A EU基本条約は、加盟国の首脳で構成する欧州理事会(EU首脳会議)が欧州議会選挙の結果を「考慮」して提案した委員長候補を、欧州議会が多数決で選出すると定める。これに従い前回2014年に導入されたのが「筆頭候補制」。欧州議会選で最大勢力となった政治会派が指名する人物(筆頭候補)を委員長に選ぶ仕組みだ。加盟国の首脳による密室の話し合いで選んできた慣行を変え、EUの「顔」選びに民意を反映させて選挙への関心を高める狙いがあった。
A 筆頭候補制は、議会選の結果を「考慮」するとのEU基本条約に沿ったルールとして導入されたものだが、条文で明記されていない。このため、欧州理事会は「筆頭候補が自動的に委員長候補に選ばれるわけではない」と解釈してきた。今回の人事は、筆頭候補制を巡る欧州理事会と欧州議会というEU機関内の対立を招いた。手続きの維持を訴えてきた現職のユンケル欧州委員長は「私が筆頭候補制で選ばれた最初で最後の委員長になった」と愚痴っている。
Q フォンデアライエン氏はかろうじて選出された。何を意味するのか?
A 最終的に支持を表明した親EUの主流3会派の合計は444議席。だが実際に獲得したのは383票だった。「密室選考」に反発が強かった中道左派票を取り込むために掲げたフォンデアライエン氏の公約が、身内の中道右派の離反を招いた可能性がある。投票は無記名の秘密投票だったが、欧州メディアによれば、イタリアやポーランドでは政権与党の意向を受けてEU懐疑派議員たちが賛成票を投じた。これらの勢力の動向が勝敗を分けたとすれば、「見返り」を求める動きが組織運営の足かせとなる局面が訪れるだろう。【八田浩輔】
内相はブレグジット賛成派の急先鋒(せんぽう)であるプリティ・パテル(Priti Patel)氏が指名された。同氏は国際開発相を務めていた2017年、休暇でイスラエルを訪れた際に同国高官らと非公式の会談を行い、辞任に追い込まれていた。(c)AFP/Alice RITCHIE and Robin MILLARD