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バトルロワイアルぺティー

1リズコ:2004/03/06(土) 01:06 ID:1Nf1VncU
男子
 1番 荒瀬達也(あらせ・たつや)
 2番 大迫治巳(おおさこ・はるみ)
 3番 国見悠(くにみ・ゆう)
 4番 塩沢智樹(しおざわ・ともき)
 5番 柴崎憐一(しばさき・れんいち)
 6番 島崎隆二(しまざき・りゅうじ)
 7番 田阪健臣(たさか・まさおみ)
 8番 田辺卓郎(たなべ・たくろう)
 9番 千嶋和輝(ちしま・かずき)
10番 中西諒(なかにし・りょう)
11番 仲田亘佑(なかた・こうすけ)
12番 永良博巳(ながら・ひろみ)
13番 那須野聖人(なすの・せいと)
14番 新島敏紀(にいじま・としのり)
15番 初島勇人(はつしま・ゆうと)
16番 姫城海貴(ひめしろ・かいき)
17番 飛山隆利(ひやま・たかとし)
18番 峰村陽光(みねむら・ひかり)
19番 御柳寿(みやなぎ・とし)
20番 梁島裕之(やなしま・ひろゆき)
21番 代々木信介(よよぎ・のぶすけ)

女子
 1番 天野夕海(あまの・ゆみ)
 2番 新井美保(あらい・みほ)
 3番 有山鳴(ありやま・めい)
 4番 伊藤愛希(いとう・あき)
 5番 井上聖子(いのうえ・しょうこ)
 6番 植草葉月(うえくさ・はづき)
 7番 内博美(うち・ひろみ)
 8番 梅原ゆき(うめはら・ゆき)
 9番 大島薫(おおしま・かおる)
10番 小笠原あかり(おがさわら・あかり)
11番 香山智(かやま・とも)
12番 黒川 明日香(くろかわ あすか)
13番 紺野朋香(こんの・ともか)
14番 笹川加奈(ささがわ・かな)
15番 三条楓(さんじょう・かえで)
16番 鈴木 菜々(すずき なな)
17番 高城麻耶(たかぎまや)
18番 高田望(たかだ・のぞみ)
19番 濱村あゆみ(はまむら・あゆみ)
20番 望月さくら(もちづき・さくら)
21番 冬峯雪燈(ゆきみね・ゆきひ)
22番 吉野美鳥(よしの・みどり)



始めに


一九九九年、BR法一時廃止。


理由はこの実験の対象となった優勝者達が精神に異常を冒し、犯罪に走るケースが多く見られたため。
まあその前から少しずつ反対派が出始め、BR法によって家族を失った被害者の会が設けられたりして、段々BR法を推進していた政府も肩身が狭くなったのであろう。
しかし、政府にはバトルロワイアルを続けて欲しい理由があった。BRの優勝者を賭けることで、たくさんの裏金が動いていたのだ。

最近ではかなりの高額になっており、もし優勝者の大穴を当てたのなら、それこそ冬のボーナスよりよっぽど、金がもらえるということも稀ではなかった。
よって政府には主流の遊びになっていたのだが、反対派が賛成派を上回り、野党からのブーイングにもそろそろ耳が痛くなってきたので(この賭けをするのは与党のみとなっていて、野党は参加することが出来なかった)、ついに廃止ということになったのだ。


だが、政府がそんなに簡単においしい話を手放すわけがないのは明らかだろう。政府は極めて無難な方向に逃げたのだ。

つまり、とりあえずはBR法を廃止する方向に持っていく、しかし数年たったらまた再会する可能性はある―――と。
また、“まだ中学生だというのに、その多感な時期に殺しあいをさせるなんて、精神に異常をきたすのも無理はないじゃないか”という意見も多くえられたので、対象年齢を若干あげよう―――と。
「そしてその試験プログラムは近々行うかもしれない」と発表した。

やや不満意見はあったものの、とりあえずだいたいの賛成を得て、BR法は廃止となった。めでたしめでたし。これで全国の中学生も平和になったわけだ。

・・・ん?

果たして本当にそうだろうか。この話には続きがある。

2リズコ:2004/03/06(土) 02:16 ID:1Nf1VncU
 プロローグ


 やっと動き出した。渋滞にはまっていたバスがまたゆったりと動き出したので、千嶋和輝(男子九番)はため息をついて、外を見渡した。
 二〇〇五年、七月十六日。この日は、とても暑かった。クーラーが効いた車内の中で、四十二人の生徒が騒いでいた。

 三日間の林間学校の初日。定期試験明けで、生徒達の顔は皆、はればれとしていた。和輝も、あらかた同じ気持ちだった。ただ、この後に返ってくる成績表のことを考えると、頭が憂鬱になったが。

 それにしても、何で俺がこんなだるい行事に参加しなきゃいけないんだ。アスレチックとか、オリエンテーションとか、登山とか。そんな疲れることやんなくていいから、普通に宿で休ませてくれよ。窓の外に広がっている、大して面白くもない都内の景色を見ながら、和輝は思った。
一日目から、どこかの公園でオリエンテーションをやるらしい。面倒だな。和輝は体勢を変えて、眠りにつこうとした。


 ―――うるさくて眠れない。和輝が怪訝な表情で目を開けると、隣に座っていた友人の大迫治己(男子二番)の背中が見えた。
 大迫治己と和輝は、中学の時からの付き合いだった。家が近いこともあって、和輝は大抵、治己と一緒にいた。
それについては、特に疑問を持つことはなかった。ごく自然で、嬉しくも悲しくもない。要するに、当たり前のことだった。
 元サッカー部のエースの治己は、細めだが引き締まった体つきをしていた。やや焼けた肌と、嫌みのない笑顔は、まさしくさわやかなスポーツマンといった印象であろう。
和輝とは外見も性格も正反対だった。
和輝は色が白くて、不健康そうだとよく言われていた。スポーツなどあまりやらない。家に帰ってゲームをしたり、寝ている方が幸せな男だった。落ちついているように見られがちだが、実はただボーっとしているだけだった。
一歩間違えれば暗い奴なのだが、外見に助けられていた。二重の優しげな目。少し面長の小さな顔。色素の薄い、猫っ毛。
和輝は割合、女性にもてる顔立ちをしていた。だがあまり女子と話さなかったので、クラスでは、物静かで硬派な人だという誤解を受けていた。

治己は周囲にいつも言っていた。
「和輝はさー、クールそうに見えてただのバカだから。何か色々考えてそうに見えて実際は何も考えてないから。オレの方がずっと色々考えてるし」
余計なお世話だ。和輝はいつもそう思ったが、特に訂正する必要性を感じなかったので言わせておいた。治己の言っていることも、あながち間違いではなかったらしい。

3リズコ:2004/03/06(土) 02:24 ID:1Nf1VncU
 その治己は、同じく友人の、柴崎憐一(男子五番)と話していた。憐一は、たれ目でいつも笑んでいるような眼差しの、整った顔立ちをしていた。オレンジがかった茶髪。耳にはピアス。今風の、ごくごく普通の男子だった。まあ、相当のタラシで、常に不特定多数の女と付き合っているという事実を除けば。
和輝は二人の話に聞き耳を立てていた。どうやら話題は、クラスの女子の外見の話だった。
「やっぱ伊藤だろー」
「ああ、やっぱな。でも彼氏いるし」
「まあな。ってか内さんも美人だよな」
「ああ!あとオレ的にはー、冬峯とか、高城さんも」
「うん。可愛い可愛い」

 二年A組は、可愛い女子が多かった。その代表が、伊藤愛希(女子四番)や内博美(女子七番)だった。愛希は、栗色の柔らかそうな髪に、大きなガラス細工のような瞳をした、まさしく“超”がつくほど可愛い女の子だ。当の本人は、友人の新井美保(女子二番)や、紺野朋香(女子十三番)と談話していた。なるほど。和輝もこっそり納得した。
 一方、博美はイギリスのクォーターだった。灰色がかった茶髪に、いつも美しいシルバーアクセサリーを身につけていた。少しとっつきにくい印象があったが、きりっとした端正な顔立ちは、伊藤愛希とは違うよさがあった。
 ・・・ふーん。和輝はまた、一人で納得していた。
 それからも、二人は色々な女子の名前をあげ、自分の好みのタイプと比較しては、熱く討論していた。

「てゆーか暇だから、和輝の顔にでも落書きしよっかー」
 唐突に憐一が言ったので、和輝はギクリとしてそっぽを向いた。
が、遅かった。二人は寝たふりをしている和輝の顔を無理やり自分達の方向に向けて、マジックで何かを書こうとしていた。
高二にもなって、そんな悪戯しか思い浮かばねーのかよ。和輝は少し悲しくなった。このままでは自分の鼻の下に、鼻毛を描かれてしまう。

「やっめろよバカ!」
和輝が目を開けて怒鳴ると、治己と憐一は、同じ表情でニヤリと笑った。
「和輝くーん。起きてるなら一緒に遊びましょー」憐一がおちゃらけた調子で言った。
 ・・・げっ。だから嫌だったんだ、この二人の隣に座るのは。和輝は助けを求めに、椅子の上から顔を出した。

自分達の斜め後ろの席には、友人の田阪健臣(男子七番)と荒瀬達也(男子一番)が、悠長に座っていた。
達也は寝ていた。健臣はふと顔をあげると、和輝を見て苦笑した。よほど恨みがましい目をしていたのだろう。
 はあ、出来れば変わってほしい。和輝は健臣を少し怒ったような表情で見た後、自分よりも大分前の席に視線を動かした。

 笹川加奈(女子十四番)が、他のクラスメイトの隙間から少しだけ見えた。親友の小笠原あかり(女子十番)と、談笑していた。
今日は、肩まである髪を二つに結んでいた。まあどこにでもいるような、普通の女の子だった。しかし、やや幼げな瞳や、あどけない笑顔、飾らない雰囲気が誰よりも可愛らしく見えた。
最近、二人は以前より仲良くなっていた。実は、ずっと前から気になっていた。ただ、それが恋であることに気づいたのは、やはり結構前だった。

 俺もいい加減勇気出さなきゃな。和輝はある決意をしていた。夜は、散歩にでも誘ってみるか。それで・・・告白。
やや緊張しつつも待ち遠しく思いながら、和輝は眠りにつこうとしていた。

 そのころ、治己と憐一は、後ろの席のギャル系の女子、天野夕海(女子一番)、有山鳴(女子三番)、望月さくら(女子二十番)と、スポーツマン系の男子、島崎隆二(男子六番)、永良博巳(男子十二番)、新島敏紀(男子十四番)、初島勇人(男子十五番)達と大騒ぎをしていた。

永良博巳(男子十二番)と新島敏紀(男子十四番)は、バスケ部で活躍していた。二人ともタイプは違うが、女子の間でも結構な人気があった。それに乗じて女遊びをしているという噂があったが、本当かどうかは和輝の知るところではなかった。
そして、初島勇人(男子十五番)は二人の友人で、同じくバスケ部だった。だが、二人と違って特別うまいわけではなかった。長身で、人のよさそうな顔立ち。もてないわけではないだろうが、女子との噂は聞かなかった。
何となく、和輝は勇人に親近感があった。どことなく、自分に似ているものを感じていたのかもしれない。


前の席から後ろの席へと、声が飛び交って、和輝の近くは、渋谷の街並みのようにざわざわとしていた。
 少しは声抑えろよ。車酔いのため、前の席で休んでいる那須野聖人(男子十三番)がいない分、ほんの少しだけ声が抑えられているが、それでも、和輝の睡眠の妨害には充分すぎるほどの音だった。

普通はこの騒音の中で眠ることは出来ないはずだが、それでも和輝は強靱な睡眠欲を発揮して眠った。

4リズコ:2004/03/06(土) 02:29 ID:1Nf1VncU
悪寒がして目が覚めると、先ほどの車内の風景が広がっていた。夢を見ていた気がするけど、思い出せなかった。和輝はホッとして、ため息をついた。騒音の中、また眠りについた。

―――生徒達ははしゃいでいた。だが、誰一人として、このバスの行き先を知るものはいなかった。バスは四十二人の生徒を乗せ、スピードをあげて、目的地に向かって走っていった。

5リズコ:2004/03/06(土) 02:31 ID:1Nf1VncU
べらぼうに長いため、その分更新は豆にする予定です。感想などカキコしていただけると嬉しいです。

6リズコ:2004/03/06(土) 14:04 ID:1Nf1VncU
和輝が顔に描かれた落書きを必死で落としている間、バスはトンネルの中に入っていた。ガイドの若いお姉さんは底抜けに明るい声で言った。
「もうすぐ着きますからね!準備してくださーい!」
騒いでいた生徒達もだんだんと席に着いて、これからの予定について話していた。平和な光景だった。
 うんと長いトンネルを抜けると、そこからは山道に入った。曲がりくねった険しい道を抜けると、景色が変わったように深い森林が広がっていた。
そこを更に抜けると、古ぼけた看板があった。蔵ヶ浦公園。そう書いてあった気がしたが、生徒達にはよく見えなかっただろう。そこでバスは止まった。
「目的地に到着しましたよ!皆さん気をつけてくださいねー」
その声と同時に、生徒達はバスを降り始めた。全く、元気な子達。ガイドのお姉さんはそう思って苦笑した。でも、こんなところで何するんだろ。お姉さんは首をかしげた。

降りる順番待ちをしていた。和輝のすぐ前には、代々木信介(男子二十一番)がいた。学年で一番頭がいい。クラスでは小柄な方で、色白で、おしゃれな眼鏡をかけていた。
その信介の前では、仲田亘佑(男子十一番)が割り込みをしようとしていた。190近い身長に、強面で、鋭い目が信介を見た。信介はビクッとして、小声で和輝に囁いた。「ごめん。もうちょっと待って」
「ううん。いいよ」和輝も答えた。
仕方ないだろう。仲田はかなりの不良で、親がやくざの幹部だという噂まである奴だ。誰だって怖い。
仲田は無表情で、奥にいた塩沢智樹(男子四番)、田辺卓郎(男子八番)、中西諒(男子十番)に言った。「早く出ようぜ」そして、通路に手をかけて、道を塞いだ。自己中なヤツ。和輝はそう思った。
「ああ。悪い」そう言って、中西諒(男子十番)が出てきた。こいつも背が高い。この二人が並ぶと、凄い威圧感があった。
 中西はこのグループのリーダー格だった。やや強面だが、いい男だ。だが、喧嘩はかなり強いらしかった。何と言っても、中学の時に高校生数人に大怪我を負わせて、傷害事件で捕まったといういわくつきの男だった。口調は柔らかめだが、それがかえって怖さを感じさせるらしく、皆あまり近寄らなかった。中西は授業中や休み時間に寝ていることが多いので、“眠れる獅子”という、妙な異名を持っていた。
 次に塩沢智樹が出てきた。派手な茶髪のオールバックに、いつも灰色のコンタクトをしているおしゃれな奴だった。手の甲には蝶の刺青。校則で許されているのか、和輝は激しく疑問に思った。
「めっちゃ渋滞してるじゃーん。プップー!」塩沢はラリったような口調で言った。こいつ、薬中か?和輝は呆れた。治己も同じことを考えていたらしく、小さいため息が聞こえた。
 信介の後ろからは大行列が出来ていて、どことなく苛々している雰囲気が感じられた。しかし、誰も文句を言わなかった。特に仲田は、下手に目をつけられると何をされるかわかったものではなかった。よって皆黙っていた。
一番奥にいた田辺卓郎(男子八番)は、すばやく通路側に来た。「ごめん。待たせたみたいで」信介と和輝に謝って、バスを降りていった。
田辺は、他の三人とはどことなくタイプが違っていた。普通の男子だ。明るくて、お人よしで、他のクラスメイトとも普通に話をしていた。なぜ中西達とつるんでいるのかというのは、誰もが不思議に思っていたことだった。
しかし、田辺はまだわかるとして、他の三人が林間学校に来るのは、少し意外なことだった。まあ、行かないと毎日補習があって、下手すれば単位がとれないという噂があったから、来たのかもしれない(なんて横暴な学校なんだ、と和輝は思った)。
それはともかく、やっと列が動き出した。ほっとしたような空気が流れ、皆足早にバスを降りていった。生徒達は皆、これからの予定に胸を躍らせていた。

ただ、担任の森だけは、これから起こる悲劇を想像して、一人悲しんでいた。誰もいないバスの中で、自分のふがいなさと、どうにも出来ない無力感に頭をかかえた。
 仲田達を修学旅行に呼んだのは森だった。なぜなら、ゲーム不参加者は、有無を言わさず射殺されるからだ。森は仲田の両親に理由を話して、行くように説得してもらった。二人とも辛そうな顔をして、黙って聞いていた。森を攻めることもせず、ただ息子の運命に涙を流していた。やくざと言っても、一人の人間であり、親なのだ。森は離婚した妻の間にいた一人娘を思い出した。自分はどれだけ残酷なことを言ったのかと思うと、胸が張り裂けそうになった。
こんな法律がまた蘇るなんて・・・。しかも、何で自分の学校の、よりにもよって自分のクラスなんだ。俺は、生徒の命よりも自分の命を取ったんだ。
「すまない、皆・・・」三十代後半の男性教師は、涙ぐんでいた。

7リズコ:2004/03/06(土) 14:18 ID:1Nf1VncU
そこはとても広い公園だった。そしてとても不思議な場所だった。森林が広がっているかと思ったら原っぱがあったり、酷く場違いな、白い大きな建物があったりした。ここの公園は昔、テーマパークが出来る予定だった。建築中に会社が倒産したから工事が中断した。そして、今回のゲームの会場になったのだ。しかし、そんなことを全く知らない二年A組の生徒達は、呑気に歩いていた。
 今日はここで自由行動の後、バスで宿泊する予定のホテルまで行く予定だった。それにしても、他のクラスが全く見あたらないのは、どうしてだろうか。生徒達は口々にそのことを口にしていたが、大した問題ではなかったらしく、すぐに話題は別のものに変わっていった。
和輝の隣で、治己が言った。「こんなへんぴな公園でバーベキューだって。うちの学校のやることもよくわかんねえな」
「確かに。でもまあ、いいんじゃない」
「まあいいけどさ。この後ここに閉じこめられて、帰って来れなくなったりしてな」
「そんなわけないじゃん。漫画や小説じゃないんだからさ」和輝がそう言うと、治己もそうだな、と言って苦笑した。

 集合写真の後は自由行動だったが、殆どの人達は昼のバーベキューの準備を手伝わされていた。そんな中、和輝は一人、川の前でさぼっていた。
あー疲れた。皆若くていいな。やけに年寄りくさいことを考えつつ、ボーっとしていると、川を挟んだ向こう岸から、誰かが走ってくるのが見えた。えーっと、あの子の名前何だっけ。人の名前覚えるの苦手だからな―――
あっ、井上さんだ。和輝が思い出したのと同時に、井上聖子(女子五番)は和輝に気がついた。少し笑顔になって、言った。「晴れてよかったね」
「あっ、うん」話しかけられたのは、正直意外だった。和輝が何かを言おうと思って迷っていると、いつの間にか聖子はいなくなっていた。随分足早いな。和輝はそう思った。
聖子はおっとりとした印象で、こんなに足が速いとは思わなかったのだ。和輝の中に、やけに大きくその印象が突き刺さった。まあ、その後すぐに忘れてしまうのだが。

「かーずき!」後ろで突然声がして、驚いて振り返った。
「・・・笹川か。ビックリした」
加奈は和輝を下の名前で呼んでいた。いつからそうなったのかは思い出せなかったが、随分前からだったような気がした。今は、その呼び方が当たり前になっていた。
「笹川か、とは何よ。誰ならよかったの?」加奈は言った。
「いや、別に・・・」お前でいいよ。和輝はそう思った。
加奈は笑顔で言った。「サボってないで手伝って!はい、立った立った!」
「面倒くせーな。何やんの?」
「私はご飯炊く係。和輝も何か言われたでしょ」
「・・・言われたっけ。覚えてない」
「もー。じゃあ聞きに行こ!」
加奈はそう言って和輝の手を引っ張った。和輝は少しドキッとした。加奈は、スキンシップを取るのが好きみたいだった。性別などは関係なかった。それでいて、不快な気分にさせないのは、加奈のさっぱりとした人柄故だろう。

 川の下流では、野菜を洗ったり、米を研いでいる人がいた。加奈が辺りを見回して言った。
「森先生いないね」
「もうどーでもいいじゃん。働きたくない」
「駄目!働かざるもの食うべからず!」加奈はそう言って、何かを考えていた。「そうだ!キャンプファイヤーの準備するって言ってたから広場の方かも。行こう!」
「広場ってどこだよ」
「わかんない」
「・・・俺もわかんないよ」
加奈は和輝を見た。「・・・じゃあいっか」加奈はその場に座った。「私もサボっちゃおー」
人のこと言えないじゃん。和輝はそう思った。いや、今はそんなことどうでもいい。心臓が、大きく音を立てた。言うぞ。言うぞ。「あ、のさー」
「何?」加奈は和輝を見上げた。
「えーっと・・・」加奈はまっすぐに和輝を見ていた。
「・・・夜さ、散歩行かない?宿の近くにでっかい土産物屋があるんだって」
加奈の目が少し見開いて、また元に戻った。「治己くんとか、柴崎君達と行かなくていいの?」・・・断られるかな。全身の血がサッと引いていくのを感じた。
和輝は言った。「あいつらと行くと、うるさいから」
加奈のふっくらとした形のいい唇が、笑みの形を作った。
「いいよ!行こう!宿の近くに心霊スポットがあるって聞いたんだけど。そこにも行きたい!」
げっ。嬉しいけど、心霊スポットは微妙に嫌だ。でも・・・「いいよ。怖がんなよ」
加奈は笑った。「大丈夫だよ。じゃあ夕飯終わったらロビーで待ち合わせね!」
「あっ、仕事戻らなきゃ!じゃあね!」
加奈の後ろ姿を見送りながら、和輝は少し笑った。もしかしたらイケるかもしれない。期待を胸に、和輝は今夜のシナリオを練っていた。

8蜜 </b><font color=#FF0000>(u5UmjW1o)</font><b>:2004/03/06(土) 14:49 ID:BULPx9lw
名簿完成、そして本編開始おめでとうございます。
一気に読ませてもらいました。高校生が対象なんですね。
会話とか行動が年相応でリアルだと思いました。
これからも頑張って下さい。続き楽しみにしてます。

9リズコ:2004/03/06(土) 14:50 ID:1Nf1VncU
「かーずき!」後ろで突然声がして、驚いて振り返った。
「・・・笹川か。ビックリした」
加奈は和輝を下の名前で呼んでいた。いつからそうなったのかは思い出せなかったが、随分前からだったような気がした。今は、その呼び方が当たり前になっていた。
「笹川か、とは何よ。誰ならよかったの?」加奈は言った。
「いや、別に・・・」お前でいいよ。和輝はそう思った。
加奈は笑顔で言った。「サボってないで手伝って!はい、立った立った!」
「面倒くせーな。何やんの?」
「私はご飯炊く係。和輝も何か言われたでしょ」
「・・・言われたっけ。覚えてない」
「もー。じゃあ聞きに行こ!」
加奈はそう言って和輝の手を引っ張った。和輝は少しドキッとした。加奈は、スキンシップを取るのが好きみたいだった。性別などは関係なかった。それでいて、不快な気分にさせないのは、加奈のさっぱりとした人柄故だろう。

 川の下流では、野菜を洗ったり、米を研いでいる人がいた。加奈が辺りを見回して言った。「森先生いないね」
「もうどーでもいいじゃん。働きたくない」
「駄目!働かざるもの食うべからず!」加奈はそう言って、何かを考えていた。「そうだ!キャンプファイヤーの準備するって言ってたから広場の方かも。行こう!」
「広場ってどこだよ」
「わかんない」
「・・・俺もわかんないよ」
加奈は和輝を見た。「・・・じゃあいっか」加奈はその場に座った。「私もサボっちゃおー」
人のこと言えないじゃん。和輝はそう思った。いや、今はそんなことどうでもいい。心臓が、大きく音を立てた。言うぞ。言うぞ。「あ、のさー」
「何?」加奈は和輝を見上げた。
「えーっと・・・」加奈はまっすぐに和輝を見ていた。
「・・・夜さ、散歩行かない?宿の近くにでっかい土産物屋があるんだって」
 加奈の目が少し見開いて、また元に戻った。「治己くんとか、柴崎君達と行かなくていいの?」・・・断られるかな。全身の血がサッと引いていくのを感じた。
和輝は言った。「あいつらと行くと、うるさいから」
加奈のふっくらとした形のいい唇が、笑みの形を作った。
「いいよ!行こう!宿の近くに心霊スポットがあるって聞いたんだけど。そこにも行きたい!」
げっ。嬉しいけど、心霊スポットは微妙に嫌だ。でも・・・「いいよ。怖がんなよ」
加奈は笑った。「大丈夫だよ。じゃあ夕飯終わったらロビーで待ち合わせね!」
「あっ、仕事戻らなきゃ!じゃあね!」
加奈の後ろ姿を見送りながら、和輝は少し笑った。もしかしたらイケるかもしれない。期待を胸に、和輝は今夜のシナリオを練っていた。

 バーべキューが終わった。五時半からキャンプファイヤーとオリエンテーションが始まるから、七時半にはホテルに行って、それからだから八時だな。
「何浮かれてんの?怖いんだけど」隣で治己が言った。
「・・・浮かれてないよ。トイレ行きたいだけ」
「じゃあ早く行けよ」
治己に言うと、憐一に知らせて後をつけられるかもしれない。いや、下手したら、田阪と達也も一緒にくるかもしれない。―――絶対嫌だ。和輝はそう思って嘘をついた。

 連絡の際に、森は、生徒達を前にして言った。「いいか。今日と言う時間はもう帰ってこないんだ。悔いなく遊んだか?俺が許すから、今日は好きなだけ楽しめ!男子は女子の部屋に夜這いにでも行け!」
生徒達は皆、あっけにとられて聞いていた。
「何言ってんだよ、森のヤツ・・・」治己が言った。
「さあ。奥さんに逃げられておかしくなったんじゃないの?」
「ああ、そっかあ。可哀相に」
和輝と治己が呑気な会話をしている時、森は呟いていた。マイクでも拾えないような、小さな声だった。「・・・頑張れ、頑張れよ」
そして、二年A組の夜は更けていった。【残り43人】

10リズコ:2004/03/06(土) 14:53 ID:1Nf1VncU
ああ!ありがとうございます♪感想もらえると嬉しいものですね(^−^)

11リズコ:2004/03/06(土) 15:09 ID:1Nf1VncU
ゲームスタート


和輝達がいたのは、古ぼけた教室の中だった。あれ、何で教室に―――。あっ、そっか。補習だっけ。俺だけじゃないんだな。クラス全員いるのかな。空いている席がない。千嶋和輝(男子九番)は斜め前を見た。あれ、代々木も・・・?あいつ頭いいのに。まだ勉強したりないんだ、スゲー。代々木信介(男子二十一番)も、他の生徒と同じで、机に突っ伏していた。

何気なく前を見ると、男が立っているのが見えた。まだ若い。和輝は男をぼんやりと見つめていた。男が気がついたように和輝を見た。笑顔のような、困惑しているような、曖昧な表情。どこかで見たことがある顔だった。
男を見ているうちに、だんだん覚醒してきた。これは、補習じゃない。俺達林間学校に行ってたはずなんだ。キャンプファイヤーが終わって、後片付けをして、バスに乗り込んで―――そこからの記憶がない。

和輝は首にまとわりつく重苦しい感触に気がついた。手をやった。冷たくごつい物が首に巻かれていた。
・・・首輪だ。
和輝は辺りを見回した。すぐ後ろで寝ている中西諒(男子九番)の筋の通った首筋にも、一番後ろの席で眠っている笹川加奈(女子十四番)の細い首にも、その銀色の物体はあって、いやらしい光を放っていた。
―――もしかして!和輝は立ち上がって、加奈の席まで歩み寄ろうとした。

 鼓膜がはじけそうになるほどの爆竹の音が、近くで響いた。和輝がおそるおそる振り返ると、先ほどの若い男が、銃を握っていた。その音に生徒達は驚いて、次々に目を覚まし始めた。
「勝手に席立っちゃ駄目だよ」男は甘いマスクに笑みを浮かべて、言った。和輝の顔からは、血の気が失せていった。

冬峯雪燈(女子二十一番)が、小さな叫び声をあげた。「何これ・・・どういうこと?」辺りがざわめき始めた。ライフル銃を持った兵士が四人、教室の端の四方に立っていた。全員、内側に銃を向けていた。ざわざわとした教室を制すように、一発の銃声が聞こえた。「きゃあっ!」女子の悲鳴が聞こえて、クラス全員が銃声のした方向を見た。

「静かに。大人しくしていれば危害は加えない」若い男は銃を天井に向けていた。天井からぱらぱらと、破片がこぼれ落ちた。隣にいた丸顔の兵士が言った。「今から一言でも口きいてみろ。殺すぞ?」ニヤリと笑った。
 和輝を始め、クラスメイト達は全員静まり返った。相手が本気だということを悟ったからだろう。そしてクラスの殆どが、もしかして、という思いに包まれていた。
「聞き分けがいいね」若い男が口を開いた。「じゃあ説明するな。君達にはこれから、殺し合いをしてもらいます」

クラス中が重苦しい沈黙に包まれた。皆、絶望していた。何で・・・あの法律はなくなったはずなのに。

「あれ、反応薄いなあ。皆もっと驚かないの?」男は言った。生徒達は沈黙していた。言葉を忘れてしまったかのようだった。
周りのクラスメイト達と目を合わせては、そらした。和輝はじっと男を見つめていた。バトルロワイアルだ。あの法律が復活したんだ!

「喋ったら殺すって言われてるのに喋るバカはいないだろ。皆自分の命は惜しいし」誰かが言った。生徒達はその人物を見た。
「あー、そうだよなー。お前、いい度胸だな。えーっと、千嶋」
和輝は驚いた。自分だということに気がつかなかった。自分の意思とは別に、勝手に声が出ていたように感じた。動揺しすぎて、わからなかったのかもしれない。

「じゃあうるさくしない程度に三分間話させてやる。三分経ったら一斉に黙ってね。あっ、ちなみに、オレは北川哲弥。今回のゲームの管理官だからヨロシク」
和輝は眉をひそめた。大迫治己(男子二番)を見た。治己も和輝の方を見て、驚いたような表情をしていた。
北川が言った。「俺、お前もお前も知ってる」治己と和輝を交互に指差した。「加奈と仲よかったろ」
和輝は後ろを振り向いて、加奈の方を見た。加奈は固まった表情のまま、口は何かを言いたげに開いていた。しぼりだすように、言った。「何で―――」唇が震えていた。泣いているのかもしれない。和輝はかすかにそう思った。
「まあ色々あってさ。元気だった?加奈」北川は優しい口調で言った。和輝は焦りを募らせていた。北川が、俺達の担当官だなんて。

12リズコ:2004/03/06(土) 16:06 ID:1Nf1VncU
やばい、かぶっちゃった。7と9の内容が一部一緒になってました。すいません。

13リズコ:2004/03/06(土) 20:41 ID:1Nf1VncU
中学時代の北川を思い出していた。北川哲弥は有名人だった。バスケ部のキャプテンであり、チームを全国大会へ連れていくほどうまかった。更に、たった一ヶ月の間入っていた柔道部の大会で優勝した経験もあり、模試の時は必ず成績優秀者の欄に載っていた。要するに、完璧だったのだ。更に付け足すと、北川は背が高く、美形だったので、学校一のモテ男だった。同じクラスだった女子の殆どが、北川に憧れていた。そんな―――凄い奴だった。
和輝は更に思い出していた。笹川は女子バスケ部に所属していて、二人はよく話していた。どういう経過で仲良くなったのかは知らなかったが、付き合っているという噂まで、あった。少なくとも、笹川は北川が好きだった。それはわかる。そして、それに気づいた時、自分が強い苛立ちと、悲しみを覚えたことも。
和輝は二人を見比べた。見つめあっていた。加奈は何の言葉も発していないようだった。北川は笑みを浮かべて頭を掻いた。「じゃあ、今から三分ね。用意、スタート」
 北川の言葉と共に、生徒達は少しずつ声を出し始めた。泣きそうになっている生徒も、興奮して声を抑えきれない生徒もいた。和輝は、静かに今の現実を考えていた。
 殺し合い。クラスメイト同士で殺しあう。それがどういうことなのかは、うまく呑み込むことが出来なかった。ただ、言えることは、もの凄く怖い、ということだけだった。和輝は震えていた。そんな―――俺がもうすぐ死ぬかもしれないなんて。しかもクラスメイトに殺されるかもしれないなんて。学校に到着した時は考えもしなかった。バスに乗っていた時、本当は楽しみだった。それがこんなことになるなんて―――
「はーい三分終わり。今から喋ったら命ないかもしれないから、喋んない方がいいよ」北川は言った。少しの間の後に声は途切れ、静寂が訪れたように思えた。

「・・・嫌だ、怖いよ!死にたくないよ!」生徒達の顔が強ばった。幼児の言葉のように、島崎隆二(男子六番)はそう言い続けた。涙を流していた。自分でも、制御できないのかもしれない。「島崎!」永良博巳(男子十二番)が叫んだ。
「喋るなっつっただろ。これでも食らえ」北川の横にいた丸顔の兵士が言った。四方にいた兵士が、隆二に銃を向けた。撃たれる!和輝は隆二に声を止めるように祈った。

「横山さん待って!」北川が手を上げて、兵士を制した。横山と呼ばれた丸顔の兵士は、チッと舌打ちをして、銃を下げた。

北川は隆二の席に近づいて、話しかけた。「静かにしろ。この次はないぞ」隆二は首を振りながらも、必死で自分の喉を押さえた。喉を鳴らすような音が聞こえた。
 北川は無言で、隆二の首を掴んだ。隆二は、苦しそうな顔をして、かすかに呻いた。「死にたくなきゃ声を出すな。できるだろ?」隆二の顔からは、脂汗が出ているのがわかった。やがて、絞りだすような声が、かすかに聞こえた。「・・・はい」北川は手を離した。隆二は激しくむせながら、北川を見上げた。

「説明を続けます」北川はそう言って、定位置に戻って続けた。

14111:2004/03/06(土) 20:47 ID:.S4MXpVs
聞きたいんですがメインキャラって誰ですか?

15リズコ:2004/03/06(土) 20:49 ID:1Nf1VncU
えっと、千嶋君ですね。で、ヒロイン(?)は笹川さんです。

16111:2004/03/06(土) 20:56 ID:.S4MXpVs
わーいやったMyキャラヒロイン!?
もう作者共々応援しちゃいます

17リズコ:2004/03/06(土) 21:10 ID:1Nf1VncU
「ルールを説明します。ルールは簡単。とにかく殺し合うことです。武器は今から配るデイバックに入ってるからそれを使うように。元々ナイフなどを所持している人は・・・持ってていいです。デイバックには武器の他にも、水二本、食料、地図、懐中電灯、磁石、時計が入っているから、もらったらちゃんと中身を確認するように。エリアはこの学校を出ると公園があるから、そことその付近の民家数軒がエリア。勿論中の人には出ていってもらったから気にせず汚していいですよ。そして、そこを越えると、君達の首にある首輪が爆発するから出ないようにしてください。あと、夜中の十二時、朝の六時、昼の十二時、夕方の六時と放送をして、その時点での死亡者と禁止エリアを発表します。地図を見ればわかるだろうけど、地図にはそれぞれのエリアの番号が入ってるから。たとえばこの学校はエリアH=2。ここは出発してから二十分後に禁止エリアになります。二つの首輪の他は絶対に入ることが出来ないからさっさと出ましょう。もし、入ろうとしたら首が飛びます。他の場所もそう。こっちは時間になってもまだいると、問答無用で首が吹っ飛ぶから、覚えておくように」

 北川の声以外は、何も聞こえなかった。時々、兵士の咳払いと、誰かの、鼻をすするような音が聞こえるだけだった。和輝は聞きながらも思った。島崎は大丈夫なのかな。青ざめていて、首の周りに爪のような痕があるのが目についた。和輝は自分の心臓の音が、だんだん大きくなっていくのを感じた。
横目でクラスメイト達を見た。ゲームに乗る奴。わからない。中西達が一番危ない。あとは、梁島裕之(男子二十番)。クラスで仲のいい人間はいなかった。何を考えているかもわからない。それを言うなら、国見悠(男子三番)もそうだ。女子は・・・よく知らない。俺は誰の人間性も何も知らない。
「じゃあ、皆自分のバックを机の上に出して」唐突な北川の言葉に、生徒の顔が動揺していた。「バックは取りあげないよ。携帯を没収します」クラス全員が「えー」と言う声を、心の中であげた(に違いない)。
「携帯を出さない人は、バックの中身を調べるから先に出した方がいいよ。持ってない奴も一応調べることになるから。じゃあ、没収します」そして、一人ずつ、携帯を回収していった。
 高城麻耶(女子十七番)の番になった。麻耶は北川を睨んで、はっきりと言った。「私は携帯なんか持ってない」
「そっか・・・でも、一応調べさせてもらうから」北川はそう言って、通学用バックに触れようとした。
「やめて!」麻耶は急いでバックを掴んだ。両手で抱え込んで、北川を睨んだ。
「あのね。君だけ特別ってわけにはいかないんだよ。早く出して」
「嫌っ!持ってないって言ってるでしょ!」麻耶の声が響いた。
生徒達はあっけにとられて、麻耶の行動を見ていた。北川は困ったような顔をした。「すぐ終わるから。何か見られちゃいけない物でも入ってんの?」
麻耶の顔が歪んだ。「入ってないけど・・・触られたくないの!あんた達なんかに!」
「あんだとこのガキャア!」横山が銃を向けたが、北川がそれを制した。「何でだよ。こんなガキ殺したって・・・」横山は不服そうに言った。
「いやー、何か凄い勇気だから殺すのもったいないかなって」北川は言った。
「あんたは所詮バイトだろ?オレたちの方が慣れてるんだよ」そう言って、四方の兵士に合図をした。一斉に、銃口が麻耶を取り囲んだ。麻耶はびくっとした。
「待ってください!」後方の席にいた飛山隆利(男子十七番)が叫んだ。「そいつ本当に携帯なんか持ってないです!お願いだから、殺さないでやってください!お願いします!」頭を下げた。横山と北川は隆利を見た。北川は言った。「横山さん。なるべく生徒同士で殺させましょうよ。ねっ?」
「でも・・・」横山は納得がいっていないようだった。北川は、生徒に聞こえないように呟いた。「それに、この子結構人気あるでしょ。今殺したら非難がきますって」
「・・・なるほど。そうだな」横山が銃を下げた。それと同時に、四方の兵士達も銃を下ろした。
「今度なめた真似しやがったら有無を言わせず射殺だからな」横山は、麻耶にそう浴びせた。和輝はホッとした。北川は隆利に言った。「いい度胸してるね。まあ頑張ってよ」
「あ、はい」隆利は腰を下ろした。心から安堵した様子だった。

18リズコ:2004/03/06(土) 21:16 ID:1Nf1VncU
「じゃあ、何か質問ある?」北川が言った。少しの沈黙。その後、一人の女子生徒が手をあげた。「あの・・・」
「はい、・・・黒川さん」
背が高く、モデルのようにスタイルがよかった。頭もいい。ややきつい顔ではあるが、なかなか美人だった。黒川明日香(女子十二番)は、青ざめながらも、しっかりとした口調で訊いた。「BR法って、廃止されたんじゃないんですか?」
「あー・・・」北川の表情が曇った。「その予定だったんだけど、今年試験プログラムを行うことになったんだよ。ルールは以前とあまり変わらないけど、若干の訂正があるってことはさっきも説明したとおり。もう一度言うけど、男子一名、女子一名に特別な首輪をつけさせてあります。それが誰だかはまだわからないけど、二日目に業者から連絡が来るから、その日の昼の放送で発表する予定です。それまでに死んでたらもうアウトだけど。該当した人は学校だけが禁止エリアから解除されるから、この学校に戻ってくるように。その二人は生還できます。以前のルールより生き残る確率が高くなったんだから、頑張ってね」北川はぼんやりとした、危機感のない口調で話した。

それを聞いた和輝は思った。たくさん殺して生き残れって・・・。そこまでして生き残ることに意味はあるのか?それに、いくら生き残ったとしても、クラスの殆どは死んでるんだ。そんな現実に、俺は耐えられないかもしれない。絶望的だった。北川が、信じられなかった。政府という名の元で、平気で他人を殺そうとしている輩がいる。
最低だ。こいつも、そのうちの一人だ。これが、中学の時に、誰もが憧れていた先輩だとは思いたくなかった。【残り43人】

19リズコ:2004/03/06(土) 21:21 ID:1Nf1VncU
次から出発します。本当長くてすいません。
始めに紹介されたキャラほど重要度は高いです。でも、全体的に、どのキャラも結構スポット当てられてるはず(例外もありますが)なので・・・(だから何)

20リズコ:2004/03/06(土) 21:23 ID:1Nf1VncU
ありがとうございますw頑張りますw>111さん

21GGGD:2004/03/06(土) 21:51 ID:e49G4Aw2
ガンバテクダサイ!!(死ぬなよー島崎、達也、智・・・・サビシイ。。

22GGGD:2004/03/06(土) 22:12 ID:e49G4Aw2
age

23リズコ:2004/03/06(土) 22:53 ID:1Nf1VncU
「それでは今から出発します。順番は・・・」北川はくじの入った箱を取り出させると、その中から紙を取り出した。
「三番、有山鳴」鳴は驚いたように、辺りを見回した。「はい、早く出発!」横山が銃を突きつけて叫んだ。
北川は鳴にデイバックを差し出した。「私達は殺し合いをする」北川が言った。「って言ってから行こうね。それが決まりだから」
鳴は黙っていた。「早く言え」北川は銃を向けた。
「・・・私たちは、殺しあいをする」鳴は静かに呟いた。「はい。よく出来ました」

北川は、次の国見悠(男子三番)にも同じことを言わせた。そして、二分ごとの点呼に合わせて、続々と生徒が出発していった。

和輝は考えていた。出来れば、笹川と一緒に行動したい。でも、笹川は俺の八人後か。それまで学校の前で待てるだろうか。出席番号が遠いのが恨めしかった。何と言っても、次々に人が出てくる。その中にずっと残っているということは、つまりいつ出くわした生徒と争うかわからないのだ。でも時間にしてたったの二十分だ。大したことない。和輝はそう言い聞かせた。

「九番、千嶋和輝」
いつの間にか、自分の番がきていたようだ。心臓がギリッと痛んだ。和輝は黙って立ち上がった。

「私達は殺し合いをするって言いましょう。はい」北川が言った。和輝は北川を見た。あのころの面影より、若干大人びていた。「早くしろよ!時間がないんだよ」横山がイライラした口調で言った。
「・・・私たちは、殺しあいをする」かすれた声が出た。
ここで死ぬわけにはいかなかった。

「はい。じゃあこれ持ってってね」北川はずっしりと重いデイバックを和輝に渡した。

後ろを振り向くとクラスのメンバー、そして加奈がこちらを見ていた。皆、とても不安そうな顔だった。和輝は加奈を見つめた。『頑張れ』と口の形だけで囁いた。加奈はそれを見ると、目に涙を浮かべながらも頷いた。

「早くしろ」後ろから北川が言った。和輝はドアに向かった。教室を出ていく時に、前の席にいた大迫治己と目があった。治己は寂しそうにフっと笑った。その笑みの真意は和輝にはわからなかったが、もしかして、治己はもう生きることを諦めたのかもしれない。そう一瞬思って、ぞっとした。あいつに限って、そんなはずはないと言い聞かせた。

24リズコ:2004/03/06(土) 23:21 ID:1Nf1VncU
暗い廊下を歩いていた。ところどころ蛍光灯がついていたが、何となく陰気な光を放っているように感じた。和輝はデイバックをしっかりとかかえて、中身を探った。
よく見えない。和輝は武器を探した。銃は入ってるんだろうか。それとも、刃物が多いのかな。もし銃が武器に入っているのなら、銃がいいと思った。

堅く、冷たい感触がした。和輝はそれを取り出した。
・・・やった。銃だ。和輝はホッとしながら、その自動拳銃を見つめた。

中に入っていたのは、S&W M59オートだった。和輝には、銃の名称など、わからない上にどうでもよかったが、大体どうすれば撃てるかはわかっていた。
更にデイバックを確認すると、小さな箱があった。中には銃弾と説明書が入っていた。とりあえず、これでやるしかない。和輝は長い廊下を足早に歩いた。

廊下を出たらすぐ、下駄箱があった。和輝はきょろきょろしつつ、慎重に歩いた。外には、ぼやっとした明かりがついていた。
もうすぐ、殺し合いが始まる。和輝は気を引き締めて、下駄箱を出ようとした。


「うわっ、やめてくれー!」男子の叫ぶ声が聞こえた。
和輝は驚いて、それでも外に出た。

田辺卓郎(男子八番)と、大島薫(女子九番)が争っていた。卓郎は和輝に背を向けた状態で、地面に座り込んでいて、薫はその卓郎に銃を突きつけていた。卓郎の人の良さそうな顔には、冷や汗が浮かんでいた。
「あっ、千嶋!助けて!」卓郎は後ろを向いて、幾分ホッとしたように和輝に言った。「お願いだ。おれは諒と仲田を待ってただけで、人を殺す気なんて・・・」

「た、田辺!」和輝は上ずった声をあげた。
危ない。そう言おうとしたのと同時に、薫が卓郎に銃を発射していた。


二発の大きな音が聞こえて、卓郎の体から血が飛び散った。
「うっ・・・」と言って、地面に倒れた。

薫は冷静な表情で、茫然としている和輝にも銃を向けた。ごちゃごちゃ考えている暇なんてなかった。和輝は銃を取り出した。


「きゃあ!」背後で声が聞こえて、薫の視線がそちらに移った。

薫は一瞬悔しそうな顔をして、そのまま銃を収めて走り去っていった。


和輝はやっと、背後の人物を見た。まあ見なくても、誰だかはわかっていたが。

小笠原あかり(女子十番)は、怯えた表情で和輝に聞いてきた。「千嶋君。どういうこと?」
「大島さんが、田辺を」そこまで言って、和輝は卓郎にかけよった。「そうだ!田辺!大丈夫か?」


卓郎は少しだけ目を開けた。生きていたが、運の悪いことに、薫の銃弾は心臓を貫いていたようだ。あかりもそっと近寄ってきた。

「ごめん。俺が、もっと早くきてれば・・・」和輝は言った。中西達とつるんではいたが、悪い人間でないことはわかっていた。
卓郎は言った。「何で謝るんだよ。お前、いい奴だな」少しだけ笑んだ。

「おれが悪かったんだよ。不用意に声をかけるべきじゃなかったんだ。クラスメイトで殺し合いなんか、できるわけない・・・って思ってたけど、間違いだった」卓郎はそこまで言うと、うわ言のように呟いた。
「ごめん早苗。兄ちゃん、もう、負けちった」


「田辺?」和輝は卓郎の体を揺すった。後ろであかりが泣き出した。
「嘘だろ・・・」和輝は信じられない思いで、卓郎を見つめた。


顔色は血の気が抜けたようになっていて、眠っているように目は閉じられていた。
しかし、死んでいた。


「田辺!」叫びながら思った。もう、人が死ぬなんて。始まってまだ一時間も経ってないんだぞ。和輝は絶望していた。

背後であかりが言った。「千嶋君、逃げようよ。もうすぐ、中西がくるよ。うちらが殺したと思われたら・・・」


あかりが和輝のワイシャツを強く掴んだ。和輝は顔を上げた。
「きゃあ!」あかりは叫ぶと、そのまま逃げていった。

25リズコ:2004/03/06(土) 23:46 ID:1Nf1VncU
更新早すぎるかな?

26御徒町:2004/03/07(日) 00:00 ID:vqwzskMA
大丈夫です^^
早くて困る人は居ないでしょうし、むしろ早く読みたくなります( ´∀`)ノ
頑張って下さい〜

27御徒町:2004/03/07(日) 00:02 ID:vqwzskMA
あとつけたし、
『治己』じゃなくて『治巳』です^^;

28リズコ:2004/03/07(日) 01:03 ID:1Nf1VncU
あっ、すいません!次から直しますねm(_)m

29リズコ:2004/03/07(日) 01:45 ID:1Nf1VncU
そこには、中西諒(男子十番)と、和輝だけが残された。和輝も、血の気がサーッと引いていった。やばい、殺されるかも。


諒は卓郎の死体を見て、駆け寄ってきた。
「卓郎!どうして・・・」
冷たくなった卓郎の手を掴んで、そのまま下を向いて泣いていた。

和輝はそれをジッと見ていた。いささか呑気なことだが、珍しいものを見たという思いがあった。


諒は顔を上げて、和輝に詰め寄った。
「お前が、殺したのか!?」苦しそうに叫んだ。

「いや、俺じゃないよ。俺がきた時には・・・争ってて」薫のことを言おうか迷った。諒は少しの間沈黙した後、口を開いた。

「じゃあ、お前じゃないんだな?」和輝はこくりと頷いた。
「誰が殺したんだよ?」諒は言った。ある決意に燃えた顔だった。

和輝は言いにくそうに呟いた。「・・・大島」


諒はのろのろと立ち上がった。
「わかった。悪かったな」惚けたように呟くと、デイバックを持ち直した。
「早くここから出た方がいい。疑われるぞ」諒は言った。


和輝は意外に思った。有無を言わせず殺されるのかと思っていたが、諒は冷静に状況を判断していた。
卓郎と諒は、タイプが違ったが、なぜかとても仲がよかった。その卓郎が死んだのだ。本当は凄く犯人が憎いのだろう。しかし、和輝を犯人ではないと判断したようだ。和輝は諒を少し見直した。



和輝がその場を去った後、諒は一人、そこに残った。
卓郎に別れの言葉を言っていた。誰からも怖がられている自分に、普通に接してくれた奴なんて、こいつが初めてだった。

香山智(女子十一番)が出てきて、短い悲鳴をあげた。諒が振り向くと、智は泣きそうな顔をして逃げていった。


諒はその場に腰を下ろした。次に出てくる男を待っていた。
―――足音が近づいてきた。

仲田亘佑(男子十一番)は、諒と卓郎の姿を見ると、驚いた表情をした。

「これはどういうことだよ?」と、叫んだ。
諒は言った。「殺されてた。犯人は、大島って奴だって」

亘佑は鋭い目を細めた。「わかった。行こう」亘佑は独特の低い声で言った。
諒は立ち上がった。じゃあな、卓郎。心の中で呟いて、その場を後にした。【残り42人】

30:2004/03/07(日) 17:57 ID:e49G4Aw2
age-がんばてくだせえ。

31リズコ:2004/03/07(日) 23:25 ID:1Nf1VncU
植草葉月(女子六番)は、井上聖子(女子五番)と待ち合わせをしていて、今はここ、H=5にいた。
聖子は危険を冒して、葉月を待っていてくれた。葉月はホッとしていた。聖子なら信用できる。そう思っていた。

葉月と聖子は家が近所で、昔からの友達だった。

葉月はこの辺りの地区では、かなりの金持ちの家の子供だったが、小さいころから甘やかされ続けて育ったせいか、よく言えば、素直で正直で、悪く言えば、わがままで気の強い性格に育ってしまった(まあ、本人は全く自覚がなかったが)。

だから、友達は少なかった。皆、葉月の性格についていけなくなって、離れていってしまうのだ。そして、いつも孤立してしまう葉月に、珍しくしぶとくついていった子が、井上聖子だった。

聖子はおとなしいけれど、芯が通っていて、葉月が間違ったことを言っていたり、していたりすると、必ず「そうじゃないよ。葉月」と、忠告してくれたのだった。
初めは腹が立った葉月も、次第に聖子の言葉にだけは耳を貸すようになった。ただ、やはり、葉月のわがままと気の強さだけは、今でも健在だったが。


そして、この日も二人は一緒にいた。だが、聖子の様子は、どことなくおかしかった。葉月がこれからどうしようかと話をしても、黙って聞いているだけで(もしかしたら聞いてないのかもしれない)、何も言おうとしなかった。
次第に葉月も喋るのに疲れて、水を飲んでいた。


聖子が、不意に口を開いた。

「ねえ葉月、私達これ以上一緒にいない方がいいんじゃない?」
葉月には、凄く意外な言葉だった。「何で?」葉月は訊いた。

聖子は静かに息をついて、話し始めた。

「私は生き残りたいの。そのためには、一人の方がいいんだ。葉月がいると、正直、足手まといなの。だから、ここで別れよう」

「嫌だよ!」葉月は強い口調で言った。「もし敵が襲ってきたって、一人でなら勝てないけど、二人なら勝てるかもしれない。夜だって二人でいれば、代わる代わる見張りをして、寝ることだって出来るよ。とにかく私は一人ではいたくない!怖いもん」

聖子は一通り聞いていたが、ふう、とため息をついて、「仕方ないなぁ」と言った。
葉月はホッと胸を撫で下ろした。やった、わかってくれたのね。


だが、それは一瞬の安堵でしかなかった。聖子が、葉月に銃を向けていたので。

32tp-18:2004/03/08(月) 01:34 ID:SxiXzQiE
おおマイキャラがメインっすか!?ありがたいですね
諒さんが意外にいい人なのがいいですね
更新早くていいと思います
続きがんばってください

33リズコ:2004/03/08(月) 17:00 ID:1Nf1VncU
「ど、どうして?」震える声で葉月は訊いた。
「だって、納得してくれないんだから仕方ないでしょ。まあ、最初から殺そうとは思ってたけどね」

葉月は愕然とした。今、私の目の前にいるこの子は誰なの?こんなの聖子じゃない。
「嘘!冗談でしょ?ちっとも面白くないんだから!」


そうわめく葉月に、聖子はやや呆れたような笑みを浮かべると、引き金を引いた。



たった一発だった。


だが、その一発は確実に葉月の頭を撃ち抜き、葉月の頭の一部は周りに飛び散った。
そして、葉月は地面にどっと倒れ、血がとろとろと流れ出した。



あーあ、随分変わり果てた姿になっちゃったわね。聖子はそう思いながら銃を置くと(コルトバイソンM357マグナムだった)、葉月のデイバックの中身を調べた。葉月を待っていたのは、デイバックの中の武器と食料を頂くためだった。

あら、この子いい武器持ってるじゃない。そこに入っていたのは、かつてのバトルロワイアルで桐山和雄が所持していた武器、イングラムM10SMGだった。

聖子はそれを握りしめると、自分のデイバックに銃を入れ、頭が半分なくなっている葉月を数秒見つめた後、別の方向に急いだ。【残り41人】

34リズコ:2004/03/08(月) 17:02 ID:1Nf1VncU
もうそろそろ、二十分経つ。千嶋和輝(男子九番)は注意深く、公園の門から出てくる人間を見ていた。
学校はもう禁止エリアになっていて、入ることが出来なかった。そして、笹川加奈(女子十四番)が、もうすぐここを抜けて来るはずなのだ。

学校を南側に抜けると、もうエリア外だし、J=3も、I=2も、殆どエリアの中には入っていなかった。ならば、よほどの変わり者でない限り、I=3にある、公園入り口(今和輝はここにいる)を通るはずだった。
現に、生徒の殆どはここを通って広場の方や、森、池の近くに向かっていた。だから加奈も、学校で殺されたのでもない限り、ここを通るだろう。

和輝はもしものことを考えて、ぞっとした。駄目だ、弱気になるな!笹川はもうすぐ出てくるんだ。絶対。和輝は唇を噛みしめた。



その時、学校を通り抜ける途中の草むらから、ざっ、ざっ、という音がした。
和輝は考えた。さっき、新島敏紀(男子十四番)が通り抜けたから―――。
淡い期待が、現実になるのを待った。


そこには、長い間見てきた懐かしい顔があった。笹川だ。和輝は感動して涙が出そうになった。
奇跡だ。笹川も俺も生きてる!ばんざーい!
二十分も同じ姿勢で神経をすり減らし、ややおかしくなっていたのかもしれない。



加奈は不安そうな顔で歩いていた。長い間(と言っても、たったの二十分だったけど)喋っていなかったために掠れてしまったが、出来る限り声を振り絞って、和輝は言った。

「笹川」加奈はビクッと体を震わせて、「誰?」と叫んだ。
「俺だよ。千嶋だよ」草むらから顔を出し、和輝は言った。


「和輝?」加奈は驚いたようにこっちを見た。
「どうして?」
「待ってたんだ。心配だったから」
そう言うか言わないかの間に、加奈は、和輝のいる方向に向かって走ってきて、和輝に抱きついた。
予期せぬ出来事にかなり驚いたが、加奈の表情を見て、気づいた。
加奈は泣いていた。

「怖かった。一人で、このまま死んじゃうのかと思ってた。よかった・・・」
何度もそう呟いている加奈を抱きしめながら、和輝の中に、愛おしさがこみ上げていた。【残り41人】

35リズコ:2004/03/08(月) 18:31 ID:1Nf1VncU
プログラムを知ってるかい?プログラムっていうのは、全国の中学三年生のクラスから毎年五十組を選んで、クラス内で殺し合いをさせるという法律だ。正式名称は、戦闘実験第六十八番プログラム。別名バトルロワイアル。おっと、そんなことはどうでもいいか。

でも、このプログラムは、道徳的にも社会的にもよくないんじゃないかってことで、99年に廃止になったんだ。

はー、一安心。皆そう思った。しかし、それは全面的に廃止されたわけじゃなかった。政府はずっと新しい案を練っていた。そして、ついに施行されたんだ。


二〇〇五年、七月。新BR法試験プログラム。第一回。対象クラスは、県立第三高校英文科、二年A組。総勢43人。


そして僕は―――その中の一人、男子十三番那須野聖人さ!



聖人は地図を見た。ここはH=4だ。雑木林に一本の道が、中央の広場に続いていた。だが、そんなことは、聖人には全くわからなかった。

ただ、落ちついていられなかった。プログラムだって?何でそんなものにオレが巻き込まれなきゃいけないんだ!誰だよ、対象年齢をあげようとかほざいた奴は!殺してやる!てゆーかお前が参加しろ!

聖人は息がつまりそうになるほど怯えていた。もう人は死んでる。聖人は、門を出る途中、田辺卓郎(男子八番)の死体が、無惨にも転がっていたのを見てしまったのだ。

気づけば、恐ろしくなって、やみくもに走り出していた。そして、疲れてやっと立ち止まった時には、よくわからない森の中に入ってきてしまった。

どこなのかはわからなかった。時折聞こえる鳥の鳴き声の他は、シーンと静まりかえっていて、不気味な感じがした。

何か出そうな森だなオイ。まあ、今一番怖いのは、幽霊よりも、むしろ人間だろうけど。
でも、やっぱりここは怖いな。もっと明るい場所に行こうか。でも公園の中心の池の周りは、目立つ。ここで朝が来るのを待とう。聖人はそう思い、腰を下ろした。


ふー。しっかし、何でオレがこんな目に遭わなきゃいけないんだよ!オレ、何も悪いことしてないじゃんか!聖人は怒っていた。
でも、とりあえず参加することになったわけだし、やるしかないよな・・・


聖人は懐中電灯でデイバックを照らしながら、中身を探った。
おっ、軍用ナイフだ。銃じゃないのは残念だけど、相手も銃じゃないなら、十分勝ち目はあるよな。


軍用ナイフを手元に置いて、聖人はボーっとしていた。だんだんと、睡魔が襲ってきていた。
ヤバい。眠くなってきた。でも、寝てる場合じゃないな。生き残るためには睡眠時間を削らなきゃ。でも、人間って寝ないと死ぬんだよな。
あれ?どの程度寝ないと死ぬんだ?いくらなんでも三日じゃ死なねーよな。


呑気なことを考えていると、その耳に不可思議な音が響いてきた。

「うわっ!」聖人は怯えた。逃げなきゃ、早く!
そう思っていても、足が動かなかった。それでも、意を決してやっと立ち上がった。
しかし、もう遅かったようだ。

36伊織:2004/03/08(月) 20:03 ID:Z1FdK0qg
お疲れ様です。故・葉月、塩沢、麻耶がナイスなキャラに仕上がっていて嬉しいです。
更新の早さと展開のおもしろさにドキドキするばかりです。これからも頑張って下さい!

37:2004/03/08(月) 20:27 ID:uZ4OyVdI
おもしろい!
の一言です!
Myキャラけっこういい仕事してますね〜
楽しみです。
頑張ってください

38リズコ:2004/03/08(月) 21:05 ID:1Nf1VncU
感想下さった皆さんありがとうございます!
頑張って更新しますね♪

39GGGGD:2004/03/08(月) 21:19 ID:e49G4Aw2
がんばってくだせえ。早くつずきが見たいッス!!

40リズコ:2004/03/08(月) 21:32 ID:1Nf1VncU
160センチに満たない小柄な身体。分厚い眼鏡の奥で、ぎょろぎょろとした目が光っていた。

峰村陽光(男子十八番)は、聖人を見た。聖人はあっけにとられて、峰村を見ていた。暗闇で、深い表情まではよく見えなかったが、眼鏡の奥の瞳が、ギラリと、凶器じみた光を放ったような気がした。


二年A組の中には、アニメが好きな、いわゆるおたく系の男子はいなかった。峰村は、国見悠(男子三番)と代々木信介(男子二十一番)とはたまに話していたが、信介はどちらかと言うと勉強家で、それ以外は、特に変わったところのない普通の男子だったし、悠は、無口で、あまり人とのコミュニケーションはとらないタイプだった。
峰村は主に別のクラスの友人と行動していた。そして、暗くておたくのような外見の峰村を、聖人は普段からよくからかっていた。
・・・もしかして、日ごろの恨みをはらそうとしているのか?


その通りだった。峰村はニヤっと笑うと、聖人に飛びかかってきた。


意表を疲れた聖人は、とっさに近くにあった石を峰村に投げつけた。
石は見事に顔に命中した。峰村はうなり声をあげて、顔を押さえた。


ざまあみやがれこのヲタク野郎!
聖人は少し得意げになって、峰村の傍に駆け寄った。手には、軍用ナイフが握られていた。

いくら峰村だからって殺したくはないけど、こうなったらやるしかないよな。
聖人は軍用ナイフを天高く持ち上げ、とどめをさそうとした。


聖人の目が見開いた。峰村は背中にかけていたボウガンを取り出し、聖人の足に目がけて、矢を放った。



ヒット!右足に矢が刺さり、聖人は倒れかけた。


ぐはっ。痛みと同時に、聖人は思った。ボウガン持ってるんなら、最初から使えよ。


峰村は間を置かずに、もう一度矢を放った。
クリティカルヒット!矢は聖人の腹に、ぶすっと刺さった。


手からは軍用ナイフが離れ、聖人は、地面に這いつくばった。腹を押さえた。大量の血が右手についていた、それを見て、意識が薄まりかけた。

チクショウ。こんな奴にやられるなんて。聖人は悔しさで涙が出そうになっていた。
腹の皮は裂け、ドクドクと血が流れてきた。湿った土に、じわじわと吸い込まれていった。



峰村は言った。「ざまあ見ろ。猿回しの猿め」
「何だとこら・・・ゴホッゴホッゴホ・・・」
聖人の口から、血がごぼごぼと出た。峰村は、さもおかしそうに笑った。

軍用ナイフとデイバックを拾い上げ、峰村はその場から立ち去っていった。

41リズコ:2004/03/08(月) 21:36 ID:1Nf1VncU
聖人は仰向けになった。

腹には銀色の太い矢が刺さっていた。抜こうとしたが、力が入らなかった。肺が裂けて、呼吸をするのも苦しい状態になっていた。


聖人は、自分がもう長くないだろうと悟った。

チクショウ、短い人生だったぜ。しかも峰村にやられるなんて。聖人にとっては、怒りを通り越して、むしろ意外な事実でもあった。

からかっていたのは自分にとってみれば、大したことじゃなかったけど、当の峰村は傷ついてたのかもしれない。そう考えると、聖人は少し反省した。
最期に気づかせてくれてありがとう。峰村。


・・・おい待て。何で、礼を言わなきゃいけないんだよ。オレはあいつに殺されたんだぞ?(まだ死んでないけど)むしろ恨むべきだよ。そうだよ。

だが、怒る気力すら失せていた。腹が裂けるような痛みが、聖人を襲っていた。
泣きそうになっていた。


イテー、イテーよ。まだ生きたかったんだよオレは。何でこんなゲームに参加させられて、しかも、こんなあっけなくやられなきゃいけないんだ。

こういうのは普通、雑魚キャラの運命だろ。峰村とか、国見とか。女子で言うと、高田とか香山なんかだな。それで、仲田達は悪者で、普段の恨みをここではらされるんだ。


・・・待てよ?はらされてんのはオレじゃん!オレは、雑魚キャラの上に悪者キャラ?
そんなのやだ。どうせなら、友達とか好きな女を守って死ぬとかがいいよ。

・・・待てよ。ここで感動するセリフを言えば、雑魚キャラじゃなくなるかも。
えーっと。えーと・・・

・・・思いつかねーよ!
そんなことを悶々と考えていたら、気が遠くなってきた。


「那須野君」女の声が聞こえた。可愛い声だ。誰だろう。
でも、今はそれどころではなかった。いかに最期をうまく決めるか、考えていた。


「那須野君」何だよ、うるさい。


聖人は目を開けた。
「何か用かよ!オレはもうすぐ死ぬんだよ。そっとしといてくれよ!雑魚キャラでも綺麗に死にたいんだよ!悪かったな、どうせオレは雑魚キャラで・・・ゴホッゴホッゴホ」


「そっか。ごめんね」井上聖子(女子五番)は、聖人のすぐ傍に立っていた。
おおっ。パンツ見えそう。聖人は少し、元気になった。

聖子は座り込んで、聖人に言った。「大丈夫?」
大丈夫なわけあるか。聖人はそう言い返したかったが、せっかく心配してくれているのだ。「駄目っぽいな」そう言って笑った。
口から血が垂れた。死にそうだった。

聖子は言った。「一つ、訊いていい?」頷いた。
「誰にやられたの?」
「みねっ、むら・・・」声を出すのが辛かった。
 聖子は悲しそうに、頷いた。

「ごめんね。もう一つ」続けた。「峰村君は、どっちに行ったの?」
「えーっと、確か右方向に・・・」聖人は震える手で上を指差した。
聖子はフッと笑った。「わかった。ありがとうね」

そして、聖人を見下ろす体勢になって、顔を近づけた。
おっ。
ちょっと、ドキドキした。こうやって見ると、井上さんって可愛いな。いや、元々可愛いんだけど。


 聖子はゆっくりと言った。「那須野君は雑魚キャラなんかじゃないよ。クラスの人気者じゃない」
そうかな?ははは・・・聖人はそう言ったつもりだったが、声には出てなかった。

聖子は更に続けた。「私ね、面白い人好きなんだ。だから、那須野君は結構好き」


コクられちゃったよ!いやー、オレだって井上さんは・・・よく知らないけど、でも、結構可愛いし、付き合うなら即オッケー?みたいな。
あっ、でもオレ、もう死ぬんだ。がっかり。

「ありがと・・・ゴホッゴホ」
「無理しないで」聖子は柔らかい口調で言った。


「痛いよね。可哀想に」少し間を置いて、笑顔を向けた。優しいんだな、井上さんって。小さいし可愛いし。

こんな子に殺し合いゲームなんて、出来るんだろうか?聖人はそう思った。
オレが、守ってやりたかった。



「今楽にしてあげる」聖子は銃を取り出して、撃った。



ドン。ドン。



大きな銃声がしたが、聖人には、聞こえることはなかっただろう。
聖人は少し笑みを浮かべた表情のまま、死んでいた。


聖子は聖人の目を閉じると、立ち上がって言った。「でも、那須野君が雑魚キャラなのは、間違いなさそうだね」【残り40人】

42紅桜 </b><font color=#FF0000>(GVAYuYFg)</font><b>:2004/03/08(月) 21:39 ID:Gw03.CZo
聖子ちゃん、天使な悪魔ですねぇ〜(何
ちょっと怖いです・・・・・・・。
更新ペースが早いので、読んでてストーリィが理解しやすいです。
次回も頑張って下さい。

43GGGGD:2004/03/08(月) 21:55 ID:e49G4Aw2
聖子ちゃんヤベーヨ。相馬さんみたいだ。

44GGGGD:2004/03/08(月) 21:55 ID:e49G4Aw2
聖子ちゃんヤベーヨ。相馬さんみたいだ。

45GGGGD:2004/03/08(月) 21:56 ID:e49G4Aw2
うわ、二つ書いてた・・・スマソン(_ _)ペコリ

46リズコ:2004/03/09(火) 15:26 ID:1Nf1VncU
笹川加奈(女子十四番)は、泣き腫らした目で辺りを見回した。周りは暗く、自分達を照らしている月明かりの他は、一点の明かりも見えなかった。あそこにいると危ないからと、千嶋和輝(男子九番)に言われてここまで歩いてきたのだ。

加奈は、かつて好きだった先輩が今は政府の部下になっていたこと、これから殺しあいをしなければならないこと、そして、その結果、自分が死んでしまうかもしれないということに、深く絶望していた。
私、まだ生きたかった。やりたいことがたくさんあったのに・・・
そう考えると、一回止まった涙が、いくらでも溢れてきた。

加奈が泣いている間、和輝は黙って、何かを考え込んでいるように見えた。和輝は、こんな私に呆れてるのかも。加奈はそう思って、涙を拭いた。


まさか、和輝が待っていてくれるなんて思わなかった。自分と千嶋和輝は、中学が一緒で、それなりに仲がよかったが、何せ出席番号が離れているので、危険を冒してまで(現に田辺卓郎が門の前で死んでいた。きっと誰かを待っていたのだろう)二十分も待つなんて、ありえない。そう思っていた。
だが、その危険を冒して待っていてくれた。加奈は意外なほど嬉しかったので、余計に涙が止まらなくなってしまったのだ。

こんな殺し合いゲームの中で仲間が出来た。それだけで、安心した。勿論、その仲間が信用できるかどうかはまだわからないけど、和輝なら大丈夫だろう。多分。きっと。


和輝が、口を開いた。「まさか、こんなことになるとは思わなかったよな」加奈は頷いた。「しかも北川が絡んでるなんて」和輝はフッと笑いを漏らした。
多分、絶望で笑うしかないのだろう。

北川先輩。その名前を聞いただけで、加奈の心はズキっと痛んだ。ずっと好きだった。頭がよくて、スポーツが出来て、優しくて・・・
加奈にとっては永遠の憧れの人だった。勿論、私なんかじゃ釣り合わなかったけど。
その先輩が、政府の犬になってたなんて・・・

そう思うと、また目に涙が滲んできた。

加奈の様子を見て、和輝が言った。「俺、絶対お前には生き残って欲しい。だから、もし俺達を狙う奴がいたら、遠慮なく殺すと思う。それでも、いいかな?」

和輝がいつになく真剣なので、加奈は少し驚いた(まあ、当たり前か)。
「うん。勿論だよ」強く頷いた。

この夜の暗闇の中で、クラスメイトは、既に殺し合っていた。恐怖に震えながら、加奈は、また涙が出そうになった。
でも、いつまでも泣いてちゃ駄目だ。新たな決意を元に、夜の月を見上げていた。【残り40人】

47リズコ:2004/03/09(火) 15:45 ID:1Nf1VncU
聖子ちゃんは役割的には、どっちかって言うと桐山ですねw>GGGGDさん
加奈ちゃんめっちゃヒロインしてるわ・・・(;´∀`)

48リズコ:2004/03/09(火) 17:16 ID:1Nf1VncU
峰村陽光(男子十八番)は、那須野聖人(男子十三番)と争った場所から北へと向かいながら、心臓の高鳴りを抑えるのに苦労していた。

俺は人を殺した!すげえ!やれば出来るんだ!
とどめをさしていなかったことに気づいたが、もうどうでもよかった。腹に穴を空けられて、長く生きてられる奴はそういないはずだ。

ふっ、あのいけすかねえ野郎を、ついにやったぜ!


陽光は元々負けず嫌いで、自分を馬鹿にする人間が許せなかった。陽光の心には、後悔の心は、みじんもなかった。それどころか、胸をワクワクさせていたのだ。

人間って案外脆いもんだな。この調子でいけば、十人くらい目じゃないだろ。生き残るために俺は人を殺す。まあしょうがないじゃないよな。陽光は割り切って考えていた。


陽光は足を止めた。でも、今はとりあえず腹ごしらえだ。腹が減っては戦は出来ぬ。その通りの言葉だな。一人で納得しながら、陽光はデイバックの中からパンを取りだした。

顔をしかめた。まずそうだな。生き残ったら、真っ先にレストランに行って、おいしい料理を喰うぞ。陽光はそう思いながら、パンの袋を開けようとした。



ぱらぱらぱら。古びたタイプライターのような音がするのが聞こえた。

そして、陽光のデイバックと食料は、ぐちゃぐちゃになっていた。
あっ、俺のパンが。

振り返ると、そこには、小柄な体型に幼げな可愛らしい顔。小さな手に似つかわしくない、大きな箱のような物を持った、(陽光には名前がわからなかったが)井上聖子(女子五番)が立っていた。

よくも、俺のデイバックを。「てーめー!何すんだよ!」陽光は叫びながらボウガンを掴み、矢を放とうとした。
聖子は顔をしかめた。


もう一度ぱらぱらぱらという音が聞こえ、陽光の体には穴が三つ開いた。

くう・・・。
陽光は恨めしげに聖子を見たが、そのままばたんと倒れた。



聖子は、峰村陽光が死んでいるのを確認すると、辺りを見回し、武器を拾った。
軍用ナイフにボウガンか・・・もらっておくべきかな?

ボウガンは幅を取るから却下。軍用ナイフは・・・一応取っておくか。何が起こるかわからないのが世の中だしね。聖子は鼻歌を歌いながら、その場を去っていった。
【残り39人】

49GGGGD:2004/03/09(火) 20:35 ID:e49G4Aw2
桐山さんでっか・・・・桐山さんでっか・・・・・・桐ドン!!ドン!!(謎

50ダブル </b><font color=#FF0000>(ZeMEOFXA)</font><b>:2004/03/09(火) 20:39 ID:MMGrCXv6
聖子ちゃん、すごいですね。
このゲームは聖子ちゃんが引っ張っていくんでしょうか。
面白いです!!頑張ってください☆

51GGGGD:2004/03/09(火) 20:39 ID:e49G4Aw2
所でぺティーってなんすか?

52リズコ:2004/03/09(火) 21:37 ID:1Nf1VncU
小笠原あかり(女子十番)は、G=5の西側にいた。
暗い森を通り抜けながら、怯えていた。お守りのように、両手で、大型の自動拳銃を握り締めていた。


怖いよー。帰りたいよー。
あの時、逃げないで千嶋君と一緒にいればよかったのかな。千嶋君はあのまま中西にやられたのかな。もしそうだったら、私ってサイテーだ。一人だけ逃げてくるなんて。どうしよう。でも、仕方ないよね?これはそういうゲームなんだもん。
あかりは、自分にそう言い聞かせた。


疲れ果てて、とりあえずその場に座り込んだ。あかりは思った。このまま一人で、ずっとこうしてるのかな。そして、誰かに殺されるのかな。まだ死にたくないのに!

仲間を作ろうかと考えたが、誰が信用できるのかわからなかった。
普段仲のいい女子を思い浮かべた。加奈。楓。明日香。博美ちゃん。薫・・・


大島薫(女子九番)の顔が浮かんだ。痩せ型で、大人びた表情をしていて、長い髪をポニーテールに縛っていた。

薫はゲームに乗ったんだ。何で?人殺しなんか出来るような子じゃなかったのに。
頭がよくて、優しくて、努力家だった。その薫が―――

このままだと、誰が信用できるかなんてわからない。あかりは体を強ばらせた。



ガサッ。草むらを踏み分けるような音がして、あかりの心臓は飛び上がった。
あかりは自分から十メートルほど離れた場所から、男子生徒がくるのを見た。

だ、誰かくる。どうしよう。逃げなきゃ。殺されちゃう。やだ!

あかりは逃げようとしたが、足がすくんで動けなくなっていた。



「あっ、小笠原さんか」新島敏紀(男子十四番)は、落ち着きのある声で言った。


あかりの頭の中は恐怖心でいっぱいになった。新島君だ。殺されちゃう!
いつも冷静で、笑っているところなど見たことはなかった。不良というわけではなかったが、冷たそうなイメージしかなかったのだ。


撃たなきゃ。あかりは震える手で銃を持ち上げた。
敏紀の表情が、少し変わるのがわかった。


こんな時でも冷静なんだね。そんなのおかしいよ。絶対おかしい。
あかりはそう思い、引き金を引こうとした。



・・・あれ?引き金が引けない。どうして?あかりは半狂乱になって、引き金を引こうとした。しかし、固いそれは、あかりの力でどうなるものではなかった。


あかりは泣きそうになって、敏紀を見た。暗闇の中、敏紀の表情は、よく見えなかった。あかりにはそれがとてつもなく恐ろしいことに感じた。



敏紀はかがんで、それから視線を下げた。まっすぐに、右手をあかりへと伸ばした。
嫌っ!あかりはびくりと体を振るわせた。



「あのね」敏紀は座り込んで、あかりの銃に手をやった。
「ここの安全装置を外さなきゃ、引き金は引けないよ」そう言って、安全装置を指差した。「わかった?」

「へっ・・・うん」そっか、それで引けなかったのか。納得。

でも―――あかりは敏紀を見つめた。
「随分震えてたみたいだけど。落ちついた?」敏紀は言った。
あかりは黙っていた。どういうつもりなんだろう。さっぱりわからなかった。

敏紀は次の瞬間、少し笑んだような気がした。「大丈夫だよ。俺は人殺す気なんて、ないから」そう言って腰を下ろした。あかりはビクッとした。


「でも・・・」
「信じられない?」
あかりは首を振った。「私、銃を向けたのに」
「仕方ないよ。こんなゲームの中だもん」敏紀は笑った。


敏紀が口を開いた。「何かさ、皆怖いと思ってるじゃん。だから、俺には敵意がないってことを、誰かに教えたかった。そうすれば、殺し合いなんて起きないかもしれない」
「でも、これはそういうルールだよ?それに、私がゲームに乗ってたらどうするの?」
あかりはそう言った後、「勿論、乗ってないけど」とつけ加えた。

「まあ、ちょっとビビったけどね」両手を合わせて、伸びをしながら言った。
「でも、凄い震えてたから、きっと怖いんだろうって思って。それに・・・小笠原さんなら大丈夫だろうと思った」


あかりはしゃがみこんで、ため息をついた。
何か、そこまで信用してくれたのに、悪いことしちゃったな。他の人だったら、あそこで殺されてたかもしれない。

そして、敏紀を見た。冷たそうに見えたけど、そんなことなかったんだね。ごめんなさい。あかりは反省した。

53リズコ:2004/03/09(火) 23:48 ID:1Nf1VncU
読んでくださってる皆さん、そして感想を書いてくれる皆さんありがとうございます。
とても嬉しいです。これからも頑張りますね♪

ぺティーは「とりとめのない・くだらない」みたいな意味だったと思います(うろ覚え)>GGGGD

54蜜 </b><font color=#FF0000>(u5UmjW1o)</font><b>:2004/03/10(水) 00:30 ID:BULPx9lw
素晴らしい更新頻度ですね!見習いたいものです。
聖子ちゃん、なかなかすごいですね。
まだプログラムが始まってそんなに経ってないのに結構な好成績で。
これからもどんな活躍するのか楽しみです。

55リズコ:2004/03/10(水) 16:36 ID:1Nf1VncU
元々あった奴をちょっと変えてるだけですからね^^;
でも結末は変えるかもしれないですw>蜜さん

自己あげ(ノ´o`)ノ

56多島さん・・・?:2004/03/10(水) 20:03 ID:e49G4Aw2
おお!!ペティーとはソウユウコトだったのか!!
俺もペティーのような人生を送らないように(ぇ
  a g e

57リズコ:2004/03/10(水) 21:39 ID:1Nf1VncU
「ごめんね、ありがとう。私なんかを信用してくれて」
「ううん」敏紀はそう言った後、気まずそうに続けた。「あのさ・・・そんなこと言っといて、実は怖かったりするんだよね。一緒にいてくれない?」
あかりはフッと笑った。「全然いいよ」


「あー、よかった。ところでさー・・・」
敏紀は視線を下に動かした。
「さっきから、ずっと虫が」


・・・虫?あかりはぎくりとして下を見た。自分の太ももに、緑色の毛虫が、我が物顔でよじ登っていた。


「きゃああああああ!」あかりは叫んで、敏紀に抱きついた。
「とってとってとって!追い払って追い払って追い払って!」
 虫は大嫌いだった。特に毛虫など、テレビで見るだけでぞっとする。
「早くとってー!」


敏紀が少し呆れの入った調子で言った。「・・・もう、いないけど」


あかりはおそるおそる、自分の足を見た。
・・・いない。はあ、よかった。ホッとしていた。



気がつくと、敏紀があかりをじっと見ていた。
「あっ、ごめんね」あかりは恥ずかしくなって、敏紀から離れようとした。

敏紀は物珍しそうに言った。「小笠原さんってさー・・・アイドルの花川愛に似てるよね」

えっ?「へっ、そうかな?何か結構言われるんだけどね」
「うん。似てるよ」えへへ。実はそう言われるのは嫌ではなかった。

「新島君はニホンオオカミに似てるよね」
「何それ。初めて言われたんだけど」
「えー、似てるよー」
あかりは笑った。仲間が出来てよかった。このゲームの中で、自分が笑えるとは思わなかった。

しかし、それはそうと―――



あかりは遠慮がちに言った。「あの、離してくれないかな・・・」


敏紀は少し笑みを含んだ口元で言った。「でもさ、俺―――」




ざくっという、どこか歯切れのよい音が聞こえた。あかりには、それが、何の音かはわからなかった。

ただ、首に、何とも形容しがたい、強い痛みが広がったことしか、理解できなかった。


ガッ。今度は骨付き肉を切るような音がした。


血が、一瞬、もみじのような形を成して飛び散り、そのまま、ぷしゅーっと広がった。

あかりの首と、そこから不自然に生えている銀色の物体にも、そして、それを握りしめていた敏紀の左手にも、その生温かい血は流れていた。



敏紀がナイフを引くと、地面に斜線のような赤い染みが広がった。
手を離すと、あかりは横ざまに倒れた。



「―――花川愛嫌いなんだよね」
敏紀は静かにそう言うと、あかりが置きっ放しにしていた銃を手に取った。あかりの支給武器は、べレッタ92Fだった。
敏紀はその性能を確かめ、それから、あかりの死体も見た。

この女に銃を向けられた時はちょっとやばいと思ったけど、思い切って、近づいてみてよかった。

「はは・・・」敏紀は声を抑えて笑い出した。人を殺すのは、思っていたよりも、ずっと、簡単なことだった。
【残り38人】

58リズコ:2004/03/10(水) 21:45 ID:1Nf1VncU
紺野朋香(女子十三番)は、エリアF=7に入っていた。ゲーム開始からずっと歩き続けていたので、もうくたくただったが、それでも歩いた。

辺りを見渡した。誰もいないようだった。朋香は小さく舌打ちをした。

朋香はある決意をしていた。絶対に、会いたい人物がいたのだ。そう、あの女。


朋香はあの女が嫌いだった。嫉み、というものも、少しはあったのかもしれない。だが、殆どは違う理由だった。

思った。あいつの目を見ればわかる。あいつは、あたしのことを友人とも思っていない。勿論、他のクラスメイトのことも。ただ、孤立するのが嫌だから、とりあえず一緒にいるだけだ。


そして、たくさんの男に囲まれていても、誰一人本気で愛していない。朋香はそれに気づいていた。しかし、朋香以外の人間はそれに気づいていないようだった。それにも、腹を立てていた。

はたから見れば、可愛くて、性格がよくて、少し頭が悪い。まさしく、男の妄想の中によく出てくる類の女なのだろう。


しかし、裏では複数の男がいて、貢がせて、飽きたら捨てるという女だった。気に入らない同姓には男を使って嫌がらせをする。とりあえず金を持っている男には、平気で取り入ろうとする。プライドってモノがないんだ。
外見しか取り柄がないくせに。朋香はそう思った。


伊藤愛希(女子四番)の本性を、誰も知らない。あいつは馬鹿のふりをして、頭の回転がいい。貢いでいる男も、嫌がらせをされた女も、愛希の仕業とは、全く気がついていなかった。
愛希ちゃんがそんなことするわけないじゃん。皆そう言った。僻んでるの?と言われたこともあった。
悔しかったので、二度と騙された奴らには、本当のことを言わなくなった。


騙される奴が悪いの。愛希はそう言っていた。確かに、そうかもしれない。今付き合っている姫城海貴(男子十六番)も、見事に騙されているのだろう。あんな女に。


朋香は唇を噛みしめた。この高校に入学して、初めて好きになった男だった。しかし、それに気づいた愛希は海貴に近づいた。
愛希は面白半分で、人の好きな男や、彼氏を取ることを趣味にしていた。そうして、愛希と海貴は付き合うことになったのだ。

ショックだった。まあ、もう昔の話だけど。

そして、それから半年後、初めて出来た彼氏も愛希に取られた。愛希は朋香の恋人を寝取って、たった一週間で捨てたのだ。
それを聞いた時、朋香は頭をミサイルで爆破されたような気持ちになった。
まあ、もう昔の話だけど。


朋香は愛希と離れたかったが、愛希の男達の嫌がらせが怖かったのと、あることをばらされるのを怖れて、離れることができなかった。
でも―――



あんな腐った女、殺した方がいい。腐った遺伝子がこれ以上ばら撒かれる前に。そう、決意していた。


手にしていた武器を、もう一度しっかりと握り直した。
朋香の武器は、S&Wチーフスペシャルだった。説明書もよく読んで、使い方もわかっていた。
あとは、愛希を捜すのみだったが、やはり、これだけ広いエリアの中で、たった一人の人物を捜すのは、とても困難なことであった。

ここまで歩いてはみたものの、あまり人はいなかった。朋香が出会ったのは、校門にあった田辺卓郎(男子八番)の死体と、森をぬける時に見た、峰村陽光(男子十八番)の死体と、G=5の川沿いに、一瞬人影が見えたくらいだ(あれは、鈴木菜々だっただろうか)。

いない方がいいのだろうが、どうしても愛希に会いたかった。

―――会って殺す。朋香の決意は固かった。


朋香は愛希を殺すことだけを目的にして、平静を保っていた。【残り38人】

59ヤム </b><font color=#FF0000>(PV40Bkpg)</font><b>:2004/03/10(水) 22:53 ID:MoiWTSpM
応援age

60影虎:2004/03/10(水) 23:08 ID:rnKnoYug
ペティーってそういう意味だったんですね!
なんか今夜はよく眠れそうです(笑

そんなこんなで小説頑張ってくださーい!

61リズコ:2004/03/11(木) 20:32 ID:1Nf1VncU
中西諒(男子十番)と、仲田亘佑(男子十一番)は、H=6にきていた。北西の方角には、白い廃城が見えていた。小さな小屋があったので、そこに入ることにした。


部屋で腰を下ろすと、仲田が言った。「つーかさー。オレ、思ったんだけどー」
「何だよ」
「大島って誰?男?女?」

諒は少し沈黙した後、考え込んだ。やがて言った。「・・・わかんない」
「それじゃ捜しようがねーじゃねーかよ!」仲田は叫んだ。


そう、二人とも、クラスメイトとはあまり関わりがなかったので、大島薫(女子九番)が、誰だかわからなかったのだ。しかも、千嶋和輝(男子九番)は下の名前を言わなかったので、性別すらもわからないという非常事態(?)が発生していた。

「誰かに訊く?」
「絶対に逃げられるだろ」
「そっか。そうだな」

二人は考え込んだ。

「あっ、名簿とか入ってないの?」
「あっ!」
諒はデイバックの中を探した。地図と一緒に、薄っぺらい紙があった。
「プログラム参加者名簿・・・あった!」

二人は紙に書いてある生徒の名前を観察した。

「・・・・・・・・・・・・・いた!女子九番大島薫。でも顔はわかんない」
仲田は言った。「まあいいよ。女ってことはわかったんだから。誰でもいいからとっ捕まえてーヤっちまおーぜ!」
諒は少し考えた。仲田のことだから、本気でやりかねない。


「待て。落ちつけ」
「何だよ!お前も卓郎の仇打ちたいだろ」
「だれかれかまわず殺したら敵討ちにならないじゃん」
「んなこたあどーでもいいんだよ!誰かが殺したんだろ?下手な鉄砲も数うちゃあたるっていうじゃん!もしかして犯人かもしれないし・・・」
「・・・」
それは駄目だ、と諒は思った。


諒は言った。「そういうのは趣味じゃないから嫌だ」
「オレだって趣味じゃねーよ。でもさー、こんなゲームの中だし、仕方ないじゃん?」そう言った後、仲田は小声で囁いた。
「・・・」諒は考えた。でも・・・

諒は強めの口調で言った。「そんなん嫌だよ」

仲田はやや呆れたような笑みを浮かべた。
「あー、わかったよ。でも、何でそんなに拒否ってんの?」

「親父と同じになっちゃうから、やだ」
「ああー」仲田は納得したように頷いた。
諒は更に言った。「それに、可哀相だろ。関係ない奴を巻き込むとか」

「・・・だな。そんなことより大島って奴をどうやって捜すか考えようぜ」仲田は言った。



亘佑は顎に手を当てた。思った。諒は昔っから、どっか甘いと言うか、フェミニストと言うか、生ぬるいところがある。
そこがあまりにも普通すぎて、亘佑は時たま物足りなさを感じることがあった。

しかし、喧嘩は亘佑よりずっと強かった。どこで覚えたのは知らない。諒は誰にも話そうとしなかったからだ。

亘佑が諒から聞いたのは、自分の親父を異様に嫌っていることと、誕生日が五月だということ。それだけだった。その他は又聞きしたことなので、省いておく。

そこにも苛立ちを覚えることがあった。自分のことはあまり話さない。仲間なら、腹を割って話すべきだろ?


そういう部分では、亘佑は熱かった。親がやくざなせいか、強さに最もこだわった。
そして、喧嘩で負けた以上、諒を自分より上の存在だと認めていた。親父も、諒のことは気に入ってる。オレも、こいつの強さには憧れてる。

ただ―――

62リズコ:2004/03/11(木) 20:33 ID:1Nf1VncU
「とりあえず、大島を捜そう。女子の、単独で行動している奴に名前を訊く。これしかないよな」諒が言った。
「でも、それじゃしらばっくれられちゃうだろ」
「・・・それが問題なんだよな。どうしよう」
亘佑は言った。「顔知ってる女子に、大島を一緒に捜してもらうのは?」
「いいけど。おれ、女子の顔と名前、ほっとんど一致しねーよ」
「・・・誰がわかる?」
諒は名簿を見て、指を差した。
「有山って子は最初に出発したから何となく覚えてる。あと新井も知ってる。それから、小笠原ってのは、今日千嶋と一緒にいた子だと思う。あとは伊藤。内ってのはハーフっぽい子だろ。あとは、冬峯と濱村と鈴木さん。残りは・・・わかんねえ」
「それだけわかれば上等だ。とりあえず捜してみようぜ」亘佑はそう言って、続けた。「午前中と午後に分かれて、一人ずつ捜しに行こう。で、時間がきたらここに戻ってくる。いいだろ?」
「ああ」諒は頷いた。それから、ちょっと笑みを浮かべた。「何か頼もしいじゃん」
「まあ、ここの出来が違うから」
 亘佑は自分の頭を指でつついた。少し得意げになっていた。

「じゃあ、どっちが先に行く?」
「お前が行けよ」

二人の間に、短い沈黙が流れた。それから十分間言い争って、挙げ句の果てに、単純にじゃんけんで決まった。

結局亘佑が行くことになってしまった。
亘佑はチッと舌打ちをした。まあいいか。どーせ行くことになるんだし。

「あっ、そうだ、諒・・・」
「あん?」諒は亘佑を見上げた。

「・・・何でもない」
自分の考えを言うのはやめておいた。まだ、時間はある。

亘佑は支給武器のゴルフバットを肩にかけた。「じゃあな」そう言って、小屋を後にした。



亘佑は思った。卓郎は殺された。諒は復讐をしたいと言ってる。だが、あいつはゲームに乗ることなんて考えてないんだろう。

いくら喧嘩が強くても、お前には大事なもんが抜けてるぜ。もっと、空気を読んだ方がいい。

オレが・・・お前の言うとおり、大人しく大島を捜そうとしてると思ってんのか?


亘佑は呟いた。「残念ながら、オレは最初からゲームに乗るつもりだったんだよ」


涼しい夜風が、亘佑の背中を叩いていた。今まで経験したことのない緊張感が、亘佑を襲っていた。
【残り38人】

63リズコ:2004/03/11(木) 20:41 ID:1Nf1VncU
今流行りの(?)トリビアと同じ意味ですねw>ぺティー

64リズコ:2004/03/11(木) 20:45 ID:1Nf1VncU
永良博巳(男子十二番)は、E=5の木陰で休憩をとっていた。恐怖心とは関係なく襲ってくる眠気と戦っていた。

こんな切羽詰った非常事態でも、眠くなるしトイレにも行きたくなるんだな。人間の本能だもんな。
ああ、眠い。博巳はうつらうつらしていた。でも、寝ている合間に誰かきて、殺されたらたまったもんじゃない。
そう思っていたが、頭の中の考えとはうらはらに、博巳の大きな二重まぶたは、下のまぶたとくっつきそうになっていた。


やべえ、起きろ!起きろってば!博巳は目を思いっきり開けた。しかし、すぐに重力に勝てずに降りてくる。

だめだー。眠すぎる。どこか人のいない場所で休むしかない―――

でも、動けない―――


博巳はバタリと倒れた。



一時間後。博巳は不意に目を覚ました。
あれ。ここどこだ?何してたんだっけ・・・

寝ぼけ眼に、自分に背を向けて、東の方向へ進もうとしている男子生徒が見えた。

十メートル程先なので、下手をしたら気づかれるかもしれなかった。誰だかはわからなかったが、向こうがやる気になっていたら困るので、博巳は身を潜めた。


その時、男子生徒は行き先を変え、あろうことか、博巳の方へ向かってきた。


うおー。どうしよう。博巳は支給武器の、催涙スプレーを手に持った。

もし藪の中を覗かれたら、これを噴射して逃げるしかないな。博巳は外装のフィルムを取ろうとした。


ぴりぴり・・・

プラスチックフィルムを破る、間抜けな音が響いた。普通なら聞こえないような音だが、辺りがあまりにも静かなので、その音は妙に大きく聞こえた。
「うわっ」博巳は思わず声を出した。


「誰かいるのか?」


聞いたことのない声が聞こえた。高くも低くもない、それでいて芯の通ったいい声。
博巳は怯えた。
・・・誰だ?仲田とか中西だったらどうしよう。


その人物は、藪の中でダンゴ虫のような格好をしてうずくまっている博巳を見て、不可思議な顔をしていた。

「何してんだ・・・?」


少し褪せた色の黒髪は無造作に伸びていた。高校生というより、どこかのフリーターか作家でもやっている方がお似合いな様子の、クラスではあまり喋らない男だった。


「やる気になってんのか?」梁島裕之(男子二十番)は、博巳に問いかけた。
持っていたマシンガンを、博巳に向けた。


「うわあああ!ごめんなさい。殺さないで」博巳は驚いて、素っ頓狂な声を出して謝った。

梁島は何を考えているのかもよくわからない表情で、博巳を見た。
博巳には、この男が、別世界の、何か得体の知れない生き物のように思えた。



「おれは、ゲームに乗る気はないんだけどな」そう言って、博巳の近くまできた。
博巳はビクッとした。梁島は学ランのポケットから煙草を出して、ジッポで火をつけた。


梁島は煙草を吸って、ふーっと口から煙を出した。
ため息をついて、博巳に向かって言った。
「あんたもいる?」大きな唇が横に広がった。梁島はニッと笑った。

それが、博巳が初めて、いや、二年A組の生徒が初めて見た、梁島裕之の笑顔であった。
【残り36人】

65紅桜 </b><font color=#FF0000>(GVAYuYFg)</font><b>:2004/03/11(木) 21:06 ID:Gw03.CZo
面白いですね!
最初っからどんどんこの世界に引きずり込まれて来ました。
人々の想いや、行動が鮮明に頭に蘇ります。
終わりまで応援したいと思いますので、頑張って下さい。

66リズコ:2004/03/11(木) 23:42 ID:1Nf1VncU
いえいえとんでもないですよ!
終わりまで応援したい」って言うのは凄く嬉しいです。
頑張って更新するのでよろしくお願いします(^−^)> 紅桜さん

67ヤム </b><font color=#FF0000>(PV40Bkpg)</font><b>:2004/03/12(金) 17:39 ID:kwwlFcPc
とても面白いです!
これからも応援してますよ。
ageます!

68GGGGD:2004/03/12(金) 20:24 ID:e49G4Aw2
がんばてくださいーー、、、、、、揚げ

69リズコ:2004/03/13(土) 01:20 ID:1Nf1VncU
天野夕海(女子一番)と望月さくら(女子二十番)は、二人で行動していた。スタートは女子三番の有山鳴からだったので、さくらの後は、ほんの三人(梁島裕之、冬峯雪燈、代々木信介)しかいなかったためだ。そして、その次は夕海。

それでも待つのは危険なことだとわかっていたし、すぐ傍には死体があって怖かったが、一人でいるのは、もっと怖かった。

さくらは、いつも夕海と鳴と一緒にいた。鳴は一番最初に出発してしまったので、さくらは夕海一人を待つことになった。
しかし、鳴がいないのは何か物足りなかった。ジグソーパズルの残り一ピースがないような気持ち悪さを感じていた。まあ、さくらはジグソーパズルなんてしないのだが。


てゆーかなんであたしがこんなゲームに参加しなきゃいけないの?
さくらは不満で仕方なかった。委員会で嫌な役を押しつけられる時に、じゃんけんに負けた時によく似ていた。さくらは前にそれで風紀委員をやらされたことがあった。どう見ても、校則を一番やぶっているのは自分なのに。

でも、それよりもずっと貧乏くじをひいた気分。きにいらない。さくらはそんな理由で怒っていた。



「ねえ」夕海がさくらに話しかけてきた。
「なに?」
「ここのエリアってどこだっけ?」
「はあ?地図みなよ」視線を下げた。夕海は既に地図を持っていた。
「みたってわかんないじゃん」

こんなことでこの先大丈夫なのか、実に心配である。

70リズコ:2004/03/13(土) 01:22 ID:1Nf1VncU
ふと気になって、さくらは夕海に訊いた。「あたしアイラインおちてない?鏡かしてよ」
どんなときでも身だしなみは大事にしなきゃね。すっぴんじゃはずかしくて、外でれないし。

さくらは夕海から鏡を借りて、自分の顔をチェックした。少し小さめの奥二重の上下に太めに引いたラインは、やや滲んではいたが落ちてはいない。まつげも綺麗にカールしていた。ふう、大丈夫っぽいな。

「だいじょぶだよ。それよりさー、さくらのぶきなに?」

ぶき?武器か、なんだろ。さくらは、そこで始めてデイバックを開けた。ごそごそと中を探った。
何か、尖ったものが、手の先に当たったのがわかった。
勢いよく引っ張り出したら、他に入っていた物がこぼれ落ちた。

「あー、これアイスピックじゃない?」その通り。さくらの武器は、アイスピックだった。
これって、武器の中ではどうなんだ?さくらにその価値はわからなかったが、夕海にも訊いてみた。
「夕海のは?」

「ゆみのはねぇ・・・」
夕海はあたしより頭が悪い。さくらはそう思っていたが、はたから見れば、どっちもどっちだった。

「ゆみのは、なんか、ちかんにびりりってやるやつだよ!」
夕海の武器は、スタンガンだった。さくらはあまりいい武器ではないと思ったが、それでも、夕海は十分満足しているようだった。ま、いっか。


その時、さくらはポケットに入れていたリップクリームが、地面に落ちていたのに気づいた。やばいやばい、これがなくちゃ唇荒れちゃうじゃん。さくらは膝を屈めて、リップクリームを拾おうとした。



どん。

近くでとても大きな音がした。それは多分、銃声だとさくらは気づいた。
銃弾はちょうどさくらの頭上を通り、近くにあった木に小さな穴が空いた。

71リズコ:2004/03/13(土) 01:23 ID:1Nf1VncU
だれ?振り返ると、そこには井上聖子(女子五番)が銃を握って立っていた。

さくらは猛烈に腹が立った。
なにこいつ?おとなしそうな顔してうちらのこと殺そうとしたの?

さくらは細い眉毛をつり上げて、言った。「ちょっとあんた、危ないじゃないのよ」
聖子は、やや身じろいで言った。「違うの。私怖かっただけなの。それで、つい・・・」

「はあ?こわかったですむはなしじゃないでしょ?」横から夕海が言った。「マジ、しんだらどうせきにんとってくれんだよ」
これは、そういうゲームなのだが。

「ごめんなさい」聖子は泣いていた。

こういうタイプの女は嫌いだった。華奢な体に女の子らしい顔。こういうタイプの奴が、ちゃっかり男持ってくんだよね。

かつて付き合っていた男に、浮気をされたことを思い出した。相手の女は確か、こういうタイプ。そして、さくらをふってその女の方に行ったのだ。まあ、もう昔の話だけど。

しかし、相手がどんな人間でも、さくらは人殺しはしたくなかった。思った。あたしは、こう見えてもやさしいの。人殺しなんかやるような人間じゃない。でも、このままにしとくのはだめだ。罰をあたえなきゃね。


さくらは言った。
「じゃあさ、あんたの持ってる武器ちょうだいよ。そしたら許してあげる」
「さくらあたまいい!」隣で夕海が言った。
まああたりまえってゆーか?さくらは得意げになっていた。


聖子は小さく頷くと、すごすごと武器を渡した。
「じゃあさ、夕海がもってなよこの銃」
「えーやった!チョーラッキーじゃない?」
そして、さくらは後ろを向いて、夕海に武器を渡そうとした。

72リズコ:2004/03/13(土) 02:59 ID:1Nf1VncU
ありがとうございます!頑張って毎日更新します( ´▽`)>ヤムさん、GGGGDさん

73リズコ:2004/03/13(土) 18:29 ID:1Nf1VncU
ドスッ。


いい音がした。まるで、ダーツの的に矢がささったときみたいな。いや、もっと大きい音かな?魚にほうちょうをたてたときみたいな。いや、ちがうな・・・

さくらはなぜか、ぼんやりと呑気なことを考えていた。
夕海が「あ、あわわわわ」と言うのが、遠くで聞こえた。


ふと我に返った時には、背中に強い痛みが突き抜けた。
さくらの背中には、軍用ナイフが突き刺さっていた。

こいつ、あたしをさしやがった!
さくらの傷は致命傷に達していて、もう長くはなかったが、最後の力を振り絞り、聖子に襲いかかろうとした。


聖子はさくらを刺した時に、さくらが落としていた銃を瞬時に拾っていた。
そして、その銃を撃った。


ドン。


その一発は、見事に頭をぶち抜いていた。さくらは地面に倒れた。そして、倒れた時には、もう事切れていた。
【残り37人】

74リズコ:2004/03/14(日) 01:38 ID:1Nf1VncU
「やだぁ!」天野夕海(女子一番)は叫んだ。目の前で人が死んだという事実と、それが自分の友達だという事実が、にわかには信じられなかった。

夕海は、頭が半分なくなってしまった望月さくら(女子二十番)の死体に歩み寄った。

そんな・・・さくらがしぬなんて。ころしてもしなないとおもってたさくらが!

井上聖子(女子五番)は、驚きのあまり大きな目を見開いている夕海を見て、クスっと笑った。

・・・ころされる!



夕海は、さくらが握っていたアイスピックを奪い取って、聖子につきつけた。
「それいじょうちかづかないで!」

だが、聖子は別段動じた風も見せなかった。それどころか、笑いながらこっちに近づいてきたのだ。夕海の頭の中は、恐怖心でいっぱいになった。

「それいじょうくるとさすよ!」夕海は叫んだ。聖子は、不思議に優しい声で言った。
「あんたには無理よ」

なんで?なんでよ?夕海は泣きそうになっていた。


聖子は銃口を夕海に向けた。


しにたくないよお、たかし。夕海は、二歳年上の恋人のことを思いだしていた。二人は先月でちょうど交際一年目で、この前、そのお祝いをしたのだった。
たかし、たすけて。

しかし、それは無理な願いであった。



聖子の撃った弾は、夕海の額のど真ん中に、綺麗に穴を空けた。
たかし―――

二度と会うことの出来ない恋人を思いながら、天野夕海は死んだ。
【残り36人】

75リズコ:2004/03/14(日) 03:31 ID:1Nf1VncU
かなり今更なんですが、キャラのプロフとか情報とか書いた方がいいですか?
ご意見聞かせてください。

76GGGGD:2004/03/14(日) 22:34 ID:e49G4Aw2
挙げー。(ケンキョ)

77リズコ:2004/03/15(月) 18:04 ID:1Nf1VncU
刻々と、朝が近づいてきていた。夜には何度か銃声が聞こえたが、今はひっそりと静まりかえっていて、何も聞こえなかった。

千嶋和輝(男子九番)は、朝日が昇ろうとしている空を見ていた。隣には静かに寝息を立てて眠っている、笹川加奈(女子十四番)がいた。

和輝は思った。穏やかだな。これが、あの殺し合いゲームの最中の光景なんて、誰が思うだろうか。
もしこれがなんでもない日常生活の、ある日の一瞬であったら、和輝にとって、これほど幸せなことはないだろう。

だが、これから殺し合いが始まるのだ。

和輝は銃を片時も離さなかった。首輪の幸運を信じるなら、それまでは必ず生き延びなくてはならなかった。でももう殺しあいは始まっていて、和輝の知る限り、一人が既に死んでいた。

ヤル気になっている奴がいるんだ。俺は絶対に笹川を守る。和輝は、穏やかな顔で寝ている加奈を見ながら思った。

和輝はふと、大島薫(女子九番)のことを思い出した。出席番号が同じだったから、よくテストの内容やわからないことを訊くことがあった。あまり女子と話さない和輝が、加奈の次の次くらいに話していた女子だった。

だが、田辺卓郎(男子八番)を撃った時、そして、和輝に銃を向けた時の薫の表情を、和輝は忘れることが出来なかった。何の感情もこもっていない目だった。今までの薫からは、想像もつかなかった。
とにかく大島には要注意。なるべく会わずに済めばいいけど―――


そんなことを考えていると、加奈が目を覚ました。加奈は寝ぼけ眼で、あれ、ここどこ?という顔をした。
そして、目を細めたまま数秒考えた後、思い出したらしく、あー、と言った。そして、殺し合いの途中だということも思い出したらしく、顔を強ばらせた。
和輝はつい笑ってしまった。

加奈は恥ずかしそうに言った。「寝ちゃった、ごめんね」
「ううん、いいよ。ここの辺りは誰も来ないらしい。穴場なのかな」和輝も答えた。


和輝達がいるエリアは、J=4だった。このまま禁止エリアが来なかったら、ずっとここにいてもいいな。和輝はそう思った。
バトルロワイアルにおいて生き残るコツは、なるべく人に会わないということだろう。そのためには、同じ場所でジッとしているのが望ましかった。

78リズコ:2004/03/15(月) 18:12 ID:1Nf1VncU
「このまま、ずっとここにいられればいいのにねー」
加奈も同じことを考えているらしかった。

こんな形でさえ、加奈と一緒にいられるのは和輝には嬉しいことだったが、果たして加奈はどうなのか、疑問に思った。


何せ、中学の一、三年、そして高校で二年間一緒であるにも関わらず、加奈の考えは、和輝には読めることがなかった。
しかし、加奈の好きな人が北川哲弥であることは、ゲーム開始時の加奈の反応を見て、わかってしまっていた。

そして、北川の反応にも、和輝はある種の違和感を覚えていた。根拠はないのだが、ただの先輩と後輩の間柄ではない。そう感じていた。



和輝はふと訊いてみたくなった。「笹川ってさ、今、好きな奴いるの?」
加奈は驚いたような表情をした。「どうしたの?突然」
「いや、何か気になってさ」和輝はそう言って、気まずそうに頭を掻いた。
やっぱ、まずかったかな。

加奈は一瞬、何かを考えるような表情をした。
「うーん。今は・・・和輝かな!」


「・・・冗談ならやめてくれ」
「あはは、ごめーん」
冗談かよ。和輝は少しがっかりした。


加奈は話し始めた。「よくわかんないんだ。好きっていう感情がわかんなくなっちゃった。だから、この人いいかなーって思っても、それが恋なのかわかんないの」
それから少し間を置いて、小さな声で言った。「北川先輩以来、そうなっちゃったのかも」

和輝は唾を飲み込んだ。北川と、何かあったの?そう訊こうとした。


今度は加奈が訊いてきた。「和輝は、彼女とかいないの?」
「えっ、い、いないよ」どもってしまった。
加奈はフッと笑った。
「そっか。中学の時とか、結構モテてたのに、誰とも付き合わなかったもんね」

驚いた。何?俺ってモテてたのか?知らなかった。
「そういうとこが、また人気だったらしいよ」
「そうなんだ。言ってくれればいいのに」
まあ告白されたことならあるけど、せいぜい二、三回だ。それでモテてるなんて、気づかないさ、普通に。

「密かに人気あったんだよ。でも近寄りづらいって言ってた。加奈がいるから仕方ないかーとか言われちゃったりして」
「何それ?」和輝は興味津々になって、訊いた。

「なーんかね、付き合ってるって誤解してる人がいてね。羨ましがられてた。気分よかったから否定しなかったけどねー」

・・・しろよ。お前は北川が好きなんだろ。期待させるようなこと言うな。和輝は、加奈の気持ちが、余計にわからなくなった。

「あっ、何か怒ってる?顔怖いよ」加奈は少し怯えた表情になって、言った。「もしかして、私なんかと噂立てられてフザケンナって感じ?」
「・・・別に。ってか、北川先輩とも噂立ってたじゃん」

加奈の表情が、曇ったような気がした。

「あれは誤解だよ。困っちゃうよねー。嫌がらせとかされちゃったし」

「・・・へー」そういえば、中一の時、加奈は、休み時間いつもいなくて、帰ってくると泣き腫らした目をしていたことがあった。女子って怖いな。和輝は思った。

「でもね、北川先輩のことは好きだった。もうとっくに諦めたけどね」そう言った加奈の顔は、なぜか晴れ晴れとしていた。「今は彼氏募集中!どっかにいい男いないかなー」

「俺がいるじゃん」そう言って、和輝はためらいがちに、加奈を見た。
加奈の笑顔が、真顔になった。


それからすぐに、笑顔に戻った。「そうだね!私が、男に飢えてて飢えててしょうがない時は、和輝に頼むから!」

「・・・そうそう!俺も飢えてるしね!」乾いた笑いが響いた。


 クソッ。鈍すぎる、こいつ。肩透かしを食らわされたような気持ちで、和輝は空を見た。直球で言わなきゃ、伝わらないかもな。
夜の散歩がこのクソゲームで潰された以上、ここで自分も加奈に思いを打ち明けてしまおうか、という気持ちが芽生えていた。何と言っても、いつ死ぬかわからないゲームの中だ。迷っている暇はない。と思いつつ、躊躇していた。

79伊織:2004/03/15(月) 19:21 ID:Zun6OF1A
和輝君と加奈ちゃんの関係が良い意味でもどかしくて素敵ですね。先が気になります。
キャラのプロフ情報も個人的に見てみたいです。

80紅桜 </b><font color=#FF0000>(GVAYuYFg)</font><b>:2004/03/15(月) 19:27 ID:LQFv/4jI
なんか和輝君たちの絡みに青春を感じましたw
とっても面白いです、次回も頑張って下さい。

あ・・・それと、伊織さんと同じくキャラプロフ見たいです。

81GGGGD:2004/03/15(月) 20:20 ID:e49G4Aw2
俺もキャラプロフ見たいレフ。。。。。

82リズコ:2004/03/15(月) 21:24 ID:1Nf1VncU
既に、夜は明けていた。和輝は時計を見た。時刻は六時二分前だった。

思った。もうすぐ、一回目の放送があるな。一体どれだけの人が死んだんだろう。自分達がここで呑気に話している間にも、人が死にかけているのかもしれなかった。
大迫治巳(男子二番)のことも、思い出した。はあ。治巳は元気かな。あいつにも会いたい、かも。


「皆さん、おはよー!」


和輝はかなり驚いた。いささか場違いな、アニメ声の、可愛い子ぶった女の声が、大音量で聞こえた。
うるせーな。マイク調整くらいしろよ。

「皆元気に殺し合ってますかー?睡眠も大事だけどね、一日一殺、これを目標に、頑張ってねー!」
ふざけんなよ。和輝は猛烈に腹が立った。こういう喋りの女は嫌いなんだよ。

「じゃあ死んだ人を発表しまーす」
和輝はまだイライラしていたが、その次の言葉に、唖然とした。

「男子八番田辺卓郎くん、十三番那須野聖人くん、十八番峰村陽光くん、女子一番天野夕海さん、六番植草葉月さん、十番小笠原あかりさん、二十番望月さくらさんでーっす!」


「・・・あかり」加奈が呟いた。加奈の親友の、小笠原あかりの名前があった。
加奈は茫然とした状態で、その後の放送は、何も聞こえていないようだった。

和輝は黙って見ていた。何を言っていいのか、わからなかった。安っぽい、気休めにもならない言葉しか思いつかなかった。


そして、既に七人のクラスメイトが死んでしまったことに、絶望と、一種の恐怖心が生まれていた。死んだクラスメイト達の顔が、浮かんでは消えていった。


「もっと殺し合わなきゃ駄目だぞー?頑張ってねー」
やはりノーテンキな女の口調に腹が立ったが、そんなことを気にしている場合ではなかった。和輝は死んだ生徒に、冥福を祈った。

「それでは、禁止エリアの発表でーす。メモしてね?」
和輝は地図と取り出し、メモの準備をした。

「七時からB=9・・・」
B=9は、殆どエリア外に入っていた。そして、和輝達がいる場所からは、離れていた。よし、ここは平気だ。


「次ぃ、九時にJ=4ね」

―――マジかよ。やはり物事は、そううまくはいかないのか。


「最後、今から五時間後の十一時はF=2。メモりましたかー?じゃあ今日も一日、生きてるといいわね。バイビー」腹立たしい言葉を残し、放送は切れた。


和輝は加奈を見た。地面に顔を埋めて泣いていた。普段からのボキャブラリーの不足が、こういう時に仇となった。
何を言うべきか迷っていたが、和輝はとりあえず、加奈に近づいた。

「・・・大丈夫か?」
加奈の肩に手をかけた。あかりの名を口にしようとして、やめた。軽々しく口にするべきではないと思ったのだ。


六時間ほど前、和輝に「逃げようよ」と言った、あかりの顔が思い浮かんだ。あの時、もしあかりがこなかったら、和輝は大島薫に射殺されていたのかもしれない。


加奈は少しの間泣いていたが、ふと起き上がった。

涙を拭って、和輝に笑顔を向けた。「ごめんね、もう大丈夫。早く移動しよ」

―――強いな。和輝はそう思った。自分が今まで思っていたよりも、ずっと、加奈はたくましいのだと感じた。和輝は気を引き締めた。俺も、しっかり笹川を守らなきゃ。

二人は移動した。
あかりの死を聞かされてから数分後、加奈はいつもの通りにふるまっていた。

もう二度と泣かせたくない。和輝はこの法律と、そして政府に、深い憎しみと不信感を募らせながら、細い道すじを歩いていた。
【残り36人】

83リズコ:2004/03/15(月) 21:26 ID:1Nf1VncU
わかりました。できれば今日か明日中に載せたいと思います。
これからもよろしくお願いします(^ー^)b

84リズコ:2004/03/16(火) 20:17 ID:1Nf1VncU
キャラクター情報

男子
 
1番 荒瀬達也
[身長]173cm
[外見]とりあえず普通の男子らしい。髪は何となく黒いイメージ。
[性格]柔和。温和。あまり怒ることはない。
[家族構成]四人家族。兄がいる。
[支給武器]グロック19
[その他の情報]結構勇気はあるかも。

2番 大迫治巳
[身長]178cm
[外見]爽やか系スポーツマン風味。歯は白いに違いない(何
[性格]明るくてお調子者。終始アホっぽいが、実際はアホではない。
[家族構成]父、母、兄、妹がいた。
[支給武器]?
[その他の情報]和輝の親友。

3番 国見悠
[身長]182cm
[外見]巨体。大漢(←と意味は同じ)
[性格]せっかち。小心者。
[家族構成]三人家族。一人っ子。
[支給武器]ハリセン
[その他の情報]クラスに親しい友人はいない。

4番 塩沢智樹(しおざわ・ともき)
[身長]179cm
[外見]茶髪のオールバック。手の甲には蝶の刺青がある。派手好きっぽい。
[性格]短気。鬼畜?でも小心者かも。
[家族構成]?
[支給武器]斧
[その他の情報]中西達のグループにいる。

5番 柴崎憐一(しばさき・れんいち)
[身長]176cm
[外見]タレ目にオレンジ色の茶髪。まあ格好いいだろう。
[性格]女好き。実は冷たいらしい。
[家族構成]四人家族。姉がいる。
[支給武器]?
[その他の情報]鳴と・・・

6番 島崎隆二
[身長]181cm
[外見]がっしりとした体。
[性格]熱血。いい人。
[家族構成]六人家族。弟と妹がいる。
[支給武器]ケーキナイフ
[その他の情報]ラグビー部所属。

7番 田阪健臣
[身長]178cm
[外見]モデルのように整った顔立ち。やや冷たそうに見える。
[性格]無関心。クール。実は優しい。
[家族構成]三人家族。一人っ子。
[支給武器]S&W M19・357マグナム
[その他の情報]和輝達の友人。

8番 田辺卓郎
[身長]174cm
[外見]茶髪。やや童顔で丸顔。
[性格]優しい。能天気。明るい。素直。
[家族構成]父、母、妹がいる。
[支給武器]?
[その他の情報]諒の親友らしい。最期に呼んだ「早苗」とは、妹のこと。

9番 千嶋和輝
[身長]175cm
[外見]ぽやーっとしている。癒し系なイメージ。
[性格]根暗かも・・・ あと一途。
[家族構成]三人家族。一人っ子。
[支給武器]S&W M59オート
[その他の情報]主人公です。

10番 中西諒
[身長]180cm
[外見]赤黒い髪を立てていて、右サイドには銀色のメッシュが入っている。
[性格]?
[家族構成]父親がいた。その他は不明。
[支給武器]?
[その他の情報]父親を憎んでいるらしい。

85リズコ:2004/03/16(火) 20:19 ID:1Nf1VncU
11番 仲田亘佑
[身長]185cm
[外見]鋭い目。強面。
[性格]意外に熱い。仲間意識が強い。獰猛。
[家族構成]三人家族。一人っ子。父親はやくざ。
[支給武器]ゴルフバッド
[その他の情報]諒の友人だが、その胸中は複雑らしい。

12番 永良博巳
[身長]164cm
[外見]茶髪。どちらかと言うと可愛い系。薄幸の美少年?
[性格]明るい。無邪気。
[家族構成]四人家族。妹が二人。
[支給武器]催涙スプレー
[その他の情報]バスケ部のエースで、上級生にも下級生にもモテモテ。

13番 那須野聖人
[身長]168cm
[外見]?
[性格]明るい。お調子者。面白い。ちょっと無神経。
[家族構成]五人家族。末っ子。
[支給武器]軍用ナイフ
[その他の情報]主役になりたかったらしい。

14番 新島敏紀
[身長]176cm
[外見]黒髪。ニホンオオカミに似ているらしい。
[性格]冷静沈着。クール。気まぐれ。
[家族構成]五人家族。兄と姉がいる。
[支給武器]果物ナイフ
[その他の情報]バスケ部エース。足が速い。昔ある女と付き合っていた。

15番 初島勇人
[身長]178cm
[外見]お人よし顔。
[性格]優しい。お人よし。優柔不断?
[家族構成]四人家族。兄がいる。
[支給武器]SIG P226
[その他の情報]バスケ部に所属しているもののあまりうまいわけではない。

16番 姫城海貴
[身長]175cm
[外見]美形っぽい。イメージ的にハーフ顔。
[性格]やや子供っぽい。純粋らしい。
[家族構成]三人家族。一人っ子。
[支給武器]?
[その他の情報]伊藤愛希の彼氏。

17番 飛山隆利
[身長]177cm
[外見]普通かな。
[性格]能天気。明るい。
[家族構成]三人家族。一人っ子。
[支給武器]日本刀
[その他の情報]麻耶の幼なじみ。昔から剣道をやっていた。

18番 峰村陽光
[身長]156cm
[外見]平成教育委員会のキャラみたいな。
[性格]プライドが高い。意地と誇りを持っている。結構残酷。
[家族構成]四人家族。兄がいる。
[支給武器]ボウガン
[その他の情報]ヲタクではないらしい。

19番 御柳寿
[身長]176cm
[外見]割と端整。髪の色は濃い茶色。
[性格]無邪気。一途。
[家族構成]七人家族。姉が二人いて、下に弟と妹がいる。
[支給武器]ブーメラン
[その他の情報]鈴木菜々の彼氏。

20番 梁島裕之
[身長]177cm
[外見]老けているらしい。不健康そうらしい。
[性格]?
[家族構成]?
[支給武器]UZISMG9mm
[その他の情報]新潟から引っ越してきた。

21番 代々木信介
[身長]165cm
[外見]小柄。色白。眼鏡をかけている。
[性格]真面目。小心者?
[家族構成]四人兄弟。兄がいる。
[支給武器]レミントンM31
[その他の情報]学年で一番成績が優秀。

86リズコ:2004/03/16(火) 20:30 ID:1Nf1VncU
女子

1番 天野夕海
[身長]155cm
[外見]ギャル系だけど女の子らしい感じ。目がでかい。
[性格]バカ。でも一途。
[家族構成]五人家族。妹二人。
[支給武器]スタンガン
[その他の情報]高校に入る前は普通の子だった。

2番 新井美保
[身長]160cm
[外見]フィギア並のプロポーション。やや童顔。
[性格]一見おっとりしていて優しい。
[家族構成]三人家族。母は他界。兄がいる。
[支給武器]?
[その他の情報]昔・・・

3番 有山鳴
[身長]161cm
[外見]美人系。赤茶のストレートヘアー。
[性格]芯が強くて頑固。一途。外見に反して古風。
[家族構成]五人家族。姉と妹がいる。
[支給武器]ワルサーPPK9mm
[その他の情報]憐一が好き。

4番 伊藤愛希
[身長]158cm
[外見]目が大きくて髪は栗色のパーマヘアー。フランス人形のようらしい。
[性格]非常に冷めていて、常に不特定多数の男をはべらかしている。自意識過剰。
[家族構成]三人家族。一人っ子。
[支給武器]両刀ナイフ
[その他の情報]いい子ちゃんを装っている。

5番 井上聖子
[身長]152cm
[外見]黒髪、肩までのショートヘアー。童顔。可愛らしい顔。
[性格]?
[家族構成]?
[支給武器]コルトバイソン M357マグナム
[その他の情報]?

6番 植草葉月
[身長]156cm
[外見]ややつり目だが童顔。
[性格]少々わがまま。強気。
[家族構成]四人家族。弟がいる。
[支給武器]イングラムM10SMG
[その他の情報]家が金持ち。

7番 内博美
[身長]166cm
[外見]貴族的で端整な顔立ち。灰色がかった茶髪。クォーター。
[性格]少々思い込みが激しい。
[家族構成]父とは離縁。母は他界。
[支給武器]?
[その他の情報]クリスチャン。

8番 梅原ゆき
[身長]155cm
[外見]黒髪でややくせっ毛。
[性格]一途。少々妄信的。
[家族構成]三人家族。一人っ子。
[支給武器]金槌
[その他の情報]二年からこのクラスに転校してきた。

9番 大島薫
[身長]164cm
[外見]痩せ型。ポニーテール。
[性格]真面目。努力家。繊細。
[家族構成]五人家族。兄と姉がいる。
[支給武器]ジグ・ザウエルP230
[その他の情報]成績優秀。

10番 小笠原あかり
[身長]157cm
[外見]アイドルの花川愛(架空)に似ているらしい。
[性格]素直。騙されやすい。
[家族構成]三人家族。一人っ子。
[支給武器]ベレッタM92F
[その他の情報]加奈の親友。

11番 香山智
[身長]153cm
[外見]おとなしげな顔立ち。小柄。
[性格]大人しい。ネガティブ。
[家族構成]両親は離婚。今は父親と二人で住んでいる。
[支給武器]ヌンチャク
[その他の情報]田阪に片思い中。アニメと漫画が好き。

87紅桜 </b><font color=#FF0000>(GVAYuYFg)</font><b>:2004/03/16(火) 20:30 ID:4cUhqaxk
おおう!
プロフィールですね!女子も楽しみですw

88リズコ:2004/03/16(火) 20:33 ID:1Nf1VncU
12番 黒川 明日香
[身長]170cm
[外見]ロングヘアー。手足が長い。
[性格]やや人見知り。プライドが高い。
[家族構成]四人家族。弟がいる。
[支給武器]フォーク&シーナイフセット
[その他の情報]何をやらせても、なかなか出来る。

13番 紺野朋香
[身長]162cm
[外見]まあ普通に可愛い子。
[性格]恨みが深い。友情を大事にする。全てに関して一途。
[家族構成]三人家族。だが、今は祖母の家に住んでいる。
[支給武器]S&Wチーフスペシャル
[その他の情報]愛希に弱みを握られているらしい。

14番 笹川加奈
[身長]154cm
[外見]セミロング。やや童顔。可愛らしいと思う。
[性格]無邪気。お茶目。明るい。
[家族構成]三人家族。一人っ子。
[支給武器]?
[その他の情報]ヒロイン。

15番 三条楓
[身長]155cm
[外見]?
[性格]お調子者。誰とでもすぐ打ち解けられる。
[家族構成]五人家族。姉と妹がいる。
[支給武器]サバイバルナイフ
[その他の情報]加奈達の友人。

16番 鈴木 菜々
[身長]159cm
[外見]肩まで切り揃えられた茶髪。きりっとした目。
[性格]意志が強い。素直。優しい。
[家族構成]三人家族。一人っ子。
[支給武器]?
[その他の情報]濱村あゆみ、冬峯雪燈と仲がよかった。

17番 高城麻耶
[身長]157cm
[外見]日本人形のような和風美人。
[性格]プライドが高い。気が強い。あまのじゃく。
[家族構成]両親とは幼いころに死別。
[支給武器]文化包丁
[その他の情報]自称不思議な力を持つ少女。

18番 高田望
[身長]165cm
[外見]?
[性格]?
[家族構成]?
[支給武器]?
[その他の情報]?

19番 濱村あゆみ
[身長]156cm
[外見]小柄で愛らしい。髪はパーマがかかっている。
[性格]利己主義。快楽主義。
[家族構成]四人家族。父は死去。兄と姉がいる。
[支給武器]?
[その他の情報]売春をしている。

20番 望月さくら
[身長]162cm
[外見]大人っぽい。ギャル系。
[性格]面倒くさがり。やや自己中。姉御肌。
[家族構成]五人家族。妹と弟がいる。
[支給武器]アイスピック
[その他の情報]飽きっぽく彼氏が出来ても続かない。

21番 冬峯雪燈
[身長]160cm
[外見]キュッと上がった猫目にオパール色の瞳。小悪魔系で愛くるしい顔立ち。
[性格]傷つきやすい。寂しがりや。
[家族構成]父は幼いころに蒸発。母と妹がいる。
[支給武器]ブローニングハイパワー9mm
[その他の情報]傷だらけ。諒と・・・

22番 吉野美鳥
[身長]162cm
[外見]縁なしの眼鏡をかけている。
[性格]?
[家族構成]二人家族。
[支給武器]?
[その他の情報]元々私が作っておいたバトロワ小説にはいなかったキャラ。

89リズコ:2004/03/16(火) 20:34 ID:1Nf1VncU
おまけ

北川哲弥
[年齢]19歳
[身長]178cm
[外見]ミスターパーフェクト。
[性格]?
[仕事]プログラム担当官。
[その他の情報]和輝、加奈、治巳の中学の先輩。

橘夕実
[年齢]21歳
[身長]162cm
[外見]不二子ちゃん。
[性格]?
[仕事]プログラム担当官。
[その他の情報]放送のアニメ声の女はこの人です。

横山豪
[年齢]27歳
[身長]171cm
[外見]青ひげ面。丸顔。
[性格]短気。実は真面目。
[仕事]専守防衛軍兵士。今回のプログラムの中では兵士の長。
[その他の情報]「よこやま・ごう」と読む。

森直行
[年齢]38歳
[身長]170cm
[外見]悩める中年。
[性格]弱気。割合生徒思い。
[仕事]二年A組の担任。英語教師。
[その他の情報]奥さんと離婚したため、一人娘になかなか会えない。

90リズコ:2004/03/16(火) 23:55 ID:1Nf1VncU
日は昇って、既に暖かい空気が辺りを包んでいた。時刻は六時四十三分。梅原ゆき(女子八番)は、今日は暑くなりそうだなと思った。

何と言ったって、もうすぐ七月の半ばなのだ。風も、陽も、初夏の訪れを予感していた。
あーあ、これから少し、つまらない学校の授業を我慢すれば、夏休みだったのに。ゆきの心がチリっと痛んだ。

ゆきは夏休みをとても楽しみにしていた。友達と海に行ったり、家族と旅行したり・・・したかったな。

何でこんな学校の行事の中で、しかも、プログラムでクラスメイトと心中しなきゃいけないのよ。ゆきは、言い様のない怒りを感じていた。


ゆきは学校が好きではなかった。あまり気の合う女子がいなかったのだ。人見知りする性格もあって、友達というものがいなかったと言っても、過言ではなかった。

二年でA組の英文科に入ったのだが、普通科と違って一クラスしかなく、その代わりに人数が多い。それに、大人っぽい女子が多くて気後れしていた。

既に仲良しグループは出来ていた。自分だけ除け者にされているような気がしていた。最初は話しかけてくれる女子も多かったが、うまく話せなかった。
結局、ゆきは休み時間などは一人でいることが多くなった。


・・・でも、ここで死ぬんだったら、そんなことどうでもいいか。ゆきの中には、諦めの気持ちがあった。
でも、自殺する気はないし、やれるところまでやってみるか。ゆきは思った。

とりあえず、ここは陽があたって眩しいから移動しよう。そばかすが増えるのは困るし。

I=3を抜けて、I=4に入ろうとしていた。

91リズコ:2004/03/18(木) 10:14 ID:1Nf1VncU
あんまり役に立たないプロフですいませんw>紅桜さん



※褒め言葉でなくてもいいし、一言でもかまわないので感想をいただけたら嬉しいです。
それが励みになるので・・・


豚キムチ丼食いたいage(・∀・)

92:2004/03/18(木) 20:04 ID:sJ4mhmAY
豚キムチ丼喰った!
牛飯はそれほどうまくなかった気がする!

93GGGGD:2004/03/18(木) 20:11 ID:e49G4Aw2
あげー。
プロフわかりやすかったれふ。

94リズコ:2004/03/18(木) 21:32 ID:1Nf1VncU
I=4は草むらで、ゆきの目線の先には森が見えた。あそこの辺りは、九時から禁止エリアになるはずだ。行かないようにしようっと。

ゆきはそう思いながら、武器をきちんと握りしめているかどうか確認した。
ゆきの支給武器は金槌だった。贅沢を言えば銃がよかったのだが、まあ仕方あるまい。


汗でべとついてきた金槌をもう一度しっかり握り直しながら、ゆきは更に東に向かっていた。
動かない方が安全だということはわかっていたが、ゆきには、動かなくてはならない理由があった。どうしても、会いたい人がいたのだ。


男子九番、千嶋和輝。背はやや高めで、あまり口数が多くなく、ギャーギャー騒ぐタイプではなかったが、どこか他の人とは違う雰囲気があり、たまに見せる笑顔がかっこよかった。
それに―――


あれは、もう一年も前のことになるだろうか。高校に入って初めての定期試験も終わり、夏休み前で浮かれていた時のことだった。

ゆきは私立の高校に通っていた。
その日は、学校の近くから出ているバスの停留所で、次のバスを待っていた。友人達と長時間井戸端会議をしていたせいで、すっかり遅くなってしまっていた。
停留所には、ゆきと、違う高校の制服をきた男子がいただけだった。

ゆきは思った。ここのバス停って殆どうちの高校の生徒しか乗らないのに。
誰だろう?ゆきはその男子をチラッと見た。結構、格好よかった。目があったので、ゆきは少しドキドキした。

その男子は、思い切ったように近づいてきた。

・・・えっ?何?ゆきは焦った。

男子は言った。「あの・・・ここから○○駅に行くには、どうやって行けばいいんですか?」

○○駅!?全然違う地区じゃん。

ゆきは言った。「・・・一時間くらいかかりますよ」
「えっ、そんなに・・・」男子高生は落ち込んでいた。


「で、そうしたらコモディタケダがあるから、そこを左に曲がって・・・」
「・・・すいません。もう一回最初からお願いします」

埒があかない。ゆきは言った。「案内しますよ。ここから一番近い駅まで二十分くらいだから、そこから乗り換えて三十分くらいかな」
「すいません!ありがとうございます」男子高生は丁寧に頭を下げた。何となく育ちがよさそうだ。ゆきはそう思った。

名前は聞かなかったが、その男子高生は友達に置いてけぼりにされて、道に迷っているうちにここにきてしまったと言っていた。

他に何を話したかは、覚えていなかったが、とりあえず最寄の駅まで送って、ゆきは男子校生と別れた。

名前と学校くらい訊いておけばよかった。ゆきは少し、いや、かなり後悔していた。



一年の三学期、ゆきの父の会社が倒産してしまったので、ゆきはこれ以上私立の高校に通うことが出来なくなってしまった。
そうして編入したのが、県立第三高校だった。女子の制服が可愛かったことと、英文科があるということで、ゆきはそこに決めた。

そこで、ゆきはいつかのバスの男子高校生に、もう一度会うことになった。



千嶋和輝は、ゆきの顔を見た時、特に表情を変えなかった。もしかして、忘れられてるのかな。少し寂しかったが、まあ仕方ないかと納得した。

だが、ゆきが紹介されて席についた後、休み時間に和輝がゆきに話しかけてきた。

「梅原さんって言うんだ。あの時は、どーも」少し恥ずかしそうに言った。
それから、小声で言った。「あの時のことは、誰にも言わないで」
「えっ、何で?」
「またからかわれるから。あいつだよ。俺を置いてった奴」小さく指を差した。
ゆきは笑った。

色素の抜けた茶髪で、明るい感じの男子。それは、大迫治巳(男子二番)だった。


運命かもしれない。そんなことを、つい考えてしまっていた。ずっと、もう一度会いたいと思っていたのだ。嬉しかった。そして、すぐに、その感情は恋に変わった。

95リズコ:2004/03/18(木) 21:35 ID:1Nf1VncU
ありがとうございますw>GGGGDさん

肉が薄くてがっかり・・・(ぇ>瞳さん

96リズコ:2004/03/18(木) 21:38 ID:1Nf1VncU
ゆきが行きたくもない学校に毎日休まずに通っていたのは、和輝の顔を見るためだったと言っても、過言ではなかった。
夏休みは楽しみではあったが、和輝に会えないのは、少し辛かった。まあ、その夏休みはもう、永遠にこないのかもしれないが。

 千嶋君に会いたい―――。ゆきの目からは、涙がこぼれ落ちていた。今、どこにいるんだろう。何で、勇気を出して待たなかったんだろう。
実を言うと、ゆきはスタートの時に和輝を待っていた。だが、田辺卓郎(男子八番)が、後からきて、門の前を陣取り始めたので(全く迷惑なヤツだ)、早々に通りすぎてしまったのだ(大島薫と卓郎が争い始めたのは、それからほんの三十秒後のことだった)。
あれから、やっぱり待っておくべきだったと後悔した。

千嶋君は、生きてるかな。ゆきはそう考えて、すぐに首を振った。生きてるに決まってる。でも、もし、たった今、誰かに襲われてたら。
ぞっとした。そんなの嫌だ。死なないでね。お願いだから。ゆきは祈っていた。



物音がして、ゆきは驚いて顔を上げた。

向こうから、人が走ってくるのが見えた。顔はよく見えなかったが、男子だ。背の高さも同じくらいだった。
もしかして―――ゆきの胸を期待がよぎった。


その期待は、一瞬にして裏切られた。走ってきたのは、新島敏紀(男子十四番)だった。
何だ、違った。ゆきは和輝以外の生徒を信用する気がなかったので、身を翻し、逃げようとした。
が、もう一度敏紀の方を振り向いた。一瞬、敏紀が銃をこちらに向けるのが見えた。


何よ、私何もしてないじゃない。ゆきはそう思ったが、敏紀はためらいもなく、引き金を引いた。


ぱん。

「きゃあ」


ゆきは叫んだ。近くの草むらに、ボコッと穴が空いた。


何こいつ、怖い。ゆきは夢中で逃げだしていた。

敏紀はゆきを追わずに、もう一度引き金を引いた。


今度は当たったらしかった。逃げているゆきの肩を、強い痛みが襲った。


嫌、死にたくない、死にたくない!ゆきの頭は恐怖でいっぱいになった。



逃げるゆきを、敏紀は遠目で見ていた。思った。ふうん。撃ったことなかったけど、案外当たるもんなんだな。衝撃が凄いけど、すぐ慣れるだろ。そう思いつつ、銃をしまった。

次は、殺してやる。敏紀にとって、これはゲームの延長線上だった。

こういう男が、実は一番やっかいなのかもしれなかった。【残り36人】

97GGGGD:2004/03/20(土) 10:47 ID:e49G4Aw2
age-

98リズコ:2004/03/20(土) 13:25 ID:1Nf1VncU
永良博巳(男子十二番)は、梁島裕之(男子二十番)の話をじっと聞いていた。梁島は意外によく喋る男だった。
このゲームについて、それから、自分が今までどうしていたのか。その他、とりとめのない話をしていた。梁島の話は実に合理的で、うまくまとまっていて、適度な速さと音階で聞きやすかった。

梁島は言った。「あんた、名前は何て言うの?」
博巳はガクッときた。殆ど話したことはないけど、それでも一応、一年と四ヶ月半、共に椅子を並べてきた仲じゃないか。まあ、いいけどさ。

博巳は言った。「永良。永良博巳」
梁島はふーん、と言うと、独り言のように、いい名前だな、と言った。
そんなことを言われたのは初めてだった。新鮮で、少しくすぐったかった。

「ところで、永良はこんなところで何してたの?」梁島が訊いた。
「えーっとね、・・・寝てた」
「へー。凄い神経だな。尊敬するよ」
「・・・馬鹿にしてんのか?」
博巳の問いに、梁島はやんわりと首を振った。「このゲームじゃそっちの方がいいよ。あんた大物になるぜ」
「いやー、あはは」博巳は頭を掻いた。

梁島は突然、立ち上がって言った。「でも、ここの場所は涼しいけど、ちょっと人目につきやすいかもな」その後、独り言のように呟いた。「移動すっか」


ズボンの尻についていた埃をはらった。そのままデイバックを肩にかけて、歩き出そうとした。
博巳はぎょっとした。置いてけぼりかよ。放置プレイかよ。何か言ってけよ。


梁島が振り向いた。「永良は、この後どうすんの?」

「えっ・・・どうもしないよ。もし人がきても、こんな武器じゃ殺されちゃうかもしれないし」催涙スプレーを見せた。
梁島はふーんと頷いた。
博巳は少し、ついていきたいという意思表示をしていた。いや、ついていきたいと思っていた。


梁島はあの独特の笑みを見せた。「くる?行き先は、結構遠いけど」
「行く!」博巳は即答した。梁島は笑った。「じゃあ行くか。足引っ張るなよ」
「わかってるって!」
やったー。仲間が出来た。博巳は安堵していた。

99リズコ:2004/03/20(土) 13:28 ID:1Nf1VncU
梁島が行きたいと言ったのは、エリアC=7だった。すぐ近くに休憩所があるから、そこの近くで過ごそう。梁島はそう言った。なぜ休憩所で休まないのかは疑問だったが、博巳は大して問題にもしなかった。



少しの間、二人は慎重に歩き続けた。



梁島の眉がぴくりと動いた。「誰かきた」
へ?博巳は辺りを見回した。「隠れろ」梁島は言った。

すぐに博巳を木陰に引っ張って行き、ドンと押した。博巳は転んだ。
いってーな。何すんだよ。博巳は恨みがましい目で梁島を見た。
梁島は隣で息を潜めていた。

耳をすました。かすかに、誰かの歩いてくる音がした。梁島は銃を装備した。梁島はチラッと博巳を見た。

通り過ぎるまで大人しくしていろという意味合いのものだったが、博巳には伝わらなかったようだ。

「殺すの?」博巳は言った。
「馬鹿!声出すな」梁島は声を抑えて言ったが、すぐにやばいという顔をした。

二人は藪から外を覗いた。


そいつが、近づいてきた。足元しか見えない。ゆっくりと、しかし、迷っているかのように少し戻り、また踵を返してこっちにきた。

やがて、怯えたような声が聞こえた。「誰かいるのか?おれは争う気なんかない。仲間を探してるんだ。もしそっちも争う気がないなら・・・出てきてくれ」

博巳はその声に聞き覚えがあった。少し声音は変わっていたが、普段一緒にいる仲間だと気づいた。

「勇人!」博巳は藪から顔を出した。隣で梁島が、あーあ、という顔をしていた。



初島勇人(男子十五番)は、一瞬心から驚いたようだったが、博巳を見ると歓喜の声を出した。「・・・博巳。よかった。仲田とかだったらどうしようかと・・・」
勇人は力が抜けたように、そのまま座り込んだ。


少し間を置いて、梁島が出てきた。
「永良、いきなり飛び出すなよ。もし撃たれでもしたらどーするつもりだったんだ?」
それから、博巳のすぐ近くにいる男子生徒を見た。

博巳は言った。「大丈夫。おれの友達だよ。信用できるって!おれが保証する」そして、絶対に名前を知らないだろうな、と思って付け加えた。「男子十五番、初島勇人だ」

梁島は勇人をじろじろと見た。「本当に信用できるのか?ゲームに乗ってない証拠なんてないだろが」
博巳は少しむきになって言った。「そんなことないよ。なあ梁島、こいつも仲間にいれてやろうぜ。勇人、お前敵意なんかないだろ」

勇人は頷いた。「信用できないなら、おれの武器やるよ。それならわかってくれるだろ?」そう言って、武器を差し出した。
梁島は目を丸くした。
「・・・そんなことして、もしおれが実はやる気になってたらどーするんだよ」

あっ・・・。勇人は気まずそうに梁島を見た。
やがて、言った。「博巳の仲間だろ?信用するよ」

梁島はぷっとふきだした。そして笑い出した。
二人はあっけにとられて、梁島を見ていた。

梁島はくくく、と声をあげながら、勇人を笑んだ目で見た。
「あんたら、二人揃って、お人よしだね」そう言って、立ち上がった。
「仲間か・・・それも、悪くないかもな」


梁島は言った。「いいよ。信用してやるよ。人目につく前に、早く行こう」
「・・・ああ」勇人は嬉しそうに顔を上げた。

「それから・・・」梁島は地面に落ちていた銃(SIGP226)を拾って、勇人に渡した。「これはあんたが持ってな」
そして、背を向けて、行くぞ、と言った。


勇人が博巳に話しかけてきた。「梁島ってあーゆー奴なんだな。何か、意外かも」
博巳は笑った。「きっと悪い奴じゃないよ」そう、思っていた。

そうこうして、三人の男子生徒は、C=7へ向かっていった。
【残り36人】

100リズコ:2004/03/20(土) 15:09 ID:1Nf1VncU
「やだ!こないでよ!」濱村あゆみ(女子十九番)は、叫んだ。
どうしていいのかわからなかった。支給武器も、役に立たなかった。

あゆみは、どう考えても、ゴルフバッドと、その武器を持った猛獣のような男、仲田亘佑(男子十一番)には、勝てそうにもなかった。

「騒ぐなよ。このアマ」仲田は言った。
「訊くけど、あんた大島って奴どこにいるか知らない?」
あゆみは震えながら首を振った。「・・・知らない」
「ふーん」仲田はそう言って、あゆみに向かってきた。


やだ、怖い。あゆみは震えていた。


あゆみは仲田達と話すことが割とあった。あゆみと冬峯雪燈(女子二十一番)、二人はどちらかと言うと、不良の仲田達と似た空気を持っていたから、気があったのだ。


あゆみは、家にあまり帰らず遊び歩いていた。そこで知り合った男と一夜を過ごし、金や金品を奪ったりして暮らしていた。
それに、売春をしていた。高校に入ってからは、殆ど毎日のように援助をしてもらった。雪燈は体を売ることをやめたそうだが、あゆみはまだやめられなかった。
そのことをクラスメイトは知らなかったが、仲田達は、もしかして知っているのかもしれない、あゆみはそんな気がしていた。
だが、どうでもよかった。知っていたところで別に何も変わりはしない。偉そうに説教できる立場じゃないでしょ。そう思っていた。
しかし、今は、そんなことを言っている場合ではなかった。


「大人しくしてろよ」仲田はあゆみの顎を掴んだ。右手にはゴルフバッドを持っていた。

殺される!恐怖心でいっぱいになった。

「・・・お願い。助けて」震える声で、言った。
もし助かるのなら、何をしたってかまわない。あゆみは仲田の肩に手をかけた。

「・・・好きにしていいから。あたし、何でもする」


仲田は言った。「誰が・・・お前みたいな女相手にすっかよ。オレは、金のために体を売るような奴は嫌なんだよ。こう見えても潔癖症だからな」


あゆみの目が見開いた。悔しい。こんな奴に馬鹿にされるなんて。でも、それよりも、恐怖の方が勝っていた。

そして、仲田のゴルフバッドが動いた。やだ、殺されてしまう。恐怖がうじ虫のように体中を駆け巡った。


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