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バトルロワイアルぺティー

9リズコ:2004/03/06(土) 14:50 ID:1Nf1VncU
「かーずき!」後ろで突然声がして、驚いて振り返った。
「・・・笹川か。ビックリした」
加奈は和輝を下の名前で呼んでいた。いつからそうなったのかは思い出せなかったが、随分前からだったような気がした。今は、その呼び方が当たり前になっていた。
「笹川か、とは何よ。誰ならよかったの?」加奈は言った。
「いや、別に・・・」お前でいいよ。和輝はそう思った。
加奈は笑顔で言った。「サボってないで手伝って!はい、立った立った!」
「面倒くせーな。何やんの?」
「私はご飯炊く係。和輝も何か言われたでしょ」
「・・・言われたっけ。覚えてない」
「もー。じゃあ聞きに行こ!」
加奈はそう言って和輝の手を引っ張った。和輝は少しドキッとした。加奈は、スキンシップを取るのが好きみたいだった。性別などは関係なかった。それでいて、不快な気分にさせないのは、加奈のさっぱりとした人柄故だろう。

 川の下流では、野菜を洗ったり、米を研いでいる人がいた。加奈が辺りを見回して言った。「森先生いないね」
「もうどーでもいいじゃん。働きたくない」
「駄目!働かざるもの食うべからず!」加奈はそう言って、何かを考えていた。「そうだ!キャンプファイヤーの準備するって言ってたから広場の方かも。行こう!」
「広場ってどこだよ」
「わかんない」
「・・・俺もわかんないよ」
加奈は和輝を見た。「・・・じゃあいっか」加奈はその場に座った。「私もサボっちゃおー」
人のこと言えないじゃん。和輝はそう思った。いや、今はそんなことどうでもいい。心臓が、大きく音を立てた。言うぞ。言うぞ。「あ、のさー」
「何?」加奈は和輝を見上げた。
「えーっと・・・」加奈はまっすぐに和輝を見ていた。
「・・・夜さ、散歩行かない?宿の近くにでっかい土産物屋があるんだって」
 加奈の目が少し見開いて、また元に戻った。「治己くんとか、柴崎君達と行かなくていいの?」・・・断られるかな。全身の血がサッと引いていくのを感じた。
和輝は言った。「あいつらと行くと、うるさいから」
加奈のふっくらとした形のいい唇が、笑みの形を作った。
「いいよ!行こう!宿の近くに心霊スポットがあるって聞いたんだけど。そこにも行きたい!」
げっ。嬉しいけど、心霊スポットは微妙に嫌だ。でも・・・「いいよ。怖がんなよ」
加奈は笑った。「大丈夫だよ。じゃあ夕飯終わったらロビーで待ち合わせね!」
「あっ、仕事戻らなきゃ!じゃあね!」
加奈の後ろ姿を見送りながら、和輝は少し笑った。もしかしたらイケるかもしれない。期待を胸に、和輝は今夜のシナリオを練っていた。

 バーべキューが終わった。五時半からキャンプファイヤーとオリエンテーションが始まるから、七時半にはホテルに行って、それからだから八時だな。
「何浮かれてんの?怖いんだけど」隣で治己が言った。
「・・・浮かれてないよ。トイレ行きたいだけ」
「じゃあ早く行けよ」
治己に言うと、憐一に知らせて後をつけられるかもしれない。いや、下手したら、田阪と達也も一緒にくるかもしれない。―――絶対嫌だ。和輝はそう思って嘘をついた。

 連絡の際に、森は、生徒達を前にして言った。「いいか。今日と言う時間はもう帰ってこないんだ。悔いなく遊んだか?俺が許すから、今日は好きなだけ楽しめ!男子は女子の部屋に夜這いにでも行け!」
生徒達は皆、あっけにとられて聞いていた。
「何言ってんだよ、森のヤツ・・・」治己が言った。
「さあ。奥さんに逃げられておかしくなったんじゃないの?」
「ああ、そっかあ。可哀相に」
和輝と治己が呑気な会話をしている時、森は呟いていた。マイクでも拾えないような、小さな声だった。「・・・頑張れ、頑張れよ」
そして、二年A組の夜は更けていった。【残り43人】


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