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('A`)は異世界で戦うようです

5581:2014/08/01(金) 21:57:02 ID:Fg3tJaY20



『そうするほか、我が子達を助ける方法はないんだな』

男の声が静かに響いた。目の前にいるのは男と、女。計三人の人間が神妙な顔つきで話し合っている。

『あなたが協力してくれるというなら、私達が口を利いて差し上げますわ。あなた一人と未来ある子供達の命、考えるまでも思いますが……』

『分かっているさ。私は老い先短い。こんな老いぼれの体でよければ喜んで差し出そう』

『話が分かる御仁で助かりますよ。これで俺の研究も飛躍的に進むでしょう』

男がにたりと笑う。その笑顔がけして善意的なものではないことは分かっていた。それでも、彼は提示された条件を飲む他に子供達を救う手段がないことを知っている。

孤児など食い扶持を減らすお荷物でしかない。

みすぼらしい子供を喜んで引き取るような人間はこの世界にはいないのだ。

誰も彼もが地位と権力に固執し、偽善と欺瞞を振りかざし、人を人とも思わぬ愚行を繰り返す。己を魅せるために金を使い、見せしめのために人をも殺す。人命など路傍の石よりも価値のないごみのような扱い。

それでも彼が善であれたのは、子供達の無垢な心と神の教えがあったから。報われぬ者達に救いの手を、悪しきものは裁きの鉄槌を。

それは彼の矜持であり、信念であり、生きてきた道でもある。

だからこそこうして全てを受け入れる覚悟ができた。

『老兵はただ去り行くのみ。世界が戦場ならば、それもまた一つの真理だ』

『殊勝な心がけでございますわ』

『この教会はどうされるおつもりで?』

『信仰などとっくに廃れている。ならば無くなったところで特に影響はないだろう。好きにするがいい』

『そうですか。ならば好きにさせていただきましょう』


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