF0000>(t663D/rE)</font><b>:2005/02/21(月) 03:02:11
アパタイトの力を虫入り琥珀に対して行使した、その時。
小沢は貧血を起こした時のような全身の力が抜ける感覚に襲われ、視界も不意に白く染まってしまった。
それからどれだけ時間が経ったのかはわからないながらも、目の前を覆う白い幕のようなもやが晴れて
次に小沢の前に広がっていたのは、青い空と風にそよぐ緑だった。
・・・ここは、どこ? それに、みんなは?
先ほどまで自分が立っていた廃工場とは異なる、どこかの公園とおぼしいのどかな光景に
そして井戸田や島田、江戸むらさきの2人の姿が辺りに見られない事に、当然のように小沢は戸惑う。

・・・あと、これは一体?
もう一つ彼を戸惑わせたのは、そんなのどかな公園には似合わない不穏な気配を漂わせながら
小沢の目の前で2人の青年を取り囲む若者達の姿だった。
これは昼間に再放送されている昔の2時間サスペンスかと思うほどに、彼らの洋服や髪型などのセンスが
揃いも揃って4〜5年近く昔のそれである事に小沢は何とも言えない違和感を感じる。

「あ、あのー・・・・・・」
手をあげで恐る恐る小沢は若者達に訊ねようとするけれど、掠れた小沢の声は彼らの耳に届かなかったらしい。
それ以前に、若者達はすぐ側に現れたにも関わらず、小沢には気付いてもいない様子で。
ただすぐ前にいる2人組の方にのみ、目を向け意識を向けているようだった。

「ようやく追い詰めたぞ・・・いい加減に大人しく、例の石・・・虫入り琥珀を渡して貰おうか。」
「・・・・・・えっ?」
若者達のリーダー格とおぼしい男が、2人組に告げる。
その内容もさることながら、男の声に聞き覚えがあり、小沢は小さく驚きの言葉を漏らした。
・・・確かこの人、3年前に芸人辞めて実家を継いだんじゃなかったっけ?
しかし男や若者達が発するオーラは黒のユニットの芸人達独特の澱んだモノ。
一般人には発する事など出来ない物であろう。

「・・・申し訳ありませんが、お断りいたします。」
どうにも状況が理解できない小沢の耳に、若者達が作る輪の中から凛とした良く通る声が届いた。
「と、言いますか。あなた方黒の側の人間に渡す石など、当方には一つもございません。」
この声にも小沢は聞き覚えがある。ただ、少し記憶にある声よりも不遜な若さが感じられるけれど。

「お断りだァ?」
もしかして・・・と小沢が頭の中で仮定を組み上げている最中、リーダー格の男が素っ頓狂な声を上げた。
「馬鹿か? この状況で・・・・・・素直にこっちに噂の虫入り琥珀さえ渡してくれりゃ、
 お前だって顔をボコボコに腫れされて収録現場に行かなくても済むんだぜ?」
なぁ、西園寺 守クンよ?

・・・やっぱりか。
ドラマの役名で名を呼ばれ、憮然と眉をしかめて見せた2人組の片方の顔が若者達の隙間から見えて、
小沢は己の仮定に根拠が与えられたように思え、声にならない呟きを漏らした。
彼は、アリtoキリギリスの石井 正則。ならば彼の傍らでオロオロする青年は相方の石塚 義之だろうか。
彼らもまた若者達同様に一昔前の格好をしているようで、一番最近に小沢が見た彼らとは
別人かと思うほどの垢抜けなさ。

しかし、ここではその格好が正しいのだろう。
どういう原理かはわからないが、多分小沢が今見ている光景は、かつてどこかで起こった出来事。
虫入り琥珀が吸い込み、己の内側に溜め込んだ誰かの記憶の欠片。
現在盛り上がっているとされるお笑いブームの前に、激しく燃え上がったお笑いバブルの時代にも、
石とそれを巡る戦いが存在していたところで、決しておかしい話ではない。
それ故に、異物である小沢の声は若者達には届かず、その姿も彼らの視界に入る事もなく。


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