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【失敗】廃棄小説投下スレッド【放棄】

151ロシアン・シュー </b><font color=#FF0000>(dkDoE4AQ)</font><b>:2005/03/20(日) 13:35:50
(どうすればいい?どうすれば、目の前のアフロ男が本物の藤田かどうかを判
別できる?)
 普段はネタを考える時か悪戯を考える時にしか見せないくらい真剣な表情が、
大村の顔に浮かぶ。
 すると、呼応するかのように腰の辺りにポッと熱が点ったような感覚がした。
大村が改めて確認するまでもなく、自分の石…薄い黄色の黄翡翠(イエロージ
ェイド)が輝いているのだと知れる。
(そうか)
 大村はウォレットチェーンを手繰り寄せ、石を指先で確認した。この石があ
れば、藤田の正体を確認することくらいすぐに出来るはず。
「藤田。わりぃ、ちょっと俺、ライブ前でテンパってた」
「なに?」
「疲れてんのかもしんねぇ。ジュースを買ってきてくれたまえ」
 いつも通りの大村の様子に誘われて、藤田は眉毛を吊り上げる。
「おまえっ、そのジュース買いに行ってたんじゃなかったか。フザケんなよ
っ」
「…そういやそうだっけ」
 実際は控え室を出たところで山崎(幻覚)に行き会ったので、ジュースのこ
となどきれいさっぱり忘れ去っていたのだが、大村はそこをサラリと流す。
「いいや。じゃあじゃんけんで負けた方が買ってこようぜ」
「…負けたら奢りか?」
 乗ってきた。
「望むところだ」
「よーし、やる気出てきたぞー」
 このノリの良さだけで藤田だと信じても良いくらいだったが、念のため、と
大村は腰の石を発動させる。
「じゃーんけーん、しっ」
 大村の手は、チョキ。藤田の手は、パー。石は一瞬キラリと光って、また元
の姿を取り戻す。
 負けた藤田があんぐりと口を開けるが、すぐに両手をぶんぶんと振り回して
要求をかざす。
「さささ三回勝負!なっ。オゴジャンなんだから、それくらいアリだろう」
「…しょうがねぇな」
 大村の溜め息に口に出さぬ思いが乗っていることに、藤田は気付かないだろ
う。
「ようし、じゃんっけんっ」
「しっ」
 大村・グー。藤田・チョキ。
「もういっちょ。じゃんけんっ」
「し」
 大村・グー。藤田・チョキ。
「はい、藤田くん三連敗」
 行って来い、とスウェットを履いた尻を叩きながら大村は念じた。
(来い、藤田。気付け、藤田。お前が本物なら)
「あッ!!」
 大村の願い通り、藤田はそのアフロ頭をもたげ、弾かれるように大声を上げ
た。
「おーむ、おめぇ、石使いやがったな?!」
「…やっと気付いたか」
 ほっと息を吐きながら、大村は笑った。藤田が大村の石の能力を看破するか
どうかが、この賭けの重要なポイントだったのだ。
「当たり前だろ、三連勝して余裕綽々な顔してるなんて、お前が成功率上げた
からに決まってる!詐欺だ!…んで、何笑ってんだよ!」
 藤田ががなりたてるが、彼が本物と証明できた大村は笑顔を崩さない。大村
の感情に藤田が気付くわけもないから、はたから見るとかなり奇妙なテンショ
ンの二人連れである。
「藤田」
「なんだね。ズルっこしたこと謝りたいのなら聞いてやる」
「俺の石の能力言ってみ」
「…謝らないのかよ」
 憮然とした表情ながらも、素直に大村の要求を聞き入れて、藤田は、
「今更説明させるって、なんだよ。…自分か周りのヤツのアクションの成功率
を上げる、だろ。今はじゃんけんで自分勝利の成功率を上げたってところだろ
うが」
 過不足なく大村の石の能力を説明して、これで満足か?という目を向ける。
それに向けて大村は、至極満足げに微笑んで肯く。
 先ほどの山崎の幻覚は、「君の石の能力を訊きたい」と言った。それはつま
り、山崎の幻覚を操る石持ちの芸人は、大村の能力を知らないということだ。
その人物が白か黒か、敵か味方か、そもそも何が目的で何故大村の石の能力を
知りたがったのかはさっぱり分からないが、藤田に化けることはハイリスクだ
ったのだろう。彼ら二人とも、正確な石の能力を知っているのは、今のところ
本人と相方だけなのだ。
 大村は手を伸ばして、飼い犬を撫でるのと大差ない手つきで目の前のアフロ
を撫でた。この感触は間違いなく相方…いや、この場合は、石を巡る戦いの中
でも唯一絶対的に信頼できる、親友のものだと言えた。


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