したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

バトルロワイアルぺティー

82リズコ:2004/03/15(月) 21:24 ID:1Nf1VncU
既に、夜は明けていた。和輝は時計を見た。時刻は六時二分前だった。

思った。もうすぐ、一回目の放送があるな。一体どれだけの人が死んだんだろう。自分達がここで呑気に話している間にも、人が死にかけているのかもしれなかった。
大迫治巳(男子二番)のことも、思い出した。はあ。治巳は元気かな。あいつにも会いたい、かも。


「皆さん、おはよー!」


和輝はかなり驚いた。いささか場違いな、アニメ声の、可愛い子ぶった女の声が、大音量で聞こえた。
うるせーな。マイク調整くらいしろよ。

「皆元気に殺し合ってますかー?睡眠も大事だけどね、一日一殺、これを目標に、頑張ってねー!」
ふざけんなよ。和輝は猛烈に腹が立った。こういう喋りの女は嫌いなんだよ。

「じゃあ死んだ人を発表しまーす」
和輝はまだイライラしていたが、その次の言葉に、唖然とした。

「男子八番田辺卓郎くん、十三番那須野聖人くん、十八番峰村陽光くん、女子一番天野夕海さん、六番植草葉月さん、十番小笠原あかりさん、二十番望月さくらさんでーっす!」


「・・・あかり」加奈が呟いた。加奈の親友の、小笠原あかりの名前があった。
加奈は茫然とした状態で、その後の放送は、何も聞こえていないようだった。

和輝は黙って見ていた。何を言っていいのか、わからなかった。安っぽい、気休めにもならない言葉しか思いつかなかった。


そして、既に七人のクラスメイトが死んでしまったことに、絶望と、一種の恐怖心が生まれていた。死んだクラスメイト達の顔が、浮かんでは消えていった。


「もっと殺し合わなきゃ駄目だぞー?頑張ってねー」
やはりノーテンキな女の口調に腹が立ったが、そんなことを気にしている場合ではなかった。和輝は死んだ生徒に、冥福を祈った。

「それでは、禁止エリアの発表でーす。メモしてね?」
和輝は地図と取り出し、メモの準備をした。

「七時からB=9・・・」
B=9は、殆どエリア外に入っていた。そして、和輝達がいる場所からは、離れていた。よし、ここは平気だ。


「次ぃ、九時にJ=4ね」

―――マジかよ。やはり物事は、そううまくはいかないのか。


「最後、今から五時間後の十一時はF=2。メモりましたかー?じゃあ今日も一日、生きてるといいわね。バイビー」腹立たしい言葉を残し、放送は切れた。


和輝は加奈を見た。地面に顔を埋めて泣いていた。普段からのボキャブラリーの不足が、こういう時に仇となった。
何を言うべきか迷っていたが、和輝はとりあえず、加奈に近づいた。

「・・・大丈夫か?」
加奈の肩に手をかけた。あかりの名を口にしようとして、やめた。軽々しく口にするべきではないと思ったのだ。


六時間ほど前、和輝に「逃げようよ」と言った、あかりの顔が思い浮かんだ。あの時、もしあかりがこなかったら、和輝は大島薫に射殺されていたのかもしれない。


加奈は少しの間泣いていたが、ふと起き上がった。

涙を拭って、和輝に笑顔を向けた。「ごめんね、もう大丈夫。早く移動しよ」

―――強いな。和輝はそう思った。自分が今まで思っていたよりも、ずっと、加奈はたくましいのだと感じた。和輝は気を引き締めた。俺も、しっかり笹川を守らなきゃ。

二人は移動した。
あかりの死を聞かされてから数分後、加奈はいつもの通りにふるまっていた。

もう二度と泣かせたくない。和輝はこの法律と、そして政府に、深い憎しみと不信感を募らせながら、細い道すじを歩いていた。
【残り36人】


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板