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('A`)は異世界で戦うようです

521名も無きAAのようです:2014/07/22(火) 22:28:02 ID:n5T5Y6H.O
読んでる

522名も無きAAのようです:2014/07/23(水) 21:06:39 ID:Ze/wv61.0
これまとめついてほしいなぁ
こんなワクワクする連載久しぶり

523名も無きAAのようです:2014/07/24(木) 16:12:57 ID:QiXnGvaY0
>>522
文が綺麗で上手いんだよな
一時は説明ぽかった時もあったがそれは作者も自覚してたし何よりそっからレベルが上がってるのがいい
俺もこれ好き

524名も無きAAのようです:2014/07/24(木) 21:21:14 ID:QvEA4Wgs0
段々読む人増えてるしな

5251:2014/07/25(金) 09:41:02 ID:4GacB82k0
どうも1です
現在鋭意書きため中でして、今週の投下は絶望的です
来週の水曜日までには投下したいと思っておりますので、それまでもうしばらくお待ちください

>>520>>521
ありがとうございます
読者様がいるだけで感謝感激です

>>522>>523
手放しに褒められると調子に乗ってしまいそうです
文章に関してはいまだ自信がないので何ともいえませんが、とりあえず勉強というか参考というかはある程度やっております
語彙力がないのでひたすらに読みやすい文章というのは徹頭徹尾励んでいきたいですね

>>524
そのようでうれしい限りです

526名も無きAAのようです:2014/07/25(金) 13:18:42 ID:0fTL4zfk0
( ^ω^)僕は今まで読んだなかでこの作品はアルファベットに匹敵するものになると思ってるお

527名も無きAAのようです:2014/07/25(金) 20:23:09 ID:G21XDRY.C
残り109話か、完結まではまだまだだな

5281:2014/07/27(日) 13:19:41 ID:tVeqCan60
>>526
いやぁそんなことはないと思いますよ
そこまで長くなるとは思いませんし、ましてや初心者なもので
ですがそう言っていただけてとても励みになります

>>527
そんなに続きませんよw

5291:2014/07/28(月) 21:40:41 ID:5PlpwITw0
どうも1です
仕事の都合で投下が金曜日にもつれ込みます
ぽんぽんと投下できていただけに最近の更新遅延が目立って仕方ありません
ですが逃亡は致しませんので生暖かく見守って頂きたいです

530名も無きAAのようです:2014/07/29(火) 02:31:25 ID:iP2M7AtE0
( ^ω^)待ってるお

5311:2014/08/01(金) 21:06:26 ID:Fg3tJaY20



第十二話「心の在処」





5321:2014/08/01(金) 21:09:10 ID:Fg3tJaY20

◇◇◇◇

从;'ー'从ノシ「あ、ツンちゃ〜ん」

ツンを見付けた渡辺は大声をあげて手を振った。街のどこにも魔物がいないことから安心してしまっているのである。本当はどこかに隠れているのかもしれないという不安はあるのだが。

ξ゚⊿゚)ξ「あんたね、どこに魔物が潜んでるのか分からないんだから少し自重しさなさいよ」

渡辺より消耗が少ないツンは、多少息を弾ませているものの顔色は良好である。渡辺と同じくドクオを探し回っていたはずだが、やはり黒の魔術団での経験があるからだろう。

从'ー'从「あのね、どっくん見付かったんだぁ〜」

ξ゚⊿゚)ξ「本当に? よかった……。本人はしぃのとこに?」

从'ー'从「うん。あとは任せろぉ〜って」

ξ;゚⊿゚)ξ「それ死亡フラグよ」

从'ー'从「でもでも、どっくんはやるときはやってくれるんだよぉ〜」

ξ-⊿-)ξ=3「信頼するのもいいけど、あれだけいた魔物が急にいなくなったのはおかしいわ。もしかしたら何かあったのかもしれない」

从'ー'从「そういえば、まだ術式が見つかってないよぉ」

ξ゚⊿゚)ξ「うん。それに、鉱山の方で大規模な爆発があったわ。もしかしたら中にショボンさん達がいるかも」

5331:2014/08/01(金) 21:10:38 ID:Fg3tJaY20

从;'ー'从「ふぇぇ〜、それじゃあ……」

ξ゚⊿゚)ξ「まだわからないけど、事態は急を要するわね。多分だけど、この街の至るところに術式が張り巡らされてるみたいだし」

从;'ー'从「ん〜と、え〜と」

ξ゚⊿゚)ξ「混乱するな。とにかく、一度宿舎に戻って荷物を回収した方がいいわ。中に魔力探査の道具とかもあるし、全体の構図を把握しないことには私達は動けない」

从'ー'从「それは、うん。そうだね」

ξ゚⊿゚)ξ「魔物召喚やら仲間の分断やらうまいことやってくれたみたいだけど、このままやられっぱなしってのは癪だわ。さっさと反撃にでるわよ」

从'ー'从「おー」

走り出すツンに追走する形で渡辺は足を動かしていたが、唐突にツンが速度を緩めると立ち止まった。

ξ゚⊿゚)ξ「……あのさ、ちょっと気になったんだけど」

从'ー'从「なぁに?」

ξ゚⊿゚)ξ「私達が途中よった街で意味の分からない術式があったの覚えてる?」

飛行馬車を降ろされた際に寄った街に確か用度不明の魔法陣があったのを思い出す。その街は人がいなかったことも印象深い。

从'ー'从「覚えてるよぉ。そこから魔物が一杯出てきたよねぇ」

ξ゚⊿゚)ξ「それってさ、この街の状況と似てない?」

从'ー'从「……あ」

渡辺達は自分の目で魔法陣を見たわけではないが、人のいない街で魔物の大量発生。言われてみれば驚くほど酷似している。

だが魔物と戦闘している最中に魔物を喚び出す、もしくは生み出している術式があるのではないかと話をしていた。

ξ゚⊿゚)ξ「さらに、魔法ってのは規模の大小に関わらず魔力を使うものよ。これだけ大きい術式なら余計に魔力をくうはず。この魔力は一人で補える量を越えているといってもいい」

5341:2014/08/01(金) 21:13:01 ID:Fg3tJaY20

从;'ー'从「人のいない街の魔法陣って……」

渡辺は自分の内に浮かんだ考えを否定しようとするが、叶わない。ツンの憶測はどこまでも筋が通りすぎている。

ξ゚⊿゚)ξ「確かドクオ達の話では他の街でも似たようなものを見たってことよね。それらを考慮すれば、ほぼ間違いないと思う」

从;'ー'从「人を魔力に変えたってこと?」

信じたくはない。信じたくないが……。

ξ゚⊿゚)ξ「ええ」

無情にもツンはそれを肯定した。黒の魔術団での経験がこの現実を受け止める心を、冷静さを作り出したのだろう。

ξ゚⊿゚)ξ「そして、私はこんなことができるやつを一人だけ知ってる。黒の魔術団の中でも有名だったわ。自由奔放、唯我独尊で上からの命令なんかくそ食らえ。もっとも扱いが難しいなんて言われてた」

渡辺は無意識に拳を握りしめていた。

罪のない人々を、懸命に生きる人々の未来をこうも簡単に奪ったのだ。

从'ー'从「許せないよ。そんなの」

感情が昂っていくのを止めることができない。今すぐにでもそいつの前に行って文句の一つでも言ってやりたい気分だ。

ξ゚⊿゚)ξ「落ち着きなさい。そいつはオサムっていうんだけど、戦闘はあまり得意じゃなくて、どちらかと言えば頭脳戦がメインよ。けど、こんな風に自分の僕を生み出したりして戦うからある意味貞子より質が悪い」

从'ー'从「どうするの?」

ξ゚⊿゚)ξ「ドクオやショボンさん達が戦ってるんなら、私達がやるべきことは敵の術式を解除するのがベストでしょうね」

从'ー'从「それじゃあ!」

ξ゚⊿゚)ξ「ええ。まずは魔力を辿りましょう。そのためにも宿舎に急ぐわよ」

敵の正体は分かった。やるべきことも定まった。

渡辺はツンの後ろを走る。こんなこと絶対に許してはならない。

そのためにも渡辺は止まってはならないのだ。

握った拳は、固く固く握られたままだった。

5351:2014/08/01(金) 21:16:22 ID:Fg3tJaY20

◇◇◇◇

(゚A゚)「Aaaaaaaaa!!」

ドクオの全身を得体の知れない何かが駆け巡っていく。自我を食い破り、倫理観を破壊し、人としての理性すら闇の底へと沈んでいった。

もう戻れない。いや、戻らない。

大切なものを守らなければならないのだ。そのために必要なら、ドクオは自分すら投げ捨てる覚悟を決めた。

貞子を殺した時、初めて生き物の命を奪った時、ドクオは罪悪感を覚えた。けれど、そうしなければ渡辺やツン、しぃやショボンにモララー、王都に住む人々全てが傷つけられていただろう。

ドクオは自分のせいで誰かが傷つくのを見たくない。

だから強くならなければならない。

今以上に、それ以上に。

(゚A゚)「Foooooooooo!!」

ドクオは立ち上がり、人形へと肉薄する。

(;∵)

一瞬だが人形の顔に焦りが見えた。だが今更そんなことはどうでもいいことだ。

袈裟斬り。斬撃は目で追えないほど早く、空気を切り裂き真空を生む。

刹那、人形の体は肩口から分断された。さらに真空が刃を発生させ、第二波。人形の体のあちこちに深い傷を作っていく。

そこから回し蹴り。分断された人形の上半身は軽く数メートルを越える距離を飛んでいく。

5361:2014/08/01(金) 21:18:43 ID:Fg3tJaY20

(゚A゚)

それを追ってドクオは走る。一瞬でそれに追い付くと元の形が残らぬほど縦横無尽に斬撃を繰り出し、最後に大きく上方から降り下ろすと、前方広範囲がまとめて消し飛んだ。

ドクオはゆらりと残した下半身へと振り返る。

街全体を覆っているはずの結界が淡く色付いていた。そこから幾筋もの光が人形に集まり、人形は元の形へと再生する。

( ∵)

(゚∀゚)「GYAHAHAHAHAHAHA!!」

笑いが止まらない。楽しい、愉快だ。

壊しても壊してもこいつは戦える。殺しても殺してもこいつは動ける。

ならばもっと徹底的に、もっともっと絶望的に蹂躙してやる。

(゚∀゚)「Haaaaaaaa!!」

( ∵)

人形が動いた。再生した腕をこちらに向け、同時に大量の魔力が収束。全てを殺す絶対的な力が地を抉り、周囲の建物を薙ぎ倒しながらドクオへと向かってくる。

ドクオは片手を前に出し、軽く払った。それだけで魔力は霧散し、沈黙が訪れる。

(゚∀゚)「AHYA!」

ドクオが跳んだ。一瞬で人形の真上に移動し、落下する勢いを利用して剣を降り下ろす。

対応できない人形は数瞬遅れて防御するが、間に合わない。頭から真っ二つになりごみのように転がる。

着地したドクオは人形に近付くと片方を持ち上げた。

(゚A゚)

先程までの笑みはもうない。

がっかりだった。あまりにも面白くない。神を謳いながらこの程度の力、自分の足元にも及ばないなど甚だしい。

これは油断だったのかもしれない。強大すぎる力を持つがゆえの慢心、ドクオは持っていたそれを投げ捨てる。

5371:2014/08/01(金) 21:20:51 ID:Fg3tJaY20

だから、ドクオは気付かなかった。気付けなかった。

振り返ったとき、持たなかった半身がいつの間にか消えていた。辺りを見回しても見当たらず、まるで始めからなかったかのように跡すら残っていなかった。

途端、頭上から光が降り注いだ。ドクオの半径数メートルが吹き飛び、砂塵があがる。さらに四方八方から光球が踊り、ドクオは避けることさえできず余すことなく被弾した。

(#A"+)

攻撃が止み、視界が開けた頃にはドクオの体は肉が抉れ骨もひしゃげ、全身から血を流し、本来ならば死んでもおかしくないほどの傷を負っていた。

ドクオから数メートル離れたところに光の粒子が集まり、人形が現れる。切られたはずの体はすでに再生しており、余裕を見せつけるようにこちらの様子をうかがっていた。

(#∀"+)

ドクオが顔を歪めて、笑う。直後、彼を中心として暴風が吹き荒れた。

(( ∵))

人形は微動だにしない。それでもよく見なければ分からないほどではあるが、小さく震えているのをドクオは確認した。

自分達は戦いの権化だ。壊すために生まれ、殺すために存在し、全てを無に帰すために生きている。

泣け、逃げ惑え、恐怖しろ。

それがドクオを更なる存在へと昇らせるのだ。

(#∀"+)「Aaaaaaaa!!」

ドクオと人形の戦いはまた一つ高みへと進む。

もはや人という存在では止められないところまで。

5381:2014/08/01(金) 21:23:33 ID:Fg3tJaY20



(*- _-)「ん……」

大気を震わせ地を揺らすほどの爆音でしぃはようやく目を覚ます。

確か、自分は得体の知れない何かに襲撃されて抵抗できずに気絶してしまったはずだ。間違いなく死んだと思っていたのだが、五体満足でいるところからどうやら生き延びているらしい。

ということは、渡辺かツンがドクオを連れてきてくれたのだろう。

(*゚ー゚)「えっと……」

ずきりと体が痛む。人形に掴まれた際体内のマナを根こそぎ奪われた影響か、うまく体が動かず自分の体じゃないような錯覚を覚えてしまう。

(;*゚ー゚)「それより状況は……」

今なお続いている戦闘音はしぃの遥か頭上から聞こえていた。そちらへと視線をやると、宙に浮いた二人の人間が目にも留まらぬ速さで攻防を繰り広げている。

しかも人形は傷一つないのに対し、ドクオの体は目も当てられないほどの傷だった。

なのに、ドクオは歪に笑っている。

攻撃するのが愉しくて仕方ない、傷つけるのが嬉しくて仕方ない。

彼の背中からはっきりと伝わってくる異常とさえいえる感情は、しぃの知っている彼とは似ても似つかない悪魔のような存在へと変貌を遂げていた。

(#∀"+)

(;∵)

(;*゚ー゚)「あれが、ドクオさん?」

5391:2014/08/01(金) 21:25:51 ID:Fg3tJaY20

しぃは、何故だかこの戦いを止めなくてはならないと本能的に察する。このままではドクオが手の届かない遠くへと行ってしまうような気がした。

けれどもこの人外としかいいようのない戦闘は、体力も底を尽きた今の自分では、いや、仮に万全の状態で介入したところで止めることなど出来やしないだろう。

ドクオの剣と人形の手が交差し、衝撃波が生じる。

(;*つー゚)「あぅっ……」

未だ嬉々として攻撃を続けるドクオは、あれだけの傷を抱えながらなおも優勢を保っていた。表情のない人形の方があまりの猛攻に焦っているようにも見える。

やはり、あれはドクオではない。

しぃの知っているドクオは戦うことを嫌っている。

しぃの知っているドクオはあんな歪んだ笑みを浮かべたりしない。

あれは、本人の意思ではなく、悪意ある他人の手により操られているに違いないのだ。

しぃはドクオの仲間である前に、一人の人間としてこんなことは止めさせなければならない。

魔物に囲まれたとき、しぃは選んでしまった。過去と向き合う覚悟を決めた。

もう失ってはいけない。そのために、今、しぃは立ち上がらなければならないのだ。

(*゚ー゚)(何ができるか分からないけれど、やらなきゃ)

ぷるぷると震える足腰に渇をいれ、しぃはしっかりと立ち上がる。ステッキを握り締めて━━

5401:2014/08/01(金) 21:28:18 ID:Fg3tJaY20

( ゚"_ゞ゚)「どこへいこうというのかね?」

唐突に聞こえた声に振り向いた。

( ゚"_ゞ゚)「興を削ぐようなことは控えてもらおう。大切な実験中なんだ」

(*゚ー゚)「あなたは……」

( ゚"_ゞ゚)「君は今、あれを見て恐怖しているかね? ならばそれが正常な反応だよ。あれは人という領域を越えて神の頂に登り詰めようとしているのだから」

全身黒一色の男は顎に手をやりながら、にやにやと不気味に笑っている。おそらく、敵ではあるのだろうが一切の敵意が感じられない。

ただ新しい玩具を与えられた子供のように、どこまでも純粋に、無邪気に今を楽しんでいる。

(*゚ー゚)「あなたが、今回の首謀者ですか」

( ゚"_ゞ゚)「だとしたら?」

(*゚ー゚)「私はここであなたを討たねばなりません」

( ゚"_ゞ゚)「それは不可能だろう。君は魔物との戦いで消耗している。対して、俺は君一人程度ならば簡単にあしらえる力を持っている」

それに、と男は続けた。

( ゚"_ゞ゚)「この実験を見届けなければならない。やるというなら構わないが、早めに終わらせてもらおう」

瞬間、男の周囲に魔法陣が展開された。並の魔力ではない。街一つならば簡単に消し飛ばせるほどの膨大な魔力、あんなものを放たれてはしぃなど一たまりもない。

(;*゚ー゚)「くっ……」

( ゚"_ゞ゚)「これは忠告だ。余計な真似をせず、大人しくあれを眺めていろ。それが正しい選択だ」

また、だ。しぃは己の無力さを噛み締める。

何かが出来るはずなのに、何も出来ないという矛盾。やることは分かっていても力及ばず、無駄に時間をもて余すしかない。

心なき力は暴力だが、力なき心はなんだというのか。

(*゚ー゚)「……一つお聞きしたいことがあります」

5411:2014/08/01(金) 21:30:18 ID:Fg3tJaY20

力はなくとも、心がまだ折れていないのならば、出来ることはあるのではないか。

それだけを信じてしぃは口を開く。

( ゚"_ゞ゚)「何かね?」

(*゚ー゚)「あれはなんですか? そして、ドクオさんはどうなってしまったのですか?」

人のようで人でない存在と、人なのに人を外れた存在。この二つの矛盾がどうにも引っ掛かって仕方がない。

( ゚"_ゞ゚)「簡単な話さ。人のもつ魔力を純度を高めて変換した、いわば人を越えたもの。そして、魔剣の主は言わずとも分かるだろう」

(*゚ー゚)「……分かりません。ドクオさんは今まで人であり続けました。それが、何故今更……」

( ゚"_ゞ゚)「今までは力をうまく伝えていなかったんだろう。彼は力をもて余していた」

(*゚ー゚)「ならば、あれが本来の姿であると?」

( ゚"_ゞ゚)「そういうことだ。神に近しいあれと接触したことで秘められたものが溢れだしたのさ」

(*゚ー゚)「……それと、あの人形は人の魔力をマナに変換したと言いましたが、とさか」

( ゚"_ゞ゚)「元は人だよ」

男が言い終わる前にしぃはステッキを振るった。

しかし、彼は余裕を持ってそれを受け止める。

( ゚"_ゞ゚)「どういうつもりかね?」

(* ー )「あなたは、人を、命をなんだと思っているんですか?」

5421:2014/08/01(金) 21:31:44 ID:Fg3tJaY20

あれが元は人だというなら、この男の手により望まぬ戦いを強いられているということ。

争いなどと無縁の人だったのかもしれないし、温厚な人間だったかもしれない。

( ゚"_ゞ゚)「皆決まって同じことを言うんだな。所詮いつかは死を迎える。早いか遅いか、それだけの無意味な生を俺が意味を与えているんだ」

(#*゚ー゚)「あなたは神になったつもりですか!? 力に溺れ、人の命を悪戯に弄ぶなど許されるはずがないでしょう!!」

人の命は他人に決められるものではない。自分で決めて自分で選ぶことにこそ価値がある。

しぃはそのことに気付くまで時間がかかり、後悔を繰り返してきた。

だからこそ、その行動にどれだけの覚悟と意味があるかが分かる。

( ゚"_ゞ゚)「だからどうした。飯を食い糞を垂れ、性に溺れ寝るだけの存在に意味があるのか? そんなものに俺は興味などない」

(#*゚ー゚)「人の価値はそんなところにあるんじゃありません!! それは心に、魂に、歩んだ道にこそ真の価値がある!! 苦しんで、悩んで、涙を流したとしても、道のどこかで振り返ったとき、その時にこそ人は自分の生に、命に価値を見出だすんですよ!!」

(#*゚ー゚)「それを、あなたは、踏みにじった。私は人として、騎士として、あなたを許しません!!」

( ゚"_ゞ゚)「許さない、ときたか。くっくっくっ、いいだろう。遊んでやろう、若き騎士よ。その人の価値とやら、見せてみろ」

5431:2014/08/01(金) 21:33:21 ID:Fg3tJaY20

◇◇◇◇

瓦解した鉱山跡地にてモララーは一人槍を振るっていた。

何故自分がこんなところにいるのか、体が本調子ではないのか、疑問は多々あったが熟考する暇もなくモララーは戦闘を余儀なくさせられている。

近くには血塗れのショボンも転がっているというのに、早めに決着をつけねばならない。

( ;・∀・)「しっかし、どうなってんだこりゃ」

( ´W`)

( ・−・ )

虚ろな目をした二人の刺客はうまく連携を取りながらモララーを攻め立てる。

右から一人、華奢な体躯の割りに素早い動きでこちらとの距離を詰めると下から強烈な蹴りが繰り出された。

上体を反らしうまく避けるが、左からもう一人。こちらはハンマーのような大きい鈍器を手にしている。

( ;・∀・)「容赦ねえな、ったくよ!」

モララーは反らした半身を戻さずそのままバク転。返る力でハンマーを持った手を同時に蹴りあげると、男はハンマーを落とした。

不安定な足場だが着地。瞬間、右の男が攻撃の体勢に入っているのが見える。

5441:2014/08/01(金) 21:36:29 ID:Fg3tJaY20

( ・∀・)「そら!」

弱い魔法で牽制すると、男は横に跳んだ。それを追ってモララーも跳ぶと、左の男は素早くハンマーを拾い上げ、こちらの斜線上に投擲する。

( ・∀・)「っと」

下から槍を当てて上方に弾き、広範囲に魔法を放った。モララーを中心に半径数メートルを光の槍が降り注ぐ。二人の男は防御すらせずに槍に貫かれ、力なく倒れていった。

( ・∀・)「なんだよ。もう終わりか」

と、モララーが槍を折り畳もうとしたとき━━

( ´W`)

( ・−・ )

何事もなかったかのように立ち上がる男達。依然彼らの体には穴が空いたままだ。常人であればショック死してもおかしくない傷を負いながら、彼らは平然と立ち上がったのである。

さすがのモララーもこの二人に違和感を覚え始めた。

( ;・∀・)(なんだこいつら。敵の魔法なのか?)

どういうことかは分からないが、この戦いを終わらせるにはこの二人を殺す他ないようだ。

どれだけ切り刻んでも、どれだけ中を掻き回しても、こいつらは体が動く限り戦い続けるのだろう。

( ;・∀・)(とんだことになりやがったぜ)

ゾンビのように酷く緩慢とした動きで向かってくる二人を、モララーは槍でいなしながら考える。

少し離れたところで倒れているショボンと今の状況、さらに正体不明の男と出会ってから定かではない記憶。これらから導き出されるのは、自分が敵に操られショボンと戦わされた。

そして、何らかの方法でショボンはモララーを救いだし倒れてしまった、というところだろう。

5451:2014/08/01(金) 21:37:43 ID:Fg3tJaY20

では、この二人はなんだろうか。これまた推測ではあるが、敵の魔法によってモララーと同じく操られた人間、もしくは始めから作られた存在。

どちらにせよ敵であることには変わりないのだから、さっさと終わらせるに限る。

問題はどこまでのダメージが致命傷となるか、だ。

現状、普通の人間であれば死んでいるはずの傷ももろともせず今だ活動している彼らは、早さはなくなったものの十分に戦えるようだった。

( ・∀・)(てことは、本当に動けなくなるまでやらなきゃこいつらは止まらない)

上等だ。目の前に自分を止める奴がいるなら倒すまで。

モララーはそうやって生きてきたし、これからもそうして生きる。

邪魔をするやつは何人たりとも許さない。

( ・∀・)「行くぜ! おらぁ!」

モララーは槍を大きく振って衝撃波を放つ。

男達が吹き飛び、そのうちの武器を持たない男へと肉薄。急所である心臓部へと槍を突き立て、刺さったままぐるりと体を反転させる。

すぐ後ろまで迫っていた男を横から殴り付け槍を引くと、刺さっていた男も数メートルほどバウンドして動きを止めた。

5461:2014/08/01(金) 21:40:04 ID:Fg3tJaY20

そこから魔法、一点集中型の巨大な光の槍を展開して止め。大きなクレーターを形成して男は瓦礫へと沈んだ。

( ・∀・)「あらよっと!」

すぐに地を蹴り、宙を舞う。片方の男が拾ったハンマーを振りかぶっていた。

地響きと共にハンマーが誰もいない地を叩き、その隙に後方へ回ったモララーは首を切り飛ばす。

何も出来ずに倒れた男を見下ろし、一息つこうかと煙草を取り出しかけて━━

( ・∀・)「おっと」

振り向き様に槍を分解。巻き付けて男を拘束する。

( ・∀・)「こんなんじゃ不意打ちにもならねえぞ」

男の胸に手を当て、魔法陣を展開。体の内部を破壊する強力な攻撃を使い、そこから槍を振って遠くへ投げる。

( ・∀・)「めんどくせえ。終わらせ━━」

(´ ω `)「やめろ……」

( ・∀・)そ「副団長!?」

魔法陣を展開させかけて、モララーは慌てて止めた。敵の二人はもはや虫の息で、起き上がるのにも相当な時間をかけている。

5471:2014/08/01(金) 21:41:03 ID:Fg3tJaY20

( ・∀・)「大丈夫ですか? 俺が油断したせいで……」

(´ ω `)「謝罪は……あとだ。あの二人を、殺してはいけない」

( ・∀・)「はっ?」

(´ ω `)「あれは、一般人だ。間違いなく」

( ・∀・)「一般人て……」

(´ ω `)「僕達は……騎士だ。救わなきゃならない。だから」

満身創痍で立ち上がるショボン。足腰は震え、まるで生まれたての動物のように弱々しい。

( ; ・∀・)「そんな傷で戦うつもりですか!?」

(´ ω `)「当たり、前だ。僕は騎士で、彼らは一般人。命をかけてまで救うべき人達なんだ!! それが、僕の道なんだよ!!」

( ・∀・)「……分かりました。あいつらは敵に操られてるんですよね? なら、副団長は魔法の解析をお願いします。俺は足止めに徹しますから」

(´ ω `)「くれぐれも、殺すなよ」

( ・∀・)「了解」

騎士としての誇りや矜持がショボンを立たせているなら、その部下である自分はそれを支えるために働かねばならない。

尊敬する上司のため、先輩のため、決意新たにモララーは槍を振るう。

( ・∀・)「仕切り直しだよこの野郎」

5481:2014/08/01(金) 21:42:01 ID:Fg3tJaY20

◇◇◇◇

ξ;゚⊿゚)ξ「何よ、これ」

宿舎までたどり着いたツンと渡辺は、目の前で繰り広げられる戦いに萎縮してしまった。

人を越えた戦いとはまさにこのことだろう。黒の魔術団でさえここまでの実力を持つものはいなかったはずだ。

つまり、これは奴が生み出した戦闘兵器ということなのだろう。

从'ー'从「……どっくん」

渡辺が不安げに目の前の光景を眺めて呟く。

ツンは何かを言わねばならない、と察したがそれよりも大事なことがある今それを言うときではない。

ξ゚⊿゚)ξ「渡辺。早く宿舎に入りましょう。私達にはやることがある。優先順位を間違えちゃ駄目よ」

从'ー'从「うん」

戦場を避けて宿舎に侵入すると、中は大分荒らされてはいるもののツンと渡辺の荷物は無事だった。中身も無事だ。

ξ゚⊿゚)ξ「これと、これ。あとは、これもね」

必要なものを取り出し、持参したポシェットに入れていく。すると、隣でそれを見ていた渡辺が、

从'ー'从「そういえばしぃちゃんはどこかなぁ?」

ξ゚⊿゚)ξ「……確かに見当たらないわね」

彼女も相当消耗しているはずだ。魔物がいなくなったとはいえ、敵は無尽蔵に魔物を生み出すような魔法を操れるのだ。どこかで休んでいるのならばいいのだが。

5491:2014/08/01(金) 21:43:33 ID:Fg3tJaY20

ξ゚⊿゚)ξ「……一応これ飲みなさい。全快とはいかなくても、魔力は回復するわ」

小さな瓶詰めの液体を渡辺に渡し、自らも同じものを飲み干す。これで魔物と遭遇しても対応できるはずだ。

从'ー'从「……ねえ、やっぱり」

ξ゚⊿゚)ξ「分かってる。もしかしたらって可能性もあるしね。念のためこの周辺を━━」

ツンが言い終わる前に、部屋の壁を突き破って何かが飛んできた。二、三度床を跳ねて止まったそれを見て、思わずツンは駆け寄る。

(*#ー")

ξ;゚⊿゚)ξ「しぃ!?」

从;'ー'从「しぃちゃん!!」

傷だらけのボロボロ。衣服は破れ、露出した肌は裂けて血が滲んでいる。

( ゚"_ゞ゚)「おや、小娘と遊んでいたら忌み子と道具に遭遇するなんてな」

穴の空いた壁から男が顔を出した。

ξ゚⊿゚)ξ「棺桶死オサム……」

( ゚"_ゞ゚)「久しいな、貞子の道具。君も俺の研究対象として欲しかったのだが、もはや無用の産物だよ」

ツンはオサムを睨み付ける。この男ほど生理的に嫌悪感を抱かせる人間も珍しい。見ただけで嘔吐感が込み上げてきた。

5501:2014/08/01(金) 21:44:56 ID:Fg3tJaY20

ξ゚⊿゚)ξ「あんたなんかに体をいじくられなかっただけ不幸中の幸いだったわ」

( ゚"_ゞ゚)「そう嫌わないでくれ。今俺は気分がいいんだ。魔剣を覚醒させ、神を創造した。もはや君達では止められないほどに事態は進展したのさ」

ξ゚⊿゚)ξ「冗談じゃない。あんたのやり口くらい私が分からないとでも思ってんの? 止めてみせるわ。こんなくっだらない計画、全部ね」

( ゚"_ゞ゚)「相変わらず威勢だけはいい。王都の連中に感化されたようだ」

ξ゚⊿゚)ξ「……渡辺」

ツンは杖を構えてオサムと対峙する。

ξ゚⊿゚)ξ「ちょっと野暮用ができたの。しぃを連れて話した通りにできる?」

从;'ー'从「え? でも……」

ξ゚⊿゚)ξ「お願い。黒の魔術団とのけじめはきっちりつけときたいの。特にこいつは、私の体に描かれてる魔法陣の考案者だからね」

本来であれば貞子に対するけじめだったのだ。しかし、この男も貞子同様人を弄ぶ、いやそれ以上の屑。黒の魔術団を知るツンとしては何がなんでも止めなければならない。

(*#ー")「駄目……です」

臨戦態勢に入ったツンの後ろから、小さな小江が聞こえた。

从;'ー'从「しぃちゃん!? 立ち上がっちゃ駄目だよ!!」

しぃはよろよろと立ち上がると、ツンの隣でステッキを構える。

(*#ー")「この人は、私が倒さないと……」

5511:2014/08/01(金) 21:46:16 ID:Fg3tJaY20

小さな声だが、確かな意思を感じる声色。つい先程までおどおどしていたはずの彼女とはうってかわって、決意が溢れている。

ξ゚⊿゚)ξ「無茶よ。何があったかは知らないけど、その体じゃろくに戦えない。休んでなさい」

(*#ー")「人を、命を、この人は弄んでいるんです! たくさんの可能性を、未来を奪い、自分の欲求を満たすための道具にしか思ってない人間を、私は許せません!」

从'ー'从「しぃちゃん……」

しぃの想いは人として、騎士として至極当然のことなのだろう。そして、本人もそうありたいと願うからこそ、ここに立っている。

自分の命を省みずに。

ツンはしぃと自分を重ねてしまった。

自分の理想や思想なんて、黒の魔術団に入った時からどこにもなかったとツンは気づかされる。

どこまでも真っ直ぐで、愚直なほどの理想をツンはどこかに置き忘れてしまったのかもしれない。

ξ゚⊿゚)ξ(……子供なのは私なのかも)

全てに絶望した自分と、そこから立ち上がろうと足掻くしぃ。

ツンにはしぃを止める権利などありやしない。

从'ー'从「それなら、私も協力するよぉ〜。一人じゃ出来ないことも、みんなでやれば不可能じゃないよ」

(*#ー")「ですが」

从'ー'从「ね? ツンちゃん」

渡辺に振られツンは少しの間、迷う。

自分は二人の隣に立つ権利があるだろうか?

どこまでも愚かな自分は、正義のために戦えるのだろうか?

ξ-⊿-)ξ

5521:2014/08/01(金) 21:47:35 ID:Fg3tJaY20

そんなもの、ありやしない。けれど、ツンは今自分の意思で決めることができる。

心のままに、歩くことができる。

ξ゚⊿゚)ξ「しぃはまず体力と魔力の回復をしなさい。そこの鞄に回復瓶が入ってる。渡辺と私で少し時間を稼ぐわ」

从'ー'从「ツンちゃん!」

ξ゚⊿゚)ξ「勘違いしないで。こいつを倒すには三人の方がいいって判断しただけよ。それじゃ、やるわよ!」

( ゚"_ゞ゚)「相談は終わったか? それじゃ心置きなくやらせてもらおう」

オサムの周辺に魔法陣がいくつも出現する。そこから三体の魔物といくつかの光球が現れた。

ξ゚⊿゚)ξ「渡辺は右の魔物を、私は真ん中と左のをやる」

从'ー'从「了解だよぉ〜」

ツンは杖を前に振ると、すかさず攻撃を放つ。貞子直伝の闇魔法、巨大な爪を模した黒い塊がオサムのいた辺りをまとめて抉りとった。

さらに頭上から黒雷。敵の立っている場所をまとめて吹き飛ばす。

ξ゚⊿゚)ξ「これで終わりじゃないでしょ?」

もくもくとあがる煙の中から浮かんでいた光球が飛来した。

ツンはひらりと横に飛んでそれをかわす。闇魔法では一切の防御魔法を形成することができないため、防御や回避は己の体術次第なのだ。

从'ー'从「えーい!」

渡辺が隣で箒を降っていた。部屋全体を包む莫大な炎の渦がいくつも巻き起こり、周辺の物という物が消し炭になっていく。

5531:2014/08/01(金) 21:49:20 ID:Fg3tJaY20

ξ;゚⊿゚)ξ「出力間違えてんじゃないの?」

渡辺の攻撃に呆れながらも魔法をいくつも設置していく。部屋から出さないように、しぃに被害が及ばないように考えながら、敵の行動を予測しながら。

( ゚"_ゞ゚)「なかなかやるな」

視界が一気にクリアになる。オサムが何かしたのか、煙が一斉に掻き消えた。

( ゚"_ゞ゚)「だが甘い」

オサムの目の前に生き耐えた魔物が横たわっている。それらはすぐに光となり、魔法となり、凶器となってツンと渡辺に降り注ぐ。

从'ー'从「ツンちゃん!」

渡辺がツンの前に躍り出て防御結界を形成した。結界に弾かれ、光の槍は霧散する。

ξ゚⊿゚)ξ「喰らいなさい!」

床が盛り上がり、板を突き破って黒い棘が現れた。それに触れた木の板は瞬時に溶けていく。

オサムの後方にまで及んだ黒い棘は、彼の行動を制限すると同時にこちらの動きを見えなくさせた。

5541:2014/08/01(金) 21:52:02 ID:Fg3tJaY20

さらにツンはその棘を起点として黒い霧を噴出させる。

( ゚"_ゞ゚)「これは……」

ξ゚⊿゚)ξ「闇毒よ。体内に入れば魔力と臓器を蝕む強力な毒にあんたは耐えられるかしら」

( ゚"_ゞ゚)「戦法としては面白いが、まだまだだな」

不意に、後ろから衝撃。一気に部屋の端まで叩きつけられる。

ξ ⊿ )ξ「がはっ……」

( ゚"_ゞ゚)「幻も見分けられないとは、やはりまだ子供か」

从'ー'从「ツンちゃん一人じゃないよ」

渡辺の炎がオサムを包んだ。周囲の魔力が瞬時に膨れ上がり、さらに火力を増す。

ξ;゚⊿゚)ξ「駄目! それは━━」

( ゚"_ゞ゚)「幻だ」

从;'ー'从「え?」

渡辺の目の前にオサムが現れ、グーで殴り付ける。体を崩した渡辺を、さらに魔法で弾き飛ばす。

ξ゚⊿゚)ξ「こんのぉ!」

闇で作られた龍がオサムへと迫る。同時に設置した魔法も発動。四方八方を囲んで動きを封じたはずが━━

( ゚"_ゞ゚)「弱いな」

オサムは手を頭上に掲げる。それだけで魔力に戻された魔法が彼の掌に収束してしまった。

( ゚"_ゞ゚)「君達程度の魔法なら瞬時に解析できる。勝ち目はないと思うぞ」

(*゚ー゚)「それはどうでしょうか」

5551:2014/08/01(金) 21:53:13 ID:Fg3tJaY20

しぃの声が静かに、しかしはっきりと響いた。オサムが振り向く前に肉薄していたしぃは彼の体に魔力を放出する。

魔法として論理的に構築されたものではなく、相手を傷つけるだけの暴力的な魔法。

オサムは防ぐ間もなく直撃し、部屋の壁を破り、ツンの設置魔法をいくつかその身に浴びながら彼は外へと押し出された。

从'ー'从「もう大丈夫なの?」

(*゚ー゚)「ええ。大分回復しました。お二人ともありがとうございます」

ξ゚⊿゚)ξ「礼を言うより、やることがあるわ。さっさと終わらせてシャワー浴びるわよ」

三人で外へ出ると、ボロボロになったオサムが立ち上がるところだった。肩で息をしながらにやりと笑っている。

( #"_ゞ゚)「さすがに、今のは効いたよ。うまく連携を取られる対処できないものだな」

ξ゚⊿゚)ξ「さっさとこの街に張り巡らせた魔法を解きなさい。そうすれば半殺しで勘弁してあげる」

( #"_ゞ゚)「それは無理な相談だ。すでに計画は最終段階に入っている」

从'ー'从「どういうこと?」

( #"_ゞ゚)「さてな。俺はここらで退かせてもらおう。あとは君達の目で確かめるといい」

5561:2014/08/01(金) 21:54:35 ID:Fg3tJaY20

そう言ってオサムの姿が薄くなっていく。ツンはすぐに魔法で攻撃するものの、幻を貫通しただけでどこかへいってしまった。

あとには沈黙と破壊の爪痕だけが残る。三人は互いに顔を見合わせるが、言葉はない。

ξ゚⊿゚)ξ「計画ってなんなのよ」

やがて、ツンがぼつりと呟いた。

从'ー'从「なんだろう。でもでも、よくないことなのは何となくわかるよぉ〜」

渡辺が気の抜ける間延びした声で言うが、彼女からすれば十分に気を引き締めているのかもしれない。

(*゚ー゚)「……そういえば、ドクオさんは?」

思い出したようにしぃが言うと、ツンもはっとなる。確か、のっぺりとした人形のようなものと戦闘していたはずだが、近くだというのにめっきり音が聞こえない。

ξ゚⊿゚)ξ「さすがに死んでないとは思うけど、様子を見に行きましょう」

5571:2014/08/01(金) 21:55:58 ID:Fg3tJaY20

◇◇◇◇

貧しい家に生を受け、早くに両親を亡くして物乞いにまで身を堕とし、日々の食事に困るような生活が続いた自分にも目指すものができた。

報われぬ者に救いの手を。

なんといい言葉だろう。

報われぬ自分には誰も救いの手を差し伸べてはくれなかったが、たまたま盗みに入ったきらびやかな建物の中で一人の男が分厚い本を読み上げていたのを聞いた。

幼かった彼にはそれが何なのかは分からなかったが、あれは神の御教を謳う聖書だったのだ。

それを読み上げる時間は決まっていて、朝昼晩の三回。彼は当初の目的も忘れて何度も何度もその男の言葉を聞きに足しげく通うまでになる。

そんなある日、彼はとうとう見つかってしまった。自分が街で悪評高い盗人だということも男は知っていたが、彼は怒られることもなくもてなされてしまう。

『腹が減ったのならいつでも来るといい。だが、人様の物を盗るのはよくないことだ』

彼はそう言って笑顔で自分の頭を撫でてくれた。

報われぬ者に救いの手を。

その日、その時、その瞬間から彼のいく道は決まっていたのかもしれない。

男は教会に務める神父なのだといった。謳いあげたのは聖書という。

彼は熱心に神父の教えを聞き、その言葉の通りに生きていく。

誰も救ってはくれないが、神父はこんな子供を救ってくれた。

だから自分も同じように、誰かを救う人間になろう。

神の御教をどこまでも愚直に守っていこう。

彼に一つの道ができた。

5581:2014/08/01(金) 21:57:02 ID:Fg3tJaY20



『そうするほか、我が子達を助ける方法はないんだな』

男の声が静かに響いた。目の前にいるのは男と、女。計三人の人間が神妙な顔つきで話し合っている。

『あなたが協力してくれるというなら、私達が口を利いて差し上げますわ。あなた一人と未来ある子供達の命、考えるまでも思いますが……』

『分かっているさ。私は老い先短い。こんな老いぼれの体でよければ喜んで差し出そう』

『話が分かる御仁で助かりますよ。これで俺の研究も飛躍的に進むでしょう』

男がにたりと笑う。その笑顔がけして善意的なものではないことは分かっていた。それでも、彼は提示された条件を飲む他に子供達を救う手段がないことを知っている。

孤児など食い扶持を減らすお荷物でしかない。

みすぼらしい子供を喜んで引き取るような人間はこの世界にはいないのだ。

誰も彼もが地位と権力に固執し、偽善と欺瞞を振りかざし、人を人とも思わぬ愚行を繰り返す。己を魅せるために金を使い、見せしめのために人をも殺す。人命など路傍の石よりも価値のないごみのような扱い。

それでも彼が善であれたのは、子供達の無垢な心と神の教えがあったから。報われぬ者達に救いの手を、悪しきものは裁きの鉄槌を。

それは彼の矜持であり、信念であり、生きてきた道でもある。

だからこそこうして全てを受け入れる覚悟ができた。

『老兵はただ去り行くのみ。世界が戦場ならば、それもまた一つの真理だ』

『殊勝な心がけでございますわ』

『この教会はどうされるおつもりで?』

『信仰などとっくに廃れている。ならば無くなったところで特に影響はないだろう。好きにするがいい』

『そうですか。ならば好きにさせていただきましょう』

559名も無きAAのようです:2014/08/01(金) 22:03:01 ID:P.oddmBI0
見てるよ
支援

5601:2014/08/01(金) 22:03:22 ID:Fg3tJaY20



『神父様、どうして教会の取り壊しを受け入れたんですか?』

幼い少女に尋ねられて、彼は苦笑する。

神父のいない教会に価値はない。子供のいない孤児院に意味はない。

自分が抱えた荷物は自分だけで背負うものだ。ましてや幼い子供達に負い目を感じて欲しくはない。彼女らは自分の、そして未来を担うかけがえのない財産なのだから。

全てを明かすこともできただろう。明かした上で、選択を強いることもできた。だがそうしたところで彼女達の命を自分一人で守ることなどできやしない。

老兵は去るのみ。

彼はもう世界から消える。大切なものを救うために。

『私の役目はもう終わったのさ。君達は君達の道を歩むといい。生きるための道は信頼できる人間が教えてくれるだろう』

『でも……』

『大丈夫。何も恐れることはない。君達は何でもできて、何にでもなれる。そのための下地は十分に教えたはずだ』

少女は首を傾げる。

聡い子だ、今は分からずともきっと近い将来に理解するだろう。その時、自分が言ったことを正しく導いてくれれば、蒔いた種は芽吹くはず。

自然と笑みがこぼれた。

『いつか君は大きな壁の前に立ちすくむかもしれない。今日という日を後悔するかもしれない。けれども、君は君の信じる道を行きなさい。たとえどれだけ辛くとも、悲しもうとも、歩くことをやめてはいけない。その先にこそ、君が君であるための答えを見つけられるはずだから』

神は人を救わない。どれだけ綺麗なお題目を掲げたところで、それは紛れもない事実。

人を救うのはいつだって人なのだ。人は一人で生きていけないから、手を取り合って助け合いながら生きていく。

魔法が繁栄し、その事実を人が知ったとき、神は必要とされなくなった。

けれども、彼には神がいないとは思えないのだ。人の未来は誰にも分からない。だからこそその先にある巡り合わせというのは運命の悪戯だとか、奇跡だとか呼ばれるのだろう。

願わくば、彼女に幸多き人生を。

5611:2014/08/01(金) 22:06:33 ID:Fg3tJaY20



『何を……する気だ……』

『何、あなたはこれから神にも等しい存在へと昇華する。そのための準備さ』

『……ならばこれはなんだ!! お前達は人々を救うための組織ではなかったのか!? なのに、なのに━━』

目の前に積まれているのはたくさんの人、人、人。どれもこれも血みどろで息をしていない。

『必要な犠牲だよ、神父様。世界の平和というのは常に犠牲の上に成り立っている。先の戦争も多大な犠牲のお陰で終結したに過ぎない』

『だからといって、罪もない人を手にかけていいはずがないだろう!?』

『綺麗事だよ。それに、この世界は近い内に生まれ変わる』

『……どういうことだ』

『この世界に人間という病原菌がいる限り平和など訪れやしない。だから、一度壊すのさ。そこから世界は新たな歴史を歩むことになる』

『何を……』

『あなたには、全てを壊してもらう。世界から、人という人を』

『やめろ……やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉ』

『あははははははははははははは!!』

5621:2014/08/01(金) 22:09:16 ID:Fg3tJaY20

◇◇◇◇

( A )「ぐっ……」

間一髪、ドクオは自ら振り下ろした剣を握っていた。

( ∵)

彼の下には傷だらけの人形が横たわっている。驚異的な再生力を見せていたはずが、いつの間にか体中ボロボロで身動き一つしない。

( A )(今のは、こいつの記憶か?)

戦いの最中、突如ドクオの脳裏に浮かんだ映像に出てきた人物はどこか人形の面影があったように思える。

以前にも似たようなことがあった。貞子と戦う前に、ツンのものと思しき記憶が流れ込んできたことが。

何故このようなことが起こっているのか、ドクオには分からない。けれども、この記憶の流出はドクオに何かを伝えているのだということだけは分かる。

ツンも、こいつも、同じく誰かに助けを求めて、助けてもらえなかった。救いの手を差し伸べてもらえなかった。

誰かが手を差し伸べれば、他の道があったかもしれないのに、みんなが笑っていられる幸せな未来が待っていたはずなのに。

( A )(俺は、こいつを斬っていいのか? 殺してしまって、本当に正しいのか?)

剣を握る手に力が入る。

早く殺せと、壊せと内から溢れ出るなにかがドクオに命じていた。

殺せ壊せ殺せ壊せ殺せ壊せ殺せ壊せ殺せ壊せ殺せ壊せコロセコワセコロセコワセコロセコワセコロセコワセコロセコワセコロセコワセコロセコワセ

5631:2014/08/01(金) 22:10:06 ID:Fg3tJaY20

( A )(くそっ、静まれ! 静まれ!)

なおも強い殺人衝動と破壊衝動が全身を巡り、体が言うことを利かない。この体も、心もドクオのものだ。他の誰でもない、自分のことは自分で決める。

(゚A゚)「邪魔だ! お呼びじゃねえんだよ糞野郎!」

ドクオが叫ぶと同時、声が聞こえた。集中しなければ聞こえないほどの小さな声。それは悲しみに彩られ、深淵の底から響くような暗い感情を引き起こしてくる。

『━━━━』

何を言っているかは分からない。分からないが、意味だけは分かる。

これは単純なる破壊と殺戮を求めている。そのためにドクオを欲していた。自由に動く体を、血塗られた心を。

( A )「がぁぁぁ……」

軋みをあげながら腕が徐々に下へと落ちていく。同時にドクオの指の肉も少しずつ離れていった。

( A )「俺のことは俺が決める。俺がしたことは俺が背負う。だから勝手に命令すんな。俺は」

( A )「こいつを殺さない!!」

瞬間、ドクオの腕はふっと力が抜けた。

('A`;)「はぁっはぁっ」

滝のような汗が流れ、ドクオはその場にへたりこむ。止めどなく脱力感が押し寄せ、気を抜いたら意識を持っていかれそうだった。

だが、まだ終わらない。もしかしたら、この人形は救えるかもしれないのだ。

('A`)「……お前に聞きたい。お前は、しぃちゃんの探してる神父なのか?」

( ∵)

5641:2014/08/01(金) 22:11:19 ID:Fg3tJaY20

ボロボロの人形は答えない。じっとこちらを見つめているだけ。

('A`)「あんたは人を救うために、オサムに利用されたんじゃないのか?」

( ∵)

('A`)「なぁ、答えろよ。しぃちゃんはあんたを探してるんだ。あんたに会いたがってるんだ。あんたに、ありがとうって言いたいんだよ!」

( ∵)

( ;.;)

('A`)「あんたにもまだ人の心が残ってるんだ。今からだって遅くない。しぃちゃんに会ってやってくれよ」

( ;.;)ソウカ……シィガワタシヲ……

('A`)そ「……」

('A`)「そうだよ! 今この街に来てる! だから」

( ;.;)ダガモウオソイ。ワタシハヒトノミチヲオオキクフミハズシタ

('A`)「どんな姿になったってあんたはあんたじゃないか! あの子が欲しいのはあんたの言葉なんだよ!」

( ;.;)シンネンヲウシナッタワタシハタダノドウグデシカナイ

('A`)「違う! あんたはまだ心を失っていないじゃないか。誰かを心配し、人を想い、安寧を願ってる! それは紛れもない人としての心だろう!」

( ;.;)ワタシハ━━

彼が何かを言いかけたとき、後方から殺気を感じてドクオは振り返る。

( ゚"_ゞ゚)「人形相手におしゃべりとはいい趣味じゃないか」

5651:2014/08/01(金) 22:12:29 ID:Fg3tJaY20

('A`)「オサム……」

( ゚"_ゞ゚)「人形にまだ自我があるとは驚いたが、それも些細なことだ。計画はすでに最終段階に入っている」

('A`)「最終段階?」

( ゚"_ゞ゚)「教える義理はないが、俺を追ってこい。そこで全てを見せてやろう」

オサムが指を鳴らすと、人形と共に姿が揺らぐ。

('A`)「ちっ、待ちやがれ!!」

『採掘場に来るといい。君が来るのを待っているよ』

それだけを残して、オサムと人形は消えた。

('A`)「……の野郎」

心の底からあの男への怒りが湧いてくる。

人をあんな風に変えてしまったことを、誰かを想う心を踏みにじったこと、大切なものを奪ったこと。

そのどれもが越えていい領域を踏み外している。

('A`)「お前は絶対に殺す」

誰もいなくなった街で、ドクオは一人呟いた。

そして、ドクオは一つの変化にも気付く。

人の命の重さ、心の在処、その認識が自分の中で価値を変え始めていることに。

从'ー'从「どっくーん!」

遠くから自分を呼ぶ声が聞こえ、そちらに顔を向けると渡辺が手を振りながら走ってきていた。

('A`)「渡辺……」

自分も、人を踏み外した存在なのだろうか。

人形との戦いで力を欲した自分は、ひたすらに破壊と殺戮を望んでいた。それだけが自分の存在価値なのだと信じこんでいた。

果たして、ドクオはまだ人であるのか、自分ですら分からない。

( A )「俺は……」

まだ、人でありたい。

5661:2014/08/01(金) 22:13:41 ID:Fg3tJaY20



渡辺、ツン、しぃと合流したドクオは簡単に近況を交換し、これからのことを相談する。

ξ゚⊿゚)ξ「私と渡辺はオサムが張ってる術式を解きに行くわ。多分だけど、あいつが使ってる術式は私に使われてる術式を応用しているはずだから」

从'ー'从「私が行っても役に立つかなぁ……」

ξ゚⊿゚)ξ「一人じゃどうしようもないかもしれないでしょ。とにかく今は人手が欲しい」

('A`)「……そうだな。ならそっちは任せるよ」

(*゚ー゚)「私はオサムと対決させていただきます。彼の考え方を私は許すことが出来ません」

ξ゚⊿゚)ξ「ほんとは私もそっちに行きたいんだけど、ま、今回は任せるわ。私の分もぶん殴っておいて」

(*゚ー゚)「分かりました」

从'ー'从「穏便じゃないよぉ……」

あれこれと話が進む間、ドクオはしぃに話すべきかを迷っていた。

あの人形は、しぃの探し人だ。お礼を言いたいと語るしぃの表情は真剣そのもので、そして、もしかしたら二度と叶わないものかもしれない。

彼はまだ人間だった。けれどもドクオにはそれを救う手だてがない。戦闘になれば彼ともう一度話す機会はないかもしれないのだ。

そうなれば、ドクオは迷うことなく彼を殺すだろう。人に危害を与えるために作り替えられた存在は、否応なく周囲を破壊し尽くす。それは彼の望むことではない。

5671:2014/08/01(金) 22:14:31 ID:Fg3tJaY20

そして報われぬ者に救いの手を、という信条を持った彼の教えを受け継いだしぃにそれを見せるのはなんとしても避けたかった。

('A`)「……しぃちゃん。君はツン達と行ってくれないか?」

(*゚ー゚)「敵の数は二人ですよ? いくらドクオさんと言えど数の不利は覆せません」

('A`)「けど、その……」

言い淀むドクオにツンが詰め寄った。思わずドクオは一歩下がってしまう。

ξ゚⊿゚)ξ「あんた、なんか隠してない?」

('A`;)「んなことはないけど……」

ξ゚⊿゚)ξ「私の目をちゃんと見なさい」

しばしツンと見つめ合う。気恥ずかしさよりも、自分の心を見透かされそうな瞳に、ドクオは視線を逸らしたくなる。

ξ゚⊿゚)ξ「……しぃ、ドクオと行きなさい。こいつなんか隠してる」

('A`;)「ちょ、おい!」

ξ゚⊿゚)ξ「うっさい! あんたのことだからしぃのこと心配してるんでしょうけど、そういうの余計なお世話っていうのよ? しぃももう子供じゃない。自分の道は自分で決められる。自分の荷物くらいきちんと背負えるわ」

(*゚ー゚)「……はい。それくらい、当然です」

从'ー'从「そうだね。もし、抱えられなくなったら私達が支えてあげればいいもん。しぃちゃんは一人じゃないよ」

女性三人にそう言われると、ドクオはなにも言えなくなってしまう。

小さく溜め息をつくと、ドクオはしぃの頭を撫でてやった。

5681:2014/08/01(金) 22:15:23 ID:Fg3tJaY20

(*゚ー゚)?「ドクオさん?」

('A`)「その、なんだ。必ずしぃちゃんのことは守るよ。けど、色々と覚悟はしといてくれ。多分、俺だけじゃ何も出来ないから」

(*゚ー゚)?「はぁ……」

本当は、あの人形のことだけじゃなく、自分のことも心配なのだ。もしかしたら自分はまた力に飲まれてしまうかもしれない。得体の知れない何かに身を任せてしまえば、ドクオはたくさんの大切なものを傷つけてしまう。それだけは何としてでも見られたくなかった。

('A`)「……危なくなったら逃げてくれ」

(*゚ー゚)「分かりました」

ξ゚⊿゚)ξ「私達は術式の解除が終わったらショボンさん達の捜索に向かうわ」

('A`)「俺達よりお前らの方が大変そうだけど、しくじるなよ。駄目だったら全部パーだ」

ξ゚⊿゚)ξ「誰にもの言ってんのよ。私と渡辺は最高のパートナーよ?」

从;'ー'从「私自信ないなぁ〜……」

(;*゚ー゚)「そこは嘘でも任せてって言いましょうよ……」

('A`)「とにかくやることは決まったな。お互い頑張ろう」

ξ゚⊿゚)ξ「もちろんよ」

从'ー'从「おー!」

(*゚ー゚)「はい!」

そうしてドクオ達は二手に別れて行動を開始する。ドクオとしぃはオサムとの決戦を、ツンと渡辺は術式の解除とショボン達の捜索。

四者四様の最終決戦の火蓋が切って落とされた。

('A`)(*゚ー゚)

ξ゚⊿゚)ξ从'ー'从

5691:2014/08/01(金) 22:16:08 ID:Fg3tJaY20
第十二話 終

5701:2014/08/01(金) 22:22:14 ID:Fg3tJaY20
これにて本日の投下終了です
本当は最後の手前くらいまで書きたかったのですが予想以上に長くなったので半分にわけました
モ・トコでの話もあと二話で終わるかと思います
ちょっと転職などしまして忙しいですが、また来週には投下したいと思います
それでは本日も読んでいただきありがとうございました

571名も無きAAのようです:2014/08/01(金) 22:41:44 ID:P.oddmBI0

今回もボリュームがあって面白かったよ

5721:2014/08/01(金) 22:51:19 ID:Fg3tJaY20
>>571
投下中の支援ありがとうございました
自分は何分気分屋なもので筆の乗り具合が日によって変わってしまいます
しかも文章の書き方というか、表現の仕方も安定しないので分かりにくかったらすいません
一応一話の文量は電撃文庫換算で30ページくらいに納めています
なのでボリュームがあるかと言われると、実はそうでもなかったりしますw
こういった御言葉はとても励みになります
ありがとうございました!

573名も無きAAのようです:2014/08/02(土) 00:50:31 ID:g6yeSXj20
乙乙
面白かったです

574名も無きAAのようです:2014/08/02(土) 04:00:04 ID:wQBqFdF60
( ^ω^)乙だお
( ^ω^)今回もハラハラしたお
( ^ω^)次回も期待だお

575名も無きAAのようです:2014/08/02(土) 05:42:55 ID:rQG3EmWk0
顔文字君キッショw

576名も無きAAのようです:2014/08/02(土) 12:16:30 ID:wQBqFdF60
( ^ω^)んだこら

577名も無きAAのようです:2014/08/02(土) 13:15:25 ID:fa5uI3A20
やめなよ

578名も無きAAのようです:2014/08/02(土) 17:55:40 ID:7V5cjlh60
君は顔文字じゃなくてブーンって名前がちゃんとあるだろ?

579名も無きAAのようです:2014/08/02(土) 20:38:04 ID:DseNonJU0
( ^ω^)だおだお

580名も無きAAのようです:2014/08/03(日) 01:17:39 ID:KJ/61X2c0
誰でもいいけど騙り者は嫌われるもんだ、あぼんしようにもここじゃAAで弾けないしね
だからウザがられてんじゃない?

581名も無きAAのようです:2014/08/03(日) 01:42:12 ID:pAc3K2eM0
( ^ω^)ウザくないお

5821:2014/08/05(火) 00:49:00 ID:JrzmoqSI0
どうも1です
今週の金曜日に第十三話を投下できそうです
残り二話、気張っていきます

5831:2014/08/05(火) 00:52:26 ID:JrzmoqSI0
それと顔文字付きのコメントに関してですが、今後もスレが荒れるようであれば差し控えていただけると幸いです
できれば皆様には私が書いた作品を滞りなく読んでいただきたいので、心苦しいですがご了承いただきたいと思います
差し出がましいようですが、ご理解くださいませ

584名も無きAAのようです:2014/08/05(火) 12:42:25 ID:P4Kmuoro0
川 ゚ -゚)「作者乙だぞー!!」

↑こういうの駄目って事か?
ブーン系コミュニティでAAレスが否定されるのは違和感があるな
過度の連レスを制限すれば問題無いように思うが

まぁスレの自治は作者に任せる

5851:2014/08/05(火) 13:19:12 ID:62eFFt6g0
>>584
いえ、あくまでそういったレスで荒れるのであればですかね
自分は特に問題はないと思ってますし、嬉しいです
ですが、過度にやり過ぎて不快に思うかたもいるかもしれないので、注意と捉えていただければと思います

586名も無きAAのようです:2014/08/05(火) 18:40:32 ID:KYq37fZc0
何だろうな、顔つるっつるの中坊がガクトやキムタクの真似してるようなそういう類の不快感なんじゃないだろうか

5871:2014/08/09(土) 23:19:22 ID:Mp/6WgvU0
どうも1です
引っ越しやら何やらでまだ半分ほどしか書き上げておりません
本来であれば昨日金曜日の投下だったのですが、おそらく来週のどこかになりそうです
やるやる詐欺で申し訳ありません
近いうちに投下日を告知しに参りますので今しばらくお待ちくださいませ

588名も無きAAのようです:2014/08/10(日) 01:33:26 ID:EfICnaYE0
超待ってる
だが無理はしないで自分のペースで書いてくれよ

http://www.youtube.com/watch?v=QleN4Bjvl1E&feature=youtube_gdata_player
俺の中でのEDテーマ
なんとなく渡辺のイメージ

5891:2014/08/11(月) 12:49:56 ID:5Fyh4cMU0
どうも1です
今週の金曜日にはなんとか投下できそうですのでお待ちいただければ幸いです
投下前にあと二話で終わると言ったのですがもしかしたらあと三話ないし四話になるかもしれません

>>588
こういうのを見ると書いててよかったなぁと思いますね
やはり動かすキャラには愛着があるのでそれぞれのテーマソングとかイメージ曲なんかは見るだけでニヤニヤしてしまいます
一応自分的オープニングやエンディングもあるにはあるのですが、ここでは明言しないでおきますw

5901:2014/08/15(金) 05:26:19 ID:enxHGJmg0
どうも1です
本日21時より投下開始いたします
百物語と重複すると思いますが、目を通していただけると幸いです

591名も無きAAのようです:2014/08/15(金) 08:53:48 ID:WlLTJE9c0
百物語も書くのか!
楽しみ

592名も無きAAのようです:2014/08/15(金) 08:54:36 ID:WlLTJE9c0
あっ勘違いだ
とにかく楽しみにしとく

5931:2014/08/15(金) 21:00:18 ID:YSQy/0hU0



第十三話「戦う理由」



.

5941:2014/08/15(金) 21:03:39 ID:YSQy/0hU0

◇◇◇◇

('A`)「どうやら招かれてるみたいだな」

(*゚ー゚)「鉱山の地下にこんなものを設けているとは……」

ドクオとしぃは目の前に漂う一つ目の魔物についていきながら周囲を警戒する。ここはいわば敵の本拠地、いつ何が起きてもおかしくはない。オサムが不意打ちを仕掛けてこないとも限らないのだ。

明らかに人の手が入った縦長の通路を歩いていくと、開けた場所に出る。ドーム状の空間、その中心に巨大なタワーが建っており、周囲を大規模な術式が囲んでいた。

そこに二つの人影。

( ゚"_ゞ゚)

( ∵)

ドクオはゆっくりと歩いていく。これが最後の戦い。オサムを倒し、神父を救う。これ以上あの人を苦しませてはならない。

('A`)「言われた通り来てやったぞ。随分と悪趣味な秘密基地じゃないか」

静かに、だがはっきりと言葉を紡ぐ。それでも半球状のここではドクオの声が反響していた。

( ゚"_ゞ゚)「どうだ? 俺の研究の成果が全て詰まっているこの場所は。神秘的で、感動的だろう」

('A`)「はっ。お前の美的感覚は壊滅的だな。こんな薄気味悪い場所がお気に入りだなんてどうかしてる」

5951:2014/08/15(金) 21:05:41 ID:YSQy/0hU0

( ゚"_ゞ゚)「褒め言葉として受け取っておこう。だが、そんな口を利けるのも今だけだ。すぐに断末魔の嬌声をあげさせてやろう」

(*゚ー゚)「あなたの悪巧みもここまでです。私達があなたの計画を止めてみせます」

( ゚"_ゞ゚)「下らない正義感、だな。本当にくだらない。人間の本質を理解しているのか? 人の歴史とは戦いの中で生まれてきたというのに、君達はそれを否定するのか?」

('A`)「過去のことなんて知らないよ。俺達が生きるのは今で、その先なんだ。たとえ戦いの中で歴史が作られたとしても、これから先もそうやって歩んでいくとは限らない」

(*゚ー゚)「人の心はあなたが言うほど醜いものではありません。誰かを想い、手を伸ばす優しさを誰もが持っているんです。生まれながらの悪なんて、本当はどこにもいないんですよ」

( ゚"_ゞ゚)「綺麗事だな。よほど幸せな生活を送っていたようだ」

('A`)「引くつもりはないんだな?」

( ゚"_ゞ゚)「元よりそのつもりだが」

オサムの言葉にドクオは剣を抜いて答える。もはや言葉ではこの男は止まらない。

( ゚"_ゞ゚)「君達には君達の理想があるように、俺にも俺の信念がある」

('A`)「黙れ。誰かを死なせてまで手に入れる思想なんて、たとえその先に誰もが笑っていられる未来があったとしても、俺は認めない」

ドクオとオサムの視線が交差する。

ドクオの言葉は奴が言う通り綺麗事だ。ドクオ自身貞子を手にかけている。彼女にも未来があったはずで、その未来をドクオは奪ったのだ。自身の手で自分の言葉を否定している以上、こんなことを言うのは間違っているのだろう。

5961:2014/08/15(金) 21:06:59 ID:YSQy/0hU0

必要な犠牲だったとは言わない。自分の価値観で人の生死を決めたのだからドクオは立派な罪人だ。だからこそ、ドクオはその事実を受け止めて歩かねばならない。

('A`)「俺もあんたと同じ人間だよ。けどな、いや、だからこそ言ってやる。お前は間違ってる」

( ゚"_ゞ゚)「……ふっ、人を殺すために剣を振るうか。ならば、俺も相応の力で答えるとしよう。来い! 魔剣の主!」

オサムが手を振った。瞬間、人形がこちらに走り出す。

( ∵)

大降りのフック。ドクオは後ろに下がって剣を抜いた。人形はそのまま拳の連撃。その全てをうまく避けて、一瞬の隙を見つけて懐へと入る。

('A`)「らぁっ!」

人形の腹に横一閃。金属がぶつかる音、腹部に少し食い込んだだけでダメージにはならなかった。

踏み込んだ足を軸にそこから体を反転させ、回し蹴りを叩き込む。人形の体が吹っ飛び、ドクオは追いかける。

( ゚"_ゞ゚)「俺を忘れるなよ」

オサムの声と同時に下方から地面が盛り上がった。どのような魔法かは知らないが、ドクオは強引に横へと跳ぶ。

着地した瞬間、体勢を立て直した人形が迫っていた。

('A`)「ちっ!」

(*゚ー゚)「ドクオさん!」

人形の横から高速の水弾が四つ。人形がそちらへ意識を向けた。

('A`)「こん、のぉ!」

胸の辺りを狙って鋭い突きを繰り出す。ほとんど同時の攻撃に人形がわずかに動きを止めた。

だが、二人の攻撃は見事に外れることとなる。

人形の体が半透明になり、光となって霧散。ドクオの剣が空を切り、そのすぐ隣に再び人形が構成された。

攻撃の勢いを殺しきれないドクオに人形の光の礫。さらにオサム側からも黒い槍が狙っている。

(;*゚ー゚)「間に合って!」

5971:2014/08/15(金) 21:08:16 ID:YSQy/0hU0

ドクオを覆う水の障壁。光の礫の軌道が逸れた。しかし、黒槍は障壁を突き破りこちらへと侵入する。

突きを戻す勢いを利用して体を返し、槍を消し飛ばす。障壁がなくなるのを見計らって人形の手がこちらに伸ばされるのが見えた。

さらに反転、剣で腕を弾いて全身を前へ。岩に体当たりをしたような反動が返ってきたが、人形との距離が離れた。

中空に光の弾が浮かんでいる。動き出すのを確認してから逆方向へ駆け出し、オサムの位置を確認。あまり離れていない場所に、奴はいた。すでに複数の術式を展開しており、こちらの動向を探っているのだろう。

迷うことなくそちらへ足を動かすと、周囲の床がタワー状にいくつもそびえ立つ。

('A`)「しぃちゃん!」

(*゚ー゚)「了解です!」

ドクオの掛け声で、しぃが用意していたのか広範囲の魔法を発動。巨大な氷の刃が隆起した岩々をまとめて凪ぎ払い、一瞬で凍りつくと粉々に弾けとんだ。

ドクオは最大速度を維持したままあと二歩のところまでオサムに接近、居合いの要領で後ろに流していた剣を目一杯横に振るう。

刹那、視界にノイズが混じった。次の瞬間オサムとドクオの距離が離れ、その中間に人形が現れる。

( ゚"_ゞ゚)「そう簡単に近付かせるほど俺は安くないぞ」

('A`)「くそっ!」

右、左と物理攻撃を交えながら人形は魔法を巧みに操りドクオを攻撃していく。さらにその後方にいるオサムはそこまで強いものではないが魔法で支援。しぃも負けじとオサムの魔法を相殺、攻撃を返していくもののやはり経験の差かドクオ達は徐々に押され始めていた。

5981:2014/08/15(金) 21:09:49 ID:YSQy/0hU0

特にオサムの魔法で厄介なのは空間操作系の術式だった。距離を操り視界を操り、人形をこちらの完全な死角へと移動させていく。意識の外からではドクオもうまく対応が出来ない。

しぃもオサムと人形の飛び道具をうまく対処していると思うが、絶対的に手数が足りないのだ。二人分の魔法に対し、一人でそのほとんどを阻止しなければならない上にオサムと人形はこの場所にショートカット術式を用意しているようで、展開から発動までの時間が早すぎるのである。

しぃが打ち漏らした魔法の弾幕を避けながらの戦闘にドクオの中で焦燥を募らせていく。人形の攻撃は鋭く、そして重い。まともに食らえば意識を断絶させられるであろうことが容易く予想できた。しかも人形は戦闘が長引くにつれて攻撃のスピードを増し、パターンが多彩になっている。ギリギリのところで捌いているものの、少しずつではあるがドクオの被弾は多くなっていた。

('A`;)(どうなってんだよ……戦ってる中で成長してるってのか? それとも、オサムがなんかやってんのか?)

視認できる範囲では特別な魔力の動きはないはずだ。オサムが身体強化系の魔法を使っている様子もない。つまり、純粋に成長しているということになる。

('A`)(確か、こいつは魔力を吸収する力を持ってる。いや、それもあるけど魔法で定期的に放出してるよな。なら、何が……)

もう少し時間があればこの空間における魔力の流れを追えたかもしれないが、敵はそのからくりを簡単に明かしはしないだろう。

意識が思考の渦に飲み込まれ始めた時だった。突如背中で何かが炸裂した。

(゚A゚)「ぶべらっ!」

(;*゚ー゚)「ドクオさん!? 自分から当たりに来ないでください!!」

('A`;)「わ、わりぃ!」

(;*゚ー゚)「って前向いてください! 前!」

('A`)「あ」

( ∵)

振り向くと、人形がいた。

5991:2014/08/15(金) 21:13:20 ID:YSQy/0hU0

腹部に拳がめり込んでいく。

( A )「あ、がっ……」

(;*゚ー゚)「ドクオさん!!」

弧を描き宙を飛ぶドクオ。揺れる視界の中で、人形の方へと魔力が流れていくのが見えた。

( A )(あれ?)

魔法に使われる様子はなく、ただただ人形の体へと吸収されていく。その度に人形の体から魔力が放出、吸収を繰り返していた。

( A )(どういうことだ、あれ)

空中で体を動かし、うまく着地を決める。それを狙ってドクオにトゲ付きの鉄球を模した黒い魔法が降り注ぐ。

それらを大きく剣を降って消し飛ばし、ドクオは立ち尽くした。攻撃に備えていた人形が一瞬動きを止める。

('A`)(魔力は)

一度周囲に展開されたオサムの魔法陣に吸収されると、違う魔力が排出されて人形へと放たれる。

('A`)(もしかして、こいつ……)

ドクオが解を導きだす前に人形が距離を詰めていた。

('A`;)「考え事もできねえのか!!」

ドクオが防御の体勢をとると、右下から鋭利な棘となった床がこちらを狙っていた。

バックステップ、着地。するとドクオの後方から無数の水弾が人形へと飛んでいく。

幾つかが人形の目の前で弾け、隙ができた。ドクオは人形へと近付き一歩踏み込む。

間違いなく当てられる距離。さらに、追加の水弾が人形へと迫っていた。

しかし。

6001:2014/08/15(金) 21:16:09 ID:YSQy/0hU0

( ∵)

人形が水弾に向けて軽く手を振ると、水弾が始めから存在しなかったように消失。さらに逆の手でドクオの剣を握って受け止めた。

(;*゚ー゚)「えっ!?」

('A`;)「はっ?」

予想だにしなかった展開に、ドクオも、しぃも絶句する。確かに、敵は魔力を掌握する術を身につけてはいたが、ドクオの魔剣のように魔法そのものを消す力などなかったはずだ。

( ∵)

驚きのあまり動きが止まったドクオに、人形が魔法を消し飛ばした手を額に当ててきた。脳内に警鐘が鳴らされる。

全力で剣を引き抜き、逃れようとするが間に合わず、目の前で魔力が解き放たれた。

( A )「なっ……」

今のは水の魔法だった。しぃが使った魔法を利用したのか、それとも別の力なのか。どちらにせよこちらの動揺を誘うやり方はオサムの入れ知恵だろう。

うまく受け身をとって最小限のダメージに抑えるが、視界がちかちかと明滅していた。さすがのドクオといえど、至近距離で魔法を使われては威力を殺しきれない。

(*゚ー゚)「どういうことかは知りませんが、意識の死角をつけば━━」

しぃが援護のために術式を展開させるのが見えた。

('A+;)「駄目だ! 避けろ!」

ドクオの叫びにしぃが術式を留めた。途端にゆらりと陽炎が揺れる。

( ゚"_ゞ゚)「それを許すと思うかね?」

しぃの目の前にオサムが現れ、黒い霧を発生させる。

(* ー )「え……」

同時、留めていた術式が暴発。標的を失った水のレーザーはドクオへと向かう。

('A`;)「やべぇ!!」

6011:2014/08/15(金) 21:17:44 ID:YSQy/0hU0

復活したドクオは剣を構えた。が、それを阻むように人形が魔法を展開。周囲を光の障壁が取り囲んでいく。

さらに障壁の中心からは細い糸が噴射され、ドクオの体に纏わりつくと一気に締め上げた。

('A`;)(動か━━)

動きを封じられたドクオは力任せに体を左へと寄せる。圧力のかかった水のレーザーが右肩を抉っていく。

からん、と音が響いた。肩に力が入らない。いつの間にか剣を落としている。

( ∵)

拾っている暇はない。人形がこちらを向いていた。

( ゚"_ゞ゚)「無様だな」

オサムが手を振ると、砕けた岩石の礫が人形を追い越してこちらへと迫る。剣を拾う暇もなく、ドクオは右へ転がって回避。

('A`;)「くそっ!!」

体を起こした時には人形の足がドクオをとらえていた。抉られた肩口に足が触れると、光が炸裂。驚異的な威力と魔法の力でドクオは端にそびえる壁に激突する。

( ゚"_ゞ゚)「弱い、弱すぎるぞ!」

再びオサムの魔法、ドクオの周囲に陣が浮かび上がり、そこから無数の黒い針が突き刺した。

致命傷にはならない程度に調整されたのか、ご丁寧に急所を外されている。腕や足に空いた穴から鮮血が流れていく。もはや痛みすらない。

( A )(早く、剣を回収しないと……)

床に倒れたドクオは急いで立ち上がろうとするが、うまく力が入らなかった。ちらりとしぃを見るが黒い霧はなおも彼女を覆っており明後日の方を向いている。どうやらこちらを認識してはいないようだった。

( ゚"_ゞ゚)「人形よ、これは君の獲物だ」

6021:2014/08/15(金) 21:19:09 ID:YSQy/0hU0

オサムが魔剣を差してにやりと笑うのが見えた。

人形が魔剣を拾い上げる。片手で軽く振るい、具合を確かめているようだ。

( A )「てめぇ、それを……離せ!」

( ゚"_ゞ゚)「何、すぐに返すさ」

オサムが言うと同時、人形を魔法陣が囲む。ドクオが見てきたどの魔法陣より複雑で、巨大な術式だった。

( A )「何を……」

( ゚"_ゞ゚)「外の戦いでは君と魔剣の力の解析をさせてもらった。おかげで魔剣という存在の力をいくらか人形に組み込むことが出来た」

( A )「なん、だと……」

先ほどしぃの魔法を消し飛ばしたことをドクオは思い出す。仮にも伝説上の力を解析、組み込みをやってのけるなど信じられことではない。

だが、オサムはそれをやってのけた。あり得ないと言えることさえも、平然と。

( A )(どれだけ狂ってやがる……)

( ゚"_ゞ゚)「おかげで大分面白いことが分かった。魔剣が魔力を食らうのは、どうやらこの人形ととても似た性質を持っているようでね。元々そういった仮説は俺の中も考えてはいたんだ」

ドクオにはオサムが言う言葉の意味を正しく理解することは出来なかった。

その言い方では魔剣と人形は同質の存在だと言っているようなものだ。

生物としての兵器と、意思を持たぬ武器。相反する二つの存在が、同じだなどととても信じられることではない。

( ゚"_ゞ゚)「魔剣の主である君はもう気付いているのではないか? それとも、目を背けているのかね? この魔剣を持つ意味を、力を、理由を、知らないとは言わせない」

( A )「んなもん……知らねえよ」

本当は、薄々分かっている。あの剣は強い自我を持っていること。人を殺せと、世界を壊せと深淵の淵から呼び掛けている。

6031:2014/08/15(金) 21:20:13 ID:YSQy/0hU0

あれは絶望を、悲壮をもたらすもの。それに取り憑かれたドクオも、もはや同様の存在なのだろう。

( ゚"_ゞ゚)「まだそんなことを言うか。よく目を開いて見るがいい。人であった存在が、体を欲した魔剣が、本当の悪魔となる瞬間を刮目せよ!」

人形から発せられる光が魔法陣を消し飛ばす。静寂が訪れ、徐々に人形の体に変化が生じていく。

体色が黒へと変わり、筋肉が隆起する。頭には黒い髪が生え、周囲に薄い魔力が漏れだしていた。

そして、肩甲骨の辺りから白く大きな羽がばさりと現れ、

( . )Aaaaaaaaa!!

人形は、更なる高みへと上り詰める。

( ゚"_ゞ゚)「ふははははははははは!! これだ、これだよ俺が求めていたものは!! 今、この瞬間、俺の研究は成就した!! 人も、悪魔も、神さえも凌駕した存在を作り出したのだ!! さぁ、殺せ!! 壊せ!! 全てを━━」

( . )

オサムの言葉は最後まで発せられることはなかった。

音もなく近付いた人形の手により、オサムは切り捨てられ、消えた。

自分が生み出した狂気に、殺されたのだ。

( . )Aaaaaaaaa!!

人形は生まれたことを誇るかのように、存在を誇示するかのように、吠える。到底生き物とは呼べぬほどの声で。

( A )「さすがに、これはねぇわ……」

(* ー )「ドクオ、さん……」

状況は絶望的だった。しぃは未だ解けぬ魔法によって視力を奪われたまま。武器もない、他に味方もいない。ただの人間にすら劣るドクオしか、あれを止める人間は見当たらない。

けれども、それでもドクオはやるしかなかった。人形も、いや、ビコーズ神父はどこまでも被害者で、救いを求めている。

人を愛した人間が救われないなんてドクオには認められない。

('A`)「やらなきゃ。俺がやらなきゃ……」

ドクオは立ち上がる。たとえ命を投げ出すことになるとしても、譲れないものがそこにはあるから。

6041:2014/08/15(金) 21:21:19 ID:YSQy/0hU0

◇◇◇◇

(;´ ω `)(さすがに一筋縄ではいかないな)

操られているであろう二人の炭鉱夫にかかっている魔法の術式は酷く難解で、幾重にも渡って解除を妨害する罠が張られていた。

もっと多くの時間が残されていれば簡単とまではいかなくともショボンでも十分に対応できただろう。

しかし、先の鉱山崩壊術式を展開した際に、自身のマナを使用したせいでショボンはまともに動くことができない。

何せ一人の命を全て使うほどの規模だ。最後の最後でモララーが槍を突き立ててくれたお陰で、彼のマナを吸収できたからこそ死ぬことは免れたが、未だ危険な状態に変わりはない。

(;´ ω `)(このタイプの術式はそう簡単に個人で使えるものじゃないんだ。ということは、どこかに大元の術式があるはずだけれど……)

術式の一部を書き換えればご丁寧に魔力の暴走を促す術式を組み込まれているせいで迂闊に手を出せないうえ、魔力の供給元を特定させないように隠蔽術式を展開させているようだ。

その全てを同時に解析、削除しなければ二人の炭鉱夫は死に至る。しかも、マナを利用されてショボンが行った魔法と同規模の破壊を振り撒くだろう。

そもそも、敵が送り出している魔力の量が尋常じゃない。人一人が一度に操れる魔力は最高位の魔法使いですら精々王都の半分ほどである。

だがこの術式は半永久的に作用される仕組みになっていることから見ても、人間が扱う量を大幅に越えていた。

(;´ ω `)(せめて、大元の術式を解除できれば……)

6051:2014/08/15(金) 21:22:07 ID:YSQy/0hU0

連鎖的に積み上がる問題に手をつけられる箇所が減っていく。恐らくではあるが世界的に見てもここまで大掛かりで、なおかつ人を陥れるほど酷いこの術式は最高峰レベルだろう。

知識だけでも、技術だけでもこんなものは作れやしない。それに、人の全てを否定するぐらい冷酷な心がなければ平常な精神ではいられないはずだ。

どこまでも人というものを馬鹿にしている。

王都を襲った貞子とやらも随分と狂った人間だったが、彼女でも比較できるものではない。

故にショボンは諦めることをしてはいけない。風前の灯火となった命さえ投げ出さねば騎士団のルールも、自身の心も根本から折れてしまう。

本来であれば今回の件、全てショボン一人で片付けなければならないはずなのに、帰りが遅い自分を心配してドクオも巻き込まれているはずだ。

失敗して、死にかけて、それでもしぶとく生きているのならその穴を埋める必要がある。結局ドクオに全てを投げてしまったのだから、騎士団副団長としての本質を果たすべきだ。

(;´ ω `)(まだまだ、まだまだだ!)

痛む傷口を押さえながら踏ん張っていた時、突如術式の命令が書き変わったことにショボンは気付いた。

これだけの術式に干渉でき、かつ書き換えるなどその辺の汎用な魔法使い、いやしぃほどの術者であっても到底不可能なはず。さらにここにいる者を考えれば本人以外考えられない。

(;´ ω `)(また不穏分子が現れたのか?)

だが、今はありがたい。どこの誰かは知らないが術式の一部が書き換えられたことによりショボンでも手を出せるレベルまで導かれた。

ショボンがこうしている今もものすごい速さで術式が書き換えられている。

(´ ω `)(救ってみせる! 絶対に!)

6061:2014/08/15(金) 21:23:23 ID:YSQy/0hU0




( ;・∀・)(まずいな)

敵の攻撃をうまく無力化しながら、モララーはショボンへと目を向ける。

(´ ω `)

魔力の解析をしているのだろうが、すでに息はあがり大きく肩を上下させ、膝が笑っていた。

もはや彼は限界だろう。体内のマナを著しく消費している、とモララーは感付いていた。

だがモララーが止めたところで、ショボンがそれを止めないことも痛いほどに理解している。彼は彼の信念に基づいて動いているのだから、誰もそれを阻むことなど出来やしない。

( ;・∀・)(俺にできるのは敵の足止め。そしてあの人を信じることだけだ)

傷付きながら、悔やみながら、尚も歩き続けるなんてモララーには出来ないだろう。本当に大切なもの、譲れないものはモララーにだってある。けれど、失ってまで貫かねばならない信念は経験がものをいうのだ。

だからこそモララーはショボンを信じ続けてきたし、尊敬することができた。背中を見て、この人のために剣を取っていこうと誓うことができた。

失いたくない。

もっとこの人の隣で学びたい。

そのために、モララーは退くことをしない。

( ・∀・)「くそったれが!」

6071:2014/08/15(金) 21:24:45 ID:YSQy/0hU0

大きく槍を振るい、衝撃波で二人を吹き飛ばす。先程つけた傷から鮮血が吹き出した。あまり力を込めたつもりはないが、剥き出しになった筋繊維や血管はいとも簡単に破れてしまう。

それでも痛みすら感じず、苦痛に顔を歪めることもない二人の男。一般人であり、生涯炭鉱夫として働き血生臭い戦いとは無縁の人間。

なのに彼らは望まぬ戦いを強いられて傷付いていく。たった一人の心無い人間の手によって。

そもそも一般人を戦闘員に作り変えるなど狂っていなければ出来ることではないだろう。人には人の生活があり、未来があるのだから。

ゾンビのような緩慢な動きと生命力で男達は執拗にモララーへと向かってくる。体のどこかが破損する度に彼らの腕が、手に力がなくなり人間とさえ呼ぶことも躊躇うほどに形を変えていた。

時間が経つだけ振るう刃が重くのし掛かり、自分が騎士であることさえ忘れてしまいそうだ。

モララーは虐げられる弱者のために、大切な人を守れる力が欲しくて騎士になった。目の前にいる二人はまさしく、自分の信念そのものなのに、彼らは自らの不運を嘆くことも、悲嘆に暮れることもなく与えられた命令に従うだけの生き物に成り下がって、モララーはそれを虐げているだけ。

こんなことのために力を身に付けたわけじゃないのに。

心に溜まる汚水はだんだんと行き場をなくし、いつの間にかモララーの瞳を介して流れていく。

( ;∀;)「苦しいよな、悲しいよな。きっと副団長がなんとかしてくれるから。だから諦めるんじゃねえぞ!」

( W )

(  − )

モララーの声は二人に届いたのだろうか。答えはない。

けれどもきっと、届いていると信じるしかない。

これが終わったら土下座でもなんでもしよう。許されるだなんて思っちゃいない。罵りでも嘲りでも好きなだけすればいい。

だから、今だけは、今だけは耐えてほしい。全ての決着をつけるやつらがここには揃っているのだから。

6081:2014/08/15(金) 21:25:30 ID:YSQy/0hU0

◇◇◇◇

ツンは一枚の紙を取り出すと、それに魔力を込める。ふわりと浮かび上がり、宙を舞いながらモ・トコの街を進み始めた。

ξ゚⊿゚)ξ「ふむふむ、こっちか」

从'ー'从「なんだか可愛いねぇ〜、これ」

ξ゚⊿゚)ξ「ただの紙が浮いてるだけじゃない。可愛いもなにもあったもんじゃないわ」

从'ー'从「そうかなぁ〜」

渡辺がまるでお花畑で蝶を追うかのような発言をするのを横目で見ながら、ツンは色をつけ始めた線を確認した。

街中に張り巡らされた大小様々な網目状の線は全て魔法として使われている魔力であり、継続して存在しているということは術式にリンクされているということ。

そして線の太さは魔力の量で、太ければ太いほど魔力が通る量も大きい。つまり、それが術式のメインシステムに繋がっているはずだ。

ツンが使った魔力紙は魔力を視認させると共に最も魔力消費量が多い術式へ誘導するという効果を持つ。ただし速度は遅いので方角を割り出すためにしか使えないのだが、ツンはもう一つアイテムを取り出した。

从'ー'从「それはなぁに?」

ξ゚⊿゚)ξ「まぁ見てなさい」

ナイフほどの大きさの棒を地面に突き刺すと、細い魔力の線が棒の先へと収束していき、一本の太い線へと生まれ変わった。

从'ー'从「わぁ、おっきいねぇ〜」

ξ゚⊿゚)ξ「驚くのはここからよ」

棒を抜いて手に持ち、先程の魔力紙へと向ける。

6091:2014/08/15(金) 21:27:30 ID:YSQy/0hU0

すると、必要以上に魔力を込められた紙は太いパイプとなった線に飲み込まれて一気に加速していった。

ξ゚⊿゚)ξ「よし、追うわよ」

从;'ー'从「わわ、ちょっと待ってよぉ〜」

杖に乗って空を飛んでいくツンのあとを渡辺が箒で追従する。そこまで速度は出ていないが、急ぐに越したことはない。

棒を使うためにいくつかの細い魔力の流れを潰してしまったが、おそらく問題はないはずだ。ツンの見立てでは細いラインはあくまで補助機構としての役割しか果たしていない。命令そのものはメインラインを通っているはずなので大きな影響は与えないだろう。

ξ゚⊿゚)ξ(ま、こんなもんで簡単に壊れる術式を作るとは思えないしね)

オサムの用心深さと魔法学への執念をツンは間近で見てきたのだ。必要のないものは排除し、徹底的に効率を求める一方できちんと補助的なバックアップシステムくらいは用意する。そういう男だ。

モ・トコの外れへと向かっていく魔力紙は、いくつかの中継点として設置された魔導鉱石を経由してとある場所で止まった。そして、その場所を見てツンは驚きを隠せず呆然とする。

ξ;゚⊿゚)ξ「……嘘……」

从;'ー'从「ふわぁ、おっきいねぇ〜」

ツンと渡辺の十倍以上の高さと幅を持つ巨大な岩。さらにその周囲に展開している魔法陣。

これが、オサムが構築した術式なのは間違いない。間違いないが、同時にツンは舌打ちをしてしまう。

ξ;゚⊿゚)ξ「まさか貞子と同じ手を使うとは思わなかったわ……」

从'ー'从「ほぇ? どういうこと?」

ξ;゚⊿゚)ξ「これ、この街の結界に使われてる魔力炉の役割を持ってる」

ツンが魔法陣を確認しながら言うと、渡辺が小さく嘘、と呟くのが聞こえた。二人にとって結界を利用した魔法というのはあまりいい思い出ではない。

6101:2014/08/15(金) 21:29:09 ID:YSQy/0hU0

从'ー'从「えとえと、解除、難しいの〜?」

ξ゚⊿゚)ξ「完っ全に結界のシステムを利用してるっぽいし、まずは解析していかないと手の出しようがないわ。しかも」

ツンは鉱石を注意深く観察する。これだけ大きなものだ、暴発防止の術式は組まれているものの下手に手を出せばモ・トコの街一つくらい簡単に消し飛ばすだろう。

ξ;゚⊿゚)ξ「とにかく解析に入るから、渡辺は周辺の警戒をよろしく。敵だと判断したら片っ端からぶっ飛ばすのよ!」

从;'ー'从「な、なんとか頑張ってみるよぉ〜」

解析用に持ってきた箱状のアイテムを取りだし、魔法陣のシステムをスキャンしていく。目の前に浮かび上がる魔法モニターには文字の羅列が並び、使用されている術式など情報が細かく表示されていった。

ξ゚⊿゚)ξ(やっぱり私の推測は間違ってない。私につけた術式と王都で使った術式を元にしてるんだわ)

さらに別のモニターを作成し、いくつかのコマンドを打ち込む。使用されている術式の詳細が映し出され、ツンはそれらの内容を頭に叩き込んでいく。

自分の知識と照らし合わせながらの作業、もちろん専門ではない。ツンはあくまで戦闘員としての魔法使いだ。学者として完成されたオサムにはほど遠い。

だが、黒の魔術団で培った経験や知識は皮肉にもツンの血肉となり誰かを救うことができる。

後ろで心配そうに見つめる渡辺を、他で戦っているだろう仲間達を。

汚れきった自分は人間としての道を歩いていいのか、ドクオと渡辺に救われてから何度も何度も悩んできた。

自分の肌に刻まれた魔法陣は呪縛となってツンを苦しめている。破壊の力として闇の魔法を叩き込まれ、より効率的に術式を構築することに特化した体は人を壊すためのもの。

そんなものが、果たして人と言えるのかツンには分からない。一生答えは出ないのだろう。

それでも、ツンは誰かを救える。助けることができる。力は、知識はどこまでいっても使う人間の心によるのだから。

その心があるかぎり、ツンはまだ人であれる。今ここにいるのは、それだけで十分だった。

6111:2014/08/15(金) 21:31:31 ID:YSQy/0hU0

ξ゚⊿゚)ξ(この術式、間違いなく周辺の街の結界と繋がってるわね。しかも街の生体反応を検知して自動的にマナを取り出すようなシステムになってる)

他の街で突如消えた人達は皆マナを取り出されこの術式に集められたのだろう。その行き先は鉱山の地下━━つまりオサムの研究室へと繋がっている。

さらにオサムが使用した魔法を自動で委託し、人が使うよりも効率的に魔力を維持することができるようだ。

集めた魔力の用途はオサムが任意で取り出したり出来るようで、あくまで魔力や魔法の操作、収集、解析がメインのようである。

ξ゚⊿゚)ξ(……現在継続中の魔法は、これか。場所は鉱山? オサムとあの変な人形のほかに誰かいるってこと? なら━━)

そこにショボン達がいる可能性が高い。反応を調べれば二つ分。マナの使用量や動向反応から察するに戦闘を行っているのだろう。

ξ゚⊿゚)ξ(えっと、詳しい場所と他の反応は……うん。やっぱりドクオとしぃが戦ってる場所とは違うみたいね。四人、ってことはショボンさんとモララーさんで間違いない)

四つの反応のうち、二つはこのシステムで強引に生命力を強化され、自我を奪われているようだ。だが、気になるのは今にも消え入りそうな一つの反応。人間が生きていられる限界までマナが減っていた。

十中八九モララーかショボンのどちらかが生命の危機に瀕しているということ。これではこの術式を解除するまで持つかどうか分からない。

ξ゚⊿゚)ξ(助けに行きたいけど、騎士団の二人だから怒られるだろうな。ほんと、男ってのは熱っ苦しいわ。やることやるまで生きてなさいよね)

6121:2014/08/15(金) 21:34:24 ID:YSQy/0hU0

とりあえずメインのシステムの外堀から少しずつ削除していこうとして、ツンはあることに気付いた。

誰かがこのメイン術式に干渉している。しかもツンのように専門的な道具を使わずに、自身の魔法によって。

ξ;゚⊿゚)ξ(こんなことできるの相当な術者じゃなきゃできるわけない。ということは、ショボンさんが? しかも、これって、人心操作系の魔法を解除しようとしてる?)

無茶だ。こんな大きな術式を、メインの魔法陣の外から取り外そうだなんて普通の魔法使いなら試みようともしないはず。なにせ魔法陣の中枢の詳細が分からない以上、ダミーとして作られた術式の区別がつかないのだから。

だが、干渉している人間はそれらに引っ掛かることなく少しずつ、確実に網を掻い潜っている。

ξ゚⊿゚)ξ(こんなこと出来そうなのはショボンさんよね。なら、こっちもとことん利用させてもらうわ。うまく書き換えていけばショボンさんの方が解除してくれるかも)

あくまでツンの目的は街を覆うオサムの術式を解除すること。それだけで奴の戦力は大幅に削減されるはずだ。

从;'ー'从「つ、ツンちゃん!」

ツンがいくつかの術式を書き換えた時、渡辺が焦った声でこちらを呼んだ。

渡辺の方を振り向くと、複数の魔法陣が現れ魔物を吐き出し始めるところだった。先程戦った鳥型の魔物だ。

ξ゚⊿゚)ξ「やっぱり侵入者撃退用の術式を組んでたか。渡辺! 何とか堪えなさい! すぐに終わらせるから!」

从;'ー'从「了解だよぉ〜」

すぐに爆発音が聞こえた。渡辺が交戦を始めたのだろう。

あまりいいBGMではないが、ツンはツンのすべきことに全力を傾けねばならない。

ξ゚⊿゚)ξ(渡辺は体力がある方じゃない。ましてや見習いから昇級したばかり。時間をかけてられないわね)

もう一度気合いを入れ直し、ツンは表示されているモニターへ集中した。

6131:2014/08/15(金) 21:36:51 ID:YSQy/0hU0




目の前の魔物に炎の塊をぶつけ、さらに小さく圧縮した火球をばらまく。

始めに放った炎が広がると同時に、火球が連鎖的に爆発。あまり威力はないが、鳥型の魔物は魔法攻撃への耐性が高くないためにまとめて爆散した。

頭上で飛んでいる魔物には炎の渦をいくつも出して牽制する。掻い潜って近付いた魔物は設置型の炎で迎撃。

渡辺の目的はあくまで時間稼ぎだ。ツンが術式の解除を終えるまで堪えることができればそれでいい。何も出てくる魔物全てを殲滅する必要はないのだ。

ならば作戦は簡単だ。使用する魔力、体力を温存しながら近付けないようにすればいいだけのこと。殺すまではいかなくとも、戦闘不能にすればそれで事足りる。

渡辺は自分が出来ることと出来ないことをある程度理解していた。運動は得意じゃないし、戦闘なんかもっての他。勉強も苦手だし、魔法陣の構築も普通の人間より時間がかかる。

けれども今の渡辺は何でも出来そうな気分だった。十や二十できかない数の魔物を目の前にしても、負ける気がしない。

何故なら渡辺は今誰かのために戦うことが出来ているから。王都で貞子と戦った際、渡辺は何もできず泣いてばかり、守ってもらうだけ。あの時ドクオが駆け付けてくれなければ自分は死んでいただろう。

6141:2014/08/15(金) 21:38:38 ID:YSQy/0hU0

だから今、こうしてツンを守ることが出来て、ドクオの手伝いが出来て、とても満ち足りた気持ちが全身を巡っている。

本当は魔物を悪戯に殺生するのだって罪悪感は、ある。

元来争い事を好まない性格だが、何もしないまま死んでしまうなら戦うことを選択できるくらいには彼女も成長したのだ。

ドクオに会う前は自分の命を軽く見ている節があったが、ドクオが戦う姿や騎士団の生きざまは渡辺にいい影響を与えてくれた。少なくとも自分を取り巻く様々な要因を考えて動くことができるのだから。

誰かに優しくして、自身のことを省みない生き方も一つの考え方だろう。感謝されることはなくとも自分の道標として教えてくれた言葉は渡辺の心を大きく占めている。

だが、こうして信頼できる誰かが出来て、そこに自分がいないことを想像して、とても悲しい気持ちになったのだ。

みんなと笑い合えないこと、悲しみを分け合えないこと、辛いことや苦しいことを自分ではない誰かと共有していたら、そう考えるだけで嫌な気持ちになる。

昔の渡辺ならそんなことを思うだけで罪悪感で一杯になっていたが、それは人として当たり前の感情なのだと今は理解している。

いいところも、悪いところもあって初めて人は人であるのだということ。全てを受け止めて笑って許すことができるのは聖人君子でもなければ不可能なのだから。

从'ー'从「えい! ツンちゃんは私が守るんだからぁ!」

6151:2014/08/15(金) 21:41:21 ID:YSQy/0hU0

箒を振って魔法が途切れないように陣をいくつも形成していく。使いきらないよう配分を考慮し、最低限で最大の火力を。

空と陸、二つのルートをきっちり抑えられた魔物達は渡辺に近付けないことから少々不満が溜まっているのか闇雲に突撃を繰り返し、自ら戦闘不能に陥っている。

翼を焼かれ、爪を砕かれ、地に伏せていく魔物達。本来一番頭を使う時間稼ぎという役割を渡辺は忠実にこなすことができていた。

そう、その時までは。

▼・ェ・▼▼・ェ・▼▼・ェ・▼

▼・ェ・▼▼・ェ・▼▼・ェ・▼

▼・ェ・▼▼・ェ・▼▼・ェ・▼

从;'ー'从「あれれ〜、三つ首のわんちゃんが出てきたよぉ〜」

嫌な予感がした。鳥型の魔物は数を減らしたままで増えていないな、とは渡辺も気付いていた。このままうまくいくのではないかと少し楽観的になっていた部分も、否定はしない。

しかし、このタイミングで出てきたということはあちらがわもこれが持久戦だと予想していたのだろうか。

从;'ー'从「でもでも、負けないんだから!」

ケルベロスが三体、真ん中の一体が疾駆。迎撃用の魔法が迎え撃つも、強靭な肉体には焦げ痕すら残らない。

从'ー'从「えーい!」

ケルベロスの足元目掛けて爆発系の魔法を三つ。土煙に紛れて渡辺は箒に跨がり宙へと浮いた。ついでに渡辺が陣取った場所へ高出力の魔法を設置。

残りの二体がこちらを視認し、炎を吐き出す。うまくかわしながら渡辺は大量の炎の礫を作り出した。

从'ー'从「いっけぇー!」

6161:2014/08/15(金) 21:42:23 ID:YSQy/0hU0

箒を振って魔法が途切れないように陣をいくつも形成していく。使いきらないよう配分を考慮し、最低限で最大の火力を。

空と陸、二つのルートをきっちり抑えられた魔物達は渡辺に近付けないことから少々不満が溜まっているのか闇雲に突撃を繰り返し、自ら戦闘不能に陥っている。

翼を焼かれ、爪を砕かれ、地に伏せていく魔物達。本来一番頭を使う時間稼ぎという役割を渡辺は忠実にこなすことができていた。

そう、その時までは。

▼・ェ・▼▼・ェ・▼▼・ェ・▼

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从;'ー'从「あれれ〜、三つ首のわんちゃんが出てきたよぉ〜」

嫌な予感がした。鳥型の魔物は数を減らしたままで増えていないな、とは渡辺も気付いていた。このままうまくいくのではないかと少し楽観的になっていた部分も、否定はしない。

しかし、このタイミングで出てきたということはあちらがわもこれが持久戦だと予想していたのだろうか。

从;'ー'从「でもでも、負けないんだから!」

ケルベロスが三体、真ん中の一体が疾駆。迎撃用の魔法が迎え撃つも、強靭な肉体には焦げ痕すら残らない。

从'ー'从「えーい!」

ケルベロスの足元目掛けて爆発系の魔法を三つ。土煙に紛れて渡辺は箒に跨がり宙へと浮いた。ついでに渡辺が陣取った場所へ高出力の魔法を設置。

残りの二体がこちらを視認し、炎を吐き出す。うまくかわしながら渡辺は大量の炎の礫を作り出した。

从'ー'从「いっけぇー!」

6171:2014/08/15(金) 21:43:08 ID:YSQy/0hU0

炎弾が地面へと向かって躍り狂う。炎に耐性を持つケルベロスには致命傷にはなり得ない。だが、こちらの目的はどこまでいっても時間稼ぎだ。目隠しでもなんでも攻撃を続ける他方法はない。

さらに地と空、挟み込むように二つの魔法陣を形成。その中心に炎がいくつも上から下へと流れていき、地面に触れた瞬間巨大な爆発が巻き起こる。

現在渡辺が使える魔法の中では最大の威力を持つが、効果は期待できそうにない。立て続けに同じものを放つと、渡辺は周辺に目眩まし用の設置魔法を置いておく。

土煙の中から一つ、黒い影が躍り出た。紙一重で横に回避、そしてターン。横から思いきり体当たりをかましてやると、ケルベロスは短い悲鳴をあげて落下していった。

だがほっとするのも束の間、下から巨大な岩がものすごい早さで飛来する。急いで箒を操るも、避けきれず箒の後ろに当たってバランスを崩してしまった。

从;'ー'从「ふ、踏ん張って〜!」

うまく体を使って落下は免れたものの、敵の攻撃は止まない。失速した渡辺を狙って炎が乱れ飛ぶ。服を焦がし、肌を焼きながら宙を行き交い攻撃のチャンスを窺うが、一度離れたイニシアチブはなかなか戻ってこない。

その間にも魔法を設置していくが、こちらの魔法を認識しているのかケルベロス達は弱い魔法を狙ってそれらを潰していく。

炎系の魔法が得意な渡辺にとってははっきりいって相性が悪すぎた。魔力も無限ではないし、高威力の魔法でさえ敵の表面をほんの少し焼くくらいでろくなダメージになっていないようだった。

从;'ー'从(どうしよう……私の魔法じゃ時間稼ぎもできないよぉ……)

敵の数が時間によって増えていくとしたら、渡辺には抗う術がない。広範囲魔法は例によって威力が低いし、騎士団のほとんどが魔法使いであることを考慮すれば魔法耐性がある魔物を選ぶはずだ。

ケルベロス自体魔物としてはそこまで高位の種類ではないし、ましてや物理攻撃に特化した種族は防御を捨てている場合が多い。にも関わらず見習いを卒業した渡辺の魔法さえ通らないのではまるで話にならなかった。

箒を駆って空を飛ぶのですら魔力は消費されていく。このままではツンに被害が及びかねない。

从;'ー'从(でも、手を休めるわけにはいかないよぉ……。きっとみんなも、どっくんもこんな気持ちで戦ってるんだもん)

6181:2014/08/15(金) 21:44:11 ID:YSQy/0hU0

右へ左へ、上へ下へとうまく敵に狙いをつけられないように動き回りながら、この流れを変える一手を思案する。

現在自分が切れるカードはいくつあるのか。まずは状況を整理していかなければならない。

渡辺が使えるのは炎系の魔法、そして空を自由に動き回れるということ。これは陸上しか動けないケルベロス達と相対する上では大きなアドバンテージだろう。

しかしいつまでも逃げ回っていてはいつツンが襲われるか分かったものではない。一応防御障壁を張ってはいるものの、ケルベロスの攻撃力を考えるとすぐにでも壊されてしまう可能性がある。

それとここに来る前ツンからもらった魔法道具もあるのだが、用途の説明を受けることなく受け取ってしまったので使い方はおろかどのような効果があるのかすら分からなかった。

ツンがちらりと言っていたのは攻撃系の道具だそうだが、説明書や仕様書はもちろんながら存在していない。

从;'ー'从(……とにかく使ってみるしかないよね。私がツンちゃんを守るんだから!)

方針は決まった。あとはどのタイミングでそれを使うか。そしてそのチャンスを作れるかどうかにかかっている。

とにかく、今は耐えて天に運を任せるしかない。

从;'ー'从(ツンちゃん、頑張って!)

6191:2014/08/15(金) 21:45:19 ID:YSQy/0hU0

◇◇◇◇

( ゚.゚)

魔剣を手にしたビコーズの動きはまさしく、普段のドクオの戦い方を忠実に再現していた。まるで鏡に映る自分を見ているかのようで、ドクオはあの魔剣がどれほどの力を秘めているかを改めて確認させられる。

剣を一振りすれば地面を消し飛ばし、瞬きの間に姿を消して死角から現れる。

幸いなのは敵がこちらの力を計りあぐねているのか致命傷になる攻撃が来ないことだった。

なにせ魔剣が手元にない今のドクオは普通の人間に毛が生えた程度の力しかない。敵の一撃をもらえば簡単に死ぬし、魔剣で斬られれば即消滅するだろう。

確かに魔剣を持って戦闘を行っていた経験は活かされてはいるものの、元のスペックが天と地ほど離れているため精々攻撃を避けることしかできない。

こちらから敵に踏み込んだところでカウンターを食らうだけだろうし、ましてやダメージが通るのかすら怪しいところだ。

それでもなおドクオが戦い続ける理由は、混乱したままのしぃが残っているからだった。

(* ー )

('A`;)(くそ、このままじゃ攻撃をもらっちまう……早く目を覚ましてくれ、しぃちゃん!)

敵もしぃの存在を分かってはいるのだろうが、あれは戦いそのものを嬉々として行っている。つまり、このままドクオを相手取っている限りはしぃに意識が向けられることはないということ。

もちろんドクオの体力が底を尽きればその時点で二人が生存する確率はほとんどないし、その前にドクオが死んでしまう方が現実的ではある。

今の状況をひっくり返すなんて、やはり今のドクオでは力不足だった。

('A`)(しぃちゃんが目を覚ませばまだ可能性はある。だから、それまでもってくれよ俺の体)

目の前を人形の剣が掠める。すんでのところで体を反らして避けるも、さらに一歩踏み込まれ袈裟斬り。

ドクオはそのまま転倒し、横に転がる。すると上空から光の刃が降り注いだ。

体のバネを使って最速で起き上がると、ドクオは一気に駆け出す。ビコーズが隣を並走するが攻撃はない。

6201:2014/08/15(金) 21:46:34 ID:YSQy/0hU0

慌てて急ブレーキ。突然止まったドクオにビコーズは着いてこれずに遥か先で停止した。ドクオは手近の石を拾うと思いきり投げつける。

一刀の元切り捨てられ、再びこちらへ。ドクオは振り返るとあっさり逃げ出した。

だが、ビコーズの人を越えた身体能力の前では無意味。一瞬で回り込まれ、剣を突き入れられる。

('A`;)「うぐっ……」

体を九十度回り込ませてギリギリ回避。着ていた服に触れ、その部分が一部消失する。

再び距離を取ってドクオは武器になりそうなものを探したが、そんなものはどこにもなかった。もしドクオに魔法の知識があればオサムが用意した魔法陣を利用できたのかもしれないが、考えたところでどうしようもない。

と、ドクオはすぐに思考を中断。目の前で人形が剣を振りかぶっていた。

('A`;)(避けきれねぇ……っ!)

一か八か、ドクオは人形の腕を掴んで押さえ込む。つっかえ棒の役割を果たし、奇跡的にも腕が振り下ろされることはなかった。

('A`;)(ぐっ……さすがに、押さえきれねぇ……)

徐々に沈んでいく体。全ての筋肉を総動員しても歯が立たない。

努力はした。自分にできる精一杯を続けてきた。けれども、この世界の怪物と真っ正面から相対してみればこの通りだ。所詮非力な一般人などその程度しかない。

逃げ出したかった。全てを投げ捨てて崩れてしまえばどれだけ楽になるか。

こんな世界などドクオになんの関係もない。巻き込まれただけの被害者なのに、どうしてこんな痛い思いをして、怖い思いをしてまで戦う理由などどこにあるというというのか。

けれども、ドクオはこの世界に生きている人達の笑顔を知っている。優しさを、強さを、涙を。

この世界にいる誰もがドクオを人として見てくれた。

元の世界で見捨てられ、孤独に死を待つだけの存在であったドクオを、何も言わずに見返りすら求めず拾い上げてくれた人がいる。

きっとそいつはドクオが死んでしまったら涙を流す。たくさんの人が死んだら心を痛める。

ドクオは、そんな彼女を見たくない。そんな顔をさせたくない。

たとえ一秒足りとも悲しませてはならない。

それが今、ドクオがここにいる理由。

6211:2014/08/15(金) 21:47:37 ID:YSQy/0hU0

力がなくとも、どれほど弱くとも戦わなければ彼女は笑ってくれないのだから。

('A`;)「なぁ、ビコーズ神父。あんたは報われない人達をたくさん救ってきたよな。誰かを救うことで、世界は変わっていくんだって信じてたはずだ。醜いとこも、汚いとこも知りながら、それでも人の可能性を信じて手を差し伸べてきたんだ」

('A`;)「色んな人を見てきただろうよ。あんた自身辛酸舐めながら生きてきたんだから。なのに、今のあんたはどうだ! こんな結末で満足なのかよ!? 人を想い、世界を憂いたあんたが、人を殺すための兵器でいいのかよ!?」

('A`;)「あんたのことをまだ慕ってる人達がいるんだ!! あんたに会いたいって、お礼を言いたいって、あんたを待ってる人がいるんだよ!!」

('A`;)「いい加減目を覚ましやがれ!! 馬鹿野郎!!」

叫んだ瞬間、ドクオの体から力が抜けた。体勢が崩れ、前のめりに倒れてしまう。

腕や足の感覚がない。折れているのか、斬られたのかさえ定かではなかった。

殺される。

だが、目を逸らしてはいけない。自分の生きざまを、ビコーズの生き方をきちんと見届ける必要があるから。

('A`)

( ゚.゚)

しかし、ビコーズは動かなかった。切っ先をドクオに向けながら、何かと必死に戦っているようにも見える。

やがて、ビコーズの体が小刻みに揺れ始めた。さらに、宿舎前で戦った時と同じ、彼の瞳から何かが流れていく。

('A`)「……神父」

( ;.;)コロシテクレ

6221:2014/08/15(金) 21:48:33 ID:YSQy/0hU0

ビコーズは、はっきりと自分の意思を伝えてくる。

まだ彼の心は残っていた、オサムや魔剣などに負けてはいないのだ。

('A`)「……諦めんなよ。俺だって諦めない。まだ、戦いは終わっちゃいないんだ」

ドクオは心の底から彼を救いだす方法があるはずなのだと信じていた。人の心はそんなに弱くない。

こうして彼と心を通わせていることが何よりの証拠ではないか。

( ;.;)モウイイノダ トックニツキタイノチ

( ;.;)コレイジョウダレカヲテニカケタクハナイ

きっと、彼は自分がしてきた全てを覚えているのだろう。人でありながら、人を救うはずの体は、多くの血に染まって心を凍てつかせてしまった。

本当は、手を差し伸べてあげたかったのに。

('A`)「あんたはまだ人間だろ。その証拠にこうして俺と話して、涙を流してる。人間じゃないなら、俺はとっくに死んでるはずだ」

ここにいるのはただの非力な男。戦うことを知らず、無様に逃げ続けてきた男なのだから。今の彼ならば手にかけることなど実に容易いはずだった。

( ;.;)ナゼキミハソコマデスルノダ

心の底からの疑問が、ドクオに伝わる。

('A`)「簡単な話だろ。報われぬ者に救いの手を。誰かを救うことに理由なんてない。救いたいから救う、目の前に泣いてるやつがいたら助けるのが人間なんだ」

( ;.;)ナンノカンケイモナイキミガナゼ?

('A`)「しぃちゃんにそう教えたのはあんたじゃないか」

彼の想いはしぃに引き継がれ、そしてドクオまでやってきた。

何の関係もない、弱い男を突き動かすほど大きな力となって元の場所へと戻ってきたのだ。

( ;.;)ワタシハ、スクワレテモイイノダロウカ

('A`)「あんたはたくさんの人を救った。だから、今度は俺が、あんたが救ってきた人達が生きているこの世界があんたを救うんだよ」

想いは世界を巡る。

6231:2014/08/15(金) 21:50:09 ID:YSQy/0hU0

彼の生き方を見て、どれだけの人が他人に優しくなれだろう。

どれだけの人が誰かを救っただろう。

一人が一人に手を差し伸べて、その一人が他の誰かを助けて、そうやってたくさんの人達が他人に優しくなって、みんながみんなを想えればいい。

彼がそうしたように。

しぃがそうしたように。

だから、ドクオは彼を救いたい。

だから、ドクオは立ち上がらねばならなかった。

彼を、しぃを、人の心を、嘘だと否定しないように。

('A`)「まだ終わりなんかじゃねえ。終わらせやしない。絶対に諦めるもんか。俺はあんたを救ってみせる! だから、あんたの望みを言えよ! 生きたいって、救ってくれって言ってくれ! ビコーズ神父!」

( ;.;)

( ;.;)ナラバ

( ;.;)タノム

( ;.;)ワタシヲコロシテクレ

ビコーズは、

涙を流しながら、

人の心が通った声で、

静かにそう言った。

6241:2014/08/15(金) 21:53:22 ID:YSQy/0hU0

( ;.;)モハヤマケンハワタシノココロヲトリコンデイル

( ;.;)カラダヲエタマケンハスベテヲハカイシツクスダロウ

( ;.;)ワタシノジガガアルウチニオワラセテホシイ

('A`;)「だから、まだ諦め━━」

( ;.;)イイカゲンニメヲサマセ!!

( ;.;)マケンハヒトノココロヲムシバムノダ

( ;.;)ワタシハモウモドレ……ナ……

ビコーズの声が段々と小さくなっていく。ここまで口を開くことが出来たのさえ無理をしていたのかもしれない。

('A`;)「ふざ、けんな! 俺は、諦めねえぞ! ここまで来たんだ! 諦めたら、しぃちゃんに申し訳が立たねえだろうが!」

ドクオは立ち上がり、吠えた。不意に視界の隅で何かが動く。

(*゚ー゚)「神父……様?」

そこには、魔法から解き放たれたしぃが立っていた。

('A`;)「しぃ、ちゃん」

(*゚ー゚)「神父様……ですよね?」

6251:2014/08/15(金) 21:54:20 ID:YSQy/0hU0

(*;ー;)「しぃ、しぃです。あなたの教会でお世話になった、しぃです! ずっと、ずっと探していました! 教会がなくなってから、ずっと……」

(*;ー;)「姿形が違うとしても、神父様は神父様です。誰よりも優しくて、誰よりも強い私達の父親でした」

(*;ー;)「だから、言わせてください。私達を育ててくれて、愛情をくれて━━」

6261:2014/08/15(金) 21:55:04 ID:YSQy/0hU0




(*;ー;)「ありがとう、ございました」




.

6271:2014/08/15(金) 21:55:46 ID:YSQy/0hU0

しぃの言葉と同時、ビコーズの体の震えが止まり、彼を中心に空気が変わった。

('A`)「……しぃちゃん。絶対に諦めんな。俺も絶対に諦めないから。諦めたら全部終わりなんだ」

(*うー;)「はい」

('A`)「俺はビコーズ神父を助けたい。そんでしぃちゃんともう一度会わせる」

(*゚ー゚)「……お願いします」

('A`)「戦おう。今のあの人を止めるには、戦うしかない」

ビコーズが、いや、ビコーズを食らった何かが吠えた。魔剣に飲まれ、自我を失い、悪意に囚われた彼は今も悲しんでいるのだろう。

だから、ドクオはまだ戦わねばならない。

彼を救うため、傍らで涙を流す少女のため。

('A`)「来い! 神父!」

6281:2014/08/15(金) 21:56:29 ID:YSQy/0hU0



一体自分はどうなってしまったのだろう。

死んでしまったのか、それとも生きているのか判断がつかない。まるで柔らかい綿に包まれているかのような安らぎを覚えた。

同時に風や魔力の流れ、どこで誰が何をして何を思っているかが手に取るように分かる。

様々な情報、様々な想いが種類を問わずに与えられ捨てることさえ出来ない。

だが、こちらにとって好都合だ。そのなかには自らの力では知り得ない隠され、秘匿されてきた情報さえある。

これさえあれば世界の掌握も、神に等しい存在になることも、新たな世界を創造することすら容易いだろう。

今、

この瞬間をもって、

彼は、

世界の全てを手に入れた。

6291:2014/08/15(金) 21:57:12 ID:YSQy/0hU0
第十三話 終

630名も無きAAのようです:2014/08/15(金) 21:58:58 ID:yVaw9OaY0
(・ω・`)乙
ビコーズ頑張って欲しい。しぃとちゃんとであって欲しい。
創作版で読んだ物語で初めて泣いた。
これからも頑張ってくれ

631名も無きAAのようです:2014/08/15(金) 21:59:59 ID:5gs.t5VY0
乙!
盛り上がって来たな

6321:2014/08/15(金) 22:00:14 ID:YSQy/0hU0
これにて今回の投下終了です
ようやく終わりが見えてきました
次回も二週間以内にお届けしたいと思います
今回は色々と言葉選びといいますか、そういった粗が出てしまっておりますが、次回から少しなおしていこうと思います
では今回も読んでいただきありがとうございました

633名も無きAAのようです:2014/08/15(金) 22:35:04 ID:Yucy7Ksw0
乙乙

634名も無きAAのようです:2014/08/15(金) 23:33:38 ID:We4dNDgw0

厨二っぽい地の文の運びだけど、普通に上手いし読みごたえありかつ読みやすいんだよなぁ
勉強になるわぁ

635名も無きAAのようです:2014/08/16(土) 20:46:06 ID:8LDJwksg0
>>634
きちんと文章になってる分まだ読めるからな
THEラノベって感じ

636名も無きAAのようです:2014/08/17(日) 14:28:26 ID:6MLeMdyY0

みんな成長してるなぁってのが分かるな

6371:2014/08/21(木) 23:23:05 ID:bJU5L84M0
どうも1です
現在十四話鋭意執筆中です
おそらく来週の金曜日には投下できるかと思います
仕事が忙しくなかなか顔を出せていませんが、皆さんの支援やレスなどはしっかり読ませていただいております
ただただ読んでいただけるだけでもありがたいのに、書き込みもいただけて作者冥利に尽きます
返レスしたいところですが、忙しいため今回は生存報告と投下予告のみとさせていただきます
それではまた

638名も無きAAのようです:2014/08/21(木) 23:47:31 ID:AthcAp4k0
期待して楽しみに待ってます!

お仕事大変ですががんばって?

639名も無きAAのようです:2014/08/21(木) 23:51:25 ID:oHzk2Bmk0
きながにまってるよー

640名も無きAAのようです:2014/08/22(金) 01:12:18 ID:YxQf.5ok0
待ってますよ

641名も無きAAのようです:2014/08/29(金) 23:29:49 ID:hVmurqDw0
作者さんから郵便です

本日投下が出来なくなったそうです
また後日連絡をお待ちください

642名も無きAAのようです:2014/08/30(土) 00:19:52 ID:twdmxM0k0
待ってますよ

6431:2014/09/02(火) 08:05:21 ID:l8AaR42.0
てす

6441:2014/09/02(火) 08:06:18 ID:l8AaR42.0
やっと規制解除されました!
今週の金曜日に投下します!
郵便してくれた方ありがとうございました!

6451:2014/09/03(水) 23:44:36 ID:GKetSwM60
すいません予定変更です
明日の夜十時から投下します
大変お待たせして申し訳ありませんでした

646名も無きAAのようです:2014/09/04(木) 18:58:49 ID:OFkFkr46O
そろそろパンツ脱ぐか

647名も無きAAのようです:2014/09/04(木) 19:24:39 ID:zVH/wL3o0
パンツ爆発しといた

6481:2014/09/04(木) 22:00:07 ID:JgPwpBr60




第十四話「広がっていく希望」



.

6491:2014/09/04(木) 22:01:09 ID:JgPwpBr60

◇◇◇◇

从 ー 从「はっ……はっ……」

増えていく敵、熾烈さを増す砲火の中を渡辺は華麗に宙を舞っていく。すでに敵の攻撃のタイミングや、連携のクセなど見切ったものは多々あったが、渡辺はけして反撃をしなかった。

正確にいえば反撃ができない。どれくらいの時間戦っているのか分からないが、敵の攻撃を避けて相殺して操って。けしてツンを傷つけないように、邪魔をしないよう渡辺は出来うる限りの策を駆使してしつこいくらい時間稼ぎに徹している。

魔力が尽きれば箒で飛行することも出来なくなるし、力のない渡辺など一瞬で物言わぬ肉塊に成り果てるだろう。

さらに、先程から魔力消費量が自分の思っているよりも大きく減っていた。敵の術式にそういった作用が働いているのかもしれない。

魔法の使えない渡辺は他の一般人にも劣る矮小な存在でしかなくなってしまう。そうなれば術式の解析に集中しているツンへ意識が向いてしまう。そうなれば黒幕と戦っているドクオ達も劣性を強いられるのだ。

この街では沢山の仲間がそれぞれの想いを胸に戦っている。渡辺にはその手助けが出来るのだ。

6501:2014/09/04(木) 22:01:56 ID:JgPwpBr60

たかだか魔法使いになったばかりのひよっこだが、誰かのために戦う理由はそれで十分だった。

从 ー 从(それに、まだ最後の手は残ってる)

渡辺の手に握られた楕円形の道具。ツンがくれた一筋の希望。

使い方も、威力も未知数だが戦闘能力に期待できない自分に預けたということはそれなりに期待できるはずだ。

あとはそのタイミング。いつ使うべきか、使ったとして戦闘は終わるのか。攻撃手段がこれしかない現状、魔物の数がなおも増えるのであればまだ使うべきではない。

もちろんこの道具で全てが決する可能性はそこまで高くないだろう。

だからこそ使うタイミングは慎重に選ばなければならない。弾丸は一発。外せば何もかもが終わる。渡辺にはそんな確信があった。

下を見ればケルベロスの他にゴーレムが二体、巨大なゾンビが三体、こちらを睥睨している。ケルベロス以外はいずれも遠距離攻撃を持ってはいない。代わりにそこらに転がっている岩を投げつけて攻撃していた。

直線的な攻撃なうえ、ゴーレムもゾンビもそこまで知性は高くないようで好き勝手に攻撃しているので回避するのは容易い。

651名も無きAAのようです:2014/09/04(木) 22:02:02 ID:b6BMUx6M0
きた!これで勝つる!

6521:2014/09/04(木) 22:02:58 ID:JgPwpBr60

問題は奴らの防御力だった。硬い鉱石でできているゴーレムは言わずもがな、ゾンビ共も防御力こそ低いもののどれだけ傷がつこうとも死ぬことのない耐久力は火力のない渡辺にとっては厳しい相手である。

ましてや高火力の魔法を制限されている今、対抗する術はない。

故に渡辺は適度に牽制し、かつツンを守りつつ逃げ続けるしか方法がないのだ。

こうして様子を見ている間も防御障壁の維持に魔力を裂かれ、浮いている箒にも魔力は使う。

そのためにはツンが術式を解くことが大前提。おそらく、下にいる魔物を倒したところで次の魔物が現れるのは間違いない。

これだけ強固な守りを施しているのだ。たかだか魔法使いに昇格した程度の小娘に攻略を許すほど甘くはないはず。

現状でさえ手を遍いているのだから、これ以上は渡辺がどうこうできるレベルではないだろう。

だからこそ、この街の出来事を終わらせるための条件をきっちりと整理する必要があった。

極限の戦いの中で、渡辺は自分でも経験したことのないほどに集中力を増しているのを感じた。

从'ー'从(この戦いを終わらせる条件は、三つ。まずはツンちゃんが術式を解除すること)

6531:2014/09/04(木) 22:03:48 ID:JgPwpBr60

これは最低条件の一つとも言える。オサムが施した魔法はモ・トコだけでなく周辺の街にまで及んでいる以上、目先の敵を潰したところで意味はないのだ。

从'ー'从(次に、これ以上魔物を増やさないこと。多分、術式を解かないと次々出てくるもんね)

ツンは侵入者迎撃の術式だと言っていた。仮にツンが術式の解除に成功したとしても、現れてしまった魔物は消えたりしないだろう。どころか周辺の街に散らばり人々に被害をもたらす可能性もある。

そうならないためにも渡辺は現状を維持したまま時間を徹底的に稼ぐ必要があった。

从'ー'从(最後に、オサムさんを倒すこと。術者がいなくなれば同じ被害は出ない、はず!)

ここまで考えたところで、やはり出来ることは変わらないことに気付き、渡辺は少々気落ちした。

ここまで真剣に考えたのに、到達点は一緒だった。

从;'ー'从(うー、一生懸命考えたのにー……)

と、渡辺が自身の思考回路に心底落胆している時、不意に後方から高熱を放つ何かを感じた。

箒を繰り、方向転換。炎を纏った九つの岩弾が目前まで迫っている。

从;'ー'从(ふぇぇ……避けられないよぉ〜!)

6541:2014/09/04(木) 22:04:43 ID:JgPwpBr60

体を横に傾け、直撃だけは免れるものの、次々に飛んでくるそれらを完全に回避することはできず、幾つかが箒の柄を叩いていった。

錐揉み回転しながら落ちていく自分の体と箒。落下すれば命はない。うまく体勢を立て直そうと踏ん張るものの、さらに炎弾が追撃。たまらず渡辺は魔法を展開させてしまう。

从;'ー'从(あ! 私の馬鹿ぁ〜!)

最低限の防御魔法だったが、咄嗟の展開だったために著しく魔力を消費してしまった。これでは時間稼ぎどころの話ではない。

再び上空へと避難。未だにこれでもかと言わんばかりに飛んでくる炎弾と岩石の嵐の中で、さらに重大な事実に気付いてしまった。

从;'ー'从(あ、ツンちゃんに貰った道具!)

見れば渡辺の元を離れて地面に落下していた。先程体勢を崩した時に落ちてしまったのだろう。ケルベロス達の足元に転がっている。

拾いに行きたいが、今のままでは不可能だ。敵が構えている陣地に無策で飛び込むなど愚の骨頂、それくらい渡辺にだって分かっていた。

从;'ー'从(ふぇぇ……どうしよう……)

最後の希望が絶たれてしまった。勿論あれ一つで全てが決する訳ではないが、重要なファクターの一つであることに違いはない。

6551:2014/09/04(木) 22:05:31 ID:JgPwpBr60

迷っている間にも危険は迫る。渡辺は決断しなければならない。

从'ー'从(……なくしちゃいけない。あれは最後の希望なんだから!)

砲火の嵐を紙一重の差で交わしながら渡辺は魔物の元へと箒を走らせた。体力も、魔力も残り少ない今、これが最後のチャンスだろう。

物までの距離まで、あと僅か。

▼・ェ・▼▼・ェ・▼▼・ェ・▼

从'ー'从(え……)

離れた位置にいたはずのケルベロス。渡辺が道具に到達する直前、横から割り込んできた。

得意の炎弾ではない。鋭く尖った牙を剥き出しにし、凶悪な形相でこちらを狙っている。

今さら方向転換など不可能。避けきれない。

全ての動きが止まったように感じた。一瞬一瞬が手に取るように分かる。

だがそれに反して体は動かない、言うことを利かない。

渡辺は思わず目を閉じた。これで何もかもが終わってしまう。自分の命も、この戦いも。

从 ー 从(ごめんなさい、みんな。ごめんなさい、どっくん)

6561:2014/09/04(木) 22:06:19 ID:JgPwpBr60

信じてくれたみんなを裏切る形になってしまった。もう、抗う術はない。

その瞬間、渡辺は強い魔力の奔流を捉えた。自分でもない、ツンでもない、もちろん魔物のものでもない。

もっと別の異質な魔力。渡辺の感覚で言うならば、もっとも近いものは、マナ。

从'ー'从「……ほえ?」

地面を滑り、痛みに半べそをかきつつおそるおそる目を開ける。すると、そこには予想もしなかった光景が広がっていた。

渡辺の魔法を意にも介さなかったケルベロスが、幾つもの肉片となって散らばっている。

さらに渡辺の周りには自らが使うものよりも数段レベルの高い防御魔法が。

そして、渡辺の目の前にはパタパタと羽を羽ばたかせている奇妙な生物。

(*゚∀゚)

从'ー'从「……猫?」

それは一言で言えば羽の生えた黒猫だった。あえて疑問をあげるならば、この猫が一体どこから出てきたのかということ。

そして━━

6571:2014/09/04(木) 22:07:57 ID:JgPwpBr60

(*゚∀゚)「ニャ」

猫が短く鳴いた。それだけで少し離れた場所に立っていたゴーレムを中心に巨大な爆発が巻き起こる。

从;'ー'从「わわっ」

ゴーレムは木っ端微塵、おまけに大きなクレーターが出来上がっていた。

从;'ー'从「す、すごいよぉ……」

(*゚∀゚)「ニャ、あんたがあたしのご主人かニャ?」

从;'ー'从「しゃ、しゃべったー!」

(*゚∀゚)「そりゃ魔法生物ニャンだからしゃべるに決まってるニャ」

从;'ー'从「魔法生物? って、もしかして」

もしや、ツンにもらったあの道具がこの猫を召喚、いや作り出したというのだろうか。

(*゚∀゚)「ニャニャ。何はともあれ、あたしのご主人はあんたで間違いなさそうニャ。あたしはつー、主人を守る使い魔ニャ」

猫はそれだけ言って、ニヤリと笑った。

6581:2014/09/04(木) 22:08:41 ID:JgPwpBr60



大きな音に思わずツンは振り返ってしまった。

渡辺では対処しきれないほどの魔物が現れていたのは分かっていた。それでも今まで渡辺を気にしなかったのはひとえに彼女に渡した道具があれば、少なくとも渡辺が死ぬことはないとたかをくくっていたからである。

しかし、それがうまく機能した様子がなかったのでツンの不安はとうとう爆発してしまった。

だが。

从'ー'从「がんばれーねこちゃーん」

(*゚∀゚)「ニャ」

黒猫が広範囲に燃え盛る火炎を放つ。うまく魔物の動きを制限し、見事に手のひらで踊らせていた。

その後ろで精一杯応援する渡辺。どうやら戦いは猫に任せたようだ。

ξ゚⊿゚)ξ「何よ、うまくやってくれてんじゃないの」

ツンが渡した道具は使い魔を製造するためのもの。使用した、というよりも術者を指定して魔力が蓄積されると自動で使い魔が生成される仕組みになっている。

蓄積される魔力は指定した術者の内包魔力やマナの量にも左右されるのだが、ここまで時間がかかったということは━━

ξ゚⊿゚)ξ(渡辺の潜在能力って一体どうなってんのよ)

6591:2014/09/04(木) 22:09:31 ID:JgPwpBr60

使い魔の姿形は術者の脳内イメージ、というよりは本人が持つ想像力が魔力を伝って道具側が勝手に形作る。今回の場合、渡辺の使い魔というのは黒猫で、彼女の持つ力はそれ以上になるということ。

使い魔がケルベロスやゴーレムを一撃で倒すなんて、ツンが見たデータにも掲載されていなかった。

しかも、同時に複数の魔法を展開してうまく渡辺やツンを守りながら戦っているようだ。時間稼ぎということもしっかり理解しており、渡辺よりも数段お利口さんである。

ξ゚⊿゚)ξ(ま、とりあえず結果オーライってやつね。あとは……)

自分がこの術式を解除すれば全てが解決、ショボン達の捜索に向かえるというもの。

あれだけの使い魔が出てきた以上、渡辺は心配いらないだろう。

ξ*゚⊿゚)ξ(さぁって、さっさと終わらせて王都に戻りますか!)

どこぞの誰かが干渉している術式を巧みに変換と削除、さらには自身で組んだ術式を嵌め込み、うまく魔導原石から引き剥がしていく。

6601:2014/09/04(木) 22:10:36 ID:JgPwpBr60

あちらの最優先の目的は精神掌握系の魔法を引き剥がすことだというのは一目瞭然。ならばそれさえも利用してしまえば解除の早さも二倍になる。

ξ゚?゚)ξ(こっちのルーンはここに、この魔導関数はこれね。この辺は、まるごと変換、と)

術式とはすなわちルーンや魔導関数の集合体だ。それ単体で意味を持つ図形ルーンと、魔力を適切な場所に適切な量を配置する魔導関数。大まかに言えば術式はこの二つで構成されている。

そして術式をいくつも組み合わせて出来上がるのが魔法陣であり、呼び出すことによって魔法は発動、というのが一般的な形だ。

もちろん魔法というのは元を辿れば魔力に命令を与え、特殊な変化を施し様々な物であったり事象を引き起こすものであり、魔力に命令が伝わるのであれば陣を用いる必要はない。

例えば言葉、即ち音であったり文字であったり、魔力が反応すればなんでもいいのだ。しかし、魔力への命令は当然ながら膨大な情報量を扱わなければならないために音や文字ではどうあっても時間がかかってしまう。

故にその問題を解決するためにルーンと魔導関数を用いた術式と魔法陣が考案された。

突き詰めていえば、ツンが今いじくっている魔法陣も一部のルーンや魔導関数を適当に変えてしまえばシステム自体は使えなくなる。

だが、オサムは他の誰かに術式を解析、変換されることを見越してなのかそういったことをすれば自動的に魔導原石のエネルギーを暴発させる術式も同時に組み上げているようだ。

6611:2014/09/04(木) 22:11:29 ID:JgPwpBr60

どこから引っ張っているのか詳しくは分からないが、様々な場所から強引に魔力を集めているところを考えると、おそらく周辺の街の魔力炉もシステムの一部として機能させているのだろう。

そんなものが暴発すれば、単純に計算しても大陸北部が消滅するであろうことは想像に固くない。

ξ゚⊿゚)ξ(よくもまぁここまで面倒な術式を組んだもんよ。この知識と技術を世のため人のために使えば称えられたものを)

この複雑で繊細なシステムを見れば、研究者として、技術者としての腕は相当なものだということは誰の目から見ても明らかだ。だからこそもう少し違った形でそれを発揮できれば、とツンは残念に思った。

術式の解除は順調に進んでいく。顔も名前も知らない向こう側の術者もうまくこちらの意図を組んで動いてくれていることもあってか、ツンも驚くほどスムーズにことは運んでいった。

だが、だからこそツンは慎重にならなければならなかったのだ。

まるで導かれるように変換されていく術式は、ツンの意図とは正反対の方向へと向かっていた。

だから、それに気付けたのは僥倖というほかなかったのかもしれない。

ξ;゚⊿゚)ξ(え、なにこれ……どうなってんの?)

6621:2014/09/04(木) 22:12:21 ID:JgPwpBr60

組上がっていく術式の意味を大まかに訳すならば━━

『全ての魔力を一つに収束させる』

つまり、モ・トコにいる全ての存在を魔力に変換するということ。

ξ#゚⊿゚)ξ「ふ、ざけんなぁぁぁぁぁぁぁ!!」

この短時間で、かつ一切の無駄なくこんなことができる人間などここには一人しかいない。

ツンは、そしてもう一人の協力者は、嵌められたのだ。

あの狡猾で、傲慢で、人を人とも思わぬ悪魔に。

このままではこの街にいる仲間達を含め全ての人間が死を迎える。最悪それだけは避けねばならない。

ξ;゚⊿゚)ξ(急げ! 私ならできる! 急ぐのよ!)

ξ;゚⊿゚)ξ「渡辺! ここはいいからあんたはショボンさん達を探しに行って、この場を離れなさい!」

突如呼ばれた渡辺が怪訝そうに眉を潜めていた。

ξ゚⊿゚)ξ「説明してる暇はないの! とにかく早く!」

渡辺が慌てて頷き、使い魔を連れて飛んでいく。それと同時、周囲に蠢いていた魔物達が淡い光となって消えた。

もう、時間はほとんど残されていない。

6631:2014/09/04(木) 22:13:21 ID:JgPwpBr60

◇◇◇◇

(;´ ω `)(これは、一体どういうことなんだ?)

途中まではほとんど完璧といっていいほどの進捗だった。なのに、今ショボンの前にある術式は異様とさえ言えるほど禍々しいものへと変貌を遂げている。

全てのルーンや魔導関数の意味を汲み取ることはできない。ショボンでさえ見たことのないルーンの配置と関数の設定は、現代魔法における定石を遥かに外れている。

それでも、ショボンの騎士としての勘が告げていた。

これは、危険だと。

このままでは、全滅だと。

(;´ ω `)「モラ━━」

声を張り上げ、戦っているモララーへと目を向けた時だった。

( ;・∀・)「これは……」

6641:2014/09/04(木) 22:14:47 ID:JgPwpBr60

モララーと戦っていたはずの炭鉱夫達が、光の粒子となって消滅したのだ。始めから、存在などしていなかったかのように。

( ・∀・)「……どうなってんだよこれ」

(;´ ω `)「分からない。分からないが、とてつもなく嫌な予感がする」

( ・∀・)「奇遇ですね。俺もそんな気がします」

立っていられなくなり、ショボンが地に膝を着く間際、モララーが肩を貸してくれた。

( ・∀・)「とにかくここを離れましょう。ドクオ達も気がかりだ」

(;´ω`)「僕のことはいい。あとは自分で何とかする。モララーはドクオとしぃの方を優先してくれ。何かあれば、連絡を頼む」

一瞬迷った顔を見せたが、モララーはすぐに頷いた。今優先すべきが何かを理解できないほどモララーは馬鹿ではない。

だからこそショボンは彼を信頼できるのだ。

6651:2014/09/04(木) 22:15:36 ID:JgPwpBr60

( ・∀・)「勝手に死なれちゃ困りますからね。ジョルジュ団長もいない今、あなたを失うのは痛い」

(´ω`)「分かっているさ」

それだけを言って、モララーが去っていく。途端に膝を着き、大きく息を吐いた。

もしかすると、約束は守れないかもしれない。

(´ω`)(すまない。モララー)

瓦礫の上に寝転び、流れていく雲を眺める。どこまでも穏やかで、戦闘の真っ最中だということも忘れてしまいそうなほどに、美しい朝焼けだった。

と、その中に高速で飛行する物体を見つける。魔物、ではない。あれは、人だ。

だんだんと近付いてくるそれに、臨戦態勢を取ろうとして、ショボンは体に力が入らないことに気付く。どうやら戦うことすらできそうにない。

从'ー'从「あ、ショボンさん見つけたよぉ〜」

(*゚∀゚)「ニャニャ。ご主人お手柄ニャ」

(´ω`)「渡辺!? 何故君が━━」

从'ー'从「はいは〜い。話はあとですよ〜。えっと、確か、もう一本……」

渡辺がポケットから瓶を取り出した。確か、あれは魔力を回復させる薬だ。それを飲まされ、ショボンの体にある程度力が戻っていく。

6661:2014/09/04(木) 22:16:19 ID:JgPwpBr60

失ったマナまですぐに回復するわけではないが、先程よりは幾分ましになった。少なくとも自力で立つのは問題ない。

(´・ω・`)「……すまない。助かったよ。それにしても、何故君が」

从'ー'从「えっと、どこから話せばいいのかなぁ〜」

(*゚∀゚)「そんなことより、さっきの魔法使いに言われたこと忘れたのかニャ」

从'ー'从「あ、そうでした。あの、ショボンさん、ツンちゃんが早くこの街から離れてって言ってました〜」

(´・ω・`)「……何?」

渡辺が手短に今までの経緯を話す。モ・トコに来た理由、これまでの戦い、ツンが今何をしているのか。

(´・ω・`)(なるほど。ということは、さっきまで僕のカバーをしてくれていたのは彼女だったのか)

一つ目の謎が解けたところで、二つ目の謎であるここから離れろとはどういうことだろうか。

(´・ω・`)(あの術式はよく分からないが、魔力を操る用途のものだろう。そして、消えた炭鉱夫達)

さらに周辺の街から消えた住民、オサムという敵の目的。

様々な角度から思考を張り巡らせ、ショボンが導き出した答えは━━

6671:2014/09/04(木) 22:17:13 ID:JgPwpBr60

(´・ω・`)「まさか、この街全体の魔力をマナへと変換するつもりなのか?」

从'ー'从「ほえ? そうなんですか?」

(*゚∀゚)「ニャ。魔力の流れから考えれば、あり得なくはないと思いますニャ」

(´・ω・`)「……ところで、この猫は」

(*゚∀゚)「ニャ。魔法使い渡辺の使い魔、ツーといいますニャ」

(´・ω・`)「……そうか」

深くは突っ込まないようにしよう。使い魔を作る魔法道具は確かにあった気はするが、普通人語を解さないはずだ。

だが、今はそれを考えている暇はない。

(´・ω・`)「どのみち、今彼女は一人で術式の解除をしているんだろう。ならば、僕がそちらの補助に回ろう。何をするつもりかは分からないが、力にはなれるはずだ」

从'ー'从「私はどうすればいいですか?」

6681:2014/09/04(木) 22:18:02 ID:JgPwpBr60

(´・ω・`)「モララーと共にドクオ達の元へ。彼らが戦闘中であれば支援し、速やかにこの街から離れるんだ」

从'ー'从「分かりました〜」

(´・ω・`)「君は魔法使いといえど、騎士団に属していない。けして無茶はしないように」

从'ー'从「は〜い」

渡辺が気の抜けた返事をして箒で空へと消えた。

これである程度の問題は解決に向かうはすだが、最大にして最悪の問題である方は、すぐにでもなんとかしなくてはならないだろう。

ショボンが行ったところで役に立たないかもしれないが、やらないよりはましだ。

(´・ω・`)「本調子ではないが、なんとかなるだろう」

ショボンは再び魔力を辿り、戦場を駆ける。

いつ倒れるとも知れぬ身でありながら、救えるはずの人達のために。

6691:2014/09/04(木) 22:18:45 ID:JgPwpBr60

◇◇◇◇

宙に浮いている氷の剣を一本掴んで思いきり降り下ろす。ビコーズの体に当たるものの、強度が足りないせいか一撃で粉々になった。

横薙ぎに向かってくる剣撃を身を低くしてかわすと、すぐにもう一本。やはり当たると同時に粉砕される。

('A`;)(やっぱろくなダメージにならねぇ!!)

距離をとるために横へと飛ぶが、ビコーズの魔法がドクオを襲う。後方に待機しているしぃがうまく防御魔法を敷いてくれるが、全ての攻撃を防ぐことは敵わない。

突き破ってきた魔法がいくつか体を掠めるも、致命傷にはならなかった。三度氷の剣を取って投擲。

ビコーズはそれを手を払うだけで簡単に防いだ。

武器を持たぬドクオは先程からしぃに簡易的な氷の剣を至るところに精製してもらい、それらを無造作に引っ付かんで攻撃しているのだが、元が人を超越した存在であるビコーズには傷一つ負わすことができなかった。

代わりにドクオは完全に生身なうえ、魔剣による身体強化もないため、一撃一撃が酷く重い。

食らえばその時点で死亡、なのにこちらの攻撃は一切通らないというあまりの戦力差。もしこの場にしぃがいなかったらと思うと背筋が震える思いだった。

6701:2014/09/04(木) 22:19:28 ID:JgPwpBr60

だが、泣き言を言っていてはビコーズにも、しぃにも合わす顔がない。

ドクオはもうとっくに腹を括っている。

しぃを、ビコーズを、ありとあらゆる報われない人達を救う。

ビコーズがそうしてきたように、しぃがそうあろうとしたように。

だからここで引くという選択肢は端からない。あるのはギリギリでもなんでも、彼と戦い、目を冷まさせることだけ。

幸い敵の攻撃はしぃとの連携で避けられないわけではないのだ。攻撃が通らないのが目下の問題点ではあるものの、それにもきちんと目処はつけている。

あとは然るべきタイミングで然るべきことをするのみ。

('A`;)(とはいうものの、俺の体が無事でいてくれるか怪しいな……)

威力、速さ共に魔剣の加護を受けたドクオをゆうに越えている。おまけに魔法まで使えるのだからどこまでも反則級の相手だった。少なくとも今までドクオが相手取ったどの敵よりも手強い。

こちらの動きはいとも容易く見切られるし、あちらの動きにドクオはついていけないし、とないない尽くしである。

('A`)(あとは、ビコーズ神父がどこまで人間であるか、だろうな)

いくら人を越えた存在であっても、目があり、鼻があり、手があり足がある。関節や筋肉の動きにも限界はあるし、視界も全方向確認できるわけではない。

6711:2014/09/04(木) 22:20:19 ID:JgPwpBr60

人型をしている以上、弱点はいくらでもあるはずだ。

ドクオは自分の知識をフル動員して出来る限りの抵抗を試みる。その全てが通用するわけではないが、最悪被弾は防げるはずだ。

('A`;)(しかし、ほんと隙がねえな。今んとこはうまくいってるけど、気を抜いたら即死亡だぞ)

うまく距離を図りながら敵の攻撃のあと、動作の継ぎ目を狙いながら牽制にもならない攻撃を繰り返す。

しぃに攻撃をさせる案も一度は考えたが、氷の剣をどれだけ使うかも分からないし、仕上げに至るまでどれほどの時間がかかるか予測ができない以上、無駄玉を打たす訳にはいかなかった。

ドクオに決定的な危険が迫るまで温存するに越したことはない。

( ゚.゚)

ビコーズの周辺に光の玉が漂い始める。同時にドクオへ向かって突っ込んできた。

氷剣で迎撃。両手に剣を持って力一杯袈裟に振り抜く。

閃光。光が一気に弾けた。

(うA-;)(うおっ、まぶしっ)

6721:2014/09/04(木) 22:21:08 ID:JgPwpBr60

視界を奪われ、ドクオは急いで後ろへ跳ぶ。

(*゚ー゚)「右です!」

しぃの声に従い、さらに右へ。左から大量の破片が突き刺さる。たまらず膝から崩れ落ちそうになるが、踏みとどまり視界の回復を待つ。

が、背中から何かが炸裂した。おそらく、先程の光弾だろう。気を失いそうな痛みを耐えると、視界が元に戻る。

( ゚.゚)

目の前にビコーズが迫っていた。近くの氷剣を掴んでガードの体勢を取ろうとして、思い直す。

敵の武器は魔剣。全ての魔法を破る絶対的破壊の象徴。

辺りには逃げ道がない。

('A`)(やばい……!?)

しかし、ビコーズの攻撃はドクオの顔面数ミリ前を切った。体勢が後ろに崩れている。

下を見れば足元から氷の塊が隆起していた。どうやらそれに足元を掬われたようだ。

6731:2014/09/04(木) 22:21:54 ID:JgPwpBr60

(*゚ー゚)

しぃに魔法を使わせてしまった。礼を言いたいところだが、自分の不手際に申し訳ない気持ちになる。

それでもこれはチャンスだ。ドクオは少し大きめの氷剣を取ると脇腹に叩き込む。さらに顔面へと膝を入れ遠くへと吹き飛ばした。

あまりの硬さに叫び声をあげそうになるが、なんとか抑えてもう一本を投擲。

敵に当たったかを確認せず、ドクオは駆け出す。敵の視界に入る前に次なる死角に入らねばならない。

その瞬間。

( ゚.゚)

('A`;)「なっ」

気付けばビコーズが目の前に立っていた。なんの前触れもなく、さも当然のように。

突然のことにドクオは反応できず、頭上に振り上げられた魔剣を見上げることしか出来ない。

('A`;)(何が……)

6741:2014/09/04(木) 22:22:52 ID:JgPwpBr60

停止した思考。避けなければ、と考えれば考えるほどに動かなくなる体。スローモーションのように一瞬が一秒に、一秒が一分に引き伸ばされていく。

その長く短い一瞬で、ドクオはようやく把握した。オサムが使っていた空間を自由に行使する魔法を、どういうわけかビコーズも使用したということ。

たった、それだけのこと。

簡単に他人の魔法を体得するなどできるはずがないのに、彼は、人ではないそれはなんでもないかのようにやってみせた。

それは自分ではけしてできないことだ。魔法など分からないし、分かったところでできるはずもない。

どれだけ魔力を理解しても、どれだけ世界を知っても、ドクオは所詮ただの人間。

魔剣を持っているだけの、人間でしかないのだから。

(;*゚ー゚)「ドクオさん!! 動いて!!」

遠くでしぃの声が聞こえた。氷や水の魔法をしっちゃかめっちゃかに発動させているようだが、間に合わないだろう。距離が離れすぎている。

考える時間はたくさんあるはずなのに、伝えなきゃいけないことも山ほどあるのに、ドクオはそれを言葉にすることが出来ない。

6751:2014/09/04(木) 22:23:36 ID:JgPwpBr60

( ゚.゚)

('A`)

(;*゚ー゚)「ドクオさぁぁぁぁぁぁぁん!!」

魔剣がドクオに触れる。自身の体が魔力となる感覚、そして消滅を始める自分だったもの。

消え行く間際、ドクオは自分の内から溢れるものの存在に、ようやく気付いたのだった。

6761:2014/09/04(木) 22:24:21 ID:JgPwpBr60




(;* ー )「あ、あぁ……」

しぃの目の前で、また一人大切な人がいなくなってしまった。

ドクオは自分が合図を出すまで指示された魔法を使うなと言っていた。それがビコーズを止める唯一の手立てだから、と。

だが、そんなもの律儀に守る必要なんてなかったのだ。ドクオの命を脅かされた時点で使うべきだった。

自分で決めて、自分で選ぶのだと決意したはずなのに、肝心の場面で何故躊躇ってしまったのか。

ドクオは誰にでも優しかった。誰にでも分け隔てなく接していた。平等に誰かを救おうとしていた。

それは渡辺という存在に感化されただけのエゴだったのかもしれないが、それでも彼は自分でそうすると決めて戦い続けていたのだ。

そんなドクオだったからこそ、しぃは信じることができたし甘えることができた。あのひょろくて頼りない背中を見て安らぎを得ることさえあった。

なのに、

6771:2014/09/04(木) 22:25:03 ID:JgPwpBr60

自分のせいで、

自分の弱さで、

自分の甘さで、

彼は、

死んでしまった。

他の誰でもない、自分のせいで。

(* ー )

しぃは力なく膝を折る。無感情のビコーズがゆっくりと近付いてきた。

何も言わず、ひたすらに魔法を発動。小さな威力のものも、大きなものも片っ端から呼び出して攻撃していく。

ビコーズは魔法の嵐の中にも関わらず、散歩するような気軽さで悠々と歩いている。こんなもの、何でもないと主張するように。

手にした力を、格の違いを見せつけるように。

最後の魔法を打ち終えて、しぃは今度こそ虚脱感に身を任せた。

もうビコーズを止める手段も、力もない。しぃ一人では役不足だ。

何より、この世界のどこを探してもドクオがいない。

一緒にビコーズを探しにいこうと笑った柔和だけど整っているとは言えない顔。

やる気がなくていつも気だるげに話す声も、全部、全部。

(* ー )「ごめ……なさ……」

6781:2014/09/04(木) 22:25:45 ID:JgPwpBr60

誰にともなく呟く言葉と同時、しぃは魔法陣を展開させる。

自身の全ての魔力、果ては自分の体のマナをも使っての最大火力。

もう、自分には何もできない。大切な人を、仲間を守ることさえろくにできず、探していた恩人を救うこともできない。

全部、自分の覚悟が足りなかったから。

だから、せめてもの償いを。

何もできない自分にできる最後の贖いを。

(* ー )「さよなら」

しぃは魔法を発動させた。

しかし、何も起こらない。どころか展開させていたはずの魔法陣さえ輝きを失い霧散していく。

静寂が訪れ、音もなく近づいてくるビコーズの姿にしぃの思考はより深みへと堕ちていった。

(* ー )「……どうし、て」

周囲にはいつの間に張っていたのか魔法無効果の術式が展開されていた。しぃが集めた魔力も、自身のマナもごっそりと消えていく。

最後の足掻きさえ出来ない。させてもらえない。

6791:2014/09/04(木) 22:26:39 ID:JgPwpBr60

自分の命さえ賭けたのに、心に灯ったはずの光が徐々に弱くなっていく。

(* ー )「これが、私の贖罪というわけですか。咎だと、あなたは仰るんですね」

ビコーズは答えない。

(* ー )「私には誰も救う権利なんてなくて、救われる権利もないと」

ビコーズが足を止めた。魔剣を振りかぶっている。

(*;ー;)「確かに私は咎人ですよ!! それでも、最後くらい、自分の死に場所くらい選ばせてくれたっていいではないですか!!」

彼女の痛々しいほどの叫びが辺りに響いた。それに答える者はどこにもいない。

かつて信じていた神も、その教えを説いた神父も、この場においてはしぃを断罪する処刑人で、しぃには許しを乞うことも全てを嘆く権利もない。

でも、それでも、しぃは彼に伝えなければならなかった。

届くことはないと知っていても、ここにいる何かはビコーズではないけれど確かにビコーズなのだから。

(*;ー;)「私は神父様を恨みません。あなたに沢山の愛を頂きました。たくさんの教えを頂きました。人を愛すること、誰かを救うこと、人として受けるべきだった全てをあなたは私にくれたのです」

6801:2014/09/04(木) 22:27:22 ID:JgPwpBr60

(*;ー;)「血の繋がりなんてなくとも、あなたと過ごした日々が、思い出が、想いが、私達みんなが家族であると教えてくれています」

(*;ー;)「私は神父様を救うことはできません。悲しみに暮れている神父様に手を差し伸べる権利も力もないのでしょう。たから、私は自分にしかできない最後のことをしようと思います」

(*うー;)

しぃは涙を拭い、泣き顔を笑顔へと変える。

もう涙は出ない。

今、目の前にいるのは紛れもない彼。想い焦がれたいつかの父親なのだ。

別れに相応しいのは涙じゃない。

感謝を込めた、心からの笑顔。

6811:2014/09/04(木) 22:28:04 ID:JgPwpBr60





(*。^ー^。)「育ててくれてありがとうございました、お父さん」





.

6821:2014/09/04(木) 22:28:51 ID:JgPwpBr60

( ゚.゚)……

ビコーズは何も言わない、動かない。剣を振りかぶったまま、しぃを見ているだけ。

もう十分彼は苦しんだ、地獄を見てきた。

教会を無くし、たった一人で何を見てきたのかしぃは知らない。けれどもここで娘に刃を向けなければならないほどには辛い経験をしてきたのだろう。

だからこそしぃは最後に笑ってあげなければ、認めてあげなければ彼の人生が無意味なものだったと肯定することになる。

しぃは立ち上がり、ビコーズと真っ正面から向き合い、その体を抱き締めた。

(*。^ー^。)「もう一度会えてよかった」

しぃがそう言ったとき、冷たい滴が彼女の頬を濡らす。

ビコーズの顔を見れば、大きく見開かれた瞳から大粒の涙が溢れていた。

(*゚ー゚)「お父さん?」

6831:2014/09/04(木) 22:29:35 ID:JgPwpBr60

( ;.;)コンナフガイナイワタシヲマダチチトヨンデクレルノカ

(*゚ー゚)「当たり前ですよ。親というのは、そういうものでしょう?」

( ;.;)アア、アア

(*゚ー゚)「私が最後までそばにいます。だから、終わりにしましょう。これ以上誰も傷つけなくていいんです」

その言葉と同時に、ビコーズの体色が人本来の色を取り戻していく。羽は光の粒子となって溶け、異様に盛り上がった筋肉も年相応の痩せ細ったものへと戻っていった。

( ;.;)「私はもう人を傷つけたくない!」

(*゚ー゚)「神父、様……」

けして泣くまいと自らの感情に蓋をしていたはずなのに、次から次へと涙が溢れていく。

(*;ー;)「神父様、いえ、お父さん!!」

しぃは生まれて初めて、人目を憚らず大声をあげて泣いた。

( ;.;)「すまなかった。そして、ありがとう……」

ビコーズの腕がしぃを力強く抱き締める。

しぃは、この日神父が、ビコーズが父としてくれたものを一生忘れまいと、心から誓った。

本当に大切なものは、今この瞬間をもって確かなものとなったのだから。

6841:2014/09/04(木) 22:30:27 ID:JgPwpBr60

( -.-)

(*-ー-)

けれど、しぃは忘れていた。幸福も大切なものも、きちんと掴んでいなければすぐにさらわれていくということを。

だから、しぃは気づかなければならなかった。敵はけしてビコーズだけではないということに。

━━ドクン━━

(*゚ー゚)「……え?」

━━ドクン、ドクン━━

( ∵)「━━」

ビコーズがしぃを突き飛ばし、何かを言っていた。なのに、それを理解できない。

いや、理解できないのではなく、何を言っているのか分からなかった。

(;*゚ー゚)「お父さん!!」

何故なら、

( . )「━━!!」

ビコーズはもう、

(*;ー;)「やめてええええええええええええ!!」

ビコーズではなくなっていたから。

6851:2014/09/04(木) 22:31:09 ID:JgPwpBr60

( ∵)「ハハハハハハ!! 手ニ入レタ!! 手ニ入レタゾ!! 全テヲ越エル力ヲ、全テヲ操ル体ヲ!!」

再びビコーズの体が黒く変色、白き翼を纏い魔力を放出。

体はビコーズのもののはずなのに、顔付きはまるで別人。先程瞬殺されたオサムのように見える。

( ゚"_ゞ゚)「コレガ力、コレガ世界ノ全テ。実ニ面白イ!! サァ!! 死ノ饗宴ヲ始メヨウデハナイカ!!」

6861:2014/09/04(木) 22:31:51 ID:JgPwpBr60



ここは、どこだろうか。

自分は死んだのだろうか。

真っ暗で何も見えない。

魔剣アポカリプスの力で、自分は魔力へと分解されたのだ。もう生きてはいないだろう。

なのに、何故自分はまだここに存在しているのか。

そもそも死とは何だろう。生きるとはなんだろう。

人が魔力の塊だと言うのなら、魔力さえ生きていると言えるのではないか。

じゃあ、魔力となった自分はどんな存在なのだろう。

人であると言えるのか、はたまた別の存在へと変化するのか。

いや、人はどこまでも人だ。

泣いて、笑って、苦しんで、悲しんで、悔やんで、それでも歩き続けるのだから。

ほら、同じようにたくさんの人が感情を、心を燃やしている。

懸命に、這いつくばっても、たくさんの人が生きようとしている。

6871:2014/09/04(木) 22:32:45 ID:JgPwpBr60

ξ;゚⊿゚)ξ(;´・ω・`)

あれは、ツンとショボンだ。街に張り巡っている魔法を解こうと奮闘していた。

誰かのために、みんなのために。

从;'ー'从( ;・∀・)

渡辺とモララーがこちらに向かってきている。尋常じゃないくらいに焦燥した顔をして、戦っているであろう自分達のために。

(*;ー;)( ;.;)

しぃがオサムの前で泣いている。オサムに乗っ取られたビコーズも、必死に叫んでいる。

血の繋がりがなくても、しぃとビコーズは紛れもなく親子という絆で繋がっているから。だから二人で戦おうとしている。

( ゚"_ゞ゚)

オサムの手によって弄ばれたたくさんの運命が、たくさんの命が、ここには集まっているのだろうか。

誰も彼もが戦っている世界で、一人俺は何をしている?

('A`)

6881:2014/09/04(木) 22:33:42 ID:JgPwpBr60

想いが、絆が、心が、終わりじゃないと伝えている。

まだ死んじゃいない。

オサムも、きっとここに連れてこられたのかも知れない。

繋がっていく世界を、人の絆を、想いを、全てを、あいつも知ったんだ。

それでもあいつは私欲を望み、顕現した。

俺は止めなくちゃならない。

終わりにさせちゃいけない。

ここにある幾つもの心が、記憶が、俺を導いてくれる。

('A`)「なあ、そうだろ? そのために俺を連れてきたんだろう、   」

『━━━━』

声は遠い。なのにはっきりと意思だけが伝わってくる。

ドクオは手を伸ばした。

戦うために、抗うために、守るために。

この心は、想いは、まだ砕けちゃいない。

ならば、ドクオは歩みを止めてはならないのだ。

己の矜持をなかったことになどできやしないから。

ドクオの目の前に、光が現れた。

6891:2014/09/04(木) 22:34:25 ID:JgPwpBr60

◇◇◇◇

後方から来た渡辺から事情を聞いたモララーは、信じられない気持ちで一杯だったが、現状を鑑みるに事態は最悪の方へ進行していることをようやく飲み込んだ。

( ・∀・)「こいつは参ったね」

从'ー'从「早くどっくん達にも伝えないといけませんね〜」

( ・∀・)「毎度思うんだけど、渡辺ってあんまり焦らないよな」

从'ー'从「こう見えてすごく焦ってるんですよ〜」

(*゚∀゚)「マイペースとも言えるんだニャ」

( ・∀・)(え? なんで猫が喋ってんの? てか、これ使い魔だよね? どういうことなの?)

どうしようもなく疑問を口にしたいところではあるが、今はそれを聞いたら負けな気がする。詳しくはあとで話してもらうことにしよう。

現在モララーと渡辺は大量の魔力が流れる方を追っているところだった。

6901:2014/09/04(木) 22:35:08 ID:JgPwpBr60

もし、ショボンの予想が正しいとすればこの町にいる全ての人間が魔力へと変換される可能性がある。そうなればもはや敵を止める人間はいないし、下手をすれば大陸そのものの崩壊を招きかねない。

本来であればモララーも一目散に逃げ出したいところではあるが、ぐっと心の奥底に押し込めておく。

( ・∀・)「と、ここだな」

从'ー'从「……あれれ〜? 何か変な音がしませんか〜?」

( ・∀・)「変な音?」

渡辺に言われて、モララーは耳を澄ませてみた。

確かにどこからか妙に甲高い音が聞こえる。モララーの耳、というより感覚が正しければ、これは……。

( ・∀・)「魔力が、共鳴してる?」

从'ー'从「共鳴って……」

( ・∀・)「……分からん。が、様々な魔力が入り交じって相互干渉を引き起こしてるみたいだな。こりゃ、マジで離れた方が」

モララーの言葉は最後まで紡がれることはなく、すぐに防御魔法を発動。膨大な魔力が下方から噴出する。

岩壁を食い破り、弾き飛ばし、飲み込みながらあらゆる方向へと暴れまわる魔力の波。あとコンマ数秒防御が遅れていたら、モララーと渡辺は塵も残さず消滅していたかもしれない。

( ・∀・)「……何が起こってるんだ、あれ」

6911:2014/09/04(木) 22:35:51 ID:JgPwpBr60

(*゚∀゚)「何者かが世界の理を垣間見たんでしょうニャ」

( ・∀・)「は? 世界の理?」

从'ー'从「断り? お引き取りくださーいってこと?」

( ・∀・)「……よくわからねえけど、魔力とはまた違った力ってことか?」

(*゚∀゚)「ご主人達もよく知ってる力だニャ。魔剣、と言えばわかるかニャ?」

魔剣。

その一言にモララーはある程度の意味を理解する。

魔剣アポカリプス。伝承の中で絶大な力をもたらし、神をも殺した最凶の象徴。

だが、それは今ドクオの手にあるのではないか。そしてそれを持つドクオはすでにその力を知っているはず。

ならば、猫の言う理を垣間見たというのは少々腑に落ちない。

(*゚∀゚)「今の持ち主は魔剣の力を、魔剣が秘める力の意味を僅かたりとも理解していなかったニャ。けれど、どういうわけか今、その入り口に立ったということだニャ」

( ・∀・)「……」

得意気に語る猫の使い魔。渡辺は無邪気に物知りだね〜、などと誉めちぎっているが、モララーはうすら寒ささえ覚えてしまう。

何故、こいつは使い魔の癖に人語を解するのか。さらに、どうしてモララー達が知らないような情報まで事細かに話せるのか。

ただの使い魔でないことは分かる。けれど、こいつはそれ以上に常軌を逸している。

( ・∀・)「……猫。お前は」

6921:2014/09/04(木) 22:36:36 ID:JgPwpBr60

(*゚∀゚)「今それを聞いてどうするつもりですかニャ? そんニャことよりすべきことがあると思いますがニャ」

使い魔に指摘され、舌打ちを打つ。

確かにその通りだ。あそこにドクオ達がいるなら助太刀しない理由がない。

( ・∀・)「くそったれ!!」

モララーと渡辺は暴走した魔力が収まるのを見計らって中へと突入。グシャグシャになった広い空間の中に、二つの人影。

(* ー )

一人は力なく瓦礫に転がる小さな少女。

( ゚"_ゞ゚)

もう一人は見たことのない姿形をした漆黒に染まった異形の存在。

なのに、モララーにははっきりと分かる。あれは自分達の敵で、倒さねばならない驚異なのだと。

从'ー'从「しぃちゃんと、オサムさん……なのかな?」

( ・∀・)「おい、ドクオがいねえぞ」

瓦礫に降り立ち、しぃを抱き起こす。息はある。死んじゃいない。

( ・∀・)「喋れるか?」

6931:2014/09/04(木) 22:37:19 ID:JgPwpBr60

(* ー )「たい……ちょ……あれは、あの人は……私の、おとう、さん……で」

( ・∀・)「無理に喋るな。渡辺、しぃを頼む」

(* ー )「どく、お……さんも、死んで……」

( ・∀・)「……あいつはまだ死んじゃいないさ」

(* ー )「へ?」

( ・∀・)「あいつがそう簡単にくたばるたまかよ。何、時間稼ぎでもしてりゃそのうちひょっこり顔出すさ」

あいつはそういうやつだ、とは口に出さず、狼狽える渡辺にしぃの介抱を任せる。

槍を呼び出し、構えて男と対峙。

( ・∀・)「うちの部下が随分世話になったみたいじゃねえか」

( ゚"_ゞ゚)「マタ生贄ガ現レタカ。貴様ハ神ヲ目ノ前ニシテイルノダ。平伏シタラドウカネ」

( ・∀・)「神だか白髪だか知らねえが、てめえは俺の敵で、世界の敵だ。なら、さっさと終わらせてもらうぜ!」

男━━渡辺がオサムと呼んでいた━━の返答を待たずにモララーは瓦礫を蹴っていた。

鋭い突きの嵐、さらに後方から大量のレーザーを発動。自身は上空へと跳躍し、そこから落下速度を加えた一撃を放つ。

轟音、周囲に砕け散った岩や砂利が巻き上がった。だが、手応えがない。

( ;・∀・)(後ろ!?)

6941:2014/09/04(木) 22:38:03 ID:JgPwpBr60

( ゚"_ゞ゚)

軽く頭を背に向ければ、オサムが無防備に立っている。特に何かをしてくる様子もなく、不気味な笑みを浮かべているだけだ。

( ・∀・)(どういうことかは知らねえが、チャンス、だな!)

振り返り様、オサムを光の弾で蟻一匹通さないほどびっしりと取り囲み、一斉に発射。瓦礫の山を全て破壊し尽くすほどの威力と数を込めた魔法だ。無事で済むわけがないのだが……。

( ;・∀・)「!?」

モララーは瞬間的に防御魔法を展開。刹那、モララーが放ったはずの光弾がそっくりそのままこちらへと跳ね返ってくる。

( ;・∀・)(ちっ!!)

どこまで耐えられるかも分からないが、防御壁の外側に別の魔法を設置、展開し、モララーは防御を解く。

魔法陣が展開されると同時に光弾はそちらへと誘導され、次々と弾けとんだ。

( ・∀・)「らぁっ!」

視界は未だに土煙で遮られているが、モララーにはオサムが動いていないという確信めいた予感があった。

力を得て、己を過信しているものはゆっくりと敵をいたぶるのが好きな傾向がある。おそらく、オサムも同じだろう。

( ・∀・)(捉えた!)

6951:2014/09/04(木) 22:38:49 ID:JgPwpBr60

予想通り、さらに幸運なことにオサムはそっぽを向いてこちらに気付いていない。今が絶好のチャンス、これを逃さない手はないだろう。

だが。

(  ∀ )「はっ」

何が起こったのか分からなかった。一歩踏み込んだ瞬間、謎の衝撃が腹部を圧迫。おまけに体の至る部分に切創が大量に作られていく。

(  ∀ )(何が……)

( ゚"_ゞ゚)「脆イゾ人間」

声が聞こえ、追い討ちをかけるように再び謎の衝撃がモララーの頭部に加えられた。

一気に意識を持っていかれそうになり、気づけば瓦礫の上に転がっていた。やはり、分からない。

(  ∀ )(どうなってやがる……)

( ゚"_ゞ゚)「マルデゴミクズノヨウダ。神ニ逆ラウナド愚カダヨ」

なおもやかましく一人大仰しい動作を交えながら高説を垂れるオサムだが、さすがのモララーもこれは予想外である。

確かに本調子でないとはいえ、こうもあっさり戦闘不能にされるとは思わなかったのだ。

いくら神だなんだといったところで大したことはないと踏んだのが間違いだったらしい。不可視の力は的確にモララーの急所を捉えている。

6961:2014/09/04(木) 22:39:33 ID:JgPwpBr60

(  ∀ )「ゲホッ……やべえな、これ」

時間稼ぎにすらならないなんて、騎士団の隊長としての面目丸潰れだ。

しかし、目に見えない強力な攻撃などどうすることもできない。あの猫が言っていた世界の理とやらの力だとでもいうのか。

( ゚"_ゞ゚)「モウ動ケナイカ。当然ダ。世界ノ理ヲ覗イタ今ノ俺ニトッテ人ナド玩具同然ダカラナ」

下卑た笑い声と嘲笑の笑顔が、モララーを見下ろしていた。動こうにも体の隅々までピクリともしない。体中を駆け巡るマナに何らかの細工がなされたのかは知らないが、もはやモララー、いや、ショボンやジョルジュでさえ敵わないだろう。

从;'ー'从「ね、猫ちゃん!」

(*゚∀゚)「ニャ」

動けないモララーを見かねたのか、渡辺が炎弾を、猫が光弾をオサムへと放つ。

だが当然のようにオサムには届かない。届く前に消えてしまった。

( ゚"_ゞ゚)「神ノ前デ無駄ナコトヲ」

オサムが腕を振り、使い魔であるツーが消滅。この間、コンマ数秒の出来事だった。

涙を浮かべ、腰が引けているにも関わらず、渡辺はけして逃げることはせずに、深呼吸の後、渡辺は口を開いた。

从;'ー'从「か、神様なんて知らないもん! 少なくとも、神様は私達人間を傷つけたりなんてしないよ!」

6971:2014/09/04(木) 22:40:16 ID:JgPwpBr60


( ゚"_ゞ゚)「全知全能ノ神ガドノヨウナ気紛レデ虫ケラヲ殺ソウト構ワナイダロウ。憐レナ下等生物共ヨ」

(  ∀ )「渡辺! 逃げろ! お前じゃどうしようもねえ!」

モララーは精一杯の声で叫ぶ。しかし渡辺はオサムをしっかりと見据える。

从'ー'从「……あなたは、どこまでも悲しい人だね。人として大切なものを失くして、人としての命まで捨ててしまうなんて」

( ゚"_ゞ゚)「ナニ?」

从'ー'从「人はね、神様なんかに負けないよ。だって、人はいつだって自分の力で歩いてきたもん」

从'ー'从「誰かを助けて、笑顔をもらって、明日も頑張ろうって思えるから、それが私達を動かす力になる」

从'ー'从「人は、あなたに比べたらすっごく小さな存在だよ? でもね、私達は一人で戦ったりしない。一人で生きてるわけじゃない」

6981:2014/09/04(木) 22:41:00 ID:JgPwpBr60

从'ー'从「あなたは今、誰かと繋がってる? 誰かのために何かをしようとしてる? そんなあなたになんて私達は負けない!」

从#'ー'从「だから、私は最後まで戦う! みんなのためにも、私のためにも、絶対、絶対なんだから!」

馬鹿野郎。本当にどうしようもない大馬鹿野郎だ。

そういえば、みんなそうだった。あいつに関わったやつはみんな何かのために、誰かのために、倒すための戦いではなく、守るために剣を取るようになる。

(  ∀ )「はは、ったく、馬鹿ばっかりだな」

(* ー )「本当に、そう思います」

自嘲気味に呟いた言葉に、返事がくる。モララーと同じく、体中血塗れになりながら、震える足で必死に立ち上がろうとしていた。

(* ー )「教えてもらいました。戦う意味、理由、人を救うために必要なこと。そして、私が私であるための大切なものを」

(* ー )「私はずっと自分というものを偽って生きてきました。誰も救えず、力がないからと言い訳をして、逃げていた」

(* ー )「本当は何かができたはずで、行動できたはずなんです。弱さを知りながら、向き合うことができなかっただけ」

(* ー )「一人じゃ怖くて、足がすくんで、進むことができなかったから。でも、私は知りました。気付きました」

(* ー )「私は一人じゃありません。たくさんの人に支えられて生きています」

(* ー )「だから!」

6991:2014/09/04(木) 22:43:35 ID:JgPwpBr60
(* ー )「私は! 神父様を、お父さんを助けるために出来ることをします! もう逃げません!」

絶望的な状況の前で、よくこうまで言い切れるものだとモララーは呆れを通り越して感心してしまった。

死にかけの体で、策も力もない弱い体で、それでもなお戦うというのか。

ならば、大人の男で、騎士である自分が寝ているわけにはいかないだろう。

( # ∀ )「んなろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」

筋肉が軋みをあげ、ぶちぶちと何かが切れる音がする。

知ったことか。小娘どもにここまで言わせたのだ。今だけでいい、死んだっていい。動け。

7001:2014/09/04(木) 22:45:28 ID:JgPwpBr60

( #・∀・)「らぁ!」

立ち上がり、槍を取る。まだ終わらない。終われない。

心が折れるまで、モララー達は何度でも立ち上がるだろう。たとえ腕をもがれ足がちぎれても、戦わねばならない理由がある。

( ・∀・)「さぁ、もう一戦始めようかくそったれな神様よ!」

( ゚"_ゞ゚)「愚カナ……人トハドコマデモ愚カダナ。何故コウモ死ニ急グ。ヤハリ、改革ガ必要ダ」

从'ー'从「させないもん! 私達の世界は私達で守って見せるんだから!」

(*゚ー゚)「あなたの好きにはさせません。たとえあなたが神様だとしても、私はあなたを認めません」

( ゚"_ゞ゚)「クックックッ、シカシ、モウ遅イ。戦イニスラナランヨ」

( ・∀・)「あ?」

オサムがパチリと指を鳴らすと、地面が揺れた。

始めは小さく、しかし徐々に強さを増していく。

从;'ー'从「え?」

( ゚"_ゞ゚)「ハハハ! 刮目セヨ! 世界ハ今宵生マレ変ワル!」

(;*゚ー゚)「何を……」

7011:2014/09/04(木) 22:48:12 ID:JgPwpBr60
次の瞬間。

モ・トコに絶望が舞い降りた。
空は赤く染まり、街に光が降り注ぐ。破片が舞い上がり、炎が地面を駆け巡っていく。

爆発音、破裂音、粉砕音、ありとあらゆる破壊の断末魔が響き渡っていった。

( ;・∀・)「……これは」

( ゚"_ゞ゚)「人ノ命ガ、自ラノ世界ヲ破壊スル様ヲ見届ケルガイイ! ココカラ世界ガ始マルノダ!」

光はやがてモ・トコに留まらず、南へと流れていく。あの方角は━━

(;*゚ー゚)「あっちは……」

从;'ー'从「王都だよ!?」

( ; ・∀・)「冗談じゃねえ!! 今すぐ止めろ!」

( ゚"_ゞ゚)「フン!」

モララー達の前で何かが弾ける。

それだけ、たったそれだけでモララーの体は動けなくなった。腕、足、腹、胸から血が滴っていく。

横を見れば渡辺やしぃも同様に地に伏している。

7021:2014/09/04(木) 22:48:54 ID:JgPwpBr60



(  ∀ )(戦うとか戦わねえとか、そんな次元じゃねえ……端から勝負にすらなりやしねえ……)

力の桁が違いすぎる。不可視なだけでなく、理論も理屈も分からない。魔法ではない他の力。

未来も、過去も、心も、体も、

神の前では児戯でしかないというのか。

(  ∀ )(くそ……くそ……! くそぉぉぉぉぉぉぉぉ!)

( ゚"_ゞ゚)「終ワリダ。死ネ」

从; ー 从「うぐっ……」

(;* ー )「まだ……あきらめ……」

( ;  ∀ )「っのやろぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

モララーの叫びが響き渡り、どう足掻いても避けきれない光の弾幕がこちらに向かってきた。

7031:2014/09/04(木) 22:52:09 ID:JgPwpBr60
かってきた。

自身の無力さ、自身の思慮の浅さ、考え出せばきりがないほどたくさんの後悔が押し寄せてくる。

力があれば、ああしていれば、もっと別の方法もあったはずなのに、せめて二人の少女を守ることだってできたはずなのに。

ここに必要なのは圧倒的な力で、誰かを守ってくれる救世主で、それは神様なんかじゃないのだ。

たとえボロボロになっても、弱い心だとしても、力の使い方を、在り方を履き違えないどこまでも馬鹿な人間。

それが、

('A`)

横合いから一人の男が乱入する。

紅い剣を携え、伝説の力を引っ提げて、

そいつは、遅い到着を果した。

从'ー'从「どっくん!」

(*゚ー゚)「ドクオさん!」

( ・∀・)「おせえぞ、馬鹿野郎」

('A`)「わりい。ちょっと道が混んでてさ」

7041:2014/09/04(木) 22:52:52 ID:JgPwpBr60

ちらりとこちらを一瞥し、軽く手を振る。すると、モララー達の傷がみるみるふさがり、体力も幾分か回復した。

( ;・∀・)「な!?」

ドクオは魔法を使えないはず。なのに、この現象はどういうことだ。

それに、どこかその背中が頼もしく見える。姿形は変わらないのに、纏う雰囲気だけが別人のようだった。

( ・∀・)(また一皮剥けたってわけか)

('A`)「三人とも。あとは俺に任せてみんなを連れて逃げてくれ」

(*゚ー゚)「何を……」

('A`)「もうこの街は限界だ。しかもオサムが発動してる魔法はこの街の全魔力が対象になってる」

从'ー'从「それって……」

('A`)「このままここにいたら助からない」

モララーは判断に迷う。確かにモララー達では歯が立たないどころかまともに戦うことも出来ないが、支援くらいなら出来るはずだ。

敵の攻撃の出所や、方法をゆっくりと検証していけば勝機を見出だせるかもしれない。

7051:2014/09/04(木) 22:53:36 ID:JgPwpBr60

('A`)「モララー。お前の言いたいことは分かる。けど、ツンやショボンさんにも伝えてる時間がないんだ」

( ・∀・)「……最後に一つ聞かせろ」

ドクオの言いたいことも、自分が聞きたいことも理解して、飲み込んで、モララーはたった一つ、たった一つだけ大事なことを口にする。

( ・∀・)「勝てんだろうな」

('A`)「当たり前だ」

ニヤリとドクオが笑った。モララーも釣られて笑う。

( ・∀・)「……分かった。さっさと終わらせろよ。俺達じゃ逆立ちしても勝てそうにねえんだ」

('A`)「おうよ」

从'ー'从「どっくん! 早く帰ってきてね!」

(*゚ー゚)「ドクオさん」

と、しぃがドクオの手をきゅっと握る。

(*゚ー゚)「あの、その……」

('A`)「しぃちゃん。終わったら、全部話す。何もかも」

(*゚ー゚)「……はい」

('A`)「それと、神父のことは任せろ」

(*゚ー゚)「ッ!」

7061:2014/09/04(木) 22:54:20 ID:JgPwpBr60

(*゚ー゚)「はいっ!」

( ・∀・)「行くぞっ!」




ビコーズを乗っ取った本物の悪魔と向き合い、ドクオは無表情で睨み付ける。

('A`)「よぉ」

( ゚"_ゞ゚)「ヤハリ帰ッテキタカ」

('A`)「もう言葉はいらねえだろ。さっさと始めようぜ」

( ゚"_ゞ゚)「イイダロウ。俺カ、オ前カ、世界ノ命運ヲ、神ト呼バレルハドチラガ正シイカ」

地響きが大きくなっていく。他に人はいない。人の、世界の理を外れた二人が視線を交差させる。

(#゚A゚)「オサムぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」

( ゚"_ゞ゚)「コォォォォォォォォォイ!!」

ドクオとオサム、理を知ったもの同士最終決戦の火蓋が切って落とされた。

7071:2014/09/04(木) 22:55:03 ID:JgPwpBr60
第十四話 終

708名も無きAAのようです:2014/09/04(木) 22:56:25 ID:b6BMUx6M0
おつおつ

7091:2014/09/04(木) 22:56:56 ID:JgPwpBr60
皆さま大変お待たせいたしました
第十四話これにて投下完了です
次回でモ・トコ編終了となります
ではまた約二週間後に投下いたします
今回も読んでいただきありがとうございました
それではまた次回

710名も無きAAのようです:2014/09/04(木) 23:17:19 ID:xPzAxDGw0


711名も無きAAのようです:2014/09/05(金) 00:25:04 ID:uLx6ALLs0
乙!!!
理とは一体…

712名も無きAAのようです:2014/09/05(金) 00:29:17 ID:U8TxXkf.0
乙乙
続きが気になります

7131:2014/09/17(水) 20:55:21 ID:5578e4r.0
どうも1です
今月末から出張が入ってしまいました
年内一杯までだそうでして、かきための方がなかなか進まないことが予想されます
ですのでしばらく不定期の更新とさせていただきたいと思います
完結までは逃げることはないので、みなさまのんびりとお待ちいただければと思います
大変申し訳ありません

714名も無きAAのようです:2014/09/17(水) 21:27:24 ID:.tlB1Wlw0
待ってますよ

715名も無きAAのようです:2014/09/18(木) 22:29:16 ID:lI2dWaG60
>>713
それを言うやつの大半が帰ってこないんだぞ
ちゃんと帰ってこいよ

716名も無きAAのようです:2014/09/18(木) 22:39:32 ID:LkoAlEyw0
待ってる

717名も無きAAのようです:2014/09/21(日) 20:02:13 ID:cFXT.drI0
これタイトル変えなくていいのか?

718名も無きAAのようです:2014/09/21(日) 20:20:34 ID:USs0vCSk0
すでに>>26から>>40までに結論がでてますし

719名も無きAAのようです:2014/09/23(火) 10:56:01 ID:.8lCfeZk0
一通り目を通したつもりだったけど見落としてたわ
ありがとう

7201:2014/09/25(木) 22:39:15 ID:MmZDOqrI0
どうも1です
十月中旬くらいに投下する時間が作れそうです
次回でモ・トコ編終了です
お待たせして大変申し訳ありません

721名も無きAAのようです:2014/09/25(木) 23:14:57 ID:XsxEE0yM0
キターー(゚∀゚)!

722名も無きAAのようです:2014/09/26(金) 21:25:54 ID:roJe45Dw0
待ち遠しい
本当に好きな作品だから完結まで読みたい

723名も無きAAのようです:2014/09/27(土) 06:16:23 ID:jn9q.4cs0
よし全部めを通したぞー
さくしゃがんばらい

724名も無きAAのようです:2014/10/05(日) 04:32:59 ID:0EMU2hwk0
いつの間にかまとめがついてたことにびっくりした

725名も無きAAのようです:2014/10/05(日) 21:52:23 ID:EZY0KHj20
http://boonzone.web.fc2.com/different_world.htm
これか

7261:2014/10/19(日) 18:23:16 ID:YXzuX9nI0
お待たせして申し訳ありません

明日の21時から投下出来そうです!

727名も無きAAのようです:2014/10/19(日) 19:07:02 ID:Lr4GRp020
待ってる

728名も無きAAのようです:2014/10/19(日) 19:34:34 ID:UNprwVgY0
まってたぞ!!!!

729名も無きAAのようです:2014/10/19(日) 22:07:39 ID:bYzPauyo0
おっしゃ待ってた

730名も無きAAのようです:2014/10/20(月) 14:24:36 ID:jOwQCam20
追いついた
楽しみに待ってるで!

731名も無きAAのようです:2014/10/20(月) 21:39:28 ID:1j5FkWLI0
キタ━━ヽ(´ω`)ノ゙━━!?

732名も無きAAのようです:2014/10/20(月) 21:46:57 ID:yM8xbfhw0
ξ゚⊿゚)ξウズウズ

733名も無きAAのようです:2014/10/20(月) 21:57:29 ID:1j5FkWLI0
( ^ω^)ツンどうしたお

734名も無きAAのようです:2014/10/20(月) 22:25:58 ID:/z22627U0
ダメそうか?忙しいって言ってたもんなあ

7351 ◆B8K2xdDAGY:2014/10/20(月) 22:34:00 ID:OowH3q0c0
お久しぶりです、1です
書き込んだ覚えがないのに投下予告が出ているのにちょっと驚きです
今後このようなことがないよう酉つけておきます
そして本編の進捗状況なのですが、予想以上に長くなってるのと、重大なミスを発見してしまい現在書き直しております
もしかしたらまた話を二つに分けるかもしれません
その際は再び投下予告に参りますのでよろしくお願いします
次の投下は10月31日〜11月の頭くらいを目処にしていただけると助かります
なかなか顔を出せずに申し訳ございません
そして毎度ながら読んでいただいてる皆様には最大の感謝を
それではまた

736名も無きAAのようです:2014/10/20(月) 22:39:40 ID:jOwQCam20
おお、まさかのなりすましだったのかw
楽しみに待ってますわ

737名も無きAAのようです:2014/10/20(月) 22:45:27 ID:/z22627U0
       ∧∧
      ヽ(・ω・)/ ズコー
     \(.\ ノ
  、ハ,,、

738名も無きAAのようです:2014/10/20(月) 22:54:52 ID:JZN7TagEO
ほんとにズコーだな(AA略)

739名も無きAAのようです:2014/10/20(月) 22:56:06 ID:LLuHzcCE0
なりすましで作者を誘い出す高度な外道技

740名も無きAAのようです:2014/10/20(月) 23:26:48 ID:m2vpLxYs0
乙乙ゆっくり書いて完結してくれ

741名も無きAAのようです:2014/10/21(火) 00:19:53 ID:/XAOGoUM0
( ゚ω^ )ゝ 乙であります!
ゆっくりでいいぞ!!
その間に読み直しておくから!

742名も無きAAのようです:2014/11/06(木) 10:04:16 ID:fgKdE9qI0
そろそろ…

7431 ◆B8K2xdDAGY:2014/11/09(日) 18:25:12 ID:oZDNoOvw0
おひさしぶりです、1です
ようやく投下の目処が立ちました
予定してた時期より大幅に遅れをとっていますが、11月20日の21時より投下をしたいと思います
大変お待たせしまして申し訳ございません

744名も無きAAのようです:2014/11/09(日) 22:55:16 ID:XLXiaqAM0
待ってた

745名も無きAAのようです:2014/11/11(火) 19:25:46 ID:RMBGZ2SA0
きたああああ

746名も無きAAのようです:2014/11/21(金) 07:06:01 ID:5JCPB7Oc0
・・・

748名も無きAAのようです:2014/11/25(火) 00:02:38 ID:r80BlYAcO
あれれ〜?

749名も無きAAのようです:2014/11/25(火) 00:07:27 ID:zsG4nz5k0
前も一時的に規制されてたってVIP総合でヘルプ出してたからそれかもなあ

750名も無きAAのようです:2014/11/27(木) 02:44:59 ID:7iBjJjVc0
気長に待とうではないか

751名も無きAAのようです:2015/03/22(日) 21:48:27 ID:iyl5n7SE0
待ってるよー

752 ◆5EWptf5Cbg:2015/06/04(木) 16:48:59 ID:ORCc//7c0
これかな

753 ◆B8K2xdDAGY:2015/06/04(木) 16:49:41 ID:ORCc//7c0
こっちか

7541 ◆B8K2xdDAGY:2015/06/04(木) 16:54:27 ID:ORCc//7c0
皆様約半年ぶりでございます
1は仕事の忙しさとか色々なことから逃げてスレから逃亡しておりました
大変申し訳ございません
ようやく自分の気持ちも踏ん切りつきましたのでぼちぼち再開していこうかなと思いますので
よろしければお付き合いいただければ嬉しいです

つい先程また再開しようかなと思い立ったので、いつ頃投下するかは分かりませんが、夏が終わるまでには投下しますので、よろしくお願いいたします

755名も無きAAのようです:2015/06/04(木) 17:41:28 ID:ywxLv2j.0
よろしくお願いいたします

756名も無きAAのようです:2015/06/04(木) 17:53:09 ID:Jbise1e6O
ほほう。期待して待っとるよー

757名も無きAAのようです:2015/06/04(木) 19:27:51 ID:VhF5csno0
良かったよ、気にせずまたよろしく!
楽しんで読んでたからね

7581 ◆B8K2xdDAGY:2015/06/14(日) 01:31:30 ID:3.aqaflI0
どうも1です
今までどこまで書いたかとか色々と考えていた設定を書いたデータが
どっかにいってしまったため初めから読み直してきました
とりあえず十五話に関しては以前書いたものの冒頭が残ってたので今月中には投下したいなぁと考えております

また進捗具合などを報告しに参りますので、その際はよろしくお願いいたします

759名も無きAAのようです:2015/06/14(日) 09:05:20 ID:Yu1PIQpU0
きたい

760名も無きAAのようです:2015/06/14(日) 10:40:07 ID:riYLBk8E0
待ってるよー

761名も無きAAのようです:2015/08/16(日) 21:42:24 ID:fjrG4mo60
今年中に来てくれることを祈る

762名も無きAAのようです:2015/08/22(土) 20:03:44 ID:iEnPJe3Y0
気長に待つさ

763名も無きAAのようです:2017/02/24(金) 05:34:27 ID:xiPdW8fA0
追いついたけどもう更新は無いのかなあ
悲しいなあ

764 ◆B8K2xdDAGY:2018/09/30(日) 19:01:21 ID:Lt3LK7jc0
テスト

765 ◆B8K2xdDAGY:2018/09/30(日) 19:03:59 ID:Lt3LK7jc0
書き込めた
久しぶりです、人いないと思いますが
久々に思い出して続き書こうと思い立ったのでやってきました
気が向いたらまた書きます

766名も無きAAのようです:2018/09/30(日) 19:48:16 ID:gbJB2eLQ0
>>765
マジか、嬉しい。

767 ◆B8K2xdDAGY:2018/10/04(木) 23:50:41 ID:kRj7Xg4o0
10月中旬くらいに15話の半分投下させていただきます
結構長めなんで半分に分けます

768名も無きAAのようです:2018/10/19(金) 08:50:37 ID:2f7YqYC60
待ってる

769名も無きAAのようです:2018/10/21(日) 11:59:24 ID:2PaE8LFI0
今度はほんとにほんとなんだよなぁ?!

770 ◆B8K2xdDAGY:2018/11/04(日) 21:57:59 ID:EmUWWVKM0
すっかり投下予告を忘れていました
今から投下します

771 ◆B8K2xdDAGY:2018/11/04(日) 21:58:43 ID:EmUWWVKM0


第十五話「報われぬ者に救いの手を」


.

772 ◆B8K2xdDAGY:2018/11/04(日) 21:59:49 ID:EmUWWVKM0
「報告! 大陸北方より未確認の力を確認! 魔法⋯⋯いや、マナの⋯⋯塊?」

「結界の出力を上げろ! 王都が消し飛ぶぞ!」

「住民の避難を急げ! 可能な限り地下に入れるんだ!」

王都ヴィップでは強大な力がこちらに向かっているのが観測され、城下だけでなく騎士団内部でさえ慌ただしくなっていた。

騎士団長のみならず、副団長までいない今、各部隊長が少ない騎士を取りまとめ、被害を最小限に止めようと奔走している。

ヴィップは大陸最大の街であり、住民の数も相応に多い。都市崩壊級の魔法にも耐えられる強固な結界が街全体を覆っているとはいえ、差し迫っている不可思議なエネルギー体の前ではどれほどの効果を持つかは分からない。一瞬にして王都が消滅する可能性もある。

過去を遡っても、これほどの危機が王都を襲ったことがあっただろうか。当然騎士達の焦りと緊張は最大限まで高まり、住民の避難、ひいては防衛対策も滞っているようだった。

773 ◆B8K2xdDAGY:2018/11/04(日) 22:01:25 ID:EmUWWVKM0
( ФωФ)「どうも面倒なことになったようであるな」

王都ヴィップを治める王、ロマネスクはそんな騎士達に嘆息しながら呟く。

『仕方がないでしょう。あれは魔法であって魔法ではない。世界の法則を無視した高エネルギー体なんて、彼らには初めてでしょうから』

誰もいないはずの場所から声が聞こえた。しかし、ロマネスクはそれが当たり前のように続ける。

( ФωФ)「貴様の同志とやらの仕業であろう。計画も最終段階を迎えた今、王都が消し飛ぶのはまずいのではないか?」

『そうね。あれをどうにかするのは簡単だけれど、それを目撃されるのは困るの』

協力者であるロマネスクにさえなかなか姿を見せないのだ。意図は分からないが、それも当然と言える。

774 ◆B8K2xdDAGY:2018/11/04(日) 22:02:10 ID:EmUWWVKM0
( ФωФ)「ではどうする。我輩が先導して祈りでも捧げさせればよいのか?」

それはそれで面白い。奇跡を起こした王として、大衆の支持は集められるだろう。

だが、そんな奇跡は起こらない。タネがある以上、それはペテン以外の何物でもなく、ロマネスク自身もそんなご都合主義は好みではない。

『まぁもう少し待ちましょう。モ・トコには魔剣の主がいるのでしょう?』

( ФωФ)「やけに信用しているな。確かに脅威ではあったが、相手は悪魔に最も近しい存在であろう。魔剣といえどどうにかなるものなのか」

魔剣アポカリプスを顕現させる為だけの媒体に、事態を収束させる力があるとは思えないが。

報告書を読んだ限りでは、分隊長クラスと五分、それ以上は敗戦濃厚。そんな巻き込まれただけの一般人だ。

775 ◆B8K2xdDAGY:2018/11/04(日) 22:03:37 ID:EmUWWVKM0
『あなたはまだ魔剣の力を知らないから。それに、彼は理に呼ばれていた』

( +ω+)「⋯⋯ふむ」

世界の理。計画の最大にして最後の壁。ロマネスクが最も憎むべき存在。

奴は、導かれているとでも言うのだろうか。あんなものに。

( ФωФ)「貴様が言うのであれば我輩は傍観しよう。どうせ他にすべきこともない」

『懸命ね。万が一は、私が何とかしましょう』

声はそれきり途絶えた。ロマネスクは小さく溜息を吐く。

( +ω+)(忌まわしいのは魔剣だけではないぞ。貴様もだ)

776 ◆B8K2xdDAGY:2018/11/04(日) 22:04:26 ID:EmUWWVKM0
◇◇◇◇

目の前の空間がヒビ割れ、光が漏れる。瞬間、爆発、爆発、爆発。説明のつかない力がドクオの周囲を渦巻いていく。

構わず疾走。オサムの半歩前、剣を薙ぐ。

鈍い音と共に不可視の壁が刃の進行を阻み、同時に弾き返される。堪らず距離を取るが、ドクオを追っていくつもの光が流れた。

咄嗟に魔剣を横に一閃。いくつかは消しとばしたが、撃ち漏らした光に被弾。幸いダメージはそれほどでもない。魔法で傷を癒し、さらに攻撃魔法。

('A`)「はぁっ!」

空間を抉るように魔力の道筋が捻れ、白金の輝きがオサムへと向かう。

( ゚"_ゞ゚) 「効カヌ!」

またしても不可視の壁に阻まれる。が、その隙にドクオは懐へと潜り込んだ。

777 ◆B8K2xdDAGY:2018/11/04(日) 22:05:23 ID:EmUWWVKM0
('A`)「どうやら自動じゃないみたいだな」

( ゚"_ゞ゚) 「クッ⋯⋯!」

まずは一太刀。今までのように消滅はしない。しかし、オサムの体には一筋の傷ができた。

奴は不死身ではない。通常の攻撃や魔法は効果がないが、魔剣の力は通る。この街に仕掛けられた術式がすぐに回復させるのだろうが、効かないわけではないのだ。

王都に向けて放った攻撃、さらにモ・トコの崩壊術式のせいで時間はかけられない。それでも、奴の体には限界がある。

所詮ドクオが使える魔法は一時的なものだ。端から通用するとは思っていない。

('A`)(魔法はあくまで牽制。本命はこいつ。どっちかが倒れるまでインファイトしかねえ!)

ドクオが距離を取るより早く、弾き飛ばされる。一度地面を跳ねるも、空中で回転しうまく着地。

('A`)(いない!?)

剣を構えるが、オサムの姿がない。後方、そして頭上から魔力の収束を感知。

778 ◆B8K2xdDAGY:2018/11/04(日) 22:06:09 ID:EmUWWVKM0
前方に回避。ドクオの立っていた上方から浄化の光が、後方にはアニメで見たワームホールのような大きな穴が空いており、砂や岩を吸い込んでいる。

嫌な予感がして、ドクオは駆け出した。一瞬遅れて同じ魔法がドクオの進行方向を塞ぐように無数に現れる。壁際に追いやられ、ドクオは退路を失ってしまう。

「食ラウガイイ!」

声だけが聞こえ、ドクオの視界が白と黒で埋め尽くされる。

('A`;)(避けきれない!)

剣を構え、迎撃の態勢へ。全ての力を消すことはできないが、直撃だけは免れた。身体のあちこちに黒と白の痣ができ、異常な痛みを感じるが動かないわけではないようだ。

ドクオが動き出す瞬間、再び空間にワームホールが出現。そこから無数の流星が飛来した。

('A`)「ちっ!」

こちらに向かうものだけを的確に叩き、消し飛ばす。流星は追尾性がないらしく、ドクオは駆けながら穴まで接近。斬りつけようとして、

( ゚"_ゞ゚) 「甘イ!」

中からオサムが顔を出す。同時に半透明の鎖がドクオの四肢に絡みつき、引きずり込んでいく。

('A`)「ぐっ⋯⋯」

抵抗はするがうまく力が入らない。先程の痣が輝き始め、ドクオの動きを妨げているようだ。

( ゚"_ゞ゚) 「虚無ノ世界ニ誘ッテヤロウ」

('A`;)「さ⋯⋯せ⋯⋯る⋯⋯」

剣を落とさなかったのは幸いか、手首を捻り鎖に当てる。

(#゚A゚)「かぁぁぁぁぁぁ!」

779 ◆B8K2xdDAGY:2018/11/04(日) 22:06:53 ID:EmUWWVKM0
甲高い音を立てて鎖が消え、一瞬力が
弱まった。その隙にオサムの顔に剣を突き立てる。

( ゚"_π) 「ガァァァァァァッ!」

引き抜くと同時に他の鎖を断ち切り、その場を離れる。いつの間にかワームホールは消え、オサムの体が現れた。

('A`)「らぁっ!」

一つ、二つとオサムに連撃を叩き込む。上下左右へ目に見えぬ速度でダメージを与えていく。

回復する暇を与えてはならない。回復させても全快させてはいけない。

ドクオの攻撃に怯んでいたオサムだが、不意に彼の周囲を漆黒の風が吹き荒れた。

( ゚"_ゞ゚) 「舐メルナ!」

瞬間、拡散。辺りの地面や壁を所構わず破壊する。空間も激しい損傷を受けたのか、ヒビが入っていた。

空間にヒビを入れるだけの魔力を制御せずに垂れ流したということは、奴には余裕がないということの証明だろう。今の攻撃は相当効いたようだ。

( ゚"_ゞ゚) 「俺ハ神ダ! 等シイ力ヲ手ニ入レタノダ! 貴様ノ様ナ弱者ニ負ケル訳ガナイ!」

オサムの声は怒りで震えている。それに呼応して大気が、大地が揺れた。おそらく、最大級の攻撃が来る。

( ゚"_ゞ゚) 「オオオオオオオオ!!!!!!!」

周辺の魔力がオサムの前に集まり、圧縮される。

('A`)(あれは、まずい!)

駆け出し、魔剣が触れる瞬間、辺りの景色が白一色に変わった。

魔剣アポカリプスと同等の破壊の力が広がっていく。音を立てず、形を変えず、ただただ、消える。

('A`;)「オォォォォォ!」

もはやドクオですら理解していない力の本質さえ奴は掌握しているらしい。どうすれば力を効率的に使えるのか、何をすれば魔剣と渡り合えるのか。

否、魔剣を超えられるのか。

オサムの力はその領域にまで至っている。

780 ◆B8K2xdDAGY:2018/11/04(日) 22:08:08 ID:EmUWWVKM0
ドクオが気がついた時、辺りには何も見当たらなかった。白一色となった世界に一人、立ち尽くしていた。

自身が消滅の力に飲み込まれなかったのは、まだ魔剣の力が上回っていたからだろうか。それとも単に力同士の衝突で相殺できたからなのか。

( A ;)「はぁっ⋯⋯はぁっ⋯⋯」

だが、ドクオの体からは著しく力が失われている。立っていることがやっとの状態だった。

ふとドクオの前方、宙空に浮かぶオサムが着地。あちらは随分と余裕がある。

( ゚"_ゞ゚) 「ククク、辛ソウダナ。コレガ神ト、人間ノ差ダ」

オサムの言う通り、この短時間を戦ってみて分かった。ドクオと奴の間にはどうしても埋められない差があることは。

オサムは力の扱い方を完全に理解している。おまけに体力も魔力も無尽蔵、有限と無限ではどちらに分があるか考えるまでもない。

さらに、戦闘は得意ではないと嘯いていたが、ドクオなどよりも豊富な戦闘経験に加え、理に触れたことでさらなる高みに登っていた。

モララー達には勝てると言ったものの、はっきり言って勝ち目が薄いのはドクオも感じている。

781 ◆B8K2xdDAGY:2018/11/04(日) 22:08:56 ID:EmUWWVKM0
付け焼き刃の魔法は陽動くらいにしか使えない、唯一の対抗手段である魔剣は本体に近付くことがままならない。

せめて、オサムの魔法だけでも一時的に封じることができれば勝算は少なからずある。

( ゚"_ゞ゚) 「大人シクシテイルナラバ、神トシテノ慈悲ダ。一瞬デ消シテヤルゾ?」

( A ;)「悪いがお断りだ。お前を倒して、神父を救い出すって約束したもんでね。子供との約束は守る主義なんだ」

( ゚"_ゞ゚) 「戯言ヲ。神ノ前デハ全テガ児戯ニ等シイ。アマリ笑ワセテクレルナ」

( A ;)「俺一人殺せないくせに何が神だ。どれだけの力を持ってたって、どれだけの知識を持ってたって、人間は神になんかなれない」

オサムの力は絶大で、戦闘は確かに有利だろう。だが、オサムは自分の力を振るうのが楽しくて仕方がないと言わんばかりに決着を早めていない。

遊んでいるのだ。ドクオを舐めている。

もし人の命すら自由にできる本当の神なら、自分に逆らう存在を問答無用に、絶対的な力ですぐに終わらせる。

何故なら人と神の格の違いを思い知らせるため。

勝てる勝てないという場所ではなく、到底手が届かないのだと思わせなければ、きっと神という存在は認められない。

ならば、自身の感情に左右されるオサムはけして神ではなく、どこまでいっても人なのだ。

そして、人であるならドクオでも対抗できる。

('A`)「人間舐めんじゃねえぞクソ野郎!」

782 ◆B8K2xdDAGY:2018/11/04(日) 22:13:05 ID:EmUWWVKM0
◇◇◇◇

オサムの術式により崩壊を始めるモ・トコを渡辺達は飛行していた。街に残った少数の住民達も、オサムによって消されたのか、はたまた避難したのか一度も目撃していない。

从;'ー'从「うー、逃げるってどこに逃げればいいのぉ〜?」

オサムが使っている術式は街どころかその外部にまで影響が及んでいるようで、遠くの空までも不気味に揺れている。この分では渡辺達が餌食になるのも時間の問題だろう。

( ・∀・)「状況を整理して考えてみりゃ、このまま逃げてたっていつかはこの魔法にやられるだけだろうし、術式の解除が最優先じゃないか」

隣を飛ぶモララーが嘆息しつつ答える。平然とした顔をしているが、絶え間なく周囲を警戒しているところを見ると、あまり余裕はないのだろう。

状況を鑑みれば、モララーの言う通り自分達が捕まるのは時間の問題だ。モララーやしぃがうまく敵の魔法の探知をしてくれているからこそこうして無事でいるが、一瞬でも判断を間違えればそこで全てが終わる。

ならば、こちらからその原因を取り除いてしまえばそれでいい。そこまでは渡辺でも理解できた。

(*゚ー゚)「しかし、ここまで複雑な術式を私達で解除できるでしょうか」

渡辺の胸中を代弁するかのように、しぃが呟いた。

783 ◆B8K2xdDAGY:2018/11/04(日) 22:18:05 ID:EmUWWVKM0
事実、自分達の中に魔法理論に詳しい者がいない。実戦における魔法の扱いに関しては太鼓判を押せるだろうが、研究者━━オサムが自身をそう言っていた━━が自作した術式を解析して破壊できるほど精通しているとは言い難い。

ツンは黒の魔術団時代の経験、ショボンは騎士団の副団長としての責任から大なり小なり知識があった。それでも危険な綱渡りであることには違いないが。

( ・∀・)「考えてても仕方ねえよ。解除が無理なら体張って時間を稼げばいいだろ。何にせよ何もしないで逃げ回ってるなんて俺の性に合わないしな」

(;*゚ー゚)「しかし、その時間が今一番足りないものなんですよ」

しぃの言う通りだ。かと言って、この場で押し問答をしている時間も勿体ないのだが。

「それニャら、あたしが力を貸すにゃ」

不意にどこかから声がする。しかも聞き覚えのある口調で。

他の二人も驚いた顔をして辺りを見回すが、誰もいない。

「ここだニャ」

声と同時、渡辺の頭上に光が集まっていく。それは羽根の生えた猫を形取ると、実体を帯びていった。

从'ー'从「あれれ〜、猫ちゃん?」

そこには、先程オサムにやられたはずのつーが何故か復活していた。

从'ー'从「えっと〜」

(*゚∀゚)「あたしはご主人の魔力によって生み出されてるニャ。ご主人が死ニャニャい限り何度でも蘇るニャー」

渡辺が聞きたかったことをツーが察してくれたのか、先に答えてくれた。傷一つないところを見ると、彼女の言は間違いないようだ。

从'ー'从「へぇ〜、そうだったんだ〜。びっくりだよぉ〜」

(;・∀・)「使い魔としては規格外だとは思うけどね。普通復活しないから」

784 ◆B8K2xdDAGY:2018/11/04(日) 22:20:47 ID:EmUWWVKM0
モララーもしぃもどのように反応すればいいか、言葉に詰まっている。もしかしなくても、この猫はすごいのだろうか。

えへん、と胸を張るつーを眺めていると、はっとした顔でモララーが一つ咳をした。

( ・∀・)「って今はそんなことはどうでもいい。それより、力を貸すってのはどういうことだ」

(*゚∀゚)「そのままの意味だニャー。あたしは⋯⋯」

つーが言い淀むと、ちらりとこちらを一瞥。

(*゚∀゚)「忌み子の使い魔だからニャ」

从'ー'从「???」

正直意味が分からない。自分の使い魔であることがどんな理由になるというのか。

モララーやショボンの反応から察するに、喋る使い魔は珍しいことは分かる。渡辺自身も使い魔を連れる生徒を見たことはあるが、いずれも言葉を発していなかった。

だが、それはたまたま見たことがないだけで世の中には人の言葉を操る使い魔だっていてもおかしくないはずだ。

自分達は魔法使いで、それに仕えるのが使い魔なのだから。

(*゚ー゚)「とにかく、つーさんにはこの術式を解除する算段があるんですよね?」

再びあれこれと考えていると、しぃが発言する。

(*゚∀゚)「任せてほしいニャー」

頷くつーは自信満々のようである。先程の戦闘を見る限りではあまり期待できそうにないのだが。

785 ◆B8K2xdDAGY:2018/11/04(日) 22:22:30 ID:EmUWWVKM0
モララーもしぃも渡辺と同意見のようで、互いに顔を見合わせている。

それも一瞬、すぐにモララーが頷く。

( ・∀・)「オッケー。んじゃ決まりだな。ツンのとこまで急ごうじゃねえか」

(*゚∀゚)「了解ニャ。大船に乗ったつもりでいるニャ」

すべきことは決まった。そして自分達には出来ることがある。

モ・トコに来てから、渡辺は周りの誰かに頼ってばかりで、何もできなかった。

唯一できたのはツンを守ることとショボンを助けられたこと。それさえもツンのお膳立てがあったからこそだった。

つーという使い魔を得たことも、ツンのおかげと言えばそうなのだが、それでも今はありがたい。

从'ー'从(ツンちゃん、待っててね)

三人と一匹は飛行する。目指すはツンの元。


.

786 ◆B8K2xdDAGY:2018/11/04(日) 22:26:25 ID:EmUWWVKM0


ξ ⊿ )ξ(範囲拡大、魔導関数の変数を固定化。工程の長期化⋯⋯駄目だ間に合わない。なら、一時凍結させる)

表示される情報を頭の中で整理しながら、やらなければならない作業を一瞬で組み立て、機械的に打ち込んでいく。

本来これらは人が手作業で行うことではない。専用のツールで作業を代理させなければ間に合わないのだ。

それでもツンは、自分でも驚くほどの速さと正確さで術式の書き換えに成功している。

否、成功はしていない。邪魔が出来ているに過ぎない。

何せこちらが解析、書き換える間にも術式は複雑に変換されている。あちらを弄ればこちらがさらに高度で難解な術式を描いていくのだ。

もしかしたら、僅かながらの可能性として、それだけならツン一人でもなんとかなったかもしれない。

ツンが手をつけられない、どうしようもない一番の問題は━━

787 ◆B8K2xdDAGY:2018/11/04(日) 22:28:46 ID:EmUWWVKM0
ξ ⊿ )ξ(なんなのよ、この言語は!)

未知の魔法言語。

様々なルーンや魔導関数で構成される術式のはずが、見たことも聞いたこともない文字と記号で埋め尽くされているのだ。

もちろん変換されていない部分も沢山あるのだが、そちらに手をつけている間に他が未知の言語に置き換わっていく。

これでは、完全にお手上げだった。

せめてもの抵抗として、術式の対象が拡がっていかないようにはしているが、どれだけの効果が望めるか。

かといってツンが諦めてしまえば、術式の拡散は止まることを知らず、間も無くして大陸中の生き物がマナへと変わっていくだろう。

その中には渡辺や、ドクオだっている。

ξ ⊿ )ξ「諦めるわけには、いかないのよ⋯⋯」

そう、諦めるわけにはいかない。自分がやっていることはほんの少しの時間稼ぎでしかないことも、痛いほど理解していた。

だからこそ、だからこそツンはここにいるしかない。

ξ ;⊿;)ξ「どうすればいいのよこんなの! 手立てがないじゃない!」

788 ◆B8K2xdDAGY:2018/11/04(日) 22:30:54 ID:EmUWWVKM0
流れてくる涙を拭おうともせず、ひたすら魔法モニターを叩いていく。ここで手を止めてしまえば、自分はもう何も出来ないだろう。それが分かっているから、動かし続けるしかなかった。

だから、ツンにはどうすることも出来なかった。自分に向けられた魔法に対処出来なかったのだ。

ξ ⊿ )ξ(ごめん、渡辺)

浮かんでくるのは短かった王都での日々。たった一人の親友と過ごしたかけがえのない時間。

自分の身なんてどうでもいい。せめて、彼女だけは助かって欲しい。

それだけを願って、ツンは自分の死を受け入れ━━

「諦めるのはまだ早いと思うよ」

ξ゚⊿゚)ξ「!?」

ようとして。

(´・ω・`) 「ふっ!」

巨大な防御術式がツンを守るように展開される。半透明の光はバチバチと音を立てると霧散していった。

ξ゚⊿゚)ξ「ショボン⋯⋯さん⋯⋯!?」

(´・ω・`) 「遅くなってすまない。思いの外ダメージが大きくてね」

ツンの隣に、ショボンが立っていた。

(´・ω・`) 「術式に干渉していたのはやはり君だったか。若いのに大したものだ」

ξ゚⊿゚)ξ「そんなことより━━」

(´・ω・`) 「分かっている。だが⋯⋯これは」

横からショボンがモニターを覗くと、眉を顰める。やはりショボンですら見たことはないようだ。

789 ◆B8K2xdDAGY:2018/11/04(日) 22:36:00 ID:EmUWWVKM0
(´・ω・`) 「なるほど。これを作った奴は天才だな、本当に。どれ、少し変わってくれるかな?」

しばらく、と言ってもたかだか数分、ツンの隣で作業を眺めていたショボンが口を開いた。

ξ゚⊿゚)ξ「ショボンさんこれは」

ツンの説明を遮るように、優しく肩を押され、首を横に振る。

(´・ω・`) 「私も騎士団副団長という肩書きだ。こういう場合の対処法は心得ている。もちろん、一時凌ぎではあるが」

ツンと場所を変わると、ショボンは物凄い速さで術式の書き換えを行なっていく。ツンが手をつけることが出来なかった部分もまとめて変換しているようだ。

ξ゚⊿゚)ξ「あの、これ、大丈夫なんですか?」

ツンの見立てだと、魔法の有効範囲の縮小どころか更なる拡大と、対象の追加に見えるのだが。

(´・ω・`) 「ん? ああ、これはね、魔法学に精通した旧友に教わったんだが」

ショボンが一度言葉を切ると、最後の一文を入力。すると、術式の書き換えが一瞬止まった。

ξ゚⊿゚)ξ「え!?」

さらに未知の言語で構成された部分がツンのよく知る見慣れたルーンに変わっていく。その命令の意味は━━

ξ゚⊿゚)ξ「マナの、相互干渉?」

(´・ω・`) 「特定のルーンと関数を用いると、相互に干渉し合って歪みを起こすらしい。旧友の言葉を借りるならバグる」

集められたマナは、特定の人物へと供給されていたが、ショボンが書き換えた直後から供給先からも同じラインを通ってマナを吸い取るようになっていた。

ラインの中でぶつかったマナはそこで、消失。

ツンの知識をフル動員しても、術式自体にそのような命令にはなっていない。だが、マナの流れを追う限り、マナは消失していく。

ξ゚⊿゚)ξ「すごい⋯⋯」

790 ◆B8K2xdDAGY:2018/11/04(日) 22:38:11 ID:EmUWWVKM0
(´・ω・`) 「この言語はマナや魔力の種類、大きさの選別、そちら側に関係しているのだと思う。もちろん解読は出来ないし、する時間もない以上、推測だがね」

ξ゚⊿゚)ξ「でも、これなら!」

(´・ω・`) 「長くは保たない。どうにも、変換されていく言語は私達が扱う術式よりも遥かに多くの意味を持っているようでね。すぐに書き換えられてしまうはずさ」

ショボンはまごうことなき天才なのだろうとツンは感じた。遠く離れた場所から道具を使わずに術式を解析、書き換えを行い、果ては少しの時間でツンよりも多くの戦果を上げている。

なのに、そのショボンですら敵わない。それすなわち、自分達には手の施しようがないということ。

再びツンの胸中を暗雲が覆い始める。限界は近い。

(´・ω・`) 「諦めるのはまだ早い。今、君は一人じゃないんだ。全てを一人で背負い込む必要はないんだよ」

ξ ⊿ )ξ「でも⋯⋯」

ショボンはこちらの考えを悟ったのか、励ましにもならない言葉をかけてくる。

どうしようもないのに、出来ることなど、何もないのに。

(´・ω・`) 「君は自分に出来る精一杯をやったと思っているだろう。けれど、諦めない限り、戦いは終わらない。心が折れない限り、勝負は分からないんだよ」

それに、とショボンは続ける。

(´・ω・`) 「解決するための道筋は、案外すぐ近くにあるものなのさ」

791 ◆B8K2xdDAGY:2018/11/04(日) 22:40:32 ID:EmUWWVKM0
その一言が、ツンを現実に引き戻した。

いや、その一言があったからこそ、ツンはこの現実に気づくことができた。

『ツンちゃーん!』

ξ ⊿ )ξ「⋯⋯」

ξ゚⊿゚)ξ「⋯⋯え?」

大切な友人の声が聞こえた気がして、ツンは振り向く。

从'ー'从( ・∀・)(*゚ー゚)(*゚∀゚)

そこには、いつも通り緊張感のない顔をした渡辺と、仲間達がいた。

ξ゚⊿゚)ξ「ショボンさんは、知っていたんですか?」

(´・ω・`) 「⋯⋯」

ツンの問いかけにショボンは何も答えない。それは、否定とも肯定とも取れる。だが、この人のことだ。きっと全てを考慮した上で、最善の選択をしていたに違いない。

だからこそはっきりと諦めるなと語りかけていたのだ。

(´・ω・`) 「ま、まぁ僕くらいになると当然予想の範囲さ。何せ副団長だからね」

ξ゚⊿゚)ξ(脂汗がすごい。というか、さっきのはただの気休めだったのね)

それでも、この状況において援軍が来てくれたのは大きい。勿論、本音を言えば渡辺には逃げて欲しかったのだが、彼女がここに来たということはきっと意味がある。

ξ゚⊿゚)ξ「渡辺、私は」

从'ー'从「ツンちゃん! 猫ちゃんがこの術式を何とか出来るんだって!」

ξ゚⊿゚)ξ「あんたに逃げ⋯⋯え?」

言いかけて、渡辺の言葉を反芻する。

从'ー'从「そうだよね? 猫ちゃん」

(*゚∀゚)「任せてほしいニャ」

思わぬ所から、逆転の目が舞い降りた。

792 ◆B8K2xdDAGY:2018/11/04(日) 22:41:51 ID:EmUWWVKM0
十五話半分終わりです
投下したら意外に短いですね
今月中にもう半分投下できたらなと思います
それではまた

793名も無きAAのようです:2018/11/23(金) 00:06:51 ID:Nf.3zt9Y0
いつのまにか更新されてるね お疲れ様見てるよ

794名も無きAAのようです:2019/01/03(木) 19:19:43 ID:IX7CFJ.c0
おっおー

795名も無きAAのようです:2019/02/12(火) 00:31:37 ID:Mg1TkYwo0
そして気付けば2月なんだよなぁ…

796名も無きAAのようです:2019/02/21(木) 21:45:54 ID:pNZ86c4.0
待ってます


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