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【失敗】廃棄小説投下スレッド【放棄】

155ロシアン・シュー </b><font color=#FF0000>(dkDoE4AQ)</font><b>:2005/03/20(日) 13:45:28
「…大村じゃなくて藤田に見破られんの、ちょっと悔しいな」
 聞き覚えのある、標準語と交じり合って柔らかな響きの関西弁。
 今、背後に立つ人物が、山崎・樅野、二人の幻覚を大村に見せたのであり。
 そして、振り返る前から分かった。その声は聞き間違えようもなく、
「や…まもと、さん?」
 樅野の相方だった、山本のもの。
「ライブ、実はこっそり見てたよ。よかった」
「…マジで山本さん?」
「大村は、びっくりしてるなぁ。…藤田は、いつから分かってたん?」
 穏やかな顔に、多少剣呑な表情を浮かべて、山本が藤田に向けて顎をしゃく
ってみせた。
「樅兄が出てきたところ」
 山本の問いに、藤田はお気に入りのおもちゃを取られた子供のような顔で答
える。
「なんで分かった?」
「樅兄がこんなことすんのおかしいって思った。下手したら俺らが石使って抵
抗してくっかもしれないのに、しらっと出てきて、無防備過ぎんなぁって。幻
覚って考えれば説明がつくでしょう。幻覚に俺らが反撃したって、本体は傷付
かない」
 それに、と言いさして、藤田は自分のスウェットを見下ろす。
「決定打はこのスウェット。樅兄は俺が今日なんでスウェット履いてんのか知
ってるんですよ。おーむの悪戯のせいで途中で履き替えたんであって、この格
好は家からじゃねぇってことも」
 あちゃあ、と山本の茶化したような声がした。たいしてダメージは負ってい
ない。
「…それで、その幻覚の本体が俺やって、なんで分かったん?」
「…手放した石を、樅兄がどうしたか考えたんです。あんまり考えたくはなか
ったけど、もし俺が樅兄と同じ状況ならどうするかってことも考えた」
「それで?」
「俺なら…」
 藤田はそこで一度言葉を切り、対面に座る大村に視線を合わせた。
「持たなくなった石は、きっと大村に預けます」
 山本の返事はない。おそらく、藤田の推察は的を射たものだったのだろう。
樅野はもう自分で持たなくなった(持てなくなった?)石を、元相方に預けた。
「石は、芸人じゃないと持たない。石は、俺らがコンビだったって証にもなる
でしょ。だから俺ならきっと大村に預けます。…同じように樅兄も山本さんに
預けたんじゃねぇかなって」
 樅野が何を考えて、石を山本に預けたのかは知らない。山本にすら分からな
い。
 しかし、藤田の言葉は拙いながらもある種の説得力を持っていた。芸人にな
らなくては持つことのなかった石。自分の笑いへの情熱に反応しているような
石。それを『自分が芸人である間となりに居た男』に託したとしても、驚くこ
とではない。
「…おまえらを、試しただけや」
 拗ねたようにそう呟いて、山本が二人に背を向けた。くちびる噛んで黙って
いた大村が、先輩の背中に声を掛ける。


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