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【失敗】廃棄小説投下スレッド【放棄】

12919 </b><font color=#FF0000>(Ps/NPPJo)</font><b>:2005/03/05(土) 00:45:05
結局のところ、相手を下敷きにするように井戸田は床に頭をぶつけた。
「痛い!痛い!?あ、重い!」
「痛っ、すみません!」
大声で謝りながら慌てて井戸田は下敷きにしてしまった人物から離れる。
のしかかった体が硬かったから男だろう、
(女性じゃなくてよかったよ)とちらりと思うが、重い思いをさせたのには変わりない。
「本当にすみません!」と座り込んだ体勢のままお辞儀すると相手の顔を見て、
予想もしなかった人物に絶句した。

「……やはぎさん…?」

おぎやはぎ矢作。相方は、あの小沢が「世界で一番好き」と公言する小木だ。
矢作は眼鏡の無事をひとしきり観察すると、「大丈夫みたい」と眼鏡か井戸田か、
どちらに対してか分からないつぶやきを漏らす。

眼鏡を掛け直し井戸田に向き合うと、
「ちょっと〜、どうしたのさ〜」
井戸田を責めるように唇を尖らせた。
「すみません、足がしびれて…」
転んじゃったみたいです。井戸田は苦笑いをすると、自分の足を軽く叩いた。
心地よい痺れが神経を刺激する。

足がしびれた理由には触れずに、矢作が「どっか行くの?」と訊くと、
井戸田は答えにくそうに微かに笑った。
「ちょっとトイレに…」
「あ、漏れそうなの?大丈夫?」
矢作が井戸田を立たせるようと手を差し伸べながら自分の腰を浮かせる。
「いえ、小沢さんがトイレから戻ってこないから様子見に行こうかなって思って…」
「なんかお母さんみたいだね〜」
それは気持ち悪い。茶々を入れる矢作に井戸田は顔を引きつらせながら、
「小沢さん、朝から調子悪かったみたいなんです。
トイレでぶっ倒れてるかもしんないじゃないですか。」
と言い訳をする。

へぇと矢作は感心したように声を漏らすと、
「そういえば」と思い出したように手を叩いた。
「俺さっき小沢君見たよ?」
「えっ!?」
「なんか焦ってすんごい速さで走ってたけどさぁ。
俺声掛けたんだけど、応える暇もなかったみたい」
話し込む気になったのだろう、廊下の真ん中にあぐらを掻きながら
矢作が言うと、それに釣られるように井戸田も正座で矢作と向かい合う。

「小沢さん、どこ行くつもりだったんだろ…」
「なんか急用とか、言ってなかったの?出て行く前に」
矢作の質問に井戸田は大げさに首を振る。
「なんか、ADがメモみたいなの届けてくれて…それ見てからかな?
小沢さん、トイレに行くって出てったまんま、戻ってこなくて」
「メモか…」

名探偵さながらにふうむと顎に人差し指と親指をそえつぶやくと、
矢作は廊下の端に無造作に転がった小さな固形物を見つけ、目を細めた。
そしてそれがなにか判別した瞬間に、一気に血の気が下がる思いをする。
「…あの黄色い石、お前の?」
矢作が井戸田の後ろの壁を指差しながら訊くと、
井戸田は首をひねって矢作の指差す方向に目をやる。
「あ、そうです。ぶつかった時にポケットから落ちたのかな?
ん?あれ?でも俺、この石家に置いてきたような気が…?」

言いながら石を拾い上げる井戸田を、矢作は無表情で見つめると
「その石、どうしたの?」と淡々とした声で訊いた。
「昨日道で拾ったんです。なんか宝石みたいなんで、
警察届けようかとは思ってたんですけど」
矢作によく見えるようにシトリンを目の前にかざす井戸田に、
困ったような顔で矢作が告げる。

「俺、分かっちゃったかもしんない…」

「え?」
「小沢君がなんでいなくなちゃったのか、分かちゃったかもしんない」
矢作と井戸田は見詰め合った。
二人とも相手になにを言えばよいのか分からなかったためだ。
黙り込んだ二人の頭上に影がさす。
通行人だろう、矢作が「すみません」と謝りながら立ち上がろうと腰を上げ、
井戸田もそれに続く。


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