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('A`)は異世界で戦うようです

5601:2014/08/01(金) 22:03:22 ID:Fg3tJaY20



『神父様、どうして教会の取り壊しを受け入れたんですか?』

幼い少女に尋ねられて、彼は苦笑する。

神父のいない教会に価値はない。子供のいない孤児院に意味はない。

自分が抱えた荷物は自分だけで背負うものだ。ましてや幼い子供達に負い目を感じて欲しくはない。彼女らは自分の、そして未来を担うかけがえのない財産なのだから。

全てを明かすこともできただろう。明かした上で、選択を強いることもできた。だがそうしたところで彼女達の命を自分一人で守ることなどできやしない。

老兵は去るのみ。

彼はもう世界から消える。大切なものを救うために。

『私の役目はもう終わったのさ。君達は君達の道を歩むといい。生きるための道は信頼できる人間が教えてくれるだろう』

『でも……』

『大丈夫。何も恐れることはない。君達は何でもできて、何にでもなれる。そのための下地は十分に教えたはずだ』

少女は首を傾げる。

聡い子だ、今は分からずともきっと近い将来に理解するだろう。その時、自分が言ったことを正しく導いてくれれば、蒔いた種は芽吹くはず。

自然と笑みがこぼれた。

『いつか君は大きな壁の前に立ちすくむかもしれない。今日という日を後悔するかもしれない。けれども、君は君の信じる道を行きなさい。たとえどれだけ辛くとも、悲しもうとも、歩くことをやめてはいけない。その先にこそ、君が君であるための答えを見つけられるはずだから』

神は人を救わない。どれだけ綺麗なお題目を掲げたところで、それは紛れもない事実。

人を救うのはいつだって人なのだ。人は一人で生きていけないから、手を取り合って助け合いながら生きていく。

魔法が繁栄し、その事実を人が知ったとき、神は必要とされなくなった。

けれども、彼には神がいないとは思えないのだ。人の未来は誰にも分からない。だからこそその先にある巡り合わせというのは運命の悪戯だとか、奇跡だとか呼ばれるのだろう。

願わくば、彼女に幸多き人生を。


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