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バトルロワイアルぺティー

52リズコ:2004/03/09(火) 21:37 ID:1Nf1VncU
小笠原あかり(女子十番)は、G=5の西側にいた。
暗い森を通り抜けながら、怯えていた。お守りのように、両手で、大型の自動拳銃を握り締めていた。


怖いよー。帰りたいよー。
あの時、逃げないで千嶋君と一緒にいればよかったのかな。千嶋君はあのまま中西にやられたのかな。もしそうだったら、私ってサイテーだ。一人だけ逃げてくるなんて。どうしよう。でも、仕方ないよね?これはそういうゲームなんだもん。
あかりは、自分にそう言い聞かせた。


疲れ果てて、とりあえずその場に座り込んだ。あかりは思った。このまま一人で、ずっとこうしてるのかな。そして、誰かに殺されるのかな。まだ死にたくないのに!

仲間を作ろうかと考えたが、誰が信用できるのかわからなかった。
普段仲のいい女子を思い浮かべた。加奈。楓。明日香。博美ちゃん。薫・・・


大島薫(女子九番)の顔が浮かんだ。痩せ型で、大人びた表情をしていて、長い髪をポニーテールに縛っていた。

薫はゲームに乗ったんだ。何で?人殺しなんか出来るような子じゃなかったのに。
頭がよくて、優しくて、努力家だった。その薫が―――

このままだと、誰が信用できるかなんてわからない。あかりは体を強ばらせた。



ガサッ。草むらを踏み分けるような音がして、あかりの心臓は飛び上がった。
あかりは自分から十メートルほど離れた場所から、男子生徒がくるのを見た。

だ、誰かくる。どうしよう。逃げなきゃ。殺されちゃう。やだ!

あかりは逃げようとしたが、足がすくんで動けなくなっていた。



「あっ、小笠原さんか」新島敏紀(男子十四番)は、落ち着きのある声で言った。


あかりの頭の中は恐怖心でいっぱいになった。新島君だ。殺されちゃう!
いつも冷静で、笑っているところなど見たことはなかった。不良というわけではなかったが、冷たそうなイメージしかなかったのだ。


撃たなきゃ。あかりは震える手で銃を持ち上げた。
敏紀の表情が、少し変わるのがわかった。


こんな時でも冷静なんだね。そんなのおかしいよ。絶対おかしい。
あかりはそう思い、引き金を引こうとした。



・・・あれ?引き金が引けない。どうして?あかりは半狂乱になって、引き金を引こうとした。しかし、固いそれは、あかりの力でどうなるものではなかった。


あかりは泣きそうになって、敏紀を見た。暗闇の中、敏紀の表情は、よく見えなかった。あかりにはそれがとてつもなく恐ろしいことに感じた。



敏紀はかがんで、それから視線を下げた。まっすぐに、右手をあかりへと伸ばした。
嫌っ!あかりはびくりと体を振るわせた。



「あのね」敏紀は座り込んで、あかりの銃に手をやった。
「ここの安全装置を外さなきゃ、引き金は引けないよ」そう言って、安全装置を指差した。「わかった?」

「へっ・・・うん」そっか、それで引けなかったのか。納得。

でも―――あかりは敏紀を見つめた。
「随分震えてたみたいだけど。落ちついた?」敏紀は言った。
あかりは黙っていた。どういうつもりなんだろう。さっぱりわからなかった。

敏紀は次の瞬間、少し笑んだような気がした。「大丈夫だよ。俺は人殺す気なんて、ないから」そう言って腰を下ろした。あかりはビクッとした。


「でも・・・」
「信じられない?」
あかりは首を振った。「私、銃を向けたのに」
「仕方ないよ。こんなゲームの中だもん」敏紀は笑った。


敏紀が口を開いた。「何かさ、皆怖いと思ってるじゃん。だから、俺には敵意がないってことを、誰かに教えたかった。そうすれば、殺し合いなんて起きないかもしれない」
「でも、これはそういうルールだよ?それに、私がゲームに乗ってたらどうするの?」
あかりはそう言った後、「勿論、乗ってないけど」とつけ加えた。

「まあ、ちょっとビビったけどね」両手を合わせて、伸びをしながら言った。
「でも、凄い震えてたから、きっと怖いんだろうって思って。それに・・・小笠原さんなら大丈夫だろうと思った」


あかりはしゃがみこんで、ため息をついた。
何か、そこまで信用してくれたのに、悪いことしちゃったな。他の人だったら、あそこで殺されてたかもしれない。

そして、敏紀を見た。冷たそうに見えたけど、そんなことなかったんだね。ごめんなさい。あかりは反省した。


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