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【失敗】廃棄小説投下スレッド【放棄】

1名無しさん:2004/11/27(土) 03:12
コソーリ書いてはみたものの、様々な理由により途中放棄された小説を投下するスレ。

ストーリーなどが矛盾してしまった・話が途切れ途切れで繋がらない・
気づけば文が危ない方向へ・もうとにかく続きが書けない…等。
捨ててしまうのはもったいない気がする。しかし本スレに投下するのはチョト気が引ける。
そんな人のためのスレッドです。

・もしかしたら続きを書くかも、修正してうpするかもという人はその旨を
・使いたい!または使えそう!なネタが捨ててあったら交渉してみよう。
・人によって嫌悪感を起こさせるようなものは前もって警告すること。

136oct </b><font color=#FF0000>(dkDoE4AQ)</font><b>:2005/03/13(日) 02:10:15
 ギターを爪弾く樅野が一音はずした。藤田が思わず顔をあげたら、バ
ツの悪そうな樅野の表情とぶつかった。「はずしましたよネ?」「いい
や…まさか」薄ら笑いで言葉を交わして、その後、大きな声で笑った。
その拍子にベースを弾く藤田の手元も狂った。いっそう笑えた。
 ただし笑いながらも、藤田は彼の相方のことを心配していた。20分
ほど前にこの控え室からフラリと出て行ったきり、戻らない。相方が2
0分戻らないくらいで心配するなんて、なんと過保護なコンビだろうと
思われるかもしれない。
 今日は、彼らトータルテンボスがボーカルとベースをやっているバン
ドのライブ。しかも不慣れな会場だということで、大村が迷っている、
もしくはどこかを探索しているという可能性も無いとは言えない。
 ただ迷っているのであれば、まだいい。むしろ迷っててくれ、と藤田
は念じていた。迷っているのではなく、まっすぐ控え室に戻ってくると
ころを『何者かに』『邪魔されて』いるのであれば、甚だ問題だ。…も
っとも、もし迷っているのであれば「藤田君、ワタシが居るこの場所は
いったいどこなのかね!」と横柄な口調が聞こえてくるであろう携帯電
話が、ちっともちっとも鳴らない。ということは、藤田の希望的観測は
外れているのだろう。だからこそ、藤田は20分戻らない相方を心配し
ている。
「藤田、そういえば入ってきた時から、そんなスウェット履いてた
か?」
 藤田の格好を眺めた樅野が、不意に声を掛ける。彼らのバンド「ソー
セージ・バタフライ・パスタ・フェスタ」のギターであり独特の詩の世
界観を紡ぎ出しているのが、この樅野である。
「え?なんすか」
「おまえさ、今日の服、イケてんの?」
 くくくと笑われて真っ赤になりながら、藤田は必死に弁解する。確か
に、原色使いの多いコーディネートの中、パジャマ代わりのようなグレ
イのスウェットは浮いている。

137oct </b><font color=#FF0000>(dkDoE4AQ)</font><b>:2005/03/13(日) 02:11:22
「ち、違うんすよ!今日ジーパン履いてきてたんです!すっげイケてる
カッコしてましたよ!」
「何?漏らしたの」
「違いますって!大村の悪戯ですよ。アイツ、俺の座る椅子にシューク
リーム置いてやがったんです。俺、気ぃつかなくて、座ったらベチャッ
て中のクリームが」
「シュークリーム?」
「余計に作られてた“辛子入り”のヤツです」
 あぁ、と樅野は肯く。芸人のライブのクイズコーナーなんかでよく見
かける、ロシアン・ルーレットの小道具だ。大勢がシュークリームを口
に入れて、その中で“辛子入り”シュークリームを食べているのは誰で
しょう、というアレ。
「コントの衣装でたまたまスウェット持ってたんで、とりあえず着替え
てきたんですけど…」
 その後、まっすぐこのライブ会場に来たということなのだろう。笑う
樅野に憮然とした表情を返してから、藤田はちらりと時計を見上げた。
大村がこの部屋を出てから、30分近くが経過している。藤田はひとつ
息を吐くと、ベースを置いて立ち上がった。
「あのぉ…樅兄、オレ、ちーっと出てきます」
 藤田の声掛けに、樅野はギターから顔を上げぬままに応じる。
「おう、大村連れて戻って来ぃ」
 樅野も大村の不在に気づいて心配していたのだろうと知り、藤田は元
気のよい返事をして控え室を出て行く。その後ろ姿を見て、「大村に悪
戯されたことなんか、もうすっかり忘れてるんやろうなぁ」と樅野は可
笑しそうに笑った。

138oct </b><font color=#FF0000>(dkDoE4AQ)</font><b>:2005/03/13(日) 02:14:19
 一方その頃、大村は目の前の相手を値踏みするような目で見ていた。
それからおもむろに口を開く。
「…白ですか、黒ですか」
「え?」
 問われた相手は一瞬呆けたように間を置いて、それから、
「あぁ!俺?俺ね?俺、俺、白よ。白」
 ほらこんな感じ、と言いながら、男は自分の白いネクタイを指して見
せた。その物にまったく説得力はないはずだが、そんな無邪気ともとれ
る仕種で、そのバックに居るのが『白』のユニットであることが信じら
れてしまう…ような気もする。
 アンタッチャブルの山崎はそんな印象の男だ。
 ただし、なぜトータルテンボスがやっているバンドのライブハウスに
山崎がいるのか。…ファンとして?顔見知りとして?…それほど暇な身
でもないだろう。
 山崎は何が楽しいのか(もしくは地顔と言うべきなのか)ニコニコと
相好を崩したまま。
「でもさ、大村くん、正直、俺が白でも黒でもどっちでもいいでしょ」
「…どうしてそう思うんですか?」
「まぁこれは俺が勝手に思ってるだけだけどさ。白サイドの人ってのは、
俺が敵かどうかを確かめたくて『黒か?』って訊いてくることが多くっ
てぇ。で、黒の側の人間は自分の味方かを確認したくて『黒か?』って
訊いてくる。どっちでもいいやーって人が『白?黒?』って訊いてくる
ことが多いぃの」
 納得できるようなできないような、そんな自説を披露して、山崎は爽
やか満面にニッコリと笑った。
「…『おまえは白か?』って訊く人もいるんじゃないんですか」
「いるね」
「そういう人は?」
「うーん…黒から改心した人か、芸人辞めた人か?…もしくは、どっち
かをスパイしてる人」

139oct </b><font color=#FF0000>(dkDoE4AQ)</font><b>:2005/03/13(日) 02:15:09
「スパイ?」
「そう。本当は黒側なのに白のふりしてるとか。その逆とか」
 大村は意外だと思った。各ユニットにスパイがいるという話は初めて
耳にしたが、もちろん争いのあるところには付き物の話であろうから、
それ自体はさほど驚くことではない。そのことを山崎が知っていた、気
にしていたということに驚いたのだ。なんとなく、そういったことには
鈍感、もしくはとんと無頓着に見えていたから。
「…ってことは山崎さん、スパイに遭ったことがあるんすか?」
「それはいいじゃない!ま、どっちにしろスパイとかさ。そういう人は
『おまえ白?』って訊いてくるような気がする」
 山崎の言葉の真意を大村は量ることが出来なかったが、それは今は問
題ではあるまい。
「まぁぶっちゃけ?白でも黒でもどっちでもいいって山崎さんの言葉は
アタリです。それで…中立の俺に何の御用で?」
 重要なのはそこでしょ?という言葉を眼差しに込めてみる。案の定、
山崎は今度はニヤリと人を食ったような笑みを浮かべて。
「そりゃ中立の人に持ちかける話ったら大体相場は決まってるでしょ
う」
 この流れで今更友達になってください、とかナイでしょ。
 そう言って笑う山崎を前に、大村はなんとなく腰から尻のポケットに
かけて繋がるウォレットチェーンを幾度も撫でていた。
 ジーンズのベルトに繋がるチェーンの金具には、透明感のある黄色を
した石が割と無造作に繋がっている。それがじわりと滲み出すように光
を放ち始めたことに、まだ大村は気付いていない。
「仲間に入れって?」
「まぁそれもあるけど…俺が訊きたいことはそれとは別」
 いつもの不敵な笑いを絶やさぬようにしながら、大村は顔が引き攣る
のを感じていた。
 なぜだろう。山崎はこんなに友好的な笑顔なのに。
「俺が訊きたいのは…君の石の能力が何か、だよ」
 なぜだろう。俺の心臓がドクドクと、こんなに落ち着かないのは。


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