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バトルロワイアルぺティー

6リズコ:2004/03/06(土) 14:04 ID:1Nf1VncU
和輝が顔に描かれた落書きを必死で落としている間、バスはトンネルの中に入っていた。ガイドの若いお姉さんは底抜けに明るい声で言った。
「もうすぐ着きますからね!準備してくださーい!」
騒いでいた生徒達もだんだんと席に着いて、これからの予定について話していた。平和な光景だった。
 うんと長いトンネルを抜けると、そこからは山道に入った。曲がりくねった険しい道を抜けると、景色が変わったように深い森林が広がっていた。
そこを更に抜けると、古ぼけた看板があった。蔵ヶ浦公園。そう書いてあった気がしたが、生徒達にはよく見えなかっただろう。そこでバスは止まった。
「目的地に到着しましたよ!皆さん気をつけてくださいねー」
その声と同時に、生徒達はバスを降り始めた。全く、元気な子達。ガイドのお姉さんはそう思って苦笑した。でも、こんなところで何するんだろ。お姉さんは首をかしげた。

降りる順番待ちをしていた。和輝のすぐ前には、代々木信介(男子二十一番)がいた。学年で一番頭がいい。クラスでは小柄な方で、色白で、おしゃれな眼鏡をかけていた。
その信介の前では、仲田亘佑(男子十一番)が割り込みをしようとしていた。190近い身長に、強面で、鋭い目が信介を見た。信介はビクッとして、小声で和輝に囁いた。「ごめん。もうちょっと待って」
「ううん。いいよ」和輝も答えた。
仕方ないだろう。仲田はかなりの不良で、親がやくざの幹部だという噂まである奴だ。誰だって怖い。
仲田は無表情で、奥にいた塩沢智樹(男子四番)、田辺卓郎(男子八番)、中西諒(男子十番)に言った。「早く出ようぜ」そして、通路に手をかけて、道を塞いだ。自己中なヤツ。和輝はそう思った。
「ああ。悪い」そう言って、中西諒(男子十番)が出てきた。こいつも背が高い。この二人が並ぶと、凄い威圧感があった。
 中西はこのグループのリーダー格だった。やや強面だが、いい男だ。だが、喧嘩はかなり強いらしかった。何と言っても、中学の時に高校生数人に大怪我を負わせて、傷害事件で捕まったといういわくつきの男だった。口調は柔らかめだが、それがかえって怖さを感じさせるらしく、皆あまり近寄らなかった。中西は授業中や休み時間に寝ていることが多いので、“眠れる獅子”という、妙な異名を持っていた。
 次に塩沢智樹が出てきた。派手な茶髪のオールバックに、いつも灰色のコンタクトをしているおしゃれな奴だった。手の甲には蝶の刺青。校則で許されているのか、和輝は激しく疑問に思った。
「めっちゃ渋滞してるじゃーん。プップー!」塩沢はラリったような口調で言った。こいつ、薬中か?和輝は呆れた。治己も同じことを考えていたらしく、小さいため息が聞こえた。
 信介の後ろからは大行列が出来ていて、どことなく苛々している雰囲気が感じられた。しかし、誰も文句を言わなかった。特に仲田は、下手に目をつけられると何をされるかわかったものではなかった。よって皆黙っていた。
一番奥にいた田辺卓郎(男子八番)は、すばやく通路側に来た。「ごめん。待たせたみたいで」信介と和輝に謝って、バスを降りていった。
田辺は、他の三人とはどことなくタイプが違っていた。普通の男子だ。明るくて、お人よしで、他のクラスメイトとも普通に話をしていた。なぜ中西達とつるんでいるのかというのは、誰もが不思議に思っていたことだった。
しかし、田辺はまだわかるとして、他の三人が林間学校に来るのは、少し意外なことだった。まあ、行かないと毎日補習があって、下手すれば単位がとれないという噂があったから、来たのかもしれない(なんて横暴な学校なんだ、と和輝は思った)。
それはともかく、やっと列が動き出した。ほっとしたような空気が流れ、皆足早にバスを降りていった。生徒達は皆、これからの予定に胸を躍らせていた。

ただ、担任の森だけは、これから起こる悲劇を想像して、一人悲しんでいた。誰もいないバスの中で、自分のふがいなさと、どうにも出来ない無力感に頭をかかえた。
 仲田達を修学旅行に呼んだのは森だった。なぜなら、ゲーム不参加者は、有無を言わさず射殺されるからだ。森は仲田の両親に理由を話して、行くように説得してもらった。二人とも辛そうな顔をして、黙って聞いていた。森を攻めることもせず、ただ息子の運命に涙を流していた。やくざと言っても、一人の人間であり、親なのだ。森は離婚した妻の間にいた一人娘を思い出した。自分はどれだけ残酷なことを言ったのかと思うと、胸が張り裂けそうになった。
こんな法律がまた蘇るなんて・・・。しかも、何で自分の学校の、よりにもよって自分のクラスなんだ。俺は、生徒の命よりも自分の命を取ったんだ。
「すまない、皆・・・」三十代後半の男性教師は、涙ぐんでいた。


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