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【失敗】廃棄小説投下スレッド【放棄】

150ロシアン・シュー </b><font color=#FF0000>(dkDoE4AQ)</font><b>:2005/03/20(日) 13:34:37
>>136-139の続き

「何やってんだアイツは」
 控え室を出た藤田だが、1分と経たないうちにトイレの前の廊下で立ち尽く
す大村を見つけた。じっと睨むような目線。握り締めた片方の拳と、もう片方
の手はウォレットチェーンを行ったり来たりしている。
(…あ!アイツ、石使おうとしてやがんだな?!)
 瞬時に勘付いた藤田は、そこから猛ダッシュで大村へと近付く。不測の事態
に備えて、彼の片手もウォレットチェーン――といってもスウェットには付け
られないのでポケットに放り込んでいた――を手に取る。藤田の心の焦りに呼
応するように、薄い碧色の石がふっと光を放つ。
「おーむ!何やってんだよ!」
「うるせぇ」
 肩を掴むと、大村は藤田の手を振り切り、尚且つ押し退けようとする。その
視線はまっすぐに据えられて、藤田を振り返りもしない。
「うるせぇじゃねぇよ!お前、何やってんだって」
「藤田黙ってろ、向こう行ってろ。なんか胸騒ぎがする。あぶねぇかもしれね
ぇ」
「おい大村!!」
 大村の前に回り込んで、その両肩を掴んだ。大村の視線が、初めてまともに
藤田を捉える。
「離せ!」
「“おまえ一人で”何やってんだよ大村!!」
「一人?!お前こそ何言って…」
 そう言って、大村は藤田の肩越しに視線を投げ掛ける。
 あたかも、そこに石を持った芸人が立っているかのように。
 そしてその顔は一瞬の後に、甘いと思ったシュークリームの中に辛子が入っ
ていたかのような表情を上らせて。
「どこ行った?!」
「誰がだよ」
「居たろ!さっきまでそこに!」
「お前、俺が見つけた時からずっと一人だよ。何か睨んでたけど」
「んなわけねぇよ…居たんだ」
「だから誰が居たんだって」
「え?」
 改めて訊かれて、大村は即答するのをためらった。
 藤田の口ぶりによれば、山崎は『逃げた』のではなく『存在しなかった』も
しくは『見えなかった』のだということになる。任意の者にしか見えずに惑わ
せる“幻覚”の類か。間違いなくそれを生み出したのは「石の力」だろう。だ
とすると、その「石の持ち主」は2通りのことが考えられる。つまり、「山
崎」か「山崎以外」かということだ。
 そして、うかつにそんな推測を口に出すべきか、大村は迷ったのである。目
の前に居て話をした山崎が「幻覚」だったと気付かされたばかり。
 目の前に居る藤田が“本物の藤田”かどうか、大村には分からない。なにし
ろ藤田は、目の前の幻覚山崎が消えると同時に現れたのだから。
「おい、大村?」
 黙りこくった相方を藤田が覗き込む。自分が“本物か”疑われているなんて、
微塵も考えていない表情だ。
「…藤田」
「なんだね。神妙な面持ちだねぇ」
「石、持ってるよな」
「え?あ、あぁ」
 ホラ、と石を見せられ、大村はまたしばらく考え込む。さっきの山崎(の幻
覚)は白いネクタイをしていた。身体的特徴だけでなく持ち物までも忠実に再
現するのであれば、石を持っているだけでは藤田である証拠にはならないだろ
う。


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