[
板情報
|
カテゴリランキング
]
したらばTOP
■掲示板に戻る■
全部
1-100
最新50
|
1-
101-
201-
301-
401-
501-
601-
701-
この機能を使うにはJavaScriptを有効にしてください
|
('A`)は異世界で戦うようです
1
:
名も無きAAのようです
:2014/05/25(日) 20:21:36 ID:gOpuSR2Q0
鬱田ドクオとは、一言で言えば弱い人間だ。
過去を振り替えれば後悔しなかった出来事はないし、ましてや努力なんて言葉とは無縁の存在である。
テストは赤点ギリギリ、運動能力は一般人より少し劣る程度、体つきは貧相なもので米俵一俵持つのが精一杯。かといってそれらを補うための努力をしたいなぁとは思っても、けして実行することはなかった。
そんなわけだからドクオは自分という存在が嫌いだった。変わりたいと願っても、変えようとすること自体がめんどくさくなってしまう。
大学を卒業し、なんとか内定をもらった会社も周囲の環境に溶け飲むことが出来ず、やめてしまったことも自己嫌悪の一つの原因である。
よって、ドクオにとっての自分とは、あってもなくても変わらない路傍の石のような存在で、そんな自分が世界に与える影響など皆無だと信じ込んでいた。
*鼹類燭辰榛*、この瞬間までは。
748
:
名も無きAAのようです
:2014/11/25(火) 00:02:38 ID:r80BlYAcO
あれれ〜?
749
:
名も無きAAのようです
:2014/11/25(火) 00:07:27 ID:zsG4nz5k0
前も一時的に規制されてたってVIP総合でヘルプ出してたからそれかもなあ
750
:
名も無きAAのようです
:2014/11/27(木) 02:44:59 ID:7iBjJjVc0
気長に待とうではないか
751
:
名も無きAAのようです
:2015/03/22(日) 21:48:27 ID:iyl5n7SE0
待ってるよー
752
:
◆5EWptf5Cbg
:2015/06/04(木) 16:48:59 ID:ORCc//7c0
これかな
753
:
◆B8K2xdDAGY
:2015/06/04(木) 16:49:41 ID:ORCc//7c0
こっちか
754
:
1
◆B8K2xdDAGY
:2015/06/04(木) 16:54:27 ID:ORCc//7c0
皆様約半年ぶりでございます
1は仕事の忙しさとか色々なことから逃げてスレから逃亡しておりました
大変申し訳ございません
ようやく自分の気持ちも踏ん切りつきましたのでぼちぼち再開していこうかなと思いますので
よろしければお付き合いいただければ嬉しいです
つい先程また再開しようかなと思い立ったので、いつ頃投下するかは分かりませんが、夏が終わるまでには投下しますので、よろしくお願いいたします
755
:
名も無きAAのようです
:2015/06/04(木) 17:41:28 ID:ywxLv2j.0
よろしくお願いいたします
756
:
名も無きAAのようです
:2015/06/04(木) 17:53:09 ID:Jbise1e6O
ほほう。期待して待っとるよー
757
:
名も無きAAのようです
:2015/06/04(木) 19:27:51 ID:VhF5csno0
良かったよ、気にせずまたよろしく!
楽しんで読んでたからね
758
:
1
◆B8K2xdDAGY
:2015/06/14(日) 01:31:30 ID:3.aqaflI0
どうも1です
今までどこまで書いたかとか色々と考えていた設定を書いたデータが
どっかにいってしまったため初めから読み直してきました
とりあえず十五話に関しては以前書いたものの冒頭が残ってたので今月中には投下したいなぁと考えております
また進捗具合などを報告しに参りますので、その際はよろしくお願いいたします
759
:
名も無きAAのようです
:2015/06/14(日) 09:05:20 ID:Yu1PIQpU0
きたい
760
:
名も無きAAのようです
:2015/06/14(日) 10:40:07 ID:riYLBk8E0
待ってるよー
761
:
名も無きAAのようです
:2015/08/16(日) 21:42:24 ID:fjrG4mo60
今年中に来てくれることを祈る
762
:
名も無きAAのようです
:2015/08/22(土) 20:03:44 ID:iEnPJe3Y0
気長に待つさ
763
:
名も無きAAのようです
:2017/02/24(金) 05:34:27 ID:xiPdW8fA0
追いついたけどもう更新は無いのかなあ
悲しいなあ
764
:
◆B8K2xdDAGY
:2018/09/30(日) 19:01:21 ID:Lt3LK7jc0
テスト
765
:
◆B8K2xdDAGY
:2018/09/30(日) 19:03:59 ID:Lt3LK7jc0
書き込めた
久しぶりです、人いないと思いますが
久々に思い出して続き書こうと思い立ったのでやってきました
気が向いたらまた書きます
766
:
名も無きAAのようです
:2018/09/30(日) 19:48:16 ID:gbJB2eLQ0
>>765
マジか、嬉しい。
767
:
◆B8K2xdDAGY
:2018/10/04(木) 23:50:41 ID:kRj7Xg4o0
10月中旬くらいに15話の半分投下させていただきます
結構長めなんで半分に分けます
768
:
名も無きAAのようです
:2018/10/19(金) 08:50:37 ID:2f7YqYC60
待ってる
769
:
名も無きAAのようです
:2018/10/21(日) 11:59:24 ID:2PaE8LFI0
今度はほんとにほんとなんだよなぁ?!
770
:
◆B8K2xdDAGY
:2018/11/04(日) 21:57:59 ID:EmUWWVKM0
すっかり投下予告を忘れていました
今から投下します
771
:
◆B8K2xdDAGY
:2018/11/04(日) 21:58:43 ID:EmUWWVKM0
第十五話「報われぬ者に救いの手を」
.
772
:
◆B8K2xdDAGY
:2018/11/04(日) 21:59:49 ID:EmUWWVKM0
「報告! 大陸北方より未確認の力を確認! 魔法⋯⋯いや、マナの⋯⋯塊?」
「結界の出力を上げろ! 王都が消し飛ぶぞ!」
「住民の避難を急げ! 可能な限り地下に入れるんだ!」
王都ヴィップでは強大な力がこちらに向かっているのが観測され、城下だけでなく騎士団内部でさえ慌ただしくなっていた。
騎士団長のみならず、副団長までいない今、各部隊長が少ない騎士を取りまとめ、被害を最小限に止めようと奔走している。
ヴィップは大陸最大の街であり、住民の数も相応に多い。都市崩壊級の魔法にも耐えられる強固な結界が街全体を覆っているとはいえ、差し迫っている不可思議なエネルギー体の前ではどれほどの効果を持つかは分からない。一瞬にして王都が消滅する可能性もある。
過去を遡っても、これほどの危機が王都を襲ったことがあっただろうか。当然騎士達の焦りと緊張は最大限まで高まり、住民の避難、ひいては防衛対策も滞っているようだった。
773
:
◆B8K2xdDAGY
:2018/11/04(日) 22:01:25 ID:EmUWWVKM0
( ФωФ)「どうも面倒なことになったようであるな」
王都ヴィップを治める王、ロマネスクはそんな騎士達に嘆息しながら呟く。
『仕方がないでしょう。あれは魔法であって魔法ではない。世界の法則を無視した高エネルギー体なんて、彼らには初めてでしょうから』
誰もいないはずの場所から声が聞こえた。しかし、ロマネスクはそれが当たり前のように続ける。
( ФωФ)「貴様の同志とやらの仕業であろう。計画も最終段階を迎えた今、王都が消し飛ぶのはまずいのではないか?」
『そうね。あれをどうにかするのは簡単だけれど、それを目撃されるのは困るの』
協力者であるロマネスクにさえなかなか姿を見せないのだ。意図は分からないが、それも当然と言える。
774
:
◆B8K2xdDAGY
:2018/11/04(日) 22:02:10 ID:EmUWWVKM0
( ФωФ)「ではどうする。我輩が先導して祈りでも捧げさせればよいのか?」
それはそれで面白い。奇跡を起こした王として、大衆の支持は集められるだろう。
だが、そんな奇跡は起こらない。タネがある以上、それはペテン以外の何物でもなく、ロマネスク自身もそんなご都合主義は好みではない。
『まぁもう少し待ちましょう。モ・トコには魔剣の主がいるのでしょう?』
( ФωФ)「やけに信用しているな。確かに脅威ではあったが、相手は悪魔に最も近しい存在であろう。魔剣といえどどうにかなるものなのか」
魔剣アポカリプスを顕現させる為だけの媒体に、事態を収束させる力があるとは思えないが。
報告書を読んだ限りでは、分隊長クラスと五分、それ以上は敗戦濃厚。そんな巻き込まれただけの一般人だ。
775
:
◆B8K2xdDAGY
:2018/11/04(日) 22:03:37 ID:EmUWWVKM0
『あなたはまだ魔剣の力を知らないから。それに、彼は理に呼ばれていた』
( +ω+)「⋯⋯ふむ」
世界の理。計画の最大にして最後の壁。ロマネスクが最も憎むべき存在。
奴は、導かれているとでも言うのだろうか。あんなものに。
( ФωФ)「貴様が言うのであれば我輩は傍観しよう。どうせ他にすべきこともない」
『懸命ね。万が一は、私が何とかしましょう』
声はそれきり途絶えた。ロマネスクは小さく溜息を吐く。
( +ω+)(忌まわしいのは魔剣だけではないぞ。貴様もだ)
776
:
◆B8K2xdDAGY
:2018/11/04(日) 22:04:26 ID:EmUWWVKM0
◇◇◇◇
目の前の空間がヒビ割れ、光が漏れる。瞬間、爆発、爆発、爆発。説明のつかない力がドクオの周囲を渦巻いていく。
構わず疾走。オサムの半歩前、剣を薙ぐ。
鈍い音と共に不可視の壁が刃の進行を阻み、同時に弾き返される。堪らず距離を取るが、ドクオを追っていくつもの光が流れた。
咄嗟に魔剣を横に一閃。いくつかは消しとばしたが、撃ち漏らした光に被弾。幸いダメージはそれほどでもない。魔法で傷を癒し、さらに攻撃魔法。
('A`)「はぁっ!」
空間を抉るように魔力の道筋が捻れ、白金の輝きがオサムへと向かう。
( ゚"_ゞ゚) 「効カヌ!」
またしても不可視の壁に阻まれる。が、その隙にドクオは懐へと潜り込んだ。
777
:
◆B8K2xdDAGY
:2018/11/04(日) 22:05:23 ID:EmUWWVKM0
('A`)「どうやら自動じゃないみたいだな」
( ゚"_ゞ゚) 「クッ⋯⋯!」
まずは一太刀。今までのように消滅はしない。しかし、オサムの体には一筋の傷ができた。
奴は不死身ではない。通常の攻撃や魔法は効果がないが、魔剣の力は通る。この街に仕掛けられた術式がすぐに回復させるのだろうが、効かないわけではないのだ。
王都に向けて放った攻撃、さらにモ・トコの崩壊術式のせいで時間はかけられない。それでも、奴の体には限界がある。
所詮ドクオが使える魔法は一時的なものだ。端から通用するとは思っていない。
('A`)(魔法はあくまで牽制。本命はこいつ。どっちかが倒れるまでインファイトしかねえ!)
ドクオが距離を取るより早く、弾き飛ばされる。一度地面を跳ねるも、空中で回転しうまく着地。
('A`)(いない!?)
剣を構えるが、オサムの姿がない。後方、そして頭上から魔力の収束を感知。
778
:
◆B8K2xdDAGY
:2018/11/04(日) 22:06:09 ID:EmUWWVKM0
前方に回避。ドクオの立っていた上方から浄化の光が、後方にはアニメで見たワームホールのような大きな穴が空いており、砂や岩を吸い込んでいる。
嫌な予感がして、ドクオは駆け出した。一瞬遅れて同じ魔法がドクオの進行方向を塞ぐように無数に現れる。壁際に追いやられ、ドクオは退路を失ってしまう。
「食ラウガイイ!」
声だけが聞こえ、ドクオの視界が白と黒で埋め尽くされる。
('A`;)(避けきれない!)
剣を構え、迎撃の態勢へ。全ての力を消すことはできないが、直撃だけは免れた。身体のあちこちに黒と白の痣ができ、異常な痛みを感じるが動かないわけではないようだ。
ドクオが動き出す瞬間、再び空間にワームホールが出現。そこから無数の流星が飛来した。
('A`)「ちっ!」
こちらに向かうものだけを的確に叩き、消し飛ばす。流星は追尾性がないらしく、ドクオは駆けながら穴まで接近。斬りつけようとして、
( ゚"_ゞ゚) 「甘イ!」
中からオサムが顔を出す。同時に半透明の鎖がドクオの四肢に絡みつき、引きずり込んでいく。
('A`)「ぐっ⋯⋯」
抵抗はするがうまく力が入らない。先程の痣が輝き始め、ドクオの動きを妨げているようだ。
( ゚"_ゞ゚) 「虚無ノ世界ニ誘ッテヤロウ」
('A`;)「さ⋯⋯せ⋯⋯る⋯⋯」
剣を落とさなかったのは幸いか、手首を捻り鎖に当てる。
(#゚A゚)「かぁぁぁぁぁぁ!」
779
:
◆B8K2xdDAGY
:2018/11/04(日) 22:06:53 ID:EmUWWVKM0
甲高い音を立てて鎖が消え、一瞬力が
弱まった。その隙にオサムの顔に剣を突き立てる。
( ゚"_π) 「ガァァァァァァッ!」
引き抜くと同時に他の鎖を断ち切り、その場を離れる。いつの間にかワームホールは消え、オサムの体が現れた。
('A`)「らぁっ!」
一つ、二つとオサムに連撃を叩き込む。上下左右へ目に見えぬ速度でダメージを与えていく。
回復する暇を与えてはならない。回復させても全快させてはいけない。
ドクオの攻撃に怯んでいたオサムだが、不意に彼の周囲を漆黒の風が吹き荒れた。
( ゚"_ゞ゚) 「舐メルナ!」
瞬間、拡散。辺りの地面や壁を所構わず破壊する。空間も激しい損傷を受けたのか、ヒビが入っていた。
空間にヒビを入れるだけの魔力を制御せずに垂れ流したということは、奴には余裕がないということの証明だろう。今の攻撃は相当効いたようだ。
( ゚"_ゞ゚) 「俺ハ神ダ! 等シイ力ヲ手ニ入レタノダ! 貴様ノ様ナ弱者ニ負ケル訳ガナイ!」
オサムの声は怒りで震えている。それに呼応して大気が、大地が揺れた。おそらく、最大級の攻撃が来る。
( ゚"_ゞ゚) 「オオオオオオオオ!!!!!!!」
周辺の魔力がオサムの前に集まり、圧縮される。
('A`)(あれは、まずい!)
駆け出し、魔剣が触れる瞬間、辺りの景色が白一色に変わった。
魔剣アポカリプスと同等の破壊の力が広がっていく。音を立てず、形を変えず、ただただ、消える。
('A`;)「オォォォォォ!」
もはやドクオですら理解していない力の本質さえ奴は掌握しているらしい。どうすれば力を効率的に使えるのか、何をすれば魔剣と渡り合えるのか。
否、魔剣を超えられるのか。
オサムの力はその領域にまで至っている。
780
:
◆B8K2xdDAGY
:2018/11/04(日) 22:08:08 ID:EmUWWVKM0
ドクオが気がついた時、辺りには何も見当たらなかった。白一色となった世界に一人、立ち尽くしていた。
自身が消滅の力に飲み込まれなかったのは、まだ魔剣の力が上回っていたからだろうか。それとも単に力同士の衝突で相殺できたからなのか。
( A ;)「はぁっ⋯⋯はぁっ⋯⋯」
だが、ドクオの体からは著しく力が失われている。立っていることがやっとの状態だった。
ふとドクオの前方、宙空に浮かぶオサムが着地。あちらは随分と余裕がある。
( ゚"_ゞ゚) 「ククク、辛ソウダナ。コレガ神ト、人間ノ差ダ」
オサムの言う通り、この短時間を戦ってみて分かった。ドクオと奴の間にはどうしても埋められない差があることは。
オサムは力の扱い方を完全に理解している。おまけに体力も魔力も無尽蔵、有限と無限ではどちらに分があるか考えるまでもない。
さらに、戦闘は得意ではないと嘯いていたが、ドクオなどよりも豊富な戦闘経験に加え、理に触れたことでさらなる高みに登っていた。
モララー達には勝てると言ったものの、はっきり言って勝ち目が薄いのはドクオも感じている。
781
:
◆B8K2xdDAGY
:2018/11/04(日) 22:08:56 ID:EmUWWVKM0
付け焼き刃の魔法は陽動くらいにしか使えない、唯一の対抗手段である魔剣は本体に近付くことがままならない。
せめて、オサムの魔法だけでも一時的に封じることができれば勝算は少なからずある。
( ゚"_ゞ゚) 「大人シクシテイルナラバ、神トシテノ慈悲ダ。一瞬デ消シテヤルゾ?」
( A ;)「悪いがお断りだ。お前を倒して、神父を救い出すって約束したもんでね。子供との約束は守る主義なんだ」
( ゚"_ゞ゚) 「戯言ヲ。神ノ前デハ全テガ児戯ニ等シイ。アマリ笑ワセテクレルナ」
( A ;)「俺一人殺せないくせに何が神だ。どれだけの力を持ってたって、どれだけの知識を持ってたって、人間は神になんかなれない」
オサムの力は絶大で、戦闘は確かに有利だろう。だが、オサムは自分の力を振るうのが楽しくて仕方がないと言わんばかりに決着を早めていない。
遊んでいるのだ。ドクオを舐めている。
もし人の命すら自由にできる本当の神なら、自分に逆らう存在を問答無用に、絶対的な力ですぐに終わらせる。
何故なら人と神の格の違いを思い知らせるため。
勝てる勝てないという場所ではなく、到底手が届かないのだと思わせなければ、きっと神という存在は認められない。
ならば、自身の感情に左右されるオサムはけして神ではなく、どこまでいっても人なのだ。
そして、人であるならドクオでも対抗できる。
('A`)「人間舐めんじゃねえぞクソ野郎!」
782
:
◆B8K2xdDAGY
:2018/11/04(日) 22:13:05 ID:EmUWWVKM0
◇◇◇◇
オサムの術式により崩壊を始めるモ・トコを渡辺達は飛行していた。街に残った少数の住民達も、オサムによって消されたのか、はたまた避難したのか一度も目撃していない。
从;'ー'从「うー、逃げるってどこに逃げればいいのぉ〜?」
オサムが使っている術式は街どころかその外部にまで影響が及んでいるようで、遠くの空までも不気味に揺れている。この分では渡辺達が餌食になるのも時間の問題だろう。
( ・∀・)「状況を整理して考えてみりゃ、このまま逃げてたっていつかはこの魔法にやられるだけだろうし、術式の解除が最優先じゃないか」
隣を飛ぶモララーが嘆息しつつ答える。平然とした顔をしているが、絶え間なく周囲を警戒しているところを見ると、あまり余裕はないのだろう。
状況を鑑みれば、モララーの言う通り自分達が捕まるのは時間の問題だ。モララーやしぃがうまく敵の魔法の探知をしてくれているからこそこうして無事でいるが、一瞬でも判断を間違えればそこで全てが終わる。
ならば、こちらからその原因を取り除いてしまえばそれでいい。そこまでは渡辺でも理解できた。
(*゚ー゚)「しかし、ここまで複雑な術式を私達で解除できるでしょうか」
渡辺の胸中を代弁するかのように、しぃが呟いた。
783
:
◆B8K2xdDAGY
:2018/11/04(日) 22:18:05 ID:EmUWWVKM0
事実、自分達の中に魔法理論に詳しい者がいない。実戦における魔法の扱いに関しては太鼓判を押せるだろうが、研究者━━オサムが自身をそう言っていた━━が自作した術式を解析して破壊できるほど精通しているとは言い難い。
ツンは黒の魔術団時代の経験、ショボンは騎士団の副団長としての責任から大なり小なり知識があった。それでも危険な綱渡りであることには違いないが。
( ・∀・)「考えてても仕方ねえよ。解除が無理なら体張って時間を稼げばいいだろ。何にせよ何もしないで逃げ回ってるなんて俺の性に合わないしな」
(;*゚ー゚)「しかし、その時間が今一番足りないものなんですよ」
しぃの言う通りだ。かと言って、この場で押し問答をしている時間も勿体ないのだが。
「それニャら、あたしが力を貸すにゃ」
不意にどこかから声がする。しかも聞き覚えのある口調で。
他の二人も驚いた顔をして辺りを見回すが、誰もいない。
「ここだニャ」
声と同時、渡辺の頭上に光が集まっていく。それは羽根の生えた猫を形取ると、実体を帯びていった。
从'ー'从「あれれ〜、猫ちゃん?」
そこには、先程オサムにやられたはずのつーが何故か復活していた。
从'ー'从「えっと〜」
(*゚∀゚)「あたしはご主人の魔力によって生み出されてるニャ。ご主人が死ニャニャい限り何度でも蘇るニャー」
渡辺が聞きたかったことをツーが察してくれたのか、先に答えてくれた。傷一つないところを見ると、彼女の言は間違いないようだ。
从'ー'从「へぇ〜、そうだったんだ〜。びっくりだよぉ〜」
(;・∀・)「使い魔としては規格外だとは思うけどね。普通復活しないから」
784
:
◆B8K2xdDAGY
:2018/11/04(日) 22:20:47 ID:EmUWWVKM0
モララーもしぃもどのように反応すればいいか、言葉に詰まっている。もしかしなくても、この猫はすごいのだろうか。
えへん、と胸を張るつーを眺めていると、はっとした顔でモララーが一つ咳をした。
( ・∀・)「って今はそんなことはどうでもいい。それより、力を貸すってのはどういうことだ」
(*゚∀゚)「そのままの意味だニャー。あたしは⋯⋯」
つーが言い淀むと、ちらりとこちらを一瞥。
(*゚∀゚)「忌み子の使い魔だからニャ」
从'ー'从「???」
正直意味が分からない。自分の使い魔であることがどんな理由になるというのか。
モララーやショボンの反応から察するに、喋る使い魔は珍しいことは分かる。渡辺自身も使い魔を連れる生徒を見たことはあるが、いずれも言葉を発していなかった。
だが、それはたまたま見たことがないだけで世の中には人の言葉を操る使い魔だっていてもおかしくないはずだ。
自分達は魔法使いで、それに仕えるのが使い魔なのだから。
(*゚ー゚)「とにかく、つーさんにはこの術式を解除する算段があるんですよね?」
再びあれこれと考えていると、しぃが発言する。
(*゚∀゚)「任せてほしいニャー」
頷くつーは自信満々のようである。先程の戦闘を見る限りではあまり期待できそうにないのだが。
785
:
◆B8K2xdDAGY
:2018/11/04(日) 22:22:30 ID:EmUWWVKM0
モララーもしぃも渡辺と同意見のようで、互いに顔を見合わせている。
それも一瞬、すぐにモララーが頷く。
( ・∀・)「オッケー。んじゃ決まりだな。ツンのとこまで急ごうじゃねえか」
(*゚∀゚)「了解ニャ。大船に乗ったつもりでいるニャ」
すべきことは決まった。そして自分達には出来ることがある。
モ・トコに来てから、渡辺は周りの誰かに頼ってばかりで、何もできなかった。
唯一できたのはツンを守ることとショボンを助けられたこと。それさえもツンのお膳立てがあったからこそだった。
つーという使い魔を得たことも、ツンのおかげと言えばそうなのだが、それでも今はありがたい。
从'ー'从(ツンちゃん、待っててね)
三人と一匹は飛行する。目指すはツンの元。
.
786
:
◆B8K2xdDAGY
:2018/11/04(日) 22:26:25 ID:EmUWWVKM0
ξ ⊿ )ξ(範囲拡大、魔導関数の変数を固定化。工程の長期化⋯⋯駄目だ間に合わない。なら、一時凍結させる)
表示される情報を頭の中で整理しながら、やらなければならない作業を一瞬で組み立て、機械的に打ち込んでいく。
本来これらは人が手作業で行うことではない。専用のツールで作業を代理させなければ間に合わないのだ。
それでもツンは、自分でも驚くほどの速さと正確さで術式の書き換えに成功している。
否、成功はしていない。邪魔が出来ているに過ぎない。
何せこちらが解析、書き換える間にも術式は複雑に変換されている。あちらを弄ればこちらがさらに高度で難解な術式を描いていくのだ。
もしかしたら、僅かながらの可能性として、それだけならツン一人でもなんとかなったかもしれない。
ツンが手をつけられない、どうしようもない一番の問題は━━
787
:
◆B8K2xdDAGY
:2018/11/04(日) 22:28:46 ID:EmUWWVKM0
ξ ⊿ )ξ(なんなのよ、この言語は!)
未知の魔法言語。
様々なルーンや魔導関数で構成される術式のはずが、見たことも聞いたこともない文字と記号で埋め尽くされているのだ。
もちろん変換されていない部分も沢山あるのだが、そちらに手をつけている間に他が未知の言語に置き換わっていく。
これでは、完全にお手上げだった。
せめてもの抵抗として、術式の対象が拡がっていかないようにはしているが、どれだけの効果が望めるか。
かといってツンが諦めてしまえば、術式の拡散は止まることを知らず、間も無くして大陸中の生き物がマナへと変わっていくだろう。
その中には渡辺や、ドクオだっている。
ξ ⊿ )ξ「諦めるわけには、いかないのよ⋯⋯」
そう、諦めるわけにはいかない。自分がやっていることはほんの少しの時間稼ぎでしかないことも、痛いほど理解していた。
だからこそ、だからこそツンはここにいるしかない。
ξ ;⊿;)ξ「どうすればいいのよこんなの! 手立てがないじゃない!」
788
:
◆B8K2xdDAGY
:2018/11/04(日) 22:30:54 ID:EmUWWVKM0
流れてくる涙を拭おうともせず、ひたすら魔法モニターを叩いていく。ここで手を止めてしまえば、自分はもう何も出来ないだろう。それが分かっているから、動かし続けるしかなかった。
だから、ツンにはどうすることも出来なかった。自分に向けられた魔法に対処出来なかったのだ。
ξ ⊿ )ξ(ごめん、渡辺)
浮かんでくるのは短かった王都での日々。たった一人の親友と過ごしたかけがえのない時間。
自分の身なんてどうでもいい。せめて、彼女だけは助かって欲しい。
それだけを願って、ツンは自分の死を受け入れ━━
「諦めるのはまだ早いと思うよ」
ξ゚⊿゚)ξ「!?」
ようとして。
(´・ω・`) 「ふっ!」
巨大な防御術式がツンを守るように展開される。半透明の光はバチバチと音を立てると霧散していった。
ξ゚⊿゚)ξ「ショボン⋯⋯さん⋯⋯!?」
(´・ω・`) 「遅くなってすまない。思いの外ダメージが大きくてね」
ツンの隣に、ショボンが立っていた。
(´・ω・`) 「術式に干渉していたのはやはり君だったか。若いのに大したものだ」
ξ゚⊿゚)ξ「そんなことより━━」
(´・ω・`) 「分かっている。だが⋯⋯これは」
横からショボンがモニターを覗くと、眉を顰める。やはりショボンですら見たことはないようだ。
789
:
◆B8K2xdDAGY
:2018/11/04(日) 22:36:00 ID:EmUWWVKM0
(´・ω・`) 「なるほど。これを作った奴は天才だな、本当に。どれ、少し変わってくれるかな?」
しばらく、と言ってもたかだか数分、ツンの隣で作業を眺めていたショボンが口を開いた。
ξ゚⊿゚)ξ「ショボンさんこれは」
ツンの説明を遮るように、優しく肩を押され、首を横に振る。
(´・ω・`) 「私も騎士団副団長という肩書きだ。こういう場合の対処法は心得ている。もちろん、一時凌ぎではあるが」
ツンと場所を変わると、ショボンは物凄い速さで術式の書き換えを行なっていく。ツンが手をつけることが出来なかった部分もまとめて変換しているようだ。
ξ゚⊿゚)ξ「あの、これ、大丈夫なんですか?」
ツンの見立てだと、魔法の有効範囲の縮小どころか更なる拡大と、対象の追加に見えるのだが。
(´・ω・`) 「ん? ああ、これはね、魔法学に精通した旧友に教わったんだが」
ショボンが一度言葉を切ると、最後の一文を入力。すると、術式の書き換えが一瞬止まった。
ξ゚⊿゚)ξ「え!?」
さらに未知の言語で構成された部分がツンのよく知る見慣れたルーンに変わっていく。その命令の意味は━━
ξ゚⊿゚)ξ「マナの、相互干渉?」
(´・ω・`) 「特定のルーンと関数を用いると、相互に干渉し合って歪みを起こすらしい。旧友の言葉を借りるならバグる」
集められたマナは、特定の人物へと供給されていたが、ショボンが書き換えた直後から供給先からも同じラインを通ってマナを吸い取るようになっていた。
ラインの中でぶつかったマナはそこで、消失。
ツンの知識をフル動員しても、術式自体にそのような命令にはなっていない。だが、マナの流れを追う限り、マナは消失していく。
ξ゚⊿゚)ξ「すごい⋯⋯」
790
:
◆B8K2xdDAGY
:2018/11/04(日) 22:38:11 ID:EmUWWVKM0
(´・ω・`) 「この言語はマナや魔力の種類、大きさの選別、そちら側に関係しているのだと思う。もちろん解読は出来ないし、する時間もない以上、推測だがね」
ξ゚⊿゚)ξ「でも、これなら!」
(´・ω・`) 「長くは保たない。どうにも、変換されていく言語は私達が扱う術式よりも遥かに多くの意味を持っているようでね。すぐに書き換えられてしまうはずさ」
ショボンはまごうことなき天才なのだろうとツンは感じた。遠く離れた場所から道具を使わずに術式を解析、書き換えを行い、果ては少しの時間でツンよりも多くの戦果を上げている。
なのに、そのショボンですら敵わない。それすなわち、自分達には手の施しようがないということ。
再びツンの胸中を暗雲が覆い始める。限界は近い。
(´・ω・`) 「諦めるのはまだ早い。今、君は一人じゃないんだ。全てを一人で背負い込む必要はないんだよ」
ξ ⊿ )ξ「でも⋯⋯」
ショボンはこちらの考えを悟ったのか、励ましにもならない言葉をかけてくる。
どうしようもないのに、出来ることなど、何もないのに。
(´・ω・`) 「君は自分に出来る精一杯をやったと思っているだろう。けれど、諦めない限り、戦いは終わらない。心が折れない限り、勝負は分からないんだよ」
それに、とショボンは続ける。
(´・ω・`) 「解決するための道筋は、案外すぐ近くにあるものなのさ」
791
:
◆B8K2xdDAGY
:2018/11/04(日) 22:40:32 ID:EmUWWVKM0
その一言が、ツンを現実に引き戻した。
いや、その一言があったからこそ、ツンはこの現実に気づくことができた。
『ツンちゃーん!』
ξ ⊿ )ξ「⋯⋯」
ξ゚⊿゚)ξ「⋯⋯え?」
大切な友人の声が聞こえた気がして、ツンは振り向く。
从'ー'从( ・∀・)(*゚ー゚)(*゚∀゚)
そこには、いつも通り緊張感のない顔をした渡辺と、仲間達がいた。
ξ゚⊿゚)ξ「ショボンさんは、知っていたんですか?」
(´・ω・`) 「⋯⋯」
ツンの問いかけにショボンは何も答えない。それは、否定とも肯定とも取れる。だが、この人のことだ。きっと全てを考慮した上で、最善の選択をしていたに違いない。
だからこそはっきりと諦めるなと語りかけていたのだ。
(´・ω・`) 「ま、まぁ僕くらいになると当然予想の範囲さ。何せ副団長だからね」
ξ゚⊿゚)ξ(脂汗がすごい。というか、さっきのはただの気休めだったのね)
それでも、この状況において援軍が来てくれたのは大きい。勿論、本音を言えば渡辺には逃げて欲しかったのだが、彼女がここに来たということはきっと意味がある。
ξ゚⊿゚)ξ「渡辺、私は」
从'ー'从「ツンちゃん! 猫ちゃんがこの術式を何とか出来るんだって!」
ξ゚⊿゚)ξ「あんたに逃げ⋯⋯え?」
言いかけて、渡辺の言葉を反芻する。
从'ー'从「そうだよね? 猫ちゃん」
(*゚∀゚)「任せてほしいニャ」
思わぬ所から、逆転の目が舞い降りた。
792
:
◆B8K2xdDAGY
:2018/11/04(日) 22:41:51 ID:EmUWWVKM0
十五話半分終わりです
投下したら意外に短いですね
今月中にもう半分投下できたらなと思います
それではまた
793
:
名も無きAAのようです
:2018/11/23(金) 00:06:51 ID:Nf.3zt9Y0
いつのまにか更新されてるね お疲れ様見てるよ
794
:
名も無きAAのようです
:2019/01/03(木) 19:19:43 ID:IX7CFJ.c0
おっおー
795
:
名も無きAAのようです
:2019/02/12(火) 00:31:37 ID:Mg1TkYwo0
そして気付けば2月なんだよなぁ…
796
:
名も無きAAのようです
:2019/02/21(木) 21:45:54 ID:pNZ86c4.0
待ってます
新着レスの表示
名前:
E-mail
(省略可)
:
※書き込む際の注意事項は
こちら
※画像アップローダーは
こちら
(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)
スマートフォン版
掲示板管理者へ連絡
無料レンタル掲示板