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バトルロワイアルぺティー

1リズコ:2004/03/06(土) 01:06 ID:1Nf1VncU
男子
 1番 荒瀬達也(あらせ・たつや)
 2番 大迫治巳(おおさこ・はるみ)
 3番 国見悠(くにみ・ゆう)
 4番 塩沢智樹(しおざわ・ともき)
 5番 柴崎憐一(しばさき・れんいち)
 6番 島崎隆二(しまざき・りゅうじ)
 7番 田阪健臣(たさか・まさおみ)
 8番 田辺卓郎(たなべ・たくろう)
 9番 千嶋和輝(ちしま・かずき)
10番 中西諒(なかにし・りょう)
11番 仲田亘佑(なかた・こうすけ)
12番 永良博巳(ながら・ひろみ)
13番 那須野聖人(なすの・せいと)
14番 新島敏紀(にいじま・としのり)
15番 初島勇人(はつしま・ゆうと)
16番 姫城海貴(ひめしろ・かいき)
17番 飛山隆利(ひやま・たかとし)
18番 峰村陽光(みねむら・ひかり)
19番 御柳寿(みやなぎ・とし)
20番 梁島裕之(やなしま・ひろゆき)
21番 代々木信介(よよぎ・のぶすけ)

女子
 1番 天野夕海(あまの・ゆみ)
 2番 新井美保(あらい・みほ)
 3番 有山鳴(ありやま・めい)
 4番 伊藤愛希(いとう・あき)
 5番 井上聖子(いのうえ・しょうこ)
 6番 植草葉月(うえくさ・はづき)
 7番 内博美(うち・ひろみ)
 8番 梅原ゆき(うめはら・ゆき)
 9番 大島薫(おおしま・かおる)
10番 小笠原あかり(おがさわら・あかり)
11番 香山智(かやま・とも)
12番 黒川 明日香(くろかわ あすか)
13番 紺野朋香(こんの・ともか)
14番 笹川加奈(ささがわ・かな)
15番 三条楓(さんじょう・かえで)
16番 鈴木 菜々(すずき なな)
17番 高城麻耶(たかぎまや)
18番 高田望(たかだ・のぞみ)
19番 濱村あゆみ(はまむら・あゆみ)
20番 望月さくら(もちづき・さくら)
21番 冬峯雪燈(ゆきみね・ゆきひ)
22番 吉野美鳥(よしの・みどり)



始めに


一九九九年、BR法一時廃止。


理由はこの実験の対象となった優勝者達が精神に異常を冒し、犯罪に走るケースが多く見られたため。
まあその前から少しずつ反対派が出始め、BR法によって家族を失った被害者の会が設けられたりして、段々BR法を推進していた政府も肩身が狭くなったのであろう。
しかし、政府にはバトルロワイアルを続けて欲しい理由があった。BRの優勝者を賭けることで、たくさんの裏金が動いていたのだ。

最近ではかなりの高額になっており、もし優勝者の大穴を当てたのなら、それこそ冬のボーナスよりよっぽど、金がもらえるということも稀ではなかった。
よって政府には主流の遊びになっていたのだが、反対派が賛成派を上回り、野党からのブーイングにもそろそろ耳が痛くなってきたので(この賭けをするのは与党のみとなっていて、野党は参加することが出来なかった)、ついに廃止ということになったのだ。


だが、政府がそんなに簡単においしい話を手放すわけがないのは明らかだろう。政府は極めて無難な方向に逃げたのだ。

つまり、とりあえずはBR法を廃止する方向に持っていく、しかし数年たったらまた再会する可能性はある―――と。
また、“まだ中学生だというのに、その多感な時期に殺しあいをさせるなんて、精神に異常をきたすのも無理はないじゃないか”という意見も多くえられたので、対象年齢を若干あげよう―――と。
「そしてその試験プログラムは近々行うかもしれない」と発表した。

やや不満意見はあったものの、とりあえずだいたいの賛成を得て、BR法は廃止となった。めでたしめでたし。これで全国の中学生も平和になったわけだ。

・・・ん?

果たして本当にそうだろうか。この話には続きがある。

408ノア </b><font color=#FF0000>(CMFYrBvc)</font><b>:2004/08/25(水) 08:30 ID:igZ3kd.k
雪燈は息をついた。

……駄目だ、外れない。


手首の皮は擦り切れていて、そこからピンク色の肉が覗いていた。痛みはあったが、そんなことはどうでもよかった。

「やだ、外れてよ!」雪燈は叫んだ。

雪燈は何度も時計を見た。あと五分を切っていた。
もう時間がない。嫌だ。死にたくない!

雪燈は手錠から無理矢理腕を引き抜こうとした。しかし、いつも手の甲で引っかかった。それでも無理矢理引っ張り続けた。
掌の骨がギシギシときしみ、音を立てた。折れるほど引っ張っても、それは外れなかった。


雪燈は絶望した。外すことをやめ、ため息をついた。


――もう駄目だ。あたしはここで死ぬんだ。

何でこんなことになったんだろう。あの時、くだらない喧嘩なんかしなきゃよかったんだ。バカみたい。
挙げ句の果てにこのザマ。もし姫城が見ていたとしたら、笑われるかもしれない。

――あいつが正しかったんだ。



雪燈は泣き出していた。絶対的な死への恐怖。今までの思い出が、全て輝かしく見えた。

あんなに嫌っていた、母の顔まで思い出した。

中学一年の運動会の日。たった一度だけ、母が自分にお弁当を作ってくれたことがあった。
普段は弁当などなかった。だからいつもは、お腹を空かせているか、友達に分けてもらうしか方法がなかった。

嬉しかった。妹のついでだろうと、ただの気まぐれだろうと嬉しかった。その時だけ、雪燈は母親の存在を認めた。

あたしは、何の親孝行も出来ずに死んでいくんだ。お弁当のお礼も言ってなかった。ごめんなさい。ありがとう。お母さん。


雪燈は泣きはらした顔で前を見た。展望台に人がいるような気がした。
誰かの声が聞こえたような気もしたけど、きっと気のせいだろう。


雪燈は疲れて下を向いた。


……一つ、方法があった。何で気がつかなかったんだろう。

雪燈は制服のスカートのポケットから、銃を出した。

少し怖くはあった。でも、生きるためだったら右手の一本くらい――

雪燈は手錠に銃口を当てた。



銃声が聞こえた。
「あら、何やってるんだろ」聖子が呟いた。

傷悴しきった海貴の耳にも、それは聞こえてきた。


聖子は望遠鏡を覗いていた。

何が起こった? 海貴は雪燈の方を見た。
遠いので詳しいことまでは見えなかった。

「自分の手の面積を小さくして、外そうと思ったらしいよ」聖子が笑った。「生きるための執念って、恐ろしいね」

恐ろしくなんかない。海貴は雪燈に拍手を送りたくなった。



手錠を破壊するつもりだったが、衝撃が強すぎて、掌も破壊された。
でも、これでいい。
雪燈は真っ赤に染まった手を、壊れかけた手錠から外した。
やった、外れた! むしろホッとした。

雪燈はそのまま走り出した。


右手は力が入らなかった。指を動かそうとすると、切り刻まれるような痛みが走る。
大きな穴が開いていた。もう自分の物ではないように思えた。
痛いけど、首を吹っ飛ばされるよりマシだ。


雪燈は走り続けた。



展望台に人がいるのが見えた。
……誰?

雪燈は急いだ。もうすぐ禁止エリアを抜ける。

「……姫城!」雪燈は驚いて、叫んだ。海貴の頭から、血が出ていた。
「どうしたの? 大丈夫だったの?」雪燈は言った。
繋がれたまま、海貴は力なく笑った。


雪燈の見えないところには、井上聖子がいた。

409ノア </b><font color=#FF0000>(CMFYrBvc)</font><b>:2004/08/25(水) 08:32 ID:igZ3kd.k

 雪燈は展望台まで必死で走った。

海貴が何かを言っていたが、雨の音と風の音にかき消されて聞こえなかった。

よかった。姫城も生きてる。


雪燈はホッとして、海貴の名前を呼んだ。

「姫城、ごめんね! あたしが間違ってた。あんたの言うこと聞いてればよかった!」聞こえているかどうかはわからなかったが、雪燈は叫んだ。

「あんた性格悪いし、自分勝手だし思いやりないし、好きじゃなかったけど――」


でも、何度も助けてくれた。

「あたし――」



聖子が銃をかまえた。
「やめろ。もういいだろ!」海貴は叫んだ。

チクショウ、外れない。

両手が塞がっているので、どうすることもできなかった。
海貴はギリッと歯ぎしりをした。

聖子は人差し指を立てて、チッチッチっと言うように、横に振った。
「だってこれは殺し合いゲームだよ? 最後の一人になるまで殺しあうのがルール」


駄目だ、やめろ。海貴は焦った。

「来るな!」
海貴は声を限りに叫んだ。喉が枯れるほど叫んだ。

――だが、その声は銃声にかき消されて、届かなかったに違いない。



ぱらぱらぱら。
久々にあの音が響いた。


雪燈に銃弾が浴びせられた。


ぱらぱらぱら――

その音と同時に、雪燈は不可思議なダンスを踊った。

美しかった顔は赤く弾け、体は蜂の巣のように穴だらけになった。



どちゃっと倒れた雪燈の体を、雨が強く打っていた。血が雨で薄まり、染みのように地面に広がっていった。



――ちょっとだけ、楽しかったよ。
雪燈は最後に、そう言おうとしていた。


左の手は、海貴の方へと差し伸べられていた。
【残り5人】

410ノア </b><font color=#FF0000>(CMFYrBvc)</font><b>:2004/08/26(木) 21:09 ID:igZ3kd.k

 F=7には、自分以外にもう一つの点があった。

千嶋和輝(男子九番)は、辺りを見回すと、そこへ行ってみよう、と思った。

何だか、体中が軋むように痛かった。足も、顔も、腕も。
でも、このくらい――和輝はそう思って、一度考えるのをやめた治巳のことを、また思い出した。

治巳に何があったのか引っかかっていた。あの発言。

もう二度と殺させないよ。オレが守ってやる。


……ん?

あいつ、親いるじゃん。優しそうなお母さんが。

和輝はそこまで思って、あることを思い出した。治巳は他の県から引っ越してきて、中学で一緒のクラスになった。
初めての授業参観。一番後ろの席だった和輝は、自分の背後にいた保護者のひそひそ話を、聞いてしまっていた。

「ねえねえ、あの大迫君っていう子、二年前に起こった一家殺人事件の被害者だったんだって」
「まー、怖い。世の中も物騒になったものね。あの子だけ生き残ったんでしょ?」
「そうそう。今は伯母さんの家に住んでるらしいわよ」
「へー。可哀相ねー……」

母親達の粘着質な声音と、不躾な噂話に、和輝は幼いながらも嫌気がさした。そして、偶然にも友人の過去を覗いてしまったという、罪悪感のようなものがあった。

忘れようと、知らぬ間に努力していたのかもしれない。そして、そこからぷつりと記憶が途絶えるように、そのことは忘れていた。今の今まで。


……そっか。
和輝は何だか気が抜けて、ため息をついた。治巳が、何を考えて大島薫(女子九番)と、代々木信介(男子二十一番)を殺したのかは、わからなかった。
でも、あいつはずっと、一人で耐えてたのかもしれない。


「チクショー。だからって人殺していいわけじゃないんだよ!」
和輝は一人、呟いた。


あいつを掴まえて、山ほどのパンチの仕返しをしてやる。待ってろよ。


――独りじゃ、死なせないから。


和輝は歩いた。F=7。森。この中に、笹川加奈(女子十四番)がいてくれたら――

和輝は足を踏みしめ、簡易レーダーに映っている点に近づいた。

411ノア </b><font color=#FF0000>(CMFYrBvc)</font><b>:2004/08/26(木) 21:12 ID:igZ3kd.k

 加奈は幾度となくドアを叩いたが、全く開きそうにもなかった。
……どうしよう。加奈は手を下ろして、ずるずると座り込んだ。

不幸中の幸いで、ここは禁止エリアから免れていた。他の生徒達が殺しあって、残り一人になるまで待つという手もあったが、それは了承できなかった。
それに、また、いつエリアが縮められるのかわからないのだ。


「誰か……助けて……」
加奈はかすれた声で、呟いた。喉を潰してしまったらしい。声がうまく出なかった。

「北川先輩……」
加奈は力いっぱい、ドアを思いきり叩いた。

「……和輝、助けてよ!」



例の車庫の前にきて、和輝は立ち止まった。物音が、聞こえる。

ドアを叩く音。和輝は近寄って、ドアの前まできた。
こつこつとノックをした。

「誰かいる?」


少々の沈黙の後、声が返ってきた。「……和輝?」

「加奈?」
和輝は驚いて、声をあげた。「加奈なのか? そこで何してんだよ」

若干低くなった、かすれた声が聞こえた。「……ドアが開かないの。開けて」


和輝はわかった、と言って、ドアノブに手をかけた。
「……んぬっ!」
力を込めたが、ドアはびくともしなかった。

……チクショウ。

「開けてやるからな!」和輝は言った。少し遅れて、加奈の頷く声が聞こえた。

和輝はもう一度力を込めた。
「んー………………」勝手に声が出てくる。
開けー。いいから開けー。とにかく開けー。

だが、左腕を骨折した状態なのと、元々そこまで力があるわけではないことで、歪んだドアを開けることはできなかった。
和輝は息をついて、深呼吸をした。

「和輝、開かないの?」加奈の声が聞こえた。
「開くよ」

開けてやる。意地でも。


「加奈、ちょっと待ってて。絶対、戻ってくるから」和輝はそう言った。
「和輝、どこ行くの?」不安そうな声が聞こえた。
「すぐ戻ってくるよ。心配すんな」

和輝はそう言って、加奈と、二人を隔てているドアを後にした。

412ノア </b><font color=#FF0000>(CMFYrBvc)</font><b>:2004/08/27(金) 21:07 ID:igZ3kd.k

 十五分後。

「加奈!」和輝が呼びかけると、加奈の声がすぐに返ってきた。
「よかった。帰ってきた……」


和輝は痛む両手にある物をかかえ、ドアを睨んだ。
「下がってて」和輝は言った。



和輝は、先ほど近くの民家で見つけた大きな消火器を、思いっきり、投げつけた。

ドアがぼこっとへこんだ。

左腕がどうにかなってしまいそうなほど痛んだ。それでも、もう一度持ち上げた。
「おらー、開けー!」

また大きな音がして、ドアがへこんだ。


何度もやっていく内に、ドアには丸い凹みができた。そこに引っ張られるように、ドアと壁の間には、細い隙間が開いた。
和輝はもう一度ドアノブを引っ張った。


恐ろしくひずんだ音がして、ドアが開いた。


和輝は息をつきながら、そこに座り込んでいた女子生徒を見た。



涙を浮かべた、その女子生徒。ずっと会いたかった女子生徒。

笹川加奈(女子十四番)は、ぼろぼろになって、和輝を見ていた。

「……久しぶり」和輝は言った。
「久しぶりだね。何年ぶりだっけ」
「一日くらい」

加奈は眉を潜めると、下を向いて、嗚咽していた。手で覆われた顔の下では、透明な液体が流れ出していた。

和輝はそっと近寄った。

「……怖かった。新井さんに襲われて、死ぬかと思った。このまま、ずっと会えないのかと思ってた……」加奈が呟いた。

和輝は加奈の小さな肩に手をかけ、震える体を抱き寄せた。
「……俺も、怖かったよ」


話したいことがたくさんあったはずなのに、もう忘れてしまっていた。ひたすら、よかったと思った。加奈がこうして生きててくれて。本当に。

――でも、俺には言わなくちゃいけないことと、やらなくちゃいけないことがある。



「聞いてくれる?」和輝は加奈の耳元で、何か囁いた。
加奈は驚いたように和輝を見た。


加奈は少々間を空けると、頷いた。



和輝は立ち上がって、加奈も腰を上げた。和輝が手を差し伸べると、加奈はその手を取ってくれた。
加奈は少しだけ笑んだ。


二人は、重い足取りで、車庫から離れた。
【残り5人】

413ノア </b><font color=#FF0000>(CMFYrBvc)</font><b>:2004/08/27(金) 21:09 ID:igZ3kd.k

「あーあ、可哀相に」井上聖子(女子五番)は言った。

姫城海貴(男子十六番)は、茫然とその光景を見ていた。
冬峯雪燈(女子二十一番)は死んだ。あまりにあっけなく。


怒りと言うより、悲しみと言うよりも、ただ虚脱感。それだけがあった。
どんなに冬峯が生きようとしていたか。
それを、何の躊躇も同情もなく、殺した。


「じゃあ、そろそろあんたの番ね」
顔を上げた。

「何かぼやっとした顔してるのね。死に損ないの老人みたい」聖子はそう言って笑った。
海貴は目をそむけた。

海貴は言った。「死ぬ前にトイレ行かせてよ。ちびりそうだから」
「あっ、そう。じゃあ早めに終わらせてあげる。大丈夫だよ、一瞬で片付くから」聖子は無邪気に笑った。
「……いや、やっぱいい」


海貴は普段の聖子を思い出していた。大人しくて、クラスの女子ともあまり話している様子はなかった。だが、こんな時に、聖子は輝いていた。

言った。「確かにこのゲームは殺し合いがルールだけど、それなら俺の頭を殴った時に一緒に殺せばよかったんだ。冬峯だってわざわざ手錠で繋がなくても、あの時殺しておけばよかっただろ」

――その方が、余計な痛みを知らなくてすんだのに。胸がつぶれそうな思いだった。

「お前、人を殺すことを心底楽しんでるんだろ。恐ろしいね」海貴は鼻で笑った。

聖子は無表情で聞いていた。

「さっさと殺せよ。冬峯にやったみたいに」海貴は言った。

だが、聖子は表情を変えないまま、言った。「駄目だよ。私今生理中でイライラしてるの。普通に殺すなんてつまんないじゃない」

――そんな。そんな理由で殺された方はたまったもんじゃない。


聖子はデイバックをいじっていた。中から軍用ナイフを取り出した。
「これで、あんたの顔の皮をかつら剥きにしてあげる!」

「――頼むから、普通に殺してくれよ!」
海貴は心底怯えた。


聖子は有無も言わせず近寄ってきた。海貴の顔に、ぴたりとナイフを当てた。
ひんやりとした感触に、海貴は恐怖を覚えた。

「男のくせに肌綺麗。ずるーい」聖子は頬を膨らました。


そのまま、強くナイフを引いた。


ぷしゅっと音がして、顔の肉が切れた。

「うわあああああ……」

「黙ってないと、舌も一緒に切っちゃうよ」聖子はそう言ってはにかんだ。

414シン:2004/08/29(日) 20:42 ID:R9tDowc6
お久しぶりです
残りも少なくなって展開もひやひやもん(?)ですね
頑張ってください!!

415ノア </b><font color=#FF0000>(CMFYrBvc)</font><b>:2004/08/30(月) 22:03 ID:igZ3kd.k

 海貴は絶えず腕を動かしていた。丈夫な縄は、確かにナイフでないと切れないものの、少しだけ緩くなり始めていた。
海貴はやっと、若干だが、体を動かせるようになった。座り位置を変えて、学ランの裾を上げた。

……やっと取れた!

海貴はそれをしっかりと持った。ニヤリと笑った。


聖子は不可思議な顔をした。
「何よ、あんたの顔、凄いことになってるっていうのに」

「俺の武器、何だか知ってる?」
「手榴弾でしょ。学ランの胸ポケットに入ってたから没収しといたよ」
「そう。でもね、もう一つ持ってるんだよね……」聖子は手を止めて、後ろを見た。


もう一つの手榴弾は、海貴の手に握られていた。

「……きゃああああああ!」


聖子は急いで部屋の中に入った。海貴の耳に、階段を降りていく音が聞こえた。



行ったみたいだな。海貴は自分の前に落ちているナイフを、足で引き寄せた。後方に蹴った。あとちょっと――
手を捻りそうなほど曲げた。

ガッ。やった! 刃をとった。

慎重に縄に刃を当てて、切る。

「くっ……」

太すぎてなかなか切れない。早くしないと、あいつが帰ってくるかもしれない。ギリギリと、何かを削るような音がした。もう少し――
――切れた。


「ちょっと、爆発しないじゃない!」
聖子が戻ってきた。手ぶらだった。


海貴の持っている物を見て、聖子は固まった。

「忘れ物だよ」海貴は言った。

イングラムを聖子に向けた。聖子の目が大きく見開かれた。



古びたタイプライターのような音が響いた。

衝撃が凄かった。小さい分、目的に狙いを定めるのが難しく、撃ちにくい。

それでも撃った。標的に向けて撃つ。


聖子は必死で逃げた。

「返してよ!」聖子は叫んだ。


海貴は短く息をついた。
手がびりびりする。頬の傷も、空気に触れる度に痛かった。

「それはあんたに使いこなせないよ。返して」
聖子は手を差し出して、前に進んだ。

「誰が返すか!」海貴は叫んだ。

また引き金を引いた。


タイプライターのような音と共に、聖子の体が吹っ飛んだ。


壁に打ち付けられて、聖子はずるずるとしりもちをついた。

「……返して」聖子は呟いた。

そうだ、こいつは防弾チョッキを着てるんだ。頭、頭を狙わないと――

416ノア </b><font color=#FF0000>(CMFYrBvc)</font><b>:2004/08/30(月) 22:04 ID:igZ3kd.k

 聖子の口元が笑いの形に歪んだ。「しょうがないなあ……」
胸ポケットからグロック19を取り出した。

「ぐっ……」海貴は撃った。

それと同時に、右手に襲撃が走った。


「うわあああああ」海貴は叫んだ。

自分の手から、イングラムと一緒に、かかっていた人差し指も消失するのが見えた。
人差し指の付け根から、血が噴き出た。


イングラムは、床にゴトンと落ちた。


聖子は続けて二発撃った。


胃に、二個の穴が開いた。


海貴は血を吐いた。聖子が近寄ってくる。眩暈がした。


聖子は海貴の頭を、ガッと掴んだ。


息がかかるほど顔を近くに寄せて、呟いた。
「伊藤さんは何でこんな奴と付き合ってたのか、わかんないわ。好きな女も守れないような奴。顔しか取り柄がないじゃない」
額にぴたりと銃を当てた。

海貴はそれでも、少々笑みを浮かべた。
「冬峯とはそんなんじゃないよ。誤解してるみたいだけど――」
でも、どっちみち、そうだったのかもしれない。



海貴は手榴弾を高くかかげた。ピンが引き抜かれていた。

青ざめて、逃げ出そうとした聖子の左腕を、海貴の右手が掴んだ。
聖子は必死で振りほどこうとしたが、抜けない。

「3、2……」海貴は呟いた。
「いやああああ!」

爆発する! 聖子は目をつぶった。

「――1」



……あれ? 聖子は目を開けた。

生きてる。

聖子は海貴の顔を見た。右頬の皮が半分剥けて、肉が見えていた。全身血だらけだ。


海貴は力なく言った。「おもち、ゃだよ。説明書にも、そう書いてあったし」

なーんだ。聖子はホッとした。

「……って、よくも二回も騙してくれたわね!」聖子は銃の撃鉄を起こした。

「死ね!」
引き金に指をかけた。



一瞬、海貴の口元が、笑いの形に変わったのがわかった。
聖子の右手を取って、自分の首に当てた。


海貴の首にかかっていたスクエア型のネックレスが、チカチカと光った。

417ノア </b><font color=#FF0000>(CMFYrBvc)</font><b>:2004/08/30(月) 22:09 ID:igZ3kd.k
シンさん>
お久しぶりです。本当にあと少しです。長かったなあ、と思います。
残り人数が少なくなって展開も早くなってますね。
あとちょっとなので、よろしくお願いします。

418まっしゅ:2004/08/31(火) 02:28 ID:jy8fRL7o
うおおおおおっ!!!
続きが早くみたいぃぃっ!!!

419ノア </b><font color=#FF0000>(CMFYrBvc)</font><b>:2004/08/31(火) 16:00 ID:igZ3kd.k

 ダァァン。


耳をつんざくような音が聞こえて、海貴のネックレスが爆発した。


「きゃあ!」

聖子は衝撃で吹っ飛ばされ、また、壁に頭を打ちつけた。



「う……」


――痛い。

聖子は自分の右手を見た。「あ、あああ……」


声にもならない声を上げた。自分の右手から、指がごっそりとなくなっていた。
「きゃああああああ!」聖子は狂って声を上げた。


「嫌、私の手が……ああああああああ!」その声は、山までこだましただろう。



さて、海貴の支給武器は精巧に作られたおもちゃの手榴弾だ。相手をひるませる以外の役目はないが、真の役割を果たすべく一緒についていた武器は、ネックレス型の小型爆弾だった。
手榴弾に比べて殺傷能力は極めて小さく、せいぜい一人の頭を吹っ飛ばすくらいの火薬しか使われてなかった。
主に自殺か、またはプレゼントとして騙して殺す用の道具だ。海貴はこれを自殺に使ったのだが、聖子には予想以上のショックを与えたと言っても過言ではないだろう。



聖子は泣き疲れて、海貴のまだ残っている部分を睨んだ。
「よくも……」
これじゃ、銃の引き金が引けない。

血がだらだらと出続ける右手に、タオルを巻いた。

更に、自分の腹が痛んだ。肋骨が折れているのがわかった。
多分、撃たれた時に折れたのだろう。


「絶対に、許さないから」

聖子は呟いて、左手でイングラムを掴んだ。
とりあえず、ここを出なきゃいけない。あと三人殺せば。たった二人だ。


聖子は燃える闘志で、階段を下った。
【残り4人】

420ノア </b><font color=#FF0000>(CMFYrBvc)</font><b>:2004/08/31(火) 16:55 ID:igZ3kd.k
「あと三人殺せば。たった二人だ」

……ごめんなさい。
「たった三人だ」の間違いでした。

まっしゅさん>
こうなりました。
今日の夜にまた更新するかもなので、よろしくお願いします。

421シン:2004/09/01(水) 19:02 ID:4.iNy1vY
うわぁ・・・
姫城くんすごかったですね・・・

422ノア </b><font color=#FF0000>(CMFYrBvc)</font><b>:2004/09/02(木) 21:59 ID:igZ3kd.k

 大迫治巳(男子二番)はふと顔を上げた。
「凄い音が聞こえた……」治巳は惚けたように呟いた。

ここはE=6だった。180センチ近くある自分の身長が優に隠れてしまうほどの大きな岩が、無造作に置かれていた。一つや二つではない。見る限り、たくさん。大きいのから、一メートルほどの小さなものも、縦横無尽にあった。

何かの芸術品なんだろうか。治巳はそう思った。
凄然と並んでいる岩達には、何か、迫力と、力強さを感じた。



自分の手を見た。土や埃、そして血で汚れていた。

今は、何人に減ったんだろうか。残りは皆、死んだんだ。
治巳の胸には、どうにもならない虚無感だけが残っていた。


思った。和輝に、あの時言ったことは嘘だった。オレはあいつを殺す気なんてなかった。本当に笹川ちゃんと会わせてやりたかった。

大島薫(女子九番)を殺したことを言ったのは、和輝を殺しそうになる自分と、心の中では自分を止めて欲しいと願っていた自分がいたからだった。

だが、一度火がついたら、もう止まることはできなくなっていた。

あいつは多分、オレを恨んだろう。恨まれても仕方ないことを言った。後悔なのか、何なのかはわからなかったが、胸が痛んだ。
もし、もう一回和輝に会ったら――

今度こそ、殺してしまうかもしれない。そんな予感がしていた。



あんなに激しかった雨が、ようやく小降りになってきていた。

治巳は先ほど爆発音がした場所へと急いだ。



そのまま進んでいた。ふと、治巳は足を止めた。
岩陰に隠れた。


……誰か来た。
誰かはよく見えなかったが、小柄な体。女子のようだった。
笹川ちゃんか井上さんだな、と治巳は思った。

シルエット的に、冬峯雪燈(女子二十一番)ではないと感じた。


ポケットに入っていた銃を持ち上げた。
雨で視界が悪くなっていた。ここからだと当たるかどうかわからない。それでも、治巳は、一か八かで撃とうとしていた。


引き金に指をかけた。片目を瞑って、目的に焦点を定めた。
――殺せ。自分の中で、誰かが命令を下した。


それと同時に、撃った。


ぱん。

雨のせいか、音は辺りによく響いた。

撃つ瞬間、しまったと思った。

水で手が滑った。銃弾はあさっての方向へ行ってしまった。


その女子は銃声の聞こえた方向を見回した。


治巳はかまわずもう一度撃った。

423ノア </b><font color=#FF0000>(CMFYrBvc)</font><b>:2004/09/02(木) 21:59 ID:igZ3kd.k

 治巳は目を細めた。女生徒の腕に当たったような気がする。
いや、かすめただけなのか。よく見えなかった。



女生徒は、マシンガンを辺りに目掛けてぶっ放した。360度。


治巳は気づいた。それは、さっきよく聞こえた銃声だった。

女生徒は治巳の方へ向けて撃ってきた。
やばい、気づかれた。


治巳は岩の後ろに隠れた。

マシンガンの音がやんだ。
治巳は辺りを見回すために、少しだけ顔を出した。



その女の顔が見えた。

井上聖子(女子五番)は、憔悴したような気がした。顔つきは険しくなっていた。右手には白い布が巻かれていた。
治巳に確認できたのはそこまでだった。


ぱらぱらぱら。またあの音が響いた。
「うわっ」
岩陰へ隠れた。

治巳もウージーSMGを取り出し、撃った。


ぱぱぱぱぱ。

聖子も岩陰に隠れた。


聖子が走り出して撃ってきたので、治巳も夢中で撃った。
そうすると、聖子はうまく岩に隠れる。岩から岩へと乗り移るように接近してきた。


治巳は思った。こいつは、ただ者じゃない。油断してるとやられる。


二つの銃声が絡み合った。なかなか当たらなかった。岩が良くも悪くも邪魔をしてくれた。


治巳は焦っていた。踏み出して撃つか。このままじゃ、埒があかない。


治巳は撃った。


たくさんの音が聞こえて、手に衝撃が走った。

聖子は岩の後ろに隠れていた。


このまま撃ち続けて、あいつを追いつめるしかない。

治巳は走り出した。

424ノア </b><font color=#FF0000>(CMFYrBvc)</font><b>:2004/09/02(木) 22:02 ID:igZ3kd.k

 聖子は左手でイングラムを握っていた。

右手には血がだらだらと出ていて、頬は赤く紅潮していた。早く仕留めなきゃ。


治巳が踏み込んできた。

「きゃあ!」
聖子は慣れない左手でイングラムを撃ちまくった。



治巳は走りこんだまま、聖子のすぐ傍まで飛び込んだ。

聖子の胸倉を掴んだ。聖子が撃とうとする前に、撃った。


ぱぱぱ。衝撃で聖子はガクガク震えた。



こいつ、この指どうしたんだろ。治巳は聖子の右手首を掴んだ。


指がない。赤くなったドラ○もんの手のようだった。何だか、とても不自然な物を見ているような気がした。

聖子の顔を見た。まばたきもしてないけど、まだ、息がある。


「何で生きてるの?」治巳は訊いた。

聖子の目の焦点があってきた。ぼんやりとした状態だったのが、はっきりと目に力がこもっていた。


聖子は言った。「あんたを、殺すからだよ!」



治巳は聖子を突き飛ばした。聖子は倒れたまま、左手でイングラムを撃った。


うっ――。
治巳はかろうじて避けたが、頬に大きな傷がついた。


「なるほど。防弾チョッキか」治巳は言った。
聖子は立ち上がって、激しく息をついた。腹を押さえた。


「いくら防弾チョッキだからってこんな至近距離で撃たれたなら骨折くらいするだろ。そのままだと、死ぬよ?」治巳はそう言って、聖子の頭に銃口を向けた。

「いやっ!」
聖子は夢中で頭を下げた。


当たらなかった。弾は聖子の頭のすぐ近くを掠めて、遠くへ飛んでいった。


聖子は撃った。


「うわっ」

治巳は避けたが、肩口に痛みが走った。

聖子は更に撃った。治巳のウージーが手から落ちた。聖子はニヤリと笑った。
「く……」治巳はウージーを掴もうとした。

ぱらぱらぱら――

イングラムが発射され、弾がウージーに集中した。


治巳はウージーを見て手をすくめた。壊れていた。

治巳は舌打ちした。
ポケットからコルトガバメントを出そうとしたが、遅かったようだ。


もう一度イングラムが火を噴いた。


腹部に、衝撃が走った。
治巳は後方へ吹っ飛んだ。

地面に体が強く打ちつけられた時、治巳は、自分の意識が遠くなっていくような気がした。

425ノア </b><font color=#FF0000>(CMFYrBvc)</font><b>:2004/09/02(木) 22:06 ID:igZ3kd.k
まっしゅさん>
すごかったですね^^;
結構悲惨な最期になってしまって可哀相です。


戦闘シーン、かなりラスト近いのにやばい下手くそですね。
でも直さないって言う。

426まっしゅ:2004/09/02(木) 23:42 ID:vHLP2rxs
えええ、治巳君がぁ・・・
てっきり楽勝だと思ってたのにぃ

427まっしゅ:2004/09/02(木) 23:43 ID:vHLP2rxs
ノアさん文章ぜんぜん下手なんかじゃないですよ
ほんとに読みやすいんで

428ノア </b><font color=#FF0000>(CMFYrBvc)</font><b>:2004/09/03(金) 00:28 ID:igZ3kd.k
すいません。人の名前を間違えるという最低なことをしてしまいました。
>>425のレスはシンさんへのレスです。
シンさん、そしてまっしゅさん、申し訳ありませんでした。

まっしゅさん>
あ、ごめんなさい。下の文は私の独り言なんで流してもらってかまわないです。
誤解を招く書き方してすいません。

429ノア </b><font color=#FF0000>(CMFYrBvc)</font><b>:2004/09/04(土) 22:26 ID:igZ3kd.k

「手こずらせてくれたね」聖子は呟いた。
とどめをささなきゃ。まだ生きているかもしれない。


聖子は自分の腹部を押さえた。痛かった。肋骨が折れているかもしれなかった。

あと二人。早く殺さなきゃ。聖子はため息をついた。


聖子はイングラムをかまえた。



ぱん、ぱん。という、乾いた音がした。


聖子は驚いて、辺りを見回した。


そして、自分の体を見た。
新たに、左腕に小さな穴が開いていた。血が流れ出して、イングラムを伝って落ちていった。


「……どういうことだよ!」聖子は叫んだ。



「治巳!」
足音が、近付いてきた。千嶋和輝(男子九番)は、治巳を見て叫んだ。

……和輝? 何でここに?
治巳は驚いて声を出そうとしたが、断念した。


――それどころじゃない。


飛びかかった。和輝には、少し笑みが走っているようにも見えたかもしれない。もっとも、別に楽しんでいるわけでもなかったが。

聖子は驚いて、イングラムを発射しようとしたが――


治巳は聖子の左手を押さえて、イングラムを地面に落とした。



聖子の首に手をやって、強く締め付けた。


「治巳!」

何だよ、うるさい。


「く……」

聖子は治巳の手をかきむしった。手に引っかき傷が出来た。それでも、治巳は離さなかった。

心の中で、誰かが呟いた。殺せ、殺せ。
それは、自分だった。


ナイフを取り出した。聖子の目が見開いた。

刃先を聖子の首に当てた。


「あ、あああああああ……」
聖子は指のない左手で、治巳の背中をどんどんと叩いた。



「治巳!」
和輝は治巳の元に走り出した。

430ノア </b><font color=#FF0000>(CMFYrBvc)</font><b>:2004/09/04(土) 22:27 ID:igZ3kd.k

 ブシュッ。

血が噴き出した。治巳は聖子の首に、深く、ナイフを突き刺した。
代々木の時と同じだ。治巳はふと思った。


聖子の口から血の泡が噴き出した。

ナイフを抜いた。ぶしゅっと音がして、ずるずると聖子は倒れた。


治巳はナイフを持ち上げ、そして、振り下ろし続けた。


防弾チョッキを外し、聖子の腹にナイフを下ろした。中の肉が血で染まった。
それでもやめずに、思い切りナイフを振り下ろした。



「もうやめろって!」
和輝に肩を掴まれたので、治巳は我に返って、ナイフを離した。


はあはあと息をついた。喉がカラカラだった。治巳はそのまま座り込んだ。

ナイフを使ったのは久しぶりだった。銃よりも、生で人を殺す感触が伝わってきた。治巳は少し笑った。胸が苦しくなってきて、着ていたトレーナーを脱いだ。


民家に入った時に見つけた、オーブントースターの鉄板(!)を、中に貼り付けていた。
はー、きつかった。でももう、使い物にならない。

あと少し距離が近かったら、貫通していただろう。


聖子は血の気が抜けたようになっていた。制服が裂け、腹部は血と一緒に、ピンク色の内容物が覗いていた。

無敵かと思われた彼女は、ここで死んだ。記録は十人殺害。今回のバトルロワイアルの最高記録だった。
【残り3人】

431ノア </b><font color=#FF0000>(CMFYrBvc)</font><b>:2004/09/06(月) 23:31 ID:igZ3kd.k
「姫城海貴君、井上聖子さん、冬峯雪燈さん、吉野美鳥さんは死にました。残りは三人、頑張って」

北川のやけに呑気な声が、公園に響いた。


大迫治巳(男子二番)は呼吸を整えた後、千嶋和輝(男子九番)を見た。
「何で、お前がここにいるんだよ」

和輝は眉をひそめた。「傷……大丈夫?」

治巳はハッ、と言うように口元を歪めた。「大丈夫なわけねえだろ!」



和輝は治巳の腕を掴んだ。「雨宿りしよう。向こうには、加奈もいるから」

治巳は驚いた。「……笹川ちゃん? 会えたのか?」
和輝は頷いた。

「よかったじゃん……」
思わずそう言ってしまい、治巳は黙り込んだ。

和輝は無表情で手を差し伸べた。「行こうよ。俺を殺したいなら、その後でもいいから」


……何でだよ。たった今、オレが人を殺したの、ここで見てたはずだろ? お前を殺そうとしたんだぞ? 何でだよ。

治巳には、よくわからなかった。



加奈は治巳を見て、驚いていたようだった。「治巳君! 久しぶり」
「……ああ」

この女もおかしい。何で笑ってられるんだよ。

「何ぼーっとしてんだよ」和輝が言った。
「……別に」

和輝は一度咳払いをして、言った。「さて、治巳。お前が何でこんな凶行に走ったのか、聞かせてくれよ」

はあ?


治巳は言った。「オレ一人だけ生き残りたかったから。あと、楽しかったから。それだけ」
「――本当に?」

――違う。

オレは死にたくなかったんじゃなくて、殺されたくなかった。一人死んで、忘れられていくのが怖かった。
でも、誰かに止めてほしかった。あいつと同じ、殺人鬼に成り下がっていくオレを。


「――ああ。本当だよ」治巳は言った。

「このクラスの誰が死のうが何も思わねえよ! むしろせいせいした! お前らも、さっさと死んでくれないかなぁ!」
「――治巳君」加奈はショックを受けた顔で、治巳を見ていた。「本当に?」

「本当だって言ってるだろ。さっきから」
治巳は銃を持ち上げた。自分の手が、細かく震えているのがわかった。
苦しい。息ができなくなる。押しつぶされて、死にそうだ。


和輝は言った。「俺が何であそこにいたかって訊いたよな? 教えてやる」そう言うと、続けた。「探してたんだよ。お前が残していった探知機で加奈を見つけ出して、加奈にも了承してもらった。治巳がもし、本当は苦しんでるなら――」


和輝は静かに言った。「俺が治巳を殺すって」

「へー……」治巳は苦々しい思いで、頷いた。

「でも、違うんだな? お前はただ単に人殺しがしたいだけだったんだな?」
「だったら何だよ」
「代々木を殺した時も、大島さんを殺した時も、井上さんを殺した時も、何の躊躇もなくやったんだな?」
「だったら何だよ!」治巳は声を荒げた。

「……お前が苦しんでないなら、俺はお前を探す必要なんてなかった。一人にしておけばよかったよ」和輝は静かにそう言うと、ポケットから銃を取り出した。
「加奈は、殺させない」


治巳は皮肉な笑みを浮かべた。
「結局殺す気だったんだろ! ぐだぐだ言いやがって……」

和輝が近づいてきたので、治巳は銃をかまえた。


やめろ。くるな。――撃っちまう。
引き金に、指をかけた。


和輝の拳が右頬を歪めて、ゴッ、と、鈍い音がした。

治巳は地面に転がった。意外な思いを感じ、和輝を見た。


「違う。お前はそんな奴じゃないよ」和輝は言った。

それをきいた瞬間、治巳はある種、打ちひしがれた表情を浮かべていた。


「お前がいなかったら加奈を探せなかったよ。お前がいなかったら、俺はいつまでも、何もしなかったよ」

和輝は右手を差し出した。

「今のお前の顔見てると、すっごい辛そうだよ。何アホな真似してるんだよ!」

和輝は治巳の頭を掴んで、静かに言った。

「……一人が辛いなら、俺も逝ってやるから。これ以上、人殺しなんかしなくていいから」

「和輝……」加奈が悲痛な声音で呟いた。
【残り3人】

432シン:2004/09/07(火) 19:13 ID:Uk0.LzNo
いよいよラストって感じがひしひしと(?)伝わってきます!!

433:2004/09/10(金) 13:52 ID:BF4EPk9k
とても久しぶりですたい。接続等の問題でしばらくできませんでしたですたい。
いい感じに進んでイルですたい。ラストですたい。誰が生き残るのかな?ですたい。
しゃべり方ダルッ

434ノア </b><font color=#FF0000>(CMFYrBvc)</font><b>:2004/09/10(金) 15:44 ID:igZ3kd.k
シンさん>
はい、いよいよラストです。緊張します(何で
更新遅くてすいません。これからも頑張ります。

瞳さん>
久しぶりです。いなくなってしまったのかと寂しかったので嬉しいです。
あとほんの少しで終わります。最後までおつき合いいただければ嬉しいです。
九州のかたですか?(笑

435ノア </b><font color=#FF0000>(CMFYrBvc)</font><b>:2004/09/10(金) 20:41 ID:igZ3kd.k

 ――別にオレはすごく不幸だったわけじゃない。むしろ、オレより不幸な奴なんて五万といる。
義理の両親も優しかったし、友達だっていたし、可愛い彼女だってできたし(あっ、のろけちゃった)、割と幸せだったぜ?

でも、このゲームが始まって、オレの中で何かが動いていた。まだガキだったころに、焦げた家族の顔を見たことを思い出した。

単純にああなるのは嫌だったし、死ぬのも嫌だったのかもしれない。最初は。


でも、人間がどんどん死んでいくのを見ているうちに、強迫観念が走った。
オレの家族を襲った殺人鬼のような奴らに、オレも殺されるのかと。

今度は殺されないように、オレが倒したかった。
まあ、そういうオレ自身が殺人鬼だったんだけどね。
そうだよ。結局はあいつと同じなんだと思うと、吐き気がした。

止めてほしかった。オレの歪んだ思考を、誰かに停止してほしかった――



大迫治巳(男子二番)は、茫然としたまま、千嶋和輝(男子九番)を見た。
「何バカなこと言ってんだよ」

治巳はほとんど閉ざされた思考で、かろうじて呟いた。「せっかく笹川ちゃんとイイ感じになれたってのに、そんな簡単に死んでいいのかよ」

死にたいわけがない。そうだろ?

和輝は手を離して、気まずそうに言った。「……実は、まだ加奈に言ってないんだよね」


――何?

思わず叫んだ。「何トロトロしてんだよ! 早く言えよ! このヘタレが!」治巳は座ったまま若干離れて、続けた。
「早く言え。ここまできたんだから。オレは邪魔しないから」
「……うん」
和輝は頷いて、加奈を見た。「加奈、ちょっと話がある」そう言って、手招きをした。

「治巳君、ちょっと待っててね」加奈はかすれた声で、静かに言った。



二人は、二十メートルほど北へ移動すると、立ち止まった。

和輝は深呼吸をした。

めちゃくちゃ緊張した。殺し合いゲームの最中だというのに、何だか呑気で、幸せな緊張感だった。

「加奈、わかってると思うけど、俺さ――」
「言わなくてもいいよ」加奈は薄ピンク色に染まった頬の筋肉を上げて、笑んだ。「好きだったよ。結構前から」弾んだ声で、言った。

心の中にずっとあった靄が晴れるように、加奈の顔が鮮明に見えてきた。


月は落下し、星は一面に輝いて、太陽は沈まない。
世界ががらりと変わったような、そんな衝撃と幸福感。やたらにハイになれそうだった。


和輝は言った。「でも、言わせて。俺も好きだよ」
「うん」加奈は笑みを浮かべたまま、頷いた。



―閑話休題―

「……和輝さ、私を生き残らせてあげようと思ってるでしょ」
「……うん。治巳はどうしても生きたがってるようには思えないし、俺も加奈が生き残れるなら――」
「みくびらないでよ」加奈は眉を上げた。

へ? 和輝は狼狽した。


「何で私だけ置いてくの! 一人だけ仲間はずれなんてやだよ!」
「でも――」
「私も逝くよ。一生分の幸せは使い果たしたから――」
加奈は横を向いていたが、和輝に向き直って笑った。「幸せなまま死ねるなら、それでいいじゃん!」

――加奈!

和輝は加奈をきつく抱きしめた。

436ノア </b><font color=#FF0000>(CMFYrBvc)</font><b>:2004/09/10(金) 20:43 ID:igZ3kd.k

 治巳は二人を見た。どうやらうまくいったらしい。全く、こんなところで青春しやがって。


寝転がって、空を見た。


殺されるのが怖かった。でも、あいつなら、そこまで怖くないかもしれない。

治巳はナイフを空にかざした。

六年前からずっと持ってた。

――もう二度と、家族や大切な人達が殺されないように、オレが守ってやるんだ。


「……大切な人が殺されないように、この殺人鬼を始末しなきゃな」治巳はそう呟いて、笑みを浮かべた。



気がつくと、二人が治巳を覗き込んでいた。

治巳はナイフを弄ったまま、言った。「和輝ぃ。オレ、死ぬわ」

「は? 突然何だよ」和輝は驚いたように言った。
「だってこれ以上自分の大切な人間が死ぬの嫌だもん」治巳はナイフを空高くかざした。「敵は手強かった。今は瀕死状態だけど」
「……何が?」和輝は不可思議な表情をしていた。

「だからー、殺人鬼はオレが始末するから、お前が死ぬ必要もないし、オレを殺す必要もないの」

歪んだ思考を止めてくれる人間がいたから、よかった。

あとは、自分の後始末をつけるだけ――


治巳は自分の首にめがけて、ナイフを振り下ろそうとした。



「治巳!」

和輝に腕を掴まれた。
「今は七時三十分なんだよ」

治巳は和輝の顔を見た。
「何が?」

「井上さんが死んだのが六時二十分ごろ。二十四時間以上人が死なないと、首輪が爆破する――」和輝は加奈と目を合わせて、また治巳の方を向いた。
「まだまだ時間はあるから、有意義に過ごそうよ」


治巳は戸惑った。

「別に、お前らは無理して死ななくていいんだよ。オレは退場する。お前らのごたごたは自分達で話し合えよ。オレを巻き込むな」
「もう結論は出たんだよ」加奈が言った。

「死ぬ前に、思い出作ろうぜ」和輝は言った。



――オレは、さっさと自分の体の始末をつけたいんだよ。

だって、決意が鈍ってしまう。今まで当たり前に過ごしてきた時間、仲間が、こんなに失いたくないものだということが痛いくらいにわかって、惜しくてたまらない。


「お前ら、アホだな……」治巳は顔を覆って、言った。
【残り3人】

437まっしゅ:2004/09/10(金) 22:57 ID:vHLP2rxs
ノアさーん、「うるっ」ときちゃいますよー

438シン:2004/09/13(月) 19:54 ID:vsuMHfo2
やばい・・・。
とても泣けてしまいました(;;)

439111:2004/09/13(月) 20:39 ID:nMv3A8Ow
最高です・・・・・感動しました

440ノア </b><font color=#FF0000>(CMFYrBvc)</font><b>:2004/09/14(火) 02:21 ID:igZ3kd.k
まっしゅさん>
うわっ、びっくりです。
ありがとうございます。ここは何か頑張って書いた感じです。
あと残すところ・・・3話ぐらいですね。頑張ります。載せるのを(笑

シンさん>
更新が遅くなってすいません。本当に。
泣いたなんて!(驚
でも嬉しいです。ありがとうございます。残り数話もよろしくお願いします。

111さん>
最初から見てくださっていた方ですよね。本当に嬉しいです。
最高だなんてまさかまさかという感じですが、
少しでも感動してくれたという意見があれば幸せです。
ありがとうございました。

441ノア </b><font color=#FF0000>(CMFYrBvc)</font><b>:2004/09/14(火) 02:25 ID:igZ3kd.k
 フィナーレ

戦闘実験第六十八番プログラム。改正案試行、第一回。

対象は、県立第三高等学校英文科、二年A組。総勢四十三人。


大東亜帝国中、たった一クラス。偶然にも当たってしまった、運のない高校生達。


その会場となったS県蔵ヶ浦公園では、今までのプログラムにない物があった。
――楽しげな話し声と、笑い声。

人数も少なくなり、殺し合いが一番盛り上がるころだ。生徒達はたった一つの生き残りの椅子を賭けて、殺しあっていた――
はずだった。



「何よこれ……」

橘夕実は不満そうな声を出した。
「こいつらいつまでくだらない話してんのよ! 殺しあいなさいよ!」
「何だかなー。もしかして、明日の夕方までこの調子なんじゃ……」
横山豪は、危惧していた。

北川哲弥は、黙ってコンピュータを見ていた。


盗聴機から聞こえるのは、自分達の中学の思い出話。それはやけに懐かしく、哲弥をほろ苦い気持ちにさせた。
そうだ、こいつら同じ中学だよな……。それで、俺も。


「このプログラムは失敗に終わりそうですねー……」哲弥はそう呟いて、笑んだ。


「それじゃ困るのよ!」夕実は叫んだ。
「おらー、大迫ー! さっきまでのあの活躍はどうしちゃったのよー! 千嶋和輝の毒牙になんかかかってないで、さっさと殺しなさいよー!」

夕実は早口で、兵士に指示を出した。
「放送入れて! 殺しあわないと首輪爆発させるって言うわ!」



千嶋和輝(男子九番)は、熟睡していた。

和輝の寝顔を指で突付きながら、大迫治巳(男子二番)は言った。「寝てるし、こいつ。おらー、起きろー」
「疲れてるんだよ。寝かしといてあげて」笹川加奈(女子十四番)は言った。

「でもさー、せっかくの最後の思い出作るチャンスなのに、もったいないじゃん、時間」治巳はそう言った後、少し小声になって、囁いた。
「オレはしばらく向こうにいるから、二人でいちゃついてなよ」
「えっ……いいよー」
「いやいや邪魔しないから。こいつだって男だし、死ぬ前に生殖本能に火がつくかもよ?」治巳はそう言って、財布の中から、薄っぺらい、正方形の物を取り出した。

「やるよ。使わなくてもいけるかもだけどさー」


加奈はその物体を見て、度肝を抜かれた。

「治巳君! やめてよ!」


……もう。すっかり元通りになってる。心配して損した。


治巳はニッと笑って、加奈の手にそのブツを握らせた。

「じゃあオレ散歩してくるね。ごゆっくり」


何よ。こんなモン、いらないっつのー!
加奈はそのくしゃくしゃになった物を見て、叫びだしたくなった。


加奈は振り返って、爆睡している和輝を見た。
「……和輝、起きて」和輝の体を揺すった。
「……何だよ」
和輝は機嫌が悪そうに加奈を見た後、だんだん気がついたらしく、目の焦点が合ってきた。
「……あ、ごめん。寝てた」


……。

加奈は治巳に渡されたものをポケットに仕舞いこんで、言った。「散歩行こう。約束してたじゃない」
「ああ!」和輝は気づいたように言うと、立ち上がった。
「行こうか」

442ノア </b><font color=#FF0000>(CMFYrBvc)</font><b>:2004/09/14(火) 02:31 ID:igZ3kd.k

 大迫治巳は、暗い道を歩きながら、自分のポケットに収めていたナイフを取り出した。錆び付いて、血がこびり付いたナイフ。
……もう、いらない。

治巳はナイフを道端に投げ捨てた。



「こらー、お前らー!」

耳に響く大音量でその音は聞こえた。治巳は驚いて、空を見た。

「あと三十分以内に殺しあわないと、ただちに首輪を爆破させるわよ! 死にたくなきゃ早く殺しなさい!」怒りを感じさせるアニメ声。女は早口で言った後、放送が切れた。


――そんな。

治巳は急いで、和輝達のいる方向へと向かった。



「和輝、どうしよう!」加奈は怯えて、和輝の腕を引っ張った。
「あと三十分で爆発するって!」

和輝は忌々しげに上を睨んだ後、加奈の背中をぽん、と叩いた。
「やっぱり、加奈は残る?」

加奈は驚いたように目を見開くと、強い口調で言った。「やだ!」

「……頑固だな」和輝は笑みを浮かべた。



「和輝! 笹川ちゃん!」
治巳が走ってきた。

和輝は向き直って、言った。「どうする?」
「時間を延ばしたいならオレを殺せばいい。死ぬ時間がちょっと早くなっただけだし、別にいいよ」治巳はそう言って、笑った。
「バカ。何でそんなことする必要があるんだよ」そう言うと、和輝は座り込んだ。
「このプログラムは失敗。優勝者なし。面白いじゃん」


二人も、その場に腰を下ろした。

「三十分か……笹川ちゃん、使わないの?」治巳が言った。
「使わないってば!」
「何が?」和輝はきょとんとした表情で、二人を見た。
「何でもない! 気にしないで!」加奈が言った。

よくわからなかった。

443ノア </b><font color=#FF0000>(CMFYrBvc)</font><b>:2004/09/14(火) 02:34 ID:igZ3kd.k

「あっ、そうだ。治巳君。遥佳からメール着てたよ」加奈はそう言うと、話し始めた。「バスの中でね。返そうと思ったら携帯使えなくなっちゃったんだけど」
治巳はためらいがちに訊いた。「……なんて着てた?」

「『土産はいらないよ(^o^)治巳に買ってきてもらうから。あいつが浮気しないようにしっかり見はっててね(笑)』だって」

「ふっ」治巳は下を向いて、呟いた。「土産、買ってこれなくなっちゃったな」

 和輝は言った。「俺は元々、何で長戸が治巳と付き合ってるのか不思議でたまらない」
「うっせーな。何か文句あんのかよ」
「そうだよ。当人同士の問題だよ」加奈が言った。
「だってさー、可愛かったのになー、長戸……」

加奈が凄い目で、自分を見ているのがわかった。

「ま、和輝にとっては、笹川ちゃんが一番だろうけどね」治巳が付け加えた。


「ごらー! 殺しあえって言ってんだよ、てめーらー!」

アニメ声の女を無視して、和輝は言った。「最期に、握手」

治巳と、加奈に向けて、手を差し出した。二人はその手をとった。「俺、二人に会えてよかったよ」
「……オレも。お前のこと殺さないで、よかった」
「私も、和輝に会えてよかった」


もうじき、三十分経つ。

「死後の世界って、あると思う?」和輝が訊いた。
「あるんじゃない? わかんないけど」加奈が言った。
「じゃあまた会えるかもね」治巳はそう言った後、苦笑した。「何か小学生みたいだな」


雨はあがり、すっかり涼しくなった丘では、たくさんの星が見えていた。
最期には、ちょうどいい。


時刻は六時二十一分二十八秒。首輪爆発まで、あと三十二秒だった。

444シン:2004/09/14(火) 19:27 ID:EWTl3yf2
やばいです・・・。
胸の奥からまたグッときてしまいました・・・。
ラスト頑張ってください。

445ノア </b><font color=#FF0000>(CMFYrBvc)</font><b>:2004/09/17(金) 20:38 ID:igZ3kd.k
シンさん>
こんばんは。ちょくちょく書き込みありがとうございます。
なんか甘甘で見てると恥ずかしいので目を覆いながら載せてますが、
ここまできたらそれも楽しくなってきました(?
まあとにかく、あと少しお付き合い願います。




※お知らせ
何だかもう一度日記を設置してしまいました。
大して面白いこと書いてませんが、暇つぶしにでもどうぞ。
http://free2.milkypal.net/f-diary/DB-1/tackynote2.cgi?mm=milkyway

446ノア </b><font color=#FF0000>(CMFYrBvc)</font><b>:2004/09/17(金) 21:26 ID:igZ3kd.k

「バイバイ。楽しかった」
加奈はそう言って、和輝の手を握り締めた。
「うん……」和輝は加奈の手をとって、強く抱きしめた。
「もっと早く、言えばよかった」


でも、満足かもしれない。加奈に会えたこと。治巳に会えたこと。二年A組の、全員に会えたこと。


こんな風に椅子とりゲームの椅子を投げ出す俺達を見たら、皆、どう思うだろう? いらないなら俺にくれよって感じかな。

ごめん、皆。でも、辞退させてくれ。たとえ、ここで自分の命が終わってしまうとしても――

加奈の顔、治巳の顔が、歪んでいった。



たった一瞬、和輝は見た。加奈と治巳の顔を。

そこから背中に衝撃が走って、自分の周りを、赤い物が花火のように飛び散ってゆくのが見えた。

血を噴き出して、三人は横ばいに、倒れた。


――俺達は互いを殺せなかったんだ。


夜は深く降りていって、月が三人の体を照らしていた。




北川哲弥はある種、感慨深いものを感じて、三人を見ていた。
いつまでも続くプログラム。殺し合いをしろという政府。

その中で、優勝という最後の椅子を捨てて、彼らが伝えたかったこと。


「……お疲れ」
北川はそう言うと、かすかに開いた三人の目を、順に閉じさせた。

【残り0人/ゲーム終了・以上プログラム実施本部選手確認モニタより】

447ノア </b><font color=#FF0000>(CMFYrBvc)</font><b>:2004/09/17(金) 21:28 ID:igZ3kd.k

 エピローグ

九月になり、新学期も始まった。

田阪健臣、いや、元田阪健臣は、未だに慣れない男子校の教室の窓から、外を覗いていた。

優勝者がいなく、失敗に終わった試験プログラムのことは、ニュースでは小さくしか取り上げられなかった。
ちなみに、対象クラスの生徒は全員死亡、ということになってある。健臣と、あともう一人生き残った高城麻耶は、名前と戸籍を変え、全く違う地域で生活することを強要された。勿論、プログラムについて他言は無用だそうだ。


そうこうして地方の男子校にやってきたのはいいが、やはりショックがあるのだろうか。健臣は生徒と話すことを、固く拒んでいた。
なぜだかはよくわからない。ただ、万が一のことがあった時に、また、友人達が死ぬのが嫌なのかもしれない。それを恐れて、深く関わるのが怖いのかもしれない。


頬杖をつき、教室を見回す。目を閉じると、時に、心地よい錯覚に包まれることがあった。

特に、こんな天気のいい昼休みは――二年A組のクラスメイト達が、今もここで笑っているような気がした。

自分が殺してしまった梅原ゆき(女子八番)や永良博巳(男子十二番)のことも、思い出しては悔やんでいた。

「ごめん、みんな。きっと、ずっと忘れないから」

健臣はそう呟いて、窓に向き直った。

448ノア </b><font color=#FF0000>(CMFYrBvc)</font><b>:2004/09/17(金) 21:30 ID:igZ3kd.k

 やや古い造りだが、大きな一戸建ての家。

高城麻耶は、懐かしい我が家に戻ってきたような気がした。
あいつが死んでから、もう二ヶ月が経つんだ。

麻耶は飛山隆利(男子十八番)の家に、久しぶりの挨拶をしに行くところだった。

隆利。休みになったから、広島から飛んできたよ。


麻耶は帽子を押さえながら、長い階段を上った。

「まあ、麻耶ちゃん。久しぶり」隆利の母は、朗らかな笑顔を見せた。
「お久しぶりです、おばさん」
「あがってちょうだい」

一時期はとても塞ぎこんでいたようだが、彼女にもようやく笑顔が見えるようになった。よかった。麻耶はほっとしていた。

仏壇の前にくると、隆利が変わらない顔で笑っていた。麻耶は線香を立てて、火をつけた。


麻耶は問いかけた。
隆利。元気?

私は名前が変わりました。もう麻耶じゃないんだよ。今の名前は秋元恭子。何だか合わないよね。
ところで、私、友達ができたの。新しい学校で。って言っても、たった一人だけど。今まで他人の意見とか聞かなかったから、他の人に合わせるのは結構大変です。
でも、皆当たり前にやってることなんだよね。これからも、頑張らなきゃ。

……あの時、隆利が言ってくれなかったら、私はいつまでも一人で殻に閉じこもってたかもしれない。

ありがとね。麻耶はそう思って、目を開けた。



隆利。でも、あんたがいない生活は、未だに慣れないよ。

心にぽっかりと穴が開いてしまったようだった。一日が終わるたびに、寂しくて泣き出しそうになる。

麻耶は嗚咽をこらえ、思った。頑張って生きなきゃいけないんだ。他のクラスメイトのためにも、隆利のためにも。



「麻耶ちゃん。お茶入れたわよ」
隆利の母の声に、麻耶は笑顔で答えた。「ありがとうございます」

隆利の母親は言った。「何かね。隆利がいなくなってから、私も夫も気落ちしちゃってね……」
麻耶は茶を啜りながら、母親の言葉を聞いた。

「こんなことを言うのはとても失礼だけど、何で身寄りのない子が助かって、うちの子が……って思った時期もあったわ」

麻耶は驚いたように目を丸くして、それから元に戻した。

「ごめんなさいね、麻耶ちゃん」母親は静かに手を合わせて、麻耶に頭を下げた。
「いいんです。おばさん」麻耶は笑みを浮かべて、続けた。

「また、遊びにきてもいいですか?」


母親は目に浮かべた涙を拭うと、「ええ、勿論よ」と頷いた。

449ノア </b><font color=#FF0000>(CMFYrBvc)</font><b>:2004/09/17(金) 21:32 ID:igZ3kd.k

 一面大きな霊園となっている土地を、一人の男が歩いていた。
茶髪だった髪は黒に戻り、無造作に伸びていた。

北川哲弥は、ポケットに入っているラジオの電源をオンにしたまま、霊園の道を歩いていた。
周りの人々にじろじろ見られているのにもおかまいなしで。


無機質な声音で、ニュースキャスターが言っているのが聞こえた。「今回のプログラムの優勝者はなし、荒木氏は責任を取って辞表を提出したということです。なお、次回のプログラムについては全くの未定となっており、与党は高まるプログラム批判をこれ以上押さえつけることができなくなっているとの見通しが出ております」

哲弥はにやっと笑い、ラジオの音を小さくした。


「……ここか」
哲弥は呟いて、笹川家墓と書いてある墓地の階段を上がった。

「聞いた? 次のプログラムは未定だってさ。お前らのおかげかもな」
哲弥は墓場には酷く場違いな薔薇の花束を飾って、手を合わせた。

俺は冷たい人間かもな。結局お前に何もできなかった。お前が死ぬのを、ただ見てるしかなかったよ。


大学も辞めて、住んでた家も追われてきた。それでも、今日だけは来たいと思って、ここまでやってきた。

「今日はお前の誕生日だもんな……」
哲弥は顔をあげると、呟いた。
「十七歳おめでとう、加奈」


さて、千嶋と大迫の墓にも寄ってくか。
哲弥は立ち上がると、もう二束あった花束を持って、階段を降りていった。

「きっと、忘れないからな」


哲弥はそう呟いて、鼻歌を歌いながら走り出した。



「ママー、あの人変だよ?」近くにいた子供が言った。
「ほっといてあげなさい。でも、まだ若いのに、可哀相ね」
子供の母は頬に手を当てて、言った。

450ノア </b><font color=#FF0000>(CMFYrBvc)</font><b>:2004/09/17(金) 21:59 ID:igZ3kd.k
一番最後のエピローグがNGワードに引っかかりました(エヘ
どうしよう・・・すっごい中途半端だなぁ。

とりあえずあとがき。
このラストについては納得行かない部分もあるでしょうが、当時私なりに頑張って書いたので見逃してください(何だそれ
こんな長い小説を読んでくれた方、ありがとうございました。
今読むと本当に文章力のなさに呆れたり内容のご都合主義感に恥ずかしくなったりしますが、
井の中の蛙だった私がこれを載せることによって色んなことに気づいたのはよかったと思います。
感想ありましたら上の掲示板の完結作品感想スレに書いてくだされば嬉しいです。
本当にありがとうございました。

451納豆ごはん:2004/10/24(日) 02:36 ID:Eal75xtg
実はまだ続きがあったことを、この納豆ごはん様は知っている

じゃあ続きを書きますね。



















あぁやっぱり面倒くさいから書かない。

452むぅ・・・:2004/11/15(月) 22:21 ID:A8bzuWIM
・・・・かんどぉしましたぁ・・・すごい良い作品ですね・・・一人でも多くの人が読んでくれるように、差し出がましいようですがあげさせていただきまするww

453むぅ・・・:2004/11/15(月) 22:21 ID:A8bzuWIM
・・・・かんどぉしましたぁ・・・すごい良い作品ですね・・・一人でも多くの人が読んでくれるように、差し出がましいようですがあげさせていただきまするww

454むぅ・・・:2004/11/15(月) 22:21 ID:A8bzuWIM
・・・・かんどぉしましたぁ・・・すごい良い作品ですね・・・一人でも多くの人が読んでくれるように、差し出がましいようですがあげさせていただきまするww

455むぅ・・・:2004/11/15(月) 22:22 ID:A8bzuWIM
あら?アホダナおれ・・・すんません

456のあ </b><font color=#FF0000>(CMFYrBvc)</font><b>:2005/02/07(月) 00:00:23 ID:igZ3kd.k

むう・・・さん>
レスが遅くなりすぎてもう見ていないかもしれませんが、
こんなに長いものを読んでくださってありがとうございます。
完結後の感想はとても嬉しかったです。
ありがとうございました。


※お知らせです。
ペティーとBBロワイアルの改稿版をサイトを作って載せていくことにしました。
ペティーを読んでくださった皆さんにも
お知らせするべきかと思いレスしたいと思います。

>>445に載せてある日記にサイトのURLは載っています。
改稿後のペティーは文字も更に多くなっているので読みづらいかもしれません。
それでも良いと言う方は読んでくださると嬉しいです。

457珍子:2019/07/10(水) 08:33:56 ID:.iJw9Ffc
あげ


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